図1に圧縮着火式内燃機関の全体図を示す。
図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内に夫々燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドを夫々示す。吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結され、コンプレッサ7aの入口はエアクリーナ8に連結される。吸気ダクト6内にはステップモータにより駆動されるスロットル弁9が配置され、更に吸気ダクト6周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置10が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置10内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。一方、排気マニホルド5は排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結され、排気タービン7bの出口は排気管11に連結される。排気マニホルド5にはミスト状の、即ち微粒子状の燃料を排気ガス中に添加するための燃料添加弁12が取付けられる。本発明による実施例ではこの燃料は軽油からなる。
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路13を介して互いに連結され、EGR通路13内には電子制御式EGR制御弁14が配置される。また、EGR通路13周りにはEGR通路13内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置15が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置15内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管16を介してコモンレール17に連結される。このコモンレール17内へは電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ18から燃料が供給され、コモンレール17内に供給された燃料は各燃料供給管16を介して燃料噴射弁3に供給される。
電子制御ユニット20はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス21によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)22、RAM(ランダムアクセスメモリ)23、CPU(マイクロプロセッサ)24、入力ポート25および出力ポート26を具備する。図1に示されるようにアクセルペダル30にはアクセルペダル30の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ31が接続され、負荷センサ31の出力電圧は対応するAD変換器27を介して入力ポート25に入力される。更に入力ポート25にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ32が接続される。一方、出力ポート26は対応する駆動回路28を介して燃料噴射弁3、スロットル弁9駆動用ステップモータ、燃料添加弁12、EGR制御弁14および燃料ポンプ18に接続される。
図1に示されるように排気管11には排気ガス中の有害成分、特にNOxを浄化するための後処理装置40が取付けられる。図2はこの後処理装置40の拡大図を示している。図2を参照すると、排気管11には主排気管41が連結され、この主排気管41内にHC吸着酸化触媒42が配置される。更にこのHC吸着酸化触媒42下流の主排気管41内にはNOx吸蔵触媒43が配置される。また、主排気管41にはHC吸着酸化触媒42を迂回する、即ちHC吸着酸化触媒42上流の主排気管41内と、HC吸着酸化触媒42の下流でNOx吸蔵触媒43上流の主排気管41内とを連結する排気バイパス管44が取付けられる。
HC吸着酸化触媒42上流の主排気管41内および排気バイパス管44内には流路切換弁装置45が配置される。図2に示される第1実施例ではこの流路切換弁装置45はHC吸着酸化触媒42上流の主排気管42内に配置された排気制御弁46と、排気バイパス管44内に配置された排気制御弁47と、これら排気制御弁46,47を駆動するためのアクチュエータ48からなり、このアクチュエータ48は図1に示される駆動回路28を介して出力ポート26に接続される。これらの排気制御弁46,47は一方が開弁したときには他方が閉弁せしめられる。即ち、排気制御弁46が開弁したときには排気制御弁47が閉弁せしめられ、排気制御弁47が開弁したときには排気制御弁46が閉弁せしめられる。
図2に示されるようにHC吸着酸化触媒42にはHC吸着酸化触媒42の温度の検出するための温度センサ49が取付けられ、この温度センサ49の出力信号は図1に示される対応するAD変換器27を介して入力ポート25に入力される。また、NOx吸蔵触媒43にはNOx吸蔵触媒43の前後差圧を検出するための差圧センサ50が取付けられており、この差圧センサ50の出力信号は対応するAD変換器27を介して入力ポート25に入力される。
図2において排気制御弁46が開弁し、排気制御弁47が閉弁したときには全ての排気ガスは主排気管41内、即ちHC吸着酸化触媒42内を流通せしめられる。このようにHC吸着酸化触媒42内を流通する排気ガスの流路、即ちHC吸着酸化触媒42内を延びる排気ガスの流路は図2に示される実施例では破線の矢印で示されるように主流路と称される。一方、排気制御弁47が開弁し、排気制御弁46が閉弁したときには全ての排気ガスは主排気管41を迂回し、排気バイパス管44内を流通せしめられる。このようにHC吸着酸化触媒42を迂回する排気ガスの流路、即ち、排気バイパス管44内の排気ガスの流路は図2に示される実施例では破線の矢印で示されるように副流路と称される。
まず初めに図1および図2に示されるNOx吸蔵触媒43について説明すると、このNOx吸蔵触媒43は三次元網目構造のモノリス担体或いはペレット状担体上に担持されているか、又はハニカム構造をなすパティキュレートフィルタ上に担持されている。このようにNOx吸蔵触媒43は種々の担体上に担持させることができるが、以下NOx吸蔵触媒43をパティキュレートフィルタ上に担持した場合について説明する。
図3(A)および(B)はNOx吸蔵触媒43を担持したパティキュレートフィルタ43aの構造を示している。なお、図3(A)はパティキュレートフィルタ43aの正面図を示しており、図3(B)はパティキュレートフィルタ43aの側面断面図を示している。図3(A)および(B)に示されるようにパティキュレートフィルタ43aはハニカム構造をなしており、互いに平行をなして延びる複数個の排気流通路60,61を具備する。これら排気流通路は下流端が栓62により閉塞された排気ガス流入通路60と、上流端が栓63により閉塞された排気ガス流出通路61とにより構成される。なお、図3(A)においてハッチングを付した部分は栓63を示している。従って排気ガス流入通路60および排気ガス流出通路61は薄肉の隔壁64を介して交互に配置される。云い換えると排気ガス流入通路60および排気ガス流出通路61は各排気ガス流入通路60が4つの排気ガス流出通路61によって包囲され、各排気ガス流出通路61が4つの排気ガス流入通路60によって包囲されるように配置される。
パティキュレートフィルタ43aは例えばコージライトのような多孔質材料から形成されており、従って排気ガス流入通路60内に流入した排気ガスは図3(B)において矢印で示されるように周囲の隔壁64内を通って隣接する排気ガス流出通路61内に流出する。
このようにNOx吸蔵触媒43をパティキュレートフィルタ43a上に担持させた場合には、各排気ガス流入通路60および各排気ガス流出通路61の周壁面、即ち各隔壁64の両側表面上および隔壁64内の細孔内壁面上には例えばアルミナからなる触媒担体が担持されており、図4(A)および(B)はこの触媒担体70の表面部分の断面を図解的に示している。図4(A)および(B)に示されるように触媒担体70の表面上には貴金属触媒71が分散して担持されており、更に触媒担体70の表面上にはNOx吸収剤72の層が形成されている。
