ところで、微粒子捕集フィルタに捕集された微粒子を燃焼させるためには、微粒子捕集フィルタが高温であること、及び、微粒子捕集フィルタに酸素が供給されること、が必要である。上記従来の制御装置は、供給される混合気の空燃比が非常にリーン(希薄)であるディーゼル機関に適用される。従って、微粒子捕集フィルタには微粒子を燃焼させるための酸素が十分に供給されている。そこで、上記従来の制御装置は、燃料噴射時期の遅角、燃料噴射量の増大及び吸気絞り弁による吸気量の減少等を実行することによって微粒子捕集フィルタの温度を上昇させ、以って、捕集した微粒子を燃焼させている。
ところで、近年においては、ガソリン機関から排出される微粒子の量を低減するため、ガソリン機関の排気通路にも微粒子捕集フィルタを配設することが検討されている。一方、一般のガソリン機関においては、未燃物(HC及びCO等)の大気中への排出量及び窒素酸化物(NOx)の大気中への排出量を低減することを目的として排気通路に三元触媒が備えられ、機関に供給される混合気の空燃比(以下、「機関の空燃比」とも称呼する。)が理論空燃比近傍の空燃比となるように燃料量が制御されている。
前述したように、微粒子捕集フィルタを再生させる(微粒子を燃焼させる)ためには、微粒子捕集フィルタに酸素が供給されなければならない。ところが、機関の空燃比が理論空燃比近傍の空燃比に制御されていると、微粒子捕集フィルタに酸素が殆ど供給されない。特に、微粒子捕集フィルタの上流に三元触媒である上流側触媒が備えられている場合、上流側触媒により酸素が消費及び吸蔵されるから、微粒子捕集フィルタに流入する酸素量は極めて少なくなる。従って、ガソリン機関において微粒子捕集フィルタを再生させるためには、機関の空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比(以下、「リーン空燃比」とも称呼する。)に制御することにより、微粒子捕集フィルタに酸素を供給しなければならない。しかしながら、機関の空燃比を三元触媒の状態に関わらずリーン空燃比に設定すると、機関の空燃比がリーン空燃比であるときに機関から多く排出される窒素酸化物を三元触媒によって浄化できない場合が生じ、窒素酸化物が大気中へ多く排出されてしまうという問題が発生する。
従って、本発明の目的は、排気通路に微粒子捕集フィルタと三元触媒とを備えた内燃機関(ガソリン機関)の制御装置であって、窒素酸化物の排出量を増大させることなく微粒子捕集フィルタを再生させる(微粒子捕集フィルタに捕集された微粒子を燃焼させる)ことができる制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による内燃機関の制御装置は、微粒子捕集フィルタと、下流側触媒と、還元状態判定手段と、空燃比制御手段と、を備えている。
前記微粒子捕集フィルタは、前記内燃機関の排気通路に配設されている。前記内燃機関が多気筒内燃機関である場合、前記微粒子捕集フィルタは各気筒に接続されたエキゾーストマニホールドの集合部(エキゾーストマニホールドの各気筒に接続された枝部が集合している部分)より下流に形成される排気通路に介装される。前記制御装置は、前記排気通路であって前記微粒子捕集フィルタよりも上流の位置(且つ、エキゾーストマニホールドの集合部よりも下流の位置)に三元触媒であって酸素吸蔵機能を有する上流側触媒を備えていてもよい。
前記下流側触媒は、前記排気通路であって前記微粒子捕集フィルタよりも下流の位置に配設されている。この下流側触媒は三元触媒であって酸素吸蔵機能を有し、「流入するガスに含まれる未燃物」に吸蔵していた酸素を与えることにより同未燃物を酸化するとともに「流入するガスに含まれる窒素酸化物」から酸素を奪って同酸素を吸蔵することにより同窒素酸化物を還元して未燃物及び窒素酸化物を浄化する。
前記還元状態判定手段は、前記機関に供給される空気及び燃料を含む混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりもリーン側の空燃比であっても前記下流側触媒(下流側触媒の状態)が「少なくとも所定量の(所定量以上の)窒素酸化物(NOx)から酸素を奪い、同奪った酸素を貯蔵することにより同窒素酸化物を浄化することができる還元状態」に到達したか否かを判定するようになっている。このような「還元状態」は、下流側触媒の酸素吸蔵量が同下流側触媒の最大酸素吸蔵量よりもある程度(例えば、第1所定量)以上小さく、前記所定量の窒素酸化物が流入した場合であってもその窒素酸化物から奪った酸素分子を貯蔵できる状態であると言うこともできる。
前記空燃比制御手段は、前記機関に供給される混合気(空気及び燃料を含む混合気)の空燃比の平均を、「理論空燃比を含む所定の空燃比範囲」内の「第1空燃比」に制御する。この制御は「理論空燃比近傍制御」とも称呼される。更に、前記空燃比制御手段は、前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定された場合、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均を「前記第1空燃比よりもリーン側であって且つ理論空燃比よりもリーン側」の「第2空燃比」に制御する。この制御は「フィルタ再生制御」とも称呼され、所定期間(フィルタ再生期間)に渡り実行される。機関に供給される混合気の空燃比の平均が前記第2空燃比に制御されると、機関から排出された過剰な酸素が前記微粒子捕集フィルタに供給され、その微粒子捕集フィルタに捕集されている微粒子が燃焼させられる。即ち、微粒子捕集フィルタが再生する。
上記「理論空燃比を含む所定の空燃比範囲内の第1空燃比」とは、下流側触媒の所謂「ウインドウ」の範囲内における空燃比のことである。この「ウインドウ」とは、未燃物(HC,CO)及び窒素酸化物(NOx)のそれぞれを所定率以上の高浄化率(高転化率)にて同時に浄化し得る空燃比範囲のことである。従って、上記制御装置によれば、通常時において機関から排出される未燃物及び窒素酸化物は理論空燃比近傍制御と下流側触媒と(上流側触媒を備える場合には更に上流側触媒と)により浄化される。
なお、第1空燃比は、前記所定の空燃比範囲内であって理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比であることが望ましい。三元触媒の「未燃物の浄化率」は機関の空燃比がウインドウ範囲より僅かにリッチ側に偏移しても比較的緩やかに低下するのに対し、三元触媒の「窒素酸化物の浄化率」は機関の空燃比がウインドウ範囲より僅かにリーン側に偏移すると急激に低下するからである。
前述したように、微粒子捕集フィルタに捕集された微粒子を燃焼させるためには微粒子捕集フィルタに酸素を供給する必要がある。微粒子捕集フィルタに酸素を供給するためには機関に供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比よりもリーン側の空燃比(第2空燃比)に設定することにより、機関から過剰な酸素を排出させる必要がある。ところが、機関に供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりもリーン側の空燃比であると、機関から窒素酸化物が多量に排出される。
そこで、本発明の制御装置は、「前記機関に供給される空気及び燃料を含む混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりもリーン側の空燃比であっても下流側触媒が所定量の窒素酸化物から酸素を奪い、同奪った酸素を貯蔵することにより同窒素酸化物を浄化することができる還元状態」に到達したか否かを判定し、下流側触媒が「還元状態」に到達したと判定された場合に前記機関に供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比よりもリーン側の空燃比(第2空燃比)に制御する。この結果、微粒子捕集フィルタには酸素が供給されるので、微粒子捕集フィルタに捕集されていた微粒子が燃焼して微粒子捕集フィルタが再生される。更に、機関から排出された窒素酸化物は「前記還元状態にある下流側触媒」によって浄化(還元)される。従って、本発明の制御装置は、窒素酸化物の排出量を増加させることなく微粒子捕集フィルタを再生させることができる。
更に、前記制御装置が、前記微粒子捕集フィルタと前記下流側触媒との間の位置において前記排気通路に配設されるとともに同配設された部位を流れるガスの空燃比に応じた出力値を出力する下流側空燃比センサを備える場合、前記空燃比制御手段は以下のように構成され得る。
即ち、前記空燃比制御手段は、
前記理論空燃比近傍制御を実行するために、
前記下流側空燃比センサから出力された出力値が、前記第1空燃比として設定された下流側目標空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値であるとき前記機関に供給される混合気の空燃比をよりリッチ側の空燃比に変更し、同下流側空燃比センサから出力された出力値が同下流側目標空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値であるとき同機関に供給される混合気の空燃比をよりリーン側の空燃比に変更するサブフィードバック制御を実行するように構成される。
「機関に供給される混合気の空燃比をよりリッチ側の空燃比に変更する」とは、機関に供給される混合気の空燃比を、その時点にて機関に供給されている混合気の空燃比よりもリッチ側の空燃比に変更する(リッチ化する)ことである。「機関に供給される混合気の空燃比をよりリーン側の空燃比に変更する」とは、機関に供給される混合気の空燃比を、その時点にて機関に供給されている混合気の空燃比よりもリーン側の空燃比に変更する(リーン化する)ことである。
これによれば、前記下流側触媒が前記還元状態に到達していないと判定されている期間の全部又は一部において、理論空燃比近傍制御を実現するためのサブフィードバック制御が実行される。このサブフィードバック制御が実行されることにより、下流側触媒に流入するガスの空燃比の平均は、より確実に下流側触媒のウインドウの範囲内となるので、未燃物及び窒素酸化物は高い効率にて浄化される。
更に、前記空燃比制御手段は、前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定された場合、前記フィルタ再生制御を実行するために、
前記下流側空燃比センサから出力された出力値が前記下流側目標空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値であっても前記機関に供給される混合気の空燃比をよりリッチ側の空燃比に変更することなく、同機関に供給される混合気の空燃比の平均を前記第2空燃比に維持するリーン維持制御を実行するように構成される。
この場合、機関に供給される混合気の空燃比は常に理論空燃比よりもリーン側の第2空燃比に制御されてもよく、第2空燃比よりもリッチ側及びリーン側の空燃比に交互に制御されながら、その平均が第2空燃比に制御されてもよい。
これによれば、前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定された場合、リーン維持制御が実行されるので、微粒子捕集フィルタに酸素が供給される。その結果、微粒子捕集フィルタに捕集されている微粒子が燃焼し、微粒子捕集フィルタが再生される。更に、機関に供給される混合気の空燃比が「理論空燃比よりもリーン側の空燃比」に維持されることにより機関から排出される多量の窒素酸化物は、還元状態に到達した下流側触媒によって浄化(還元)される。従って、本発明の制御装置は、窒素酸化物の排出量を増加させることなく微粒子捕集フィルタを再生させることができる。
この場合、フィルタ再生制御を実行するために、前記空燃比制御手段は、前記サブフィードバック制御を停止するように構成されることが望ましい。
また、前記制御装置が、前記下流側空燃比センサを備える場合、前記空燃比制御手段は、前記フィルタ再生制御を開始した時点以降において前記下流側空燃比センサから出力される出力値が理論空燃比に相当する値と一致した後に理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値となる時点まで同フィルタ再生制御を継続するように構成されることが好適である。
フィルタ再生制御が開始されると、微粒子捕集フィルタに酸素が供給され、微粒子捕集フィルタ内において微粒子が燃焼を開始する。この結果、微粒子捕集フィルタ内において微粒子が燃焼することにより酸素が消費され、微粒子捕集フィルタから酸素が流出しない。従って、下流側空燃比センサから出力される出力値は理論空燃比に相当する値となる。即ち、前記フィルタ再生制御を開始した時点以降において前記下流側空燃比センサから出力される出力値が理論空燃比に相当する値と一致していることは、微粒子が燃焼している(微粒子捕集フィルタが再生中である)可能性があることを意味する。このように微粒子が燃焼していると、下流側触媒には酸素が供給されないので、下流側触媒の状態(下流側触媒の窒素酸化物を浄化できる還元能力)は殆ど変化しない。その後、略総ての微粒子が燃焼すると、微粒子捕集フィルタに供給される酸素は微粒子捕集フィルタ内にて消費されないので、微粒子捕集フィルタから再び流出する。この結果、下流側空燃比センサから出力される出力値は理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値となる。
そこで、本制御装置は、前記フィルタ再生制御を開始した時点以降において前記下流側空燃比センサから出力される出力値が理論空燃比に相当する値と一致した後に理論空燃比よりも所定値だけリーン側の空燃比に相当する値となる時点(この時点を「リーン反転時点」とも称呼する。)まで少なくとも同フィルタ再生制御を継続する。換言すると、本制御装置は、フィルタ再生制御を「リーン反転時点」以降の所定時点にて終了する。これによれば、微粒子捕集フィルタに燃焼すべき微粒子が残存していて、且つ、下流側触媒が依然として窒素酸化物を十分に浄化できる状態にあるにも拘らず、フィルタ再生制御が停止されてしまうことを回避することができる。更に、フィルタ再生制御(リーン維持制御)が不必要に継続され、下流側触媒の窒素酸化物を浄化できる能力(還元能力)を超える量或は必要量以上の窒素酸化物が下流側触媒に流入することを回避することができる。従って、窒素酸化物が多く排出されることを回避することができる。
ところで、前記還元状態判定手段の一態様は、前記機関から前記排気通路に排出された未燃物である「還元成分の量」から同還元成分を酸化させる同機関から排出された「酸化成分の量」を減じた量である「還元成分の過剰量」の積算値に対応する「第1積算値」を取得するとともに、その第1積算値に基づいて前記下流側触媒が前記還元状態に到達したか否かを判定するように構成され得る。
下流側触媒の酸素吸蔵量は、酸化成分(未燃物である還元成分に酸素を供給することができる成分)に対して過剰な還元成分(酸化成分から酸素を奪う成分)が流入するにつれて減少する。下流側触媒は、その酸素吸蔵量が減少するほど、より多くの酸素を吸蔵できるようになるので、より多くの窒素酸化物を還元(浄化)することができる。従って、上記構成のように「還元成分の過剰量の積算値」に対応する「第1積算値」を取得し、その第1積算値に基づいて下流側触媒の状態を判定すれば、下流側触媒が前記還元状態に到達したか否かを容易に判定することが可能となる。
更に、本発明の制御装置が、前記機関の運転状態が所定のフューエルカット運転状態となったとき前記機関への燃料の供給を停止するフューエルカット手段を備えている場合、
前記還元状態判定手段は、前記フューエルカット手段による前記機関への燃料の供給停止が解除されて同機関に再び燃料が供給され始めた「フューエルカット復帰時点」以降における「所定の第1積算開始時点」から積算された前記第1積算値が第1所定値以上となったか否かを判定するとともに、同第1積算値が同第1所定値以上となったと判定されたとき前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定するように構成されることが好適である。
機関の運転状態が機関への燃料の供給を停止するフューエルカット運転状態となると、機関から大量の酸素が排出される。これにより、通常、下流側触媒の酸素吸蔵量は最大酸素吸蔵量(又はその最大酸素吸蔵量の近傍量)に到達する。従って、フューエルカット状態が終了した時点(即ち、フューエルカット復帰時点)以降の「所定の第1積算開始時点」からの「前記第1積算値」は、下流側触媒の酸素吸蔵量の減少量に応じた値になる。それ故、そのように求められる第1積算値が第1所定値以上となったか否かを判定することにより、下流側触媒が前記還元状態に到達したか否かを容易に判定することができる。なお、機関が前記上流側触媒を備える場合、前記第1積算値は、上流側触媒の酸素吸蔵量と下流側触媒の酸素吸蔵量の和からの酸素吸蔵量の減少量に応じた値となる。この場合、先に上流側触媒の酸素吸蔵量が「0」に到達し、次いで、下流側触媒の酸素吸蔵量が減少を始める。従って、前記第1積算値は、結果として、下流側触媒の酸素吸蔵量の減少量に応じた値となる。
更に、本発明の制御装置が、前記所定の第1積算開始時点からの前記第1積算値を用いて「下流側触媒が前記還元状態に到達したか否か」を判定するように構成されている場合、前記空燃比制御手段は、少なくとも「前記フューエルカット復帰時点」から「前記第1積算値が前記第1所定値以上となる時点」までの「フューエルカット復帰後期間」、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比よりリッチ側の空燃比に制御するように構成されることが好ましい。
これによれば、フューエルカット復帰後において下流側触媒の酸素吸蔵量を短時間にて減少させることが可能となる。従って、フューエルカット復帰時点から比較的短い時間が経過した後であれば、下流側触媒に窒素酸化物が流入しても、下流側触媒はその窒素酸化物を浄化することができる。更に、フューエルカット復帰後において下流側触媒を上記還元状態に比較的短期間にて到達させることができるので、早期に微粒子捕集フィルタを再生させること(フィルタ再生制御を開始すること)が可能となる。
また、本発明による制御装置が、前記フューエルカット復帰後期間において前記機関に供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比よりリッチ側の空燃比に制御するように構成されていて、更に、前記微粒子捕集フィルタと前記下流側触媒との間の位置において前記排気通路に配設されるとともに同配設された部位を流れるガスの空燃比に応じた出力値を出力する下流側空燃比センサを備える場合、
前記空燃比制御手段は、前記フューエルカット復帰後期間、「前記所定の空燃比範囲内であって理論空燃比よりリッチ側の空燃比」及び「同所定の空燃比範囲外であって理論空燃比よりリッチ側の空燃比」のうちの「何れかの空燃比」をフューエルカット復帰後目標空燃比として設定するとともに、
前記下流側空燃比センサから出力された出力値が、前記フューエルカット復帰後目標空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値であるとき前記機関に供給される混合気の空燃比をよりリッチ側の空燃比に変更し、同下流側空燃比センサから出力された出力値が同フューエルカット復帰後目標空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値であるとき同機関に供給される混合気の空燃比をよりリーン側の空燃比に変更する「フューエルカット復帰後フィードバック制御」を実行するように構成されることが好適である。
これによれば、フューエルカット復帰時点から前記第1積算値が前記第1所定値以上となる時点までの期間(前記フューエルカット復帰後期間)、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均が、前記下流側空燃比センサの出力値に基づいて理論空燃比よりリッチ側の空燃比(フューエルカット復帰後目標空燃比)に精度良く制御される。従って、フューエルカット復帰時点から比較的短期間内にフィルタ再生制御を開始することが可能となる。
この場合、前記フューエルカット復帰後目標空燃比は前記所定の空燃比範囲内であって理論空燃比より所定値だけリッチ側の空燃比に設定され、且つ、前記第1空燃比は同フューエルカット復帰後目標空燃比と同じ空燃比に設定されていることが好適である。
換言すると、空燃比制御手段は、下流側触媒のウインドウの範囲内であって理論空燃比よりもリッチ側の空燃比を第1空燃比として採用し、前記フューエルカット復帰後期間を含む期間であって前記フィルタ再生制御を実行する期間を除く期間(の一部又は全部)において、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均がその第1空燃比と一致するように、同混合気の空燃比を同第1空燃比と前記下流側空燃比センサの出力値とに基づいてフィードバック制御(サブフィードバック制御)する。
これにより、第1空燃比は、前記所定の空燃比範囲内であって理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比に設定されるので、機関の空燃比がウインドウ範囲より僅かにリーン側に偏移する状態となっても、窒素酸化物が多量に排出することを回避することができる。
更に、上記制御装置が、前記排気通路であって前記微粒子捕集フィルタよりも上流の位置に三元触媒である上流側触媒を備える場合、
前記還元状態判定手段は、前記第1積算開始時点を前記フューエルカット復帰時点に設定するとともに、前記上流側触媒の最大酸素吸蔵量を取得し同取得した上流側触媒の最大酸素吸蔵量が大きいほど前記第1所定値が大きくなるように同第1所定値を決定するように構成されることが好適である。
フューエルカット運転が実行されると、通常、上流側触媒の酸素吸蔵量は上流側触媒の最大酸素吸蔵量(又はその最大酸素吸蔵量の近傍量)に到達する。従って、フューエルカット復帰時点より、機関から排出される過剰な還元成分は、先ず、上流側触媒により酸化(消費)される。この上流側触媒によって消費されてしまう過剰な還元成分の量は上流側触媒の最大酸素吸蔵量に依存する。その後、上流側触媒の酸素吸蔵量が実質的に「0」になると、還元成分は微粒子捕集フィルタを通して下流側触媒に流入し、その結果、下流側触媒の状態は上記還元状態に向けて変化を開始する。従って、前記第1積算開始時点が前記フューエルカット復帰時点に設定された前記第1積算値が示す過剰な還元成分の量のうちの下流側触媒に流入する過剰な還元成分の量は、上流側触媒の最大酸素吸蔵量に依存して変化する。
そこで、上記構成のように、上流側触媒の最大酸素吸蔵量が大きいほど前記第1所定値が大きくなるように同第1所定値を決定することにより、下流側触媒が上記還元状態に到達したか否かを、より精度良く判定することができる。
一方、前記空燃比制御手段が、前記フューエルカット復帰後期間、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比よりリッチ側の空燃比に制御するように構成されていて、更に、
前記微粒子捕集フィルタと前記下流側触媒との間の位置において前記排気通路に配設されるとともに同配設された部位を流れるガスの空燃比に応じた出力値を出力する下流側空燃比センサと、
前記排気通路であって前記微粒子捕集フィルタよりも上流の位置に配設された三元触媒である上流側触媒と、
を備える場合、
前記還元状態判定手段は、前記第1積算開始時点を「前記フューエルカット復帰時点」以降において「前記下流側空燃比センサから出力された出力値が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比(理論空燃比よりも「0」を含む所定空燃比だけリッチ側の空燃比)に相当する値に初めてなった時点」、即ち、「リッチ反転時点」に設定していることが好適である。
通常、フューエルカット運転が実行されることによって上流側触媒の酸素吸蔵量は同上流側触媒の最大酸素吸蔵量(又はその最大酸素吸蔵量の近傍量)に到達する。従って、フューエルカット復帰後期間、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりリッチ側の空燃比に制御された場合であっても、上流側触媒の酸素吸蔵量が実質的に「0」に到達するまで下流側触媒に還元成分が流入しない。即ち、フューエルカット復帰復帰後期間において、「過剰な還元成分が下流側触媒に流入し始める時点」は、上流側触媒の最大酸素吸蔵量に依存して変化する。
一方、前記リッチ反転時点は、上流側触媒の酸素吸蔵量が実質的に「0」に到達した時点であって、下流側触媒に過剰な還元成分が流入し始める時点である。従って、上記構成のように「リッチ反転時点」を過剰な還元成分の積算開始時点(第1積算開始時点)とすれば、上流側触媒の最大酸素吸蔵量に関わらず、第1積算値に基づいて下流側触媒が還元状態に到達したか否かを精度良く判定することができる。
以上に記載した本発明の内燃機関の制御装置において、前記空燃比制御手段は、前記フィルタ再生制御の開始時点以降における所定の第2積算開始時点から、前記機関から前記排気通路に排出された「酸化成分の量」から同酸化成分を還元させる同機関から排出された未燃物である「還元成分の量」を減じた量である「酸化成分の過剰量」の積算値に対応する「第2積算値」を取得するとともに、同取得された第2積算値が第2所定値以上となったとき同フィルタ再生制御を終了するように構成されることが好適である。
上流側触媒が備えられていない場合、前記第2積算開始時点から積算される「酸化成分の過剰量」の積算値である前記第2積算値は、微粒子捕集フィルタに流入した酸化成分の量に応じた値となる。排気通路に前記上流側触媒が備えられている場合、前記第2積算値は、上流側触媒の酸素吸蔵量をその上流側触媒の最大酸素吸蔵量にまで到達させる酸化成分の量と、微粒子捕集フィルタに流入した酸化成分の量と、の和に応じた値となる。このように、前記第2積算値は、微粒子捕集フィルタに流入する酸化成分の量に関連した量であり、それ故、微粒子捕集フィルタにて燃焼させられる微粒子の量に応じた量となる。
従って、上記構成によれば、前記第2積算値に応じた微粒子が燃焼されたとき、フィルタ再生制御を停止することができる。換言すると、前記第2積算値の比較の対象である前記第2所定値を適値に設定することにより、フィルタ再生制御が過度に継続されることを回避することができる。即ち、フィルタ再生制御により、下流側触媒が浄化できない量の窒素酸化物が下流側触媒に流入し、その結果、窒素酸化物が大気中に多量に放出されることを回避することができる。
