JP4426179B2 - 多機能性プロテアーゼインヒビターおよびそれらの疾患治療における使用 - Google Patents
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Description
関連出願の相互参照
本出願は、2000年12月18日に出願された米国特許仮出願第60/256,699号および2001年11月20日に出願された米国特許仮出願第60/331,966号の利益を請求するものであり、これらはその全体が追加的に本願明細書に援用されている。
【0002】
技術分野
本発明は、プロテアーゼインヒビターの融合タンパク質、並びにこれらの融合タンパク質の製造および使用の方法、これらの融合タンパク質を含む医薬組成物およびキット、並びにこれらの融合タンパク質をコードしているポリペプチドに関する。
【0003】
発明の背景
プロテアーゼ/プロテアーゼインヒビターの不均衡は、ヒトの慢性疾患に共通の特徴である。プロテアーゼおよびそれらのインヒビターの不均衡が関与した疾患および病態の例は、リウマチおよび関節炎の他の形、腫瘍転移、腫瘍血管新生、歯周病、角膜、上皮および胃の潰瘍、骨粗鬆症、骨のページェット病、糸球体腎炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、強皮症、骨または組織の圧迫萎縮、コレステリン腫、神経細胞障害、虚血性-再灌流による臓器損傷(心筋無酸素症の局所的後遺症を含む)、マラリア、慢性創傷治癒、シャーガス病、寄生体による眼感染症、ウイルス感染症(例えば、HIV、ヘルペス)、細菌感染症、アルツハイマー症、高血圧、敗血症、急性白血病、栄養障害型表皮水疱症、ならびに筋ジストロフィー症を含む。
【0004】
特に、プロテアーゼ/プロテアーゼインヒビターの不均衡は、多くの呼吸器系疾患において注目される。その古典的かつ典型的例は、α1-アンチトリプシン(AAT)欠損症であり、ここでは遺伝的要因により決定される血流中の低レベルのAAT(α1-プロテアーゼインヒビターとしても公知)が、肺のAATレベルの低下につながっている。その結果、タンパク質分解酵素である好中球エラスターゼに対する阻害能の低下となる。この損なわれたエラストリシス性(elastolytic)の活性を制御する能力、および結果としての肺エラスチンの分解は、必然的に、多くのAAT-欠損症個体における肺気腫の早期発症につながる。
【0005】
プロテアーゼ/プロテアーゼインヒビター不均衡が疾患進行に顕著に関与することが示されているその他の呼吸器系疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、および呼吸窮迫症候群である。喘息においては、マスト細胞由来のプロテアーゼであるトリプターゼおよびキマーゼが、アレルギー性刺激に対する炎症反応に関与することが示されている。同様に、AATによる気道過敏症の阻害は、この状態で可能性のある寄与因子として、好中球エラスターゼ、カテプシンG、およびカリクレインのような、AATのプロテアーゼ標的に関連している。
【0006】
上昇したレベルのいくつかのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が、ヒトCOPD、特に喫煙により誘導されたCOPDにおいて示されている。メタロプロテアーゼおよびエラスターゼは、肺コラーゲンおよびエラスチンの分解に関与するにもかかわらず、それらの肺弾性低下への関連した寄与、その結果としての肺気腫の発生は、現時点では完全には理解されていない。興味深いことに、喫煙に関連した気腫のトランスジェニックマウスモデルは、この種における喫煙に関連したCOPDの発症の重要要因としてのマウスメタロエラスターゼ(ヒトMMP-12と同等)が関連している。
【0007】
プロテアーゼインヒビターは、HIVの治療にも関連している。HIV核酸によりコードされた主要なタンパク質のひとつは、プロテアーゼであり、今日最も有効なHIV治療法のひとつは、プロテアーゼインヒビターの使用である。
【0008】
前記プロテアーゼとそれらのインヒビターの間の平衡に関する完全な理解は、マトリックスメタロプロテアーゼインヒビターが切断が可能であり、これによりAATを失活させ、逆に好中球エラスターゼは内因性組織性メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)を失活することができるという知見により、更に一層複雑になっている。肺の主要病原体であるPseudomonas aeruginosaは、多くのCF個体の肺においてコロニー形成するが、これはAATを分解するメタロエラスターゼを分泌し、CFに関連した肺損傷の多くにつながっている。
【0009】
プロテアーゼ/プロテアーゼインヒビター不均衡が関連した多くの疾患の発生率は増大しつつあり;例えば米国における気腫発生率は、1982年と比較して40%以上増えている。これらの疾患の緩和には進歩があるが、現時点で完全に満足できる治療はない。従って、症状を軽減するおよび/または疾患進行を遅延もしくは停止する改善された治療法が必要である。本発明は、これらの必要性に対処している。
【0010】
発明の概要
本発明は、プロテアーゼインヒビター、もしくはプロテアーゼインヒビターの機能活性部分の融合タンパク質、例えばα1-アンチトリプシン(AAT)および第二のプロテアーゼインヒビターを含む融合タンパク質などを提供する。一部の態様において、本発明は、AATおよび分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)、またはAATおよび組織性メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)を含む融合タンパク質に加え、これらの融合タンパク質の製造および使用の方法を提供する。このような融合タンパク質は、単独の存在物でプロテアーゼ阻害の広いスペクトルを提供するという利点を有し、これは前述の病態の多くにおいて、並びに望まぬプロテアーゼ活性の制御が望ましいような組織調製、抽出、分析および他の手法などにおいて、1種より多いプロテアーゼが存在する状態において有用である。
【0011】
ある局面において、本発明は、AAT(それらの機能活性部分を含む)および他のプロテアーゼインヒビター(それらの機能活性部分を含む)を含む融合タンパク質、この融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、融合タンパク質の作成法、並びにこの融合タンパク質を含有する医薬組成物を特徴としている。ある局面において第二のプロテアーゼインヒビターは、セリンプロテアーゼインヒビターであり、別の局面において第二のプロテアーゼインヒビターは、組織性メタロプロテアーゼインヒビターであり、更なる局面において第二のプロテアーゼインヒビターは、システイニルプロテアーゼのインヒビターであり、より更なる態様において第二のプロテアーゼインヒビターは、アスパルチルプロテアーゼインヒビターである。
【0012】
別の局面において、本発明は、SLPI、またはその機能活性部分に融合した、AAT、またはその機能活性部分を含む融合タンパク質を特徴としている。この局面に関連して、本発明は、AATおよびSLPI、またはそれらの機能活性部分の融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチド、このようなポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、このような融合タンパク質の作成法、このような融合タンパク質を含む医薬組成物を含む。
【0013】
更に別の局面において、本発明は、AAT、またはそれらの機能活性部分、並びにTIMP、またはそれらの機能活性部分を含む融合タンパク質を特徴としている。この局面の態様は、TIMP部分がTIMP-1、またはそれらの機能活性部分である融合タンパク質を含む。この局面に関連して、本発明は、このようなAATおよびTIMP、またはそれらの機能活性部分の融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチド、これらのポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、この融合タンパク質の作出法、並びにこの融合タンパク質を含有する医薬組成物を含む。
【0014】
更なる局面において、本発明は、AATの約1〜約394位のアミノ酸、およびSLPIの約1〜約107位のアミノ酸を含む融合タンパク質を特徴としている。本発明のこの局面のひとつの態様において、AATの約1〜約394位のアミノ酸のカルボキシ末端は、SLPIの約1〜約107位のアミノ酸のアミノ末端に結合されている(すなわち、この融合タンパク質は、そのアミノ末端からそのカルボキシ末端へ、AATの約1〜約394位のアミノ酸に融合したSLPIの約1〜約107位のアミノ酸を含む)。別の態様において、SLPIの約1〜約107位のアミノ酸のカルボキシ末端は、AATの約1〜約394位のアミノ酸のアミノ末端に結合している(すなわち、融合タンパク質は、そのアミノ末端からそのカルボキシ末端へ、SLPIの約1〜約107位のアミノ酸に融合したAATの約1〜約394位のアミノ酸を含む)。関連した局面において、本発明は、前記融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを特徴としている。更にこの融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、この融合タンパク質の作成法、およびこの融合タンパク質を含有する医薬組成物も含まれる。
【0015】
更なる局面において、本発明は、α1-アンチトリプシンの約1〜約394位のアミノ酸;および、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約184位のアミノ酸を含む融合タンパク質を特徴としている。本発明のこの局面のひとつの態様において、AATの約1〜約394位のアミノ酸のカルボキシ末端は、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約184位のアミノ酸のアミノ末端に結合されている(すなわち、この融合タンパク質は、そのアミノ末端からそのカルボキシ末端へ、AATの約1〜約394位のアミノ酸に融合した組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約184位のアミノ酸を含む)。別の態様において、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約184位のアミノ酸のカルボキシ末端は、AATの約1〜約394位のアミノ酸のアミノ末端に結合されている(すなわち、この融合タンパク質は、そのアミノ末端からそのカルボキシ末端へ、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約184位のアミノ酸に融合したAATの約1〜約394位のアミノ酸を含む)。関連した局面において、本発明は、前記融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを特徴としている。更にこの融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、この融合タンパク質の作成法、並びにこの融合タンパク質を含有する医薬組成物も含まれる。
【0016】
更に別の局面において、本発明は、α1-アンチトリプシンの約1〜約394位のアミノ酸;および、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約126位のアミノ酸を含む融合タンパク質を特徴としている。本発明のこの局面のひとつの態様において、AATの約1〜約394位のアミノ酸のカルボキシ末端は、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約126位のアミノ酸のアミノ末端に結合されている(すなわち、この融合タンパク質は、そのアミノ末端からそのカルボキシ末端へ、AATの約1〜約394位のアミノ酸に融合した組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約126位のアミノ酸を含む)。別の態様において、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約126位のアミノ酸は、AATの約1〜約394位のアミノ酸のアミノ末端に結合されている(すなわち、この融合タンパク質は、そのアミノ末端からそのカルボキシ末端へ、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約126位のアミノ酸に融合したAATの約1〜約394位のアミノ酸を含む)。関連した局面において、本発明は、前記融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを特徴としている。更に、この融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞、この融合タンパク質の作成法、並びにこの融合タンパク質を含有する医薬組成物も含まれる。
【0017】
より更に別の局面において、本発明は、α1-アンチトリプシンの約1〜約394位のアミノ酸;および、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1の約1〜約127位のアミノ酸を含む融合タンパク質を特徴とし、ここでα1-アンチトリプシンポリペプチドは、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1ポリペプチドに、組織性メタロプロテアーゼインヒビター-1ポリペプチドのアミノ酸127とα1-アンチトリプシンポリペプチドのフリーシステイン残基の間のジスルフィド結合を介して、共有結合により連結されている。本発明のこの局面のひとつの態様において、α1-アンチトリプシンポリペプチドのフリーシステイン残基は、配列番号:2の232位である。
【0018】
プロテアーゼ活性のin vitro(例えば、生物学的試料内)またはin vivo(例えば、疾患または状態がプロテアーゼ/プロテアーゼインヒビター不均衡および/またはプロテアーゼ活性に関連した炎症反応に関連しているような疾患および状態の治療において)における阻害を含む、本発明のプロテアーゼインヒビター融合タンパク質を使用する方法も、本発明の範囲内である。本発明のこの局面のひとつの態様は、プロテアーゼを本発明の融合タンパク質のひとつと接触することにより、プロテアーゼ活性を阻害する方法を含む。更なる態様において、プロテアーゼ活性は、気腫、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、中耳炎、および外耳炎からなる群より選択される障害に関連している。更なる別の態様において、プロテアーゼ活性は、HIV感染症に関連している。ある態様において、融合タンパク質は、プロテアーゼを有する個体へ融合タンパク質を投与することにより、そのプロテアーゼと接触される。
【0019】
別の本発明の方法の局面は、本発明の融合タンパク質の有効量を個人に投与することを含む、望ましくないプロテアーゼ活性が関連している疾患または障害に罹患したまたはそれらのリスクのある個体を治療する方法である。この局面のひとつの態様において、個体は気腫に罹患している。本発明のこの局面の別の態様において、個体は喘息に罹患している。本発明のこの局面の更に別の態様において、個体は慢性閉塞性肺疾患に罹患している。本発明のこの局面のより更に別の態様において、個体は嚢胞性線維症に罹患している。本発明のこの局面の更に別の更なる態様において、個体は中耳炎または外耳炎に罹患している。
【0020】
本発明の別の局面は、本発明の融合タンパク質を含む組成物およびキットを提供する。本発明のこの局面のひとつの態様において、このキットは更に、融合タンパク質の使用に関する使用説明書を備える。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、α1-アンチトリプシン(AAT)および別のプロテアーゼインヒビタータンパク質の融合タンパク質、並びにプロテアーゼを阻害するためのこのような融合タンパク質の作成および使用の方法に関する。本発明の融合タンパク質の第二のプロテアーゼインヒビターは、セリンプロテアーゼのインヒビター、メタロプロテアーゼのインヒビター、システインプロテアーゼのインヒビター、またはアスパラギン酸プロテアーゼのインヒビターであることができる。ある態様において、第二のプロテアーゼインヒビターは、分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)である。別の態様において、第二のプロテアーゼインヒビターは、組織性メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)であり、好ましくはTIMP-1である。本発明は更に、これらの構築体をコードしているポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドを含むベクター、およびこのポリヌクレオチドを含む宿主細胞、更にはこの融合タンパク質の作成法にも関する。本発明は、プロテアーゼを阻害するためにこの融合タンパク質を使用する方法にも関する。このプロテアーゼは、in vitroに存在し、もしくはこれらは病理を伴う個体中に存在することがある。
【0022】
I. 定義
本願明細書において使用される「ポリヌクレオチド」は、いずれかの長さのヌクレオチドの高分子型であり、これはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはそれらのアナログを含む。用語「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド」は、本願明細書において互換的に使用される。用語「ポリヌクレオチド」は、二本鎖-、一本鎖-および三重らせん-分子を含む。特に記さないまたは必要でない限りは、本発明のあらゆる態様は、本願明細書において、ポリヌクレオチドは、二本鎖型および二本鎖型を形成することがわかっているまたは予想される2個の相補的一本鎖型の両方を包含している。
【0023】
ポリヌクレオチドの非限定的例は以下のものである:遺伝子または遺伝子断片、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝したポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、いずれかの配列の単離されたDNA、いずれかの配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含むことができる。プリンおよびピリミジンのアナログは、当該技術分野において公知であり、かつアジリジニルシトシン、4-アセチルシトシン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチル-アミノメチルウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、プソイドウラシル、5-ペンチニルウラシルおよび2,6-ジアミノプリンを含むが、これらに限定されるものではない。デオキシリボ核酸におけるチミン置換基としてのウラシルの使用も、ピリミジンのアナログ型とみなされる。
【0024】
ヌクレオチド構造の修飾が存在する場合は、これは、ポリマーの集成の前または後にもたらすことができる。ヌクレオチド配列は、非-ヌクレオチド成分により中断することができる。ポリヌクレオチドは、標識成分との複合によるなど、重合後に更に修飾することもできる。この定義に含まれる修飾の他の形は、例えば、「キャップ」、1個または複数の天然のヌクレオチドのアナログとの置換、例えば、非帯電の連結によるもの(例えば、メチルリン酸、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)および帯電した連結によるもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)のようなヌクレオチド内修飾、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リシンなど)のようなペンダント部分を含むもの、インターカレーション剤(例えば、アクリジン、プソラレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化力のある金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結(例えば、αアノマー性核酸など)を伴うものに加え、ポリヌクレオチド(複数)の未修飾型を含む。
