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JP4236416B2 - シート状補強材及びその製造方法 - Google Patents

シート状補強材及びその製造方法 Download PDF

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JP4236416B2
JP4236416B2 JP2002086437A JP2002086437A JP4236416B2 JP 4236416 B2 JP4236416 B2 JP 4236416B2 JP 2002086437 A JP2002086437 A JP 2002086437A JP 2002086437 A JP2002086437 A JP 2002086437A JP 4236416 B2 JP4236416 B2 JP 4236416B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状補強材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光硬化性成形材料層を構造として持つシート状補強材は、硬化前は柔軟性を有することから、任意のサイズや形状に加工することができたり、加工したものを基材に施工したりすることが容易にできるものであり、また、光硬化後は繊維強化プラスチックと同等の優れた機械的、化学的、電気的特性等の基本性能を有するものである。特に、基材のワレやクラックの補修を目的として、感光性という施工しやすい補強材であることもあって非常に有用な材である。
本発明のシート状補強材は、より具体的には、各種補修、補強用に用いられるシート状補強材である。
【0003】
ところで、上記の光硬化性成形材料層を構造としてもつシート状補強材は、各種の建造物、機械類、自動車、船舶、家庭用品等における構造部材、配管類、ライニング材等を補強するためや補修するための補強材として用いることができるものであるが、平面に用いることができるだけでなく、三次元の曲面や凹凸面或いはたて面等に充分に追従することができれば、より多様な用途に対応しうることになる。また、平面に対してであっても、基材との密着性や追従性を考えれば、充分にやわらかいシート状補強材であることが好ましい。このようなシート状補強材とするためには、柔軟なシートとすることが考えられるが、一般的にシート状成形材料の製造では、工業的にはSMC(シートモールディングコンパウンド)を作製する装置を用いて行われるため、通常のSMCの製造条件においては、良好な製品外観の上述のような柔軟な(つまり増粘後のシート状補強材の粘度が低い)シートを得ることは難しかった。また、従来公知のこのような光硬化性成形材料層を構造として持つシート状補強材の組成条件では、安定な低い粘度の(柔軟な)シート状補強材を得ることが困難であった。
【0004】
すなわち、従来の工業的なSMCの製造工程では、増粘することのできる硬化性樹脂を含むコンパウンドに増粘剤を添加し、ガラス繊維等の補強繊維を添加し、得られた光硬化性成形材料層をキャリアフィルム上に形成させ、その後、そのシート状物を巻き取り、その後に得られたシート状物を更に適切に増粘させる熟成工程が行われていた。このような工程では、柔軟なシート状補強材を得るために、増粘剤の使用量を少なくすると熟成後のシート状補強材の粘度が低くなり、光硬化性成形材料層の柔軟性が向上することになるが、通常用いる増粘剤である二価金属酸化物やその水酸化物の使用量を少なくする手法だけでは増粘速度が著しく遅くなり、充分に増粘が行われないままでシートを巻き取ると成形材料層に含まれる補強繊維が偏在したり、シートにしわが生じたり、空気が浸入して気泡が生じたり、又は、光硬化性成形材料層自体が偏り、均一な状態のシートが得られないという問題があった。その結果、補修、補強用のシート状補強材として満足のいく外観で、かつ柔軟性のあるシート状補強材は得られていなかった。また、イソシアネートを増粘剤として用いる場合にはある程度増粘速度を速くすることができるが、最終的に得られるシート状補強材の粘度が高くなり過ぎるため、目的に合った柔軟性のあるシート状補強材の増粘剤としては有効ではなかった。
【0005】
また一方、シート状補強材自体に関する技術としては、例えば、特開昭59−1250号公報には、硬化性プリプレグに、硬化性かつ親油性プライマーを塗布し、次いでその塗布面を鋼板に密着させた後、プリプレグ及びプライマーを硬化させるプリプレグの鋼板への貼付方法が開示されている。また、特開昭63−186744号公報には、透明性のシートを片面に積層してなる光硬化性プリプレグが開示されている。更に、特開昭57−99375号公報には、光硬化性成形材料層を、特定の二塩基酸やオリゴエステルを樹脂骨格中に含む光硬化性エポキシビニルエステル樹脂を用いて薄鋼板に接着させ、次いで光照射して硬化させることにより薄鋼板を補強する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの技術で得られたシート状補強材は、基材によっては充分な接着性が確保されないおそれがあり、また、プライマーや接着剤を用いて施工する必要があるため、施工における作業が煩雑であった。
【0007】
よって低いコンパウンド粘度であっても、適正な速い増粘を行うことのできる組成を工夫することにより、柔軟でかつ外観に優れたシートとすることにより、平面に用いることができるだけでなく、三次元の曲面や凹凸面等に充分に追従して様々な形状の基材に対応することができる柔軟な光硬化性成形材料層を有し、かつ基材に対しても良好な接着性を有するシート状補強材はなかなか得ることができず、該柔軟なシート状補強材を製造するときに生じる上記の不具合が解消されたシート状補強材を製造する方法が待望されていた。具体的には、低いコンパウンド粘度でありながら、増粘剤配合後、速やかな適切な増粘を達成できる感光性のシート状補強材の組成等や具体的な増粘工程が待望されていたのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、施工性に優れ、各種の基材に対して接着不良が充分に抑制されて接着強度や耐久性等を向上させることができ、しかも、平面だけでなく三次元の曲面や凹凸面等にも充分に追従して多様な用途に対応しうる柔軟なシート状補強材を、製造時に生じる不具合を解消して提供することを目的とするものである。
【0009】
本発明者らは、上記事実関係を綿密に精査したうえで鋭意研究を行った結果、シート状補強材の光硬化性成形材料層を構成する光硬化性樹脂の配合されたコンパウンドの増粘後の粘度を低く特定するための組成を工夫し、また増粘後の粘度を特定範囲とすることによって、平面だけでなく三次元の曲面や凹凸面等にも充分に追従しうるシートとすることができることを見いだした。また、このようなシート状補強材において、光硬化性樹脂を増粘させる増粘剤として、特定のコハク酸誘導体を用い、好ましくは、特定のコハク酸誘導体と併せて二価金属酸化物及び/又は水酸化物を用い、また、これらに併せて光硬化性樹脂と充填材や他の添加剤を含むコンパウンドの適切な水分率の含有量を規定し、シートの製造工程で通常の増粘温度より高い特定温度で上記コンパウンドを増粘させたりすると、光硬化性樹脂と充填材が配合されたコンパウンドの増粘速度を速くしつつ、かつ増粘後の粘度を低くするという相反する物性を達成させることが可能となり、柔軟性の高いシートを製造するときに生じる不具合が解消されたシート状補強材が工業的に好適に製造できることを見いだした。更に、このように低粘度に設定されたコンパウンドを構成要素とする柔軟性の高いシート状補強材が、光硬化性成形材料層と共に粘着層及び離型層を有したり、粘着層も光硬化性であったりすると、多様な基材に対して接着力が高くなり、また硬化層が高い強度及び耐久性に優れたシート状補強材となり、また施工時に、煩雑なプライマー処理が不用となり様々な用途に簡便に用いることができることとなる劇的な効果が生じる事実に遭遇し、本発明に到達したものである。また本発明の別の形態としては、上記の施工性に優れた柔軟なシートでありながら、更に着色のための後塗装等を施す必要のない着色性のシート状補強材も得ることができたのである。
【0010】
すなわち本発明は、保護層及び光硬化性成形材料層を構造として持つシート状補強材であって、上記光硬化性成形材料層は、光硬化性樹脂を含有するコンパウンド(1)、並びに、補強繊維(2)から形成されてなり、上記コンパウンド(1)の40℃における粘度が、50〜4000Pa・sであるシート状補強材である。
【0011】
本発明はまた、保護層及び光硬化性成形材料層を構造として持つシート状補強材であって、上記光硬化性成形材料層は、光硬化性樹脂と全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体を含有するコンパウンド(1)、並びに、補強繊維(2)から形成されてなり、上記コンパウンド(1)の40℃における粘度が、50〜4000Pa・sであるシート状補強材でもある。
【0012】
本発明は更に、上記シート状補強材を製造する方法であって、60〜100℃の温度で該シート状補強材を熟成増粘させる工程を含むシート状補強材の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
先ず、本発明のシート状補強材の構成について説明する。
本発明のシート状補強材は、保護層及び光硬化性成形材料層を含んでなる。本発明における保護層は、光硬化性成形材料層の光が当てられる面に設けられることにより、光硬化性成形材料層の表面における空気中の酸素による硬化阻害を防止し、また、光硬化性成形材料層中の重合性不飽和単量体等がシート状補強材から揮散することを抑制して光硬化性成形材料層の硬化をより確実に行う作用を有する。これにより、光硬化性成形材料層の表面が充分に硬化されて物性が向上すると共に、シート状補強材の表面に塗装する場合に塗膜が表層から剥がれてしまうという不具合を抑制することができる。更に、光硬化性成形材料層の表面をより滑らかにする作用や臭気を遮断する作用等がある。なお、保護層は、光硬化性成形材料層の基材側の面に設けられてもよく、この場合には光硬化性成形材料層の両面に保護層が設けられることが好ましい。
【0014】
本発明のシート状補強材はまた、光硬化性成形材料層の保護層がある面の他の面上に、内側から粘着層及び離型層をこの順に構造として持つことが好ましい。これにより、光硬化性成形材料層が有する性能を各種の基材上で充分に発揮することができることになる。この場合、光が当てられる面の他の片面に粘着層及び離型層を有することになる。これら保護層、光硬化性成形材料層、粘着層及び離型層は、シート状又はフィルム状である層状の材料であり、本発明の効果を奏することになる限り、これら以外のシート状又はフィルム状である層状の材料を各層の間やシート状補強材の外側の面に含んでいてもよい。これらの層状の材料はそれぞれ単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0015】
上記シート状補強材は更に、光が当てられる面に遮光層を有することが好ましい。このような遮光層により、シート状補強材の光硬化が防止され、施工時間を充分に取れ、施工後に遮光層を取り除くことによって光硬化性成形材料層を早く硬化させることができることになる。なお、遮光のレベルとしては全光線を遮断する必要はなく、500nm以下の波長帯における光線透過率を10%以下になるように調整すれば、シート状補強材の光硬化を防止する充分な効果を有することとなる。
【0016】
上記シート状補強材の形態としては、(1)光硬化性成形材料層の片面又は両面に保護層を有する形態、(2)光硬化性成形材料層の片面に保護層を有し、他の片面に内側から粘着層及び離型層をこの順に有する形態、(3)光硬化性成形材料層の片面に内側から保護層及び遮光層をし、他の片面に内側から粘着層及び離型層をこの順に有する形態、等が挙げられる。
【0017】
次に、本発明のシート状補強材を構成する各層について説明する。
本発明における光硬化性成形材料層は、硬化前はシート状補強材を充分に加工や施工することができる可塑性や柔軟性を有し、硬化後は充分な曲げ強度や曲げ弾性率等の強度、耐久性を有し、樹脂や充填材の種類により、耐候性、耐水性、耐磨耗性、高電気特性等の充分な基本性能を有する。
上記光硬化性成形材料層は、加工や施工の作業を阻害するような表面のベタツキがないものが好ましい。
【0018】
上記光硬化性成形材料層は、重合体及び重合性不飽和単量体を必須とする光硬化性樹脂を含有するコンパウンド(1)、並びに、補強繊維(2)から形成されてなる形態があり、また、該光硬化性樹脂と全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体を含有するコンパウンド(1)、並びに、補強繊維(2)から形成されてなる形態がある。このような光硬化性成形材料層は、上記コンパウンドを増粘させたプリプレグシートであることが好ましい。また、異なる成形材料を積層してなるシートであってもよい。また好ましい形態として、上記重合体は、側鎖に二重結合をもつラジカル重合性重合体やオリゴマーが好ましい。
【0019】
