JP4264304B2 - プロピレン系樹脂組成物、及びその成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装性に優れた、プロピレン系樹脂組成物に関する。詳しくは、本発明は、塗装性と機械物性のバランスに優れた、プロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンは、主に射出成形用材料として、家電製品の部品に代表される工業部品分野で、幅広く使用されている。特にテレビ、冷蔵庫、洗濯機や掃除機等の部品は、ポリプロピレン系材料が主要素材として使用されている。
これらの部品は意匠性付与のために、表面に塗装を施すケースが多いが、ポリプロピレンは塗膜密着性に乏しいため、ポリプロピレン部品の表面にプライマーを塗布して、塗膜を密着させる工夫がなされている。
【0003】
しかしながら、このプライマーは、有機溶剤を溶媒として含むため、排出VOCの原因となり、環境負荷を増大させている。
このため、ポリプロピレンに塗膜密着性を付与することにより、プライマー成分を塗布することなく塗膜を密着させ、環境負荷を低減させる試みがなされている。
例えば、ポリプロピレンに極性官能基がグラフトされた変性ポリプロピレンを塗装改質材としてポリプロピレンに練り込み、プライマーを塗布すること無く、塗膜を密着させる方法が示されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。しかしながら、これらの方法では、塗膜を密着させるために多量の変性ポリプロピレンを添加しなければならず、これに伴い衝撃強度等の機械物性が大幅に低下してしまうという欠点を持っていた。さらに、近年の環境負荷低減の要望から、塗料溶媒を、従来の有機溶剤から水へと変更することも望まれており、これに伴い、塗料溶媒とポリプロピレンとの濡れ性が低下するため、従来の溶剤系塗料を使用する場合に比べ、更に多量の変性ポリプロピレンを添加しなければならず、従来の方法では、水性塗料に対する塗装性を満足させるためには、機械物性を大幅に犠牲にすることが必要であった。このため、水性塗料に対する塗装性と機械物性のバランスに優れた、プライマーレス塗装可能なプロピレン系樹脂組成物の開発が待ち望まれていた。
【0004】
一方、これら工業部品への塗装方式は、静電塗装法が主流となってきている。元来、ポリプロピレンは、電気絶縁性材料であり、塗料樹脂成分との反応性にも乏しいため、ポリプロピレン樹脂単体では、静電塗装は不可能である。かかる欠点を解決するため、例えば、導電性プライマーを成形品表面に塗布し、ポリプロピレン基材に静電塗装を施す方法が提案されている(例えば、特許文献3〜4参照。)。
しかしながら、この導電性プライマーは、導電性を付与するために配合されている導電性フィラーの分散性に難があり、静電塗装可能であるものの、塗装後の塗装面の品質に課題があった。
一方、ポリプロピレンに導電性カーボンを添加し、導電性を付与する方法も知られているが、導電性カーボンの添加に伴い、ポリプロピレン系樹脂組成物の流動性が大幅に低下してしまうため、主に射出成形用途では、その成形加工性に問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−257946号公報
【特許文献2】
特開平9−48885号公報
【特許文献3】
特開昭58−76265号公報
【特許文献4】
特開昭61−218639号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑み、水性塗料のプライマーレス塗装を前提とした、塗装性、静電塗装が可能な導電性と機械物性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、塗装性と機械物性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物に関して鋭意検討した結果、特定の構造を有し、機械物性バランスに優れるプロピレン・エチレンブロック共重合体に、特定の分子量を有する変性ポリプロピレンを塗装改質成分として使用し、かつ導電性カーボンを使用することにより、機械物性、成形加工性と塗装性および導電性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物とすることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレン共重合体部分とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、変性ポリプロピレン1〜13重量部、導電性カーボン0.1〜25重量部を配合してなるプロピレン系樹脂組成物であって、
下記の要件(a)〜(f)を満たすことを特徴とする、塗装性、導電性、衝撃強度のバランスに優れた、プライマーレスで静電塗装による水性メラミン系塗料接着用のプロピレン系樹脂組成物が提供される。
(a):プロピレン単独重合体部分は、メルトフローレート(JIS K7210、試験温度230℃、試験荷重21.18N、以下MFRと記す。)が100〜800g/10分、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.8以上、アイソタクチックペンタッド分率が0.98以上である。
(b):プロピレン・エチレン共重合体部分は、プロピレン含量が50〜85重量%、ガラス転移温度が−40℃以下であり、135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]が3〜15dl/gである。
(c):プロピレン・エチレンブロック共重合体は、MFRが70〜500g/10分である。
