JP4517481B2 - 取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分としたポリエステル系未延伸糸に関し、さらに詳しくは繊維構造および寸法の安定性、仮撚加工や延伸等の工程通過性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル繊維は、機械的特性をはじめ様々の優れた特性を有しているため、最も衣料用に適した合成繊維として世界中で大量生産されている。
【0003】
一方、ポリトリメチレンテレフタレート繊維(以下PTT繊維と略記する)は、特開昭52−5320号公報や特開昭52−8124号公報などにみられるように古くから研究されており、伸長弾性回復性に優れるとともに、ヤング率が低いために布帛にした際にソフト風合いを呈し、衣料用に好適な素材であることが知られている。
【0004】
しかしながら、原料の1,3プロパンジオールが比較的高価であるため、合成繊維としての工業生産は行われていなかった。
【0005】
近年になり、米国特許第5,304,691号明細書などで開示されているように、安価な1,3プロパンジオールの合成法が見い出されたため、PTT繊維の工業生産の可能性が急速に高まってきている。
【0006】
PTT繊維はメチレン鎖の部分が大きく屈曲しており、その屈曲部の伸長・回復により高い伸縮特性を有する。そのため、例えば仮撚加工糸や強撚糸とした場合に優れたストレッチ性を示すため、高い自由度が要求される衣服に最適な素材といえる。
【0007】
ところが、本発明者らの検討により、このような特異な分子形態を有することに起因する紡糸・延伸での巻締まりやパッケージ内外層での物性差、またそれに伴う加工工程での工程通過性不良や染色欠点等、多くの問題が発生することがわかった。また、PTT未延伸糸は環境温度に敏感であり、高温での保管により容易に経時変化し、前記問題点が顕在化する。そのため、特に夏場のトラック輸送に耐えうる高品質の未延伸糸が得られていなかった。このように、PTT未延伸糸は加工条件の適正化が困難であるばかりか、保管には厳密な温度管理が要求され、さらには最終製品までの工程日数の大幅な短縮が必要なため用途が大幅に限定されてしまう。
【0008】
この解決手段として、特開昭52−8123号公報や国際公開WO99/27188に開示されているように、紡糸、延伸工程を連続して行う直接紡糸延伸法を用いる方法があるが、該方法は延伸糸の製造に関する発明であり、延伸工程を経るため本発明の目的とする物性を示す未延伸糸を得ることはできない。
【0009】
また、PTT繊維の未延伸糸を得る方法として、特開平11−302919号公報に口金下で除冷してから引き取った後、糸条を十分に冷却して巻き取る方法が開示されている。該方法を用いれば、確かに巻締まりを抑制しつつ巻き取ることができるが、繊維内部構造が固定されていないため経時変化が生じ、前記のような問題が顕在化して品質の悪い未延伸糸しか得られない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする未延伸糸の巻締まりや繊維内部の歪み緩和に起因する工程通過性不良、染色性不良等の問題を解決し、取り扱い性や汎用性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するため本発明のポリエステル系未延伸糸およびその製造方法は、次の構成を有する。すなわち、
[1]実質的にポリトリメチレンテレフタレートから構成され、極限粘度が0.7〜1.2であるポリトリメチレンテレフタレート繊維からなるマルチフィラメントであって、以下の(1)〜(5)の要件を満足することを特徴とするポリエステル系未延伸糸である。
【0012】
(1)破断強度 :2.0cN/dtex以上
(2)破断伸度 :55〜130%
(3)複屈折度 :0.04〜0.07
(4)遅延収縮率 :2%以下
(5)50℃乾熱収縮率:10%以下
[2]沸騰水収縮率が3〜20%であることを特徴とする前記[1]記載のポリエステル系未延伸糸。
【0013】
[3]温度変調DSCにおける冷結晶化熱量△Hが10J/g以下であることを特徴とする前記[1]または[2]記載のポリエステル系未延伸糸。
【0014】
[4]温度変調DSCにおける結晶化度が30%以上であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
【0015】
[5]糸の太さ斑U%(ノーマルモード)が1%以下であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
【0016】
[6]CF値が3以上であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
【0017】
[7]前記[1]〜[6]のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸が巻き付けられ、サドルが4mm未満でかつバルジ率が10%未満であることを特徴とするチーズ状未延伸糸パッケージ。
【0018】
