以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一又は同様の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るポンプユニットの機能ブロック図である。同図に示すように、ポンプユニット1は、DCモータ10と、DCモータ駆動制御装置20と、直流電源30と、ポンプ部40とを備えており、DCモータ駆動制御装置20によってDCモータ10が駆動されることによりポンプ部40が作動し、流体を送出する構成となっている。以下、上記構成について詳細に説明する。
DCモータ10は、薄い鉄板(厚さ約0.5mm程度)が積相されたステータ11と、ステータ11に巻かれた複数相のモータ巻線12と、回転子としてのマグネットのロータ13と、ロータ13の回転位置を検出する回転位置検出手段14とからなっている。ここで、回転位置検出手段14は、ホールセンサやホールICなどにより構成される。また、回転位置検出手段14は、モータ巻線12の誘起電圧を利用してロータ13の回転位置を検出する構成であってもよい。
このようなDCモータ10では、回転位置検出手段14によって検出したロータ回転位置の情報がDCモータ駆動制御装置20に送信され、DCモータ駆動制御装置20において複数相のモータ巻線12への通電状態が決定され、決定された通電状態に従って複数相のモータ巻線12へ電流が供給される。これにより、DCモータ10は、ステータ11が電磁石として作用し、電磁石の磁界とマグネットのロータ13との磁極が吸引・反発してロータ13に回転トルクを発生させることで、駆動することとなる。
DCモータ駆動制御装置20は、ON/OFF制御回路21、分配回路22と、インバータ回路23と、電流−電圧変換回路24と、増幅回路25と、ピーク電流閾値発生回路26と、ピーク電流比較回路27と、OFF時間制御回路28とを備えている。
まず、一般にDCモータ駆動制御装置20には、負荷に応じてDCモータ10の能力を変更できるように能力可変指示電圧Vaが入力されるようになっている。本実施形態において能力可変指示電圧Vaは、ON/OFF制御回路21及びピーク電流閾値発生回路26に入力するようになっている。
ON/OFF制御回路21は、入力された能力可変指示電圧Vaの大きさに従ってDCモータ10の運転・停止を決定するものである。また、ON/OFF制御回路21は、決定した運転・停止の情報を分配回路22に送信する構成となっている。分配回路22は、ON/OFF制御回路21によってDCモータ10を運転すると決定された場合に、回転位置検出手段14からロータ回転位置の情報に基づいて、直流電源30から複数相のモータ巻線12への通電状態(どのように電流を流すかを示す状態)を決定するものである。インバータ回路23は、複数相のモータ巻線12に応じた数のスイッチング素子(トランジスタ、MOSFET等)を備え、スイッチング素子をスイッチングすることによって、直流電源30からの複数相のモータ巻線12への通電を行うものである。
ここで、一般的な3相DCモータの場合、分配回路22は、複数相のモータ巻線12にどのように電流を流すかを示す6信号を発生させ、この6信号がインバータ回路23に入力される。インバータ回路23は6つのスイッチング素子を備えており、上記6信号は6つのスイッチング素子をオンオフするスイッチング信号となる。そして、インバータ回路23は、スイッチング素子をスイッチングすることによって、直流電源30からの複数相のモータ巻線12への通電を行う。
ところが、本実施形態に係るDCモータ駆動制御装置20は、分配回路22からインバータ回路23の間にOFF時間制御回路28が介在されており、インバータ回路23は、分配回路22からのスイッチング信号のみならず、OFF時間制御回路28からの信号によってもスイッチング素子を制御するようになっている。
より具体的に述べると、一般的な3相DCモータの場合、分配回路22はPWM制御を行うように6信号を発生させ、インバータ回路23は、PWM制御を行って複数相のモータ巻線12に電流を供給してDCモータ10を駆動される。ところが、本実施形態において分配回路22は、PWM制御を行うように6信号を発生させず、基本的にはデューティ比100%で複数相のモータ巻線12への電流供給を行うように6信号を発生させる。
電流−電圧変換回路24は、複数相のモータ巻線12に供給される電流の値に応じた電流を取り込み、この電流を電圧波形に変換するものである。ここで、変換された電圧は、例えば数十〜数百mV程度の大きさである。増幅回路25は、電流−電圧変換回路24により変換された電圧を増幅するものである。具体的に増幅回路25は、入力した電圧信号を数倍〜数十倍に増幅し、例えば数十〜数百mVの電圧信号を入力した場合、約数V(2〜4V)程度の電圧信号に増幅する。
