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JP5118941B2 - 酸化物超電導バルク体の製造方法および酸化物超電導バルク体 - Google Patents

酸化物超電導バルク体の製造方法および酸化物超電導バルク体 Download PDF

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Description

本発明は、超電導電流リード、フライホイール用電力貯蔵装置、超電導磁気浮上機器、超電導磁気軸受け、超電導磁気分離浄化装置、リニアモータなどに応用開発が進められている酸化物超電導バルク体の製造方法と酸化物超電導バルク体に関する。
大型の酸化物超電導バルク体を製造する方法の一例として溶融凝固法が知られている。
この溶融凝固法とは、REBaCu7−X(REは希土類元素を示す)なる組成の酸化物超電導バルク体を製造するに際し、REBaCu相またはREBaCu10相と、Ba−Cu−Oを主成分とした液相とが共存する温度領域まで原料粉末の圧密体を加熱した後、REBaCu7−X相が生成する包晶温度直上の温度まで冷却し、その温度から徐冷することにより前駆体の内部において結晶成長させ、核生成と結晶方位の制御を行い、酸化物超電導バルク体を得る製造方法である。
また、1つの種結晶を使用し、結晶成長開始温度が異なる材料を順次組み合わせて核生成、結晶方位および結晶成長方向を制御して酸化物超電導バルク体を製造するトップシード溶融凝固法(Top Seeding Melt Growth)が知られている。
このトップシード溶融凝固法は、酸化物超電導バルク体を構成する元素の化合物粉末を混合してなる原料粉末を圧密して前駆体を得た後、この前駆体を利用してREBaCu7−X(REは希土類元素を示す)なる組成の酸化物超電導体を製造するに際し、REBaCu相またはREBaCu10相と、Ba−Cu−Oを主成分とした液相とが共存する温度領域まで前駆体を加熱して半溶融状態とした後、半溶融状態の前駆体上に種結晶を設置し、REBaCu7−X相が生成する包晶温度直上の温度まで冷却し、その温度から徐冷することにより半溶融状態の前駆体の内部で種結晶に沿わせて徐々に結晶成長を行い、前駆体全体を酸化物超電導バルク体とする方法の一例として知られている。
前記酸化物超電導バルク体は、通常、前述の溶融法、あるいは、原料混合粉末を圧密後に焼成する焼結法により製造されているが、いずれにおいても酸化物超電導体は一般的にはセラミックスの一種であり、ボイドやクラックを必然的に伴う材料であって、これらが原因となって強度低下を引き起こし易いので、実用強度を高めるための補強構造が課題として認識されている。
このような背景から、外面に樹脂含浸層を設けて酸化物超電導バルク体の強度を向上させた構造が知られている。(特許文献1参照)また、酸化物超電導バルク体の機械的強度向上のために、布に樹脂を含浸させた密着被覆層を酸化物超電導バルク体の外表面に密着させた構造が知られている。(特許文献2参照)更に、酸化物超電導バルク体の強度向上のためにフィラー入り樹脂の被覆層を外表面に設けた構造が知られている。(特許文献3参照)
特開2000−178025号公報 特開2001−010879号公報 特開2000−256082号公報
これまで開発されてきた前述のトップシード溶融凝固法あるいは一般に知られている焼結法のいずれにおいても、得られる酸化物超電導バルク体がセラミックスである限り、ボイドやクラックが強度低下の原因となり得るが、超電導材料自体のボイドやクラックを意識的に減少させようとする製造プロセスの研究開発は一部には見られるものの、酸化物超電導バルク体としての構造強度を高めようとする技術は前述の特許文献に記載の如く樹脂被覆層を設けた構造が提供されている程度であって、十分には開発されておらず、特に溶融凝固法などのように原料粉末を圧密して成形した前駆体に対して微妙な結晶成長を図るタイプの酸化物超電導バルク体において、良好な補強構造は提供されていないのが現状であった。