(d):変性ポリプロピレンは、グラフトされた酸無水物基又は水酸基からなる極性官能基を有する。
(e):変性ポリプロピレンは、極性官能基のグラフト率と重量平均分子量の関係が、次の式(1)を満たす。
G≧0.0002×M+1 式(1)
(ただし、G:極性官能基のグラフト率(単位:wt%)、M:変性ポリプロピレンの重量平均分子量であり、G及びMはそれぞれ、1.2≦G≦20、1000≦M≦25000の範囲内である。)
(f):プロピレン系樹脂組成物は、温度200℃、剪断速度10/秒における剪断粘度(ηa)と温度200℃、剪断速度1000/秒における剪断粘度(ηb)の比(ηa/ηb)が30以上、MFRが0.1〜100g/10分である。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、導電性カーボンが、粒子径10〜100nm、DBP吸収量50〜600ml/100g、比表面積100〜1500m2/gのカーボンブラックであることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、さらに、ポリヒドロキシポリオレフィンが1〜15重量部配合されていることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明に係るプロピレン系樹脂組成物を使用し、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、中空成形、及び押出成形からなる群から選ばれるいずれかの成形加工方法により賦型されることを特徴とするプロピレン系樹脂成形体が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明に係るプロピレン系樹脂成形体に、プライマー成分を塗布することなく静電塗装により水性メラミン系塗料で塗装されてなる塗装成形体が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.プロピレン系樹脂組成物
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン・エチレンブロック共重合体、変性ポリプロピレン、導電性カーボン、必要に応じて、ポリヒドロキシポリオレフィンを含有する樹脂組成物である。以下に各成分について説明する。
【0015】
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体
本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレン共重合体部分から構成されるブロック共重合体である。
【0016】
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体
本発明のプロピレン系樹脂組成物で使用されるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレン共重合体部分からなるプロピレン・エチレンブロック共重合体である。
【0017】
上記プロピレン単独重合体部分のMFRは、100〜800g/10分、好ましくは200〜600g/10分、さらに好ましくは200〜400g/10分である。また、プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは、70〜500g/10分、好ましくは100〜300g/10分、さらに好ましくは100〜200g/10分である。
プロピレン単独重合体部分のMFRとブロック共重合体のMFRの組合せが上記範囲を逸脱した場合、成形加工性や耐衝撃性が不良となる。
ここでいうMFRは、JIS−K7210に準拠し、試験温度230℃、試験荷重21.18N、で測定される値である。
プロピレン単独重合体部分のMFRは、プロピレン単独重合体部分の重合時に水素濃度を制御することにより、調整することができる。また、プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは、プロピレン単独重合体部分の分子量調整、及び/又はプロピレン・エチレン共重合体部分の分子量を重合条件(重合温度、水素濃度、重合時間など)により制御することにより調整することができる。
【0018】
また、上記プロピレン単独重合体部分のGPCで測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、2.8以上、好ましくは2.8〜10、さらに好ましくは3〜8である。Mw/Mnが2.8未満では、高剪断領域の流動性が不良となるため、相応しくない。
プロピレン単独重合体部分のMw/Mnは、連続重合に於いては単独重合体を多段に分けて重合したり、バッチ式重合では重合初期と後期の水素濃度を変えることにより、調整することができる。
【0019】
さらに、上記プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率は、0.98以上、好ましくは0.980〜0.995、より好ましくは0.985〜0.995である。アイソタクチックペンタッド分率が0.98未満では、成形体の剛性や耐熱性が劣る。
アイソタクチックペンタッド分率とは、Macromolecules,6,925(1973年)記載の方法、すなわち13C−NMRを使用する方法で測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。換言すれば、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個接続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975年)に記載の方法に基づいて行った。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの強度分率としてアイソタクチックペンタッド単位を測定する。
プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率は、重合触媒の電子供与体(外部及び/又は内部ドナー)の添加量を制御し、さらにこれらの重合過程での欠落を防止することにより側鎖の立体配置を制御することにより、調整することができる。
【0020】
上記プロピレン・エチレン共重合体部分のプロピレン含量は、50〜85重量%、好ましくは50〜80重量%、さらに好ましくは50〜75重量%である。共重合体部分のプロピレン含量が上記範囲を逸脱した場合、共重合体部分の分散性が悪化したり、靱性が低下したりしてしまうため、好ましくない。
プロピレン・エチレン共重合体部分のプロピレン含量は、プロピレン・エチレン共重合体部分の重合時にプロピレンとエチレンの濃度比を制御することにより、調整することができる。
【0021】
また、上記プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、−40℃以下、好ましくは−40〜−60℃、より好ましくは−41〜55℃である。プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度が−40℃を超えると、低温での耐衝撃特性が急激に低下してしまうため、好ましくない。
プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、動的固体粘弾性測定装置により測定する。
プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、エチレンと共重合モノマーの共重合比により操作することが出来る。
【0022】
さらに、上記プロピレン・エチレン共重合体部分の135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]は、3〜15dl/g、好ましくは4〜12dl/g、より好ましくは5〜10dl/gである。固有粘度が3dl/g未満の場合、共重合体部分そのものの靭性が劣り、15dl/gを超えると共重合体部分の分散性が低下し、それぞれ耐衝撃性の低下要因となる。
なお、プロピレン・エチレン共重合体部分の固有粘度は、共重合体部分を重合する際に添加する水素の添加量を調整することにより、制御される。
【0023】
さらにまた、上記プロピレン・エチレン共重合体部分の分子量については特に制約はないが、分散性や耐衝撃性を考慮し、重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万〜300万、より好ましくは30万〜250万、さらに好ましくは40万〜200万である。
【0024】
プロピレン・エチレンブロック共重合体中のプロピレン単独重合体部分の量とプロピレン・エチレン共重合体部分の量は、ポリプロピレン単独重合体部分がマトリックス相となる範囲で選択する必要がある。プロピレン単独重合体部分の量は、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは70〜97重量%、さらに好ましくは80〜95重量%であり、プロピレン・エチレン共重合体部分の量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。この共重合体部分の濃度は、赤外分光スペクトル法、13C−NMR法、昇温溶出分別法等の常法に従って測定される値である。
プロピレン・エチレン共重合体部分の量は、プロピレン単独重合体部分の重合量とプロピレン・エチレン共重合体部分の重合量の比率を重合時間などにより制御し、調整することができる。
【0025】
上記プロピレン・エチレンブロック共重合体は、従来公知の任意の方法により重合することができるが、例えば気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、スラリー重合法などを挙げることができ、1つの反応器でバッチ式に重合したり、複数の反応器を組み合わせて連続式に重合してもよい。具体的には、最初にプロピレンの単独重合により結晶性ポリプロピレン単独重合体部分を形成し、次に、プロピレンとエチレンとのランダム共重合によってプロピレン・エチレンランダム共重合体部分を形成して製造するのが好ましい。
【0026】
重合触媒は、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、バナジウム化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルコキシアルミニウム−マグネシウム錯体のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体や、アルキルアルミニウム或いはアルキルアルミニウムクロリドなどの有機金属化合物との組合せによるいわゆるチーグラー型触媒、もしくはWO−91/04257号公報等に示されるようなメタロセン系触媒が挙げられる。なお、メタロセン系触媒と称せられる触媒は、アルモキサンを含まなくてもよいが、好ましくはメタロセン化合物とアルモキサンとを組み合わせた触媒、いわゆるカミンスキー系触媒のことである。
【0027】
(2)変性ポリプロピレン
本発明のプロピレン系樹脂組成物で使用される変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンの分子末端に極性官能基を有するモノマーをグラフトさせた樹脂である。