ピーク電流閾値発生回路26は、DCモータ10の能力を制御する能力可変指示電圧の大きさに応じて複数相のモータ巻線12に通電する電流の最大値を決定し、この最大値に応じた閾値電圧を決定するものである。
ピーク電流比較回路27は、ピーク電流閾値発生回路26により決定された閾値電圧の信号と増幅回路25により増幅された電圧信号とを入力し、それらを比較するものである。また、ピーク電流比較回路27は、ピーク電流閾値発生回路26により決定された閾値電圧よりも、増幅回路25により増幅された電圧信号の方が高い場合、モータ巻線12に通電される電流値が、ピーク電流閾値発生回路26により決定された電流の最大値を超えると判断する構成となっている。さらに、ピーク電流比較回路27は、モータ巻線12に通電される電流値が、ピーク電流閾値発生回路26により決定された電流の最大値を超えると判断した場合、Hレベルの信号を出力し、最大値以下であると判断した場合、Lレベルの信号を出力する構成となっている。
OFF時間制御回路28は、ピーク電流比較回路27からの信号がLレベルである場合、分配回路22か決定した複数相のモータ巻線12への通電状態に関わらず、複数相のモータ巻線12への電流供給を予め定めた設定時間だけオフするようにOFF制御信号を出力するものである。インバータ回路23は、OFF時間制御回路28からOFF制御信号を入力するとスイッチング手段を制御して、複数相のモータ巻線12へ電流供給を設定時間だけオフすることとなる。
以上のような構成であるため、インバータ回路23は、分配回路22により決定された通電状態(デューティ比100%)でDCモータ10を駆動するが、ピーク電流比較回路27からのLレベルの信号がOFF時間制御回路28に入力された場合、設定時間だけ複数相のモータ巻線12への電流供給をオフすることとなる。
すなわち、本実施形態においてDCモータ駆動制御装置20は、デューティ比100%による電流供給と設定時間の電流供給オフとの2つによってDCモータ10の駆動を行っており、PWM制御を行うことなく、上記2つにより固定電圧の直流電源30を用いて擬似的にPAM制御を実現している。これにより、DCモータ駆動制御装置20は、スイッチング手段のスイッチング回数が少なくなり、スイッチング手段の発熱を抑えることができる。また、PWM制御を行っていないため、リップル電流及び高調波電流の発生を抑制することができる。従って、モータの駆動電源として固定の電圧を出力する簡単な電源を採用しつつも、スイッチング手段の発熱、モータの振動及び騒音、並びに高調波電流の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態の直流電源30は、商用電源(AC100/200V 50/60Hz)をダイオードで整流し、コンデンサで平滑することで固定の電圧を出力する構成となっている。
図2は、図1に示したポンプユニット1のDCモータ10及びDCモータ駆動制御装置20の回路構成図である。抵抗R1は、複数相のモータ巻線12へ供給される電流を電圧に変換するものであり、図1に示した電流−電圧変換回路24に該当する。オペアンプOP1は、抵抗R1の電圧値を抵抗R2,R3の抵抗値で決定される増幅度(数倍〜数十倍)に増幅するものである。このオペアンプOP1及び抵抗R2,R3は、図1に示した増幅回路25に該当する。なお、オペアンプOP1は、複数相のモータ巻線12へ供給される電流(全電流)波形を忠実に増幅する(波形なまりを発生させない)ため、スルーレートとしては数V/μS以下のものが使用されている。
オペアンプOP1の出力信号は、コンパレータCMP1の非反転入力端子に入力する。一方、コンパレータCMP1の反転入力端子には、能力可変指示電圧Vaが抵抗R4,R5の抵抗値で分圧されたうえで入力される。そして、コンパレータCMP1は、オペアンプOP1からの電圧が抵抗R4,R5の分圧よりも高い場合にHレベルの信号を出力し、そうでない場合にLレベルの信号を出力する。ここで、抵抗R4,R5が図1に示したピーク電流閾値発生回路26に該当し、コンパレータCMP1が図1に示したピーク電流比較回路27に該当する。
また、能力可変指示電圧Vaは、コンパレータCMP2の非反転入力端子に入力する。一方、コンパレータCMP2の反転入力端子には、制御電源(+5V等)を抵抗R6,R7で分圧した分圧値(V0)が入力される。そして、コンパレータCMP2は、能力可変指示電圧Vaが分圧値V0よりも高い場合にHレベルの信号を出力し、そうでない場合にLレベルの信号を出力する。なお、抵抗R8はノイズ除去のためのヒステリシス用の抵抗である。また、コンパレータCMP2及び抵抗R6,R7等は、図1に示したON/OFF制御回路21に該当する。
