JP4407134B2 - 鉄基焼結体の製造方法および焼結用圧縮成形体 - Google Patents
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Description
本発明は鉄粉の鉄基焼結体の製造方法に係り、特にプレフォームに対し冷間鍛造と仕上げ焼結を施して鉄基焼結体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄基焼結体は量産性高くニアネットシェイプに成形できるので、自動車部品等の機械部品の加工の合理化を図ることができ、工業的に広く利用されている。鉄基焼結体の強度はその密度とほぼ比例していることが知られており、そのため金属粉末を圧粉成形後予備焼結したプレフォームを冷間で鍛造後、仕上げ焼結して高密度の焼結体とする方法が採用されている。たとえば、特許文献1には、上記一連の工程において予備焼結後のプレフォームの密度を7.3以上とすることが高密度の焼結体を得るのに有効であることが開示されている。また、特許文献2には、冷間鍛造後の成形体の密度を高くするのが有効であることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11-117002号公報 (段落0050〜0053、図3)
【特許文献2】
特開2002-294388号公報 (表2,表5,表8)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの手段によりプレフォームあるいは冷間鍛造後の焼結用圧縮成形体の密度を上げるには、圧粉成形のための、あるいは冷間鍛造のための金型やプレス機械等の設備を強力なものにしなければならず設備コストがかさむ。また、得られる製品の形状も制限を受ける。さらに、上記手段によるときは、仕上げ焼結の温度が通常1000℃を超えるものとされており、操業コストを押し上げる原因となっている。
【0005】
本発明は、上記一連の工程を含む鉄基焼結体の製造コスト上の問題を解決し、さらには、製造プロセスの短縮も可能とすることを目的とする。特にプレス成形費によるコストアップを抑制しつつ、比較的低温度で仕上げ焼結の進行度の高い高密度鉄基焼結体を製造する方法を提案するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鉄基焼結体の製造工程、特に仕上げ焼結における焼結進行のメカニズムに着目し、冷間鍛造後の焼結用圧縮成形体の歪み(内部歪み)量の大きさが仕上げ焼結温度に大きな影響を及ぼしていることを知って本発明を完成した。特に、かかる歪み量をFe(200)面のX線回折線の半価幅により評価すれば、冷間鍛造後の焼結用圧縮成形体の仕上げ焼結性がよいもの、すなわち比較的低温の仕上げ焼結温度で十分な機械的、組織的特性を有する鉄基焼結体を得られるものを選別できることを知って本発明を完成した。
【0007】
本発明に係る鉄基焼結体の製造方法は、鉄基金属粉末を圧粉成形後予備焼結してプレフォームとし、該プレフォームに対して冷間鍛造と仕上げ焼結を行う鉄基焼結体の製造方法において、冷間鍛造により得られた焼結用圧縮成形体のFe(200)面のX線回折線の半価幅が0.2°以上である焼結圧縮成形体は仕上げ焼結温度を750〜980℃とし、0.2°未満である焼結用圧縮成形体は、仕上げ焼結温度を1000℃を超える温度とするものである。
【0008】
上記発明において、前記冷間鍛造による冷間鍛造比を10〜30%とすることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる鉄基焼結体の製造のための基本的な工程は、図1に示すとおりであり、圧粉成形工程、予備焼結工程、冷間鍛造工程、及び仕上げ焼結工程を含む。圧粉成形工程では、鉄基金属粉、黒鉛粉、合金用粉等の混合粉が圧粉、成形され、予備焼結工程では、圧粉成形工程で得られた圧粉体の予備焼結が行われてプレフォームが得られ、このプレフォームは冷間鍛造工程に付される。これら圧粉成形、予備焼結の各工程は特に制限されるものではなく、従来公知の手段をそのまま採用できる。
【0010】
