しかしながら、上記特許文献1のような従来の方法では、干渉デジタル画像を取得する顕微蛍光スペクトル測定装置の構成において、受像素子以外にも精密な干渉ミラーを含む光学系などが非常に複雑であり、また1画面ごとに測定波長範囲を走査しなければならず、例えメンブランフィルタのようなろ過濃縮手段を利用しても、測定時間が非常に長くなってしまう為、現実的ではない。更に測定を行う間、常に強い励起光を照射し続ける必要があるため、蛍光色素が褪色しやすく、安定した計測を常に行うことが求められる微生物検査用途においては使用が困難である。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、夾雑物を判別するのに必要な色彩的特性を最小限に取得することで、受像素子以外に特定波長の受光フィルタを備える事で実現可能であり、更に測定時間も極めて短くて済むため迅速検査に使用することが可能であり、かつ蛍光色素の褪色も抑えることが可能であるために高精度である微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、特許文献2のような手法の場合、メチレンブルーなどの着色する染色試薬を使用しているが、これらは増感作用を持たないため、大きさが非常に小さい微生物細胞の場合には、着色する量が微量であるため、染色されているか見分けるのが難しい。このような場合、通常、露光時間を上げて感度の向上を図るが、フローセルを使用した手法では、流速によって調整するしかなく、露光時間はほとんど変えることができない。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、増感作用を持つ蛍光色素を使用することで、微生物のような非常に小さい細胞であっても容易に検出することができ、さらに、微生物を固定して測定する事ができるため、露光時間を極端に増加させることが可能となり、微生物細胞のように非常に小さい粒子であっても十分な検出感度をもった微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、フローイメージサイトメータの場合、当業者に良く知られた事実であるが、フローセル内を流れる細胞をラインセンサやCCDなどの受像素子を用いて瞬間的に測定するため、強い透過光源による明視野画像の取得は可能であるが、蛍光のように感度が低いものは画像を取得することが困難である。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、微生物を固定して画像を取得することにより、露光時間を調整し、感度を向上させることができる蛍光読取装置、微生物計数装置を提供することができる。
また、複数の画像の発光点から、各画像の輝度を読み取って蛍光発色特性を評価する手法において、ある画像で発光点が得られなかった場合に、発光点を照合して輝度を求めることが不可能となる。また、その場合に発光点を検出しようとして、検出感度を向上させると、今度はSNが低下して、発光点以外のノイズを多く含んでしまう画像が取得され、正確な検査が困難になる。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点が得られなかった場合に、各画像の発光点の座標を元に、発光点がみられなかった部分の輝度を読み取り、使用することで、正確な輝度情報を取得することができ、色彩的特性を求めることができる蛍光読取装置を提供することを目的としている。
また、発光点の輝度情報を求める手法において、発光点を特定する座標をもとに行う場合、その座標が形状の決まっているものであれば形状の重心を選択することも考えられるが、様々な発光点を比較した場合、発光点の形状が各波長の画像ごとに異なってくる場合もあり、そのようなときに発光点を特定する座標が、各波長で一致しなくなり、測定できなくなるという課題がある。
本発明は、そのような従来の課題を解決するものであり、発光点を特定する座標を、その発光点の中で発光体が最も集中する部位、すなわち最大輝度値を示す座標を元に各画像の輝度値を比較していくことで、波長が違う画像においても、受像素子の同じ画素ピクセルの値を比較することができ、画素ピクセルの感度特性の違いによるデータの差の影響を受けず、正確な色彩的特性のデータを求める事ができる。また、その発光点の最も特徴的な部分を直接見ることで、発光点の性質を最も反映させたデータを得ることができ、精度の高い蛍光読取装置を提供する事を目的としている。
また、発光点の数が多い場合、画像が異なると、発光点を照合し、一致させる工程の正確さが求められ、精度が低いと近傍の他の発光点を一致させてしまう場合があり、正確な測定ができなくなるという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点のオブジェクトが他の画像のものと一部でも重なった場合に同一であるとしてあらかじめ設定しておく事で、画像がずれた場合にも、各画像の発光点の数が異なる場合にも、同一の発光点の輝度を抽出することが容易になり、精度の高い蛍光読取装置を提供する事を目的としている。
また、発光点の輝度の情報と、座標の情報を関連付ける管理を行う必要があり、工程が複雑化するという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、各画像を重ねた時に発光点が重なる領域の、最大輝度値を抽出するように指定することで、工程が簡略化され、座標と輝度値の関連付けが容易になり、効率化された工程をもつ蛍光読取装置を提供する事を目的としている。
また、発光点を重ねた場合、発光点が多い画像では、複数の発光点が重なってしまい、条件によっては1対1で一致しない場合が起こりうる。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点が一致するオブジェクトが複数あった場合、最も近いものとするなど、一義的に決まるような条件をあらかじめ設定することで、各画像の発光点を取り間違うことなく正確に求めることができる蛍光読取装置を提供することを目的としている。
