JP4761617B2 - 窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法、並びにそれを用いた電子用部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化アルミニウム焼結体に係り、特に強度、破壊靭性に優れた窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法、並びにそれを用いた電子用部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス材料は、金属材料と比較して、強度、耐熱性、耐食性、耐磨耗性、軽量性などの諸特性に優れているため、半導体基板、電子機器材料、エンジン用部材、高速切削工具用材料、ノズル、ベアリングなど、金属材料の及ばない苛酷な温度、応力、磨耗条件下で使用される機械部品、機能部品、横造材として広く利用されている。
【0003】
このうち半導体基板等へ用いる基板材料としては、酸化ベリリウム(BeO)が用いられてきた。酸化ベリリウムは、熱伝導率が272W/m・K(300K)と非常に高いため、高集積化により発熱が起こる基板材料には適していた。
【0004】
しかしながら、酸化ベリリウムは吸い込むと猛毒であるため、製造に危険が伴い、また製品化された後も、廃棄の点で問題があった。近年では、このような酸化ベリリウムに代わって、毒性がなく、取扱に優れ、安全に廃棄できるセラミックス材料が用いられるようになってきている。
【0005】
これらセラミックス材料の中でも、特に窒化アルミニウム(AlN)焼結体は高熱伝導性を有する絶縁体であり、シリコン(Si)に近い熱膨張係数を有することから、酸化ベリリウムに代わり高集積化した半導体装置の放熱板や基板として、その用途を拡大している。
【0006】
窒化アルミニウム焼結体は一般的に下記の製造方法によって量産されている。すなわち、窒化アルミニウム原料粉末に焼結助剤と、有機バインダと、必要に応じて各種添加剤や溶媒、分散剤とを添加して原料混合粉末を調製し、得られた原料混合粉末をドクターブレード法や泥漿鋳込み法によって成形し、薄板状ないしシート状の成形体としたり、原料混合体をプレス成形して薄板状ないし大型の成形体を形成する。
【0007】
得られた成形体は、空気または窒素ガス雰囲気において加熱され脱脂処理され、有機バインダとして使用された炭化水素成分等が成形体から排除脱脂される。
そして脱脂された成形体は窒素ガス雰囲気等で高温度に加熱され緻密化焼結されて窒化アルミニウム焼結体が形成される。
【0008】
上記製造方法において、原料窒化アルミニウム粉末として平均粒径が0.5μm以下程度の超微細な原料粉末を使用する場合は、窒化アルミニウム粉末単独でもかなりの緻密な焼結体が得られる。しかしながら、原料粉末表面等に付着した多量の酸素等の不純物が焼結時に窒化アルミニウム結晶格子中に固溶したり、格子振動の伝播を妨げるAl−O−N化合物等の複合酸化物を生成する結果、焼結助剤を使用しない窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率は比較的に低かった。
【0009】
一方、原料粉末として平均粒径1μm以上の窒化アルミニウム粉末を使用する場合は、その原料粉末単独では焼結性が良好でないため、ホットプレス法以外には助剤無添加では緻密な焼結体を得ることが困難であり、量産性が低い欠点があった。そこで常圧焼結法によって効率的に焼結体を製造しようとする場合には、焼結体の緻密化および窒化アルミニウム原料粉末中の不純物酸素が窒化アルミニウム結晶格子内へ固溶することを防止するために、焼結助剤として、酸化イットリウム(Y2O3)などの希土類酸化物や酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物等を添加することが一般に行なわれている。
【0010】
これらの焼結助剤は、窒化アルミニウム原料粉末に含まれる不純物酸素やAl2O3と反応して液相を形成し、焼結体の緻密化を達成するとともに、この不純物酸素を粒界相として固定し、高熱伝導率化も達成するものと考えられている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱伝導率に優れる窒化アルミニウム焼結体を作製しようとする場合、窒化アルミニウム粒子の粒径を大きくしなければならず、強度や破壊靱性値等が低下することとなった。これにより、例えば窒化アルミニウム焼結体で形成した半導体基板を実装ボードに装着する際、僅かな曲げ応力や取扱時に作用する衝撃カによって半導体基板が損傷し、半導体回路基板の製造歩留りが大幅に低下してしまう問題が発生していた。
【0012】
上記問題点を解決するために、粒径が均一で細かい窒化アルミニウム原料粉末を使用して可及的に微細な結晶組織を有する窒化アルミニウム焼結体を形成したり、各種添加物を添加して焼結性を高める工夫も続行されている。しかしながら、熱伝導率、破壊靱性値および強度のそれぞれを満たす窒化アルミニウム焼結体は得られていない。