グラフトされる極性官能基としては、メラミン系やウレタン系等の塗料樹脂と反応する官能基であれば任意の官能基が使用出来るが、この中でも、酸無水物基、水酸基が好適に使用される。
【0028】
本発明で使用される変性ポリプロピレンは、極性官能基のグラフト率と重量平均分子量の関係が、下記式(1)を満たす変性ポリプロピレンである。
G≧0.0002×M+1 式(1)
(ただし、G:極性官能基のグラフト率(単位:wt%)、M:変性ポリプロピレンの重量平均分子量である。)
【0029】
変性ポリプロピレンにおける極性官能基のグラフト率と重量平均分子量の関係は、プロピレン系樹脂組成物中の変性ポリプロピレンの分散性及び偏在性へ影響を与え、その結果プロピレン系樹脂組成物の塗装性と機械物性の関係へ大きな影響を及ぼすため重要である。
プロピレン系樹脂組成物からなる成形体の塗装密着性を向上するためには、成形体の表面にできるだけ多くの極性官能基を存在させる必要がある。そのためには、変性ポリプロピレンの配合量を増やすることが考えられるが、機械物性の低下に繋がり実用性に欠ける。本発明では、変性ポリプロピレンを成形体の表面に偏在させることによって、変性ポリプロピレンの配合量を減らし機械物性を低下させずに塗装性を向上させること、そのためには、式(1)の関係を満たすことが必要である。すなわち、極性官能基のグラフト率が、式(1)の値未満であると、極性官能基の量が少なく塗膜密着性が不十分であり、加えて変性ポリプロピレンに重量分子量も相対的に高いため成形体の表面へ偏在することがないために塗膜密着性を改良することができない。このような場合、塗装性を改良するために、変性ポリプロピレンの配合量を増やさなければならず機械物性の低下に繋がり、結果的に塗装性と機械物性の関係は充分でない。
変性ポリプロピレンにおける極性官能基のグラフト率と重量平均分子量の関係が、式(1)を満たす場合、変性ポリプロピレンが成形体の表面へ偏在しやすい重量平均分子量であり、かつ極性官能基のグラフト率も高いので、成形体の表面に極性官能基がより多く存在し塗装性が改善される。これに伴い変性ポリプロピレンの配合量を低減することができるの成形体の機械物性の低下も最低限に抑制することができる。
【0030】
また、式(1)を満たす変性ポリプロピレンの重量平均分子量Mは、1000〜25000、好ましくは5000〜20000であることが必要である。重量平均分子量が1000未満の場合、プロピレン系樹脂組成物の剥離強度が低下し、塗膜密着性において基材剥離が発生する、25000を超えると基材表面への偏在性が低下するため、それぞれ塗装性が低下し好ましくない。
ここで、変性ポリプロピレンの重量平均分子量は、GPCにより測定する重量平均分子量である。具体的には、次の条件で行う。
【0031】
装置 :Waters社製HLC/GPC 150C
カラム温度:135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン
流量 :1.0ml/min
カラム :東ソー株式会社製 GMHHR−H(S)HT 60cm×1
注入量 :0.15ml(濾過処理無し)
溶液濃度 :5mg/3.4ml
試料調整 :o−ジクロロベンゼンを用い、5mg/3.4mlの溶液に調整し、140℃で1〜3時間溶解させる。
検量線 :ポリスチレン標準サンプルを使用する。
検量線次数:1次
PP分子量:PS×0.639
【0032】
また、グラフトモノマー成分のポリプロピレンへの極性官能基のグラフト率Gは、1.2〜20重量%、好ましくは2.0〜18重量%である。グラフト率Gが1.2重量%未満では、塗膜密着性に乏しく、20重量%を超えると変性ポリプロピレンの分散性が低下し、プロピレン系樹脂組成物中に変性ポリプロピレンが塊となって分散する傾向があるため、それぞれ好ましくない。
【0033】
ここで、グラフト率Gとは、ポリプロピレンにグラフトしていない未グラフト成分を溶解再沈法等により除去した後に測定したグラフト率をさす。具体的には、ペレット状の変性ポリプロピレンを、200℃の加熱プレス成形により、肉厚0.15mmのフィルム状とし、このフィルムを、ソックスレー抽出器を用いアセトン溶媒にて、85℃×1.5時間抽出処理し、70℃のオーブンで20分間乾燥する。抽出乾燥処理したフィルムを用い、IRを用いて赤外吸収ピーク強度を定量し、グラフト率を検量線から算出するものである。
【0034】
変性ポリプロピレンは、従来公知の方法により製造することが出来るが、例えば、有機溶媒の溶液中でポリプロピレン重合粉末とグラフトモノマーを、有機過酸化物を開始剤としてグラフト反応させる溶液法や、押出機等の溶融混練装置を用いて、グラフトモノマーをポリプロピレンにグラフト反応させる混練法等を挙げることが出来る。
【0035】
変性ポリプロピレンは、プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、1〜13重量部、好ましくは2〜11重量部、より好ましくは3〜10重量部となるように配合される。配合比率が1重量部未満では、塗装性が劣り、13重量部を超えると、耐衝撃性、耐熱性等の物性低下が著しいため、好ましくない。
【0036】
(3)導電性カーボン
本発明のプロピレン系樹脂組成物で使用される導電性カーボンは、通常の着色用や充填用配合剤として用いられる無定形構造で導電性の極めて劣るカーボンではなく、表面層がグラファイト構造を有する導電性カーボンである。導電性カーボンの形状は、ストラクチャーを形成したり、チューブ状であるなどして、断面径に対する長さの比が大きく、又、細孔が多く非表面積が大きいことが導電化効率の観点から必要である。導電性カーボンは、一次粒子径が10〜100nm、比表面積が100〜1500m2/g、細孔率を示すDBP吸油量が50〜600cm3/100gのカーボンブラックや、直径10〜100nm、管長0.1〜1000ミクロンのカーボンナノチューブ、炭素数60〜540のフラーレン、から選ばれた少なくとも1種の導電性カーボンであり、中でもカーボンブラックが最も好ましい。