[8]ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする極限粘度が0.75以上のポリエステルを溶融紡糸し、紡糸糸条を一旦冷却固化した後、内部雰囲気温度が120〜220℃の加熱筒装置で0.01秒以上熱処理し、再び冷却してから残留伸度55〜130%になるような紡糸速度で糸条を引き取り、引き続いて弛緩率0〜3%で弛緩させた後、0.2cN/dtex以下の張力で巻き取ることを特徴とする前記[1]記載のポリエステル系未延伸糸の製造方法。
【0019】
[9]紡糸引き取り後、ゴデーロール間で弛緩処理する際に、内部雰囲気温度が100〜150℃の熱処理装置で熱処理を施すことを特徴とする前記[8]記載のポリエステル系未延伸糸の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリエステル系未延伸糸を構成するポリエステルとは、その構成単位の少なくとも90モル%がテレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと略記する)である。ただし、10モル%、より好ましくは6モル%以下の割合で、他のエステル結合の形成可能な共重合成分を含んでいてもよく、他のポリマーやコポリマーを少量ブレンドしてもよい。また、共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0021】
本発明においては、未延伸糸を形成するPTTの極限粘度は0.7〜1.2のものである。極限粘度が0.7未満では、如何なる紡糸条件を適用しても本発明の目的とする強度を満足することができない。一方、極限粘度が1.2を越えるPTT繊維は製造が困難であるとともに、得られる未延伸糸の糸加工工程での加工張力の増大により糸切れ、毛羽の発生を誘発し、加工性が低下してしまう。極限粘度の好ましい範囲は、製造の容易さ、後の糸加工性を考慮すると0.75〜1.15の範囲が好ましく、0.8〜1.1がより好ましい。
【0022】
また、本発明のポリエステル系未延伸糸は下記(1)〜(5)の要件を同時に満足することが重要である。
【0023】
(1)破断強度 :2.0cN/dtex以上
(2)破断伸度 :55〜130%
(3)複屈折度 :0.04〜0.07
(4)遅延収縮率 :2%以下
(5)50℃乾熱収縮率:10%以下
破断強度は延伸や仮撚、整経や製織を行う際の工程通過性や、布帛の機械的特性に大きく影響する。前記生産性や製品の品質を満足するためには、2.0cN/dtex以上とするものであり、好ましくは2.5cN/dtex以上、より好ましくは3.0cN/dtexである。
【0024】
また、破断伸度は延伸や仮撚工程での加工性を良好にするために55%以上とするものであり、延伸や仮撚で得られる糸の太さ斑を小さくし、より均質な糸とするために130%以下とするものである。破断伸度の好ましい範囲は60〜120%であり、より好ましくは65〜110%である。
【0025】
また、複屈折度は未延伸糸の機械的特性と密接な関係があり、特に仮撚加工工程における毛羽や断糸を防止し、良好な工程通過性を得るために複屈折度は0.04以上とするものである。また、複屈折度は0.07以下とするものである。複屈折度が0.07を越えると巻締まりや高温における遅延収縮を十分に抑えることが困難になる。複屈折度の好ましい範囲は0.045〜0.065である。
【0026】
また、PTT繊維は未延伸糸パッケージから解舒され、応力から解放されると除々に収縮する、いわゆる遅延収縮と呼ばれる現象が生じる。この現象はパケージ内においてもゆっくりと進行しており、パッケージ形状が崩れて解舒性不良を起こしたり、パッケージ端面周期に同期した糸の太さ斑が発生する等、さまざまな問題を起こす。そのため遅延収縮率は低いほうがよく、2%以下であることが重要である。好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.2%以下である。
【0027】
同様に、50℃の乾熱処理における収縮率は、環境温度に左右されず良好な品質を長時間維持するために10%以下であることが重要である。特に夏場のトラック輸送においては環境温度が50℃にも達する。そのため50℃乾熱収縮率は好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
【0028】
また、沸騰水収縮率は延伸や仮撚加工でのセット性や工程通過性を考慮すると3〜20%の範囲であることが好ましい。沸騰水収縮率が3%未満では仮撚で捲縮セット性の低下があり、20%を越えると量産における収縮率のバラツキが大きくなってしまうので好ましくない。沸騰水収縮率は5%〜15%がより好ましい。
【0029】
本発明のポリエステル系未延伸糸は温度変調DSCにおける冷結晶化熱量△Hccが10J/g以下であることが好ましい。PTT繊維は、可逆成分であるガラス転移温度と非可逆成分である冷結晶化ピーク温度が近接しているため、通常のDSCでは正確な冷結晶化熱量を測定することが困難である。そのため、正常なガラス転移シグナル(可逆)とエンタルピー緩和部分(非可逆)を分離することが可能な温度変調DSC(Temperature Modulated DSC)が有効な測定手法となる。
