従来、捻り振動系を有する負荷を両側から駆動するツイン・ドライブ制御装置が知られている。以下、従来のツイン・ドライブ制御装置として4つの形態を示し、それぞれについて説明する。
まず、従来の第1のツイン・ドライブ制御装置について説明する。従来のツイン・ドライブ制御装置として、図12に示すものが知られている。このツイン・ドライブ制御装置は、例えば図11に示すように、ロータリカッタ2を減速器4A,4Bを介してモータ6A,6Bをベクトル制御する。このようなツイン・ドライブ制御装置を適用した負荷装置は、ロータリカッタ2のツイン・ドライブ方式が代表例である。ここで、モータ6A,6Bは、低慣性モーメント、省電力化及び小型化に適する同期型モータである。
一般に、負荷装置は、連続して送られてくる紙、段ボール、鋼板などのシートを一定寸法に切断するロータリカッタや高速クランクシャーなどのように、片側より駆動される。しかし、近年、紙,段ボール,鋼板などのシート幅が広くなるにつれ、ロータリカッタやクランクシャーなどの寸法が大きくなり、急加減速が可能な大容量のモータが必要とされた。ここで、大容量のモータは大型でコストが高く、また、機械全体が大型になってしまうため、不都合である。そこで、図11に示したように、従来のモータを2台使用して駆動するツイン・ドライブ方式が採用されている。
図11を参照して、ロータリカッタ2のツイン・ドライブ方式は、ロータリカッタ2をその両側からギヤで構成された減速器4A,4Bを介し、第1のモータ(第1の同期モータに相当する。)6A及び第2のモータ(第2の同期モータに相当する。)6Bにより駆動する。一方、ロータリカッタ2は、ロータリカッタ2の自重を軽くするため、ロータリカッタ2の内部が部分的に空洞になっている。また、ロータリカッタ2の円周面は、ロータリカッタ2の中心軸に平行又は斜めにカッタ(刃)の加工が施されているため、捻れ振動を発生し易い構造となっている。このため、ロータリカッタ2の両側を駆動するツイン・ドライブ方式では、両モータ6A,6Bを同一のトルク指令で駆動するように、モータ制御する。また、同様に、高速クランクシャー(図示せず)の場合も、シャー(刃)の両端をクランクで駆動するため、捻れ振動を発生し易い構造となっている。このため、ロータリカッタ2の場合と同様な制御が行われている。
図12を参照して、ツイン・ドライブ制御装置において、ポジション指令(以下、単に速度指令という。)VCは、速度指令作成回路10により、シート切断長L0と、パルスジェネレータ12からのシート走行速度と、パルスジェネレータ14から第1のモータ6Aの速度フィードバックのパルス信号を入力して得られる速度とを用いて作成される。一方、パルスジェネレータ14からの速度フィードバックのパルス信号は、FVC(周波数/電圧変換回路)16により、速度フィードバック信号VAに変換される。
また、速度ループ内の減算器18により、速度偏差(VC−VA)が計算され、この速度偏差(VC−VA)に基づいて、速度アンプ20及びクランプ回路22によりトルク指令τ*Aが作成される。このトルク指令τ*Aは、第1のモータ6Aのベクトル制御回路24A及び第2のモータ6Bのベクトル制御回路24Bにそれぞれ供給される。各ベクトル制御回路24A,24Bはトランジスタにより構成されるパワーユニット26A,26Bに電流指令を供給する。この際、各ベクトル制御回路24A,24Bには、各パワーユニット26A,26Bの出力電流が電流ループを経てフィードバックされ、そのフィードバック値と電流指令の値との間の偏差がゼロになるように電流指令が作成される。
このように、従来の第1のツイン・ドライブ制御装置は、第1のモータ6Aの速度偏差を用いて単一のトルク指令を作成し、その単一のトルク指令をベクトル制御回路24A,24Bにそれぞれ供給することにより、第1のモータ6A及び第2のモータ6Bをそれぞれ駆動する。
次に、従来の第2のツイン・ドライブ制御装置について説明する。従来のツイン・ドライブ制御装置として、特許文献1に記載のものが知られている。このツイン・ドライブ制御装置は、図13に示すように、第1のモータ6A及び第2のモータ6Bをベクトル制御するものである。このベクトル制御により、捻れ振動系を有する負荷を両側から第1及び第2のモータ6A,6Bで駆動するシステムに対して、負荷の捻り振動を抑制する。
具体的には、ツイン・ドライブ制御装置は、速度指令作成回路10、FVC16A、減算器18、速度アンプ20及びクランプ回路22により、第1のモータ6Aへの基本トルク指令τ*Aを作成し、逆位相補償回路30の減算器32により、第1のモータ6Aの速度フィードバックと第2のモータ6Bの速度フィードバックとの差を算出し、速度アンプ34及び微分回路36により、この速度差を補償トルク指令に変換し、加算器40により、基本トルク指令τ*Aに補償トルク指令を加えて、第2のモータ6Bへのトルク指令τ*B1を作成することを特徴とする。
つまり、このツイン・ドライブ制御装置は、第1のモータ6Aへの基本トルク指令τ*Aを作成する手段と、第1のモータ6Aの速度フィードバックと第2のモータ6Bの速度フィードバックとの差をとり、この速度差を補償トルク指令に変換する手段と、基本トルク指令τ*Aに前記補償トルク指令を加えて、第2のモータ6Bへのトルク指令τ*B1を作成する手段と、を備えるものである。
このように、従来の第2のツイン・ドライブ制御装置は、第1のモータ6Aの速度偏差を用いて基本トルク指令を作成し、第1のモータ6Aと第2のモータ6Bの速度フィードバックの差を用いて補償トルク指令を作成する。そして、基本トルク指令を第1のモータ6Aへのトルク指令とし、基本トルク指令と補償トルク指令とを加算した指令を第2のモータ6Bへのトルク指令とし、ベクトル制御回路24A,24Bにそれぞれ供給することにより、第1のモータ6A及び第2のモータ6Bをそれぞれ駆動する。この場合、第2のモータ6Bへのトルク指令は、両モータ6A,6Bの速度フィードバックの差に基づくものであり、この速度差がゼロになるように制御されるから、捻り振動を抑制する方向に働き、負荷の捻り振動を抑制することができる。
次に、従来の第3のツイン・ドライブ制御装置について説明する。従来のツイン・ドライブ制御装置として、特許文献2に記載のものが知られている。このツイン・ドライブ制御装置は、第1のモータ6A及び第2のモータ6Bのベクトル制御により、特に剛性が極めて低い負荷を駆動し、負荷の捻り振動を抑制するものである。
具体的には、ツイン・ドライブ制御装置は、図14に示すように、減算器105及び速度調整器(ASR)104により、第1のモータ6Aへの基本速度指令と第1のモータ6Aの速度フィードバック信号VF1(実速度ωに相当する。)との差からトルク指令τ*Aを作成してこれを第1のモータ6Aへのトルク指令とし、減算器107により、第1のモータ6Aの絶対位置検出器(AE)101Aからの回転角度と第2のモータ6Bの絶対位置検出器101Bからの回転角度との差を算出し、位相調整器(APR)106の微分器108、位相誤差増幅器109、加算器110及び速度誤差増幅器111により、この回転角度差を補償トルク指令に変換し、加算器112により、トルク指令τ*Aに補償トルク指令を加えて、第2のモータ6Bへのトルク指令τ*B2を作成することを特徴とする。