本発明による実施例では貴金属触媒71として白金Ptが用いられており、NOx吸収剤72を構成する成分としては例えばカリウムK、ナトリウムNa、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
機関吸気通路、燃焼室2およびNOx吸蔵触媒43上流の排気通路内に供給された空気および燃料(炭化水素)の比を排気ガスの空燃比と称すると、NOx吸収剤72は排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し、排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出するNOxの吸放出作用を行う。
即ち、NOx吸収剤72を構成する成分としてバリウムBaを用いた場合を例にとって説明すると、排気ガスの空燃比がリーンのとき、即ち排気ガス中の酸素濃度が高いときには排気ガス中に含まれるNOは図4(A)に示されるように白金Pt71上において酸化されてNO2となり、次いでNOx吸収剤72内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら硝酸イオンNO3 -の形でNOx吸収剤72内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸収剤72内に吸収される。排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Pt71の表面でNO2が生成され、NOx吸収剤72のNOx吸収能力が飽和しない限りNO2がNOx吸収剤72内に吸収されて硝酸イオンNO3 -が生成される。
これに対し、排気ガスの空燃比がリッチ或いは理論空燃比にされると排気ガス中の酸化濃度が低下するために反応が逆方向(NO3 -→NO2)に進み、斯くして図4(B)に示されるようにNOx吸収剤72内の硝酸イオンNO3 -がNO2の形でNOx吸収剤72から放出される。次いで放出されたNOxは排気ガス中に含まれる未燃HC,COによって還元される。
このように排気ガスの空燃比がリーンであるとき、即ちリーン空燃比のもとで燃焼が行われているときには排気ガス中のNOxがNOx吸収剤72内に吸収される。しかしながらリーン空燃比のもとでの燃焼が継続して行われるとその間にNOx吸収剤72のNOx吸収能力が飽和してしまい、斯くしてNOx吸収剤72によりNOxを吸収できなくなってしまう。そこで本発明による実施例ではNOx吸収剤72の吸収能力が飽和する前に燃料添加弁12から燃料を添加することによって排気ガスの空燃比を一時的にリッチにし、それによってNOx吸収剤72からNOxを放出させるようにしている。
さて、上述したように燃料添加弁12から燃料を添加することによって排気ガスの空燃比をリッチにするとNOx吸収剤12からNOxが放出され、放出されたNOxが排気ガス中に含まれる未燃HC,COによって還元される。この場合、添加された燃料が液状であったとすると理論上は排気ガスの空燃比がリッチになったとしてもNOx吸収剤72からNOxが放出しない。また、燃料が液状である場合にはNOxの還元も行われない。即ち、NOx吸収剤72からNOxを放出させかつ放出されたNOxを還元するにはNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガス中のガス状成分の空燃比をリッチにしなければならない。
本発明による実施例では燃料添加弁12から添加される燃料は微粒子状であり、一部の燃料はガス状となっているが大部分は液状となっている。そこで本発明による実施例ではNOx吸収剤72からNOxを放出すべきときには排気ガスの流路を図2に示される主流路として燃料添加弁12から添加された燃料を含む排気ガスをHC吸着酸化触媒42に導びき、それによって添加された燃料の大部分が液状であったとしてもNOx吸蔵触媒43に流入する燃料がガス状となるようにしている。次にこのHC吸着酸化触媒42について説明する。
図5はHC吸着酸化触媒42の側面断面図を示している。図5に示されるようにHC吸着酸化触媒42はハニカム構造をなしており、真直ぐに延びる複数個の排気ガス流通路73を具備する。このHC吸着酸化触媒42はゼオライトのような細孔構造をもつ比表面積の大きな材料から構成されており、図5に示すHC吸着酸化触媒73の基体はゼオライトの一種であるモルデナイトからなる。図6(A)から(D)はHC吸着酸化触媒42の基体74の表面部分の断面を図解的に示している。なお、図6(B)は図6(A)におけるB部分の拡大図を示しており、図6(C)は図6(B)と同じ断面を示しており、図6(D)は図6(C)におけるD部分の拡大図を示している。図6(B)および(C)からわかるようにHC吸着酸化触媒42の表面は凹凸した粗い表面形状を呈しており、この粗い表面形状を有する表面上には図6(D)に示されるように多数の細孔75が形成されていると共に白金Ptからなる貴金属触媒76が分散して担持されている。
燃料添加弁12から微粒子状の燃料が添加されると一部の燃料は蒸発してガス状になるが大部分は微粒子の形で基体74の表面上に吸着する。図6(A)および(B)は燃料微粒子77が吸着する様子を示している。このように液状の形で燃料が吸着するときの燃料吸着割合はガス状燃料の吸着割合に比べてかなり高くなる。なお、HC吸着酸化触媒42が吸着しうる微粒子状燃料の吸着量は図7(A)に示されるようにHC吸着酸化触媒42の温度が低くなるほど増大する。また、HC吸着酸化触媒42における排気ガス流に対する空間速度(=排気ガスの容積速度/HC吸着酸化触媒床の容積)が速くなると、即ち排気ガスの流速が速くなると燃料添加弁12から添加された燃料のうち、ガス化するものの量およびNOx吸着酸化触媒42内の排気流通路73内を素通りする微粒子状燃料の量が増大する。従ってHC吸着酸化触媒42が吸着しうる微粒子状燃料の吸着量は図7(B)に示されるように空間速度が速くなるほど減少する。
次いで図6(C),(D)に示されるように基体50の表面上に吸着した燃料微粒子77は徐々に蒸発してガス状燃料となる。このガス状燃料は主に炭素数の多いHCからなる。この炭素数の多いHCは蒸発する際にゼオライト表面上の酸点又は貴金属触媒76上においてクラッキングされ、炭素数の少ないHCに改質される。この改質されたガス状のHCはただちに排気ガス中の酸素と反応して酸化せしめられる。このようにして基体74の表面上に吸着した燃料微粒子77の大部分は排気ガス中の酸素と反応するので排気ガス中に含まれるほとんど全ての酸素は消費される。その結果、排気ガス中の酸素濃度が低下し、NOx吸蔵触媒43からNOxが放出される。
一方、このとき排気ガス中にはガス状のHCが残存しており、排気ガスの空燃比はリッチになっている。このガス状のHCはNOx吸蔵触媒43内に流入し、このガス状のHCによってNOx吸蔵触媒43から放出されたNOxが還元される。
図8は機関低速低負荷運転時における燃料添加弁12からの燃料の添加量と、排気ガスの空燃比A/Fとを示している。なお、図8において(A)はHC吸着酸化触媒42に流入する排気ガスの空燃比A/Fを示しており、(B)はHC吸着酸化触媒42から流出してNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比A/Fを示しており、(C)はNOx吸蔵触媒43から流出する排気ガスの空燃比A/Fを示している。
本発明による実施例ではNOx吸蔵触媒43からNOxを放出すべきときには図8に示されるように複数回の連続パルスからなる駆動信号が燃料添加弁12に供給され、このとき実際にはこれら連続パルスが供給されている間、燃料が連続的に添加され続ける。燃料添加弁12から燃料が供給されている間、HC吸着酸化触媒42に流入する排気ガスの空燃比は図8(A)に示されるように5以下のかなりリッチな空燃比となる。