また、複数の画像の発光点から、各画像の輝度を読み取る微生物計数装置において、微生物の示す発光点は、画像中で非常に小さいため、発光点の座標が1、2ピクセルずれたことでも発光点の座標が一致しないことがおこるなど、発光点の照合に高い精度が求められている。また、微生物の場合、発光点の形状が一定ではなく、さらに微生物が複数つながっている場合もあり、その微生物を別々に検出する必要があるなど、複数の微生物が1つの発光点になったものの内部にある特定の位置と照合する必要があり、高い位置あわせ精度が求められている。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ある画像の発光点の座標を元に、他の画像でもその領域の発光点内にある座標の輝度値とするか、もしくは発光点が形成されていない場合でも、同一の座標の輝度値を読み取って使用することで、微生物がつながった場合でも、座標をもとに発光点の内部にある特定の微生物の輝度値を取得する事ができ、正確な輝度データを抽出することで、正確な色彩特性を求めることができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、微生物の発光点の輝度値を求めるとき、発光点の座標が形状の決まっているものであれば形状の重心を選択することも考えられるが、微生物細胞が複数繋がったものであると、形状も複雑になり、さらに染色試薬によって発光している細胞としていない細胞が混ざっている大きな発光点となる。微生物細胞においては、このような細胞塊は培養すれば1個の微生物として計数されるが、発光点によっては死菌が多いと、その塊が死菌としてカウントされ、生菌が混ざっていても検出されなくなってしまい、正確な生菌の検出が困難になる。
本発明は、そのような従来の課題を解決するものであり、発光点を特定する座標を、その発光点の中で発光体が最も集中する部位、すなわち最大輝度値を示す座標を元に各画像の輝度値を比較していくことで、細胞塊からなる発光点の中で、特に強く発光する部分のピクセルを微生物1個の値として考えることができるため、発光点においてその中に含まれる輝度値の特に強い部位を抽出する事で、それが微生物細胞を1つずつ計数することになり、塊の中の微生物1個の色彩特性から生菌および死菌を精度よく検出する事ができる微生物計数装置を提供する事を目的としている。
また、微生物の発光点の数が非常に多い場合、発光点を照合する工程の正確さが求められ、精度が低いと繋がっている隣の細胞を一致させてしまう場合があり、正確な測定ができなくなるという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、微生物の発光点のオブジェクトが他の画像のものと一部でも重なった場合に同一であるとしてあらかじめ設定しておく事で、隣り合う細胞であっても別々の物として検出できるよう、オブジェクトの重なったもの、すなわち言い換えれば、その微生物のオブジェクトからその1細胞の面積の範囲内にある座標が同一の細胞の示すものであり、そのオブジェクトの面積を越えてしまう範囲では、近傍であっても、隣接した細胞のものであるとして、一致させないことができ、美微生物1個の検出精度の高い微生物計数装置を提供する事を目的としている。
また、微生物の発光点上の輝度情報と、座標の情報を関連付ける管理を行う必要があり、精度が低いと、各画像でそれぞれ別の発光点として認識されてしまい、その波長のデータしか持たない発光点となってしまい、正確な輝度の算出ができない。また、それを防止するために確認事項を増やすこととなり、工程が複雑化するという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、各画像を重ねた時に、発光点が重なる領域の最大輝度値を抽出するように指定することで、各画像で発光点を別々に検出してしまうことを防止し、工程が簡略化され、座標と輝度値の関連付けが容易になり、効率化された工程をもつ微生物計数装置を提供する事を目的としている。
また、微生物の発光点を重ねた場合、発光点が多い画像では、複数の発光点が重なってしまい、条件によっては1対1で一致しない発光点が存在し、実際の数と計測した数値に誤差が生じるという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点が一致するオブジェクトが複数あった場合、最も近いものとするなど、一義的に決まるような条件をあらかじめ設定することで、各画像の発光点を取り間違うことなく正確に求めることができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
本発明の微生物計数方法は上記目的を達成するために、請求項1記載のとおり、微生物に対して、生死菌染色試薬にて蛍光染色を行い励起光源にて蛍光を発する特定の波長を照射しその照射により蛍光を発生させ発光させ、死菌染色試薬にて蛍光染色を行い励起光源にて蛍光を発する特定の波長を照射しその照射により蛍光を発生させ発光させ、それら発光点の生死菌染色試薬の輝度と死菌染色試薬の輝度を用いて発光点が生菌群であるか、もしくは死菌群であるかいずれかに分類し、それらの発光点のRGBの輝度値より演算されたXYZ表色系に基づいた色度を、生菌群であった場合には、生菌群に対して設定された色度しきい値と比較し、死菌群であった場合には、死菌群に対して設定された色度しきい値と比較して、それぞれ夾雑物を除外し、生菌と死菌をカウントする微生物計数方法としたものであり、正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
また、請求項2記載の微生物計数方法は、液体試料をメンブランフィルタでろ過し、前記メンブランフィルタ上に捕集された微生物に対する請求項1記載の微生物計数方法としたものであり、細胞および微生物を含んだ検体から正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
また、請求項3記載の微生物計数方法は、発光点からドット欠けの輝点を除去することを特徴とする請求項1または2記載の微生物計数方法としたものであり、誤差の要因となりうるドット欠けの輝点を削除することが可能となり、正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
また、請求項4記載の微生物計数方法は、発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであり、各画像上にある発光点の位置を合わせて発光点を照合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の微生物計数方法としたものであり、微生物のような非常に微小な発光点であっても発光点照合部において座標を合わせて照合することで正確に輝度を求められ、かつ異なる波長情報をもつ複数の画像を使用することで、正確性の高い色彩的特性をもとに検出することができる微生物計数方法を提供する事が可能になる。