このように、従来の第3のツイン・ドライブ制御装置は、第1のモータ6Aの速度偏差を用いて基本トルク指令を作成し、第1のモータ6Aと第2のモータ6Bの回転角度の差を用いて補償トルク指令を作成する。そして、基本トルク指令を第1のモータ6Aへのトルク指令とし、基本トルク指令と補償トルク指令とを加算した指令を第2のモータ6Bへのトルク指令とし、ベクトル制御インバータ103A,103Bにそれぞれ供給することにより、第1のモータ6A及び第2のモータ6Bをそれぞれ駆動する。この場合、第2のモータ6Bへのトルク指令は、両モータ6A,6Bの回転角度の差に基づくものであり、この回転角度の位相差がゼロになるように制御されるから、捻り振動を抑制する方向に働き、負荷の捻り振動を抑制することができる。
次に、従来の第4のツイン・ドライブ制御装置について説明する。従来のツイン・ドライブ制御装置として、図15に記載のものが知られている。このツイン・ドライブ制御装置52は、第1のモータ6Aと第2のモータ6Bの初期磁極位相を考慮して、ベクトル制御により、負荷の捻り振動を抑制するものである。前述した従来の第1〜第3のツイン・ドライブ制御装置と比較すると、第1のモータ6A及び第2のモータ6Bを電力制御するために、ベクトル制御を用いている点で共通するが、第4のツイン・ドライブ制御装置52では、第1のモータ6Aと第2のモータ6Bの夫々の初期磁極位相を考慮して電力制御している点で相違する。
以下、図15に示すツイン・ドライブ制御装置52において、第1のモータ6Aを駆動する場合と、第2のモータ6Bを駆動する場合とに分けて説明する。まず、第1のモータ6Aを駆動する場合、一般的に知られたベクトル制御を実現するために、座標変換器55は、トルク分電圧指令V*qと、励磁分電圧指令V*dと、第1のモータ6Aの回転位相γから第1のモータ6Aの初期磁極位相である第1の初期磁極位相(以下、第1の磁極位相という。)θ1を減算器59により減算して得られる新たな回転位相Φ1とを入力し、入力したトルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dを新たな回転位相Φ1に応じて座標変換し、得られる3相の正弦波電圧指令V*u1,V*v1,V*w1をPWM制御器56に出力する。
ここで、第1のモータ6Aの回転位相γは、第1のモータ6Aの回転軸に機械的に連結したパルスジェネレータ14によるパルス信号を微分器(図示せず)によって微分演算し、得られる速度帰還信号(実速度)ωを積分器58によって積分演算して得られる値である。また第1の磁極位相θ1は、第1のモータ6Aの磁極位相であり、図4に示すように、第1のモータ6Aに直流励磁して、第1のモータ6Aのロータ(図示せず)をロック状態に保持した場合の磁極位相である。
また、図15及び後述する図17(B)に示すように、PWM制御器56は、3相の正弦波電圧指令V*u1,V*v1,V*w1(図17(B)では正弦波電圧指令)と搬送波信号(図15には図示せず、図17(B)では三角波発生器からの搬送波(三角波)信号)とを入力し、3相の正弦波電圧指令V*u1,V*v1,V*w1を搬送波信号によってパルス幅制御し、3相のPWM信号(パルス信号)Vu1p,Vv1p,Vw1pをゲートドライブ回路(図示せず)にてドライブ信号とし、電力変換器57に出力する。ここで、ゲートドライブ回路(図示せず)は、PWM制御器56から3相のPWM信号Vu1p,Vv1p,Vw1pを入力し、これらの信号に基づいてドライブ信号を生成し、電力変換器57に出力する。尚、図15では説明の便宜上、PWM制御器56の出力を3相のPWM信号Vu1p,Vv1p,Vw1pとしている。
電力変換器57は、後述する図17(A)に示すように、主回路として直流電圧Edを入力し、ドライブ信号がIGBT(6個)のゲートをオンオフ動作させることによって、3相のパルス状正弦波電圧信号U1,V1,W1を出力する。つまり、ドライブ信号(図15では3相のPWM信号Vu1p,Vv1p,Vw1p)が電力変換器57に入力すると、電力変換器57によって、ドライブ信号が電力変換器57に内在するスイッチング素子例えば、IGBT(Insulated Gate Bipola Transistor)のゲートをオンオフ動作させ、第1のモータ6Aを駆動するための3相のパルス状正弦波電圧信号U1,V1,W1が第1のモータ6Aの巻線へ供給される。
次に、第2のモータ6Bを駆動する場合、第1のモータ6Aを駆動する場合と同様に、ベクトル制御を実現するために、座標変換器61は、トルク分電圧指令V*qと、励磁分電圧指令V*dと、第1のモータ6Aの回転位相γから第2のモータ6Bの初期磁極位相である第2の初期磁極位相(以下、第2の磁極位相という。)θ2を減算器60により減算して得られる新たな回転位相Φ2とを入力し、入力したトルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dを新たな回転位相Φ2に応じて座標変換し、得られる3相の正弦波電圧指令V*u2,V*v2,V*w2をPWM制御器62に出力する。
PWM制御器62は、3相の正弦波電圧指令V*u2,V*2,V*w2と搬送波信号(図15には図示せず)とを入力し、3相の正弦波電圧指令V*u2,V*v2,V*w2を搬送波信号によってパルス幅制御し、3相のPWM信号Vu2p,Vv2p,Vw2pをゲートドライブ回路(図示せず)にてドライブ信号とし、電力変換器63に出力する。ここで、ゲートドライブ回路(図示せず)は、PWM制御器62から3相のPWM信号Vu2p,Vv2p,Vw2pを入力し、これらの信号に基づいてドライブ信号を生成し、電力変換器63に出力する。尚、図15では説明の便宜上、PWM制御器62の出力を3相のPWM信号Vu2p,Vv2p,Vw2pとしている。
電力変換器63は、図17(A)における電力変換器57の場合と同様に、主回路として直流電圧Edを入力し、ドライブ信号がIGBT(6個)のゲートをオンオフ動作させることによって、3相のパルス状正弦波電圧信号U2,V2,W2を出力する。つまり、ドライブ信号(図15では3相のPWM信号Vu2p,Vv2p,Vw2p)が電力変換器63に入力すると、電力変換器63によって、ドライブ信号が電力変換器63に内在するスイッチング素子例えば、IGBTのゲートをオンオフ動作させ、第2のモータ6Bを駆動するための3相のパルス状正弦波電圧信号U2,V2,W2が第2のモータ6Bの巻線へ供給される。
以上、図15のツイン・ドライブ制御装置52について、第1のモータ6Aを駆動する場合と第2のモータ6Bを駆動する場合とに分けて説明したが、いずれの場合も、座標変換器55,61の入力信号であるトルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dは、速度及び電流制御部54により生成される。図16は、図15に示した速度及び電流制御部54の制御ブロック図である。図16に示すように、トルク分電圧指令V*qは、速度制御器81により速度制御されたトルク指令τ*(トルク電流指令i*1と同等)と、座標変換器85により座標変換されたトルク分電流帰還信号iqとの間の差であるトルク分電流偏差Δiqを電流制御器87により電流制御された指令である。また、励磁分電圧指令V*dは、座標変換器85により座標変換された励磁分電流帰還信号idと、電流制御器90においてd軸でゼロ電流制御するために必要なゼロ電流指令0*との間の差である励磁分電流偏差Δidを電流制御器90により電流制御(d軸でゼロ電流制御)された指令である。ここで、トルク指令τ*は、第1のモータ6Aの速度偏差Δω(速度指令ω*と速度帰還信号ωとの間の差)を速度制御器81により速度制御された指令である。また、トルク分電流帰還信号iq及び励磁分電流帰還信号idは、座標変換器85において、第1のモータ6AのU相電流帰還信号iu及びW相電流帰還信号iwを第1のモータ6Aの回転位相γにより座標変換された信号である。