一方、この種の酸化物超電導バルク体は熱伝導性が悪いことも知られており、酸化物超電導バルク体に磁界を補足した場合、熱はけが課題であった。この点に鑑みると、外表面に樹脂層を被覆するタイプの構造では、熱はけの問題を解消するのは困難であった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、補強構造を導入した酸化物超電導バルク体を製造できる技術の提供を目的とする。また、本発明は、酸化物超電導体としての良好な結晶成長がなされていて、酸化物超電導バルク体としての超電導特性に優れた上に、補強構造を適用し、熱はけ性も良好とすることが可能な酸化物超電導バルク体を提供する技術の提供を目的とする。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、REBaCu7−X(REは、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの1種または2種以上を示す。)なる組成の酸化物超電導バルク体を製造するに際し、酸化物超電導バルク体を構成する元素の原料粉末を加圧成形して圧密する際、原料混合粉末中に溶融凝固法に伴う加熱温度において溶融しない貴金属の補強体を混入して圧密し、目的の形状の前駆体を得た後、この前駆体に対し、溶融凝固法を適用して結晶成長させることを特徴とする。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、前記補強体を白金ロジウム線とすることを特徴とする。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、前記前駆体を加熱して半溶融状態とした後に冷却し、前記前駆体上に設置した種結晶の結晶構造を基に先の半溶融状態の前駆体を結晶化して酸化物超電導バルク体とするトップシード溶融凝固法によって補強体入りの酸化物超電導バルク体を製造することを特徴とする。
本発明の酸化物超電導バルク体は、REBaCu7−X(REは、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの1種または2種以上を示す。)なる組成を有し、溶融凝固法を適用して結晶成長された酸化物超電導バルク体であり、内部に貴金属製の補強体が複合されてなることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導バルク体は、前記補強体が白金ロジウム線であることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導バルク体は、前記補強体の内部に補強体を構成する金属材料の未溶融部が芯部として残留され、その外周部に補強体の構成材料元素と酸化物超電導体の原料元素とを具備する被覆層が形成され、該被覆層の外部側において酸化物超電導体の原料元素からなる結晶育成領域が生成されてなることを特徴とする。



本発明の製造方法によれば、補強体を内部に複合することにより機械強度を向上させた酸化物超電導バルク体を製造することができる。また、この酸化物超電導バルク体は溶融凝固法により結晶成長させて製造されているので、欠陥やボイドなどの少ない、超電導特性の良好な酸化物超電導バルク体とすることができる。
更に、貴金属の補強体が溶融凝固法による高い加熱温度に耐えて溶解しないものであるので、前駆体の溶融物が凝固しながら結晶成長する場合の妨げにならず、良好な結晶成長がなされていると同時に、溶融凝固法による結晶成長後においても補強体が溶解することなく存在するので、機械的補強が満足になされており、超電導特性に優れると同時に、高強度の酸化物超電導バルク体が得られる。
更に、貴金属の補強体は酸化物超電導バルク体を構成する材料よりも熱伝導性が良好であるので、この補強体を利用して酸化物超電導バルク体の熱を外部に効率良く排出することが可能となり、熱はけの良好な酸化物超電導バルク体を提供することができる。
本発明の製造方法において補強体を白金ロジウム線とするならば、溶融法により前駆体を溶融凝固させる処理を施しても、結晶成長が白金ロジウム線により影響されずに良好な結晶が確実になされるとともに、溶融凝固法に伴う高温加熱においても補強体が溶融することなく確実に残存して補強するので、高強度の酸化物超電導バルク体を確実に提供することができる。