また、コンパレータCMP2の出力信号は、コンパレータCMP3の反転入力端子に入力する。コンパレータCMP3の反転入力端子には、定電圧信号が入力される。コンパレータCMP2からHレベルの信号が出力される場合、定電圧信号はコンパレータCMP2からの出力信号よりも低くなり、コンパレータCMP3の出力はLレベルとなる。一方、コンパレータCMP2からLレベルの信号が出力される場合、定電圧信号はコンパレータCMP2からの出力信号よりも高くなり、コンパレータCMP3の出力はHレベルとなる。なお、コンパレータCMP3の反転入力端子には三角波信号が入力されてもよい。
また、コンパレータCMP3の出力側にはNPNトランジスタTR1が設けられている。このNPNトランジスタTR1は、コンパレータCMP3からの出力信号がHレベルであるときにオンし、Lレベルあるときにオフする。また、NPNトランジスタTR1がオフであるとき、制御電源(+5V等)からのHレベルの電圧がアンド回路ANDに入力する。一方、NPNトランジスタTR1がオンであるとき、Lレベルの電圧がアンド回路ANDに入力する。
また、コンパレータCMP1の出力信号は、ラッチ回路Lに入力する。コンパレータCMP1の出力信号がHレベルである場合、ラッチ回路LはHレベルにラッチされ、NPNトランジスタTR2をオンする。NPNトランジスタTR2がオンされると、NPNトランジスタTR1がたとえオフであっても、Lレベルの電圧がアンド回路ANDに入力することとなる。
また、ラッチ回路Lにはリセット信号が入力される。このリセット信号は、モータ巻線12の電流切り替え(相切り替え)ごとにラッチ回路Lに入力され、Hレベルのラッチ状態を解除するようになっている。ラッチ回路Lにリセット信号が入力されると、NPNトランジスタTR2はオフし、NPNトランジスタTR1がオン状態である場合には、アンド回路ANDに入力される電圧信号はLレベルからHレベルに変化することとなる。
ここで、アンド回路ANDにHレベルの電圧信号が入力すると、インバータ回路23は、複数相のモータ巻線12への電流供給をデューティ比100%で行う。一方、アンド回路ANDにLレベルの電圧信号が入力すると、分配回路22により決定された通電状態に関わらず、インバータ回路23は、複数相のモータ巻線12への電流供給を設定時間だけオフする。
このとき、インバータ回路23は、複数相のモータ巻線12の端子の1つと直流電源30の正側の端子とのスイッチングを行う複数の上アーム側スイッチング素子すべてをオフ状態とし、複数相のモータ巻線12の端子の1つと直流電源30の負側の端子とのスイッチングを行う複数の下アーム側スイッチング素子すべてをオン状態とする。これにより、インバータ回路23では、電流供給オフ時においても必ずオン状態のスイッチング素子が存在するようにしている。なお、インバータ回路23は、複数の上アーム側スイッチング素子すべてをオフ状態とし、複数の下アーム側スイッチング素子すべてをオン状態とするようにしてもよい。また、上記NPNトランジスタTR1,TR2、コンパレータCMP3及びラッチ回路L等は、図1に示したOFF時間制御回路28に該当する。
図3は、本実施形態に係るDCモータ駆動制御装置20の動作を示すタイムチャートである。なお、図3において、時刻t2,t4,t6,t8,t10では、モータ巻線12の電流切り替え(いわゆる相切り替え)が行われるものとする。
まず、時刻0において、能力可変指示電圧Vaは、電圧V0よりも高く(図3(a))、コンパレータCMP2の出力信号はHレベルとなっている(図3(b))。このため、コンパレータCMP3の出力信号はLレベルとなり、アンド回路ANDの入力電圧はHレベルとなる(図3(e))。このとき、インバータ回路23は、複数相のモータ巻線12への電流供給をデューティ比100%で行う。
次に、時刻0から時刻t1までの期間においてオペアンプOP1からの出力電圧が次第に高まり、時刻t1においてオペアンプOP1の出力電圧が、能力可変指示電圧Vaに応じた分圧値を超えると(図3(f))、コンパレータCMP1の出力信号は、Hレベルとなる(図3(c))。これにより、ラッチ回路LはHレベルにラッチされ、NPNトランジスタTR2がオン状態となり、アンド回路ANDへの入力電圧はLレベルとなる(図3(e))。このとき、インバータ回路23は複数相のモータ巻線12への電流供給をオフする。
その後、時刻t2においてリセット信号が出力される(図3(d))。これにより、ラッチ状態が解除され、NPNトランジスタTR2がオフ状態となり、アンド回路ANDへの入力電圧はHレベルに戻る(図3(e))。これにより、インバータ回路23は複数相のモータ巻線12への電流供給を100%のデューティ比で行うこととなる。