このように、従来の第4のツイン・ドライブ制御装置は、第1のモータ6Aの初期磁極位相である第1の磁極位相θ1を用いて新たな回転位相Φ1を求め、この新たな回転位相Φ1を用いてトルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dを3相の正弦波電圧指令V*u1,V*v1,V*w1に座標変換し、PWM信号Vu1p,Vv1p,Vw1pを生成し、電力変換器57を介して第1のモータ6Aを駆動する。同様に、第2のモータ6Bの初期磁極位相である第2の磁極位相θ2を用いて新たな回転位相Φ2を求め、この新たな回転位相Φ2を用いてトルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dを3相の正弦波電圧指令V*u2,V*v2,V*w2に座標変換し、PWM信号Vu2p,Vv2p,Vw2pを生成し、電力変換器63を介して第2のモータ6Bを駆動する。この場合、第1の初期位相θ1を及び第2の初期位相θ2をそれぞれ考慮して第1のモータ6A及び第2のモータ6Bを駆動するようにしたから、捻り振動を抑制する方向に働き、負荷の捻り振動を抑制することができる。
特開平8−174481号公報
特開2003−116292号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
〔構成〕
まず、本発明によるツイン・ドライブ制御装置の構成について説明する。図1は、本発明によるツイン・ドライブ制御装置をロータリカッタ装置に適用した場合の制御ブロック図である。図2は、図1に示すツイン・ドライブ制御装置における速度及び電流制御部の制御ブロック図である。図3は、図2の制御ブロック図の続きである。
ロータリカッタ装置71Aは、図1に示すように、第1の同期モータ6A、第2の同期モータ6B、パルスジェネレータ14、ロータリカッタ2及びツイン・ドライブ制御装置72Aを備える。第1の同期モータ6A、第2の同期モータ6B及びロータリカッタ2は、前述したので説明を省略する。ロータリカッタ装置71Aは、概略的に説明すると、ツイン・ドライブ制御装置72Aによって単一のPWM信号Vup,Vvp,Vwpを生成し、この共通した単一のPWM信号Vup,Vvp,Vwpによって電力変換器57,76のスイッチング素子のゲートをオンオフ動作させ、所望のパルス状正弦波電圧信号U1,V1,W1及びU2,V2,W2を第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bへそれぞれ供給し、ロータリカッタ2を回転駆動する。
パルスジェネレータ14は、第1の同期モータ6Aの回転角を検出する回転センサであり、アブソリュート型又はインクリメント型が用いられる。但し、インクリメント型の場合、第1の同期モータ6Aが1回転したとき、1パルスの信号を発生する。
ツイン・ドライブ制御装置72Aは、図1に示すように、電流検出器64,65、減算器53、速度及び電流制御部73、積分器58、回転位相補正手段74、座標変換器75、PWM制御器56及び電力変換器57,76を備える。積分器58及び電力変換器57は、前述したので説明を省略する。ツイン・ドライブ制御装置72Aは、概略的に説明すると、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bに対する速度指令ω*と、パルスジェネレータ14による実速度である速度帰還信号ωと、後述する電流検出器64によるU相電流帰還信号iuと、電流検出器65によるW相電流帰還信号iwとを入力し、予め設定された磁極位相補正角μ(詳細については後述する。)を用いて新たな回転位相Φを求め、速度制御、電流制御及びパルス幅制御し、PWM信号Vup,Vvp,Vwpによって電力変換器57,76例えば、IGBTのゲートをオンオフ動作させ、3相のパルス状正弦波電圧信号U1,V1,W1及びU2,V2,W2を第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bへそれぞれ供給する。
電流検出器64は、例えば、磁電変換素子であるホール素子を利用し、被測定電流を非接触で検出するセンサであり、電力変換器57と第1の同期モータ6Aとの間のU相巻線に直列接続し、電力変換器57に内在するIGBTのゲートを制御するため、かつ第1の同期モータ6Aの負荷に見合ったパルス状正弦波電圧信号U1を形成するための出力電流であるU相電流帰還信号iuを検出する検出器である。電流検出器65は、電流検出器64と同様に、電力変換器57と第1の同期モータ6Aとの間のW相巻線に直列接続し、W相電流帰還信号iwを検出する検出器である。減算器53は、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bに対する速度指令ω*と、パルスジェネレータ14によるパルス信号を微分器(図示せず)により微分し、演算の結果により、得られる速度帰還信号ωとを入力し、速度指令ω*から速度帰還信号ωを減算し、演算の結果により、得られる速度偏差Δωを速度及び電流制御部73に出力する。
速度及び電流制御部73は、減算器53による速度偏差Δωと、後述する回転位相補正手段74による第1の同期モータ6Aの新たな回転位相Φと、電流検出器64によるU相電流帰還信号iuと、電流検出器65によるW相電流帰還信号iwとを入力し、2相の電圧指令であるトルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dを生成し、座標変換器75に出力する。速度及び電流制御部73の詳細については後述する。
回転位相補正手段74は減算器78を備える。減算器78は、前述した積分器58による第1の同期モータ6Aの回転位相γと磁極位相補正角μとを入力し、第1の同期モータ6Aの回転位相γから磁極位相補正角μを減算し、演算の結果により、得られる第1の同期モータ6Aの新たな回転位相Φを座標変換器75に出力する。ここで、磁極位相補正角μは、次式(1)により演算する。
μ=(θ1+θ2)/2 ・・・(1)
また、第1の同期モータ6Aの新たな回転位相Φは、次式(2)により演算する。
Φ=γ−μ=γ−(θ1+θ2)/2 ・・・(2)
つまり、磁極位相補正角μは、第1の磁極位相θ1と第2の磁極位相θ2とがなす角度の中間的な角度を示し、オペレータにより第1の磁極位相θ1及び第2の磁極位相θ2を測定することにより、ツイン・ドライブ制御装置72Aに予め設定される。このように、回転位相補正手段74は、第1の同期モータ6Aの回転位相γを補正した新たな回転位相Φを座標変換器75に出力する。