また、発光点照合部において、画像の発光点を構成する画素のうち最大輝度値を示した座標と同位置の輝度値を他の画像より求めることを特徴としたものであり、複数の微生物が繋がったような発光点であっても、最大輝度値を示す部分を単独の微生物として認識し、この座標の輝度値を各画像から抽出する事で発光点の中の個別の細胞を検出でき、生菌を検出する精度の高い微生物計数装置を提供する事ができる。
また、請求項5記載の微生物計数装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の微生物計数方法を使用した微生物計数装置としたものであり、正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
本発明の微生物計数方法および微生物計数装置によれば、正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
また、オブジェクトの最大輝度値を読み取ることで、発光点がつながった場合でも別々に検出することが可能となり、計数精度を高めることができる。
本発明の請求項1記載の発明は、微生物に対して、生死菌染色試薬にて蛍光染色を行い励起光源にて蛍光を発する特定の波長を照射しその照射により蛍光を発生させ発光させ、死菌染色試薬にて蛍光染色を行い励起光源にて蛍光を発する特定の波長を照射しその照射により蛍光を発生させ発光させ、それら発光点の生死菌染色試薬の輝度と死菌染色試薬の輝度を用いて発光点が生菌群であるか、もしくは死菌群であるかいずれかに分類し、それらの発光点のRGBの輝度値より演算されたXYZ表色系に基づいた色度を、生菌群であった場合には、生菌群に対して設定された色度しきい値と比較し、死菌群であった場合には、死菌群に対して設定された色度しきい値と比較して、それぞれ夾雑物を除外し、生菌と死菌をカウントする微生物計数方法としたものであり、正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
また、請求項2記載の発明は、液体試料をメンブランフィルタでろ過し、前記メンブランフィルタ上に捕集された微生物に対する請求項1記載の微生物計数方法としたものであり、細胞および微生物を含んだ検体から正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
また、請求項3記載の発明は、発光点からドット欠けの輝点を除去することを特徴とする請求項1または2記載の微生物計数方法としたものであり、誤差の要因となりうるドット欠けの輝点を削除することが可能となり、正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
また、請求項4記載の発明は、発光点の画像が複数あってそれぞれ異なる波長を示すものであり、各画像上にある発光点の位置を合わせて発光点を照合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の微生物計数方法としたものであり、微生物のような非常に微小な発光点であっても発光点照合部において座標を合わせて照合することで正確に輝度を求められるという作用を有する。また異なる波長情報をもつ複数の画像を使用することで、カラー画像のような座標誤差の影響を含まない正確性の高い色彩的特性が得られ、判別精度が高まるという作用を有する。
また、発光点照合部において、画像の発光点を構成する画素のうち最大輝度値を示した座標と同位置の輝度値を他の画像より求めることを特徴としたものであり、複数の微生物が繋がったような発光点であっても、最大輝度値を示す部分を単独の微生物として認識し、個別に細胞を検出することができ、計数精度を高める作用を有する。
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の微生物計数方法を使用した微生物計数装置としたものであり、正確性を持たせた検出を行うことができ、微生物と夾雑物との判別が行え、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
(実施の形態1)
まず、微生物を含む試料を測定するために、固定部となるスライドグラスや、培養ディッシュ、マルチウェルプレート、またはろ過膜や、測定に適した形状を持つセルの観察面表面の表側、もしくは裏側の一方に微生物を固定する。固定は、ポリ−L−リジンのような試薬や、ゼラチンなどの粘着性、付着性をもった高分子材料を表面に薄く塗布し、微生物を含んだ試料を滴下し、表面に吸着させる。またメンブランフィルタのようなろ過膜の場合、上方から液体試料を吸引してろ過し、メンブランフィルタ表面に微生物を平面状に捕捉し、固定する。本発明において、最も好適に実施するものとしては、このようなろ過膜を使用することで、以下の染色や洗浄などの操作が簡便かつ微生物を流失することなく扱うことができるのでよい。また、メンブランフィルタは、薄く、小さいため、そのままでは取り扱いが容易でない。そのため、専用の支持台、吸引口付きのホルダーを使用したり、もしくは膜に保持部を結合するか、一体化させたデバイスとすることで容易に膜を取り扱うことができる。
また本発明において微生物を含有するか含有する可能性のある検体は液状検体であるが、検査対象が飲料水などの液状サンプルの場合は、それ自体が液状検体となる。検査対象が野菜や肉をはじめとする食材などの固体サンプルの場合は、それをホモジナイズして液状検体としたり、その表面から綿棒などを用いて細胞および微生物を採取し、これを生理食塩水や燐酸緩衝液などに遊離させて液状検体としたりする。また、まな板などの調理器具などが検査対象となる場合、その表面から綿棒などを用いて微生物を採取し、これを生理食塩水などに遊離させて液状検体とする。こうした液状検体をメンブランフィルタで吸引および加圧濾過、また場合によっては超音波を利用して加振ろ過することでメンブランフィルタ上に細胞および微生物を捕捉することができる。
また、固定部としては、メンブランフィルタ以外にも、プレパラート表面や、可視光の透過性が高く、平面性の高いプレートの表面や、プレート間の間隙に固定し、もしくは粘着性を持ったシート状、ディスク状のチップデバイス表面、平板培地表面、もしくはシャーレやディッシュ、マルチウェルプレートなどの表面、電極材料や吸着材料の表面などに行う。このとき、固定は、遠心力や、静電気力、誘電泳動力、疎水力などの物理吸着力以外にも、ゼラチンなどの接着成分によるものや、抗原・抗体反応、リガンド・レセプターの反応などの生物的な結合力を用いることができる。