以降、上記した時刻0〜時刻t2までの動作が繰り返し行われることとなる。なお、時刻t4,t6,t10では、それぞれ能力可変指示電圧Vaの値が変化している。このため、コンパレータCMP1の反転入力端子への入力電圧も変化し、図3(f)に示すように、コンパレータCMP1がHレベルとなるタイミングが異なってくる。
また、図3(d)から明らかなように、リセット信号は相切り替えごとにラッチ回路Lに入力する。このため、ラッチ回路LがHレベルにラッチされてからリセット信号が入力されるまでの時間Δtは、NPNトランジスタTR1のオンオフに関わらず、電流供給がオフされることとなる(図3(e))。このNPNトランジスタTR1のオンオフに関わらず、電流供給がオフされる時間が上記した設定時間に該当する。
なお、ラッチ回路LがHレベルにラッチされるのは、オペアンプOP1の出力電圧が、ピーク電流閾値発生回路26により決定された閾値電圧を超える時点ある。また、本実施形態においてコンパレータCMP1は、それぞれ電圧の大小を比較しているが、これを電圧に置き換えると、設定時間Δtは、モータ巻線12に通電される電流値がピーク電流閾値発生回路26により決定された電流の最大値を超えてから、次にモータ巻線12の電流切り替えが行われるまでの時間と表現できる。
図4は、能力可変指示電圧VaとPWMデューティとの相関を示すグラフである。なお、図4において縦軸はPWMデューティ(%)を示し、横軸は能力可変指示電圧Va(V)を示している。また、図4において実線は本実施形態の制御を示し、破線は従来のPWM制御を示している。
図4に示すように、本実施形態では、能力可変指示電圧Vaが電圧V0以下である場合、コンパレータCMP2の出力電圧はLレベルとなり、アンド回路ANDにはLレベルの電圧信号が入力する。このため、電流供給はオフされ、デューティ比は0%となる。一方、能力可変指示電圧Vaが電圧V0を超える場合、コンパレータCMP2の出力電圧はHレベルとなり、アンド回路ANDにはHレベルの電圧信号が入力する。このとき、上記したように、PWMデューティ比100%により電流供給を行う。このため、本実施形態では
電流供給オフとPWMデューティ比100%との2つによりDCモータ10の駆動を行っている。
これに対し、従来のPWM制御では、能力可変指示電圧Vaが電圧V0を超え電圧V1(電圧V0よりも大きい値)に達するまでは、能力可変指示電圧Vaが大きくなる従ってデューティ比が増加することとなる。このため、この区間では、インバータ回路23のスイッチング周波数が本実施形態の約10〜20倍と非常に高くなってしまう。
このように、本実施形態では、デューティ比100%による電流供給と設定時間Δtの電流供給オフとの2つによってDCモータ10の駆動を行っており、PWM制御を行うことなく、上記2つにより固定電圧の直流電源30を用いて擬似的にPAM制御を実現している。これにより、本実施形態では、スイッチング周波数が従来のPWM制御より1/20〜1/10程度と非常に小さくなるため、スイッチング素子の発熱等を抑制することができる。
図5は、スイッチング素子であるFETの温度上昇を示すグラフである。なお、図5において縦軸はFET温度上昇値(K)を示し、横軸は電流値(A)を示している。また、図5において実線は本実施形態での例1(疑似PAM制御1)を示し、二点鎖線は本実施形態での例2(疑似PAM制御2)を示し、破線は従来のPWM制御を示している。さらに、疑似PAM制御1よりも疑似PAM制御2の方が設定時間Δtが長くされているものとする。
同図に示すように、PAM制御2ではFETのスイッチング量が最も少なく、FETの温度上昇には、ほぼFETのON時の損失のみしか関与しない。このため、擬似PAM制御2では、直流電源30からの供給電流が大きくなるに従い、ほぼ2乗の関係で損失が増加し、温度上昇値も同様な振る舞いをする。
また、擬似PAM制御1では、電流値が小さくなるとスイッチング量が増える為、スイッチング損失とON損失が温度上昇に影響する。このため、電流値が0〜0.5(A)の領域までは、温度上昇が大きくなっており、電流値が0.5〜1.4(A)の領域においても、擬似PAM制御2より温度上昇が大きくなっている。
また、PWM制御時はON損失もスイッチング損失も電流値が大きいほど飛躍的に大きくなるので、図5に示すように、デューティ比100%となる電流値1.4Aまでは、急激な温度上昇となっている。なお、電流値1.4Aになるとデューティ比100%となるため、疑似PAM制御2、疑似PAM制御1及びPWM制御のすべてについて温度上昇は同じとなっている。いわゆるDCモータ10の最も省エネに貢献する能力可変時にFETの温度上昇は、かなり低減される。図5の例では約20Kの差が発生していることがわかる。