【0025】
更に、通常糖に存在するヒドロキシル基のいずれかを、付加ヌクレオチドへの追加的連結を調製するために、ホスホン酸基、リン酸基との交換、標準の保護基による保護、または活性化することができるか、もしくは、固形支持体に複合することができる。5'および3'末端のOH基は、リン酸化されるか、もしくはアミンまたは1〜20個の炭素原子の有機キャップ基部分により置換される。他のヒドロキシルも、標準の保護基に誘導することができる。
【0026】
ポリヌクレオチドは、当該技術分野において一般に公知であるリボースまたはデオキシリボース糖のアナログ型も含むことができ、これは2'-0-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ-または2'-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、α-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロースもしくはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、および非塩基性(abasic)ヌクレオシドアナログ、例えばメチルリボシドを含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前述のように、1個または複数のホスホジエステル連結が、代わりの連結基と交換され得る。これらの代わりの連結基は、リン酸が、P(O)S(チオエート)、P(S)S(ジチオエート)、(O)NR2(アミデート)、P(O)R、P(O)OR'、COまたはCH2(ホルムアセタール)と交換されているような態様(ここで、各RまたはR'は、独立して、Hまたは置換もしくは未置換の任意にエーテル(-O-)連結を含むアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルである。)を含むが、これらに限定されるものではない。ポリヌクレオチド中の全ての連結が同一である必要はない。
【0028】
通常の糖および塩基が本発明の方法の適用において使用されるが、糖、プリンおよびピリミジンのアナログ型の置換は、ポリアミド骨格のような代わりの骨格構造であることができるので、最終生成物のデザインにおいて有利である。
【0029】
用語「組換え」ポリヌクレオチド(および同様の、組換えポリヌクレオチドの発現により作成された「組換えポリペプチド」)は、天然に生じないものであるか、または化学合成手段による2個の他方で分離された配列のセグメントの人工的組合せ、もしくは例えば遺伝子操作技術により、ポリヌクレオチドの単離されたセグメントの人工的操作により作成される。従って本願明細書において使用される用語「組換え」ポリヌクレオチドは、ゲノム、cDNA、半合成、または合成起源のポリヌクレオチドを意図し:これはその起源および操作により、(1)それが天然に会合しているポリヌクレオチドの全てまたは一部と会合せず、(2)それが天然に連結しているもの以外のポリヌクレオチドに連結し、もしくは(3)天然には生じない。
【0030】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本願明細書において互換的に、あらゆる長さのアミノ酸ポリマーを意味するように使用される。このポリマーは直鎖または分枝鎖であり、これは修飾されたアミノ酸を含み、かつこれは非-アミノ酸により中断することができる。これらの用語は、天然に、または;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、リピド化、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、ユビキチン化、PEG化またはいずれか他の操作もしくは修飾、例えば標識成分との複合のような介入により修飾されたアミノ酸ポリマーも包含している。更にこの定義には、例えば、1個または複数のアミノ酸アナログ(例えば非天然のアミノ酸などを含む)を含むポリペプチドに加え、他の修飾も含まれる。このような修飾は周知であり;例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、第1-3巻、Sambrookら編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press社(1989)、またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F. Ausubelら編集、Greene Publishing and Wiley-Interscience社:ニューヨーク(1987および定期的改訂)を含む。
【0031】
ポリヌクレオチドは、その天然の状態でまたは当業者に周知の方法により操作された時、これが転写および/または翻訳され、ポリペプチドを作出する場合に、ポリペプチドを「コードしている」と称される。
【0032】
「融合タンパク質」は、2種またはそれ以上の異なるタンパク質由来の領域を含む単独のポリペプチドである。これらの領域は、通常個別のタンパク質中にまたは個別に存在し、かつ融合タンパク質に集められている。これらは、他方のアミノ酸配列が終結するところで一方のアミノ酸配列が始まるように互いに連結されているか、またはこれらが通常は構成的タンパク質の一部ではないリンカーアミノ酸により連結される。これらは、アミド結合、ジスルフィド結合などを介し、いずれかの方法で連結することができる。融合タンパク質は、その構成的タンパク質または領域の1個よりも多いコピーを含むことができる。構成的タンパク質または領域は、タンパク質のアミノ酸配列の全体またはアミノ酸配列の一部を含むことができる。先の「タンパク質」の定義から明らかであるように、このタンパク質は分枝型であることができ;例えば、1個の鎖のひとつのアミノ酸側鎖は、別の鎖の別の末端アミノ酸の側鎖に、当該技術分野において公知の様々な方法(例えば、ジスルフィド結合形成)により連結することができる。あるいは、異なる鎖の非-末端アミノ酸も、側鎖間分子間結合(例えば、ジスルフィド結合)により連結され、分枝したタンパク質を形成し得る。
【0033】
「細胞株」または「細胞培養物」は、in vitroにおいて増殖または維持された細胞を意味する。細胞の子孫(descendant)は、(形態学的、遺伝子型または表現型のいずれかにおいて)親細胞と完全に同一ではないことが理解される。
【0034】
本願明細書において使用される用語「ベクター」は、それが連結された別のポリヌクレオチドを輸送することが可能なポリヌクレオチド分子を意味し、かつプラスミド、コスミドまたはウイルスベクターを含むことができる。この用語は、ポリヌクレオチド分子の細胞への挿入について主に機能するベクター、ポリヌクレオチドの複製について主に機能する複製ベクター、並びにDNAまたはRNAの転写および/または翻訳について機能する発現ベクターを含む。更に前述の機能の1種よりも多くを提供するベクターも含まれる。ベクターは、自律複製が可能であるか、または宿主DNAへ組込むことができる。ウイルスベクターは、例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスを含む。
【0035】
ベクターは、本発明の融合タンパク質をコードしている核酸を、宿主細胞における核酸の発現に適した形で含むことができる。好ましくは、組換え発現ベクターは、発現される核酸配列に機能可能に連結された1個または複数の調節配列を含む。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。調節配列は、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示するものに加え、組織-特異的調節および/または誘導配列を含む。発現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現のレベルなどの要因によって決まる。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入され、それにより、本願明細書に説明された核酸によりコードされた融合タンパク質またはポリペプチドを含む、タンパク質またはポリペプチドを産生することができる。
【0036】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞または真核細胞における本発明の融合タンパク質の発現のためにデザインすることができる。例えば、本発明のポリペプチドは、E. coli、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現ベクターを用い)、酵母細胞、培養物中の哺乳類細胞、またはトランスジェニック動物において発現され得る。適当な宿主細胞は、Goeddelの「Gene Expression Technology: Methods in Enzymology」185、Academic Press社、サンディエゴ、CA(1990)において更に考察されている。あるいは組換え発現ベクターは、in vitroにおいて、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用い、転写および翻訳することができる。
【0037】
原核細胞におけるタンパク質の発現は、融合または非-融合タンパク質のいずれかの発現を指示する構成的または誘導的プロモーターを含むベクターにより、E. coliにおいて最も頻繁に行われる。融合ベクターは、多くのアミノ酸を、それによりコードされたタンパク質へ、通常組換えタンパク質のアミノ末端に追加する。このような融合ベクターは典型的には、3種の目的に役立つ:1)組換えタンパク質発現の増大;2)組換えタンパク質の溶解性の増大;および、3)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することによる、組換えタンパク質の精製の補助。しばしば、タンパク質分解性の切断が、融合部分の接合部に導入され、かつ組換えタンパク質は、融合タンパク質を精製後、融合部分からの組換えタンパク質の分離が可能である。このような酵素、およびそれらのコグネイト認識配列は、Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを含む。典型的融合発現ベクターは、標的組換えタンパク質へ、各々、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを融合した、pGEX(Pharmacia Biotech社;Smith, D. B.およびJohnson, K. S.、Gene、67:31-40 (1988))、pMAL(New England Biolabs社、ビバリー、MA)およびpRIT5(Pharmacia社、ピスカタウェイ、NJ)を含む。
【0038】
E. coliにおける組換えタンパク質発現を最大化する方法は、組換えタンパク質をタンパク質分解性に切断する能力が損なわれた宿主細菌におけるタンパク質の発現である(Gottesman, S.、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、185、Academic Press社、サンディエゴ、CA、119-128(1990))。別の戦略は、各アミノ酸に関する個別のコドンは、E. coliにおいて優先的に利用されるように、発現ベクターへ挿入される核酸の核酸配列を変更するものである(Wadaら、Nucleic Acids Res.、20:2111-2118 (1992))。このような本発明の核酸配列の変更は、標準のDNA合成技術により実行することができる。
【0039】
この融合タンパク質発現ベクターは更に、本願明細書に説明されている例の酵母発現ベクターであることもでき、昆虫細胞における発現のためのベクター、例えばバキュロウイルス発現ベクター、または培養物中またはトランスジェニック動物の哺乳類細胞における発現に適したベクターであることもできる。Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、およびKluyverornyces lactisのような酵母におけるタンパク質発現法は、当該技術分野において周知である。
【0040】
哺乳類細胞が使用される場合、発現ベクターの制御機能は、ウイルス調節エレメントにより提供されることが多い。例えば、常用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来している。
【0041】
別の態様において、組換え哺乳類発現ベクターは、優先的に特定の細胞型に、核酸の発現を指示することが可能である(例えば、組織-特異的調節エレメントは、核酸発現のために使用される)。適当な組織-特異的プロモーターの非-限定的例は、アルブミンプロモーター(肝-特異的;Pinkertら、Genes Dev.、1:268-277 (1987))、リンパ球-特異的プロモーター(CalameおよびEaton、Adv. Immunol.、43:235-275 (1988))、特にT細胞受容体プロモーター(WinotoおよびBaltimore、EMBO J.、8:729-733 (1989))および免疫グロブリン(Banerjiら、Cell、33:729-740 (1983);QueenおよびBaltimore、Cell、33:741-748 (1983))、神経-特異的プロモーター(例えば、神経線維プロモーター;ByrneおよびRuddle、Proc. Natl. Acad Sci. USA、86:5473-5477 (1989))、膵-特異的プロモーター(Edlundら、Science、230:912-916 (1985))、および乳腺-特異的プロモーター(例えば、ミルクホエープロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願第264,166号)を含む。例えば、マウスホックス(hox)プロモーター(KesselおよびGruss、Science、249:374-379 (1990))およびα-フェトタンパク質プロモーター(CampesおよびTilghman、Genes Dev.、3:537-546 (1989))のような、発現が調節されたプロモーターも包含されている。
【0042】
「宿主細胞」は、ベクター(複数)についてまたはポリヌクレオチド分子および/もしくはタンパク質の取込みについてレシピエントであることができるかもしくはレシピエントであるような個別の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれかであることができる。例えば、本発明の融合タンパク質は、E. coliのような細菌細胞、昆虫細胞、酵母または哺乳類細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞など)において発現することができる。他の適当な宿主細胞が当業者に公知である。宿主細胞は、単独の宿主細胞の子孫を含み、かつこの子孫は、自然の、偶発的または故意の突然変異のために、当初の親細胞と必ずしも完全に同じではない(全DNA相補体の形態またはゲノムにおいて)。宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド(複数)によりin vivoにおいてトランスフェクションされた細胞を含む。
【0043】
ベクターDNAは、通常の形質転換またはトランスフェクション技術により、宿主細胞へ導入することができる。本願明細書において使用される用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞へ導入することに関する様々な当該技術分野において認められた技術を意味することが意図されており、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、リポフェクション、または電気穿孔を含む。「リーダー配列」としても知られている「シグナル配列」は、小胞体のような細胞膜へおよび細胞膜を通るよう新たに合成された分泌タンパク質または膜タンパク質を指令する短いアミノ酸配列である。シグナル配列は、典型的にはポリペプチドのN-末端部分であり、かつこのポリペプチドが膜を通過した後に切断される。
【0044】
本願明細書において使用される「治療」とは、臨床の結果を含む、恩恵のあるまたは望ましい結果を得るための方法である。本発明の目的に関して、恩恵のあるまたは望ましい臨床の結果は、検出できるか否かに関わらず、1個または複数の症状の緩和、疾患の程度の軽減、疾患の安定化された(すなわち、増悪されない)状態、疾患の拡大(すなわち、転移)の防止、疾患の発症または再燃の防止、疾患進行の遅延または緩徐化、病態の緩和または小康、並びに寛解(部分または全身のいずれか)を含むが、これらに限定されるものではない。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存期間と比べて延長された生存期間も意味することができる。
【0045】
「有効量」は、恩恵のあるまたは望ましい臨床結果に作用するのに十分な量である。有効量は、1回または複数回投与により投与することができる。治療に関して、本発明の融合タンパク質の「有効量」は、プロテアーゼ-関連病態の進行を小康、緩和、安定化、逆行、または緩徐化するのに十分な量である。「有効量」は、疾患または障害の治療のために単独でまたは1個または複数の物質と組合せて使用される融合タンパク質についてであることができる。
【0046】
「個体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類は、家畜、狩猟用動物(sport animal)、霊長類およびペットを含むが、これらに限定されるものではない。
【0047】
「ひとつ(a, an)」および「これ(the)」は、単数または複数を含む。
「備える(comprising)」は、「含む(including)」を意味する。
【0048】
II. 融合タンパク質およびそれらの構築
本発明の実践は、特に記さない限りは、当該技術分野の範囲内である、分子生物学(組換えDNA技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の通常の技術を利用する。このような技術は、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(Sambrookら、1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J. Gait編集、1984);「Animal Cell Culture」(R.I. Freshney編集、1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press社);「Handbook of Experimental Immunology」(D.M. WeiおよびC.C. Blackwell編集);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J M MillerおよびM.P. Cabs編集、1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M. Ausubelら編集、1987);「PCR: The Polymerase Chain Reaction」(Mullisら編集、1994);「Current Protocols in Immunology」(J.E. Coliganら編集、1991)のような参考文献において完全に説明されている。
【0049】
これらの技術は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの作成において利用可能であり、それ自体、これらの発明の局面が企図される場合に考慮されるべきものである。個々の局面について特に有用なシステムを以下に考察する。
【0050】
本発明の融合タンパク質は、一般に活性成分、例えばAATおよびSLPIの融合タンパク質を参照し言及している。これらの参考文献は、様々な態様、例えば機能活性部分などを含有する融合タンパク質に言及していることは理解される。
