以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
図1は、本実施の形態における車両システム100の構成を示す。本実施の形態に係る車両システム100は、車両電源スイッチ102と、表示部112と、メータ114と、SBW(Shift by Wire)システム250と、ECU(Electronic Control Unit)300と、電源リレー302と、電源304と、スマートECU320と、受信部322と、ボディECU330と、ドアロック機構332とを含む。
車両電源スイッチ102がオンされることにより、電源304から車両に搭載される複数の電気機器の各々に電力が供給されて、車両システム100が発進可能な状態および発進可能な状態に移行する前の準備状態となることにより起動される。車両電源スイッチ102は、運転者の操作に応じてシステム起動信号をECU300に送信する。
また、本実施の形態において車両は、エンジンと回転電機とを駆動源とするハイブリッド車両を一例として説明するが、エンジンのみを駆動源とする車両であってもよいし、回転電機のみを駆動源とする電気自動車であってもよいものとする。ハイブリッド車両において、発進可能な状態とは、運転者がアクセルペダルを操作すれば車両が発進する状態であって、車両が発進可能な状態に移行する前の準備状態とは、たとえば、車両に搭載された複数の電気機器の一部(たとえば、オーディオ等)が起動した状態である。
電源304は、車両に搭載される複数の電気機器に電力を供給する。電源304と複数の電気機器との間には、電源リレー302が設けられる。電源リレー302は、ECU300の制御により電源304から複数の電気機器への電力を供給状態および遮断状態のうちのいずれかに設定する。
ECU300は、車両電源スイッチ102に接続され、車両電源スイッチ102からのシステム起動信号に受信すると、上述の供給状態が設定されるように電源リレー302を制御する。
スマートECU320は、運転者が携帯するスマートキー326からの各種信号に基づいてボディECU330を経由してドアロック機構332のロック状態を制御する。
受信部322は、スマートキー326からの各種信号を受信して、受信した信号をスマートECU320に送信する。
タッチセンサ324は、車両の外部に設けられる接点に運転者が接触した場合に、運転者が接触したことを示す信号をスマートECU320に送信する。
スマートECU320は、受信部322またはタッチセンサ324から受信する信号に基づいて、後述するドアロック機構332のロックを解除する信号(以下、ロック解除信号と記載する)あるいはロックを行なう信号(以下、ロック信号と記載する)をボディECU330に送信する。
ボディECU330は、スマートECU320からのロック解除信号あるいはロック信号に基づいてドアロック機構332を制御する。すなわち、ボディECU330は、ロック解除信号を受信すると、ドアロック機構332のアクチュエータ(図示せず)を駆動して車両のドア(フロント、リアまたはバック)のロックを解除する。あるいは、ボディECU330は、ロック信号を受信すると、ドアロック機構332のアクチュエータを駆動して、車両のドアをロックする。
ドアロック機構332においては、有線通信または無線通信を経由して受信する、運転者の操作部材への操作により生じたロック解除信号に基づいてボディECU330の制御によりロックが解除される。
なお、運転者の操作部材への操作は、スマートキー326およびタッチセンサ324への操作に限定されるものではない。
また、SBWシステム250は、SBW−ECU200と、シフトスイッチ104と、Pスイッチ106と、アクチュエータ202と、エンコーダ204と、シフト切換機構206とを含む。SBWシステム250は、車両のシフトポジションを切り換えるために用いられ、電気制御によりシフトポジションを切り換えるシフトバイワイヤシステムとして機能する。
具体的にはシフト切換機構206がアクチュエータ202により駆動されてシフトポジションの切り換えを行なう。
Pスイッチ106は、シフトポジションをパーキングポジション(以下、「Pポジション」と呼ぶ)とパーキング以外のポジション(以下、「非Pポジション」と呼ぶ)との間で切り換えるためのスイッチであり、スイッチの状態を運転者に示すためのインジケータ108および運転者からの指示を受付ける入力部110を含む。
運転者は、入力部110を通じて、シフトポジションをPポジションに入れる指示を入力する。入力部110はモーメンタリスイッチであってもよい。入力部110が受付けた運転者からの指示を示すP指令信号は、SBW−ECU200に送信される。なお、このようなPスイッチ106以外により、非PポジションからPポジションにシフトポジションを切り換えるものであってもよい。
