以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を、図1〜図10を参照しつつ説明する。
<構成>
図1には、第1実施形態に係るFM受信装置500Aの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図1に示されるように、FM受信装置500Aは、アンテナ510と、制御部520Aと、フロントエンド部530とを備えている。また、FM受信装置500Aは、検波部540と、ステレオ復調部550Aと、オーディオ処理部560とを備えている。さらに、FM受信装置500Aは、操作入力部570と、スピーカ580L,580Rとを備えている。
アンテナ510は放送波を受信する。アンテナ510による受信結果は、受信信号RFSとして、フロントエンド部530へ向けて出力される。
制御部520Aは、FM受信装置500Aの全体の動作を制御する。この制御部520Aについては、後述する。
フロントエンド部530は、制御部520Aからの選局指令CSLに従って、受信希望局を選局し、選局処理結果を、所定の中間周波数の中間周波信号IFDとして検波部540へ向けて出力する。このフロントエンド部530は、不図示の同調回路と、局部発振回路(OSC)とを備えている。
同調回路は、局部発振回路からの局部発振信号により、受信希望局の信号を選択する。同調回路による抽出結果は、所定の中間周波数を有する中間周波信号IFDとして検波部540へ向けて送られる。
局部発振回路は、電圧制御等により発振周波数の制御が可能な発振器等を備えて構成される。この局部発振回路は、制御部520Aから供給された選局指令CSLに従って、同調回路において受信希望局に対応する周波数の局部発振信号を生成し、同調回路へ供給する。
なお、上記の同調回路は、いずれも不図示の入力フィルタ、高周波増幅器(RF−AMP:Radio Frequency-Amplifier)、バンドパスフィルタ(RFフィルタ)、ミキサ(混合器)、中間周波フィルタ(IF(Intermediate Frequency)フィルタ)、AD(Analogue to Digital)変換器(ADC)等を備えて構成されている。
検波部540は、フロントエンド部530からの中間周波信号IFDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である検波信号DCD(以下、単に「信号DCD」とも記す)を生成する。こうして生成された信号DCDは、ステレオ復調部550Aへ向けて出力される。
なお、本第1実施形態では、信号DCDは、図2に示されるように、左チャンネル信号(以下、「L成分」又は単に「L」とも記す)と右チャンネル信号(以下、「R成分」又は単に「R」とも記す)との和(L+R)から成る角周波数0〜ωcの周波数帯域の信号成分SG1、すなわち、主チャンネル信号SG1(以下、「主チャンネル信号(L+R)」とも記す)を含んでいるものとする。また、信号DCDは、L成分とR成分との差(LM−RM)からなる角周波数ωc〜3ωcの周波数帯域の信号成分SG2、すなわち、副チャンネル信号SG2(以下、「副チャンネル信号(LM−RM)」とも記す)を含んでいる。さらに、信号DCDは、角周波数ωcのパイロット信号PSを含んでいる。
ここで、副チャンネル信号SG2は、角周波数0〜ωcの周波数帯域の信号により、パイロット信号PSの2倍の角周波数の信号(∝sin[2(ωc・t+φ0)])を振幅変調した信号であるものとする。
図1に戻り、ステレオ復調部550Aは、検波部540からの信号DCDに対してステレオ復調処理を施し、復調信号LDA,RDAを生成する。かかる機能を有するステレオ復調部550Aは、図3に示されるように、ローパスフィルタ(LPF)551M,551Sと、サブチャンネル処理部552Aと、加算部553Lと,減算部553Rとを備えている。
LPF551Mは、検波部540からの信号DCDを受ける。そして、LPF551Mは、角周波数0〜ωcの成分を選択的に通過させる。この結果、主チャンネル信号(L+R)がLPF551Mを選択的に通過する。こうしてLPF551Mを通過した主チャンネル信号(L+R)が、信号MCAとして加算部553L及び減算部553Rへ向けて出力される。
なお、本第1実施形態においては、説明を簡略化するため、信号DCDに含まれているパイロット信号PSは、次の(1)式によって表されるものとする。
PS(t)∝sin[θC(t)]=sin(ωCt+φ0) …(1)
ここで、値φ0は、時間t=0としたときのパイロット信号PSの位相である。
LPF551Sは、上記のLPF551Mと同様に構成される。このLPF551Sは、サブチャンネル処理部552Aからの信号SCPを受ける。そして、LPF551Sは、角周波数0〜ωcの成分を選択的に通過させる。この結果、副チャンネル信号(L−R)がLPF551Sを選択的に通過する。こうしてLPF551Sを通過した副チャンネル信号(L−R)が、信号SCAとして加算部553L及び減算部553Rへ向けて出力される。
サブチャンネル処理部552Aは、検波部540からの信号DCDを受ける。そして、サブチャンネル処理部552Aは、信号DCDに含まれるパイロット信号PSに同期して副チャンネル信号(LM−RM)を処理して、信号SCPを生成する。かかる機能を有するサブチャンネル処理部552Aは、図4に示されるように、直交信号生成手段としての直交信号生成部110Aと、位相算出手段としての位相算出部120Aとを備えている。また、サブチャンネル処理部552Aは、基準信号生成手段としての基準信号生成部130Aと、ベースバンド変換手段としての信号加工部140とを備えている。
直交信号生成部110Aは、検波部540から受信した信号DCDから、角周波数ωCの成分が互いに直交する2つの信号OSA1,OSA2を生成した後、信号OSA1,OSA2からパイロット信号PSの位相θC(t)を反映した2つの信号PSA1,PSA2を抽出する。かかる機能を有する直交信号生成部110Aは、図5に示されるように、直交化手段としての直交化部112Aと、フィルタ手段としてのフィルタ(FIL)113A1,113A2とを備えている。
直交化部112Aは、図6に示されるように、角周波数ωCの信号に関する90°移相部119を備えている。このように構成された直交化部112Aでは、受信した信号DCDと同相の信号が、信号OSA1としてFIL113A1及び信号加工部140へ向けて出力される。一方、直交化部112Aにおいては、受信した信号DCDについて、角周波数ωCの成分について90°だけ位相がずらされ、信号OSA2としてFIL113A2及び信号加工部140へ向けて出力する。
図5に戻り、FIL113A1は、無限インパルス応答フィルタ(IIR)等のデジタルフィルタとして構成されている。このFIL113A1は、直交化部112Aからの信号OSA1を受ける。そして、FIL113A1は、信号OSA1における角周波数ωCの成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSA1として位相算出部120Aへ向けて出力する。
なお、FIL113A1を介することにより、フィルタ遅延による位相シフトΔθが発生する場合がある。本第1実施形態では、かかる位相シフトΔθが発生するものとする。この位相シフトΔθは、FIL113A1の構成にて定まるものであり、FIL113A1の設計段階で定まる。
かかるFIL113A1から出力される信号PSA1は、次の(2)式のように表される。
PSA1(t)=A(t)・sin[θS(t)]
=A(t)・sin[θC(t)−Δθ]
=A(t)・sin[(ωCt+φ0)−Δθ] …(2)
ここで、A(t)は、パイロット信号PSの振幅値を表す。
FIL113A2は、FIL113A1と同様に構成されている。このFIL113A2は、直交化部112Aからの信号OSA2を受ける。そして、FIL113A2は、信号OSA2における角周波数ωCの成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSA2を出力する。
かかるFIL113A2から出力される信号PSA2は、次の(3)式のように表される。
PSA2(t)=A(t)・cos[θS(t)]
=A(t)・cos[θC(t)−Δθ]
=A(t)・cos[(ωCt+φ0)−Δθ] …(3)
図4に戻り、位相算出部120Aは、直交信号生成部110Aからの信号PSA1及び信号PSA2に基づいて、パイロット信号PSの位相θC(t)を算出する。かかる算出に際して、位相算出部120Aは、例えば、信号PSA1及び信号PSA2についてarctan等の演算を行ったうえで、上述した位相シフトΔθの分を補正して、位相θC(t)を算出する。
こうして算出されたθC(t)は、信号PHAとして、位相算出部120Aから基準信号生成部130Aへ向けて出力される。