図4は、第1及び第2の同期モータ6A、6Bにおける永久磁石の第1の磁極位相θ1及び第2の磁極位相θ2と第1の同期モータ6Aのトルク電流(1次電流に相当する。)を回転磁界座標系のトルク成分と励磁成分とに分離した関係を示す図であり、横軸がd軸(励磁軸)、縦軸がq軸(トルク軸)をそれぞれ示している。ここで、Φm1及びΦm2は、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bの永久磁石の磁束をそれぞれ示す。さらに、i1は、第1の同期モータ6Aの1次電流を示し、iq及びidは、第1の同期モータ6Aの1次電流i1のq成分及びd成分をそれぞれ示す。図4に示すように、式(1)の磁極位相補正角μは、第1の磁極位相θ1と第2の磁極位相θ2とがなす角度の中間的な角度を示している。
座標変換器75は、前述した図15の座標変換器55と同様の機能を有し、図15に示した新たな回転角Φ1の代わりに新たな回転位相Φを入力し、さらにトルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dをそれぞれ入力し、トルク分電圧指令V*qと励磁分電圧指令V*dとを新たな回転角Φに応じて、回転軸座標系から固定軸座標系に座標変換演算し、演算の結果により、得られる3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wをPWM制御器56に出力する。
PWM制御器56は、前述したように、3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wと搬送波信号(図1には図示せず)とを入力し、3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wを搬送波信号例えば、三角波信号にてパルス幅制御し、3相のパルス信号であるPWM信号Vup,Vvp,Vwpを生成して電力変換器57,76に出力する。
電力変換器76は、前述した電力変換器57と同様に、3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpを入力し、3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpがゲートドライブ回路(図示せず)を介し、生成されたドライブ信号によって電力変換器76に内在するスイッチング素子、例えばIGBT(6個)のゲートをオンオフ動作させ、第2の同期モータ6Bを駆動するための3相のパルス状正弦波電圧信号U2,V2,W2を第2の同期モータ6BのUVW各相の巻線へ供給する。
この場合、第2の同期モータ6Bに電力を供給する電力変換器76とPWM制御器56との結線方法は、図1に示すように、第1の同期モータ6Aの場合は相順がUVW相であるのに対し、第2の同期モータ6Bの場合はWVU相のように逆相順とする。これにより、ツイン・ドライブ制御装置72Aは、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを制御するとき、同一回転座標において互いに反対方向に回転させることができる。したがって、ツイン・ドライブ制御装置72Aは、第1の同期モータ6Aと第2の同期モータ6Bを対向に連結させ、ロータリカッタ2を同一方向に回転駆動させることができる。
以上の説明により、ツイン・ドライブ制御装置72Aは、第1の同期モータ6Aと第2の同期モータ6Bとの間の初期磁極位相が異なる場合であっても、第1の同期モータ6Aと第2の同期モータ6Bとに電力を供給する電力変換器57,76において内在する各IGBTのゲートをオンオフ動作させる信号として、単一の3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wに基づいて単一のPWM信号Vup,Vvp,Vwpを使用する。図18(A)において、第1の同期モータ6Aに対する正弦波電圧指令M1と第2の同期モータ6Bに対する正弦波電圧指令M2との間の位相差は、そもそも存在することがないからゼロに等しくなり、図18(E)における差信号(高周波加振信号)がゼロになる。したがって、単一のPWM信号に基づいて第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bの電力制御を行うようにしたから、両同期モータ6A,6Bによる発生トルクを同一にすることができ、負荷の捻り振動を抑制することができる。
次に、図1に示した速度及び電流制御部73について詳細に説明する。速度及び電流制御部73は、図2及び図3に示すように、速度制御器81、界磁制御器82、コサイン演算器83、サイン演算器88、座標変換器85、加減算器84,89、電流制御器87,90、界磁制御器91、サイン演算器93及びコサイン演算器92を備える。
速度制御器81は、減算器53により第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bに対する速度指令ω*から第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωを減算して得られる速度偏差Δωを入力し、速度偏差Δωを速度制御し(速度偏差Δωに速度アンプゲイン定数を乗算し)、操作量としてトルク指令τ*を界磁制御器82に出力する。
界磁制御器82は、トルク指令τ*を入力し、トルク指令τ*に第1の同期モータ6Aの基底速度ω0を乗算し、演算の結果により、得られる値に第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωの逆数を乗算し、演算の結果により、得られるトルク電流指令i*1をコサイン演算器83及びサイン演算器88に出力する。
図5は、第1の及び第2の同期モータの磁極位相差角とトルク電流指令との関係を示し、横軸がd軸(励磁軸)、縦軸がq軸(トルク軸)を示す。ここで、i*d及びi*qは、トルク電流指令i*1のd軸成分及びq軸成分を示す。図5によれば、磁束Φm1が、前述した磁極位相差角δだけd軸座標から進んだ位置に存在する。何故ならば、第1の同期モータ6Aによる磁束Φm1がd軸座標から磁極位相差角δだけずれているが故に、トルク電流指令i*1を磁束Φm1に対して直交させるために、トルクに応じてd軸トルク電流指令(以下、励磁分電流指令という。)i*d及びq軸トルク電流指令(以下、トルク分電流指令という。)i*qを与える必要があるからである。
図2に戻って、コサイン演算器83は、トルク電流指令i*1を入力し、トルク電流指令i*1に対し、図5に示す磁極位相差角δに応じて定まるコサイン値COSδを乗算し、演算の結果により、得られる値であるトルク分電流指令i*qを加減算器84に出力する。サイン演算器88は、トルク電流指令i*1を入力し、トルク電流指令i*1に対し、図5に示す磁極位相差角δに応じて定まるサイン値SINδを乗算し、演算の結果により、得られる値に“−1”を乗算し、演算の結果により、得られる値である励磁分電流指令i*dを加減算器89に出力する。
一方、座標変換器85は、第1の同期モータ6AのU相巻線に流れる電流帰還信号であるU相電流帰還信号iuと、W相巻線に流れる電流帰還信号であるW相電流帰還信号iwと、同期モータ6Aの新たな回転位相Φとを入力し、U相電流期間信号iu及びW相電流帰還信号ivからV相電流帰還信号ivを演算し、演算の結果により、得られるUVW3相の電流帰還信号iu,iv,iwを第1の同期モータ6Aの新たな回転位相Φに応じて、座標変換演算し、演算の結果により、得られるトルク分電流帰還信号iq及び励磁分電流帰還信号idを加減算器84及び加減算器89にそれぞれ出力する。