SBW−ECU200は、シフトポジションをPポジションと非Pポジションとの間で切り換えるために、シフト切換機構206を駆動するアクチュエータ202の動作を制御し、現在のシフトポジションの状態をインジケータ108に提示する。シフトポジションが非Pポジションであるときに運転者は入力部110を押下すると、SBW−ECU200はシフトポジションをPポジションに切り換えて、インジケータ108に現在のシフトポジションがPポジションである旨を提示する。
アクチュエータ202は、スイッチドリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」と表記する)により構成され、SBW−ECU200からのアクチュエータ制御信号を受信してシフト切換機構206を駆動する。エンコーダ204は、アクチュエータ202と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検知する。本実施の形態のエンコーダ204は、A相、B相およびZ相の信号を出力するロータリーエンコーダである。SBW−ECU200は、エンコーダ204から出力される信号を取得してSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための通電の制御を行なう。
シフトスイッチ104は、シフトポジションをドライブ(D)ポジション、リバース(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション、ブレーキ(B)ポジションなどのポジションに切り換えたり、またPポジションに入れられているときには、Pポジションを解除したりするためのスイッチである。シフトスイッチ104が受付けた運転者からの指示を示すシフト信号はSBW−ECU200に送信される。SBW−ECU200は、運転者からの指示を示すシフト信号に基づき、現在のシフトポジションの状態をメータ114に提示する。
ECU300は、車両システム100の動作を統括的に管理する。表示部112は、ECU300またはSBW−ECU200が発した運転者に対する指示や警告などを表示する。本実施の形態において、ECU300は、スマートECU320およびSBW−ECU200に接続される。ECU300は、スマートECU320からロック解除信号を受信したり、SBW−ECU200から後述するPポジションの確定処理が完了したことを示す信号を受信したりする。メータ114は、車両の機器の状態やシフトポジションの状態などを提示する。
また、本実施の形態において、電源関連の電気機器の制御については、説明の便宜上、ECU300が行なうとして説明するが、たとえば、電源関連の電気機器の制御については、ECU300と異なるECU(たとえば、電源ECU)により行なわれてもよい。
図2は、シフト切換機構206の構成を示す。以下、シフトポジションは、Pポジション、非Pポジションを意味し、非Pポジションにおける、R、N、Dの各ポジションを含まないとして説明するが、R、N、Dの各ポジションを含むようにしてもよい。すなわち、本実施の形態においては、Pポジションと非Pポジションとの2ポジションの構成について説明するが、Pポジションと、R、N、Dの各ポジションを含む非Pポジションとの4ポジションの構成にしてもよい。
シフト切換機構206は、アクチュエータ202により回転されるシャフト228、シャフト228の回転に伴って回転するディテントプレート230、ディテントプレート230の回転に伴って動作するロッド226、回転軸に固定されたパーキングロックギヤ222、パーキングロックギヤ222をロックするためのパーキングロックポール224、ディテントプレート230の回転を制限してシフトポジションを固定するディテントスプリング220およびころ218を含む。ディテントプレート230は、アクチュエータ202により駆動されてシフトポジションを切り換える。またエンコーダ204は、アクチュエータ202の回転量に応じた計数値を取得する計数手段として機能する。
図2は、シフトポジションが非Pポジションであるときの状態を示している。この状態では、パーキングロックポール224がパーキングロックギヤ222をロックしていないので、車両の駆動軸の回転は妨げられない。この状態からアクチュエータ202によりシャフト228を時計回り方向に回転させると、ディテントプレート230を介してロッド226が図2に示す矢印Aの方向に押され、ロッド226の先端に設けられたテーパ部によりパーキングロックポール224が図2に示す矢印Bの方向に押し上げられる。ディテントプレート230の回転に伴ってディテントプレート230の頂部に設けられた2つの谷のうちの一方、すなわち非Pポジション位置212にあったディテントスプリング220のころ218は、山208を乗り越えて他方の谷、すなわちPポジション位置210へ移る。ころ218は、その軸方向に回転可能にディテントスプリング220に設けられている。ころ218がPポジション位置210に来るまでディテントプレート230が回転したとき、パーキングロックポール224は、パーキングロックポール224の突起部分がパーキングロックギヤ222の歯部間に嵌合する位置まで押し上げられる。これにより、車両の駆動軸が機械的に固定され、シフトポジションがPポジションに切り換わる。