上記コンパウンド(1)とは、補強繊維(2)と共に光硬化性成形材料層を構成する材料であり、その形態としては、▲1▼光硬化性樹脂を構成要素とする形態、▲2▼光硬化性樹脂と全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体を構成要素とする形態、▲3▼光硬化性樹脂、全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体及び充填材を構成要素とする形態が挙げられる。また、これらいずれの形態においても、所望により他の添加剤(硬化剤や低収縮剤やカップリング剤、離型剤等)が配合されていてもよく、中でも、後述するように硬化剤が配合されていることが光硬化させるために好ましく、また、増粘剤が配合されていることが好ましい。これらの形態において、光硬化性樹脂と共に他の構成要素を含む場合には、樹脂混合溶液となる。このようなコンパウンド(1)において、▲1▼の形態では、透明性に優れた光硬化性成形材料層が形成されることになる。また、▲2▼の形態では、全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体を含むことにより、コンパウンド(1)の粘度を低く調整することが容易となると共に、速増粘効果が得られることになり、適切なガラス繊維等の補強繊維の分布状態をできるだけ保存して柔軟性の高い光硬化性成形材料層を形成することが容易となる。更に、▲3▼の形態では、上記▲2▼の形態と同様の効果が得られるうえ、よりコンパウンド(1)の粘度を調整しやすくなり、また、充填材により光硬化性成形材料層が補強され、光硬化後の強度を向上することが可能となる。
【0020】
本発明のシート状補強材では、上記コンパウンドの40℃における粘度が、50〜4000Pa・sである。すなわち本発明のシート状補強材を形成する光硬化性成形材料層を構成する光硬化性樹脂を必須とするコンパウンドの粘度が、硬化前の光硬化性成形材料層中において上記の範囲内となるように設定されることになる。この粘度は、シート状補強材を増粘させる場合には増粘後におけるコンパウンドの粘度を意味することになる。なお、この粘度は、増粘剤を配合したコンパウンドをサンプリングし、シート状補強材と同じ条件で熟成させた後所定の温度にして、ヘリパス粘度計を用いて測定する。この40℃における粘度が、50Pa・s未満であると、シート状補強材が柔らか過ぎて加工しにくくなり、また、後述するように製造しても不具合がないように製造することができないおそれがある。40℃における粘度が、4000Pa・sを超えると、平面だけでなく三次元の曲面や凹凸面等にも充分に追従しうる柔軟性を有しないこととなる。より確実に製造時に不具合が生じることを抑制し、また、多様な用途に対応しうる柔軟なシート状補強材とするためには、同様に40℃における粘度が、70〜3000Pa・sであることが好ましい。より好ましくは、100〜2000Pa・sであり、更に好ましくは、200〜1000Pa・sであり、最も好ましくは、250〜800Pa・sである。なお、本発明のシート状補強材にあっては、コンパウンドを増粘させて、上記の所定の粘度になるようにコントロールし、シート状補強材を得ることが好ましい形態である。
【0021】
本発明のシート状補強材は、保護層及び光硬化性成形材料層を構造として持つシート状補強材であって、該光硬化性成形材料層は、光硬化性樹脂と必要に応じて全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体及び充填材を含有するコンパウンド(1)、並びに、補強繊維(2)から形成されてなるシート状補強材である。
【0022】
上記光硬化性成形材料層を構成する光硬化性樹脂は、重合体及び重合性不飽和単量体を必須とする光硬化性樹脂であることが好ましい。更に好ましくは、上記重合体はラジカル重合性二重結合を有している。光硬化性樹脂、充填材及び全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体を含むコンパウンドを100重量%として光硬化性樹脂の量は、好ましくは、20〜95重量%である。より好ましくは、30〜80重量%、更に好ましくは、30〜70重量%である。この配合される光硬化性樹脂を基準にして、各種添加剤の含有量を、適宜設定することができる。このように光硬化性樹脂と全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体及び充填材、更に必要に応じ各種増粘剤が含まれる樹脂混合液を本発明ではコンパウンドと記す。
【0023】
上記光硬化性樹脂としては、成形材料として用いることができる光硬化性の樹脂であれば特に限定されず、ラジカル重合性重合体と重合性不飽和単量体からなる樹脂である。例えば、ラジカル重合性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート樹脂)、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、架橋性(メタ)アクリルシラップ、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シート状補強材の加工性や施工性が向上すること、硬化物が充分な基本性能(耐水性や耐薬品性や強度)を有することから、この中でアルコール成分と多塩基酸を縮合反応させることによって得られる光硬化性樹脂が好ましく、具体的には不飽和ポリエステル樹脂やエポキシアクリレート樹脂が好ましい。さらに具体的には不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。より好ましくは、耐候性が向上することから、シクロヘキサン環を有する多塩基酸及び/又は多価アルコールを必須としてなる不飽和ポリエステルを用いることである。また上記架橋性(メタ)アクリルシラップとは、側鎖にラジカル重合性の二重結合を有する(メタ)アクリル重合体からなるシラップである。
【0024】
上記不飽和ポリエステル樹脂としては特に限定されず、例えば、酸成分と、アルコール成分とを縮合させて得られる重量平均分子量(Mw)が数百〜数万程度の不飽和ポリエステルを重合性不飽和単量体に溶解してなるラジカル重合性樹脂等が挙げられる。
不飽和ポリエステルに用いる酸成分としては特に限定されず、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和二塩基酸;フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の飽和二塩基酸;トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリト酸、ピロメリト酸二無水物等の三官能以上の多塩基酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記アルコール成分としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等のグリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三官能以上のアルコール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン等のエポキシド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記不飽和ポリエステルにおける酸成分及びアルコール成分の種類や使用量としては特に限定されず、例えば、硬化物に要求される基本性能等に応じて適宜設定すればよい。上記酸成分のうち5〜100重量%が不飽和二塩基酸であることが好ましい。また、酸成分及びアルコール成分を縮合させる方法としては特に限定されず、例えば、反応温度や反応時間等の反応条件も適宜設定すればよい。また、ジシクロペンタジエン等のジエン化合物、末端官能性ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のゴム成分等の種々の成分により変性されてもよい。
【0027】
上記ビニルエステル樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂のエポキシ基に、ビニル系不飽和カルボン酸を付加させて得られるビニルエステルを重合性不飽和単量体に溶解してなるラジカル重合型樹脂等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールタイプ、ノボラックタイプ、環状脂肪族タイプ、エポキシ化ポリブタジエンタイプ等のものが挙げられる。
上記ビニル系不飽和カルボン酸としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記ビニルエステルにおけるエポキシ樹脂、ビニル系不飽和カルボン酸の種類や使用量としては特に限定されず、硬化物に要求される基本性能等に応じて適宜設定すればよい。また、エポキシ樹脂及びビニル系不飽和カルボン酸を付加重合させる方法としては特に限定されず、例えば、反応温度や反応時間等の反応条件も上記と同様に適宜設定すればよい。
【0029】
上記ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合により得られるもので、主鎖骨格にポリエステル構造を有し、かつ、分子末端の少なくとも1つに(メタ)アクリル酸がエステル結合を介して導入された構造の化合物である。
【0030】
上記架橋性(メタ)アクリルシラップとしては特に限定されず、例えば、重合性不飽和単量体である(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸エステルの重合体で側鎖にラジカル重合性の二重結合をもつ重合体を含んでなる混合物であり、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル以外の他の重合性不飽和単量体を更に含んでなるシラップである。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、(メタ)アクリルアミドを用いることもできる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シート状補強材の硬化物層による基本性能、外観、安全性等をより一層向上させることができることから、メチルメタクリレート、又は、メチルメタクリレートを主成分とする(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0032】
また上記アクリルシラップを増粘させるためには(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸単量体を用いて酸基を導入することが好ましい。また、導入された酸基に対して、反応しうる官能基とラジカル重合性の二重結合をもつ化合物を反応させることで側鎖にラジカル重合性の二重結合を導入することができる。例えば、アクリル重合体がもつ酸基の場合、グリシジルメタクリレートが好適である。またHEMAやHEAを共重合させ、水酸基を導入しその水酸基に対し不飽和イソシアネートを作用させても、ラジカル重合性二重結合を導入できる。また、水酸基の場合(メタ)アクリル酸やマレイン酸等の不飽和カルボン酸単量体を反応させてもよい。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体は、(メタ)アクリル酸エステルや必要に応じて他の重合性不飽和単量体を含んだものを単量体成分として重合することにより得られ、その重合度としては特に限定されない。また導入される二重結合1個当たりのアクリル重合体の分子量等も所望される物性により適宜設定することができる。このようにして架橋性アクリルシラップを製造することができる。通常はバルク部分重合で製造される。
【0034】
上記光硬化性樹脂におけるラジカル重合性重合体と重合性不飽和単量体との重量割合としては、硬化物に要求される基本性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されず、例えば、15/85〜85/15であることが好ましい。85/15より重合性不飽和単量体の重量割合が少なくなると、硬化性が劣るおそれがあり、また、シート状補強材が高い柔軟性を有する材料とならないおそれがあり、15/85より重合性不飽和単量体の重量割合が多くなると、光硬化性樹脂と充填材との樹脂混合溶液の粘度が低くなり過ぎて取り扱いにくくなり、また、硬化物の強度等の基本性能が劣るおそれがある。より好ましくは、30/70〜83/17であり、更に好ましくは、40/60〜80/20である。
【0035】
上記光硬化性樹脂が二種以上の樹脂を含有し、混合物となる場合、各々の樹脂の含有量としては特に限定されない。また、上述したラジカル重合性樹脂以外のラジカル重合性樹脂を含有してもよい。
【0036】
上記重合性不飽和単量体とは、光硬化性樹脂に含まれるビニルモノマーや架橋剤等の重合性不飽和結合を有する単量体を意味する。
上記重合性不飽和単量体としては、反応性モノマーであり、硬化時に上記重合体が有する不飽和基と架橋反応するものであれば特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、酢酸ビニル、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、アクリロニトリル、マレイミド類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、及び、これら不飽和モノカルボン酸のモノエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸、及び、これら不飽和ジカルボン酸のモノエステル;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレンを含むものを用いることが好適である。