【0051】
タンパク質およびヌクレオチド。本発明の組成物は、融合タンパク質およびこれらの融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドを含む。この融合タンパク質は、AATまたはそれらの機能活性部分および別のプロテアーゼインヒビターまたはそれらの機能活性部分を含む。
【0052】
ヒトAATをコードしているDNA配列(表1)およびヒトAATのアミノ酸配列(表2)は、各々、配列番号:1および2として列記される。AATおよび他のプロテアーゼインヒビターの機能活性部分は、当該技術分野において公知であり、かつ本発明の融合タンパク質において使用することができる。更に、機能活性部分の活性を評価するアッセイ(単独またはより大きい配列の状況のいずれかにおいて)は、公知である。ヒトAATは、本発明にとって好ましい形であり、未変性のアミノ酸配列は、最も好ましい形である。しかし、他の種からの配列を使用することができる。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
AATに加え多くのプロテアーゼインヒビターが当該技術分野において説明されており、アミノ酸配列がわかっているいずれかのプロテアーゼインヒビター(または機能活性部分)を、本発明のAATのパートナーとして使用することができる。(例えば、Aviles, F.編集、「Innovations in proteases and their inihibitors」、W.deGruyter、ベルリン、ニューヨーク、1993;Barrett, A.J.、およびSalvesen,G編集、「Proteinase Inhibitors」、Elsevier、アムステルダム、1986;Bode, W.、およびHuber, R.、「Natural protein proteinase inihibitors and their interaction with proteinases」、Eur. J. Biochem.、204:433-451 (1992);Bode, W.、およびHuber, R.、「Proteinase-protein inhibitor interactions」、Fibrinolysis、8, 補遺1:161-171 (1994)を参照のこと、これらは全て本願明細書に援用されている)。
【0058】
当業者には、未変性の配列は、機能的に活性があるタンパク質にとって必ずしも必要ではないことは容易に理解されるであろう。例えば、望ましい機能性を維持しているタンパク質の一部を使用することができ;本発明のタンパク質の場合、これは一般に1個または複数のプロテアーゼを阻害することが可能なタンパク質の単独または複数のドメインである。必要な機能性が存在する限りは、このような配列を使用することができ、追加の配列を提供することができる。この機能性は、その未変性のタンパク質と同程度高い必要はなく、従って場合によっては、未変性のタンパク質と比べて、減少されるか、同じであるか、または増強されることさえでき、かつ融合タンパク質の状況において、その機能性は一般に評価されることが理解される。
【0059】
加えて、置換、欠失、挿入、翻訳後修飾およびアミノ酸アナログの使用を含むアミノ酸変化は、そのタンパク質の生物学的または免疫学的活性を喪失または顕著に低下することなく、未変性のタンパク質または未変性のタンパク質の一部において行うことができることは、当該技術分野において周知である。1個のアミノ酸を、同じ電荷または疎水性の別のものと置換することができる。別のアミノ酸は、そのタンパク質の機能を著しく変更することなく、異なる電荷または疎水性のアミノ酸と置換することができる。タンパク質の機能を未変性、または野生型タンパク質と比べて増強する変異型の使用も企図されている。置換に加え、タンパク質の全部分が、そのタンパク質の基本的生物学的機能を喪失または顕著に影響を及ぼすことなく、欠失され得るか、もしくは余分なアミノ酸が、その機能を廃絶または顕著に影響を及ぼすことなく挿入される。このような変化は、進化により生じる変化に類似しており、アミノ酸配列が異なるふたつのタンパク質の類似性の程度は、PearsonおよびLipmanの論文(Pearson, W.R.およびLipman, D.J.、Proc. Natl. Acad. Sci, USA、85:2444-2448 (1998))に説明されたような定量的分析法により決定することができ、これはアミノ酸配列の相同性に加え、保存された機能を共有しているタンパク質の進化のファミリーにおいて頻発することがわかっているアミノ酸置換も含む。
【0060】
本発明において、プロテアーゼインヒビターの「機能活性部分」は、プロテアーゼを阻害し、かつ少なくとも1種のアミノ酸型、タンパク質の未変性型または未変性型の一部において同じまたは異なるアミノ酸配列を有するタンパク質である。アミノ酸配列が未変性型と異なる場合、機能活性部分は、それでもなお、例えば、前記PearsonおよびLipmanの比較アルゴリズム、または他の当該技術分野において許容された比較により定義された未変性の配列またはそれらの一部と、同一種の他の天然のポリペプチドのアミノ酸配列よりもより大きい類似性を有する。例えば、AATの機能活性部分は、好中球エラスターゼ、カテプシンG、および/またはカリクレインを阻害するポリペプチド、並びに例えばPearsonおよびLipmanのアルゴリズムにより算出されたように、未変性のAAT配列またはその一部と同じであるか、もしくは未変性のAAT配列またはその一部に、他の未変性のヒトタンパク質よりもより類似しているアミノ酸配列を有するポリペプチドである。このような未変性のタンパク質の機能活性部分は、タンパク質の「アナログ」(例えば、「SLPIアナログ」)と称されることが多く、これらふたつの用語は、本願明細書において類義語である。
【0061】
プロテアーゼインヒビターの機能活性部分を含む融合タンパク質は、付加的配列を含むことができる。例えば、C-またはN-末端でのポリペプチド鎖への付加は、例えば、細胞外分泌のためのタンパク質の標的化により、精製を促進するのに有用であり(例えば、米国特許第4,870,008号参照);このような付加は一般に、シグナル伝達機能が実現された後に切断され、その結果これは、そのタンパク質DNAの一部であるが、最終タンパク質の一部ではない。このような付加は、とりわけ、融合タンパク質のプロテアーゼインヒビターポリペプチドの間の配列のように、本発明に含まれ得る。
【0062】
プロテアーゼの各クラスは、プロテアーゼインヒビターのそれ自身のクラスを有する。従って、セリンプロテアーゼインヒビター、メタロプロテアーゼインヒビター、システインプロテアーゼインヒビター、およびアスパラギン酸プロテアーゼインヒビターがある。全て公知の天然のプロテアーゼインヒビターは、いくつかの微生物により分泌されるものを除いて、タンパク質である。本発明は、タンパク質プロテアーゼインヒビターを包含している。プロテアーゼそれ自身同様、これらのインヒビターは、高度に保存された領域を有し、かつクラス内でメンバー毎に多大な相同性を有することが多い。
【0063】
セリンプロテアーゼインヒビターは、標準的(canonical)インヒビター、非-標準的インヒビター、およびセルピンを含む(例えば、Otlewski, J.、Krowarsch, D.、およびApostoluk, W.、「Protein inhibitors of serine prroteases」、Acta Biochim Polonica、46:531-565 (1999)を参照のこと)。標準的インヒビターは、基質結合部位においてプロテアーゼに結合し、かつそれらの阻害機序は、理想的基質のそれに類似している。非-標準的インヒビターは、平行β-プリーツシートを形成するプロテアーゼ結合する阻害性N-末端を含む。血漿中の主要なプロテアーゼインヒビターであるセルピンは、標準的インヒビターに類似した様式で結合するが、それらの作用機序は、単ペプチド結合の切断に関連している。セルピンは、370-390残基の保存されたドメインを伴う単鎖からなるインヒビターのスーパーファミリーである(Potemka, J.、Korzus, E.、およびTravis, J.、「プロテイナーゼインヒビターのセルピンスーパーファミリー:構造、機能および調節」、J. Biol. Chem.、269:15957-15960 (1994)参照)。
【0064】
AATおよびSLPIは両方共、セリンプロテアーゼインヒビターである。AATは、広範に研究されており、かつそのタンパク質のアミノ酸配列は、Carrellら(Nature、298:329-334 (1982))により報告されている。このタンパク質は、酵母における組換え法により作出される;例えば、Brakeら、米国特許第4,752,576号参照のこと。AATの主要な生理的プロテアーゼ標的は、好中球エラスターゼ、カテプシンG、マスト細胞キマーゼ、およびカリクレインを含む。AATの機能活性部分は、本発明においても使用することができ、例えばこれらは、米国特許第6,068,994号および第4,732,973号、並びにA. Herczの論文「α-1アンチトリプシンにおけるタンパク質分解性切断および微小不均一性」、Biochem. Biophys. Res. Comm.、128:199-203 (1985)に説明されている。
【0065】
ヒトSLPIのDNA配列およびアミノ酸配列は、Heinzelら(Eur. J. Biochem.、160: 61-675 (1987))により報告されており、各々、配列番号:3および配列番号:4に示す(表3および4参照)。更にいくつかの特許が、SLPI、その核酸、および/またはSLPIの機能活性部分を開示しており(例えば、米国特許第4,760,130号;第5,464,822号;第4,845,076号;第5,633,227号;第5,851,983号;第5,871,956号;第5,900,400号;第6,017,880号;および、第6,291,662号参照のこと)、これらは本発明において使用することができる。このような機能活性部分を使用し、未変性の分子が阻害する1種または別のプロテアーゼに対するより注目されるべき分子の阻害活性を調節することができる。SLPIの主要なプロテアーゼ標的は、好中球エラスターゼ、マスト細胞キマーゼおよびトリプターゼ、並びにキモトリプシンである。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
本発明の融合タンパク質において、AAT-含有配列は、SLPIのような第二のプロテアーゼインヒビター(または機能活性部分)のN-末端へC-末端側に(terminally)結合することができるか、またはSLPIは、AATのN-末端へC-末端側に融合することができる。融合タンパク質のこれら2種のタンパク質の融合は、単純なペプチド結合によるか、またはそこには融合タンパク質の2種のタンパク質の間の融合連結を含む1個または複数の追加のアミノ酸が存在することができる。好ましい態様において、AATとSLPIの間にはメチオニンが存在する。本発明の融合タンパク質のひとつまたは複数の位置には、追加の配列(複数)が存在し得る。更に、各プロテアーゼインヒビター成分(例えば、AATおよび第二のプロテアーゼインヒビター)の相対的方向(relative orientation)は、C末端/N末端に関する一般的方向を包含し、かつこれは、成分の直接連結に加え、成分を連結している追加配列(複数)を包含していることが理解される。
【0069】
本発明のひとつの態様において、AATまたはそれらの機能活性部分は、メタロプロテアーゼインヒビター、またはそれらの機能活性部分に連結されている。メタロプロテアーゼの中の、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、多くの正常なおよび生理的な条件において特に重要であることがわかっている。コラゲナーゼ、ゼラチナーゼおよびストロメライシンを含むMMPは、プロペプチド、アミノ末端ドメイン、フィブロネクチン-様ドメイン、亜鉛-結合ドメイン、およびC-末端ドメインを伴う類似した構造を有する。加えて一部のメンバーは、膜貫通ドメインおよびα2Vコラーゲン-様ドメインを組込んでいる。これらのMMPは、全ての結合組織に存在する、マトリックス組織性メタロプロテアーゼインヒビター、またはTIMPにより阻害される。ヒトには4種のTIMPがわかっており、これはTIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、およびTIMP-4と称され、これらは、コンセンサス配列と配列相同性を共有している。これらのTIMP(機能的活性断片、変異型などを含む)は全て、本発明に包含されている。TIMP-1は、コンセンサス配列と43%相同であり、TIMP-2は62%相同であり、TIMP-3は56%相同であり、およびTIMP-4は61%相同である。4種のヒトTIMP全てのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列が以下のように特徴付けられる:TIMP-1 (Dochertyら、Nature、318:66-69 (1985))、そのDNA配列およびアミノ酸配列は、各々、配列番号:5および6に示している(表5および6参照);TIMP-2 (Booneら、Proc. Natl. Acad. Sci.、87:2800-2804)、TIMP-3 (Wildeら、DNA Cell Biol.、13:711-718);TIMP-4 (Hawkinsら、米国特許第5,643,752号)。これらのTIMPは、それらのアミノ酸配列の相同性を基にした単独のクラスと考えられ、事実、各々、12個のシステインおよび6個のジスルフィド結合を含み、それらはメタロプロテアーゼ阻害能を有し、かつメタロプロテアーゼ中の金属イオンと相互作用するVIRAKモチーフが存在している。これらのTIMPのプロテアーゼ阻害活性には、異なる部分と重複する部分の両方がある。TIMP-1は、活性化された間質細胞コラゲナーゼ、92kDa IV型コラゲナーゼ、およびストロメライシンを阻害し、TIMP-2は、ゼラチナーゼAおよびBに加え、72kDA IV型コラゲナーゼを阻害し、TIMP-3は、コラゲナーゼ1、ストロメライシン、およびゼラチナーゼAおよびBを阻害する。TIMP-4は、ゼラチナーゼおよびコラゲナーゼを阻害するように見える。
【0070】
【表7】
【表8】
【0071】
TIMPの完全な構造は、メタロプロテアーゼ阻害に関して必ずしも必要ではない。例えば、メタロプロテアーゼに対するそれらの阻害活性を保持するTIMP-2の機能活性部分(「TIMP-2アナログ」と称されることが多い)が、調製されている(Willenbrockら、Biochemisty、32:4330-4337 (1993)参照)。この分子の最初の3個のループのみを含むTIMP-1の部分配列は、マトリックスメタロプロテアーゼを阻害することが可能である(注意:用語「メタロプロテアーゼ」および「メタロプロテイナーゼ」は同義であり、かつ両方とも文献においてこれらの酵素について言及する場合に使用される;本発明者らは、一貫性を保つために、本願明細書において「メタロプロテアーゼ」のみを使用する。)。TIMP分子のN-末端は、阻害活性が認められ、かつこの阻害の機序は、いくつかの特異的アミノ酸配列に関連しているように思われる場所である(例えば、Murphy, G.、Houbrechts, A.、Cockett, M.I.、Williamson, R.A.、O'Shea, M.、およびDocherty, AJP、「TIMPのN-末端ドメインはメタロプロテアーゼ活性を保持する」、Biochemistry、30:8097-8102 (1991);Woessner, J.、「結合組織リモデリングにおけるマトリックスメタロプロテアーゼおよびそれらのインヒビター」、FASEB J、5:2145-2154 (1991)、並びに欧州特許公開第0648838 A1号「組織性メタロプロテアーゼインヒビター3型(TIMP-3)」、SilbigerおよびKoski)。本発明の一部の態様の構築のためのひとつの好ましいTIMP-1のN-末端断片は、未変性型の最初の126個のN-末端アミノ酸である。構築体の作出において、この断片は、開始メチオニンと共に使用されることが多く、従って127個のアミノ酸を含み(開始メチオニン+TIMP-1のN-末端1-126位のアミノ酸);この断片は、N-TIMP 1-127と称される(配列番号:22および表30参照)。本発明の他の態様の構築のためのTIMP-1の別の好ましいN-末端断片は、未変性型の最初の127個のN-末端アミノ酸である。この断片のアミノ酸127は、フリーのシステインを含み、従ってジスルフィド結合形成に参加するために利用でき、これは本発明の融合タンパク質の構築法のひとつである。構築体の作成において、この断片は、開始メチオニンと共に使用されることが多く、従って128個のアミノ酸を含み(開始メチオニン+TIMP-1のN-末端1-127アミノ酸);この断片は、N-TIMP 1-128と称される(配列番号:24および表32参照)。
【0072】
本発明のAAT-TIMP融合タンパク質において、AATは、TIMPのN-末端にC-末端側に連結することができるか、またはTIMPは、AATのN-末端にC-末端側で融合することができる。この融合タンパク質の2種のタンパク質の融合は、単純なペプチド結合によるか、またはそこには融合タンパク質の2種のタンパク質の間の融合連結を含む1個または複数の追加のアミノ酸が存在することができる。
【0073】
システインプロテアーゼは、シスタチン、ステフィン、およびキニノゲンにより阻害される。シスタチンおよびステフィンは、5個の鎖状の非平行のβ-プリーツシートにより取り囲まれたα-ヘリックスからなり、このプロテアーゼの活性部位と相補的である楔(wedge)を形成している。β-プリーツシートの片端は、配列QVVAG(配列番号:11)を持つ高度に保存されたβ-ヘアピンループである(Barrettら、Proteinase inhibitors、(Barret, A.J.およびSalvesen, G.編集)、515-569頁、Elsevier、アムステルダム、1986、並びにTurk, V.およびBode, W.、FEBS Lett.、285:213-219 (1991)参照)。本発明のひとつの態様は、シスタチン、ステフィン、およびキニノゲンまたはそれらの機能活性部分に連結した、AATまたはそれらの機能活性部分である。
【0074】
アスパルチルプロテアーゼは、HIVアスパルチルプロテアーゼ、レニン(高血圧に関連した)、ペプシン、カテプシンD(腫瘍転移に関与)、およびアスパルチルヘモグロビナーゼ(aspartyl hemoglobinase)(マラリア寄生体由来)を含む。
【0075】
HIVプロテアーゼは、ウイルス成熟の最終段階において、ビリオンコアの機能性タンパク質へとポリタンパク質前駆体を切断する。その阻害は、HIVおよびAIDS治療の主要な標的である(Huof, J. R.、「HIVプロテアーゼ:AIDSの新規化学療法標的」、J. Med. Chem.、34:2305-2314)。リトナビル、クリキシバン、およびサキナビルを含むいくつかのHIVプロテアーゼインヒビターが、FDAによりHIV治療のために認可されている。カテプシンDは、通常細胞内の分解または食作用を受けたタンパク質に関連した、リソソームタンパク質である。しかしこれは多くの疾患に関与している。例えばカテプシンDは、細胞外マトリックスを分解し、かつ癌細胞の新たな組織の転移および浸潤における回避(escape)を促進することができ、更にアルツハイマー症において認められるような病理学的脳の変化における物質であるように見える。上昇したレベルのカテプシンDが、アルツハイマー症患者の脳脊髄液中に認められ、かつこれはアミロイド-β-タンパク質前駆体の切断に関連している。マラリア寄生体アスパルチルプロテアーゼであるプラスメシンIおよびIIは、ヒトカテプシンDと高度に相同であり、この寄生体が栄養物として使用する生成物へのヘモグロビンの分解に必須である。これらのプロテアーゼのインヒビターは、感染したヒト赤血球の細胞培養物においてこの寄生体を殺傷する。レニンは、アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンに転換する腎を起源とする酵素であり、これは血圧のレニン-アンジオテンシン調節において重要な事象であり、最終的には強力な血管収縮物質であるアンジオテンシンIIを生成する。従って、レニンのインヒビターは、高血圧制御のための候補物質と長く考えられている。