基準信号生成部130Aは、位相算出部120Aからの信号PHAに基づいて、角周波数2ωCの基準信号BSA1,BSA2を生成する。かかる機能を有する基準信号生成部130Aは、図7に示されるように、位相加工部131Aと、信号発生部1321,1322とを備えている。
位相加工部131Aは、位相算出部120Aからの信号PHAを受けて、信号PHAが示す位相θC(t)を加工する。本第1実施形態においては、位相加工部131Aは、次の(4)式により、位相θM(t)を算出する。
θM(t)=2θC(t)=2(ωCt+φ0) …(4)
すなわち、本第1実施形態では、位相加工部131Aは、角周波数2ωCで変化する位相θM(t)を算出する。こうして算出された位相θM(t)は、位相加工信号MPAとして信号発生部1321,1322へ向けて出力される。
信号発生部1321は、位相加工部131Aからの位相加工信号MPAに基づいて、基準信号BSA1を生成する。本第1実施形態では、信号発生部1321は、位相値に対応した振幅値が登録された正弦値テーブルを備えており、位相加工信号MPAによって示された位相θM(t)の正弦波信号を基準信号BSA1として生成する。
この基準信号BSA1は、次の(5)式で表される。
BSA1(t)=C0・sin[θM(t)]
=C0・sin[2θC(t)]
=C0・sin[2(ωCt+φ0)] …(5)
信号発生部1322は、位相加工部131Aからの位相加工信号MPAに基づいて、基準信号BSA2を生成する。本第1実施形態では、信号発生部1322は、位相値に対応した振幅値が登録された余弦値テーブルを備えており、位相加工信号MPAによって示された位相θM(t)の余弦波信号を基準信号BSA2として生成する。
この基準信号BSA2は、次の(6)式で表される。
BSA2(t)≒C0・cos[θM(t)]
=C0・cos[2θC(t)]
=C0・cos[2(ωCt+φ0)] …(6)
こうして生成された基準信号BSA1,BSA2は、信号加工部140へ向けて出力される。
図4に戻り、信号加工部140は、直交信号生成部110Aからの信号OSA1,OSA2及び基準信号生成部130Aからの基準信号BSA1,BSA2を受ける。そして、信号加工部140は、基準信号BSA1,BSA2を利用して信号OSA1,OSA2を加工して、角周波数0〜ωcの周波数帯域のベースバンド副チャンネル信号(L−R)を生成する。かかる機能を有する信号加工部140は、図8に示されるように、加工部1411,1412と、加算部142とを備えている。
加工部1411は、直交信号生成部110Aからの信号OSA1と、基準信号生成部130Aからの信号BSA1を受ける。そして、加工部1411は、信号BSA1を利用して信号OSA1を加工し、角周波数0〜ωcの周波数帯域の信号MSA1を生成する。
また、加工部1412は、直交信号生成部110Aからの信号OSA2と、基準信号生成部130Aからの信号BSA2を受ける。そして、加工部1412は、信号BSA2を利用して信号OSA2を加工し、角周波数0〜ωcの周波数帯域の信号MSA2を生成する。
かかる機能を有する加工部141j(j=1,2)のそれぞれは、図9に示されるように、乗算部146を備えている。
乗算部146は、A端子で信号OSAjを受け、B端子で基準信号BSAjを受ける。そして、A端子における受信結果と、B端子における受信結果との乗算結果が、C端子から信号MSAjとして加算部142へ向けて出力される。ここで、信号OSAjにおける信号成分SG2(すなわち、副チャンネル信号(LM−RM))に対応する信号は、角周波数ωC〜3ωCの角周波数成分を有し、基準信号BSAjは角周波数2ωCの成分のみを有している。このため、混合信号MXAjにおける信号成分SG2に対応する信号成分は、角周波数0〜ωCの成分と、角周波数3ωC〜5ωCの成分とに周波数変換される。
図8に戻り、加算部142は、A端子で受けた信号と、B端子で受けた信号との和を算出し、C端子から出力する。この加算部142では、A端子で加工部1411からの信号MSA1を受け、B端子で加工部1412からの信号MSA2を受ける。そして、C端子からは、信号MSA1と信号MSA2との加算結果が、信号SCPとしてLPF551Sへ向けて出力される。なお、数式を使用した説明を省略したが、LPF551Sへは、図10に示されるベースバンド副チャンネル成分(L−R)となるように、コンポジット信号を副搬送波で周波数シフトした信号SCPとして供給されるようになっている。
図3に戻り、加算部553Lは、LPF551Mからの信号MCA及びLPF551Sからの信号SCAを受ける。そして、加算部553Lは、信号MCAとして供給された主チャンネル信号(L+R)と、信号SCAとして供給されたベースバンド副チャンネル信号(L―R)との和を算出することによりLチャンネルのみに関連する信号を生成する。かかる生成結果が、信号LDAとしてオーディオ処理部560へ向けて出力される。
減算部553Rは、LPF551Mからの信号MCA及びLPF551Sからの信号SCAを受ける。そして、減算部553Rは、信号MCAとして供給された主チャンネル信号(L+R)と、信号SCAとして供給されたベースバンド副チャンネル信号(L―R)との差を算出することによりRチャンネルのみに関連する信号を生成する。かかる生成結果が、信号RDAとしてオーディオ処理部560へ向けて出力される。
図1に戻り、オーディオ処理部560は、Lチャンネル用に用意されたデジタルアナログ変換器、電子ボリューム、パワーアンプ等(いずれも不図示)を備えている。また、オーディオ処理部560は、Rチャンネル用に用意されたデジタルアナログ変換器、電子ボリューム、パワーアンプ等(いずれも不図示)を備えている。
オーディオ処理部560は、ステレオ復調部550Aから受けた信号LDA,RDAのそれぞれについて、アナログ信号に変換する。そして、制御部520Aからのオーディオ処理指令VLCに従って、音量等を調整する。こうして得られた結果がLチャンネル用の音声信号LSA及びRチャンネル用の音声信号RSAとして、Lチャンネル用のスピーカ580L及びRチャンネル用のスピーカ580Rへ向けて出力される。
操作入力部570は、FM受信装置500Aの本体部に設けられたキー部、及び/又はキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、表示部に設けられたタッチパネルを用いることができる。また、キー部を有する構成に代えて、又は併用して音声認識技術を利用して音声にて入力する構成を採用することもできる。操作入力部570への操作入力結果は、操作入力データIPDとして制御部520Aへ送られる。
スピーカ580Lは、オーディオ処理部560からのLチャンネル用の音声信号LSAに従って、Lチャンネル音声を再生出力する。また、スピーカ580Rは、オーディオ処理部560からのRチャンネル用の音声信号RSAに従って、Rチャンネル音声を再生出力する。
制御部520Aは、上述したように、FM受信装置500Aの全体の動作を制御する。この制御部520Aは、操作入力部570からの選局指定に従って、受信希望局を選局するための選局指令CSLを、フロントエンド部530へ向けて発行する。また、制御部520Aは、操作入力部570からの音量等の指定に従って、当該音量等の指定に対応する音量等とするためのオーディオ処理指令VLCを、オーディオ処理部560へ向けて発行する。
<動作>
以上のようにして構成されたFM受信装置500Aの動作について、ステレオ復調処理に主に着目して説明する。
前提として、FM受信装置500Aでは、操作入力部570からの選局指定に従って、希望局が選局されているものとする。すなわち、制御部520Aは、希望局に対応する選局指令CSLを生成して、フロントエンド部530へ向けて出力しているものとする。
また、FM受信装置500Aでは、操作入力部570からの音量等の指定に従って、スピーカ580L,580Rからの出力音量等の調整がなされているものとする。すなわち、制御部520Aは、当該音量等の指定に対応するオーディオ処理指令VLCを生成して、オーディオ処理部560へ向けて出力しているものとする。
様々な放送局からの放送波がアンテナ510で受信されると、アンテナ510からは、受信結果が、受信信号RFSとしてフロントエンド部530へ送られる(図1参照)。この受信信号RFSを受けたフロントエンド部530は、受信信号RFSから希望局に対応する信号を抽出し、抽出結果を中間周波数の中間周波信号IFDとして検波部540へ送る(図1参照)。
中間周波信号IFDを受けた検波部540は、中間周波信号IFDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である信号DCDを生成する。この信号DCDには、上述したように、本第1実施形態では、主チャンネル信号(L+R)、パイロット信号PS及び副チャンネル信号(LM−RM)が含まれている(図2参照)。こうして生成された信号DCDは、ステレオ復調部550Aへ向けて出力される。
