本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、移動体本体と、
前記移動体本体の上方に支持され、かつ、搭乗者の背中を支持する背もたれと、 前記移動体本体の上方でかつ前記背もたれの下方に配置され、かつ、前記搭乗者
の臀部を支持する座部と、
前記移動体本体の下部に回転可能に支持された複数の駆動車輪と、
前記移動体本体の下部に配置されて前記複数の駆動車輪を駆動して、前記移動体本体を前進、後退、又は、旋回させる駆動部と、
前記背もたれのかつ前記搭乗者の左右の肩甲骨が接触する部分に配置された背もたれ用姿勢センサと、
前記姿勢センサが前記搭乗者の姿勢の変化を検知することで、前記搭乗者の操作意図を判定する、接触位置依存型の操作意図判定部と、
前記操作意図判定部で前記搭乗者の操作意図があると判定される場合のみ、前記背もたれ用姿勢センサから出力した、前記搭乗者の左右の肩甲骨がそれぞれ接触する部分の圧力値の差が着座確認閾値を越えるか否か判定し、前記圧力値の差が前記着座確認閾値を越えると判定するとき、前記搭乗者の左又は右への回転の意図があると判定する、左右変化量比較型の回転意図判定部と、
前記回転意図判定部で判定された前記搭乗者の左又は右への回転の意図に従って、前記駆動部を駆動制御する駆動制御部と、
を備えることを搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、背もたれの姿勢センサを、搭乗者の左右肩甲骨が接触する位置付近に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまったときに移動体が誤って左右回転又は移動動作することがなく、安定して意図判定を行うことが可能な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第2態様によれば、前記背もたれ用姿勢センサが配置されている、前記背もたれの部分でかつ、前記搭乗者の左右の肩甲骨が接触する部分とは、前記搭乗者の左右の肩甲骨が接触する領域である、第1の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
本発明の第3態様によれば、前記背もたれ用姿勢センサは、
前記搭乗者の左右肩甲骨と、さらに各々の肩甲骨の幅で背中肋骨が位置する背中部分とを含む背もたれ左右上部が接触可能な部分に配置される、
第1又は第2の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
本発明の第4態様によれば、前記座部の前記搭乗者の前記臀部が接触する部分に配置された座部用姿勢センサをさらに備える、
第1〜第3の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
本発明の第5態様によれば、前記回転意図判定部は、前記姿勢センサが前記搭乗者の左右肩甲骨から背中肋骨に至る部分から受ける圧力の大きさと、前記圧力が一定以上の値を示す領域の広さとの関係情報から、前記搭乗者の回転意図を判定する、
第1〜第4の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、背もたれの姿勢センサを、搭乗者の左右肩甲骨が接触する位置付近に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまったときに移動体が誤って左右回転又は移動動作することがなく、安定して意図判定を行うことが可能な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第6態様によれば、前記操作意図判定部は、前記背もたれ用姿勢センサの圧力の大きさが背もたれ圧力用着座確認閾値を越えるか又は一定以上の値を示す領域の広さが背もたれ領域用着座確認閾値を越える場合で、かつ、前記座部用姿勢センサの圧力の大きさが座部圧力用着座確認閾値を越えるか又は一定以上の圧力を示す領域の広さが座部領域用着座確認閾値を越える場合に操作意図が有ると判定し、
前記回転意図判定部は、前記操作意図判定部で操作意図があると判定され、かつ前記搭乗者の左右の肩甲骨がそれぞれ接触する部分において、前記背もたれ用姿勢センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値の左右差が前記着座確認閾値を越えるときに、前記搭乗者の左右への回転の意図があると判定する、
第1〜第5の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記第5態様までの搭乗型移動体の効果に加え、さらに、搭乗者が安定な搭乗状態で搭乗していることも確認できるため、左右回転制御を行っても、搭乗者の安全が保障できる。
本発明の第7態様によれば、前記搭乗者の腰椎が位置する背中部分が接触する前記背もたれ部の一部に接触可能な背もたれ中央下部用姿勢センサをさらに備えて、
前記操作意図判定部は、前記背もたれ中央下部用姿勢センサの圧力の大きさが背もたれ中央下部圧力用閾値を越えるか又は一定以上の値を示す領域の広さが背もたれ中央下部領域用閾値を越える場合で、かつ、前記座部用姿勢センサの圧力の大きさが座部圧力用閾値を越えるか又は一定以上の圧力を示す領域の広さが座部領域用閾値を越える場合に操作意図が有ると判定し、
前記回転意図判定部は、前記操作意図判定部で操作意図があると判定され、かつ前記搭乗者の左右の肩甲骨がそれぞれ接触する部分において、前記背もたれ用姿勢センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値の左右差が前記着座確認閾値を越えるときに、前記搭乗者の左右への回転の意図があると判定する、
第1〜第5の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記第5態様までの搭乗型移動体の効果に加え、さらに、搭乗者が安定な搭乗状態で搭乗していることも確認できるため、左右回転制御を行っても、搭乗者の安全が保障できる。
本発明の第8態様によれば、前記操作意図判定部は、前記背もたれ中央下部用姿勢センサ及び前記座部用姿勢センサからのセンサ圧力の大きさが背もたれ中央下部圧力用着座確認閾値を越えるか又は一定以上の値を示す領域の広さが背もたれ中央下部領域用着座確認閾値を越える場合に、操作意図があると判定し、
前記操作意図判定部で操作意図があると判定され、かつ、前記背もたれ用姿勢センサであって前記搭乗者の左右の肩甲骨がそれぞれ接触する部分の前記背もたれ用姿勢センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値の左右差が前記着座確認閾値を越えている場合に、前記搭乗者の左右への回転の意図があると判定する、
第1〜第5の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記第5態様までの搭乗型移動体の効果に加え、さらに、搭乗者が安定な搭乗状態で搭乗していることも確認できるため、左右回転制御を行っても、搭乗者の安全が保障できる。
本発明の第9態様によれば、前記搭乗者の搭乗姿勢によって異なる前記姿勢センサの圧力分布状況を、前記姿勢センサが一定以上の値を示す領域の広さを用いて分析する搭乗姿勢判定部と、
前記搭乗姿勢判定部で分析された前記姿勢センサからの出力値の分布状況を用いて前記姿勢センサの出力値の重みを決定する重み決定部とをさらに備えて、
前記操作意図を判定する前記操作意図判定部又は前記搭乗者の左右への回転の意図を判定する前記回転意図判定部の少なくともどちらかの判定処理において、前記姿勢センサの出力値に対して前記重み決定部で重み付けを行った前記姿勢センサの出力値を用いる、第1〜8のいずれか1つの態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
本発明の第10態様によれば、前記背もたれ用姿勢センサと前記座部用姿勢センサの各々のセンサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値を比較することで搭乗姿勢の違いを判定する搭乗姿勢判定部と、
前記搭乗者の前記背もたれ左右上部に接触可能に配置された前記背もたれ用姿勢センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値及び前記座部用姿勢センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値が定められた一定範囲にある場合に、各センサの圧力総和値をさらに総和した全体圧力総和値又は各センサの最大圧力総和値に対する各センサの圧力総和値の比率を用いて各々のセンサへの重みを決定する重み決定部とをさらに備えて、
前記回転意図判定部は、前記重み決定部で決定された重みにて重み付けを行った前記背もたれ用姿勢センサの左右の圧力総和値の差を用いて、前記搭乗者の左右への回転の意図を判定する左右変化量比較型の回転意図判定部にて形成する、
第1〜第9の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記第9態様までの搭乗型移動体の効果に加え、さらに、搭乗者ごとの搭乗姿勢の違いを考慮して、姿勢センサ毎に重み付けを行ったセンサ出力値を用いて、操作の意図及び左右回転の意図を判断することにより、搭乗者による着座の姿勢の違いによる判断精度の低下をさらに改善し、より高精度な操作の意図の判断を可能にする。
本発明の第11態様によれば、前記背もたれ用姿勢センサと前記背もたれ中央下部姿勢センサの各々のセンサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値を比較することで搭乗姿勢の違いを判定する搭乗姿勢判定部と、
前記搭乗者の前記背もたれ左右上部に接触可能に配置された前記背もたれ用姿勢センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値及び前記背もたれ中央下部用姿勢センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値が定められた一定範囲にある場合に、各センサの圧力総和値をさらに総和した全体圧力総和値又は各センサの最大圧力総和値に対する各センサの圧力総和値の比率を用いて各々のセンサへの重みを決定する重み決定部とをさらに備えて、
前記回転意図判定部は、前記重み決定部で決定された重みにて重み付けを行った前記背もたれ用姿勢センサの左右の圧力総和値の差を用いて、前記搭乗者の左右への回転の意図を判定する左右変化量比較型の回転意図判定部にて形成する、
第1〜第9の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記の第9態様までの搭乗型移動体の効果に加え、さらに、搭乗者ごとの搭乗姿勢の違いを考慮して、姿勢センサ毎に重み付けを行ったセンサ出力値を用いて、操作の意図及び左右回転の意図を判断することにより、搭乗者による着座の姿勢の違いによる判断精度の低下をさらに改善し、より高精度な操作の意図の判断を可能にする。
本発明の第12態様によれば、前記重み決定部は、前記座部用姿勢センサ、前記背もたれ中央下部用姿勢センサ、又は前記背もたれ用姿勢センサからの出力値が測定上限を表す閾値を超える場合に、該当するセンサの重みを他のセンサの重みと比較して小さくするか又はゼロとし、
前記回転意図判定部は、前記重み決定部により決定された前記重みにて重み付けを行った前記背もたれ用姿勢センサの出力値を用いて左右回転の意図を判定する、第9〜第11の態様のいずれか1つに記載の移動体を提供する。
このような構成により、前記の第9〜第11態様までの搭乗型移動体の効果に加え、さらに、搭乗者ごとの搭乗姿勢の違いを考慮して、姿勢センサ毎に重み付けを行ったセンサ出力値を用いて、操作の意図及び左右回転の意図を判断することにより、搭乗者による着座の姿勢の違いによる判断精度の低下を改善し、より高精度な操作の意図の判断を可能にする。
本発明の第13態様によれば、前記搭乗姿勢判定部にて分析した結果、前記座部用姿勢センサの出力値が着座確認閾値以下の場合に前記搭乗者に対して前記座部に接触した搭乗を促す通知を行う通知部をさらに備える、
第1〜12のいずれか1つの態様に記載の移動体を提供する。
この構成により、前記の第1から第12態様の搭乗型移動体の効果に加え、さらに、搭乗者の移動中の搭乗姿勢が座部のセンサの出力値が極端に小さい場合は、搭乗者が座部に着座せず、立位あるいは背もたれのみに寄りかかった不安定な姿勢で搭乗している可能性があるので、座部に着座するように通知することにより、操作の意図の判断精度が向上するだけでなく、事故の無い安全な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第14態様によれば、前記移動体本体の前部に支持され、かつ、前記搭乗者の足裏を支持する足置きをさらに備える、
第1〜第13の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
本発明の第15態様によれば、前記搭乗者の少なくとも脊椎部あるいは腰椎部と接触可能な前記背もたれ部分は、前記搭乗者の接触の有無にかかわらず固定化された固定背もたれ部と、前記背もたれ用姿勢センサの部分は前記搭乗者の接触により可動可能な可動背もたれ部とを有する、
第1〜第14の態様のいずれか1つに記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記第1〜第14態様の効果に加え、さらに、背もたれ姿勢センサを可動部に設置することで、搭乗者自身が搭乗者の回転意図が移動体に伝わったことを知ることができ、かつ、移動体の周辺にいる人たちも、搭乗者の回転意図を目視で判断できるので、より安心で安全に移動体の回転制御を行うことができる。
本発明の第16態様によれば、前記左右各々の可動背もたれ部の正面は、前記固定背もたれ部の正面と略同一平面上に設けられ、
前記左右各々の可動背もたれ部の変位の主方向は、前記平面に対して垂直な方向である第15の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記第15態様の効果に加え、さらに、背もたれ姿勢センサを可動部に設置することで、搭乗者自身が搭乗者の回転意図が移動体に伝わったことを知ることができ、かつ、移動体の周辺にいる人たちも、搭乗者の回転意図を目視で判断できるので、より安心で安全に移動体の回転制御を行うことができる。
本発明の第17態様によれば、前記駆動制御部は、前記左右各々の可動背もたれ部の変位を距離にそれぞれ換算し、前記距離の変化量に応じて駆動指令を変更する第15又は16の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記第15又は16態様の効果に加え、さらに、背もたれ姿勢センサを可動部に設置することで、搭乗者自身が搭乗者の回転意図が移動体に伝わったことを知ることができ、かつ、移動体の周辺にいる人たちも、搭乗者の回転意図を目視で判断できるので、より安心で安全に移動体の回転制御を行うことができる。
本発明の第18態様によれば、前記可動背もたれ部と前記固定背もたれ部とは、それぞれ、弾性体によって連結されて、前記搭乗型移動体本体に対して移動可能となっている第15〜17のいずれか1つの態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、前記第15から17態様の効果に加え、さらに、背もたれ姿勢センサを可動部に設置することで、搭乗者自身が搭乗者の回転意図が移動体に伝わったことを知ることができ、かつ、移動体の周辺にいる人たちも、搭乗者の回転意図を目視で判断できるので、より安心で安全に移動体の回転制御を行うことができる。
本発明の第19態様によれば、前記背もたれ面と直交する前記移動体本体の進行方向に対する側面から見た状態で、前記背もたれの前記背もたれ面は、後傾しており、その傾斜角度は鉛直面となす角度が10度であり、前記背もたれと前記臀部支持部の前記座面とのなす角度は135度である、
第1〜18のいずれか1つの態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
本発明の第20態様によれば、前記足置きの前記足置き面は後傾しており、その角度は水平面となす角度が10度であり、前記背もたれの前記背もたれ面と前記足置きの前記足置き面とのなす角度は90度である、
第1〜19のいずれか1つの態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
本発明の第21態様によれば、搭乗者の姿勢変動によって操作し、かつ前記搭乗者が搭乗したとき略立位となるように設けられた座部と背もたれ部とを備え、
前記背もたれ部は、前記搭乗者の体幹に接触可能な位置に配置され、立位乗車移動体本体に固定される固定背もたれ部と、前記略立位となる前記搭乗型移動体本体に対して移動可能でありかつ前記搭乗者の姿勢変形に追随可能な可動背もたれ部を備え、
前記可動背もたれ部は、前記固定背もたれ部に対して左右対称に配置されていて、左右の可動変位を背もたれ用姿勢センサで検知し、
駆動制御部により、前記センサでそれぞれ検知した前記それぞれの可動変位から変位量をそれぞれ算出し、前記変位量に基づいて駆動指令を出力して、前記搭乗型移動体を回転させる搭乗型移動体の制御方法を提供する。
このことにより、前記態様の効果に加え、脊椎への負荷が少ない姿勢で、ユーザの脚部および足部への負荷を減少させることができることから、より身体への負荷の少ない姿勢で搭乗しながら、姿勢変化による回転制御を実現することができる。さらに、前傾して作業する動作や立ち上がる動作がし易い角度であることから、姿勢変化による操作制御にて手を使わずに移動操作ができることで、ユーザの作業性を確保できる効果がより向上するものである。
本発明の第22態様によれば、移動体本体と、前記移動体本体の上方に支持され、かつ、搭乗者の背中を支持する背もたれと、前記移動体本体の上方でかつ前記背もたれの下方に配置され、かつ、前記搭乗者の臀部を支持する座部と、前記移動体本体の下部に回転可能に支持された複数の駆動車輪と、前記移動体本体の下部に配置されて前記複数の駆動車輪を駆動して、前記移動体本体を前進、後退、又は、旋回させる駆動部と備える搭乗型移動体の駆動を制御する搭乗型移動体の制御方法であって、
前記背もたれの部分でかつ前記搭乗者の左右の肩甲骨が接触する部分に配置された背もたれ用姿勢センサが前記搭乗者の姿勢の変化を検知することで、前記搭乗者の操作意図を判定する接触位置依存型の操作意図判定部により判定し、
左右変化量比較型の回転意図判定部により、前記操作意図判定部で前記搭乗者の操作意図があると判定される場合のみ、前記背もたれ用姿勢センサから出力した、前記搭乗者の左右の肩甲骨がそれぞれ接触する部分の各センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値である圧力総和値の差が着座確認閾値を越えるか否か判定し、前記圧力値の差が前記着座確認閾値を越えると判定するとき、前記搭乗者の左又は右への回転の意図があると判定し、
前記回転意図判定部で判定された前記搭乗者の左又は右への回転の意図に従って、前記駆動部を駆動制御部で駆動制御する、
ことを備える搭乗型移動体の制御方法を提供する。
このような構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、背もたれの姿勢センサを、搭乗者の左右肩甲骨が接触する位置付近に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまったときに移動体が誤って左右回転又は移動動作することがなく、安定して意図判定を行うことが可能な搭乗型移動体を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明における第1〜第3実施形態を詳細に説明する。
以下、図面を参照して本発明における第1〜第3実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、移動体本体と、
前記移動体本体の上方に支持され、かつ、搭乗者の背中を支持する背もたれと、
前記移動体本体の上方でかつ前記背もたれの下方に配置され、かつ、前記搭乗者の臀部を支持する座部と、
前記移動体本体の前部に支持され、かつ、前記搭乗者の足裏を支持する足置きと、
前記移動体本体の下部に回転可能に支持された複数の駆動車輪と、
前記移動体本体の下部に配置されて前記複数の駆動車輪を駆動して、前記移動体本体を前進、後退、又は、旋回させる駆動部と、
前記背もたれの前記搭乗者の左右の肩甲骨が接触する部分に配置された背もたれ用姿勢センサと、
前記座部の前記搭乗者の前記臀部が接触する部分に配置された座部用姿勢センサと、
各姿勢センサの位置と各姿勢センサから出力される値の大きさとの関係情報から前記搭乗者の操作意図を判定する、接触位置依存型の操作意図判定部と、
前記操作意図判定部で前記搭乗者の操作意図があると判定された場合のみ、前記背もたれ用姿勢センサから出力した、前記搭乗者の左右の肩甲骨がそれぞれ接触する部分の圧力値の差が閾値を越えるか否か判定し、前記圧力値の差が前記閾値を越えると判定するとき、前記搭乗者の左又は右への回転の意図があると判定する、左右変化量比較型の回転意図判定部と、
前記回転意図判定部で判定された前記搭乗者の左又は右への回転の意図に従って、前記駆動部を駆動制御する駆動制御部と、
を備えることを特徴とする搭乗型移動体を提供する。
このような構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第2態様によれば、前記背もたれ用姿勢センサは、
前記背もたれの前記搭乗者の左右肩甲骨と、さらに各々の肩甲骨の幅で背中肋骨が位置する背中部分とを含む背もたれ左右上部が接触可能な部分に配置される、第1の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、背もたれの姿勢センサの配置位置を、搭乗者の左右肩甲骨が接触する位置付近又は腰骨付近が接触する位置付近に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまったときに移動体が誤って左右回転又は移動動作することがなく、安定して意図判定を行うことが可能な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第3態様によれば、操作意図判定部は、前記背もたれ用姿勢センサの出力値の総和値及び前記座部用姿勢センサの出力値の総和値のどちらもが閾値を越えるときに操作意図が有ると判定し、
前記回転意図判定部は、前記操作意図判定部で操作意図があると判定されかつ左右対称にある位置の前記背もたれ用姿勢センサからのセンサ出力値の差が閾値を越えるときに前記搭乗者の左右への回転の意図があると判定する、第2の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転または移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、背もたれの姿勢センサの配置位置を、搭乗者の左右肩甲骨が接触する位置付近又は腰骨付近が接触する位置付近に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまったときに移動体が誤って左右回転又は移動動作することがなく、安定して意図判定を行うことが可能な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第4態様によれば、腰椎が位置する背中部分が接触する背もたれ部の一部に接触可能な背もたれ中央下部用姿勢センサをさらに備えて、
前記操作意図判定部は、前記背もたれ用姿勢センサと前記座部用姿勢センサと前記背もたれ中央下部用姿勢センサの位置とそれらの姿勢センサから出力される値の大きさとの関係情報から前記搭乗者の操作意図を判定する、第1の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、背もたれの姿勢センサの配置位置を、搭乗者の左右肩甲骨が接触する位置付近又は腰骨付近が接触する位置付近と、腰椎が位置する背中部分が接触する位置付近に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまったときに、移動体が誤って左右回転又は移動動作することがなく、安定して意図判定を行うことが可能であり搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第5態様によれば、前記操作意図判定部は、前記背もたれ中央下部用姿勢センサ及び前記座部用姿勢センサからの出力値が各々ともに、閾値を越える場合に、操作意図があると判定し、
前記操作意図判定部で操作意図があると判定され、かつ、前記背もたれ用姿勢センサであって前記搭乗者の左右の肩甲骨がそれぞれ接触する部分の出力値の左右差が閾値を越えている場合に、前記搭乗者の左右への回転の意図があると判定する、第4の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転または移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、背もたれの姿勢センサの配置位置を、搭乗者の左右肩甲骨が接触する位置付近やあるいは腰骨付近が接触する位置付近と、腰椎が位置する背中部分が接触する位置付近に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまった時に、移動体が誤って左右回転または移動動作することがなく、安定して意図判定を行うことが可能であり搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第6態様によれば、前記搭乗者の姿勢によって異なる前記姿勢センサからの出力値の分布状況を、前記姿勢センサからの出力値を用いて分析する搭乗姿勢判定部と、
前記搭乗姿勢判定部で分析された前記姿勢センサからの出力値の分布状況を用いて前記姿勢センサの出力値の重みを決定する重み決定部と、
前記操作意図を判定する前記操作意図判定部又は前記搭乗者の左右への回転の意図を判定する前記回転意図判定部の少なくともどちらかの判定処理において、前記姿勢センサの出力値に対して前記重み決定部で重み付けを行った前記姿勢センサの出力値を用いる、第1〜5のいずれか1つの態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転または移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、搭乗者ごとの搭乗姿勢の違いを考慮して、姿勢センサ毎に重み付けを行ったセンサ出力値を用いて、操作の意図及び左右回転の意図を判定することにより、搭乗者による着座の姿勢の違いによる判定精度の低下を改善し、安定して操作の意図を判定することで、移動体が誤って動作することがなく、安全な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第7態様によれば、前記背もたれ用姿勢センサと前記座部用姿勢センサの各々のセンサ出力値から搭乗姿勢の癖を分析する搭乗姿勢判定部と、背もたれ左右上部センサ出力値及び座部センサ出力値が定められた一定範囲にある場合に、各センサの出力値又は各センサの最大出力値に対する各センサ出力値の比率を用いて各々のセンサへの重みを決定する重み決定部と、決定された重みにて重み付けを行った各センサの左右出力値の差を用いて、搭乗者の左右への回転の意図を判定する左右変化量比較型の回転意図判定部にて形成する第6の態様に記載の搭乗型移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転または移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、搭乗者ごとの搭乗姿勢の違いを考慮して、姿勢センサ毎に重み付けを行ったセンサ出力値を用いて、左右回転の意図を判定することにより、搭乗者による着座の姿勢の違いによる判定精度の低下を改善し、安定して操作の意図を判定することで、移動体が誤って動作することがなく、安全な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第8態様によれば、前記搭乗姿勢判定部は、搭乗姿勢における前記背もたれ用姿勢センサと前記背もたれ中央下部用姿勢センサとのそれぞれのセンサ出力値を閾値と比べることで前記搭乗者の姿勢によって異なる前記姿勢センサからの出力値の分布状況を分析し、
前記重み決定部は、前記背もたれ中央下部用姿勢センサの出力値と前記背もたれ用姿勢センサの出力値又は出力値との比率を用いて前記背もたれ中央下部用姿勢センサと前記背もたれ用姿勢センサとの重みを決定し、
前記操作意図判定部は、前記重み決定部で決定された重みにて重み付けを行った各センサ出力値から前記搭乗者に操作意図を判定する、第6の態様に記載の移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転または移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、搭乗者ごとの搭乗姿勢の違いを考慮して、姿勢センサ毎に重み付けを行ったセンサ出力値を用いて、操作の意図を判定することにより、搭乗者による着座の姿勢の違いによる判定精度の低下を改善し、安定して操作の意図を判定することで、移動体が誤って動作することがなく、安全な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第9態様によれば、前記搭乗姿勢判定部は、搭乗姿勢における座部用姿勢センサ及び前記背もたれ用姿勢センサのそれぞれのセンサ出力値を閾値と比べることで前記搭乗者の姿勢によって異なる前記姿勢センサからの出力値の分布状況を把握し、
前記重み決定部は、前記座部用姿勢センサからの出力値又は出力値の座部出力総和値と前記背もたれ用姿勢センサの出力値の背もたれの出力総和値との比率を用いて、左右回転の意図を判定する際の前記座部と前記背もたれとの前記センサの重みを決定し、
前記回転意図判定部は、前記重み決定部により決定された前記重みにて重み付けを行ったセンサ出力値を用いて、左右対称にある位置のセンサ値の差から、搭乗者の左右への回転の意図を判定する、第6の態様に記載の移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転または移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、搭乗者ごとの搭乗姿勢の違いを考慮して、姿勢センサ毎に重み付けを行ったセンサ出力値を用いて、操作の意図を判定することにより、搭乗者による着座の姿勢の違いによる判定精度の低下を改善し、安定して操作の意図を判定することで、移動体が誤って動作することがなく、安全な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第10態様によれば、前記重み決定部は、前記座部用姿勢センサ又は前記背もたれ用姿勢センサからの出力値が測定上限を表す閾値を超える場合に、該当するセンサの重みを他のセンサの重みと比較して小さくするか又はゼロとしと、
前記回転意図判定部は、前記重み決定部により決定された前記重みにて重み付けを行った前記センサの出力値を用いて左右回転の意図を判定する、第1の態様に記載の移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転または移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、搭乗姿勢によって各センサ出力値が測定上限閾値を上回った場合に該当するセンサの重みをゼロにする処理を行うことにより、左右回転の意図を反映できないセンサを除外し、回転の意図をより精度良く反映した、誤動作のない搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第11態様によれば、搭乗姿勢判定部にて分析した結果、座部のセンサ出力値が着座確認閾値以下の場合に前記搭乗者に対して前記座部に接触した搭乗を促す通知を行う通知部をさらに備える、第1〜10のいずれか1つの態様に記載の移動体を提供する。
この構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体を提供することができる。さらに、搭乗者の移動中の搭乗姿勢が座部のセンサの出力値が極端に小さい場合は、搭乗者が座部に着座せず、立位あるいは背もたれのみに寄りかかった不安定な姿勢で搭乗している可能性があるので、座部に着座するように通知することにより、操作の意図の判定精度が向上するだけでなく、事故の無い安全な搭乗型移動体を提供することができる。
本発明の第12態様によれば、移動体本体と、前記移動体本体の上方に支持され、かつ、搭乗者の背中を支持する背もたれと、前記移動体本体の上方でかつ前記背もたれの下方に配置され、かつ、前記搭乗者の臀部を支持する座部と、前記移動体本体の前部に支持され、かつ、前記搭乗者の足裏を支持する足置きと、前記移動体本体の下部に回転可能に支持された複数の駆動車輪と、前記移動体本体の下部に配置されて前記複数の駆動車輪を駆動して、前記移動体本体を前進、後退、又は、旋回させる駆動部とを備える搭乗型移動体の駆動を制御する搭乗型移動体の制御方法であって、
前記背もたれの前記搭乗者の左右の肩甲骨が接触する部分に配置された背もたれ用姿勢センサと、前記座部の前記搭乗者の前記臀部が接触する部分に配置された座部用姿勢センサとのそれぞれの位置と各姿勢センサから出力される値の大きさとの関係情報から前記搭乗者の操作意図を接触位置依存型の操作意図判定部により判定し、
