JP5082652B2 - 透明積層体及びその製造方法、並びに電子デバイス - Google Patents
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しかしながら、表示用導電体の基板にプラスチックフィルムを用いた場合、このフィルムを透過する酸素や水蒸気により、表示素子が劣化するという問題がある。
また、必要に応じて、プラスチックフィルム上に有機層、無機層を積層することにより、さらに高いバリア性能を実現する方法が提案されている。
係る発明によれば、少なくとも酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中において、酸素や水蒸気を吸収して酸化される化学的に不安定なSiN膜を透明積層体中に形成することにより、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気を吸収することができ、さらには酸素や水蒸気が透明積層体を透過するのを防止することができる。
また、金属窒化物膜の材料としてSiN膜を用いることにより、上述のような、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気をSiN膜で吸収し、また、透過するのを防止することが可能となる。なお、金属窒化物膜の材料として、例えばSi 3 N 4 を用いた場合には、それ自体にバリア性があることから、この金属窒化物膜を通常のバリア基板として用いることも可能である。
また、透明基板上において、化学的に安定したバリア膜として機能するセラミック薄膜層であるSiO膜を積層することにより、SiN膜に到達する酸素や水蒸気の量を低減するようにコントロールすることができ、SiN膜が有するバリア膜機能を補完することが可能となる。また、SiN膜と透明基板の間にSiO膜を積層することで、透明積層体の大気側から浸入する酸素や水蒸気をSiN膜で吸収させるようにできる一方、SiN膜の大気側にSiO膜を積層した場合には、透明基板から漏洩する酸素や水蒸気をSiN膜で吸収させるようにできる等、SiN膜に吸収させる酸素や水蒸気の方向性を制御することが可能となる。
係る発明によれば、上記雰囲気とされた雰囲気中に100時間曝露された後、曝露側の面から50〜100nmの深さの範囲でSiN膜が酸化されるものなので、上述のような、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気を確実に吸収することが可能となる。
係る発明によれば、SiN膜のエネルギーバンドギャップを上記範囲とすることにより、可視光域で光吸収が生じず、優れた光透過性が得られる。また、金属窒化物膜の材料としてSiNを用いることにより、上記エネルギーバンドギャップ特性を実現することができる。なお、アルミニウムやシリコンの酸化物も、エネルギーバンドギャップはそれぞれ4eV、8eVであるので、金属窒化物膜が酸化物となった場合であっても透明性を維持することが可能である。
係る発明によれば、可視光域である波長400〜800nmの範囲で、透明基板を含めた光線透過率を60%以上とすることにより、透過光を利用するようなアプリケーションの前面板に適用することが可能となる。基本的に、SiN膜が、エネルギーバンドギャップが3.1eV以上の材料からなるものであれば、理論的に、可視光域において励起による吸収が現れることはない。
係る発明によれば、透明基板をプラスチックのようなフレキシブルな材料から構成することにより、衝撃によって破損するのを抑制でき、耐衝撃性に優れる透明積層体が得られる。また、透明基板をプラスチックフィルムで構成することにより、この透明基板上に薄膜を形成する際、ロールトゥロール方式によって連続的に大量生産することが可能となるので、生産コストを低減することが可能となる。
係る発明によれば、上記環境下における水蒸気透過率及び酸素透過率を上記規定範囲内とすることにより、透明積層体が用いられる電子デバイスの材料劣化を抑制することができる。透明基板をプラスチックフィルムで構成した場合、通常、プラスチック材料は水蒸気等のガスバリア性に乏しいため、特に、電子デバイスの材料劣化を引き起こすという問題がある。本発明では、セラミック薄膜層として上述のようなバリア性のSiO膜を用い、温度40℃、湿度90%Rhの環境下における透明積層体の水蒸気透過率を0.5g/m 2 /day以下、酸素透過率を0.5cc/m 2 ・day・atm以下とすることにより、透明基板にプラスチック材料を用いた場合であっても、SiO膜によって酸素や水蒸気の透過が抑制されるので、電子デバイスの材料の劣化を抑制することができ、ひいては、電子デバイスの高寿命化を図ることが可能となる。
係る発明によれば、さらに、透明導電性薄膜を積層することにより、電子デバイスの基板として適用することが可能である。