【0013】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、窒化アルミニウム焼結体の結晶粒の大きさおよび微構造を適正に制御し、焼結体組織を微細化するとともに、窒化アルミニウム焼結体中の粒界相成分を適正に制御し、粒界相と結晶粒との結合強化を図って焼結体の強度ならびに破壊靭性値の向上を図り、かつ熱伝導率にも優れた窒化アルミニウム焼結体を提供することを目的としている。また、本発明は前記窒化アルミニウム焼結体の製造方法および前記窒化アルミニウム焼結体を用いた電子用部品を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、希土類元素−酸素−アルミニウム系化合物からなる粒界相を含む窒化アルミニウム焼結体において、粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子が全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上であり、破壊靱性値が4.5MPam1/2以上、かつ熱伝導率が70W/m・K以上130W/m・K以下であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の窒化アルミニウム焼結体では、粒界相を希土類元素−酸素−アルミニウム系化合物からなるものとし、かつ全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上を粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子とすることにより、熱伝導率を70W/m・K以上130W/m・K以下とすると共に、その破壊靱性値を4.5MPam1/2以上の高い値にすることができる。
【0016】
また、本発明の窒化アルミニウム焼結体では、上記した構成を採用することにより、4点曲げ強度を420MPa以上とすることも可能となる。
【0017】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、例えば希土類元素−酸素−アルミニウム化合物およびアルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物からなる粒界相を具備するものである。このような粒界相を具備することにより、窒化アルミニウム焼結体の強度および破壊靱性値を向上させることが可能となる。
【0018】
本発明の窒化アルミニウム焼結体におけるより好ましい粒界相としては、希土類元素−酸素−アルミニウム化合物と、アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物およびアルカリ土類金属元素−酸素−ケイ素−アルミニウム化合物のうち少なくとも一方の化合物と、希土類元素−アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物とを具備するものである。これらの粒界相成分を具備させることにより、より一層、強度および破壊靱性値を向上させることが可能となる。
【0019】
上記した本発明の窒化アルミニウム焼結体は、例えば窒化アルミニウム粉末 100重量部に、少なくともY2O3粉末 0.5〜10重量部、Al2O3粉末 0.2〜20重量部およびCaO粉末 0.3〜10重量部を添加した後、焼結することにより作製することができる。
【0020】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、優れた熱伝導率と共に、優れた強度および破壊靱性値を有するため、電子用部品として用いることが最適である。このような電子部品としては、例えば回路基板、放熱板、セラミックスヒータ等を挙げることができる。
【0021】
本発明の窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、上記した本発明の窒化アルミニウム焼結体を製造するための製造方法であって、平均粒径が1μm以下の窒化アルミニウム粉末および焼結助剤からなる混合粉末より成形体を作製する工程と、前記成形体を1700℃以下、10時間以内で焼成する工程とを具備するものである。本発明の製造方法では、原料粉末として平均粒径が1μm以下の窒化アルミニウム粉末および焼結助剤を用い、これを用いて作製される成形体を1700℃以下、10時間以内で焼成することにより、全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上が粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子で構成され、かつ破壊靱性値が4.5MPam1/2以上、熱伝導率が70W/m・K以上130W/m・K以下である窒化アルミニウム焼結体を作製することが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、希土類元素−酸素−アルミニウム系化合物からなる粒界相を具備する窒化アルミニウム焼結体である。このような粒界相としては、希土類元素−酸素−アルミニウム化合物、希土類元素−アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物等が挙げられる。本発明では、この他に例えばアルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物、アルカリ土類金属元素−酸素−ケイ素−アルミニウム化合物を具備するものであってもよい。