【0037】
上記光硬化性樹脂には、硬化剤を含有させることが好ましく、該硬化剤としては、樹脂に光硬化性を与える光増感剤等が好適である。
上記光増感剤としては特に限定されず、例えば、「表面」、27〔7〕(1989)山岡、p.548や、「第3回ポリマー材料フォーラム要旨集」(1994)佐藤、IBP18等に記載の可視光領域に感光性を有する可視光用開始剤等が挙げられ、このような可視光用開始剤を用いることが好ましい。
上記光増感剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、光増感剤は光硬化剤と呼称される場合もあり、本明細書中では、「光増感剤」と「光硬化剤」との用語を光増感剤に統一して用いる。
上記可視光用開始剤としては、380〜780nmの波長域に感光性を有する光重合開始剤等であれば特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、ベンジル、ジアセチル、アントラキノン、メチルアントラキノン、クロロアントラキノン、カンファーキノン、アセトフェノン、アセトフェノンベンジル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケトン、ベンゾフェノン、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のカルボニル化合物;ジフェニルサルファイド、ジフェニルジサルファイド、ジフェニルスルフィド、ジチオカーバメート、メチルチオキサントン等の硫黄原子を有する化合物;α−クロロメチルナフタリン等の多縮合環系炭化水素のハロゲン化物類;アクリルフラビン、フルオレセン等の色素類;硝酸ウラニル、塩化鉄、塩化銀等の金属塩類;p−メトキシベンゼンジアゾニウム、ヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルアイオドニウム、トリフェニルスルフォニウム等のオニウム塩;ジシクロペンタジエニルチタニウム−ジ(ペンタフルオロフェニル)等が挙げられる。また、有機過酸化物/色素系、ジフェニルヨードニウム塩/色素、イミダゾール/ケト化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物/水素供与性化合物、メルカプトベンゾチアゾール/チオピリリウム塩、金属アレーン/シアニン色素、特公昭45−37377号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール/ラジカル発生剤等の公知の複合開始剤系等も挙げられる。
【0038】
上記光増感剤は、更に、紫外光領域から可視光領域まで感光性を有する広領域感光剤を用いることもできる。このような光増感剤としては、例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−メチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。これらは、市販品を用いることができ、例えば、Darocur1173(商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)とビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)とを75/25(重量比)の割合で混合したイルガキュア1700(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製);イルガキュア184(商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン)とビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)とを75/25(重量比)の割合で混合したイルガキュア1800(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)や50/50(重量比)の割合で混合したイルガキュア1850(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製);イルガキュア819(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド);Lucirin TPO(商品名、BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド);Darocur1173(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)とLucirin TPOとを50/50(重量比)の割合で混合したDarocur4265(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)等を用いることができる。
【0039】
上記光増感剤の含有割合としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して0.01〜10重量%であることが好ましい。0.01重量%未満であると、光硬化性成形材料層の光硬化性が劣るおそれがあり、10重量%を超えると硬化物の基本性能が劣るおそれがある。より好ましくは、0.05〜8重量%であり、更に好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0040】
上記光硬化性樹脂はまた、光増感剤と共に熱硬化剤等を含んでもよく、その場合には、光硬化性成形材料層が熱硬化性をも有することとなる。
上記熱硬化剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物等のラジカル重合開始剤等が挙げられる。
上記熱硬化剤の含有割合としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して0〜10重量%であることが好ましい。10重量%を超えると、硬化物の基本性能が劣るおそれがある。より好ましくは、0.01〜8重量%であり、更に好ましくは、0.05〜5重量%である。
【0041】
上記光硬化性樹脂の他に、他の添加剤として、低収縮化剤、内部剥離剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、減粘剤、カップリング剤、増粘剤、増粘助剤、抗菌剤等の添加剤や、ハロゲン系やリン系や無機系の難燃剤を必要に応じ含むことで本発明のコンパウンドを形成することができる。本発明の光硬化性成形材料層は、光硬化性樹脂、フィラー、ガラス粒子、フリット以外に必要に応じてこれら添加剤を含んでいてもよい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。この場合、光硬化性を阻害しないように、これらの種類や使用量等を適宜設定して用いることが好ましい。
【0042】
上記低収縮化剤としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、三次元架橋ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セルロースブチレート、アセテート(アセチルセルロース)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、飽和ポリエステル等の熱可塑性ポリマー等が挙げられる。
上記低収縮化剤の含有割合としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して0〜30重量%であることが好ましい。30重量%を超えると、硬化物の強度等の基本性能が低下するおそれがある。より好ましくは、0〜15重量%である。
上記内部離型剤としては特に限定されず、例えば、シリコン系樹脂やステアリン酸塩等が挙げられる。
上記内部離型剤の含有割合としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して0〜10重量%であることが好ましい。10重量%を超えると、硬化物の基本性能が低下するおそれがある。より好ましくは、0〜5重量%である。
【0043】
上記連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、α−メチルスチレンダイマー;四塩化炭素;t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリコレート、トルメチロールプロパントリス−(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス−(チオグリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4−ブタンジオールジ(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス−(β−チオプロピオネート)等のβ−メクカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられる。
上記連鎖移動剤の含有割合としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して0〜5重量%であることが好ましい。5重量%を超えると、光硬化性樹脂の硬化性が劣るおそれがある。より好ましくは、0〜2重量%である。
【0044】
上記重合禁止剤としては特に限定されず、例えば、p−t−ブチルカテコール、p−メトキシフェノール、ヒドロキノン、p−ベンゾキノン、クロラニル、m−ジニトロベンゼン、ニトロベンゼン、p−フェニルジアミン、硫黄、ジフェニルピクリルヒドラジル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、トリ−p−ニトロフェニルメチル等が挙げられる。
上記重合禁止剤の含有割合としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して0〜5重量%であることが好ましい。5重量%を超えると、光硬化性樹脂の硬化性が劣るおそれがある。より好ましくは、0.001〜2重量%である。
【0045】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の光硬化性樹脂に対して使用することができるものを用いることができ、また、上記減粘剤及び上記カップリング剤としても特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂に対して使用することができるものを用いることができ、これらのそれぞれの含有割合としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して、0〜5重量%であることが好ましい。5重量%を超えると、光硬化性樹脂の硬化性が劣るおそれがある。より好ましくは、0.05〜2重量%である。
【0046】
上記増粘剤としては特に限定されず、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の多価金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の多価金属水酸化物;多官能イソシアネート等が挙げられる。
上記増粘剤の使用量としては特に限定されず、例えば、多価金属酸化物や多価金属水酸化物の場合には、光硬化性樹脂100重量%に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量%である。また、多官能イソシアネート等の場合には、光硬化性樹脂100重量%に対して1〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは、3〜20重量%であり、更に好ましくは、5〜15重量%である。上記使用量未満であると、光硬化性樹脂と充填材との樹脂混合溶液が増粘しにくくなるおそれがあり、上記使用量を超えると、樹脂混合溶液が増粘し過ぎるおそれがある。更に適切に増粘させる為、増粘剤を用いた光硬化性成形材料層は一定期間、常温もしくは加温して増粘反応を進行させる、いわゆる熟成工程を経る。
【0047】
本発明では、コンパウンドの粘度を低く調整するために、全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体を用いることが好ましい。この場合、多価金属酸化物や多価水酸化物を増粘剤として用いるときに、増粘調整剤として用いることが好ましい。このようなコハク酸誘導体を用いると、多価金属酸化物や多価水酸化物が作用する、酸−金属塩の反応に基づく増粘形態において、適当な含水率との相乗効果で速増粘効果が得られることになり、適切なガラス繊維等の補強繊維の分布状態をできるだけ保存して光硬化性成形材料層を形成することが可能となる。これにより、ガラス繊維等の偏りがなく、従来のSMC(シートモールディングコンパウンド)よりも層中にガラス繊維等が適切に分布した光硬化性成形材料層を形成させることができ、シート状補強材の商品価値を高めることができる。
