JP4475711B2 - ポリイミド前駆体溶液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶質が高濃度・高粘度で溶解していても安定であるポリイミド前駆体溶液及びその製造方法、それから得られる良好な物性を有するポリイミド塗膜並びにポリイミドシームレス管状フィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にポリイミドは、耐熱性、機械的特性等に優れているので、種々の分野で使用されあるいは使用を検討されている。中でも電子写真方式を用いたレーザープリンターならびに複写機等におけるトナー画像の被写体(紙、厚紙、OHPシート等)への加熱定着用基材(ロールまたはベルト)、あるいは転写用基材(ロールまたはベルト)としてポリイミドシームレス管状フィルムが検討されている。
【0003】
従来ポリイミドのシームレス管状フィルムの製法としては、ポリイミド前駆体溶液を成形用の円筒状型の内面あるいは外面に塗工した後、加熱して、溶媒を除去し、ポリイミド前駆体をイミド化させて得られるポリイミドの塗膜を円筒状型から剥離して、ポリイミドのシームレス管状フィルムを得る方法が知られている。
【0004】
この製法において用いられるポリイミド前駆体溶液としては、特開平9−277287号公報には4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物の等モルをジメチルアセトアミド/ナフサ(9/1)中で重合した固形分濃度が20重量%、粘度2000ポイズのポリアミド酸が開示されている。
また、特開平11−58423号公報では、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの等モル量をN−メチル−2−ピロリドン中で20℃で重合した固形分濃度が20重量%で20℃での粘度が1,500ポイズであるポリアミド酸溶液が開示されている。
【0005】
さらに特開平9−277286号公報には、溶媒がジメチルアセトアミド/ナフサ(9/1)であり、樹脂分18.8%、粘度が740ポイズであるポリアミド酸(宇部興産社製、商品名uワニスS)をポリイミド前駆体溶液として用いる方法が開示されている。
【0006】
ところで、ポリイミドのシームレス管状フィルムをポリイミド前駆体溶液から作製する際に、熱処理工程での溶媒蒸発による体積収縮による応力が、塗膜形状が管状であるために緩和できず、その結果、ポリイミド被膜が歪んでクラック割れするという問題があった。特に従来使用されているポリイミド前駆体溶液であるポリアミド酸溶液の固形分濃度は20重量%前後であり、溶媒の蒸発による体積収縮は非常に大きいものであった。また、ポリアミド酸の濃度を高めようとしても、高分子量である故に、高濃度になると粘度が極端に高くなり、流動性が消失したり、ゲル化するという問題があった。さらに、ポリアミド酸を重合する際に、1官能の芳香族アミンや無水カルボン酸等を反応させてポリアミド酸の分子量を下げて低粘度化すると、イミド化して得られるポリイミドの強度や伸度等の機械的性質が低下するという問題があった。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】
上記状況に鑑み、本発明の課題は、溶質が高濃度・高粘度で溶解していても、その溶液はゲル化せず安定であるポリイミド前駆体溶液を提供すること、及びこのポリイミド前駆体溶液を容易に製造する方法を提供すること、このポリイミド前駆体溶液から得られ、割れ、クラック、歪みがなく良好な物性を有するポリイミド塗膜並びにシームレス管状フィルムを提供すること、このシームレス管状フィルムを容易に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、後述する特定のカルボン酸とジアミンとからなる塩を含有するポリイミド前駆体溶液は、高濃度でかつ高粘度であるにも関わらずゲル化が起こらず安定していること、並びに熱処理過程でその塩(ポリイミド前駆体)が高分子量のポリアミド酸になり、その後、イミド化して高強度のポリイミドが得られることを見出した。その結果、このポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミド塗膜は、ポリイミド前駆体溶液が高濃度であるが故に溶媒の蒸発による体積収縮が小さく、特に、シームレス管状フィルムとして作製した場合にも歪まず割れやクラックが発生せず、かつ機械的物性が高く、生産性も良いという知見を得、これらの知見に基づいて、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、第1に、下記一般式(1)に示すカルボン酸と下記一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンとからなる塩が溶質として溶媒中に30重量%以上溶解しており、粘度が100ポイズを超えていることを特徴とするポリイミド前駆体溶液である。
【0010】
【化4】
【0011】