【0076】
最もよく知られている天然のアスパルチルプロテアーゼインヒビターは、ペプスタチンであり、このペプチドは、最初に放線菌培養物から単離され、式イソバレリル-L-バリル-L-バリル-スタチル-L-アラニル-スタチン(配列番号:12)を有し、ここで「スタチン」は一般的でないアミノ酸(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ヘプタン酸である。ペプスタチンは、ペプシン、カテプシンDおよびレニンに対して活性がある。ペプスタチンに加え、様々なアスパルチルプロテアーゼを標的とした多くのプロテアーゼインヒビターが、デザインされかつ作成されているが、多くはペプスタチンの構造を基本にしている(米国特許第4,746,648号;Umezawa, H.ら、「ペプスタチン、Actinomycetesから産生された新規ペプシンインヒビター」、J. Antibiot (東京)、23:259-62 (1970);Morishima, H.ら、「ペプスタチンの構造」、J. Antibiot (東京)、23:263-5 (1970);Lin, TyおよびWilliams, HR.、「合成オリゴヌクレオチドによるカテプシンDの阻害」、J. Biol. Chem.、254:11875-83 (1979);Jupp, RAら、「様々なヒトアスパルチルプロテアーゼに対するスタチン-べーすのインヒビターの選択性」、Biochem. J.、265:871-8 (1990);Agarwal, NSおよびRich, DH、「スタチン含有基質アナログおよびペプスタチンアナログによるカテプシンDの阻害」、J Med. Chem.、29:2519-24 (1986);Baldwin, ETら、「ヒトカテプシンDの未変性および阻害型の結晶構造:リソソームターゲティングおよび薬物デザインにおける関わり」、Proc. Natl. Acad Sci., USA、90:6796-800 (1993);Francis, SEら、「アスパルチルヘモグロビナーゼの分子特性および阻害」、EMBO J、13:306-17 (1994)参照)。本発明のひとつの態様は、ペプスタチンのようなアスパルチルプロテアーゼインヒビターまたはそれらの機能活性部分に連結されたAATまたはそれらの機能活性部分である。
【0077】
本発明の融合タンパク質、ポリヌクレオチド、および宿主細胞の作成 通常、本発明の融合タンパク質の作成は、適当なポリヌクレオチド(一般にはDNA)配列の構築およびそれの組換え細胞培養物における発現により達成される。しかし代わりに、本発明のポリペプチドを、他の公知の方法に従い合成することもできる。ポリペプチドの合成技法は、例えば、Merrifieldの論文(J. Amer. Chem. Soc.、85:2149-2156 (1963))に説明されている。プロテアーゼ-阻害ドメインを含むポリペプチド鎖は、ペプチド結合により連結されるか、または例えばジスルフィド結合、もしくは当該技術分野において周知の方法によるようなアミノ酸側鎖間の連結により結合される。
【0078】
組換え融合タンパク質は、同じく本発明に従い、融合タンパク質の合成を指示するDNAセグメントを含む発現ベクターまたはプラスミドにより産生される。このようなポリヌクレオチドは、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成型、および混合されたポリマー、センスおよびアンチセンスの両鎖を含む。このようなポリヌクレオチドは、化学的または生化学的に修飾され、かつ非-天然または誘導されたヌクレオチド塩基を含むことができる。融合ポリペプチドをコードしている配列は、イントロンにより断続され得る。本発明のポリヌクレオチド配列は、このような融合ポリペプチド、かつおよび必要ならばベクター配列をコードするのに十分な長さである。これらの配列は、通常長さが数百個のヌクレオチドまたはヌクレオチド塩基対であり、かつ数キロベースの長さである。プロテアーゼインヒビターの結合が1個または複数のジスルフィド結合により介されている別の態様において、個別のインヒビターのポリペプチド鎖をコードしているポリヌクレオチドが、一般には個別のベクターにおいて、別に発現され得る。
【0079】
本発明は更に、融合タンパク質を作成する方法、およびこの融合タンパク質を含有する医薬組成物も包含している。
本発明の融合ポリペプチドをコードしかつ発現することが可能なポリヌクレオチドの構築を含む、ポリヌクレオチド操作技法は、周知であり、かつ概して、例えば、Sambrookらの前掲書またはAusubelらの前掲書に説明されている。例えば制限酵素などのこのような技術への適用に有用な試薬は、当該技術分野において広く知られており、市販されている。
【0080】
本発明の融合ポリペプチドの作成に使用される(またはアンチセンス配列の作成に使用される)組換えポリヌクレオチド配列は、天然または合成の配列に由来することができる。組換え法により融合タンパク質を構築するために、適当なポリヌクレオチド配列が機能的に連結される。ポリヌクレオチド配列は、別のポリヌクレオチド配列と機能的関係である場合に、「機能的に連結される」。例えば、プロモーターがその転写または発現に影響を及ぼす場合は、このプロモーターは、コード配列に機能的に連結されている。一般に機能的に連結されたとは、連結されているDNA配列が連続していて、かつ2個のポリペプチドコード領域が一緒になることが必要である場合は、連続しかつリーディングフレーム内にあることを意味する。シグナルペプチドをコードしている配列(すなわち、リーダー配列)も、組換えポリヌクレオチド配列に加えることができ、こうして作成されたポリペプチド鎖は、例えば抽出および精製のような更なる操作のために適当な細胞内または細胞外空隙へ導かれる。例えば、AAT(配列番号:25および26、表7および8参照、各々、DNAおよびアミノ酸配列)、SLPI(配列番号:27および28、表9および10参照、各々、DNAおよびアミノ酸配列)、TIMP-1(配列番号:29および30、表11および12参照、各々、DNAおよびアミノ酸配列)、α-因子シグナル(酵母)(配列番号:31および32、表13および14参照、各々、DNAおよびアミノ酸配列)、ヒト血清アルブミンシグナル、または他のタンパク質由来のシグナルペプチドは、当該技術分野において公知の方法を用い、様々な細胞株からこれらのタンパク質の分泌をシグナリングするために使用することができる。
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
【0084】
【表12】
【0085】
【表13】
【0086】
【表14】
【0087】
【表15】
【0088】
【表16】
【0089】
本発明の融合タンパク質の構成的タンパク質をもたらすためのポリヌクレオチド配列は、本発明において使用することができるポリヌクレオチド配列のただひとつの例のみを示している。遺伝暗号は縮重するので、1種より多いコドンが、所定のアミノ酸をコードするために使用され、かつ同じポリペプチド配列をコードしている多くの異なるDNA配列が存在するであろう。望ましい融合タンパク質をコードしているヌクレオチド配列における非天然のコドンの使用は、様々なコドンにとって有利であり、このことは様々な原核宿主または真核宿主にとって好ましく(Murray, E.E.、Nuc. Acids Res.、17:477-508 (1989)参照)、様々な望ましい方法で融合タンパク質の発現を修飾することができる。これらは、融合タンパク質の発現率の増加、または天然のコドンを含むDNAから生成されたものよりもより長い半減期を有するRNA転写産物の産生を含む。
【0090】
本発明のポリヌクレオチドは、任意に化学合成により、例えばBeaucageおよびCarruthers(Tetra, Letts.、22:1859-1862 (1981))により説明されたホスホロアミダイト法、またはMatteucciらのトリエステル法(J. Am. Chem. Soc.、103:3185 (1981))により作成される。化学合成は、市販の自動化されたオリゴヌクレオチドシンセサイザーにおいて行うことができる。
【0091】
大量の本発明のポリヌクレオチドは、細菌、Saccaromyces cerevisiaeのような酵母、昆虫、両生類、鳥類、哺乳類または他の細胞のいずれかである適当な宿主細胞、および発現システムにおける複製により作成することができる。望ましい断片をコードしている天然または合成のポリヌクレオチド(例えばDNA)断片は、組換えポリヌクレオチド構築体へ、典型的にはDNA構築体へ組込まれるであろう。
【0092】
これらの構築体は、原核または真核細胞へ導入され、そこでこれらは複製する。通常これらの構築体は、酵母または細菌のような単細胞宿主における自律複製に適している。本発明にとって好ましい宿主細胞は、酵母、例えばSaccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、およびKluyveromyces lactisなどである。これらの構築体は更に、培養された昆虫、哺乳類、植物または他の真核細胞株のゲノム内へ導入および組込むことができる。これらの目的に関する適当な方法は、当該技術分野において周知であり、かつ例えばSambrookらの論文(1989)またはAusubelらの論文(1987、および定期的に改訂)に説明されている。
【0093】
原核または真核宿主への導入のために調製されたポリヌクレオチド構築体は、典型的には、望ましいポリペプチドをコードしている意図されたDNA断片を含む、該宿主により認識された複製システムを含み、かつ好ましくはこのポリペプチドをコードしているセグメントに機能的に連結された転写および翻訳開始調節配列も含む。発現ベクターは、例えば、複製起点または自律複製配列(ARS)および発現制御配列、プロモーター、エンハンサーおよび必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム-結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位、転写終結配列、およびmRNA安定化配列を含む。このようなベクターは、当該技術分野において周知であり、かつ例えばSambrookらの論文(1989)またはAusubelらの論文(1987)において考察されているような、標準の組換え技術により調製される。
【0094】
適当なプロモーター配列および他の必要なベクター配列は、宿主において機能するように選択される。細胞株および発現ベクターの機能的組合せの例は、Sambrookら(1989)またはAusubelら(1987)の論文に説明されており;同じく、例えばMetzgerら、Nature、334:31-36 (1988)も参照のこと。多くの有用なベクターは、当該技術分野において公知であり、かつ市販されている。原核宿主における使用に関して、プロモーターは、trp、lacおよびファージプロモーター、tRNAプロモーターおよび解糖酵素プロモーターを含むが、これらに限定されるものではない。有用な酵母プロモーターは、メタロチオネイン、3-ホスホグリセラートキナーゼまたは他の解糖酵素、例えばエノラーゼまたはグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼなど、並びにマルトースおよびガラクトース利用に寄与する酵素のプロモーター領域を含むが、これらに限定されるものではない。酵母において好ましいプロモーターおよびターミネーターはADH2である。更に酵母発現に有用な他の適当なベクターおよびプロモーターは、Hitzemanらの欧州特許第73,657A号に開示されている。適当な天然でない哺乳類プロモーターは、SV40由来の初期および後期プロモーター(Fiersら、Nature、273:113 (1978))またはマウスモロニー白血病ウイルス、マウス乳癌ウイルス、トリ肉腫ウイルス、アデノウイルスII、ウシパピローマウイルスおよびポリオーマウイルス由来のプロモーターを含むが、これらに限定されるものではない。加えて、この構築体は、増幅可能な遺伝子(例えば、DHFR)へ結合することができ、その結果その遺伝子の複数のコピーが作成される。
【0095】
このような発現ベクターは、自律複製することができる。あるいは、この発現ベクターは、当該技術分野において周知の方法により、宿主細胞のゲノムに挿入されることにより、複製することができる。
【0096】
発現ベクターおよびクローニングベクターは一般に、選択マーカーを含み、これはその宿主細胞の生存または増殖に必要なポリペプチドをコードしている。この遺伝子の存在は、このマーカーを発現している宿主細胞のみが増殖していることを確実にする。典型的選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒物、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートなどに対する抵抗性を付与するポリペプチド;(b)栄養要求性欠損を補完するポリペプチド;または、(c)複合培地からは入手できない必須栄養素を供給するポリペプチドをコードしている。適当な選択マーカーの選択は、宿主細胞によって決まる。酵母宿主細胞において好ましいマーカーは、URA3遺伝子であり、これは、酵母における自律複製のための酵母2μプラスミドにおける選択マーカーを提供する。様々な宿主のための適当なマーカーは、当該技術分野において周知である。
【0097】
当業者は、本発明の融合タンパク質の発現に適している多くの種類の原核および真核の両方の宿主細胞を認めるであろう。最も一般的に使用される原核宿主は、E. coil株であるが、他の原核細胞、例えばBacillus subtilisまたはPseudomonasも使用することができる。哺乳類または他の真核宿主細胞、例えば酵母、糸状菌、植物、昆虫、両生類または鳥類種のものなど、更にはCOS、CHOおよびHeLa細胞株および骨髄腫細胞株も、本発明のポリペプチドの作成に有用である。本発明において好ましい宿主細胞型は、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、およびKluyveromyces lactisなどの酵母である。各宿主細胞型は、組換えタンパク質遺伝子が、適当な発現制御配列に機能的に連結されていることが必要である。このような制御配列は、E. coilについては、T7、trp、またはλプロモーターのようなプロモーター、リボソーム結合部位および好ましくは転写終結シグナルを、または真核細胞については、プロモーター、および好ましくは免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルスなどに由来するエンハンサー、およびポリアデニル化配列を含み、かつスプライシングドナー配列およびアクセプター配列を含むことができる。
【0098】
関心のあるポリヌクレオチドを伴うベクターは、in vitroにおいて転写することができ、かつ得られるRNAは、周知の方法(例えば、注入により)により宿主細胞へ導入することができる。T. Kuboらの論文(FEBS Lett.、241:119 (1988))を参照のこと。あるいは、これらのベクターは、当該技術分野において周知の方法により宿主細胞へ直接導入することができ、これは細胞宿主の種類によって変動する。これらの方法は、電気穿孔;好ましい方法である酢酸リチウムを用いる、または塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を使用する、トランスフェクション;微量射出式の遺伝子銃;リポフェクション;および、感染(ベクターが感染性物質、例えばレトロウイルスゲノムである場合)を含むが、これらに限定されるものではない。一般的には、Sambrookらの論文(1989)およびAusubelらの論文(1987)を参照のこと。そのように形質転換された細胞も、このような細胞の子孫を含むことを意味している。
【0099】
特許請求された本発明は、精製したタンパク質を求めるものではなく、および必要な精製は、これらのタンパク質の望ましい用途に適した純度レベルのためのみに行われる。アフィニティーカラム、硫酸アンモニウム沈降法、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当該技術分野において周知の標準の精製技術を使用し、発現後にタンパク質を精製することができる。このような技術は、例えば、R. Scopes、「Protein Purification」、Springer-Verlag、ニューヨーク(1982)に記されている。
【0100】
融合タンパク質のアッセイ プロテアーゼインヒビターの活性は、個別のプロテアーゼインヒビターの各々について、当該技術分野において公知の手段により評価することができ;一般には、適当なプロテアーゼの活性を、インヒビターの存在および非存在下でアッセイする。例えば、Barrett, Alan J.編集、「タンパク質分解性酵素:セリンおよびシステインペプチダーゼ」、Meth Enz、244巻、サンディエゴ、Academic Press社、1994参照。
【0101】
好ましいアッセイ法は、「実施例」に説明されたように、マイクロタイタープレート様式でのブタ膵臓エラスターゼの阻害によるか、またはヒト好中球エラスターゼ阻害によるAAT活性、HPLC-ベースの方法によるSLPIトリプターゼ-阻害活性、およびマトリックスメタロプロテアーゼ活性により決定する。
【0102】
SLPIに関して、アッセイは、通常セリンプロテアーゼ、好ましくは白血球エラスターゼまたは膵臓エラスターゼを阻害する物質の能力を基にしている。T. Teshimaら、J. Biol. Chem.、257:5085-91 (1982)、およびK. Nakajimaら、J. Biol. Chem.、254:4027-32 (1979)により説明されたように、これらのインヒビターは、濃度のわかっているプロテアーゼと混合され、かつ残留する酵素活性が、それがメトキシスクシニル-アラニル-アラニル-プロリル-バリン-p-ニトロアニリドを加水分解する能力により評価される。このインヒビターと白血球エラスターゼまたはブタ膵臓エラスターゼの相互作用から生成された複合体の解離定数Kiは、標準の速度論的方法により得ることができる。加えて、本発明のAAT、SLPIおよび融合タンパク質は、それらの動物モデル(例えば、アレルゲン-チャレンジしたヒツジ)において気道の過敏反応を阻害する能力についてアッセイすることができる。
【0103】
TIMPのアッセイについては、米国特許第5,595,885号および第5,643,752号並びに欧州特許第0404750B1号および第0648838A1号に開示されている。これらのアッセイは、、通常ゼラチンを消化する能力によるコラゲナーゼまたはゼラチナーゼ活性の評価による、TIMPによるコラゲナーゼまたはゼラチナーゼの阻害に関連しており、これは例えば14C標識することができる(Collierら、J Biol. Chem.、263:6579-81 (1988);および、Wilhelmら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84:6725-6729 (1987))。加えて、本発明のAAT、TIMP、および融合タンパク質は、マウスモデルにおける気腫発症の阻害についてアッセイすることができる。このようなアッセイは、標準のマウス実験系統、またはタバコ煙により長期間処理されたトランスジェニック的に修飾したマウスを含むことができる。
【0104】
アスパルチルプロテアーゼインヒビターは、関心のあるプロテアーゼによりアッセイされる。HIV-1プロテアーゼ阻害は、本質的に、M.W. Penningtonらの「Peptides」(1990、Gimet, E.およびAndrew, D.編集、Escom社;ライデン、オランダ(1990))により説明された方法によりアッセイすることができる。ペプスタチン-様インヒビターは、米国特許第4,746,648号に開示されたGuyene, TTらの方法「ペプスタチンによるヒト血漿レニン活性の阻害」、J. Clin. Endocrinol. Metab.、43:1301-6 (1976)によりアッセイすることができる。カテプシンDおよびプラスメプシンのインヒビターに関しては、米国特許第5,849,691号に開示された方法を用いることができる。
【0105】
III. 医薬組成物