【0037】
特に、本発明で用いることのできるカーボンブラックは、粒子径が、好ましくは10〜100nm、より好ましくは15〜60nm、さらに好ましくは20〜40nmであり、DBP吸収量は、好ましくは50〜600ml/100g、より好ましくは80〜550ml/100g、さらに好ましくは100〜500ml/100gであり、比表面積は、好ましくは100〜1500m2/g、より好ましくは150〜1500m2/g、さらに好ましくは200〜1500m2/gである。
粒子径、DBP吸収量、比表面積がそれぞれ上記範囲を逸脱すると、ストラクチャーの発達が不十分となったり、カーボン単体の導電性が低下したり、カーボン同士の相互作用が増大したりして、その結果、導電性カーボンの分散性が低下したり、樹脂組成物の導電効率や流動性が低下してしまうため、好ましくない。
粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定する。
DBP吸収量は、ジブチルフタレートアブソーブドメーターにより、JIS K6221に準拠して測定する。
比表面積は、液体窒素吸着法(ASTM D3037)に準拠して測定する。
【0038】
これら導電性カーボンブラックは、市販のものから適宜選んで使用することができる。例えば、三菱化学社から市販されているファーネス法カーボンブラック「三菱カーボン#3150」や、ケッチェンブラックインターナショナル社から市販されているシェル法カーボンブラック「ケッチェンEC」等を挙げることができる。これらの導電性カーボンは、必要に応じて、2種以上併用してもよい。
【0039】
本発明のプロピレン系樹脂組成物における導電性カーボンは、プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜25重量部、さらに好ましくは1〜25重量部となるように配合される。上記範囲を逸脱すると、十分な導電性が得られなかったり、成形加工性が大幅に低下してしまうため、それぞれ好ましくない。
【0040】
(4)ポリヒドロキシポリオレフィン
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、必要に応じて、ポリヒドロキシポリオレフィンを配合することができる。ポリヒドロキシポリオレフィンは、分子末端に水酸基を有し、分子量が、好ましくは1000〜5000の低分子量ポリオレフィンであり、例えば、共役ジエンモノマーをアニオン重合等の公知の方法により重合させ、それを加水分解して得たポリマーを水素添加することにより得られる。具体的には、三菱化学社製の商品名ポリテールH(Polytail
H)が挙げられる。
【0041】
本発明で用いることのできるポリヒドロキシポリオレフィンは、水酸基価(mgKOH/g)20以上100以下が好ましい。水酸基価が20未満では塗膜との反応性が不足で、100を超えると樹脂との相溶性が悪化するため、それぞれ塗膜との密着性が低下し、好ましくない。
【0042】
ポリヒドロキシポリオレフィンは、必要に応じて、前述のプロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、1〜15重量部となるように配合される。配合比率が1重量部未満では、塗装性と機械物性バランスの改善効果が不十分で、15重量部を超えると、剛性、耐熱性等の物性低下が著しいため、好ましくない。
【0043】
(5)任意成分
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、上述した成分の他に、必要に応じて、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内で、その他の成分が配合されていてもよい。この様なその他の配合成分としては、着色するための顔料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、ヒンダードアミン等光安定剤、紫外線吸収剤、有機アルミ・タルク等の各種核剤、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤、等を挙げることができる。
【0044】
2.プロピレン系樹脂組成物の製造
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造法は、特に制限無く、従来公知の方法で、各配合成分を混合し、溶融混練することにより製造される。
すなわち、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、各配合成分を上記配合割合で配合し、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒することによって、本発明のプロピレン系樹脂組成物が得られる。
【0045】
3.プロピレン系樹脂組成物の特徴
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、導電性と成形加工性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物である
プロピレン系樹脂組成物の温度200℃、剪断速度10/秒における剪断粘度(ηa)と温度200℃、剪断速度1000/秒における剪断粘度(ηb)の比(ηa/ηb)は、30以上、好ましくは30〜80、さらに好ましくは30〜70である。剪断粘度の比(ηa/ηb)が30未満では、大型成形品を射出成形した際に、フローマークやバリが発生するといった、成形不具合が生じやすい。