この場合、前記空燃比制御手段は、前記第2積算開始時点を前記フィルタ再生制御の開始時点に設定していることが好適である。
これによれば、フィルタ再生制御の開始時点から微粒子捕集フィルタ(上流側触媒が備えられている場合には、上流側触媒及び微粒子捕集フィルタの両方)に流入する「過剰な酸化成分の量」を「第2積算値」として取得することができる。
このように、前記第2積算開始時点が前記フィルタ再生制御の開始時点に設定された場合であって、前記制御装置が前述した上流側触媒を備えるとき、
前記空燃比制御手段は、前記上流側触媒の最大酸素吸蔵量を取得するとともに、同取得された上流側触媒の最大酸素吸蔵量が大きいほど前記第2所定値が大きくなるように同第2所定値を決定するように構成されることが好適である。
フィルタ再生制御を開始する時点において、下流側触媒は上記還元状態となっている。このとき、上流側触媒の酸素吸蔵量は実質的に「0」となっている。従って、フィルタ再生制御の開始後に微粒子捕集フィルタに「酸素が供給され始める時点」は、フィルタ再生制御の開始時点から上流側触媒の酸素吸蔵量がその最大酸素吸蔵量に到達するまでに要する時間が経過した時点となる。換言すると、フィルタ再生制御の開始後において微粒子捕集フィルタに「酸素が供給され始める時点」は、上流側触媒の最大酸素吸蔵量に依存して変化する。従って、フィルタ再生制御中における「下流側触媒の還元成分の消費量」は、上流側触媒の最大酸素吸蔵量と微粒子捕集フィルタにて燃焼された微粒子の量とに依存する。
そこで、上記構成のように、前記第2所定値が上流側触媒の最大酸素吸蔵量が大きいほどが大きくなるように設定されれば、微粒子捕集フィルタ及び下流側触媒に供給される「過剰な酸化成分」の量を上流側触媒の最大酸素吸蔵量に関わらず所望の量に制御することができる。その結果、微粒子を適量だけ燃焼させることができ、且つ、「下流側触媒が浄化できない量の窒素酸化物が下流側触媒に流入し、その結果、窒素酸化物が大気中に多量に放出されること」を回避することができる。
前記制御装置が前記上流側触媒と前記下流側空燃比センサとを備える場合、前記第2積算開始時点を前記フィルタ再生制御の開始時点に設定する代替として、
前記空燃比制御手段は、前記第2積算開始時点を、前記フィルタ再生制御の開始時点以降において前記下流側空燃比センサから出力された出力値が理論空燃比よりも所定値だけリーン側の空燃比に相当する値に初めてなった時点である「リーン反転時点」に設定していることが好適である。
前述したように、フィルタ再生制御の開始後において「微粒子捕集フィルタに酸素が供給され始める時点」は、上流側触媒の最大酸素吸蔵量に依存して変化する。一方、下流側触媒に酸素が供給され始める時点は、上記「リーン反転時点」と略一致する。このリーン反転時点は、上流側触媒の酸素吸蔵量が実質的にその最大酸素吸蔵量に到達した時点に近しい時点でもある。
従って、上記構成のように「リーン反転時点」を過剰な酸化成分の積算開始時点(第2積算開始時点)とすれば、下流側触媒に供給される「過剰な酸化成分」の量を上流側触媒の最大酸素吸蔵量に関わらず所望の量に制御することができる。その結果、下流側触媒が浄化できない量の窒素酸化物が下流側触媒に流入することを回避できる。即ち、大気中に窒素酸化物が多量に放出される前の時点にてフィルタ再生制御を終了することができる。換言すると、窒素酸化物の放出量が増大しない範囲で微粒子捕集フィルタの再生を行うことができる。
このような制御装置において、前記空燃比制御手段は、前記第2積算開始時点からの前記機関の吸入空気量の積算値に相当する値を前記第2積算値として取得するように構成されることが好適である。
フィルタ再生制御中、機関に供給される混合気の空燃比の平均は理論空燃比よりもリーン側の第2空燃比に制御されている。従って、機関から排出される過剰な酸化成分の量は機関の吸入空気量に略比例すると考えることができる。従って、上記構成のように、前記第2積算開始時点からの前記機関の吸入空気量を積算することにより、前記第2積算値を容易に取得することができる。
本発明の内燃機関の制御装置は、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御を行うように構成され得る。
即ち、本発明の内燃機関の制御装置は、
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒であって酸素吸蔵機能を有し、流入するガスに含まれる未燃物に吸蔵していた酸素を与えることにより同未燃物を酸化するとともに窒素酸化物から酸素を奪って同酸素を吸蔵することにより同窒素酸化物を還元する上流側触媒と、
前記排気通路であって前記上流側触媒よりも下流の位置に配設された微粒子捕集フィルタと、
前記排気通路であって前記微粒子捕集フィルタよりも下流の位置に配設された三元触媒であり、酸素吸蔵機能を有し、流入するガスに含まれる未燃物に吸蔵していた酸素を与えることにより同未燃物を酸化するとともに窒素酸化物から酸素を奪って同酸素を吸蔵することにより同窒素酸化物を還元する下流側触媒と、
前記排気通路であって前記上流側触媒よりも上流の位置に配設されるとともに同配設された部位を流れるガスの空燃比に応じた出力値を出力する上流側空燃比センサと、
前記排気通路であって前記微粒子捕集フィルタと前記下流側触媒との間の位置に配設されるとともに同配設された部位を流れるガスの空燃比に応じた出力値を出力する下流側空燃比センサと、
前記機関に供給される空気及び燃料を含む混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりもリーン側の空燃比であっても前記下流側触媒が所定量の窒素酸化物から酸素を奪い、同奪った酸素を貯蔵することにより同窒素酸化物を浄化することができる還元状態に到達したか否かを判定する還元状態判定手段と、
指示に応じてメインフィードバック制御を実行するメインフィードバック制御手段と、
指示に応じてサブフィードバック制御を実行するサブフィードバック制御手段と、
前記メインフィードバック制御手段及び前記サブフィードバック制御手段に指示を与える指示手段と、
を備えることができる。
この場合、上記メインフィードバック制御は、前記上流側空燃比センサから出力された出力値により示される空燃比が上流側目標空燃比に一致するように同上流側空燃比センサから出力された出力値に基づいて前記機関に供給される混合気の空燃比を変更する空燃比のフィードバック制御である。
また、サブフィードバック制御は、前記下流側空燃比センサから出力された出力値が、理論空燃比より所定値だけリッチ側の空燃比である下流側目標空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値であるとき前記機関に供給される混合気の空燃比をよりリッチ側の空燃比に変更し、同下流側空燃比センサから出力された出力値が同下流側目標空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値であるとき同機関に供給される混合気の空燃比をよりリーン側の空燃比に変更するサブフィードバック制御を指示に応じて実行する空燃比のフィードバック制御である。
そして、上記指示手段は、
(1)前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定されるまで、前記上流側目標空燃比を理論空燃比に設定するとともに前記メインフィードバック制御及び前記サブフィードバック制御を実行させることにより「通常フィードバック制御」を実行し、
(2)前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定された時点以降においては、前記上流側目標空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比であるリーン空燃比に設定するとともに前記メインフィードバック制御を実行させ、且つ、前記サブフィードバック制御を停止させる「フィルタ再生制御」を所定期間に渡り実行する、
ように、前記メインフィードバック制御手段及び前記サブフィードバック制御手段に指示を与える。フィルタ再生制御により、前記微粒子捕集フィルタに酸素が供給され、微粒子捕集フィルタに捕集されている微粒子が燃焼させられる。
これによれば、メインフィードバック制御とサブフィードバック制御とが実行される「通常フィードバック制御」により、過渡的な空燃比変動はメインフィードバック制御により吸収されるとともに、機関に供給される混合気の空燃比の平均は「理論空燃比より所定値だけリッチ側の空燃比(この空燃比は下流側触媒のウインドウの範囲内の空燃比であることが望ましい。)」に一致せしめられる。その結果、未燃物及び窒素酸化物は上流側触媒及び下流側触媒によって良好に浄化される。また、機関の空燃比が一時的に多少リーン側に偏移して機関から多量の窒素酸化物が排出されても、機関の空燃比の平均が理論空燃比よりもリッチ側であるが故に上流側触媒及び下流側触媒が窒素酸化物を浄化し得る状態にあるから、それらの窒素酸化物が浄化される。その結果、窒素酸化物が大量に大気中に放出されることを回避することができる。
加えて、通常フィードバック制御中、上流側触媒及び下流側触媒には過剰な還元成分が流入することになるので、例えば、フューエルカット運転が実施されることにより下流側触媒の酸素吸蔵量が大きくなった場合であっても、フューエルカット復帰後から所定時間が経過すれば、下流側触媒の状態は前記還元状態に到達する。
そして、前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定された以降においては、前記上流側目標空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比(リーン空燃比)に設定された上でメインフィードバック制御が実行され、且つ、サブフィードバック制御が停止させられる。即ち、フィルタ再生制御が実行される。従って、機関から多量の酸素が排出されるので、結果として微粒子捕集フィルタに酸素が供給され、微粒子捕集フィルタに捕集されている微粒子が燃焼させられる。このとき、機関から排出された窒素酸化物は「前記還元状態にある下流側触媒」によって浄化(還元)される。従って、この制御装置は、窒素酸化物の排出量を増加させることなく微粒子捕集フィルタを再生させることができる。
この場合、前記還元状態判定手段は、前記通常フィードバック制御中であって同通常フィードバック制御中の「所定の第1積算開始時点」以降において「前記機関から前記排気通路に排出された未燃物である還元成分の量」から「同還元成分を酸化させる同機関から排出された酸化成分の量」を減じた量である「還元成分の過剰量」の積算値に対応する「第1積算値」を取得するとともに、同第1積算値が第1所定値以上となったか否かを判定し、同第1積算値が同第1所定値以上となったと判定されたとき前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定するように構成されることが好適である。
上述したように、通常フィードバック制御中は過剰な還元成分が機関から排出される。従って、通常フィードバック制御中の所定の積算開始時点(第1積算開始時点)以降において「還元成分の過剰量の積算値」に対応する「第1積算値」を取得し、その第1積算値に基づいて下流側触媒の状態を判定すれば、下流側触媒が前記還元状態に到達したか否かを容易に判定することが可能となる。
更に、この制御装置は、
前記機関の運転状態が所定のフューエルカット運転状態となったとき前記機関への燃料の供給を停止するフューエルカット手段を備え、
前記指示手段は、前記フューエルカット手段による前記機関への燃料の供給停止が解除されて同機関に再び燃料が供給され始めた「フューエルカット復帰時点」以降において前記通常フィードバック制御を実行するように前記メインフィードバック制御手段及び前記サブフィードバック制御手段に指示を与えるように構成され、
前記還元状態判定手段は、前記第1積算開始時点を、
(1)フューエルカット復帰時点、又は、
(2)フューエルカット復帰時点以降において前記下流側空燃比センサから出力された出力値が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値に初めてなった時点であるリッチ反転時点、
に設定していることが好適である。
フューエルカット運転が実行されると、通常、上流側触媒及び下流側触媒の酸素吸蔵量は、それぞれの最大酸素吸蔵量(又はその最大酸素吸蔵量の近傍量)に到達する。また、フューエルカット復帰時点以降において、通常フィードバック制御が実行されるので、過剰な還元成分が機関から排出される。
従って、(1)上記フューエルカット復帰時点を積算開始時点とする第1積算値は、排気通路に配設された上流側触媒及び下流側触媒の酸素吸蔵量の減少量を表すことになる。それ故、その第1積算値は、下流側触媒の酸素吸蔵量の減少量(換言すると、下流側触媒の還元能力)に関連する値となる。従って、そのように取得される第1積算値に基づけば、下流側触媒が上記還元状態に到達したか否かを、より精度良く判定することができる。
また、(2)フューエルカット復帰時点以降において前記下流側空燃比センサから出力された出力値が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値に初めてなった時点である「リッチ反転時点」を積算開始時点とする第1積算値は、上流側触媒の最大酸素吸蔵量に関わらず、下流側触媒の酸素吸蔵量の減少量をより精度良く表すことになる。それ故、「リッチ反転時点」以降の「前記第1積算値」に基づけば、下流側触媒が上記還元状態に到達したか否かを、より一層精度良く判定することができる。
ところで、前記還元状態判定手段は、機関の空燃比の平均が理論空燃比よりもリッチ側の所定空燃比に制御されている際に前記第1積算値を求める場合、前記第1積算開始時点からの前記機関の吸入空気量の積算値に相当する値を前記第1積算値として取得するように構成されることが好適である。
機関の空燃比の平均が理論空燃比よりもリッチ側の所定空燃比(例えば、理論空燃比よりもリッチ側の前記第1空燃比、フューエルカット復帰後目標空燃比、及び、理論空燃比より所定値だけリッチ側の空燃比である前記下流側目標空燃比等)に制御されている場合、過剰な還元成分の量は機関の吸入空気量に略比例すると考えることができる。従って、上記構成によれば、前記第1積算値を容易に取得することができる。
また、本発明による内燃機関の制御装置は、
内燃機関の排気通路に配設された三元触媒であって酸素吸蔵機能を有し、流入するガスに含まれる未燃物に吸蔵していた酸素を与えることにより同未燃物を酸化するとともに窒素酸化物から酸素を奪って同酸素を吸蔵することにより同窒素酸化物を還元する上流側触媒と、
前記排気通路であって前記上流側触媒よりも下流の位置に配設された微粒子捕集フィルタと、
前記排気通路であって前記微粒子捕集フィルタよりも下流の位置に配設された三元触媒であり、酸素吸蔵機能を有し、流入するガスに含まれる未燃物に吸蔵していた酸素を与えることにより同未燃物を酸化するとともに窒素酸化物から酸素を奪って同酸素を吸蔵することにより同窒素酸化物を還元する下流側触媒と、
前記機関に供給される空気及び燃料を含む混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりもリーン側の空燃比であっても前記下流側触媒が所定量の窒素酸化物から酸素を奪い、同奪った酸素を貯蔵することにより同窒素酸化物を浄化することができる還元状態に到達したか否かを判定する還元状態判定手段と、
前記下流側触媒が前記還元状態に到達していないと判定された場合、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりリッチ側の弱リッチ空燃比となるように同機関に供給される混合気の空燃比を制御するリッチ制御手段と、
前記下流側触媒が前記還元状態に到達したと判定された場合、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりリーン側となるように同機関に供給される混合気の空燃比を制御するリーン制御手段と、
を備えた内燃機関の制御装置と言うことができる。
以下、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第1制御装置」とも称呼する。)を火花点火式多気筒(本例では4気筒)内燃機関(ガソリンエンジン)10に適用したシステムの概略構成を示している。この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排気ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともにインテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。燃料噴射手段としてのインジェクタ39は、噴射指示信号に応答して同噴射指示信号に含まれる指示噴射量の燃料を噴射するようになっている。
吸気系統40は、インテークマニホールド41、吸気管(吸気ダクト)42、エアフィルタ43、スロットル弁44及びスロットル弁アクチュエータ44aを備えている。
インテークマニホールド41は、各気筒の燃焼室25の吸気ポート31に接続されている。より詳細には、図2に示したように、インテークマニホールド41は各吸気ポートに接続された複数の枝部41aと、それらの枝部41aが集合したサージタンク部41bと、を備えている。図1及び図2に示したように、吸気管42はサージタンク部41bに接続されている。インテークマニホールド41及び吸気管42は吸気通路を構成している。図1に示したエアフィルタ43は吸気管42の端部に設けられている。スロットル弁44は吸気管42に回動可能設けられ、回動することにより吸気管42が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ(スロットル弁駆動手段)44aは、DCモータからなり、指示信号に応答してスロットル弁44を回転駆動するようになっている。
排気系統50は、エキゾーストマニホールド51、エキゾーストパイプ(排気管)52、上流側触媒53、微粒子捕集フィルタ54及び下流側触媒55を備えている。
エキゾーストマニホールド51は、図1に示したように、各気筒の燃焼室25の排気ポート34に接続されている。より詳細には、図2に示したように、エキゾーストマニホールド51は各排気ポートに接続された複数の枝部51aと、それらの枝部51aが集合した集合部51bと、を備えている。エキゾーストパイプ52は、エキゾーストマニホールド51の集合部51bに接続されている。エキゾーストマニホールド51及びエキゾーストパイプ52は排気経路を構成している。なお、本明細書において、エキゾーストマニホールド51の集合部51bとエキゾーストパイプ52とが形成する排気経路を、便宜上「排気通路」と称呼する。
上流側触媒53は、セラミックからなる担持体に触媒物質である貴金属及びセリア(CeO2)を担持していて、酸素吸蔵・放出機能(単に「酸素吸蔵機能」又は「O2ストレージ機能」とも称呼する。)を有する三元触媒である。上流側触媒53はエキゾーストパイプ52に配設(介装)されている。換言すると、上流側触媒53は排気通路の集合部(エキゾーストマニホールド51の集合部51b)よりも下流の排気通路に配設されている。上流側触媒53は、スタート・キャタリティック・コンバータ(SC)又は第1触媒とも称呼される。
微粒子捕集フィルタ54はセラミックからなる周知の微粒子フィルタであり、機関10から排出される微粒子を捕集するようになっている。微粒子捕集フィルタ54は、上流側触媒53よりも下流の位置において排気通路(エキゾーストパイプ52)に配設(介装)されている。微粒子捕集フィルタ54はパティキュレート・マター・フィルタ(PMF)とも称呼される。
下流側触媒55は、上流側触媒53と同様、セラミックからなる担持体に貴金属(触媒物質)及びセリア(CeO2)を担持していて、酸素吸蔵機能を有する三元触媒である。下流側触媒55は微粒子捕集フィルタ54よりも下流の位置において排気通路(エキゾーストパイプ52)に配設(介装)されている。即ち、排気通路には、上流側触媒53、微粒子捕集フィルタ54及び下流側触媒55が、上流から下流に向けて順に直列に配設されている。下流側触媒55は、車両のフロア下方に配設されているため、アンダ・フロア・キャタリティック・コンバータ(UFC)又は第2触媒とも称呼される。
上流側触媒53及び下流側触媒55を構成する三元触媒は、図3に示したように、三元触媒に流入するガスの空燃比が所謂「ウインドウW」の範囲内にあるとき、未燃物(HC,CO等)を酸化するとともに窒素酸化物(NOx)を還元することにより、これらの有害成分を高い効率で浄化する特性(触媒機能)を有する。
また、三元触媒は、酸素吸蔵機能により、空燃比が理論空燃比からある程度まで偏移したとしても、HC、CO及びNOxを浄化することができる。即ち、機関の空燃比が理論空燃比よりもリーン側の空燃比となって三元触媒に流入するガスにNOxが多量に含まれると、触媒はNOxから酸素分子を奪って(NOxを還元し)、その奪った酸素分子を吸蔵する。このような状態は、三元触媒が「実質的に還元剤(還元成分)を保持している状態である。」と表現することもできる。また、機関の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比になって三元触媒に流入するガスにHC,CO等の未燃物(還元成分)が多量に含まれると、三元触媒は吸蔵している酸素分子をこれらの未燃物に対して与え、これらの成分を酸化(浄化)する。このような状態は、三元触媒が「実質的に酸化剤(酸化成分)を保持している状態である。」と表現することもできる。
更に、このシステムは、図1に示したように、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、水温センサ65、上流側空燃比センサ66、下流側空燃比センサ67及びアクセル開度センサ68を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管42内を流れる吸入空気の質量流量を検出し、その質量流量(機関10の単位時間あたりの吸入空気量、吸入空気流量)Gaを表す信号を出力するようになっている。
スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁44の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。この信号はG2信号とも称呼される。
クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともにクランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。クランクポジションセンサ64から出力されるパルスは後述する電気制御装置70によりエンジン回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、電気制御装置70は、カムポジションセンサ63及びクランクポジションセンサ64からの信号に基いて、機関10のクランク角度(絶対クランク角)を取得するようになっている。
水温センサ65は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。
上流側空燃比センサ66は、図2に示したように、エキゾーストマニホールド51の集合部51bと上流側触媒53との間の位置においてエキゾーストマニホールド51及びエキゾーストパイプ52の何れか(即ち、排気通路)に配設されている。上流側空燃比センサ66は、上流側空燃比センサ66が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(被検出ガス)の空燃比に応じた出力値を出力するようになっている。
より具体的に述べると、上流側空燃比センサ66は限界電流式の酸素濃度センサである。上流側空燃比センサ66は、図4に示したように、被検出ガスの空燃比A/F(従って、機関に供給される混合気の空燃比)に応じた電圧である出力値Vabyfsを出力するようになっている。この出力値Vabyfsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるときに値Vstoichに一致する。出力値Vabyfsは、被検出ガスの空燃比が大きくなる(リーンとなる)ほど増大する。
後述する電気制御装置70は、図4により示したテーブル(マップ)Mapabyfsを記憶していて、そのテーブルに実際の出力値Vabyfsを適用することによって空燃比を検出する(検出空燃比を取得する)ようになっている。但し、上流側空燃比センサ66は、上流側空燃比センサ66に到達しているガス(即ち、被検出ガス)の空燃比が時間軸上でステップ状にしても出力値Vabyfsが徐々に変化するという検出応答遅れ特性を有する。より具体的に述べると、上流側空燃比センサ66に到達しているガスの空燃比の値を入力信号とし、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfs及びテーブルMapabyfsに基いて求められる空燃比の値を出力信号とするとき、出力信号は入力信号に対してローパスフィルタ処理(例えば、所謂「なまし処理」を含む一次遅れ処理及び二次遅れ処理等)を施した信号と極めて似た信号となる。
下流側空燃比センサ67は、図2に示したように、微粒子捕集フィルタ54と下流側触媒55との間の位置においてエキゾーストパイプ52(排気通路)に配設されている。下流側空燃比センサ67は、下流側空燃比センサ67が配設された排気通路内の部位を流れる排ガス(被検出ガス)の空燃比に応じた出力値を出力するようになっている。