上記コハク酸誘導体としては具体的に、例えば、オクチルコハク酸、オクテニルコハク酸、ヘキシルコハク酸、ヘキセニルコハク酸、ノニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デシルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラデシルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、シクロドデシルコハク酸、シクロドデセニルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘプタデシルコハク酸、ヘプタデセニルコハク酸、オクタデシルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、エイコシルコハク酸、エイコセニルコハク酸、ジフェニルブテニルコハク酸、ペンタドデシルコハク酸、ペンタドデセニルコハク酸、及び、これらの塩等が挙げられる。これらコハク酸誘導体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。なお、コハク酸誘導体の合成方法は特に限定されるものではない。
【0048】
コハク酸誘導体の使用量は、その種類や組み合わせにもよるが、光硬化性樹脂100重量%に対して、0.01重量%〜10重量%の範囲内が好ましく、1重量%〜10重量%の範囲内がより好ましい。コハク酸誘導体の使用量が0.01重量%よりも少ない場合には、コハク酸誘導体を使用することにより期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、樹脂混合溶液の初期粘度が高くなり過ぎ、該混合溶液を補強繊維に充分に含浸させることができなくなるので好ましくない。コハク酸誘導体の使用量が10重量%よりも多い場合には、樹脂混合溶液の初期粘度を低い値に抑制することができるものの、耐水性等の物性が低下するので好ましくない。
【0049】
増粘調整剤の助剤として、増粘速度を高める為には、コンパウンド中の含水率が0.1重量%〜0.8重量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.12重量%〜0.65重量%の範囲内、更に好ましくは0.15重量%〜0.6重量%の範囲内となるように、その使用量を設定すればよい。つまり、樹脂混合溶液の水分量は、0.1重量%以上、0.8重量%以下が好ましく、0.12重量%以上、0.65重量%以下がより好ましく、0.15重量%以上、0.6重量%以下が更に好ましい。水分量が0.1重量%未満の場合には、期待される作用・効果が乏しく好ましくない。0.8重量%以上では、耐水性等の物性が低下するので好ましくない。例えば、樹脂混合溶液の水分率を測定し、上記の所望の全水分率になるように、必要に応じて水を添加することで調整することができる。水分率はカールフィッシャー水分計を使用し測定することができ、具体的には、コンパウンド中の含水率が上記の範囲になるように必要により水をコンパウンドに添加すればよい。本発明のシート状補強材の製造方法として、上記の範囲で含水率を調整する工程を含むことが好ましい。
これらの組み合わせにより本発明のコンパウンドは60℃〜100℃で増粘反応を進行させると熟成工程を著しく短縮することが可能となる。なお、上記水分率の測定は、必要に応じ各種添加材と充填材が配合された樹脂混合溶液であるコンパウンドに対して行うことが好ましい。また、増粘剤は、水分率を測定し、水分量を調整した後のコンパウンドに対して投入することが好ましい使用形態である。その後でキャリヤーフィルムに塗布し、所定量の補強繊維を添加することによって、本発明のシート状補強材を得ることは好ましい実施形態である。
【0050】
上記抗菌剤としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂に対して使用することができるものを用いることができる。
上記抗菌剤それぞれの使用量としては特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して0〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0051】
上記光硬化性成形材料層における補強繊維は、補強材として作用することになり、これにより、樹脂と補強繊維とが複合化され、光硬化性成形材料層が強度等の基本性能に優れたものとなる。このような補強繊維の使用形態としては、例えば、コンパウンド中に補強繊維を混合する形態;コンパウンドを補強繊維に含浸する形態等が挙げられる。
【0052】
上記補強繊維としては特に限定されず、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミド、ポリエステル、ビニロン、フェノール、テフロン(登録商標)等からなる有機繊維;天然繊維等が挙げられる。また、これらの繊維の形態としては特に限定されず、例えば、クロス(織物)状;チョップストランドマット、プリフォーマブルマット、コンテニュアンスストランドマット、サーフェーシングマット等のマット状;チョップ状;ロービング状;不織布状等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ガラス繊維が好ましい。
【0053】
上記補強繊維の形状としては特に限定されないが、アスペクト比が、長さに対する直径の比として、100以上であることが好ましい。これにより、補強繊維における光の伝播性が向上して光硬化性成形材料層の光硬化性を向上することが可能となる。100未満であると、光硬化性の向上に充分に寄与することができないおそれがあり、より好ましくは、1500以上である。
【0054】
上記補強繊維の使用量としては、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して、5〜100重量%となるようにすることが好ましい。5重量%未満であっても、100重量%を超えても、硬化物の基本性能が低下するおそれがある。より好ましくは、10〜65重量%である。また本発明の光硬化性成形材料層におけるコンパウンド(1)の好ましい含有量は、40〜95重量%、上記補強繊維の含有量は5〜60重量%である。また、上記コンパウンド(1)に含まれる光硬化性樹脂の含有量が、20〜95重量%の範囲であることが好ましい。
【0055】
上記光硬化性成形材料層を形成する構成要素の中で、充填材として特定の充填材を用いることにより別の作用効果を発揮することになる。本発明における充填材は、溶融成形品としたときに、波長400〜500nmの平均光線透過率が15〜90%である透明充填材を含む。このような充填材を用いることにより、シート状補強材の光硬化性を低下させずに着色の効果が得られることになる。波長400〜500nmの平均光線透過率が15〜90%であるとは、波長400〜500nmの領域において、平均光線透過率が15〜90%を満たすことを意味する。平均光線透過率が15%未満であると、光硬化性に著しい低下をもたらすことになり、90%を超えると、着色の効果が充分に得られないことになる。より好ましくは、波長400〜500nmの平均光線透過率が25〜70%である。なお、上記充填材は、後述する補強のために用いる充填材と共に光硬化性成形材料層を補強する作用を有していてもよい。
【0056】
上記光硬化性成形材料層はまた、補強材として、光硬化性を阻害しない充填材を含むことが好ましい。このような充填材としては、成形材料の補強のために用いられるものであれば特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、クリストバライト、シリカ(珪砂)、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏等の無機充填材;有機充填材等が挙げられる。また、透明性の高いガラス粉末を補強目的のため用いることもできる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化物の機械的特性等の基本性能が向上することから、水酸化アルミニウムを必須成分とするものであることが好ましい。また水酸化アルミニウムを使うと光硬化性成形材料層に難燃性を付与することができ、好ましい形態である。また、耐摩耗性用途には、クリストバライト、シリカ、川砂等が好ましい。また、ガラスパウダー等の透明性の高い充填材の量は、基本的に、本発明の補強材の光硬化性には影響しにくいので適宜その添加量は所望により設定することも可能である。
【0057】
上記通常の充填材の使用量としては、例えば、光硬化性樹脂100重量%に対して0〜300重量%となるようにすることが好ましい。より好ましくは、2〜300重量%である。300重量%を超えると、光硬化性成形材料層の作製における作業性つまり活性エネルギー線による硬化作業性が低下するおそれがある。より好ましくは、30〜280重量%である。更に好ましくは、50〜200重量%である。本発明の好ましい形態である、透明充填材を必須とするシート状補強材にあっては、透明充填材とそれ以外の通常の充填材を合わせて使用することもでき、その場合の充填材の使用量としては、1〜450重量%が好ましい。更に好ましくは、30〜350重量%である。特に好ましくは、40〜300重量%、最も好ましくは、50〜200重量%である。また、得られるシート状補強材の所望の光硬化性や難燃性や強度等の所望の物性により、透明充填材と、それ以外の通常の充填材の配合比を適宜設定することができる。
【0058】
本発明の好ましい形態としては、上記光硬化性成形材料層におけるコンパウンド(1)の含有量が40〜95重量%、補強繊維(2)の含有量が5〜60重量%であり、上記コンパウンド(1)に含まれる光硬化性樹脂の含有量が20〜95重量%の範囲であり、上記コンパウンド(1)に含まれる光硬化性樹脂の量を100重量%としたときの全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体の含有量が、0.01〜10重量%、更に充填材の含有量が0〜300重量%である形態が挙げられる。また、特に好ましい形態としては、上記光硬化性樹脂は、ラジカル重合性重合体及び重合性不飽和単量体を含み、そのうちいずれか1つがカルボキシル基を有しており、更に該ラジカル重合性重合体と該重合性不飽和単量体との重量割合が15/85〜85/15であり、かつ、上記光硬化性成形材料層におけるコンパウンド(1)の含有量が40〜95重量%、補強繊維(2)の含有量が5〜60重量%であり、上記コンパウンド(1)に含まれる光硬化性樹脂の含有量が20〜95重量%の範囲であり、上記コンパウンド(1)に含まれる光硬化性樹脂の量を100重量%としたときの全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体の含有量が、0.01〜10重量%及び充填材の含有量が0〜300重量%である形態が挙げられる。これらの形態により、本発明のシート状補強材が本発明の作用効果をより充分に発揮することになる。また、後述するシート状補強材の製造方法と相まって、上記コンパウンド(1)の粘度が上記の範囲内であるシート状補強材を工業的に製造するためにより好適となる。
【0059】
上記の特に好ましい形態では、コハク酸誘導体を用いることにより、多価金属酸化物や多価水酸化物が作用する、酸−金属塩の反応に基づく増粘形態において、適当な含水率との相乗効果で速増粘効果が得られることになり、適切なガラス繊維等の補強繊維の分布状態をできるだけ保存して光硬化性成形材料層を形成することが可能となる。これにより、ガラス繊維等の偏りがなく、従来のSMCよりも層中にガラス繊維等が適切に分布した光硬化性成形材料層を形成させることができ、シート状補強材の商品価値を高めることができる。従って、光硬化性樹脂の増粘速度を速くしつつ、増粘した後の粘度を充分に低くすることが可能となり、柔軟性の高いシートを製造するときに生じる不具合を解消して平面だけでなく三次元の曲面や凹凸面等にも充分に追従しうるシートを容易に提供することができることとなる。
【0060】
上記光硬化性成形材料層は、例えば、上述した各成分を混合して樹脂混合溶液として補強繊維に含浸させること即ちSMC(シートモールディングコンパウンド)を作製する方法により得ることができる。このような方法としては特に限定されず、例えば、キャリアフィルム上に樹脂混合溶液を塗布して補強繊維を散布若しくは積載し、もう一枚のキャリアフィルムに樹脂混合溶液を塗布したもので挟み込んだり、又は、キャリアフィルム上に補強繊維を散布若しくは積載して樹脂混合溶液を塗布したりした後、圧着・含浸等し、熟成、増粘させることにより行うことができる。
【0061】
上記光硬化性成形材料層の厚みとしては特に限定されず、例えば、0.1〜10mmであることが好ましい。0.1mm未満であると、硬化物が充分な強度を有しないおそれがあり、10mmを超えると、シート状補強材の加工性や施工性が低下し、また、光硬化性成形材料層の光硬化性が低下するおそれがある。より好ましくは、0.5〜5mmである。
【0062】
本発明における粘着層は、シート状補強材が用いられる基材において、充分な接着性を有し、かつ、シート状補強材を充分に施工することができる柔軟性を有する。
