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JP5082652B2 - 透明積層体及びその製造方法、並びに電子デバイス - Google Patents

透明積層体及びその製造方法、並びに電子デバイス Download PDF

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Description

本発明は、透明積層体に関し、詳しくは、化学反応によって酸素及び水蒸気を吸収する金属窒化物膜が形成されてなる透明積層体及びその製造方法、並びにその透明積層体が用いられてなる電子デバイスに関する。
従来、例えば液晶表示装置(LCD)に代表されるディスプレイ装置においては、表示用導電体の基板としてガラスが用いられている。また、近年、ディスプレイの大型化あるいは携帯小型化が進んだことから、ガラスに代わり、軽量性、耐衝撃性及び可撓性に優れるとともに、大型化するのに好適なプラスチックフィルムを基板に用いることが提案されている。
しかしながら、表示用導電体の基板にプラスチックフィルムを用いた場合、このフィルムを透過する酸素や水蒸気により、表示素子が劣化するという問題がある。
これまでにも、酸素や水蒸気の透過防止を目的として、ガスバリア膜に関する多くの研究がなされてきた。例えば、食品等の包装材においては、酸素及び/又は水蒸気透過性の低いプラスチックフィルムの使用や、プラスチックフィルム上への酸素及び/又は水蒸気透過性の低いポリマー材料の塗工、あるいはプラスチックフィルム上にSiOxやAlOx等の無機酸化物を真空蒸着法で積層すること等が提案されている。
また、必要に応じて、プラスチックフィルム上に有機層、無機層を積層することにより、さらに高いバリア性能を実現する方法が提案されている。
また、上述のような表示素子劣化の問題を解決するため、特に酸素や水蒸気を嫌う有機ELのデバイスにおいては、封止缶の内部に酸素や水蒸気の吸収剤を配置することにより、封止缶内に混入した酸素や水蒸気を吸収するように構成することが提案されている。
また、上述のようなディスプレイ装置に用いられる表示用基板には、導電膜を形成することが必須となる。ここで、プラスチックフィルム上にガスバリア膜及び導電膜が形成された積層体としては、基板上にプラズマCVD法によって酸化珪素からなる膜を形成し、さらに透明導電膜を製膜したもの(例えば、特許文献1を参照)や、基板上に酸化珪素あるいは窒化珪素からなる膜を形成し、さらにインジウム酸化物系の透明導電膜を製膜したもの(例えば、特許文献2を参照)等が提案されている。
特許第3118339号公報 特許第3489844号公報
特許文献1、2に記載されたような、プラスチックフィルムを基板に用いた電子デバイスは、軽量で薄く構成できるという利点があるが、このような電子デバイスに封止缶を設け、内部に吸収剤を備えた構成とすることは、上記利点が得られなくなるので非現実的である。しかしながら、ガラス材料と異なり、それ自体が水蒸気を含有するプラスチックフィルムを基板に用いた場合、たとえバリア膜等を設けた構成としても、徐々にバリア膜を透過した酸素や水蒸気が表示素子に到達し、表示素子が劣化してしまうという問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、酸素や水蒸気による表示素子の劣化を防止することが可能な透明積層体及びその製造方法、並びに電子デバイスを提供することを目的とする。
上記問題を解決するため、本発明では以下のような手段を提供する。
請求項1に記載の発明では、透明基板上に少なくとも属窒化物膜及びセラミック薄膜層が形成されてなる透明積層体であって、前記金属窒化物膜がSiN膜であり、前記セラミック薄膜層がSiO膜であるとともに、前記透明基板上に、順次、SiO膜、SiN膜及びSiO膜が積層されており、前記SiN膜が、少なくとも酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中において、酸素や水蒸気を吸収して酸化される化学的に不安定なものであり、且つ、前記SiO膜が、酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中で温度が100℃以下とされた条件において、酸素や水蒸気に対して化学的に安定なバリア膜であることを特徴とする透明積層体を提供する。
係る発明によれば、少なくとも酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中において、酸素や水蒸気を吸収して酸化される化学的に不安定なSiN膜を透明積層体中に形成することにより、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気を吸収することができ、さらには酸素や水蒸気が透明積層体を透過するのを防止することができる。
また、金属窒化物膜の材料としてSiN膜を用いることにより、上述のような、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気をSiN膜で吸収し、また、透過するのを防止することが可能となる。なお、金属窒化物膜の材料として、例えばSi を用いた場合には、それ自体にバリア性があることから、この金属窒化物膜を通常のバリア基板として用いることも可能である。
また、透明基板上において、化学的に安定したバリア膜として機能するセラミック薄膜層であるSiO膜を積層することにより、SiN膜に到達する酸素や水蒸気の量を低減するようにコントロールすることができ、SiN膜が有するバリア膜機能を補完することが可能となる。また、SiN膜と透明基板の間にSiO膜を積層することで、透明積層体の大気側から浸入する酸素や水蒸気をSiN膜で吸収させるようにできる一方、SiN膜の大気側にSiO膜を積層した場合には、透明基板から漏洩する酸素や水蒸気をSiN膜で吸収させるようにできる等、SiN膜に吸収させる酸素や水蒸気の方向性を制御することが可能となる。
請求項2に記載の発明では、温度40℃、湿度90%Rhの雰囲気中で100時間曝露させた後の前記SiN膜が、曝露側の面から50〜100nmの深さの範囲において、SiNがSiO に変化するものであることを特徴とする請求項1に記載の透明積層体を提供する。