本発明のタンパク質、それらの断片に加え本発明の核酸(同じく本願明細書においては「活性化合物」と称される)は、医薬組成物へ混入することができる。このような組成物は典型的には、前述のタンパク質または核酸および医薬として許容できる担体を含む。本願明細書において使用される専門用語「医薬として許容できる担体」は、医薬としての投与に適合可能な、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。補充的活性化合物も、この組成物に混入することができる。
【0106】
医薬組成物は、その意図された投与経路と適合可能であるように処方される。投与経路の例は、非経口、例えば経静脈、皮内、皮下、経口、吸入、経皮(局所的)、経粘膜、および経直腸投与を含む。非経口、皮内または皮下の適用に使用される液剤または懸濁剤は、下記の成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような無菌の希釈液;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝液、並びに塩化ナトリウムまたはデキストロースのような張度調節剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基により調節することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射筒またはガラスもしくはプラスチック製の反復投与用バイアルに封入することができる。
【0107】
注射用途に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水に可溶性である)または分散媒および用時調製用の滅菌注射液散剤を含む。静脈内投与については、適当な担体は、生理的食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(商標)(BASF社、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合、この組成物は、無菌でなければならず、かつ容易に注射筒(syringability)から放出される程度に液体であることとする。これは、製造および貯蔵の条件下で安定しており、かつ細菌および真菌のような微生物の混入作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、並びにそれらの適当な混合物を含む、溶媒または分散媒であることができる。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散体の場合は必要な粒度の維持、および界面活性剤の使用などにより維持することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの、様々な抗菌剤および抗真菌剤により実現することができる。多くの場合、組成物中に、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、塩化ナトリウムのような等張剤を含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続吸収は、組成物中に吸収を遅延する物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどを含むことによりもたらすことができる。
【0108】
無菌の注射可能な溶液は、活性化合物を必要量、先に列記された成分のひとつまたは組合せと共に適当な溶媒中に混入し、必要に応じその後滅菌濾過することにより調製することができる。一般に分散体は、活性化合物の基本的分散媒および先に列記された必要なその他の成分を含有する無菌ベヒクルへの混入により調製することができる。無菌注射液の調製のための無菌散剤の場合、調製に好ましい方法は、活性成分と追加の望ましい成分を合わせた先に滅菌濾過された溶液からそれらの散剤を生じる、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0109】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口の治療用投与に関しては、活性化合物は、賦形剤と共に混入し、かつ錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形状で使用することができる。経口組成物は、含嗽剤として使用するための液体担体を用いて調製することもできる。医薬として相溶性のある結合剤、および/またはアジュバント物質は、この組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、または同様の性質の化合物を含むことができる:微晶質セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチンのような結合剤;スターチまたは乳糖のような賦形剤、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチのような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesのような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤(glidant);ショ糖またはサッカリンのような甘味剤;もしくは、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ風味のような矯味矯臭剤。
【0110】
本発明の化合物は、徐放型(例えば、持続デリバリー)処方、例えば数日、数週間または数ヶ月に渡る化合物の放出を可能にする処方に、タンパク質性化合物のデリバリーのために当該技術分野において公知の徐放型処方を使用し処方することができ、これは当該技術分野において公知である。更に本発明の化合物は、これらをプロテアーゼ分解から保護するために処方することができる。
【0111】
吸入による投与のためには、化合物は、適当な噴射剤、例えば二酸化炭素のような気体を含有している加圧した容器またはディスペンサーからのエアゾールスプレーの形でデリバリーされる。あるいはこれらの化合物は、CFC-非含有の用量測定式吸入器、またはネブライザーを用いてデリバリーされる。マンニトール、ショ糖または乳糖のような担体中の乾燥タンパク質を、約MW20kDaまでのタンパク質が透過可能である下気道上皮へスプレー中で送達することができる。直径がおよそ1μmの粒子は、当業者に公知であるInhale、Dura、および他の製造業者によりデザインされたもののような、乾燥粉末吸入器により遠位肺胞表面へデリバリーすることができる。超音波ネブライザーを用いて、リポソームを伴うまたは伴わずに、液剤をデリバリーしてもよい。大きい多孔質粒子も、乾燥粉末を使用する肺デリバリーのための効果的方法である。薬物の肺デリバリーに関する更なる考察は、McElvaneyら、J Clin Invest、90:1296-1301 (1992)、およびVogelmeierら、J. Appl. Physiol.、69:1843-1848 (1990)、およびEdwardsら、「肺ドラッグ・デリバリーのための巨大な多孔質粒子」、Science、276:1868-1871 (1997)、並びに米国特許第6,254,854号;第RE37,053号;第6,136,295号;第5,985,309号;第6,253,762号;第6,143,277号;および、第6,131,566号において見ることができる。
【0112】
全身投与は、経粘膜または経皮的手段によるものであることもできる。経粘膜または経皮的投与に関して、透過されるべき障壁に適した浸透剤が処方中で使用される。このような浸透剤は、一般に当該技術分野において公知であり、かつ例えば経粘膜投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩、フシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔内スプレーまたは坐薬の使用を通して実現することができる。経皮的投与のために、活性化合物は、当該技術分野において一般に公知のように、軟膏剤、膏薬、ゲル剤またはクリーム剤に処方される。
【0113】
これらの化合物は更に、直腸送達のために坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドのような通常の坐剤用基剤)または滞留型浣腸剤の形状で調製することもできる。
【0114】
活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル封入されたデリバリーシステムを含む制御された放出処方のように、体からの迅速な排泄に対し化合物を保護する担体により調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような処方の調製法は、当業者には明らかであろう。更にこれらの物質は、Alza社およびNova Pharmaceuticals社から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液も、医薬として許容できる担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に開示されたような当業者に公知の方法に従い調製することができる。
【0115】
投与の容易さおよび均一用量のための単位剤形の経口または非経口組成物を処方することは利点である。本願明細書において使用される単位剤形とは、治療される対象への単一の用量として適した物理的に個別の単位を意味し;各単位は、望ましい治療作用を生じるように計算された予め定められた量の活性化合物を、必要な医薬担体と共に含有する。
【0116】
このような化合物の毒性および治療効能は、例えば、LD50(集団の50%の致死量)およびED50(集団の50%における治療的有効量)の決定のための、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手法により決定することができる。毒性作用および治療作用の間の用量比は、治療指標であり、これはLD50/ED50の比として説明することができる。高い治療指標を示す化合物が好ましい。毒性のある副作用を示す化合物を使用することができると同時に、非感染細胞の可能性のある損傷を最小化し、これにより副作用を低減するために、このような化合物を罹患した組織部位へ標的化する送達システムをデザインする際には注意しなければならない。
【0117】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための用量範囲の処方において使用することができる。このような化合物の用量は、ほとんどまたは全く毒性を伴わないED50を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。この用量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内を変動することができる。本発明の方法において使用されるあらゆる化合物について、治療有効量は、最初に細胞培養アッセイにより推定することができる。細胞培養により決定されたIC50(すなわち、症状の1/2最大阻害を達成する試験化合物濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて投与量を処方することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な投与量を正確に決定するために使用することができる。血漿レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0118】
いずれか特定の動物対象に関する特異的用量レベルは、使用される特異的化合物の活性、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食餌、投与時間、投与経路、排泄率、あらゆる併用薬、および変調される発現または活性の程度を含む様々な要素によって決まることは理解される。
【0119】
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入し、かつ遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、吸入、局所投与(米国特許第5,328,470号参照)により、または定位注射(例えば、Chenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91:3054-3057 (1994))により、対象へ送達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬調製物は、許容できる希釈剤中の遺伝子治療ベクターを含むか、または遺伝子送達ベヒクルが包埋されている徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、例えばレトロウイルスベクターのように、完全な遺伝子送達ベクターが、組換え細胞から無傷で作成され得る場合、この医薬調製物は、遺伝子送達システムを作成する1個または複数の細胞を含むことができる。
医薬組成物は、容器、パックまたはディスペンサー中に投与に関する説明書と共に含まれる。
【0120】
IV. 発明の組成物およびキット
本発明は、本願明細書に説明された方法において使用するための組成物およびキットも提供する。一般に、プロテアーゼの阻害に使用するための本発明の組成物は、AATおよび他のプロテアーゼインヒビターまたはそれらの機能活性部分を含有する融合タンパク質を有効量含む。これらの組成物は一般に、適当な媒体中にあるが、これらは凍結乾燥された形であることもできる。適当なin vitro用途のための媒体は、水性媒体(純水または緩衝液など)を含むが、これらに限定されるものではない。プロテアーゼの阻害および/または病態または疾患の治療におけるin vivo使用が意図された組成物は、一般に医薬として許容できる賦形剤または担体と共に提供され、かつ投与経路、用量、安定性、および他の当該技術分野において周知の要因に応じて様々な処方内にあることができる。これらの組成物は、本願明細書に説明された融合タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、形質転換された細胞、反応混合物および/または中間体のいずれか、更には組合せであることができる。例えば本発明の組成物のひとつの態様は、ヒトに投与するための適当な賦形剤または担体と一緒の、AATまたはそれらの機能活性部分およびSLPIまたはそれらの機能活性部分を含む融合タンパク質である。
【0121】
本発明は更に、本発明の方法を実行するためのキットを提供する。従って、適当なパッケージ内の様々なキットが提供される。これらのキットは、in vitroおよびin vivo用途を含むひとつまたは複数の本願明細書に説明された用途のために使用することができ;これは試料中のプロテアーゼ活性を阻害するための、生物学的試料(例えば、組織または臓器試料、培養物、血液、血漿、血清、尿、唾液、喀痰など)への適用およびこれによる試料中のタンパク質の安定化、プロテアーゼおよびプロテアーゼインヒビターの不均衡に関連した疾患または障害(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、並びに中耳炎および外耳炎)のリスクのあるまたはこれに罹患した個体の治療を含む。In vitro法のためのキットは、この方法の望ましい反応を促進するための適当な成分、例えば、緩衝液、酵素、基質、補因子および他の必要な試薬も含むことができる。このような成分は、凍結乾燥した形であることができる。In vivo投与のためのキットは更に、例えば吸入、静脈内投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、関節内投与、経口投与、眼内投与、および経口投与などの、特定の経路による投与を促進するための適当な成分を含むことができる。
【0122】
本発明のキットは、任意に使用説明書のセット、一般に書面による使用説明書を含むが、in vitroまたはin vivoのいずれかでの意図されたプロテアーゼ阻害に関する本発明の方法の成分の使用に関連する電気記録媒体(例えば、磁気ディスクまたは光学ディスク)を含む使用説明書も使用することができる。キットに含まれたこれらの使用説明書は、一般に本発明の方法の実践に必要な試薬(そのキットに含まれるかまたは含まれない)に関する情報、キットの使用法に関する指示、適当な反応条件および/または適当な投与条件、適当な用量、安定性、貯蔵、結果の解釈、適当ならば予備的測定結果などを含む。
【0123】
このキットの成分(複数)は、便利で適当なパッケージ中に梱包することができる。これらの成分は、個別に、または単独もしくは複数の組合せで梱包することができる。
【0124】
キット内の1種または複数の組成物は、賦形剤を含有する、通常凍結乾燥された乾燥散剤として提供することができ、これは溶解時に、本願明細書に説明した方法を実行するのに適当な濃度の試薬溶液を提供するであろう。各成分は、個別の容器に梱包することができるか、またはいくつかの成分を、交差反応性および貯蔵寿命が許す場合は、ひとつの容器内に組合せることができる。
【0125】
キット内の様々な成分の相対量は、広範に変動し、本願明細書に開示された方法を実践しおよび/または更に望ましいプロテアーゼ阻害を最適化するために発生することが必要な反応を実質的に最適化する試薬、賦形剤、および/または他の成分の濃度を提供することができる。
【0126】
V. 発明の方法
本発明の融合タンパク質は、それらのプロテアーゼ阻害活性のために、in vitroまたはin vivoのいずれかにおいて、1個または複数のプロテアーゼの活性を阻害するために使用することができる。本発明のプロテアーゼインヒビター融合タンパク質をin vitroにおいて使用する方法は、試料中のプロテアーゼ活性を阻害し、これにより試料中のタンパク質を安定化する手段として、例えば、生物試料に適用することができる。本発明のプロテアーゼインヒビター融合タンパク質のin vivoにおける使用法は、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、並びに中耳炎および外耳炎のような、プロテアーゼおよびプロテアーゼインヒビターの不均衡に関連した疾患または障害に罹患したまたはそのリスクのある個体の治療に適用することができる。
【0127】
本発明は、概して、プロテアーゼを本発明の融合タンパク質と接触し、その結果そのプロテアーゼの活性が阻害されることを含む、プロテアーゼ活性を阻害する方法を提供する。プロテアーゼは、例えば融合タンパク質を試料(例えば、生物試料)または培養物(例えば、細胞培養物)にin vitroにおいて添加することにより、融合タンパク質とin vitroにおいて接触することができる。試料の限定的でない例は、血液、血漿、血清、尿、唾液、喀痰などの生物液体、組織試料および細胞培養物を含む。プロテアーゼは、例えば、融合タンパク質を個体に投与することにより、融合タンパク質をプロテアーゼ部位へ送達するために適当な経路により、個体内in vivoにおいて融合タンパク質と接触することができる。適当な投与経路の限定的でない例は、吸入、静脈内投与、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、関節内投与、経口投与、眼内投与および経口投与である。本発明は一般に、本発明の融合タンパク質を有効量個体に投与することを含む、望ましくないプロテアーゼ活性に関連している疾患または障害に罹患したまたはそのリスクのある個体を治療する方法を提供する。
【0128】
本発明は、プロテアーゼおよびプロテアーゼインヒビターの不均衡に関連した疾患のリスクのある(または易罹患性の)またはこれを有する対象を治療する予防的および治療的の両方法を提供する。予防的および治療的の両治療法に関して、このような治療は、遺伝薬理学の分野から得られた知識を基に、特異的にあつらえるまたは修飾することができる。本発明の組成物は、1種よりも多いプロテアーゼが疾患の進行に関連しているような多くの疾患の治療において有用である。加えて一部のプロテアーゼは、プロテアーゼインヒビターを破壊し、例えばメタロプロテアーゼは、α1-アンチトリプシンを破壊することが知られている。従って、2種の異なるインヒビターを含む融合タンパク質は、これらのインヒビターは、疾患進行に関連したプロテアーゼを阻害するために利用されるのみではなく、さもなければそれらを破壊するであろうプロテアーゼから互いに保護するためにも利用されるので、特に強力である。