一方、燃料添加弁12から燃料が添加されると燃料微粒子はHC吸着酸化触媒42に吸着され、次いでこの燃料微粒子から燃料が徐々に蒸発して前述したようにクラッキングされ、改質される。燃料微粒子から蒸発した燃料又は改質された燃料の一部は排気ガス中に含まれる酸素と反応して酸化され、それによって排気ガス中の酸素濃度が低下する。一方、余剰の燃料、即ち余剰のHCがHC吸着酸化触媒42から排出され、その結果HC吸着酸化触媒42から流出する排気ガスの空燃比A/Fはわずかばかりリッチとなる。即ち、HC吸着酸化触媒42に吸着された燃料微粒子からは燃料が徐々に蒸発し、吸着された燃料微粒子が少量となるまで、HC吸着酸化触媒42から流出する排気ガスの空燃比A/Fはわずかばかりリッチになり続ける。従って図8(B)に示されるように燃料添加弁12からの燃料の添加作用が完了した後にかなりの時間に亘ってHC吸着酸化触媒42から流出する排気ガスの空燃比A/Fはわずかばかりリッチになり続ける。
HC吸着酸化触媒42から流出しNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比A/FがリッチになるとNOx吸蔵触媒43からNOxが放出され、放出されたNOxが未燃HC,COによって還元される。この場合、前述したようにNOx吸蔵触媒43に流入する未燃HCはHC吸着酸化触媒42において改質されており、従って放出されたNOxは未燃HCによって良好に還元される。図8(C)からわかるようにNOx吸蔵触媒43からのNOxの放出作用と還元作用が行われている間、NOx吸蔵触媒43から流出する排気ガスの空燃比A/Fはほぼ理論空燃比に維持される。
このように本発明ではNOx吸蔵触媒43からNOxを放出させるためにNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするときには微粒子状の燃料が燃料添加弁12から添加されると共にこのときの微粒子状燃料の添加量はHC吸着酸化触媒42に流入する排気ガスの空燃比がNOx吸蔵触媒43に流入するリッチ時の空燃比よりも小さな、図8に示す例では半分以下のリッチ空燃比となる量に設定されている。
一方、このとき添加された微粒子状燃料はHC吸着酸化触媒42に吸着された後に吸着した燃料の大部分がHC吸着酸化触媒42内で酸化され、HC吸着酸化触媒42に流入する排気ガスの空燃比がリッチにされる時間よりも長い時間、図8に示す例では数倍の時間に亘ってNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなる。
このように本発明では燃料添加弁12から添加された微粒子状燃料を一旦HC吸着酸化触媒42内に吸着保持し、次いで吸着保持された微粒子状燃料をHC吸着酸化触媒42から少しずつ蒸発させることによって長い時間に亘りNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするようにしている。この場合、NOx吸蔵触媒43からできる限り多量のNOxを放出させるにはNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比がリッチにされる時間を長くすればよく、そのためにはHC吸着酸化触媒42に吸着保持される燃料量をできる限り増大することが必要となる。
一例を挙げると、例えば機関低速低負荷運転時に1秒間当り吸入空気量が10(g)となる圧縮着火式内燃機関において、燃料添加弁12から400msec程度、微粒子状燃料を噴射するとNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比は2秒程度に亘って14.0程度のリッチ空撚比になり、このときNOx吸蔵触媒43からNOxが良好に放出されることが判明している。このとき燃料添加弁12のすぐ下流における排気ガスの空燃比、即ちHC吸着酸化触媒42に流入する排気ガスの空燃比は4.4程度のリッチ空燃比となる。
もう少し詳しく説明すると、この圧縮着火式内燃機関では機関低速低負荷運転時には空燃比A/Fが30程度であり、従ってA/F=10(g/sec)/F=30であるので燃料噴射量はF=1/3(g/sec)となる。一方、14のリッチ空燃比を生成するにはA/F=10(g/sec)/F=14であるので5/7(g/sec)の燃料が必要となる。従って14のリッチ空燃比を生成するのに燃料添加弁12から添加すべき追加の燃料量は5/7(g/sec)−1/3(g/sec)=8/21(g/sec)となり、2秒間に亘って14のリッチ空燃比を生成するには燃料添加弁12から16/21(g)の燃料を添加しなければならない。この燃料を400msecでもって添加するとそのとき排気ガスの空燃比はほぼ4.4となる。
このようにこの内燃機関において機関低速低負荷運転時に14のリッチ空燃比を2秒間に亘って生成しようとすると燃料添加弁12から16/21(g)の燃料を供給しなければならない。この場合、この燃料量をより短い時間、例えば100msecで供給しようとすると燃料添加弁12の噴射圧を高くしなければならない。ところが燃料添加弁12の噴射圧を高めると噴射時の燃料の微粒子が促進されるためにガス化する燃料量が増大し、斯くしてHC吸着酸化触媒42に吸着される燃料量が減少する。このようにHC吸着酸化触媒42への吸着燃料量が減少すると空燃比がリッチとなる時間が短かくなる。これに対し、16/21(g)の燃料を供給するに当って単位時間当りの供給量を少なくすると、例えば燃料添加弁12からの燃料添加時間を1000msecにするとHC吸着酸化触媒42からの単位時間当りの燃料蒸発量が少なくなり、排気ガスの空燃比がリッチになりずらくなる。図9はこのことを示している。
即ち、図9は燃料添加弁12からの燃料添加時間τ(msec)を変えたときの、HC吸着酸化触媒42に流入する排気ガスの空燃比A/F、HC吸着酸化触媒42から流出した排気ガスの温度上昇量ΔT、NOx吸蔵触媒43から排出される排出HC量G、およびNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスのリッチ時間Trを示している。
上述したように燃料添加弁12からの燃料添加時間を短かくするとHC吸着酸化触媒42への吸着燃料量が減少する。その結果、HC吸着酸化触媒42からの燃料の蒸発量が少なくなるためにHCの酸化作用は弱まり、温度上昇量ΔTが低下すると共にリッチ時間が短かくなる。またこのとき、燃料添加弁12から供給される燃料のうちで排気ガス流により持ち去られる燃料量が増大するので排出HC量Gが増大する。
一方、燃料添加弁12からの燃料添加時間を長くすると上述したようにHC吸着酸化触媒42への単位時間当りの吸着燃料量が減少する。その結果、HC吸着酸化触媒42からの燃料の蒸発量が少なくなるためにHCの酸化作用は弱まり、温度上昇量ΔTが低下すると共にリッチ時間が短かくなる。一方、NOx吸蔵触媒43からのNOx放出作用が完了した後もHC吸着酸化触媒42からHCが蒸発し続けるので排出HC量Gが増大する。
燃料添加弁12から燃料を添加したときに添加した燃料が大気中に排出されるとこの燃料は全く無駄となり、従って添加した燃料の大気中への排出量、即ち排出HC量Gは許容値Go以下に抑制する必要がある。排出HC量Gが許容値Go以下であるということは別の見方をするとHCが酸化反応をして酸素を十分に消費していることを意味しており、従って排出HC量Gが許容値Go以下であるということは温度上昇量ΔTが予め定められた設定値ΔTo以上であるということに対応している。
即ち、燃料添加弁12から燃料を添加する際には排出HC量Gが許容値Go以下となり、温度上昇量ΔTが設定値ΔTo以上となるように添加燃料の添加時間τを定めることが必要であり、従って本発明による実施例では添加燃料の添加時間τがほぼ100(msec)からほぼ700(msec)の間に設定されている。これを空燃比A/Fで表すと添加時間τが100(msec)のときの空燃比A/Fはほぼ1であり、添加時間τが700(msec)のときの空燃比A/Fはほぼ7であるので本発明による実施例では機関低速低負荷運転時においてNOx吸蔵触媒43からNOxを放出させるために燃料添加弁12から添加される微粒子状燃料の添加量はHC吸着酸化触媒42に流入する排気ガスの空燃比がほぼ1からほぼ7となる量に設定されていることになる。