係る発明によれば、透明積層体中に形成されるSiN膜を、確実に、酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中において、酸素や水蒸気を吸収して酸化される化学的に不安定な膜とすることができる。これにより、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気をSiN膜で吸収することができ、さらには酸素や水蒸気が透明積層体を透過するのを防止することが可能となる。
係る発明によれば、上記本発明に係る透明積層体が用いられてなるものなので、透明積層体を透過した酸素や水蒸気、あるいは透明基板に含まれる酸素や水蒸気が、表示素子に到達するのを抑制できるので、表示素子が劣化するのを防止でき、表示特性に優れるとともに高寿命の電子デバイスを実現できる。
図1は、本発明に係る透明積層体の第1の実施形態を説明する概略図である。図1に示す例の透明積層体1は、透明基板2の一方の面2aの上に、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されうる金属窒化物膜3が1層形成されてなる。
透明基板2に用いられる材料としては、如何なる材料でも用いることができるが、特に高い透明性を要求される場合には、ガラス材料やプラスチックフィルム等を用いることが好ましく、この内、軽量であり、且つ耐衝撃性及び可撓性の点で優れるプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
プラスチックフィルムとしては、成膜工程及び後工程において耐え得るだけの充分な強度を有し、表面の平滑性が良好な材料であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアリレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリイミド等が挙げられる。特に、透明積層体を表示装置の前面板に適用する場合には、透明性と耐熱性に優れたポリカーボネートやポリエーテルサルホンが好適に用いられる。
透明基板2に用いるプラスチックフィルムの厚さは、部材の薄型化や基材の可撓性を考慮し、10〜200μm程度とすることが好ましい。
また、透明基板2の表面には、周知である種々の添加剤や安定剤、例えば、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、易接着剤等による処理が施されていても良い。また、透明基板2上に成膜される薄膜との密着性を改善するため、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理等を施してもよい。
金属窒化物膜3は、AlN及び/又はSiNを主成分とする材料からなることが好ましい。金属窒化物膜3の材料として、アルミニウムやシリコンの窒化物を用いることにより、例えば、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気、あるいは、プラスチックフィルムからなる透明基板2に含有される酸素や水蒸気を効果的に吸収することができる。
プラズマCVD法を用いるとともに、炉内に設置される透明基板2の温度を40℃以下の低温に保持した状態で真空成膜を行なうことにより、金属窒化物膜3を、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されうる化学的に不安定な特性の膜とすることができ、また、再現性が良好で均一な薄膜が得られる。
透明基板2の温度を40℃超として金属窒化物膜を形成すると、上述のような化学的に不安定な特性が得られ難く、透明積層体を表示装置等の前面板に適用した場合に、大気中から浸入する酸素や水蒸気を効果的に吸収することができず、表示素子が劣化する虞がある。
金属窒化物膜3は、上述したように、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されるという、化学的に不安定な特性とされるものであるが、上記条件下での100時間の曝露による金属窒化物膜3の酸化進行の深さを上記規定範囲とすれば、大気中から浸入した酸素や水蒸気、あるいは、プラスチックフィルムからなる透明基板2に含有される酸素や水蒸気を効果的に吸収することが可能となる。
上記条件下における、金属窒化物膜の曝露側の面からの酸化進行の深さが50nm未満だと、上述のような化学的に不安定な特性とならず、透明積層体を表示装置等の前面板に適用した場合に、大気中から浸入する酸素や水蒸気を効果的に吸収することができず、表示素子が劣化する虞がある。
また、金属窒化物膜の材料として、上述のようなアルミニウムやシリコンの窒化物を用いることにより、上記エネルギーバンドギャップ特性を実現することができる。ここで、金属窒化物としては、例えば、BN(バンドギャップ:4〜7eV)、GaN(同:3.4eV)、AlN(同:6.2eV)、Si3N4(同:5.1eV)等、様々な材料を選択して用いることができるが、材料の取り扱いの容易性や、大面積での成膜を行う場合等を考慮すると、AlNやSi3N4を用いることが好ましい。