より具体的に述べると、下流側空燃比センサ67は起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサである。従って、下流側空燃比センサ67は、酸素濃度センサ67とも称呼される。下流側空燃比センサ67は、図5に示したように、理論空燃比近傍において急変する電圧である出力値Voxsを出力する。即ち、下流側空燃比センサ67は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリーン側の空燃比であるときに略0.1(V)、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きくリッチ側の空燃比であるときに略0.9(V)、空燃比が理論空燃比のときは0.5(V)の電圧を出力するようになっている。更に、下流側空燃比センサ67は、被検出ガスの空燃比が理論空燃比近傍の空燃比(前述した、三元触媒のウインドウWに実質的に対応する空燃比)であるとき、被検出ガスの空燃比がリッチからリーンに変化するに従って急激に減少する(略0.9(V)から略0.1(V)に向けて変化する)電圧を出力するようになっている。なお、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて得られる上流側触媒53の下流側空燃比afdownは、図5に示した出力値Voxsと下流側空燃比afdownとの関係を表す関数をfとするとき、afdown=f(Voxs)により求められる。
再び、図1を参照すると、アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続されたCPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、電源が投入された状態でデータを格納するとともに格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM74、並びに、ADコンバータを含むインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース75は、前記センサ61〜68と接続され、CPU71にセンサ61〜68からの信号を供給するとともに、CPU71の指示に応じて可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39及びスロットル弁アクチュエータ44a等に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
(空燃比制御の概要)
次に、上記のように構成された第1制御装置による空燃比制御の概要について説明する。第1制御装置は、メインフィードバック制御、サブフィードバック制御及びフューエルカット制御等を含む空燃比制御(燃料噴射量制御)を実行する。
<メインフィードバック制御の概要>
第1制御装置は、メインフィードバック制御条件が成立したとき、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいて取得された上流側空燃比abyfsが上流側目標空燃比abyfr(メインフィードバック目標値)に一致するように機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御(メインフィードバック制御)する。上流側目標空燃比abyfrは通常時において理論空燃比に設定され、後述する微粒子捕集フィルタ再生制御(フィルタ再生制御)時において理論空燃比よりもリーン側の空燃比(前記ウインドウWよりもリーン側のリーン空燃比、第2空燃比)に設定され、その他の場合(例えば、触媒過熱防止時等)において理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に設定される。メインフィードバック制御条件については後述する。
<サブフィードバック制御の概要>
第1制御装置は、サブフィードバック制御条件が成立したとき、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが、下流側目標空燃比に相当する値である下流側目標値Voxsrefに一致するように、機関に供給される混合気の空燃比をフィードバック制御(サブフィードバック制御)する。この下流側目標値Voxsrefは、図5に示したように、下流側空燃比センサ67が配設された位置を通過するガス(被検出ガス)の空燃比が理論空燃比より僅かな所定値ΔAFだけリッチ側の空燃比AFRに相当する空燃比であるときに下流側空燃比センサ67が出力するべき値(例えば、Voxsref=Vrich=0.55V)に設定されている。これにより、機関10に供給される混合気の空燃比、即ち、下流側触媒55に流入するガスの空燃比の平均(中心、中央値)は理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比AFR(以下、「弱リッチ空燃比AFR」とも称呼する。)に一致させられる。この弱リッチ空燃比AFRは、図3に示したように、ウインドウWの範囲内であって理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比である。なお、サブフィードバック制御条件については後述する。また、上流側目標空燃比abyfrが理論空燃比に設定された状態にてメインフィードバック制御が実行され、且つ、下流側目標値Voxsrefが弱リッチ空燃比AFRに相当する値Vrichに設定された状態にてサブフィードバック制御が実行される空燃比制御を、「空燃比弱リッチ制御」又は「理論空燃比近傍制御」とも称呼する。
<フューエルカット制御>
第1制御装置は、フューエルカット(燃料供給遮断)条件が成立したとき、インジェクタ39からの燃料噴射(燃料供給)を停止するフューエルカット制御を行う。このとき、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御は当然に停止される。フューエルカット条件は、例えば、アクセルペダル操作量Accpが「0」であり、且つ、機関回転速度NEがフューエルカット回転速度NEFC以上であるときに成立する。このフューエルカット制御は、減速フューエルカット条件が成立したときに実行される減速フューエルカットとも称呼される。減速フューエルカットは、例えば、フューエルカット中(フューエルカット条件成立中)においてアクセルペダル操作量Accpが「0」でなくなるか、又は、機関回転速度NEがフューエルカット復帰回転速度NEFK以下となったときに終了し(フューエルカット条件が不成立となり)、燃料噴射(燃料供給)が再開される。フューエルカット復帰回転速度NEFKは、フューエルカット回転速度NEFCよりも小さい。フューエルカット制御が終了されて燃料噴射が再開されることを「フューエルカット復帰」とも称呼する。
<微粒子捕集フィルタ再生制御>
ところで、微粒子捕集フィルタ54は微粒子を捕集するほと微粒子の捕集能力が低下する。逆に、微粒子捕集フィルタ54に捕集された微粒子を微粒子捕集フィルタ54内において燃焼させれば、微粒子捕集フィルタ54の微粒子捕集能力は復帰する。即ち、微粒子捕集フィルタ54を再生させることができる。微粒子捕集フィルタ54内に捕集された微粒子を燃焼させるためには、
(1)微粒子捕集フィルタ54内が高温であること、及び、
(2)微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給されること、
が必要である。
一般に、理論空燃比近傍の空燃比にて運転されるガソリン機関が通常の運転状態(始動直後等を除く運転状態)にあるとき、微粒子捕集フィルタ54内の温度は捕集された微粒子を燃焼させるのに十分な程度の高い温度になる。一方、フューエルカット制御が行われると、機関10から多量の酸素を含む空気が排出される。従って、フューエルカット制御が所定時間以上継続して実行されると、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に到達し、酸素が上流側触媒53から流出し始める。上流側触媒53から流出した酸素は微粒子捕集フィルタ54内に流入する。この結果、微粒子捕集フィルタ54内は高温であり且つ微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給されるので、微粒子捕集フィルタ54に捕集されていた微粒子が微粒子捕集フィルタ54内において燃焼し、微粒子捕集フィルタ54は再生される。しかしながら、フューエルカット制御がどのような頻度にて実行されるか、及び、フューエルカット制御時間がどの程度に及ぶか、は機関10の運転がどのように行われるかに依存するから、フューエルカット制御のみによって微粒子捕集フィルタ54を再生させることを常に期待することは適当ではない。
そこで、フューエルカット制御が実行されていないときに機関10の空燃比を強制的にリーン空燃比に設定することにより、機関10から比較的多量の酸素を排出させ、それによって微粒子捕集フィルタ54に酸素を供給する(微粒子を燃焼させて微粒子捕集フィルタ54を再生させる)ことが有効であると考えられる。
ところで、このように機関の空燃比をリーン空燃比に設定する場合においても、微粒子捕集フィルタ54に酸素を供給するためには、先ず、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1を上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に到達させることにより、上流側触媒53から酸素を流出させなければならない。しかしながら、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に到達し、且つ、機関の空燃比がウインドウW外のリーン空燃比であると、上流側触媒53はNOxを効果的に浄化することができない。更に、機関の空燃比はリーン空燃比に設定されているから、機関からは多量のNOxが排出される。
このとき、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2が下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2よりもある程度小さければ、下流側触媒55はNOx浄化能力を有するので、上流側触媒53から流出したNOxを浄化することができる。これに対し、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2が、下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2に到達していたり、或は、最大酸素吸蔵量Cmax2に近い量になっていたりすると、下流側触媒55はNOxを十分に浄化ですることができず、多量のNOxが大気中に放出されてしまう。
そこで、第1制御装置は、下流側触媒55が「所定量の窒素酸化物を浄化することができる還元状態(窒素酸化物浄化可能状態)」に到達したか否かを判定する還元状態判定手段を備え、下流側触媒55がその「還元状態」に到達したと判定された場合にのみ機関の空燃比をリーン空燃比に変更し、微粒子捕集フィルタ54を再生する。
より具体的には、第1制御装置は、下流側触媒55がその「還元状態」に到達したと判定された場合、上記サブフィードバック制御を停止するとともに、上流側目標空燃比abyfrを理論空燃比よりもリーン側の「所定のリーン空燃比aflean」に設定した上で上記メインフィードバック制御を実行する。この制御を、「空燃比リーン制御」又は「微粒子捕集フィルタ再生制御(フィルタ再生制御)」又は「リーン継続制御」とも称呼する。これにより、機関10から上流側触媒53を通して微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給されるので、微粒子捕集フィルタ54内にて微粒子が燃焼し、微粒子捕集フィルタ54が再生される。更に、この場合、機関10から排出されたNOxは上記還元状態に到達していた下流側触媒55により浄化される。従って、第1制御装置は、NOxの排出量を増大させることなく、微粒子捕集フィルタ54を再生させることができる。
<還元状態の判定原理>
上記還元状態判定手段は、機関10より排気通路に排出された「未燃物(HC,CO等)である還元成分の量A」から、機関10より排気通路に排出された「還元成分を酸化させる酸化成分の量B」を減じた量である「還元成分の過剰量(A−B)」の積算値(Σ(A−B))に対応する第1積算値を取得するとともに、その第1積算値に基づいて下流側触媒55が前述した「還元状態」に到達したか否かを判定するように構成される。
より具体的には、上記サブフィードバック制御によって機関の空燃比の平均は「弱リッチ空燃比」に制御される。従って、サブフィードバック制御が実行されている場合、単位時間あたりの機関の吸入空気量Gaは上記「還元成分の過剰量」に比例する。そこで、還元状態判定手段は、例えば、フューエルカット復帰後にサブフィードバック制御を実行し、そのフューエルカット復帰後からの機関の吸入空気量Gaの積算値を上記還元成分の過剰量の積算値に対応する「第1積算値」として取得する。そして、還元状態判定手段は、その第1積算値が第1所定値以上となったか否かを判定し、第1積算値が第1所定値以上となったと判定されたときに、下流側触媒55が「還元状態」に到達したと判定する。
<制御の概略の流れ>
第1制御装置のCPU71は、図6に示した概略フローチャート示した手順に沿って上述した各種の制御を行うようになっている。CPU71は、図6に示した手順を所定時間の経過毎に繰り返すようになっている。なお、以下の説明において、上流側空燃比センサ66及び下流側空燃比センサ67は共に活性化していると仮定する。
CPU71は、所定のタイミングにてステップ600から処理を開始し、ステップ610にて上述したフューエルカット条件(減速フューエルカット条件)が成立しているか否かを判定する。このとき、フューエルカット条件が成立していると、CPU71はステップ610にて「Yes」と判定してステップ620に進み、フューエルカット制御を行う(燃料噴射を停止する。)。この状態は、図7に示したタイムチャートの時刻t1以前の状態である。次いで、CPU71はステップ695に進み、本ルーチンを一旦終了する。
その後、時刻t1にてフューエルカット条件が不成立になると、CPU71はステップ610に進んだとき同ステップ610にて「No」と判定してステップ630に進み、「弱リッチ制御時積算空気量(理論空燃比近傍制御時の積算空気量)tGaSR」がフィルタ再生制御開始閾値である第1所定値(第1閾値)Rthより大きくなったか否かを判定する。
弱リッチ制御時積算空気量tGaSRは、機関の空燃比が「理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)」に制御されている上記「空燃比弱リッチ制御(理論空燃比近傍制御)」期間における吸入空気量Gaの積算値である。但し、空燃比弱リッチ制御時積算空気量tGaSRは、フューエルカット制御中において「0」に設定される。弱リッチ制御時積算空気量tGaSRは、上記「還元成分の過剰量の積算値」に対応する第1積算値であり、図示しないルーチンにより求められている。
現時点(時刻t1直後)はフューエルカットが終了した直後(燃料供給再開の直後、フューエルカット復帰直後)である。従って、弱リッチ制御時積算空気量(第1積算値)tGaSRはフィルタ再生制御開始閾値(第1所定値)Rthより小さい。それ故、CPU71はステップ630にて「No」と判定してステップ640に進み、空燃比弱リッチ制御(理論空燃比近傍制御)を実行する。実際には、CPU71は、上述したメインフィードバック制御及びサブフィードバック制御を実行する。この場合、メインフィードバック制御の上流側目標空燃比abyfrは理論空燃比stoichに設定され、サブフィードバック制御の下流側目標値Voxsrefは弱リッチ空燃比AFRに相当する値Vrichに設定される。
この弱リッチ空燃比AFRは、図3に示したように、ウインドウWの範囲内であって理論空燃比よりも僅かにリッチ側の空燃比である。従って、空燃比弱リッチ制御中、上流側触媒53及び下流側触媒55は、HC,CO及びNOxを極めて高い浄化率にて浄化することができる。但し、弱リッチ空燃比AFRは理論空燃比よりもリッチ側の空燃比であるから、空燃比弱リッチ制御によって過剰な還元成分が機関10から排出される。
従って、この状態が継続すると、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は「0」にまで減少し、その後、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2は下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2から所定量だけ減少する。このとき、弱リッチ制御時積算空気量(第1積算値)tGaSRは次第に増大し、時刻t2にてフィルタ再生制御開始閾値(第1所定値)Rth以上となる。換言すると、フィルタ再生制御開始閾値Rthは、下流側触媒55が所定量のNOxを浄化し得る状態となったときに弱リッチ制御時積算空気量(第1積算値)tGaSRが到達する値に設定されている。
従って、時刻t2においては、CPU71はステップ600及びステップ610に続くステップ630にて「Yes」と判定してステップ650に進み、フィルタ再生制御時積算空気量(第2積算値)tGaSLがフィルタ再生制御完了閾値(第2閾値、第2所定値)Lth以上であるか否かを判定する。
フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは、機関の空燃比が「理論空燃比よりもリーン側の空燃比(リーン空燃比)」に制御されている上記「フィルタ再生制御(空燃比リーン制御)」期間における吸入空気量Gaの積算値である。但し、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは、フューエルカット制御中(及び空燃比弱リッチ制御の開始時)において「0」に設定される。フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは、「機関10から排気通路に排出された酸化成分の量C」から「その酸化成分を還元させる同機関から排出された未燃物である還元成分の量D」を減じた量である「酸化成分の過剰量(C−D)」の積算値(Σ(C−D))に対応する。フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは、「第2積算値」とも称呼され、図示しないルーチンにより求められている。
現時点(時刻t2)は、フューエルカット制御後において弱リッチ制御時積算空気量tGaSRがフィルタ再生制御開始閾値Rth以上となった時点の直後であり、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは「0」である。このため、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLはフィルタ再生制御完了閾値Lthより小さい。従って、CPU71はステップ650にて「No」と判定してステップ660に進み、フィルタ再生制御(微粒子捕集フィルタ再生制御)を実行する。即ち、CPU71は、上記サブフィードバック制御を停止するとともに、上記メインフィードバック制御の上流側目標空燃比abyfrを所定のリーン空燃比afleanに設定する「空燃比リーン制御」を実行する。
これにより、機関10から過剰な酸素が排出されるので、所定の時間が経過したときに上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に到達し、酸素が上流側触媒53から流出し始める。その結果、微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給されるので、微粒子捕集フィルタ54内にて微粒子が燃焼し、微粒子捕集フィルタ54が再生される。この時点において、下流側触媒55の状態は上記「還元状態」に維持されている。即ち、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2が下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2よりもある程度小さい状態となっている。従って、機関10から排出されたNOxは、下流側触媒55により浄化される。
この状態が継続すると、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2が増大する。同時に、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRはフィルタ再生制御開始閾値Rthに維持され、且つ、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは次第に増大する。従って、所定の時間が経過した時刻t3になると、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2が下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2よりも「相当量」だけ小さい量に到達し、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLはフィルタ再生制御完了閾値Lth以上となる。換言すると、フィルタ再生制御完了閾値Lthは、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2が下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2に到達する以前であって最大酸素吸蔵量Cmax2よりも「相当量」だけ小さい量になったときに「フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLが到達する値」に設定されている。
従って、時刻t3においては、CPU71はステップ600、ステップ610及びステップ630に続くステップ650にて「Yes」と判定してステップ640に進み、空燃比弱リッチ制御を再開する。このとき、弱リッチ制御時積算空気量tGaSR及びフィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは、それぞれ「0」に設定される(リセットされる)。従って、時刻t3以降において、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRは「0」から再び増大させられる。
その後、所定の時間が経過して時刻t4になると、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRがフィルタ再生制御開始閾値Rth以上となり、且つ、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLはフィルタ再生制御完了閾値Lthより小さい値(=0)となる。従って、CPU71はステップ660に進み、フィルタ再生制御を再び実行する。更に、所定の時間が経過して時刻t5になると、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLがフィルタ再生制御完了閾値Lth以上となるので、CPU71はステップ640に進み、空燃比弱リッチ制御を再び実行する。
以上、説明したように、第1制御装置は、NOxを下流側触媒55によって浄化しながら、周期的に微粒子捕集フィルタを再生させることができる。
(空燃比制御の詳細)
次に、上記空燃比制御の詳細について説明する。
第1制御装置は、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが下流側目標空燃比としての「弱リッチ空燃比AFR」に対応する下流側目標値Voxsref(=Vrich=0.55(V))に一致するように、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに応じて機関の空燃比を制御する。即ち、第1制御装置は、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて上述した「サブフィードバック制御」を実行する。
一方、上流側触媒53は酸素吸蔵機能を有するから、上流側触媒53の上流の空燃比変化は所定の遅れ時間が経過した後に上流側触媒53の下流の空燃比変化となって現れる。従って、サブフィードバック制御のみでは過渡的な空燃比変動を抑制することが困難である。そこで、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基く上述したメインフィードバック制御を実行し、過渡的な空燃比変動を抑制する。このとき、第1制御装置は、メインフィードバック制御とサブフィードバック制御との間に制御上の干渉が発生することがないように、以下に述べる複数の手段による空燃比制御を行う。
即ち、この制御装置は、機能ブロック図である図8に示した複数の手段等を含んで構成されている。以下、図8を参照しながら説明する。
<補正後基本燃料噴射量の算出>
筒内吸入空気量算出手段A1は、エアフローメータ61が計測している吸入空気流量Gaと、クランクポジションセンサ64の出力に基づいて得られる機関回転速度NEと、ROM72が記憶しているテーブルMapMcと、に基づき今回の吸気行程を迎える気筒の吸入空気量である筒内吸入空気量Mc(k)を求める。ここで、添え字の(k)は、今回の吸気行程に対する値であることを示している。筒内吸入空気量Mc(k)は、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。筒内吸入空気量Mc(k)は機関10の吸気通路における空気の挙動をモデル化した周知の空気量推定モデル(空気モデル)を用いて求められてもよい。
上流側目標空燃比設定(決定)手段A2は、内燃機関10の運転状態である機関回転速度NE及びアクセルペダル操作量Accp(機関の負荷)等に基づいて上流側目標空燃比abyfr(k)を決定する。上流側目標空燃比abyfr(k)は上流側空燃比センサ66の出力値に基いて得られる検出空燃比abyfsの目標値の基礎となる値である。上流側目標空燃比abyfr(k)は、例えば、内燃機関10の暖機終了前においてはリッチ空燃比に設定され、暖機終了後において上述した「微粒子捕集フィルタ再生制御」を実行する場合に所定のリーン空燃比afleanに設定され、その他の場合において特殊な場合(例えば、上流側触媒53を過熱から保護する場合等)を除き理論空燃比に設定される。上流側目標空燃比abyfr(k)は各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