[式中、Rは少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、4つのカルボニル基はこの残基中異なった炭素原子に直接連結されており、4つのうちの2つずつは対をなし、炭素6員環内の隣接する炭素原子に結合しており、R'は少なくとも1つの炭素6員環を持つ2価の芳香族残基を示し、R''は水素または炭素数7以下の1価の有機基を示し、R'''は構造式群1と構造式群2とのうちの構造式群2から選ばれる少なくとも1つであり、nは1〜20の整数を示す。]
【0012】
第2に、溶媒中で、一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物1モルに対して、一般式(4)に示すジアミンを0.7〜0.98モルの割合で反応させて、一般式(5)に示すカルボン酸二無水物を生成させ、水または任意のアルコールを加えて末端の酸無水物基を開環させて一般式(1)に示すカルボン酸1モルに対し、一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミン0.95〜1.05モルを加えることを特徴とするポリイミド前駆体溶液の製造方法である。
【0013】
【化5】
【0014】
[式中、Rは少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、4つのカルボニル基はこの残基中異なった炭素原子に直接連結されており、4つのうちの2つずつは対をなし、炭素6員環内の隣接する炭素原子に結合しており、R'は少なくとも1つの炭素6員環を持つ2価の芳香族残基を示す。]
【0015】
[R''は水素または炭素数7以下の1価の有機基を示し、R'''は構造式群1と構造式群2とのうちの構造式群2から選ばれる少なくとも1つであり、nは1〜20の整数を示す。]
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
まず、本発明で用いる用語について説明する。
(1)ポリイミド
ポリマー鎖の繰り返し単位の80モル%以上がイミド構造を有する有機ポリマーをいう。そして、この有機ポリマーは耐熱性を示す。
(2)ポリイミド前駆体
加熱又は、化学的作用により閉環してポリイミドとなる有機化合物をいい、閉環とはイミド環構造が形成されることをいう。
【0017】
(3)ポリイミド前駆体溶液
一般式(1)に示すカルボン酸と下記一般式(2)に示すジアミンとからなる塩(ポリイミド前駆体)が溶質として溶媒に溶解しているものである。ここで溶媒とは、25℃で液状の化合物をいう。
(4)粘度
(株)トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、20℃における回転粘度を測定したものである。
(5)溶質濃度
溶液中に占めるポリイミド前駆体の重量割合を百分率で表した数値である。
【0018】
(6)ポリイミド塗膜
ポリイミド前駆体溶液が、例えば銅、アルミニウム、ガラス等の基材上に形成されたポリイミドの膜をいう。これらポリイミド塗膜のなかで基材と密着したまま使用されるものをポリイミド被覆物といい、基材から剥離して使用されるものをポリイミドフィルムといい、ポリイミド被覆物及びポリイミドフィルムはポリイミド塗膜の範疇に入るものである。
(7)ポリイミド塗膜の厚み
(株)ミツトヨ製デジマチックマイクロメーターを用い、ポリイミド被膜の厚みを10箇所で測定し、その平均値として求めたものである。
【0019】
さらに本発明について説明する。本発明のポリイミド前駆体溶液は、一般式(1)に示すカルボン酸と一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンとからなる塩が溶質として溶媒中に溶解している。一般式(1)において、Rは少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、4つのカルボニル基はこの残基中異なった炭素原子に直接連結しており、4つのうちの2つずつは対をなし、炭素6員環内の隣接する炭素原子に結合しており、R'は少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基を示し、R''は水素又は炭素数7以下の有機基を示し、1価の有機基は後述するアルコールに起因する基が挙げられる。また、nは1〜20の整数を示す。また、一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンにおいて、R'''は構造式群2から選ばれる少なくとも1つである。そして、一般式(1)に示すカルボン酸と一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンとからなる塩において、R'及びR'''として同一のもの、あるいは異なったものが用いられてもよく、R、R'、R''は上記構造が満足されれば、具体的には限定されない。
【0020】
そして、一般式(1)において、Rの具体例としては次のものが例示できる。
【0021】
【化6】
【0022】
Rとしては次に挙げるものが好ましい。
【0023】
【化7】
【0024】
さらに、Rとしては次に挙げるもの特にが好ましい。
【0025】
【化8】
【0026】
一般式(1)及び一般式(2)において、R'の具体例としては、次のものが例示できる。
【0027】