図10は機関高速高負荷運転時における図8と同じ場所における空燃比を示している。機関高速高負荷運転時には機関低速低負荷運転時に比べてHC吸着酸化触媒42の温度が高くなり、HC吸着酸化触媒42における排気ガス流に対する空間速度が高くなるので図7(A),(B)からわかるようにHC吸着酸化触媒42が吸着しうる燃料量がかなり減少する。従って図10と図8とを比較するとわかるように燃料添加弁12から添加される燃料量は機関高速高負荷運転時には機関低速低負荷運転時に比べて小さくされる。
なお、図10に示されるように機関高速高負荷運転時には空燃比がほぼ20程度であるので添加される燃料が減少せしめられても排気ガスの空燃比をリッチにすることができる。しかしながら排気ガスの空燃比をリッチにすることのできる時間は機関低速低負荷運転時に比べてかなり短かくなる。
図11(A)はNOx吸蔵触媒43からNOxを放出すべきときに燃料添加弁12から添加される燃料量AQを表わしており、添加される燃料量はAQ1,AQ2,AQ3,AQ4,AQ5,AQ6の順で次第に少なくなる。なお、図11(A)において縦軸TQは出力トルクを、横軸Nは機関回転数を表しており、従って添加すべき燃料量AQは出力トルクTQが増大するほど、即ちHC吸着酸化触媒42の温度が高くなるほど少なくなり、機関回転数Nが高くなるほど、即ち排気ガスの流量が増大するほど少なくなる。この添加すべき燃料量AQは図11(B)に示すようなマップの形で予めROM22内に記憶されている。
次に図12および図13を参照しつつNOx放出制御について説明する。
図12(A)は機関低速低負荷運転時においてNOx吸蔵触媒43に吸蔵されたNOx量ΣNOXの変化と、NOx放出のために排気ガスの空燃比A/Fをリッチにするタイミングを示しており、図12(B)は機関高速高負荷運転時においてNOx吸蔵触媒43に吸蔵されたNOx量ΣNOXの変化と、NOx放出のために排気ガスの空燃比A/Fをリッチにするタイミングを示している。
機関から単位時間当りに排出されるNOx量は機関の運転状態に応じて変化し、従って単位時間当りにNOx吸蔵触媒43内に吸蔵されるNOx量も機関の運転状態に応じて変化する。本発明による実施例ではNOx吸蔵触媒43に単位時間当り吸蔵されるNOx量NOXAが要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数として図13(A)に示すマップの形で予めROM22内に記憶されており、このNOx量NOXAを積算することによってNOx吸蔵触媒43に吸蔵されたNOx量ΣNOXが算出される。
一方、図12(A),(B)においてMAXはNOx吸蔵触媒43が吸蔵しうる最大NOx吸蔵量を表しており、NXはNOx吸蔵触媒43に吸蔵させることのできるNOx量の許容値を表している。従って図12(A),(B)に示されるようにNOx量ΣNOXが許容値NXに達するとNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比A/Fが一時的にリッチにされ、それによってNOx吸蔵触媒43からNOxが放出される。
前述したように機関低速低負荷運転時にはHC吸着酸化触媒42が吸着しうる燃料量が増大するので燃料添加弁12からの燃料添加量が増大される。このように燃料添加量が増大されるとNOx吸蔵触媒43から多量のNOxを放出させることができる。即ち、この場合にはNOx吸蔵触媒43に多量のNOxが吸蔵された場合でも吸蔵された全NOxを放出することができるので図12(A)に示されるように許容値NXは高い値、図12(A)に示される実施例では最大NOx吸蔵量よりもわずかばかり低い値とされる。
これに対し機関高速高負荷運転時にはHC吸着酸化触媒42の燃料吸着量が減少するので前述したように燃料添加弁12からの燃料添加量が減少せしめられる。このように燃料添加量が減少せしめられるとNOx吸蔵触媒43からは少量のNOxしか放出させることができない。即ち、この場合にはNOx吸蔵触媒43に少量のNOxが吸蔵されたら吸蔵されたNOxを放出しなければならないので図12(B)に示されるように許容値NXはかなり低い値、図12(B)に示される例では図12(A)に示す機関低速低負荷運転時における許容値NXの1/3以下の値になっている。
図13(B)は機関の運転状態に応じて定められている許容値NXを示しており、図13(B)において許容値NXはNX1,NX2,NX3,NX4,NX5,NX6の順で次第に小さくなる。なお、図13(B)において縦軸TQは機関の出力トルクを示しており、横軸Nは機関回転数を示している。従って図13(B)から許容値NXは出力トルクTQが高くなるほど、即ち機関負荷が高くなるほど低くなり、機関回転数Nが高くなるほど低くなることがわかる。なお、図13(B)に示される許容値NXは図13(C)に示すようなマップの形で予めROM22内に記憶されている。
このように機関負荷が高くなるほど、或いは機関回転数が高くなるほど許容値NXが低くなるのでNOx吸蔵触媒43からNOxを放出させるために燃料添加弁12から微粒子状燃料が添加される頻度は機関負荷が高くなるほど、或いは機関回転数Nが高くなるほど高くなる。即ち、図12(A),(B)に示されているように機関高速高負荷運転時には機関低速低負荷運転時に比べて微粒子状燃料が添加される頻度はかなり高くなる。
一方、排気ガス中に含まれる粒子状物質はNOx吸蔵触媒43を担持しているパティキュレートフィルタ43a上に捕集され、順次酸化される。しかしながら捕集される粒子状物質の量が酸化される粒子状物質の量よりも多くなると粒子状物質がパティキュレートフィルタ43a上に次第に堆積し、この場合粒子状物質の堆積量が増大すると機関出力の低下を招いてしまう。従って粒子状物質の堆積量が増大したときには堆積した粒子状物質を除去しなければならない。この場合、空気過剰のもとでパティキュレートフィルタ43aの温度を600℃程度まで上昇させると堆積した粒子状物質が酸化され、除去される。
そこで本発明による実施例ではパティキュレートフィルタ43a上に堆積した粒子状物質の量が許容量を越えたときには排気ガスの空燃比がリーンのもとでパティキュレートフィルタ43aの温度を上昇させ、それによって堆積した粒子状物質を酸化除去するようにしている。具体的に言うと本発明による実施例では差圧センサ50により検出されたパティキュレートフィルタ43aの前後差圧ΔPが許容値PXを越えたときに堆積粒子状物質の量が許容量を越えたと判断され、このときパティキュレートフィルタ43aに流入する排気ガスの空燃比をリーンに維持しつつ燃料添加弁12から燃料を添加してこの添加された燃料の酸化反応熱によりパティキュレートフィルタ43aの温度を上昇させる昇温制御が行われる。
図14は排気浄化処理ルーチンを示している。
図14を参照するとまず初めにステップ100において図13(A)に示すマップから単位時間当り吸蔵されるNOx量NOXAが算出される。次いでステップ101ではこのNOXAがNOx吸蔵触媒43に吸蔵されているNOx量ΣNOXに加算される。次いでステップ102では図13(C)に示すマップから許容値NXが算出される。次いでステップ103では吸蔵NOx量ΣNOXが許容値NXを越えたか否かが判別され、ΣNOX>NXとなったときにはステップ104に進んでNOx吸蔵触媒43からNOxを放出すべきことを示すNOx放出フラグがセットされる。次いでステップ105に進んでNOxの浄化処理が行われる。次いでステップ106では差圧センサ50によりパティキュレートフィルタ43aの前後差圧ΔPが検出される。次いでステップ107では差圧ΔPが許容値PXを越えたか否かが判別され、ΔP>PXとなったときにはステップ108に進んでパティキュレートフィルタ43aの昇温制御が行われる。
さて、前述したようにHC吸着酸化触媒42におけるHCの酸化作用が弱いとNOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比はリッチにならず、NOx吸蔵触媒43に流入する排気ガスの空燃比をリッチにするためにはHC吸着酸化触媒42におけるHCの酸化作用を促進して酸化されるHCの量をできる限り多くする必要がある。図15(A)はHC吸着酸化触媒42において酸化されるHCの量、即ちHC酸化量とHC吸着酸化触媒42の温度Tcとの関係を示している。