補正前基本燃料噴射量算出手段A3は、下記の(1)式に示したように、筒内吸入空気量算出手段A1により求められた筒内吸入空気量Mc(k)を上流側目標空燃比設定手段A2により設定された上流側目標空燃比abyfr(k)で除することにより、機関の空燃比を上流側目標空燃比abyfr(k)とするための今回の吸気行程に対する基本燃料噴射量Fbaseb(k)を求める。基本燃料噴射量Fbaseb(k)は、後述する基本補正値KF等による補正がなされる前の基本燃料噴射量であるから、補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)とも称呼される。補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)は各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
Fbaseb(k)=Mc(k)/abyfr(k) …(1)
補正後基本燃料噴射量算出手段A4は、補正前基本燃料噴射量算出手段A3により求められた今回の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)に後述する基本補正値算出手段A16により求められてバックアップRAM74に格納されている基本補正値KFを乗じることで補正後基本燃料噴射量Fbase(k)(=KF・Fbaseb(k))を求める。基本補正値KFを算出する基本補正値算出手段A16については後に詳述する。
このように、第1制御装置は、筒内吸入空気量算出手段A1、上流側目標空燃比設定手段A2、補正前基本燃料噴射量算出手段A3、補正後基本燃料噴射量算出手段A4及び基本補正値算出手段A16を利用して、補正後基本燃料噴射量Fbase(k)を求める。
<最終燃料噴射量の算出>
最終燃料噴射量算出手段A5は、下記の(2)式により示したように、補正後基本燃料噴射量Fbase(k)(=KF・Fbaseb(k))に後述するメインフィードバック補正値更新手段A15によって求められているメインフィードバック補正値KFmainを乗じ、それらの積(=Fbase(k)・KFmain)に後述するPIDコントローラA9によって求められているサブフィードバック補正値Fisubを加えて今回の最終燃料噴射量Fi(k)を求める。最終燃料噴射量Fi(k)は、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
Fi(k)=(KF・Fbaseb(k))・KFmain+Fisub=Fbase(k)・KFmain+Fisub …(2)
このように、第1制御装置は、最終燃料噴射量算出手段A5により、補正後基本燃料噴射量Fbase(k)をメインフィードバック補正値KFmainとサブフィードバック補正値Fisubとに基づいて補正することにより最終燃料噴射量Fi(k)を求める。更に、第1制御装置は、この最終燃料噴射量Fi(k)の燃料が、今回の吸気行程を迎える気筒のインジェクタ39から噴射されるように、そのインジェクタ39に対して噴射指示信号を送出する。換言すると、噴射指示信号は、最終燃料噴射量Fi(k)に関する情報を指示噴射量として含んでいる。
<サブフィードバック補正値の算出>
下流側目標値設定手段A6は、下流側目標値Voxsrefを出力するようになっている。下流側目標値Voxsrefは、上述した弱リッチ空燃比AFRに対応する値Vrich(例えば、0.55(V))に設定される。なお、下流側目標値設定手段A6は、上述した上流側目標空燃比設定手段A2と同様、内燃機関10の運転状態である機関回転速度NE及びアクセルペダル操作量Accp(機関の負荷)等に基づいて下流側目標値Voxsrefを変更するように構成され得る。
出力偏差量算出手段A7は、下記(3)式に基づいて、下流側目標値設定手段A6により設定されている現時点(具体的には、今回のFi(k)の噴射指示開始時点)での下流側目標値Voxsrefから同現時点での下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。出力偏差量算出手段A7は、求めた出力偏差量DVoxsをローパスフィルタA8に出力する。
DVoxs=Voxsref−Voxs …(3)
ローパスフィルタA8は一次のデジタルフィルタである。ローパスフィルタA8の特性を表す伝達関数A8(s)は下記の(4)式により示される。(4)式において、sはラプラス演算子であり、τ1は時定数である。ローパスフィルタA8は周波数(1/τ1)以上の高周波数成分が通過することを実質的に禁止する。ローパスフィルタA8は出力偏差量DVoxsの値を入力するとともに出力偏差量DVoxsの値をローパスフィルタ処理した後の値であるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowをPIDコントローラA9に出力する。
A8(s)=1/(1+τ1・s) …(4)
PIDコントローラA9は、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを下記(5)式に基づいて比例・積分・微分処理(PID処理)し、サブフィードバック補正値Fisubを求める。
Fisub=Kp・DVoxslow+Ki・SDVoxslow+Kd・DDVoxslow …(5)
上記(5)式において、Kpは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Kiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)、Kdは予め設定された微分ゲイン(微分定数)である。また、SDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間積分値であり、DDVoxslowはローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの時間微分値である。以上により、サブフィードバック補正値Fisubが求められる。
以上から明らかなように、下流側目標値設定手段A6、出力偏差量算出手段A7、ローパスフィルタA8及びPIDコントローラA9はサブフィードバック補正値算出手段を構成している。
<メインフィードバック制御及びメインフィードバック補正値の算出>
先に説明したように、上流側触媒53は触媒機能及び酸素吸蔵機能を有している。従って、上流側触媒53の上流の排ガスの空燃比の変動における「比較的周波数の高い高周波数成分(前記周波数1/τ1以上の高周波数成分)」及び「比較的周波数が低く且つ振幅が比較的小さい低周波数成分(前記周波数1/τ1以下の周波数にて変動するとともに理論空燃比からの偏移量が比較的小さい低周波成分)」は、上流側触媒53の触媒機能及び酸素吸蔵機能により吸収されるから、上流側触媒53の下流の排ガスの空燃比の変動として現れ難い。
従って、例えば、排ガスの空燃比が前記周波数(1/τ1)以上の高周波数で大きく変動するような「過渡運転状態における空燃比の急変」に対する補償は、サブフィードバック制御により行われ得ない。それ故、「過渡運転状態における空燃比の急変」に対する補償を確実に行うためには、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基づいたメインフィードバック制御を行う必要がある。
一方、上流側触媒53の上流の排ガスの空燃比の変動における「周波数が比較的低くて振幅が比較的大きい低周波数成分(例えば、前記周波数(1/τ1)以下の周波数で変動するとともに理論空燃比からの偏移量が比較的大きい低周波成分)」は、上流側触媒53により吸収され得ない。従って、そのような上流側触媒53の上流における空燃比の変動は、所定の遅れを有しながら下流の排ガスの空燃比の変動として現れる。この結果、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsと下流側空燃比センサ67の出力値Voxsとが理論空燃比近傍の空燃比に対して互いに逆方向に偏移した空燃比を示す値となる場合が存在する。この場合、メインフィードバック制御とサブフィードバック制御は機関に供給される混合気の空燃比を互いに逆方向に補正しようとするため、これらの制御の間に空燃比制御上の干渉が生じる場合がある。
以上のことから、第1制御装置は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsの変動における各周波数成分のうち「上流側触媒53の下流の空燃比の変動として現れ得る程度の周波数成分である所定の周波数(本例では、周波数(1/τ1))以下の低周波数成分」を「上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsから除去した値」を、メインフィードバック制御に使用する。このメインフィードバック制御に使用される上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに応じた値は、本例においては、「メインフィードバック制御用目標空燃比abyfrtgtと、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfs(k)に基づいて得られる検出空燃比abyfs(k)と、の偏差Daf」に対して「ハイパスフィルタ処理を施した値DafHi」である。この値DafHiに基づいてメインフィードバック制御を実行する結果、前述した空燃比制御上の干渉が発生することを回避することができる。より具体的には、メインフィードバック制御の結果として得られるメインフィードバック補正値は以下に述べるようにして求められる。
テーブル変換手段A10は、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsと、図4に示した上流側空燃比センサ出力値Vabyfsと空燃比A/Fとの関係を表すテーブルMapabyfsと、に基づいて、上流側空燃比センサ66が検出している現時点の検出空燃比abyfs(k)を求める。
目標空燃比遅延手段A11は、上流側目標空燃比設定手段A2により決定され、且つ、各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されている上流側目標空燃比abyfrのうち、現時点からNストローク(N回の吸気行程)前の時点の上流側目標空燃比abyfrをRAM73から読み出し、これを上流側目標空燃比abyfr(k-N)として設定する。ここで、添え字の(k-N)は、今回の吸気行程からNストローク(4気筒エンジンにおいて、N・180°CA、CA;クランク角)前の吸気行程に対した値であることを示している。上流側目標空燃比abyfr(k-N)は、現時点からNストローク前に吸気行程を迎えた気筒の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)(=Mc(k-N)/abyfr(k-N))を算出するために用いられた上流側目標空燃比である(上記(1)式を参照。)。
ここで、前記値Nは、内燃機関10の排気量及び燃焼室25から上流側空燃比センサ66までの距離等により異なる値である。このように、現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)をメインフィードバック補正値の算出に用いるのは、インジェクタ39から噴射された燃料を含み且つ燃焼室25内で燃焼された混合気が上流側空燃比センサ66に到達するまでには、Nストロークに相当する無駄時間L1を要するからである。なお、値Nは、機関回転速度NEが大きいほど小さくなり、且つ、機関の負荷(例えば、筒内吸入空気量Mc)が大きくなるほど小さくなるように変更されることが望ましい。
ローパスフィルタA12は、目標空燃比遅延手段A11から出力された現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)に対してローパスフィルタ処理を施し、メインフィードバック制御用目標空燃比(上流側フィードバック制御用目標空燃比)abyfrtgt(k)を算出する。メインフィードバック制御用目標空燃比abyfrtgt(k)を、以下、単に「MFB用目標空燃比abyfrtgt(k)」とも称呼する。このように、MFB用目標空燃比abyfrtgt(k)は、上流側目標空燃比設定手段A2により決定されていた上流側の上流側目標空燃比abyfr(k-N)に応じた値(基づいた値)である。
このローパスフィルタA12は一次のディジタル・フィルタである。ローパスフィルタA12の伝達特性A12(s)は下記の(6)式により示される。(6)式において、sはラプラス演算子であり、τは時定数(応答性に関するパラメータ)である。この特性により、周波数(1/τ)以上の高周波数成分の通過が実質的に禁止される。
A12(s)=1/(1+τ・s) …(6)
前述したように、上流側空燃比センサ66に到達しているガスの空燃比の値を入力信号とし、上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsに基いて求められる空燃比の値を出力信号とするとき、出力信号は入力信号に対してローパスフィルタ処理(例えば、所謂「なまし処理」を含む一次遅れ処理及び二次遅れ処理等)を施した信号と極めて似た信号となる。この結果、ローパスフィルタA12により生成されるMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)は、上流側空燃比センサ66に上流側目標空燃比abyfr(k−N)に応じた望ましい空燃比の排ガスが到達しているとき、実際に上流側空燃比センサ66が出力するであろう値となる。
上流側空燃比偏差算出手段A13は、下記(7)式に基づいて、「ローパスフィルタA12から出力されたMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)」から「テーブル変換手段A10により求められた現時点の検出空燃比abyfs(k)」を減じることにより、空燃比偏差Dafを求める。この空燃比偏差Dafは、Nストローク前の時点において筒内に供給された混合気の空燃比の目標空燃比からの偏差を表す量である。
Daf=abyfrtgt(k)−abyfs(k) …(7)
ハイパスフィルタA14は一次のフィルタである。ハイパスフィルタA14の特性を表す伝達関数A14(s)は(8)式により示される。(8)式において、sはラプラス演算子であり、τ1は時定数である。時定数τ1は上記ローパスフィルタA8の時定数τ1と同一の時定数である。ハイパスフィルタA14は、周波数(1/τ1)以下の低周波数成分が通過することを実質的に禁止する。
A14(s)={1−1/(1+τ1・s)} …(8)
ハイパスフィルタA14は、前記上流側空燃比偏差算出手段A13により求められた空燃比偏差Dafを入力するとともに、上記(8)式より表された特性式に従って空燃比偏差Dafをハイパスフィルタ処理した後の値であるメインフィードバック制御用偏差DafHiを出力する。
メインフィードバック補正値更新手段A15は、ハイパスフィルタA14の出力値であるメインフィードバック制御用偏差DafHiを比例処理する。即ち、メインフィードバック補正値更新手段A15は、メインフィードバック制御用偏差DafHiに比例ゲインGpHiを乗じることにより、メインフィードバック補正値KFmainを求める。このメインフィードバック補正値KFmainは、前記(2)式により示したように、最終燃料噴射量Fi(k)を求める際に使用される。
なお、メインフィードバック補正値更新手段A15は、下記(9)式に基いて、ハイパスフィルタA14の出力値であるメインフィードバック制御用偏差DafHiを比例・積分処理(PI処理)することにより、メインフィードバック補正値KFmainを求めてもよい。
KFmain=(Gphi・DafHi+Gihi・SDafHi)・KFB …(9)
上記(9)式において、Gphiは予め設定された比例ゲイン(比例定数)、Gihiは予め設定された積分ゲイン(積分定数)である。SDafHiはメインフィードバック制御用偏差DafHiの時間積分値である。係数KFBは本例では「1」である。しかしながら、係数KFBは、機関回転速度NE及び筒内吸入空気量Mc等により可変としても良い。
以上から明らかなように、上流側目標空燃比設定手段A2、テーブル変換手段A10、目標空燃比遅延手段A11、ローパスフィルタA12、上流側空燃比偏差算出手段A13、ハイパスフィルタA14及びメインフィードバック補正値更新手段A15は、メインフィードバック補正値算出手段を構成している。
このように、第1制御装置は、メインフィードバック制御系とサブフィードバック制御系とを補正前基本燃料噴射量Fbasebの算出系に対して並列且つ独立に接続している。即ち、第1制御装置は、補正後基本燃料噴射量Fbaseとメインフィードバック補正値KFmainとの積にサブフィードバック補正値Fisubを加えることによるサブフィードバック制御を、補正後基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック補正値KFmainを乗じることによるメインフィードバック制御とは独立に実行する。更に、前述したように、メインフィードバック制御用偏差DafHiは、ハイパスフィルタA14によって空燃比偏差Dafにハイパスフィルタ処理を施した値であって上流側触媒53の下流には現れない空燃比変動を反映した値である。従って、メインフィードバック補正値KFmainとサブフィードバック補正値Fisubとは、機関に供給される混合気の空燃比の変動を干渉するように補正することがない。加えて、メインフィードバック制御により過渡運転状態における空燃比の急変が抑制され、サブフィードバック制御により「上流側触媒53の下流の空燃比の変動として現れる緩やかな空燃比の偏移」が解消される。更に、サブフィードバック制御によって、「上流側空燃比センサ66の特性ズレ」及び「上流側空燃比センサ66の配設位置」等に起因する「空燃比の平均に対する検出誤差により「機関に供給される混合気の空燃比の平均」がウインドウWから外れてしまうことを回避することができる。
<基本補正値の算出>
前述したように、サブフィードバック補正値FisubはPIDコントローラA9によりローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを比例・積分・微分処理することによって算出される。しかしながら、上流側触媒53の酸素吸蔵機能等の影響により機関10の空燃比の変化は少し遅れて同上流側触媒53の下流の排ガスの空燃比の変化として現れる。従って、エアフローメータの検出精度や空気量推定モデルの推定精度に起因する定常的な誤差の大きさが運転領域の急変等によって比較的急激に増大する場合、その誤差に起因する燃料噴射量の過不足分をサブフィードバック制御のみにより直ちに補償することはできない。
一方、前記酸素吸蔵機能による遅れの影響がないメインフィードバック制御において、ハイパスフィルタA14によるハイパスフィルタ処理は微分処理(D処理)と同等の機能を達成する処理である。従って、ハイパスフィルタA14通過後の値がメインフィードバック補正値更新手段A15の入力値とされている上記メインフィードバック制御においては、仮にメインフィードバック補正値更新手段A15が積分処理を行うことによりメインフィードバック補正値KFmainを求めるように構成されている場合であっても、実質的な積分項を含むメインフィードバック補正値KFmainを算出することができない。それ故、上記メインフィードバック制御より、上記エアフローメータの検出精度や空気量推定モデルの推定精度に起因する燃料噴射量の定常的な誤差は補償され得ない。その結果、運転領域が変化した場合等において、一時的にHC,CO及びNOx等のエミッションの排出量が増大する場合が発生するという可能性がある。
以上のことから、第1制御装置は、下記(10)式に示したように、補正前基本燃料噴射量Fbasebを補正する基本補正値KFを求め、その基本補正値KFによって補正後基本燃料噴射量Fbase(k)を求め、その補正後基本燃料噴射量Fbase(k)を更にメインフィードバック補正値KFmain及びサブフィードバック補正値Fisubにより補正している(上記(2)式を参照。)。
上記(10)式において、Fbasetは、目標空燃比を得るために必要な真の指示噴射量であり、誤差を含まない基本燃料噴射量であるということもできる。以下、Fbasetを、「真の基本燃料噴射量」と称呼する。この真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)は、下記の(11)式により算出される。
上記(11)式について説明を加える。上述したように、現時点における検出空燃比abyfs(k)は最終燃料噴射量Fi(k-N)に基いて噴射された燃料によりもたらされている空燃比である。従って、(11)式における右辺の分子のabyfs(k)・Fi(k-N)は、最終燃料噴射量Fi(k-N)を決定した際の筒内空気量を表していることになる。それ故、(11)式に示したように、最終燃料噴射量Fi(k-N)を決定した時点の筒内空気量(abyfs(k)・Fi(k-N))を、最終燃料噴射量Fi(k-N)を決定した時点の上流側目標空燃比abyfr(k-N)で除することにより、真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)が算出される。
一方、上記(10)式にて使用される補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)は、下記に再度記載した上述の(1)式に基いて求められる。
Fbaseb(k)=Mc(k)/abyfr(k) …(1)
そこで、第1制御装置は、(1)式、(10)式及び(11)式から得られる下記(12)式に基いて基本補正値KFを求め、求めた基本補正値KFを同基本補正値KFを算出したときの運転領域に対応させてメモリに記憶しておく。この運転領域は、例えば、筒内吸入空気量Mcにより区画される。
以下、基本補正値算出手段A16の詳細機能ブロック図である図9を参照しながら、基本補正値KFの実際の算出の仕方について説明する。基本補正値算出手段A16は、A16a〜A16fの各手段等を含んで構成されている。
最終燃料噴射量遅延手段A16aは、今回の最終燃料噴射量Fi(k)を遅延させることにより現時点からNストローク前の最終燃料噴射量Fi(k-N)を求める。実際には、最終燃料噴射量遅延手段A16aは最終燃料噴射量Fi(k-N)をRAM73から読み出す。
目標空燃比遅延手段A16bは、今回の上流側目標空燃比abyfr(k)を遅延させることにより現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)を求める。実際には、目標空燃比遅延手段A16bは上流側目標空燃比abyfr(k-N)をRAM73から読み出す。
真の基本燃料噴射量算出手段A16cは、上記(11)式(Fbaset(k-N)=(abyfs(k)・Fi(k-N)/abyfr(k-N))に従って現時点からNストローク前の真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)を求める。
補正前基本燃料噴射量遅延手段A16dは、今回の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)を遅延させることにより現時点からNストローク前の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)を求める。実際には、補正前基本燃料噴射量遅延手段A16dは補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)をRAM73から読み出す。
フィルタ前基本補正値算出手段A16eは、上述した(12)式に基く式(KFbf=Fbaset(k-N)/Fbaseb(k-N))に従って、真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)を補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)で除することにより、フィルタ前基本補正値KFbfを算出する。
ローパスフィルタA16fは、フィルタ前基本補正値KFbfに対してローパスフィルタ処理を施すことにより基本補正値KFを算出する。このローパスフィルタ処理は、基本補正値KFを安定化させるため(フィルタ前基本補正値KFbfに重畳しているノイズ成分を除去するため)に行われる。このようにして求められた基本補正値KFは、現時点からNストローク前の運転状態が属していた運転領域に対応させられながらRAM73及びバックアップRAM74に記憶・格納されて行く。なお、基本補正値KFが格納される運転領域は、例えば、図10に示したように、機関10の負荷(筒内吸入空気量Mc及びアクセルペダル操作量Accp等)により区画されている。この運転領域は、機関回転速度NEと機関の負荷とによって区画されてもよい。
このように、基本補正値算出手段A16は、最終燃料噴射量Fi(k)の計算時点が到来する毎に、A16a〜A16fの各手段等を利用して基本補正値KFを更新する。そして、基本補正値算出手段A16は、図8に示したように、最終燃料噴射量Fi(k)の算出時において機関10の運転状態が属する運転領域に格納されている基本補正値KFをバックアップRAM74から読み出し、読み出した基本補正値KFを補正後基本燃料噴射量算出手段A4に提供する。この結果、燃料噴射量(補正前基本燃料噴射量)の定常的な誤差が迅速に補償されていく。
(実際の作動)
次に、第1制御装置の実際の作動について説明する。以下、説明の便宜上、「MapX(a1,a2,…)」は、a1,a2,…を引数とする値Xを求めるためのテーブルを表すものとする。また、引数の値がセンサの検出値である場合、その引数の値には現在値が適用される。
<最終燃料噴射量Fi(k)の算出>
CPU71は、図11にフローチャートにより示した最終燃料噴射量Fiの計算及び噴射指示を行うルーチンを、各気筒のクランク角が各気筒の吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、BTDC90°CA)となる毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、任意の気筒のクランク角度が上記所定クランク角度になると、CPU71はステップ1100から処理を開始して以下に記載したステップ1105乃至ステップ1115の処理を順に行い、ステップ1120に進む。