係る発明によれば、上記雰囲気とされた雰囲気中に100時間曝露された後、曝露側の面から50〜100nmの深さの範囲でSiN膜が酸化されるものなので、上述のような、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気を確実に吸収することが可能となる。
請求項に記載の発明では、前記SiN膜のエネルギーバンドギャップが3.1eV以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明積層体を提供する。
係る発明によれば、SiN膜のエネルギーバンドギャップを上記範囲とすることにより、可視光域で光吸収が生じず、優れた光透過性が得られる。また、金属窒化物膜の材料としてSiNを用いることにより、上記エネルギーバンドギャップ特性を実現することができる。なお、アルミニウムやシリコンの酸化物も、エネルギーバンドギャップはそれぞれ4eV、8eVであるので、金属窒化物膜が酸化物となった場合であっても透明性を維持することが可能である。
請求項に記載の発明では、前記透明基板を含めた光線透過率が、波長400nm〜800nmの範囲において60%以上であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の透明積層体を提供する。
係る発明によれば、可視光域である波長400〜800nmの範囲で、透明基板を含めた光線透過率を60%以上とすることにより、透過光を利用するようなアプリケーションの前面板に適用することが可能となる。基本的に、SiN膜が、エネルギーバンドギャップが3.1eV以上の材料からなるものであれば、理論的に、可視光域において励起による吸収が現れることはない。
請求項5に記載の発明では、前記透明基板がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の透明積層体を提供する。
係る発明によれば、透明基板をプラスチックのようなフレキシブルな材料から構成することにより、衝撃によって破損するのを抑制でき、耐衝撃性に優れる透明積層体が得られる。また、透明基板をプラスチックフィルムで構成することにより、この透明基板上に薄膜を形成する際、ロールトゥロール方式によって連続的に大量生産することが可能となるので、生産コストを低減することが可能となる。
請求項6に記載の発明では、温度40℃、湿度90%Rhの環境下において、水蒸気透過率が0.5g/m ・day以下であり、酸素透過率が0.5cc/m ・day・atm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の透明積層体を提供する。
係る発明によれば、上記環境下における水蒸気透過率及び酸素透過率を上記規定範囲内とすることにより、透明積層体が用いられる電子デバイスの材料劣化を抑制することができる。透明基板をプラスチックフィルムで構成した場合、通常、プラスチック材料は水蒸気等のガスバリア性に乏しいため、特に、電子デバイスの材料劣化を引き起こすという問題がある。本発明では、セラミック薄膜層として上述のようなバリア性のSiO膜を用い、温度40℃、湿度90%Rhの環境下における透明積層体の水蒸気透過率を0.5g/m /day以下、酸素透過率を0.5cc/m ・day・atm以下とすることにより、透明基板にプラスチック材料を用いた場合であっても、SiO膜によって酸素や水蒸気の透過が抑制されるので、電子デバイスの材料の劣化を抑制することができ、ひいては、電子デバイスの高寿命化を図ることが可能となる。
請求項7に記載の発明では、さらに、少なくとも1層の透明導電性薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の透明積層体を提供する。
係る発明によれば、さらに、透明導電性薄膜を積層することにより、電子デバイスの基板として適用することが可能である。
請求項8に記載の発明では、請求項1〜7の何れか1項に記載の透明積層体を製造する方法であって、前記金属窒化物膜を、化学気相成長(CVD)法により、前記透明基板の温度を40℃以下としてSiNから形成し、前記セラミック薄膜層を、真空蒸着法、物理的気相析出法、又は化学気相成長(CVD)法により、前記透明基板の温度を前記金属窒化物膜の形成温度よりも高い温度としてSiOから形成することにより、前記透明基板上に、順次、SiO膜、SiN膜及びSiO膜を積層することを特徴とする透明積層体の製造方法を提供する。
係る発明によれば、透明積層体中に形成されるSiN膜を、確実に、酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中において、酸素や水蒸気を吸収して酸化される化学的に不安定な膜とすることができる。これにより、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気をSiN膜で吸収することができ、さらには酸素や水蒸気が透明積層体を透過するのを防止することが可能となる。
請求項に記載の発明では、請求項1〜の何れか1項に記載の透明積層体が用いられてなる電子デバイスを提供する。
係る発明によれば、上記本発明に係る透明積層体が用いられてなるものなので、透明積層体を透過した酸素や水蒸気、あるいは透明基板に含まれる酸素や水蒸気が、表示素子に到達するのを抑制できるので、表示素子が劣化するのを防止でき、表示特性に優れるとともに高寿命の電子デバイスを実現できる。
本発明の透明積層体によれば、酸化による化学反応で酸素及び水蒸気を吸収できるSiN膜が形成されてなるものなので、酸素や水蒸気が透過するのを抑制することができる。このような透明積層体を、表示装置のような電子デバイスの前面板として適用した場合には、表示素子が酸素や水蒸気によって劣化するのを防止でき、電子デバイスの表示特性が向上するとともに、高寿命化を図ることが可能になるという効果を奏するものである。