また、金属窒化物膜の材料としてSi3N4を用いた場合には、それ自体が高いバリア性を有する膜となるので、この金属窒化物膜を通常のバリア基板として用いることも可能であり、この場合には、酸素や水蒸気の透過を効果的に防止することが可能となる。
なお、アルミニウムやシリコンの酸化物も、エネルギーバンドギャップはそれぞれ4eV、8eVであるので、金属窒化物膜が酸化物となった場合であっても透明性を維持することが可能である。
また、金属窒化物膜3を、上述したような、エネルギーバンドギャップが3.1eV以上の材料で構成すれば、理論的に、可視光域において励起による吸収が現れることはないので、透明積層体1全体での光線透過率をより向上させることが可能となる。
図2に示す表示装置(電子デバイス)20は、表示素子21の前面板として上記透明積層体1が備えられ、該透明積層体1は、金属窒化物膜3が表示素子21側に、透明基板2が大気側に配されている。本実施形態の表示装置20は、上記構成とすることにより、大気中に存在する酸素や水蒸気が透明基板2を透過し、表示素子21に向けて浸入した場合であっても、浸入した酸素や水蒸気が金属窒化物膜3によって吸収されるため、表示素子21が劣化するのを抑制できる。また、透明基板2をプラスチックフィルムから構成した際に、このプラスチックフィルムに含まれる酸素や水蒸気が漏れ出した場合であっても、これら酸素や水蒸気が金属窒化物膜3によって吸収されるため、表示素子21の劣化を抑制できる。
図3〜5は、本発明に係る透明積層体の第2の実施形態を説明する概略図である。なお、図3〜5に示す本実施形態の透明積層体10〜12において、第1の実施形態の透明積層体1と共通する構成については、同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
本発明の第2の実施形態の透明積層体は、上記した第1の実施形態の透明積層体1に対して、さらに、透明基板2上に、セラミック薄膜層が少なくとも1層形成され、このセラミック薄膜層が、酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中で温度が100℃以下とされた条件において化学的に安定なものとして構成される。また、図3に示す例の透明積層体10は、透明基板2の一方の面2aの上に金属窒化物膜3が1層形成され、さらにその上に、セラミック薄膜層4が1層形成されている。
セラミック薄膜層4を構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム(Al)及び/又はシリコン(Si)からなる酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、あるいはフッ化物の何れかを用いることが可能である。これらの中でも、酸化物、窒化物、あるいは酸窒化物を用いることが、セラミック薄膜層のバリア機能をさらに向上させることができる点から好ましい。
このように、透明基板2上におけるセラミック薄膜層の形成数や位置を適宜選択することにより、透明積層体において、金属窒化物膜3に吸収させる酸素や水蒸気の方向性を制御することが可能となる。
図6は、本発明に係る透明積層体の第3の実施形態を説明する概略図である。なお、本実施形態の透明積層体10において、第1の実施形態の透明積層体1及び第2の実施形態の透明積層体10〜12と共通する構成については、同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
本発明の第3の実施形態の透明積層体は、上記した第1の実施形態の透明積層体1、あるいは第2の実施形態の透明積層体10〜12に対して、さらに、透明基板2上に、少なくとも1層の透明導電性薄膜が形成された構成とされている。また、図6に示す例の透明積層体15は、透明基板2の一方の面2aの上にセラミック薄膜層42が形成され、透明基板2の他方の面2bに金属窒化物膜3が1層形成され、この金属窒化物膜3の一方の面3aに積層して、セラミック薄膜層41及び透明導電性薄膜5がこの順で形成されている。
また、上記本発明に係る透明積層体を各種電子デバイスに適用することにより、透明積層体を透過した酸素や水蒸気、あるいは透明基板に含まれる酸素や水蒸気が、表示素子に到達するのを抑制できるので、表示素子が劣化するのを防止でき、表示特性に優れるとともに高寿命の電子デバイスを実現できる。
一方、有機蒸着法によってオーバーコート層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート又はメタクリレート、もしくはそれらの混合樹脂溶液を有機物蒸着装置で蒸発させ、コーティングドラム上のフィルム上に凝縮させた後、電子線照射装置にて硬化処理を行う方法と用いることができる。また、この際、電子線硬化の代わりに紫外線硬化を用いることも可能である。
本実施例では、図1に示すような透明積層体のサンプルを以下の手順で作成し、後述する試験方法によって評価した。