加減算器84は、トルク分電流指令i*qとトルク分電流帰還信号iqと界磁制御するための後述する界磁制御用トルク分電流指令i*δqとを入力し、トルク分電流指令i*qからトルク分電流帰還信号iqを減算し、演算の結果により、得られる電流偏差に界磁制御用トルク分電流指令i*δqを加算し、演算の結果により、得られる補正後のトルク分電流偏差Δiqを電流制御器87に出力する。加減算器89は、加減算器84の場合と同様に、励磁分電流指令i*dと励磁分電流帰還信号idと界磁制御するための後述する界磁制御用励磁分電流指令i*δdとを入力し、励磁分電流指令i*dから励磁分電流帰還信号idを減算し、演算の結果により、得られる電流偏差に界磁制御用励磁分電流指令i*δdを加算し、演算の結果により、得られる補正後の励磁分電流偏差Δidを電流制御器90に出力する。
電流制御器87は、トルク分電流偏差Δiqを入力し、トルク分電流偏差Δiqを電流制御し(トルク分電流偏差Δiqに電流アンプゲイン定数を乗算し)、得られるトルク分電圧指令V*qを操作量として座標変換器75に出力する。電流制御器90は、電流制御器87の場合と同様に、励磁分電流偏差Δidを入力し、励磁分電流偏差Δidを電流制御し(界磁分電流偏差Δidに電流アンプゲイン定数を乗算し)、得られる励磁分電圧指令V*dを操作量として座標変換器75に出力する。
次に、界磁制御用トルク分電流指令i*δq及び界磁制御用励磁分電流指令i*δdを生成する手段について、図3を参照して説明する。まず、界磁制御器91により出力される界磁制御用電流指令i*δは、第1の同期モータ6Aの巻線に流れる電流I1に界磁制御分として(1−ω0/ω)を乗算して得られる値である。この電流I1の代わりにΦm1/L1を用いる(次式(3)を参照)。ここで、Φm1は、第1の同期モータ6Aの永久磁石により発生する磁束を示し、L1は、第1の同期モータ6Aにおける巻線のインダクタンスを示す。また、I1は、第1の同期モータ6Aの永久磁石による磁束Φm1と同等の磁束を発生させるためのモータ巻線に流れる電流である。
I1=Φm1/L1 ・・・(3)
すなわち、界磁制御器91は、予め設定されたΦm1/L1を入力し、これに界磁制御分として(1−ω0/ω)を乗算し、演算の結果により、得られる界磁制御用電流指令i*δをサイン演算器93及びコサイン演算器92に出力する。サイン演算器93は、界磁制御用電流指令i*δを入力し、界磁制御用電流指令i*δに磁極位相差角δに応じて変化するサイン値SINδを乗算し、演算の結果により、得られる値に“−1”を乗算し、演算の結果により、得られる界磁制御用トルク分電流指令i*δqを加減算器84に出力する。コサイン演算器92は、界磁制御用電流指令i*δを入力し、界磁制御用電流指令i*δに磁極位相差角δに応じて変化するコサイン値COSδを乗算し、演算の結果により、得られる値に“−1”を乗算し、演算の結果により、得られる界磁制御用励磁分電流指令i*δdを加減算器89に出力する。これにより、ツイン・ドライブ制御装置72Aは、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωが“0”から最高速度までの範囲において、速度指令ω*に一致するように、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを制御することができる。
以上の説明により、ツイン・ドライブ制御装置72Aは、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bにおけるそれぞれの初期磁極位相が異なる場合であっても、負荷の捻り振動を抑制することができ、かつ、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωが“0”から最高速度までの範囲において、速度指令ω*に一致するように第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを制御することができる。
〔動作〕
次に、ツイン・ドライブ制御装置72Aの動作について説明する。ツイン・ドライブ制御装置72Aは、概略的に説明すると、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bに対する速度指令ω*と、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωと、第1の同期モータ6AのUW相の各巻線に流れるそれぞれの電流帰還信号iu,iwとを入力し、予め設定された磁極位相補正角μを用いて、単一の3相PWM信号Vup,Vvp,Vwpを電力変換器57,76に出力する。さらに、3相PWM信号Vup,Vvp,Vwpによりゲートドライブ回路(図示せず)を介し生成されるドライブ信号が電力変換器57,76のIGBTのゲートに入力すると、パルス状正弦波電圧信号U1,V1,W1及びU2,V2,W2を第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bへそれぞれ供給する。
図1に示したように、速度指令ω*と速度帰還信号ωとの間の速度偏差Δωと、第1の同期モータ6Aの新たな回転位相Φと、電流検出器64によるU相電流帰還信号iuと、電流検出器65によるW相電流帰還信号iwとが速度及び電流制御部73に入力すると、速度及び電流制御部73によって、2相の電圧指令であるトルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dを座標変換器75にそれぞれ出力する。速度及び電流制御部73は、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωの大きさによって制御方式が一部異なるため、その動作の詳細については後述する。
磁極位相補正角μ及び第1の同期モータ6Aの回転位相γが回転位相補正手段74に入力すると、回転位相補正手段74によって、第1の同期モータ6Aの回転位相γから磁極位相補正角μを減算し、得られる新たな回転位相Φを座標変換器75に出力する。トルク分電圧指令V*qと励磁分電圧指令V*dと新たな回転角Φとが座標変換器75に入力すると、座標変換器75によって、トルク分電圧指令V*qと励磁分電圧指令V*dとを新たな回転位相Φに応じて座標変換し、UVWの3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wをPWM制御器56に出力する。
3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wと図17(B)に示した三角波発生器による搬送波信号(図1には図示せず)とがPWM制御器56に入力すると、PWM制御器56によって、3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wを搬送波信号によってパルス幅制御し、UVWの3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpをゲート用ドライブ回路(図示せず)に出力する。3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpがゲートドライブ回路(図示せず)に入力すると、ゲートドライブ回路(図示せず)によって、電力変換器57に内在するIGBTのゲートをオンオフ動作させるためのドライブ信号を電力変換器57に出力する。