【0129】
本発明の組成物の量に加え、送達経路は、レシピエントおよび治療される状態によって決まり、かつ当業者は過度の実験を行うことなく決定することができる。具体的状態は、以下に考察するように、それらを投与の特定の形に向いているが、これらは単なる例である。
【0130】
本発明の組成物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、喘息、および気腫のような、呼吸器疾患において特定の用途を見いだす。このような疾患の治療について、本発明の融合タンパク質は、吸入療法により肺へ直接投与されることが好ましい。本発明により提供されるプロテアーゼ阻害に関する全体的戦略は、喘息の気道過敏反応および慢性的気道リモデリング成分の両方の治療、喫煙により誘導される肺気腫発症の遅延、およびP. aeruginosa感染により引き起こされるCF増悪の軽減のための著しい治療的利益を提供する。相補的な阻害スペクトルを伴う、いくつかのプロテアーゼインヒビターは、本発明の融合タンパク質に含まれる。これらは、α1-アンチトリプシン(AAT)、組織性メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)、および分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)を含む。AATおよびSLPI(それらの機能活性部分を含む)の融合タンパク質を使用し、喘息の治療のために、マスト細胞トリプターゼおよびキマーゼ、並びに好中球エラスターゼ、カテプシンGおよびカリクレインを阻害することができ、並びにAATおよびTIMPの融合タンパク質を用い、COPDおよびCFの治療のために、マトリックスメタロプロテアーゼおよび好中球エラスターゼおよびカテプシンGを使用することができる。肺および気道の疾患において特に有利なことは、本発明の組成物は、前述のように、直接肺デリバリーを施され、従って直接罹患した組織を標的化するという事実である。
【0131】
本発明の組成物は、アトピー性皮膚炎、湿疹および乾癬、I型およびII型ヘルペスウイルス、並びに水痘帯状疱疹ウイルスのようなウイルス感染症に対する炎症反応における皮膚病の治療、並びに耳の感染症(例えば、中耳炎および外耳炎)の治療における追加的使用を認める。これらの疾患において、好中球エラスターゼ、およびマスト細胞由来のプロテアーゼの上昇したレベルが確定されている。同様に、中耳の慢性の細菌感染症(慢性中耳炎)において、セリンプロテアーゼインヒビターにより、およびメタロプロテアーゼインヒビターにより阻害され得るプロテアーゼが同定されている。AATとTIMPの融合タンパク質は、この状態において特に有利であり、炎症反応の後遺症の低下、および細菌メタロプロテアーゼの阻害につながる。皮膚状態の治療に関して、本発明の融合タンパク質は、好ましくは、個体へ局所的に投与される。
【0132】
本発明の組成物は更に、HIV感染症においても有用であり得、ここではアスパルチルプロテアーゼが、このウイルス核酸によりコードされた主要なタンパク質であり、かつここではプロテアーゼインヒビターは、疾患の治療において特に強力であることがわかっている。更に、宿主細胞セリンプロテアーゼは、HIVエンベロープ(env)遺伝子産物の切断に関連しており、かつSLPIおよびAATの両方が、in vitroアッセイシステムにおいて個別に投与された場合に、HIV複製を阻害することが示されている。従って本発明は、HIVプロテアーゼを本発明の融合タンパク質と接触することにより、HIVプロテアーゼ活性を阻害する方法を提供する。更に本発明は、SLPI/AAT融合タンパク質のような本発明の融合タンパク質を個体に投与することにより、個体においてHIV複製を阻害する方法、個体においてHIV感染力を低下する方法、またはHIV-感染した個体の生存を延長する方法を提供する。
【0133】
本発明の組成物は、多くの他の状態の治療においても有用であろう。皮膚炎、乾癬、ヘルペス感染症、角膜または上皮潰瘍、慢性難治癒性創傷、および敗血症の治療に関しては、投与は、前述の方法により、全身性であるか、または適当な担体を使用し局所的であることができる。中耳炎は、経口または筋肉内投与により、または耳管注入により治療することができる。リウマチ性関節炎および変形性関節炎の治療に関して、投与は、局所的または全身性であることができ、または本発明の融合タンパク質は、罹患した関節(複数)へ直接注射するか、または患部面に塗布された貼付剤により浸透剤と組合せて適用することができる。歯周病の治療において、浸透治療の投与は、結合組織の破壊を遅延または中断するために、ゲル、練り歯磨、口腔洗浄液、噴霧剤、またはトローチ剤の手段によることができる。腫瘍転移および腫瘍血管新生の治療については、本発明の融合タンパク質は、腫瘍形成性プロテアーゼが周囲の結合組織を破壊し、血管新生または転移をもたらすのを妨害するのに十分な量経動脈的にデリバリーされ得る。胃潰瘍、骨粗鬆症、骨ページェット病、糸球体腎炎、強皮症、骨または組織の圧迫萎縮、コレステリン腫、神経細胞障害、臓器の虚血性灌流損傷(心筋無酸素症の局所的後遺症を含む)、マラリア、シャーガス病、寄生体による眼感染症、ウイルス感染症(例えば、HIV、ヘルペス)、細菌感染症、アルツハイマー病、高血圧、急性白血病、栄養障害型表皮水疱症、および筋ジストロフィー症のような他の状態は、各病態の治療に関して当該技術分野において公知の方法により治療することができる。
【0134】
本発明の方法に従い治療することができる他の疾患または状態は、ヘルペス感染症のようなウイルス感染症に加え、ヘルペス感染症に対する炎症反応のようなウイルス感染症に対する炎症反応を含む。本発明の融合タンパク質も、概してウイルス感染症または他の原因から生じる炎症の治療において使用することができる。
【0135】
角膜または糖尿病性潰瘍または微生物感染症に起因した病巣のような、過剰なプロテアーゼインヒビターが関連する状態の治療については、プロテアーゼインヒビターに対するアンチセンス分子を、潅注、軟膏剤または他の適当な手段により、病巣部位へ直接投与することができる。
【0136】
本発明の組成物は、例えば、生物学的試料の調製および分析期間、もしくは組織給源からのタンパク質精製の期間のような、プロテアーゼに対する広いスペクトル保護が望ましいようなあらゆる適用において、in vitroにおいて有用である。これらおよび他の手法において、多くのプロテアーゼが放出されおよび/または活性化され、並びに本発明の融合タンパク質のような広範なスペクトルのプロテアーゼインヒビターを使用し、混合物中の関心のあるタンパク質のタンパク質分解を防止することができる。融合タンパク質の特異性は、プロテアーゼ単独に対して、およびプロテアーゼの特定のクラスに対してあつらえることができるので、関心のある他のタンパク質に影響を及ぼすことなく、組織-または臓器-特異的なプロテアーゼによるタンパク質分解を特異的に阻害することは可能である。加えて、本発明の融合タンパク質の成分は、各々を他のタンパク質分解性の消化から保護し、従ってインヒビターの有効性の持続期間を倍増するために利用することができる。
【0137】
本発明は更に、下記実施例により例証されるが、これは限定として構成するものではない。本願明細書に引用された全ての参考文献、特許および公開された特許出願の内容は、それらの全体が本願明細書に援用されている。
【0138】
実施例
実施例 1:SLPI/AAT および TIMP-1/AAT 融合タンパク質の構築
ヒトAATのアミノ酸1-394に融合されたヒトSLPIのアミノ酸1-107を含む融合タンパク質を構築し、かつSLAPIと称した。SLAPI融合タンパク質の構築に使用したヌクレオチド配列は、配列番号:7(表15参照)に示し、ここでヌクレオチド1-6はXbaI制限部位を表わし、ヌクレオチド6-8はリボソーム結合部位を表わし、ヌクレオチド9-11は開始コドンを表わし、ヌクレオチド12-332はSLPIコード配列を表わし、ヌクレオチド333-335は連結メチオニン残基をコードしている連結コドンを表わし、ヌクレオチド336-1517はAATコード配列を表わし、ヌクレオチド1518-1520は停止コドンを表わし、並びにヌクレオチド1520-1525はSalI制限部位を表わしている。SLAPI融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号:8(表16参照)に示し、ここでアミノ酸1はイニシエーターメチオニン残基を表わし、アミノ酸2-108はヒトSLPIアミノ酸1-107に相当し、アミノ酸109はリンカーメチオニン残基を表わし、およびアミノ酸110-503はヒトAATアミノ酸1-394に相当している。
【0139】
【表17】
【0140】
【表18】
【0141】
【表19】
【0142】
【表20】
【0143】
【表21】
【0144】
ヒトAATのアミノ酸1-394に融合したヒトTIMP-Iのアミノ酸1-184を含む融合タンパク質を構築し、かつTAPIと称した。TAPI融合タンパク質の構築に使用したヌクレオチド配列は、配列番号:9(表17参照)に示し、ここでヌクレオチド1-6はXbaI制限部位を表わし、ヌクレオチド6-8はリボソーム結合部位を表わし、ヌクレオチド9-11は開始コドンを表わし、ヌクレオチド12-563はTIMP-1コード配列を表わし、ヌクレオチド564-566は連結メチオニン残基をコードしている連結コドンを表わし、ヌクレオチド567-1748はAATコード配列を表わし、ヌクレオチド1749-1751は停止コドンを表わし、およびヌクレオチド1751-1756はSalI制限部位を表わす。TAPI融合タンパク質のアミノ酸配列を、配列番号:10(表18参照)に示し、ここでアミノ酸Iはイニシエーターメチオニン残基を表わし、アミノ酸2-185はヒトTIMP-1アミノ酸1-184に相当し、アミノ酸186はリンカーメチオニン残基を表わし、並びにアミノ酸187-580はヒトAATのアミノ酸1-394に相当している。
【0145】
【表22】
【0146】
【表23】
【0147】
【表24】
【0148】
【表25】
【0149】
【表26】
【0150】
【表27】
【0151】
発現ベクターは下記のように構築した:pHG42は、酵母発現のための発現カセット集成のためのベクターであり、Saccharomyces cerevisiae ADH2プロモーターおよびターミネーターおよびURA3遺伝子のpBluescript(pBlsc、Stratagene社)へのPCRクローニング断片の逐次追加によりクローニングした。簡単に述べると、ADH2プロモーターを、5'-XhoおよびBamHI部位、3'-XbaI部位で増幅し、XhoI/XbaIで切断したpBlscへクローニングした。ADH2ターミネーターを、5'-XbaIおよびSalI部位、3'-NotI部位で増幅し、ADH2プロモーター-含有pBlscベクターXbaI/NotIへクローニングし、pHG40を作出した。URA3遺伝子を、5'-BamHIおよび3'-XhoI部位で増幅し、pHG40へクローニングし、pHG42を作出した。発現される遺伝子は、XbaI/SalI部位に5'-から3'-へクローニングし、NotI/XhoI断片として除去された全カセットを酵母発現ベクターへライゲーションした。
【0152】
pHG62は、pBlscへクローニングされた全S. cerevisiaeの2ミクロン配列を含む酵母発現ベクターである。2ミクロンDNAのB型は、2ミクロンDNAの特有のEcoRI部位を使用し、NotI/EcoRIおよびEcoRI/XhoI断片としての2断片においてS. cerevisiaeゲノムDNAからPCRにより増幅した。全2ミクロンDNAベクターは、酵母のライゲーションおよび形質転換のためにNotI/XhoIで切断した。
【0153】
融合タンパク質のコード配列を下記のように構築した。
SLAPI:合成SLPI遺伝子は、成熟ペプチド、アミノ酸1-107をコードしている酵母-好ましいコドンにより、化学的に合成し(Sigma Genosys社)、pUC19にクローニングした。PCRプライマーは、5'-XbaI部位および3'-NcoI部位で消化し、AATyc2との融合体としてSLPIをサブクローニングした。合成AAT遺伝子(AATyc2)は、メチオニン残基、成熟AATのアミノ酸1-394をコードした酵母-好ましいコドンにより、化学的に合成し(Sigma Genosys社)、pCR4TOPOへクローニングした。3個の断片のライゲーションを、pHG42 XbaI/SalIベクター、XbaI/NcoI断片としてSLPIをコードしているDNAおよびNcoI/Sal断片としてAATyc2をコードしているDNAと共に集成し、かつE. coliへクローニングし、MetSLPI/MetAATyc2 pHG42を作出した。MetSLPI/MetAATyc2 pHG42のNotI/XhoI断片を、pHG62 NotI/XhoI、pKC64 NotI/XhoI、またはpKC65 NotI/XhoIへクローニングした。SLAPIおよび他のプロテアーゼインヒビターの構築において使用した他の発現ベクターは、pKC64およびpKC65であり、これらは、2ミクロンDNAが新規Pst部位で挿入された酵母LEU2遺伝子を伴う修飾されたpHG62の変型であった。pHG62発現ベクターにおけるSLAPIの概略図を、図1に示した。pKC65発現ベクターにおけるSLAPIの概略図を図3に示した。
【0154】
TAPI:TIMP-1 cDNA(Dochertyら、Nature、318:66 (1985))を、ヒト心臓cDNAからpBlscへPCRによりクローニングした。成熟ペプチドコドン(1-184)のAATyc2配列への融合を可能にするために、5'-XbaI部位および3'-NcoI部位を含んだ(前記SLAPI参照)。3個の断片ライゲーションを、pHG42 XbaI/SalIベクター、XbaI/NcoI断片としてTIMP-1をコードしているDNAおよびNcoI/Sal断片としてAATyc2をコードしているDNAと共に集成し、かつE. coliにクローニングし、MetTIMP/MetAATyc2 pHG42を作出した。MetTIMP/MetAATyc2 pHG42のNotI/XhoI断片を、pKC62 NotI/XhoIにクローニングした。TAPIと共に使用した別の発現ベクターは、pKC64 NotI/XhoIであり;pKC65 NotI/XhoIも使用した。pHG62発現ベクター中TAPIの概略図を図2に示した。
【0155】
実施例 2:N-TIMP/AAT 融合タンパク質 (N- シリーズ ) の構築
成熟TIMP-1のアミノ(NH2またはN)末端の126個のアミノ酸は、タンパク質分解阻害ドメインを含むことが明らかにされている。このドメインは、適切なリフォールディングおよび活性に必要な6個のシステインおよび3個のジスルフィド橋を有するが、完全長分子は、12個のシステインおよび6個のジスルフィド橋を有する。適切なジスルフィド連結を伴う活性分子の作成のために、TIMPのN-末端ドメインを、AATへ融合し、N-TAPIを作出した。rN-TAPI(逆方向-N-TAPI)は、実施例3に説明したように構築した。これらの分子は、aa 1にメチオニン開始コドンを、それに続けてヒトTIMP-1の最初の126個のアミノ酸を、別のメチオニン、それに続けて成熟ヒトAAT(N-TAPI)の394個のアミノ酸を;または逆方向rN-TAPIを含む。
【0156】
N-TAPI
N-TAPIは、ヒトAATのアミノ酸1-394に融合したヒトTIMP-1のアミノ酸1-126を含む融合体である。N-TAPI融合タンパク質の構築において使用したヌクレオチド配列を、配列番号:13(表19参照)に示し、ここでヌクレオチド1-6はXbaI制限部位を表わし、ヌクレオチド6-8はリボソーム結合部位を表わし、ヌクレオチド9-11は開始コドンを表わし、ヌクレオチド12-389はTIMPコード配列を表わし、ヌクレオチド390-392は連結メチオニン残基をコードしている連結コドンを表わし、ヌクレオチド393-1574はAATコード配列を表わし、ヌクレオチド1575-1577は停止コドンを表わし、およびヌクレオチド1577-1582はSalI制限部位を表わす。
【0157】
【表28】
【0158】
【表29】
【0159】
発現ベクターは、pKC64 NotI/XhoI発現ベクターを使用し、SLAPIおよびTAPIの構築体について説明した。NTAPIの構築において使用した他のベクターは、pHG62およびpKC65であった。
【0160】
これらのコード配列は、下記のように構築した。N-TIMP-1は、TIMP-1pBlscからクローニングした。PCRプライマーは、5'-XbaI部位および3'-BstZ17-1部位で消化し、AATyc2との融合体としてN-TIMP-1(1-127)にサブクローニングした。AATの一部は、PCRによりAATyc2pCR4TOPOからPCRによりクローニングした。PCRプライマーは、5' BstZ17-1部位およびAATの3'独自のMfe1部位で消化した。3個の断片ライゲーションを、AATyc2pHG42 Xbal/Mfe1ベクター、XbaI/BstZ17-1断片としてN-TIMP-1をコードしているDNA、およびBstZ17-1/Mfel断片としてAATyc2をコードしているDNAと集成し、かつE. coliへクローニングし、MetN-TIMP-1/MetAATyc2 pHG42を作出した。MetN-TIMP-1/MetAATyc2 pHG42のNotI/XhoI断片を、pkC64 NotI/XhoIまたはpHG62へクローニングした。N-TAPIのアミノ酸配列を配列番号:14(表20参照)に示し、ここでアミノ酸1はイニシエーターメチオニン残基に相当し、アミノ酸2-127はヒトTIMP-1のアミノ酸1-126を表わし、アミノ酸128は連結メチオニンであり、およびアミノ酸129-522はヒトAATのアミノ酸1-394を表わしている。
【0161】
【表30】
【0162】
実施例 3: 逆方向融合タンパク質
タンパク質の逆方向(r)シリーズ、ここではrSLAPI、rTAPI、およびrN-TAPIは、タンパク質のアミノ末端にAATを、タンパク質のカルボキシ末端にSLPL、TIMP、またはN-TIMP-1のいずれかが続き、かつこれら2種のタンパク質の間の結合部に挿入されたメチオニンを伴うようにデザインされた融合タンパク質である。従って、アミノ酸1の開始メチオニンに続けて、成熟ヒトAATの394個のアミノ酸、別のメチオニン、およびその後各々成熟ヒトSLPIおよびヒトTIMP-1の107および184個のアミノ酸、またはN-TIMP-127のアミノ酸1-126が存在する。
【0163】
rSLAPI の構築
AATyc2+SLPI(aa1-107)の融合体であるrSLAPIは、SLAPIの逆方向である。これらのコード領域は、下記のようにSLPIの最初の2個のアミノ酸へPCRにより挿入した新規BspEI部位と融合した。3ピース(piece)ライゲーションは、AATyc2pHG42#3 HindIII/SalIベクターにおいて、HindIII/BspEI AAT断片およびBspE1/SalI SLPI断片により集成された。NotI/XhoI断片は、酵母ベクターpKC64にライゲーションした。pHG62またはpKC65も発現ベクターとして使用した。
【0164】
r-SLAPIの構築に使用したDNA配列は、配列番号:15(表21)に示し、ここでヌクレオチド1-6はXbaI制限部位を表わし、ヌクレオチド6-8はリボソーム結合部位を表わし、ヌクレオチド9-11は開始コドンを表わし、ヌクレオチド12-1193はAATのアミノ酸1-394のコード配列を表わし、ヌクレオチド1194-1196は連結メチオニン残基をコードしている連結コドンを表わし、ヌクレオチド1197-1517はSLPIコード配列を表わし、ヌクレオチド1578-1520は停止コドンを表わし、およびヌクレオチド1520-1525はSalI制限部位を表わす。
【0165】
【表31】
【0166】
【表32】
【0167】
r-SLAPIのアミノ酸配列を、配列番号:16(表22)に示し、ここでアミノ酸1はイニシエーターメチオニン残基に相当し、アミノ酸2-395はヒトAATのアミノ酸1-394に相当し、アミノ酸396は連結メチオニンであり、およびアミノ酸397-503はヒトAATアミノ酸1-107を表わしている。
【0168】
【表33】
【0169】
rTAPI の構築