左右変化量比較型の回転意図判定部により、前記操作意図判定部で前記搭乗者の操作意図があると判定された場合のみ、前記背もたれ用姿勢センサから出力した、前記搭乗者の左右の肩甲骨がそれぞれ接触する部分の圧力値の差が閾値を越えるか否か判定し、前記圧力値の差が前記閾値を越えると判定するとき、前記搭乗者の左又は右への回転の意図があると判定し、
前記回転意図判定部で判定された前記搭乗者の左又は右への回転の意図に従って、前記駆動部を駆動制御部で駆動制御する、
ことを備えることを特徴とする搭乗型移動体の制御方法を提供する。
このような構成により、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。
以下、本発明の第1〜第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1、図2は、本発明の第1実施形態にかかる搭乗型移動体の制御方法を適用可能な搭乗型移動体(移動支援機器の例)の例である立位乗車移動体100の外見図及びハード構成ブロック図である。
なお、以下の説明において、移動体100において、搭乗者91が移動体100に搭乗した際に腰より上の上半身が接触する部分を背もたれと言い、搭乗者91の股関節より下の下半身が接触する部分を座部と言う。また、搭乗者91の左右肩甲骨50a、50bさらに各々の肩甲骨の幅で背中肋骨が位置する背中部分51a、51bを含む範囲を背もたれ左右上部と言う。また、搭乗者91の腰椎が位置する背中部分52が接触する背もたれ部の一部を背もたれ中央下部と言う。
図1に示す立位乗車移動体100は、少なくとも立位乗車移動体100に乗車した搭乗者91の腰から背中(少なくとも背中)を支持する背もたれ面を有する背もたれ2a及び立位乗車移動体100に乗車した搭乗者91の臀部と坐骨(少なくとも臀部)を支持する座面を有する座部2bとを含む椅子として機能する座席3と、立位乗車移動体100に乗車した搭乗者91の足裏を支持する足置き面を有する板状の足置き1とを少なくとも備えている。
より詳しくは、立位乗車移動体100は、移動体本体5と、移動体本体5の上方に支持される背もたれ2aと、移動体本体5の上方でかつ背もたれ2aの下方に背もたれ2aに連結されて配置された座部2bと、移動体本体5の下部の前部に固定的に支持された足置き1とを有して、移動体本体5は、その下部に電源12を含む制御部93と、電源13及びモータ15a、15bなどを含む駆動部92とが格納されている。
背もたれ2aと座部2bとを有する座席3は、立位乗車移動体100の上部側に、移動体本体5の下部から支柱4を介して上下方向に位置調整可能に配置されている。移動体本体5の下部には、例えば、その両側面に、合計4個の車輪6a、6b、7a、7bをそれぞれ回転可能に配置して、4個の車輪6a、6b、7a、7bで立位乗車移動体100が前後移動可能及び旋回可能としている。第1実施形態の立位乗車移動体100では、足置き1の左右に自由に回転可能な前輪7a、7bを設け、本体5の下部の後部の左右に駆動輪6a、6bを設けて、移動機構を構成している。また、駆動部92は、駆動制御部の一例として機能するモータコントローラ14と、モータ電源13と、左右のモータ6a、6bとを備えている。これにより、駆動部92は、移動体本体5の下部に配置された複数の駆動車輪6a、6bをそれぞれ独立して駆動して、立位乗車移動体100を前進、後退、又は、旋回させるようにしている。
足置き1には、たとえば、その前の左右に2つのフットスイッチ8a、8bが設置されており、一方のフットスイッチ8aは前進用に用いるとともに、他方のフットスイッチ8bは後退用に用いる。この一対のフットスイッチ8a、8bは、搭乗者91が立位乗車移動体100の操作を行うための操作入力手段の例である。第1実施形態の例では、フットスイッチ8a、8bは左右対に配置されており、例えば、右側のフットスイッチ8aは、スイッチの踏み込みにより、前進の指示を入力するスイッチであり、左側のフットスイッチ8bは、スイッチの踏み込みにより、後退の指示を入力するスイッチである。
また、背もたれ2aと座部2bには、姿勢センサ(例えば圧力センサ)の一例としての圧力センサシート9a、9b、9cが設置されている。すなわち、背もたれ用姿勢センサの一例としての左右の背もたれ用圧力センサシート9a、9bは、背もたれ2aの、搭乗者91の左右肩甲骨50a、50bと、さらに各々の肩甲骨50a、50bの幅で背中肋骨が位置する背中部分51a、51bとを含む背もたれ左右上部の範囲が接触可能な部分(詳しくは、背もたれ左右上部の範囲が接触可能な領域)に配置されている。座部用姿勢センサの一例としての座部用圧力センサシート9cは、座部2bの搭乗者91の臀部が接触可能な、座部2bの一部又は全面(詳しくは、臀部が接触可能な領域の一部又は全領域)に配置されている。圧力センサシート9a、9b、9cは、別途下記に詳細に説明するが、搭乗者91が移動体100を操作する意図(指示)を感知する。
移動体本体5には、センサコントローラ10と、センサ電源12と、駆動部92(モータコントローラ14、モータ電源13、モータ15a、15b)と、PC(パーソナルコンピュータ)11とが内蔵されている。
センサコントローラ10は、各圧力センサシート9a、9b、9cを構成する圧力素子の出力値が入力され、各圧力センサシート9a、9b、9cを構成する圧力素子の出力値の総和値を算出し、各センサシート9a、9b、9cの圧力値を出力する。
また、PC11は、フットスイッチ8a,8bの出力信号及び前記センサコントローラ10の出力総和値を入力とし、前進後退制御決定処理101と、操作意図判定部102と、左右回転意図判定部103と、左右回転制御決定部104と、前進後退制御決定部101と、電圧値変換部105とを備えて、前進後退制御決定処理101と、操作意図判定部102と、左右回転意図判定部103と、左右回転制御決定部104と、電圧変換部105との処理を行い、左右モータ15a,15bの電圧値を出力する。前進後退制御決定部101は、2つのフットスイッチ8a、8bからのオンオフ出力信号を受けて、左右両輪駆動用モータ用電圧値に変換したのち、電圧値変換部105に出力する。操作意図判定部102には、圧力センサシート9a、9b、9cからの出力情報が入力されるともに、操作意図判定情報を左右回転意図判定部103に出力する。左右回転意図判定部103には、圧力センサシート9a、9b、9cからの出力情報が入力されるともに、操作意図判定部102からの操作意図判定情報が入力され、左右回転意図判定情報を左右回転制御決定部104に出力する。左右回転制御決定部104は、左右回転意図判定部103からの左右回転意図判定情報が入力されて、左右回転意図判定情報を左右両輪駆動用モータ用電圧加算値に変換して電圧値変換部105に出力する。電圧値変換部105は、前進後退制御決定部101からの左右両輪駆動用モータ用電圧値と左右回転制御決定部104からの左右両輪駆動用モータ用電圧加算値とから、各々の左右輪用モータ15b、15aを駆動するための電圧値を求めてモータコントローラ14に出力する。
センサ用電源12は、圧力センサシート9a、9b、9cおよびセンサコントローラ10のための電源であり、モータ用電源13は、モータコントローラ14及び、モータ15a、15bを駆動するための電源である。なお、PC11はPC内部に電源が内蔵されている。モータコントローラ14は、電圧値変換部105からの左右輪用モータ15a,15bの電圧値を入力とし、モータコントローラ14に含まれる速度変換部106にて電圧値をモータ15a,15bの回転速度に変換してモータを駆動する。具体的には、モータコントローラ14は、PC11で決定された各モータ電圧から各モータ15a、15bの回転速度を速度変換部106にて決定し、フットスイッチ8a、8bの入力に従って、前進又は後進の指令を出す。モータ15a、15bは、モータコントローラ14の出力に従ってそれぞれ独立して正逆回転駆動される。
PC11は、センサコントローラ10とモータコントローラ14との間での信号のやり取りと制御とを行う。
図3A及び図3Bは、圧力センサシート9a、9b、9cの位置を点線で示す。背もたれ2aは、搭乗者91の左右の肩甲骨50a、50bの幅内にある肋骨の背中側の部分51a、51bの一部が触れる位置である背もたれ上部の左右の2箇所(すなわち、背もたれ左右上部)にシートセンサが設置されて圧力センサシート9a、9bを構成している。たとえば、前記の条件を一般成人の体型で換算すると、背もたれ上部の幅が38cm(±5cm)の場合には、圧力センサシート9a、9bは、左右各々の上隅から幅が5cm〜10cm、高さが15cm〜30cmの位置を含むサイズとなる。前記した左右のシートセンサ9a、9bが配置される2箇所の領域をすべて含むのであれば、一枚のシートセンサで代用しても良く、逆に、それぞれの箇所を複数に分割してもよく、シートの枚数は1枚又は2枚に限らない。圧力センサシート9a、9bの一例であるシートセンサとは、たとえば多数の圧電型の感圧素子(圧電素子)を縦横に並べているシートを意味する。
前記背もたれ左右上部の2箇所が、左右回転の意図を判定するためのセンサ9a、9bの位置として適していることを示唆する実験結果を図4A〜図4Kに示す。ここで、搭乗者91による左右回転の意図を判定するためには、次の(1)から(3)の条件を考慮した位置にセンサを配置する必要がある。
(1)左右回転の意図がある場合に自然に変動する姿勢に対して、その変動が反映する位置であること。
(2)意図を反映した動作に個人差があっても、変動を反映する位置であること。
(3)左右回転の意図がない場合には、変動しない位置であること。
図4A〜図4Eは、それぞれ、5人の搭乗者が立位乗車移動体100に搭乗した際の、背もたれ用圧力センサシート9a、9bで検出された圧力分布図である。図4A、図4B、図4Eはそれぞれ女性、図4C、図4Dはそれぞれ男性である。男女による圧力分布の違いもあるが、同じ性別であっても、背もたれ2aにもたれかからずに着座したと思われる図4Aの場合及び図4Bの場合と、背もたれ2aに体重を預けている図4C〜図4Eの場合とでは、圧力分布は異なっているし、同じく、背もたれ2aに体重を預けていても、体重の預ける度合いによって、圧力分布は異なっており、搭乗者91の姿勢の癖により圧力分布状況が異なることがわかる。すなわち、ここでいう搭乗者91の姿勢の癖とは、搭乗者91によって搭乗者91に固有の姿勢があり、その搭乗者91の姿勢によって異なる圧力分布状況のことを意味する。図9A及び図9Bに各々の着座姿勢のイメージ図を示す。図9Aは、搭乗者91が背もたれ2aにはあまりもたれかからずに着座しているイメージ図、図9Bは、座部2bに着座しながら背もたれ2aにももたれている姿勢で着座しているイメージ図である。
また、図4F〜図4Jは、先の5人の搭乗者91に対して左回転を促した場合の背もたれ用圧力センサシート9a、9bの圧力分布である。図4G、図4I、図4Jは、先の3人の搭乗者91がその身体を右に捻って回転の意図を示したが、図4F、図4Hは、先の2人の搭乗者91がその身体を捻らず右に身体を傾けて回転の意図を示していた。各々の回転姿勢を図9C、図9Dに示す。搭乗した際の圧力分布の個人差に加えて、搭乗者91の回転姿勢の違いで圧力分布は大きく異なっている。しかしながら、図4F〜図4Jに点線で示した背もたれ左上部(図4F〜図4Jでは、右上に示された点線の四角形の領域)には、どの搭乗者91も同じように圧力がかかっている。このように、図4A〜図4Jによれば、個人の体型又は回転姿勢の違いに依らず、背もたれ左上部には集中的に圧力がかかることがわかる。この傾向は右回転の場合も同様に、背もたれ右上部に集中的に圧力がかかることがわかった。
図4K〜図4Oは、搭乗者91による左右回転の意図がない場合の圧力分布の例である。図4K及び図4Lは、立位乗車移動体100に搭乗中に搭乗者91が搭乗者91の左前にある荷物を取る動作をした場合の背もたれの圧力分布を示している。図4M及び図4Nは、立位乗車移動体100に搭乗しながら搭乗者91が搭乗者91の前方左寄りのドアを開閉しようと手を中央左よりにドアノブに伸ばした際の背もたれ2aの圧力分布を示している。図4Oは、搭乗者91が立位乗車移動体100に搭乗するときの圧力分布を示している。これらの作業姿勢の変化では、背もたれ左上部には圧力がほとんどかかっておらず、背もたれ左上部の圧力値を利用することで、回転の意図を持って姿勢を変えた場合との区別はできると考えられる。
これらの結果からもわかるように、背もたれ左上部は、左回転の意図を判定するに必要な前記3つの条件(1)〜(3)を満たしている。
図5は、第1実施形態における移動体100の制御処理のブロック図を示す。
前進用のフットスイッチ8a若しくは後退用のフットスイッチ8bのオンオフ出力信号は、PC11に入力され、PC11内にある前進後退制御決定部101にて左右両輪駆動用モータ用電圧値に変換される。たとえば、前進後退制御決定部101による電圧変換は、図6の表に従う。この表の内容を前進後退制御決定部101の内部記憶部に記憶しておく。この表によれば、モータ15a、15bが0Vから5Vの電圧値を受ける仕様で、モータ15a、15bが2.5V以上の電圧値を受ければ前進方向に回転すると前進後退制御決定部101で判定する。モータ15a、15bが2.5V未満の電圧値を受ければ後退方向に回転すると前進後退制御決定部101で判定する。モータ15a、15bが2.5Vの電圧値を受ける際にはモータ15a、15bが回転停止すると前進後退制御決定部101で判定する。このようにすると前進後退制御決定部101で判定するように設計されている場合の例が図6の表である。安全のため、両方のスイッチ8a、8bを同時にONにした場合は、回転停止すると前進後退制御決定部101で判定する仕様になっている。
圧力センサシート9a、9b、9cの各圧電素子の出力は、センサコントローラ10を経てパーソナルコンピュータ11に入力され、PC11の操作意図判定部102及び左右回転意図判定部103にて操作の意図と左右回転の意図の有無がそれぞれ独立して判定される。
図7は、詳細な意図判定フローを示す。
まず、ステップS150において、圧力センサシート9a、9b、9cの各圧電素子の圧力値は圧力センサシート9a、9b、9cごとに総和値がセンサコントローラ10で算出される。
以下、圧力センサシート9a、9b、9cの各々の圧力総和値は、各センサが一定以上の圧力を示す領域の圧力の総和値であって、「背もたれ右上圧力総和値」と、「背もたれ左上圧力総和値」と、「座部圧力総和値」と称す。また、背もたれ2aに関しては、背もたれ右上圧力総和値と背もたれ左上圧力総和値とを合算した値は、「背もたれ圧力総和値」と称す。さらに座部2bに関しては、座部中央より右半分の圧電素子の総和値(以下、「座部右側圧力総和値」という。)と左半分の圧電素子の総和値(以下、「座部左側圧力総和値」という。)とを別々にセンサーコントローラ10で算出しておく。さらに、センサコントローラ10では、背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値との総和値も算出しておく。
次に、ステップS151において、操作意図判定部102が、センサコントロール10から出力された、背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値との総和値が、操作意図判定部102内に予め設定された各々の着座確認閾値を越えているかどうかを判定する。背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値との総和値が着座確認閾値を超えていると操作意図判定部102で判定した場合のみ、操作意図判定部102は、操作の意図があると判定し、ステップS152に進む。
この際の前記着座確認閾値は、搭乗者91が移動体100に搭乗して操作したいと思う姿勢をとった際の背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値との総和値を下回らないように設定する。そして、搭乗者91が座席3に搭乗していなくても、片手で背もたれ2a又は座部2bを押した場合に示す圧力値よりも、前記着座確認閾値を大きく設定しないと、座部2bを片手で押しただけで搭乗者91が着座していると誤って操作意図判定部102で判定してしまう危険がある。
従って、たとえば、経験的には、座部2bの着座確認閾値は、背もたれ2aが片側7×10個の圧電素子、座部2bが20×10個の圧電素子から構成されているとして、各々の圧電素子が1〜5段階で圧力値を表すと仮定すると、座部2bの半分の面が圧力値2を示したとする200を着座確認閾値とするのが妥当である。
また、着座確認閾値は、固定値を用いても良いが、移動体100を最初に使用する際に、搭乗者91が移動体100に最初に搭乗した場合の各センサ9a、9b、9cの出力実測値の背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値との総和値を操作意図判定部102で記録しておき、この出力実測値の総和値に0.5から0.7を乗じた値を着座確認閾値として設定しても良い。
ステップS151において、背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値の総和値が着座確認閾値以下であると操作意図判定部102で判定した場合には、操作意図判定部102は、操作の意図が無いと判定し、判定処理及びそれに続く制御処理を中止し、移動体100は現状動作を継続する(現状状態を維持する)。前記意図の判定の条件は、予め設定された閾値を越えているかどうかで操作意図判定部102で判定したが、背もたれ右上圧力総和値、背もたれ左上圧力総和値、座部右側圧力総和値、座部左側圧力総和値に対する着座確認閾値を操作意図判定部102で個別に設定し、左右対称に位置にある着座確認閾値が共に着座確認閾値を超えたと操作意図判定部102で判定した場合に、操作意図判定部102は、操作の意図があると判定しても良い。この際には、搭乗者91が座席3に対して極端に右側若しくは左側に偏ることなく中央に搭乗した場合のみ、操作の意図があると操作意図判定部102で判定するため、より安全な移動体100及びその制御方法を提供することができる。
次に、ステップS152において、回転意図判定部103では、背もたれ右上部圧力総和値と背もたれ左上部圧力総和値との差(背もたれ左右圧力差)の絶対値、及び、座部右側圧力総和値と座部左側圧力総和値との差(座部左右圧力差)の絶対値を算出する。
次いで、ステップS153において、回転意図判定部103で算出された各々の差の総和値の絶対値が、回転意図判定部103内に予め設定された左右圧力差閾値を超えたと回転意図判定部103で判定した場合に、回転意図判定部103は、回転の意図があると判定する。たとえば、着座確認閾値を前記の200とした場合、片側100の半分の50以上が、回転の意図により反対側に移動した(例えば、右側が150であり、左側が50となる)と回転意図判定部103で判定した場合に、回転意図判定部103は、回転の意図があると判定すると仮定すると、左右圧力差閾値は50の2倍の100と設定される。
このステップS153において、各々の差の総和値が正値で、その絶対値が左右圧力差閾値を越えたと回転意図判定部103で判定した場合は右回り、各々の差の総和値が負値で、その絶対値が左右圧力差閾値を超えたと回転意図判定部103で判定した場合は左回りと、それぞれ、回転意図判定部103で判定する。この際の左右圧力差閾値は、常に、搭乗者91が座席3に左右対称に着座するとは限らないので、搭乗者91が座席3に右又は左にずれて着座してしまった場合の左右の圧力差の絶対値よりも大きく設定しておく必要がある。たとえば経験的には、予め複数人に着座してもらった際の、左右圧力差の絶対値の最大値に1.2倍した値を、左右圧力差閾値とするのが妥当である。
回転意図判定部103で、前記のステップS153の処理にて左右回転の意図があるとみなされた場合には、左右回転制御決定部104にて、ステップS154の処理で、判定された結果に基づき左右両輪駆動用モータ用電圧加算値に変換される。この際の変換は、左右回転制御決定部104にて、回転方向が左か右かが決まれば、電圧加算値が一意に決まるものとし、たとえば、図8の表に従うと、右回転と決まれば、右輪用モータ15aに−0.5V、左輪用モータ15bに+0.5Vを加算するように設定される。 次に、同じステップS154において、電圧値変換部105は、前進後退制御決定部101で算出された左右駆動輪6a、6bの各電圧値に、左右回転制御決定部104にて算出された左右各々の電圧加算値を加えたものを、左右それぞれのモータ駆動のための電圧値とし、モータコントローラ14にて回転速度に変換され、各々の左右輪用モータ15b、15aが駆動する。
前記第1実施形態の構成によれば、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体100が誤って左右回転又は移動動作することのない、安全な搭乗型移動体100又は搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。さらに、背もたれ2aの姿勢センサ9a、9bの配置位置を、搭乗者91の左右肩甲骨50a、50bが接触する位置付近に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者91の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまったときに移動体100が誤って左右回転又は移動動作することがなく、安定して意図判定を行うことが可能な搭乗型移動体及び搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態にかかる搭乗型移動体及び搭乗型移動体の制御方法は、背もたれ2aの中央下部に、背もたれ中央下部用姿勢センサの一例として機能する背もたれ中央下部用圧力センサシート(圧力センサの一例)9dが追加配置されて、第1実施形態よりもさらに、回転操作の意図がある姿勢変化と、他の作業での姿勢変化を、確度良く識別することができるものである。
すなわち、第1実施形態は、搭乗者91が座部2bに深く着座した場合でも、背もたれ2aにもたれかかりながら座部2bに浅く着座した場合でも、姿勢変動にて安定に操作を可能とするものであるが、実際の移動しながらの操作で搭乗者自身の安心感があるのは、前者の深く着座した場合である。搭乗者91が深く着座することを前提とした場合は、本発明の第2実施形態に示す搭乗型移動体及び搭乗型移動体の制御方法によれば、第1実施形態よりもさらに、回転操作の意図がある姿勢変化と、他の作業での姿勢変化を、確度良く識別することができる。
図10及び図11は、本発明の第2実施形態における移動体の外見図及びハード構成ブロック図である。ハード構成は、第1実施形態にて説明した図1及び図2の外見図及びハード構成図において、背もたれ2aの中央下部に背もたれ中央下部用圧力センサシート9dが追加配置されている以外は、図1及び図2と同様である。
図12A及び図12Bは、第2実施形態における圧力センサシート9a、9b、9c、9dの位置を示している。座部2bには、搭乗者91の臀部が接触可能な座部用圧力センサシート9cが、その一部又は全面に配置されている。また、背もたれ2aには、搭乗者91の左右又は肩甲骨50a、50bの幅内にある肋骨の背中側の部分51a、51bの一部が触れる位置である背もたれ左右上部の2箇所に、圧力センサシート9a、9bが配置されている。さらに、搭乗者91の腰椎が位置する箇所である中央下部52にも、他の圧力センサシートと同様な圧力センサシート9dが背もたれ中央下部用圧力センサシートとして配置されている。たとえば、背もたれ左右上部の圧力センサシート9a、9bのシートサイズは第1実施形態に記載したサイズと同様で、背もたれ中央下部の圧力センサシート9dのシートサイズは、背もたれ2aの上部から35cm〜40cmを上部中央として幅が左右3〜5cm、高さが15〜20cmのサイズとなる。この左右上部2箇所50a、50bと中央下部52とが触れる位置を含むのであれば、一枚のシートセンサでも良く、シートの枚数は問わない。また、背もたれ中央下部用圧力センサシート9dの構成としては、たとえば圧電型の感圧素子(圧電素子)を縦横に並べているシートを用いる。
前記背もたれ左右上部の2箇所が、左右回転の意図を判定するためのセンサの位置として適していることは、第1実施形態に示したが、腰椎が位置する箇所である中央下部52にも配置された背もたれ中央下部用圧力センサシート9dが、操作の意図を判定するに適していることを示唆する実験結果を図12に示す。
操作の意図を判定するためには、以下の条件を満たす位置にセンサを配置する必要がある。
(4)操作意図がある状況(移動中に搭乗する自然な姿勢)において接触する位置であること、
(5)搭乗中であっても操作の意図のない作業(乗り降り、ドア開閉、買い物中作業など)と、前記の操作の意図のある状況との違いがわかる位置であること。
図25A〜図25Eは、それぞれ、5人の搭乗者が立位乗車移動体100に搭乗した際の、背もたれ用圧力センサシート9a、9b及び背もたれ中央下部用圧力センサシート9dで検出された圧力分布図である。図25A及び図25Bは、座部に着座しながら背もたれ2aにはあまりもたれかからず搭乗しており、図25C〜図25Eは、座部2bに着座しながら背もたれ2aにももたれている姿勢で搭乗している。第1実施形態で説明したように、図9A及び図9BA及び図25Bに記載のイメージとおりである。従って、背もたれ2aの中部から上部の部分は、図25A及び図25Bでは、ほとんど圧力がかかっていないが、図25C〜図25Eは、背もたれ2aの中部、図25Dは背もたれ上部に圧力がかかっている。しかしながら、図25A〜図25Eのすべてにおいて、背もたれ中央下部(中央下部に示された二点鎖線の四角形の領域)には、一定以上の圧力値が観測されていることがわかる。
さらに、図25F〜図25Jに示した、左回転の意図を持った場合の背もたれ圧力分布でも同様に、図25F〜図25Jのすべてにおいて、背もたれ中央下部に、一定以上の圧力値が観測されていることがわかる。
一方、図25K〜図25Oの、回転の意図を伴わない様々な作業の圧力分布は、作業のために姿勢が前のめりになっており、背もたれ2aには圧力分布が観測されていない。
従って、背もたれ中央下部が、操作の意図がある場合と操作の意図がない場合とで、違いが顕著に生じている部分であり、操作の意図を判定するに適している位置であると考えられる。
図13は、第2実施形態における移動体100の制御処理のブロック図を示している。第1実施形態の図5と同じ構成は、動作も同じであり、同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
図12に示した点線に囲まれた4箇所に設定された圧力センサシート9a、9b、9c、9dの各圧電素子の出力は、センサコントローラ10を経てパーソナルコンピュータ11に入力され、パーソナルコンピュータ11内の接触位置依存型の操作意図判定部110にて、搭乗者91の姿勢分析と、それを踏まえた左右回転操作の意図推定が行われ、さらに、左右変化量比較型の回転意図判定部111にて、左右どちらかに移動体100を回転させる意図の推定が行われる。
図14は、詳細な意図判定フローを示す。
まず、ステップS160において、圧力センサシート9a、9b、9c、9dの各圧電素子の圧力値は圧力センサシート9a、9b、9c、9dごとに総和値がセンサコントローラ10で算出される。以下、圧力センサシート9a、9b、9c、9dの各々の圧力総和値を、「背もたれ右上圧力総和値」と、「背もたれ左上圧力総和値」と、「背もたれ中央下圧力総和値」と、「座部圧力総和値」という。さらに、座部2bに関しては、座部中央より右半分の圧電素子の総和値(以降、「座部右側圧力総和値」という。)と左半分の圧電素子の総和値(以降、「座部左側圧力総和値」という。)とを別々にセンサコントローラ10で算出しておく。
次に、ステップS161において、操作意図判定部110が、センサコントローラ10から出力された、背もたれ中央下圧力総和値と座部圧力総和値とが、操作意図判定部110内に予め設定された各々の着座確認閾値を越えているかどうかを判定する。背もたれ中央下圧力総和値と座部圧力総和値とが共にそれぞれの着座確認閾値を超えていると操作意図判定部110で判定した場合には、操作意図判定部110は、操作の意図があると判定し、ステップS162に進む。
この際の背もたれ中央下圧力総和値の着座確認閾値は、第1実施形態における背もたれの着座確認閾値と同様の方針で設定するのが妥当である。
たとえば具体例として、10×4の圧電素子からなるシートセンサで、各々の圧電素子圧力値が1〜5の5段階で出力される場合、約1/4の圧電素子が1以上の値を示す10を着座確認閾値とする。ただし、何も触れていない場合のシートの圧力総和値が10を上回った場合には、その値を超えた値を着座確認閾値とする。座部圧力総和値は、第1実施形態の着座確認閾値と同様に設定する。
ステップS161において、背もたれ中央下圧力総和値と座部圧力総和値とのうちどちらか一つでも着座確認閾値以下であると操作意図判定部110で判定した場合には、操作意図判定部110は操作の意図がないと操作意図判定部110でみなされ、他の圧力値にかかわらず、判定処理及びそれに続く制御処理を中止し、移動体100は現状動作を継続する(現状状態を維持する)。着座確認閾値の決め方は、先の第1実施形態と同様である。前記意図判定の条件は、背もたれ中央下圧力総和値、座部圧力総和値が予め設定された各々の着座確認閾値を越えているかどうかで操作意図判定部110で判定したが、背もたれ中央下圧力総和値が着座確認閾値を超えていてかつ、座部右側圧力総和値及び座部左側圧力総和値が各々の着座確認閾値を超えていると操作意図判定部110で判定する場合に操作の意図があると操作意図判定部110で判定しても良く、この際には、搭乗者91が座席3に対して極端に右側若しくは左側に偏ることなく中央に搭乗した場合のみ、操作の意図があると操作意図判定部102でみなすため、より安全な移動体100及びその制御方法を提供することができる。
次に、回転意図判定部103では、ステップS162、S165にて、それぞれ、座部右側圧力総和値と座部左側圧力総和値との差(座部左右圧力差)および、背もたれ右側圧力総和値と背もたれ左側圧力総和値との差(背もたれ左右圧力差)を算出する。
次のステップS163における左右回転制御決定部104の処理、ステップS164における電圧変換部105の処理を第1実施形態のステップS153の処理及びステップS154の処理と同様に行い、各モータ15b、15aがそれぞれ駆動される。
すなわち、ステップS163において、回転意図判定部103で算出された座部右側圧力総和値と座部左側圧力総和値との差(座部左右圧力差)が、回転意図判定部103内に予め設定された左右圧力差閾値を超えたと回転意図判定部103で判定した場合に、回転意図判定部103は、回転の意図があると判定する。たとえば、着座確認閾値を前記の200とした場合、片側100の半分の50以上が、回転の意図により反対側に移動した(例えば、右側が150であり、左側が50となる)と回転意図判定部103で判定した場合に、回転意図判定部103は、回転の意図があると判定すると仮定すると、左右圧力差閾値は50の2倍の100と設定される。
座部右側圧力総和値と座部左側圧力総和値との差(座部左右圧力差)が、回転意図判定部103内に予め設定された左右圧力差閾値以下であると回転意図判定部103で判定した場合に、回転意図判定部103は、回転の意図が無いと判定し、判定処理及びそれに続く制御処理を中止し、移動体100は現状動作を継続する(現状状態を維持する)。
このステップS163において、前記差が正値で左右圧力差閾値を越えたと回転意図判定部103で判定した場合は右回り、前記差が負値で左右圧力差閾値以下となったと回転意図判定部103で判定した場合は左回りと回転意図判定部103で判定する。この際の左右圧力差閾値は、常に、搭乗者91が座席3に左右対称に着座するとは限らないので、搭乗者91が座席3に右又は左にずれて着座してしまった場合の左右の圧力差よりも大きく設定しておく必要がある。たとえば経験的には、予め複数人に着座してもらった際の、左右圧力差の最大値に1.2倍した値を、左右圧力差閾値とするのが妥当である。
前記のステップS163の処理にて左右回転の意図があると回転意図判定部103でみなされた場合には、ステップS164において、左右回転制御決定部104にて、判定された結果に基づき、左右両輪駆動用モータ用電圧加算値に変換される。この際の変換は、左右回転制御決定部104にて、回転方向が左か右かが決まれば、電圧加算値が一意に決まるものとし、たとえば、図8の表に従うと、右回転と決まれば、右輪用モータ15aに−0.5V、左輪用モータ15bに+0.5Vを加算するように設定される。 次に、同じステップS164において、電圧値変換部105は、前進後退制御決定部101で算出された左右駆動輪6a、6bの各電圧値に、左右回転制御決定部104にて算出された左右各々の電圧加算値を加えたものを、左右それぞれのモータ駆動のための電圧値とし、モータコントローラ14にある速度変換部106にて回転速度に変換され、各々の左右輪用モータ15b、15aが駆動する。
この第2実施形態の構成によれば、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体100が誤って左右回転または移動動作することのない安全な搭乗型移動体100又は搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。さらに、背もたれ2aの姿勢センサ9a、9bの配置位置を、搭乗者91の左右肩甲骨50a、50bが接触する位置付近又は腰骨付近が接触する位置付近と、腰椎が位置する背中部分が接触する位置付近(中央下部52)に特定することにより、着座の姿勢が搭乗者91の癖により違った場合でも、操作を意図せずに姿勢を左右に大きく変動させてしまったときに、移動体100が誤って左右回転又は移動動作することがなく、安定して意図の判定を行うことが可能である搭乗型移動体及び搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。