上記粘着層により、シート状補強材が基材への密着性を有し、密着後、光硬化性成形材料層及び粘着層が形状保持性を有することになる。また、粘着剤そのものの強度、硬化後の光硬化性成形材料層との密着性、基材との密着性により、優れた接着強度を有することになる。すなわち粘着層は、シート状補強材の硬化前には、粘着層と光硬化性成形材料層や基材とを密着させるために粘着力を有し、シート状補強材の硬化後には、接着層を形成して光硬化性成形材料層と基材を恒久的に付着させるための接着力を有するものとなる。
【0063】
上記粘着層の形態としては特に限定されず、例えば、通常は、支持体を有する粘着剤層により形成されるフィルム等が挙げられる。また、2種以上のフィルムを積層したものであってもよい。
上記支持体とは、粘着層の形状保持性や強度、取扱性等を向上させるために用いられるフィルム状又はシート状である層状のものであり、例えば、紙や樹脂材料により形成されるフィルム、天然繊維、合成繊維、無機繊維等の繊維により形成される織布、不織布、発泡体等が挙げられ、プレス加工、エンボス加工等を施したものであってもよい。
【0064】
上記粘着剤層は、粘着剤を含むものである。
上記粘着剤としては特に限定されず、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、イソブチレンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム等の合成ゴムや天然ゴムを主成分とするゴム系粘着剤;アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル等を主成分とする合成樹脂系粘着剤等が挙げられる。これらは、溶剤型、エマルション型、ホットメルト型、水溶性型等のいずれでもよく、また、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル系の粘着剤が好ましい。
【0065】
上記粘着剤は、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤や、上述した添加剤等を含有してもよい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記粘着付与剤及び上記可塑剤としては、通常、粘着剤に用いることができるものであれば特に限定されず、例えば、粘着付与剤としては、ロジン、テルペン系樹脂等の天然樹脂;クマロンインデン樹脂等の石油炭化水素系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂等が挙げられ、可塑剤としては、プロセスオイル等の石油系可塑剤;液状ポリイソブチレン、液状ポリブテン等の液状ゴム系可塑剤;二塩基酸エステル等の樹脂系可塑剤等が挙げられる。
【0066】
上記粘着剤層は、更に、充填材や難燃剤等を含んでもよい。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。粘着剤層が充填材や難燃剤を含むことにより、粘着層の耐熱性や難燃性が向上することになる。
上記充填材としては特に限定されず、例えば、上述したものを用いることができ、中でも、水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0067】
上記難燃剤としては特に限定されず、例えば、ハロゲン系難燃剤;リン系難燃剤;無機系難燃剤等の非ハロゲン系難燃剤等を用いることができる。これらの中でも環境を汚染しないために非ハロゲン系難燃剤を用いることが好ましい。
上記充填材や上記難燃剤の使用量としては、例えば、粘着剤100重量%に対して0〜100重量%となるようにすることが好ましい。より好ましくは、20〜80重量%である。充填材や難燃剤の使用量が上記の範囲を超えると、粘着層の密着性等が低下するおそれがある。
【0068】
上記粘着層は、光硬化性を有するものであることが好ましく、その場合には、接着強度をより向上させることができる。
上記粘着層に光硬化性を付与する方法としては特に限定されず、例えば、粘着剤が上述の光硬化性樹脂や光増感剤等を含むことによって光硬化性を付与することが好適である。さらに、光硬化性成形材料層中に含まれる多官能(メタ)アクリレートやスチレン等の重合性不飽和単量体が粘着層に移行すると、該重合性不飽和単量体が粘着層の硬化に寄与して、粘着層の硬化を充分に行うことができることになる。
【0069】
上記粘着層に光硬化性を付与するためにはまた、粘着層内に光硬化性成形材料層中の重合性不飽和単量体等を遮断する支持体を有しない形態であることが好ましい。これにより、粘着層中に浸透した重合性不飽和単量体が支持体により浸透を阻止されることがないため、粘着層全体が一様に重合性不飽和単量体を含有する構成となって粘着剤と重合性不飽和単量体とが一体化して硬化することになり、剛直となって粘着層全体として接着強度や耐熱性、難燃性、耐久性等が充分となる。このような粘着層を含むシート状補強材は、施工時には充分な柔軟性を有すると共に、基材への接着時には粘着層が一様に重合性不飽和単量体により膨潤して基材に対する密着性が優れ、また、接着強度が向上して光硬化性成形材料層と粘着層とのズレや、基材と粘着層とのズレが生じにくく、かつ基材から剥がれにくいものとなる。また、粘着層全体が一体化して硬化することから、粘着層中で支持体から剥離するという不具合がない。
【0070】
上記の形態においては、例えば、(イ)支持体を有しない粘着剤層により形成されるフィルム;(ロ)上記重合性不飽和単量体が浸透する紙や不織布等の支持体を有する粘着剤層により形成されるフィルム等の形態が挙げられる。また、これらを積層したものであってもよい。上記(イ)の形態は、トランスファテープを用いることができ、粘着剤として、分子量や架橋度を向上した樹脂を含むものを用いることが好ましく、シート状補強材が基材の表面形状に対する追従性が向上し、施工が容易となるため、充分な接着強度を安定的に発揮させることができることになる。また、上記(ロ)の形態は、粘着層の強度、形状保持性や、シート状補強材の施工時における切断加工等の作業性が向上することから好ましい。シート状補強材における基材の表面形状に対する追従性の点から紙や不織布を用いることが好ましい。
【0071】
上記粘着層の厚みとしては特に限定されず、例えば、3μm〜10mmであることが好ましい。3μm未満であると、シート状補強材の基材に対する接着不良が抑制されないおそれがあり、10mmを超えると、シート状補強材の加工性や施工性が低下し、また、シート状補強材の基本性能が低下するおそれがある。より好ましくは、10μm〜5mmである。
【0072】
本発明における離型層は、シート状補強材が加工される間、粘着層を保護し、粘着層の粘着性を保ったまま粘着層と離型層とを剥離することができる作用(離型性)を有し、かつ、シート状補強材を充分に施工することができる柔軟性を有する。
【0073】
上記離型層の形態としては特に限定されず、例えば、紙、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の上述した樹脂材料により形成されるフィルム;アルミ箔等の金属材料により形成されるフィルム等を離型剤処理したフィルム等が挙げられる。
【0074】
上記離型剤としては特に限定されず、例えば、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレンワックス等の離型性樹脂を主成分とするもの等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記離型剤層の形成は、例えば、フィルム、紙等の支持体の片面に離型剤を塗布することにより行うことができる。これらの場合、塗布前にフィルムの表面をプラズマ処理、コロナ放電処理、薬品処理等してもよい。
【0075】
上記離型層の厚みとしては特に限定されず、例えば、3〜2000μmであることが好ましい。3μm未満であると、離型層が充分な離型性を有しないおそれがあり、2000μmを超えると、シート状補強材の加工性や施工性が低下するおそれがある。より好ましくは、10〜500μmである。
【0076】
上記離型層は、遮光層とともに光硬化性成形材料層の両面を遮光することにより、シート状補強材の加工性や施工性、接着性等を向上して接着不良を充分に抑制することができることから、遮光性を有するものであることが好ましい。なお、遮光のレベルとしては遮光層と同じく、全光線を遮断する必要はなく、500nm以下の波長帯における光線透過率を10%以下となるように調整してあれば有効である。
上記離型層に遮光性を付与する方法としては特に限定されず、例えば、遮光性を有する紙やフィルムを用いることにより行うことができる。
【0077】
本発明における保護層は、光硬化性成形材料層の表面における硬化性を向上させたり表面状態を良好にしたりすると共に、充分に臭気を抑制する作用を有するものである。本発明のシート状補強材では、このような保護層を有する場合には、該保護層を有する状態で光硬化させることが好ましいが、この場合には、保護層として、光透過性を有するものを用いることになる。このような光透過性を有する保護層としては、例えば、保護層を樹脂材料により形成されるフィルムとし、該フィルムが顔料等の光透過性を低下させるものを含まないか、又は、光硬化性成形材料層の光硬化性を阻害しない程度に含むものを用いることができる。
【0078】
本発明における保護層は、シート状補強材を施工して、光硬化性成形材料層を硬化させた後に剥がされるものと、シート状補強材の恒久的保護層として剥がさずに残すものとがある。剥がされるものである場合は、光硬化性成形材料層に対して離型性を有し、かつ、シート状補強材を充分に施工することができる柔軟性を有するものである。
【0079】
上記剥がされるものである場合の保護層の形態としては特に限定されず、例えば、樹脂材料により形成される臭気遮断フィルムや、これを積層した積層フィルムからなる場合等が挙げられる。
【0080】
上記臭気遮断フィルムにおける樹脂材料としては、剥がされるものである場合の保護層が光硬化性成形材料層に含有される重合性不飽和単量体を透過しにくいものであれば特に限定されず、例えば、ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル共重合体、セロハン、ポリビニルアセタール(ビニロン)等が好ましい。
【0081】
上記剥がされるものである場合の保護層は、臭気遮断フィルムを上記樹脂材料により形成されるフィルムとした場合、光硬化性成形材料層に対する離型性を有するために、光硬化性成形材料層に対する離型性を有する離型性フィルムを臭気遮断フィルムに積層させた複層フィルムとすることが好ましい。この場合には、離型性フィルムが光硬化性成形材料層と接する面に位置することになる。
【0082】
上記剥がされるものである場合の保護層はまた、吸湿性がある場合には、臭気遮断フィルムが吸湿してしわが入ったり反り返ることを抑制するために、湿気を遮断する作用を有する湿気遮断フィルムを臭気遮断フィルムの片面又は両面に積層させた複層フィルムとすることが好ましい。この場合には、湿気遮断フィルムが少なくとも光硬化性成形材料層と接する面の他の面に位置することになる。
【0083】
上記離型性フィルムや上記湿気遮断フィルムとしては特に限定されず、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂材料により形成されるフィルム等が挙げられる。
これらの複層フィルムとしては、例えば、臭気遮断フィルム及び離型性フィルムを積層したフィルム;湿気遮断フィルム、臭気遮断フィルム及び離型性フィルムをこの順で積層したフィルム等が挙げられる。
【0084】
上記剥がされるものである場合の保護層の形成は、例えば、積層フィルムとする場合、通常の積層フィルムの作製方法により行うことができる。シート状補強材の恒久的保護層として剥がさずに残す保護層は、光硬化性成形材料層の硬化後もその表面にとどまって、耐候性、耐薬品性等の性能を付与するものである。また、本発明のシート状補強材では、光硬化性成形材料層が着色されている場合、恒久的保護層を表装材としなくても外観性を付与することができるが、着色された光硬化性成形材料層と相まって外観性を付与するようにしてもよい。
【0085】
上記恒久的保護層は、硬化後の成形材料層との接着性を充分なものとする為、光硬化性成形材料層に接する恒久的保護層の面は表面処理が施されていることが好ましい。その形態は化学的処理を施したフィルムや物理的処理を施したフィルム等の形態が挙げられる。また、これらの表面処理が組み合わされて施されたフィルムを用いることもできる。
【0086】
これらの表面処理により、恒久的保護層と光硬化性成形材料層との接着性が向上して上述した作用効果が発揮されることになる。化学的処理として、例えば、各種薬品処理、酸処理、溶剤処理、カップリング剤による処理等の処理等が挙げられる。また、物理的処理として、例えば、機械的粗面化処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、イオンビーム処理等が挙げられる。これらの中でも、化学的処理や、プラズマ処理、コロナ放電処理等をフィルムに施すことが好ましい。
【0087】
上記恒久的保護層は、表面処理を施すことができ、またシート状補強材の施工性を損なうことがない強度及び柔軟性を有するもので、耐候性や耐薬品性に優れたものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリデン、弗化ビニル共重合体等のフッ素樹脂、等が挙げられる。