また、蛍光染色試薬の浸透を調整するために、必要に応じて、適当な濃度の2価金属錯体や、カチオン性界面活性剤を混合した水溶液などを液体試料に混合させるか、もしくは細胞および微生物が固定部の上方から接触、またはろ過するか、または下方から接触させるなどの手法により、細胞および微生物の細胞膜透過性を一定に保たせることができる。
なお、2価金属錯体としては、エチレンジアミン四酢酸などを0.5から100mM程度の濃度範囲にて使用する。
なお、カチオン性界面活性剤としては、Tween20やTween60、Tween80、TritonX−100などの細胞に対して侵襲性が低いものが使用でき、これらを0.01から1%程度の濃度範囲にて使用する。
次に蛍光染色手段として、乾燥防止成分を混合し、生死菌染色試薬または死菌染色試薬のいずれか、または両方を一定濃度含む染色試薬を固定表面に一定量滴下する。
蛍光色素は、核酸結合性の構造をもつが好ましく、生死菌染色試薬として使用するものは、紫外励起で青色蛍光を発するものであれば、1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドール、青色励起で緑色蛍光または黄緑色、黄色蛍光を発するもので、例えばアクリジンオレンジ、オキサゾールイエロー、チアゾールオレンジや、SYTO9、SYTO13、SYTO16、SYTO21、SYTO24、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR Goldなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素系化合物が使用できる。また、用途によってはグラム陽性菌を染色し、グラム陰性菌は染色されないヨウ化ヘキシジウムなどの生死菌染色試薬を使用することも有効である。
また、死菌染色試薬としては、緑色蛍光を発するもので、例えばアクリジン2量体、チアゾールオレンジ2量体、オキサゾールイエロー2量体などのモノメチン架橋非対称シアニン色素2量体や、SYTOX Green、TO−PRO−1などのモノメチン架橋非対称シアニン色素系化合物、赤色蛍光を発するものであれば、ヨウ化プロピジウム、臭化ヘキシジウム、臭化エチジウム、LDS−751、SYTOX Orangeなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素などが使用できる。
なお、これらの蛍光色素は、細胞および微生物を含む試料に対して、あらかじめ0.1から100μMとなるようを混合しておき、同時に作用させるか、もしくは別々に、時間を置かず、もしくは適当な時間間隔を開けて所定の濃度で作用させることとする。
なお、メンブランフィルタ上に捕捉した細胞および微生物を含む物質表面が、測定中に乾燥し、発光強度が変化することを防ぐための手段として、染色試薬には10から60%w/vのグリセロールや、10から90%v/vのD(−)−マンニトールやD(−)−ソルビトールなどの糖アルコール類のいずれかを1種類以上混合させておく。
なお、乾燥固化して保存する目的として、ポリビニルアルコールを10から80%程度の適当な濃度にて混合、もしくは後から表面を覆うことで、蛍光発光を比較的安定に保存することができる。
なお、固定部として適しているメンブランフィルタとしては、例えば、孔径が0.2μm〜1μmのポリカーボネート製など公知のものを用いることができる。
また、画像検出には、蛍光色素に対して特定の波長を照射するための励起光源、分光フィルタ、励起光を直径3mm程度に集光する為の集光レンズ、励起光の成分を除去する為のハイパスフィルタ、試料から発せられる蛍光から特定の波長成分を取り出すための受光フィルタ、拡大する為のレンズユニット、蛍光像を画像の電気信号に変換するためのCCDやCMOSなどの受像素子により構成される。
蛍光染色試薬として使用する蛍光色素の主な発光波長であるが、例えば、青色励起の場合には波長が470nmから510nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が510nmから540nm付近の蛍光を発する。緑色励起の場合には、510nmから550nm付近の波長成分を含む励起光を照射し、波長が560から620nm付近の蛍光を発する。オレンジ色励起の場合には、波長が540nmから610nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が560nmから630nm付近の蛍光を発する。
そのため、検出手段である励起光源として、発光ダイオードを使用する場合、青色のものでは、好ましくは480nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるもの、黄色からオレンジ色のものでは、好ましくは560nm付近の波長を発することができるものを使用する。
なお、発光ダイオードを使用する場合、励起光の成分が広帯域に渡る場合が多く、蛍光画像のバックグラウンドの増加の要因となりうるため、適切な干渉フィルタを使用して、特定の波長成分を切り出して使用する。
また、励起光源としてレーザーを用いる場合には、青色のものでは、好ましくは475nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるものを使用する。
また、励起光源としてハロゲンランプや水銀ランプを使用する場合には、適当な分光フィルタとして、染色試薬の励起波長に合わせて最適な干渉フィルタを使用することができる。また、0.1から10nmの波長分解能を有する反射型や透過型の回折格子により、最適な角度を与え、任意の波長を含む励起光を取り出すことができる。
集光レンズは、蛍光染色された細胞および微生物が展開されているメンブレンフィルタに対し、照射範囲が、例えば直径が3mm程度の一定面積となるよう励起光を照射することができる。さらに光を散乱させるための拡散板などを上流側に組み合わせることでより均一な励起光を照射することもできる。
サンプルに照射された励起光により発生した蛍光は、ハイパスフィルタを通過することで、色彩的特性は損なわれず、効果的に励起光由来の光成分がカットされる。
当該蛍光はレンズユニットを通し、受光部として単板カラーCCDや、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色を取得できるRGB3種類の蛍光フィルタを含む3CCDなどの電荷結合素子ユニットを用いて露光時間0.1秒から10秒程度の露光時間でRGB3色からなる画像撮影することにより取得される。