本実施の形態において車両システム100では、シフトポジション切換時にディテントプレート230、ディテントスプリング220およびシャフト228などのシフト切換機構206の構成部品に係る負荷を低減するために、SBW−ECU200が、ディテントスプリング220のころ218が山208を乗り越えて落ちるときの衝撃を少なくするように、アクチュエータ202の回転量を制御する。
ディテントプレート230のそれぞれの谷において、山208から離れた側に位置する面を壁と呼ぶ。すなわち壁は、SBW−ECU200による以下に示す制御を行なわない状態でディテントスプリング220のころ218が山208を乗り越えて谷に落ちるときに、ころ218とぶつかる位置に存在する。Pポジション位置210における壁を「P壁」と呼び、非Pポジション位置212における壁を「非P壁」と呼ぶ。
ころ218がPポジション位置210から非Pポジション位置212に移動する場合、SBW−ECU200は、非P壁216がころ218に衝突しないように、あるいは衝突しても衝撃力が緩和されるようにアクチュエータ202を制御する。具体的には、SBW−ECU200は、非P壁216がころ218に衝突する手前の位置でアクチュエータ202の回転を停止する。この位置を「非P目標回転位置」と呼ぶ。
また、ころ218が非Pポジション位置212からPポジション位置210に移動する場合、SBW−ECU200は、P壁214がころ218に衝突しないように、あるいは衝突しても衝撃力が緩和されるようにアクチュエータ202を制御する。具体的には、SBW−ECU200は、P壁214がころ218に衝突する手前の位置でアクチュエータ202の回転を停止する。この位置を「P目標回転位置」と呼ぶ。
SBW−ECU200によるアクチュエータ202の制御により、シフトポジション切換時においてディテントプレート230、ディテントスプリング220およびシャフト228などのシフト切換機構206の構成部品に係る負荷を大幅に低減することができる。負荷を低減することによりシフト切換機構206の構成部品の軽量化、低コスト化を図ることもできる。
アクチュエータ202は、シャフト228に設けられたディテントプレート230を回転する。ディテントプレート230に形成されたP壁214および非P壁216によりそれぞれ予め定められた方向の回転が規制される。
現在のシフトポジションは、P壁位置または非P壁位置から予め定められた回転量の範囲内にある場合に決定される。
具体的には、SBW−ECU200は、エンコーダ204で検出された回転量に基づく、アクチュエータ202の回転位置(ディテントプレート230におけるころ218の相対位置)がP壁位置から予め定められた位置までの第1の範囲内にあるときには、シフトポジションがPポジションであることを判定する。
一方、SBW−ECU200は、エンコーダ204で検出された回転量に基づく、アクチュエータ202の回転位置が非P壁位置から予め定められた位置までの第2の範囲内にあるときには、シフトポジションが非Pポジションであることを判定する。
SBW−ECU200は、P壁位置(あるいは非P壁位置)におけるカウンタ値と、アクチュエータ202の回転中にエンコーダ204により検知されるカウンタ値との差分の絶対値を算出することによりアクチュエータ202の回転量を検出する。
また、SBW−ECU200は、アクチュエータ202の回転位置が第1の範囲にも第2の範囲にもないときには、シフトポジションが不定またはシフトが切換中であることを判定する。
P目標回転位置は、非PポジションからPポジションへの切換時に、P壁214がディテントスプリング220のころ218に衝突しない位置であり、P壁位置から所定のマージンをもって定められる。マージンは、経時変化などによりガタを考慮して余裕を持って設定される。これによりある程度の使用回数であれば経時変化を吸収することができ、シフトポジション切換時におけるP壁214ところ240との衝突を回避できる。
非P目標回転位置は、Pポジションから非Pポジションへの切換時に、非P壁216がディテントスプリング220のころ218に衝突しない位置であり、非P壁位置から所定のマージンを持って定められる。マージンは経時変化などによるガタを考慮して余裕を持って設定され、ある程度の使用回数であれば経時変化を吸収することができ、シフトポジション切換時における非P壁216ところ218との衝突を回避することができる。なお、非P壁位置からのマージンとP壁位置からのマージンとは同一である必要はなく、ディテントプレート230の形状などに依存して異なってもよい。