信号DCDを受けたステレオ復調部550Aでは、信号DCDが、LPF551M及びサブチャンネル処理部552Aへ供給される(図3参照)。信号DCDを受けたLPF551Mは、角周波数0〜ωcの成分である主チャンネル信号(L+R)を選択的に通過させ、信号MCAとして加算部553L及び減算部553Rへ送る。
一方、サブチャンネル処理部552Aでは、直交信号生成部110Aが、信号DCDを受ける(図4参照)。信号DCDの供給を受けた直交信号生成部110Aでは、まず、直交化部112Aが、信号DCDに含まれる角周波数ωCの成分が互いに直交する2つの信号OSA1,OSA2を生成し、FIL113A1,113A2へ送るとともに、信号加工部140へも送る(図5参照)。
引き続き、信号OSA1を受けたFIL113A1が、信号OSA1における角周波数ωCの成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSA1として位相算出部120Aへ向けて出力する。また、信号OSA2を受けたFIL113A2が、信号OSA2における角周波数ωCの成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSA2として位相算出部120Aへ向けて出力する(図5参照)。
ここで、信号PSA1は、上述した(2)式で表される波形となる。一方、信号PSA2は、上述した(3)式で表される波形となる。
信号PSA1,PSA2を受けた位相算出部120Aは、上述したように動作して、パイロット信号PSの位相θC(t)を算出する。こうして算出された位相θC(t)は、信号PHAとして基準信号生成部130Aへ送られる(図4参照)。
信号PHAを受けた基準信号生成部130Aは、信号PHAに基づいて、角周波数2ωCの基準信号BSA1,BSA2を生成する。かかる基準信号BSA1,BSA2の生成に際して、基準信号生成部130Aでは、まず、位相加工部131Aが、上述した(4)式により、角周波数2ωCで変化する位相θM(t)を算出し、信号発生部1321,1322へ送る(図7参照)。位相θM(t)を受けた信号発生部1321,1322は、位相θM(t)に基づいて内部のテーブルを参照して、上述した(5),(6)式で表される信号である基準信号BSA1,BSA2を生成する。こうして生成された基準信号BSA1,BSA2は、信号加工部140へ送られる(図7参照)。
基準信号生成部130Aからの基準信号BSA1,BSA2、及び、直交信号生成部110Aからの信号OSA1,OSA2を受けた信号加工部140は、基準信号BSA1,BSA2を利用して信号OSA1,OSA2を加工し、角周波数0〜ωcの周波数帯域のベースバンド副チャンネル信号(L−R)を生成する。かかるベースバンド副チャンネル信号(L−R)の生成に際して、信号加工部140では、まず、加工部1411が、信号OSA1と信号BSA1の積を算出して、信号MSA1を生成するとともに、加工部1412が、信号OSA2と信号BSA2の積を算出して、信号MSA2を生成する。そして、加算部142が、信号MSA1と信号MSA2との和を算出して、信号SCPを生成する。こうして生成された信号SCPは、LPF551Sへ送られる。
サブチャンネル処理部552Aからの信号SCPを受けたLPF551Sは、角周波数0〜ωcの成分を選択的に通過させる。この結果、副チャンネル信号(L−R)がLPF551Sを選択的に通過する。こうしてLPF551Sを通過した副チャンネル信号(L−R)が、信号SCAとして加算部553L及び減算部553Rへ向けて出力される。
LPF551Mからの信号MCA及びLPF551Sからの信号SCAを受けた加算部553Lは、信号MCAとして供給された主チャンネル信号(L+R)と、信号SCAとして供給されたベースバンド副チャンネル信号(L―R)との和を算出することによりLチャンネルのみに関連する信号を生成する。かかる生成結果が、信号LDAとしてオーディオ処理部560へ送られる(図3参照)。
LPF551Mからの信号MCA及びLPF551Sからの信号SCAを受けた減算部553Rは、信号MCAとして供給された主チャンネル信号(L+R)と、信号SCAとして供給されたベースバンド副チャンネル信号(L―R)との差を算出することによりRチャンネルのみに関連する信号を生成する。かかる生成結果が、信号RDAとしてオーディオ処理部560へ送られる(図3参照)。
ステレオ復調部550Aからの信号LDA,RDAを受けたオーディオ処理部560は、信号LDA,RDAのそれぞれについて、アナログ信号に変換する。そして、オーディオ処理部560は、制御部520Aからのオーディオ処理指令VLCに従って、音量等を調整する。こうして得られた結果がLチャンネル用の音声信号LSA及びRチャンネル用の音声信号RSAとして、Lチャンネル用のスピーカ580L及びRチャンネル用のスピーカ580Rへ向けて出力される(図1参照)。
オーディオ処理部560からの音声信号LSAを受けたスピーカ580Lは、音声信号LSAに従って、Lチャンネル音声を再生出力する。また、オーディオ処理部560からの音声信号RSAを受けたスピーカ580Rは、音声信号RSAに従って、Rチャンネル音声を再生出力する。
以上説明したように、本第1実施形態では、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む検波信号DCDから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSの位相θC(t)を導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られたベースバンド副チャンネル信号(L−R)を生成するための基準信号BSA1,BSA2を生成することができるので、FM放送波に含まれた音声を忠実に再生できる。この結果、FM放送波に含まれた音声の良質な再生を行うことができる。
また、本第1実施形態では、FIL113A1,113A2における位相ずれΔθを考慮して、パイロット信号PSの位相θC(t)の算出を行うので、精度良く位相θC(t)を算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSA1,BSA2を生成することができる。
なお、本第1実施形態では、基準信号BSA1の生成に際して正弦値テーブルを利用し、基準信号BSA2の生成に際して余弦値テーブルを利用するようにしたが、一方のテーブルのみを用意するようにし、他方については、π/2分ずらして参照するようにしてもよい。
また、本第1実施形態では、LPF551M,551Sを、加算部553L及び減算部553Rの前段に配置するようにしたが、加算部553L及び減算部553Rの後段に配置するようにしてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、図11〜図14を主に参照しつつ説明する。
図11には、本第2実施形態に係るFM受信装置500Bの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図11に示されるように、FM受信装置500Bは、上記の第1実施形態のFM受信装置500Aと比べて、制御部520Aに代えて制御部520Bを備える点、及び、ステレオ復調部550Aに代えてステレオ復調部550Bを備える点のみが異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
制御部520Bは、上述した制御部520Aの機能に加えて、ステレオ復調部550Bに対して、オフセット位相Δφの指定を行う機能を有している。かかるオフセット位相指定機能を実現するために、制御部520Bは、フロントエンド部530からの中間周波信号IFDを受ける。そして、制御部520Bは、信号IFDの信号レベルや、隣接妨害局の信号成分のレベル等に基づいて、予め定められたアルゴリズムに従って、オフセット位相Δφを算出する。こうして算出されたオフセット位相Δφは、オフセット位相信号POSとしてステレオ復調部550Bへ向けて出力される。
ステレオ復調部550Bは、上述したステレオ復調部550Aと比べて、サブチャンネル処理部552Aに代えてサブチャンネル処理部552Bを備える点のみが異なっている。このサブチャンネル処理部552Bは、図12に示されるように、上述のサブチャンネル処理部552Aと比べて、基準信号生成部130Aに代えて基準信号生成部130Bを備える点のみが異なっている。
基準信号生成部130Bは、位相算出部120Aからの信号PHAに基づいて、角周波数2ωCの基準信号BSB1,BSB2を生成する。かかる機能を有する基準信号生成部130Bは、図13に示されるように、上述した基準信号生成部130Aと比べて、位相加工部131Aと信号発生部1321,1322との間に配置された加算器135を更に備えている点が異なっている。