【0023】
本発明において好ましい粒界相としては、希土類元素−酸素−アルミニウム化合物およびアルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物を具備するものである。前記アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物からなる粒界相を具備することにより、窒化アルミニウム焼結体の強度、破壊靱性値を向上させることが可能となる。
【0024】
本発明において、より好ましい粒界相としては、希土類元素−酸素−アルミニウム化合物と、アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物およびアルカリ土類金属元素−酸素−ケイ素−アルミニウム化合物のうち少なくとも一方の化合物を具備し、希土類元素−アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物を実質的に具備させないものである。粒界相に、希土類元素−アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物を実質的に具備させないことにより、より一層の強度、破壊靱性値の向上が可能となる。このような粒界相の同定は、X線回折法により行うことができる。従って、「実質的に具備させない」とはX線回折法により所定のピークが検出されないことを示すものである。
【0025】
本発明の窒化アルミニウム焼結体においては、粒界相に上記したような化合物を具備させ、さらに粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子を全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上とすることにより、破壊靱性値を4.5MPam1/2以上、かつ熱伝導率が70W/m・K以上130W/m・K以下とすることが可能となる。さらには、4点曲げ強度で420MPa以上とすることが可能となる。
【0026】
本発明において、粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子を全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上とするのは、窒化アルミニウム結晶粒子の粒径が3μmを超える場合には、熱伝導率が向上するものの、強度、破壊靱性値等が低下するためであり、また全窒化アルミニウム結晶粒子の95%未満の場合には、粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子が存在しても、強度、破壊靱性値等の向上が望めないためである。
【0027】
粒径の下限は特に限定されるものではないが、好ましくは1μm以上であり、1μm以上3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子が全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上であることが好ましい。粒径があまりに細かくなると単位面積当たりの粒界相量が増加してしまい、熱伝導率が70W/m・K未満になり易いためである。
【0028】
窒化アルミニウム結晶粒子の粒径の測定方法としては、窒化アルミニウム焼結体を切断して破断面を形成した後、電子顕微鏡で観察することにより行う。また、粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子の比率は、例えば窒化アルミニウム焼結体の任意の3個所を選び出し、前記3個所の各単位面積(100μm×100μm)に含まれる各窒化アルミニウム結晶粒子の最大粒径となる部分を測定し、全窒化アルミニウム結晶粒子のうち、前記最大粒径が3μm以下であるものの割合を算出することによって求めることができる。
【0029】
強度の測定については、JIS R1601に準じた方法により、破壊靱性値の測定については、SENB法により測定することができる。また、熱伝導率はレーザーフラッシュ法により測定することができる。
【0030】
次に、本発明の窒化アルミニウム焼結体の製造法について説明する。