以上、P壁位置および非P壁位置が検出されていることを前提にアクチュエータ202の制御方法を示した。P壁位置または非P壁位置は、Pポジション位置210または非Pポジション位置212におけるシフトポジション判定範囲および目標回転位置を定めるための基準位置となる。以下では、相対的な位置情報を検出するエンコーダ204を用いて、アクチュエータ202の位置制御を行なう方法、具体的には基準位置となる壁位置を検出する方法を示す。
SBW−ECU200は、アクチュエータ202を回転させる制御手段、およびアクチュエータ202のP壁位置、すなわち基準位置を設定する設定手段として機能する。P壁位置検出制御では、まず、アクチュエータ202によりディテントプレート230を時計回り方向、すなわちP壁214がディテントスプリング220のころ218に向かう方向に回転させ、ころ218とP壁214とを接触させる。P壁214は、Pポジション位置において、アクチュエータ202の時計回り方向の回転を規制する規制部材として機能する。なおP壁214は、ディテントスプリング220およびころ218と協同して規制部材を構成するようにしてもよい。
すなわち、SBW−ECU200は、規制部材により規制されたアクチュエータ202の回転位置に基づいて、複数のシフトポジションのうちの少なくとも1つのシフトポジションの位置を設定する。
図3に示す、矢印F1は、アクチュエータ202による回転力、矢印F2は、ディテントスプリング220によるばね力、矢印F3は、ロッド226による押し戻し力を示す。点線で示すディテントプレート230’は、P壁214ところ220とが接触した位置を示す。したがって、ディテントプレート230’の位置を検出することがP壁214の位置を検出することに相当する。
ディテントプレート230は、P壁214ところ218との接触後も、点線で示す位置から、アクチュエータ202の回転力F1により時計回り方向に、ディテントスプリング220のばね力に抗して回転される。これによりディテントスプリング220に撓みが生じて、ばね力F2が増加し、またロッド226による押し戻し力F3も増加する。回転力F1が、ばね力F2および押し戻し力F3と釣り合ったところでディテントプレート230の回転が停止する。
ディテントプレート230の回転停止は、エンコーダ204により取得される計数値の状態に基づいて判定される。SBW−ECU200は、エンコーダ204の計数値の最小値または最大値が所定時間変化しない場合に、ディテントプレート230およびアクチュエータ202の回転停止を判定する。計数値の最小値または最大値のいずれかを監視するかは、エンコーダ204に応じて設定されればよく、いずれにしても最小値または最大値が所定時間変化しないことは、ディテントプレート230が動かなくなった状態を示す。
SBW−ECU200は、回転停止時のディテントプレート230の位置を暫定的なP壁位置(以下、「暫定P壁位置」と呼ぶ)として検出し、またディテントスプリング220の撓み量または撓み角を算出する。撓み量または撓み角の算出は、SBW−ECU200に予め保持されている、アクチュエータ202への印加電圧に対応する撓み量または撓み角の関係を示すマップを用いて行なわれる。SBW−ECU200は、マップから暫定P壁位置検出時のアクチュエータ202への印加電圧に対応する撓み量ないし撓み角を算出する。なお、アクチュエータ202の印加電圧の代わりに、電源電圧を用いたマップであってもよい。電源電圧はECU300を通じてSBW−ECU200により監視されており、容易に検出することができる。なお、この場合は、電源304からアクチュエータ202までのワイヤハーネスなどによる電圧降下分を考慮してマップが作成されることになる。SBW−ECU200は、このマップを用いて、算出した撓み量または撓み角から、暫定P壁位置をマップ補正し、マップ補正した位置をP壁位置として確定する。P壁位置を確定することによりP目標回転位置を設定することができる。なお、印加電圧に対する撓み量または撓み角の関係を示すマップの代わりに、アクチュエータ202の出力トルクに対応する撓み量または撓み角の関係を示すマップであってもよいし、マップを用いて算出する代わりに、撓み量または撓み角を検出するセンサを設け、それにより検出するようにしてもよい。
また、非P壁位置の設定についてもP壁位置の設定方法と同様に基準位置を設定することができる。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
以上のように説明したとおり、SBWシステム250が起動するとSBW−ECU200は、アクチュエータ202を回転させて、ディテントプレート230の壁と、ディテントスプリング220のころ218とを接触させる。そして、その接触位置を検出することにより、シフトポジションの基準位置に対応するディテントプレート230の壁位置を検出する。この壁位置を基準位置として設定することにより、相対位置情報しか検出できないエンコーダ204を用いても、アクチュエータ202の回転を適切に制御することができる。すなわち、ニュートラルスタートスイッチ等を用いずにシフトポジションの切り換えを適切に実行することができる。