加算部135は、位相加工部131Aからの位相加工信号MPAと、制御部520Bからのオフセット位相信号POSを受ける。そして、加算部135は、位相加工信号MPAにより報告された位相θM(t)と、オフセット位相信号POSにより指定されたオフセット位相Δφとの加算を行い、位相θP(t)の算出を行う。
ここで、位相θP(t)は、次の(7)式で表される。
θP(t)=θM(t)+Δφ=2θC(t)+Δφ
=2(ωCt+φ0)+Δφ …(7)
こうして算出された位相θP(t)は、位相加工信号MPBとして信号発生部1321,1322へ向けて出力される。この結果、信号発生部1321,1322により、次の(8)及び(9)式で表される基準信号BSB1,BSB2が生成される。
BSB1(t)=C0・sin[θP(t)]
=C0・sin[2θC(t)+Δφ]
=C0・sin[2(ωCt+φ0)+Δφ] …(8)
BSB2(t)=C0・cos[θP(t)]
=C0・cos[2θC(t)+Δφ]
=C0・cos[2(ωCt+φ0)+Δφ] …(9)
こうして生成された基準信号BSB1,BSB2は、基準信号生成部130Bから信号加工部140へ向けて出力される。
<動作>
次に、上記のように構成されたFM受信装置500Bの動作について、ステレオ復調処理に主に着目して説明する。
前提として、上述した第1実施形態の場合と同様に、FM受信装置500Bでは、操作入力部570からの選局指定に従って、当該選局指定に対応する受信希望局が選局されているものとする。また、FM受信装置500Bでは、操作入力部570からの音量等の指定に従って、スピーカ580L,580Rからの出力音量等のオーディオ処理の調整がなされているものとする。
様々な放送局からの放送波がアンテナ510で受信されると、受信結果が、受信信号RFSとしてフロントエンド部530へ送られる。この受信信号RFSを受けたフロントエンド部530は、受信信号RFSから希望局に対応する信号を抽出し、中間周波数の中間周波信号IFDとして制御部520B及び検波部540へ送る(図11参照)。
中間周波信号IFDを受けた制御部520Bは、上述したように、中間周波信号IFDの信号レベルや妨害信号レベルに基づいてオフセット位相Δφを算出し、オフセット位相信号POSとして、ステレオ復調部550B(より詳しくは、基準信号生成部130B)へ送る(図11参照)。
中間周波信号IFDを受けた検波部540は、第1実施形態の場合と同様にして、中間周波信号IFDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である信号DCDを生成する。こうして生成された信号DCDは、ステレオ復調部550Bへ送られる。
信号DCDを受けたステレオ復調部550Bでは、信号DCDが、LPF551M及びサブチャンネル処理部552Bへ供給される。信号DCDを受けたLPF551Mは、第1実施形態の場合と同様にして、角周波数0〜ωcの成分である主チャンネル信号(L+R)を選択的に通過させ、信号MCAとして加算部553L及び減算部553Rへ送る。
一方、サブチャンネル処理部552Bでは、直交信号生成部110Aが、信号DCDを受ける(図12参照)。信号DCDの供給を受けた直交信号生成部110Aでは、第1実施形態の場合と同様にして、直交化部112A及びFIL113A1,113A2を使用して、信号PSA1,PSA2が生成される。こうして生成された信号PSA1,PSA2は、位相算出部120Aへ送られる。
信号PSA1,PSA2を受けた位相算出部120Aは、第1実施形態の場合と同様にして、パイロット信号PSの位相θC(t)を算出する。こうして算出された位相θC(t)は、信号PHAとして基準信号生成部130Bへ送られる(図12参照)。
信号PHAを受けた基準信号生成部130Bは、位相算出部120Aからの信号PHA及び制御部520Bからのオフセット位相信号POSに基づいて、角周波数2ωCの基準信号BSB1,BSB2を生成する。かかる基準信号BSB1,BSB2の生成に際して、基準信号生成部130Bでは、上述した基準信号生成部130Aの場合と同様にして、位相加工部131Aが、上述した(4)式により、角周波数2ωCを有する位相θM(t)を算出し、位相加工信号MPAとして加算部135へ送る(図13参照)。
位相加工信号MPAを受けた加算部135は、上述した(7)式に従って、オフセット位相信号POSにより指定されているオフセット位相Δφを位相θM(t)に加算し、位相θP(t)を算出する。こうして算出された位相θP(t)は、信号発生部1321,1322へ送られる(図13参照)。
位相θP(t)を受けた信号発生部1321,1322は、位相θP(t)に基づいて内部のテーブルを参照して、上述した(8)及び(9)式で表される信号である基準信号BSB1,BSB2を生成する。こうして生成された基準信号BSB1,BSB2は、信号加工部140へ送られる(図13参照)。
基準信号生成部130Bからの基準信号BSB1,BSB2、及び、直交信号生成部110Aからの信号OSA1,OSA2を受けた信号加工部140は、基準信号BSB1,BSB2を利用して信号OSA1,OSA2を加工し、角周波数0〜ωcの周波数帯域のベースバンド副チャンネル信号(α(L−R))に対応する信号SCPを生成する。ここで、値αは、オフセット位相Δφの値によって変化する。
こうして生成された信号SCPは、次の(10)式で表されるように、cos(Δφ)の値に比例する。
SCP(t)∝cos(Δφ) …(10)
このため、信号SCPは、図14に示されるように、角周波数0〜ωcの周波数帯域の信号成分を有するとともに、オフセット位相Δφの設定値を変化させることにより、振幅値が変化する信号となっている。こうして生成された信号SCPは、LPF551Sへ送られる。
サブチャンネル処理部552Bからの信号SCPを受けたLPF551Sは、角周波数0〜ωcの成分を選択的に通過させる。この結果、副チャンネル信号(L−R)がLPF551Sを選択的に通過する。こうしてLPF551Sを通過した副チャンネル信号(L−R)が、信号SCBとして加算部553L及び減算部553Rへ向けて出力される。
LPF551Mからの信号MCA及びLPF551Sからの信号SCBを受けた加算部553Lは、信号MCAとして供給された主チャンネル信号(L+R)と、信号SCBとして供給されたベースバンド副チャンネル信号(α(L―R))との和を算出することにより主にLチャンネルに関連する信号を生成する。かかる生成結果が、信号LDBとしてオーディオ処理部560へ送られる(図11参照)。
LPF551Mからの信号MCA及びLPF551Sからの信号SCBを受けた減算部553Rは、信号MCAとして供給された主チャンネル信号(L+R)と、信号SCBとして供給されたベースバンド副チャンネル信号(α(L―R))との差を算出することにより主にRチャンネルに関連する信号を生成する。かかる生成結果が、信号RDBとしてオーディオ処理部560へ送られる(図11参照)。
ステレオ復調部550Bからの信号LDB,RDBを受けたオーディオ処理部560は、第1実施形態の場合と同様にして、信号LDB,RDBのそれぞれについて、アナログ信号に変換した後、制御部520Bからのオーディオ処理指令VLCに従って、音量等を調整する。こうして得られた結果がLチャンネル用の音声信号LSB及びRチャンネル用の音声信号RSBとして、Lチャンネル用のスピーカ580L及びRチャンネル用のスピーカ580Rへ向けて出力される(図11参照)。
オーディオ処理部560からの音声信号LSBを受けたスピーカ580Lは、音声信号LSBに従って、Lチャンネル音声を再生出力する。また、オーディオ処理部560からの音声信号RSBを受けたスピーカ580Rは、音声信号RSBに従って、Rチャンネル音声を再生出力する。
以上説明したように、本第2実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む検波信号DCDから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSの位相θC(t)を導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られたベースバンド副チャンネル信号(L−R)を生成するための基準信号BSB1,BSB2を生成することができるので、FM放送波に含まれた音声を再生できる。この結果、FM放送波に含まれた音声の良質な再生を行うことができる。
また、本第2実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、FIL113A1,113A2における位相ずれΔθを考慮して、パイロット信号PSの位相θC(t)の算出を行うので、精度良く位相θC(t)を算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSB1,BSB2を生成することができる。