ドライブ信号が電力変換器57に入力すると、電力変換器57によって、ドライブ信号が電力変換器57のIGBTのゲートをオンオフ動作させて、3相のパルス状正弦波電圧信号U1,V1,W1を第1の同期モータ6AのUVW相の巻線へそれぞれ供給する。第2の同期モータ6Bの場合は、第1の同期モータ6Aの場合のPWM制御器56による3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpを共用し、かつ、3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpの相順を逆相順に変え、電力変換器76に入力すると、つまり、PWM制御器56による3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpが電力変換器76のWVU相にそれぞれ入力すると、電力変換器76によって、第1の同期モータ6の場合と同様に、3相のパルス状正弦波電圧信号U2,V2,W2を第2の同期モータ6BのUVW相の巻線へそれぞれ供給する。
次に、速度及び電流制御部73の動作の詳細について説明する。図6は、本発明に係るツイン・ドライブ制御装置による同期モータの速度とトルク特性との関係を示し、横軸ωが第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ω、縦軸がω0/ωをそれぞれ示す。図6によれば、ツイン・ドライブ制御装置72Aは、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωが“0”から基底速度ω0までの範囲において、ω0/ωを“1”とし、つまり、定トルク制御を行い、また、速度帰還信号ωが基底速度ω0を越え最高速度までの範囲において、定出力制御、つまり、弱め界磁制御を行うことがわかる。
まず、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωが“0”から基底速度ω0までの範囲にある場合について説明する。この範囲では、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを定トルク制御する。つまり、図2及び図3に示した界磁制御器82,91において、入力信号にそれぞれ“1”,“0”を乗算した信号を出力する。
速度及び電流制御部73は、図2に示すように、減算器53により第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bの速度指令ω*から速度帰還信号ωを減算して得られる速度偏差Δωが速度制御器81に入力すると、速度制御器81によって、トルク指令τ*(トルク電流指令τ*1に等しい。)を操作量として界磁制御器82に出力し、界磁制御器82を介してそのままコサイン演算器83及びサイン演算器88に出力する。トルク電流指令i*1がコサイン演算器83に入力すると、コサイン演算器83によって、トルク電流指令i*1にコサイン値COSδを乗算し、トルク分電流指令i*qを操作量として加減算器84に出力する。同様に、トルク電流指令i*1がサイン演算器88に入力すると、サイン演算器88によってトルク電流指令i*1にサイン値SINδを乗算し、演算の結果により、得られる値に“−1”を乗算し、得られる励磁分電流指令i*dを操作量として加減算器89に出力する。
また、第1の同期モータ6AのU相及びW相の巻線に流れるそれぞれの電流帰還信号iu,iwと、第1の同期モータ6Aの新たな回転角Φとが座標変換器85に入力すると、U相及びW相の電流帰還信号iu,iwからV相の電流帰還信号ivを演算する。そして、座標変換器85によって、UVW各相の電流帰還信号iu,iw,ivを新たな回転角Φに応じて座標変換し、2相の直流電流帰還信号であるトルク分電流帰還信号iq及び励磁分直流帰還信号idを加減算器84,89にそれぞれ出力する。
さらに、トルク分電流指令i*q及びトルク分電流帰還信号iqが加減算器84に入力すると、加減算器84によって、トルク分電流指令i*qからトルク分電流帰還信号iqを減算し、演算の結果により、得られるトルク分電流偏差Δiqを電流制御器87に出力する。また、励磁分電流指令i*dと励磁分電流帰還信号idとが加減算器89に入力すると、加減算器89によって、励磁分電流指令i*dから励磁分電流帰還信号idを減算し、演算の結果により、得られる励磁分電流偏差Δidを電流制御器90に出力する。ここで、界磁制御用トルク分電流指令i*δq及び界磁制御用励磁分電流指令i*δdは、図3に示した界磁制御器91が入力信号に“0”を乗算して出力するから、それぞれゼロとなり、加減算器84及び加減算器89の演算には用いられない。
また、トルク分電流偏差Δiqが電流制御器87に入力すると、電流制御器87によって、トルク分電流偏差Δiqを電流制御し、トルク分電圧指令V*qを操作量として、図1に示した座標変換器75に出力する。また、励磁分電流偏差Δidが電流制御器90に入力すると、電流制御器90によって、励磁分電流偏差Δidを電流制御し、励磁分電圧指令V*dを操作量として、図1に示した座標変換器75に出力する。
次に、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωが基底速度ω0を超えて最大速度までの範囲にある場合について説明する。この範囲では、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを界磁制御する。つまり、図2及び図3に示した界磁制御器82,91において、入力信号にそれぞれ“ω0/ω”、“1−ω0/ω”を乗算した信号を出力する。
速度及び電流制御部73は、図2に示すように、減算器53により第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bの速度指令ω*から速度帰還信号ωを減算して得られる速度偏差Δωが速度制御器81に入力すると、速度制御器81によって、トルク指令τ*を操作量として界磁制御器82に出力する。トルク指令τ*が界磁制御器82に入力すると、界磁制御器82によって、トルク電流指令i*1を操作量としてコサイン演算器83及びサイン演算器88に出力する。ここで、トルク電流指令i*1は、界磁制御器82が入力信号に“ω0/ω”を乗算して出力するから、トルク指令τ*に“ω0/ω”を乗算した値となる。
また、トルク電流指令i*1がコサイン演算器83に入力すると、コサイン演算器83によって、トルク電流指令i*1にコサイン値COSδを乗算し、演算の結果により、得られるトルク分電流指令i*qを操作量として加減算器84に出力する。同様に、トルク電流指令i*1がサイン演算器88に入力すると、サイン演算器88によって、トルク電流指令i*1にサイン値SINδを乗算し、演算の結果により、得られる値に“−1”を乗算し、得られる励磁分電流指令i*dを操作量として加減算器89に出力する。