たとえば、混合粉としては、質量比で、C:0.05%以下、O:0.02〜0.3%、N:50ppm以下を含有し、残部が鉄と不可避的不純物からなる鉄基金属粉に必要に応じて黒鉛粉を0.03〜0.5%、さらに必要に応じて合金成分としてMn:1.0%以下、Mo:2.0%以下、Cr:3.0%以下、Ni:5.0%以下、Cu:2.0%以下、V:1.0%以下から選ばれる1種または2種以上を配合したものを利用することができる。また、上記合金成分は、鉄基金属粉に予合金として含ませてもよく、鉄基金属粉の粒子表面に拡散付着させた部分合金粉として用いてもよい。
【0011】
圧粉成形には、たとえば特許文献1に開示されたプレス成形法を採用することができる。これにより成形体の抜き出し力やスプリングバックをより小さくすることができ、高密度の成形体を容易に製造することができる。なお、金型潤滑法、温間成形法あるいはこれらの方法を組み合わせて用いることも自由である。
【0012】
予備焼結も公知の手段を利用でき特に制限されない。たとえば、特許文献2に開示されているように、真空中、Arガス中、あるいは水素ガス等の非酸化性でかつ窒素分圧が30kPa以下の非酸化性雰囲気において、1000〜1300℃の温度範囲で予備焼結を行う方法が採用できる。これにより製品に、遊離黒鉛に起因した空孔が少なくなるという利益が得られる。
【0013】
冷間鍛造も公知の手段を採用できる。通常のプレスによる圧縮成形技術が採用できる他、圧延やロールフォーミングによることもできる。また、冷間鍛造前にプレフォームに低温度、たとえば600〜800℃程度の焼鈍を行うと、冷間鍛造時の成形性が改善されるという利益が得られる。
【0014】
冷間鍛造により得られた焼結用圧縮成形体は次いで仕上げ焼結に付される。その際、歪み量の大きいものと小さいものでは仕上げ焼結条件、特に焼結温度が異なる。そのため、冷間鍛造により得られた焼結用圧縮成形体の歪み量を計測し、その計測結果に応じて仕上げ焼結条件を変更する。歪み量の測定手段は、例えば抜き取りによる破壊検査法、あるいは全数の非破壊検査法等があり、いずれを適用してもよい。しかし大量に生産される焼結用圧縮成形体の歪み量を正確に測定するには、非破壊検査法、特にX線回折法によるのが好ましい。就中、X線回折法を用いた場合、以下に説明するように、焼結用圧縮成形体のFe(200)面のX線回折線の半価幅の程度により歪み量を測定するのが焼結温度の仕分けと関連して好結果をもたらす。
【0015】
このように、焼結用圧縮成形体の歪み量を測定し、それにより仕上げ焼結条件を変更することにより仕上げ焼結に要するエネルギーコストを低くしながら、十分な特性を持った鉄基焼結体を得ることができる。特に、後述するように冷間鍛造工程により得られた焼結用圧縮成形体のうちFe(200)面のX線回折線の半価幅(以下X線半価幅という)が0.2°以上のものは仕上げ焼結工程における焼結温度を低くすることができ、製造にかかるエネルギーコストを低くすることができる。したがって上記冷間鍛造工程の条件は、焼結用圧縮成形体においてこのような特性が存在する割合が高くなるものとすべきである。そのような条件を一律に定めることは困難であり、焼結用圧縮成形体を得るための種々の操業パラメータを解析して望ましい条件を選定する。たとえば冷間鍛造比、すなわちプレフォームの厚さに対する焼結用圧縮成形体の厚さの比を10%以上とすることは、後に示すように望ましい条件の一つである。
【0016】
X線半価幅の測定にあたっては、まず焼結用圧縮成形体の表面あるいは断面を鏡面研磨した後、ナイタールなどの腐食液でエッチング処理して研磨歪みを除去した平面に対して、Co-Kα線(波長1.79Å)により、ディフラクトメーター法でFe(200)面の回折角近傍(2θ=76〜79 deg)での回折強度を測定する。この測定によって得られた回折パターンは、例えば図5のような形状となる。このパターンで示される最大回折強度Imaxに対して、強度が(1/2)Imaxとなる回折角2θの幅を半価幅とする。
【0017】