また、本第2実施形態では、フロントエンド部530からの中間周波信号IFDの信号レベルや妨害信号レベルに対応したオフセット位相Δφを設定し、オフセット位相Δφを反映した基準信号BSB1,BSB2を生成するので、ベースバンド副チャンネル信号の振幅を信号DCDの信号レベルや妨害信号レベルに対応して変化させることができる。この結果、Lチャンネル音声とRチャンネル音声との分離度を、受信信号における希望局信号の信号レベルや妨害信号レベルに対応して簡易に制御することができる。
なお、本第2実施形態では、図13に示されるように、オフセット位相信号POSを位相加工部131Aの出力信号である位相加工信号MPAに加算するようにした。これに対し、オフセット位相信号POSを位相加工部に入力させ、位相加工信号MPAにオフセット位相信号POSを加算した後に所定倍するようにすることもできる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を、図15〜図23を主に参照しつつ説明する。
図15には、本第3実施形態に係るFM受信装置500Cの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図15に示されるように、FM受信装置500Cは、上記の第1実施形態のFM受信装置500Aと比べて、ステレオ復調部550Aに代えてステレオ復調部550Cを備える点のみが異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
ステレオ復調部550Cは、上述したステレオ復調部550Aと比べて、サブチャンネル処理部552Aに代えてサブチャンネル処理部552Cを備える点のみが異なっている。このサブチャンネル処理部552Cは、図16に示されるように、上述のサブチャンネル処理部552Aと比べて、直交信号生成部110Aに代えて直交信号生成部110Cを備える点、位相算出部120Aに代えて位相算出部120Cを備える点、及び、基準信号生成部130Aに代えて基準信号生成部130Cを備える点が異なっている。
直交信号生成部110Cは、検波部540から受信した信号DCDから、パイロット信号PSに対応する成分が互いに直交する2つの信号OSC1,OSC2を生成した後、信号OSC1,OSC2からパイロット信号PSの位相θC(t)を反映した2つの信号PSC1,PSC2を抽出する。かかる機能を有する直交信号生成部110Cは、図17に示されるように、コンポジット帯域制限手段としての帯域制限フィルタ111と、直交化手段としての直交化部112Cと、フィルタ手段としてのフィルタ(FIL)113C1,113C2とを備えている。
制限フィルタ111は、本第3実施形態では、有限インパルス応答フィルタ(FIR)等のデジタルフィルタとし、必要とされる帯域において位相ずれは無いものとする。帯域制限フィルタ111は、信号DCDにおける角周波数ωC〜3ωCを含む所定の周波数帯域の信号成分を選択的に通過させ、周波数帯域が制限された帯域制限信号LSIとして直交化部112Cへ向けて出力する。
本第3実施形態では、帯域制限フィルタ111は、例えば、図18に示されるフィルタリング特性を有している。すなわち、帯域制限フィルタ111は、角周波数0〜3ωCの信号成分に対してはほぼ減衰させずに通過させるとともに、角周波数が3ωCを大きく超える信号成分を遮断するローパスフィルタとして構成されている。
図17に戻り、直交化部112Cは、帯域制限信号LSIに基づいて、互いに直交するとともに、パイロット信号PSに対応する成分が互いに直交する2つの信号OSC1,OSC2を生成する。かかる機能を有する直交化部112Cは、図19に示されるように、発振部210Cと、乗算部2201,2202とを備えている。
発振部210Cは、乗算部2201へ供給すべき信号OTS1、及び、乗算部2202へ供給すべき信号OTS2を発生する。本第3実施形態では、信号OTS1及び信号OTS2は、次の(11)及び(12)式で表されるようになっている。
OTS1(t)=B0・cos(ωSH・t) …(11)
OTS2(t)=B0・sin(ωSH・t) …(12)
本第3実施形態では、角周波数ωSHは、3ωCよりも大きな所定値に設定されている。かかる角周波数ωSHの値は、パイロット信号PSの周波数シフト結果へのノイズ成分の混入の防止という観点から、上述した帯域制限フィルタ111による帯域制限の仕様と併せた総合的な見地から定められる。
乗算部2201は、帯域制限信号LSIをA端子で受け、発振部210Cからの信号OTS1をB端子で受ける。そして、A端子における受信結果と、B端子における受信結果との乗算結果が、C端子から信号OSC1としてFIL113C1へ向けて出力される。ここで、信号DCDにおけるパイロット信号PSは、角周波数ωCを有し、信号OTS1は角周波数ωSHの成分のみを有している。このため、信号OSC1におけるパイロット信号PSに対応する信号成分は、角周波数(ωSH−ωC)及び角周波数(ωSH+ωC)の2成分に周波数変換される。
乗算部2202は、帯域制限信号LSIをA端子で受け、発振部210Cからの信号OTS2をB端子で受ける。そして、A端子における受信結果と、B端子における受信結果との乗算結果が、C端子から信号OSC2としてFIL113C2へ向けて出力される。ここで、信号DCDにおけるパイロット信号PSは、角周波数ωCを有し、信号OTS2は角周波数ωSHの成分のみを有している。このため、信号OSC2におけるパイロット信号PSに対応する信号成分は、信号OSC1との場合と同様に、角周波数(ωSH−ωC)及び角周波数(ωSH+ωC)の2成分に周波数変換される。
図17に戻り、FIL113C1は、無限インパルス応答フィルタ(IIR)等のデジタルフィルタとして構成されている。このFIL113C1は、直交化部112Cからの信号OSC1を受ける。そして、FIL113C1は、信号OSC1における角周波数(ωSH−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分の一方を選択的に通過させ、信号PSC1として位相算出部120Cへ向けて出力する。
なお、FIL113C1を介することにより、フィルタ遅延に伴う固定的な位相シフトΔθが発生する場合がある。本第3実施形態では、かかる位相シフトΔθが発生するものとする。この位相シフトΔθは、FIL113C1の構成にて定まるものであり、FIL113C1の設計段階で定まる。
かかるFIL113C1から出力される信号PSC1は、次の(13)式のように表される。
PSC1(t)=−A(t)・sin[θS(t)]
=−A(t)・sin[ωSHt−θC(t)−Δθ]
=−A(t)・sin[ωSHt−(ωCt+φ0)−Δθ] …(13)
ここで、A(t)は、パイロット信号PSの振幅値を表す。
FIL113C2は、FIL113C1と同様に構成されている。このFIL113C2は、直交化部112Cからの信号OSC2を受ける。そして、FIL113C2は、信号OSC2における角周波数(ωSH−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分の一方を選択的に通過させ、信号PSC2を出力する。
かかるFIL113C2から出力される信号PSC2は、次の(14)式のように表される。
PSC2(t)=A(t)・cos[θS(t)]
=A(t)・cos[ωSHt−θC(t)−Δθ]
=A(t)・cos[ωSHt−(ωCt+φ0)−Δθ] …(14)
図16に戻り、位相算出部120Cは、直交信号生成部110Cからの信号PSC1及び信号PSC2に基づいて、パイロット信号PSの位相θC(t)を算出する。かかる算出に際して、位相算出部120Cは、例えば、信号PSC1及び信号PSC2についてarctan等の演算を行ったうえで、角周波数ωSH及び位相シフトΔθを考慮して、パイロット信号PSを反映した位相を算出する。
こうして算出された位相は、信号PHAとして、位相算出部120Cから基準信号生成部130Cへ向けて出力される。
基準信号生成部130Cは、位相算出部120Cからの信号PHAに基づいて、角周波数(ωSH−2ωC)の基準信号BSC1,BSC2を生成する。かかる機能を有する基準信号生成部130Cは、図20に示されるように、位相加工部131Cと、信号発生部1321,1322とを備えている。
位相加工部131Cは、位相算出部120Cからの信号PHAを受けて、信号PHAが示す位相θC(t)を加工する。本第3実施形態においては、位相加工部131Cは、次の(15)式により、位相θM(t)を算出する。
θM(t)=ωSHt−2θC(t)=ωSHt−2(ωCt+φ0) …(15)