【0030】
ここで、温度変調DSCとは、等速昇温(直流成分)に小刻みのサイン波の温度振動(交流成分)を与えて昇温させ、全熱流束曲線を可逆熱流束曲線と非可逆熱流束曲線に分離できる示差走査熱量計である。我々が調査した結果、PTTはPETと比較してガラス転移点が低く、常温においても分子運動性が損なわれず逐次結晶化と非晶配向の緩和が容易に起こる。そのため冷結晶化熱量が大きい従来の未延伸糸では前記の緩和現象により寸法変化が生じてしまう。それを抑制するため、予め未延伸糸をパッケージングする前に結晶化を促進させ、繊維構造の固定化を行う必要がある。冷結晶化熱量△Hccが小さいほど繊維構造がより固定化されていることを示し、好ましくは△Hcc10J/g以下、より好ましくは5J/g以下、さらに好ましくは2J/g以下である。
【0031】
また、温度変調DSCの融解熱量△Hmおよび冷結晶化熱量△Hccから算出される結晶化度Xcは30%以上であることが好ましい。PTT繊維の寸法変化は、前記したように逐次結晶化と非晶部の配向緩和によるものであり、PTT繊維の場合は特に逐次結晶化の影響が大きい。熱処理を行わない従来法で巻き取った未延伸糸の紡糸直後の結晶化度は30%未満であるが、室温下において徐々に結晶化が進み、保管する温度によっては結晶化度が35%を越えることもある。逐次結晶化による収縮を防ぐ手段としては冷蔵保管という方法もあるが、取り扱い性の問題がある。そのため常温で分子運動性が低く、経時変化しにくい高結晶化度の構造をとっていることが好ましい。結晶化度は好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上である。なお、結晶化度Xcは下式によって求めた。また、結晶化度が100%のときの△Hmの値145(J/g)はJournal of Polymer Science:PartB,36,2499(1998)の文献値30kJ/molをJ/gの単位に変換して用いた。
【0032】
結晶化度Xc(%)=[(△Hm−△Hcc)/145(Xc100%の△Hm)]×100
△Hm:温度変調DSCの全熱流束カーブから求めた融解熱量(J/g)
△Hcc:温度変調DSCの非可逆熱流束カーブから求めた冷結晶化熱量(J/g)
また、本発明のポリエステル系未延伸糸は、紡糸、巻取後の遅延収縮が最小限に抑えられているため、極めて均一性の高い未延伸糸が得られる。糸長手方向の太さ斑の指標であるウースター斑を小さくすることにより、延伸や仮撚等の糸加工における加工張力の変動を抑制し、工程安定性を高めることで生産性を向上させることが可能となるばかりか、得られる糸からなる布帛の染め斑等の欠点が少なくなり、品位の高い製品を得ることができる。ウースター斑は好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.8%以下である。
【0033】
また、本発明のポリエステル系未延伸糸には交絡処理が施され、CF値が3以上であることが好ましい。CF値を3以上とすることで、製糸や糸加工、製織時の単糸切れを抑制することができる。CF値はより好ましくは5以上である。
【0034】
また、本発明のポリエステル系未延伸糸を構成する繊維の断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、中空断面、偏平断面、W断面、X型断面その他の異形断面であってもよく、目的に合わせて適宜選択すればよい。
【0035】
本発明のポリエステル系未延伸糸はチーズ状パッケージに巻かれていることが好ましい。パッケージフォームは延伸や仮撚等の糸加工における糸の解舒性に影響を与えるため、良好なパッケージフォームが要求される。通常、パッケージフォームで問題となるのは、サドル(耳立ち)とバルジ(ふくらみ)であり、いずれも小さい方が高速解舒性に優れる。本発明者らの考案した方法に従えば、パッケージに巻き取る前に繊維内部構造が安定化するため、パケージフォームが良好なチーズとすることが可能である。延伸、仮撚で要求される解舒速度は500〜800m/分にも達するが、その速度で解舒張力の変動が小さく、安定して糸加工を行うためにはサドルが4mm未満、バルジ率が10%未満であることが好ましい。より好ましくはサドルが3mm未満、バルジ率が7%未満である。なお、サドル及びバルジ率は4kg巻きパッケージで測定を行った。
【0036】
次に、本発明のポリエステル系未延伸糸の製造方法の一例を示す。
【0037】