表1は、質量比で(以下同じ)、Mn:0.12%、O:0.15%、C:0.007%、N:20ppmを含有する平均粒径75μmの純鉄粉(川崎製鉄製KIP300A)100部(質量基準、以下同様)に対し、天然黒鉛0.3部とステアリン酸亜鉛0.3部を混合後、圧粉成形により縦×横×厚さが80mm×40mm×15mmで密度7.4Mg/m3の圧粉体とし、これをアンモニア分解ガス気流中で1050℃×30min間予備焼結してプレフォームとし、このプレフォームに対し種々の冷間鍛造率で冷間鍛造をし、その後種々の温度で仕上げ焼結を行なって鉄基焼結体とした場合の、焼結用圧縮成形体のX線半価幅と得られた鉄基焼結体のディンプル面積率の関係を示す表である。また、図2は、表1に記載のデータについて、仕上げ焼結温度が860℃の場合にX線半価幅と鉄基焼結体のディンプル面積率の関係を明瞭に示すために整理したグラフである。
【0018】
なお、表1に示すデータにおいて、冷間鍛造率とは、厚さ15mm、加圧表面80mm×40mmの成形体を、加圧面が67mm×33mmのパンチで後方押し出し冷間鍛造法により圧縮した場合の、圧縮部の最終厚さの原厚さに対する比である。また、仕上げ焼結は、体積比で水素10%、窒素90%の気流中で所定温度に1時間保持する条件で行ったものである。X線半価幅は、焼結用圧縮成形体を中央部分で切断し、その横断面中心部のFe(200)面のX線回折線の半価幅から求めた。半価幅は鉄の格子面間隔の変化と関係しており、半価幅が大きいほど成形体の歪み量が多いことを示している。また、ディンプル面積率とは、焼結の進行度を示す指標であり、焼結により拡散結合した鉄基粉末粒子の全粒子に対する割合を示している。具体的にはディンプル面積率は、鉄基焼結体から切り出した引張り試験片破断後の破断面のSEM像から焼結により拡散焼結した粒子状部分を示す凹凸破断面をディンプル面積として測定し、その面積の全視野に占める割合より求めたものである。
【0019】
【表1】
【0020】
表1および図2から、焼結用圧縮成形体のX線半価幅が増大するにつれ、鉄基焼結体のディンプル面積率が大きくなり、X線半価幅が0.2°以上になると鉄基焼結体のディンプル面積率がほぼ60%以上となることが分かる。さらに、X線半価幅が0.25°以上ではディンプル面積率が65%以上となる。しかし、X線半価幅が0.3°を超えてもディンプル面積率の増加は停滞する。このことから、焼結用圧縮成形体のX線半価幅が0.2°以上の特性をもつ焼結用圧縮成形体は、仕上げ焼結温度を860℃としてもディンプル面積率の高い、いいかえれば焼結が十分行われた鉄基焼結体となることを示している。なお、上記データから解るように安定して焼結が十分行われた鉄基焼結体を得るには、X線半価幅を0.25°以上とすることが好ましい。
【0021】
発明者らが行った実験によれば、上記のような関係は種々の鉄粉、製造方法について広く認められる。したがって、本発明では焼結用圧縮成形体のX線半価幅が0.2°以上の特性をもつものを、仕上げ焼結性がよいものとして仕分けし、それについては比較的低い温度で仕上げ焼結を行うことにする。
【0022】
図3は、表1に記載のデータについて、冷間鍛造比が26.7%の試験番号5及び8〜11の焼結用圧縮成形体についての仕上げ焼結温度と仕上げ焼結によって得られた鉄基焼結体のディンプル面積率の関係を示すグラフである。これらの焼結用圧縮成形体はすべてX線半価幅が0.29°で表されるひずみをもっているが、仕上げ焼結温度の上昇ともにディンプル面積率が増加し、仕上げ焼結温度が750℃のときほぼ60%に達する。しかしながら、それ以上の焼結温度ではディンプル面積率の増加の程度は小さく、仕上げ焼結温度が980℃でディンプル面積率増加の程度は飽和する。したがって、X線半価幅の値が大きい焼結用圧縮成形体では、仕上げ焼結温度を750〜980℃、好ましくは800〜980℃とするのが好適であり、これにより仕上げ焼結にかかるエネルギーコストの節減を図ることができる。なお、X線半価幅が0.2°より小さい、すなわち冷間鍛造において導入された歪み量の少ない焼結用圧縮成形体は、従来どおり1000℃を超える温度で仕上げ焼結を行えばよい。
【0023】
以上説明したように本発明では、冷間鍛造により得られた焼結用圧縮成形体の歪み量を計測し、その計測結果に応じて仕上げ焼結条件を変更する。その典型例では、X線半価幅によって焼結用圧縮成形体を仕分け、それにより仕上げ焼結工程の条件を変更し、X線半価幅が大きいものでは比較的低温の仕上げ焼結温度を採用する。
【0024】