まず、40℃の温度に保持したポリエーテルサルホン(PES)からなる透明基板上に、原料ガスとしてSiH4、NH3、H2を用い、RF電源を用いたプラズマCVD法によって、約118nmの窒化シリコン(SiN)からなる金属窒化物膜を形成し、実施例1のサンプルを作製した。
(1)成膜直後に測定。
(2)成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で24時間放置した後に測定。
(3)成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で48時間放置した後に測定。
(4)成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で72時間放置した後に測定。
(5)成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で96時間放置した後に測定。
図7のグラフに示すように、上記(1)の条件であるSiN成膜直後の測定結果では、PESからなる透明基板上において、SiNからなる膜(金属窒化物膜)が存在していることが確認できる。
また、図8のグラフに示すように、上記(2)の条件であるSiN成膜後に24時間放置した後の測定結果では、SiN膜の両面側、つまり、透明基板側及び大気曝露側の両方から、SiOからなる膜が形成されている様子が確認できる。これは、SiN膜が、酸素分子や水分子が存在する環境下において、徐々に酸化されたためと考えられる。
また、図9のグラフに示すように、上記(3)の条件であるSiN成膜後に48時間放置した後の測定結果では、上記(2)の条件の場合と同様、SiN膜の両面側、つまり、透明基板側及び大気曝露側の両方から、SiOからなる膜が形成されている様子が確認できる。しかしながら、上記(3)の条件では、図9に示すように、上記(2)の条件と比べてSiOの量が多くなっていることが確認できる。これは、SiN膜が、酸素分子や水分子が存在する環境下において、さらに長時間放置されたため、SiNの酸化が進行したものと考えられる。
なお、上記(4)及び(5)の条件でのXPS測定では、図10及び図11に示すように、PESからなる透明基板の成分組成が確認されないグラフとなっている。これは、SiN膜が酸化されてSiO膜に変化したことにより、XPSにおけるエッチングレートが低下したことによるものと考えられる。
本比較例では、SiNからなる膜を形成する際、PESからなる透明基板を130℃と高い温度に保持して成膜処理を行なった点を除き、実施例1と同様の手順で比較例1の透明積層体サンプルを作製し、実施例1と同様の方法を用いて透明積層体の成分組成を測定した。
図12のグラフに示すように、上記(1)の条件であるSiN成膜直後の測定結果では、PESからなる透明基板上において、SiNからなる膜(金属窒化物膜)が存在していることが確認できる。
本実施例では、図3に示すような透明積層体のサンプルを以下の手順で作成した。
まず、40℃の温度に保持したPESからなる透明基板上に、原料ガスとしてSiH4、NH3、H2を用い、RF電源を用いたプラズマCVD法によって、約50nmのSiNからなる金属窒化物膜を形成した後、さらに、透明基板の温度を120℃に昇温させ、同様の手順によって約50nmのSiNからなるセラミック薄膜層を形成し、実施例2の透明積層体のサンプルとした。
そして、ボトムエミッションタイプの有機EL素子の封止缶の代替として、実施例2の透明積層体をエポキシ樹脂接着剤によって素子に接着したところ、60℃、90%Rhの環境下において1000時間放置した後も、素子のダークスポットの拡大が見られず、良好なバリア性能を備えていることが確認できた。このような試験を行った後、透明積層体の成分組成を分析したところ、SiN膜が、透明基板に近いところから酸化が進行していることが確認された。これは、吸水率の高いPESからなる透明基板から拡散した水分子を、SiN膜が吸収、トラップしたことにより、素子への到達を防いだことを示しているものと考えられる。
本比較例では、上記実施例2に対する比較例として、SiNからなる膜を形成する際、PESからなる透明基板を120℃と高い温度に保持し、また、形成されるSiN層(金属窒化物膜)を1層として厚さを約100nmとした点を除き、実施例2と同様の手順で比較例2の透明積層体のサンプルを作製した。
そして、ボトムエミッションタイプの有機EL素子の封止缶の代替として、比較例2の透明積層体をエポキシ樹脂接着剤によって素子に接着したところ、60℃、90%Rhの環境下において500時間放置した後から、素子のダークスポットが次第に拡大することが確認された。このような試験を行った後、透明積層体の成分組成を分析したところ、SiN膜自体が化学的に安定な特性であり、酸化されていないことが確認された。つまり、基板から発生した水分子が次第にSiN層(金属窒化物膜)中に拡散、透過して素子に到達し、素子が劣化してしまったことを示している。