ステップ1105:CPU71は、テーブルMapMc(NE,Ga)に基づいて今回の吸気行程を迎える気筒(以下、「燃料噴射気筒」と云うこともある。)に吸入される今回の筒内吸入空気量Mc(k)を推定・決定する。
ステップ1110:CPU71は、後述する図15に示されたルーチンにより別途定められている今回の上流側目標空燃比abyfr(k)を取得する。上流側目標空燃比abyfr(k)は各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
ステップ1115:CPU71は、上記筒内吸入空気量Mc(k)を上記上流側目標空燃比abyfr(k)で除することにより、補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)を算出する。補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)は各気筒の吸気行程に対応されながらRAM73に記憶されていく。
次に、CPU71はステップ1120に進み、現在の運転状態がフューエルカット条件(上述した、減速フューエルカット条件)を満足するか否かを判定する。このフューエルカット条件が成立していれば、CPU71はステップ1120にて「Yes」と判定してステップ1195に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。従って、燃料噴射の指示を行うステップ1140が実行されないので、燃料噴射は停止される(フューエルカット制御が実行される。)。
一方、ステップ1120の判定時点においてフューエルカット条件が成立していなければ、CPU71はステップ1120にて「No」と判定し、以下に記載したステップ1125乃至ステップ1140の処理を順に行い、その後、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1125:CPU71は、後述するルーチンによって計算されるとともにバックアップRAM74に運転領域毎に格納されている基本補正値KFの中から、現時点における運転状態が属する運転領域に格納されている基本補正値KFを読み出す。なお、メインフィードバック制御条件が不成立のとき、運転状態に関わらず基本補正値KFには値「1」が設定される。
ステップ1130:CPU71は、補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k)に、ステップ1125にて読み出した基本補正値KFを乗じた値を補正後基本燃料噴射量Fbaseとして設定する。
ステップ1135:CPU71は、上記(2)式に従い、補正後基本燃料噴射量Fbaseと後述するルーチンにて求められているメインフィードバック補正値KFmainとの積にサブフィードバック補正値Fisubを加えて今回の最終燃料噴射量Fi(k)を求める。
ステップ1140:CPU71は、最終燃料噴射量Fi(k)の燃料が燃料噴射気筒に対するインジェクタ39から噴射されるように、そのインジェクタ39に対して噴射指示を行う。
以上により、補正前基本燃料噴射量Fbasebが上流側目標空燃比abyfr(k)と今回の筒内吸入空気量Mc(k)とに基づいて取得され、その補正前基本燃料噴射量Fbasebと基本補正値KFとにより補正後基本燃料噴射量Fbaseが取得される。更に、その補正後基本燃料噴射量Fbaseがメインフィードバック補正値KFmainとサブフィードバック補正値Fisubとにより補正されることにより最終的な燃料噴射量(最終燃料噴射量)Fiが求められ、その最終燃料噴射量Fiの燃料の噴射指示が燃料噴射気筒のインジェクタ39に対してなされる。
<メインフィードバック補正値の計算>
次に、メインフィードバック補正値KFmainを算出する際の作動について説明する。CPU71は図12にフローチャートにより示したルーチンを実行周期Δt(一定)の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングにてCPU71はステップ1200から処理を開始し、以下に記載したステップ1205及びステップ1210の処理を順に行い、ステップ1215に進む。なお、この実行周期Δtは、例えば、機関回転速度NEが想定される最大の機関回転速度である場合における連続する二つの噴射指示の発生時間間隔より短い時間に設定されている。
ステップ1205:CPU71は、ステップ1205に記載した簡易のローパスフィルタ式(abyfrtgt(k)=α・abyfrtgtold+(1−α)・abyfr(k−N))に従ってMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)を求める。この処理は、前述した目標空燃比遅延手段A11及びローパスフィルタA12の処理に対応している。ここで、αは0より大きく1より小さい定数であり、上記ローパスフィルタA12の時定数τに応じて設定されている。abyfrtgtoldは、次のステップ1210にて設定される「前回本ルーチンを実行した際に算出されたMFB用目標空燃比abyfrtgt」である。abyfrtgtoldは、前回MFB用目標空燃比(前回メインフィードバック制御用目標空燃比)と称呼される。abyfr(k−N)は、現時点からNストローク前の上流側目標空燃比である。
ステップ1210:CPU71は、次回の本ルーチンの実行のために、前回MFB用目標空燃比abyfrtgtoldにステップ1205にて算出したMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)を格納する。
次に、CPU71はステップ1215に進み、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「1」であるか否かを判定する。メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値は、後述するルーチンにてメインフィードバック制御条件が成立したときに「1」に設定され、メインフィードバック制御条件が不成立のとき「0」に設定される。更に、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値は、図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更された際に実行されるイニシャルルーチンにて「0」に設定される。いま、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「1」であるとすると、CPU71は、以下に記載したステップ1220乃至ステップ1235の処理を順に行い、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1220:CPU71は、現時点の上流側空燃比センサ66の出力値Vabyfsを図4に示したテーブルMapabyfs(Vabyfs)に基づいて変換することにより、現時点の検出空燃比abyfs(k)を求める。
ステップ1225:CPU71は、上記(7)式であるステップ1225内に記載した式に従ってMFB用目標空燃比abyfrtgt(k)から今回の検出空燃比abyfs(k)を減じることにより、空燃比偏差Dafを求める。
ステップ1230:CPU71は、空燃比偏差Dafに上記(8)式により表された特性を有するハイパスフィルタ処理を施すことにより、メインフィードバック制御用偏差DafHiを取得する。この処理は、前述したハイパスフィルタA14による処理に対応している。
ステップ1235:CPU71は、メインフィードバック制御用偏差DafHiに比例ゲインGpHiを乗じて得られる積に値「1」を加えることにより、メインフィードバック補正値KFmainを求める。
一方、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「0」であるとすると、CPU71は、ステップ1215から以下に記載したステップ1240及びステップ1245の処理を順に行い、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1240:CPU71は、メインフィードバック補正値KFmainを「1」に設定する。
ステップ1245:CPU71は、基本補正値KFを「1」に設定する。
このように、メインフィードバック制御条件が不成立(XmainFB=0)の場合、メインフィードバック補正値KFmainの更新が停止されるとともに、メインフィードバック補正値KFmainの値が「1」に設定されるので、メインフィードバック制御が停止される(メインフィードバック補正値KFmainの最終燃料噴射量Fiへの反映が停止される)。また、メインフィードバック制御条件が不成立の場合、基本補正値KFの値が「1」に設定されるので、基本補正値KFの最終燃料噴射量Fiへの反映が停止される。
<サブフィードバック補正値の計算>
次に、サブフィードバック補正値Fisubを算出するための作動について説明する。CPU71は図13にフローチャートにより示したルーチンを、所定時間が経過する毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになるとCPU71はステップ1300から処理を開始し、ステップ1305に進んでサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「1」であるか否かを判定する。
サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値は、後述するルーチンにてサブフィードバック制御条件が成立したときに「1」に設定され、サブフィードバック制御条件が不成立のとき「0」に設定される。更に、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値は、図示しない前記イニシャルルーチンにて「0」に設定される。いま、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「1」であるとすると、CPU71は、以下に記載したステップ1310乃至ステップ1335の処理を順に行い、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1310:CPU71は、上記(3)式であるステップ1310内に記載した式に従って、下流側目標値Voxsrefから現時点の下流側空燃比センサ67の出力値Voxsを減じることにより、出力偏差量DVoxsを求める。なお、前述したように、下流側目標値Voxsrefは弱リッチ空燃比AFRに対応したVrichに設定されている。
ステップ1315:CPU71は、出力偏差量DVoxsに対して上記(4)式により表された特性を有するローパスフィルタ処理を施すことによりローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを算出する。
ステップ1320:CPU71は、下記(13)式に基づきローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの微分値DDVoxslowを求める。(13)式において、DVoxslow1は前回の本ルーチン実行時においてステップ1335(後述)にて更新された「ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslow」の前回値である。また、Δtは本ルーチンが前回実行された時点から今回実行された時点までの時間である。
DDVoxslow=(DVoxslow-DVoxslow1)/Δt …(13)
ステップ1325:CPU71は、上記(5)式であるステップ1325内に示した式に従ってサブフィードバック補正値Fisubを求める。
ステップ1330:CPU71は、その時点におけるローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの積分値SDVoxslowに上記ステップ1315にて求めたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを加えて、新たなローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの積分値SDVoxslowを求める。
ステップ1335:CPU71は、ローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの前回値DVoxslow1に上記ステップ1315にて求めたローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowを格納する。
一方、ステップ1305の判定時において、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値が「0」であるとすると、CPU71はステップ1305にて「No」と判定してステップ1340に進み、サブフィードバック補正値Fisubを「0」に設定し、続くステップ1345にてローパスフィルタ通過後出力偏差量DVoxslowの積分値SDVoxslowを「0」に設定した後、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、サブフィードバック制御条件が不成立(XsubFB=0)であるとき、サブフィードバック補正値Fisubが「0」に設定されるから、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに応じた空燃比のフィードバック制御は行われない。
<基本補正値の計算と記憶・格納>
CPU71は図14にフローチャートにより示したルーチンを、図11に示したルーチンの実行に先だって繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングにてCPU71はステップ1400から処理を開始し、ステップ1405に進んでメインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「1」であるか否かを判定する。いま、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「1」であるとすると、CPU71は、以下に記載したステップ1410乃至ステップ1430の処理を順に行い、ステップ1495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1410:CPU71は、上記(11)式であるステップ1410内に記載した式に従って、現時点における検出空燃比abyfs(k)と現時点からNストローク前の最終燃料噴射量Fi(k-N)との積を現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)により除することによって、現時点からNストローク前の真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)を算出する。なお、現時点からNストローク前の最終燃料噴射量Fi(k-N)及び現時点からNストローク前の上流側目標空燃比abyfr(k-N)は、いずれもRAM73から読み出される。
ステップ1415:CPU71は、上記(12)式と同じ式であるステップ1415に記載した式に基いて、ステップ1410にて算出した現時点からNストローク前の真の基本燃料噴射量Fbaset(k-N)を現時点からNストローク前の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)により除することによって、基本補正値KFの基礎となる今回値KFnew(フィルタ前基本補正値KFbf)を算出する。なお、現時点からNストローク前の補正前基本燃料噴射量Fbaseb(k-N)はRAM73から読み出される。
ステップ1420:CPU71は、現時点からNストローク前の時点における機関10の運転状態が属する運転領域に対応してバックアップRAM74内に格納してある基本補正値KFを同バックアップRAM74から読み出す。この読み出された基本補正値KFは、過去の基本補正値KFoldである。
ステップ1425:CPU71は、ステップ1425に記載した簡易のローパスフィルタ式(KF=β・KFold+(1−β)・KFnew)に従って新たな基本補正値KF(最終基本補正値KF)を算出する。ここで、βは0より大きく1より小さい定数である。
ステップ1430:CPU71は、ステップ1425にて求められた基本補正値KFを、現時点からNストローク前の時点における機関10の運転状態が属する運転領域に対応したバックアップRAM74内の格納領域に記憶・格納する。
このようにして、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「1」である場合、基本補正値KFが更新され、且つ、記憶されて行く。
一方、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が「0」であるとすると、CPU71はステップ1405にて「No」と判定し、ステップ1495に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、基本補正値KFの更新及び同基本補正値KFのバックアップRAM74への記憶・格納処理は実行されない。
<上流側目標空燃比abyfr(k)の算出>
CPU71は所定時間の経過毎に図15にフローチャートにより示したルーチンをステップ1500から実行するようになっている。従って、所定のタイミングにてCPU71はステップ1505に進み、現時点がフューエルカット制御中であるか否かを判定する。現時点がフューエルカット制御中である(図7の時刻t1以前を参照。)とすると、CPU71はステップ1505にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1510乃至ステップ1520の処理を順に行い、ステップ1595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1510:CPU71は、フューエルカット復帰フラグXFKIの値を「0」に設定する。フューエルカット復帰フラグXFKIの値はフューエルカット制御中に「0」に設定され、フューエルカット制御が終了したときに「1」に設定される(後述するステップ1525及びステップ1530を参照。)。なお。フューエルカット復帰フラグXFKIの値は、前述した図示しないイニシャルルーチンにて「0」に設定され、更に、イニシャルルーチンにて「0」に設定されるメインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値が、機関10の始動後において初めて「0」から「1」へと変更されたとき、図示しないルーチンにより「1」に変更されるようになっている。
ステップ1515:CPU71は、リーン制御フラグ(フィルタ再生制御フラグ)XLの値を「0」に設定する。なお、リーン制御フラグXLの値は、前述したイニシャルルーチンにて「0」に設定されるようになっている。
ステップ1520:CPU71は、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRの値を「0」に設定するとともに、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLの値を「0」に設定する。弱リッチ制御時積算空気量tGaSR及びフィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは、後述する図16に示したルーチンにより更新される。
以上に説明したステップ1510乃至ステップ1520のステップは、フューエルカット制御が実行されている間、繰り返し実行される。
その後、図7に示した時刻t1になるとフューエルカット制御が終了する。この直後にCPU71がステップ1505の処理を実行すると、CPU71はステップ1505にて「No」と判定してステップ1525に進み、本ルーチンを前回実行した時点においてフューエルカット制御が実行されていたか否かを判定する。現時点は、フューエルカット制御が終了した直後であるから、本ルーチンを前回実行した時点においてフューエルカット制御は実行されていた。従って、CPU71はステップ1525にて「Yes」と判定し、ステップ1530に進んでフューエルカット復帰フラグXFKIの値を「1」に設定し、その後ステップ1535に進む。なお、本ルーチンを前回実行した時点においてフューエルカット制御が実行されていなければ、CPU71はステップ1525にて「No」と判定し、ステップ1535に直接進む。
ところで、CPU71は図16にフローチャートにより示した積算空気量計算ルーチンを所定時間Δt1の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ1600から処理を開始し、ステップ1605にてフューエルカット復帰フラグXFKIの値が「1」であるか否かを判定する。
このとき、フューエルカット復帰フラグXFKIの値が「1」であれば、CPU71はステップ1610に進み、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRの値を、その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気流量Gaに所定時間Δt1を乗じた値(Ga・Δt1)だけ増大する。その後、CPU71はステップ1615に進む。これに対し、フューエルカット復帰フラグXFKIの値が「0」であると、CPU71はステップ1605にて「No」と判定し、ステップ1605からステップ1615に直接進む。
次に、CPU71はステップ1615にてリーン制御フラグXLの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、リーン制御フラグXLの値が「1」であれば、CPU71はステップ1620に進み、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLの値を、その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気流量Gaに所定時間Δt1を乗じた値(Ga・Δt1)だけ増大する。その後、CPU71はステップ1695に進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、リーン制御フラグXLの値が「0」であると、CPU71はステップ1615て「No」と判定し、ステップ1615からステップ1695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRはフューエルカット復帰フラグXFKIの値が「1」であるときに値(Ga・Δt1)ずつ増大し、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLはリーン制御フラグXLの値が「1」であるときに値(Ga・Δt1)ずつ増大する。
再び、図15を参照すると、CPU71はステップ1535に進んだとき、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRがフィルタ再生制御開始閾値Rth以上となっているか否かを判定する。現時点は、フューエルカット制御が終了した直後(フューエルカット復帰直後)である。従って、ステップ1520にて「0」に設定された弱リッチ制御時積算空気量tGaSRの値はフィルタ再生制御開始閾値Rth以上となっていない。
このため、CPU71はステップ1535にて「No」と判定してステップ1545に直接進み、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLがフィルタ再生制御完了閾値Lth以上となっているか否かを判定する。この時点では、リーン制御フラグXLの値は先のステップ1515にて「0」に設定されたままである。従って、先のステップ1520にて「0」に設定されたフィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは図16のステップ1620により増大されない。この結果、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLはフィルタ再生制御完了閾値Lthより当然に小さい。
従って、CPU71はステップ1545にて「No」と判定してステップ1550に進み、リーン制御フラグXLの値が「1」であるか否かを判定する。現時点においては、リーン制御フラグXLの値は先のステップ1515にて「0」に設定されたままである。従って、CPU71はステップ1550にて「No」と判定してステップ1555に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定する。その後、CPU71はステップ1595に進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、図7の時刻t1以降に示したように、上流側目標空燃比abyfr(k)が理論空燃比stoichとなる。
更に、CPU71は図17にフローチャートにより示したフィードバック条件判定ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。メインフィードバック制御条件が成立するとメインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値がステップ1715にて「1」に設定される。メインフィードバック制御条件が不成立であるとメインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値がステップ1720にて「0」に設定される。メインフィードバック制御条件は次に述べるとおりである。
(メインフィードバック制御条件)
メインフィードバック制御条件は、以下の総ての条件が成立するとき成立する。
・上流側空燃比センサ66が活性化している(ステップ1705を参照。)。
・フューエルカット制御中でない(ステップ1710を参照。)。