図6は、DCモータ10の回転数とトルクとの関係を示したグラフである。なお、図6において縦軸はトルクT(N・m)を示し、横軸は回転数N(min−1)を示している。また、図6において実線は本実施形態での例を示し、破線は従来のPWM制御を示している。さらに、図6では本実施形態の例を示す実線が2本描かれているが、このうちトルクが高い方はもう一方よりも能力可変指示電圧Vaが高い場合を示している。同様に、従来例を示す破線についても2本描かれているが、このうちトルクが高い方はもう一方よりも能力可変指示電圧Vaが高い場合を示している。
図6に示すように、従来のPWM制御においてトルクTは、回転数Nが小さくなると、単調に増加していく。これに対し、本実施形態では、DCモータ10の回転数Nが4500N以下の区間では、回転数Nが小さくなるに従ってトルクTが小さくなっている。
これは、DCモータ10の回転数Nが小さくなると、設定時間Δtが大きくなることに起因する。再度、図3を参照する。図3に示す時刻0〜時刻t2の期間では、能力可変指示電圧Vaが他の時間帯よりも低く、高回転が要求されていない。このように、高回転が要求されない低回転の場合、設定時間Δtが他の時間帯よりも長くなっている。これに対し、時刻t6〜時刻t8の期間では、能力可変指示電圧Vaが時刻0〜時刻t2の期間よりも高く、同期間よりも高回転が要求されており、設定時間Δtは時刻0〜時刻t2の期間よりも短くなる。
以上より、本実施形態では、DCモータ10の回転数Nが小さくなると設定時間Δtが大きくなっており、設定時間Δtが大きくなると、複数相のモータ巻線12への電流供給が長い時間に亘ってオフとなることから、トルクTの大きさは減少することとなる。このように、本実施形態のDCモータ10は低回転領域においてトルクTの大きさが小さくなる特性を有することとなる。従って、低回転時に大きな仕事量を要求しないポンプなどに、DCモータ10及びDCモータ駆動制御装置20を適用した場合に、図6に示す特性上、不要な仕事量の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態の例と従来例との双方について、DCモータ10の回転数Nが4500Nを超える区間では、トルクTが等しくなっている。回転数Nが4500Nを超える区間では、PWM制御のデューティ比が100%となり、本実施形態に係る制御において設定時間Δtが「0」に近づくため、両者の差が少なくなるためである。
図7は、図1に示したポンプユニット1及び従来制御を行ったときのポンプユニットの特性を示すグラフである。なお、図7において、左縦軸は全揚程Ht(m)を示し、右縦軸は消費電力Win(W)を示し、横軸は流量Q(L/min)を示してる。また、図7において細実線は従来の通りPWM制御(デューティ比90%)を行った場合の全揚程を示し、太実線は本実施形態の制御を行った場合の全揚程を示している。さらに、細破線は従来の通りPWM制御を行った場合の消費電力を示し、太実線は本実施形態の制御を行った場合の消費電力を示している。
まず、従来例に示すように、ポンプユニットの流量Qを増加させると、消費電力Winは比例的に増加する。また、全揚程Htは流量Qの増加に伴って減少する。これに対し、本実施形態では、流量Qが15(L/min)を超えると、モータ巻線12に通電される電流値がピーク電流閾値発生回路26により決定された最大値を超えることとなり、複数相のモータ巻線12へ供給される電流が制限されることとなる。このため、流量Qが15(L/min)を超える領域では、全揚程Ht及び消費電力Winが大幅に減少する。
このように、本実施形態に係るポンプユニット1では、水を高い箇所に押し上げる必要がない場合には、高流量且つ低消費電力を実現でき、省エネルギ化を図りつつも、高流量を実現することができる。
なお、図7に示した従来のPWM制御において、デューティ比を小さくすると、図7の特性は相似的に小さくなっていく。
このようにして、第1実施形態に係るDCモータ駆動制御装置20によれば、モータ巻線12に通電される電流値が、決定された最大値以下である場合、複数相のモータ巻線12への電流供給をデューティ比100%で行い、モータ巻線12に通電される電流値が上記最大値を超える場合、決定した複数相のモータ巻線12への通電状態に関わらず、複数相のモータ巻線12への電流供給を予め定めた設定時間Δtだけオフすることとしている。
