JP4221957B2 - 変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、予め入力されたシフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って変速機を自動変速すると共に、ドライバの手動操作があったときはシフトアップマップ及びシフトダウンマップとは無関係に変速する自動変速モードを備えた変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の運転状態に基づく変速機の各ギヤ段の範囲を予め定めたシフトアップマップ及びシフトダウンマップ(以下、両者を総合して単にシフトマップとも言う)に従って変速機を自動変速すると共に、ドライバの手動操作があったときには上記シフトマップとは無関係に変速機を変速する自動変速モードを備えた車両用変速制御装置が知られている。
【0003】
これは、車両が加速を行うときや上り坂を走行するときなどに、シフトマップにより定められたギヤ段よりも低速段へと変速してより大きな駆動力を確保したり、シフトマップにより定められたギヤ段よりも高速段へと変速して燃費の向上を図ったりすることなどができ、ユーザーの快適性・選択性をより向上させるものである。
【0004】
このような変速制御装置を備えた車両は、例えば、運転席に設けられたシフトレバー等のシフトチェンジ手段のシフト位置として、基準位置と、手動シフトアップ位置と、手動シフトダウン位置とを備えている。シフトチェンジ手段が基準位置にあるときには、変速制御装置はシフトマップに従って変速機を自動変速する。そして、ドライバがシフトチェンジ手段を手動シフトアップ位置あるいは手動シフトダウン位置へと手動操作した場合には、シフトマップとは無関係にドライバの手動操作に応じたシフトアップあるいはシフトダウンを実行する。その後、ドライバがシフトチェンジ手段を基準位置に戻すと、再びシフトマップに従って変速を実行する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような変速制御装置において、ドライバが手動操作による変速を行った後、シフトチェンジ手段を基準位置へと戻すと、それと同時に、変速機のギヤ段が元のギヤ段へと変速されてしまう場合があった。即ち、ドライバが手動操作によりシフトマップとは無関係なギヤ段へ変速を行っても、シフトチェンジ手段を基準位置に戻した瞬間にシフトマップに従ったギヤ段へ戻されてしまうのである。
【0006】
そこで従来、この問題を解決するために、ドライバの手動操作による変速を実行した後は一定期間変速を禁止したり、エンジン回転数が所定値以上に上昇するまでは変速を禁止したりする方法が取られていた。
【0007】
しかしながらこれら従来の対策方法では、変速制御装置の制御とドライバの意思とが一致しない場合があった。例えば、ドライバが手動シフトダウンして大きな駆動力で加速・追い越しを行おうとした際に、追い越しが完了する前、即ち、ドライバがいまだ加速を望んでいるときに変速の禁止が解除され、シフトマップに従ったギヤ段へシフトアップされてしまう場合などがあった。
【0008】
また、エンジン回転速度が所定値以上に上昇するまで変速を禁止する方法では、変速の禁止が解除されたときに変速機のギヤ段が過度に高いギヤ段へといっきに変速されてしまう場合があり、フィーリングの悪化を招いていた。例えば、12段変速機を備えた車両において、ドライバが9速ギヤ段に手動変速し、その後、エンジン回転速度が上昇して変速が解除されたときに、シフトマップにより定められたギヤ段が例えば12速ギヤ段であれば、いっきに3段高いギヤ段へと変速されてしまうのである。
【0009】
そこで、本発明の目的は、予め入力されたシフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って変速機を自動変速すると共に、ドライバの手動操作があったときはシフトアップマップ及びシフトダウンマップとは無関係に変速する自動変速モードを備えた変速制御装置において、ドライバの手動操作によるシフトダウンが行われた後、ドライバの望まないシフトアップを禁止すると共に、そのシフトアップの禁止が解除されたときに極端に高いギヤ段にシフトアップされることを防止した変速制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、手動操作可能なシフトレバー等のシフトチェンジ手段を備え、そのシフトチェンジ手段が基準位置に位置しているときには、車両の車速とアクセル開度とに基づき変速機の各ギヤ段の範囲を予め定めたシフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って変速機を自動変速し、上記シフトチェンジ手段が上記基準位置から手動操作されたときには上記シフトアップマップ及びシフトダウンマップとは無関係に上記手動操作に応じたギヤ段への自動変速を実行し、その後、上記シフトチェンジ手段が上記基準位置に戻されたならば再び上記シフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って変速機を自動変速する自動変速モードを備えた変速制御装置であって、車両のアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、シフトダウンのための上記シフトチェンジ手段の手動操作が終了して上記シフトチェンジ手段が上記基準位置へと戻されて上記変速機が上記シフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って自動変速されるときに、そのシフトアップマップに従ったシフトアップを禁止するか否かを、車速に拘わらず、上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度から判断し、かつ該アクセル開度が、上記手動操作によりシフトダウンされたギヤ段による駆動力がドライバの望む駆動力であるとみなせる所定値よりも大きい間は、上記駆動力を確保するために上記シフトアップマップに従ったシフトアップを禁止するシフトアップ禁止手段とを備えたものである。
【0011】
この構成によれば、ドライバがアクセルを踏み込んでいるとき、即ち、低速段による大きな駆動力を望んでいると判断できるときはシフトアップマップに従ったシフトアップを禁止するため、ドライバの望まないシフトアップを防止できる。
【0012】
ここで、上記シフトアップ禁止手段によって上記シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された後、上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度が上記所定値以下となったときに上記シフトアップの禁止を解除するシフトアップ禁止解除手段を設けることが好ましい。
【0013】
また、上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度が上記所定値以下となっている期間を計測するタイマー手段と、上記シフトアップ禁止手段によって上記シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された後、上記タイマー手段により計測された期間が所定値より大きくなったときに上記シフトアップの禁止を解除するシフトアップ禁止解除手段とを設けても良い。
【0014】
また、上記シフトアップ禁止手段によって上記シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された後、シフトアップのための上記シフトチェンジ手段の手動操作が行われたときに上記シフトアップの禁止を解除するシフトアップ禁止解除手段を設けても良い。
【0015】
更に、車両のエンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、上記シフトアップ禁止手段により上記シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された状態で上記エンジン回転速度検出手段により検出されたエンジン回転速度が所定値より大きくなったときに変速機のシフトアップを指示するシフトアップ指示手段を設けることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された状態であってもエンジン回転速度が上昇すると自動的に変速機がシフトアップされるため、エンジンのオーバーランを防止できると共に、シフトアップの禁止が解除されたときに極端に高いギヤ段へと変速されることを防止できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
本実施形態は、本出願人が特開2001−263472で開示している自動変速装置に適用したものであり、まず、自動変速装置の概要を説明する。
【0019】
図1に本実施形態に係る車両の自動変速装置を示す。ここでは車両がトレーラを牽引するトラクタであり、エンジンがディーゼルエンジンである。図示するように、エンジン1にクラッチ2を介して変速機3が取り付けられ、変速機3のアウトプットシャフト4(図2参照)が図示しないプロペラシャフトに連結されて後輪(図示せず)を駆動するようになっている。エンジン1はエンジンコントロールユニット(ECU)6によって電子制御される。即ち、ECU6は、エンジンの回転速度を検出するエンジン回転センサ7(エンジン回転速度検出手段)とアクセル開度を検出するアクセル開度センサ8(アクセル開度検出手段)との出力から現在のエンジン回転速度及びエンジン負荷を読取り、主にこれらに基づいて燃料噴射ポンプ1aの電子ガバナ1dを制御し、燃料噴射時期及び燃料噴射量を制御する。
【0020】
一方、変速機3の変速中は、アクセル開度センサ8によって検知される実アクセル開度と無関係にECU6自らが加工した疑似アクセル開度なるものに基づいてエンジン制御を実行する。これは特に後述するダブルクラッチ制御において必要である。
【0021】
図2に示すように、エンジンのクランク軸にフライホイール1bが取り付けられ、フライホイール1bの外周にリングギヤ1cが形成され、リングギヤ1cの歯が通過する度にエンジン回転センサ7がパルスを出力し、ECU6が単位時間当たりのパルス数をカウントしてエンジン回転数を算出する。