同様に、サブフィードバック制御条件が成立するとサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値がステップ1740にて「1」に設定される。サブフィードバック制御条件が不成立であるとサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値がステップ1745にて「0」に設定される。サブフィードバック制御条件は次に述べるとおりである。
(サブフィードバック制御条件)
サブフィードバック制御条件は、以下の総ての条件が成立するとき成立する。
・メインフィードバック制御条件が成立している(ステップ1705及びステップ1710を参照。)。
・下流側空燃比センサ67が活性化している(ステップ1725を参照。)。
・リーン制御フラグ(フィルタ再生制御フラグ)XLの値が「0」である(ステップ1730を参照。)。
・上流側目標空燃比abyfr(k)が理論空燃比stoichである(ステップ1735を参照。)。
なお、上流側空燃比センサ66及び下流側空燃比センサ67が活性化しているか否かは、各空燃比センサの素子(固体電解質)の抵抗値を検出し、検出した素子の抵抗値が所定値以下であるか否かを判定することにより行われ得る。
ところで、現時点はフューエルカット復帰後(時刻t1以降)である。従って、メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFBの値はステップ1715にて「1」に設定される。一方、リーン制御フラグXLの値はフューエルカット制御中において図15のステップ1515にて「0」に設定されている。更に、上流側目標空燃比abyfr(k)は図15のステップ1555にて理論空燃比stoichに設定されている。従って、CPU71は図17のステップ1725乃至ステップ1735の総てにおいて「Yes」と判定し、ステップ1740に進んでサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値を「1」に設定する。
この結果、CPU71は図12のステップ1220乃至ステップ1235によるメインフィードバック制御を実行するとともに、図13のステップ1310乃至ステップ1335のサブフィードバック制御を実行する。従って、機関の空燃比(機関の空燃比の平均値)は上述した「弱リッチ空燃比AFR」に制御される。即ち、上述した空燃比弱リッチ制御が実行される。これにより、還元成分(HC,CO等)が上流側触媒53に流入するので、フューエルカット制御中において上流側触媒53に吸蔵された酸素が消費され、酸素吸蔵量OSA1が次第に減少して「0」に至る。更に、この期間において、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRはステップ1610の処理によって次第に増大する。
そして、この状態が継続して図7に示した時刻t2に至ると、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2は下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2から所定量だけ小さい値に到達する。即ち、下流側触媒55の状態は、所定量の窒素酸化物を還元できる「上記還元状態」に至る。同時に、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRはフィルタ再生制御開始閾値Rth以上になる。この場合、CPU71は図15のステップ1535に進んだとき、ステップ1535にて「Yes」と判定してステップ1560に進み、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRの値をフィルタ再生制御開始閾値Rthに設定する。
次に、CPU71はステップ1565に進み、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRがフィルタ再生制御開始閾値Rthに到達した直後であるか否かを判定する。現時点は、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRがフィルタ再生制御開始閾値Rthに到達した直後であるから、CPU71はステップ1565にて「Yes」と判定してステップ1570に進み、リーン制御フラグ(フィルタ再生制御フラグ)XLの値を「1」に設定する。
次いで、CPU71はステップ1545に進む。この場合、リーン制御フラグXLの値が「1」に設定された直後であるから、ステップ1520にて「0」に設定された「フィルタ再生制御時積算空気量tGaSL」はフィルタ再生制御完了閾値Lth以上となっていない(図16のステップ1615及びステップ1620を参照。)。従って、CPU71はステップ1545にて「No」と判定してステップ1550に直接進む。
この場合、リーン制御フラグXLの値は先のステップ1570にて「1」に設定されている。従って、CPU71はステップ1550にて「Yes」と判定してステップ1585に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)に上述したリーン空燃比afleanを設定する。その後、CPU71はステップ1595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
この結果、図7の時刻t2以降に示したように、上流側目標空燃比abyfr(k)がリーン空燃比afleanとなる。また、CPU71は図17のステップ1730にて「No」と判定してステップ1745に進み、サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値を「0」に設定する。その結果、CPU71は図13のステップ1305にて「No」と判定してステップ1340及びステップ1345に進むので、サブフィードバック制御は停止される。
以上により、機関の空燃比の平均は上述した「リーン空燃比aflean」に制御されることになる。これにより、酸素(及びNOx)が上流側触媒53に流入するので、空燃比弱リッチ制御(時刻t1〜t2)中において「0」に至った上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が次第に増大する。更に、この期間において、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは図16のステップ1620の処理によって次第に増大する。
そして、この状態において所定の時間が経過すると、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は最大酸素吸蔵量Cmax1に到達し、機関10から上流側触媒53を通して微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給される。この結果、微粒子捕集フィルタ54内にて微粒子が燃焼し、微粒子捕集フィルタ54が再生される。さらに、この時点においては、下流側触媒55は実質的に還元剤を相当量保持している(即ち、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2が下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2よりも相当量だけ小さい状態となっている)。換言すると、下流側触媒55は所定量のNOxを浄化(還元)し得る「還元状態」に到達している。従って、空燃比の平均がリーン空燃比afleanに設定されることにより機関10から排出される比較的多量のNOxは、下流側触媒55により浄化される。
この状態が継続すると、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRはフィルタ再生制御開始閾値Rthに維持され、且つ、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLは図16のステップ1620の処理によって次第に増大する。従って、所定の時間が経過した時刻t3になると、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLはフィルタ再生制御完了閾値Lth以上となる。この場合、CPU71は図15のステップ1545に進んだとき、同ステップ1545にて「Yes」と判定し、ステップ1575に進んでリーン制御フラグXLの値を「0」に設定する。次いで、CPU71はステップ1580に進み、弱リッチ制御時積算空気量tGaSRの値を「0」に設定するとともに、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLの値を「0」に設定する。
この結果、リーン制御フラグXLの値が「0」となるから、CPU71はステップ1550にて「No」と判定してステップ1555に進み、再び、上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定する。その後、CPU71はステップ1595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
これにより、CPU71は図17のステップ1730及びステップ1735の両ステップにて「Yes」と判定するため、ステップ1740にてサブフィードバック制御条件成立フラグXsubFBの値を「1」に設定する。従って、時刻t1〜t2と同様、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御が実行され(空燃比弱リッチ制御が実行され)、機関の空燃比の平均が弱リッチ空燃比AFRに制御される。
その後、ステップ1580にて「0」に設定された弱リッチ制御時積算空気量tGaSRは図16のステップ1610にて増大させられる。従って、以降、時刻t1〜t3の動作と同様な動作が繰り返される。この結果、微粒子捕集フィルタは定期的に再生させられる(図7の時刻t2〜t3、t4〜t5を参照。)。また、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2はフィルタ再生制御中において下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2に到達することがないので、フィルタ再生制御中においてもNOxが効果的に浄化される。
以上、説明したように、第1制御装置は、下流側触媒55が所定量の窒素酸化物を浄化することができる還元状態に到達したか否かを判定する還元状態判定手段(図6のステップ630、図15のステップ1535及び図16のステップ1610等を参照。)を備える。更に、第1制御装置は、空燃比制御手段を備える。
その空燃比制御手段は、機関10に供給される「空気及び燃料」を含む「混合気の空燃比の平均」を「理論空燃比を含む所定の空燃比範囲(ウインドウW)内の第1空燃比(弱リッチ空燃比AFR)に制御する理論空燃比近傍制御(空燃比弱リッチ制御)を実行する。加えて、空燃比制御手段は、下流側触媒55が前記還元状態に到達したと判定された場合、機関10に供給される「混合気の空燃比の平均」を「前記第1空燃比(弱リッチ空燃比AFR)よりもリーン側であって且つ理論空燃比よりもリーン側の第2空燃比(リーン空燃比aflean)」に制御することにより、微粒子捕集フィルタ54に酸素を供給し、微粒子捕集フィルタ54に捕集されている微粒子を燃焼させる「フィルタ再生制御」を所定期間に渡り実行する。
この結果、微粒子捕集フィルタ54にはフューエルカット制御中以外のタイミングにおいても酸素が供給される。従って、微粒子捕集フィルタ54に捕集されていた微粒子が適宜のタイミングにて燃焼し、微粒子捕集フィルタ54が再生される。更に、その際、機関10から排出された窒素酸化物は「還元状態にある下流側触媒55」によって浄化(還元)される。従って、第1制御装置は、窒素酸化物の排出量を増加させることなく微粒子捕集フィルタを再生させることができる。
なお、上記第1空燃比は、「理論空燃比を含む所定の空燃比範囲(ウインドウW)」内の値であればよく、必ずしも理論空燃比よりリッチ側の空燃比でなくてもよい。この場合、下流側触媒55を上記還元状態に到達させるため、一時的(好ましくは、定期的)に機関に供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に設定することが好適である。下流側触媒55を上記還元状態に到達させるために「混合気の空燃比の平均」を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に設定するタイミングとしては、前回のフィルタ再生制御終了後の吸入空気量の積算値が所定値以上となった場合、前回のフィルタ再生制御終了後の機関10の運転時間の積算値が所定値以上となった場合等であってもよい。
更に、第1制御装置は、下流側空燃比センサ67を備え、前記空燃比制御手段は、前記理論空燃比近傍制御(空燃比弱リッチ制御)を実行するために、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsが、「第1空燃比(弱リッチ空燃比)AFRとして設定された下流側目標空燃比(下流側目標値Voxsref(=Vrich)に対応する空燃比)」よりもリーン側の空燃比に相当する値であるとき機関10に供給される混合気の空燃比をよりリッチ側の空燃比に変更し、出力値Voxsが前記下流側目標空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値であるとき機関10に供給される混合気の空燃比をよりリーン側の空燃比に変更するサブフィードバック制御(図6のステップ640、図11のステップ1135及び図13等を参照。)を実行するように構成されている。
これによれば、下流側触媒55が「前記還元状態」に到達していないと判定されている場合、理論空燃比近傍制御を実現するためのサブフィードバック制御が実行される。従って、下流側触媒55に流入するガスの空燃比の平均は、より確実に下流側触媒55のウインドウWの範囲内となるので、未燃物及び窒素酸化物は高い効率にて浄化される。加えて、機関の空燃比の平均は「弱リッチ空燃比AFR」に制御されるので、ある程度の時間が経過したとき下流側触媒55の状態は「前記還元状態」に確実に到達する。
なお、第1制御装置は、理論空燃比近傍制御(空燃比弱リッチ制御)を実行するために、サブフィードバック制御を停止し、且つ、上流側目標空燃比abyfrを弱リッチ空燃比AFRに設定することにより行っても良い。更に、第1制御装置は、理論空燃比近傍制御(空燃比弱リッチ制御)を実行するために、メインフィードバック制御及びサブフィードバック制御の両方を停止し、上流側目標空燃比abyfrのみを弱リッチ空燃比AFRに設定することにより行っても良い。更に、第1制御装置は、フューエルカット復帰直後から所定期間が経過するまで、機関に供給される混合気の空燃比を弱リッチ空燃比AFRよりもリッチ側の空燃比に設定し、酸素吸蔵量OSA1及び酸素吸蔵量OSA2を迅速に低下させる所謂「フューエルカット復帰後増量」を実施してもよい。
更に、前記空燃比制御手段は、下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したと判定された場合、前記フィルタ再生制御を実行するために上記サブフィードバック制御を停止する(図6のステップ660、図13のステップ1305、ステップ1340、ステップ1345、図15のステップ1535、ステップ1570、図17のステップ1730及びステップ1745を参照。)。これにより、第1制御装置は、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsが下流側目標空燃比AFRよりもリーン側の空燃比に相当する値であっても機関10に供給される混合気の空燃比をよりリッチ側の空燃比に変更することなく、機関10に供給される混合気の空燃比の平均を前記第2空燃比(リーン空燃比aflean)に維持するリーン維持制御を実行するように構成されている。
なお、この場合、第1制御装置のように、メインフィードバック制御によって機関10に供給される混合気の空燃比が第2空燃比よりもリッチ側及びリーン側の空燃比に交互に制御されながら、その平均が第2空燃比に制御されてもよい。代替として、第1制御装置は、サブフィードバック制御のみでなくメインフィードバック制御も停止し、且つ、機関10に供給される混合気の空燃比が常に理論空燃比よりもリーン側の第2空燃比に一致するように燃料噴射量を制御してもよい。
これによれば、下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したと判定された場合、リーン維持制御が実行されるので、微粒子捕集フィルタ54に酸素が供給される。その結果、微粒子捕集フィルタ54が再生され、且つ、機関10から排出される多量の窒素酸化物は「前記還元状態」に到達した下流側触媒55によって浄化(還元)される。
また、第1制御装置の上記還元状態判定手段は、機関10から排気通路に排出された未燃物である「還元成分の量A」から「酸化成分の量B」を減じた量である「還元成分の過剰量(A−B)」の積算値(Σ(A−B))に対応する第1積算値(弱リッチ制御時積算空気量tGaSR)を取得するとともに、その第1積算値tGaSRに基づいて下流側触媒55が前述した「還元状態」に到達したか否かを判定するように構成されている(図6のステップ630、図15のステップ1535を参照。)。従って、下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したか否かを容易に判定することができる。
更に、第1制御装置は、機関10の運転状態が所定のフューエルカット運転状態となったとき機関10への燃料の供給を停止するフューエルカット手段(図6のステップ610及びステップ620、図11のステップ1120等を参照。)を備えている。そして、前記還元状態判定手段は、「フューエルカット復帰時点」以降における「所定の第1積算開始時点」の一つである「フューエルカット復帰時」から積算された前記第1積算値tGaSRが第1所定値(Rth)以上となったか否かを判定する(図6のステップ630、図15のステップ1535を参照。)。更に、前記還元状態判定手段は、第1積算値tGaSRが第1所定値Rth以上となったと判定されたとき下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したと判定するように構成されている(図6のステップ630、図15のステップ1535、ステップ1565、図16のステップ1605及びステップ1610を参照。)。
一般に、フューエルカット復帰時点において、上流側触媒53及び下流側触媒55の酸素吸蔵量はそれぞれの最大酸素吸蔵量に到達している。従って、フューエルカット復帰時点からの「第1積算値tGaSR」は、排気通路に配設された触媒(上流側触媒53及び下流側触媒55)の酸素吸蔵量の減少量に応じた値になる。それ故、フューエルカット復帰時点からの第1積算値tGaSRが第1所定値Rth以上となったか否かを判定することにより、下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したか否かを容易に判定することができる。
更に、第1制御装置の前記空燃比制御手段は、少なくとも「前記フューエルカット復帰時点」から「前記第1積算値tGaSRが前記第1所定値Rth以上となる時点」までの「フューエルカット復帰後期間」、機関10に供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比よりリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)に制御(サブフィードバック制御)するように構成されている。
これによれば、フューエルカット復帰後において下流側触媒55の酸素吸蔵量を減少させることが可能となる。従って、フューエルカット復帰時点からある程度の時間が経過すれば、下流側触媒55に窒素酸化物が流入しても、下流側触媒55はその窒素酸化物を浄化することができる。更に、フューエルカット復帰後において下流側触媒55を「上記還元状態」に到達させることができるので、微粒子捕集フィルタを再生させること(フィルタ再生制御を開始すること)が可能となる。
更に、第1制御装置の前記空燃比制御手段は、フューエルカット復帰後期間においても上記弱リッチ空燃比AFRを下流側目標空燃比とするサブフィードバック制御を実行している。言い換えると、第1制御装置の空燃比制御手段は、フューエルカット復帰後期間において、機関10に供給される混合気の空燃比の平均を理論空燃比よりリッチ側の空燃比(弱リッチ空燃比AFR)に制御するために、理論空燃比よりリッチ側の空燃比をフューエルカット復帰後目標空燃比として設定する。
そして、その空燃比制御手段は、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsが、フューエルカット復帰後目標空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値であるとき機関10に供給される混合気の空燃比をよりリッチ側の空燃比に変更し、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsがフューエルカット復帰後目標空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値であるとき同機関に供給される混合気の空燃比をよりリーン側の空燃比に変更する「フューエルカット復帰後フィードバック制御」を実行するように構成されている。
これによれば、フューエルカット復帰後期間、機関10に供給される混合気の空燃比の平均が、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて「理論空燃比よりリッチ側の空燃比(フューエルカット復帰後目標空燃比)」に精度良く制御される。従って、フューエルカット復帰時点から所定時間が経過したときにフィルタ再生制御を確実に開始することが可能となる。
なお、フューエルカット復帰後期間の全部又は一部の期間において、サブフィードバック制御を停止するとともに、メインフィードバック制御の上流側目標空燃比abyfrを理論空燃比stoichよりもリッチ側の空燃比に一時的に設定し、メインフィードバック制御を実行してもよい。また、フューエルカット復帰後期間の全部又は一部の期間において、サブフィードバック制御及びメインフィードバック制御を実行するとともに、下流側目標空燃比(場合により、更に上流側目標空燃比)を弱リッチ空燃比AFRよりも更にリッチ側の空燃比に一時的に設定してもよい。即ち、フューエルカット復帰後期間においては、下流側触媒目標空燃比を、第1制御装置のように「前記所定の空燃比範囲(ウインドウW)内であって理論空燃比より所定値だけリッチ側の空燃比AFR」に設定してもよく、「前記所定の空燃比範囲(ウインドウW)外であって理論空燃比より所定値だけリッチ側の空燃比」に設定してもよい。
更に、第1制御装置において、前記空燃比制御手段は、「前記フィルタ再生制御の開始時点以降における所定の第2積算開始時点」である「フィルタ再生制御の開始時点」から、前記機関から前記排気通路に排出された「酸化成分の量」から「還元成分の量」を減じた量である「酸化成分の過剰量」の積算値に対応する「第2積算値tGaSL」を取得するとともに、取得された第2積算値tGaSLが第2所定値Lth以上となったとき同フィルタ再生制御を終了するように構成されている(図6のステップ650、ステップ640、図15のステップ1545、ステップ1575、ステップ1550、ステップ1555等を参照。)。
これによれば、第2積算値tGaSLに応じた量の微粒子を燃焼させたとき、微粒子捕集フィルタ54の再生を一旦停止することができる。従って、この第2積算値tGaSLと比較される第2所定値Lthを適値に設定することにより、フィルタ再生制御中において下流側触媒55が浄化できない量の窒素酸化物が下流側触媒55に流入し、その結果、大気に窒素酸化物が多量に放出されることを回避することができる。更に、フィルタ再生制御の開始時点から微粒子捕集フィルタ54に流入する「過剰な酸化成分の量」を「第2積算値tGaSL」として取得することができるので、適切なタイミングにてフィルタ再生制御を一旦停止することができる。
加えて、第1制御装置は、指示(メインフィードバック制御条件成立フラグXmainFB)に応じてメインフィードバック制御を実行するメインフィードバック制御手段(図12を参照。)と、指示(サブフィードバック制御条件成立フラグXsubFB)に応じてサブフィードバック制御を実行するサブフィードバック制御手段(図13を参照。)と、を備えている。
そして、第1制御装置は、
(1)下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したと判定されるまで上流側目標空燃比abyfrを理論空燃比stoichに設定するとともに前記メインフィードバック制御及び前記サブフィードバック制御を実行させることにより「通常フィードバック制御」を実行し、
(2)下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したと判定された時点以降において、上流側目標空燃比abyfrを理論空燃比stoichよりもリーン側の空燃比であるリーン空燃比afleanに設定するとともに前記メインフィードバック制御を実行させ、且つ、前記サブフィードバック制御を停止させ、これにより、、微粒子捕集フィルタ54に酸素を供給し、微粒子捕集フィルタ54に捕集されている微粒子を燃焼させる「フィルタ再生制御」を実行する、
ように、前記メインフィードバック制御手段及び前記サブフィードバック制御手段に指示を与える「指示手段」を備えていると表現することもできる(図15のステップ1570、ステップ1575、ステップ1550、ステップ1555、ステップ1585、図17の特にステップ1730等を参照。)。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第2制御装置」とも称呼する。)について説明する。第2制御装置は、フィルタ再生制御開始閾値である第1閾値(第1所定値)Rth、及び、フィルタ再生制御完了閾値である第2閾値値(第2所定値)Lthを、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に応じて変更する点のみにおいて、第1制御装置と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