本発明では、主原料として窒化アルミニウム粉末を用い、これに焼結助剤として希土類元素を含むY2O3粉末、Al2O3粉末等を添加したものを用いる。焼結助剤としては、さらにCaOやCaCO3粉末等のアルカリ土類金属元素を含むもの、SiO2粉末等のケイ素を含むものを加えることが好ましい。
【0031】
Y2O3粉末、Al2O3粉末等を添加することにより、希土類元素−酸素−アルミニウム系化合物からなる粒界相を具備する窒化アルミニウム焼結体を得ることができる。さらに、CaO粉末等のアルカリ土類金属元素を含むもの、SiO2粉末等のケイ素を含むものを加えることにより、アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物、希土類元素−アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物、アルカリ土類金属元素−酸素−ケイ素−アルミニウム化合物を具備する窒化アルミニウム焼結体を得ることができる。
【0032】
本発明においては、例えば窒化アルミニウム粉末 100重量部に、Y2O3粉末 0.5〜10重量部およびAl2O3粉末 0.2〜20重量部、必要に応じてCaO粉末 0.3〜10重量部、SiO2粉末 0.1重量部以下を添加した原料混合粉末を用いることが好ましい。このような構成とすることにより、上記した粒界相を得ることが可能となる。Y2O3粉末およびAl2O3粉末の添加量は、好ましくは、それぞれ2〜6重量部、3〜10重量部である。
【0033】
また、CaO粉末等のアルカリ土類金属元素を含む粉末はアルカリ土類金属酸化物換算で0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜4重量部である。また、SiO2粉末は0.1重量部以下と微量添加であることから、SiO2粉末として添加してもよいし、他の原料粉の不純物として含有されているSiO2を利用してもよい。また、窒化アルミニウム粉末としては、平均粒径が1μm以下のものを用いることにより、微細な結晶粒子からなる焼結体を得ることができる。
【0034】
次に、このような原料混合粉末を混合し、ドクターブレード法や泥漿鋳込み法によって成形し、薄板状ないしシート状の成形体を形成したり、原料混合体をプレス成形して薄板状ないし大型の成形体を形成する。
【0035】
得られた成形体は、空気または窒素ガス雰囲気において加熱され脱脂処理され、有機バインダとして使用された炭化水素成分等が成形体から排除脱脂される。そして脱脂された成形体を、窒素ガス雰囲気等で1700℃以下、10時間以内、好ましくは1600℃以上1660℃以下、2時間以上8時間以下の焼成を行うことにより本発明の窒化アルミニウム焼結体を製造することができる。
【0036】
本発明においては、1700℃以下という比較的低い温度で焼成することにより、粒成長を抑制し、強度、破壊靱性値等に優れた窒化アルミニウム焼結体を得ることが可能となる。1700℃を超える温度で焼成した場合、粒成長が促進され熱伝導率は上がるものの、強度、破壊靱性値等の低下を招くので好ましくない。同様に焼成時間が10時間を超えても粒成長が促進されることから必ずしも好ましいとは言えない。
【0037】
上記したような本発明の窒化アルミニウム焼結体は、電子用部品に用いることが好ましい。このような電子用部品としては、例えば回路基板、放熱板、セラミックスヒータ、静電チャック等が挙げられる。このような場合、窒化アルミニウム焼結体に、Al、Ti、Ni、Au、Ag、Pt、Pd、Cu、MoおよびWから選ばれる少なくとも1種からなる厚膜、金属板または薄膜を表面に接合あるいは形成して用いることも可能である。
【0038】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、熱伝導率に優れると共に、強度、破壊靱性値に優れるため、上記電子用部品に用いた場合、製造時および使用時に加えられる各種の応力、衝撃力による損傷、破壊を抑制し、製造歩留りを向上させ、かつ製品の信頼性も向上させることができる。
【0039】
【実施例】
(実施例1〜3、比較例1)
実施例1〜3
平均粒径0.8μmのAlN粉末100重量部に、イットリアおよびカルシア、またはこれらにアルミナ、シリカを加えたものを添加し、混合、成形、脱脂の各工程を行った後、窒素雰囲気中で(1650〜1700℃)×(2〜8時間)の焼成を行い、3mm×4mm×4mmの窒化アルミニウム焼結体を得た。各実施例における添加物の量は、表1に示すとおりとした。
【0040】
次に、上記各窒化アルミニウム焼結体に対し、AlN結晶粒子の粒子径が3μm以下のものの割合、破壊靭性値、熱伝導率、4点曲げ強度を測定した。
【0041】
比較例1
焼結助剤としてイットリアを5重量部添加し、焼成条件を1800℃×6時間に変え、他の条件は実施例1〜3と同様として窒化アルミニウム焼結体を作製し、上記と同様の測定を行った。
【0042】
実施例1〜3および比較例1についての測定結果を表2に示す。