図7(A)に示されるようにHC吸着酸化触媒42の温度が高くなるとHC吸着酸化触媒42に吸着される微粒子状燃料の吸着量は減少する。微粒子状燃料の吸着量が減少するとHC吸着酸化触媒42において酸化されるHCの量は減少し、従って図15(A)に示されるようにHC酸化量はHC吸着酸化触媒42の温度Tcが高くなるほど減少する。一方、HC吸着酸化触媒42の温度Tcが低下すると微粒子状燃料の吸着量は増大するが貴金属触媒の活性が落ちるので図15(A)に示されるようにやはりHC酸化量は減少する。
即ち、HC酸化量が大きくなるHC吸着酸化触媒42の温度範囲、別の言い方をするとHCを酸化するのに最適な最適温度範囲は図15(A)においてXで示されるように100℃から200℃の間の下限温度T1と300℃から400℃の間の上限温度T2との間となる。一方、図15(B)のYはNOx吸蔵触媒43のNOx吸蔵量が良好となるNOx吸蔵触媒43の温度Tdの範囲を示しており、図15(A)と比較すればわかるようにこの温度範囲Yは最適温度範囲Xに比べて高温側となる。
本発明による一部の実施例ではNOx吸蔵触媒43からNOxを放出すべきときにHC吸着酸化触媒42の温度Tcがおおよそ最適温度範囲X内となるように制御され、本発明による他の一部の実施例ではNOx吸蔵触媒43からNOxを放出すべきときにHC吸着酸化触媒42の温度Tcが正確に最適温度範囲X内となるように制御される。
そこで次にNOx吸蔵触媒43からNOxを放出すべきときにHC吸着酸化触媒42の温度Tcがおおよそ最適温度範囲X内となるように制御される実施例から説明を開始する。
前述したようにNOx吸蔵触媒43からNOxを放出させるためには燃料添加弁12から微粒子状の燃料を添加し、この微粒子状燃料を含んだ排気ガスをHC吸着酸化触媒42に送り込む必要がある。しかしながら常時排気ガスがHC吸着酸化触媒42内を流通するようにしておくとHC吸着酸化触媒42の温度が最適温度範囲Xの上限温度T2を越えてしまう。
そこで最初の実施例では図2に示される後処理装置40において図16に示されるように燃料添加弁12から微粒子状燃料の添加が行われていない通常運転時には、即ち排気ガスの空撚比がリーンのときには流路切換弁装置45により排気ガスの流路がHC吸着酸化触媒42を迂回する副流路とされ、NOx吸蔵触媒43からNOxを放出すべく燃料添加弁12から微粒子状燃料が添加されたときには流路切換弁装置45によって排気ガスの流路がHC吸着酸化触媒42内を延びる主流路に切換えられる。
排気ガスの流路が副流路とされると排気ガスはHC吸着酸化触媒42内を通過しないためにHC吸着酸化触媒42の温度Tcは低下して最適温度範囲Xの上限温度T2以下に維持される。従ってNOx吸蔵触媒43からNOxを放出すべく排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられたときにもHC吸着酸化触媒42の温度Tcは最適温度範囲Xの上限温度T2以下となっており、斯くしてNOx吸蔵触媒43からの良好なNOx放出還元作用を行うことができる。なお、この場合、HC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1以下となる可能性があり、従ってこの実施例では上述したようにHC吸着酸化触媒42の温度Tcがおおよそ最適温度範囲X内となるように制御されていることになる。
図17はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図17を参照するとまず初めにステップ200においてNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされているときにはステップ201に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路にNOx放出作用期間中だけ切換えられる。次いでステップ202では図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ203ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ204ではNOx放出フラグがリセットされる。
図18に別の実施例を示す。この実施例でも図16に示す実施例と同様にNOx放出作用時に排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられるが、この実施例ではこの流路切換作用に加え、HC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1以下になったときにも排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられる。排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられるとHC吸着酸化触媒42の温度Tcが上昇するのでHC吸着酸化触媒42の温度Tcは最適温度範囲X内に比較的良好に維持できることになる。
図19はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図19を参照するとまず初めにステップ210においてNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされていないときにはステップ211に進んで温度センサ49により検出されたHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1よりも低くなったか否かが判別される。Tc<T1のときにはステップ202に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路にTc<T1である間だけ切換えられる。
一方、ステップ210においてNOx放出フラグがセットされていると判断されたときにはステップ213に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路にNOx放出作用期間中だけ切換えられる。次いでステップ214では図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ215ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ216ではNOx放出フラグがリセットされる。
図20に更に別の実施例を示す。なお、図20には空燃比および流路に加えて更に機関負荷Lの変化が示されている。この実施例でも図16に示す実施例と同様にNOx放出作用時に排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられるが、この実施例ではこの流路切換作用に加え、機関負荷Lが急速に低下したとき、即ち減速運転が行われたときに排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられる。
即ち、HC吸着酸化触媒42は一旦温度上昇した後にHC吸着酸化触媒42への排気ガスの流入が停止されるとHC吸着酸化触媒42は高温のまま保持され、従ってHC吸着酸化触媒42の温度Tcは最適温度範囲Xの上限温度T2以上となる可能性がある。一方、減速運転時には排気ガス温は低温となる。そこでこの実施例では低温の排気ガスによってHC吸着酸化触媒42を冷却するために減速運転時には排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられる。
図21はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図21を参照するとまず初めにステップ220においてNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされていないときにはステップ211に進んで減速運転時であるか否かが判別される。減速運転時であるときにはステップ222に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路に減速期間中だけ切換えられる。