取得する色の輝度情報は、蛍光染色試薬である蛍光色素の蛍光波長範囲であれば、使用可能である。例えばシアニン色素であるSYBR Greenの場合、極大蛍光波長は521nmであるが、蛍光スペクトルは620nm付近まで広がっており、生死菌染色試薬として使用した場合、530nm付近の緑色(G)を画像(a)、610nm付近の赤色(R)を画像(b)として取得することができ、(a)、(b)を使用して微生物と夾雑物との判別が行える。
また、単板モノクロCCDやCMOSを使用した場合、適切な受光フィルタを切り替えて使用することで、必要な波長の輝度情報を含む画像を取得することができる。このとき、別の利点として、同一のCCDを使用することで、異なるCCDによる感度特性の差の影響は全く受けずに測定を行うことが可能となり、感度補正を行う工程を省略することができる。
これらの操作により取得された複数の蛍光画像は、演算部であるマイコンや外部端末上のプログラムによって処理される。
演算部には、画像からドット欠けなどの輝点を除去するための輝点除去部と、画像から発光点を抽出するための発光点抽出部、複数の画像の発光点を照合し、一致させる発光点照合部、照合されて数値が結合されたデータを出力する出力部、蛍光発光を評価する蛍光評価部、染色試薬の輝度より微生物の生死を判別する生死判断部、そして色彩的特性を表す変数によって発光点が微生物もしくは夾雑物であることを判別する微生物判断部、そして測定した画像の有効面積を算出する有効エリア算出部により構成される。
まず、輝点除去部であるが、これはCCDなどの受像素子に見られる画素ピクセルの感度ムラや、感度消失した部分によるドット欠けと呼ばれる現象があるが、このドット欠けの輝点が画像上に現れると、微生物の発光点と間違える恐れがあるか、または微生物の発光点を取得できない原因となり、誤差の要因となりうる。そのためこのような輝点は除去する必要があるが、輝点除去用の画像として、光源を照射しない暗視野画像を、露光時間をサンプル測定と同程度かもしくは長めに設定して取得し、輝点のみが写っている画像を得る。そして発光点を写した各画像から輝点画像を減算することにより、輝点のみを削除することが可能となる。そのようにして輝点を除去した画像を以下において使用する。
発光点抽出部について、画像中に含まれる発光点のうち、設定された面積、輝度の範囲に該当するものを抽出する。例えば、面積を2から15、輝度を15から255とすると、面積が16以上であるような大きい夾雑物はあらかじめカウントから除外することができ、また輝度が14以下のバックグラウンドノイズ(暗ノイズ)を除去することができる。このしきい値は、レンズの倍率や、励起光源の強度、露光時間などにより最適な値が変化するため、微生物を最適に抽出できる値は、あらかじめ検証して確認することが必用である。
なお、最大輝度を示した座標の(x、y)の値、RGBの値を含む場合、それぞれの輝度も数値として同時に抽出される。この処理は、汎用的な画像処理ソフトウェアであるImage Pro Plusなどを使用して実行できる。また、同様の処理を組み込んだプログラムとすることもできる。
次に発光点照合部によって、抽出された発光点の数値データと、異なる輝度情報を含む同位置の発光点の数値データとを、座標をもとに比較、照合され、結合される。
このとき、異なる輝度情報を含む画像とは、異なる受光フィルタで取得された画像のことを指すが、画像間では受光フィルタの特性や、機械的誤差に起因する座標ズレがわずかに生じる為、そのまま画像のピクセル座標を照合した場合、一致しないことがある。そこで、一方の座標に画像ズレを補正する座標補正値を補って照合させるのだが、特に機械的誤差については温湿度などの使用環境の影響により、使用するごとに座標ズレの値が変化してしまう場合がある。そのため、座標補正値を測定毎に更新して使用することで、測定ごとに最適な値を使用することが有効である。
座標を補正するための補正値は、あらかじめ取得した位置補正用画像から補正値を読み取ることにより取得する。位置補正用画像は、取得する全ての波長域において写りこむ蛍光体を使用して撮像する。取得する波長が緑色と赤色であれば、長波長側の赤色の蛍光粒子が使用でき、同程度の発光強度が得られるように励起光源の強度と露光時間を調節して行う。また、蛍光体により補正値を自動で算出させるような処理の場合には、個数が多くなると演算する数も多くなり、時間がかかってしまうため、画面あたり5から50個の範囲内であれば、1から数分程度と比較的短時間で求めることができる。このような濃度になるように調整し、確認された蛍光粒子の懸濁液を一定量メンブランフィルタにろ過したり、固定部と反応させることにより、位置補正用画像を取得するための位置補正用サンプルを作成する。また、これを校正用チップとして長期的に繰返し使用したい場合には、ビーズを高分子などで固定するか、金属蒸着で金属薄膜を覆ってしまうことにより固定しておくことで繰返し使用しても外れずに位置が一定になる。また、校正用サンプルとしては、その他にも、蛍光性の樹脂をマスキングして微小パターンやスポットを形成させるなどにより作成することも有効である。
このようにして作成された校正用チップは、装置に設置されて実際の計測と同じ動きを与えて画像を撮像する。これにより、モーターの位置制御誤差やバックラッシュなどの機械的誤差、フィルタやレンズの製造誤差、装置を組み上げる際の製造誤差に由来する光軸のズレなどで発生する画像の座標ズレを再現した画像を取得し、その補正値を求めて実際の計測で使用することで、位置精度が高められる。
画像中に見られる微生物の発光点を示すオブジェクトは、拡大レンズ系の合計が200から300倍程度のときは、オブジェクトの面積は受像素子上で1から20ピクセル程度になる。これは微生物の細胞1個の直径が0.6から5μm程度であるときに撮像された値である。一方、微生物細胞が2から複数個繋がっていた場合、発光点のオブジェクトの面積は大きくなり、20ピクセルを越えるものも見られる。このような大きな発光点のオブジェクトは、共焦点光学系などの特殊な光学系を使用しない限りは、殆どの場合一つのオブジェクトとして検出され、二つのオブジェクトを分離して検出することが難しい。このとき問題となるのは、二つのオブジェクトが異なる発光特性をもつ場合に、各画像を比較して発光点を照合して輝度を結合したときに、同一のオブジェクトとして検出される、隣り合った微生物の発光輝度を誤って結合してしまうと、本来の微生物の発光特性とは全く異なる不正確なデータが形成されてしまうという恐れがある。そのような事例を防止するためには、発光点の座標をオブジェクトの最大輝度値を示す座標とし、画像間の発光点を照合するときは、その座標から非常に近傍に限定された誤差範囲エリア内にあるもう一方の画像の座標をもつ発光点とのみ結合されるようにすることが必要である。