(第3実施形態)
以下の本発明の第3実施形態にかかる搭乗型移動体及び搭乗型移動体の制御方法は、第1実施形態において、搭乗者91への通知手段(通知部)、例えば、スピーカー20を追加配置した実施形態を説明している。
図15及び図16は、本発明の第3実施形態における移動体100の外見図及びハード構成のブロック図である。圧力センサシート9a、9b、9cの位置は第1実施形態の図3と同様とする。
前進用及び後退用フットスイッチ8a、8bのオンオフ出力信号は、第1実施形態で述べた仕様で実行され、フットスイッチ8a、8bにて前進及び後退が可能となる。左右回転は、前記の第1及び第2実施形態と同様に、姿勢センサ9a、9b、9cを用いて行う。ここでも、姿勢センサ9a、9b、9cとしては、圧力センサシート9a、9b、9cを用いる。
図17は、第3実施形態における移動体100の構成であり、図18は搭乗姿勢分析と重みの学習処理の流れを示している。
図17の移動体100の構成は、パーソナルコンピュータ11、搭乗姿勢判定部120と、重み決定部121と、操作意図判定部122と、回転意図判定部123と、左右回転制御決定部104と、前進後退制御決定部101と、電圧値変換部105とを備えている。前進後退制御決定部101は、2つのフットスイッチ8a、8bからのオンオフ出力信号を受けて、左右両輪駆動用モータ用電圧値に変換したのち、電圧値変換部105に出力する。搭乗姿勢判定部120は、圧力センサシート9a、9b、9cからの出力情報が入力され、その出力情報に基づき搭乗姿勢の判定を行い、その決定結果の情報を重み決定部121に出力する。重み決定部121は、前進後退制御決定部101からの前進後退制御決定情報を基に、重み決定を行い、その決定結果の情報を操作意図判定部122に出力する。重み決定部121には、重み情報を予め記録した重み情報記憶部174が接続されており、重み情報記憶部174に記憶された重み情報を基に、重み決定を行う。操作意図判定部122は、重み決定部121からの情報に基づき、操作意図判定を行い、その判定の情報を回転意図判定部123に出力する。回転意図判定部123は、操作意図判定部122からの情報に基づき、回転意図判定を行い、その判定の情報を左右回転制御決定部104に出力する。左右回転制御決定部104は、回転意図判定部123からの情報が入力されて、その情報を左右両輪駆動用モータ用電圧加算値に変換して電圧値変換部105に出力する。電圧値変換部105は、前進後退制御決定部101からの左右両輪駆動用モータ用電圧値と左右回転制御決定部104からの左右両輪駆動用モータ用電圧加算値とから、各々の左右輪用モータ15b、15aを駆動するための電圧値を求めてモータコントローラ14に出力する。
移動体100を使用する際に、まず、移動体100を使用する前に搭乗者91に搭乗を促し、搭乗姿勢判定部120にて、予め搭乗者91の自然な搭乗姿勢における各センサ9a、9b、9cの出力値と閾値とを比べ、搭乗者91の癖を把握する。
予め、背もたれ2a及び座部2bの各々に搭乗者91が接触しているかどうかを確認するための着座確認閾値と、センサ9a、9b、9cの左右圧力差が回転意図判定部123で正しく算出されるように、センサ9a、9b、9cの出力値が上限値を超えていないかどうかを確認するための測定許容閾値を設けておく。着座確認閾値は、背もたれ2aは、何も触れていない場合の圧力値を下回らない程度の小さな値で、たとえば7×10個の圧電素子で成り立ち、各々の圧電素子が1〜5までの5段階の圧力値を出力する場合は、全体の20%の圧電素子が1以上の値を示す20を閾値としてもよい。また、座部2bは、先の第1実施形態に記載した閾値と同様に決める。また、測定許容閾値は、たとえば、各圧力センサシート9a、9b、9cをそれぞれ形成している全圧電素子数の80%の圧電素子が出力値3以上を示した場合の値を設定しても良い。
搭乗者91に搭乗を促し、搭乗姿勢判定部120にて、例えば、後述するスピーカー20又は図示しない表示装置などで搭乗者91に搭乗を促してから、所定間隔、例えば5秒置きに圧力センサシート9a、9b、9cの出力値の変動を確認する。変動は、各圧力センサシート9a、9b、9cの出力値と5秒前の出力値を搭乗姿勢判定部120で比較し、その差が、現出力値の5%の値を下回っていた場合に変動がない状態と搭乗姿勢判定部120で判定する。5秒間、各圧力センサシート9a、9b、9cの出力値が±5%の変動がない状態であると搭乗姿勢判定部120で判定した場合には、背もたれ左右上部の出力総和値及び座部出力総和値を、センサコントローラ10で算出する。 図18のステップS170において、これらの測定値が、共に前記着座確認閾値より小さいと搭乗姿勢判定部120で判定される場合は、搭乗者91が背もたれ2aにも座部2bにも接触せずに、たとえば搭乗者91が足置き1上で立位のまま搭乗している可能性があると搭乗姿勢判定部120で判定し、ステップ170Bに進み、PC11の搭乗姿勢判定部120での前記判定処理に基づき、搭乗姿勢判定部120での制御の下に、搭乗者91に座部2bに接触する姿勢で搭乗することをスピーカー20で搭乗者91に通知する。たとえば、スピーカー20から、「座部にお座りください」というメッセージを搭乗者91に発信するのでも良い。その後、再び、ステップ170に戻る。
ステップ170において、5秒間、各センサ9a、9b、9cの出力値が±5%の変動に収まった状態を搭乗姿勢判定部120で検出した場合には、背もたれ2aと座部2bの出力総和値を搭乗姿勢判定部120で算出する。算出した出力総和値が着座確認閾値を越えたと搭乗姿勢判定部120で判定したとき、ステップS170Aに進み、測定可能であることをスピーカー20から搭乗者91に通知する。その後、ステップS171に進む。このステップS170での背もたれ上部着座確認閾値の一例としては、背もたれ片側の全圧電素子(7×10個)の20%以上が1以上の値を示す場合である14を設定する。また、このステップS170での座部着座確認閾値の一例としては、座部が20×10個の圧電素子を持っており、圧力が1〜5の5段階で表される場合は、座部の半分が2を示したとする200を設定することができる。
ステップ170において、各センサ9a、9b、9cで搭乗姿勢判定部120で算出したセンサの出力値が、所定回数、例えば、5回連続して測定しても着座確認閾値以上とならない場合は、測定不可能なことを通知するか、又は、より各部位を指定した詳しいインストラクションを行う。たとえば、座部2bが着座確認閾値未満のであると搭乗姿勢判定部120で判定した場合には、その情報を基に、搭乗姿勢判定部120の制御の下にスピーカー20から搭乗者91に「座部に深く体重を乗せてください」のように、背もたれ付近まで接触するように座ることを促すことを通知してもよい。また、背もたれ2aが着座確認閾値未満のであると搭乗姿勢判定部120で判定した場合には、その情報を基に、搭乗姿勢判定部120の制御の下にスピーカー20から搭乗者91に「もう少し背にもたれるように座ってください」のように、背もたれにもたれるように座ることを促すことを通知してもよい。このように、搭乗姿勢判定部120では、種類の違う複数の出力音声データを保持しており、搭乗姿勢の確認結果によって、その結果に対応する出力音声データを選択して、スピーカー20より出力するように制御している。 ステップS171において、背もたれ左右上部の出力総和値及び座部出力総和値のどちらもが測定許容閾値より大きいか否か、搭乗姿勢判定部120で判定している。背もたれ左右上部の測定可能閾値(測定上限を表す閾値)の一例としては、各圧電素子(例えば、片側7×10個)の80%を越える圧電素子が、圧力値3以上を示す210を各々の閾値と設定することができる。また、座部の測定可能閾値の一例としては、20×10個の圧電素子の80%が、3以上480が閾値と設定することができる。
ステップS171において、背もたれ左右上部の出力総和値及び座部出力総和値のどちらもが測定許容閾値より大きいと搭乗姿勢判定部120で判定した場合は、ステップS171Aに進み、搭乗者91の体重が一定値を超えているか若しくは体型が大きすぎて正しい測定ができない可能性があり、測定不可能であることを、搭乗姿勢判定部120の制御の下にスピーカー20から搭乗者91に通知する。たとえばスピーカー20から、「申し訳ありませんが、正しい操作ができません」といメッセージを発信するのでもよい。その後、この一連の搭乗姿勢分析と重みの学習処理を終了する。
また、ステップS171において、背もたれ2a及び座部2bのどちらかのセンサ9a、9b、9cからの背もたれ左右上部総和値と座部総和値とが着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあると搭乗姿勢判定部120で判定した場合は、ステップS172に進む。
次いで、ステップS172及びS173においては、重み決定部121にて、重み情報記憶部174に記憶された重み情報に基づき、各々のセンサ9a、9b、9cの重みが設定(決定)される。すなわち、背もたれ2a及び座部2bのどちらか一つのセンサの出力値(背もたれ左右上部総和値又は座部総和値)のみ前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあると搭乗姿勢判定部120で判定した場合には、該当するセンサの重みを1とし、前記範囲外のセンサの重みをゼロにとする(ステップS172、S173)。
具体的には、まず、ステップS172においては、背もたれ2aのセンサ9a、9bの背もたれ左右上部総和値は、前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあるか否か、重み決定部121で判定する。背もたれ2aのセンサ9a、9bの背もたれ左右上部総和値が前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあると重み決定部121で判定した場合には、ステップS173に進む。背もたれ2aのセンサ9a、9bの背もたれ左右上部総和値が前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にないと重み決定部121で判定した場合には、ステップS172Aに進み、重み決定部121により、背もたれ2aのセンサ9a、9bの重みをゼロとし、座部2bのセンサ9cの重みを1とする。その後、この一連の搭乗姿勢分析と重みの学習処理を終了する。
ステップS173においては、座部2bのセンサ9cの座部総和値は、前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあるか否か、重み決定部121で判定する。座部2bのセンサ9cの座部総和値が前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にないと重み決定部121で判定した場合には、ステップS173Aに進み、重み決定部121により、座部2bのセンサ9cの重みをゼロとし、背もたれ2aのセンサ9a、9bの重みを1とする。その後、この一連の搭乗姿勢分析と重みの学習処理を終了する。
ステップS173において、座部2bのセンサ9cの座部総和値が前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあると重み決定部121で判定した場合には、ステップS173Bに進む。すなわち、どちらのセンサ9a、9b、9cの背もたれ左右上部総和値も座部総和値も前記の範囲にあると重み決定部121で判定した場合には、ステップS172からステップS173を経てステップS173Bに進み、相当するセンサ9a、9b、9cを全て用いて操作の意図又は左右回転の意図を判定できるように、重み決定部121により重みを設定する(ステップS173B)。たとえばそのまま全てのセンサ重みを1と設定してもよいが、背もたれ2aと座部2bとの圧力総和値の絶対値が大きく異なっている、たとえば5倍以上異なっていると重み決定部121で判定した場合は、重みを1とすると総和値の大きい部位が判定基準として支配的になってしまう問題が起こるので、重み決定部121により、(センサ出力値の比率の一例として)各センサ出力値の逆数を、重みとしても良い。また、前記の総和値の大きな差は、各々のセンサ9a、9b、9cに接触している面積が大きく異なっていることに起因するので、センサ9a、9b、9cの全面積で正規化するべく、重み決定部121により、面積の逆数を重みとしても良い。その後、この一連の搭乗姿勢分析と重みの学習処理を終了する。
図3に示した点線に囲まれた3箇所に設定された圧力センサシート9a、9b、9cの各圧電素子の出力は、センサコントローラ10を経てコンピュータ11に入力され、搭乗姿勢判定部120と接触位置依存型の操作意図判定部122となどにて、搭乗者91の姿勢分析と、それを踏まえた左右回転操作の意図推定が行われ、左右変化量比較型の回転意図判定部123にて、左右どちらかに移動体100を回転させる意図の推定が行われる。
意図判定の処理の流れを図19に示す。
ステップS150において、各圧電素子の圧力値は圧力センサシート9a、9b、9cごとに総和値がセンサコントローラ10で算出され、さらに座部右側圧力総和値、座部左側圧力総和値がセンサコントローラ10で算出される。
次に、ステップS151において、操作意図判定部122が、センサコントローラ10から出力された、背もたれ右上圧力総和値と背もたれ左上圧力総和値とを合算し、合算した背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値とをさらに総和した値が、着座確認閾値を越えているかどうかを判定する。
背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値との総和値が着座確認閾値を超えていると操作意図判定部122で判定した場合のみ、操作意図判定部122は、操作の意図があると判定し、ステップS180に進む。
背もたれ圧力総和値と座部圧力総和値との総和値が着座確認閾値以下であると操作意図判定部122で判定した場合には、操作意図判定部122は、操作の意図がないと判定し、判定処理及びそれに続く制御処理を中止し、移動体100は現状動作を継続する。
ここで、前記意図判定の条件は、予め設定された着座確認閾値を越えているかどうかで操作意図判定部122で判定したが、背もたれ右上圧力総和値と、背もたれ左上圧力総和値と、座部右側圧力総和値と、座部左側圧力総和値とに対する着座確認閾値を個別に設定し、左右対称に位置にある着座確認閾値が共に着座確認閾値を超えたと操作意図判定部122で判定した場合に、操作意図判定部122が、操作の意図があると判定しても良い。この際には、搭乗者91が座席3に対して極端に右側若しくは左側に偏ることなく、中央に搭乗した場合のみ、操作意図判定部122で操作の意図があると判定するため、より安全な移動体100及びその制御方法を提供することができる。
また、前記閾値は、予め多数の人が搭乗した場合の圧力値の最低値を基準に固定して用いても良いが、重み学習時に測定した各々のセンサ出力値の最低値から一定値差し引いた閾値を設定しても良い。
次に、ステップS180において、回転意図判定部123では、背もたれ右上圧力総和値と、背もたれ左上圧力総和値と、座部右側圧力総和値と、座部左側圧力総和値との各々に、重み情報記憶部174に記憶された重み情報に基づき、前記重み決定部121にて決定された重みをかけた値を、各々のセンサ値と設定する。
次いで、ステップS181において、前記センサ値を用いて、背もたれ左右センサ値の差及び座部左右のセンサ値の差を回転意図判定部123でそれぞれ算出する。
次いで、ステップS182において、各々の差の総和値が、予め設定された左右回転意図判定閾値を超えたか否かを回転意図判定部123で判定する。
各々の差の総和値が、予め設定された左右回転意図判定閾値を超えたと回転意図判定部123で判定した場合には、回転意図判定部123は、回転の意図があると判定し、ステップS183に進む。
各々の差の総和値が、予め設定された左右回転意図判定閾値以下であると回転意図判定部123で判定した場合には、回転意図判定部123は、回転の意図が無いと判定し、判定処理及びそれに続く制御処理を中止し、移動体100は現状動作を継続する(現状状態を維持する)。
このステップS182において、各々の差の総和値が正値で左右回転意図判定閾値を越えたと回転意図判定部123で判定した場合は右回り、負値で左右回転意図判定閾値以下となったと回転意図判定部123で判定した場合は左回りと、それぞれ、回転意図判定部123で判定する。
このステップS182における左右回転制御決定部104の処理、次のステップS183における電圧変換部105の処理を第1実施形態のステップS153の処理及びステップS154の処理と同様に行い、各モータ15b、15aがそれぞれ駆動される。
すなわち、左右回転制御決定部104にて、前記のステップS182の処理で、回転方向が左か右かが決まれば、電圧加算値が一意に決まるものとし、たとえば、図8の表に従うと、右回転と決まれば、右輪用モータ15aに−0.5V、左輪用モータ15bに+0.5Vを加算するように設定される。 次に、同じステップS183において、電圧値変換部105は、前進後退制御決定部101で算出された左右駆動輪6a、6bの各電圧値に、左右回転制御決定部104にて算出された左右各々の電圧加算値を加えたものを、左右それぞれのモータ駆動のための電圧値とし、モータコントローラ14内の速度変換部106にて回転速度に変換され、各々の左右輪用モータ15b、15aが駆動する。 この第3実施形態の構成によれば、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体100が誤って左右回転又は移動動作することのない、安全な搭乗型移動体100及び搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。さらに、搭乗者91の移動中の搭乗姿勢が座部2bのセンサ9cの出力値が極端に小さい場合は、搭乗者91が座部2bに着座せず、立位又は背もたれ2aのみに寄りかかった不安定な姿勢で搭乗している可能性があるので、座部2bに着座するようにスピーカー20で通知することにより、操作の意図の判定精度が向上するだけでなく、事故の無い安全な搭乗型移動体100及び搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。
(第4実施形態)
以下の本発明の第4実施形態にかかる搭乗型移動体及び搭乗型移動体の制御方法は、第2実施形態において、搭乗者91への通知手段、例えば、スピーカー20を追加配置した実施形態を説明している。
図20及び図21は、本発明の第4実施形態における移動体100の外見図及びハード構成のブロック図である。ハード構成は、第3実施形態にて説明した図15及び図16の外見図及びハード構成図に、背もたれ2aの中央下部に圧力センサシート9dが追加配置されている以外は、図15及び図16と同様である。圧力センサシート9dの位置は第2実施形態の図5と同様とする。
本第4実施形態は、第2実施形態における圧力センサシート9a、9b、9c、9dによる操作の意図を、搭乗者91の着座の体型又は癖が違った場合でも、精度良く判定するために、予め、搭乗者91の搭乗姿勢を分析し、分析結果から搭乗者91に最適な各圧力センサシート9a、9b、9c、9dの重みを重み決定部131で決定する。
図22は処理構成図、図23は搭乗姿勢分析と重み決定の流れを示している。
図22の移動体100の構成は、パーソナルコンピュータ11は、搭乗姿勢判定部130と、重み決定部131と、操作意図判定部132と、回転意図判定部133と、左右回転制御決定部104と、前進後退制御決定部101と、電圧値変換部105とを備えている。前進後退制御決定部101は、2つのフットスイッチ8a、8bからのオンオフ出力信号を受けて、左右両輪駆動用モータ用電圧値に変換したのち、電圧値変換部105に出力する。搭乗姿勢判定部130は、圧力センサシート9a、9b、9c、9dからの出力情報が入力され、その出力情報に基づき搭乗姿勢の判定を行い、その決定結果の情報を重み決定部131に出力する。重み決定部131は、前進後退制御決定部101からの前進後退制御決定情報を基に、重み決定を行い、その決定結果の情報を操作意図判定部132に出力する。重み決定部131には、重み情報を予め記録した重み情報記憶部197が接続されており、重み情報記憶部197に記憶された重み情報を基に、重み決定を行う。操作意図判定部132は、重み決定部131からの情報に基づき、操作意図判定を行い、その判定の情報を回転意図判定部133に出力する。回転意図判定部133は、操作意図判定部132からの情報と圧力センサシート9a、9b、9cからの出力情報とに基づき、回転意図判定を行い、その判定の情報を左右回転制御決定部104に出力する。左右回転制御決定部104は、回転意図判定部133からの情報が入力されて、その情報を左右両輪駆動用モータ用電圧加算値に変換して電圧値変換部105に出力する。電圧値変換部105は、前進後退制御決定部101からの左右両輪駆動用モータ用電圧値と左右回転制御決定部104からの左右両輪駆動用モータ用電圧加算値とから、各々の左右輪用モータ15b、15aを駆動するための電圧値を求めてモータコントローラ14に出力する。
以下、搭乗姿勢分析と重み決定の処理の流れについて図23を基に説明する。
まず、ステップS190において、搭乗姿勢判定部130にて、移動体100を使用する前に、予め、搭乗者91が搭乗した際の各圧力センサシート9a、9b、9c、9dの出力値を比べる。予め、背もたれ2a及び座部2bの各々に搭乗者91が背もたれ2a又は座部2bに接触しているかどうかを確認するための着座確認閾値と、圧力センサシート9a、9b、9c、9dの操作の意図及び左右回転の意図を測定するための許容値を超えていないかどうかを確認するための測定許容閾値を搭乗姿勢判定部130に設けておく。背もたれ中央下部の着座確認閾値は、第2実施形態と同様であり、座部着座確認閾値は第3実施形態と同様である。背もたれ中央下部及び座部の測定許容閾値は、第3実施形態と同様に、たとえば、各圧力センサシート9c、9dをそれぞれ形成している全圧電素子数の80%の圧電素子が出力値3以上を示した場合の値を設定しても良い。
第3実施形態と同様に、例えば、後述するスピーカー20又は図示しない表示装置などで搭乗者91に搭乗を促し、搭乗姿勢判定部130にて、搭乗を促してから、所定間隔、例えば5秒置きに圧力センサシート9a、9b、9c、9dの出力値の変動を確認する。変動は、各圧力センサシート9a、9b、9c、9dの出力値と5秒前の出力値を搭乗姿勢判定部120で比較し、その差が、現出力値の5%の値を下回っていた場合に変動がない状態と搭乗姿勢判定部120で判定する。5秒間、各圧力センサシート9a、9b、9cの出力値が±5%の変動がない状態であると搭乗姿勢判定部120で判定した場合には、背もたれ左右上部の出力総和値及び座部出力総和値を、センサコントローラ10で算出する。
そして、このステップS190において、座部センサ9cの出力総和値が着座確認閾値を越えているか否か、搭乗姿勢判定部130で判定する。座部センサ9cの出力総和値が着座確認閾値以下であると搭乗姿勢判定部130で判定された場合は、たとえば搭乗者91が乗降時など着座せずに背もたれ2aにのみ体重をかけているか、又は、搭乗者91が立位で搭乗している可能性があり、ステップS190Aに進み、搭乗姿勢判定部130は、安全のために座部2bに着座することを通知する。たとえば、スピーカー20から、「座部にお座りください」というメッセージを発信するのでも良い。その後、再び、ステップS190に戻る。
ステップS190において、座部センサ9cの出力総和値が着座確認閾値を越えていると搭乗姿勢判定部130で判定する場合には、ステップS191に進む。
ステップS191においては、背もたれ左右上部の出力総和値及び背もたれ中央下部の出力総和値がそれぞれ共に前記着座確認閾値を越えているか否か、搭乗姿勢判定部130で判定する。背もたれ左右上部の出力総和値及び背もたれ中央下部の出力総和値がそれぞれ共に前記着座確認閾値以下である場合は、ステップS191Aに進み、搭乗姿勢判定部130は、背もたれに接触せずにたとえば立位のままや、前に大きく体を曲げて搭乗している可能性が有ると判定し、その情報を基に、搭乗姿勢判定部130の制御の下にスピーカー20から搭乗者91に、安全のために搭乗者91に背もたれに接触する姿勢で搭乗することを通知する。たとえば、スピーカー20から、「座部に深くお座りください」若しくは、「腰が背もたれに触れるまで、深くお座りください」というメッセージを発信するのでも良い。その後、再び、ステップS190に戻る。
ステップS192において、背もたれ左右上部の出力総和値と座部出力総和値のどちらもが測定許容閾値より大きいか否か、搭乗姿勢判定部130で判定する。背もたれ左右上部の出力総和値と座部出力総和値のどちらもが測定許容閾値より大きいと搭乗姿勢判定部130で判定した場合は、ステップS192Aに進み、搭乗者91の体重が一定値を超えている若しくは体型が大きすぎて正しい測定ができない可能性があり、測定不可能であることを搭乗者91に通知する。たとえばスピーカー20から、「申し訳ありませんが、正しい操作ができません」といメッセージを発信するのでもよい(ステップS192)。その後、この一連の搭乗姿勢分析と重み決定の処理を終了する。
ステップS192において、背もたれ左右上部の圧力センサシート9a、9bの出力総和値及び背もたれ中央下部の圧力センサシート9dの出力総和値のうち、どちらか一つでも着座確認閾値と測定許容閾値の間の範囲にあり、しかも、座部センサ出力が着座確認閾値以上であると搭乗姿勢判定部130で判定した場合は、ステップS193に進む。
ステップS193においては、各センサ9a、9b、9c、9dの出力値が重み決定部131に入力されて、センサ9a、9b、9c、9dの出力値が重み決定部131の記憶部196に保存される。
次いで、ステップS194及びS195においては、重み決定部131にて、記憶部196に保存されたセンサ9a、9b、9c、9dの出力値と重み情報記憶部174に記憶された重み情報とに基づき、各々のセンサ9a、9b、9c、9dの重みが設定(決定)される。たとえば、着座確認閾値と測定許容閾値の間に出力値があったセンサの重みを1とし、それ以外の出力値のセンサの重みをゼロとしても良い。
具体的には、まず、ステップS194においては、背もたれ2aのセンサ9a、9bの背もたれ左右上部総和値は、前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあるか否か、重み決定部131で判定する。背もたれ2aのセンサ9a、9bの背もたれ左右上部総和値が前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあると重み決定部131で判定した場合には、ステップS195に進む。背もたれ2aのセンサ9a、9bの背もたれ左右上部総和値が前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にないと重み決定部131で判定した場合には、ステップS194Aに進み、重み決定部131により、背もたれ2aのセンサ9a、9bの重みをゼロとし、座部2bのセンサ9cの重みを1とする。その後、この一連の搭乗姿勢分析と重み決定の処理を終了する。
ステップS195においては、座部2bのセンサ9cの座部総和値は、前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあるか否か、重み決定部131で判定する。座部2bのセンサ9cの座部総和値が前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にないと重み決定部131で判定した場合には、ステップS195Aに進み、重み決定部131により、座部2bのセンサ9cの重みをゼロとし、背もたれ2aのセンサ9a、9bの重みを1とする。その後、この一連の搭乗姿勢分析と重み決定の処理を終了する。
ステップS195において、座部2bのセンサ9cの座部総和値が前記の着座確認閾値と測定許容閾値との間の範囲にあると重み決定部131で判定した場合には、ステップS195Bに進む。
ステップS195Bにおいては、背もたれ左右上部センサの出力値(背もたれ左右上部の出力総和値)と座部センサ出力値(座部出力総和値)とのどちらも前記の範囲にあると重み決定部131で判定された場合であり、第3実施形態と同様に、たとえばそのまま全てのセンサ重みを1と設定しても良いし、各センサの全面積で正規化するべく、面積の逆数を重みとしても良い。また、各センサ出力値の逆数を重みとしても良い。
なお、決定された重みと、各センサの出力総和値とは重み決定部131の記憶部196に保存される。
次に、実際に移動体100を使用する際には、まず、前進用フットスイッチ8a若しくは後退用フットスイッチ8bのオンオフ出力信号は、第1実施形態で述べた仕様で実行される。図3に示した点線に囲まれた3箇所に設定された圧力センサシート9a、9b、9cの各圧電素子の出力は、センサコントローラ10を経てパーソナルコンピュータ11に入力され、接触位置依存型の操作意図判定部132にて、搭乗者91の姿勢分析と、それを踏まえた左右回転操作の意図推定が行われ、左右変化量比較型の回転意図判定部133にて、左右どちらかに移動体100を回転させる意図の推定が行われる。
この際の詳細な意図判定フローを図24に記載する。
まず、ステップS150において、圧力センサシート9a、9b、9c、9dの各圧電素子の圧力値は圧力センサシート9a、9b、9c、9dごとに総和値がセンサコントローラ10で算出され、さらに座部右側圧力総和値、座部左側圧力総和値がセンサコントローラ10で算出される。
次に、ステップS200において、操作意図判定部132では、予め設定された着座確認閾値を用いてもよいが、各着座確認閾値を、前記にて重み決定部131の記憶部196に格納した各センサ9a、9b、9c、9dの出力総和値を基に再設定してもよい。この着座確認閾値は、第1実施形態でも記載したように、搭乗者91が移動体100に搭乗してこれから操作したい思う姿勢をとった際の背もたれ2aと座部2bにかかる圧力総和値を下回らないように設定するべきである一方、搭乗者91が着座しながらも各自の搭乗姿勢の癖の範囲で姿勢を変動させた場合にも、変動した値を上回らない値に設定することも考慮すべきである。たとえば経験的には、重み決定部131の記憶部196に格納された各センサ出力値の半分の値を設定するのが妥当である。
次に、ステップS201において、背もたれ中央下部センサ出力総和値又は背もたれ左右上部のセンサ出力総和値のどちらか又は両方と座部出力総和値とが、再設定された各々の着座確認閾値を越えているかどうかを操作意図判定部132で判定する。背もたれ中央下部センサ出力総和値又は背もたれ左右上部のセンサ出力総和値のどちらか又は両方と座部出力総和値とが、共に、各々の着座確認閾値を超えていると操作意図判定部132で判定した場合、操作意図判定部132は操作の意図があると判定して、ステップS202に進む。前記の条件を満たさないと操作意図判定部132で判定した場合には、操作意図判定部132は、操作の意図がないと判定し、判定処理及びそれに続く制御処理を中止し、移動体100は現状動作を継続する。前記意図判定の条件では、座部2bに関しては、座部圧力総和値を用いて判定したが、座部右側圧力総和値、座部左側圧力総和値が各々の閾値を超えている際に操作の意図があると判定しても良く、この際には、搭乗者91が、座席3に関して極端に右側もしくは左側に偏ることなく中央に搭乗した場合のみ、操作の意図があると操作意図判定部132で判定するため、より安全な移動体100を提供することができる。
次に、ステップS202においては、回転意図判定部133で、背もたれ右上部圧力総和値と、背もたれ左上部圧力総和値と、座部右側圧力総和値と、座部左側圧力総和値との各々に、前記重み決定部131にて決定された重みをかけた値を各々のセンサ値と設定する。
次いで、ステップS203において、これらのセンサ値を用いて、背もたれ左右センサ値の差及び座部左右のセンサ値の差を回転意図判定部13で算出する。
次いで、ステップS204において、背もたれ左右センサ値の差及び座部左右のセンサ値の差の総和値が、予め設定された左右回転意図判定閾値を超えたと回転意図判定部133で判定した場合に、回転意図判定部133は、回転の意図があると判定し、ステップS183に進む。
背もたれ左右センサ値の差及び座部左右のセンサ値の差の総和値が、予め設定された左右回転意図判定閾値以下であると回転意図判定部133で判定した場合には、回転意図判定部133は、回転の意図が無いと判定し、判定処理及びそれに続く制御処理を中止し、移動体100は現状動作を継続する(現状状態を維持する)。
このステップS204において、前記差が正値で左右回転意図判定閾値を越えたと回転意図判定部133で判定した場合は右回り、負値で閾値が以下となったと回転意図判定部133で判定した場合は左回りと回転意図判定部133で判定する。
次のステップS183においては、左右回転制御決定部104の処理及び電圧変換部105の処理を第1実施形態と同様に行い、各モータ15b、15aが駆動される。