【化9】
【0028】
R'としては次に挙げるものが好ましい。
【0029】
【化10】
【0030】
さらに、R'としては次に挙げるものが特に好ましい。また、R'''としては次に挙げるものであることが必要である。
【0031】
【化11】
【0032】
また、R、R' 、R''' においてはそれぞれ単独又は2種類以上の構造が選ばれてもよい。
【0033】
本発明において、溶媒としては一般式(1)に示すカルボン酸と一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンからなる塩を溶かす溶媒であればいかなる溶媒も用いることができる。
【0034】
例えば、非プロトン性極性溶媒である、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド、エーテル系化合物である、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、水溶性アルコール系化合物である、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジアセトンアルコール等が、非水溶性アルコール系化合物ではベンジルアルコールが、ケトン系化合物では1,5,5−トリメチル−3−シクロヘキサノンが、その他ではγ―ブチロラクトンが挙げられ、上記各化合物を単独、もしくは二種以上を混合して用いることができる。このうち特に好ましい例としては、単独溶媒としてN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、混合溶媒としては、N−メチルピロリドンとジエチレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドンとメタノール、N−メチルピロリドンと2−メトキシエタノール等の組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液の濃度は、30重量%以上が好ましい。35重量%以上がより好ましい。ポリイミド前駆体溶液の濃度が30重量%未満の場合には、蒸発する溶媒量が多くなるために体積収縮による応力が増大し、管状の塗膜が歪んでクラックが発生したり割れたりする場合があるので好ましくない。濃度の上限は50重量%であり、それを超えるとゲル化することがある。
【0036】
また、ポリイミド前駆体溶液の粘度は100ポイズを超え、500ポイズ以上が好ましく、1000ポイズ以上がより好ましい。溶液の粘度が100ポイズ以下の場合、塗工した際に溶液が流れ、所定の塗り厚みにできないというハンドリング性の点で好ましくない。粘度の上限は10000ポイズであり、それを超えると流動性がなくなることがある。
【0037】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液は、一般式(1)に示すカルボン酸溶液中のカルボン酸と一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンとからなる塩が溶質として溶媒中に溶解しているものであり、一般式(1)に示すカルボン酸の溶液を作製する際には、モノマー及び溶媒の混合順序はどんな順序にしてもよく、一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンを添加する方法は、このジアミンを固体のままか、もしくは溶液にして前記カルボン酸溶液に攪拌下に添加する。
【0038】
次に、本発明のポリイミド前駆体溶液を得るための好ましい製造方法を、溶媒として非プロトン性極性化合物を用いた場合について述べる。非プロトン性極性化合物中で、一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物と一般式(4)に示すジアミンを反応させ、一般式(5)に示すカルボン酸二無水物を生成させる。このときの反応温度は、−30〜70℃が好ましく、−20℃〜40℃がより好ましい。ついで、この反応溶液に水またはアルコールを加え反応させ、一般式(1)に示すカルボン酸を生成させる。このときの反応温度は、0〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。また、この際、必要に応じてジメチルアミノエタノールなどを触媒として用いてもよい。さらに、この一般式(1)に示すカルボン酸の溶液に、一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンを添加することにより、本発明のポリイミド前駆体溶液を得ることができる。
【0039】
一般式(5)に示すカルボン酸二無水物を生成させるための一般式(3)に示すテトラカルボン酸二無水物と一般式(4)に示すジアミンとの割合は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対してジアミン0.7〜0.98モルが好ましく、より好ましくは0.9〜0.97モルである。テトラカルボン酸二無水物1モルに対してジアミンが0.7モル未満では、塗膜の形状並びに塗膜の厚みによってはイミド化工程の熱処理中に割れが発生する場合があり、0.98モルを超えると溶液が著しく増粘、ゲル化する場合がある。