また、トップシード溶融凝固法によって補強体入りの酸化物超電導バルク体を製造するならば、強度が高く、結晶成長が確実になされた超電導特性の良好な酸化物超電導バルク体を確実に得ることができる。
図1は本発明に係る製造方法において利用される円盤状をなす酸化物超電導バルク体の前駆体1を示し、この前駆体1を元に後述する溶融法により結晶成長させ、更に、酸素雰囲気中において熱処理することにより、最終目的物として図3に示す円盤状の酸化物超電導バルク体3を得ることができる。
なお、酸化物超電導バルク体3とその前駆体1の形状は円盤状に限るものではなく、目的とする製品形状に合わせて棒状や他の立体形状など、その他任意の形状に成形することができるが、この実施形態では円盤状の前駆体1を例示して以下に説明する。
前記酸化物超電導バルク体の前駆体1とは、目的とする酸化物超電導バルク体の組成と同じ組成、あるいは近似する組成の原料混合体の圧密体であり、例えば、REBaCuO系(REはYを含む希土類元素(La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの1種または2種以上)を示す。)のものを例示することができるが、特にこれらの中でも系希土類系として知られる元素(Nd、Sm、Gdなど)を選択することが、酸化物超電導バルク体の臨界電流密度向上の面からは望ましい。
ここで例えば、目的の酸化物超電導バルク体がNdBaCu7−Xの組成の場合、前駆体1として例えば、NdBaCu7−Xの組成の粉末とNdBaCu10の組成の粉末を混合して圧密し、純酸素中で焼結したものが前駆体であり、目的の酸化物超電導バルク体がSmBaCu7−Xの組成の場合、前駆体1として例えば、SmBaCu7−Xの組成の粉末とSmBaCuOの組成の粉末を混合して圧密したものが前駆体であり、目的の酸化物超電導バルク体がGdBaCu7−Xの組成の場合、前駆体1として例えば、GdBaCu7−Xの組成の粉末とGdBaCuOの組成の粉末を混合して圧密した前駆体を例示することができる。
また、目的の酸化物超電導バルク体がYBaCu7−x系の酸化物超電導バルク体である場合、前駆体1として例えば、Yの化合物粉末とBaの化合物粉末とCuの化合物粉末をY:Ba:Cu=1:2:3、またはそれに近似する組成で混合した原料混合粉末を圧密した前駆体などを用いることができる。Yの化合物として酸化物粉末、Baの炭酸塩粉末、Cuの酸化物粉末などを例示することができる。より具体的には、例えば酸化イットリウム(Y)粉末と炭酸バリウム(BaCO)粉末と酸化銅(CuO)粉末をR123相成分(YBaCu7−X相成分)とR211相成分(YBaCu相成分)の比を個別に秤量し、個別にめのう乳鉢などを用いて混合し、原料混合粉末を作製して圧密した前駆体を例示することができる。
先の前駆体1は、先の組成の原料混合粉末をプレス装置、あるいは、CIP装置(静水圧装置)などの加圧装置により円盤状に成形したものを用いる。勿論、CIP装置が高価であるならば、プレス装置で前駆体1を製造する方が製造コストは安くなる。また、前駆体1の大きさは任意で良く、用いるプレス装置やCIP装置で製造可能な大きさの前駆体1とすれば良い。
前述の加圧装置により混合粉末を圧密する場合、本発明においては補強線4を組み込むので、加圧装置の金型などの成形空所に先の組成比の原料混合粉末を充填する際、原料混合粉末の充填物内に線状の補強体4を挿入しておく。
ここで用いる補強体4は貴金属からなるものが好ましく、具体的には白金、白金ロジウム合金、白金インジウム合金、白金パラジウム合金、白金タングステン合金などからなることが好ましい。白金(Pt)は融点1768℃であるが、白金に対してロジウム(Rh)を添加して合金化することで融点を向上させることができるので、後に行う溶融凝固法を実施する際に補強体が溶解し難いという観点からすると白金ロジウム合金の補強体4を用いることがより好ましい。例えば、87%Pt−13%Rh合金の融点は1865℃であるので、この組成比の白金ロジウム合金の補強線を用いることができる。