この第4実施形態の構成によれば、たとえ操作以外の他の動作を意図して大きく姿勢変化が起きた場合でも、移動体100が誤って左右回転又は移動動作することのない安全な搭乗型移動体100及び搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。さらに、搭乗姿勢によって各センサ出力値が測定上限閾値を上回った場合に該当するセンサの重みをゼロにする処理を行うことにより、左右回転の意図を反映できないセンサを除外し、回転の意図をより精度良く反映した、誤動作のない搭乗型移動体及び搭乗型移動体の制御方法を提供することができる。
なお、本発明は、立位乗車移動体に限らず、通常の座位乗車移動体も適用可能である。
(第5〜第8実施形態)
以下、図面を参照して本発明における第5〜第8実施形態を詳細に説明する前に、関連する従来技術について、まず、説明する。
本発明の第5〜第8実施形態は、略立位姿勢(中立位)で乗車する移動体にいて搭乗者が姿勢を変化させることによって操舵する移動支援機器である立位乗車移動体(a single-seat vehicle with a standing position)、立位乗車移動体の旋回制御方法、及び、立位乗車移動体の旋回制御用プログラムに関する。
近年、高齢者又は身障者にとって安全で快適に暮らせる生活環境の整備が進んでいる。
例えば、住宅内及び公共施設において、バリアフリー化が進んでいる。その結果、高齢者又は身障者が自ら移動できる範囲が広がっている。
そのような中、高齢者又は身障者が一人でも自在に操れる移動支援機器に注目が集まっている。従来の移動支援機器では、ハンドル又はジョイステックレバーを用いて機器を操作していたが、搭乗者が、搭乗者自身の姿勢の変形を利用して移動支援機器を操作する技術が提案されている。また、それと同時に、電動車椅子のように膝を大きく曲げて腰掛ける形状の座席では、座ったり、立ち上がったりする動作が搭乗者にとって大きな負担となることから、できるだけ立った姿勢に近い状態で搭乗できるような形式の移動支援機器が望まれている。
従来の移動支援機器としては、移動体に搭乗している運転者の姿勢を検知することで、運転者の意図した動作をさせるものがあった(例えば、特許文献3(特開2004−16275号公報)参照)。図45A及び図45Bに、特許文献3に記載された従来の移動体を示す。
図45A及び図45Bにおいて、移動体である電動車椅子1010は、座席1011に着座する運転者Dを搭乗させて地上を走行し、座席1011の下部に設けられて運転者Dの姿勢変化を検出する姿勢センサ1020と、前輪1012の向きを検出する方向センサ1021と、移動速度を検出する車速センサ1022と、前輪1012の向きを変更する操舵部1023と、後輪1013を駆動する駆動部1024と、後輪1013を制動する制動部1025と、各部を制御する制御部1026とを備える。姿勢センサ1020は、運転者Dが体を前後左右方向のいずれかへ傾けるような姿勢変化を行うことに応じて生じる座席1011の変量又は物理量を検出する。制御部1026は、その検出結果に基づき、運転者Dが意図する動作、例えば、加速、減速、左旋回、又は右旋回の動作を推定して運転制御を行う。
しかしながら、従来の移動支援機器によると、立位あるいは立位に近い状態(略立位姿勢)で搭乗する移動支援機器の場合には、それを操舵し難いという課題があった。
従来の移動支援機器では、移動体を操舵する搭乗者は椅子に腰掛けており、搭乗者の上腿と脊椎のなす角度は、概ね90度(90度〜100度)になっている。さらに、搭乗者の体重による負荷は、主に尾てい骨とその周辺(臀部)に掛かり、膝に対してはほとんど負荷が掛かっていない。加えて、搭乗者が、例えば尾てい骨の回りに水平方向に回転するとき、尾てい骨と膝との水平方向距離が大きい。そのため、膝を作用点とした回転軸の周りのモーメントを大きくすることができるため、搭乗者は、足元を一箇所に固定したままで、足裏を支点、膝を作用点として足首を搭乗者自身から見て左右に屈曲させ、下腿を左右に振るように動作することによって、椅子をヨー方向に回動させることができる。この際、搭乗者は上半身の姿勢を変えていない。
ところが、略立位姿勢で搭乗する移動支援機器では、上腿及び下腿のなす角は概ね130度以上(130度〜180度)になっており、膝に体重の負荷が加わっている点と、尾てい骨と膝との水平方向距離が短いという点が座位姿勢の場合とは大きく異なっている。そのため、座った状態と比べて、回転軸の周りのモーメントが小さくならざるを得ない。したがって、立位あるいは立位に近い状態で搭乗する移動支援機器では、下半身を使って椅子(座部と背凭れ(もたれ)部のあるもの、とする)にヨー方向の変位を生じさせて機器を操舵するのは困難である。また、略立位姿勢では、足裏と臀部との間で安定に保持された下半身とは異なり、上半身は遠心力によるブレが大きく、不安定である。そのため、上半身の自由度を確保した上で上半身を安定に保持し、移動支援機器を操舵する装置が必要であった。
そこで、本発明の第5〜第8実施形態は、前記従来の課題を鑑み、略立位にある搭乗者の姿勢を安定に保持しながら、その姿勢の変化を検知することによって搭乗者の意図した操舵を実現することのできる立位乗車移動体、立位乗車移動体の旋回制御方法、及び、立位乗車移動体の旋回制御用プログラムを提供することを目的とする。
以下、本発明の第5〜第8実施形態の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、搭乗者の姿勢変形によって操舵する立位乗車移動体であって、
前記立位乗車移動体は、前記搭乗者が乗車したとき略立位となるように設けられた座部と背凭れ部とを備え、
前記背凭れ部は、前記搭乗者の体幹に接触可能な位置に配置されて前記立位乗車移動体の本体に固定される固定背凭れ部と、前記立位乗車移動体の本体に対して移動可能に取り付けられて前記搭乗者の姿勢変形に追随可能な第1の可動背凭れ部及び第2の可動背凭れ部とを備え、
前記第1の可動背凭れ部と第2の可動背凭れ部は、前記固定背凭れ部に対して左右対称に配置されており、
前記第1の可動背凭れ部と前記第2の可動背凭れ部とのそれぞれの変位を検知するセンサと、
前記センサでそれぞれ検知した前記それぞれの変位から変位量をそれぞれ算出し、前記変位量に基づいて駆動指令を出力して、前記立位乗車移動体を旋回させる走行制御部とをさらに備えることを特徴とする立位乗車移動体を提供する。
本発明の第2態様によれば、前記固定背凭れ部は、前記搭乗者の少なくとも脊椎部あるいは腰椎部と接触可能な位置に配置され、
前記第1の可動背凭れ部と前記第2の可動背凭れ部は、前記搭乗者の左右の肩甲骨とそれぞれ接触可能な位置に配置されることを特徴とする第1の態様に記載の立位乗車移動体を提供する。
本発明の第3態様によれば、前記第1の可動背凭れ部と前記第2の可動背凭れ部の正面は、前記固定背凭れ部の正面と略同一平面上に設けられ、
前記第1の可動背凭れ部と前記第2の可動背凭れ部のそれぞれの変位の主方向は、前記平面に対して垂直な方向であることを特徴とする第1又は2の態様に記載の立位乗車移動体を提供する。
本発明の第4態様によれば、前記走行制御部は、前記第1の可動背凭れ部と前記第2の可動背凭れ部のそれぞれの変位を距離にそれぞれ換算し、前記距離の変化量に応じて駆動指令を変更することを特徴とする第1〜3のいずれか1つの態様に記載の立位乗車移動体を提供する。
本発明の第5態様によれば、前記第1の可動背凭れ部と前記第2の可動背凭れ部のそれぞれと前記固定背凭れ部とは、それぞれ、弾性体によって連結されて、前記立位乗車移動体の本体に対して移動可能となっていることを特徴とする第1〜4のいずれか1つの態様に記載の立位乗車移動体を提供する。
本発明の第6態様によれば、搭乗者の姿勢変形によって操舵し、かつ、
前記搭乗者が乗車したとき略立位となるように設けられた座部と背凭れ部とを備え、
前記背凭れ部は、前記搭乗者の体幹に接触可能な位置に配置されて前記立位乗車移動体の本体に固定される固定背凭れ部と、前記立位乗車移動体の本体に対して移動可能に取り付けられて前記搭乗者の姿勢変形に追随可能な第1の可動背凭れ部及び第2の可動背凭れ部とを備え、
前記第1の可動背凭れ部と第2の可動背凭れ部は、前記固定背凭れ部に対して左右対称に配置されている立位乗車移動体の旋回制御方法であって、
前記第1の可動背凭れ部と前記第2の可動背凭れ部とのそれぞれの変位をセンサで検知し、
走行制御部により、前記センサでそれぞれ検知した前記それぞれの変位から変位量をそれぞれ算出し、前記変位量に基づいて駆動指令を出力して、前記立位乗車移動体を旋回させることを特徴とする立位乗車移動体の旋回制御方法を提供する。
本発明の第7態様によれば、搭乗者の姿勢変形によって操舵し、かつ、
前記搭乗者が乗車したとき略立位となるように設けられた座部と背凭れ部とを備え、
前記背凭れ部は、前記搭乗者の体幹に接触可能な位置に配置されて前記立位乗車移動体の本体に固定される固定背凭れ部と、前記立位乗車移動体の本体に対して移動可能に取り付けられて前記搭乗者の姿勢変形に追随可能な第1の可動背凭れ部及び第2の可動背凭れ部とを備え、
前記第1の可動背凭れ部と第2の可動背凭れ部は、前記固定背凭れ部に対して左右対称に配置された第1の可動背凭れ部と第2の可動背凭れ部とを備える立位乗車移動体の旋回制御用プログラムであって、
コンピュータに、
前記第1の可動背凭れ部と前記第2の可動背凭れ部とのそれぞれの変位を検知するセンサでそれぞれ検知した前記それぞれの変位から変位量をそれぞれ算出し、前記変位量に基づいて駆動指令を出力して、前記立位乗車移動体を旋回させる走行制御部として機能させるための、立位乗車移動体の旋回制御用プログラムを提供する。
本発明の立位乗車移動体、立位乗車移動体の旋回制御方法、及び、立位乗車移動体の旋回制御用プログラムによれば、略立位で搭乗する搭乗者の姿勢を安定に保持しながら、搭乗者の姿勢の変化を検知することによって搭乗者の意図した操舵を実現することができる。特に、前記搭乗者の接触により可動背もたれ部が可動なため、搭乗者が可動背もたれ部を押したことが、搭乗者自身にも周囲の歩行者にも明確に実感でき、走行操作を円滑に行うことができる。
以下、本発明の第5〜第8実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面での参照符号は、他の実施形態と明確に区別するため、全て一千番台で示している。
(第5実施形態)
以下、まず、本発明の第5実施形態にかかる立位乗車移動体の概略を説明し、その後、その詳細にについて、説明する。
図26A及び図26Bは、第5実施形態にかかる立位乗車移動体1100の構成とその利用環境とを示す。立位乗車移動体1100は移動支援機器の一例である。
図26Aは、立位乗車移動体の斜視図である。立位乗車移動体1100は、立位乗車移動体1100に搭乗する搭乗者1105の操作に応じて、移動する機器である。例えば、搭乗者1105は、搭乗者1105の足元に設けられた前進用フットスイッチ1051又は後退用フットスイッチ1052を操作することにより、立位乗車移動体1100を前又は後に移動させることができる。また、搭乗者1105の背面に設けられた背凭れ部1053を操作することにより、立位乗車移動体1100を左右方向に回転移動させることができる。
搭乗者1105は、ほぼ立った状態(略立位姿勢(中立位))で、立位乗車移動体1100に搭乗している。ここで、ほぼ立った状態とは、大腿と骨盤あるいは脊椎中心線が概ね135度となるような姿勢を意味する。以下、この立った状態を「略立位」と言う。
図26Bは、搭乗者1105が立位乗車移動体1100に搭乗し、例えばショッピングセンター内の商品陳列コーナーを移動しているときの例を示す。搭乗者1105は、立位乗車移動体1100を使用して、商品陳列棚1060に挟まれた通路1063に沿って走行したり停止することができる。よって、搭乗者1105は、立位乗車移動体1100を所望の商品陳列棚1060まで走行させて停止させ、商品陳列棚1060の商品1061を手に取ったり、通路1063に沿って立位乗車移動体1100を走行させて、障害物1062(他の歩行者を含む)を避けたりしながら、人間の歩行速度と同程度の速さ、すなわち、5km/時程度で進行することができる。
図27は、第5実施形態における、旋回制御装置を備えた立位乗車移動体の概略を表す鳥瞰図である。
図26A及び図27において、立位乗車移動体1100は、立位乗車移動体本体部1100Bと、座席1070とで大略構成している。
立位乗車移動体本体部1100Bは、車両基部1160と支持台1103とで構成されている。
車両基部1160は、立位乗車移動体1100に乗車した搭乗者1105の足裏を支持する足置き面PS2を有する板状の足置き1071を含む車台1107と、車台1107の両側に回転可能に配置された複数の車輪1106(1106a,1106b,1106c,1106d)とを有している。
支持台1103は、車台1107から上向きに起立するように座席用支柱1074が固定されて、座席用支柱1074で座席1070を支持して構成されている。
座席1070は、座席用支柱1074の上部に設けられ搭乗者1105が腰掛けて搭乗者1105の臀部と坐骨を支持する座面PS3を有する座部1104と、座部1104の上部に設けられ搭乗者1105が背中を凭れて搭乗者1105の腰から背中を支持する背凭れ面PS1を有する背凭れ部1053とを有している。
背凭れ部1053は、固定背凭れ部1101と、立位乗車移動体1100の移動を操作する可動背凭れ部(第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102b)とを備えている。詳しくは後述するが、搭乗者1105の左又は右の肩甲骨及びその周辺部で第1可動背凭れ部1102a又は第2可動背凭れ部1102bを押圧することにより、立位乗車移動体1100の左又は右の旋回運動を行うことができて、第1可動背凭れ部1102a又は第2可動背凭れ部1102bは左右旋回の操舵機能を持つように構成している。なお、固定背凭れ部1101は座席用支柱1074の上部に設けてもよい。
固定背凭れ部1101は、搭乗者1105の体幹1105fと接触するように調整されている。なお、搭乗者1105の「体幹」1105fとは、搭乗者1105の脊椎及びその周辺部、又は、腰椎及びその周辺部を意味するものとし、それらの両方又は一方を含むものとする。
第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bは、立位乗車移動体1100を正面から見て、固定背凭れ部1101に対してそれぞれ左右対称の位置に配置されている。立位乗車移動体1100が、停止状態あるいは直線走行状態(「通常状態」とする)にあっては、第1可動背凭れ部1102aと第2可動背凭れ部1102bと固定背凭れ部1101とは、それぞれが、主として、搭乗者1105の右肩甲骨と左肩甲骨と体幹1105fとに接触する面が同一平面内にある。具体的には、第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bは、それぞれ搭乗者1105の右肩甲骨とその周辺部(右肩部1105g)、左肩甲骨とその周辺部(左肩部1105h)と、それぞれ、接触するように調整されている。なお、ここでは、体幹1105fと対比し、「肩甲骨とその周辺部」を「体側」とも表現する。
移動体本体1100Bは、その後部に制御部格納部1072が配置され、移動体本体1100Bの下部の車台1107上にバッテリ及びモータ格納部1073が配置されている。座席1070は、立位乗車移動体1100の上部側に、移動体本体1100Bの下部から、支持台1103の一例である座席用支柱1074を介して、上下方向に位置調整可能に配置されている。
足置き1071は、移動体本体1100Bの下部の前部側に固定されている。移動体本体1100Bの下部の車台1107には、例えば、その両側面に、合計4個の車輪1106a,1106b,1106c,1106dをそれぞれ回転可能に配置して、4個の車輪1106a,1106b,1106c,1106dで立位乗車移動体1100が前後移動可能及び旋回可能としている。座席1070の座部1104は、移動体本体1100Bの下部から座席用支柱1074を介して上下方向に位置調整可能に配置されており、座席1070の上方には、座席用支柱1074に連結された一対の背凭れ部用支柱1075を介して背凭れ部1053が固定配置されている。
図26A及び図27に示すように、搭乗者1105が足置き1071に両足を乗せ、背凭れ部1053に背中を持たせかけ、座部1104の座面PS3に臀部を乗せて、立位と同等の頭部位置を維持する姿勢で搭乗者1105の身体を支える状態を「略立位姿勢」又は「ほぼ立った状態」又は「中立位による乗車」とする。このときの搭乗者1105の姿勢を「中立位」とする。また、背凭れ部1053への接触の有無に関わらず、座部1104の座面PS3に搭乗者1105の臀部を乗せることを、「座部1104への着座」とする。
背凭れ部1053は、搭乗者1105が楽に中立位を保ち、かつ、首の負荷なしに頭部を鉛直に立てて保つことができるように、搭乗者1105の腰から背中を支持可能としている。背凭れ部1053は、座部1104の座面PS3及び足置き1071の足置き面PS2に対して、搭乗者1105の腰から背中を支持できる背もたれ角度(約10度後方に傾斜した角度)を有する。このように、搭乗者1105が中立位により立位乗車移動体1100に乗車した状態で、搭乗者1105が、前進する方向に対して10度、後方に傾斜していることは、搭乗者1105にとって自然な姿勢であり、前傾して作業する動作又は立ち上がる動作がし易いことになる。
先に述べたように、図26Aに示す立位乗車移動体1100は、搭乗者1105の腰から背中を支持する背もたれ面を有する背凭れ部1053と、搭乗者1105の臀部と坐骨を支持する座面を有する座部1104とを含む座席1070とを備える。
背もたれ中心部中央上部の固定背凭れ部1101は、背凭れ部1053のうち、搭乗者1105の脊椎及び腰椎の湾曲部を支える部分の扁平部分であって、中立位で乗車した搭乗者1105の頭部位置を安定させることができる。例えば、固定背凭れ部1101は、背凭れ部1053の左右幅方向に対して中央の約3分の1程度の幅の部分を指す。
第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bは、背凭れ部1053のうち、背もたれ中央上部の固定背凭れ部1101の両側に配置されるように固定背凭れ部1101と連結され、搭乗者1105の脊椎の両側部分を支える部分の上部側部の扁平部分である。第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bのそれぞれは、背凭れ部1053の左右幅方向に対してそれぞれ約3分の1程度ずつの幅の部分を指す。
また、座部1104は、その両側にサイドガード1104gが配置されて、鉛直方向の面を成すもので、搭乗者1105が中立位で乗車した際に、座部1104に対して横方向へ身体位置がずれることを防ぐものである。
座席用支柱1074は、車台1107から鉛直方向の上向きに起立するように固定されて座席1070を支持する支柱である。座席用支柱1074は、公知の位置調整機構でもって、座席1070を上下方向に位置調整可能に支持している。座席用支柱1074は、その上端に一対の平行な背凭れ部用支柱1075が固定されている。これらの座席用支柱1074と一対の平行な背凭れ部用支柱1075とで、座席1070の座部1104と背凭れ部1053を連結して、座部1104と背凭れ部1053の成す角度を維持して背凭れ部1053を支持している。
4個の車輪1106a,1106b,1106c,1106dのうち、移動体本体1100Bの下部の両側の後部には、後輪1106c,1106dが正逆回転可能に配置されている。後輪1106c,1106dは、立位乗車移動体1100の駆動輪であり、左右対を成している。後輪1106c,1106dの左右の車軸は、駆動装置の一例として機能しかつ後述するそれぞれ別々の電動モータ1114b,1114aに連結しており、モータ制御部1113で左右独立して回転が制御される。
4個の車輪1106a,1106b,1106c,1106dのうち、移動体本体1100Bの下部の両側の前部には、後輪1106c,1106dよりも小径の前輪1106a,1106bが正逆回転自在に配置されている。前輪1106a,1106bは、立位乗車移動体1100の前輪であり、左右対を成している。各前輪1106a,1106bは、自在軸受けで車輪を回転自在に支えるキャスタと同様の構造である。左右の前輪1106a,1106bはそれぞれに自在軸受けにより360度どちらにも向きを変えるため、後輪1106c,1106dの駆動に従って全方向に進行可能である。
制御部格納部1072には、後述する、制御用コンピュータ及びメモリで構成される走行制御部1110が格納されている。走行制御部1110のモータ制御部1113は、左右の電動モータ1114b,1114aを、それぞれ独立して駆動制御し、左右の後輪1106c,1106dの車軸を正逆回転させる。具体的には、モータ制御部1113により、立位乗車移動体1100の前進、後退、左右の旋廻、及び、停止といった動作を、搭乗者1105の指示入力に従って決定し、駆動輪である後輪1106c,1106dの回転方向(前回転、後回転、左右で逆回転、及び、回転停止)と回転速度を制御する。
移動体本体1100Bの下部に配置されたバッテリ及びモータ格納部1073には、立位乗車移動体1100の動作に必要な電力を供給するバッテリ(図示せず)と、前記の左右の後輪1106c,1106dの車軸にそれぞれ連結された、左右の電動モータ1114b,1114aとを格納している。バッテリは、前記制御部格納部1072に格納された制御用コンピュータ及びメモリと、バッテリ及びモータ格納部1073に格納されかつ左右の後輪1106c,1106dを回転させる左右の電動モータ1114b,1114aと、下記の操作入力手段とに、それぞれ、動作に必要な電力を供給する。
足置き1071の前端部には、前進用フットスイッチ1051及び後退用フットスイッチ1052が配置されている。これらの前進用フットスイッチ1051及び後退用フットスイッチ1052は、搭乗者1105が立位乗車移動体1100の操作を行うための操作入力手段(前後走行制御装置)の例である。第5実施形態の例では、前進用フットスイッチ1051及び後退用フットスイッチ1052は左右対に配置されており、例えば、右側の前進用フットスイッチ1051は、スイッチの踏み込みにより、モータの制御部1113に対して前進の指示を入力するスイッチであり、左側の後退用フットスイッチ1052は、スイッチの踏み込みにより、モータの制御部1113に対して後退の指示を入力するスイッチである。
座席用支柱1074と座部1104とは、搭乗者1105が略立位となるように、搭乗者1105の足から尾てい骨までの高さに合わせて、座席用支柱1074に備えた公知の位置調整機構を使用して、座席用支柱1074で支持する座席1070の高さを決める。例えば、青年男子の最大100cmから子供の50cmの間で、座席1070の高さを変更できる構成とする。その結果、搭乗者1105が略立位となるように座席1070の高さを調節できる。また、固定背凭れ部1101もまた、公知の位置調整機構を使用して、搭乗者1105が略立位の姿勢で凭れ掛かれるように、その位置又は傾斜角が調整できるようにしてもよい。
なお、図27において、背凭れ部1053の形状を図28Aのように直方体として表示している。すなわち、第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bは同一形状でかつ同一の大きさの直方体とし、固定背凭れ部1101は、可動背凭れ部よりも長い直方体としている。
しかしながら、図28Bに示すように、搭乗者1105の体型にフィットし、姿勢変形を阻害しないような形状であることが好ましい。図26Aの立位乗車移動体は、図28Bの背凭れ部1053の形状を採用したものである。すなわち、第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bは同一形状でかつ同一の大きさで角が丸い直方体としている。固定背凭れ部1101は、第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bの間は細く、第1可動背凭れ部1102aと第2可動背凭れ部1102bとの隙間より下方では末広がりに広がって、第1可動背凭れ部1102aと第2可動背凭れ部1102bとよりも長くなっている。
また、搭乗者1105の体の部位の位置関係を図29Aに示し、背凭れ部1053と搭乗者1105の部位との位置関係を図29Bに示す。すなわち、図29A及び図29Bより明らかなように、固定背凭れ部1101は、搭乗者1105の腰椎とその周辺部及び脊椎とその周辺部と主に接触し、搭乗者1105を保持する。第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bは、それぞれ、搭乗者1105の右肩甲骨とその周辺部(右肩部1105g)、左肩甲骨とその周辺部(左肩部1105h)と接触する。
図30A及び図30Bは、図26Aの立位乗車移動体1100の旋回制御装置のうちの背凭れ部1053と立位乗車移動体本体部1100Bとの連結構造を上から見た概略上面図である。図30Aの(1)は、立位乗車移動体1100の搭乗者1105の未搭乗時(自然状態)で後述する、弾性体の一例としてのスプリング1108a,1108bが自然長での旋回制御装置を示す概略上面図である。図30Aの(2)は、立位乗車移動体1100の直進時(通常状態)でスプリング1108a,1108bが圧縮された状態での旋回制御装置の概略上面図である。図30Aの(3)は、立位乗車移動体1100の旋回時の旋回制御装置の概略上面図である。
図30Aの(1)に示すように、固定背凭れ部1101は、その背面が板状の支持部1109に対して固定されている。また、支持部1109は、座席用支柱1074の上部に固定されている。座席用支柱1074は、車台1107と一体となっているため、固定背凭れ部1101は車台1107(図示せず)と一体となっていることになる。なお、支持部1109は、座席用支柱1074の側面に固定してもよい。
第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの背面には、それぞれ弾性体の一例である各1個の第1及び第2スプリング1108a及び1108bの一端とそれぞれ連結されている。さらに、第1及び第2スプリング1108a及び1108bの他端は、それぞれ、固定背凭れ部1101と一体の板形状の支持部1109と連結されている。よって、固定背凭れ部1101は支持部1109に対して移動不可に固定されている一方、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bは、それぞれ、第1及び第2スプリング1108a及び1108bの伸縮により、支持部1109に対して移動可能に支持されている。このようにして、車台1107と一体化して立位乗車移動体本体部1100bに固定された固定背凭れ部1101に対して可動な状態にある第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bを実現することができる。これらの第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bの可動状態、言い換えれば、伸縮の度合い(変位)を、後述する、変位検出センサ1115a及び1115bで検出して、検出結果に基づき操舵機能を発揮させる。
図30の(2)に、図30の(1)の連結構造において、搭乗者1105が旋回制御装置の背凭れ部1053に、左右均等にもたれている場合の一例を示す。固定背凭れ部1101は体幹1105fと接触し、第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bは体側(肩)すなわち右肩部1105gと左肩部1105hとそれぞれ接触するように配置されている。固定背凭れ部1101と第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bとは、それらの正面部を略同一平面上(搭乗者1105の背面にフィットする)に設けることが望ましい。なお、「正面部」とは、固定背凭れ部1101及び可動背凭れ部1102a,1102bが、それぞれ、搭乗者1105の体幹1105fと接触する面、及び、肩甲骨部とその周辺部(右肩部1105gと左肩部1105h)と接触する面を意味するものとする。また、固定背凭れ部1101と可動背凭れ部1102a,1102bの正面部のなす面S1を、固定背凭れ部1101の正面と可動背凭れ部1102a,1102bの正面とを含むように形成した面として定義する。正面部のなす面S1は、全くゆがみのない平面であるとは限らず、搭乗者1105の背面形状の包絡線の集合で形成した緩やかな曲面をも含んでいる。このように、ゆがみのない平面、のみならず、緩やかな曲面をも含んでいる状態を「略同一平面」又は「同一平面」とする。
なお、これを実現するため、人間が立位乗車移動体1100に搭乗せず、背凭れ部1053に何も接触していない状態(自然状態)では、第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bの正面部は、固定背凭れ部1101の正面部よりも前方に若干突出していることが望ましい。この自然状態におけるスプリング1108a、1108bが、スプリング1108a、1108bの自然長により実施できるようにしておくとよい。このようにしておくと、搭乗者1105の搭乗中はスプリング1108a、1108bにテンションが予め常に加わっていることになる。その結果、搭乗者1105が体を捻る際には、自然長から自然長未満の長さまでスプリング1108a又は1108bを圧縮する場合に比べ、スプリング1108a、1108bにテンションが予め加わっている場合の方が、より多くの力を印加することが必要となる。このため、搭乗者1105の軽微な姿勢変形によって、急激な操舵が行われるのを防止することができる。例えば、搭乗者1105が操舵を意図せずに姿勢を若干変えた場合には、操舵動作としては検知しないようにすることができる。さらに、搭乗者1105が立位乗車移動体1100に搭乗後に初めて背凭れ部1053にもたれようとするときに、可動背凭れ部1102a,1102bがクッションの役割を果たすことで、固定背凭れ部1101に体を滑らかに接触させることができるという利点もある。
また、立位乗車移動体1100に搭乗した搭乗者1105が、体幹1105fの中心軸を回転軸として体幹1105fを右回りに回転させて、搭乗者1105の右肩甲骨とその周辺部(右肩部1105g)で第1可動背凭れ部1102aを押圧している状態を図30の(3)に示す。このとき、搭乗者1105の左肩甲骨とその周辺部(左肩部1105h)は第2可動背凭れ部1102bから離れようとして、第2可動背凭れ部1102b側のスプリング1108bは自然長程度まで伸びる状態となっている。
図30Bの(4)〜(6)は、それぞれ、図30Aとはスプリング構成が異なる例である。
図30Bの(4)は、立位乗車移動体1100の搭乗者1105の未搭乗時(未荷重時)のスプリング1108cによる構成例であって、自然長で均衡している状態での旋回制御装置の概略上面図である。第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bのそれぞれが、3本の同じ長さと付勢力のスプリング1108cで板状の支持部1109Aに支持されている。よって、自然状態の実現方法として、スプリング1108cの自然長をそのまま利用して、自然長の複数のスプリング1108cが均衡した状態で第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bを固定背凭れ部1101に連結している。
これに対して、図30Bの(5)に示すように、圧縮したスプリング1108dと伸張したスプリング1108eを組み合わせて均衡させる方法が考えられる。すなわち、図30Bの(5)は、立位乗車移動体1100の搭乗者1105の未搭乗時(未荷重時)のスプリング1108d,1108eによる構成例であって、張力有りで均衡している状態での旋回制御装置の概略上面図である。第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bのそれぞれが、3本のスプリング1108d,1108e,1108dで板状の支持部1109Bに支持されている。3本のスプリング1108d,1108e,1108dのうちの真ん中の1本のスプリング1108eは伸張した状態であるのに対して、スプリング1108eを挟むように両側に配置された2本のスプリング1108dは、支持部1109Bの突起1109Bpに取り付けられて圧縮した状態となっている。よって、伸張状態の1本のスプリング1108eと圧縮状態の2本のスプリング1108dとが均衡した状態で、第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bを固定背凭れ部1101に連結している。
図30Bの(6)は、図30の(5)と同様に、圧縮したスプリング1108gと伸張したスプリング1108fを組み合わせて均衡させる別の方法である。図30Bの(6)は、立位乗車移動体1100の搭乗者1105の未搭乗時(未荷重時)のスプリング1108f,1108g,1108fによる構成例であって、張力有りで均衡している状態での旋回制御装置の概略上面図である。第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bのそれぞれが、3本のスプリング1108f,1108g,1108fで板状の支持部1109Aに支持されている。3本のスプリング1108f,1108g,1108fのうちの真ん中の1本のスプリング1108gは支持部1109Cの突起1109Cpに取り付けられて圧縮した状態であるのに対して、スプリング1108gを挟むように両側に配置された2本のスプリング1108fは、伸張した状態となっている。よって、圧縮状態の1本のスプリング1108gと伸張状態の2本のスプリング1108fとが均衡した状態で、第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bを固定背凭れ部1101に連結している。