図4は、表1に記載のデータについて、冷間鍛造比が4.2%〜40.0%の試験番号1〜7の焼結用圧縮成形体についての冷間鍛造率とX線半価幅との関係を整理したグラフである。ここに示されるように、冷間鍛造率をたとえば10%以上、好ましくは20〜30%とすることによってX線半価幅が十分大きくなる。しかし、30%を超えて冷間鍛造率を高めても、X線半価幅の向上はあまり認められず、かえって操業コストの上昇等の不利がある。
【0025】
本発明を適用して経済的に仕上げ焼結進行度の高い鉄基焼結体を製造するには以下のようにするとよい。まず最終製品の形状・寸法を基に、冷間鍛造率が10%以上、好ましくは20〜30%となるようにプレフォームの形状が設計される。この設計に基づき所定の原料粉を圧粉成形、予備焼結し、得られたプレフォームを冷間鍛造する。次に、このようにして得られた焼結用圧縮成形体のX線半価幅を測定する。この値が0.2°以上、好ましくは0.25°以上であることが確認できれば、仕上げ焼結温度が750〜980℃の範囲の低温仕上げ焼結を適用することができる。しかし、得られた焼結用圧縮成形体のX線半価幅が0.2°未満であれば、低温仕上げ焼結を適用できない。その場合、プレフォームの形状を再設計して得られる焼結用圧縮成形体のX線半価幅が0.2°以上となるようにする。このようにして本発明によれば、最適なプレフォーム形状の設計と省エネルギーの仕上げ焼結により製品コストの低減が可能となる。
【0026】
しかしながら、上述の措置をとってもX線半価幅が0.2°未満の焼結用圧縮成形体が生ずることがある。そこで、図1に示すように、冷間鍛造工程に続いて焼結用圧縮成形体のX線半価幅測定工程及びその測定結果に基づいて焼結用圧縮成形体を仕分ける焼結用圧縮成形体仕分け工程を設ける。そして、X線半価幅がたとえば0.2°以上のものは低温の仕上げ焼結炉に導き、一方X線半価幅が0.2°未満のものは高温の仕上げ焼結炉に導くようにする。なお、X線半価幅の測定結果を、たとえば冷間鍛造工程あるいはさらに予備焼結工程にフィードバックしてX線半価幅が所定の値を満たすようにすれば、焼結性のよい焼結用圧縮成形体の収率を大きくすることもできる。
【0027】
上記により得られた鉄基焼結体には、必要に応じて熱処理が行われ、自動車等の部品となる。かかる熱処理については、本発明により制限を受けるものではなく、ガス浸炭焼入、真空浸炭焼入、光輝焼入、高周波焼入等の表面硬化処理、あるいは焼き入れ・焼戻しなどの強化処理などを自由に行える。なお、上記熱処理工程を、仕上げ焼結工程と連続して行うこともでき、これにより製造プロセスを短縮することができる。例えば、仕上げ焼結を850℃、カーボンポテンシャルが1.0%(mass%相当、以下同様)程度の雰囲気で行った後、60℃程度の油中に焼入することにより、仕上げ焼結と浸炭焼き入れを一工程で行うこともできる。なお、カーボンポテンシャルとは、金属便覧(改訂第5版)第551頁に記載されているガス浸炭時の平衡炭素濃度に相当するガス浸炭能をいう。
【0028】
上記の条件で製造された鉄基焼結体は、焼結の進行度が高いためその鉄粉粒子間の結合度が十分高くなり、下記の実施例により示されるように浸炭処理、焼き入れ、焼戻し後の回転曲げ疲労強度、面圧疲労強度は十分満足するレベルとなる。
【0029】
【実施例1】
Mn:0.12%、O:0.15%、C:0.007%、N:20ppmを含有する平均粒径75μmの純鉄粉(川崎製鉄製KIP300A)に、酸化モリブデン(MoO3)粉末を混合後の全質量の0.9%となるように混合した。この混合物を、水素雰囲気で875℃×60min保持して、鉄粉粒子表面にMoが部分的に付着したMo拡散付着粉とした。このMo拡散付着粉の組成はMo:0.58%、Mn:0.14%、O:0.11%、C:0.007%、N:23ppmであった。このMo拡散付着粉100部に対し、天然黒鉛0.35部とステアリン酸亜鉛0.3部を混合後、圧粉成形により縦×横×厚さが80mm×40mm×15mmで密度7.4Mg/m3の圧粉体とし、これをアンモニア分解ガス気流中で1050℃×30min間予備焼結してプレフォームとし、そのプレフォームを加圧面が67mm×33mmのパンチで後方押し出し冷間鍛造法により冷間鍛造率33.3%で再圧縮して焼結用圧縮成形体を得た。この焼結用圧縮成形体のX線半価幅は、0.31°であった。
【0030】