また、第1の同期モータ6AのU相及びW相の巻線に流れるそれぞれの電流帰還信号iu,iwと、第1の同期モータ6Aの新たな回転角Φとが座標変換器85に入力すると、U相及びW相の電流帰還信号iu,iwからV相の電流帰還信号ivを演算する。そして、座標変換器85によって、UVW各相の電流帰還信号iu,iw,ivを新たな回転角Φに応じて座標変換し、2相の直流電流帰還信号であるトルク分電流帰還信号iq及び励磁分直流帰還信号idを加減算器84,89にそれぞれ出力する。
一方、第1の同期モータ6Aの永久磁石による磁束Φm1と同等の磁束を与えるための第1の同期モータ6Aの巻線に流れる電流I1は、前述したように、Φm1/L1とする。第1の同期モータ6Aの巻線に流れる電流I1(Φm1/L1)が界磁制御器91に入力すると、界磁制御器91によって、モータ巻線に流れる電流I1に関数“(1−ω0/ω)”を乗算し、演算の結果により、得られる界磁制御用電流指令i*δをサイン演算器93及びコサイン演算器92に出力する。
界磁制御用電流指令i*δがサイン演算器93に入力すると、サイン演算器93によって、界磁制御用電流指令i*δに磁極位相差角δに応じて定まるサイン値SINδを乗算し、演算の結果により、得られる値に“−1”を乗算し、得られる界磁制御用トルク分電流指令i*δqを図2に示した加減算器84に出力する。また、界磁制御用電流指令i*δがコサイン演算器92に入力すると、コサイン演算器92によって、界磁制御用電流指令i*δに磁極位相差角δに応じて定まるコサイン値COSδを乗算し、演算の結果により、得られる値に“−1”を乗算し、得られる界磁制御用励磁分電流指令i*δdを図2に示した加減算器89に出力する。
図2に戻って、トルク分電流指令i*qとトルク分電流帰還信号iqと界磁制御用トルク分電流指令i*δqとが加減算器84に入力すると、加減算器84によって、トルク分電流指令i*qからトルク分電流帰還信号iqを減算し、演算の結果により、得られる値にさらに界磁制御用トルク分電流指令i*δqを加算し、得られるトルク分電流偏差Δiqを電流制御器87に出力する。また、励磁分電流指令i*dと励磁分電流帰還信号idと界磁制御用励磁分電流指令i*δdとが加減算器89に入力すると、加減算器89によって、励磁分電流指令i*dから励磁分電流帰還信号idを減算し、演算の結果により、得られる値にさらに界磁制御用励磁分電流指令i*δdを加算し、得られる励磁分電流偏差Δidを電流制御器90に出力する。
トルク分電流偏差Δiqが電流制御器87に入力すると、電流制御器87によって、トルク分電流偏差Δiqを電流制御し、トルク分電圧指令V*qを操作量として、図1に示した座標変換器75に出力する。励磁分電流偏差Δidが電流制御器90に入力すると、電流制御器90によって、励磁分電流偏差Δidを電流制御し、励磁分電圧指令V*dを操作量として、図1に示した座標変換器75に出力する。
図10は、図1に示したツイン・ドライブ制御装置72Aをロータリカッタ装置71Aに適用した場合の周波数と信号レベルとの関係の実験例を示す図である。図10(A)は、ロータリカッタ2が片側駆動方式の場合の周波数と信号レベルを示し、横軸が周波数、縦軸が信号レベルをそれぞれ示す。図10(B)は、ロータリカッタ2が両側駆動方式の場合の周波数と信号レベルを示し、横軸が周波数、縦軸が信号レベルをそれぞれ示す。ここで、横軸の周波数は、パルスジェネレータ14からのパルス信号を微分演算して速度を求め、その速度に基づいて周波数分析して得られた周波数を示す。また、ロータリカッタ2の周速度は10mpm(メートル/分)である。図10(A)によれば、片側駆動方式の場合は、ロータリカッタ2が115Hz近傍で共振現象を起こることがわかる。また、図10(B)によれば、両側駆動方式の場合は、ロータリカッタ2が共振現象を起こさないことがわかる。ここで、両図において周波数が1Hz近傍の領域では信号レベルが高くなっている。これは、ロータリカッタ2の回転ムラによるものである。また、周波数が5Hz近傍の領域でも信号レベルが高くなっている。これは、ロータリカッタ2自体の回転数によるものである。
〔変形例〕
次に、本発明によるツイン・ドライブ制御装置の変形例について説明する。図19は、本発明による他のツイン・ドライブ制御装置をロータリカッタ装置に適用した場合の制御ブロック図である。このツイン・ドライブ制御装置72Bは、図1に示したツイン・ドライブ制御装置72Aにおける電力変換器57,76の代わりに、電力変換器77を備える。電力変換器77は、電力変換器57又は76における電流容量の2倍以上の電流容量を有するものとする。また、電力変換器77のUVW3相の出力線は、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bに対し、正相順及び逆相順となるようにそれぞれ接続する。ツイン・ドライブ制御装置72Bは、基本的にツイン・ドライブ制御装置72Aと同様であるので、詳細な説明について省略する。
以上の説明により、ツイン・ドライブ制御装置72Bは、ツイン・ドライブ制御装置72Aと同様に、第1の同期モータ6Aと第2の同期モータ6Bとの間の初期磁極位相が異なる場合であっても、第1の同期モータ6Aと第2の同期モータ6Bとに電力を供給する電力変換器77において内在する各IGBTのゲートをオンオフ動作させる信号として、単一の3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wに基づく単一のPWM信号Vup,Vvp,Vwpを使用する。図18(A)において、第1の同期モータ6Aに対する正弦波電圧指令M1と第2の同期モータ6Bに対する正弦波電圧指令M2との間の位相差は、そもそも存在することがないからゼロに等しくなり、図18(E)における差信号(高周波加振信号)がゼロになる。したがって、単一のPWM信号に基づいて第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bの電力制御を行うようにしたから、両同期モータ6A,6Bによる発生トルクを同一にすることができ、負荷の捻り振動を抑制することができる。また、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωが“0”から最高速度までの範囲において、速度指令ω*に一致するように第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを制御することができる。
〔捻り振動抑制方法〕
次に、本発明による捻り振動抑制方法について説明する。図7は、本発明による捻り振動抑制方法の手順を示すフローチャートである。図8は、図7のフローチャートの続きである。図9は、図8のフローチャートの続きである。