図30Bの(5)及び(6)のように、スプリングに張力を持たせた状態で均衡させた可動背凭れ部1102a,1102bでは、図30の(4)のように、スプリングを一様に自然長で均衡させた可動背凭れ部1102a,1102bに比べて、抵抗を大きくして面を安定させやすくすることができて、急な操舵を防いだり、姿勢が崩れるのを防いだりすることができる。
また、スプリングは、可動背凭れ部1102a,1102bの1つに対して、少なくとも4つとしておくと、可動背凭れ部1102a,1102bの上下、左右のブレが軽減され、面安定性が向上する。また、撓みにくいスプリングを使用すれば、可動背凭れ部1102a,1102bの1つに対して、1つのスプリングで支持するようにしてもよい。
次に、図31Aに、本発明の第5実施形態の変形例を示す。ここでは、座席用支柱1074の上部に直接固定された固定背凭れ部1101に対して、2つの可動背凭れ部すなわち第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bと支持部1109Dとが一体となって移動可能に配置されている。図31Aの(1)は未搭乗時(スプリングは自然長の状態)を示す。図31Aの(2)は直進時(通常走行時)(スプリングは伸張状態)を示す。図31Aの(3)は旋回時(スプリングは伸張状態と圧縮状態)を示す。
具体的には、図31Aの(1)に示すように、スプリング1108i及び1108jが固定背凭れ部1101と支持部1109Dの中央部とを連結している。また、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bが支持部1109Dと一体となっている点が異なる。すなわち、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bは、支持部1109Dの左右端部に固定されて、支持部1109Dと一体となって移動可能に構成されている。そのため、第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bと支持部1109Dとは、スプリング1108i及び1108jを介して、固定背凭れ部1101に対して、移動可能に連結されている。固定背凭れ部1101は、座席用支柱1074の上部に固定されている。
なお、この際、図31Aの(2)に示すように、搭乗者1105の体幹1105fが固定背凭れ部1101と接触した状態において、固定背凭れ部1101と第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの正面部が略同一平面S2となっていればよい。例えば、搭乗者1105が固定背凭れ部1101に凭れているときに、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bを支持するスプリング1108i及び1108jがそれらの自然長からそれぞれ若干伸張された状態となるようにしておくとよい。このようにしておくことで、搭乗者1105が固定背凭れ部1101に体幹1105fを接触させようとする瞬間、又は、逆に、搭乗者1105が体幹1105fを固定背凭れ部1101から離そうとする瞬間、又は、搭乗者1105が体をねじっている期間において、第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bの両方が搭乗者1105と接触する状態を維持することができる。
このように、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bは、スプリング1108i及び1108jを介して固定背凭れ部1101に連結されている。このため、それらのスプリング1108i及び1108jの伸縮による復元力を第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bは有することになる。例えば、図31Aの(3)に示すように、搭乗者1105が右肩甲骨(右肩部1105g)を後方に動かして、体を右にねじるように姿勢を変形するとき、旋回する側にある搭乗者1105の右肩甲骨部(右肩部1105g)は第1可動背凭れ部1102a側のスプリング1108iを大きく伸張させて、大きく伸張した状態から元の若干伸張した状態へ戻ろうとする復元力を生じる。搭乗者1105はその復元力の反力を右肩甲骨部(右肩部1105g)に受けるため、搭乗者1105は、その反力を適度に受けながら、安定してその姿勢を維持することができる。このとき、旋回する側とは反対側にある搭乗者1105の左肩甲骨部(右肩部1105h)は前方に動き、第2可動背凭れ部1102b側のスプリング1108jは元の若干伸張した状態から圧縮した状態に変化し、元の状態へ戻ろうとする復元力を生じている。
図31Bには、さらに別の変形例における自然状態のスプリングの構成を示す。図31Bの(4)は未搭乗時(未荷重時でスプリングは自然長で均衡している状態)を示す。図31Bの(5)は未搭乗時(未荷重時でスプリングは張力有りで均衡している状態)を示す。図31Bの(6)は未搭乗時(未荷重時でスプリングは張力有りで均衡している状態)を示す。
図31Bの(4)にこの別の変形例における自然状態のスプリングの構成を示す。図31Bの(4)は、立位乗車移動体1100の搭乗者1105の未搭乗時(未荷重時)のスプリング1108kによる構成例であって、自然長で均衡している状態での旋回制御装置の概略上面図である。固定背凭れ部1101が、3本の同じ長さと付勢力のスプリング1108kで板状の支持部1109Dの中央部に支持されている。第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bは支持部1109Dの左右の端部に固定されている。よって、前記自然状態の実現方法として、スプリング1108kの自然長をそのまま利用して、自然長の複数のスプリング1108kが均衡した状態で第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bを固定背凭れ部1101に連結している。
これに対して、図31Bの(5)に示すように、圧縮したスプリング1108mと伸張したスプリング1108nを組み合わせて均衡させる方法が考えられる。すなわち、図31Bの(5)は、立位乗車移動体1100の搭乗者1105の未搭乗時(未荷重時)のスプリング1108m,1108n,1108mによる構成例であって、張力有りで均衡している状態での旋回制御装置の概略上面図である。固定背凭れ部1101が、3本のスプリング1108m,1108n,1108mで板状の支持部1109Fの中央部に支持されている。3本のスプリング1108m,1108n,1108mのうちの真ん中の1本のスプリング1108nは伸張した状態であるのに対して、スプリング1108nを挟むように両側に配置された2本のスプリング1108mは、支持部1109Fの突起1109Fpに取り付けられて圧縮した状態となっている。第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bは支持部1109Fの左右の端部に固定されている。よって、伸張状態の1本のスプリング1108nと圧縮状態の2本のスプリング1108mとが均衡した状態で、第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bを固定背凭れ部1101に連結している。
図31Bの(6)は、図31の(5)と同様に、圧縮したスプリング1108qと伸張したスプリング1108pを組み合わせて均衡させる別の方法である。図31Bの(6)は、立位乗車移動体1100の搭乗者1105の未搭乗時(未荷重時)のスプリング1108p,1108q,1108pによる構成例であって、張力有りで均衡している状態での旋回制御装置の概略上面図である。固定背凭れ部1101は、3本のスプリング1108p,1108q,1108pで板状の支持部1109Gに支持されている。3本のスプリング1108p,1108q,1108pのうちの真ん中の1本のスプリング1108qは支持部1109Gの突起1109Gpに取り付けられて圧縮した状態であるのに対して、スプリング1108qを挟むように両側に配置された2本のスプリング1108pは、伸張した状態となっている。第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bは支持部1109Gの左右の端部に固定されている。よって、圧縮状態の1本のスプリング1108qと伸張状態の2本のスプリング1108pとが均衡した状態で、第1可動背凭れ部1102a及び第2可動背凭れ部1102bを固定背凭れ部1101に連結している。
図32A及び図32Bは、立位乗車移動体1100が旋回する場合の動作を表す図面である。
図32A及び図32Bは、それぞれ搭乗者1105が体を右又は左に捻ることにより、立位乗車移動体1100が右旋回又は左旋回している状態(「旋回状態」とする)を表したものである。この場合、搭乗者1105は座部1104に腰掛けた状態で、上半身を使って体を捻る動作をすることになる。搭乗者1105が上半身の姿勢を変化させて体を捻ると、搭乗者1105の上半身に追随するようにして第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bが通常状態から変位する。この変位量は、例えば、固定背凭れ部1101を基準としたときの第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの距離あるいは回転角を変位検出センサ1115a及び1115bで計測することで検出することができる。変位検出センサ1115a及び1115bで検出された変位量を走行制御部1110で後輪1106c,1106dの回転量へと変換することによって、立位乗車移動体1100の旋回量及び旋回方向を制御することができる。
座部1104に腰掛けている状態では、搭乗者1105が、座部1104と接触している。この搭乗者1105と座部1104とが接触している点を、座部支点1121とする。例えば、搭乗者1105と座部1104とは、点ではなく面で接触しているため、搭乗者1105の重心位置を座部支点1121とする。なお、座部1104が圧力センサを備えることで、搭乗者1105の重さによる圧力分布から重心位置を取得できる。
搭乗者1105が体を捻るような動作をした場合であっても、体を捻る動作は搭乗者1105の上半身の動きであるため、搭乗者1105の腰部と接する座部支点1121の位置が著しく変化することは無い。立位乗車移動体1100に対する衝撃などによって搭乗者1105が不意に座面PS3上を横滑りしないように、摩擦係数の大きい材質を座部1104とすることが望ましい。
また、同時に、搭乗者1105の体幹1105fは、固定背凭れ部1101と接触している。したがって、搭乗者1105の体幹1105fから座部支点1121に至る部位は安定に保持されている。
一方、立位乗車移動体1100を旋回走行させるためには、搭乗者1105は2つの第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの少なくとも一方と接触している必要がある。右肩甲骨及びその周辺部(右肩部1105g)と第1可動背凭れ部1102aとの接点を右肩接点1122aとする。左肩甲骨及びその周辺部(左肩部1105h)と第2可動背凭れ部1102bとの接点を左肩接点1122bとする。搭乗者1105は、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bと、点ではなく、面で接触している。よって、搭乗者1105が第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bに凭れることによって発生する圧力の圧力分布における重心を、右肩接点1122a及び左肩接点1122bとする。なお、右肩接点1122a、左肩接点1122bを区別せず、肩接点1122と呼ぶことがある。
右肩接点1122aあるいは左肩接点1122bは、回転軸の上から見た状態で、搭乗者1105の背面全体の中で、座部支点1121あるいは体幹1105fから最も離れた部位の1つである。
よって、座部支点1121を支点(あるいは体幹1105fの全体を支軸)にして体を捻った場合、右肩接点1122aあるいは左肩接点1122bは、最も大きく変位する部位であることから、トルクを最も効率良く発生させることのできる作用点である。すなわち、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bが、搭乗者1105の肩すなわち右肩部1105gと左肩部1105hと接触するように配置されていることにより、姿勢を変化させるという点では、極めて効率的な構成であることを意味している。つまり、搭乗者1105にとって体を捻らせて第1及び第2可動背凭れ部1102aを押圧操作することは、操作の体感性を最も得やすいことになる。
なお、「操作の体感性」とは、例えば、人が歩行中、右に曲がろうとするとき、無意識に体をやや右に捻る動作をしているのと同様、搭乗者(操作者)1105が立位乗車移動体1100に搭乗し、体を例えば右に捻ることによって、立位乗車移動体1100を右旋回させる操舵を実現できる操作性のことである。すなわち、その捻る動作に搭乗者1105の体又は姿勢への無理又は負担が存在せず、人間にとってごく自然に実現できる操作である。さらに、この「操作の体感性」には、立位乗車移動体1100が搭乗者1105の意図通りに動作していることを搭乗者1105が認識できる状態のことをも含むものとする。
図33は、第5実施形態における、制御部格納部1072内の制御用コンピュータ及びメモリで構成される走行制御部1110の構成の概略を示した図である。
図33に示すように、走行制御部1110は、変位演算部1111と、信号処理部1112と、モータ制御部1113とを備える。
第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの変位は、それぞれ変位検出センサ1115a及び1115bを使って検出する。センサ1115a及び1115bの出力をそれぞれセンサ出力信号Sa、センサ出力信号Sbで表している。変位の検知手段としては、変位検出センサ1115a及び1115bの例として圧力センサ又は回転量検出センサ(エンコーダなど)を使用して第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bに印加される圧力又は回転量を検出し、変位検出センサ1115a及び1115bの検出結果から間接的に第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの変位量を変位演算部1111で推定あるいは算定する方法が考えられる。又は、他の変位の検知手段としては、変位検出センサ1115a及び1115bとして光学距離センサを使って距離を計測し、直接的に、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの変位量を変位演算部1111で算出する方法が考えられる。
走行制御部1110には、変位検出センサ1115a及び1115bからセンサ出力信号Sa及びSbが入力され、モータ駆動指令Ma及びMbが電動モータ1114a,1114bに出力される。
具体的には、変位演算部1111が、変位検出センサ1115a及び1115bからのセンサ出力信号Sa及びSbを受け取る。変位演算部1111において、センサ出力信号Sa及びSbをそれぞれ変位量ΔSa及びΔSbに変換して、変位量ΔSa及びΔSbを変位演算部1111から信号処理部1112に入力する。信号処理部1112は、変位量ΔSa及びΔSbについて数値演算した後、電動モータ1114a、1114bに立位乗車移動体1100を操作するための出力指令信号をモータ制御部1113に向けて出力する。なお、走行制御部1110内の各ブロックの入出力ポート数は、信号の取り扱いによる自由度があり、ここでは、実現可能な一例を示している。
さらに具体的な説明を以下で行う。
搭乗者1105の姿勢変化によって、右肩接点1122a又は左肩接点1122bからそれぞれ第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bに働く作用力のアンバランスが生じる。その結果、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの正面部の、固定背凭れ部1101の正面部に対する変位量に差が発生する。これらの第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの物理的な変位量をそれぞれΔa、Δbとする。変位量は符号付変量であり、ここでは、距離の次元であるとする。立位乗車移動体1100の前進方向(立位乗車移動体1100の正面方向)の変位を「正」(プラス)として定義する。
ここで、例えば、+Δb=−Δaとなるように、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bを配置する。言い換えれば、作用側の肩接点による変位量の絶対値|Δa|とその反対側の肩接点による変位量の絶対値|Δb|とが同一となるように、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bを配置する。このように配置することにより、搭乗者1105が意図して作用している肩接点(これを「作用側の肩接点」とする。)とは反対側の接点(これを「作用側とは反対側の肩接点」とする。)に対しては、1対の可動背凭れ部1102a,1102bが搭乗者1105に一体的に追従するように動作する。すなわち、右旋回時であれば、搭乗者1105が意図して作用している肩接点(右肩接点1122a)とは反対側の接点(左肩接点1122b)に対して、1対の可動背凭れ部1102a,1102bが搭乗者1105に一体的に追従するように動作する。また、左旋回時であれば、搭乗者1105が意図して作用している肩接点(左肩接点1122b)とは反対側の接点(右肩接点1122a)に対して、1対の可動背凭れ部1102a,1102bが搭乗者1105に一体的に追従するように動作する。これにより、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bは搭乗者1105の両肩すなわち右肩部1105gと左肩部1105hを背後から支持するように機能し、搭乗者1105の姿勢を安定に維持するのに利用できる。
また、Δb=−kΔa(k≠1)とすることもできる。このようにすることで、作用側の肩接点による変位量の絶対値|Δa|とその反対側の肩接点による変位量の絶対値|Δb|とが同一にならない場合であっても、本発明の第5実施形態を適用することができる。このような状況は、搭乗者1105が体を捻った際に、単一の回転軸(中心軸)であると考えている体幹1105fについて、その体幹1105fの支点位置がやや変化することに起因し、k>1であることが多い。
もちろん上述のように、両方の変位量ΔaとΔbとが従属的でなく、互いに全く独立にΔa≠0、Δb=0であっても問題なく、搭乗者1105の体(上半身)は、固定背凭れ部1101によって支持されている点は共通している。
また、可動背凭れ部1102a,1102bの変位量Δa、Δbは、その少なくとも一方は負であり、立位乗車移動体1100の前進方向とは反対方向の変位(すなわち、後方への変位、負の変位)が、立位乗車移動体1100の旋回に対して意味を持つ。ここでは、これを「有意性」と表現する。すなわち、走行制御を主に決定する有意性のある変数は、Δa、Δbのうち、負の最大値を有するものである。
変位検出センサ1115a及び1115bの検出結果に基づき、変位演算部1111で演算を行うことにより、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの正面部の、固定背凭れ部1101の正面部に対する変位量を求める。例えば、変位検出センサ1115a及び1115bは、図26A及び例えば図30Aに示す立位乗車移動体1100において、スプリング1108a及び1108bの長さをそれぞれ測定し、変位演算部1111においてその変位量を求める。他のスプリング1108c,1108d,1108e,1108f,1108g,1108h,1108i,1108j,1108k,1108m,1108n,1108p,1108qの長さも同様に測定するため、以下の説明では、代表例としてスプリング1108a及び1108bについて説明する。
変位検出センサ1115a及び1115bの一例としては、レーザ又は赤外線を利用して、スプリング1108a及び1108bの長さを光学的に非接触に測定する光学距離センサにより構成することができる。変位検出センサ1115a及び1115bを支持部1109(又は、他の例では、1109A,1109B,1109C,1109D,1109E,1109F,1109G)に固定配置し、変位検出センサ1115a及び1115bにより、それぞれ、変位検出センサ1115a及び1115bから第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bのそれぞれの裏面までの可動方向の距離を計測する。
この場合、変位は距離(距離と等価なデータとし、正の値とする)の変化である。通常走行しているとき(通常状態)の距離をD0とし、旋回中の第1及び第2可動背凭れ部1102aに関する距離をそれぞれDa、Dbとしたとき、第1及び第2可動背凭れ部1102aに関するセンサ出力はSa=Da、Sb=Dbであり、第1及び第2可動背凭れ部1102aに関するセンサ出力の変化分ΔSa及びΔSbはΔSa=D0−Da、ΔSb=D0−Dbである。
また、変位検出センサ1115a及び1115b別の例としては、スプリング1108a及び1108bの反力を測定する力センサにより構成することもできる。この際、センサ1115a及び1115bは、それぞれ、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bに取り付ける。スプリング1108a及び1108bが、伸張及び圧縮することによって、スプリング1108a及び1108bの復元力が変化するため、肩接点1122a,1122bに生じる抗力も変化する。この抗力の変化を力センサで検出する。このとき、力センサとして複数個の圧力センサを用い、抗力を接触面積で割った値と等価な圧力を複数個の圧力センサで計測する方法であってもよい。
この場合、直接的に計測可能な変位は、力あるいは圧力の変化である。立位乗車移動体1100の通常状態(直進状態)においては、第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bにかかる圧力をそれぞれPa_0、Pb_0とし、左右旋回のための操舵中の圧力をPa_T、Pb_Tとすると、センサ出力はSa=Pa_T、Sb=Pb_Tであり、センサ出力の変化分ΔSa、ΔSbをそれぞれΔSa=Pa_0−Pa_T、ΔSb=Pb_0−Pb_Tによって定義する。このとき、走行制御を主に決定する変数は、ΔSa、ΔSbのうち、負の最大値を有するものである。こうしておくと、距離変化分を変位量とする前例の場合と同様の判定を用いることができ、都合がよい。
なお、操舵の判定を正しく行うため、力又は圧力の定常値のみならず、瞬時値又は時系列データ、さらには面内分布などを用いるようにするほうが好ましい。
変位演算部1111の内部では、センサ出力の変化分ΔSa、ΔSbを用い、例えば次のように演算して、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの変位量をそれぞれ求める。
x、yを変数とし、関数convを定義する。関数conv(x,y)は、変換関数yに応じて変数xから距離に基づく変位量(距離の次元を有する量)を算定する関数である。関数convの内部あるいは第2引数の変換関数yには、センサ1115a,1115bの感度校正曲線などを含めることができる。変換関数は連続関数であるとは限らず、数値テーブルを与えてそのテーブルから変換結果を参照し、さらに補間する工程を含んでもよい。数値テーブルとは、予め計測又は数値計算により得られたデータの集合であり、入力と出力とが対応付けられた数値の配列である。
例えば、変換関数が距離差から距離変位量を求める関数Fdであるときは、
のように表す。Fd={X}すなわち一次比例の場合、
となる。
なお、第1引数の変数xは、必ずしもセンサ出力の変化分である必要はない。この例に限れば、前式は以下と等価になる。
また、変換関数が圧力差から距離変位量を参照する数値テーブルTpで与えられるときは、
のように表す。このとき、圧力の計測データは第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの物理的な変位量に換算されている。
したがって、変換関数は、センサ1115a,1115bの種類に応じて適切に設定しておけばよい。
なお、変位演算部1111の入力はA/D変換されていることが望ましい。
信号処理部1112は、変位演算部1111で算出された第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの変位量(大きさと符号)を解析し、演算処理することにより、搭乗者1105の意図する立位乗車移動体1100の操作内容の情報を取得する。 例えば、信号処理部1112では、次のように演算する。x、y、zを変数とし、2つの関数eval、transを定義する。
関数eval(x,y)は、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの2つの変位量x、yの有意性を評価する関数であり、有意性判定の結果を変位量zとして出力する。最も単純な例では、x、yのうち負の最大値を出力する関数が挙げられる。
関数trans(z)は変数zを解釈する関数であり、変位量zをさらに制御量に変換する。関数transの出力は、単一の実数に限らず、複素数又は配列などであっても構わない。関数transには、感度又は応答を調整する機能、電動モータ1114a及び1114bの駆動用信号を生成する処理なども含んでいてもよい。
信号処理部1112の出力をCとすると、例えば、
のように演算する。
この際、関数evalでは、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの変位量Δa、Δbはそれぞれ適切に重み付けして信号処理部1112で判定処理してもよいし、それらの差分(Δa−Δb)を変数として信号処理部1112で処理してもよい。差分を用いると、一般に変位量の有するオフセット量(例えば、Pa_0、Pb_0、D0などの基準値の偏差によるもの)又は同相雑音が相殺されるため、好都合である場合が多い。例えば、通常状態において、第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bには均等に接触しており、圧力センサに加わる圧力Pa_0、Pb_0は非ゼロの略同一値となる。これをオフセットとしてP_ofsと表すと、
となり、オフセットの影響を相殺することができる。
また、さらに、信号処理部1112に、補正情報入力部1116から補正情報を入力することで、搭乗者個別の姿勢の変形しやすさの偏り(右利き、左利きなど)又は、立位乗車移動体1100の動作状態に応じた操舵の利きやすさを反映することができる。これは、前記関数eval又は関数transの入力引数又は処理内容の記述を変更することで、実現できる。
補正情報入力部1116から信号処理部1112に入力される補正情報としては、搭乗者情報などを含むプリセットデータ、又は、電動モータ1114a,114bの回転数、慣性センサなどの付加的センサの出力信号などのリアルタイムデータがあり、これらの補正情報を信号処理部1112に入力することができるものとする。必要に応じて、補正情報入力部1116から信号処理部1112への入力ポート数などは増減させればよいものとする。
単純化して例を挙げると、搭乗者1105の右肩すなわち右肩部1105gの操舵力が、左肩すなわち左肩部1105hの操舵力の50%しかない場合、左/右比「2.0」を補正情報入力部1116に補正情報として与え、信号処理部1112の出力Cを、
のようにすることが考えられる。すなわち、右肩部1105gの操舵力の情報を補正情報入力部1116で2倍に増幅したのち、信号処理部1112で処理できるようにすることができる。言い換えれば、左右の操舵力に差がある場合に、左右の操舵力が同等となるように補正する補正情報を補正情報入力部1116から信号処理部1112に入力することができる。
また別の例として、電動モータ1114a及び1114bの回転数をフィードバックして、電動モータ1114a及び1114bの回転数を検出するエンコーダ1114ae及び1114beから補正情報入力部1116に入力することも可能である(図32の一点鎖線を参照)。
エンコーダ1114ae及び1114beで検出した電動モータ1114a,1114bそれぞれの回転数をRa、Rbとする。回転数の差|Ra−Rb|が大きくなると、後述のように搭乗者1105に大きな遠心力が働き、意図しない操舵結果が生じる可能性がある。そこで、回転数の安全領域を予め規定した関数gain(数値テーブルでもよい)を補正情報入力部1116で定義し、それを補正情報入力部1116で用いて信号処理部1112に入力することにより、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの感度を強制的に変更することができる。
x、yを変数とすると、関数gain(x,y)は1以下の係数Gを出力する。Gは要素数2の配列とし、Ga=G(1)、Gb=G(2)とする。
これに関して、例えば、信号処理部1112の出力Cを
とすることにより、回転数の状態に応じて補正情報入力部1116で感度を修正することができる。
モータ制御部1113は、信号処理部1112の出力Cが入力され、信号処理部1112の出力Cに基づいて、電動モータ1114a及び1114bの規格に適合した駆動指令Ma及びMbをそれぞれ出力し、電動モータ1114a及び1114bを制御する。すなわち、モータ制御部1113は、信号処理部1112の出力Cに応じて(第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの変位量の変化に応じて)、駆動指令を変更することができる。
電動モータ1114a、1114bは、それぞれ、後輪1106c、1106dを回転駆動させ、立位乗車移動体1100を前後、右旋回、又は、左旋回させることができる。前進又は後退は、例えば、搭乗者1105の足元に前進用フットスイッチ1051、後退用フットスイッチ1052を設けておく。搭乗者1105がそのフットスイッチを51又は52踏むことによって電動モータ1114a、1114bに電圧が印加され、電動モータ1114a、1114bが回転し、その回転が後輪1106c、1106dに伝わるようにすることで実現する。後輪1106c、1106dが同期して回転すれば前後駆動となり、後輪1106c、1106dの回転数に差があれば、右旋回駆動、又は、左旋回駆動させることができる。
なお、車輪の駆動方法としては、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動のいずれであっても構わない。
また、走行制御部1110を構成する制御用コンピュータ及びメモリは、制御部格納部1072内に配置しているが、これに限られるものではなく、立位乗車移動体1100のいずれの場所に設けられてもよい。
図34から図37を用いて、第5実施形態の立位乗車移動体1100の移動する様子を詳しく説明し、略立位の姿勢で搭乗者1105が搭乗する立位乗車移動体1100において、本発明の第5実施形態にかかる立位乗車移動体1100の旋回制御装置が如何に搭乗者1105を安定に保持するかについて説明する。図34は、立位乗車移動体1100が右旋回するときの状況を簡単に示した図である。
図34において、第1位置1067Aから第2位置1067Bに向けて、前進する立位乗車移動体1100があり、前方正面に障害物65が存在しているとする。この第1位置1067Aから第2位置1067Bの状態では、立位乗車移動体1100と搭乗者1105との姿勢は参照符号1068Aで示す姿勢である。
例えば、第2位置1067Bで、搭乗者1105は、(立位乗車移動体1100に備わる超音波又はレーダなどの障害物検知センサと自動制動システムによる安全装置が作動する前に)体を右に捻ることにより(参照符号1068Bで示す姿勢となることにより)、立位乗車移動体1100を、第2位置1067Bから第3位置1067Cを経て第4位置1067Dへと右旋回させ、障害物65を避けることができる。第4位置1067Dでの姿勢は、参照符号1068Cで示す姿勢である。搭乗者1105は、仕様上、限界値の旋回(最小旋回半径及び最大走行速度)に近い操舵を行う可能性がある。この場合、立位乗車移動体1100と搭乗者1105とには、大きな遠心力が作用する。
本発明の作用効果を明確にするために、図35A及び図35Bの比較例について説明する。
図35Aは、本発明とは大きく異なり、従来例のような一枚の固定の背凭れ部1151を有する立位乗車移動体1150を想定してみる。図35Bは、立位乗車移動体1150が右旋回している状況を表す模式図である。図35Bに示すように、搭乗者1105は、背凭れ部1151の全面に上半身を接触させることで、立位乗車移動体1150を操舵することになる。