上記の焼結用圧縮成形体を、880〜1130℃の所定の温度で仕上げ焼結した後、得られた鉄基焼結体から直径8mmの試料を切り出した。なお、仕上げ焼結は、体積比で水素10%、窒素90%の気流中で所定温度に1時間保持して行った。また切り出した試料は、カーボンポテンシャル1.0%の雰囲気の下で、870℃×60minの浸炭処理後、90℃の油中に油焼入れし、さらに150℃で焼戻し熱処理を行い、回転曲げ疲労試験片とした(A工程による試験片)。
【0031】
これとは別に、上記焼結用圧縮成形体から直接直径8mmの回転曲げ試験片に相当する試料を切り出し、これをカーボンポテンシャル1.0%の雰囲気の下で880℃×60min間の仕上げ焼結兼浸炭処理を行い、その温度から直接90℃の油中に油焼き入れし、150℃で焼戻して回転曲げ疲労試験片とした(B工程による試験片)。
【0032】
上記A及びBの各工程で得られた試験片について、小野式回転曲げ疲労試験機により疲労試験を行った。その結果いずれの工程で得られた試験片についても、回転曲げ疲労強度は600MPa以上であり、また、その強度は仕上げ焼結温度にほとんど依存していなかった。いいかえれば、本発明により、比較的低温度で仕上げ焼結したものであっても、従来の高温度(1130℃)で仕上げ焼結をしたものと同等の焼結進行度が高く、疲労強度の高い高密度鉄基焼結体を安定して製造できることが分かった。また、仕上げ焼結中に浸炭も行うB工程によれば製造プロセスの短縮化が可能であることが分かった。
【0033】
【実施例2】
実施例1と同じ鉄基混合粉を用いて直径60mm×厚さ15mmの圧粉体を得、この圧粉体を実施例1と同条件で予備焼結をして得たプレフォームを直径50mmのパンチで冷間鍛造率33.3%の冷間鍛造をした。この場合のX線半価幅は0.28°であった。得られた焼結用圧縮成形体から、直径60mm×厚さ5mmの円盤状試料を切り出した後、実施例1と同条件(A工程とB工程の条件)の熱処理をして得られた試料について、森式6球型面圧疲労試験機により面圧疲労強度を測定した結果、いずれの条件による試料についても5GPaの面圧疲労強度を示した。この結果より実施例1と同様に、X線半価幅を十分大きく取った場合には、低い仕上げ焼結温度でも従来品と同等の高い面圧疲労強度のものが得られ、また、製造プロセスの短縮化が可能であることが分かった。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、比較的低温度であっても安定して焼結進行度が高く、疲労強度の高い高密度鉄基焼結体を製造できる。また、本発明の適用により仕上げ焼結エネルギーコストを節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る鉄基焼結体の製造工程を示すフローダイヤグラムである。
【図2】 表1に記載のデータのうち仕上げ焼結温度が860℃の場合について、X線半価幅と鉄基焼結体のディンプル面積率の関係を整理したグラフであり、X線半価幅に対するディンプル面積率の関係を示すグラフである。
【図3】 表1の試験片番号5及び8〜11の焼結用圧縮成形体についての仕上げ焼結温度と仕上げ焼結によって得られた鉄基焼結体のディンプル面積率の関係を示すグラフである。
【図4】 表1に記載のデータについて、冷間鍛造率が4.2%〜40.0%の試験片番号1〜7の焼結用圧縮成形体についての冷間鍛造率とX線半価幅との関係を示すグラフである。
【図5】 Fe(200)面のX線回折角近傍(2θ=76〜79 deg)での回折強度分布と、この場合のX線半価幅を示す解説図である。
Claims (2)
- 鉄基金属粉末を圧粉成形後予備焼結してプレフォームとし、該プレフォームに対して冷間鍛造と仕上げ焼結を行う鉄基焼結体の製造方法において、冷間鍛造により得られた焼結用圧縮成形体のFe(200)面のX線回折線の半価幅が0.2°以上である焼結圧縮成形体は仕上げ焼結温度を750〜980℃とし、0.2°未満である焼結用圧縮成形体は、仕上げ焼結温度を1000℃を超える温度とすることを特徴とする鉄基焼結体の製造方法。
- 前記冷間鍛造による冷間鍛造比を10〜30%とすることを特徴とする請求項1記載の鉄基焼結体の製造方法。
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