すなわち、本第3実施形態では、位相加工部131Cは、角周波数(ωSH−2ωC)で変化する位相θM(t)を算出する。こうして算出された位相θM(t)は、位相加工信号MPCとして信号発生部1321,1322へ向けて出力される。
この結果、本第3実施形態では、信号発生部1321,1322が、位相加工部131Cからの位相加工信号MPCに基づいて、次の(16)及び(17)式により基準信号BSC1,BSC2を生成する。
BSC1(t)=−C0・sin[θM(t)]
=−C0・sin[ωSHt−2θC(t)]
=−C0・sin[ωSHt−2(ωCt+φ0)] …(16)
BSC2(t)=C0・cos[θM(t)]
=C0・cos[ωSHt−2θC(t)]
=C0・cos[ωSHt−2(ωCt+φ0)] …(17)
こうして生成された基準信号BSC1,BSC2は、信号加工部140へ向けて出力される。このため、信号加工部140では、信号BSC1,BSC2を利用して信号OSC1,OSC2が加工されて、第1実施形態の場合と同様の信号SCAが生成される。この結果、図15に示されるように、ステレオ復調部550Cからは、第1実施形態のステレオ復調部550Aの場合と同様の信号LDA,RDAが出力される。
<動作>
次に、上記のように構成されたFM受信装置500Cの動作について、ステレオ復調処理に主に着目して説明する。
前提として、上述した第1実施形態の場合と同様に、FM受信装置500Cでは、操作入力部570からの選局指定に従って、当該選局指定に対応する受信希望局が選局されているものとする。また、FM受信装置500Cでは、操作入力部570からの音量等の指定に従って、スピーカ580L,580Rからの出力音量等の調整がなされているものとする。
様々な放送局からの放送波がアンテナ510で受信されると、第1実施形態の場合と同様に、受信結果がフロントエンド部530及び検波部540により順次処理される。そして、検波信号DCDが、ステレオ復調部550Cへ送られる。
信号DCDを受けたステレオ復調部550Cでは、信号DCDが、LPF551M及びサブチャンネル処理部552Cへ供給される。信号DCDを受けたLPF551Mは、第1実施形態の場合と同様にして、角周波数0〜ωcの成分である主チャンネル信号(L+R)を選択的に通過させ、信号MCAとして加算部553L及び減算部553Rへ送る。
一方、サブチャンネル処理部552Cでは、直交信号生成部110Cが、信号DCDを受ける(図16参照)。信号DCDの供給を受けた直交信号生成部110Cでは、まず、帯域制限フィルタ111が、信号DCDにおける角周波数ωC〜3ωCを含む所定の周波数帯域の信号成分を選択的に通過させ、周波数帯域が制限された帯域制限信号LSIとして直交化部112Cへ送る(図17参照)。この結果、図21において二点鎖線で示されるように、信号DCDが角周波数3ωCよりも大きな角周波数領域に広く信号成分を有する場合であっても、図22に示されるように、信号成分の周波数帯域が制限される。
帯域制限信号LSIを受けた直交化部112Cは、帯域制限信号LSIに基づいて、互いに直交する2つの信号OSC1,OSC2を生成し、FIL113C1,113C2へ送るとともに、信号加工部140へ送る(図17参照)。ここで、信号OSCj(j=1,2)のそれぞれは、図23に示されるように、パイロット信号PSに対応する信号成分として、角周波数(ωSH−ωC)の信号成分PSMj及び角周波数(ωSH+ωC)の信号成分PSPjの2つの信号成分を含んでいる。
なお、本第3実施形態では、直交化部112Cが帯域制限信号LSIの周波数変換を行うことにしている。このため、上述した図21において二点鎖線で示される角周波数3ωCよりも大きな角周波数領域に広く信号成分を有する信号DCDの周波数変換を行った場合に生じ得る信号成分PSMj及び信号成分PSPjへのノイズの混入(図23における一点鎖線を参照)を防止することができるようになっている。
引き続き、信号OSC1を受けたFIL113C1が、信号OSC1における角周波数(ωSH−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSC1として位相算出部120Cへ向けて出力する。また、信号OSC2を受けたFIL113C2が、信号OSC2における角周波数(ωSH−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSC2として位相算出部120Cへ向けて出力する(図17参照)。
ここで、信号PSC1は、上述した(13)式で表される波形となる。一方、信号PSC2は、上述した(14)式で表される波形となる。
信号PSC1,PSC2を受けた位相算出部120Cは、上述したように動作して、パイロット信号PSを反映した位相を算出する。こうして算出された位相は、信号PHAとして基準信号生成部130Cへ送られる(図16参照)。
信号PHAを受けた基準信号生成部130Cは、信号PHAに基づいて、基準信号BSC1,BSC2を生成する。かかる基準信号BSC1,BSC2の生成に際して、基準信号生成部130Cでは、まず、位相加工部131Cが、上述した(15)式により、位相θM(t)を算出し、信号発生部1321,1322へ送る(図20参照)。位相θM(t)を受けた信号発生部1321,1322は、位相θM(t)に基づいて内部のテーブルを参照して、上述した(16),(17)式で表される信号である基準信号BSC1,BSC2を生成する。こうして生成された基準信号BSC1,BSC2は、信号加工部140へ送られる(図20参照)。
基準信号生成部130Cからの基準信号BSC1,BSC2、及び、直交信号生成部110Cからの信号OSC1,OSC2を受けた信号加工部140は、基準信号BSC1,BSC2を利用して信号OSC1,OSC2を加工し、信号SCPを生成する。こうして生成された信号SCPは、LPF551Sへ送られる。
サブチャンネル処理部552Cからの信号SCPを受けたLPF551Sは、角周波数0〜ωcの成分を選択的に通過させる。この結果、副チャンネル信号(L−R)がLPF551Sを選択的に通過する。こうしてLPF551Sを通過した副チャンネル信号(L−R)が、信号SCBとして加算部553L及び減算部553Rへ向けて出力される。
以後、第1実施形態の場合と同様に、加算部553L及び減算部553Rにより、Lチャンネルのみに関連する信号LDA及びRチャンネルのみに関連する信号RDAが生成されて、オーディオ処理部560へ送られる(図15参照)。
ステレオ復調部550Cからの信号LDA,RDAを受けたオーディオ処理部560は、第1実施形態の場合と同様にして、信号LDA,RDAのそれぞれについて、アナログ信号に変換した後、制御部520Aからのオーディオ処理指令VLCに従って、音量等を調整する。こうして得られた結果がLチャンネル用の音声信号LSA及びRチャンネル用の音声信号RSAとして、Lチャンネル用のスピーカ580L及びRチャンネル用のスピーカ580Rへ向けて出力される(図15参照)。
オーディオ処理部560からの音声信号LSAを受けたスピーカ580Lは、音声信号LSAに従って、Lチャンネル音声を再生出力する。また、オーディオ処理部560からの音声信号RSAを受けたスピーカ580Rは、音声信号RSAに従って、Rチャンネル音声を再生出力する。
以上説明したように、本第3実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む検波信号DCDから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSを反映した位相を導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られたベースバンド副チャンネル信号(L−R)を生成するための基準信号BSC1,BSC2を生成することができるので、FM放送波に含まれた音声を忠実に再生できる。この結果、FM放送波に含まれた音声の良質な再生を行うことができる。
また、本第3実施形態では、FIL113C1,113C2における位相ずれΔθを考慮して、パイロット信号PSを反映した位相θの算出を行うので、精度良く位相を算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSC1,BSC2を生成することができる。
また、本第3実施形態では、直交化部112Cにおいて周波数変換を行いつつ直交化を行うので、ヒルベルト変換等を用いて直交化する場合と比べて演算量を削減することができる。
また、本第3実施形態では、帯域制限フィルタ111により信号DCDを帯域制限した帯域制限信号LSIを、周波数変換を行いつつ直交化するので、パイロット信号PSの周波数変換結果へのノイズの混入を低減させることができる。
[第4実施形態]
次いで、本発明の第4実施形態を、図24〜図30を主に参照しつつ説明する。