図36は、図35Aにおいて、搭乗者1105及び背凭れ部1151に加わる主要な力を表記した模式図である。搭乗者1105が背凭れ1151から離脱しない(滑らない)限りにおいて、両者は一体となって動くのが安定であり、内力(垂直抗力、静止摩擦力)は図示していない。
図36において、説明を簡略化するため、搭乗者1105を5つのブロック(搭乗者部位1105a、1105b、1105c、1105d、1105e)に分割して描いている。各ブロック1105a、1105b、1105c、1105d、1105eの質量は同一であるとし、角速度も同一であるとする。この場合、旋回中心の周りで旋回運動する各ブロック1105a、1105b、1105c、1105d、1105eに働く遠心力は、物体の旋回半径に比例する。
例えば、立位乗車移動体1150の旋回半径が小さく(例えば、2m)、搭乗者1105の肩幅がそれに対して無視できないような場合(例えば、0.4m)、搭乗者1105の各ブロック1105a、1105b、1105c、1105d、1105eに掛かる遠心力は、搭乗者1105の右肩と左肩とでは、およそ10%異なることが計算される。この結果、搭乗者1105は、(a)特に左肩(左肩接点)を大きく外側後方に引っ張られながら、それに逆らうように右方向に上体を捻った姿勢を維持する必要がある。
また、立位乗車移動体1150の背凭れ部1151は、右旋回の操舵状態にあり、円周方向(進行方向)に対して、マイナス数度のオフ角を有している。背凭れ部1151と搭乗者1105の背面の摩擦力(静止摩擦)が大きい場合、両者は一体となって運動しようとするため、背凭れ部1151の回動軸の位置又は背凭れ部1151の質量によっては、(b)背凭れ部1151の右旋回状態がロックされ、立位乗車移動体1150の速度を緩めない限り、旋回を中断できない状況に陥ることがある。
上記(a)、(b)いずれの場合においても、搭乗者1105は、背凭れ部1151に押し付けられており、その一体運動の影響によって、操舵性が背凭れ部1151に奪われている、と感じる。
一方、図37は、図36との比較における、本発明の第5実施形態の立位乗車移動体1100の場合の状態を模式化した図面である。図37において、搭乗者1105の各部位1105a、1105b、1105c、1105d、1105eにかかる遠心力は図36の場合と同じであり、また、垂直抗力、静止摩擦力は図示していない。この場合、搭乗者1105と第1及び第2可動背凭れ部1102a、1102bとは図31A〜図31Cの場合と同様に一体運動するが、搭乗者1105は、固定背凭れ部1101とは独立の運動をすることができる。このため、搭乗者1105は、固定背凭れ部1101を使って、自らの姿勢を変化させることができる(搭乗者1105と固定背凭れ部1101との間には動摩擦力が働く)。したがって、搭乗者1105は、そのままの姿勢を維持することも可能であるし、固定背凭れ部1101に密着させるように体を動かして、直立姿勢に変化させることで、立位乗車移動体1100(の舵)を直進に戻すこともできる。
図38A及び図38Bは、このような操作性を実現するために適した固定背凭れ部1101の形状の一例を示したものである。
図38Aの(1),(2),(3)は、それぞれ、固定背凭れ部1101の大略水平方向の断面形状は、長方形であり、台形であり、長方形でかつ搭乗者1105の正面部の中央に小さな凸部を有する形状である。すなわち、図38Aの(1),(2),(3)の固定背凭れ部1101は、いずれも、搭乗者1105の正面部側が曲面の少ない形状であり、搭乗者1105が体を捻った状態になると、搭乗者1105と固定背凭れ部1101との接触面積が小さくなるように設計されたものである。このようにしておくことで、搭乗者1105の上半身(特に体幹1105f)が固定背凭れ部1101から離れた状態、すなわち、旋回走行中に、搭乗者1105が姿勢を元に戻すのが容易になる。すなわち、搭乗者1105が上半身の接触面積が増えるように体を固定背凭れ部1101に沿わせていけば、姿勢を安定に戻すことができる。言い換えれば、これらの例の固定背凭れ部1101は、定常姿勢に復元する効果があるとも言える。よって、これらの例では、復元機構の無い第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bを使用することもできる。
図38Bの(4),(5),(6)は、それぞれ、固定背凭れ部1101の大略水平方向の断面形状は、長方形でかつ搭乗者1105の正面部側が円弧形状であり、円形であり、楕円形である。すなわち、図38Bの(4),(5),(6)の固定背凭れ部1101は、いずれも、搭乗者1105の正面部側が曲面の多い形状であり、搭乗者1105が体を捻った状態でも、固定背凭れ部1101との接触面積が変化しにくいように設計されたものである。このようにしておくことで、体を捻った搭乗者1105がそのままの姿勢を維持しやすい。また、姿勢を元に戻そうとする場合も、固定されたこの固定背凭れ部1101の面に沿って上半身を動かしていけばよいので、搭乗者1105自身と一体となって動かないため、操舵を変更しようとしていることを認識できる。言い換えれば、これらの例の固定背凭れ部1101は、非定常姿勢を保持する効果があり、定常姿勢に復元する効果が少ないとも言える。よって、これらの例では、復元機構のある第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bを使用することが好ましい。
なお、本第5実施形態において、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bを実現するためにスプリング(図ではコイルばね)を用いているが、エアスプリング(空気ばね)などを用いてもよい。
前記第5実施形態の立位乗車移動体1100によれば、略立位で搭乗する搭乗者1105の姿勢を安定に保持しながら、略立位にある搭乗者1105の姿勢の変化を検知することによって、搭乗者1105の意図した操舵(体感的な操舵)を実現することができる。
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態は、立位乗車移動体1100の構成は第5実施形態を表す図27の構成と大略同じであるが、背凭れ部の構造が異なるので、異なる点を中心として、図39A及び図39Bを用い、第6実施形態を説明する。
図39Aは、第6実施形態の立位乗車移動体1100の旋回制御装置の第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの構成を表す図である。図39Aにおいて、第5実施形態と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図39Aにおいて、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bは回転支持板1250の左右両端部に取り付けられている。回転支持板1250には、その中央部に回転軸1251があり、回転軸1251の軸受は固定背凭れ部1201に設けられている。よって、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bは、回転支持板1250と回転軸1251とにより、固定背凭れ部1201に対して回転可能に配置されている。回転支持板1250の左右の両端部の後方には、所定距離だけ離れてストッパ1252a,1252bが配置されて、所定角度以上、回転支持板1250が回転しないように回転規制している。なお、軸受は必ずしも固定背凭れ部1201に設ける必要は無く、車台1107あるいは座席用支柱1074などの支持台1103に対して固定された状態で設けられればよい。
この構成により、回転軸1251と垂直な面で第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bが回動することができ、変位検知センサの別の例として、ロータリーエンコーダ1253を用いて、回転支持板1250の回転角度を検出して第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの変位を検出することができる。すなわち、直進時には、搭乗者1105の体は左右いずれにも回転しておらず、右肩部1105gと左肩部1105hとが接触する第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bと固定背凭れ部1201とは、大略同一平面を形成している。
次に、左右いずれか、例えば、時計方向に右回りに立位乗車移動体を旋回する場合について説明する。図39Bに示すように、搭乗者1105の体を捻って時計方向に右回りに回転して、右肩部1105gで第1可動背凭れ部1102aを押し込むとき、回転軸1251を中心に回転支持板1250も同様に時計方向に右回りに回転する。このとき、ロータリーエンコーダ1253が回転支持板1250の回転角度を検出して変位演算部1111へ出力し、変位演算部1111で第1可動背凭れ部1102aの変位量を算出する。なお、立位乗車移動体の通常状態における、ロータリーエンコーダ1253からのエンコーダ出力と、旋回状態における、ロータリーエンコーダ1253からのエンコーダ出力との差が、前記した第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの物理的な変位量Δa及びΔbに対応する。
また、図39C及び図39Dは第6実施形態の一つの変形例である。
図39C及び図39Dにおいて、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bは回転弓1260に取り付けられている。回転弓部1260は、円弧状の部材の両端部に第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bが固定され、円弧状の部材の中央部が軸受などの回転弓部支持部1261に支持されている。回転弓部支持部1261は固定背凭れ部1201に固定されている。よって、第1又は第2可動背凭れ部1102a又は1102bの押圧により、回転弓部1260が回転弓部支持部1261を介して固定背凭れ部1201に対して固定背凭れ部1201の周りを移動自在に支持されている。回転弓部1260の左右の両端部の後方には、所定距離だけ離れてストッパ1252a,1252bが配置されて、所定角度以上、回転弓部1260が回転しないように回転規制している。
この構成により、変位検知センサの別の例として、光学距離センサを用いて、回転弓部1260の回転角度を検出して第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの変位を検出することができる。例えば、光学距離センサをストッパ1252a、1252bにそれぞれ設けておく。各光学距離センサの光軸は、立位乗車移動体1100の直進時に前述の「同一平面」と垂直となるように固定し、光学距離センサと可動背凭れ部1102a、1102bまでの距離をそれぞれ光学距離センサで計測する。その距離の比と回転角度を予め関係付けておくと、距離の計測値から、回転弓1261の回転角度を算定することができる。すなわち、立位乗車移動体1100の直進時には、搭乗者1105の体は左右いずれにも回転しておらず、右肩部1105gと左肩部1105hとが接触する第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bと固定背凭れ部1201とは、大略同一平面を形成している。
次に、左右いずれか、例えば、時計方向に右回りに立位乗車移動体1100を旋回する場合について説明する。図39Dに示すように、搭乗者1105の体を捻って時計方向に右回りに回転して、右肩部1105gで第1可動背凭れ部1102aを押し込むとき、回転弓部1260も同様に時計方向に右回りに回転する。このとき、光学距離センサが回転弓部1260の回転角度を検出して変位演算部1111へ出力し、変位演算部1111で第1可動背凭れ部1102aの変位量を算出する。なお、立位乗車移動体の通常状態における、センサ(エンコーダ)からのエンコーダ出力と、旋回状態における、光学距離センサからのエンコーダ出力との差が、前記した第1及び第2可動背凭れ部1102a及び1102bの物理的な変位量Δa及びΔbに対応する。
これら第6実施形態及びその変形例の構成によると、搭乗者1105の姿勢の自己復元機能が実装されていないため、第5実施形態と比較して、操作感度の高い旋回制御装置を実現できる。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態は、立位乗車移動体1100の構成は第5実施形態を表す図27の構成と同じであるが、背凭れ部の構造が異なるので、図40A〜図40Cを用い、第7実施形態を説明する。
図40Aは、本発明の第6実施形態の立位乗車移動体1100の旋回制御装置の可動背凭れ部の構成を表す図である。図40Aにおいて、第1及び第6実施形態と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
第1及び第2可動背凭れ部1302a、1302bは伸縮可能な弾性のある袋であり、第1及び第6実施形態の第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bに相当する。弾性のある袋としては、ゴム風船のように、張力がゼロになる状態に復元しようとする作用のある材質を用いることが望ましい。また、第1及び第2可動背凭れ部1302a,1302bの内部には流体(例えば、空気、水、油など)が充填されている。板状の支持部1109Hの両端部には、第1及び第2可動背凭れ部1302a,1302bを支持する第1及び第2可動背凭れ部支持部353a,1353bが固定されている。板状の支持部1109Hの中央部には、固定背凭れ部1101が固定されている。第1及び第2可動背凭れ部1302a、1302bは、流量調整弁1350を介して流体流通管1352で相互接続されており、流量を調整することが可能である。また、バルブ(図示せず)を介して流体流通管1352と予備タンク1351とを接続することで、可動背凭れ部1302a、1302bの弾性を調整することができる。例えば、図40Aの自然状態では、予備タンク1351のバルブ(図示せず)を開放し、予備タンク1351から流体流通管1352を介して第1及び第2可動背凭れ部1302a,1302bに流体を充填しておく。搭乗者1105は、予備タンク1351のバルブをある程度絞った状態で搭乗し、第1及び第2可動背凭れ部1302a,1302bと固定背凭れ部1101とにもたれかかることで、第1及び第2可動背凭れ部1302a,1302bの余剰な流体は予備タンク1351にゆっくりと回収される(図40B参照)。予備タンク1351のバルブの流量が閾値以下になった段階でバルブを完全に閉じる。バルブを完全に閉じる流量の閾値は、予め決めておくことが好ましい。このようにすることで、搭乗者1105の体型にフィットした第1及び第2可動背凭れ部1302a,1302bを実現できる。
次いで、搭乗者1105が体を捻って時計方向に右回りに回転して、右肩部1105gで第1可動背凭れ部1302aを押圧すると、第1可動背凭れ部1302a内の流体が流体流通管1352を介して第2可動背凭れ部1302bに流れ込む。この流体の移動量(流量)を流量測定装置354で検出して変位演算部1111へ出力し、変位演算部1111で第1可動背凭れ部1102aの変位量を算出する。
これら第7実施形態の構成によると、第1及び第2可動背凭れ部1302a,1302bを実現するための機械的な機構が不要であるため、立位乗車移動体1100の設計簡便化、及び、軽量化が可能である。また、媒体として流体を用いるため、流量調整弁1350によって操舵の応答時間を調整したり、あるいは粘度の高い流体を充填したりしておくことによって、例えば、応答時間を遅くすることができるため、急ハンドル、蛇行走行など、不適切な操舵を回避するような操作感度の低い旋回制御装置を実現することができる。なお、同様の操作性は、第5実施形態において、スプリングの変わりにエアシリンダなどを用いた場合にも実現できる。
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態は、第5実施形態において、可動背凭れ部と固定背凭れ部の配置が異なるものである。図41A及び図41Bを用い、配置の違いを説明する。
図41A及び図41Bは、本発明の第8実施形態の立位乗車移動体1100とその旋回制御装置を描いた概略鳥瞰図である。
図41A及び図41Bにおいて、第1及び第2可動背凭れ部1402a、1402bは固定背凭れ部1401の上方に、第1及び第2可動背凭れ部1402a、1402bが互いに隣接して配置されており、固定背凭れ部1401から見て、それぞれ左右対称に配置されている。言い換えれば、第1及び第2可動背凭れ部1402a、1402bの間には第1及び第2可動背凭れ部1402a、1402bが配置されていない。
また、第1及び第2可動背凭れ部1401a、1402bの可動方法又はそれを実現する構成としては、これまでの第1〜第7実施形態のいずれかにおいて、第1及び第2可動背凭れ部1402a、1402bのそれぞれと固定背凭れ部1401との連結又は支持構造を採用すればよい。
この第8実施形態によると、搭乗者1105の姿勢は、体幹1105fの特に腰椎付近を支持することで安定に保持できる。また、この構成によると、第1可動背凭れ部1402aと第2可動背凭れ部1402bとの間を遮るもの(第5実施形態の固定背凭れ部1101に対応)が存在せず、搭乗者1105が上半身をよりスムーズに動かすことができる。
また、第5実施形態では、第1及び第2可動背凭れ部1102a,1102bの間に固定背凭れ部1101があることによって、搭乗者1105の安定性を確保している。しかしながら、本第8実施形態の構成によっても、一方の可動背凭れ部(例えば1402a)に対する他方の可動背凭れ部(例えば1402b)が同様の役割を担い、搭乗者1105の姿勢の安定化を実現することができる。
なお、図41A及び図41Bにおいて、背凭れ部(第1及び第2可動背凭れ部1402a、1402bと固定背凭れ部1401)1053aの形状を図42Aのように直方体として表示しているが、図42Bに示すように、第1及び第2可動背凭れ部1402a、1402bは角が丸い四角形であり、固定背凭れ部1401は角が丸い三角形の正面形状とし、搭乗者1105の体型にフィットし、姿勢変形を阻害しないような形状であることが好ましい。図43の立位乗車移動体は、図42Bの背凭れ部1053aの形状を採用したものである。
また、背凭れ部1053aと搭乗者1105の部位との位置関係を図44A及び図44Bに示す。固定背凭れ部1401は、腰椎とその周辺部と主に接触し、搭乗者1105を保持する。第1及び第2可動背凭れ部1402a、1402bは、それぞれ搭乗者1105の右肩甲骨とその周辺部、左肩甲骨とその周辺部とに接触する。
また、上記様々な実施形態において、第1の可動背凭れ部と第2の可動背凭れ部の変位する方向は、固定背凭れ部の正面の形成する平面の法線とおよそ平行になるように構成されている。すなわち、可動背凭れ部が固定背凭れ部の支持部に対して直線的に運動する場合であっても円弧状に運動する場合であっても、固定背凭れ部の正面の形成する平面を通過する前後では、可動背凭れ部の運動方向は前記平面の法線方向と平行になる。そこで、本発明では、この変位の方向を「変位の主方向」と定義する。したがって、この主方向は可動背凭れ部と固定背凭れ部の形成する同一平面に対して略垂直(概ね90度)になっている。
本発明にかかる立位乗車移動体、立位乗車移動体の旋回制御方法、及び、立位乗車移動体の旋回制御用プログラムは、搭乗者にとって体感的な操舵を実現する機能を有し、パーソナルユースの立位乗車移動体、立位乗車移動体の旋回制御方法、及び、立位乗車移動体の旋回制御用プログラムとして有用である。また、立位乗車移動体の旋回制御装置部分は、人の体を使ったコマンドインタフェース等の用途にも応用できる。
(第9実施形態)
以下に、本発明にかかる第9実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この第9実施形態は、第1〜第8実施形態の立位乗車移動体に適用可能な座席に関するものである。
以下、図面を参照して本発明における第9実施形態を詳細に説明する前に、関連する従来技術について、まず、説明する。
本発明の第9実施形態は、中立位で乗車する移動体における、立位を維持して腰掛ける立位乗車移動体(a single-seat vehicle with a standing position)に関する。
人の日常空間(living environment)に存在する扉等の建具、商店又はホテルのカウンタ、及び商品棚等の高さ等は、立位を基準に設計されている。ここで、「立位」とは、人がひざ関節及び股関節を伸ばし、さらに腰を伸ばして、脚及び足部で体重を支えて立った状態を示す。
このように立位を基準に設計された日常空間において、立位で移動していない人、例えば、車椅子を用いて移動する人は、扉を開閉すること、商品棚に置かれている商品を扱うこと、及びカウンタにある書類への書き込み等が困難である。
従来の立位での生活行動の自由度を維持する作業用椅子があった。図59は、特許文献4(実開平5−076365号公報)に記載された作業用椅子2701をユーザ2700が使用する際の基本的な姿勢を示した図である。
この作業用椅子2701は、立位の人2700の頭部位置と上半身の自由度を維持しながら、脚以外に体重を分散させて姿勢を維持するための椅子である。両足は接地可能であり、脚による腰部位置の固定が可能である。このように、立ち作業における下肢の負担を減らし、かつ、立位と同等の作業性を確保するための特許文献4のような椅子があった。
座面と背もたれとが概ね90度の通常の椅子に膝と股関節をほぼ直角に曲げて着座して、所謂、デスクワークである腕及び手での作業を行う場合、上半身を上方へ伸ばして直立させた状態で長時間の着座をするため、腰部に負担がかかる。負担がかかる理由は、着座姿勢時の骨盤と脊椎の角度が、腰椎の自然な湾曲が保てない角度であることが原因である。この腰部の負担を避けるために、脊椎への負担が最も少ないとされる角度が研究されている(例えば、非特許文献1(J.Jay Keegan著「Alterations of the lumbar curve related to posture and seating」Journal of Bone And Joint Surgery、1953年35巻(P589-P603)))。
図60は、特許文献4に記載された作業用椅子2710を示す図である。作業用椅子2710は立ち作業の負担を減らし、かつ、立位と同等の作業性を確保するために、ユーザの上半身を上方へ延ばして直立させるものであり、股関節の角度を保つように設計されている。作業用椅子2710は、臀部(gluteal region)を支持する部分2704と両大腿部(femora)でまたぐ細い部分2703との間に、坐骨(ischial bone)を支持する突起である半球状クッション2702を設けている。この半球状クッション2702により、作業用椅子2710に座るユーザの上体の滑り落ちを防ぎ、かつ、立位で作業を続ける際の脚部及び足部への負担を軽減する。
一方、立位で乗車する産業用車両に設けられた、立位の頭部位置と機器操作可能な状態を維持して脚部への体重の負荷を軽減する目的のもたれかけ用のパッドがある。(例えば特許文献5(特開平2005−132525号公報)参照)。図61は、特許文献5に記載された従来の産業用車両2720の側面図である。
もたれかけ用のパッド2707は、背もたれ2707aだけでなく、軽く臀部を支えて腰掛けることのできる円筒形又は傾斜した張り出し2707bを有している。
背もたれ2707aと臀部を支える張り出し2707bにより、車両操作用のレバー2708b又はステアリング2708a等の操作が可能な上半身の高さを安定して保ち、且つ、長時間の立位作業による脚部の負担を軽減することができる。
また、車椅子のように腰と膝を曲げた状態である着座位での生活する人は、商店及び公共機関等での立位の人との会話において、相手を見上げて話をすることになり、精神的な負荷が大きい。
このため、車椅子の中には、立位の人と頭の位置をそろえる、又は姿勢を変える目的で、椅子の位置を高くするものがある。図63は、特許文献6(実用新案登録第3029566号広報)に記載された車椅子である。車椅子の中には、椅子の位置を高くするのではなく、図63に示す車椅子は、座面と背もたれを連結して一枚の板状のシート2731のように伸展して、膝、腰、及び胸を、その板のように構成した座面用と背もたれ用のシート2731にベルト2730で固定して、立位を維持する。しかしながら、これらは下肢等に障害があり、自力では立位を取ることができないユーザのために作られており、ユーザの腰部又は脊椎への負担等については、考慮されていない。
なお、椅子を高くした車椅子に乗るユーザは、頭部位置は立位と同じになるが、体より脚が前に出ているため、商品棚又はカウンタ又はドアノブに十分に近づくことができず、不便である。
特許文献6のように立位の姿勢で固定するものについても、固定によって上半身を自由に動かすことができず、商品棚又はカウンタへのアクセスには不便である。高齢者又は足腰の弱い人のように自力で立位を維持することはできるが、疲労しやすく、長時間の立位の維持又は歩行が困難であるという人にとっても、高い位置での着座による不安定さ、恐怖感、及び身体の固定による窮屈さといった不便さがあり、立位に期待される生活行動の自由が充分には得られない。
特許文献4の作業用椅子2701は、図59のように坐骨のみで上半身の重さを支えることで、上半身の動作の自由度を大きくしている。このため、作業用椅子2701で移動する場合には、ユーザ自身が脚で椅子2701の位置を移動させる。すなわち、上半身の重さの多くをユーザの脚で支えて、移動することとなる。坐骨の一点で上半身の重さを作業用椅子2701で支えた状態で、前後方向の加速又は減速、及び左右への旋回を行うと、上半身が作業用椅子2701で振り回されて、不安定になる。よって、このような作業用椅子2701では、作業用椅子2701をそのまま移動体にすることは、安全上の問題がある。
一方、特許文献5の、立位で乗車する産業用車両2720においては、ユーザは、産業用車両20を移動させるために、立位でレバー2708b、270ステアリング8a、及びペダル2708cを操作する。したがって、産業用車両2720のもたれかけ用のパッド2707に腰掛けた場合、図62A及び図62Bのように上半身は前傾姿勢をとって手足を伸ばしてレバー2708bとステアリング2708aを操作することとなり、前傾姿勢をとることによって、腰又は腕への負担を発生する。
また、産業用車両2720のもたれかけ用のパッド2707に腰掛けた場合、図62A及び図62Bに示すように、前方に進行するとしたときに、立位の状態から図62Aの実線で示したように腰だけが進行方向に対して後ろに下がる。又は、図62Bの実線で示したように腰から上の上半身が進行方向に対して後ろに下がる。その結果、腰だけが下がる場合も、腰から上の上半身が下がる場合もユーザは、床面に対して斜めに脚を突っ張って立った状態で、足裏の摩擦で体重を支えるため、足のつま先に体重の負荷がかかり、長時間の場合には痛みを生じるという課題があった。
一般的に、ユーザがペダルを踏み込む又は踏み込みを外すことで、産業用を含めて多くの車両及び移動体を駆動させている。例えば、図62A及び図62Bの8cのように、ユーザが一点破線のように立位で産業用車両を操作する際の足部のやや前方に、操作用ペダルは配置される。前記の産業用車両のもたれかけ用パッド2707のように、つま先への体重の負荷が高い状態では、踵を床につけてつま先で操作するペダル2708cの操作が困難になるという課題を有していた。
本発明の第9実施形態の目的は、前記従来の課題を解決し、立位の頭部位置と上半身の動作の自由を維持して、かつ足部又は脚に体重の負荷をかけることなく、移動時の加減速又は旋回に対しても安定して姿勢を維持することのできる立位乗車移動体を提供することにある。
以下、本発明の第9実施形態の種々の態様について説明する。
本発明の第1態様によれば、ユーザが立位時の頭部位置を保持したまま着座して乗車する立位乗車移動体において、
移動体本体と、
前記移動体本体の上方に支持され、かつ、前記ユーザの背を支持可能な背もたれ面を有する背もたれと、
前記移動体本体の上方に支持され、かつ、前記背もたれと接続されて前記背もたれの下方に配置され、かつ、前記ユーザの臀部を支持可能な座面を有する臀部支持部と、
前記移動体本体に支持され、かつ、前記臀部支持部と接続され前記臀部支持部の下方に配置され、かつ、前記ユーザの坐骨を支持可能な坐骨支持プレートと、
前記移動体本体の前部に支持され、かつ、前記ユーザの足裏を支持可能な足置き面を有する足置きとを備え、
前記背もたれ面と直交する前記移動体本体の進行方向に対する側面から見た状態で、前記背もたれの前記背もたれ面は、後傾しており、その傾斜角度は鉛直面となす角度が10度であり、前記足置きの前記足置き面は後傾しており、その角度は水平面となす角度が10度であり、前記背もたれの前記背もたれ面と前記足置きの前記足置き面とのなす角度は90度であり、前記背もたれと前記臀部支持部の前記座面とのなす角度は135度である
ことを特徴とする立位乗車移動体を提供する。
本構成によって、立位時の頭部位置を維持して着座する際に、前記ユーザの股関節の角度を約135度に保つことができる。すなわち、前記ユーザの脊椎から骨盤への重心線と大腿骨とで成す角度を約135度に保つことができる。よって、前記ユーザの体重を、背もたれと、座部と、足置きとに分散して支えることができて、立位と同等の頭部位置を維持した上で、腰又は脊椎への負荷が最も少ないとされる角度を維持しながら、前記ユーザの脚部及び足部への負荷を減少させることができる。さらに、足首の角度を約90度に保つことで、前記ユーザは、通常の立位と同様の自然な関節の角度で体重を支えることができ、これにより、ペダル又はフットスイッチ等を足裏で操作するために足を挙げる等の動作が行い易い。さらに、臀部支持部を備えることにより、前記座部の前記坐骨支持プレートより後部にユーザの大臀筋を支持して骨盤の角度を維持することができる。この構成により、立位の頭部位置を維持して着座する際の、坐骨への荷重集中による痛み又は疲労を防止し、かつ前傾した座部より滑り落ちる不安を解消し、実際に滑り落ちることを防ぐことができる。ここで、「立位時の頭部位置を維持」又は「立位(立位時)の頭部位置を保持」又は「立位と同等の頭部位置を維持」するとは、頭部が、ひざを伸ばして立つ通常の立位の頭部位置に対して、身長±約15%程度の範囲内にあることを意味する。
本発明の第2態様によれば、前記移動体本体の下部に回転可能に支持された複数の駆動車輪と、
前記移動体本体の下部に配置されて前記複数の駆動車輪を駆動して、前記立位乗車移動体を前進、後退、又は、旋回させる駆動装置とをさらに備え、
前記立位乗車移動体の進行方向に対する側面から見た状態で、前記立位乗車移動体の旋回時の中心軸が、前記背もたれの前記背もたれ面と前記臀部支持部の前記座面との交点と、前記坐骨支持プレートと前記臀部支持部とが接する点(境界点)の間に配置されている、第1の態様に記載の立位乗車移動体を提供する。
このような構成にすれば、ユーザが座席に中立位で座れば、必然的に、ユーザの頭部が立位乗車移動体の旋回時の回転軸のほぼ上に位置することになり、立位乗車移動体の旋回時の遠心力により、身体が振り回されることがない。また、ユーザが立位乗車移動体を運転している際に、立位乗車移動体の運転方向又は立位乗車移動体の通る道筋が把握しづらくなることもない。また、ユーザが自ら意思とは関係なく身体が動かされることがなく、乗り物酔いの原因も解消される。
本発明の第3態様によれば、前記足置きに配置されて、前記ユーザの足で踏み込むことで前記立位乗車移動体の前進、後退、又は、停止操作が可能な第1操作入力手段と、
前記背もたれ面及び前記座面に配置されて、前記ユーザの身体の背面部で接触又は加圧することで前記立位乗車移動体の旋回操作が可能な第2操作入力手段をさらに備える
ことを特徴とする第1又は2の態様に記載の立位乗車移動体を提供する。
この構成により、立位の頭部位置を維持して着座する姿勢から、背を背もたれから外したり、前傾したりするような姿勢の変更なく、立位の頭部位置を維持して着座したままで第1操作入力手段及び第2操作入力手段で移動体の操作を行うことができる。
本発明の第4態様によれば、前記第2操作入力手段は圧力センサシートであることを特徴とする第3の態様に記載の立位乗車移動体を提供する。
この構成により、立位の頭部位置を維持して着座する姿勢から、背を背もたれから外したり、前傾したりするような姿勢の変更なく、身体を揺らす等の簡単な方法で圧力センサシートに圧力を入力して、立位乗車移動体の操作を行うことができる。
本発明の立位乗車移動体によれば、通常の立位の頭部位置と作業性を保ったまま自然で負荷の少ない姿勢を維持して乗車し、ユーザの背側に設置された操作入力手段により、自然な乗車姿勢のまま操作することができる。さらに、足首の角度が約90度に保たれることで、足裏が荷重を支え易いため、足裏での操作入力も安定して行うことができ、さらに走行時にかかる前後の加速度に対しても安定して荷重を支えて姿勢を維持することができる。そのため、ユーザの前方にハンドル又は手摺等が無くても安全であり、上半身の作業性を確保して、ユーザに開放感を与えることができる。
以下、本発明の第9実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面での参照符号は、他の実施形態と明確に区別するため、全て二千番台で示している。
図46は、本発明の第9実施形態における立位乗車移動体の斜視図である。図47は、図46に示した立位乗車移動体2001に、破線で示すようにユーザ2091が乗車した状態を示した図である。図58A〜図58Fは立位乗車移動体2001の六面図、図58Gは立位乗車移動体2001の前方俯瞰図、図58Hは立位乗車移動体2001の後方俯瞰図である。ただし、図58A〜図58Hではサイドガード2104は図示を省略している。