なお、白金ロジウム合金において、例えば、94%Pt−4%Rh合金の融点が1835℃、90%Pt10%Rh合金の融点が1860℃、87%Pt13%Rh合金の融点が1865℃、80%Pt20%Rh合金の融点が1915℃、70%Pt30%Rh合金の融点が1945℃、同様に60%Pt40%Rh合金の融点が1960℃、ロジウムの融点が1960℃であるので、後述する溶融凝固法適用時の最高加熱温度に耐える組成比の白金ロジウム合金や他の貴金属あるいはそれらの合金とすることが好ましい。勿論、前述の白金インジウム合金、白金パラジウム合金、白金タングステン合金などを用いても良い。
前記補強体4は、現状の技術において溶融凝固法により得られる酸化物超電導バルク体の大きさが直径10mm〜数10mm程度の大きさであることに鑑み、0.1mm〜0.5mm程度の直径の線状のものを複数本、例えば2〜10本程度用いることが望ましい。
この補強体4を前駆体1の例えば中心を囲むような点対称位置に、4本程度配置するように金型の内部に原料混合粉末とともに挿入し、金型を締めて原料混合粉末を圧密して図1に示すような4本の補強体4入りの前駆体1を得る。補強体4を金型の成形空所の原料混合粉末内に挿入する場合、原料混合粉末の圧密方向に沿って補強体4を配置することが補強体4を配置する向きの一例となるが、補強体4の配置方向については任意でよい。例えば、補強体4の配置は、縦方向、横方向、あるいはそれらの合成方向(斜め方向)でも差し支えない。
また、前駆体1を製造する場合、原料混合粉末を得た後、800〜1000℃程度で仮焼きしてから粉砕装置で粉砕した仮焼原料を再度混合するという仮焼き粉砕操作を必要回数行ったものを補強体4とともに成形装置の金型に投入して成形しても良い。粉末混合粉砕と仮焼き温度の条件として、めのう乳鉢あるいはアトライタやボールミル等の粉砕混合装置を用いて1時間程度混合した後に900℃程度で15時間程度仮焼きする条件等を例示することができる。
また、繰り返し複数回仮焼きして最終粉砕し、混合する際、後に行う酸素雰囲気中での熱処理の際に密度を向上させるため、あるいは、バルク体の応力集中を防止する目的でAg粉末やAgO粉末を添加物質として混合し、成形体としたものを前駆体1とすることが好ましい。あるいは、前記原料粉末の混合時に予め目的の組成比でAg粉末やAgO粉末を添加物質として混合してなる混合粉末を用いても良い。
これらの添加物質は最終的に得られる酸化物超電導体の超電導特性を向上させるもの、あるいは超電導特性を阻害しないものであれば良い。例えば、添加物質がAgであれば、酸化物超電導体に対してAgOの状態で10〜40質量%程度の範囲で添加できることができる。
図1に示す状態の前駆体1を得たならば、半溶融凝固法に基づいて前駆体1を加熱処理する。
ここで半溶融凝固法とは、RE−Ba−Cu−O系の酸化物超電導体を構成する各元素の化合物を複数混合して成形した原料混合成形体、即ち、前駆体1を得た後、この前駆体1を融点以上の温度で加熱溶融し、前駆体1の形を保持して半溶融状態とし、次いで温度勾配を加えながら徐冷工程を行ない、結晶化直前の温度で種結晶を前駆体の一部に設置し、種結晶を起点として前駆体内で結晶を成長させることにより酸化物超電導バルク体を得ようとする方法である。
即ち、前駆体1の融点よりも若干高い温度に全体を加熱して前駆体1をそれ自身の形が崩れないように半溶融状態とする。また、加熱雰囲気としては不活性ガス中に微量の酸素を供給した酸素雰囲気とする。例えば一例として、1%O濃度のArガス雰囲気を選択できる。
この際の加熱温度は、目的とする酸化物超電導体の組成によって、あるいは、熱処理する場合の雰囲気ガスの成分により若干異なるが、概ね1%O不活性ガス雰囲気中においてNd系の酸化物超電導体であるならば1000〜1200℃の範囲、他の系の酸化物超電導体でも概ね970〜1200℃の範囲である。
前駆体1を半溶融状態としたならば、前駆体1の温度を若干下げた後、結晶化直前の温度でその表面上部に種結晶を設置し、徐々に温度を段階的に下げて規定の温度で数10時間保持してから炉冷する。例えば、半溶融状態の温度よりも数10℃低い温度まで徐冷して図2に示す如く種結晶2を設置した後、更に数10℃低い温度まで徐冷してその温度で数10時間保持してから炉冷することで図2に示すような酸化物超電導体6を得ることができる。例えば、半溶融温度を1100℃とした場合、1010℃まで冷却し、種結晶を設置し、1000℃まで徐冷し、989℃まで徐冷した後、60時間保持し、炉冷する条件とする。なお、これらの冷却条件は本発明で適用できる条件の一例であって、本出願人は先に、特開平2004−235585号公報、特開2005−289684号公報、特開平2006−306692号公報、特開2007−131510号公報などにおいて開示した如く種々の溶融凝固法の条件を提供しているので、これらの公報に記載されているいずれの条件を採用しても良い。勿論、これらの条件以外に知られている溶融凝固法の条件を適用することもできる。