以下、本発明に係る透明積層体及びその製造方法、並びに電子デバイスの実施形態について、図1〜6を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照する図は、透明積層体及び電子デバイスの構成を分かり易く説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さ等の寸法は、実際の透明積層体及び電子デバイスの寸法関係と異なる場合がある。
本発明に係る透明積層体は、透明基板上に少なくとも1層の金属窒化物膜が形成されてなり、金属窒化物膜が、少なくとも酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中において酸化されうるものとして概略構成される。
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る透明積層体の第1の実施形態を説明する概略図である。図1に示す例の透明積層体1は、透明基板2の一方の面2aの上に、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されうる金属窒化物膜3が1層形成されてなる。
透明基板2は、その上に各薄膜が積層される、透明積層体の基材である。
透明基板2に用いられる材料としては、如何なる材料でも用いることができるが、特に高い透明性を要求される場合には、ガラス材料やプラスチックフィルム等を用いることが好ましく、この内、軽量であり、且つ耐衝撃性及び可撓性の点で優れるプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
プラスチックフィルムとしては、成膜工程及び後工程において耐え得るだけの充分な強度を有し、表面の平滑性が良好な材料であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアリレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリイミド等が挙げられる。特に、透明積層体を表示装置の前面板に適用する場合には、透明性と耐熱性に優れたポリカーボネートやポリエーテルサルホンが好適に用いられる。
透明基板2に用いるプラスチックフィルムの厚さは、部材の薄型化や基材の可撓性を考慮し、10〜200μm程度とすることが好ましい。
また、透明基板2の表面には、周知である種々の添加剤や安定剤、例えば、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤、易接着剤等による処理が施されていても良い。また、透明基板2上に成膜される薄膜との密着性を改善するため、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理等を施してもよい。
金属窒化物膜3は、上述したように、少なくとも酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されうるものであり、金属窒化物からなる薄膜である。
金属窒化物膜3は、AlN及び/又はSiNを主成分とする材料からなることが好ましい。金属窒化物膜3の材料として、アルミニウムやシリコンの窒化物を用いることにより、例えば、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気、あるいは、プラスチックフィルムからなる透明基板2に含有される酸素や水蒸気を効果的に吸収することができる。
透明基板2の一方の面2a上に金属窒化物膜3を形成する方法としては、如何なる方法でも用いることができるが、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されうる化学的に不安定な膜として金属窒化物膜3を形成するには、化学気相成長(CVD)法、なかでもプラズマCVD法を用いることが好ましい。また、金属窒化物膜3を形成する際の、透明基板2の温度は40℃以下とすることが好ましい。
プラズマCVD法を用いるとともに、炉内に設置される透明基板2の温度を40℃以下の低温に保持した状態で真空成膜を行なうことにより、金属窒化物膜3を、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されうる化学的に不安定な特性の膜とすることができ、また、再現性が良好で均一な薄膜が得られる。
透明基板2の温度を40℃超として金属窒化物膜を形成すると、上述のような化学的に不安定な特性が得られ難く、透明積層体を表示装置等の前面板に適用した場合に、大気中から浸入する酸素や水蒸気を効果的に吸収することができず、表示素子が劣化する虞がある。
本実施形態では、透明積層体1を、温度40℃、湿度90%Rhの雰囲気中で100時間曝露させた後の金属窒化物膜3が、曝露側の面(図1に示す金属窒化物膜3の一面3a)から50〜100nmの深さの範囲において金属窒化物膜3の酸化が進行し、曝露前の金属窒化物膜3がSiNである場合には、これがSiOに変化し、曝露前の金属窒化物膜3がAlNである場合には、これが、Alに変化するものに規定している。
金属窒化物膜3は、上述したように、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されるという、化学的に不安定な特性とされるものであるが、上記条件下での100時間の曝露による金属窒化物膜3の酸化進行の深さを上記規定範囲とすれば、大気中から浸入した酸素や水蒸気、あるいは、プラスチックフィルムからなる透明基板2に含有される酸素や水蒸気を効果的に吸収することが可能となる。
上記条件下における、金属窒化物膜の曝露側の面からの酸化進行の深さが50nm未満だと、上述のような化学的に不安定な特性とならず、透明積層体を表示装置等の前面板に適用した場合に、大気中から浸入する酸素や水蒸気を効果的に吸収することができず、表示素子が劣化する虞がある。
金属窒化物膜3は、そのエネルギーバンドギャップが3.1eV以上であることが好ましい。金属窒化物膜3をなす材料のネルギーバンドギャップが3.1eV以上であれば、理論的に可視光域において吸収のない薄膜とすることができ、優れた光透過性が得られる。