一方、ステップ220においてNOx放出フラグがセットされていると判断されたときにはステップ223に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路にNOx放出作用期間中だけ切換えられる。次いでステップ224では図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ225ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ226ではNOx放出フラグがリセットされる。
図22に更に別の実施例を示す。この実施例でも図16に示す実施例と同様にNOx放出作用時に排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられるが、この実施例ではこの流路切換作用に加え、HC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1以下になったときにも排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられ、更にHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの上限温度T2以上になっているときに減速運転が行われたときには排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられる。即ち、この実施例では図20および図21に示される実施例と比べて、減速運転時における低温の排気ガスによる冷却作用によってHC吸着酸化触媒42の温度Tcが必要以上に低下するのを抑制することができる。
図23はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図23を参照するとまず初めにステップ230においてNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされていないときにはステップ231に進んでHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1よりも低いか否かが判別される。Tc<T1のときにはステップ234にジャンプして流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路にTc<T1である間だけ切換えられる。
一方、ステップ231においてTc≧T1であると判断されたときにはステップ232に進んでHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの上限温度T2よりも高いか否かが判別される。Tc>T2のときにはステップ232に進んで減速運転時であるか否かが判別される。減速運転時であるときにはステップ234に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路に減速期間中だけ切換えられる。
一方、ステップ230においてNOx放出フラグがセットされていると判断されたときにはステップ235に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路にNOx放出作用期間中だけ切換えられる。次いでステップ236では図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ237ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ238ではNOx放出フラグがリセットされる。
図24から図26は図2に示される後処理装置40の変形例を示している。図24に示す変形例では主排気管41内が隔壁51によって並列をなす二つの通路52,53に分割され、一方の通路52内にHC吸着酸化触媒42が配置される。図24に示されるようにこの通路52は主流路を形成しており、他方の通路53は副流路を形成している。また、この変形例では流路切換弁装置45の排気制御弁54がHC吸着酸化触媒42の下流における両通路52,53の合流部に配置されている。この排気制御弁54は実線で示す位置又は破線で示す位置に切換えられ、それによって排気ガスの流路が主流路又は副流路のいずれか一方に切換えられる。
図25に示す変形例ではHC吸着酸化触媒42上流の主排気管41からバイパス管55が分岐され、分岐されたバイパス管55は分岐部よりも下流において再び主排気管41に合流せしめられる。バイパス管55の分岐部と合流部間の主排気管41内には流路切換弁装置45の排気制御弁56が配置される。排気制御弁56が全開すると主排気管41内が主流路を形成し、排気制御弁56が閉弁するとバイパス管55内が副流路を形成する。
即ち、この実施例では排気ガスの流路がHC吸着酸化触媒42内に向かう主流路と、主流路よりも長い流路を経てHC吸着酸化触媒42に到達する副流路とにより構成されており、排気制御弁56によって排気ガスの流路が主流路又は副流路のいずれか一方に切換えられる。排気ガスが副流路内を流通せしめられると流通する間に排気ガス温が低下し、斯くして比較的低温の排気ガスがHC吸着酸化触媒42内に流入する。
図24および図25に示される変形例においては図17、図19、図21又は図23に示されるいずれかのNOx浄化処理ルーチンを用いて排気ガスの流路の切換作用が行われる。
図26に示される変形例ではHC吸着酸化触媒42を迂回するバイパス通路44に加え、更にNOx吸蔵触媒43を迂回する第2のバイパス通路57が設けられ、この第2のバイパス通路57およびNOx吸蔵触媒43の入口部に排気制御弁58,59が夫々配置される。この実施例では通常排気制御弁58が閉弁していて排気制御弁59が開弁しており、このとき排気制御弁46,47を開閉制御することにより排気ガスの流路が主流路又は副流路のいずれか一方に切換えられる。また、排気制御弁46および排気制御弁58を開弁し、排気制御弁59を閉弁することによってHC吸着酸化触媒42内を延びた後にNOx吸蔵触媒43を迂回する冷却用流路が形成される。
図27に示されるようにこの実施例では排気ガスの流路が主流路、副流路又は冷却用流路のいずれかに切換えられる。即ち、NOx放出時およびHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1よりも低くなったときには排気ガスの流路が副流路から主流路に切換えられる。一方、減速運転が行われたときには、図27に示される実施例ではHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの上限温度T2よりも高ければ排気ガスの流路が冷却用流路に切換えられる。
排気ガスの流路が冷却用流路に切換えられると低温の排気ガスによってHC吸着酸化触媒42が冷却される。しかしながらこのとき低温の排気ガスはNOx吸蔵触媒43を迂回するのでNOx吸蔵触媒43は高い温度に保持され、従って図15(B)からわかるようにNOx吸蔵触媒43は高いNOx吸蔵量を維持することができる。
図28はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図28を参照するとまず初めにステップ240においてNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされていないときにはステップ241に進んでHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1よりも低いか否かが判別される。Tc<T1のときにはステップ242に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路にTc<T1である間だけ切換えられる。