なお、AlN結晶粒子の粒子径が3μm以下のものの割合の測定は、AlN焼結体の断面から任意の3個所を選び、その単位面積(100μm×100μm)中の各AlN結晶粒子の最大粒径を測定し、粒径が3μm以下のものの割合を計算し、さらに各個所の平均をとって最終的な割合を算出した。また、破壊靭性値はSENB法により測定し、熱伝導率はレーザーフラッシュ法により測定した。
4点曲げ強度はJIS R1601に準じた方法により測定した。
【表1】
【表2】
【0043】
表2から分かる通り、本実施例のAlN焼結体においては、粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子が全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上となり、破壊靱性値、強度においても優れた特性を有することが認められた。また、本実施例のAlN焼結体をX線回折により観察した結果、粒界相にはY−Al−O系化合物およびCa−Al−O化合物が形成されていることが確認された。
【0044】
これに対して、比較例1では粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子が全窒化アルミニウム結晶粒子の15%となり、破壊靱性値、強度が本発明の実施例に比較して低い値となった。
【0045】
(実施例4〜10)
平均粒径0.7μm以下のAlN粉末100重量部、イットリア粉末2〜5重量部、Al2O3粉末(実施例4、5;0.5〜2重量部、実施例6〜10;3〜15重量部)、CaCO3粉末をCaO換算で0.3〜3重量部(実施例4〜10に添加)、実施例10についてはSiO2粉末を0.01〜0.1重量部の範囲で添加し、混合することにより原料粉末を調整した。
【0046】
原料粉末を成形、脱脂した後、窒素雰囲気中1630〜1680℃×3〜10時間で焼成することにより、下記▲1▼〜▲4▼の化合物からなる粒界相を具備するAlN焼結体を作製した。なお、粒界相を構成する化合物の特定は、X線回折法により行った。
【0047】
(粒界相を構成する化合物)
▲1▼希土類元素−Al−O化合物
▲2▼希土類元素−アルカリ土類金属元素−Al−O化合物
▲3▼アルカリ土類金属元素−Al−O化合物
▲4▼アルカリ土類金属元素−Al−Si−O化合物
【0048】
次に、各AlN焼結体に対し実施例1と同様の測定を行った。また、その結果を表3に示す。
【表3】
【0049】
表3に示されるように、いずれの実施例においても、粒径が3μm以下のものの割合が95%以上となることが確認された。
【0050】
また、Al2O3粉末を0.5〜2重量部添加した実施例4、5は、粒界相に▲1▼、▲2▼のみが存在し、他の実施例に比べて強度、破壊靱性値が低くなる傾向が認められた。これに対して、Al2O3粉末を3〜15重量部添加した実施例6〜10では、いずれの粒界相にも▲1▼および▲3▼が存在し、強度、破壊靱性値が高くなる傾向が認められた。このように▲3▼が生成したのは、Al2O3粉末を比較的多く添加し、かつ低い温度で焼成したためであると考えられ、これが強度、破壊靱性値を向上させていると考えられる。
【0051】
また、実施例8のように粒界相に▲2▼希土類元素−アルカリ土類金属元素−Al−O化合物の存在が確認されたものは、確認されなかったものと比較して破壊靱性および強度がやや劣ることが確認された。このような観点から、粒界相には▲2▼希土類元素−アルカリ土類金属元素−Al−O化合物が実質的に存在しない方が好ましいといえる。
【0052】
(実施例11〜13、比較例2)
実施例11として、実施例4と同様の特性を有する20mm×20mm×0.8mmのAlN焼結体を作製し、これに酸化膜を1μm設けた後、回路基板としての銅板をDBC法により接合し、AlN回路基板を作製した。
【0053】
また、実施例12および13として、実施例10と同様の特性を有する20mm×20mm×0.8mmのAlN焼結体を作製した後、実施例12では厚さ15μmのAg−Cu−Tiろう材を用いた活性金属法により銅板を接合し、実施例13では厚さ15μmのAg−Pd厚膜層からなる金属回路を形成しAlN回路基板を作製した。
【0054】
上記各AlN回路基板に対し、TCT試験を行いクラック発生の有無を測定した。なお、TCT試験は、125℃×30分→室温×10分→−40℃×30分→室温×10分を1サイクルとし100サイクル後の基板へのクラック発生の有無を確認した。
【0055】
また、上記実施例との比較のため、比較例1と同様の特性を有するAlN焼結体を用い、実施例11と同様に銅回路板を接合した比較例2についても同様の測定を行った。その結果を表4に示す。
【表4】
【0056】
表4から明らかなように、本発明の実施例では、銅板およびAg−Pd厚膜層のいずれを形成した場合においても、クラックの発生がなく、強度及び破壊靱性値に優れていることが確認された。これに対して、比較例2ではクラックが発生し、十分な強度、破壊靱性値を有してないことが認められた。
【0057】
(実施例14〜16)