本発明のポリエステル系未延伸糸の主原料となるPTTの製造方法として、公知の方法をそのまま用いることができる。用いるPTTの極限粘度[η]は、紡糸時の曳糸性を高め、実用的な強度の糸を得るために0.75以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましい。なお、PTT原料中に含まれる環状2量体を主成分とするオリゴマーは、紡糸時に口金汚れ及び口金下ハウジングでの針状結晶の析出を促し、製糸性に悪影響を及ぼすので、オリゴマー含有量は少ないほどよく、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下にするとよい。オリゴマー量を少なくするための方法としては固相重合が有効な手段となる。液相重合によりPTTの極限粘度[η]を0.4〜0.7とした後、固相重合温度180〜215℃、暴露時間2〜20時間で、窒素、アルゴン等の不活性ガス下もしくは真空度10torr以下、より好ましくは1torr以下の減圧下で行うことができる。また、重合時に生成するビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルは軟化点の低下や、強度等の機械的特性を低下させる傾向があるため少ないほどよく、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。
【0038】
また、本発明のポリエステル系未延伸糸は重合を行った後、そのまま紡糸する直連重紡で行ってもよいし、一旦チップ化した後、乾燥もしくは固相重合し、紡糸してもよいが、前記したようにオリゴマー量を少なくするために一旦チップ化した後、固相重合することが好ましい。
【0039】
溶融紡糸を行うに際しての紡糸温度は、口金での吐出を安定させるためにPTTの融点よりも15〜60℃高い温度で行うことが好ましく、25〜50℃高い温度で行うことがより好ましい。また、紡糸でのオリゴマー析出を抑制し、紡糸性を向上させるために、必要に応じて口金下に2〜20cmの加熱筒やMO(モノマー、オリゴマー)吸引装置、ポリマ酸化劣化あるいは口金孔汚れ防止用の空気、スチーム、N2などの不活性ガス発生装置を設置してもよい。
【0040】
ここで、本発明のポリエステル系未延伸糸の製造方法を図をもって説明する。
【0041】
図1は本発明で好ましく用いられる紡糸装置の概略図である。まず、紡糸口金1から吐出された糸条は冷却チムニー2によって一旦冷却・固化された後、内部雰囲気温度が120〜220℃の加熱筒装置3で熱処理される。熱処理を受けた紡糸糸条は給油装置4で油剤を付与され、交絡ノズル5で適度に交絡を与えられた後、ゴデーロール6及び8で引き取られ、巻取機9で巻き取られる。ゴデーロール6と8との間の弛緩率は0〜3%が好ましく、さらにゴデーロール8と巻取機9との間で弛緩処理してもよい。また、ゴデーロール間に雰囲気温度100〜150℃の熱処理装置7、例えば加熱空気やスチームを熱媒とした熱処理装置を用いることも本発明の目的を達成する有効な手段となる。
【0042】
PTT繊維はPET繊維と比較して結晶化速度が速いため、前記加熱筒装置3で0.01秒以上熱処理することで結晶化が進行する。加熱筒装置3の熱処理ゾーンの長さは熱処理時間が0.01秒以上になるように設計すればよく、例えば紡糸速度3000m/分では熱処理ゾーンの長さ50cm以上、紡糸速度4000m/分では67cm以上あればよい。なお、加熱筒3による熱処理は過度に行うと糸斑の悪化を招くので、熱処理時間は好ましくは0.05秒以下である。
【0043】
加熱筒から出た糸条は引き続き給油装置4にて紡糸油剤が付与させる。給油装置は加熱筒出口側に設置することが肝要であり、糸斑を抑制するために加熱筒下20〜200cmに設置するとよい。
【0044】
紡糸油剤は平滑剤、乳化剤、帯電防止剤などを含むものを付与する。具体的には、流動パラフィン等の鉱物油、オクチルパルミテート、ラウリルオレエート、イソトリデシルステアレート等の脂肪酸エステル、ジオレイルアジペート、ジオクチルセバケート等の2塩基酸ジエステル、トリメチロールプロパントリラウレート、ヤシ油等の多価アルコールエステル、ラウリルチオジプロピオネート等の脂肪族含硫黄エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、トリメチロールプロパントリラウレート等のノニオン界面活性剤、アルキルスルホネート、アルキルホスフェート等の金属塩あるいはアミン塩等のアニオン界面活性剤、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、アルカンスルホネートナトリウム塩等テトラメチレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、非イオン系界面活性剤、等を挙げることができ、製糸、整経、製織の各工程、特に製織時の筬、綜絖の通過性を向上させる処方を採用する。必要に応じて、さらに防錆剤、抗菌剤、酸化防止剤、浸透剤、表面張力低下剤、転相粘度低下剤、摩耗防止剤、その他の改質剤等を併用する。
【0045】
油剤付着量は、糸に対して0.3〜1.2重量%とすることが、高次工程通過性の点で好ましい。
【0046】
交絡ノズル5は図1に示すように紡糸線上に設置してもよいし、ゴデーロール間または巻取機前に設置してもよいが、糸条の収束性を高め、ゴデーロール上での走行を安定させるために紡糸線上に設置することが好ましい。また、CF値を10以上に高くしたい場合は、さらに糸条張力の低いゴデーロール間や巻取機前に交絡ノズルを追加設置することが好ましい。また、ゴデーロール6および8の引取速度は、未延伸糸の残留伸度が55〜130%になるように設定すればよく、引取速度を2200〜5800m/分にすることで、前記の残留伸度範囲を満足することができる。より好ましい引取速度は2500〜5000m/分、さらに好ましくは2800〜4200m/分である。