【0040】
また、カルボン酸二無水物の無水物基と反応させる水又はアルコールの添加量は、末端の酸無水物基と同モル量又は多少過剰量が好ましい。
ここで用いるアルコールとしては、次に示すものが挙げられる。中でも好ましくは、メチルアルコール及びエチルアルコールが用いられ、この場合一般式(1)のR''は各々メチル基及びエチル基となる。
【0041】
【化12】
【0042】
さらに、一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンの添加量は前記のようにして得られた一般式(1)で示されるカルボン酸1モルに対して、一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミン0.95〜1.05モル、より好ましくは0.97〜1.03モルである。一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンの添加割合が、0.95〜1.05モルの範囲外では目的とする塩が得られにくくなる傾向にある。このときの温度は、−30℃〜120℃が好ましく、−20℃〜80℃がより好ましい。
【0043】
さらに、本発明のポリイミド前駆体溶液には、必要に応じて例えば、有機シラン、顔料、導電性のカーボンブラック及び金属粒子のような充填剤、摩滅剤、誘電体、潤滑剤等の他公知の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。また、他の重合体や例えば水不溶性のエーテル類、アルコール類、ケトン類、エステル、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等の溶媒を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0044】
本発明のポリイミド前駆体溶液は各種の形状にして利用することができ、例えば、ポリイミド前駆体溶液を銅、アルミニウム、ガラス等の基材上に塗工し、熱処理して、溶媒を除去し、ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド塗膜を得る。ポリイミド塗膜は、基材と密着したままポリイミド被覆物として、または、ポリイミド塗膜を基材から剥離してポリイミドフィルムとして利用することができる。前記イミド化の条件は200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上で5分間以上、特に300℃以上で30分間以上加熱することが好ましい。
【0045】
具体的に、ポリイミド前駆体溶液からポリイミド塗膜を経てポリイミド被覆物を得るには、ポリイミド前駆体溶液を従来公知のスピンコート法、スプレイコート法、浸漬法等の方法により基材上に塗工し、乾燥して溶媒を除去した後、イミド化する。また、ポリイミドフィルムを成形するには、スリット状ノズルから押し出したり、バーコーター等により基材上に塗工し、乾燥して溶媒を除去した後、これをイミド化した後、基材上から剥離する。
上記のように、本発明のポリイミド前駆体溶液を用い、上記のように塗工し、イミド化すると、ポリイミド塗膜を、生産性良く得ることができる。
【0046】
さらにポリイミドシームレス管状フィルムの製造について詳細に述べる。
まず、ポリイミド前駆体溶液を、円筒状型の外周面及び/又は内周面に、又は円柱状型の外周面に、均一に塗工する。塗工方法としては、例えば、ポリイミド前駆体溶液中に円筒状型又は円柱状型を浸漬して引き上げる方法、円筒状型の片端部内にポリイミド前駆体溶液を供給した後、この円筒状型の径と一定のクリアランスを有する走行体を、走行させる方法、円筒状型又は円柱状型と一定のクリアランスを有する孔内をポリイミド前駆体溶液が全面又は一部に供給された円筒状型又は円柱状型を通過させる方法、ポリイミド前駆体溶液を円筒状型又は円柱状型の周面にスプレー塗工する方法等を挙げることができる。
【0047】
なお、本発明のポリイミド前駆体溶液を円筒状型の片端に供給した後、円筒状型内を走行させる際に用いる走行体としては、例えば、金属製、セラミックス製、溶剤不溶性のプラスチック製、ガラス製等のものをあげることができる。そして、この走行は、圧縮空気、ガス爆発等により走行体を押す方法、牽引ワイヤー等により牽引する方法、減圧法あるいは自重走行法(型を垂直にたて、走行体をその自重により下方に走行させる)等により行うことができる。この走行をいずれの方法で行うにしても、塗工厚みを均一にするため、円筒状型を垂直あるいは水平に維持することが好ましい。また、円筒状型自体や走行体自体を、上記走行に際して回転させることもできる。
【0048】
つぎに円筒状型又は円柱状型に塗工したポリイミド前駆体溶液を熱処理して、溶媒を除去、イミド化することにより、円筒状型の内周面及び又は外周面、又は円柱状型の外周面ににポリイミドの層を形成させた後、これらの型から剥離することによりポリイミドシームレス管状フィルムを得る。なお、この剥離作業は、ポリイミド前駆体溶液を塗工する面にフッ素系離型剤あるいはシリコン系離型剤を予め塗布しておくことにより、容易に行うことができる。また、塗工表面の表面粗さを小さくすることでも、剥離を容易にすることができる。