ここで、温度200℃、剪断速度10/秒における剪断粘度(ηa)及び1000/秒における剪断粘度(ηb)は、次の方法で求められる値である。
動的粘弾性測定装置(東洋精機社製キャピログラフ)を用い、試料12gを温度200℃のシリンダーへ入れて溶融し6分間保持する。管径(D)1mm、長さ(L)10mm、L/D=10のオリフィスを用い、剪断速度が、10/秒及び1000/秒となる押し出し速度に調整し、温度200℃における剪断粘度(ηa及びηb)を測定する。
温度200℃、剪断速度10/秒及び1000/秒における剪断粘度の比(ηa/ηb)は、前述の、プロピレン・エチレンブロック共重合体を重合する際、プロピレン単独重合体部分のMw/Mnを操作して増大させ、更に本発明で規定されている導電性カーボンを添加することにより、剪断粘度の比を増大せしめることができる。
【0046】
また、プロピレン系樹脂組成物のMFRは、0.1〜100g/10分、好ましくは10〜100g/10分、より好ましくは10〜80g/10分、さらに好ましくは10〜50g/10分である。MFRが上記範囲を逸脱した場合、本発明で適用される各種成形方法において、成形不良が発生するため好ましくない。
ここでいうMFRは、JIS−K7210に準拠し、試験温度230℃、試験荷重21.18N、で測定される値である。
【0047】
さらに、プロピレン系樹脂組成物の体積固有抵抗値VR(Ωcm)は、好ましくは1010Ωcm以下、より好ましくは105〜109Ωcm、さらに好ましくは106〜108Ωcmである。体積固有抵抗値が1010Ωcmを超えると、十分な導電性能を得ることができず、導電性プライマーを使用せずに静電塗装を施すことができない。
ここで、体積固有抵抗値VR(Ωcm)は、絶縁抵抗試験器を用いて、試験片に銀ペーストを塗布し、印加電圧10Vの条件で、測定される値である。具体的には、射出成形にて、厚み3mmの平板シート(340mm×100mm)を成形し、平板シートの長手方向に、幅20mmとなるように切削する。切削シートの中央部に、電極間距離が90mmとなるように、予め酢酸ブチルに溶解させた銀ペーストを、刷毛を用いて塗布する。このように銀ペーストを塗布した短冊状の試験片を、絶縁抵抗試験器(横河ヒューレットパッカード社製4329Aハイレジスタンスメーター)を用いて、印加電圧10Vの条件で、体積固有抵抗値を測定する。
【0048】
4.プロピレン系樹脂組成物の成形体
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、公知の各種方法による成形に用いることができる。例えば射出成形(ガス射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、カレンダー成形、インフレーション成形、一軸延伸フィルム成形、二軸延伸フィルム成形等にて成形することによって各種成形体を得ることができる。このうち、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形による成形体が好ましい。
これらの成形方法により得られた成形体は、導電性に優れる静電塗装が可能であり、成形体表面にプライマー成分を塗布することなく、静電塗装法により塗装された塗装成形体を得ることができる。
したがって、本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いた塗装成形体は、剛性、耐衝撃性、塗装性において高度な物性バランスを有しているため、各種工業部品分野、特に薄肉化、高機能化、大型化された各種成形品、例えば、テレビケースや冷蔵庫外板、洗濯機外板などの家電機器部品などの各種工業部品用成形体として、実用に十分な性能を有している。
【0049】
【実施例】
以下に、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、これによって限定されるものではない。
なお、実施例における各種物性の測定方法及び用いた原材料は、以下の通りである。
【0050】
1.物性測定方法
(1)MFR:JISK7210に準拠し、230℃、21.18N荷重で行った。
(2)ガラス転移温度:動的固体粘弾性測定装置 SOLIDS ANALYZER RSA II(レオメトリックス社製)により測定した。
(3)アイソタクチックペンタッド分率:270MHzのFT−NMR測定装置を使用し、前述の方法により測定した。
溶媒:o−ジクロロベンゼン(70vol%)/D6ベンゼン(30vol%)
温度:130℃
パルス幅:60°
パルス間隔:4s
(4)固有粘度[η]:135℃デカリン中で測定した。
(5)曲げ弾性率(単位:MPa):JIS K7171に準拠して試験速度2mm/min、23℃下で測定した。
(6)曲げ強度(単位:MPa):JIS K7171に準拠して試験速度2mm/min、23℃下で測定した。
(7)アイゾット(IZOD)衝撃強度(単位:kJ/m2):JIS−K7110に準拠し、23℃、及び−30℃で測定した。
(8)荷重たわみ温度(単位:℃):JIS−K7191に準拠して、4.6kgf/cm2の条件で測定した。
(9)塗装性:射出成形により成形した平板に、前処理を全く施すこと無く、エアースプレーガンを用いて、直接水性メラミン系塗料を厚さ約15ミクロンとなるようにスプレー塗布し、120℃で1時間焼付け乾燥した後、室温で48時間放置する。この後、試験片表面に片刃カミソリを用い、直交する縦横11本ずつの平行線を2mm間隔で引き、碁盤目を100個作る。その上にセロハン粘着テープ(JIS−Z1522)を充分圧着し、塗装面と粘着テープの角度を約30度に保ちながら一気に引き剥がす作業を5回繰り返し、碁盤目で囲まれた部分の状態を観察して、剥離しなかった碁盤目の数を評価する。