【0047】
また、ゴデーロール間の弛緩率は走行糸条の安定性(ゴデーロール上でのピクツキや糸揺れ)と繊維内部構造の歪み抑制を両立させることが肝要であり、そのため弛緩率は0〜3%であることが好ましい。弛緩率は高い方が繊維内部の歪みが小さく、熱安定性が向上するので、前記熱処理装置7による熱収縮応力を利用して糸条の走行安定性を保持しつつ弛緩率を高くすることも好ましい方法のひとつである。
【0048】
次に、ゴーデーロール間で弛緩処理された糸条は巻取機で巻き取られるが、このときの糸条張力は好ましくは0.2cN/dtex以下であり、より好ましくは0.15cN/dtex以下、さらに好ましくは0.10cN/dtex以下である。前記のごとく低張力で巻き取ることにより、繊維内部構造の歪みを抑制し、遅延収縮量が小さく安定構造のパッケージとすることができる。さらに巻取機のローラーベイルを強制駆動し、ローラーベイル速度をパッケージ表面速度に対し0.05〜1%オーバーフィードしてリラックス巻取することにより、パッケージフォームをより良好にすることができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
A.極限粘度
オルソクロロフェノール(以下OCPと略記する)10ml中に試料ポリマを0.10g溶かし、25℃にてオストワルド粘度計を用いて測定した。
B.強伸度
未延伸糸をオリエンテック(株)社製 TENSILON UCT−100でJIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に示される定速伸長条件で測定した。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
C.複屈折度
未延伸糸をOLYMPUS社製BH−2偏光顕微鏡を用いレターデーションΓと光路長dを測定し、複屈折度Δn=Γ/dを求めた。なお、dは繊維中心でのΓと繊維径より求めた。
D.遅延収縮率
未延伸糸パッケージから糸を採取後、速やかに2×10-3cN/dtexの荷重を架け、採取から2分以内に糸長L1を測定し、温度25℃±2℃、相対湿度65%±10%の雰囲気下で120時間放置後の糸長L2を測定し、次式により算出した。
【0050】
遅延収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]×100
E.50℃乾熱収縮率
JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に準じて測定した。未延伸糸パッケージから検尺機でカセを採取し、90×10-3cN/dtexの実長測定荷重を架けてカセ長L1を測定し、引き続いて実長測定荷重をはずし、50℃雰囲気のオーブンに15分間投入した後取り出し、再び実長測定荷重を架けてカセ長L2を測定し、次式により50℃乾熱収縮率を算出した。
【0051】
50℃乾熱収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]×100
F.沸騰水収縮率
JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に準じて測定した。未延伸糸パッケージから検尺機でカセを採取し、90×10-3cN/dtexの実長測定荷重を架けてカセ長L1を測定し、引き続いて実長測定荷重をはずし、沸騰水中に15分間投入した後取り出し、風乾し、再び実長測定荷重を架けてカセ長L2を測定し、次式により沸騰水収縮率を算出した。
【0052】
沸騰水収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]×100
G.冷結晶化熱量、結晶化度
TA Instruments社製DSC2920Modulated DSCを用い、加熱温度0〜250℃、昇温速度1℃/min、温度変調振幅±0.5℃、温度変調周期60秒、試料重量約10mg、試料に容器アルミニウム製開放型容器を使用して測定した。得られた熱流束曲線のうち、非可逆熱流束曲線から冷結晶化熱量△Hccを、全熱流束曲線から融解熱量△Hmをそれぞれ求めた。なお、結晶化度は次式によって求めた。また、結晶化度が100%のときの△Hmの値145(J/g)はJournal of Polymer Science:PartB,36,2499(1998)に記載の文献値30kJ/molをJ/gの単位に変換して用いた。
【0053】
結晶化度Xc(%)=(△Hm−△Hcc)/145(Xc100%の△Hm)×100
△Hm:温度変調DSCの全熱流束カーブから求めた融解熱量(J/g)
△Hcc:温度変調DSCの非可逆熱流束カーブから求めた冷結晶化熱量(J/g)
Xc100%の△Hm:145(J/g)
H.ウースター斑
糸長手方向の太さ斑(ノーマルテスト)は、ツェルベガーウースター(株)社製USTER TESTER MONITOR Cで測定した。条件は、糸速度50m/分で1分間供給し、ノーマルモードで平均偏差率(U%)を測定した。
I.交絡度CF値
JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)7.13の交絡度に示される条件で測定した。試験回数は50回とし、交絡長の平均値L(mm)から下式よりCF値(Coherence Factor)を求めた。
【0054】
CF値=1000/L
J.サドル及びバルジ率
図2に示す未延伸糸パッケージの中央部の巻厚L1と、端面部の巻厚L2を測定し、L2からL1を引いた値をサドルの大きさとした。また、図2に示す未延伸糸パッケージの最内層の巻き巾L3及び、最大巻き巾を示すL4を測定し、次式によってバルジ率を算出した。
【0055】
バルジ率(%)=[(L4−L3)/L3]×100
K.延伸性
延伸糸の糸切れ欠点を、延伸糸1000kg当たりの糸切れ回数で評価した。糸切れ回数が10回以下であれば○、10〜20回で△、20回を越える場合は×として3段階評価を行った。延伸条件は汎用のホットロール−ホットロール延伸機を用い、延伸温度60℃、セット温度130℃、延伸倍率は残留伸度40%になるように設定した。
L.仮撚性
仮撚加工糸の糸切れ欠点を、加工糸1000kg当たりの糸切れ回数で評価した。糸切れ回数が10回以下であれば○、10〜20回で△、20回を越える場合は×として3段階評価を行った。仮撚加工条件は汎用のフリクション仮撚機を用い、加工速度300m/分、ディスク回転数2750rpm(直径58mmウレタンディスク使用)、熱板温度150℃(熱板長2.0m)、延伸倍率は残留伸度40%になるように設定した。
【0056】
実施例1
ジメチルテレフタル酸19.4kg、1,3−プロパンジオール15.2kgおよび触媒としてテトラブチルチタネート、艶消し剤として2酸化チタンを添加し、140℃〜230℃でエステル化反応を行った後、さらに、250℃温度一定の条件下で3時間重縮合反応を行い極限粘度[η]が0.68のPTTプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを120℃で1時間予備乾燥した後、1.2〜0.7hpaの減圧下、200℃で4時間固相重合することにより、極限粘度[η]が0.98のPTT樹脂を得た。得られたPTT樹脂は、Tg48℃、Tm227℃、2酸化チタン含有量0.35重量%であり、クロロホルムに可溶なオリゴマー含有量は0.9重量%であった。
【0057】
次に図1に示す紡糸機を用い、前記PTT樹脂を溶融し、紡糸温度265℃で36孔の紡糸口金1から吐出し、チムニー2で冷却、口金下1.5mに設置した長さ1.7m(実効加熱長1.55m、加熱筒内径20mm)の加熱筒装置3に紡糸糸条を通し、加熱筒温度180℃で熱処理し、加熱筒下0.45mに設置したガイド給油装置4にて紡糸油剤を付与しながら周速度3500m/分の第1ゴデーロール6及び周速度3460m/分の第2ゴデーロール8(ゴデーロール間の弛緩率1.14%)で引き取り、巻取機9にて張力0.1cN/dtexで巻き取り100dtex、36フィラメントの未延伸糸を得た。また、後工程での加工性を良好にするために紡糸線上に交絡ノズル5を設置し、作動圧空圧0.1MPaで交絡を付与した。
【0058】
得られた未延伸糸は良好なパッケージフォームであり、強度は3.1cN/dtex、破断伸度は84.2%、複屈折度は0.057であり、遅延収縮率が1.3%、50℃乾熱収縮率が1.4%であり、力学的特性、熱安定性ともに十分実用に耐える特性を示した。物性値を表1に示す。
【0059】
また、実施例1で得られた未延伸糸の延伸性、仮撚加工性試験したところ、極めて良好な加工性を示した。物性値を表1に示す。
【0060】
実施例2
実施例1で製造したPTTプレポリマーを用い、固相重合時間を1時間とした以外は実施例1と同じ条件で実施した。実施例2の未延伸糸は実施例1と比較してやや低強度であったが、熱安定性は高いものであった。また、延伸性は実施例1同様に良好であったが、仮撚加工性が若干悪かった。物性値を表1に示す。
【0061】
実施例3
実施例1で製造したPTTプレポリマーを用い、固相重合時間を6時間とした以外は実施例1と同じ条件で実施した。実施例2の未延伸糸は実施例1同様、良好な諸特性を示し、延伸性、仮撚加工性ともに極めて安定していた。物性値を表1に示す。
【0062】
比較例1
実施例1で製造したPTTプレポリマーを3.0〜0.7hpaの減圧下、140℃で6時間乾燥して使用した以外は実施例1と同じ条件で実施した。乾燥後の極限粘度は乾燥前と変わらず0.68であった。比較例1の未延伸糸は熱安定性は高いものの、強度が低く、そのため延伸性、仮撚加工性ともに悪いものであった。物性値を表1に示す。
【0063】
実施例4
第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度をそれぞれ2500m/分、2485m/分(ゴデーロール間の弛緩率0.6%)とし、巻取後の繊度を120dtexとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。実施例4の未延伸糸は実施例1と比較して低強度、高伸度であるため、延伸性、仮撚加工性が若干劣るものであったが、生産には十分耐えうる加工性を示した。物性値を表1に示す。