第2制御装置のCPU71は、第1制御装置のCPU71が実行するルーチンに加えて、図18にフローチャートにより示した閾値決定ルーチンを所定時間の経過毎に実行するようになっている。従って、所定のタイミングにてCPU71はステップ1800から処理を開始し、以下に記載したステップ1810乃至ステップ1830の処理を順に行い、ステップ1895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ1810:CPU71は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1を読み込む。最大酸素吸蔵量Cmax1は別途実行される図示しない「最大酸素吸蔵量取得ルーチン」により適宜更新されている。最大酸素吸蔵量取得ルーチンにおいて、CPU71は例えば「アクティブ制御」と呼ばれる周知の制御等を実行し最大酸素吸蔵量Cmax1を取得する(特開2005−194981号公報、特開2006−057461号公報、特開2005−207286号公報等を参照。)。
アクティブ制御について、簡単に述べると、CPU71は所定の条件(定常運転状態であり、前回の最大酸素吸蔵量Cmax1の取得時点から所定の時間が経過している等)が成立すると、機関に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に設定し、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応する値になったか判定する。その後、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比を示す値に変化したとき、CPU71は、機関に供給される混合気の空燃比を理論空燃比よりもリーン側の空燃比に設定し、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に対応する値に変化したかを監視する。
そして、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に対応する値に変化したことが検出されたとき(時刻ta)、機関10に供給される混合気の空燃比を再びリッチ側の空燃比に設定する。そして、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応する値に再び変化する時点(時刻tb)まで、下記(14)式に基いて酸素吸蔵量の変化量ΔO2を所定時間(計算周期tsample)の経過毎に算出するとともに、下記(15)式に基づいて変化量ΔO2を積算することにより上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1を算出する。
ΔO2=0.23・mfr・(stoich − abyfrr) …(14)
Cmax1=ΣΔO2(区間t=ta〜tb) …(15)
上記(14)式において、値「0.23」は大気中に含まれる酸素の重量割合である。mfrは所定時間(計算周期tsample)内の燃料噴射量Fiの合計量である。stoichは理論空燃比(例えば、14.7)である。abyfrrは所定時間tsampleにおいて上流側空燃比センサ66により測定された空燃比である。なお、abyfrrは前記所定時間tsample内の上流側空燃比センサ66により検出された空燃比の平均値としてもよい。
ステップ1820:CPU71は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1と、ステップ1820のブロック内に示した第1閾値決定マップ(実線L1)と、に基づいて、第1閾値Rthを決定する。この第1閾値決定マップによれば、最大酸素吸蔵量Cmax1が大きくなるほど第1閾値Rthが大きくなるように定められる。なお、破線L2は、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が最大酸素吸蔵量Cmax1である状態から積算を開始する第1積算値tGaSRであって、酸素吸蔵量OSA1が「0」に到達するときの第1積算値tGaSRに相当している。
ステップ1830:CPU71は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1と、ステップ1820のブロック内に示した第2閾値決定マップ(実線L4)と、に基づいて、第2閾値Lthを決定する。この第2閾値決定マップによれば、最大酸素吸蔵量Cmax1が大きくなるほど第2閾値Lthが大きくなるように定められる。更に、任意の最大酸素吸蔵量Cmax1に対し、第2閾値Lthは第1閾値Rthよりも小さくなるように定められる。なお、破線L3は、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が「0」である状態から積算を開始する第2積算値tGaSLであって、酸素吸蔵量OSA1が最大酸素吸蔵量Cmax1に到達するときの第2積算値tGaSLに相当している。
このように、第2制御装置は、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1が大きくなるほど第1閾値Rthを大きい値に設定する。そして、第2制御装置は、第1積算値tGaSRがこの第1閾値Rth以上となったと判定されたとき下流側触媒55が「前記還元状態」に到達したと判定し、空燃比弱リッチ制御(理論空燃比近傍制御)を中止して空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)を開始し(図6のステップ630、ステップ660、図15のステップ1565、ステップ1570、ステップ1550、ステップ1585を参照。)、微粒子捕集フィルタ54を再生させる。
更に、第2制御装置は、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1が大きくなるほど第2閾値Lthを大きい値に設定する。そして、第2制御装置は、第2積算値tGaSLがこの第2閾値Lth以上となったと判定されたとき、空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)を終了し、再び、空燃比弱リッチ制御(理論空燃比近傍制御)を再開する(図6のステップ650、ステップ640、図15のステップ1545、ステップ1575、ステップ1550、ステップ1555を参照。)。
フューエルカット運転が実行されると、通常、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に到達し、更に、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2は下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2に到達する。従って、フューエルカット復帰時点以降において機関10から排出される過剰な還元成分は、先ず、上流側触媒53により酸化(消費)される。この上流側触媒53によって消費されてしまう過剰な還元成分の量は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に依存する。その後、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が実質的に「0」になると、還元成分は微粒子捕集フィルタ54を通して下流側触媒55に流入する。その結果、下流側触媒55の状態は「上記還元状態」に向けて変化を開始する。以上から明らかなように、フューエルカット復帰時点(空燃比弱リッチ制御の開始時点)から積算を開始された第1積算値tGaSRが示す量の過剰な還元成分のうちの下流側触媒55に流入する過剰な還元成分の量(従って、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2、即ち、下流側触媒55が実質的に還元成分をどれだけ保持しているか)は上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に依存する。
そこで、上記第2制御装置のように、フューエルカット復帰時点から積算される第1積算値tGaSRが第1所定値(第1閾値)Rth以上となったときに下流側触媒55が「上記還元状態」に到達したと判定する場合、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1が大きいほど第1所定値(第1閾値)Rthが大きくなるように第1所定値Rthを決定することにより、下流側触媒55が「上記還元状態」に到達したか否かをより精度良く判定することができる。
また、フィルタ再生制御(空燃比リーン制御)を開始する時点において、下流側触媒55は「上記還元状態」となっている。このとき、上流側触媒53の酸素吸蔵量は実質的に「0」となっている。従って、空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)の開始後において機関10から排出された過剰な酸素(酸化成分)は、先ず、上流側触媒53により消費され、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は次第に増大して最大酸素吸蔵量Cmax1に到達する。この時点まで、上流側触媒53の下流には酸素が殆ど流出しないので、微粒子捕集フィルタ54の再生が行われない。
換言すると、フィルタ再生制御の開始時点から微粒子捕集フィルタ54に「酸素が供給され始める時点」までの時間は、フィルタ再生制御の開始時点から上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1がその最大酸素吸蔵量Cmax1に到達するまでに要する時間となる。即ち、フィルタ再生制御の開始後において微粒子捕集フィルタに「酸素が供給され始める時点」は、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に依存して変化する。この結果、フィルタ再生制御中における「下流側触媒55の還元成分の消費量」は、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1と微粒子捕集フィルタ54にて燃焼された微粒子の量とに依存する。
そこで、第2制御装置は、フィルタ再生制御開始時点から積算される「酸化成分の過剰量」の積算値に対応する「第2積算値tGaSL」が「上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1が大きいほど大きくなる第2所定値Lth」以上となったとき、フィルタ再生制御を終了するように構成されている。従って、第2制御装置は、下流側触媒55の酸素吸蔵量が下流側触媒55の最大酸素吸蔵量Cmax2に到達する前の時点(最大酸素吸蔵量Cmax2よりも所定量だけ小さくなった時点)にてフィルタ再生制御を停止することができる。その結果、フィルタ再生制御中において下流側触媒55が浄化できない量の窒素酸化物が下流側触媒55に流入することによって大気に窒素酸化物が多量に放出されることを回避することができる。また、第2制御装置は、狙いとする適切な量だけ微粒子捕集フィルタ54に捕集されている酸素を燃焼させることができる。
なお、第2制御装置において、第1所定値Rthは、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に所定の定数k1を乗じた値に、一定の値Cs1を加えた値(=k1・Cmax1+Cs1)であってもよい。同様に、第2所定値Lthは、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に所定の定数k2を乗じた値に、一定の値Cs2を加えた値(=k2・Cmax1+Cs2)であってもよい。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第3制御装置」とも称呼する。)について説明する。第3制御装置は、フィルタ再生制御(空燃比リーン制御)を開始した後の下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて微粒子の燃焼が完了したか否かを判定し、微粒子の燃焼が完了していないと判定される場合には第2積算値tGaSLが第2閾値Lthに到達した場合であってもフィルタ再生制御を継続する点において第1制御装置と相違する。
より具体的には、第3制御装置のCPU71は、第1制御装置が実行する図6に示したルーチンに代えて図19及び図20にフローチャートにより示したルーチンを実行する点において、第1制御装置と相違する従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
図19に示したルーチンは、図6に示したルーチンに対して、ステップ1910が追加されたルーチンである。即ち、CPU71は、弱リッチ制御時積算空気量(第1積算値)tGaSRがフィルタ再生制御開始閾値(第1閾値、第1所定値)Rth以上となると、ステップ630にて「Yes」と判定してステップ650に進み、フィルタ再生制御中に積算されるフィルタ再生制御時積算空気量(第2積算値)tGaSLがフィルタ再生制御完了閾値(第2閾値、第2所定値)Lth以上であるか否かを判定する。このとき、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLがフィルタ再生制御完了閾値Lthより小さければ、CPU71はステップ650にて「No」と判定してステップ660に進み、フィルタ再生制御を実行する。
この状態が所定時間だけ継続すると、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLはフィルタ再生制御完了閾値Lth以上となる。このとき、CPU71はステップ650にて「Yes」と判定してステップ1910に進み、微粒子燃焼完了フラグXkanの値が「1」であるか否かを判定する。
この微粒子燃焼完了フラグXkanの値は、CPU71が所定時間の経過毎に実行する「図20にフローチャートにより示したルーチン」により変更される。即ち、CPU71は所定のタイミングにて図20のステップ2000から処理を開始し、ステップ2010に進んで現時点がフィルタ再生制御(空燃比リーン制御)を開始した直後であるか否かを判定する。そして、現時点がフィルタ再生制御を開始した直後であれば、CPU71はステップ2010にて「Yes」と判定してステップ2020に進み、微粒子燃焼完了フラグXkanの値を「0」に設定し、その後、ステップ2030に進む。これに対し、現時点がフィルタ再生制御を開始した直後でなければ、CPU71はステップ2010にて「No」と判定して直接ステップ2030に進む。
次に、CPU71はステップ2030にて、フィルタ再生制御を開始した時点以降において下流側空燃比センサ67から出力される出力値Voxsが、(1)理論空燃比に相当する値に一時的に一致し、(2)その後、理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値に再びなったか否かを判定する。換言すると、フィルタ再生制御を開始した時点以降において下流側空燃比センサ67から出力される出力値Voxsによって示される空燃比afdown(=f(Voxs))が、理論空燃比、次いで理論空燃比よりもリーン側の空燃比に変化したか否かを判定する。以下、このステップ2030の判定条件を、単に、「微粒子燃焼完了判定条件」と称呼する。
なお、微粒子燃焼完了判定条件は、フィルタ再生制御を開始した時点以降において下流側空燃比センサ67から出力される出力値Voxsによって示される空燃比afdown(=f(Voxs))が、理論空燃比よりもリーン側の空燃比となり、次いで理論空燃比となり、その後、理論空燃比よりもリーン側の空燃比に変化したときに成立するように設定されてもよい。
CPU71は「微粒子燃焼完了判定条件」が成立している場合、ステップ2030にて「Yes」と判定してステップ2040に進み、微粒子燃焼完了フラグXkanの値を「1」に設定し、その後、ステップ2095に進んで本ルーチンを一旦終了する。これに対し、CPU71は、「微粒子燃焼完了判定条件」が成立していない場合、ステップ2030にて「No」と判定してステップ2095に直接進み、本ルーチンを一旦終了する。
ところで、タイムチャートである図21の時刻t1〜t4(特に、図21の楕円D1内を参照。)に示したように、時刻t2にてフィルタ再生制御(空燃比リーン制御)が開始されると、酸素は上流側触媒53に吸蔵され、その後、微粒子捕集フィルタ54に供給され始める。しかし、微粒子は直ちに燃焼を開始しない。従って、酸素は微粒子捕集フィルタ54にて消費されることなく微粒子捕集フィルタ54から一時的に流出する。その結果、フィルタ再生制御を開始した時点(時刻t2)直後において下流側空燃比センサ67から出力される出力値Voxsが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値となる。
僅かな時間が経過すると、微粒子捕集フィルタ54内において微粒子の燃焼が開始する。従って、微粒子捕集フィルタ54に流入した酸素は微粒子捕集フィルタ54内にて消費され、微粒子捕集フィルタ54の下流に流出しない。従って、下流側空燃比センサ67から出力される出力値Voxsは理論空燃比に相当する値と一致する。
更に、時間が経過して微粒子捕集フィルタ54に捕集されていた微粒子が総て燃焼すると、微粒子捕集フィルタ54に流入した酸素は微粒子捕集フィルタ54内にて消費されることなく、微粒子捕集フィルタ54の下流に流出する。従って、下流側空燃比センサ67から出力される出力値Voxsは再び理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値となる。
即ち、上記「微粒子燃焼完了判定条件」が成立するまでの期間は、燃焼していない微粒子が残存しており、その結果、酸素が微粒子捕集フィルタ54の下流に流出しないので、酸素は下流側触媒55に流入しない。従って、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2は実質的に増大せず、下流側触媒55は「上記還元状態」を実質的に維持する。換言すると、図21の時刻t3〜t4に示したように、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLがフィルタ再生制御完了閾値Lth以上となった場合であっても、「微粒子燃焼完了判定条件」が成立していなければ、窒素酸化物は下流側触媒55によって浄化されるので、微粒子捕集フィルタ54に酸素を継続的に供給して微粒子を燃焼させることができる。
第3制御装置はこのような知見に基づいてなされている。即ち、フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLがフィルタ再生制御完了閾値Lth以上となったとき、CPU71は図19のステップ650にて「Yes」と判定してステップ1910に進み、微粒子燃焼完了フラグXkanの値が「1」であるか否かを判定する。そして、「微粒子燃焼完了判定条件」が成立していないために微粒子燃焼完了フラグXkanの値が「0」である場合、CPU71はステップ1910にて「No」と判定してステップ660に進み、空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)を継続する。
これに対し、「微粒子燃焼完了判定条件」が成立していて微粒子燃焼完了フラグXkanの値が「1」である場合、CPU71はステップ1910にて「Yes」と判定してステップ640に進み、空燃比弱リッチ制御(理論空燃比近傍制御)を開始する。以上が、第3制御装置の概略の作動である。
より詳細に述べると、第3制御装置のCPU71は、図11乃至図14に示したルーチンと、図15の一部を図22に示したルーチンに置換したルーチンと、図16及び図17に示したルーチンと、を実行する。以下、第1制御装置のCPU71が実行するルーチンと相違する部分についてのみ説明を加える。
CPU71は、図15のルーチンのステップ1545にて「Yes」と判定すると、図22に示したステップ2210に進み、微粒子燃焼完了フラグXkanの値が「1」であるか否かを判定する。そして、微粒子燃焼完了フラグXkanの値が「0」であるとき、CPU71はステップ2210にて「No」と判定し、ステップ2220にてフィルタ再生制御時積算空気量tGaSLにフィルタ再生制御完了閾値Lthを設定する。そして、CPU71はステップ1550にて「Yes」と判定しステップ1585に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)に上述したリーン空燃比afleanを設定する。その後、CPU71はステップ1595に進み、本ルーチンを一旦終了する。この結果、上流側目標空燃比abyfr(k)がリーン空燃比afleanに維持されるから、空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)が継続される。
これに対し、CPU71がステップ2210に進んだとき、微粒子燃焼完了フラグXkanの値が「1」であれば、CPU71はステップ2210にて「Yes」と判定し、ステップ1575、ステップ1580、ステップ1550及びステップ1555へと進み、空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)を停止するとともに空燃比弱リッチ制御(理論空燃比近傍制御)を開始する。
このように、第3制御装置(第3制御装置の空燃比制御手段)は、フィルタ再生制御を開始した時点以降において下流側空燃比センサ67から出力される出力値Voxsが理論空燃比に相当する値(0.5V)と一致した後に理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値となる時点(リーン反転時点、図21の時刻t4)まで、フィルタ再生制御を継続するように構成されている。
従って、微粒子捕集フィルタに燃焼すべき微粒子が残存していて、且つ、下流側触媒が依然として窒素酸化物を浄化できる状態にあるにも拘らず、フィルタ再生制御が停止されてしまうことを回避することができる。更に、リーン反転時点にてフィルタ再生制御が停止されるので、フィルタ再生制御が不必要に継続されることに起因して下流側触媒の還元能力を超える量或は必要量以上の窒素酸化物が下流側触媒に流入することも回避することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第4制御装置」とも称呼する。)について説明する。第4制御装置は、弱リッチ制御時積算空気量(第1積算値)tGaSRの積算開始時点及びフィルタ再生制御時積算空気量(第2積算値)tGaSLの積算開始時点が第1制御装置と相違している。以下、第4制御装置の弱リッチ制御時積算空気量tGaSRを反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRH、第4制御装置のフィルタ再生制御時積算空気量tGaSLを反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHと称呼する。
第4制御装置は、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHが第1閾値(第1所定値)に相当するフィルタ再生制御開始閾値RHth以上となると、下流側触媒55が「上記還元状態」に到達したと判定し、空燃比弱リーン制御(フィルタ再生制御)を開始する。反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHは、フューエルカット復帰時点以降(空燃比弱リッチ制御開始後)において下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値に初めてなる時点まで0に維持され、その時点から積算され始める。
更に、第4制御装置は、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHが第2閾値(第2所定値)に対応するフィルタ再生制御完了閾値LHth以上となると、フィルタ再生制御を終了して弱リッチ制御を再開する。反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHは、フィルタ再生制御(空燃比リーン制御)を開始した時点以降において下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値に初めてなる時点(又は、一旦、理論空燃比に相当する値となり、その後、理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値に初めてなる時点)まで0に維持され、その時点から積算され始める。
より具体的に述べると、第4制御装置のCPU71は、第1制御装置が実行する図6に示したルーチンに代えて図23及び図24にフローチャートにより示したルーチンを実行する点において、第1制御装置と相違する。従って、以下、この相違点を中心として説明を加える。
図23に示したルーチンは、図6のステップ630をステップ2310に置換し、且つ、図6のステップ650をステップ2320に置換した点のみにおいて、図6に示したルーチンと相違している。
即ち、CPU71は、ステップ2310において、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHがフィルタ再生制御開始閾値(第1所定値)RHth以上であるか否かを判定する。そして、CPU71は、フューエルカット条件が成立していない場合であって(ステップ610を参照。)、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHがフィルタ再生制御開始閾値RHthよりも小さい場合、ステップ2310にて「No」と判定してステップ640に進み、空燃比弱リッチ制御(理論空燃比近傍制御)を実行する。