また、金属窒化物膜の材料として、上述のようなアルミニウムやシリコンの窒化物を用いることにより、上記エネルギーバンドギャップ特性を実現することができる。ここで、金属窒化物としては、例えば、BN(バンドギャップ:4〜7eV)、GaN(同:3.4eV)、AlN(同:6.2eV)、Si(同:5.1eV)等、様々な材料を選択して用いることができるが、材料の取り扱いの容易性や、大面積での成膜を行う場合等を考慮すると、AlNやSiを用いることが好ましい。
また、金属窒化物膜の材料としてSiを用いた場合には、それ自体が高いバリア性を有する膜となるので、この金属窒化物膜を通常のバリア基板として用いることも可能であり、この場合には、酸素や水蒸気の透過を効果的に防止することが可能となる。
なお、アルミニウムやシリコンの酸化物も、エネルギーバンドギャップはそれぞれ4eV、8eVであるので、金属窒化物膜が酸化物となった場合であっても透明性を維持することが可能である。
本実施形態では、透明基板2を含めた透明積層体1全体での光線透過率が、波長400nm〜800nmの範囲において60%以上であることが好ましい。可視光域波長における光線透過率を60%以上とすることにより、例えば液晶表示装置等、透過光を利用するようなアプリケーションの前面板に適用することが可能となる。
また、金属窒化物膜3を、上述したような、エネルギーバンドギャップが3.1eV以上の材料で構成すれば、理論的に、可視光域において励起による吸収が現れることはないので、透明積層体1全体での光線透過率をより向上させることが可能となる。
本実施形態の透明積層体1を、表示装置の前面板に適用した形態の一例について、図2を参照して説明する。
図2に示す表示装置(電子デバイス)20は、表示素子21の前面板として上記透明積層体1が備えられ、該透明積層体1は、金属窒化物膜3が表示素子21側に、透明基板2が大気側に配されている。本実施形態の表示装置20は、上記構成とすることにより、大気中に存在する酸素や水蒸気が透明基板2を透過し、表示素子21に向けて浸入した場合であっても、浸入した酸素や水蒸気が金属窒化物膜3によって吸収されるため、表示素子21が劣化するのを抑制できる。また、透明基板2をプラスチックフィルムから構成した際に、このプラスチックフィルムに含まれる酸素や水蒸気が漏れ出した場合であっても、これら酸素や水蒸気が金属窒化物膜3によって吸収されるため、表示素子21の劣化を抑制できる。
以上説明したような、本発明の第1の実施形態の透明積層体1によれば、透明基板2上に、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化され、化学的に不安定な金属窒化物膜3が形成されてなるものなので、酸素や水蒸気を吸収し、透過を抑制することができる。このような透明積層体1を、表示装置20のような電子デバイスの前面板として適用した場合には、表示素子21が酸素や水蒸気によって劣化するのを防止でき、表示装置20の表示特性が向上するとともに、高寿命化を図ることが可能となる。
[第2の実施形態]
図3〜5は、本発明に係る透明積層体の第2の実施形態を説明する概略図である。なお、図3〜5に示す本実施形態の透明積層体10〜12において、第1の実施形態の透明積層体1と共通する構成については、同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
本発明の第2の実施形態の透明積層体は、上記した第1の実施形態の透明積層体1に対して、さらに、透明基板2上に、セラミック薄膜層が少なくとも1層形成され、このセラミック薄膜層が、酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中で温度が100℃以下とされた条件において化学的に安定なものとして構成される。また、図3に示す例の透明積層体10は、透明基板2の一方の面2aの上に金属窒化物膜3が1層形成され、さらにその上に、セラミック薄膜層4が1層形成されている。
セラミック薄膜層4は、上述したように、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中で温度が100℃以下とされた条件において化学的に安定なものからなり、透明積層体10においてバリア膜として機能する薄膜である。
セラミック薄膜層4を構成する材料としては、特に限定されないが、アルミニウム(Al)及び/又はシリコン(Si)からなる酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、あるいはフッ化物の何れかを用いることが可能である。これらの中でも、酸化物、窒化物、あるいは酸窒化物を用いることが、セラミック薄膜層のバリア機能をさらに向上させることができる点から好ましい。
また、特に化学的に安定なセラミック薄膜層を得るためには、化学両論である酸化物を用いることや、製品使用温度以上の基板温度で薄膜を形成すること、あるいは成膜後に製品使用温度以上で薄膜をアニールすること等が挙げられるが、セラミック薄膜層の化学的安定性を高める方法はこれらに限定されず、適宜採用することができる。
セラミック薄膜層4を形成する方法としては、膜厚を制御することが可能な方法であれば、如何なる成膜方法を採用しても良く、特に、薄膜の成膜効率や膜質に優れる乾式法を用いることが好ましい。また、このような乾式法を用いた成膜方法において、真空蒸着法やスパッタリング等の物理的気相析出法、プラズマCVD法のような化学的気相析出法等を適宜採用することができる。
本実施形態の透明積層体10によれば、透明基板2上において、化学的に安定したバリア膜として機能するセラミック薄膜層4を金属窒化物膜3上に積層することにより、金属窒化物膜3に到達する酸素や水蒸気の量を低減するようにコントロールすることができ、金属窒化物膜3が有するバリア膜機能を補完することが可能となる。
なお、図3に示す例の透明積層体10では、透明基板2の一方の面2aの上に、金属窒化物膜3が1層形成され、さらにその上に、セラミック薄膜層4が1層形成された構成としているが、本実施形態ではこれには限定されない。例えば、図4に示すように、金属窒化物膜3と透明基板2の間に1層のセラミック薄膜層4が積層された透明積層体11として構成しても良い。また、図5に示すように、2層のセラミック薄膜層41、42が金属窒化物薄膜3の上下面に配された透明積層体12として構成としても良い。