本実施の形態においては、運転者により車両電源スイッチ102がオンされて車両システム100が起動する毎に、P壁位置を設定することにより、パーキングポジションに対応するアクチュエータ202の作動位置を補正または学習する。
このような構成を有する車両において、車両システム100の起動操作が行なわれた時点で、P壁位置を設定するようにすると、Pポジションにおけるアクチュエータの基準位置の設定を完了するために長い時間を要するという問題がある。
そのため、運転者が車両システム100の起動操作を行なったにも関わらず、車両システム100の起動に長い時間を要するため、運転者の意図に対応して車両を速やかに発進させることができない可能性がある。その結果、運転者は車両システム100の起動について応答性が悪いと感じる場合がある。
そこで、本発明は、ECU300が、シフト切換機構206においてパーキングポジションが設定された状態であって、かつ、電源リレー302により供給状態が設定される前に運転者により操作される操作部材の状態が検出された場合に、Pポジションに対応するアクチュエータの作動位置を補正または学習するようにアクチュエータを制御する点に特徴を有する。
また、ECU300は、アクチュエータ202の作動位置の補正または学習が完了してから予め定められた時間が経過するまでに、運転者の操作に応じて電源リレー302により供給状態が設定されない場合、アクチュエータ202の駆動に関連する電気機器への電力の供給を遮断する。本実施の形態において、アクチュエータ202の駆動に関連する電気機器とは、SBWシステム250を構成する電気機器である。
図4に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU300の機能ブロック図を示す。
図4に示すように、ECU300は、入力インターフェース(以下、入力I/Fと記載する)350と、演算処理部400と、記憶部500と、出力インターフェース(以下、出力I/Fと記載する)600とを含む。
入力I/F350は、スマートECU320からのロック解除信号と、車両電源スイッチ102からのシステム起動信号と、SBW−ECU200からの設定完了信号とを受信して、演算処理部400に送信する。
演算処理部400は、ロック解除検出部402と、SBW起動制御部404と、処理完了判定部406と、タイマー部408と、電源操作判定部410と、SBW停止制御部412と、電源制御部414とを含む。
ロック解除検出部402は、運転者がスマートキー326に対してドアロック機構332のロックを解除する操作をしたり、あるいは、運転者がタッチセンサ324に接触したりすることにより生じるロック解除信号を受信するか否かを判定する。なお、ロック解除検出部402は、たとえば、ロック解除信号を受信すると、ロック解除判定フラグをオンするようにしてもよい。
なお、ロック解除検出部402は、運転者によるドアロック機構332のロックを解除する操作を検出できればよく、特にスマートキー326あるいはタッチセンサ324からの信号に限定してロックが解除されたか否かを検出するものではない。
SBW起動制御部404は、ロック解除信号を受信すると判定すると、SBWシステム250が起動する。具体的には、SBW起動制御部404は、出力I/F600を経由してSBWシステム250を起動することを示すSBW起動信号をSBW−ECU200に送信する。SBW−ECU200は、SBW起動信号を受信すると、Pポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定処理を実施する。SBW起動制御部404は、たとえば、ロック解除判定フラグがオンであると、SBWシステム250に対して起動信号を送信するようにしてもよい。
処理完了判定部406は、SBWシステム250においてPポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定処理が完了したか否かを判定する。本実施の形態において、SBW−ECU200は、Pポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定処理が完了する設定完了信号をECU300に対して送信する。処理完了判定部406は、SBW−ECU200から設定完了信号を受信すると、SBWシステム250においてPポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定が完了したことを判定する。