一方、ステップ241においてTc≧T1であると判断されたときにはステップ243に進んでHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの上限温度T2よりも高いか否かが判別される。Tc>T2のときにはステップ244に進んで減速運転時であるか否かが判別される。減速運転時であるときにはステップ245に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から冷却用流路に減速期間中だけ切換えられる。
一方、ステップ240においてNOx放出フラグがセットされていると判断されたときにはステップ246に進んで流路切換弁装置45により排気ガスの流路が副流路から主流路にNOx放出作用期間中だけ切換えられる。次いでステップ247では図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ248ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ249ではNOx放出フラグがリセットされる。
図29は別のタイプの後処理装置40を示しており、図30および図31は夫々この後処理装置40の変形例を示している。これらの後処理装置40について共通している点は、HC吸着酸化触媒が並列配置された第1の吸着酸化触媒42aと第2の吸着酸化触媒42bからなり、排気ガスの流路が第1のHC吸着酸化触媒42a内を延びる第1流路と第2のHC吸着酸化触媒42b内を延びる第2流路からなり、流路切換弁装置45によって排気ガスの流路が第1流路又は第2流路のいずれか一方に切換えられ、各HC吸着酸化触媒42a,42bに対して夫々温度センサ49a,49bが取付けられている点である。
次に各後処理装置についてもう少し具体的に説明すると、図29に示される後処理装置40では排気管11の出口からNOx吸蔵触媒43に至る排気通路が第1流路を形成している第1通路80と第2流路を形成している第2通路81とに分割されており、第1通路80内には排気制御弁46および第1のHC吸着酸化触媒42aが配置されており、第2通路81内には排気制御弁47および第2のHC吸着酸化触媒42bが配置されている。
また、図30に示される後処理装置40では排気管11の出口からNOx吸蔵触媒43に至る排気通路が隔壁82によって第1流路を形成している第1通路83と第2流路を形成している第2通路84とに分割されており、第1通路83内には排気制御弁46および第1のHC吸着酸化触媒42aが配置されており、第2通路84内には排気制御弁47および第2のHC吸着酸化触媒42bが配置されている。
一方、図31に示される後処理装置40では排気管11の出口から下流側に延びる排気通路が第1流路を形成している第1通路85と第2流路を形成している第2通路86とに分割されており、第1通路85内には排気制御弁46、第1のHC吸着酸化触媒42aおよび第1のNOx吸蔵触媒43aが配置されており、第2通路86内には排気制御弁47、第2のHC吸着酸化触媒42bおよび第2のNOx吸蔵触媒43bが配置されている。なお、この変形例では各NOx吸蔵触媒43a,43bに夫々差圧センサ50a,50bが取付けられている。
図29から図31に示される後処理装置40においてはいずれか一方のHC吸着酸化触媒42a又は42b内を必ず排気ガスが流通せしめられる。図32に示される実施例では排気ガスが第1流路内を流れているときに第1のHC吸着酸化触媒42aの温度Tc1が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったときには排気ガスの流路が第1流路から第2流路に切換えられ、排気ガスが第2流路内を流れているときに第2のHC吸着酸化触媒42bの温度Tc2が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったときには排気ガスの流路が第2流路から第1流路に切換えられる。
このような流路切換作用を行うと図32からわかるように排気ガスが流れている流路内のHC吸着酸化触媒の温度は最適温度範囲X内となり、従ってどのようなタイミングでNOxの放出作用を行っても良好なリッチ空燃比を形成することができる。
図33はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図33を参照するとまず初めにステップ200において排気ガスの流路が第1流路であるか否かが判別される。排気ガスの流路が第1流路であるときにはステップ201に進んで第1のHC吸着酸化触媒42aの温度Tc1が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったか否かが判別される。Tc1≦T2のときにはステップ205にジャンプする。これに対してTc1>T2になるとステップ202に進んで排気ガスの流路が第1流路から第2流路に切換えられ、次いでステップ205に進む。
一方、ステップ200において排気ガスの流路が第1流路でないと判断されたときにはステップ203に進んで第2のHC吸着酸化触媒42bの温度Tc2が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったか否かが判別される。Tc2≦T2のときにはステップ205にジャンプする。これに対してTc2>T2になるとステップ204に進んで排気ガスの流路が第2流路から第1流路に切換えられ、次いでステップ205に進む。
ステップ205ではNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされているときにはステップ206に進んで図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ207ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ208ではNOx放出フラグがリセットされる。
図34に別の実施例を示す。この実施例でも図32に示す実施例と同様な流路切換作用が行われるが、この実施例ではこの流路切換作用に加え、排気ガスが第1流路内を流れていて第2のHC吸着酸化触媒42bの温度Tc2が最適温度範囲Xの上限温度T2以上のときに減速運転が行われたときには排気ガスの流路が第1流路から第2流路に切換えられ、排気ガスが第2流路内を流れていて第1のHC吸着酸化触媒42aの温度が最適温度範囲Xの上限温度T2以上のときに減速運転が行われたときには排気ガスの流路が第2流路から第1流路に切換えられる。
即ち、例えば第1のHC吸着酸化触媒42aの温度Tc1が最適温度範囲Xの上限温度T2を越えたということで排気ガスの流路が第1流路から第2流路に切換えられると第1のHC吸着酸化触媒42aは高温になり続ける可能性がある。そこでこのような場合に減速運転が行われたときには減速期間中低温の排気ガスを第1流路に送り込んで第1のHC吸着酸化触媒42aの温度Tc1を低下させるようにしている。
図35はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図35を参照するとまず初めにステップ210において排気ガスの流路が第1流路であるか否かが判別される。排気ガスの流路が第1流路であるときにはステップ211に進んで第1のHC吸着酸化触媒42aの温度Tc1が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったか否かが判別される。このときTc1>T2になったと判断されるとステップ212に進んで排気ガスの流路が第1流路から第2流路に切換えられ、次いでステップ221に進む。
これに対し、ステップ211においてTc1≦T2であると判断されたときにはステップ213に進んで排気ガスの流通が停止されている第2のHC吸着酸化触媒42bの温度Tc2が最適温度範囲Xの上限温度T2以上であるか否かが判別される。Tc2≦T2のときにはステップ221にジャンプする。これに対し、Tc2>T2のときにはステップ214に進んで減速運転中であるか否かが判別される。減速運転中でないときにはステップ221に進む。これに対し、減速運転中であるときにはステップ215に進んで排気ガスの流路が減速運転中第1流路から第2流路に切換えられる。