このように、透明基板2上におけるセラミック薄膜層の形成数や位置を適宜選択することにより、透明積層体において、金属窒化物膜3に吸収させる酸素や水蒸気の方向性を制御することが可能となる。
図4に示すように、金属窒化物膜3と透明基板2の間にセラミック薄膜層4を積層した場合には、透明積層体11の大気側(図4において透明基板2の下側)から浸入する酸素や水蒸気が表示素子側(図4において金属窒化物膜3の上側)に流入するのを、セラミック薄膜層4によって抑制できる。そして、このセラミック薄膜層4から僅かに流出した酸素や水蒸気を、金属窒化物膜3で吸収させることができる。これにより、表示装置に用いられる表示素子の劣化を防止することが可能となる。
一方、図5に示すように、2層のセラミック薄膜層41、42を金属窒化物薄膜3の上下面に配し、金属窒化物膜3の大気側(図5において透明基板2の下側)にもセラミック薄膜層を積層した場合には、プラスチックフィルムからなる透明基板2から漏洩する酸素や水蒸気が表示素子側(図5においてセラミック薄膜層42の上側)に流出するのを、セラミック薄膜層41によって抑制できる。そして、このセラミック薄膜層41から僅かに流出した酸素や水蒸気を金属窒化物膜3で吸収させることができる。この際、金属窒化物膜3に積層されたセラミック薄膜層42のバリア機能により、酸素や水蒸気を漏らさず高効率で吸収させることができる。これにより、表示装置に用いられる表示素子の劣化を、より確実に防止することが可能となる。
また、上述したように、金属窒化物膜を化学的に不安定な特性とし、酸素分子や水分子が存在する雰囲気中において酸化されうる作用を持たせるためには、金属窒化物膜を成膜する際の透明基板の温度を40℃以下とする必要がある。一方、セラミック薄膜層は、金属窒化物膜よりも高い成膜温度とする必要がある。このため、透明基板上に各層を積層する工程においては、透明積層体の層構成によって制限はあるが、セラミック薄膜層を金属窒化物膜よりも先に形成することが、金属窒化物膜の酸素や水蒸気の吸収作用を確保する点から好ましい。
[第3の実施形態]
図6は、本発明に係る透明積層体の第3の実施形態を説明する概略図である。なお、本実施形態の透明積層体10において、第1の実施形態の透明積層体1及び第2の実施形態の透明積層体10〜12と共通する構成については、同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
本発明の第3の実施形態の透明積層体は、上記した第1の実施形態の透明積層体1、あるいは第2の実施形態の透明積層体10〜12に対して、さらに、透明基板2上に、少なくとも1層の透明導電性薄膜が形成された構成とされている。また、図6に示す例の透明積層体15は、透明基板2の一方の面2aの上にセラミック薄膜層42が形成され、透明基板2の他方の面2bに金属窒化物膜3が1層形成され、この金属窒化物膜3の一方の面3aに積層して、セラミック薄膜層41及び透明導電性薄膜5がこの順で形成されている。
透明導電性薄膜5は、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズの何れか、又は、それらの内の2種類もしくは3種類の混合酸化物、さらには、その他添加物が加えられた物等を用いることができるが、目的や用途によって種々の材料を採用することができ、上記材料に限定されるものではない。
透明導電性薄膜5として、最も一般的な材料である酸化インジウムスズ(ITO)を用いる場合、酸化インジウムにドープされる酸化スズの含有比は、透明積層体が用いられる電子デバイスに求められる仕様に応じて任意の割合を選択することができる。例えば、機械的強度を高める目的で透明導電性薄膜5を結晶化させるためには、酸化スズの含有比を10質量%未満とすることが好ましく、アモルファス化してフレキシブル性を持たせるためには、酸化スズの含有比を10質量%以上とすることが好ましい。また、透明導電性薄膜5に低抵抗が求められる場合には、酸化スズの含有比を3〜20質量%の範囲とすることが好ましい。
上述のような透明導電性薄膜5を積層することにより、透明積層体15を、表示装置等の各種電子デバイスの基板として容易に適用することができる。
また、上記本発明に係る透明積層体を各種電子デバイスに適用することにより、透明積層体を透過した酸素や水蒸気、あるいは透明基板に含まれる酸素や水蒸気が、表示素子に到達するのを抑制できるので、表示素子が劣化するのを防止でき、表示特性に優れるとともに高寿命の電子デバイスを実現できる。
なお、本発明に係る透明積層体では、上述したような金属窒化物薄膜、セラミック薄膜、透明導電性薄膜以外にも、必要に応じて、さらに、有機膜等を用いたアンダーコート、あるいはオーバーコートを形成しても良い。有機膜をなす材料としては、透明性や適度な硬度、機械的強度を有するものであれば良く、アクリル系樹脂、有機シリコン系樹脂、ポリシロキサン等の樹脂材料を用いることができる。このような有機膜を塗工する際のウェットプロセスとしては、マイクログラビア、スクリーン等の各種コーティング方法を用いることができる。また、有機層を塗工する際、塗工液に樹脂フィラーや無機フィラーを混合することにより、高硬度化や易滑化を図ることも可能である。
一方、有機蒸着法によってオーバーコート層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート又はメタクリレート、もしくはそれらの混合樹脂溶液を有機物蒸着装置で蒸発させ、コーティングドラム上のフィルム上に凝縮させた後、電子線照射装置にて硬化処理を行う方法と用いることができる。また、この際、電子線硬化の代わりに紫外線硬化を用いることも可能である。
次に、本発明の透明積層体及び電子デバイスを、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、図1に示すような透明積層体のサンプルを以下の手順で作成し、後述する試験方法によって評価した。
まず、40℃の温度に保持したポリエーテルサルホン(PES)からなる透明基板上に、原料ガスとしてSiH、NH、Hを用い、RF電源を用いたプラズマCVD法によって、約118nmの窒化シリコン(SiN)からなる金属窒化物膜を形成し、実施例1のサンプルを作製した。