AAT+TIMP-1(aa1-184)の融合体であるrTAPIは、逆方向TAPIである。このコード領域は、下記のようにPCRによりTIMP-1の最初の3個のアミノ酸へ挿入された新規PmlI部位と融合した。3ピースライゲーションは、HindIII/SalIベクターpBlsc、HindIII/PmlI断片として3'AATをコードしているDNAおよびPmlI/SalI断片としてTIMP-1をコードしているDNAから集成された。3'AAT/TIMP-1融合HindIII/SalI断片は、AATyc2 pHG42 HindIII/SalIへサブクローニングした。rTAPIは、r-SLAPIについて、NotI/XhoI断片として酵母ベクターpKC64において発現した。rTAPI発現ベクターpKC64の概略図は、図4に示した。rTAPIに使用した他のベクターは、pHG62およびpKC65である。
【0170】
r-TAPIの構築において使用したDNA配列を、配列番号:17(表23)に示し、ここでヌクレオチド1-6はXbaI制限部位を表わし、ヌクレオチド6-8はリボソーム結合部位を表わし、ヌクレオチド9-11は開始コドンを表わし、ヌクレオチド12-1193はヒトAATのアミノ酸1-394のコード配列を表わし、ヌクレオチド1194-1196は連結メチオニン残基をコードしているコドンを表わし、ヌクレオチド1197-1748はヒトTIMP-1のアミノ酸1-184のコドンを表わし、ヌクレオチド1749-1751は停止コドンを表わし、およびヌクレオチド1751-1756はSalI制限部位を表わす。
【0171】
【表34】
【0172】
【表35】
【0173】
r-TAPIのアミノ酸配列を、配列番号:18(表24参照)に示し、ここでアミノ酸1はイニシエーターメチオニン残基に相当し、アミノ酸2-395はヒトAATのアミノ酸1-394を表わし、アミノ酸396は連結メチオニンであり、およびアミノ酸397-580はヒトTIMP-1のアミノ酸1-184を表わしている。
【0174】
【表36】
【0175】
rN-TAPI の構築
AAT+N-TIMP-127(N-TIMPのaa1-126、リーディングメチオニンを伴う)の融合体であるrN-TAPIは、逆方向N-TAPIである。このコード領域は、下記のように、TIMP-1の最初の3個のアミノ酸へPCRにより挿入された新規PmlI部位に融合した。ライゲーションは、PmlI/SalI N-TIMPI断片により、rTAPI2pHG42 PmlI/SalIベクターにおいて集成した。NotI/XhoI断片は、酵母ベクターpKC64へライゲーションした。rNTAPIに使用した他のベクターは、pHG62およびpKC65であった。
【0176】
rN-TAPIの構築に使用したDNA配列は、配列番号:19(表25参照)に示し、ヌクレオチド1-6はXbaI制限部位を表わし、ヌクレオチド6-8はリボソーム結合部位を表わし、ヌクレオチド9-11は開始コドンを表わし、ヌクレオチド12-1193はヒトAATのアミノ酸1-394のコード配列を表わし、ヌクレオチド1194-1196は連結メチオニン残基をコードしているコドンを表わし、ヌクレオチド1197-1574はヒトTIMP-1のアミノ酸1-126のコドンを表わし、ヌクレオチド1575-1577は停止コドンを表わし、およびヌクレオチド1577-1582はSalI制限部位を表わしている。
【0177】
【表37】
【0178】
【表38】
【0179】
rN-TAPIのアミノ酸配列は、配列番号:20(表26参照)に示し、ここでアミノ酸1はイニシエーターメチオニン残基に相当し、アミノ酸2-395はヒトAATのアミノ酸1-394を表わし、アミノ酸396は連結メチオニンであり、およびアミノ酸397-522はヒトTIMP-1のアミノ酸1-126を表わしている。
【0180】
【表39】
【0181】
実施例 4:S- 連結した TAPI
融合タンパク質を作成する別の方法は、例えば、AATの単独のフリーのシステイン(232位、配列番号:2参照)のような、AATのフリーのシステインとジスルフィド橋を形成するためにフリーであるカルボキシル末端(aa128)に追加の天然のシステインを含む、N-TIMP1-128(アミノ酸1のMet+成熟TIMPの127個のアミノ酸)を発現することにより形成される。分子内および分子間のジスルフィド結合の形成法は、当該技術分野において公知である。N-TIMP 1-128のC-末端システインを欠いているN-TIMP 1-127も構築した。N-TIMP 1-127は、N-TIMP 1-128とのアッセイにおいて陽性対照として利用する。N-TIMP 1-127およびN-TIMP 1-128の両方が、AATに加えて他のプロテアーゼインヒビターとの融合タンパク質において有用である。N-TIMP 1-128は、その末端システインのために有用であり、別のペプチド鎖との例えばジスルフィド橋形成のために、チオール基において反応を可能にする。
【0182】
N-TIMP 1-127
N-TIMP 1-127は、pHG42 Xba/SalベクターにおいてTIMP-1 pBlscからの5'XbaIおよび3'SalI PCR断片として集成した。N-TIMP 1-127の構築において使用したDNA配列は、配列番号:21(表27)に示され、ここでヌクレオチド1-6はXbaI制限部位を表わし、ヌクレオチド6-8はリボソーム結合部位を表わし、ヌクレオチド9-11は開始コドンを表わし、ヌクレオチド12-389はTIMPのアミノ酸1-126のコード配列を表わし、ヌクレオチド390-392は停止コドンを表わし、およびヌクレオチド392-397はSalI制限部位を表わしている。
【0183】
【表40】
【0184】
N-TIMP 1-127を含む構築体において使用したアミノ酸配列を配列番号:22(表28参照)に示し、ここでアミノ酸1はイニシエーターメチオニン残基に相当し、およびアミノ酸2-127はヒトTIMP-1のアミノ酸1-126を表わしている。この構築体を、NotI/XhoI断片として、pKC64 NotI/XhoIベクターにクローニングした。この構築体に使用した他のベクターは、pHG62およびpKC65である。
【0185】
【表41】
【0186】
N-TIMP 1-128
N-TIMP 1-128は、pHG42 Xba/SalベクターにおいてTIMP-1 pBlscからの5'XbaIおよび3'SalIのPCR断片として集成した。N-TIMP 1-128の構築に使用したDNA配列は、配列番号:23(表29参照)に示し、ここでヌクレオチド1-6はXbaI制限部位を表わし、ヌクレオチド6-8はリボソーム結合部位を表わし、ヌクレオチド9-11は開始コドンを表わし、ヌクレオチド12-392はTIMPのアミノ酸1-127のコード配列を表わし、ヌクレオチド393-395は停止コドンを表わし、およびヌクレオチド395-400はSalI制限部位を表わしている。
【0187】
【表42】
【0188】
N-TIMP 1-128のアミノ酸配列は、配列番号:24(表30参照)に示し、ここでアミノ酸1はイニシエーターメチオニン残基に相当し、およびアミノ酸2-128はヒトTIMP-1のアミノ酸1-127を表わしている。
【0189】
【表43】
【0190】
N-TIMP 1-128は、例えば、AATの単独のフリーシステイン(232位、配列番号:2参照)のように、AATのシステインとのジスルフィド橋からフリーであるカルボキシル末端(aa128)に追加の天然のシステインを含む。この構築体を、NotI/XhoI断片としてpKC64 NotI/XhoIベクターにクローニングした。この構築体に使用した他のベクターは、pHG62およびpKC65であった。N-TIMP 1-128のDNAの構築体は、実施例2において説明されており、かつそのDNA配列は表29に示されている。N-TIMP 1-128のアミノ酸配列は、表30に示されている。
【0191】
実施例 5: 組換え SLPI/AAT 融合タンパク質の酵母における発現
SLPIおよびAATの融合タンパク質(SLAPIと称す、そのDNAおよびアミノ酸配列は、各々、配列番号:7および8に示した)は、実施例1に説明されたように調製し、およびAAT単独を、下記成分を含む酵母ベクターにおいて細胞内で発現した:ADH2プロモーターおよびターミネーターは、組換えタンパク質の発現を起動し、かつURA3遺伝子は、ウラシル欠損培地における酵母の増殖に関する選択マーカーを提供する。酵母2ミクロン配列は、酵母におけるベクターの自律複製に必要である。これらのプラスミドを収容している酵母の形質転換体を、YEPD培地におて増殖し、かつ細胞溶解液を、総タンパク質、捕獲ELISAによるAAT濃度、およびエラスターゼ阻害活性について分析した。
【0192】
下記表31は、2 YEPD-ベースの培地、DifcoおよびRed Starにおいて増殖したAATおよびSLAPI培養の結果を示している。ELISAは、AAT単独の、または融合パートナーとしての定量が可能であると仮定すると、抗-エラスターゼ活性/mg AAT/SLAPIの単位の比活性は、粗溶解液中で異なるレベルで発現されたタンパク質の直接比較を可能にしている。
【0193】
【表44】
【0194】
AATおよびSLAPLは両方とも、粗溶解液中で検出可能な抗-エラスターゼ活性および特異的AAT産生を有している。発現レベルは異なる培地において各分子について変動するが、SLAPIの比活性は、DifcoおよびRed Star培地において、各々AATよりも 2.0-および1.9-倍高かった。これらの結果は、SLAPI融合タンパク質は、AATの比活性を倍増することを示し、このことはこの分子のSLPIおよびAATの半分は、各々、エラスターゼに対する阻害活性を示していることを示唆している。
【0195】
実施例 6: ブタ膵臓エラスターゼを用いる AAT 活性のアッセイ
定義/略号
rAAT:組換えα1-アンチトリプシン、BSA:ウシ血清アルブミン、DMSO:ジメチルスルホキシド、OD:光学濃度、PPE:ブタ膵臓エラスターゼ、%CV:変動係数(100 X 標準偏差÷平均、%として)
【0196】
材料および装置
多チャンネルピペッター:BioHit ProlineまたはEppendorfの5〜100μL。多チャンネルピペッター:BioHit ProlineまたはEppendorfの50〜1200μL。5〜1000μL送達のための検量したマイクロピペッター;Gilson PipetmanまたはVWR。ピペットチップ;Rainin GPS-250SおよびRainin GPS-1000SまたはVWR。多チャンネルピペッティング用の使い捨て試薬容器;Costar社カタログ番号4870、非-PVC材組成、例えばLabCor 730-004。マイクロタイター平底プレート;Immulon 2、Dynex社カタログ番号011-010-3855、またはNunc VWR社カタログ番号269620。マイクロプレートシーラー、Dynex社カタログ番号5701、またはマイクロプレートカバー、Dynex社カタログ番号24712-163。軌道振盪機;IKA Schuttler MTS 4、またはジャイロトロン振盪機モデルg2、New Brunswick Scientific社。マイクロプレートリーダー;Molecular Devices SPECTRAmax 190またはSpectraMax340またはVmaxまたはThermoMax。分析用天秤。pHメーター。
【0197】
化学物質/試薬
Tris-HCl、電気泳動等級、Fisher社カタログ番号BP153-1。Tris塩基USP等級、Ameresco社カタログ番号T12007。塩化ナトリウム、ACS承認。ウシ血清アルブミン(BSA)、Fraction V、プロテアーゼ非含有;Golden West Biologicals社、カタログ番号BA1060。精製水、Milipore SuperQまたは同等物。ブタ膵臓エラスターゼ、Boehringer Mannheim社カタログ番号100 907、3-5単位/mg。DMSO、Sigma社カタログ番号D8779。N-Suc-Ala-Ala-VaI-Ala-pNA、Bachem社カタログ番号L-1410。rAAT標準品は本発明者らにより提供された。
【0198】
手順
AAT活性緩衝液、50mM Tris-Cl、0.5M NaCl、pH8.0、0.01%BSA:は、Tris-HCl 6.35gおよびTris-塩基1.18gを精製水800mL中に溶解し調製した。pHは、0.05M Tris-HClまたは0.05M Tris-塩基により、8.0±0.05に調節した。NaCl 29.22g、およびBSA 0.1gを添加し、溶解するまで混合した。精製水を1L添加した。この溶液を、0.2μm孔サイズのフィルターを通して濾過した。この溶液は、2〜8℃で最大2ヶ月間貯蔵することができる。PPE緩衝液、0.1M Tris-Cl、pH8.0:は、Tris-HCl 1.37gおよびTris-塩基0.236gを精製水80mL中に溶解し調製した。pHは、0.1M Tris-HClまたは0.1M Tris-塩基により、8.0±0.05に調節した。精製水を添加し100mLとした。この溶液を、0.2μm孔サイズのフィルターを通して濾過した。この溶液は、室温で最大2ヶ月間貯蔵することができる。PPEストック、1mg/mL:は、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)25mgをPPE緩衝液25mL中に溶解し調製した。この溶液は-60〜-80℃で最大6ヶ月間貯蔵することができる。凍結解凍は1回より多く繰り返してはならない。DMSO中の基質20mM N-Suc-Ala-Ala-Val-Ala-pNA:は、N-Suc-Ala-Ala-VaI-Ala-pNAをDMSO中に、DMSO 2.27mL中に25mgまたはDMSO 9.08mL中に100mg溶解し、調製した。室温で最大2ヶ月間貯蔵することができる。
【0199】
活性アッセイ
PPEカクテルの調製:は、1mg/mLのPPE 6μLを、AAT活性緩衝液12mL、または試行するプレート数に必要な量と混合し調製した。1個の96ウェルマイクロタイタープレートは、12mLのPPEカクテルを必要とする。
【0200】
試験試料の調製:試験される試料は、AAT活性緩衝液により段階希釈した。1個のウェルにつき各試料100μLを、3つ組で添加した。この希釈は、エラスターゼ活性の30〜70%阻害を達成するように標的化した。この範囲外の結果は、繰り返した。PPEカクテル100μl/ウェルを添加した。100μL/ウェルのアッセイ標準/対照、試験試料またはブランク(AAT活性緩衝液)を添加し、軌道振盪機上で250〜300rpmで30〜60秒間振盪し混合した。プレートにカバーをかけ、15(±1)分間周囲温度でインキュベーションした。基質10μlを、基質ブランク以外の各ウェルに添加し、軌道振盪機上で250〜300rpmで30〜60秒間振盪し混合した。プレートにカバーをかけ、60(±5)分間30±2℃でインキュベーションした。カバーを取除き、各ウェルの光学濃度を、マイクロタイタープレートリーダーセットを用い、400〜410nmで、10分以内に決定した。データはプリントし、テキストファイルとして保存した。
【0201】
計算
PPE酵素活性(基質としてN-スクシニル-L-アラニル-L-アラニル-L-アラニン-4-ニトロアニリド使用し決定された、製造業者の分析証明から)および試験試料タンパク質濃度の入力が必要であった。各々複数の対照および試験試料についての補正したODを、平均基質ブランクODを減算することにより算出した。各々複数の対照および試験試料の活性を算出した。阻害は、下記のように決定した:
阻害=1−(試料OD÷平均非阻害OD)
反応液中に存在する単位PPEは、下記のように決定した:
反応液中のPPE単位=エラスターゼ比活性(単位/mg(製造業者の分析証明から)) X 貯蔵濃度(mg/mL) X 添加したストック容量(mL)
阻害≧0.3および≦0.7について、活性は、単位/mLで決定した:
活性(単位/mL)=希釈因子 X 阻害 X 存在する単位PPE ÷ 総アッセイ容量(mL)
比活性は、下記のように決定した(単位/mg):
比活性=(単位/mL) ÷ (mg/mL)
【0202】
各試料セットについて、平均比活性、標準偏差およびCVを算出した。平均は、30〜70%阻害範囲内の全てのデータから決定した。
【0203】
実施例 7: TAPI-1 融合タンパク質によるブタ膵臓エラスターゼ阻害
酵母により産生された不溶性のペレット状物質からリフォールディングした融合タンパク質TAPI-1のブタ膵臓エラスターゼ阻害活性をアッセイした。実施例6のプロトコールを使用し、下記の変更を行った:5μg/ml PPE溶液、およびエラスターゼ合成基質N-Suc-Ala-Ala-Ala-pNA(6mM)を使用し、両方とも下記のアッセイ緩衝液中に溶解した:50mM Tris-HCl、500mM NaCl、pH8.0、0.01%BSA。
【0204】
条件は下記のようであった:試料またはブランクおよび対照のためのアッセイ緩衝液50μl。試料および対照にはPPE溶液25μLをまたはブランクにはアッセイ緩衝液を加えた。プレートを30℃で30分間インキュベーションし、その後基質100μLを添加した。試料を、マイクロプレートリーダーで、405nmおよび30℃ですぐに読みとった。阻害は、下記式を用い、3〜5分間に及ぶ時間経過での、対照中の呈色の割合(%)として算出した:
[(Abs405対照 − Abs405試料) ÷ Abs405対照 X 100%]
精製法の異なる工程で採取した試料につき、3回の独立した試行を行い、結果を表32に示した。
【0205】
【表45】
【0206】
これらの結果は、融合タンパク質構築のためにその未変性の状態から変更されているにもかかわらず、TAPI融合タンパク質は高度のエラスターゼ阻害活性を維持していることを示している。
【0207】
実施例 8: ヒト好中球エラスターゼを使用する AAT 活性アッセイ
材料および装置:
1.ヒト好中球エラスターゼ(HNE)、ロット番号EH2000-2a、Athens Research & Technology社:タンパク質100μgを含有する塩-非含有の凍結乾燥した粉末として供給;50mM 酢酸ナトリウム200μLで再構成、pH5.5、150mM NaCl;20μLアリコートに分割し(16.9μM)、-20℃で貯蔵。
2. Suc-Ala-Ala-Pro-Val-pNA (HNEの呈色基質)、Bachem社:50mgペプチドを含有する凍結乾燥した粉末として供給;10mL DMSO (8.67mM)で再構成;500μLアリコートに分割し、-20℃で貯蔵。
3. 活性アッセイ緩衝液:0.1M Tris-HCl、0.5M NaCl、pH7.5、室温で貯蔵。
4. 96ウェルマイクロタイタープレート、カタログ番号3474、Costar-Ultra Low Cluster社
5. 多チャンネルピペッター、VWR銘柄、5-50μLまたは同等物
6. 多チャンネルピペッター、VWR銘柄、50〜300μLまたは同等物
7. マイクロタイタープレートリーダーVersamax、Molecular Devices社
【0208】
方法:
1. マイクロタイタープレートリーダーの内部温度を30℃に設定し、かつこの温度で平衡化した。リーダーの波長は405nmに設定した。
2. 全ての試験は3つ組で行った。3回の結果を平均した。
3. HNE標準曲線を、2.5nM〜20nM反応濃度の範囲で作成した。
4. HNE試料を、活性アッセイ緩衝液により、80nM、40nM、20nM、10nM(HNE標準品)に希釈した。
5. 基質溶液を、活性アッセイ緩衝液中に、8.67mM当初のストック液を2mMへ希釈することにより調製した。
【0209】
これらの試薬を、下記の順番でウェル毎に添加した:
活性アッセイ緩衝液−プレートブランクについて、活性アッセイ緩衝液の1ウェル当り、200μL添加した。基質ブランクについて、活性アッセイ緩衝液の1ウェル当り、100μL添加した。HNE標準曲線について、活性アッセイ緩衝液の1ウェル当り、50μL添加した。不明なHNEについて、活性アッセイ緩衝液の1ウェル当り、100μL添加した。
【0210】
ヒト好中球エラスターゼ−HNE標準曲線について、第1列が80nM HNE標準品から始まり、酵素濃度の桁が減少するように、適当なHNE標準品の1ウェル当り、50μL添加した。不明なHNEについて、濃度不明の試料を、第1列のみ、1ウェル当り、100μL添加した。混合することにより、試料を活性アッセイ緩衝液と混合し、その後次の列へ混合物の1ウェル当り100μLを移すことにより、段階希釈を行った。追加の段階希釈は、不明の濃度試料が限定された範囲で活性を示すまで行った(1nM〜20nM HNE)。