(10)グラフト率(G):ペレット状の変性ポリプロピレン樹脂を、200℃の加熱プレス成形により、肉厚0.15mmのフィルム状とする。このフィルムを、ソックスレー抽出機を用いアセトン溶媒にて、85℃×1.5時間抽出処理した後、70℃のオーブンで20分間乾燥処理を行う。抽出処理したフィルムを用い、IRを用いて赤外吸収ピーク強度を定量し、グラフト率を計算した。
(11)重量平均分子量(Mw及びM):前述の方法により測定した。
(12)体積固有抵抗:射出成形にて、厚み3mmの平板シート(340mm×100mm)を成形し、長手方向に幅20mmとなるように切削する。切削シートの中央部に、電極間距離が90mmとなるように、予め酢酸ブチルに溶解させた銀ペーストを、刷毛を用いて塗布する。このように銀ペーストを塗布した短冊状の試験片を、横河ヒューレットパッカード社製4329Aハイレジスタンスメーターで、印加電圧10Vの条件で、体積固有抵抗値を測定した。
(13)剪断粘度:東洋精機社製キャピログラフを用い、管径1mm、L/D=10のオリフィスで、温度200℃の条件で剪断速度を10/秒及び1000/秒に設定して、剪断粘度ηa及びηaを設定して測定した。
(14)成形外観:射出成形にて、厚み3mmの平板シート(340mm×100mm)を射出速度一定の条件で成形し、バリ、及びフローマークの発生状況を目視観察し、次の基準で判断した。
(i)バリ発生
○:平板エッヂ面から測ったバリの長さが、0.2mm未満
×:平板エッヂ面から測ったバリの長さが、0.2mm以上
(ii)フローマーク
○:平板表面に対して30°の角度から観察し、トラシマ模様が認められないもの
×:平板表面に対して30°の角度から観察し、トラシマ模様が認められるもの
【0051】
2.原材料
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体
表1に示すプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いた。
【0052】
【表1】
【0053】
(2)変性ポリプロピレン
変性ポリプロピレンとして、製造例1〜5に示した方法で製造した変性ポリプロピレン(変性PP1、変性PP2、変性PP3、変性PP4、変性PP5)と、三洋化成工業社製酸変性ポリプロピレン「ユーメックス1210」を用いた。各変性ポリプロピレンのグラフト率、重量平均分子量を表2に示す。
【0054】
製造例1(変性PP1)
数平均分子量3000のポリプロピレンワックス300重量部、無水マレイン酸9重量部を、還流管を付けた反応器の中に仕込み、キシレン700重量部を加えた後に窒素置換した。攪拌下、窒素を少量導入しながら150℃に昇温し、均一に溶解した後、ジクミルパーオキサイド16.5重量部を3時間かけて添加し、更に4時間反応を続けた。その後、最初常圧で、次いで180℃、3mmHgの減圧下、2時間かけてキシレン及び未反応のマレイン酸を除去した。続いて、トルエン1250重量部を添加し、トルエン溶液中に酸変性ポリプロピレンを溶解させた後、モノエタノールアミン12重量部を加え、50℃で60分間反応させた。得られた変性ポリプロピレンは、重量平均分子量7500、水酸基価12mgKOH、グラフト率3.9wt%であった。
【0055】
製造例2(変性PP2)
数平均分子量15000のポリプロピレンワックスを用いた以外は、製造例1と同様の方法により変性ポリプロピレンを製造した。得られた変性ポリプロピレンは、重量平均分子量16000、水酸基価14mgKOH、グラフト率4.3wt%であった。
【0056】
製造例3(変性PP3)
無水マレイン酸の仕込量を6重量部とした以外は、製造例2と同様の方法により変性ポリプロピレンを製造した。得られた変性ポリプロピレンは、重量平均分子量14000、水酸基価11mgKOH、グラフト率3.2wt%であった。
【0057】
製造例4(変性PP4)
数平均分子量8000のポリプロピレンワックスを用い無水マレイン酸の仕込量を18重量部とした以外は、製造例2と同様の方法により変性ポリプロピレンを製造した。得られた変性ポリプロピレンは、重量平均分子量10300、水酸基価28mgKOH、グラフト率8.3wt%であった。
【0058】
製造例5(変性PP5)
数平均分子量8000のポリプロピレンワックスを用い無水マレイン酸の仕込量を33重量部とした以外は、製造例2と同様の方法により変性ポリプロピレンを製造した。得られた変性ポリプロピレンは、重量平均分子量9500、水酸基価52mgKOH、グラフト率16.9wt%であった。
【0059】
【表2】
【0060】
(3)導電性カーボン
表3に示すカーボンを導電性カーボンとして使用した。
【0061】
【表3】
【0062】
(4)ポリヒドロキシポリオレフィン
ポリヒドロキシポリオレフィンとして、三菱化学社製ポリテールH(Polytail H)を用いた。
【0063】
実施例1〜10
表4に示した配合組成により、プロピレン・エチレンブロック共重合体、導電性カーボン、変性ポリプロピレン、ポリヒドロキシポリオレフィンを配合し、フェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製IRGANOX1010)0.1重量部、リン系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製Irgafos168)0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部と共に混合した後、2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用いて、スクリュー回転数300rpm、押出レート15kg/hで溶融混練し、プロピレン系樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて、金型温度40℃、シリンダ温度220℃の条件で射出成形し、プロピレン系樹脂組成物の各種試験片とした。得られた試験片を用いて、上述の方法により、各種物性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