一方、ステップ210において排気ガスの流路が第1流路でないと判断されたときにはステップ216に進んで第2のHC吸着酸化触媒42bの温度Tc2が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったか否かが判別される。このときTc2>T2になったと判断されるとステップ217に進んで排気ガスの流路が第2流路から第1流路に切換えられ、次いでステップ221に進む。
これに対し、ステップ216においてTc2≦T2であると判断されたときにはステップ218に進んで排気ガスの流通が停止されている第1のHC吸着酸化触媒42aの温度Tc1が最適温度範囲Xの上限温度T2以上であるか否かが判別される。Tc1≦T2のときにはステップ221にジャンプする。これに対し、Tc1>T2のときにはステップ219に進んで減速運転中であるか否かが判別される。減速運転中でないときにはステップ221に進む。これに対し、減速運転中であるときにはステップ220に進んで排気ガスの流路が減速運転中第2流路から第1流路に切換えられる。
ステップ221ではNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされているときにはステップ222に進んで図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ223ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ224ではNOx放出フラグがリセットされる。
図36は更に別のタイプの後処理装置40を示しており、図37はこの後処理装置40の変形例を示している。図36および図37に示されるようにこれらの後処理装置40では主排気管41から分岐して再び分岐した位置に戻るバイパス通路90が設けられており、バイパス通路90と主排気管41との合流部には流路切換弁装置45の流路切換弁92が配置されている。
図36に示される後処理装置40ではバイパス通路90内にHC吸着酸化触媒42とNOx吸蔵触媒43とが配置され、流路切換弁92の切換作用によって排気ガスの流れ方向は、排気ガスがHC吸着酸化触媒42を通過した後にNOx吸蔵触媒43に流入する順流方向と、排気ガスがNOx吸蔵触媒43を通過した後にHC吸着酸化触媒42に流入する逆流方向のいずれかに切換えられる。
一方、図37に示される後処理装置40ではバイパス通路90内に第1のHC吸着酸化触媒42a、NOx吸蔵触媒43および第2のHC吸着酸化触媒42bがこの順序で配置されており、流路切換弁92の切換作用によって排気ガスの流れ方向は、排気ガスが第1のHC吸着酸化触媒42aに続いてNOx吸蔵触媒43を通過した後に第2のHC吸着酸化触媒42bに流入する順流方向と、排気ガスが第2のHC吸着酸化触媒42bに続いてNOx吸蔵触媒43を通過した後に第1のHC吸着酸化触媒42aに流入する逆流方向のいずれかに切換えられる。なお、図36および図37には排気ガスの流れ方向が順流方向となるときの流路切換弁92の位置が実線で示されており、排気ガスの流れ方向が逆流方向となるときの流路切換弁92の位置が破線で示されている。
図38は図36に示される後処理装置40についてのNOx浄化処理方法の一実施例を示している。図38を参照するとこの実施例では、排気ガスの流れ方向が順流方向であるときにHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったときには排気ガスの流れ方向が順流方向から逆流方向に切換えられ、排気ガスの流れ方向が逆流方向であるときにHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1以下になったときには排気ガスの流れ方向が逆流方向から順流方向に切換えられる。
なお、排気ガスの流れ方向が逆流方向に切換えられたときにはNOx吸蔵触媒43に対して下流側に位置するHC吸着酸化触媒42はNOx吸蔵触媒43内をすり抜けたHCを吸着するスイーパとしての機能を果す。また、このNOx浄化処理方法においては図38からわかるように排気ガスの流れ方向が順流方向であるときのみに空燃比がリッチにされ、NOxの放出作用が行われる。
図39はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図39を参照するとまず初めにステップ300において排気ガスの流れ方向が順流方向であるか否かが判別される。排気ガスの流れ方向が順流方向であるときにはステップ301に進んでHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったか否かが判別される。Tc≦T2のときにはステップ305にジャンプする。これに対してTc>T2になるとステップ302に進んで排気ガスの流れ方向が順流方向から逆流方向に切換えられる。
これに対し、ステップ300において排気ガスの流れ方向が順流方向ではないと判断されたときにはステップ303に進んでHC吸着酸化触媒42の温度Tcが最適温度範囲Xの下限温度T1以下になったか否かが判別される。このときTc<T1になったと判断されるとステップ304に進んで排気ガスの流れ方向が逆流方向から順流方向に切換えられる。
ステップ305ではNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされているときにはステップ306に進んで図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ307ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ308ではNOx放出フラグがリセットされる。
図40は図37に示される後処理装置40についてのNOx浄化処理方法の一実施例を示している。図40を参照するとこの実施例では、排気ガスの流れ方向が順流方向であるときに第1のHC吸着酸化触媒42aの温度Tc1が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったときには排気ガスの流れ方向が順流方向から逆流方向に切換えられ、排気ガスの流れ方向が逆流方向であるときに第2のHC吸着酸化触媒42bの温度Tc2が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったときには排気ガスの流れ方向が逆流方向から順流方向に切換えられる。
図41はこの実施例を実行するために図14のステップ105において行われるNOx浄化処理ルーチンを示している。
図41を参照するとまず初めにステップ310において排気ガスの流れ方向が順流方向であるか否かが判別される。排気ガスの流れ方向が順流方向であるときにはステップ311に進んで第1のHC吸着酸化触媒42aの温度Tc1が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったか否かが判別される。Tc1≦T2のときにはステップ315にジャンプする。これに対してTc1>T2になるとステップ312に進んで排気ガスの流れ方向が順流方向から逆流方向に切換えられ、次いでステップ315に進む。
一方、ステップ310において排気ガスの流れ方向が順流方向ではないと判断されたときにはステップ313に進んで第2のHC吸着酸化触媒42bの温度Tc2が最適温度範囲Xの上限温度T2以上になったか否かが判別される。Tc2≦T2のときにはステップ315にジャンプする。これに対してTc2>T2になるとステップ314に進んで排気ガスの流れ方向が逆流方向から順流方向に切換えられ、次いでステップ315に進む。
ステップ315ではNOx放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx放出フラグがセットされているときにはステップ316に進んで図11(B)に示すマップから添加すべき燃料量AQが算出され、次いでステップ317ではマップから算出された量AQの燃料、即ち軽油が燃料添加弁12から添加される。次いでステップ318ではNOx放出フラグがリセットされる。