図24には、本第4実施形態に係るFM受信装置500Dの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図24に示されるように、FM受信装置500Dは、上記の第3実施形態のFM受信装置500Cと比べて、制御部520Aに代えて制御部520Dを備える点、及び、ステレオ復調部550Cに代えてステレオ復調部550Dを備える点のみが異なっている。以下、これらの相違点に主に着目して説明する。
制御部520Dは、上述した制御部520Aの機能に加えて、ステレオ復調部550Dに対して、シフト角周波数ωSHMの指定を行う機能を有している。かかるシフト角周波数指定機能を実現するために、制御部520Dは、フロントエンド部530からの中間周波信号IFDを受ける。そして、制御部520Dは、信号IFDの信号レベルや、FM検波出力である信号DCDにおける所定のノイズ成分のレベルに基づいて、予め定められたアルゴリズムに従って、シフト角周波数ωSHMを算出する。こうして算出されたシフト角周波数ωSHMは、周波数変換制御信号FTCとしてステレオ復調部550Dへ向けて出力される。
ステレオ復調部550Dは、上述したステレオ復調部550Cと比べて、サブチャンネル処理部552Cに代えてサブチャンネル処理部552Dを備える点のみが異なっている。このサブチャンネル処理部552Dは、図25に示されるように、上述のサブチャンネル処理部552Cと比べて、直交信号生成部110Cに代えて直交信号生成部110Dを備える点、位相算出部120Cに代えて位相算出部120Dを備える点、及び、基準信号生成部130Cに代えて基準信号生成部130Dを備える点が異なっている。また、サブチャンネル処理部552Dは、サブチャンネル処理部552Cと比べて、直交化帯域制限手段としてのハイパスフィルタ(HPF)1151,1152を更に備える点が異なっている。
直交信号生成部110Dは、図26に示されるように、直交信号生成部110Cと比べて、直交化部112Cに代えて直交化部112Dを備えている点、及び,FIL113C1,113C2に代えてFIL113D1,113D2を備える点が異なっている。
直交化部112Dは、図27に示されるように、直交化部112Cと比べて、発振部210Cに代えて発振部210Dを備える点のみが異なっている。
発振部210Dは、制御部520Dからの信号FTCで指定された角周波数ωSHMの信号を生成することにより、乗算部2201へ供給すべき信号OTV1、及び、乗算部2202へ供給すべき信号OTV2を発生する。本第4実施形態では、信号OTV1及び信号OTV2は、次の(18)及び(19)式で表されるようになっている。
OTV1(t)=B0・cos(ωSHM・t) …(18)
OTV2(t)=B0・sin(ωSHM・t) …(19)
ここで、B0は定数である。
図26に戻り、FIL113Dj(j=1,2)のそれぞれは、無限インパルス応答フィルタ(IIR)等のデジタルフィルタとして構成されている。このFIL113Djは、直交化部112Dからの信号OSDj及び制御部520Dからの信号FTCを受ける。そして、FIL113Djは、信号OSDjにおける角周波数(ωSHM−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分の一方を選択的に通過させ、信号PSDjとして位相算出部120Dへ向けて出力する。
なお、FIL113Djを介することにより、フィルタ遅延に伴う固定的な位相シフトΔθが発生する場合がある。本第4実施形態では、かかる位相シフトΔθが発生するものとする。この位相シフトΔθは、FIL113Djの構成にて定まるものであり、FIL113Djの設計段階で定まる。
この結果、直交信号生成部110Dから出力される信号PSD1,PSD2は、次の(20)及び(21)式で表される。
PSD1(t)=−A(t)・sin[ωSHMt−(ωCt+φ0)−Δθ] …(20)
PSD2(t)=A(t)・cos[ωSHMt−(ωCt+φ0)−Δθ] …(21)
図25に戻り、位相算出部120Dは、直交信号生成部110Dからの信号PSD1及び信号PSD2、並びに制御部520Dからの信号FTCで指定された角周波数ωSHMに基づいて、パイロット信号PSを反映した位相を算出する。かかる算出に際して、位相算出部120Dは、例えば、信号PSD1及び信号PSD2についてarctan等の演算を行ったうえで、角周波数ωSH及び位相シフトΔθを考慮して、パイロット信号PSを反映した位相θC(t)を算出する。
こうして算出された位相は、信号PHAとして、位相算出部120Dから基準信号生成部130Dへ向けて出力される。
基準信号生成部130Dは、位相算出部120Dからの信号PHA及び制御部520Dからの信号FTCに基づいて、角周波数(ωSHM−2ωC)の基準信号BSD1,BSD2を生成する。かかる機能を有する基準信号生成部130Dは、図28に示されるように、上述の基準信号生成部130Cと比べて、位相加工部131Cに代えて位相加工部131Dを備える点のみが異なっている。
位相加工部131Dは、位相算出部120Dからの信号PHAが示す位相θC(t)及び制御部520Dからの信号FTCを受ける。そして、位相加工部131Dは、次の(22)式により、位相θM(t)を算出する。
θM(t)=ωSHMt−2θC(t)=ωSHMt−2(ωCt+φ0) …(22)
すなわち、本第4実施形態では、位相加工部131Dは、角周波数(ωSHM−2ωC)で変化する位相θM(t)を算出する。こうして算出された位相θM(t)は、位相加工信号MPDとして信号発生部1321,1322へ向けて出力される。
この結果、本第4実施形態では、信号発生部1321,1322が、位相加工部131Dからの位相加工信号MPDに基づいて、次の(23)及び(24)式により基準信号BSD1,BSD2を生成する。
BSD1(t)=−C0・sin[θM(t)]
=−C0・sin[ωSHMt−2θC(t)]
=−C0・sin[ωSHMt−2(ωCt+φ0)] …(23)
BSD2(t)=C0・cos[θM(t)]
=C0・cos[ωSHMt−2θC(t)]
=C0・cos[ωSHMt−2(ωCt+φ0)] …(24)
こうして生成された基準信号BSD1,BSD2は、信号加工部140へ向けて出力される。
図25に戻り、HPF115j(j=1,2)のそれぞれは、位相シフト(位相遅れ)が無い又は非常に小さい有限インパルス応答フィルタ(FIR)等のデジタルフィルタとして構成されている。HPF115jのそれぞれは、図29において一点鎖線で示されるようなフィルタリング特性を有し、中間周波信号IFDの信号レベルが十分であり、かつ、妨害信号レベルも小さい場合に制御部520Dによって採用されるシフト角周波数ωSH1が直交化部112Dに対して指定された場合に、信号OSDjに含まれる放送音声に関連する周波数帯域の信号成分をほぼそのままで通過させるようになっている。
一方、HPF115jのそれぞれは、図30に示されるように、中間周波信号IFDの信号レベルが十分でない、又は、妨害信号レベルも大きい場合に制御部520Dによって採用されるシフト角周波数ωSH2(<ωSH1)が直交化部112Dに対して指定された場合に、副チャンネル信号(LM−RM)に対応する低周波側の信号成分SG2Mjの一部を遮断するようになっている。ここで、信号成分SG2MjのうちでHPF115jにより遮断される成分は、再生時においては高音域の部分であるように、HPF115jのフィルタリング特性が定められている。
この結果、制御部520が定めるシフト周波数ωSHMが変化すると、FM音声再生時のハイカット特性が変化するようDになっている。なお、HPF115jのそれぞれのフィルタリング特性は、図29及び図30において一点鎖線で示されるようになっているので、検波信号DCDのサンプルレートが高い場合であっても、フィルタリング演算量を適正化できるようになっている。
以上のように構成されたHPF1151,1152を介した信号が、信号HCC1,HCC2として信号加工部140へ向けて出力される。このため、信号加工部140では、信号BSD1,BSD2を利用して信号HCC1,HCC2が加工されて、信号SCPが生成される。この結果、図24に示されるように、ステレオ復調部550Dからは、信号LDD,RDDが出力される。
<動作>
次に、上記のように構成されたFM受信装置500Dの動作について、ステレオ復調処理に主に着目して説明する。
前提として、上述した第3実施形態の場合と同様に、FM受信装置500Dでは、操作入力部570からの選局指定に従って、受信希望局が選局されているものとする。また、FM受信装置500Dでは、操作入力部570からの音量等の指定に従って、スピーカ580L,580Rからの出力音量等の調整がなされているものとする。
様々な放送局からの放送波がアンテナ510で受信されると、受信結果が、受信信号RFSとしてフロントエンド部530へ送られる。この受信信号RFSを受けたフロントエンド部530は、受信信号RFSから希望局に対応する信号を抽出し、中間周波数の中間周波信号IFDとして制御部520D及び検波部540へ送る(図24参照)。