図46及び図47に示す立位乗車移動体2001は、立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091の腰から背中を支持する背もたれ面PS1を有する背もたれ2101及び立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091の臀部と坐骨を支持する座面PS3を有する座部2102を含む座席2100と、立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091の足裏を支持する足置き面PS2を有する板状の足置き2103とを少なくとも備える。より詳しくは、立位乗車移動体2001は、移動体本体2001Bと、座席2100と、足置き2103とを有して、移動体本体2001Bは、その後部に制御装置格納部2109が配置され、移動体本体2001Bの下部にバッテリ及びモータ格納部2110が配置されている。座席2100は、立位乗車移動体2001の上部側に、移動体本体2001Bの下部から支柱2105を介して上下方向に位置調整可能に配置され、足置き2103は、移動体本体2001Bの下部の前部側に固定されている。移動体本体2001Bの下部には、例えば、その両側面に、合計4個の車輪2108,2108,2107,2107をそれぞれ回転可能に配置して、4個の車輪2108,2108,2107,2107で立位乗車移動体2001が前後移動可能及び旋回可能としている。座席2100の座部2102は、移動体本体2001Bの下部から支柱2105を介して上下方向に位置調整可能に配置されており、座席2100の上方には、一対の支柱2106を介して背もたれ2101が固定配置されている。
図47に示すように、ユーザ2091(以下の説明において、「ユーザ2091」と言うときは、原則として、「立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091」のことを意味するものとする。)が足置き2103に両足を乗せ、背もたれ2101に背中を持たせかけ、座部2102の座面PS3に臀部を乗せて、立位と同等の頭部位置を維持する姿勢でユーザ2091の身体を支える状態を「中立位による乗車」とする。このときのユーザ2091の姿勢を「中立位」とする。また、背もたれ2101への接触の有無に関わらず、座部2102の座面PS3にユーザ2091の臀部を乗せることを、「座部2102への着座」とする。
背もたれ2101は、ユーザ2091が楽に中立位を保ち、かつ、首の負荷なしに頭部を鉛直に立てて保つことができるように、ユーザ2091の腰から背中を支持可能としている。背もたれ2101は、座部2102の座面PS3及び足置き2103の足置き面PS2に対して、ユーザ2091の腰から背中を支持できる背もたれ角度(約10度後方に傾斜した角度)を有する。
図48A及び図48Bは、本第9実施形態における立位乗車移動体2001に、ユーザ2091が中立位により乗車した状態の正面図と側面図である。以下、角度に関して説明する場合には、図48Bに示す側面から見た角度であるとする。図48Bに示す側面とは、例えば、立位乗車移動体2001の進行方向に対して水平面沿いに90度の角度を有する方向から見た面である。
なお、それぞれの角度において、5度程度の角度のずれは、座席2100及び足置き2103への身体の接触の仕方によって変わる範囲である。本第9実施形態及び図48A及び図48Bにおける立位乗車移動体の各部分の成す角度及び身体の角度は、中立位の姿勢を安定して保つための理想的角度であるが、前後5度程度の幅を持つものとする。
図48A及び図48Bにおいて、立位乗車移動体2001が接する平面を「水平面」HSとする。この水平面HSへの垂線を鉛直線VLとし、鉛直線VLに平行な方向を鉛直方向とする。
背もたれ2101の背もたれ面PS1と座部2102の座面PS3(図48Bにおいて、座面PS3の延長面EPS3を参照)とは、ユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1と大腿骨の中心線L2とで成す角度が約135度となる位置に、支柱2105と2106とで移動体本体2001Bの上部に配置されている。
この脊椎から骨盤への重心線L1と大腿骨の中心線L2とで成す角度とは、立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091が背もたれ2101にもたれた状態(lean against)で、ユーザ2091が座部2102に着座して、中立位による乗車を行った際に、ユーザ2091の側面から見た(背もたれ面PS1と直交する移動体2001の進行方向に対する側面から見た)角度である。
さらに、足置き2103は、ユーザ2091の足首の角度を90度に保つように、ユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線と足裏を通る直線とのなす角度が、約90度となる位置に、移動体本体2001Bの下部の前面側に、前方に向かってやや斜め上向きに固定的に配置されている。
背もたれ2101は、ユーザ2091が中立位で乗車した際に脊椎から骨盤への重心線が約10度後方に傾斜するよう、その背もたれ面PS1が後方に傾いた位置に、一対の支柱2106で座部2102に設置されている。背もたれ2101の中央部には、表面が平面の背もたれ面PS1である背もたれ中央上部2101Aを有している。
座部2102は、ユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1と大腿骨の中心線L2とで成す角度が約135度となるように、その座面PS3が前方に傾いた位置に、支柱2105で移動体本体2001Bの下部に上下方向に位置調整可能に設置されている。ユーザ2091が背もたれ2101にもたれかかった場合、ユーザ2091の背中の中心であって、主に胸椎によって構成される脊椎上部を支える平面である背もたれ中央上部2101Aの平面(背もたれ面)PS1(図48Bにおいて、背もたれ面PS1の延長面EPS1を参照)が、鉛直線VLに対して約10度だけ、ユーザ2091が中立位により乗車した際の身体向きにおける背中側に傾斜している。これにより、ユーザ2091が中立位によって乗車した際の、ユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1が、約10度だけ背中側に傾斜する。これは、ユーザ2091が中立位により乗車した状態で、ユーザ2091が、前進する方向に対して10度、後方に傾斜していることになる。この前進する方向に対して、背もたれ中央上部2101Aの背もたれ面PS1が10度後方に傾斜していることの意味は、以下のとおりである。
非特許文献2(本明子、友延憲幸著「高齢者の立位作業用椅子の開発」福岡県工業技術センター平成13年度報告書)では、高齢者が立ち上がりやすくかつ作業もし易い座面として、60cm前後の中立位を保持する作業用椅子を提唱しており、高齢者が、この座面に着座して中立位を保持する際には、脊椎から骨盤への重心線が約10度後方に傾斜する姿勢をとることを示している。筋力が衰えたユーザでは、中立位において、脊椎から骨盤への重心線が約10度後方に傾斜する姿勢は自然なものであり、前傾して作業する動作又は立ち上がる動作がし易い角度である。
よって、ユーザ2091が中立位により立位乗車移動体2001に乗車した状態で、ユーザ2091が、前進する方向に対して10度、後方に傾斜していることは、ユーザ2091にとって自然な姿勢であり、前傾して作業する動作又は立ち上がる動作がし易いことになる。
一方、足置き2103は、その足置き面PS2(図48Bにおいて、足置き面PS2の延長面EPS2を参照)が水平面HSに対して、10度だけ後傾している。以下、「10度後傾」の意味を説明する。図48A及び図48Bにおいて、ユーザ2091の顔が向いている方向を進行方向とする。このとき、足置き2103の足置き面PS2の、立位乗車移動体2001の進行方向の前方部分が後方部分より高くなり、足置き2103の足置き面PS2に置いたユーザ2091の足の踵位置からつま先位置への平面(足の裏に接する平面)(足置き面)PS2は、水平面HSに対して約10度傾斜して、つま先が踵よりも高い状態となっている。
これにより、背もたれ中央上部2101Aが鉛直線VLに対して10度だけ背中側へ傾いた面(背もたれ面)PS1と足置き2103の面(足置き面)PS2とは90度を成す。背もたれ中央上部2101Aの背もたれ面PS1と足置き2103の足置き面PS2とが90度を成すことで、中立位で乗車したユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線と足裏を通る直線とが、約90度となる。
中立位では、ユーザ2091は、座部2102に接触させた骨盤の位置から脚を斜め前方に伸ばして、座部2102に接触させた腰部と足置き2103に接触させた足裏とに体重を分散させて身体を支える。この際に、膝を軽く曲げて足首の角度を約90度とすることで、ユーザ2091は、脚を伸ばした方向にかかる体重の負荷を、足裏全体で、脚を伸ばした方向の力で支えることができる。脚を伸ばした方向にかかる体重を、足裏全体で、脚を伸ばした方向の力で支える状態は、膝を伸ばして脚で立つ通常の立位と同様であり、足部が負荷を支えるのに最も自然な状態である。そのため、足部を自由に動かすことができ、足置き2103に配置されかつ後述するフットスイッチ2111のような足部による操作入力を楽に行うことができる。
また、立位乗車移動体2001が進行方向に移動した状態から停止する場合に、ユーザ2091には、進行方向に対して慣性の力が働く。ユーザ2091は、この慣性の力に対して、立位乗車移動体2001から落ちないように、支える必要がある。本第9実施形態の立位乗車移動体2001では、足置き2103が、ユーザ2091が最も支える力を発揮できる脊椎から骨盤への重心線と足裏を通る直線とが、約90度となる位置に配置されている。これにより、歩く程度の低速であれば、前方への飛び出し防止用のベルト等の身体を拘束するもの、又は、前方への飛び出し防止用のハンドルバー等のユーザ2091が身体の前方でつかまるものが不要となる。すなわち、ユーザ2091の身体の前面にはユーザ2091の動作を妨げるものを設置する必要がなく、ユーザ2091の身体の前面を空けることができて、前傾して作業する動作又は立ち上がる動作がし易くなり、中立位で乗車したユーザ2091の作業性を損なわない。
以下、図46の立位乗車移動体2001の各構成をさらに詳細に説明する。
先に述べたように、図46に示す立位乗車移動体2001は、ユーザ2091の腰から背中を支持する背もたれ面を有する背もたれ2101と、ユーザ2091の臀部と坐骨を支持する座面を有する座部2102とを含む座席2100と、ユーザ2091の足裏を支持する足置き面を有する足置き2103とを備える。
図49は、本第9実施形態における立位乗車移動体2001の背もたれ2101及び座部2102等の拡大図である。
背もたれ2101は、背もたれ中央上部2101Aと、その両側の背もたれ側部2101Bと、ランバサポート2114(図49の斜線部分参照)とで構成されている。
背もたれ中央上部2101Aは、背もたれ2101のうち、ユーザ2091の脊椎を支える部分の上部扁平部分である。背もたれ2101の左右幅方向に対して中央の約3分の1程度の幅の部分を指す。
背もたれ側部2101Bは、背もたれ2101のうち、背もたれ中央上部2101Aの両側に配置されるように背もたれ中央上部2101Aと連結され、ユーザ2091の脊椎の両側部分を支える部分の上部側部の扁平部分である。各背もたれ側部2101Bは、背もたれ2101の左右幅方向に対してそれぞれ約3分の1程度ずつの幅の部分を指す。
ランバサポート2114は、背もたれ中央上部2101Aの下側に配置されるように背もたれ中央上部2101Aと連結され、ユーザ2091が着座した時の腰椎の湾曲部を支えるものであり、背もたれ2101の下部のふくらみ部分である。ふくらみの断面形状は、上下方向にユーザ2091側に突出するように弧を成しており、腰椎の後湾すなわち腹側に凸の湾曲に沿うふくらみである。ランバサポート2114は、背もたれ2101の左右幅方向に対して中央部分であり、背もたれ中央上部2101Aの下部につながる。
背もたれ中央上部2101Aとランバサポート2114の境界は、好ましくは、ユーザ2091の第12胸椎の高さであり、肋骨の下縁から背中を支えることにより、中立位で乗車したユーザ2091の頭部位置を安定させることができる。
また、座部2102は、中立位時のユーザ2091の臀部の筋群を支持して姿勢を保持する臀部支持部2113と、臀部支持部2113の前側に配置されかつ中立位時のユーザ2091の骨盤下端部である坐骨を支持して骨盤位置を保持する坐骨支持プレート2112と、臀部支持部2113と坐骨支持プレート2112との両側に配置されて、サイドガード2104とで構成されている。
臀部支持部2113は、ランバサポート2114の下方に配置され、その上面が平面となった扁平部分である。
坐骨支持プレート2112は、臀部支持部2113の下方に連結されるように配置されている。坐骨支持プレート2112の臀部支持部2113の近傍部分は、臀部支持部2113よりも湾曲して上方に突出している。
サイドガード2104は、座部2102の両側面に配置され、鉛直方向の面を成すもので、ユーザ2091が中立位で乗車した際に、坐骨支持プレート2112に対して横方向へ身体位置がずれることを防ぐものである。
図48A及び図48Bに示すとおり、臀部支持部2113のユーザ2091の身体に接触する面(座面)PS3は、水平面HSから約35度前傾している。すなわち、ユーザ2091が中立位で乗車した際の足先側が背中側より低くなっており、この傾きが水平面HSに対して35度の角度をなしている。これにより、背もたれ2101が10度だけ後傾している角度と合わせて、ユーザ2091が背もたれ2101にもたれて座部2102に着座した際にユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1と大腿骨の中心線L2とで成す角度が約135度となる。
座部2102が平板で構成されておりかつその平板の平面が水平面HSから35度前傾している場合には、ユーザ2091は座部2102に着座できず、座部2102から滑り落ちてしまう可能性がある。これに対して、図48A及び図48Bにおいて、坐骨支持プレート2112は、その表面に、臀部支持部2113に対して座部2102の足先側の膨らみ部分2112Aを有しいている。この膨らみ部分2112Aの側面形状は、前後方向に弧をなしており(図48B参照)、半円柱を横に倒した形で、この膨らみ部分2112Aにより、鉛直方向の上面はほぼ水平方向沿いの水平面HS3で坐骨を支持して骨盤が滑り落ちるのを防ぐ機能を持たせている。つまり、坐骨支持プレート2112は、坐骨を支持して骨盤が滑り落ちるのを防ぐために、水平面HS3を有する。また、坐骨支持プレート2112は、臀部支持部2113との接続部分において水平面HS3に対して、後傾(例えば、10度)していてもよい。これにより、坐骨の進行方向への滑り出しを防ぎ、前後方向の加速度に対して骨盤が滑り落ちるのを防ぐことができる。
中立位で乗車するユーザ2091の臀部筋群と大腿部背側の筋群との間のくぼみが坐骨支持プレート2112の膨らみ部分2112Aに当たり、大腿部背側の筋群との間のくぼみの背面側に位置する坐骨は、坐骨支持プレート2112の上部の略水平部分HS3に乗る。これにより、坐骨で上半身の体重を支えて滑り落ちることなく、座部2102に着座することができる。
座部2102は、上記のように骨盤を安定させてユーザ2091が滑り落ちない形状としたが、さらに臀部支持部2113と坐骨支持プレート2112とにクッション性を持たせ、滑りにくい表面素材を使用することで、より滑りにくいものとすることができる。坐骨支持プレート2112のクッションは、手の力で抑えても沈まないが、体重を掛けると沈む程度の硬さを持つ素材を用いる。臀部支持部2113のクッションは、坐骨支持プレート2112よりやや柔らかく沈み易い素材を用いる。臀部支持部2113のクッション素材としては例えばポリエチレンフォーム等又は天然ゴム系のスポンジゴム等である。坐骨支持プレート2112のクッション素材は、例えば、低発砲のポロエチレンフォームで、25%圧縮硬さが0.04MPa程度の素材である。臀部支持部2113の表面は、一例として、織り糸がやや太く他の布地との摩擦を大きくすることのできる布地で覆う。表面の生地としては、例えば、ポリエステルの平織り生地又はジャージニット等である。
座部2102は、例えば、坐骨支持プレート2112の坐骨を支持する半円柱形状の膨らみ部分2112Aから足先側は、水平面HSからの下降角度(水平面HSと座部2102の下降面LSとのなす角度)を約80度とすることで、坐骨支持プレート2112から斜め下に伸ばした大腿部の背側の筋を圧迫しない形状となっている。つまり、斜め下に伸ばした大腿部の背側の筋を圧迫しないために、坐骨支持プレート2112は、足の付け根までの長さより短い範囲でユーザ2091と接触する部分を有する。
臀部支持部2113は、座部2102の背もたれ寄りの扁平部分である。臀部支持部2113は、ユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1と大腿骨の中心線L2とで成す角度が約135度となるようにして中立位をとった場合に、ユーザ2091の背側にせり出す、臀部の筋群を保持するため、坐骨支持プレート2112より相対的に下方に位置する。さらに、本第9実施形態においては、臀部の筋群を保持する方法の一例として、背もたれ2101と座部2102との間に隙間2099を開け、体格又は着座位置による臀部筋群の位置又は大きさが異なる場合にも対応できる形状としている。背もたれ中央上部2101Aの平面PS1と臀部支持部2113の平面PS3とが交差する線を、背もたれ2101と座部2102の交差線とする。この交差線から背もたれ中央上部2101Aの下縁の距離と、背もたれ2101と座部2102の交差線から坐骨支持プレート2112と臀部支持部2113との境界線までの距離との比は、概ね5対2とすることで、坐骨を支持して骨盤位置を安定させ、かつ、胸椎を支持して頭部位置を安定させる形状となる。
支柱2105は、立位乗車移動体2001の上部側に、移動体本体2001Bの下部から鉛直方向に延びて座席2100を支持する1本の支柱である。支柱2105は、公知の位置調整機構でもって、座席2100を上下方向に位置調整可能に支持している。
支柱2106は、一対平行に配置され、座部2102と背もたれ2101を接続して、座部2102と背もたれ2101の成す角度を維持して、背もたれ2101を支持する支柱である。
移動体本体2001Bの下部の両側の後部には、後輪2107が正逆回転可能に配置されている。後輪2107は立位乗車移動体2001の駆動輪であり、左右対を成している。後輪2107の左右の車軸は、駆動装置の一例として機能しかつ後述するそれぞれ別々のモータ2137L,2137Rに接続しており、モータ制御部2136で左右独立して回転が制御される。
移動体本体2001Bの下部の両側の前部には、後輪2107よりも小径の前輪2108が正逆回転自在に配置されている。前輪2108は、立位乗車移動体2001の前輪であり、左右対を成している。各前輪2108は、車輪を自在軸受けで回転自在に支えるキャスタと同様の構造である。左右の前輪2108は、それぞれに自在軸受けにより、360度どちらにも向きを変えるため、一対の後輪2107の駆動に従って全方向に進行可能である。
制御装置格納部2109には、後述する制御用コンピュータ及びメモリ2130が格納されている。制御用コンピュータ及びメモリ2130のモータ制御部2136は、左右のモータ2137L,2137Rを、それぞれ独立して駆動制御し、左右の後輪2107の車軸を正逆回転させる。具体的には、モータ制御部2136により、立位乗車移動体2001の前進、後退、左右の旋廻、及び、停止といった動作を、ユーザ2091の指示入力に従って決定し、駆動輪である後輪2107の回転方向(前回転、後回転、左右で逆回転、及び、回転停止)と回転速度を制御する。
移動体本体2001Bの下部に配置されたバッテリ及びモータ格納部2110には、立位乗車移動体2001の動作に必要な電力を供給するバッテリ(図示せず)と、前記の左右の後輪2107の車軸にそれぞれ接続された、左右のモータ2137L,2137Rとを格納している。バッテリは、前記制御装置格納部2109に格納された制御用コンピュータ及びメモリ2130と、バッテリ及びモータ格納部2110に格納されかつ左右の後輪2107を回転させる左右のモータ2137L,2137Rと、下記の操作入力手段とに、それぞれ、動作に必要な電力を供給する。
足置き2103の前端部には、一対のフットスイッチ2111が配置されている。この一対のフットスイッチ2111は、ユーザ2091が立位乗車移動体の操作を行うための操作入力手段の例である。本第9実施形態の例では、フットスイッチ2111は左右対に配置されており、例えば、右側のフットスイッチ2111(2111R)は、スイッチの踏み込みにより、前進の指示を入力するスイッチであり、左側のフットスイッチ2111(2111L)は、スイッチの踏み込みにより、後退の指示を入力するスイッチである。
立位乗車移動体2001は、前後移動動作のみでなく旋回動作も行う。図50A及び図50Bに、立位乗車移動体2001が旋回動作を行う場合における、立位乗車移動体2001の上部から見たユーザ2091の頭部2091Hの動きを示す。ここでは、説明のために、360度の旋回をした場合を示している。図50Aにおいて、頭部2091Hの動きの中心軸2091Cが立位乗車移動体2001の旋回時の回転中心軸(以下、回転軸とも言う。)である。
図50Bのように、立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091の頭部2091H(の中心)の位置が旋回中心軸2091Cから離れていると、その遠心力により、身体が振り回される状態となる。このような場合、ユーザ2091が立位乗車移動体2001を運転している際に、立位乗車移動体2001の運転方向又は立位乗車移動体2001の通る道筋が把握しづらくなることにより、運転動作が困難になる。また、ユーザ2091が自ら意思とは関係なく身体が動かされ、乗り物酔いの原因にもなる。このため、ユーザ2091が不快である。そこで、より自然に旋回を行うためには、図50Aのようにユーザ2091の頭部2091Hが旋回の回転軸2091C上にあることが望ましい。
そこで、本発明者らは、背もたれ2101と座部2102とを所定の位置関係にすることにより、図50Aに示すように、中立位で乗車したユーザ2091の頭部2091Hが立位乗車移動体2001の旋回時の回転軸2091C上に位置することができることを見出した。
以下、背もたれ2101と座部2102との前記所定の位置関係について、水平面HSと平行な方向から見た(背もたれ面PS1と直交する立位乗車移動体2001の進行方向に対する側面から見た状態の)立位乗車移動体2001における背もたれ2101及び座部2102の拡大図である図51を用いて、説明する。
図51に示すように、具体的には、立位乗車移動体2001の旋回時の中心軸2091Cを、背もたれ2101の背もたれ面PS1と座部2102の座面PS3との交点CP1と、坐骨支持プレート2112と臀部支持部2113とが接する点(境界点)CP2の間に配置する。ここで、「背もたれ2101の背もたれ面PS1と座部2102の座面PS3との交点」CP1とは、ユーザ2091が背をもたれる部分(例えば、背もたれ中央上部2101A)の表面(背もたれ面)PS1を通る直線(背もたれ面PS1の延長面)EPS1と、臀部支持部2113の表面(座面)PS3を通る直線(座面PS3の延長面)EPS3との交点を示す。このように、旋回時の中心軸2091Cを、交点CP1と境界点CP2との間に配置すれば、ユーザ2091が座席2100に中立位で座れば、必然的に、ユーザ2091の頭部2091Hが立位乗車移動体2001の旋回時の回転軸2091Cのほぼ上に位置することになり、前記したような問題を解消することができる。すなわち、立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091の頭部2091Hの位置が旋回中心軸2091C上に位置するため、立位乗車移動体2001の旋回時の遠心力により、身体が振り回されることがない。また、ユーザ2091が立位乗車移動体2001を運転している際に、立位乗車移動体2001の運転方向又は立位乗車移動体2001の通る道筋が把握しづらくなることがない。また、ユーザ2091が自ら意思とは関係なく身体が動かされることがなく、乗り物酔いの原因も解消される。
より好ましくは、背もたれ2101と座部2102との交点CP1から、坐骨支持プレート2112と臀部支持部2113との境界点CP2までの間において、旋回時中心軸2091Cを背もたれ2101と座部2102の交点CP1から、交点CP1と境界点CP2との間の距離の20%から40%だけ離れた位置に配置する。つまり、背もたれ2101と座部2102との交点CP1から立位乗車移動体2001の旋回時の回転中心軸2091Cまでの距離(図51の2201)と、回転中心軸2091Cから坐骨支持プレート2112と臀部支持部2113との境界点CP2までの距離(図51の202)の比が、1:1.5から1:4である。また、回転中心軸2091Cは、上記の比を満たすことに加えて、立位乗車移動体2001の上部から見た場合には、座席2100の左右の中心に回転中心軸2091Cが位置するようにする。なお、回転中心軸2091Cは、先に説明した駆動輪である左右の後輪2107の配置状態から、左右の後輪2107の中心にも位置することになる。このようにすれば、ユーザ2091の頭部2091Hの中心と立位乗車移動体2001の旋回時の回転軸2091Cとの間の距離をより一層小さくすることができ、図50Aのように、ユーザ2091の頭部2091Hが旋回の回転軸2091C上に位置することができて、より一層、前記した問題を解消することができる。
1つの具体的な実例として、実験的には、背もたれ2101の背もたれ面PS1と座部2102の座面PS3との交点CP1から立位乗車移動体2001の旋回時の回転中心軸2091Cまでの距離を2cmにすることにより、立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091の頭部2091Hの位置を旋回時の回転中心軸2091Cに位置させることができることがわかった。
ユーザ2091として想定される成人女性において、頭部2091Hを上から見た際のその長さは約18cmであることがわかっている。ここで、その前後の4分の1(その4分の1の部分は含まない)を除いた中心部分を、旋回時の回転中心軸2091Cに位置させる場合、18cmから前後の4分の1ずつ(すなわち、4.5cmずつ)を除いた9cmの幅で変更することも可能であることがわかる。成人男性においては頭部2091Hを上から見た際の長さは約19cmであり、変更幅は9.5cmとなる。
前記具体的な実例として、実験で交点CP1から旋回時の回転中心軸2091Cまでの距離を2cmであることを見出した際、その回転中心軸2091Cは、頭部2091Hの後ろから4分の1の部分に位置していた。したがって、背もたれ2101の背もたれ面PS1と座部2102の座面PS3との交点CP1から立位乗車移動体2001の旋回時の回転中心軸2091Cまでの距離を、2cm±(9cm〜9.5cm)である、2cm以上、11cm以下又は11.5cm以下にすることにより、立位乗車移動体2001に乗車したユーザ2091の頭部2091Hの位置を旋回時の回転中心軸2091Cに位置させることができる。
このオフセットにより、背もたれ2101の後傾により、ユーザ2091の座高の高さによって頭部位置が前後に移動する量とユーザ2091の身体の厚みによって頭部位置が前後に移動する量とがつりあい、図52A及び図52Bのように頭部2091Hの位置が大きくずれることが無い。
図52B中の実線で示された人間2091Aの輪郭が標準であり、身長は約160cmである。下向き三角形は骨盤位置を示している。胴体部と頭部2091H及び骨盤を1.3倍の身長約2mにした人間2091Bが一点鎖線で示した輪郭である。0.7倍、身長約110cmにした人間2091Dが破線で示した輪郭である。頭部位置を比較するために大腿部以下は省略した。この図52Bより、人間2091A、2091B、2091Dで示すように身長が大きく変わっても、頭部2091Hの位置は、立位乗車移動体2001の旋回時の回転中心軸2091Cから大きく外れないことがわかる。
図53は、本第9実施形態における立位乗車移動体2001の座席2100に備えられた、圧力センサシート2121a,2121bの配置を示した図である。
圧力センサシート2121a,2121bは、立位乗車移動体2001の操作入力手段の一例である。1つの圧力センサシート(背もたれ圧力センサシート)2121aは、例えば、背もたれ2101の上部であって、ユーザ2091の背中の左右肩甲骨と脊椎の位置が接触する部分、具体的には、背もたれ中央上部2101Aと、背もたれ側部2101Bの上部とにまたがる部分(図53のクロスハッチング部分参照)に配置される。別の圧力センサシート(座部圧力センサシート)2121bは、例えば、座部2102の背もたれ2101の近傍側の部分であって、ユーザ2091の臀部と坐骨の位置が接触する部分、具体的には、臀部支持部2113と、坐骨支持プレート2112の臀部支持部2113の近傍部分とにまたがる部分(図53のクロスハッチング部分参照)に配置されている。背もたれ圧力センサシート2121aは、ユーザ2091の背中が背もたれ2101に接触する圧力とその変化を計測する。座部圧力センサシート2121bは、ユーザ2091の臀部と坐骨位置が座部2102に接触する圧力とその変化を計測する。本第9実施形態の例では、圧力センサシート2121a及び圧力センサシート2121bで計測された左右の圧力の偏りによって、左右の旋回が制御される。すなわち、ユーザ2091は中立位で乗車した状態で、座席2100の左右どちらかに体重をかけることで、左右の旋回の操作を入力することができる。操作入力と旋回の制御については後述する。
図54は、本第9実施形態において、ユーザ2091が座部2102に着座した場合に座部2102にかかる圧力(圧力センサシート2121bで検出した圧力)の分布を示した図である。
図54において、上方が座部2102の後方、下方が座部2102の前方であり、図54の左側がユーザ2091の右側となる配置である。図54の(a)は、本第9実施形態の立位乗車移動体2001に、ユーザ2091が中立位で乗車した際に座部2102にかかる圧力を示す。図54の(b)は、本第9実施形態の立位乗車移動体2001の座部2102に、図60の従来の作業用椅子を利用する場合のように、ユーザ2091が坐骨で上半身の体重を支えて、上半身を上向きに直立させ、膝を曲げて足部を上半身の重心線の直下で軽く接地させて姿勢を維持した状態で、座部2102にかかる圧力を示す。
図48A及び図48Bに示すように、本第9実施形態の立位乗車移動体2001に、ユーザ2091が中立位で乗車した際には、座部2102のみでなく、背もたれ2101と足置き2103との各部分でユーザ2091の体重を分散して支える。よって、図54の(a)に示すように、座部2102の圧力は1平方センチメートルあたり40グラム程度までの圧力で広い範囲で広がっており、坐骨支持プレート2112への集中は見られない。
これに対して、図60に示す従来の作業用椅子を利用する際と同様の姿勢で、ユーザ2091が座部2102に着座した場合には、図54の(b)に示すように、坐骨支持プレート2112上に1平方センチメートルあたり90グラムを越える圧力がかかっている。
従来の作業用椅子と同様の姿勢では、坐骨の狭い範囲のみに圧力がかかっている。よって、ユーザ2091自身の体重を支える鉛直方向の力に対しては安定しているが、移動体の加減速時又は旋回時のように前後左右からの水平方向の力がかかる場合には、坐骨周辺の狭い範囲のみで支えることができず、不安定になる。
これに対して図54の(a)に示す本第9実施形態の立位乗車移動体2001にユーザ2091が中立位で乗車する場合は、背もたれ2101の背もたれ面PS1が鉛直線に対して10度後傾し、足置き2103の足置き面PS2が水平面HSに対して10度後傾している。このように構成することにより、ユーザ2091の体重は鉛直方向でのみ支えられるのではなく、鉛直方向にかかる重力加速度が背もたれ2101と、座部2102と足置き2103とによって前後方向に支えられている。これにより、移動体2001の加減速時又は旋回時にかかる前後左右からの水平方向の力を支えることができ、静止時に安定な姿勢のみでなく、移動体2001の動作時もユーザ2091は中立位の姿勢を安定して保つことができる。
さらに、本第9実施形態では、ユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1と足裏とが約90度となるように、背もたれ2101の背もたれ面PS1と足置き2103の足置き面PS2(図48Bにおいて、足置き面PS2の延長面EPS2を参照)とが設置されている。よって、ユーザ2091は、中立位で乗車する際にひざを軽く曲げ、脛を脊椎から骨盤への重心線L1と平行にして、足首を直立時と同様の約90度に保つことができる。これにより、足裏での荷重支持は、直立時と同様の自然な姿勢でありながら、ユーザ2091の体重は、背もたれ2101と、座部2102と、足置き2103とに分散して支持されることとなる。上半身の荷重を坐骨のみで支える図54の(b)の状態に比べ、本第9実施形態の中立位による乗車は、局部的な圧迫が無いため、長時間乗車しても痛みを生じることが少ない。さらに、水平方向に加わる力に対しても、通常の立位同様の自然な姿勢で支えることができ、乗車での疲労を軽減することができる。