次いで、X線光電子分光分析法(XPS)を用いて、実施例1のサンプルの成分組成を測定した。この際、XPS測定器として、(株)島津製作所製:ESCA3200を使用し、照射X線源出力を5kV、20mAの条件とした。また、測定の際のエッチング条件は、エッチングガスにArガスを用い、ガス圧を5×10−4Paとし、また、試料電流を14μA、エッチング面積を直径5mmφの円内とした。
そして、以下に示す各条件で、実施例1のサンプルを大気中に放置して酸素分子や水分子が存在する雰囲気中に曝露させ、所定時間経過後の成分組成をXPSによって測定した。
(1)成膜直後に測定。
(2)成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で24時間放置した後に測定。
(3)成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で48時間放置した後に測定。
(4)成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で72時間放置した後に測定。
(5)成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で96時間放置した後に測定。
図7〜11に、上記(1)〜(5)に示す条件における測定結果のグラフを示す。
図7のグラフに示すように、上記(1)の条件であるSiN成膜直後の測定結果では、PESからなる透明基板上において、SiNからなる膜(金属窒化物膜)が存在していることが確認できる。
また、図8のグラフに示すように、上記(2)の条件であるSiN成膜後に24時間放置した後の測定結果では、SiN膜の両面側、つまり、透明基板側及び大気曝露側の両方から、SiOからなる膜が形成されている様子が確認できる。これは、SiN膜が、酸素分子や水分子が存在する環境下において、徐々に酸化されたためと考えられる。
また、図9のグラフに示すように、上記(3)の条件であるSiN成膜後に48時間放置した後の測定結果では、上記(2)の条件の場合と同様、SiN膜の両面側、つまり、透明基板側及び大気曝露側の両方から、SiOからなる膜が形成されている様子が確認できる。しかしながら、上記(3)の条件では、図9に示すように、上記(2)の条件と比べてSiOの量が多くなっていることが確認できる。これは、SiN膜が、酸素分子や水分子が存在する環境下において、さらに長時間放置されたため、SiNの酸化が進行したものと考えられる。
また、図10のグラフに示すように、上記(4)の条件であるSiN成膜後に72時間放置した後の測定結果では、SiN膜がほぼ完全に酸化されてSiO膜となっていることが確認でき、また、図11に示すように、上記(5)の条件であるSiN成膜後に96時間放置した後の測定結果においても同様の測定結果となっている。図10及び図11のグラフに示すように、上記(4)及び(5)の条件では、本実施例で形成されたSiN膜が、酸素分子や水分子が存在する環境下において完全に酸化されることが明らかである。
なお、上記(4)及び(5)の条件でのXPS測定では、図10及び図11に示すように、PESからなる透明基板の成分組成が確認されないグラフとなっている。これは、SiN膜が酸化されてSiO膜に変化したことにより、XPSにおけるエッチングレートが低下したことによるものと考えられる。
[比較例1]
本比較例では、SiNからなる膜を形成する際、PESからなる透明基板を130℃と高い温度に保持して成膜処理を行なった点を除き、実施例1と同様の手順で比較例1の透明積層体サンプルを作製し、実施例1と同様の方法を用いて透明積層体の成分組成を測定した。
図12〜16に、比較例1のサンプルを用いて、上記(1)〜(5)に示す条件で酸素分子や水分子が存在する雰囲気中に曝露させた後、成分組成をXPSによって測定した結果のグラフを示す。
図12のグラフに示すように、上記(1)の条件であるSiN成膜直後の測定結果では、PESからなる透明基板上において、SiNからなる膜(金属窒化物膜)が存在していることが確認できる。
また、図13のグラフに示すように、上記(2)の条件であるSiN成膜後に24時間放置した後の測定結果においても、SiN膜が存在している様子が確認され、上記(1)の条件と変化がないことが明らかである。さらに、図14〜16のグラフに示すように、上記(3)〜(5)の条件であるSiN成膜後に48〜96時間放置した後の測定結果においても、SiN膜が存在している様子が確認され、上記(1)の条件と変化がないことが明らかとなった。
上記結果より、透明基板の温度が40℃と低温に保持された状態でSiN膜(金属窒化物膜)が形成されてなる、本発明に係る実施例1の透明積層体は、SiN膜が、酸素や水蒸気が存在する雰囲気中において容易に酸化が進行することが確認できた。この結果により、本発明に係る実施例1の透明積層体は、透明基板や他の薄膜を透過した酸素や水蒸気をSiN膜によって吸収することができ、さらには酸素や水蒸気が透明積層体を透過するのを防止することができることが明らかである。
これに対し、透明基板が130℃と非常に高い温度に保持された状態でSiN膜が形成された比較例1の透明積層体では、温度60℃、湿度90%Rhの高温多湿の環境下で96時間放置された場合でも、SiN膜の酸化が進行しないことが確認された。これにより、比較例1のように、酸素や水蒸気を吸収できないSiN層が形成された透明積層体を表示装置等の電子デバイスに用いた場合には、大気中に含まれる酸素や水蒸気や、透明基板に含まれる酸素や水蒸気を吸収して浸入を素子することができず、表示素子が劣化する虞があることがわかる。
[実施例2]
本実施例では、図3に示すような透明積層体のサンプルを以下の手順で作成した。
まず、40℃の温度に保持したPESからなる透明基板上に、原料ガスとしてSiH、NH、Hを用い、RF電源を用いたプラズマCVD法によって、約50nmのSiNからなる金属窒化物膜を形成した後、さらに、透明基板の温度を120℃に昇温させ、同様の手順によって約50nmのSiNからなるセラミック薄膜層を形成し、実施例2の透明積層体のサンプルとした。