【0064】
実施例5、実施例6
第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度をそれぞれ4000m/分、3940m/分(ゴデーロール間の弛緩率1.5%)とし、巻取後の繊度を92dtexとした以外は実施例1と同じ条件で実施した(実施例5)。また、第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度をそれぞれ5000m/分、4850m/分(ゴデーロール間の弛緩率3.0%)とし、巻取後の繊度を85dtexとした以外は実施例1と同じ条件で実施した(実施例6)。実施例5および実施例6の未延伸糸は実施例1同様、良好な諸特性を示し、延伸性、仮撚加工性ともに極めて安定していた。それぞれの実施例の物性値を表1に示す。
【0065】
比較例2
第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度をそれぞれ2000m/分、1990m/分(ゴデーロール間の弛緩率0.5%)とし、巻取後の繊度を140dtexとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。比較例2の未延伸糸は実施例1と比較して低強度、高伸度で低複屈折度(配向性低い)であるとともに、遅延収縮率2.3%、50℃乾熱収縮率12%と熱安定性も低く、パッケージフォームもバルジ率が高く、悪いものであった。そのため加工時の解舒張力が不安定であるとともに、延伸性、仮撚加工性も極めて悪いものであった。物性値を表1に示す。
【0066】
比較例3
第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度をそれぞれ6000m/分、5820m/分(ゴデーロール間の弛緩率3.0%)とし、巻取後の繊度を81dtexとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。比較例3の未延伸糸は実施例1と比較して高強度であったが、遅延収縮率が3.0%と高いためにサドル4.2mm、バルジ率11%とともに高く、パッケージフォームが不良であった。そのため延伸性は優れているものの、仮撚加工において加撚張力の変動が大きく不安定であるため糸切れが多発した。物性値を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表中「弛緩率」とは「第1ゴデーロール6と第2ゴデーロール8間の弛緩率」を、「GD間熱処理装置」とは「ゴーデーロール間に設置したスチームコンディショナー」を、「50℃乾熱収縮」とは、「乾熱50℃での未延伸糸の収縮率」を、「冷結晶化熱量」とは、「温度変調DSCでの非可逆熱流速曲線から得た冷結晶化熱量」を、「融解熱量」とは、「温度変調DSCでの全熱流速曲線から得た融解熱量」を示す。
【0069】
実施例7
加熱筒装置3の温度を140℃とした以外は実施例1と同じ条件で実施した。
【0070】
実施例7の未延伸糸は実施例1と比較して遅延収縮率、50℃乾熱収縮率ともに若干高く、パッケージフォームも劣るものであった。また、延伸性、仮撚加工性ともに実施例1よりは劣るが、十分実用に耐えうるレベルであった。実施例7の物性値を表2に示す。
【0071】
比較例4、比較例5
加熱筒装置3の温度を100℃および230℃とした以外は実施例1と同じ条件で実施した。加熱筒温度100℃の比較例4の未延伸糸は実施例1と比較して遅延収縮率が3.5%、50℃乾熱収縮率21.6%と高く、熱安定性が低いものであった。また、パッケージフォームが悪いために仮撚加工で糸切れが多発した。また、加熱筒温度230℃の比較例5は加熱筒部での糸切れが多発し、サンプリングできなかった。比較例4の物性値を表2に示す。
【0072】
比較例6
第2ゴデーロール8の周速度を3535m/分(ゴデーロール間のストレッチ率1%)とした以外は実施例1と同じ条件で実施した。比較例6の未延伸糸は実施例1と同様に高強度であったが、遅延収縮率が2.3%と高いためにサドル4.2mm、バルジ率10%とともに高く、パッケージフォームが不良であった。
そのため延伸性は良好であるものの、仮撚加工で糸切れが多発した。物性値を表2に示す。
【0073】
比較例7
第2ゴデーロール8と巻取機9の間の張力(巻取張力)が0.22cN/dtexになるように巻取機の速度を変更した以外は実施例1と同じ条件で実施した。 比較例7の未延伸糸は実施例1と同様、高強度であったが、遅延収縮率が2.2%と高いためにサドル4.5mm、バルジ率12%とともに高く、パッケージフォームが極めて悪かった。そのため解舒不良による張力変動により延伸性、仮撚加工性ともに悪かった。物性値を表2に示す。
【0074】
実施例8
第2ゴデーロール8の周速度を3400m/分(ゴデーロール間の弛緩率2.86%)とした以外は実施例1と同じ条件で実施した。実施例8の未延伸糸は実施例1と同様、良好な諸特性を示し、パッケージフォームも実施例1より優れていた。また、延伸性、仮撚加工性ともに極めて安定していた。物性値を表2に示す。