図55は、立位乗車移動体2001の座部2102に着座した場合に足置き2103にかかる圧力(圧力センサシート2121aで検出した圧力)の分布を示したものである。図55の上方が後方すなわちユーザ2091の背側であり、下方が前方すなわちユーザ2091の腹側である。図55の左側がユーザ2091の右側となる配置である。図55の(a)は、図48A及び図48Bに示したような中立位による乗車の場合であり、ユーザ2091の足首の角度が約90度である場合に、足置き2103にかかる圧力である。図55の(b)は、足置き2103が後傾しておらず、水平面と平行で、足首が約100度の鈍角になった場合の足置き2103にかかる圧力を示したものである。足首が鈍角になる状態は、図62の従来の産業用車両の背もたれパッドに腰をかけて、前方に足を伸ばして水平な産業用車両の床面と足裏との摩擦で体重を支える際の姿勢である。
足置き2103が10度後傾している場合は、足首の角度は約90度であり、図55の(a)に示すように直立時と同様につま先とかかとに荷重が分散している。これは、かかとに大きな荷重がかかり、自然に直立する際に近い、圧力のかかり方である。足置き2103が水平面と平行である場合には、背もたれ2101と座部2102の傾きにより、身体が前へ滑り出る力を、脚を斜めに突っ張り、足裏の摩擦で支えることになる。これでは、図55の(b)に示すように、つま先側への負荷が大きくなり、体重を支える力の方向として不自然である。すなわち、つま先への負荷が大きいため、つま先の細い靴の形状の場合には痛みを生じる可能性がある。本来、体重を支えるはずのかかとの圧力が低く、つま先側でななめに体重を支えるため、足裏のみでなく、斜め方向へ力を入れるためにすね及びふくらはぎへの負荷も大きくなる。
これに対して、本第9実施形態では、足置き2103の足置き面PS2を10度後傾させることで、中立位で乗車する際でも、通常の立位同様に足裏への荷重は脛と平行の方向にかかり、つま先に無理な力をかけることなく自然な力の掛け方で荷重を支えることができ、疲労を軽減することができる。
さらに、本第9実施形態では、背もたれ2101の下部にユーザ2091の腰椎の湾曲部分を支持するランバサポート2114を備えて、ランバサポート2114でユーザ2091の脊椎の自然な湾曲を維持している。背もたれ2101の上に、さらに頭部2091Hを支持するヘッドレスト(図示せず)を備えても良い。
次に、本第9実施形態の立位乗車移動体2001の操作方法について、図53、図56及び図57に基づいて説明する。
ユーザ2091の上半身の可動範囲を制限せず、作業性を保持し、脊椎に負荷のかからない姿勢を保って移動体を操作するために、本第9実施形態の立位乗用移動体2001は、中立位で乗車したユーザ2091の前方には、操作のための操作入力手段を設置していない。例えば、ユーザ2091の足置き部103に配置したフットスイッチ2111の押し下げ動作と、ユーザ2091の背側に配置した、背もたれ圧力センサシート2121a及び座部圧力センサシート2121bとで計測される圧力分布を変更する体重移動等の身体動作とにより、立位乗車移動体2001の移動の操作入力を行う。
図56は、本第9実施形態の立位乗車移動体2001の移動操作と、その操作に伴う制御に関わる機能ブロック図である。この制御に関わる機能ブロックである制御用コンピュータ及びメモリ2130は、スイッチ押し下げ検出部2131と、圧力検出部2132と、初期値保持部2133と、重心変動検出部2134と、統合部2135と、モータ制御部2136とを備えて構成している。
右側と左側のフットスイッチ2111R,2111Lはスイッチ押し下げ検出部2131に接続されている。背もたれ圧力センサシート2121aと座部圧力センサシート2121bとは圧力検出部2132に接続されている。圧力検出部2132は初期値保持部2133と重心変動検出部2134とに接続されている。初期値保持部2133は重心変動検出部2134に接続されている。スイッチ押し下げ検出部2131と重心変動検出部2134は統合部2135に接続されている。
統合部2135はモータ制御部2136に接続されている。モータ制御部2136はモータ2137L,2137Rに接続されている。
図56の右側と左側のフットスイッチ2111Lと2111Rは足置き2103上の前端部の左側と右側に配置されたフットスイッチである。左側のフットスイッチ2111Lは中立位で乗車したユーザ2091の左側に位置し、本第9実施形態ではユーザ2091の踏み込み押し下げによって立位乗車移動体2001の後退の操作を入力するものである。右側のフットスイッチ2111Rは中立位で乗車したユーザ2091の右側に位置し、本第9実施形態ではユーザ2091の踏み込み押し下げによって立位乗車移動体2001の前進の操作を入力するものである。
前記したように、背もたれ圧力センサシート2121aは、背もたれ2101に設置されて、背もたれ2101にかかる圧力の分布を計測する。座部圧力センサシート2121bは、座部2102に設置されて、座部2102にかかる圧力の分布を計測する。本第9実施形態では、中立位で乗車したユーザ2091が、背もたれ2101と座部2102に対して、ユーザ2091の右側に偏った圧力をかけると、背もたれ圧力センサシート2121aと座部圧力センサシート2121bとによってそれぞれ計測される圧力分布により、右方向への旋回操作を入力するものである。同様に、中立位で乗車したユーザ2091が、背もたれ2101と座部2102とに対して、ユーザ2091の左側に偏った圧力をかけると、背もたれ圧力センサシート2121aと座部圧力センサシート2121bとによってそれぞれ計測される圧力分布により、左方向への旋回操作を入力するものである。背もたれ圧力センサシート2121aと座部圧力センサシート2121bとによって計測される圧力分布は、圧力検出部2132に入力される。
圧力検出部2132は、背もたれ圧力センサシート2121a及び座部圧力センサシート2121bでそれぞれ計測される圧力分布をそれぞれ検出するものであり、その機能は前記制御用コンピュータによって実現される。圧力検出部2132からの出力は、初期値保持部2133と重心変動検出部2134とにそれぞれ入力される。圧力検出部2132は、初期値保持部2133に初期値が記憶されているかを確認し(後述する図57のステップS2130参照)、初期値保持部2133で初期値が保持されていない場合には、入力された値が初期値として保持される(後述する図57のステップS2140参照)。
スイッチ押し下げ検出部2131は、左側のフットスイッチ2111L及び右側のフットスイッチ2111Rの押し下げをそれぞれ検出するものであり、その機能は、制御装置格納部2109内の制御用コンピュータによって実現される。具体的には、スイッチ押し下げ検出部2131は、左側のフットスイッチ2111Lのみが踏み込まれて押し下げられたか、右側のフットスイッチ2111Rが踏み込まれて押し下げられたか、両方のフットスイッチ2111L,2111Rが踏み込まれて押し下げられたか、両方のフットスイッチ2111L,2111Rが踏み込まれていないかを検出する。検出された情報は、スイッチ押し下げ検出部2131から統合部2135に出力する。
初期値保持部2133は、背もたれ圧力センサシート2121a及び座部圧力センサシート2121bでそれぞれ計測される圧力分布の左右の偏りを判定する基準となる初期値をそれぞれ記憶するものであり、その機能は、制御装置格納部2109内の前記制御用コンピュータとメモリによって実現される。具体的には、後述する図57のステップS2110に記載するように、立位乗車移動体2001への人(ユーザ)2091の乗車が無い状態を検出すると、ステップS2120で初期値を消去する。その後、立位乗車移動体2001への人2091の乗車が最初に確認された際には、初期値保持部2133には初期値が無い状態になるので、初期値を保存する(ステップS2140参照)。すなわち、ユーザ(人)2091が乗車した直後には、必ず、初期値がリセットされるようにしている。
重心変動検出部2134は、背もたれ2101と座部2102にそれぞれ加えられかつ前記圧力検出部2132によって検出された圧力を、前記初期値保持部2133に記憶された初期値と比較して、左右の圧力の偏りの有無を判定するものであり、その機能は、制御装置格納部2109内の制御用コンピュータによって実現される。より具体的には、重心変動検出部2134では、初期値保持部2133に記憶された初期値以上の圧力点を検出して圧力分布を検出して、左右の圧力の偏りが有るか無いかを判定する。重心変動検出部2134において、初期値を使用して圧力分布に左右の圧力の偏りが有るか無いかを判定する具体的な処理については、後述する。
統合部2135は、スイッチ押し下げ検出部2131で検出された左側のフットスイッチ2111L及び右側のフットスイッチ2111Rの押し下げ状態の情報と、重心変動検出部2134で判定された背もたれ2101と座部2102に加えられた圧力の左右の偏りの情報とを統合するものであり、その機能は、制御装置格納部2109内の制御用コンピュータによって実現される。
2つの情報を統合する前に、統合部2135は、重心変動検出部2134で判定された背もたれ2101と座部2102に加えられた圧力の左右の偏りの情報に関しては、以下のように判定する。
圧力センサシート2121aで検出された圧力分布と座部圧力センサシート2121bで検出された圧力分布との両方の圧力分布に左右の偏りが無いと重心変動検出部2134で検出されて、その情報が統合部2135に入力される場合には、統合部2135は、旋回動作は不要と判定する。圧力センサシート2121aで検出された圧力分布と座部圧力センサシート2121bで検出された圧力分布といずれか一方の圧力分布のみに左右の偏りが有り、他方圧力分布に左右の偏りが無いと重心変動検出部2134で検出されて、その情報が統合部2135に入力される場合にも、統合部2135は、旋回動作は不要と判定する。圧力センサシート2121aで検出された圧力分布と座部圧力センサシート2121bで検出された圧力分布との両方の圧力分布に左右の偏りが有り、かつ、2つの圧力分布の左右の偏りが異なると重心変動検出部2134で検出されて、その情報が統合部2135に入力される場合にも、統合部2135は、旋回動作は不要と判定する。
一方、圧力センサシート2121aで検出された圧力分布と座部圧力センサシート2121bで検出された圧力分布との両方の圧力分布に左の偏りがあると重心変動検出部2134で検出されて、その情報が統合部2135に入力される場合には、統合部2135は、左方向への旋回操作が入力されたと判定する。圧力センサシート2121aで検出された圧力分布と座部圧力センサシート2121bで検出された圧力分布との両方の圧力分布に右の偏りがあると重心変動検出部2134で検出されて、その情報が統合部2135に入力される場合には、統合部2135は、右方向への旋回操作が入力されたと判定する。
このように、2つの圧力分布の偏りの傾向が同じであると重心変動検出部2134で検出された場合にのみ、統合部2135で、左方向又は右方向への旋回操作が入力されたと判定することにより、旋回操作を正確に入力することができる。言い換えれば、2つの圧力分布の偏りの傾向が同じで無い場合は、ユーザ2091が立位乗車移動体2001に乗車していて、単に、姿勢を変えただけの場合、又は、何か操作するなど、旋回操作を意図していないときのユーザ2091の動きを許容することができて、誤入力を防止することができる。
このように圧力の左右の偏りの情報に基づき旋回操作を判定したのち、左側のフットスイッチ2111L及び右側のフットスイッチ2111Rの押し下げ状態の情報とを統合部2135で統合する。例えば、右側のフットスイッチ2111Rの押し下げの情報と右への圧力の偏りの情報との組み合わせでは、図47及び図48A及び図48Bのようにユーザ2091が乗車した立位乗車移動体2001は、右側へ曲がりながら前進するように操作入力情報を、統合部2135からモータ制御部2136に出力する。右側のフットスイッチ2111Rの押し下げの情報と左への圧力の偏りの情報との組み合わせでは、図47及び図48A及び図48Bのようにユーザ2091が乗車した立位乗車移動体2001は、左側へ曲がりながら前進するように操作入力情報を、統合部2135からモータ制御部2136に出力する。左側のフットスイッチ2111L及び右側のフットスイッチ2111Rのどちらの押し下げもなく、左への圧力の偏りの情報との組み合わせでは、左向きの「その場回転」等の操作入力情報を、統合部2135からモータ制御部2136に出力する。
モータ制御部2136は、統合部2135で統合された操作入力情報をモータ2137L,2137Rの回転方向と速度とに変換し、左右の後輪2107の車軸に接続されたそれぞれのモータ2137L,2137Rの制御信号を生成するものであり、その機能は、制御装置格納部2109内の制御用コンピュータによって実現される。
このように、スイッチ押し下げ検出部2131と、圧力検出部2132とのみでなく、重心変動検出部2134と、統合部2135と、モータ制御部2136とは、それらの機能は、それぞれ、制御装置格納部2109に格納された制御用コンピュータにより実現されており、図56では制御用コンピュータ及びメモリ2130として示されている。
モータ2137Lは、乗車したユーザ2091の左側に位置する後輪2107の車軸に接続された電動モータである。モータ2137Rは乗車したユーザ2091の右側に位置する後輪2107の車軸に接続された電動モータである。モータ2137L及びモータ2137Rは、いずれもバッテリ及びモータ格納部2110内に格納され、同じくバッテリ及びモータ格納部2110内に格納されたバッテリより供給される電流によって駆動される。
図57は、本第9実施形態における立位乗車移動体2001に対する移動操作とその移動操作に基づく立位乗車移動体2001の動作を示すフローチャートの一例である。
以下、立位乗車移動体2001の移動操作方法の一例を、図57のフローチャートをに従って説明する。
動作開始後(例えば、立位乗車移動体2001のパワーをオンした後)、まず、圧力検出部2132は、圧力センサシート2121a及び2121bへの入力の有無を確認する(ステップS2110)。圧力検出部2132は、圧力センサシート2121a及び2121bのどちらにも入力がないと圧力検出部2132で判定する場合(ステップS2110においてno)には、ユーザ2091が乗車していないものとして、初期値保持部2133に記憶されている初期値を消去して(ステップS2120)、ステップS2110に戻る。このとき、具体的には、ステップS2110を所定時間、例えば、一定時間例えば0.5秒程度の間、繰り返し行い、所定時間内に圧力センサシート2121a及び2121bのどちらにも入力が無ければ、「誰も乗車していない」と圧力検出部2132で判定してステップS2120に進む。
ステップS2110で、圧力センサシート2121a及び2121bの少なくともどちらか一方に入力があると圧力検出部2132で判定する場合(ステップS2110においてyesの場合)は、ステップS2130に進む。
ステップS2130では、圧力検出部2132は、初期値保持部2133に初期値が記憶されているかを確認する(ステップS2130)。
ステップS2130で初期値保持部2133に初期値が記憶されていないと圧力検出部2132で判定する場合(ステップS2130においてnoの場合)でかつ圧力センサシート2121a及び2121bの両方の入力があると圧力検出部2132で判定する場合には、圧力検出部2132は、現状(ステップS2130を判定した時点)の圧力センサシート2121a及び2121bの入力を初期値として初期値保持部2133に出力する。初期値保持部2133は、圧力検出部2132より出力された圧力センサシート2121a及び2121bの測定値を初期値として記憶する(ステップS2140)。すなわち、初期値保持部2133では、初期値が消去されていて、且つ、圧力センサシート2121a及び2121bから新たに入力があるという条件が揃った場合に、その新しい初期値が書き込まれる。この初期値は、圧力センサシート2121a及び2121bの分布そのままに数値のマトリックスとして初期値を保持する。その後、ステップS2150に進む。ステップS2130で初期値保持部2133に初期値が記憶されていない場合(ステップS2130においてnoの場合)でかつ圧力センサシート2121a及び2121bのうちのいずれか一方の入力のみある場合においても、現状の圧力センサシート2121a及び2121bの入力を初期値として記憶する。すなわち、圧力センサシート2121a及び2121bのいずれか一方の入力の無いものについては、初期値として0を入力する。
ステップS2130において初期値保持部2133に初期値が記憶されていると圧力検出部2132で判定する場合(ステップS2130においてyesの場合)は、ステップS2140を経ず、ステップS2150へ進む。
ステップS2150では、スイッチ押し下げ検出部2131はフットスイッチ2111L,2111Rの押し下げ状態を検出する。左右2つのフットスイッチ2111L,2111Rのいずれも押し下げられていないとスイッチ押し下げ検出部2131で検出する場合、又は左右2つのフットスイッチ2111L,2111Rのいずれも押し下げられていることをスイッチ押し下げ検出部2131で検出する場合(ステップS2150においてnoの場合)は、ステップS2160に進む。
ステップS2160では、重心変動検出部2134は、圧力センサシート2121a及び2121bの入力が初期値保持部2133に記憶された初期値と異なるか否かを検出する。圧力センサシート2121a及び2121bの入力が初期値保持部2133に記憶された初期値と差がないと重心変動検出部2134で検出した場合(ステップS2160においてnoの場合)、移動及び旋回の操作入力が無いものとして、ステップS2110に戻る。
ステップS2160において、圧力センサシート2121a及び2121bの入力が初期値保持部2133に記憶された初期値に比べて右又は左への入力の偏りがあることを重心変動検出部2134で検出した場合(ステップS2160においてyesの場合)、統合部2135は、フットスイッチ2111L,2111Rからの入力に基づく前進及び後退の速度を0とし、圧力センサシート2121a及び2121bの入力と初期値との差に基づいて、右回り又は左回りの「その場回転」の操作入力情報を生成する。その後、ステップS2170に進む。
ステップS2160での重心変動検出部2134による検出方法は、例えば、圧力センサシート2121a及び2121bのそれぞれの入力値から、初期値保持部2133に記憶された初期値を減算する。本第9実施形態の例では、圧力センサシート2121a及び2121bは、圧力センサシート2121a及び2121bのそれぞれの表面上に複数の測定点を持つものであるとする。初期値は、測定点ごとに初期値保持部2133に記憶されており、入力値と初期値の減算は測定点ごとに重心変動検出部2134で行われるものとする。重心変動検出部2134において、複数の測定点を左右の領域に分割し、左右それぞれの領域において、減算された値の合計を求める。左右の領域への分割は、圧力センサシート2121a及び2121bの測定点を、背もたれ2101及び座部2102の左右幅の中央に上下に分割線を設定して、圧力センサシート2121a及び2121bの測定点を左右の領域に分けるものとする。中立位で乗車したユーザ2091の右側を圧力センサシート2121a及び2121bの右の領域、左側を圧力センサシート2121a及び2121bの左の領域とする。右側の領域の合計は圧力センサシート2121a及び2121bの右の領域の減算値の合計であり、左側の領域の合計は圧力センサシート2121a及び2121bの左の領域の減算値の合計である。左右の領域の減算値の合計の差が、初期値保持部2133に記憶された初期値の合計値に対して、予め定められた値、例えば20%、未満であれば初期値と変化がないと重心変動検出部2134で検出する。左右の領域の減算値の合計の差が、初期値保持部2133に記憶された初期値の合計値に対して、前記予め定められた値以上であることを重心変動検出部2134で検出すれば、偏りがあることを重心変動検出部2134で検出する。圧力センサシート2121a及び2121bの右の領域の減算値が左の領域の減算値より大きければ、右への圧力の偏りがあることを重心変動検出部2134で検出する。また、左の領域の減算値が右の領域の減算値より大きければ、左への圧力の偏りがあることを重心変動検出部2134で検出する。統合部2135は、重心変動検出部2134からの検出情報に基づき、例えば右への圧力の偏りがある場合には右回りの「その場回転」の操作入力情報を生成する。統合部2135は、重心変動検出部2134からの情報に基づき、例えば左への圧力の偏りがある場合には左回りの「その場回転」の操作入力情報を生成する。
ステップS2170において、モータ制御部2136は、統合部2135から出力された操作入力情報に基づいて、左右のモータ2137L,2137Rの回転を制御するための回転速度を設定する(ステップS2170)。すなわち、モータ制御部2136は、統合部2135から出力された、「その場回転」の操作入力情報に基づいて、左右逆符号のモータ駆動電圧を設定する。統合部2135からの情報が例えば右回りへの「その場回転」の操作入力情報である場合には、右側のモータ2137Rに負の駆動電圧を設定し、左側のモータ2137Lに正の駆動電圧を設定することにより、両モータ2137R,2137Lが等速で回転するように設定する。これにより、ステップS2210で、右側のモータ2137Rを後退する方向に回転させ、左側のモータ2137Lを前進する方向に回転させることになる。両モータ2137R,2137Lが等速で逆回転することで、左右の後輪2107が等速で逆回転し、立位乗車移動体2001の「その場回転」を実現する。統合部2135からの情報が例えば左回りへの「その場回転」の操作入力情報である場合には、右側のモータ2137Rに正の駆動電圧を設定し、左側のモータ2137Lに負の駆動電圧を設定することにより、両モータ2137R,2137Lが等速で回転するように設定する。これにより、右側のモータ2137Rを前進する方向に回転させ、左側のモータ2137Lを後退する方向に回転させることになる。両モータ2137R,2137Lが等速で逆回転することで、左右の後輪2107が等速で逆回転し、立位乗車移動体2001の「その場回転」を実現する。
一方、左右2つのフットスイッチ2111L,2111Rのいずれか一方が押し下げられていることをスイッチ押し下げ検出部2131で検出する場合(ステップS2150においてyesの場合)は、ステップS2180に進む。
ステップS2180において、重心変動検出部2134は、圧力センサシート2121a及び2121bの入力が、初期値保持部2133に記憶された初期値と異なるか否かを検出する(ステップS2180)。検出方法は、ステップS2160の場合と同様である。圧力センサシート2121a及び2121bの入力が初期値保持部2133に記憶された初期値と差がないと重心変動検出部2134で検出した場合(ステップS2180においてnoの場合)、すなわち、圧力センサシート2121a及び2121bの入力に左右の偏りがないと重心変動検出部2134で検出した場合は、統合部2135は、スイッチ押し下げ検出部2131からのフットスイッチ2111L,2111Rの押し下げ情報に基づき、旋回動作無しで、前進又は後退の操作入力情報を生成する。例えば、右側のフットスイッチ2111Rの押し下げがあることを検出したことがスイッチ押し下げ検出部2131から統合部2135に入力された場合には、統合部2135で、前進の操作入力情報を生成する。左側のフットスイッチ2111Lの押し下げがあることを検出したことがスイッチ押し下げ検出部2131から統合部2135に入力された場合には、統合部2135で後退の操作入力情報を生成する。左側のフットスイッチ2111Lと右側のフットスイッチ2111Rとの両方が踏み込まれて押し下げがあることを検出したことがスイッチ押し下げ検出部2131から統合部2135に入力された場合には、統合部2135で、停止と判定する。生成された操作入力情報は、統合部2135からモータ制御部2136に出力する。その後、ステップS2190に進む。
ステップS2190において、モータ制御部2136は、統合部2135から出力された操作入力情報に基づいて左右のモータ2137L,2137Rの回転を制御する。まず、モータ制御部2136は、統合部2135から出力された、前進又は後退の操作入力情報に基づいて、左右同符号のモータ駆動電圧を設定する。例えば、前進の操作入力情報である場合には、左右のモータ2137L,2137Rに正の駆動電圧をモータ制御部2136で設定する。後退の操作入力情報である場合には、左右のモータ2137L,2137Rに負の駆動電圧をモータ制御部2136で設定する。駆動電圧は、両モータ2137L,2137Rが等速で回転するようにモータ制御部2136で設定される。これにより、左右のモータ2137L,2137Rが同方向に等速に回転することで、左右の後輪2107が等速で同方向へ回転し、立位乗車移動体2001の、前進又は後退の直進を実現する(ステップS2210)。
一方、ステップS2180において、圧力センサシート2121a及び2121bの入力に左右の偏りがあることを重心変動検出部2134で検出した場合(ステップS2180においてyesの場合)は、ステップS2200に進む。
ステップS2200においては、統合部2135は、フットスイッチ2111L,2111Rの押し下げの情報に基づき、前進又は後退の操作入力情報を生成し、圧力センサシート2121a及び2121bの入力の左又は右への圧力の偏りの情報に基づき、左又は右への旋回の操作入力情報を生成する。例えば、右側のフットスイッチ2111Rが押し下げられた情報と、圧力センサシート2121a及び2121bの右への圧力の偏りの情報とがある場合には、右前方への移動の操作入力情報を統合部2135で生成する。同様に、右側のフットスイッチ2111Rの押し下げの情報と圧力センサシート2121a及び2121bの左への圧力の偏りの情報との組み合わせの場合には、左前方への移動の操作入力情報を統合部2135で生成する。また、左側のフットスイッチ2111Lの押し下げの情報と圧力センサシート2121a及び2121bの右への偏りの組み合わせの場合には右後方への移動、左側のフットスイッチ2111Lの押し下げの情報と圧力センサシート2121a及び2121bの左への圧力の偏りの情報との組み合わせの場合には、左後方への移動の操作情報を統合部2135で生成する。その後、ステップS2210に進む。
ステップS2210においては、モータ制御部2136は、統合部2135から出力された操作入力情報に基づいてモータ2137L,2137Rの回転を制御する。モータ制御部2136は、統合部2135から出力された操作入力情報に基づいて、左右のモータ2137L,2137Rの駆動電圧を設定する。例えば、右前方への移動の操作入力情報が統合部2135から出力された場合は、まず、左右のモータ2137L,2137Rの駆動電圧として正の電圧をそれぞれ設定し、右のモータ2137Rの駆動電圧より旋回操作分の電圧を減算し、左のモータ2137Lの駆動電圧に旋回操作分の電圧を加算する。両モータ2137L,2137Rへの旋回操作分の電圧の絶対値は、同じであるとする。これにより、右モータ2137Rより左モータ2137Lの回転速度が高くなる、又は、右モータ2137Rが低速で後退方向へ回転し、左モータ2137Lが高速で前進方向へ回転することになる。従って、右の後輪2107は低速で前進又は後退し、左の後輪2107は高速で前進するため、立位乗車移動体2001の右前方への移動が実現される。左前方への移動の操作入力情報の場合も同様であるが、右モータ2137Rの駆動電圧に旋回操作分を加算し、左モータ2137Lの駆動電圧より旋回操作分を減算する。右後方への移動の操作入力情報の場合は、まず、左右のモータ2137L,2137Rの駆動電圧として負の電圧を設定し、右のモータ2137Rの駆動電圧に旋回操作分の電圧を加算し、左のモータ2137Lの駆動電圧より旋回操作分の電圧を減算する。これにより、右モータ2137Rより左モータ2137Lの回転速度が高くなる又は右モータRが低速で前進方向へ回転し、左モータ2137Lが高速で後退方向へ回転することになる。従って、右の後輪2107は低速で後退又は前進し、左の後輪2107は高速で後退するため、立位乗車移動体2001の右後方への移動が実現される。左後方への移動操作入力情報の場合には、左右のモータ2137L,2137Rの駆動電圧として負の電圧を設定し、右のモータ2137Rの駆動電圧より旋回操作分の電圧を減算し、左のモータ2137Lの駆動電圧に旋回操作分の電圧を加算する。
ステップS2170又はステップS2190又はステップS2200で設定されたモータ制御部2136の駆動電圧により、左モータ2137Lと右モータ2137Rが回転する(ステップS2210)。
上記のような動作によって、本第9実施形態の立位乗車移動体2001は、ユーザ2091が乗車して前進しようとする際には、フットスイッチ2111L,2111Rのうち、例えば、乗車したユーザ2091から見て右側のスイッチ2111Rを踏むことで前進し、後退しようとする際にはフットスイッチ2111のうち例えば、左側のスイッチ2111Lを踏むことで後退する。フットスイッチ2111L,2111Rを踏まずに重心を左右に傾けることでその場で旋回し、フットスイッチ2111L又は2111Rを踏みながら重心を左又は右に傾けることで前進又は後退しながら方向転換をすることができる。
なお、ステップS2160又はステップS2180において、重心変動検出部2134での右又は左への圧力の偏りの検出は、左又は右の測定点での初期値との差分の合計値を用いて行ったが、例えば、圧力センサシート2121a及び2121b上の各測定点への入力より、重心位置を求め、重心位置を初期値と比較して行うことができる。また、ステップS2160又はステップS2180において、重心変動検出部2134で圧力の偏りの有無の検出は、初期値の合計値の20%以上の偏りがあった場合としたが、これ以外の数値でもよい。
前記したように、本第9実施形態のかかる構成によれば、背もたれ2101が後方に傾斜し、座部2102が前方に傾斜することで、ユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1が約10度後方に傾斜し、ユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1と大腿骨の中心線L2とで成す角度が約135度となることで、ユーザ2091は腰又は脊椎の負担が最も少ない姿勢を保持することができる。
さらに、足置き2103の足置き面PS2が後方に傾斜してユーザ2091の足首の角度が約90度となることで直立時と同様の自然な足裏への荷重分布で、ユーザ2091は長時間でも疲労が少ない、身体への負荷の小さい、立位を維持した着座姿勢をとることができる。さらに、足首の角度を約90度に保つことで、前記ユーザ2091は、通常の立位と同様の自然な関節の角度で体重を支えることができ、これにより、フットスイッチ2111L,2111Rを足裏で操作するために足を挙げる等の動作が行い易い。さらに、足首の角度が約90度に保たれることで、足裏が荷重を支え易いため、足裏での操作入力も安定して行うことができ、さらに、走行時にかかる前後の加速度に対しても安定して荷重を支えて姿勢を維持することができる。そのため、ユーザ2091の前方にハンドル又は手摺等が無くても安全であり、上半身の作業性を確保して、ユーザ2091に開放感を与えることができる。
また、背もたれ2101の背もたれ面PS1が後方へ傾斜し、足置き2103の足置き面PS2がユーザ2091の脊椎から骨盤への重心線L1と足裏を通る直線(足置き面PS2沿いの直線)とが約90度となるように設置されることで、ユーザ2091は、荷重を背もたれ2101に接触する背と座部2102に接触する臀部及び大腿部の上端部と、さらには、足裏に分散することができる。坐骨に荷重が集中することが無く、さらに脊椎、骨盤及び足裏に局所的な負荷がかかることのない姿勢を実現することで、立位姿勢を維持した状態で座部から滑り落ちることなく着座することができる。これにより、サドル式の作業椅子のように、またがる必要が無いため、スカート又は和服等のまたがることが困難な服装であっても乗車することができる。
また、操作入力手段の例であるフットスイッチ2111L,2111Rと圧力センサシート2121aと2121bを足置き2103と、背もたれ2101と、座部2102とに設け、ユーザ2091の前方には操作入力手段などの操作系の装置を設けないことで、やや後傾の立位姿勢を維持することができ、移動時の前後の加速度に対してもユーザ2091がのめったり(倒れそうになるほど体が前に傾いたり)、転倒したりする課題を解決できる。さらに、座席前面が開放されているためユーザ2091の腕及び上半身の動作を妨げるものが無く、乗車したままでの棚へ手を伸ばす等の作業範囲を大きく採ることができ、開放感も得られる。乗降時の障害物が無いため、乗降動作がスムースであり、乗降時の負荷を低減できる。
本発明にかかる立位乗車移動体は、ゴルフ用カート又は産業用車両又は車椅子等として有用である。また、本発明にかかる立位乗車移動体は、自動車又は電車の座席又は作業用椅子等の用途にも応用できる。
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。