なお、処理完了判定部406は、たとえば、SBWシステム250においてPポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定処理が完了したことを判定すると設定完了フラグをオンするようにしてもよい。
タイマー部408は、処理完了判定部406においてPポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定処理が完了したことが判定されると、タイマーを起動する。すなわち、タイマー部408は、カウンタを初期値にリセットして予め定められた計算サイクル毎に予め定められた値を加算することにより、基準位置の設定が完了してからの経過時間を計測する。なお、タイマー部408は、たとえば、設定完了フラグがオンされてからの経過時間を計測する。
電源操作判定部410は、車両電源スイッチ102がオンされたか否かを判定する。電源操作判定部410は、システム起動信号を受信すると、車両電源スイッチ102がオンされたことを判定する。なお、電源操作判定部410は、たとえば、車両電源スイッチ102がオンされると電源操作判定フラグをオンするようにしてもよい。
SBW停止制御部412は、タイマー部408において計測された時間が予め定められた時間Tを経過している場合に、SBWシステム250が停止するようにSBW停止信号を出力I/F600を経由してSBW停止信号をSBW−ECU200に送信する。
SBW−ECU200は、SBW停止信号を受信すると、アクチュエータ202の駆動に関連する電気機器に対する電力供給を遮断して機能を停止する。
電源制御部414は、車両電源スイッチ102がオンされた場合に電源リレー302がオンするように電源制御信号を出力I/Fを経由して送信する。電源リレー302がオンされると、車両が発進可能な状態(READY−ON状態)となる。
また、本実施の形態において、ロック解除検出部402と、SBW起動制御部404と、処理完了判定部406と、タイマー部408と、電源操作判定部410と、SBW停止制御部412と、電源制御部414とは、いずれも演算処理部400であるCPUが記憶部500に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
記憶部500には、各種情報、プログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部400によってデータが読み出されたり、格納されたりする。
図5を参照して、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU300で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU300は、ロック解除信号を検出するか否かを判定する。ロック解除信号を検出すると(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS100に戻される。
S102にて、ECU300は、SBWシステム250を起動する。S104にて、ECU300は、SBWシステム250においてPポジションに対応する基準位置の設定が完了したか否かを判定する。基準位置の設定が完了すると(S104にてYES)、処理はS106に移される。もしそうでないと(S104にてNO)、処理はS104に戻される。
S106にて、ECU300は、タイマーを起動する。S108にて、ECU300は、車両電源スイッチ102がオンされたか否かを判定する。車両電源スイッチ102がオンされると(S108にてYES)、処理はS114に移される。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS110に移される。
S110にて、ECU300は、タイマーが起動してから予め定められた時間Tが経過したか否かを判定する。予め定められた時間Tが経過すると(S110にてYES)、処理はS112に移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS106に戻される。
S112にて、ECU300は、SBWシステム250を停止する。S114にて、ECU300は、電源リレー302をオンして、車両システム100をREADY−ON状態とする。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU300の動作について説明する。
たとえば、車両が停車中であって、シフトポジションがパーキングポジションであって、車両に乗員が搭乗しておらず、かつ、施錠された状態である場合を想定する。車両から離隔した位置から運転者がスマートキー326を操作して、車両のドアロック機構332のロックを解除する操作を行なうと、スマートキー326からロック解除信号が出力される。受信部322においてスマートキー326から出力されたロック解除信号が受信されると、スマートECU320を経由してECU300にロック解除信号が送信される。