そのため、同一の発光点のオブジェクトとして抽出されているものであっても、照合した場合に一致しないことがありうる。そのとき結合する輝度データが存在しなくなってしまうことを防止するために、照合するもう一方の画像に一致する発光点が検出されなかった場合に、もう一方の画像中の同じ座標のピクセルの輝度値を抽出し、この値を結合させることが有効である。これにより、発光点が一方の画像でしか抽出されなかった場合でも、輝度情報を欠如させることなく、精度よく照合データを作成することができることになる。
また、最終菌数の検出精度にも関連するが、生菌と死菌が繋がって存在している場合、上記のような工程を持たせなければ、オブジェクトを死菌として検出してしまう可能性があるが、これにより生菌と死菌が繋がったものとして検出することができるようになり、培養法などとの相関性が向上することに繋がる。
照合されて結合されたデータは、出力部によりデータファイルとして出力される。この時点でデータファイルとして保存することで、この後の工程を一度にまとめて処理することも可能となるため、作業が効率化される。
発光点の輝度情報をもつデータファイルに対して、生死判断部によって発光点が生菌群であるか、もしくは死菌群であるかいずれかに分類される。このとき、生菌群、もしくは死菌群であることを示すパラメータを与えることで、以降の処理が行いやすくなり、処理を効率化することができる。尚、パラメータとは生菌群であれば1、死菌群であれば2であるというように、発光点のデータの変数を与えることにより行うこととする。
生菌群または死菌群であるかを判断する為には、以下のようにグラフを使用することが望ましい。まず、発光点のデータのうち、生死菌染色試薬の輝度と、死菌染色試薬の輝度を用いて、この二つの値よりドットプロットを作成し、表示させる。これは、横軸に生死菌染色試薬の輝度値、縦軸に死菌染色試薬の輝度値をとり、検出された発光点毎にプロットしていく。尚、ドットプロットの表示は、画像処理を行うプログラムのインターフェース上に行うことが良く、発光点のデータファイルを読み出した場合に表示させるようにするとよい。
次に、表示されたドットプロットに対して、カーソルを使用して境界線を作成する。境界線は、1本ないし複数本の直線や曲線、多角線などで自由に作成することができるものとし、プロットを見ながら、プロットの集団を分類しやすいように、作成する。なお、境界線の作成工程は、簡単に行えるようにグリッドなどを使用したり、輪郭やプロットにトラップさせるような機能を持たせると、作成が容易であり、かつ正確に行うことができる。
また、多角線の場合には、線が交差しないように、一方の方向のみに作成可能とすると確実である。
作成した境界線は、取り消すことや、保存することができるようにし、繰り返し使用することができるようにする。
次に、作成した境界線をもとに、境界線に相当するしきい値を算出する。算出されたしきい値に対して、グラフの上・左側にあるものが死菌群、反対が生菌群として分類し、パラメータを与えて処理する。
生菌群、死菌群が判断された後、微生物判断部によって夾雑物を分離除外する場合は、以下の処理を行う。微生物と夾雑物の判別は、色彩的特性の値を算出することによってなされる。
色彩的特性とは、RGBの輝度値より演算されて与えられた色度、色相角などの色彩的特長を示す値のことである。色彩的特長を示す表色系は、Lab表色系や、LCh表色系、XYZ表色系などの表色系が使用される。ここではXYZ表色系に基づいた色度を用いる。取得される輝度はRGBの色空間のものであるため、このRGBそれぞれの輝度値から、XYZ表色系への変換が行われる。
(数式1)
X=0.3933×R/255+0.3651×G/255+0.1903×B/255
Y=0.2123×R/255+0.7010×G/255+0.0858×B/255
Z=0.0182×R/255+0.1117×G/255+0.9570×B/255
さらに、
x=X/(X+Y+Z)
y=Y/(X+Y+Z)
式中のR、G、BはそれぞれR輝度値、G輝度値、B輝度値であることを示す。これにより細胞および微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が算出される。
発光点毎に算出された色度の値であるが、発光点はそれぞれ生菌群、死菌群であるかを判別するためのパラメータが与えられており、生菌群であった場合には、生菌群に対して設定された色度しきい値と比較し、死菌群であった場合には、死菌群に対して設定された色度しきい値と比較して、それぞれに夾雑物が除外される。夾雑物が除外され、生菌、死菌として判断されたものは、積算され、カウントされる。
次に、このカウント値に対して、実際に使用した検体に含まれる単位量あたり(たとえば1mLや1グラムなど)の菌数の総数を算出する。そのためには、測定した画像のうち、画像処理して使用した有効エリア面積を有効エリア算出部にて求める。測定に使用した有効エリアは、画像の補正値を変数とした関数で求められる。
画像の縦の長さをP、横の長さをQ、縦方向の座標補正値をα、横方向の座標補正値をβとすると、1画面あたりの有効エリア画素数Mは数式2のように表される。
(数式2)
M =(P−α)×(Q−β)
また、有効エリア面積は、レンズ系の倍率などから、画素あたりの面積を求め、画素あたりの面積をsとするとし、測定視野数をNとして、1画面あたりの有効エリア面積Sと全有効面積は、
(数式3)
S = Ms
全有効面積:S×N
となる。
得られた面積に対して、微生物の固定部の固定部分の表面積(例えば、メンブランフィルタの全面積)の値を割り返す。これにより得られた数値を、カウント菌数に掛け合わせることで、最終的な、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができる。
以上の手法を用いて、試料中や細胞培養液に含まれていた微生物の生死を判別し夾雑物と分離して、数を計量することができるのである。