比較例1〜13
表5に示した配合組成により、実施例と同様の方法で実験を行い、評価した。。評価結果を表5に示す。一部の試料では変性ポリプロピレンの過剰充填により基材が脆弱化し、基材と塗膜の界面で塗膜が剥がれているのではなく、基材が破壊することにより塗膜が剥がれる、基材破壊現象が確認された。
【0066】
【表5】
【0067】
【発明の効果】
特定の構造を有する変性ポリプロピレンが配合された、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、衝撃強度、曲げ剛性等の強度バランスに優れ、且つ、溶剤プライマーを塗布すること無く塗膜を密着せしめることが可能である為、工業的に非常に有用なものである。更に本発明のプロピレン系樹脂組成物は、水性塗料に対してプライマーレスで塗膜密着を実現するため、プライマーに起因する有機溶媒のみならず、塗料溶媒に起因する有機溶媒の使用量削減を実現せしめることが可能となる為、環境負荷の低減に多大な効果をもたらす。更に、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、強度バランスにも優れるため、成形品の薄肉化を実現し、特にその使用量が増大している工業部品分野では、軽量化に繋がる技術である。このことは、エネルギー資源の節約、地球環境の保護といった近年の社会的な問題を解決する一つの有効な手段であるといえ、その工業的価値は極めて大きい。
【0068】
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた塗装成形体は、導電性に優れ静電塗装が可能であり、かつ溶剤プライマーを塗布すること無く塗膜を密着せしめることが可能であることから、成形体表面にプライマー成分を塗布することなく、静電塗装法により塗装された塗装成形体を得ることができることに加え、さらに剛性、耐衝撃性、耐熱性において優れた物性バランスを有するものである。
本発明の塗装成形体は、各種工業部品分野、特に薄肉化、高機能化、大型化された各種成形品、例えば、テレビケースや冷蔵庫外板、洗濯機外板などの家電機器部品などの各種工業部品用成形体として、実用に十分な性能を有している。
Claims (5)
- プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレン共重合体部分とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、変性ポリプロピレン1〜13重量部、導電性カーボン0.1〜25重量部を配合してなるプロピレン系樹脂組成物であって、
下記の要件(a)〜(f)を満たすことを特徴とする、塗装性、導電性、衝撃強度のバランスに優れた、プライマーレスで静電塗装による水性メラミン系塗料接着用のプロピレン系樹脂組成物。
(a):プロピレン単独重合体部分は、メルトフローレート(JIS K7210、試験温度230℃、試験荷重21.18N、以下MFRと記す。)が100〜800g/10分、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.8以上、アイソタクチックペンタッド分率が0.98以上である。
(b):プロピレン・エチレン共重合体部分は、プロピレン含量が50〜85重量%、ガラス転移温度が−40℃以下であり、135℃デカリン中で測定される固有粘度[η]が3〜15dl/gである。
(c):プロピレン・エチレンブロック共重合体は、MFRが70〜500g/10分である。
(d):変性ポリプロピレンは、グラフトされた酸無水物基又は水酸基からなる極性官能基を有する。
(e):変性ポリプロピレンは、極性官能基のグラフト率と重量平均分子量の関係が、次の式(1)を満たす。
G≧0.0002×M+1 式(1)
(ただし、G:極性官能基のグラフト率(単位:wt%)、M:変性ポリプロピレンの重量平均分子量であり、G及びMはそれぞれ、1.2≦G≦20、1000≦M≦25000の範囲内である。)
(f):プロピレン系樹脂組成物は、温度200℃、剪断速度10/秒における剪断粘度(ηa)と温度200℃、剪断速度1000/秒における剪断粘度(ηb)の比(ηa/ηb)が30以上、MFRが0.1〜100g/10分である。 - 導電性カーボンが、粒子径10〜100nm、DBP吸収量50〜600ml/100g、比表面積100〜1500m2/gのカーボンブラックであることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、さらに、ポリヒドロキシポリオレフィンが1〜15重量部配合されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を使用し、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、中空成形、及び押出成形からなる群から選ばれるいずれかの成形加工方法により賦型されることを特徴とするプロピレン系樹脂成形体。
- 請求項4に記載のプロピレン系樹脂成形体に、プライマー成分を塗布することなく静電塗装により水性メラミン系塗料で塗装されてなる塗装成形体。
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