前駆体1の内部ではYBaCuO(Y211相)とL(液相)(3BaCuO+2CuO)とに分解し、種結晶を起点として、液相がY211相を下側に(種結晶から離れる側に)押し出すように移動しながら種結晶を起点としてYBaCu7−X(Y123相)なる組成比の酸化物超電導体の結晶が成長し、その結果として最終的に前駆体1の一部または全体が結晶化してYBaCu7−X(Y123相)の組成の図3に示す構造の酸化物超電導バルク体3が得られる。
前記の結晶化が進行する場合、前述の如き高融点の貴金属製の補強体4が溶融することがないので、酸化物超電導体の結晶成長に悪影響はなく、目的の結晶成長を行わせることができる。また、補強体4の外周部分のごく一部が部分溶融して周囲の原料混合粉末の成分元素と多少の元素拡散がなされたとしても、補強体4自体が貴金属製であり、周囲に存在する酸化物超電導体構成元素との反応性は低く、酸化物超電導体の結晶成長に与える影響は極めて少ないので、溶融凝固法による結晶成長は充分になされる。従って補強体4を内部に備えたとしても、初期の目的の結晶成長を充分になし得た酸化物超電導バルク体3を製造することができる。
なお、図3に示すこの形態の酸化物超電導バルク体3は、種結晶2を設置した中心部から外側に向けて単結晶領域5が生成され、その外側に多結晶領域6が生成されるとともに、種結晶2を設置した中心部分を囲む点対称位置に補強体4がバルク体の厚さ方向に4本複合された構造とされている。なお、この形態の酸化物超電導バルク体3は一例であって、多結晶領域6が形成されずに全域に単結晶領域5が成長されている構造となることもあり、単結晶領域5が酸化物超電導バルク体3の一部分のみに形成されている構造となることもある。また、単結晶領域の区画を示すファセットラインが図3のようには明確に表れないこともあるので、図3に示す形状は本発明の酸化物超電導バルク体の1つの例として示す。
以上の工程により、補強体4を備えた酸化物超電導バルク体3であるならば、セラミックの1種である酸化物超電導体を貴金属の補強体4で補強した構造となるので、強度の高い酸化物超電導バルク体3を提供できる。また、酸化物超電導バルク体3は溶融凝固法により結晶成長させる場合に良好な結晶成長をなし得ているので、超電導特性にも優れている特徴を有する。
更に、本発明による酸化物超電導バルク体3においてAgを10〜40質量%の範囲で添加してなる場合、酸化物超電導バルク体3の内部に添加物としてのAgを適量添加し、内部応力集中を緩和することができてクラックの少ない構造になっているので、結果的に強度の向上した酸化物超電導バルク体3を得ることができる。
また、内部に金属の補強体4を備えているので、熱のこもりやすい酸化物超電導バルク体であっても補強体4の部分の熱伝導率が高いので、この補強体4の部分を介して冷媒等で効率良く冷却することが可能となり、熱はけの良好な酸化物超電導バルク体を提供できる特徴を有する。
次に、本発明による酸化物超電導バルク体3においては、補強体4を酸化物超電導バルク体3の中心を囲む点対称位置に複数本配置しているので、バランス良く酸化物超電導バルク体3を補強することができる。補強体4を設ける本数は特に限らないが、2〜10本程度、5〜10本程度の範囲が望ましい。これら本数の補強体4を設けることで、補強体4を利用して熱はけを良好とすることが可能となる。
例えば、液体窒素により冷却して酸化物超電導バルク体3を超電導状態で使用した場合、磁界を作用させた場合に磁界が移動して発熱のおそれを生じた場合であっても、熱伝導率の良好な補強体4を介して酸化物超電導バルク体3を液体窒素により効率良く冷却できるので超電導特性の劣化あるいは常伝導状態への遷移をいずれも抑制することができ、熱はけの良い構造を提供できる。