図1は、本発明を好適に実施するための微生物計数装置1の一態様を示す概念図である。この微生物計数装置1は、検出手段として励起光源2、干渉フィルタ3、集光レンズ4、ハイパスフィルタ5、受光フィルタ6、レンズユニット7、受光素子8を含む。励起光源2から発せられた励起光から目的の波長を取り出すために干渉フィルタ3で分光する。分光された励起光は集光レンズ4を経て検査台9にセットされたメンブランフィルタ10(別途の操作によりメンブランフィルタ10上に核酸結合性の蛍光色素で染色された微生物を捕捉してあるもの)上に集光される。励起光源2から発せられた励起光は、集光レンズ4によって集光されるが、その際、集光レンズ4によって励起光を照射する範囲は直径3mm程度の微小な一定面積に集光される。励起光により発する蛍光は、励起光成分を除去するためにハイパスフィルタ5を経て、受光フィルタ6、レンズユニット7により拡大され、受像素子であるCCDユニット11に到達し、電気信号化される。これにより得られた信号は画像化され、演算部12によって画像処理される。
図2は、演算部12における演算工程フローを示した図である。輝点除去部13、発光点抽出部14、発光点照合部15、出力部16、蛍光評価部17、そして有効エリア算出部18から構成されている。
まず座標補正用画像を読み込んで座標補正値を算出する。次にしきい値などの変数を入力し、輝点除去部13によって輝点を除去した画像を作成する。続いて、発光点抽出部14により画像中の発光点を特定し、数値データを抽出する。画像によっては座標補正値により座標を補正する。異なる輝度情報を含む発光点のデータは、発光点照合部15によって照合し、結合される。これにより集合された数値データは、出力部16によってデータファイルに出力され、保存される。発光点の数値データは蛍光評価部17によって蛍光の色情報の解析が行われる。蛍光評価部17は生死判断部19と微生物判断部20から構成される。生死判断部19はデータファイルに対して生菌群または死菌群であるかを判別し、発光点毎に生菌もしくは死菌のフラグを立てる。微生物判断部20により、フラグを検出して生菌群か死菌群かを判断した後、各群ごとに設定した微生物もしくは夾雑物であるかをしきい値と照合して判別する。また有効エリア算出部18では、取得した画像から有効エリアを求め、全面積に対して割り返すことで最終の菌数を算出、出力する。これらは画像処理をプログラミングされたマイコン等であり、外部接続した端末などによって操作されるソフトウェアと通信して使用されるものも該当する。
図3(a)は、微生物判断部20の詳細を示す。E.coliを含む水検体をメンブレンフィルタ10にろ過し、生死細胞用蛍光色素であるSYTO9と、死細胞用蛍光色素であるヨウ化プロピジウムを用いて染色したものを、単板モノクロCCDと、青色励起光照射におけるG輝度画像とR輝度画像を取得したデータの一例を示す表である。このとき、B輝度画像は、励起光の波長と重なるために取得できず、数値を代入して使用している。この変数は、最適な値に調整することができる。
図3(b)に示される工程は、RGBの輝度から、XYZ表色系の(x、y)の値への変換を示す。この工程はまず、RGBの輝度を測定する手段によって取得されたRGBそれぞれの輝度値から、リニアRGBへの変換、ガンマ補正がなされる。これにさらに視覚的特性を重み付けし、微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が求められる。このとき、例えば光学フィルタによって青色(B)をカットし、緑色(G)および赤色(R)のみが取得されるような条件の場合には、青色の感度は得られないものとして、あらかじめ実験によって最適化された固定値を代入して使用することや、またはRまたはGの輝度値による関数を設定して使用することもできる。これにより得られた色度の値に対してしきい値と比較することで、微生物か夾雑物であるかを判別する。なお、このときのしきい値は実験により決定する。
(実施例1)
E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)の中の菌数を測定する。これらの液体試料を、孔径が0.45μm、直径9mmの黒色メンブランフィルタに表面を金属蒸着したものの上方からピペットにて滴下し、吸引ろ過した。メンブランフィルタは、そのままでは表面に触れてしまう恐れがあり、扱いにくいため、周囲を樹脂枠で覆い、一体化させたものを使用した。吸引ろ過圧は、あまり高すぎるとろ過できず、低すぎると微生物へのダメージとなってしまうばかりか、メンブランフィルタが破損することがあるため、100から400Torr付近のポンプ圧に設定して行った。メンブランフィルタ上にろ過するとき、計数しやすさや、逆算する精度の問題から、微生物などの発光物はできるだけ均一に分散させる必要がある。そのため、メンブランフィルタのろ過性能を均一にするために、メンブランフィルタ下方の吸引口にはろ紙などを挟み、吸引圧を拡散して、メンブラン全体に均一にかかるようにして行った。また、それとは別に、メンブランフィルタのポアの通過抵抗を減少させるため、液体試料をろ過する前に、少量の界面活性剤希釈液(Tween20 0.1%)をろ過した。液体試料は、E.coli菌液の場合は0.1mL、水道水の場合は20mLろ過した。
続いてメンブランフィルタ上に捕集された微生物に対して、蛍光染色を行った。染色試薬は、生死菌染色試薬であるSYTO24と、死菌染色試薬であるSYTOX Orange(いずれも商品名)を使用した。これらの染色試薬は、空気中で光を吸収して分解しやすいため、ジメチルスルホキシドにて500μMに調整し、少量ずつマイクロチューブに分注してストック液とし、保管した。保管は、マイクロチューブ内に窒素を封入し、マイナス20度のフリーザーにて暗所保管した。必要本数を解凍し、それぞれの試薬10μLに対して希釈液を全量が1mLになるように加え、混合した。この希釈液は、試薬の溶解性と、保存性、細胞への浸透性、乾燥防止性、低自家蛍光性である必要があるが、このような条件を満たすものとして、D−ソルビトールを蒸留水で50%程度に希釈しTris−HClと少量の界面活性剤(Tween20)を混合したものを使用した。
終濃度5μMに調整した試薬は、1種類ずつ微生物が捕集されたメンブランフィルタ上方から滴下し、常温にて数分間染色し、余剰の試薬は吸引ろ過にて除去した。染色順序は限定されず、生死菌染色試薬、死菌染色試薬いずれから行っても同様に染色することができる。
染色したのち、余剰試薬を吸引によってできる限り除去した後、メンブランフィルタを微生物計数装置に設置し、計測を行った。
微生物計数装置1は、図1に記載されたものであるが、今回、青色LED(約470nm)と、黄色LED(約560nm)を使用し、受光フィルタ6として緑色は530から550nmに透過性をもつものと、赤色は590から610nmに透過性を持つものを使用した。なお、光源には、光束を撮像範囲に照射しやすいよう集光レンズ4を設けている。