【0088】
上記保護層の厚みとしては特に限定されず、例えば、3〜3000μmであることが好ましい。3μm未満であると、保護層が光硬化性成形材料層の表面における硬化性を向上させたり表面状態を良好にしたりすることができないおそれがあると共に、充分に臭気を抑制することができないおそれがある。3000μmを超えると、シート状補強材の加工性や施工性が低下するおそれがある。より好ましくは、10〜500μmである。また、保護層における臭気遮断フィルムの厚みとしては特に限定されず、例えば、3〜2000μmであることが好ましい。3μm未満であると、保護層が充分に臭気を抑制することができないおそれがあり、2000μmを超えると、保護層を複層フィルムとしたときに、シート状補強材の加工性や施工性が低下するおそれがある。より好ましくは、5〜500μmである。
【0089】
本発明における遮光層は、シート状補強材が加工や施工される間、光硬化性成形材料層が硬化することによりシート状補強材の加工性や施工性が損なわれることがないように光硬化性成形材料層を遮光する作用(遮光性)を有し、かつ、シート状補強材を充分に加工や施工することができる柔軟性を有する。
【0090】
上記遮光層の形態としては特に限定されず、例えば、紙や樹脂材料に遮光材を蒸着、コーティング又は分散したフィルム等が挙げられる。また、これらを積層したものであってもよい。例えば、このような紙や樹脂材料に遮光材を蒸着したフィルムとしては、遮光材としてアルミニウム等の金属による蒸着膜を片面又は両面に形成したフィルム等が挙げられ、遮光材をコーティングしたフィルムとしては、遮光材として顔料等を分散した塗膜やインキ膜を片面又は両面に形成したフィルム等が挙げられ、遮光材を分散したフィルムとしては、遮光材として顔料等を分散したフィルム等が挙げられる。
【0091】
上記顔料としては、フィルムに遮光性を付与することができるものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック;酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カオリンクレイ、タルク、マイカ等の無機顔料;アルミニウムやステンレス等の金属粉末;フタロシアニンブルー等の有機顔料;ミルドファイバー、コールダスト等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
上記フィルムとしては、シート状補強材の施工性を損なうことがない強度及び柔軟性並びに光硬化性成形材料に含まれるモノマーや溶媒に対する耐久性を有するものであれば特に限定されず、例えば、紙や樹脂材料により形成されるフィルム等が挙げられる。
上記紙としては特に限定されず、例えば、天然繊維、合成繊維、無機繊維等により形成されるものが挙げられ、シリコン処理等で表面処理されたものや、プレス加工、エンボス加工等を施したものであってもよい。
上記樹脂材料としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリモノクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルホン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルペンテン、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、セルロースジアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
上記フィルムは、例えば、樹脂材料に顔料や添加剤等を混合して、カレンダーフィルム;押出フィルム;キャストフィルム;Tダイ法、インフレーション法によるフィルム等として得ることができる。また、一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルム等の延伸フィルムとしてもよい。
上記蒸着したフィルムは、例えば、アルミニウム等の金属をフィルムの片面又は両面に蒸着することにより得ることができる。また、上記コーティングしたフィルムは、例えば、顔料を分散した塗料やインキをフィルムの片面又は両面に塗布又は印刷することにより得ることができる。これらの場合、蒸着、塗布又は印刷前にフィルムの表面をプラズマ処理、コロナ放電処理、薬品処理等してもよい。
【0094】
上記遮光層の厚みとしては特に限定されず、例えば、5〜2000μmであることが好ましい。5μm未満であると、遮光層が充分な剥離に耐える強度を有しないおそれがあり、2000μmを超えると、シート状補強材の施工性が損なわれるおそれがある。より好ましくは、10〜500μmである。
【0095】
本発明のシート状補強材の製造において、各層を積層させる順序や方法等としては特に限定されず、例えば、上述したSMCを作製する方法において、キャリアフィルムとして、保護層と、粘着層及び離型層を積層したフィルムを用いることにより、保護層と、粘着層及び離型層とを光硬化性成形材料層の両側に積層させることができる。また、キャリアフィルムとして、遮光層及び保護層を積層したフィルムと、粘着層及び離型層を積層したフィルムを用いることにより、遮光層及び保護層と、粘着層及び離型層とを光硬化性成形材料層の両側に積層させることができる。
【0096】
本発明では、光硬化性成形材料層の作製において、コンパウンド(1)の粘度が上記の範囲内となるように作製することになる。この場合、光硬化性成形材料層を形成する樹脂混合溶液が速増粘効果を発揮する上記の増粘調整剤を使用する形態であれば、製造されたシートを巻き取ることを容易とし、また、ガラス等の補強繊維が偏在したり、シートにしわが生じたり、空気が浸入して気泡が生じたりする不具合が生じることなく、適切な補強繊維の分布状態をできるだけ保存して光硬化性成形材料層を形成することが可能となる。更に、シート状補強材を60〜100℃の温度で該シート状補強材を熟成増粘させる工程を含むシート状補強材の製造方法では、上記の不具合が生じることなく、様々な形状の基材に対応することができる商品価値の高いシート状補強材をより確実に製造することが可能となる。このようなシート状補強材の製造方法もまた、本発明の一つである。
【0097】
上記シート状補強材の製造方法では、シート状補強材を60〜100℃で増粘させる工程の後に光硬化性成形材料層を含むシートを巻き取ることによりシート状補強材を製造することが好ましい。これにより、シートを巻き取る際に不具合が生じることが解消されて工業的に安定してシート状補強材を製造することができることとなる。このような製造方法では、シートを巻き取った後に熟成工程を行っても行わなくてもよいが、増粘調整剤を使用する形態とし、上記のように60℃〜100℃で光硬化性樹脂の増粘反応を進行させると熟成工程を著しく短縮することが可能となる。
【0098】
また、上記シート状補強材を製造する方法であって、上記コンパウンド(1)の含水率を0.1重量%〜0.8重量%の範囲に調整するシート状補強材の製造方法が増粘速度を高める為に有効である。すなわち上述したのと同様に、コンパウンド(1)中の含水率を0.1重量%〜0.8重量%の範囲内とすることが好適である。より好ましくは0.12重量%〜0.65重量%の範囲内、更に好ましくは0.15重量%〜0.6重量%の範囲内となるように調整することである。
【0099】
本発明のシート状補強材は、加工や施工することが容易であって充分な作業時間が確保できて施工性に優れ、また、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、陶磁器、石材、木材等の各種の基材における多様な表面状態や複雑な形状に対応して充分な接着性を有するものであることから、基材への接着不良による不具合の発生が充分に抑制され、しかも、製造時に生じる不具合を解消し、平面だけでなく三次元の曲面や凹凸面等にも充分に追従して多様な用途に対応しうる柔軟なものである。また、その硬化物が、機械的、化学的、電気的特性等の充分な基本性能を有し、接着強度や耐久性等が向上されたものであることから、各種の建造物、機械類、自動車、船舶、家庭用品等における構造部材、配管類、ライニング材等に用いることができて多様な用途に対応しうるものである。
【0100】
本発明のシート状補強材は、上述した各種のものを補強するためや補修するための補強材として用いることができるものである。この場合には、シート状補強材そのものを各種の基材に貼り付けたり、シート状補強材でもって補強材料を各種の基材に貼り付けたりすることができる。
上記補強材料としては特に限定されず、例えば、棒状、パイプ状、板状、網状等の補強材が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、予め本発明のシート状補強材と組み合わされても、施工時に組み合わされてもよい。
【0101】
上記補強材は、本発明のシート状補強材を含み、必要に応じて、補強材料等を含んでなるものであり、本発明のシート状補強材が上述した作用を有することから、各種の基材に対して充分な補強や補修を行うことが容易にできるものである。このような補強材は、本発明の好ましい実施形態の一つである。
本発明のシート状補強材を用いた施工方法や補修方法もまた、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0102】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明のシート状補強材について、好ましい実施形態の例を図1〜図3に断面模式図にて示す。
図1(1)では、本発明のシート状補強材を施工する前の状態を示している。この状態では、シート状補強材は、光硬化性成形材料層の片面に保護層を有し、他の片面に内側から粘着層及び離型層をこの順で有している。この場合、シート状補強材を保管や輸送等する間は、遮光性を有するアルミ蒸着フィルム製等の包装材や缶等にシート状補強材を入れておくことが好ましい。
【0103】
図1(2)では、本発明のシート状補強材から離型層を剥がして基材に対して施工するときの状態を示している。この状態では、シート状補強材は、光硬化性成形材料層の片面に保護層を有し、他の片面に粘着層を有している。この場合、シート状補強材の接着性を向上するために、基材表面が下地処理されたものであってもよく、また、シート状補強材の接着不良による不具合の発生が充分に抑制されることになる限り、基材表面が下地処理されたものでなくてもよい。
【0104】
図1(3)では、本発明のシート状補強材を基材上に接着させたとき、及び、硬化させているときの状態を示している。この状態では、シート状補強材は、光硬化性成形材料層の片面に保護層を有し、他の片面に粘着層を有しており、該粘着層が基材上に接着している。この場合、シート状補強材の接着不良による不具合の発生が充分に抑制されることになるように、シート状補強材に圧力を加えたり、基材と粘着層との間に入った空気を抜く操作等を行ってもよい。このような状態でシート状補強材を活性エネルギー線により硬化させることになる。
【0105】
図1(4)では、本発明のシート状補強材を硬化させた後に保護層を剥がした状態を示している。この状態では、シート状補強材は、光硬化性成形材料層の片面に粘着層を有しており、該粘着層が基材上に接着している。
【0106】
上記活性エネルギー線としては特に限定されず、例えば、太陽光線、紫外線、赤外線、電子線、放射線、レーザー光線、高周波、マイクロ波等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記活性エネルギー線の照射は、屋外等においては太陽光線を用いて行うことができるが、光硬化性成形材料層を充分に硬化させる場合や、充分な太陽光線の照射を行うことができない場合においては、例えば、活性エネルギー線の照射装置を用いて行うことができる。
【0107】
上記活性エネルギー線の照射装置としては特に限定されず、例えば、紫外線蛍光ランプ、低圧水銀ランプ、(超)高圧水銀ランプ、キセノンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、アルゴングローランプ、写真照明用ランプ、カーボンアーク灯、タングステン灯、白熱灯、エキシマレーザー照射装置等が挙げられる。
【0108】
本発明のシート状補強材の硬化時間としては特に限定されず、例えば、太陽光線を用いて硬化させる場合には、1分〜10時間で硬化するように設定することが好ましく、紫外線を用いて硬化させる場合には、1分〜5時間で硬化するように設定することが好ましい。また、直射日光で1時間以内で硬化するように設定することが好ましい。
【0109】
図2(1)〜(5)では、遮光層を有する形態が示されている。この形態では、光硬化性成形材料層を硬化させる前に遮光層が剥がされること以外は、図1と同様な操作が行われることになる。
上記図2の(4)の状態においては、遮光層を剥がした後に光硬化性成形材料層が硬化し始めることから、遮光層を剥がした後、1分〜1時間程度の短時間で硬化するように光硬化性成形材料層の光硬化性を設定することができることになる。これにより、作業時間を短縮することができることになる。
【0110】