このように、デューティ比100%による電流供給と設定時間Δtの電流供給オフとの2つによってDCモータ10の駆動を行っており、PWM制御を行うことなく、上記2つにより固定電圧の直流電源30を用いて擬似的にPAM制御を実現している。これにより、DCモータ駆動制御装置20は、スイッチング手段のスイッチング回数が少なくなり、スイッチング手段の発熱を抑えることができる。また、PWM制御を行っていないため、リップル電流及び高調波電流の発生を抑制することができる。従って、モータの駆動電源として固定の電圧を出力する簡単な電源を採用しつつも、スイッチング手段の発熱、モータの振動及び騒音、並びに高調波電流の発生を抑制することができる。
また、モータ巻線12に通電される電流値が最大値を超えてから、次にモータ巻線12の電流切り替えが行われるまでの時間を設定時間Δtとしている。さらに、複数相のモータ巻線12への電流供給を設定時間Δtだけオフするにあたり、上アーム側または下アーム側スイッチング素子すべてをオフ状態とし、他のアーム側スイッチング素子すべてをオン状態とすることとしている。
ここで、PWM制御を行った場合、モータ巻線12への電流の相切り替え時にスイッチング素子がすべてオフとなり、巻線電流の逆起電力が直流電源30へ回生されることがある。特に、直流電源30とインバータ回路23とが高インピーダンスで接続されている場合、逆起電力の回生によって電源電圧の上昇が発生し、スイッチング手段の耐電圧オーバーが生じる可能性がある。ところが、本実施形態では相切り替え時に上アーム側または下アーム側スイッチング素子すべてをオフ状態とし、他のアーム側スイッチング素子すべてをオン状態とすることとしているため、相切り替え時には必ずオン状態のスイッチング素子が存在する。これにより、スイッチング手段を有するインバータ回路23とモータ巻線12の間で放電が行われることとなり、電源電圧の上昇は小さくなる。従って、スイッチング手段の耐電圧オーバーを抑制することができる。
また、モータ回転数Nが小さくなるに従って設定時間Δtを大きくすることとしているため、DCモータ10が低回転する場合のトルクTを抑えることが可能となり、低回転時の仕事量を抑えることができる。
また、上記DCモータ駆動制御装置20により駆動されて流体を送出するDCモータ10を備えるポンプユニット1によれば、上記と同様に、モータの駆動電源として固定の電圧を出力する簡単な電源を採用しつつも、スイッチング手段の発熱、モータの振動及び騒音、並びに高調波電流の発生を抑制することができる。さらに、ポンプユニット1によれば、大流量側における不要な仕事を抑えることができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るポンプユニット1は、第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が第1実施形態のものと異なっている。
図8は、第2実施形態に係るポンプユニット1のDCモータ10及びDCモータ駆動制御装置20の回路構成図である。同図に示すように、第2実施形態においDCモータ駆動制御装置20は、コンパレータCMP2に代えてオペアンプOP2を備えている。このため、能力可変指示電圧Vaは、オペアンプOP2に入力され、抵抗R7,R8により決まる増幅度で増幅される。
オペアンプOP2の出力電圧は、コンパレータCMP3の反転入力端子に入力される。また、オペアンプOP2の出力側にはツェナーダイオードZDが設けられており、オペアンプOP2の出力電圧が或る電圧値(例えば5V)以上になると、ツェナーダイオードZDによってクランプされる。オペアンプOP2の出力電圧がツェナーダイオードZDによってクランプされた場合、クランプされた電圧がコンパレータCMP3の反転入力端子に入力される。
また、コンパレータCMP3の非反転入力端子には三角波信号が入力される。なお、ツェナーダイオードZDによりクランプされた電圧は、三角波信号の上限電圧値よりも高くなっている。
ここで、オペアンプOP2の出力電圧が「0」から徐々に上昇する場合について、コンパレータCMP3の出力信号がどのように推移するかを説明する。まず、オペアンプOP2の出力電圧が「0」などである場合、オペアンプOP2の出力電圧は、コンパレータCMP3の非反転入力端子に入力する三角波信号の下限電圧値よりも低くなる。このため、コンパレータCMP3の出力はHレベルとなる。
さらに、オペアンプOP2の出力電圧が「0」から上昇して下限電圧値以上且つ上限電圧値以下となると、コンパレータCMP3の出力はHレベルとLレベルとで交互に変化することとなる。このとき、下限電圧値以上且つ上限電圧値以下の範囲内で、オペアンプOP2の出力電圧が高くなるほど、コンパレータCMP3の出力はLレベルの割合が高くなる。