得られた実施例2の透明積層体のサンプルについて、波長が400〜800nmの可視光域における平均の光線透過率を測定したところ83.5%の透過率を示し、また、40℃、90%Rhにおける水蒸気透過率は0.01g/m・day以下であり、優れた透光性とバリア性を併せ持つ透明積層体であることが確認できた。
そして、ボトムエミッションタイプの有機EL素子の封止缶の代替として、実施例2の透明積層体をエポキシ樹脂接着剤によって素子に接着したところ、60℃、90%Rhの環境下において1000時間放置した後も、素子のダークスポットの拡大が見られず、良好なバリア性能を備えていることが確認できた。このような試験を行った後、透明積層体の成分組成を分析したところ、SiN膜が、透明基板に近いところから酸化が進行していることが確認された。これは、吸水率の高いPESからなる透明基板から拡散した水分子を、SiN膜が吸収、トラップしたことにより、素子への到達を防いだことを示しているものと考えられる。
[比較例2]
本比較例では、上記実施例2に対する比較例として、SiNからなる膜を形成する際、PESからなる透明基板を120℃と高い温度に保持し、また、形成されるSiN層(金属窒化物膜)を1層として厚さを約100nmとした点を除き、実施例2と同様の手順で比較例2の透明積層体のサンプルを作製した。
得られた比較例2の透明積層体のサンプルについて、波長が400〜800nmの可視光域における平均の光線透過率を測定したところ82.5%の透過率を示し、また、40℃、90%Rhにおける水蒸気透過率は0.01g/m・day以下であり、透光性とバリア性に関しては優れている透明積層体であることが確認できた。
そして、ボトムエミッションタイプの有機EL素子の封止缶の代替として、比較例2の透明積層体をエポキシ樹脂接着剤によって素子に接着したところ、60℃、90%Rhの環境下において500時間放置した後から、素子のダークスポットが次第に拡大することが確認された。このような試験を行った後、透明積層体の成分組成を分析したところ、SiN膜自体が化学的に安定な特性であり、酸化されていないことが確認された。つまり、基板から発生した水分子が次第にSiN層(金属窒化物膜)中に拡散、透過して素子に到達し、素子が劣化してしまったことを示している。
[実施例3]
本実施例では、図6に示すような透明積層体のサンプルを以下の手順で作成した。
まず、40℃の温度に保持したPESからなる透明基板の片面(図6に示す符号2b参照)に、原料ガスとしてSiH、NH、Hを用い、RF電源を用いたプラズマCVD法によって、約50nmのSiNからなる金属窒化物膜を形成した後、さらに、透明基板の温度を120℃に昇温させ、同様の手順によって約50nmのSiNからなるセラミック薄膜層を形成した。次いで、さらに、透明基板の他面(図6に示す符号2a参照)にも、透明基板の温度を120℃とし、同様の手順によって約50nmのSiNからなるセラミック薄膜層を形成した。そして、40℃の基板温度で形成したSiNからなる金属窒化物膜(図6に示す符号41参照)に、さらに、SnO含有量が10wt%とされたITOからなる透明導電性薄膜(図6に示す符号5参照)を150nmの厚さで形成し、実施例3の透明積層体のサンプルとした。
得られた実施例3の透明積層体のサンプルについて、波長が400〜800nmの可視光域における平均の光線透過率を測定したところ75%の透過率を示し、また、40℃、90%Rhにおける水蒸気透過率は0.01g/m・day以下であり、優れた透光性とバリア性を併せ持つ透明積層体であることが確認できた。
そして、この透明基板上に形成された透明導電性薄膜を電極パターニングした後、この透明導電性薄膜上にトップエミッションタイプの有機EL素子を形成したところ、60℃、90%Rhの環境下において1000時間放置した後も、素子のダークスポットの拡大が見られず、良好なバリア性能を備えていることが確認できた。
[比較例3]
本比較例では、上記実施例3に対する比較例として、SiNからなる金属窒化物膜(図6に示す符号3参照)を形成する際の、PESからなる透明基板を120℃と高い温度に保持した点を除き、上記実施例3と同様の手順で、SnO含有量が10wt%とされたITOからなる透明導電性薄膜(図6に示す符号5参照)を150nmの厚さで形成されてなる、比較例3の透明積層体のサンプルを作製した。
得られた比較例3の透明積層体のサンプルについて、波長が400〜800nmの可視光域における平均の光線透過率を測定したところ74%の透過率を示し、また、40℃、90%Rhにおける水蒸気透過率は0.01g/m・day以下であり、透光性とバリア性に関しては優れている透明積層体であることが確認できた。
そして、この透明基板上に形成された透明導電性薄膜を電極パターニングした後、この透明導電性薄膜上にトップエミッションタイプの有機EL素子を形成したところ、60℃、90%Rhの環境下において250時間放置した後から、素子のダークスポットが拡大していることが確認された。
上記実施例の結果より、本発明に係る透明積層体が、金属窒化物膜によって酸素や水蒸気を吸収することができ、このような透明積層体を表示装置等の電子デバイスの前面板として適用することにより、素子が劣化するのを防止できることが明らかとなった。
本発明の透明積層体の一例を説明するための模式図であり、透明基板の一方の面に金属窒化物膜が形成された状態を示す断面図である。 本発明の透明積層体が用いられてなる電子デバイスの一例を説明するための模式図であり、表示素子の前面に透明積層体が備えられた状態を示す断面図である。 本発明の透明積層体の一例を説明するための模式図であり、透明基板の一方の面に、金属窒化物膜及びセラミック薄膜層がこの順で積層された状態を示す断面図である。 本発明の透明積層体の一例を説明するための模式図であり、透明基板の一方の面に、セラミック薄膜層及び金属窒化物膜がこの順で積層された状態を示す断面図である。 本発明の透明積層体の一例を説明するための模式図であり、透明基板の一方の面に、2層のセラミック薄膜層が金属窒化物薄膜の上下面に配された状態を示す断面図である。 本発明の透明積層体の一例を説明するための模式図であり、透明基板の一方の面に1層のセラミック薄膜層を積層し、透明基板の他方の面に、金属窒化物膜、セラミック薄膜層及び透明導電性薄膜がこの順で積層された状態を示す断面図である。