上記図1及び図2では、粘着層が硬化性を有するものである場合には、光硬化性成形材料層と共に粘着層もより強固に硬化して、基材との接着性をより向上させることができることから、シート状補強材が接着性に優れたものとなる。これにより、シート状補強材の基本性能をより向上させることができる。なお、上記図2の(1)、(2)及び(3)の状態において、遮光層が剥がされるまでは粘着層の硬化性も保存されることから、遮光層を剥がした後は粘着層が有する硬化作用を充分に発揮させることができることになる。この場合、シート状補強材の接着性を充分なものとするために、光硬化性成形材料層の硬化が粘着層の硬化よりも速くなるように設定することが好ましい。
【0111】
図3(1)では、図1(4)及び図2(5)と同様な状態を示しており、この場合では、基材の角部にシート状補強材が接着されている。また、図3(2)では、曲面を有する基材にシート状補強材が接着されている。
上記図3(1)及び(2)の状態において、本発明のシート状補強材が粘着層により基材と接着される形態とすることができるものであるため、本発明のシート状補強材では、基材の角部や複雑な形状の基材に対しても容易に施工することができることになる。また、施工性が優れること、及び、粘着層が基材の端部や複雑な形状の基材に対しても接着性が優れることから、接着不良が充分に抑制されて接着強度や耐久性等が優れることになる。更に、本発明のシート状補強材では、高い柔軟性を有することから、これらの基材に対する施工性や接着性がより向上することになり、その性能が向上すると共に、適用箇所や適用用途がより拡大することになる。
【0112】
次に、本発明のシート状補強材の製造方法について、好ましい実施形態の例を図4に断面模式図にて示す。
図4は、本発明のシート状補強材をSMC製造装置により作製している状態を示す。上記SMC製造装置においては、キャリアフィルム供給装置11からシート巻き取り装置27までの間、キャリアフィルム12が平坦部28を等速で移動している。
【0113】
図4において、(1)の箇所では、塗布装置としてナイフコーター14を用いて、キャリアフィルム供給装置11から供給されるキャリアフィルム12上に樹脂混合溶液13を塗布し、(2)の箇所では、チョップ状補強繊維17をキャリアフィルム12上の樹脂混合溶液に散布した後に含浸ロール18により圧力をかけて含浸させ、(3)の箇所では、サーフェーシングマット供給装置19から供給されるサーフェーシングマット20を圧着させ、(4)の箇所では、含浸ロール23により圧力をかけて充分に含浸させると共に脱泡させ、(5)の箇所では、保護フィルム供給装置24から供給される保護フィルム(保護層)25を圧着させて貼り合わせ、(6)の箇所では、増粘工程として増粘装置26により樹脂混合溶液13中の光硬化性樹脂を増粘させている。このような製造工程により、チョップ状補強繊維17の分散状態をできるだけ保存して柔軟なシート状補強材を作製することができることとなる。なお、上記実施形態では、キャリアフィルム12として、粘着層及び離型層を積層したフィルムを用いることが好ましく、例えば、片面に離型層を有する両面粘着テープ等を用いることができる。また、このようなSMC製造装置においては、キャリアフィルム12の移動速度としては、0.5〜10m/分とすることが好ましい。
【0114】
上記(1)の箇所に供給される樹脂混合溶液13を調製する方法としては特に限定されず、例えば、樹脂混合溶液13における各成分をディスパー等の撹拌機により混合して行うことができる。この場合、各成分の混合順序や混合方法等としては、光硬化性成形材料層がその作用を有することとなる限り特に限定されない。
【0115】
上記樹脂混合溶液13の粘度としては特に限定されず、例えば、25℃における粘度を0.1〜200Pa・sに設定することが好ましい。0.1Pa・s未満であると、粘度が低過ぎて樹脂混合溶液が取り扱いにくくなり、また、光硬化性成形材料層の厚さを適切なものとすることができなくなるおそれがある。200Pa・sを超えると、柔軟なシート状補強材を作製できないおそれがある。より好ましくは、0.3〜70Pa・sであり、更に好ましくは、0.5〜50Pa・sである。なお、上記粘度は、塗布する前の樹脂混合溶液をJIS K 5400の回転粘度計法により測定した値を意味する。
【0116】
上記(1)の箇所では、塗布装置としてナイフコーター14を用いて樹脂混合溶液13を一定の厚みで塗布しているが、その他にも、ロールコーター、カーテンコーター、フローコーター、スプレーコーター、ダイコーター等の各種コーター;スプレー、刷毛、ローラー等による塗布装置等を用いることができる。これらの塗布装置に樹脂混合溶液13を供給する手段としては特に限定されない。
【0117】
上記(2)の箇所では、ロービング状補強繊維15を6〜50mm程度の長さに切断する切断装置によりチョップ状補強繊維17にして散布し、次いで補強繊維に樹脂混合溶液を充分に含浸させたり脱泡させたりするために含浸ロール18により圧力をかけている。切断装置としては、複数のカッターを備えたカッターロール16aとゴムロール16bとを左右両方から挟むように回転させて切断する装置等を用いることができる。また、ここでは、補強繊維をキャリアフィルム上に供給することができればよく、例えば、各種繊維のチョップドストランドマット、コンティニュアスストランドマット等の繊維をバインダーで布状にしたもの、織布や不織布状のものを積載することにより行うこともできる。
【0118】
上記(3)の箇所では、サーフェーシングマット20をテンションロール21aによりしわが生じないようにしながら、圧着ロール22aにより圧力をかけてチョップ状補強繊維17を含む樹脂混合溶液13上に圧着させている。このような工程を経ることにより、光硬化性成形材料層の表面の平滑性が確保され、かつ補強繊維の一部が表面から突出することが抑制されてシート状補強材の外観が良くなると共に、光硬化性成形材料層が可塑性や柔軟性に優れ、また、硬化後には、優れた強度、耐久性等の基本性能を発揮することになる。この場合、ガラス繊維のサーフェーシングマットを用いることが好適である。
【0119】
上記(4)の箇所では、チョップ状補強繊維17やサーフェーシングマット20に樹脂混合溶液13を充分に含浸させたり脱泡させたりするために、含浸ロール23により圧力をかけている。含浸ロールや圧着ロールとしては、例えば、表面が平滑な形状や、波形であるロールを用いることができるが、ここでは、充分な含浸を行うため、波形のロールを複数用いることが好ましい。また、シートの上下から挟むように含浸ロールを配置して行ってもよく、複数の含浸ロールにベルトをかけて行ってもよい。
【0120】
上記(5)の箇所では、保護フィルム24をテンションロール21bによりしわが生じないようにしながら、圧着ロール22bにより圧力をかけてサーフェーシングマット20とチョップ状補強繊維17を含む樹脂混合溶液13上に圧着させている。
【0121】
上記(6)の箇所では、増粘工程として、増粘装置26により光硬化性樹脂を60〜100℃で増粘させている。増粘装置26としては特に限定されず、例えば、熱風加熱式、遠赤外線等による輻射加熱式等の加熱装置(オーブン);加熱装置付きのキャリアフィルム搬送台;温水槽等を用いることができる。これらの中でも、増粘の調整が容易であることから、熱風を用いる加熱装置により行うことが好ましい。なお、このような増粘工程の後に加熱されたシートが冷却されるように、増粘装置26とシート巻き取り装置27との間の距離を適宜調整することが好ましく、また、加熱されたシートを強制的に冷却する操作等を行ってもよい。
【0122】
上記増粘装置26による加熱時間としては、増粘前の光硬化性樹脂の粘度や、シート巻き取り装置27により巻き取った後に必要により行われる増粘工程の条件等により適宜設定すればよく、例えば、加熱装置内の滞留時間を5〜100分とすることが好ましい。より好ましくは、10〜50分であり、更に好ましくは、15〜30分である。
【0123】
上記増粘工程の後に、シート巻き取り装置27によりシート状補強材を巻き取っている。次いで、そのままで、又は、所定の大きさに切断してから遮光性を有する包装材や缶等に梱包したり、巻き取ったロールの両側面とシート表面とを遮光したりすることにより、保管や輸送する間、光硬化性成形材料層の硬化を充分に抑制することができることとなる。なお、更に適切に増粘させるため、一定期間、常温若しくは加温する熟成工程を経てもよい。
【0124】
上記実施形態では、各装置の構造や大きさ、樹脂混合溶液の塗布や補強繊維の散布における順序や回数等は特に限定されず、また、粘着層をキャリアフィルム上に塗布することにより形成したり、他の機能を有するフィルム等を積層させる操作を行ったりしてもよい。
【0125】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」は、「重量部」を示し、「%」は、「重量%」を示す。
【0126】
合成例1
温度計、窒素ガス導入管、及び、撹拌機を備えた反応器としての四ツ口フラスコに、飽和二塩基酸としてのイソフタール酸498部、並びに、多価アルコールとしてのプロピレングリコール418部及びジプロピレングリコール670部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素ガス置換した。次に、この混合物を撹拌しながら最高温度が215℃となるように加熱し、脱水反応を行った。これにより、酸価が10になったところで温度を50℃に下げ、更に、不飽和二塩基酸としての無水マレイン酸を686部仕込み、最高温度が215℃となるように加熱し、脱水反応を継続して酸価が28の不飽和ポリエステルを得た。そして、この不飽和ポリエステル60部、ビニルモノマーとしてのスチレン40部、及び、安定剤としてのハイドロキノン0.02部を混合することにより、不飽和ポリエステル樹脂Aを得た。
【0127】
合成例2
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、及び、撹拌機を備えた反応器としての四ツ口フラスコに、飽和二塩基酸としてのヘキサヒドロ無水フタール酸462部、並びに、多価アルコールとしてのプロピレングリコール418部及びネオペンチルグリコール520部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素ガス置換した。次に、この混合物を撹拌しながら最高温度が215℃となるように加熱し、脱水反応を行った。これにより、酸価が8になったところで温度を50℃に下げ、更に、不飽和二塩基酸としての無水マレイン酸を686部仕込み、最高温度が215℃となるように加熱し、脱水反応を継続して酸価が28の不飽和ポリエステルを得た。そして、この不飽和ポリエステル60部、ビニルモノマーとしてのスチレン40部、及び、安定剤としてのハイドロキノン0.02部を混合することにより、不飽和ポリエステル樹脂Bを得た。
【0128】
実施例1
下記(1)〜(9)をディスパーにて10分間攪拌した後、全コンパウンドの含水率を測定したところ、0.062%であったので、0.2%に調整するため純水を0.35部投入し、更に5分間攪拌して増粘前の樹脂組成物を得た。この溶液は、1.9Pa・s(25℃)であった。
(1)不飽和ポリエステル樹脂A 90部
(2)スチレンモノマー 15部
(3)増粘調整剤:ペンタドデシルコハク酸 2部
(4)充填材:水酸化アルミニウムB−308 25部
(5)充填材:水酸化アルミニウムB−325 50部
(6)充填材:水酸化アルミニウムB−30−S 75部
(7)光開始剤:イルガキュアー1700 0.5部
(8)光開始剤:ダロキュアー1173 1.5部
(9)重合禁止剤:パラペンゾキノン 0.03部
(10)増粘剤:マグミクロンMD−502 1.4部
なお、水酸化アルミニウムB−308、水酸化アルミニウムB−325及び水酸化アルミニウムB−30−Sは、いずれも商品名でアルコア化成社製であり、イルガキュアー1700及びダロキュアー1173は、いずれも商品名でチバスペシャリティケミカルズ社製であり、マグミクロンMD−502は、商品名で御国色素社製である。
【0129】
次いで、上記(10)の増粘剤を樹脂混合溶液に加え、5分間攪拌して樹脂混合溶液を準備した。
両面粘着テープ巻き出し機、ナイフコーターを備えたフィルム移送装置及び加熱熟成炉を備えたシート状補強材製造装置に、幅500mmのキャリアフィルムとしてアクリル系粘着剤、レーヨン不織布、アクリル系粘着剤、そして離型層である紙セパレーターを、この順に組み合わせてなる両面粘着テープを離型層が下側になるようにセットした。このキャリアフィルムを移動させ、その上にナイフコーターにより幅400mmで上記樹脂混合溶液を均一に塗布し、その上にガラスロービングRS−230N−572−AN(商品名、日東紡社製)を自動カッターで1インチに切断したガラスチョップを12重量%となるように散布した。その積層物の上にガラス不織布EPL−4025(商品名、日本バイリーン社製)を供給しつつ、その上から直径150mmのテフロン(登録商標)製溝付きロールを用いて、樹脂混合溶液を補強繊維として用いたガラス繊維に含浸させるとともに脱泡を行って、光硬化性成形材料層を形成させながら移送し、次に保護層であるナイロンフィルムを直径200mmのロールで積層物上に押え込みつつ供給して保護層による光硬化性成形材料層の封止と所定の厚みだしを行い、シート状物として次工程の加熱熟成炉へと導いた。