一方、フューエルカット条件が成立していない場合であって(ステップ610を参照。)、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHがフィルタ再生制御開始閾値RHth以上である場合、CPU71はステップ2310にて「Yes」と判定してステップ2320に進み、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHがフィルタ再生制御完了閾値LHth以上であるか否かを判定する。そして、CPU71は、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHがフィルタ再生制御完了閾値LHthよりも小さい場合、ステップ2320にて「No」と判定してステップ660に進み、空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)を実行する。
これに対し、CPU71がステップ2330に進んだとき、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHがフィルタ再生制御完了閾値LHth以上であると、CPU71はステップ2320にて「Yes」と判定してステップ640に進み、空燃比弱リッチ制御(理論空燃比近傍制御)の実行を開始する。
更に、CPU71は、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRH及び反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHを図24にフローチャートにより示したルーチンを所定時間の経過毎に実行することにより計算する。
具体的に述べると、CPU71は所定のタイミングにて図24のステップ2400から反転後積算空気量計算ルーチンの処理を開始し、ステップ2405に進んで現時点がフューエルカット中(フューエルカット制御条件が成立中)であるか否かを判定する。このとき、現時点がフューエルカット中であれば、CPU71はステップ2405にて「Yes」と判定してステップ2410に進み、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの値を「0」に設定する(タイムチャートである図25の時刻t1以前を参照。)。その後、CPU71はステップ2415に進む。これに対し、現時点がフューエルカット中でなければ、CPU71はステップ2405にて「No」と判定しステップ2415に直接進む。
なお、この反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRH及び反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHは、前述した図示しないイニシャルルーチンにて、何れも「0」に設定されている。従って、少なくとも機関10の始動後において最初にフューエルカット制御が実行され、その後フューエルカット復帰時点になったとき、CPU71は図23のステップ610及びステップ2310の両ステップにて「No」と判定し、ステップ640にて空燃比弱リッチ制御を開始する。
CPU71は図24のステップ2415にて、空燃比弱リッチ制御開始後(即ち、フューエルカット復帰後又は空燃比リーン制御終了後)において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比(afdown=f(Voxs))が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に変化していないか否かを判定する。即ち、出力値Voxsが理論空燃比に対応する値VSth以上のリッチ側閾値VRth(本例において、VRth=0.5V)よりも大きい値(以上の値)となっていないか否かを判定する。このとき、空燃比弱リッチ制御開始後において下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownが未だ理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に変化していなければ、CPU71はステップ2415にて「Yes」と判定してステップ2420に進み、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの値を「0」に設定する。これにより、空燃比弱リッチ制御開始後において、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に相当する値に初めてなる時点まで、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの値は「0」に維持される。その後、CPU71はCPU71はステップ2425に進む。
これに対し、空燃比弱リッチ制御開始後(即ち、フューエルカット復帰後又は空燃比リーン制御終了後)において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に変化していれば、CPU71はステップ2415にて「No」と判定し、ステップ2425に直接進む。
CPU71はステップ2425にて、現時点が空燃比弱リッチ制御中であるか否かを判定する。このとき、現時点が空燃比弱リッチ制御中であれば、CPU71はステップ2425にて「Yes」と判定してステップ2430に進み、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの値を、その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気流量Gaに所定時間Δt1を乗じた値(Ga・Δt1)だけ増大する。その後、CPU71はステップ2435に進む。これに対し、現時点が空燃比弱リッチ制御中でなければ、CPU71はステップ2425にて「No」と判定してステップ2435に直接進む。
以上までのCPU71の作動について、タイムチャートである図25を参照しながら説明する。いま、時刻t1以前においてフューエルカット制御条件が成立していて、フューエルカット制御が実行されていたと仮定する。従って、時刻t1以前において、ステップ2410により反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの値は「0」に設定され、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの値はイニシャルルーチンにより「0」に設定されている。
その後、時刻t1にてフューエルカット制御が終了すると仮定する。このとき、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は最大酸素吸蔵量Cmax1(又は最大酸素吸蔵量Cmax1に近しい大きな値)になっている。従って、CPU71が図23のステップ2310からステップ640へと進んで空燃比弱リッチ制御を開始しても、上流側触媒53から還元成分(HC,CO等)が流出しない。その結果、時刻t1から暫くの期間、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsは理論空燃比に相当する値VSthよりもリーン側の空燃比に相当する値(即ち、値VSthよりも小さいリーン側閾値VLth以下の値)となる。
その後、時刻t2直前になると、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は略「0」に至る。従って、上流側触媒53から還元成分が流出する。その結果、時刻t2になったとき、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsは理論空燃比に相当する値VSthよりもリッチ側の空燃比に相当する値(即ち、値VSth以上の値)となる。
この結果、CPU71は、ステップ2415に進んだとき「No」と判定し、ステップ2420を実行しなくなる。更に、CPU71はステップ2425及びステップ2430にて反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHを増大させる。この結果、時刻t2以降において反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHは「0」から増大を開始する。
その後、時刻t3になると、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHはフィルタ再生制御開始閾値RHthに到達する。従って、CPU71は、時刻t3以降において、図23のステップ2310にて「Yes」と判定しステップ2320に進む。この時点において反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHは「0」であってフィルタ再生制御完了閾値LHthよりも小さい。従って、CPU71はステップ2320からステップ660に進み、空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)を開始する。
このように、第4制御装置は、空燃比弱リッチ制御中において上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が「0」に到達することにより、上流側触媒53から還元成分が流出し始めた時点(空燃比弱リッチ制御開始後、即ち、フューエルカット復帰後又は空燃比リーン制御終了後において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に変化した時点)から反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの積算を開始する。従って、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHは、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1等に依存せず、下流側触媒55に流入した過剰な還元成分の量(下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2の減少量、即ち、下流側触媒55の還元成分の保持量に相当)を精度良く表す。この結果、下流側触媒55が「上記還元状態」に到達したことを精度良く判定することができる。
以下、図24のステップ2435以降の処理について説明する。CPU71はステップ2435に進むと、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHがフィルタ再生制御開始閾値RHth以上であるか否かを判定する。そして、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHがフィルタ再生制御開始閾値RHth以上であれば、CPU71はステップ2435にて「Yes」と判定してステップ2440に進み、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの値にフィルタ再生制御開始閾値RHthを設定する。その後、CPU71はステップ2445に進む。これに対し、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHがフィルタ再生制御開始閾値RHthより小さければ、CPU71はステップ2435にて「No」と判定し、ステップ2445に直接進む。
CPU71はステップ2445にて、空燃比弱リッチ制御終了後(即ち、空燃比リーン制御開始後)において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比(afdown=f(Voxs))が理論空燃比よりもリーン側の空燃比に変化していないか否かを判定する。即ち、CPU71は、空燃比リーン制御開始後において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが理論空燃比に相当する値VSthよりもリーン側の空燃比に相当する値(即ち、値VSthよりも小さいリーン側閾値VLth以下の値)となっていないか否かを判定する。このとき、空燃比弱リッチ制御終了後において下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownが未だ理論空燃比よりもリーン側の空燃比に変化していなければ、CPU71はステップ2445にて「Yes」と判定してステップ2450に進み、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの値を「0」に設定する。これにより、空燃比リーン制御開始後において、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に相当する値に初めてなる時点まで、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの値は「0」に維持される。その後、CPU71はステップ2455に進む。
これに対し、空燃比リーン制御開始後(即ち、空燃比弱リッチ制御終了後)において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に変化していれば、CPU71はステップ2445にて「No」と判定し、ステップ2455に直接進む。
CPU71はステップ2455にて、現時点が空燃比リーン制御(フィルタ再生制御)中であるか否かを判定する。このとき、現時点が空燃比リーン制御中であれば、CPU71はステップ2455にて「Yes」と判定してステップ2460に進み、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの値を、その時点にてエアフローメータ61により検出されている吸入空気流量Gaに所定時間Δt1を乗じた値(Ga・Δt1)だけ増大する。その後、CPU71はステップ2465に進む。これに対し、現時点が空燃比リーン制御中でなければ、CPU71はステップ2455にて「No」と判定してステップ2465に直接進む。
更に、CPU71はステップ2465にて反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHがフィルタ再生制御完了閾値LHth以上であるか否かを判定する。即ち、CPU71は、現時点が空燃比弱リッチ制御が開始された直後であるか否かを判定する。このとき、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHがフィルタ再生制御完了閾値LHth以上であれば、CPU71はステップ2465にて「Yes」と判定してステップ2470に進み、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの値を「0」に設定するとともに、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの値を「0」に設定する。その後、CPU71はステップ2495に進み、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHがフィルタ再生制御完了閾値LHthより小さければ、CPU71はステップ2465にて「No」と判定し、ステップ2495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
ここで、ステップ2435からステップ2470までのCPU71の作動について図25を参照しながら説明する。前述したように時刻t3において、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHはフィルタ再生制御開始閾値RHthに到達する。従って、CPU71はステップ2435及びステップ2440の処理を実行するので、図25の時刻t3以降に示したように、反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHはフィルタ再生制御開始閾値RHthに維持される。
ところで、時刻t3まで空燃比弱リッチ制御が実行されるので、時刻t3において上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は実質的に「0」になっている。従って、時刻t3以降において空燃比リーン制御が実行されても、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に到達するまで、上流側触媒53から酸素は実質的に流出しない。その結果、時刻t3から暫くの期間、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsは理論空燃比近傍の空燃比に相当する値(リーン側閾値VLthよりも大きい値)となる。このため、ステップ2450が継続的に実行されるので、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの値は「0」に維持され続ける。
時刻t3から所定の時間が経過すると、空燃比リーン制御により、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1は上流側触媒の最大酸素吸蔵量Cmax1に到達する。従って、時刻t3から暫くの期間が経過した後の時刻t4になると、上流側触媒53から酸素が流出し始める。その結果、下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsはリーン側閾値VLth以下の値となる。即ち、時刻t4にて、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownは理論空燃比よりも所定空燃比だけリーン側の空燃比になる。
従って、時刻t4以降、CPU71はステップ2445にて「No」と判定してステップ2450を実行しなくなる。更に、CPU71はステップ2455及びステップ2460にて反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHを増大させる。この結果、時刻t4以降において反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHは「0」から増大を開始する。
その後、時刻t5になると、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHはフィルタ再生制御完了閾値LHthに到達する。従って、CPU71は、時刻t5直後において、図23のステップ2310及びステップ2320の両ステップにて「Yes」と判定しステップ640に進み、空燃比弱リッチ制御を再開する(フィルタ再生制御を終了する)。
このように、第4制御装置は、空燃比リーン制御中(フィルタ再生制御中)において上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が最大酸素吸蔵量Cmax1に到達することにより、上流側触媒53から酸素が流出し始めた時点(空燃比リーン制御開始後において、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に変化した時点)から反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの積算を開始する。従って、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHは、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1等に依存せず、下流側触媒55の酸素吸蔵量OSA2の増大量(下流側触媒55の還元成分の減少量に相当)を精度良く表す。この結果、下流側触媒55の窒素酸化物を浄化する能力(窒素酸化物浄化能力)が過度に低下する前に、空燃比リーン制御を停止することができる。従って、微粒子捕集フィルタ54を再生すること(空燃比リーン制御を行うこと)によって、機関10から大気中に排出される窒素酸化物の量が増大することを回避することができる。
なお、第4制御装置は、空燃比弱リッチ制御開始後において下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に変化した時点から反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの積算を開始し、一方、第1乃至第3制御装置のように、空燃比リーン制御開始時点からフィルタ再生制御時積算空気量tGaSLの積算を開始するように構成されてもよい。
同様に、第4制御装置は、空燃比リーン制御開始後において下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づく空燃比afdownが理論空燃比よりもリーン側の空燃比に変化した時点から反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの積算を開始し、一方、第1乃至第3制御装置のように、空燃比弱リッチ制御開始時点(フューエルカット復帰時点を含む。)から弱リッチ制御時積算空気量tGaSRの積算を開始するように構成されてもよい。
このように、第4制御装置(第4制御装置の空燃比制御手段)は、第1積算値tGaSRとしての反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHの積算開始時点(第1積算開始時点)を「フューエルカット復帰時点」以降において「下流側空燃比センサから出力された出力値Voxsが理論空燃比よりもリッチ側の空燃比(理論空燃比よりも所定空燃比だけリッチ側の空燃比)に相当する値に初めてなった時点」、即ち、「リッチ反転時点」に設定し(図24のステップ2415及びステップ2420を参照。)、その反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHが第1閾値RHth以上となったときに下流側触媒55が「上記還元状態」にあると判定する還元状態判定手段を備えている(ステップ2310及び図24を参照。)。
このリッチ反転時点は、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が実質的に「0」に到達した時点であって、下流側触媒55に過剰な還元成分が流入し始める時点である。従って、第4制御装置における反転後弱リッチ制御時積算空気量tGaSRHは、上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に関わらず、下流側触媒55へ流入した過剰な還元成分の積算量となる。この結果、第4制御装置は、下流側触媒55が還元状態に到達したか否かを精度良く判定することができる。
更に、第4制御装置(空燃比制御手段)は、第2積算値tGaSLとしての反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHの積算開始時点(第2積算開始時点)を、フィルタ再生制御の開始時点以降において下流側空燃比センサ67から出力された出力値Voxsが理論空燃比よりも所定値だけリーン側の空燃比に相当する値に初めてなった時点である「リーン反転時点」に設定している(図24のステップ2445及びステップ2450を参照。)。
前述したように、このリーン反転時点は、上流側触媒53の酸素吸蔵量OSA1が実質的にその最大酸素吸蔵量Cmax1に到達した時点であり且つ微粒子捕集フィルタ54内において微粒子が燃焼を実質的に完了した時点でもある。従って、反転後フィルタ再生制御時積算空気量tGaSLHは下流側触媒55に流入した過剰な酸化成分の量を上流側触媒53の最大酸素吸蔵量Cmax1に関わらず精度良く表すので、下流側触媒55に供給される「過剰な酸化成分」の量を所望の量に制御することができる。その結果、下流側触媒55が浄化できない量の窒素酸化物が下流側触媒55に流入することを回避できる。即ち、大気中に窒素酸化物が多量に放出される前の時点にてフィルタ再生制御を終了することができる。換言すると、窒素酸化物の放出量が増大しない範囲で微粒子捕集フィルタ54の再生を行うことができる。
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る内燃機関の制御装置は、
下流側触媒55が所定量の窒素酸化物を浄化することができる還元状態に到達したか否かを判定する還元状態判定手段(例えば、ステップ630、ステップ2310)と、
下流側触媒55が前記還元状態に到達していないと判定された場合、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりリッチ側の弱リッチ空燃比となるように同機関に供給される混合気の空燃比を制御するリッチ制御手段(例えば、ステップ640)と、
下流側触媒55が前記還元状態に到達したと判定された場合、前記機関に供給される混合気の空燃比の平均が理論空燃比よりリーン側となるように同機関に供給される混合気の空燃比を制御するリーン制御手段(例えば、ステップ660)と、
を備えている。
従って、窒素酸化物の排出量を増大させないようにしながら、微粒子捕集フィルタ54を再生することができる。なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態においては、第1積算値tGaSRが第1所定値(第1閾値)Rthより大きくなったとき、フィルタ再生制御を開始していたが、第1積算値tGaSRが第1所定値(第1閾値)Rthより大きく、且つ、前回のフィルタ再生制御完了時からの吸入空気量の積算値が所定値以上である場合又は前回のフィルタ再生制御完了時からの機関10の運転時間の積算時間が所定時間である場合に、フィルタ再生制御を実行するように構成されてもよい。
また、サブフィードバック制御は、例えば、特開2007−278186号公報に開示されているように下流側空燃比センサ67の出力値Voxsが下流側目標値に一致するように、上流側空燃比センサ66によって検出される空燃比を見かけ上補正するような態様であってもよい。また、特開平06−010738号公報に開示されているように、下流側空燃比センサ67の出力値Voxsに基づいて、上流側空燃比センサ66の出力値に基づいて作成される空燃比補正係数を変更する態様であってもよい。
10…内燃機関(ガソリンエンジン)、20…シリンダブロック部、25…燃焼室、34…排気ポート、39…インジェクタ、51…エキゾーストマニホールド、51a…枝部、51b…集合部、52…エキゾーストパイプ、53…上流側触媒、54…微粒子捕集フィルタ、55…下流側触媒、61…熱線式エアフローメータ、66…上流側空燃比センサ、67…下流側空燃比センサ(O2センサ)、70…電気制御装置、71…CPU。