実施例5または実施例6と同様の特性を有するAlN焼結体を用い、20mm×20mm×1mmのAlN基板を作製した。これら各基板上にガラス膜を設け実施例14〜16のセラミックスヒータ(サーマルヘッド用基板)を作製した。なお、実施例14および15はガラス層の厚さを15μm、実施例16は100μmとした。
【0058】
次に、上記各セラミックスヒータに対してTCT試験を行いクラック発生の有無を測定した。なお、TCT試験は、125℃×30分→室温×10分→−40℃×30分→室温×10分を1サイクルとし100サイクル後の基板へのクラック発生の有無を確認した。結果を表5に示す。
【表5】
【0059】
表5から明らかなように、いずれの実施例においてもクラックの発生は認められず、セラミックスヒータとして十分な強度、破壊靱性値を有することが認められた。
【0060】
【発明の効果】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、粒界相として希土類元素−酸素−アルミニウム系化合物を具備し、粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子が全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上であり、その破壊靱性値が4.5MPam1/2以上、かつ熱伝導率が70W/m・K以上130W/m・K以下である。
【0061】
本発明の窒化アルミニウム焼結体は、熱伝導率に優れると共に、破壊靱性値に優れ、各種電子用部分として用いた場合に、製造時および使用時に加えられる各種の応力、衝撃力による損傷、破壊を抑制し、製造歩留りを向上させ、かつ製品の信頼性も向上させることができる。
Claims (9)
- 希土類元素−酸素−アルミニウム系化合物からなる粒界相を具備する窒化アルミニウム焼結体において、
粒径が3μm以下の窒化アルミニウム結晶粒子が全窒化アルミニウム結晶粒子の95%以上であり、破壊靱性値が4.5MPam1/2以上、かつ熱伝導率が70W/m・K以上130W/m・K以下であることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。 - 4点曲げ強度が420MPa以上であることを特徴とする請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体。
- 前記粒界相は希土類元素−酸素−アルミニウム化合物およびアルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物を具備することを特徴とする請求項1または2記載の窒化アルミニウム焼結体。
- 前記粒界相は希土類元素−酸素−アルミニウム化合物と、アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物およびアルカリ土類金属元素−酸素−ケイ素−アルミニウム化合物のうち少なくとも一方の化合物と、希土類元素−アルカリ土類金属元素−酸素−アルミニウム化合物とを具備することを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項記載の窒化アルミニウム焼結体。
- 窒化アルミニウム粉末 100重量部に、少なくともY2O3粉末 0.5〜10重量部、Al2O3粉末 0.2〜20重量部およびCaO粉末 0.3〜10重量部を添加した後、焼結してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の窒化アルミニウム焼結体。
- 前記窒化アルミニウム粉末、Y2O3粉末、Al2O3粉末およびCaO粉末に加えて、さらにSiO2粉末を0.1重量部以下添加して、焼結してなることを特徴とする請求項5記載の窒化アルミニウム焼結体。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載の窒化アルミニウム焼結体を具備することを特徴とする電子用部品。
- 回路基板、放熱板またはセラミックスヒータとして用いられることを特徴とする請求項7記載の電子用部品。
- 請求項1記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法であって、
平均粒径が1μm以下の窒化アルミニウム粉末および焼結助剤からなる混合粉末より成形体を作製する工程と、
前記成形体を1700℃以下、10時間以内で焼成する工程と
を具備することを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2000372881A JP4761617B2 (ja) | 2000-12-07 | 2000-12-07 | 窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法、並びにそれを用いた電子用部品 |
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