その後、オペアンプOP2の出力が上限電圧値を超えると、コンパレータCMP3の出力はLレベルとなる。以上のように、コンパレータCMP3の出力信号が変化するため、能力可変指示電圧Vaの増加に伴って、DCモータ10は以下のようなデューティ比で駆動されることとなる。
図9は、第2実施形態に係るDCモータ駆動制御装置20において能力可変指示電圧VaとPWMデューティとの相関を示すグラフである。なお、図9において縦軸はPWMデューティ(%)を示し、横軸は能力可変指示電圧Va(V)を示している。また、図9において実線は本実施形態を示し、破線は従来のPWM制御を示している。
同図に示すように、本実施形態の制御では、能力可変指示電圧Vaが電圧V0以下である場合、アンド回路ANDにはLレベルの電圧信号が入力する。このため、電流供給はオフされ、デューティ比は0%となる。また、能力可変指示電圧Vaが電圧V0を超え電圧V2以下である場合、アンド回路ANDにはHレベルとLレベルとの電圧信号が交互に入力する。このため、能力可変指示電圧Vaの大きさに応じたデューティ比によってDCモータ10が駆動されることとなる。また、能力可変指示電圧Vaが電圧V2を超える場合、アンド回路ANDにはHレベルの電圧信号が入力され、デューティ比100%による電流供給が行われる。
以上から、第2実施形態では、DCモータ10の起動して高回転等させるべく能力可変指示電圧Vaを徐々に高めていく過程において、停止、PWM制御及びデューティ比100%制御の順でDCモータ10が駆動されることとなる。すなわち、DCモータ10の駆動の初期段階においてPWM制御が行われることとなり、停止状態から突然100%のデューティ比によるDCモータ10の駆動を行う場合に比べて、スムーズなモータ起動を行うことができるようになっている。なお、図9に示す従来のPWM制御は、図4に示した例と同じである。また、図9に示すように、DCモータ10が駆動されるのは、モータ巻線12に通電される電流値がピーク電流閾値発生回路26により決定された最大値以下である場合、すなわちラッチ回路LがHレベルにラッチされていない状態であることは言うまでもない。
図10は、第2実施形態に係るDCモータ駆動制御装置20の動作を示すタイムチャートである。まず、図10に示すように、時刻0において、能力可変指示電圧Vaは、電圧V0よりも高いが電圧V2よりも低くなっている(図10(a))。このため、図9を参照して説明したように、アンド回路ANDの入力電圧はHレベルとLレベルとを交互に繰り返すこととなり(図10(b))、オペアンプOP1の出力電圧からも明らかなように、複数相のモータ巻線12には交互に電流が供給され(図10(c))、DCモータ10はPWM制御により駆動されていると言える。そして、時刻0から時刻t22までの期間においてPWM制御が行われる。なお、この制御が行われる区間をPWM制御フェーズという。
そして、時刻t22において、能力可変指示電圧Vaが電圧V2を上回ったとすると(図10(a))、第1実施形態において説明したデューティ比100%の電流供給と設定時間Δtの電流供給オフとによる制御が行われる(図10(b)及び(c))。
なお、図8〜図10に示す例では、能力可変指示電圧Vaが増幅され、増幅された電圧が三角波信号の下限電圧値以上且つ上限電圧値以下である場合に、PWM制御を行うようにしていたが、これに限らず、DCモータ10の起動から所定時間経過するまで、複数相のモータ巻線12への電流供給をPWM制御により行うようにしてもよい。これによっても、スムーズなモータ起動を行うことができる。
さらには、モータ回転数Nが所定回転数に達するまでPWM制御を行うようにしてもよい。図11は、第2実施形態に係るDCモータ駆動制御装置20の動作の変形例を示すタイムチャートである。
例えば、図11(a)に示すように、時刻0〜時刻t32までの区間においてDCモータ10の回転数Nが徐々に増加し、時刻t32〜時刻t33までの区間においてDCモータ10の回転数Nが一定を保ち、その後、時刻t33以降の区間においてDCモータ10の回転数Nが減少するとする。
この場合において、DCモータ駆動制御装置20は、DCモータ10の回転数Nに応じた電圧値を生成する(図11(b))。そして、その生成した電圧値が特定電圧値V3を超えるまではPWM制御を行い、生成した電圧値が特定電圧値V3を超えるとデューティ比100%による電流供給を行うようにしてもよい(図11(c))。このように回転数Nが所定回転数に達するまでPWM制御を行うようにしても、上記と同様に、スムーズなモータ起動を行うことができる。