まず、捻り振動抑制方法は、概略的に説明すると、図1を参照して、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを制御する上で、3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wをパルス幅変調して得られるPWM信号Vup,Vvp,Vwpが単一の信号になるように、3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wに基づいてPWM制御器56によってPWM信号Vup,Vvp,Vwpを生成し、この単一のPWM信号Vup,Vvp,Vwpに基づいて電力変換器57,76に内在するIGBTのゲートをオンオフ動作することにより、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bに同等の電力を供給するものである。ここで、PWM制御器56と電力変換器57,76との間の結線は、電力変換器57,76に対し、正相順及び逆相順にそれぞれ接続する。
図7を参照して、まず、オペレータの作業により、予め第1の同期モータ6Aの磁極位相θ1及び第2の同期モータ6Bの磁極位相θ2をそれぞれ検出する(ステップS−1)。そして、ツイン・ドライブ制御装置72Aは、第1の磁極位相θ1及び第2の磁極位相θ2を設定し、ツイン・ドライブ制御を開始すると、速度指令ω*を入力し(ステップS−2)、第1の同期モータ6Aの実速度である速度帰還信号ωを入力し(ステップS−3)、速度帰還信号ωを積分して第1の同期モータ6Aの回転位相γを出力し(ステップS−4)、第1同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bの新たな回転位相Φを前述した式(1)により求める(ステップS−5)。
一方、速度指令ω*から速度帰還信号ωを減算し、演算の結果により、得られる速度偏差Δωを出力し(ステップS−6)し、図8に示すように、速度偏差Δωを速度制御し、トルク指令τ*を出力する(ステップS−7)。そして、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωが“0”から基底速度ω0までの範囲にある場合、トルク電流指令i*1としてトルク指令τ*を出力し、速度帰還信号ωが基底速度ω0を越えて最高速度まで範囲にある場合、トルク指令τ*を界磁制御し、トルク電流指令i*1として、トルク指令τ*に基底速度ω0を乗算し、演算の結果により、得られる値に速度帰還信号ωの逆数を乗算し、得られる値ω0/ω×τ*を出力する(ステップS−8)。また、トルク電流指令i*1を磁極位相差角δによりトルク分電流指令i*q及び励磁分電流信号i*dに分解する(ステップS−9)。
また、U相及びW相の電流帰還信号iu,iwからV相の電流帰還信号ivを演算し(ステップS−10)、このステップS−10によって得られる3相の電流帰還信号iu,iv,iwを第1の同期モータ6Aの新たな回転位相Φに応じて座標変換し、トルク分電流帰還信号iq及び励磁分電流帰還信号idを出力する(ステップS−11)。
一方、図9を参照して、速度帰還信号ωが“0”から基底速度ω0までの範囲にある場合、界磁制御用電流指令i*δを“0”とし、速度帰還信号ωが基底速度ω0を越えて最高速度までの範囲にある場合、磁束Φm1にモータ巻線のインダクタンスL1の逆数を乗算し、得られる電流値I1を界磁制御し、界磁制御用電流指令i*δを出力する(ステップS−12)。また、速度帰還信号ωが基底速度ω0を越えて最高速度までの範囲にある場合、界磁制御用電流指令i*δを磁極位相差角δに基づいてトルク分と励磁分に分解し、界磁制御用トルク分電流指令i*δq及び界磁制御用励磁分電流指令i*δdを出力する(ステップS−13)。
そして、図8に戻って、トルク分電流指令i*qとトルク分電流帰還信号iqと界磁制御用トルク分電流指令i*δq(界磁制御する場合のみ適用する。)を入力し、それらを加減算し、トルク分電流偏差Δiqを出力する(ステップS−14A)。そして、トルク分電流偏差Δiqを電流制御し、トルク分電圧指令V*qを出力する(ステップS−15A)。また、ステップS−14Aの場合と同様に、励磁分電流指令i*dと励磁分電流帰還信号idと界磁制御用励磁分電流指令i*δd(界磁制御する場合のみ適用する。)を入力し、それらを加減算し、励磁分電流偏差Δidを出力する(ステップS−14B)。そして、ステップS−15Aの場合と同様に、励磁分電流偏差Δidを電流制御し、励磁分電圧指令V*dを出力する(ステップS−15B)。
そして、図7に戻って、トルク分電圧指令V*q及び励磁分電圧指令V*dを新たな回転角Φに応じて座標変換し、3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wを出力する(ステップS−16)。そして、単一のPWM制御器56により、3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*w及び搬送波信号から3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpを出力し(ステップS−17)、電力変換器57,76により、3相のPWM信号Vup,Vvp,Vwpを正相順及び逆相順にそれぞれ入力し、3相のパルス状正弦波電圧信号U1,V1,W1及びU2,V2,W2を第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bの各巻線へそれぞれ供給する(ステップS−18)。そして、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを駆動する(ステップS−19)。
以上の説明により、捻り振動抑制方法は、第1の同期モータ6Aと第2の同期モータ6Bとの間の初期磁極位相が異なる場合であっても、第1の同期モータ6Aと第2の同期モータ6Bとに電力を供給する電力変換器57、76において内在する各IGBTのゲートをオンオフ動作させる信号として、単一の3相の正弦波電圧指令V*u,V*v,V*wに基づく単一のPWM信号Vup,Vvp,Vwpを使用する。つまり、単一のPWM信号に基づいて第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bの電力制御を行うようにしたから、両同期モータ6A,6Bによる発生トルクを同一にすることができ、負荷の捻り振動を抑制することができる。また、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωが“0”から最高速度までの範囲において、速度指令ω*に一致するように第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bを制御することができる。
尚、前述の捻り振動抑制方法は、図1に示したロータリカッタ装置71Aを用いて説明したが、図19に示したロータリカッタ装置71Bについても同様に適用することができる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、負荷としてロータリカッタ2を例にして説明したが、これに限定されることはなく、本発明は、第1の同期モータ6A及び第2の同期モータ6Bによって回転軸の両側から駆動する負荷であれば適用することができる。
また、図1及び図19に示したロータリカッタ装置71A,71Bにおいて、速度偏差Δω及び回転位相γは、第1の同期モータ6Aの速度帰還信号ωから演算するようにしたが、第2の同期モータ6Bの速度帰還信号から演算するようにしてもよい。