スマートECU320は、受信部322においてロック解除信号を受信するとボディECU330に対してロック解除信号を送信する。ボディECU330は、ロック解除信号に基づいてドアロック機構332のロックを解除するようにドアロック機構332のアクチュエータを制御する。
一方、ECU300において、スマートキー326あるいはタッチセンサ324からロック解除信号が受信されると(S100にてYES)、ECU300は、SBWシステム250を起動する(S102)。
SBWシステム250が起動すると、SBW−EUC200は、Pポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定処理を実施する。Pポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定が完了すると(S104にてYES)、タイマーが起動されて(S106)、車両電源スイッチ102がオンされるか否かが判定される(S106)。
Pポジションに対応するアクチュエータ202の基準位置の設定が完了した後、予め定められた時間Tが経過するまで車両電源スイッチ102がオンされないと(S110にてYES)、SBWシステム250は停止される(S112)。
一方、Pポジションに対応する基準位置の設定が完了した後、予め定められた時間Tが経過するまでに車両電源スイッチ102がオンされると(S108にてYES)、電源リレー302がオンされて、車両システム100は、READY−ON状態となる。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、電源リレーにより供給状態が設定される前に運転者により操作される操作部材が操作された状態になった場合に、パーキングポジションに対応するアクチュエータの作動位置を補正または学習するようにアクチュエータを制御することにより、運転者が車両システムの起動操作を行なう時点でアクチュエータの作動位置を補正または学習する場合と比較して、より早期の段階でアクチュエータの作動位置の補正または学習の処理を開始することができるため、より早期の段階でアクチュエータの作動位置の補正または学習の処理を完了することができる。そのため、運転者が車両システムの起動操作を行なってから速やかに車両を発進可能な状態にすることができる。その結果、運転者が車両システムの起動について応答性が悪いと感じることを抑制することができる。したがって、アクチュエータにより駆動するシフト切換機構が搭載された車両システムを応答性よく起動する車両の制御装置および制御方法を提供することができる。
本実施の形態において、操作部材としてドアロック機構のロックを解除する操作部材を一例として説明したが、電源リレーにより供給状態が設定される前であれば、特にロック解除の操作部材に限定されるものではない。たとえば、ドアの開閉を検出すると、Pポジションに対応するアクチュエータの基準位置を設定するようにしてもよいし、運転者の着座後のブレーキペダルの踏み込みを検出すると、Pポジションに対応するアクチュエータの基準位置を設定するようにしてもよいし、あるいは、座席に設けられる着座センサにより、運転者の着座を検出すると、Pポジションに対応するアクチュエータの基準位置を設定するようにしてもよい。
また、アクチュエータの作動位置の補正または学習が完了してから予め定められた時間Tが経過するまで、運転者の操作に応じて電源リレーが複数の電気機器に電力が供給される状態に設定されない場合、運転者は車両を起動する意図がないといえる。そのため、そのような場合に、アクチュエータの駆動に関連する電気機器に供給される電力を遮断することにより、無駄な電力消費を抑制して、バッテリ上がり等を防止することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 車両システム、102 車両電源スイッチ、104 シフトスイッチ、106 Pスイッチ、108 インジケータ、110 入力部、112 表示部、114 メータ、200 SBW−ECU、202 アクチュエータ、204 エンコーダ、206 シフト切換機構、208 山、210 Pポジション位置、212 非Pポジション位置、214 P壁、216 非P壁、220 ディテントスプリング、222 パーキングロックギヤ、224 パーキングロックポール、226 ロッド、228 シャフト、230 ディテントプレート、250 SBWシステム、300 ECU、302 電源リレー、304 電源、322 受信部、330 ボディECU、332 ドアロック機構、350 入力I/F、400 演算処理部、402 ロック解除検出部、404 SBW起動制御部、406 処理完了判定部、408 電源操作判定部、410 タイマー部、412 SBW停止制御部、414 電源制御部、500 記憶部、600 出力I/F。