また、メンブランフィルタ10の設置ステージには着脱可能な機構を設け、さらにステージ部材がメンブランフィルタ10を裏側から平面かつピントが合う高さに固定できるようにし、ピント調節を不要とした。メンブランフィルタ10を固定したステージは、モーター駆動のXYステージにより移動可能であり、プログラムによってあらかじめ指定した位置への移動を連続的に行うことができるものとした。
メンブランフィルタ10表面の蛍光画像の取得は、メンブランフィルタ10の上方に設置された赤外カットフィルタを施した単板モノクロCCDカメラと、拡大レンズ系にて行った。画像を取得する際には、励起光となるLEDが点灯して照射され、受光フィルタ6を切り替えて目的の波長の画像を取得できるものとし、これらのカメラ、光源、フィルタ、およびステージは、動作をプログラムされたマイコンを使用して制御されるものとした。
画像の取得は、同一の位置で(a)青色励起,緑色蛍光、(b)青色励起、赤色蛍光、(c)黄色励起、赤色蛍光、の3種類の画像を、露光時間が0.1から3秒程度で連続的に取得し、ステージによって次の撮像領域に移動し、同様に画像を取得するものとした。また、測定の最初には、LEDを点灯させずに画像を取得し、ドット欠けのみを含む画像を取得しておいた。
画像を全て取得した後、演算部によりドット欠けの除去、発光点の抽出、照合が行われ、発光点ごとに輝度値を求めたデータを作成した。
図4の(a)はE.coliと水道水中にみられる発光点のプロットを生死菌染色試薬であるSYTO24の蛍光波長である青励起、緑蛍光での輝度と、死菌染色試薬であるSYTOX Orangeの蛍光波長である黄色励起、赤蛍光での輝度を2軸におき、ドットプロットを作成したものである。
このとき、任意に設定できる境界線として、cがy=100、dがx=yのような直線を設定し、cより小さく、かつdより小さい領域を生菌群、それ以外の領域を死菌群として指定し、該当する領域の発光点に対してフラグを立て、発光点の分類を行った。
次に、生菌群として分類された発光点の集団を、XYZ表色系における色度データのうち、xとyの値をグラフ上にプロットした(図4の(b))。このとき、E.coli生菌がx<0.37、y>0.54の領域に分布していたのに対し、水道水中の発光物はxが0.3から0.6、yが0.3から0.6と幅広い領域に分布していることが確認された。このとき、しきい値は、E.coliの値を参考に設定し、xはe=0.37、yはf=0.54として、x<e、y>fの領域に分類された集団を微生物として判別し、水道水中に含まれる発光物のような夾雑物を判別した。その結果、検出された発光点のうち夾雑物の大半を分離することができ、水道水では図4の(a)のとおり生死判断部によって100個の点から32個の点が抽出されたが、さらに図4の(b)によってそのうちの8個が微生物の生菌であると判別することができた。
このしきい値は一例であるが、染色に使用する蛍光色素の種類や、濃度、希釈する溶液の極性などによっても変化することから、使用が想定される環境に最も適した値をあらかじめ設定しておくことが好ましい。
なお、最終菌数の妥当性については、培養困難である菌も存在する為、適切な培養方法、培地の種類を複数組み合わせて使用し、評価することが望ましい。
(実施例2)
実施例の1に示された微生物計数装置1において、E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)をそれぞれ一定量メンブレンフィルタ10にろ過し、値を測定した。
図5はE.coliにおいて、生死判断部における生菌と死菌を判別するしきい値の設定結果である。照合されて結合された発光点の輝度情報のうち、第1と第2の染色試薬の輝度をx軸とy軸にとり、データを対応させたドットプロット21をプログラムのウィンドウ上に表示し、さらにこのドットプロット21上において、カーソル22を操作してプロットを分離するしきい値となる多角線の始点23、頂点a24、頂点b25、終点26を設定した。設定した多角線27は、プログラム上で演算され、しきい値が求められた。判別を行い、計数した結果、生菌群120個、死菌群80個として簡便に検出することができた。
(実施例3)
実施例1に示された微生物計数装置1において、E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)をそれぞれ一定量メンブレンフィルタ10にろ過し、値を測定した。
図6は、生死判断手段における生菌と死菌を判別するしきい値の設定方法の設定結果である。表示したドットプロット21に対して、カーソル22を操作して、選択したい領域の多角形の始点28と頂点29から32を連続的に設定し、頂点の最後は、始点上で選択することで一致させるように多角形を設定した。設定された多角形33に対して、しきい値が自動的に算出され、領域をチェックボックスで死菌として指定したところ、死菌数は78個として検出できた。
(実施例4)
実施例1に示された微生物計数装置1において、E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)をそれぞれ一定量メンブレンフィルタ10にろ過し、値を測定した。
図7は、生死判断部19における生菌と死菌を判別するしきい値の設定結果である。表示したドットプロット21に対して、カーソル22を操作して、選択したい領域の楕円形の中心34と長軸35または短軸36と、長軸の長さ37、長軸の角度38を設定した。楕円形39、40はそれぞれ死菌、損傷菌として設定したところ、死菌数が72個、損傷菌が9個であると検出された。
この集団ごとに楕円の中心座標と長軸の角度、長さの数値を抽出し、微生物の集団の特性を示す特徴パラメータとして集団を定義できる。それぞれの値は、様々な菌種や、活性状態のものを示すものであり、比較することによって、例えば同じ死菌であっても、損傷度合いや、損傷しやすさを比較することが可能となる。図7の場合、楕円の長軸の傾きが大きく、死菌染色試薬で強く染色された楕円形39の領域の方が損傷度が高いものであると推定することができた。
(実施例5)
実施例1に示された微生物計数装置1において、E.coliを含む菌液と、水道水(塩素除去済み)をそれぞれ一定量メンブレンフィルタ10にろ過し、値を測定した。
図8は、生死判断部19における生菌と死菌を判別するしきい値の設定結果である。表示したドットプロット21に対して、あらかじめ縦横をN=5、M=5、合計25領域として輝度が51ずつになるようあらかじめ各領域に番地を設け、それぞれに番号(A〜Y)を定めた。次に、プロット結果から、死菌領域をA、F、K、Pとして設定して、領域内の菌数を算出した。その菌数は97個として検出された。