上記のように、本発明のポリイミド前駆体溶液を用い、上記のように塗工し、イミド化すると、ポリイミドシームレス管状フィルムを、生産性良く得ることができる。
【0049】
本発明のポリイミド前駆体溶液、ポリイミド塗膜(ポリイミド被覆物及びポリイミドフェイルを含む)は、例えば、耐熱絶縁テープ、耐熱粘着テープ、高密度磁気記録ベース、コンデンサー、FPC(フレキシブルプリント基板)用のフィルム等の製造に用いられる。また、例えば、フッ素樹脂やグラファイト等を充填して摺動部材、ガラス繊維や炭素繊維で強化して構造部材、小型コイルのボビン、スリーブ、端末絶縁用チューブ等の成形材や成形品の製造に用いられる。また、パワートランジスターの絶縁スペーサ、磁気ヘッドスペーサ、パワーリレーのスペーサ、トランスのスペーサ等の積層材の製造に用いられる。また、電線・ケーブル絶縁被膜用、太陽電池、低温貯蔵タンク、宇宙断熱材、集積回路、スロットライナー等のエナメルコーティング材の製造に用いられる。また、限外ろ過膜、逆浸透膜、ガス分離膜の製造に用いられる。また、耐熱性を有する糸、織物、不織布等の製造にも用いられる。
【0050】
また特に、本発明のポリイミドシームレス管状フィルムは、例えば電子写真方式の複写機、プリンタ(レーザービームプリンタ等)、ファクシミリ等の画像形成装置の定着用ベルト部材並びに中間転写用ベルト部材等として用いられる。ポリイミド前駆体溶液に導電性フィラーを添加して得られるシームレス管状フィルムは、上記電子写真方式の画像形成装置の感光体用ベルト部材として用いられる。
【0051】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
ジアミノジフェニルエーテル2458.9g(12.28mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、室温下で攪拌した。これにピロメリット酸二無水物2790.5g(12.79mol)を1分間で加え、室温下2時間攪拌した。メタノール49.1g(1.53mol)およびジメチルアミノエタノール2.46gを加え、70℃湯浴上で2時間攪拌し、下記式に示すカルボン酸を得た。
【0052】
【化13】
【0053】
室温まで冷却した後、ジアミノジフェニルエーテル102.5g(0.51mol)を加え、さらに1時間撹拌を続けたところ、均一な黄橙色透明溶液が得られた(溶質濃度35重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、20℃で2300ポイズであった。
得られたポリアミド酸前駆体溶液をフィルムアプリケーターを用いて、ガラス板上に150μmの厚みで流延し、窒素雰囲気下において80℃で2時間乾燥した後、昇温速度1℃/分で300℃まで昇温し、次いで300℃で5時間加熱イミド化を行った後、塗膜をガラス板上から剥離したところ、ポリイミドフィルムが得られた。このポリイミドフィルムの厚みは、43μmであり、引張強度は15kg/mm2 、伸度30%、引張弾性率398kg/mm2 であった。
次に内径50mm、肉厚5mm、長さ550mmで内周面の表面粗さ(Rz)が3μmに調製されたステンレス製円筒状型を上記のポリアミド酸前駆体溶液に浸漬し、引き上げた。その後、この円筒状型を垂直に保持し、その中を外径49.4mmの円筒状走行体を自重により下降走行させることにより、円筒状型内周面に厚みが均一であるポリアミド前駆体溶液からなる層を形成させた。
【0054】
上記溶液層が形成された円筒状型を窒素雰囲気において、80℃の温度で2時間乾燥した後、300℃まで昇温速度1℃/分で昇温し、さらに300℃で5時間加熱イミド化し、円筒状型内周面にポリイミドの層を形成させ、このポリイミドの層を円筒状型内周面から剥離してシームレス管状フィルムを得た。なお、この管状フィルムは、長さ549.6mm、外径50mm、厚み57μmであり、この管状フィルムには体積収縮によるクラックや歪み、割れは確認されなかった。この管状フィルムの引張強度は15.2kg/mm2 、伸度28%、引張弾性率385kg/mm2 であった。引き続いて、本発明のポリアミド前駆体溶液を用いて同様な条件で10本のポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したが、クラックや割れは発生しなかった。
【0055】
実施例2
外径50mm、長さ550mmで外周面の表面粗さ(Rz)が3μmに調製されたステンレス製円筒状型の外周囲を実施例1で得られたポリイミド前駆体溶液に浸漬し、引き上げた。その後、この円筒状型を垂直に保持し、内径50.8mmの円筒状走行体を自重により下降走行させることにより、円筒状型外周面に厚みが均一であるポリイミド前駆体溶液からなる層を形成させた。その後、実施例1と同様の乾燥、加熱イミド化を行って円筒状型外周面にポリイミドの層を形成させ、剥離して管状フィルムを得た。なお、この管状フィルムは、長さ549.8mm、外径50.2mm、厚み75μmであり、体積収縮によるクラックや歪み、割れは確認されなかった。この管状フィルムの引張強度は15.0kg/mm2 、伸度29%、引張弾性率390kg/mm2 であった。引き続いて、実施例1で得られたポリイミド前駆体溶液を用いて同様な条件で10本のポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したが、クラックや割れは発生しなかった。