出発原料として、DyBaCu7−X成分の仮焼粉末とDyBaCu成分の仮焼粉末をモル比で1:0.3となるように秤量し、有機溶媒中にて混合した。また、クラック防止、融点降下の目的でAgO粉末を20質量%添加し、原料混合粉末とした。
次いで内径21mmの金型の成形空所に入れ、直径4mm、長さ8mmの白金ロジウム合金87%Pt−13%Rh線の補強線を2本、成形空所の原料混合粉末内にほぼ垂直に差し込み、一軸プレス機を用いて1〜3MPaの圧力で圧密し、直径21mm、高さ(厚さ)5mmの円盤状の前駆体に成形した。白金ロジウム線の位置は平面視した圧密体の中心を挟む、ほぼ180゜中心対称位置とした。
先のAgO粉末を添加する場合、添加量を10質量%、30質量%としてそれぞれ前駆体試料を作製し、各前駆体試料の空気中における融点を測定した結果を図4に示す。また、図4にはAgO粉末を添加することなく作製した前駆体試料の融点の測定結果も併せて示す。図4に示す結果から、AgO粉末を添加した前駆体試料の方が融点が下がっていることが明らかである。
次に、AgO粉末を20質量%添加した前駆体試料に対し、種結晶としてNdBaCu7−Xの組成の薄膜を利用し、大気中において以下の加熱パターンに応じて加熱処理した。この薄膜はMgOの基板上に先の組成比の10×10mmの厚さ700nmの酸化物超電導薄膜を成膜し、これを1mm角程度の大きさに割って使用したものである。
加熱処理においては、先の前駆体試料について以下の条件で行った。この加熱処理ではピーク温度の1030℃で1時間保持し、その後に975℃に降温させる。ここで核となる種結晶を半溶融状態のバルク体に種付けし、結晶化しやすいように100時間かけて930℃まで降温させた。また、これらの加熱を1%O−Arガス雰囲気中にて行った。
この後、溶融凝固法による酸素欠損を解消するために、100%酸素雰囲気中において450〜250℃にて200時間酸素アニール処理を行った。
得られた酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場測定結果を図5、図6に示す。捕捉磁場特性の測定は、液体窒素を用いて試料を冷却し、試料への印加磁場を1.8T(テスラ)として行った。また、図6に○印にて2本の白金ロジウム線の位置を示した。
図5と図6に示す結果から、本発明試料は、PtRh合金の補強線を内部に複合させているものの、捕捉磁場特性において補強線の位置に関連した悪影響は特に見られず、補強線を複合していても補強線の周囲で結晶成長が満足になされた結果の捕捉磁場特性と見受けられた。また、図5に示す捕捉磁場分布の山形図形を見ても、補強線を複合したことに起因するいびつな形状の凹凸などは見られず、酸化物超電導バルク体の中央側に1つのピークを有する好適な捕捉磁場特性が得られた。
また、補強体を複合したこの例の酸化物超電導バルク体試料の臨界温度(Tc)は約91K(オフセット値)を示した。これに対して補強体を複合していない酸化物超電導バルク体試料の臨界温度(Tc)は約90Kを示したので、本発明試料の酸化物超電導バルク体試料は、Pt−Rh合金の補強線を複合したことで臨界温度には殆ど影響がないことも判明し、良好な酸化物系超電導体であることを確認できた。
図7は比較例の酸化物超電導バルク体試料と本発明に係る酸化物超電導バルク体試料の補強線とその周囲の金属組織を示すもので、図7(A)はPtの補強線を複合して製造した酸化物超電導バルク体の補強線とその周囲の金属組織写真、図7(B)はPtRh合金の補強線を複合して製造した酸化物超電導バルク体の補強線とその周囲の金属組織写真を示す。
Ptの補強線を適用した試料は上述の条件において空気中にて溶融凝固を行うと補強線が溶融してしまい、補強線を複合した位置で写真を撮影しても補強線の存在を確認することができなかった。これに対して図7(B)に示すPtRh合金の補強線を複合した酸化物超電導バルク体の補強線まわりの金属組織写真を見ると、PtRh合金の補強線の存在を明確に確認することができた。
複合した補強線の直径が400μm(0.4mm)であるので、図7(B)の組織写真から、外周部に他の元素と若干の拡散と伴ったと思われる被覆層が存在するが、殆ど全体がPtRh合金のまま残留したと思われ、それらの更に周囲側に元素拡散に起因する層の存在が見られるが、その更に外側においては一様な結晶成長が生じたと思われる領域が生成していた。これに対して図7(A)に示す組織ではPtの補強線の溶融に起因する不均一な組織が生成された痕跡が伺われる組織となった。