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、透明基板上に金属窒化物膜を成膜した直後に測定した、透明積層体の成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、透明基板上に金属窒化物膜を成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で24時間放置した後に測定した透明積層体の成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、透明基板上に金属窒化物膜を成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で48時間放置した後に測定した透明積層体の成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、透明基板上に金属窒化物膜を成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で72時間放置した後に測定した透明積層体の成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、透明基板上に金属窒化物膜を成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で96時間放置した後に測定した透明積層体の成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、比較例の透明積層体を用いて、透明基板上への金属窒化物膜の成膜直後に測定した成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、比較例の透明積層体を用いて、透明基板上への金属窒化物膜の成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で24時間放置した後に測定した成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、比較例の透明積層体を用いて、透明基板上への金属窒化物膜の成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で48時間放置した後に測定した成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、比較例の透明積層体を用いて、透明基板上への金属窒化物膜の成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で72時間放置した後に測定した成分組成を表すグラフである。 本発明の透明積層体の実施例を説明するための模式図であり、比較例の透明積層体を用いて、透明基板上への金属窒化物膜の成膜後、温度60℃、湿度90%Rhの環境下で96時間放置した後に測定した成分組成を表すグラフである。
符号の説明
1、10、11、12、15…透明積層体、2…透明基板、2a…一方の面、3…金属窒化物膜、4…セラミック薄膜層、5…透明導電性薄膜

Claims (9)

  1. 透明基板上に少なくとも属窒化物膜及びセラミック薄膜層が形成されてなる透明積層体であって、
    前記金属窒化物膜がSiN膜であり、前記セラミック薄膜層がSiO膜であるとともに、前記透明基板上に、順次、SiO膜、SiN膜及びSiO膜が積層されており、
    前記SiN膜が、少なくとも酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中において、酸素や水蒸気を吸収して酸化される化学的に不安定なものであり、且つ、前記SiO膜が、酸素分子及び/又は水分子が存在する雰囲気中で温度が100℃以下とされた条件において、酸素や水蒸気に対して化学的に安定なバリア膜であることを特徴とする透明積層体。
  2. 温度40℃、湿度90%Rhの雰囲気中で100時間曝露させた後の前記SiN膜が、曝露側の面から50〜100nmの深さの範囲において、SiNがSiO 変化するものであることを特徴とする請求項に記載の透明積層体。
  3. 前記SiN膜のエネルギーバンドギャップが3.1eV以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明積層体。
  4. 前記透明基板を含めた光線透過率が、波長400nm〜800nmの範囲において60%以上であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の透明積層体。
  5. 前記透明基板がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の透明積層体。
  6. 温度40℃、湿度90%Rhの環境下において、水蒸気透過率が0.5g/m・day以下であり、酸素透過率が0.5cc/m・day・atm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の透明積層体。
  7. さらに、少なくとも1層の透明導電性薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の透明積層体。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の透明積層体を製造する方法であって、
    前記金属窒化物膜を、化学気相成長(CVD)法により、前記透明基板の温度を40℃以下としてSiNから形成し、前記セラミック薄膜層を、真空蒸着法、物理的気相析出法、又は化学気相成長(CVD)法により、前記透明基板の温度を前記金属窒化物膜の形成温度よりも高い温度としてSiOから形成することにより、前記透明基板上に、順次、SiO膜、SiN膜及びSiO膜を積層することを特徴とする透明積層体の製造方法
  9. 請求項1〜の何れか1項に記載の透明積層体が用いられてなる電子デバイス。
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