本実施例では、図6に示すような透明積層体のサンプルを以下の手順で作成した。
まず、40℃の温度に保持したPESからなる透明基板の片面(図6に示す符号2b参照)に、原料ガスとしてSiH4、NH3、H2を用い、RF電源を用いたプラズマCVD法によって、約50nmのSiNからなる金属窒化物膜を形成した後、さらに、透明基板の温度を120℃に昇温させ、同様の手順によって約50nmのSiNからなるセラミック薄膜層を形成した。次いで、さらに、透明基板の他面(図6に示す符号2a参照)にも、透明基板の温度を120℃とし、同様の手順によって約50nmのSiNからなるセラミック薄膜層を形成した。そして、40℃の基板温度で形成したSiNからなる金属窒化物膜(図6に示す符号41参照)に、さらに、SnO2含有量が10wt%とされたITOからなる透明導電性薄膜(図6に示す符号5参照)を150nmの厚さで形成し、実施例3の透明積層体のサンプルとした。
そして、この透明基板上に形成された透明導電性薄膜を電極パターニングした後、この透明導電性薄膜上にトップエミッションタイプの有機EL素子を形成したところ、60℃、90%Rhの環境下において1000時間放置した後も、素子のダークスポットの拡大が見られず、良好なバリア性能を備えていることが確認できた。
本比較例では、上記実施例3に対する比較例として、SiNからなる金属窒化物膜(図6に示す符号3参照)を形成する際の、PESからなる透明基板を120℃と高い温度に保持した点を除き、上記実施例3と同様の手順で、SnO2含有量が10wt%とされたITOからなる透明導電性薄膜(図6に示す符号5参照)を150nmの厚さで形成されてなる、比較例3の透明積層体のサンプルを作製した。
そして、この透明基板上に形成された透明導電性薄膜を電極パターニングした後、この透明導電性薄膜上にトップエミッションタイプの有機EL素子を形成したところ、60℃、90%Rhの環境下において250時間放置した後から、素子のダークスポットが拡大していることが確認された。
Claims (9)
- 透明基板上に少なくとも金属窒化物膜及びセラミック薄膜層が形成されてなる透明積層体であって、
前記金属窒化物膜がSiN膜であり、前記セラミック薄膜層がSiO膜であるとともに、前記透明基板上に、順次、SiO膜、SiN膜及びSiO膜が積層されており、
前記SiN膜が、少なくとも酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中において、酸素や水蒸気を吸収して酸化される化学的に不安定なものであり、且つ、前記SiO膜が、酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中で温度が100℃以下とされた条件において、酸素や水蒸気に対して化学的に安定なバリア膜であることを特徴とする透明積層体。 - 温度40℃、湿度90%Rhの雰囲気中で100時間曝露させた後の前記SiN膜が、曝露側の面から50〜100nmの深さの範囲において、SiNがSiO 2 に変化するものであることを特徴とする請求項1に記載の透明積層体。
- 前記SiN膜のエネルギーバンドギャップが3.1eV以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明積層体。
- 前記透明基板を含めた光線透過率が、波長400nm〜800nmの範囲において60%以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の透明積層体。
- 前記透明基板がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の透明積層体。
- 温度40℃、湿度90%Rhの環境下において、水蒸気透過率が0.5g/m2・day以下であり、酸素透過率が0.5cc/m2・day・atm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の透明積層体。
- さらに、少なくとも1層の透明導電性薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の透明積層体。
- 請求項1〜7の何れか1項に記載の透明積層体を製造する方法であって、
前記金属窒化物膜を、化学気相成長(CVD)法により、前記透明基板の温度を40℃以下としてSiNから形成し、前記セラミック薄膜層を、真空蒸着法、物理的気相析出法、又は化学気相成長(CVD)法により、前記透明基板の温度を前記金属窒化物膜の形成温度よりも高い温度としてSiOから形成することにより、前記透明基板上に、順次、SiO膜、SiN膜及びSiO膜を積層することを特徴とする透明積層体の製造方法。 - 請求項1〜7の何れか1項に記載の透明積層体が用いられてなる電子デバイス。
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