このシート状物を80℃に保持された加熱熟成炉内で移送しつつ20分間熟成した後、冷風で35℃以下に急冷し、遮光層であるアルミ蒸着ポリエステルフィルムを保護層上に重ねて供給し、保護層に付着させながら両面粘着テープの離型紙を外側にして紙管に巻き取った。紙管ごとアルミ蒸着ポリエステルフィルムで更に密封包装して本発明のシート状補強材(光硬化プリプレグFRPシート)を得た。なお、本シート状補強材に用いた樹脂混合溶液を同条件で熟成した40℃における粘度は423Pa.sであった。
【0130】
得られた光硬化プリプレグFRPシートを、太陽光がよく当たる場所で、基材として曲率半径1000mm、管径200mmの曲がり管(厚さ1mm冷間圧延鋼板製)を用いて、幅150mmで曲がり管の周囲全体に接着施工した。なお、基材は前もって、汚れ、油質、ワックス等を充分に除去しておいた。
施工は、光硬化プリプレグFRPシートを包装材から取り出し、接着施工に必要な大きさに切断する加工工程、離型紙を剥がして基材に密着して接着させる接着工程、遮光性フィルムを剥がして太陽光にて硬化させる硬化工程、太陽光不足部分(日陰部分)にハンディタイプ紫外線照射装置(ハンディキュアー800:ウシオ電気社製)を用いて硬化させる補助硬化工程により、硬化するまでに要した作業時間は70分であった。硬化後に保護層を取り除いて施工が完了し、合計施工時間は、80分であった。図5に光硬化プリプレグFRPシートを施工した後の円筒を示した。
この施工における作業性(施工性)と接着性とを以下の基準により評価した。
【0131】
施工性
◎:光硬化プリプレグFRPシートが充分な柔軟性を保ち、接着作業も容易であることから、作業を容易に行うことができた。
○:光硬化プリプレグFRPシートの硬化が始まったため柔軟性が損なわれたが、接着作業が容易であることから、作業を行うことができた。
△:光硬化プリプレグFRPシートが充分な柔軟性を保っていたが、接着作業が容易ではないため、作業を行うことが容易ではなかった。
×:光硬化プリプレグFRPシートの硬化が始まったため柔軟性が損なわれ、接着作業が容易ではないため、作業を行うことが困難であった。
【0132】
接着性
◎:光硬化プリプレグFRPシートが硬化後に基材に対して充分に接着され、粘着層が全体的に充分に硬化し、剥がれにくくズレにくいものとなった。
○:光硬化プリプレグFRPシートが硬化後に基材に対して充分に接着され、粘着層が部分的に硬化し、剥がれにくいが僅かにズレやすいものとなった。
△:光硬化プリプレグFRPシートが硬化後に基材に対して充分に接着されたが、粘着層は硬化せず、僅かに剥がれやすくズレやすいものとなった。
×:光硬化プリプレグFRPシートが硬化後に基材に対して接着されたが、接着性が充分に均一でなく、剥がれやすくズレやすいものとなった。
【0133】
実施例2
実施例1のキャリアフィルムとして用いた両面粘着テープの代わりに黒色顔料を分散して遮光性を付与したナイロンフィルムを用いる他は、実施例1と同様にして本発明のシート状補強材(光硬化プリプレグFRPシート)を得た。
本シート状補強材を実施例1と同様にして接着硬化施工を行った。なお基材は光硬化プリプレグFRPシートを接着する部分に、前もって、汚れ、油質、ワックス等を充分に除去した後プライマー処理工程を行った。プライマー(マイティグリップ−9036、商品名、イーテック社製)を300g/mの量を塗布し充分に乾燥した後に実施例1と同様に加工、接着、硬化、補助硬化施工した。
その評価を実施例1と同様にした。
【0134】
実施例3
実施例1の不飽和ポリエステル樹脂Aに代えて不飽和ポリエステル樹脂B、フリットEH1040を40部追加した。実施例1と同様にしてディスパーにて10分間撹拌した後、全コンパウンドの含水率を測定したところ、0.07%であったので、0.2%に調整するため純水を0.39部投入し、更に5分間撹拌して増粘前の樹脂混合溶液を得た。この溶液は、2.5Pa・s(25℃)であった。
他は同様にして、本発明のシート状補強材(光硬化プリプレグシート)を得た。なお、本シート状補強材に用いた樹脂混合溶液を同条件で熟成した40℃における粘度は650Pa・sであった。実施例1と同様に加工、接着、硬化、補助硬化施工した。その評価を実施例1と同様にした。なお、本シート状補強材の硬化物は、マンセル6.25PB5/10相当の色に着色しており、(社)日本鉄道車両機械技術協会による鉄道車両用材料燃焼試験の結果「極難燃性」のレベルであった。なお、フリットEH1040は、商品名で日本フリット社製である。
フリットEH1040の光線透過率を表1に示す。
【0135】
【表1】
Figure 0004236416
【0136】
実施例4
下記(1)〜(5)をディスパーにて10分間攪拌した後、全コンパウンドの含水率を測定したところ、0.06%であったので、0.6%に調整するため純水を0.57部投入し、更に5分間攪拌して増粘前の樹脂組成物を得た。この溶液は、0.66Pa・s(25℃)であった。
(1)不飽和ポリエステル樹脂A 100部
(2)増粘調整剤:ペンタドデシルコハク酸 3部
(3)光開始剤:イルガキュアー1700 0.5部
(4)光開始剤:ダロキュアー1173 1.5部
(5)重合禁止剤:パラペンゾキノン 0.03部
(6)増粘剤:マグミクロンMD−502 1.8部
【0137】
次いで、上記(6)の増粘剤を樹脂混合溶液に加え、5分間攪拌して樹脂混合溶液を準備した。ガラスチョップを30重量%となるように散布する以外は、実施例1と同様にして本発明のシート状補強材(光硬化プリプレグFRPシート)を得た。なお、本シート状補強材に用いた樹脂混合溶液を同条件で熟成した40℃における粘度は610Pa・sであった。実施例1と同様に加工、接着、硬化、補助硬化施工した。
その評価を実施例1と同様にした。
【0138】
比較例1
光硬化性樹脂として合成例1で得られた不飽和ポリエステル樹脂A 100部、増粘剤としてMgO#20(商品名、協和化学工業社製)1.4部、充填材として水酸化アルミニウムであるB−308(商品名、アルコア化成社製)110部、光開始剤としてダロキュアー1173(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1.0部、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン500ppm、及び、スチレン5部を添加し、ディスパーにて10分間撹拌して樹脂混合溶液を得た。この溶液の粘度は、3.55Pa・s(25℃)であった。
【0139】
次いで、SMC含浸機に幅500mmのキャリアフィルムとして、黒色顔料を分散して遮光性を付与したポリエチレンフィルムをセットした。このキャリアフィルムを移動させ、その上にナイフコーターにより幅400mmで上記樹脂混合溶液を均一に塗布し、その層の上にガラスロービングであるAF210Wを自動カッターで約1インチに切断したガラスチョップを18重量%となるように散布した。その積層物の上に、上記と同じポリエチレンフィルムをキャリアフィルムとし、同様に樹脂混合溶液を塗布した層で覆い、含浸ロールによる脱泡、含浸を行った後、紙管に巻き取った。紙管ごとアルミ蒸着ポリエステルフィルム製の包装材で密封包装した後、これを40℃で48時間熟成、増粘し、比較の光硬化プリプレグFRPシートを得た。なお本シート状補強材に用いた樹脂混合溶液を同条件で熟成した40℃における粘度は15000Pa・sであった。
得られた光硬化プリプレグFRPシートを、実施例1と同様にして接着硬化施工を行った。なお、基材は、光硬化プリプレグFRPシートを接着する部分に、前もって、汚れ、油質、ワックス等を充分に除去した後プライマー処理工程を行った。プライマー(マイティグリップ−9036、商品名、イーテック社製)を300gr/mの量を塗布し充分に乾燥した後に実施例1と同様に加工、接着、硬化、補助硬化施工した。
その評価を実施例1と同様にした。
実施例1〜4及び比較例1の評価結果を表2に示した。
【0140】
【表2】
Figure 0004236416
【0141】
実施例1〜4において、本発明のシート状補強材は、施工工程数が少なく、作業時間も短時間であり、施工性に優れたものであることから、基材への接着を安定的に行うことができて接着不良が充分に抑制され、しかも、柔軟性が高く、平面だけでなく三次元の曲面や凹凸面等にも充分に追従することができ、各種の基材における多様な用途に対応しうるものであることがわかった。また、実施例3では、青色に仕上がるため、後塗装が省略できるという利点が確認された。
【0142】
【発明の効果】
本発明のシート状補強材は、上述の構成よりなるので、施工性に優れ、各種の基材に対して接着不良が充分に抑制されて接着強度や耐久性等を向上させることができ、しかも、柔軟性が高く、平面だけでなく三次元の曲面や凹凸面等にも充分に追従することができるものであることから、各種の建造物、機械類、自動車、船舶、家庭用品等における構造部材、配管類、ライニング材等に用いることができて多様な用途に対応しうる材料である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシート状補強材において、基材に接着して硬化させるまでの状態を示す一実施形態における断面模式図である。
【図2】本発明のシート状補強材において、基材に接着して硬化させるまでの状態を示す一実施形態における断面模式図である。
【図3】本発明のシート状補強材において、基材の端部や曲面を有する基材に接着されている状態を示す一実施形態における断面模式図である。
【図4】本発明のシート状補強材の製造方法において、製造工程を示す一実施形態における断面模式図である。
【図5】実施例において用いられた円筒鋼板に光硬化プリプレグFRPシートを施工した後の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 保護層
2 光硬化性成形材料層
3 粘着層
4 離型層
5 基材
6 接合部
7 遮光層
8 中心線
11 キャリアフィルム供給装置
12 キャリアフィルム
13 樹脂混合溶液
14 ナイフコーター
15 ロービング状補強繊維
16a カッターロール
16b ゴムロール
17 チョップ状補強繊維
18、23 含浸ロール
19 サーフェーシングマット供給装置
20 サーフェーシングマット
21a、21b テンションロール
22a、22b 圧着ロール
24 保護フィルム供給装置
25 保護フィルム
26 増粘装置
27 シート巻き取り装置
28 平坦部

Claims (8)

  1. 保護層及び光硬化性成形材料層を構造として持つシート状補強材を製造する方法であって、
    該光硬化性成形材料層は、光硬化性樹脂と全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体とを含有するコンパウンド(1)、及び、補強繊維(2)から形成されるものであり、該全炭素数が8〜30であるコハク酸誘導体の含有量が、該コンパウンド(1)に含まれる光硬化性樹脂の量を100重量%とすると、0.01〜10重量%であって、
    該製造方法は、該コンパウンド(1)の40℃における粘度が50〜4000Pa・sとなるように、60〜100℃の温度で該シート状補強材を熟成増粘させる工程と、熟成増粘後に35℃以下に急冷する工程とを含む
    ことを特徴とするシート状補強材の製造方法
  2. 前記熟成増粘工程は、5〜100分である
    ことを特徴とする請求項1に記載のシート状補強材の製造方法。
  3. 前記製造方法は、前記コンパウンド(1)の40℃における粘度が50〜1000Pa・sとなるように、前記熟成増粘工程と前記急冷工程とを含む
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状補強材の製造方法。
  4. 前記製造方法は、前記急冷工程後、光硬化性成形材料層を含むシートを巻き取る工程を含む
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート状補強材の製造方法。
  5. 前記製造方法は、前記光硬化性成形材料層の保護層がある面の他の面上に、内側から粘着層及び離型層をこの順に構造として持つシート状補強材を製造する方法である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシート状補強材の製造方法。
  6. 前記光硬化性成形材料層は、前記コンパウンド(1)の含有量が40〜95重量%、前記補強繊維(2)の含有量が5〜60重量%であり、前記コンパウンド(1)に含まれる光硬化性樹脂の含有量が20〜95重量%の範囲であり、前記コンパウンド(1)に含まれる光硬化性樹脂の量を100重量%としたとき充填材の含有量が0〜300重量%である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシート状補強材の製造方法。
  7. 前記コンパウンド(1)は、更に、多価金属酸化物及び/又は多価金属水酸化物を含み、
    前記光硬化性樹脂100重量%に対し、該多価金属酸化物及び多価金属水酸化物が0.1〜10重量%である
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシート状補強材の製造方法。
  8. 前記製造方法は、前記コンパウンド(1)の含水率を0.1重量%〜0.8重量%の範囲に調整する
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のシート状補強材の製造方法。
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