中間周波信号IFDを受けた制御部520Dは、上述したように、中間周波信号IFDの信号レベルや妨害信号レベルに基づいてシフト周波数ωSHMを算出し、信号FTCとして、ステレオ復調部550D(より詳しくは、直交信号生成部110D、位相算出部120D、基準信号生成部130D)へ送る(図24参照)。
中間周波信号IFDを受けた検波部540は、第3実施形態の場合と同様にして、中間周波信号IFDに対して、所定方式でデジタル検波処理を施してコンポジット信号である信号DCDを生成する。こうして生成された信号DCDは、ステレオ復調部550Dへ送られる。
信号DCDを受けたステレオ復調部550Dでは、信号DCDが、LPF551M及びサブチャンネル処理部552Dへ供給される。信号DCDを受けたLPF551Mは、第3実施形態の場合と同様にして、角周波数0〜ωcの成分である主チャンネル信号(L+R)を選択的に通過させ、信号MCAとして加算部553L及び減算部553Rへ送る。
一方、サブチャンネル処理部552Dでは、直交信号生成部110Dが、信号DCDを受ける(図25参照)。信号DCDの供給を受けた直交信号生成部110Dでは、まず、第3実施形態の場合と同様に、帯域制限フィルタ111が、信号DCDにおける角周波数ωC〜3ωCを含む所定の周波数帯域の信号成分を選択的に通過させ、周波数帯域が制限された帯域制限信号LSIとして直交化部112Dへ送る(図26参照)。
帯域制限信号LSIを受けた直交化部112Dは、制御部520Dから受けた信号FTC及び帯域制限信号LSIに基づいて、互いに直交する2つの信号OSD1,OSD2を生成し、FIL113D1,113D2へ送るとともに、HPF1151,1152へ送る(図26参照)。信号OSD1,OSD2を受けたHPF1151,1152は、上述のように定められているフィルタリング特性に従って、所定周波数帯域の信号成分を通過させ、信号HCC1,HCC2として信号加工部140へ送る(図25参照)。
引き続き、信号OSD1を受けたFIL113D1が、信号OSD1における角周波数(ωSHM−ωC)の成分を選択的に通過させ、信号PSD1として位相算出部120Dへ向けて出力する。また、信号OSD2を受けたFIL113D2が、信号OSD2における角周波数(ωSHM−ωC)の成分、すなわち、パイロット信号PSに対応する信号成分を選択的に通過させ、信号PSD2として位相算出部120Dへ向けて出力する(図26参照)。
ここで、信号PSD1は、上述した(20)式で表される波形となる。一方、信号PSD2は、上述した(22)式で表される波形となる。
信号PSD1,PSD2を受けた位相算出部120Dは、上述したように動作して、パイロット信号PSの位相θC(t)を算出する。こうして算出された位相θC(t)は、信号PHAとして基準信号生成部130Dへ送られる(図25参照)。
信号PHAを受けた基準信号生成部130Dは、信号PHAに基づいて、基準信号BSD1,BSD2を生成する。かかる基準信号BSD1,BSD2の生成に際して、基準信号生成部130Dでは、まず、位相加工部131Dが、上述した(22)式により、位相θM(t)を算出し、信号発生部1321,1322へ送る(図28参照)。位相θM(t)を受けた信号発生部1321,1322は、位相θM(t)に基づいて内部のテーブルを参照して、上述した(23),(24)式で表される信号である基準信号BSD1,BSD2を生成する。こうして生成された基準信号BSD1,BSD2は、信号加工部140へ送られる(図28参照)。
基準信号生成部130Dからの基準信号BSD1,BSD2、及び、HPF1151,1152からの信号HCC1,HCC2を受けた信号加工部140は、基準信号BSD1,BSD2を利用して信号HCC1,HCC2を加工し、信号SCPを生成する。こうして生成された信号SCPは、LPF551Sへ送られる。
サブチャンネル処理部552Dからの信号SCPを受けたLPF551Sは、角周波数0〜ωcの成分を選択的に通過させる。この結果、副チャンネル信号(L−R)がLPF551Sを選択的に通過する。こうしてLPF551Sを通過した副チャンネル信号(L−R)が、信号SCDとして加算部553L及び減算部553Rへ向けて出力される。
以後、第3実施形態の場合と同様に、加算部553L及び減算部553Rにより、Lチャンネルのみに関連する信号をLDD及びRチャンネルのみに関連する信号RDDが生成されて、オーディオ処理部560へ送られる(図24参照)。
ステレオ復調部550Dからの信号LDD,RDDを受けたオーディオ処理部560は、第1実施形態の場合と同様にして、信号LDD,RDDのそれぞれについて、アナログ信号に変換した後、制御部520Dからのオーディオ処理指令VLCに従って、音量等を調整する。こうして得られた結果がLチャンネル用の音声信号LSD及びRチャンネル用の音声信号RSDとして、Lチャンネル用のスピーカ580L及びRチャンネル用のスピーカ580Rへ向けて出力される(図24参照)。
オーディオ処理部560からの音声信号LSDを受けたスピーカ580Lは、音声信号LSDに従って、Lチャンネル音声を再生出力する。また、オーディオ処理部560からの音声信号RSDを受けたスピーカ580Rは、音声信号RSDに従って、Rチャンネル音声を再生出力する。
以上説明したように、本第4実施形態では、第3実施形態の場合と同様に、角周波数ωCのパイロット信号PSを含む検波信号DCDから、PLL方式におけるフィードバックループや、位相計測の基準となるベース信号を用いることなく、パイロット信号PSを反映した位相を導出する。このため、簡易にかつ迅速にパイロット信号PSとの同期が図られたベースバンド副チャンネル信号(L−R)を生成するための基準信号BSD1,BSD2を生成することができるので、FM放送波に含まれた音声を忠実に再生できる。この結果、FM放送波に含まれた音声の良質な再生を行うことができる。
また、本第4実施形態では、FIL113D1,113D2における位相ずれΔθを考して、パイロット信号PSを反映した位相の算出を行うので、精度良く位相を算出することができる。このため、パイロット信号PSに精度良く同期した基準信号BSD1,BSD2を生成することができる。
また、本第4実施形態では、直交化部112Dにおいて周波数変換を行いつつ直交化を行うので、ヒルベルト変換等を用いて直交化する場合と比べて演算量を削減することができる。
また、本第4実施形態では、帯域制限フィルタ111により信号DCDを帯域制限した帯域制限信号LSIを、周波数変換を行いつつ直交化するので、パイロット信号PSの周波数変換結果へのノイズの混入を低減させることができる。
また、本第4実施形態では、信号DCDを帯域制限した帯域制限信号LSIに対して周波数変換を行った信号に対して、HPF1151,1152を利用してハイカットのための処理を行うので、FIL113D1,113D2を設計する場合における容易化を図ることができる。
[実施形態の変形]
本発明は、上記の第1〜第4実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記の第1〜第4実施形態では、副チャンネル信号(LM−RM)について加工を行って、ベースバンド副チャンネル信号(L−R)を得る場合を例示して説明した。これに対し、放送波にRDS(Radio Data System)信号等が更に含まれる場合には、副チャンネル信号(LM−RM)の場合と同様の加工を行って、RDS信号をベースバンド帯域の信号とすることもできる。
また、上記の第3及び第4の実施形態では、周波数変換後のパイロット信号PSに対応する信号のうち、角周波数(ωSH−ωC),(ωSHM−ωC)の信号を抽出して利用するようにしたが、角周波数(ωSH+ωC),(ωSHM+ωC)の信号を抽出して利用するようにしてもよい。
また、上記の第4の実施形態では、副チャンネル信号に対する周波数変換を行うシフト周波数を変更することにより、ハイカットを行う帯域を調整するようにした。これに対し、FIL1151,1152の通過帯域を可変とすることにより、ハイカットを行う帯域を調整するようにしてもよい。
また、第1実施形態に対する第2実施形態への変形を、第3又は第4実施形態に適用することもできる。
なお、第1〜第4実施形態のFM受信装置における制御部、検波部、ステレオ復調部を、CPU(Central Processing Unit)及びDSP(Digital Signal Processor)を備える計算機により構成し、当該計算機におけるプログラムの実行によって、第1〜第4実施形態のFM受信装置の機能を実現することができる。これらのプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配送の形態で取得されるようにしてもよい。