【0075】
実施例9
加熱筒装置3の温度を210℃とし、ゴデーロール間に内部温度125℃のスチームコンディショナー(実効加熱長0.38m)を設置して弛緩熱処理した以外は実施例8と同じ条件で実施した。実施例9の未延伸糸は実施例1よりもさらに遅延収縮率、50℃乾熱収縮率が小さく、パッケージフォームも極めて良好であった。また、その他の諸特性も良好であり、延伸性、仮撚加工性ともに実施例1よりも優れていた。物性値を表2に示す。
【0076】
比較例8
加熱筒装置3を取り外し、第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度を3000m/分(ゴデーロール間は定長処理)とした以外は実施例1と同じ条件で実施した。比較例8の未延伸糸は遅延収縮率が3.2%と高く、さらに50℃乾熱収縮率が40.5%と極めて高いために経時的に収縮特性や糸径が変化し、パッケージ内外層差や端面周期斑が大きく品質が悪いものであった。また、パッケージのサドルが4.2mmと高いために解舒不良による張力変動により延伸性、仮撚加工性が極めて悪かった。物性値を表2に示す。
【0077】
比較例9
第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度をそれぞれ4000m/分、3940m/分(ゴデーロール間の弛緩率1.5%)とした以外は比較例8と同じ条件で実施した。比較例9の未延伸糸は実施例1同様に高強度であったが、遅延収縮率が4.1%と高く、さらに50℃乾熱収縮率も19.8%と高いために比較例8同様、経時的に収縮特性や糸径が変化し、パッケージ内外層差や端面周期斑が大きく品質が悪いものであった。また、パッケージのサドルが4.8mmと高いために解舒不良による張力変動により延伸性、仮撚加工性が極めて悪かった。物性値を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする未延伸糸に関するものであり、巻締まりや繊維内部の歪み緩和に起因する工程通過性不良、染色性不良等の問題を解決し、取り扱い性や汎用性に優れたポリエステル系未延伸糸を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル系未延伸糸を得るための紡糸装置の一例を示す概略図である。
【図2】未延伸糸パッケージのサドルおよびバルジ率を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1:紡糸口金
2:チムニー
3:加熱筒装置
4:給油装置
5:交絡ノズル
6:第1ゴデーロール
7:熱処理装置(スチームコンディショナー)
8:第2ゴデーロール
9:巻取機
Claims (9)
- 実質的にポリトリメチレンテレフタレートから構成され、極限粘度が0.7〜1.2であるポリトリメチレンテレフタレート繊維からなるマルチフィラメントであって、以下の(1)〜(5)の要件を満足することを特徴とするポリエステル系未延伸糸。
(1)破断強度 :2.0cN/dtex以上
(2)破断伸度 :55〜130%
(3)複屈折度 :0.04〜0.07
(4)遅延収縮率 :2%以下
(5)50℃乾熱収縮率:10%以下 - 沸騰水収縮率が3〜20%であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系未延伸糸。
- 温度変調DSCにおける冷結晶化熱量ΔHが10J/g以下であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル系未延伸糸。
- 温度変調DSCにおける結晶化度が30%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
- 糸の太さ斑U%(ノーマルモード)が1%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
- CF値が3以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸が巻き付けられ、サドルが4mm未満でかつバルジ率が10%未満であることを特徴とするチーズ状未延伸糸パッケージ。
- ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする極限粘度が0.75以上のポリエステルを溶融紡糸し、紡糸糸条を一旦冷却固化した後、内部雰囲気温度が120〜220℃の加熱筒装置で0.01秒以上熱処理し、再び冷却してから残留伸度55〜130%になるような紡糸速度で糸条を引き取り、引き続いて弛緩率0〜3%で弛緩させた後、0.2cN/dtex以下の張力で巻き取ることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系未延伸糸の製造方法。
- 紡糸引き取り後、ゴデーロール間で弛緩処理する際に、内部雰囲気温度が100〜150℃の熱処理装置で熱処理を施すことを特徴とする請求項8記載のポリエステル系未延伸糸の製造方法。
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