【0056】
比較例1
ジアミノジフェニルエーテル1196.49g(5.98mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、20℃に保った。これにピロメリット酸二無水物1303.51g(5.98mol)を2時間にわたり徐々に加え、さらに6時間攪拌し、20℃での溶液粘度が1,500ポイズのポリアミド酸溶液を得た(溶質濃度20重量%)。このポリアミド酸溶液を用いて、実施例1の方法でポリイミドのシームレス管状フィルムを10本作製したが、4本は被膜に割れが発生し、生産性は低いものであった。
【0057】
比較例2
ジアミノジフェニルエーテル1196.49g(5.98mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド5833gに溶解し、室温に保った。これにピロメリット酸二無水物1303.51g(5.98mol)を2時間にわたり徐々に加え、さらに6時間攪拌したところ、溶液はゲル化した。(溶質濃度30重量%)。
【0058】
実施例3
ジアミノジフェニルエーテル2082.92g(10.40mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、室温下で攪拌した。これに3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下BPDAと略す)3188.0g(10.84mol)を5分間で加え、室温下2時間攪拌した。メタノール41.61g(1.30mol)およびジメチルアミノエタノール2.08gを加え、70℃湯浴上で2時間攪拌し、下記式に示すカルボン酸を得た。
【0059】
【化14】
【0060】
室温まで冷却した後、ジアミノジフェニルエーテル86.79g(0.43mol)を加え、さらに1時間撹拌を続けたところ、均一な黄橙色透明溶液が得られた(溶質濃度35重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、20℃で1800ポイズであった。
得られたポリイミド前駆体溶液を実施例1と条件と同様にフィルムアプリケーターを用いて、ガラス板上に150μmの厚みで流延し、乾燥、熱イミド化して、ガラス板上に形成されたポリイミドの層を剥離して、厚みが48μmのポリイミドフィルムを得た。引張強度は14kg/mm2 、伸度78%、引張弾性率425kg/mm2 であった。
さらにこのポリイミド前駆体溶液を使って、実施例1と同様な条件でポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したところ、被膜の割れや歪みは発生しなかった。得られたシームレス管状フィルムは、長さ549.7mm、外径50mm、厚み65μmであり、引張強度は13.8kg/mm2 、伸度75%、引張弾性率420kg/mm2 であった。引き続いて、同様な条件で10本のポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したが、クラックや割れは発生しなかった。
【0061】
実施例4
ジアミノジフェニルエーテル2252.44g(11.25mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、室温下で攪拌した。これにBPDA3893.63g(13.23mol)を5分間で加え、室温下2時間攪拌した。メタノール190.57g(5.96mol)およびジメチルアミノエタノール9.53gを加え、70℃湯浴上で2時間攪拌した、次いで室温まで冷却した後、ジアミノジフェニルエーテル397.49g(1.99mol)を加え、さらに1時間撹拌を続けたところ、均一な黄橙色透明溶液が得られた(溶質濃度40重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、20℃で670ポイズであった。
【0062】
得られたポリイミド前駆体溶液を実施例1の条件と同様にフィルムアプリケーターを用いて、ガラス板上に150μmの厚みで流延し、乾燥、熱イミド化して、ガラス板上に形成されたポリイミドの層を剥離して、厚みが58μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの引張強度は14.5kg/mm2 、伸度76%、引張弾性率420kg/mm2 であった。
さらにこのポリイミド前駆体溶液を使って、実施例1と同様な条件でポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したところ、被膜の割れや歪みは発生しなかった。得られたシームレス管状フィルムは、長さ549.6mm、外径50mm、厚み76μmであり、引張強度は14kg/mm2 、伸度75%、引張弾性率418kg/mm2 であった。引き続いて、本発明のポリアミド前駆体溶液を用いて同様な条件で10本のポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したが、クラックや割れは発生しなかった。