【0211】
このプレートを、最低15分間、30℃でインキュベーションした。1mM基質溶液の1ウェル当り100μLを、プレートブランク以外の、全てのウェルに添加した。このプレートを密封し、設定5で1分間ボルテックスした。このプレートを、マイクロタイタープレートリーダーに配置し、30℃で5分間かけて進めた。このプレートは、キネティックモードで、1分間に1回の読みで、15分間読み取った。不明のHNE試料の濃度を、標準曲線上にその活性速度をプロットすることにより決定した。
【0212】
SLAPIのふたつの異なるHNE調製物に対する阻害活性を、前記プロトコールにより評価した。ヒト好中球エラスターゼ、20nM;組換えAAT、10nM;組換えヒトSLPI、10nM;SLAPI、10nM;Suc-Ala-Ala-Pro-Val-pNA、1mM。これらの試薬を、基質を添加する前に、30℃で15分間インキュベーションした。結果を、図5に示しているが、ここで10nM組換えAAT(rAAT)、10nM組換えヒトSLPI(rhSLPI)、およびSLAPIの10nMバッチの阻害活性は、ふたつの異なる時間試行(新しいSLAPIおよび古いSLAPI)で比較した。これらの結果は、SLAPIは、AAPまたはSLPI単独とモルベースで比較し、増強されたプロテアーゼ阻害活性を有することを示している。
【0213】
実施例 9 : RP-HPLC および SLAPI 活性測定によるトリプターゼ活性/阻害アッセイ
材料および装置:ヒト肺トリプターゼ、ロット番号996290、Cortex Biochem社:保存剤として、0.02%アジ化ナトリウムを伴う、10mM MES、300mM NaCl、0.02mMヘパリン、pH6.1中の、540μg/mL(17.4μM)溶液;20μLアリコートに分割し、-20℃で保存;血管活性腸管ペプチド、ロット番号Z0203、製品番号H-3775、Bachem社:ペプチド1mgを含有する凍結乾燥した粉末として提供;2.5mLアッセイ緩衝液により再構成(400μg/mLまたは120μM);100μLアリコートに分割し、-20℃で保存。組換えヒト分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(rhSLPI)、カタログ番号260-PI、R&D Systems社:タンパク質100μgを含有する凍結乾燥した粉末として提供;100mM Tris-HCl、10mM CaCl2、0.1% HSA、pH7.5中に再構成;30μL、8.55μMアリコートとし、-80℃で保存;アッセイ緩衝液:0.1M Tris-HCl、1.0μg/mLヘパリン、0.02%トリトンX100、pH8.0;室温で貯蔵;トリフルオロ酢酸;アセトニトリル、HPLC等級;水、HPLC等級;メタノールHPLC等級、100%;下記の同等の代替物を使用することができる:ウォーターモデル2690分離モジュール、ウォーターモデル996発光ダイオードアレイ検出器、Vydac 238MS54 C-18逆相カラム、0.45 X 25cm、300Å、5μm、Vydac社、Vydac 238GK54MSガードカラム/カートリッジシステム、直径4.6mm、5μm、Vydac、UpchurchモデルA-3 15プレカラムフィルター、UpchurchモデルA-103Xプレカラムフィルターフリット、ウォータースクリューネックバイアル、12X32mm、パーツ番号186000307、Poly Stringを備えたウォーター300μL Mandrel Point Insert、パーツ番号WAT094170。
【0214】
方法:移動相を、下記のように調製した:移動相A:水中の0.1%TFA。1mL TFAを、HPLC等級水999mLに添加した。移動相B:アセトニトリル中の0.1% TFA。1mL TFAをアセトニトリル999mLへ添加した。移動相C:100%メタノール。プレカラムフィルター、ガードカラム、および分析用カラムを装着した。このカラムヒーターを45℃に設定した。UV検出器の波長を215nmに設定した。最大圧力限界2000psiおよび最小圧力限界200psiに設定した。流量は、試行を通じて1mL/分に設定した。試行は、85%移動相Aおよび15%移動相Bで開始した。勾配を、t=0分での15%移動相Bからt=10分での42%移動相Bまで、直線傾斜路に維持した。この勾配は、15分間42%移動相Bで維持した。カラムを、t=30分で100%移動相Cで洗浄した。勾配を、t=30分での100%移動相Cから85%移動相Aおよび15%移動相Bまで、直線傾斜路に維持した。このカラムを、15%移動相Bで5分間再度平衡化した。
【0215】
VIPストックを、アッセイ緩衝液中で下記の濃度に希釈した:32μM、16μM、8μM、4μM、2μM(各々、105.6μg/mL、52.8μg/mL、26.4μg/mL、13.2μg/mL、6.6μg/mL)。これらは、アッセイ標準であった。これらの標準全てを、試料試行1回当り、50μL注入容量で試行した。得られた曲線の直線性(R2値)が≧0.970でありかつVIP標準の純度が>90%であるならば、試料の調製に進んだ。
【0216】
トリプターゼを、アッセイ緩衝液3nMに溶解した。トリプターゼ濃度が不明である場合は、A280分析を行い、未知の溶液の吸光度を得た。VIPをアッセイ緩衝液中39μMに希釈した。SLPIをアッセイ緩衝液中3μMに希釈した。トリプターゼおよびrhSLPI反応の理想のモル比は、1〜1000であった。
【0217】
これらの反応を下記の方法で試行した:1)トリプターゼ活性:陰性対照(VIPのみの反応):30μL VIPおよび60μLアッセイ緩衝液を混合した。この混合物90μL全てを、点投入/スクリュー首バイアル装置(point insert/screw neck vial apparatus)へ移した。対照50μL(注入容量)をアッセイした。トリプターゼ試料:3nMトリプターゼ30μL、39μM VIP 30μL、およびアッセイ緩衝液30μLを、微量遠心管内で混合した;この遠心管を、37℃で1時間インキュベーションし、その反応を3%TFAで停止した。この混合液90μLを、点投入/スクリュー首バイアル装置へ移した。対照50μL(注入容量)をアッセイした。
【0218】
2)トリプターゼ-SLPI阻害:陰性対照(VIPのみ反応):VIP 30μLおよびアッセイ緩衝液60μLを混合した。この溶液全て90μLを、点投入/スクリュー首バイアル装置へ移した。対照50μL(注入容量)をアッセイした。陽性対照(トリプターゼ-VIPのみ反応):3nMトリプターゼ30μL、39μM VIP 30μL、およびアッセイ緩衝液30μLを、微量遠心管内で混合した;この遠心管を、37℃で1時間インキュベーションした;その反応を3%TFAで停止した。この溶液90μL全てを、点投入/スクリュー首バイアル装置へ移した。対照50μL(注入容量)をアッセイした。阻害反応試料:3nMトリプターゼ30μLおよび3μM rhSLPI 30μLを、微量遠心管内で混合した;この遠心管を、37℃で1時間インキュベーションした;この溶液へ、39μM VIP 30μLを添加し;この遠心管を、37℃で更に1時間インキュベーションし;その反応を3%TFAで停止した。この混合液90μL全てを、点投入/スクリュー首バイアル装置へ移した。対照50μL(注入容量)をアッセイした。
【0219】
3)計算:全ての測定は、検量線に対する残留完全長VIPのピークサイズを基にした。
トリプターゼ活性を、%活性で計算した:
100 X [(陰性対照試行からの残留「完全長」VIP(μg/mL)−トリプターゼ試料試行からの残留「完全長」VIP(μg/mL)) ÷ 陰性対照試行からの残留「完全長」VIP(μg/mL)]
SLPIまたは他のトリプターゼインヒビターの効能は、%阻害率で計算した:
100 X [(阻害反応試料からの残留「完全長」VIP(μg/mL)−陽性対照試行からの残留「完全長」VIP(μg/mL)) ÷ (陰性対照試行からの残留「完全長」VIP(μg/mL)−陽性対照試行からの残留「完全長」VIP(μg/mL))]
【0220】
4)計算例:
データ:
陰性対照試行からの残留「完全長」VIP=46.05μg/mL
トリプターゼ試料試行からの残留「完全長」VIP(別名陽性対照)=4.85μg/mL
阻害反応試料からの残留「完全長」VIP=19.96μg/mL
計算:
%活性でのトリプターゼ活性:
100 X [(46.05μg/mL-4.85μg/mL) ÷ 46.05μg/mL] = 89.5%活性トリプターゼ
SLPIまたは他のトリプターゼインヒビターの効能(%阻害率):
100 X [(19.96μg/mL - 4.85μg/mL) ÷ (46.05μg/mL - 4.85μg/mL)] = 36.7%阻害
【0221】
SLAPI、SLPI、およびAATのトリプターゼ阻害活性を、前記プロトコールによりアッセイした。これらのアッセイの濃度:トリプターゼ、1nM;血管活性腸管ペプチド、1 5uM;アッセイ緩衝液、0.1M Tris-Cl (pH8.0)、1.5ug/mLヘパリン、0.02%Triton X-100;AAT、SLPI、またはSLAPIは、濃度0、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、および4500nMで存在した。
【0222】
結果は、図6に示し、ここで様々な濃度のSLPI、AAT(組換えAAT、rAAT)およびSLAPIによるトリプターゼ阻害を比較した。AATは、トリプターゼ-阻害活性を有さず、かつSLAPIのトリプターゼ-阻害活性は、SLPIとAATの間のトリプターゼ-阻害活性であった。これらの結果は、融合タンパク質構築に起因したその天然の状態からの変更にもかかわらず、SLAPI融合タンパク質は、高程度のトリプターゼ阻害活性を維持した。加えて、これらの結果は、先の実施例のブタおよびヒトの好中球エラスターゼのSLAPI阻害の結果と組合せて、プロテアーゼ阻害におけるSLAPIの二機能性を例証しており、この点で、これはトリプターゼおよびエラスターゼの両方を阻害する。
【0223】
実施例 10 : TAPI の COPD 病因に対する影響
A/Jマウスを、Ilomastat (MMPインヒビター)またはTAPIの非存在および存在下で、長期にわたりタバコの煙に、吸入装置(Aerogen)により曝露した。成体マウス(12週齢)は、タバコ2本/日に6日/週で1週間、3または6ヶ月間曝露した。
【0224】
気化したIlomastatへ毎日を基本に1週間曝露した後、マウスの気管支肺胞洗浄(BAL)におけるIlomastatの検出可能なマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)中和レベルが存在するかどうかを決定するために、パイロット実験を試行した。この試験は、各群5匹の動物の2群からなる。1群には、ネブライザーによるPBSのみ(対照)を30分間投与しその後喫煙させ、他方の群には、ネブライザーによるIlomastat(PBS中)を投与しその後喫煙させた。1週間後、BAL試料をマウスから採取し、Ilomastatの存在に関するHPLCおよびMMP-9阻害を評価した。これらの試料は、合成基質を用い、MMP活性についてもアッセイした。この試験の結果は、中程度に高い用量が少なくとも中和されていることを確認するための主試験においてマウスに投与される用量レベルの改善を補助する。
【0225】
【表46】
【0226】
喫煙開始後3ヶ月で始めたIlomastatおよびTAPIの最高用量の2群を含んだ。
【0227】
分析
右肺を、形態計測のために固定/膨張(inflation)およびパラフィン包埋に使用した。-Lm(肺胞壁間の平均距離、肺の弾性の測定)、SA/Vo (表面積/容量);および、炎症細胞流入:マクロファージ、T細胞流入は、免疫組織化学により、および好中球は形態学により評価した。
左肺は、BALのため - 薬物のMMP阻害のため;および、組織MMP活性のために使用した。
【0228】
実施例 11 :マトリックスメタロプロテアーゼ -9 (MMP-9) アッセイ
材料および装置:
1.活性MMP-9酵素、カタログ番号PF024-5UG、Oncogene Research Products社。5μg/50μLストックとして提供;50mM HEPESの450μLの添加により500μLに希釈、pH7.0、10mM CaCl2(最終濃度10ng/μl)。100μLアリコートに分割し、-80℃で保存。
2.ペプチド基質。カタログ番号H7145、Bachem社。DMF 1mL中に25mgを溶解した(最終濃度38mM)。ガラス瓶中で-20℃で保存。
3. ストック試薬:
0.5M HEPES、pH7.0、ddH2O中(10x ストック)
O.1M CaCl2、ddH2O中 (10x ストック)
0.1M Ellman試薬、EtOH中 (100x ストック)
4℃で保存。
4. 96-ウェルマイクロタイタープレート、カタログ番号3474、Costar社- Ultra Low Cluster
5.マイクロタイタープレートリーダー、Versamax、Molecular Devices社
【0229】
方法:
1. マイクロタイタープレートリーダーの内部温度を25℃に設定した。
2. 新鮮な試薬混合液を調製した。1個の96-ウェルプレートのために、15ml作成:2ml HEPESストック(最終50mM)、2ml CaCl2ストック(最終10mM)、0.5ml Ellmans試薬ストック(最終2.5mM)、基質ストック0.5ml(最終0.85mM)、10ml ddH2O
3.試薬混合液を150μ1/ウェルで添加した。
4. 試料を50μl/ウェルで添加した。段階希釈した試料は、50mM HEPES、pH7.0、10mM CaCl2 (希釈緩衝液、DB)で希釈した。最初の測定は、段階希釈に進む前の、1x (希釈していない)試料。段階希釈の範囲は、1x 試料の活性を基に調節した。
5. Abs410を、10〜15分毎に3時間読みとった。
【0230】
対照:
no MMP-9ブランク=DBの50μl。
+MMP-9対照 = MMP-9ストックの5μl(50ngまたは0.54pmol)+45μl DB。この収量は、2〜3時間で1.0AUであった。
【0231】
このアッセイは、酵素の安定性を最適化するために、25℃で試行した。酵素以外の発色を最小化するために、pHは、≦7.0であった。
【0232】
実施例 12 : N-TAPI のマトリックスメタロプロテアーゼ -9(MMP-9) およびエラスターゼ阻害アッセイ
N-TAPI(実施例2に説明されたように調製)-含有する酵母細胞溶菌液の不溶性画分からのタンパク質を、Huangらの方法(FEBS Letters、384:155-161(1996))によりリフォールディングした。この方法は、尿素を除去するための透析を、緩慢な希釈とそれに続く透析に置き換えたこと、2-メルカプトエタノールをグルタチオンに置き換えたこと、および最終精製カラムがカチオン-交換(CM-セルロース)樹脂ではなくアニオン-交換樹脂(Q-Sepharose)であることを除いて、正確に従った。
【0233】
最終精製カラムからのリフォールディングしたN-TAPI-2 に加え、3種のカラム画分に、実施例11に説明されたようなMMP-9阻害アッセイを施した。4種の画分全て、総タンパク質1〜2mg/mlを含み、かつ試料10μL(10〜20μg)を、MMP-9 25ng(0.29pmol)を含有するアッセイ混合物に添加した。4種のN-TAPI-2試料は、410nmの吸光度により5時間にわたり測定し、MMP-9活性の 93〜98%阻害を生じた。
【0234】
エラスターゼ活性も、このN-TAPIについて測定した。このアッセイ法は、実施例6のものであった。リフォールディングした材料に加え、3種のカラム画分の2種は、変更されたPPEアッセイを用い、98%以上の阻害を示した。
【0235】
これらの結果は、融合タンパク質N-TAPIは、TIMP-1のMMP-阻害活性およびSLPIのエラスターゼ-阻害活性の両方を保持していることを明らかにしている。従って、この構築体は真二機能性である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいてSLPI/AAT融合タンパク質の作出に使用される、酵母発現ベクターpHG62の概略図である。得られる発現されたタンパク質は、SLAPIと称される。
【図2】 図2は、酵母Saccharomyces cerevisiaeにおけるTIMP-1/AAT融合タンパク質の作成に使用される酵母発現ベクターpHG62の概略図である。得られる発現されたタンパク質は、TAPIと称される。
【図3】 図3は、酵母Saccharomyces cerevisiaeにおけるSLPI/AAT融合タンパク質(SLAPI)の作成に使用される酵母発現ベクターpKC65の概略図である。
【図4】 図4は、酵母Saccharomyces cereivisiaeにおけるAAT/TIMP-1融合タンパク質の作成に使用される酵母発現ベクターpKC64の概略図である。得られる発現されたプロテアーゼインヒビターは逆方向(r)TAPIと称される。
【図5】 図5は、組換えAAT、組換えSLPI、およびSLAPIによる、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)の阻害を示している。
【図6】 図6は、様々なモル比でのSLPI、SLAPI、およびAATによるトリプターゼ阻害を示している。
Claims (16)
- α1−アンチトリプシン(AAT)の1〜394位のアミノ酸および分泌型白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)の1〜107位のアミノ酸を含み、エラスターゼおよびトリプターゼを阻害することが可能な融合タンパク質。
- さらにカリクレインを阻害することができる、請求項1に記載の融合タンパク質。
- さらにカテプシンGを阻害することができる、請求項2に記載の融合タンパク質。
- さらにマスト細胞キマーゼを阻害することができる、請求項2または3に記載の融合タンパク質。
- 下記:
a)配列番号:2の1〜394位のアミノ酸;および
b)配列番号:4の1〜107位のアミノ酸
を含む、請求項4に記載の融合タンパク質。 - α1−アンチトリプシンの1〜394位のアミノ酸のカルボキシ末端が、分泌型白血球プロテアーゼインヒビターの1〜107位のアミノ酸のアミノ末端に連結されている、または分泌型白血球プロテアーゼインヒビターの1〜107位のアミノ酸のカルボキシ末端が、α1−アンチトリプシンの1〜394位のアミノ酸のアミノ末端に連結されている、請求項5に記載の融合タンパク質。
- 配列番号:2の1〜394位のアミノ酸のカルボキシ末端が、配列番号:4の1〜107位のアミノ酸のアミノ末端に連結されている、請求項6に記載の融合タンパク質。
- 配列番号:4の1〜107位のアミノ酸のカルボキシ末端が、配列番号:2の1〜394位のアミノ酸のアミノ末端に連結されている、請求項6に記載の融合タンパク質。
- 配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1〜4および6〜8のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
- 配列番号:16に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードしているポリヌクレオチド。
- 請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
- 請求項12に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
- 融合タンパク質を発現するのに適した条件下で、請求項12に記載の発現ベクターを含む形質転換された宿主細胞を培養する工程を含む、請求項1〜4および6〜10のいずれか1項に記載の融合タンパク質を産生する方法。
- 更に融合タンパク質を精製する工程を含む、請求項14に記載の方法。
- 医薬として許容できるベヒクルに混合された、気腫、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、中耳炎または外耳炎の治療に使用するための請求項1〜4および6〜10のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む、医薬組成物。
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