さらに、DCモータ駆動制御装置20は、複数相のモータ巻線12への電流供給をPWM制御により行うにあたり、複数相のモータ巻線12に通電する電流の最大値を一定値に固定し、この一定値以下の範囲で電流供給を行うようにすることが望ましい。
図12は、複数相のモータ巻線12に通電する電流の最大値を示すグラフである。なお、図12において縦軸は電流最大値(I)を示し、横軸は能力可変指示電圧Va(V)を示している。
図12に示すように、PWM制御フェーズにおいて複数相のモータ巻線12へ供給される電流の最大値は一定値Iaに固定されており、DCモータ駆動制御装置20は、一定値Ia以下の範囲で電流供給を行う。ここで、一定値Iaは、インバータ回路23を構成するスイッチング手段の絶対定格内で決定される。これにより、DCモータ駆動制御装置20は、起動時にかかる電気ストレスにおいてもスイッチング手段の破壊を招くことがないようになる。さらに、一定値Iaを絶対定格内でできるだけ高くに決定しておくことで、起動時に充分なトルクを得ることも可能となる。
なお、図12に示すようにピーク電流制御フェーズでは、第1実施形態と同様に、能力可変指示電圧Vaが大きくなるに従って、複数相のモータ巻線12へ供給される電流の最大値は大きくされる。
このようにして、第2実施形態に係るDCモータ駆動制御装置20によれば、第1実施形態と同様に、モータの駆動電源として固定の電圧を出力する簡単な電源を採用しつつも、スイッチング手段の発熱、モータの振動及び騒音、並びに高調波電流の発生を抑制することができる。また、スイッチング手段の耐電圧オーバーを抑制することができる。また、低回転時の仕事量を抑えることができる。
また、第2実施形態に係るポンプユニット1によれば、第1実施形態と同様に、モータの駆動電源として固定の電圧を出力する簡単な電源を採用しつつも、スイッチング手段の発熱、モータの振動及び騒音、並びに高調波電流の発生を抑制することができる。さらに、大流量側における不要な仕事を抑えることができる。
さらに、第2実施形態に係るDCモータ駆動制御装置20によれば、モータ巻線12に通電される電流値が最大値以下である場合において、能力可変指示電圧Vaが予め定めた第1所定電圧以上且つ第1所定電圧よりも高い第2所定電圧以下であるときには、複数相のモータ巻線12への電流供給をPWM制御により行うこととしている。これにより、DCモータ10の起動して高回転等させるべく能力可変指示電圧Vaが徐々に高まっていく過程において、停止、PWM制御及びデューティ比100%制御の順でDCモータ10が駆動されることとなる。すなわち、DCモータ10の駆動の初期段階においてPWM制御が行われることとなり、停止状態から突然100%のデューティ比によるDCモータの駆動を行う場合に比べて、スムーズなモータ起動を行うことができる。
また、モータ巻線12に通電される電流値が最大値以下である場合において、モータ回転数Nが所定回転数(電圧V3に応じた回転数)に達するまでは、複数相のモータ巻線12への電流供給をPWM制御により行うこととしている。このため、上記と同様に、DCモータ10の起動の初期段階においてPWM制御が行われることとなり、スムーズなモータ起動を行うことができる。
また、モータ巻線12に通電される電流値が最大値以下である場合において、DCモータ10の起動から所定時間経過するまでは、複数相のモータ巻線12への電流供給をPWM制御により行うことしている。このため、上記と同様に、DCモータの起動の初期段階においてPWM制御が行われることとなり、スムーズなモータ起動を行うことができる。
また、複数相のモータ巻線12への電流供給をPWM制御により行うにあたり、複数相のモータ巻線12に通電する電流の最大値を一定値Iaに固定し、この一定値Ia以下の範囲で電流供給を行うこととしている。このため、インバータ回路23を構成するスイッチング手段の絶対定格内で一定値Iaを決定しておくことで、スイッチング手段を安全動作領域内で動作させることができ、スイッチング手段を破壊することなく品質向上を図ることができる。また、一定値Iaを絶対定格内でできるだけ高くに決定しておくことで、起動時に充分なトルクを得ることも可能となる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態において設定時間Δtは、モータ巻線12に通電される電流値がピーク電流閾値発生回路26により決定された電流の最大値を超えてから、次にモータ巻線12の電流切り替えが行われるまでに限らず、固定の時間とされていてもよい。さらに、DCモータ駆動制御装置20は、予め固定の時間を複数記憶しておき、DCモータ10の回転数に応じて複数の固定時間から適切なものを選択して、選択された固定時間だけ、電流供給をオフするようにしてもよい。