【0063】
比較例3
ジアミノジフェニルエーテル1012.42g(5.06mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、20℃に保った。これにBPDA1487.58g(5.06mol)を2時間にわたり徐々に加え、さらに6時間攪拌し、20℃での溶液粘度が1400ポイズのポリアミド酸溶液を得た(溶質濃度20重量%)。このポリアミド酸溶液を用いて、実施例1の方法でポリイミドのシームレス管状フィルムを10本作製したが、3本はフィルムに割れが発生し、生産性は低いものであった。
【0064】
比較例4
ジアミノジフェニルエーテル1012.42g(5.06mol)をN,N’−ジメチルアセトアミド5833gに溶解し、室温に保った。これにBPDA1487.58g(5.06mol)を2時間にわたり徐々に加え、さらに6時間撹拌を続けたところ、溶液はゲル化した。(溶質濃度30重量%)
【0065】
実施例5
パラフェニレンジアミン1380.79g(12.77mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、室温下で攪拌した。これにBPDA3913.30g(13.3mol)を5分間で加え、室温下2時間攪拌した。メタノール51.07g(1.60mol)およびジメチルアミノエタノール2.55gを加え、70℃湯浴上で2時間攪拌し、下記式に示すカルボン酸を得た。
【0066】
【化15】
【0067】
室温まで冷却した後、パラフェニレンジアミン57.53g(0.53mol)を加え、さらに1時間撹拌を続けたところ、均一な黒緑色透明溶液が得られた(溶質濃度35重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、20℃で2000ポイズであった。この溶液をフィルムアプリケーターを用いて、ガラス板上に150μmの厚みで流延し、実施例1と同様な条件で乾燥、熱イミド化してポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの厚みは、50μmであり、引張強度は28.1kg/mm2 、伸度9%、引張弾性率1050kg/mm2 であった。
さらにこのポリイミド前駆体溶液を使って、実施例1と同様な条件でポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したところ、被膜の割れや歪みは発生しなかった。得られたシームレス管状フィルムは、長さ549.8mm、外径50mm、厚み75μmであり、引張強度は29kg/mm2 、伸度10%、引張弾性率1000kg/mm2 であった。引き続いて、同様な条件で10本のポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したが、クラックや割れは発生しなかった。
【0068】
実施例6
パラフェニレンジアミン1588.11g(14.69mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、室温下で攪拌した。これにBPDA4800.90g(16.32mol)を5分間で加え、室温下2時間攪拌した。メタノール156.65g(4.90mol)およびジメチルアミノエタノール7.83gを加え、70℃湯浴上で2時間攪拌し、室温まで冷却した後、次いでパラフェニレンジアミン176.46g(1.63mol)を加え、さらに1時間撹拌を続けたところ、均一な黒緑色透明溶液が得られた(溶質濃度40重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、20℃で1200ポイズであった。この溶液をフィルムアプリケーターを用いて、ガラス板上に150μmの厚みで流延し、実施例1と同様な条件で乾燥、熱イミド化してポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの厚みは、68μmであり、引張強度は27.5kg/mm2 、伸度9%、引張弾性率1030kg/mm2 であった。
さらにこのポリイミド前駆体溶液を使って、実施例1と同様な条件でポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したところ、被膜の割れや歪みは発生しなかった。得られたシームレス管状フィルムは、長さ549.8mm、外径50mm、厚み63μmであり、引張強度は28.5kg/mm2 、伸度10%、引張弾性率1030kg/mm2 であった。引き続いて、同様な条件で10本のポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したが、クラックや割れは発生しなかった。
【0069】
比較例5
パラフェニレンジアミン671.91g(6.21mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、20℃に保った。これにBPDA1828.09g(6.21mol)を2時間にわたり徐々に加え、さらに6時間攪拌し、20℃での溶液粘度が1600ポイズのポリアミド酸溶液を得た(溶質濃度20重量%)。このポリアミド酸溶液を用いて、実施例1の方法でポリイミドのシームレス管状フィルムを10本作製したが、5本は被膜に割れが発生し、生産性は低いものであった。