図7(B)に示す組織写真から、本実施例の酸化物超電導バルク体は、前記補強体の内部に補強体を構成する金属材料の未溶融部が芯部として残留され、その外周部に補強体の構成材料元素と酸化物超電導体の原料元素とが一部相互拡散して構成された被覆層が形成され、該被覆層の外部側において酸化物超電導体の原料元素からなる結晶育成領域が生成されてなる構造を有していることが判明した。
なお、白金の融点と溶融凝固法に基づく加熱温度を単純比較すると、溶融凝固法に基づく最高温度においても白金は溶解しないと想定されるが、溶融凝固法を実施する場合のピーク温度時において超電導バルク内に存在する化合物と白金との間で反応が生じる結果として白金製の補強体が溶融したものと理解できる。このため、補強線を用いる場合は、できるだけ高融点の金属からなる補強線を用いることが望ましく、そのため本実施例では白金の補強線よりもPtRh合金の補強線の方が有利であることが判明した。
図1は本発明方法を実施する場合に用いる前駆体を示す説明図である。 図2は前駆体に種結晶を設置した状態を示す側面図である。 図3は本発明方法に従って得られた酸化物超電導バルク体の一例を示す平面図である。 図4は実施例において得られた前駆体試料のAgO添加量と融点との関係を示す図。 図5は実施例において得られたAgOを20質量%添加した酸化物超電導バルク体試料の捕捉磁場特性を示す図。 図6は同実施例で得られた捕捉磁場特性の等高線図。 図7は酸化物超電導バルク体試料の補強線回りの金属組織を示すもので、図7(A)はPtの補強線を複合して製造した酸化物超電導バルク体の補強線まわりの金属組織写真、図7(B)はPtRh合金の補強線を複合して製造した酸化物超電導バルク体の補強線まわりの金属組織写真。
符号の説明
1…前駆体、2…種結晶、3…酸化物超電導バルク体、4…補強線、5…単結晶領域、6…多結晶領域。

Claims (6)

  1. REBaCu7−X(REは、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの1種または2種以上を示す。)なる組成の酸化物超電導バルク体を製造するに際し、酸化物超電導バルク体を構成する元素の原料粉末を加圧成形して圧密する際、原料混合粉末中に溶融凝固法に伴う加熱温度において溶融しない貴金属の補強体を挿入して圧密し、目的の形状の前駆体を得た後、この前駆体に対し、溶融凝固法を適用して結晶成長させることを特徴とする酸化物超電導バルク体の製造方法。
  2. 前記補強体を白金ロジウム線とすることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導バルク体の製造方法。
  3. 前記前駆体を加熱して半溶融状態とした後に冷却し、前記前駆体上に設置した種結晶の結晶構造を基に先の半溶融状態の前駆体を結晶化して酸化物超電導バルク体とするトップシード溶融凝固法によって補強体入りの酸化物超電導バルク体を製造することを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導バルク体の製造方法。
  4. REBaCu7−X(REは、Y、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの1種または2種以上を示す。)なる組成を有し、溶融凝固法を適用して結晶成長された酸化物超電導バルク体であり、内部に貴金属製の補強体が複合されてなることを特徴とする酸化物超電導バルク体。
  5. 前記補強体が白金ロジウム線であることを特徴とする請求項4に記載の酸化物超電導バルク体。
  6. 前記補強体の内部に補強体を構成する金属材料の未溶融部が芯部として残留され、その外周部に補強体の構成材料元素と酸化物超電導体の原料元素とを具備する被覆層が形成され、該被覆層の外部側において酸化物超電導体の原料元素からなる結晶育成領域が生成されてなることを特徴とする請求項4または5に記載の酸化物超電導バルク体。
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