【0070】
比較例6
パラフェニレンジアミン671.91g(6.21mol)をN,N−ジメチルアセトアミド5833gに溶解し、室温に保った。これにBPDA1828.09g(6.21mol)を2時間にわたり徐々に加え、さらに6時間撹拌を続けたところ、溶液はゲル化した。(溶質濃度30重量%)
【0071】
実施例7
3,4’−オキシジアニリン2020.54g(10.09mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gの混合物に溶解し、室温下で攪拌した。これに4,4’−オキシジフタル酸二無水物3260.53g(10.51mol)を1分間で加え、室温下2時間攪拌した。メタノール40.36g(1.26mol)およびジメチルアミノエタノール2.02gを加え、70℃湯浴上で2時間攪拌し、下記式に示すカルボン酸を得た。
【0072】
【化16】
【0073】
室温まで冷却した後、3,4’−オキシジアニリン84.19g(0.42mol)を加え、さらに1時間撹拌を続けたところ、均一な黒茶色透明溶液が得られた(溶質濃度35重量%)。この溶液の粘度を測定したところ、2200ポイズであった。この溶液をフィルムアプリケーターを用いて、ガラス板上に150μmの厚みで流延し、実施例1と同様な条件で乾燥、熱イミド化してポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの厚みは58μmであり、引張強度は15kg/mm2 、伸度70%、引張弾性率395kg/mm2 であった。
さらにこのポリイミド前駆体溶液を使って、実施例1と同様な条件でポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したところ、被膜の割れや歪みは発生しなかった。得られたシームレス管状フィルムは、長さ549.7mm、外径50mm、厚み65μmであり、引張強度は15.6kg/mm2 、伸度75%、引張弾性率385kg/mm2 であった。引き続いて、同様な条件で10本のポリイミドのシームレス管状フィルムを作製したが、クラックや割れは発生しなかった。
【0074】
比較例7
3,4’−オキシジアニリン980.72g(4.90mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド10000gに溶解し、20℃に保った。これに4,4’−オキシジフタル酸二無水物1519.28g(4.90mol)を2時間にわたり徐々に加え、さらに6時間攪拌し、20℃での溶液粘度が1,500ポイズのポリアミド酸溶液を得た(溶質濃度20重量%)。このポリアミド酸溶液を用いて、実施例1の方法でポリイミドのシームレス管状フィルムを10本作製したが、3本は被膜に割れが発生し、生産性は低いものであった。
【0075】
比較例8
3,4’−オキシジアニリン980.72g(4.90mol)をN,N’−ジメチルアセトアミド5833gに溶解し、室温に保った。これに4,4’−オキシジフタル酸二無水物1519.28g(4.90mol)を2時間にわたり徐々に加え、さらに6時間撹拌を続けたところ、溶液はゲル化した。(溶質濃度30重量%)
【0076】
【発明の効果】
以上のように、本発明のポリイミド前駆体溶液は、溶質が高分子量の重合体ではなくオリゴマーとモノマーの塩であり、高濃度で溶解して、高粘度であるにもかかわらず、その溶液はゲル化せず安定である。したがって、本発明のポリイミド前駆体溶液から得られるポリイミド塗膜は、製造時に体積収縮による応力が小さいので、割れやクラック、歪みが発生しにくく、良好な物性を有する。特に本発明のシームレス管状フィルムを形成する際には、被膜の割れやクラックが発生せず、生産性が著しく向上する。したがって、本発明のポリイミド塗膜は、大規模集積回路等の層間絶縁膜や保護膜として、また特に、シームレス管状フィルムは、電子写真方式を用いたレーザープリンターならびに複写機等におけるトナー画像の被写体(紙、厚紙、OHPシート等)への加熱定着用基材(ロールまたはベルト)、あるいは転写用基材(ロールまたはベルト)として優れた効果を奏する。また、本発明のポリイミド前駆体溶液の製造方法によれば前記のポリイミド前駆体溶液を容易に製造することができ、ポリイミドの塗膜並びにシームレス管状フィルムの製造方法によればポリイミド塗膜並びにシームレス管状フィルムを生産性良く製造することができる。
Claims (2)
- 下記一般式(1)に示すカルボン酸と下記一般式(2)に示すモノマーとしてのジアミンとからなる塩が溶質として溶媒中に30重量%以上溶解しており、粘度が100ポイズを超えていることを特徴とするポリイミド前駆体溶液。
- 一般式(1)及び一般式(2)において、Rは上記構造式群1から選ばれ、R'は上記構造式群2から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体溶液。
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