【0022】
図1に示すように、ここではクラッチ2と変速機3とがトランスミッションコントロールユニット(TMCU)9の制御信号に基づいて自動制御される。即ちかかる自動変速装置には自動クラッチ装置と自動変速機とが備えられる。ECU6とTMCU9とは互いにバスケーブル等を介して接続され、相互に連絡可能である。
【0023】
図2に示すように、クラッチ2は機械式摩擦クラッチであり、入力側をなすフライホイール1b、出力側をなすドリブンプレート2a、及びドリブンプレート2aをフライホイール1bに摩擦接触或いは離反させるプレッシャプレート2bから構成される。そしてクラッチ2は、クラッチアクチュエータ10(図1参照)によりプレッシャプレート2bを軸方向に操作し、基本的には自動断接され、ドライバの負担を軽減し得るものとなっている。一方、微低速バックに際しての微妙なクラッチワークや、非常時のクラッチ急断等を可能とするため、ここではクラッチペダル11(図1参照)によるマニュアル断接も可能となっている。所謂セレクティブオートクラッチの構成である。図1に示すように、クラッチ位置(即ちプレッシャプレート2bの位置)を検知するためのクラッチストロークセンサ14と、クラッチペダル11の位置(踏み込み量)を検知するためのクラッチペダルストロークセンサ16とが設けられ、それぞれTMCU9に接続されている。
【0024】
図3に分かりやすく示すが、クラッチアクチュエータ(クラッチブースタ)10は実線で示す二系統の空圧通路a,bを通じてエアタンク5に接続され、エアタンク5から供給される空圧で作動する。一方の通路aがクラッチ自動断接用、他方の通路bがクラッチマニュアル断接用である。一方の通路aが二股状に分岐され、そのうちの一方に自動断接用の電磁弁MVC1,MVC2が直列に設けられ、他方に非常用の電磁弁MVCEが設けられる。分岐合流部にダブルチェックバルブDCV1が設けられる。他方の通路bに、クラッチアクチュエータ10に付設される油圧作動弁12が設けられる。両通路a,bの合流部にもダブルチェックバルブDCV2が設けられる。ダブルチェックバルブDCV1,DCV2は差圧作動型の三方弁である。
【0025】
上記電磁弁MVC1,MVC2,MVCEはTMCU9によりON/OFF制御され、ONのとき上流側を下流側に連通し、OFFのとき上流側を遮断して下流側を大気開放する。まず自動側を説明すると、電磁弁MVC1は単にイグニッションキーのON/OFFに合わせてON/OFFされるだけである。イグニッションキーOFF、つまり停車中はOFFとなり、エアタンク5からの空圧を遮断する。電磁弁MVC2は比例制御弁で、供給又は排出エア量を自由にコントロールできる。これはクラッチの断接速度制御を行うためである。電磁弁MVC1,MVC2がともにONだとエアタンク5の空圧がダブルチェックバルブDCV1,DCV2をそれぞれ切り換えてクラッチアクチュエータ10に供給される。これによりクラッチが分断される。クラッチを接続するときはMVC2のみがOFFされ、これによりクラッチアクチュエータ10の空圧がMVC2から排出されてクラッチが接続される。
【0026】
ところでもし仮にクラッチ分断中に電磁弁MVC1又はMVC2に異常が生じ、いずれかがOFFとなると、ドライバの意思に反してクラッチが急接されてしまう。そこでこのような異常がTMCU9の異常診断回路で検知されたら、即座に電磁弁MVCEをONする。すると電磁弁MVCEを通過した空圧がダブルチェックバルブDCV1を逆に切り換えてクラッチアクチュエータ10に供給され、クラッチ分断状態が維持され、クラッチ急接が防止される。
【0027】
次にマニュアル側を説明する。クラッチペダル11の踏込み・戻し操作に応じてマスタシリンダ13から油圧が給排され、この油圧が破線で示す油圧通路13aを介して油圧作動弁12に供給される。これによって油圧作動弁12が開閉され、クラッチアクチュエータ10への空圧の給排が行われ、クラッチ2のマニュアル断接が実行される。油圧作動弁12が開くと、これを通過した空圧がダブルチェックバルブDCV2を切り換えてクラッチアクチュエータ10に至る。
【0028】
図2に詳細に示すように、変速機3は基本的に主軸(メインシャフト)33及び副軸(カウンタシャフト)32を備えた常時噛み合い式の多段変速機で、前進16段、後進2段に変速可能である。変速機3はメインギヤ18と、その入力側及び出力側にそれぞれ副変速機としてのスプリッタ17及びレンジギヤ19を備える。そして、インプットシャフト15に伝達されてきたエンジン動力をスプリッタ17、メインギヤ18、レンジギヤ19へと順に送ってアウトプットシャフト4に出力する。
【0029】
変速機3を自動変速すべくギヤシフトユニットGSUが設けられ、これはスプリッタ17、メインギヤ18、レンジギヤ19それぞれの変速を担当するスプリッタアクチュエータ20、メインアクチュエータ21及びレンジアクチュエータ22から構成される。これらアクチュエータもクラッチアクチュエータ10同様空圧作動され、TMCU9によって制御される。各ギヤ17,18,19の現在ポジションはギヤポジションスイッチ23(図1参照)で検知される。副軸32の回転速度が副軸回転センサ26で検知され、アウトプットシャフト4の回転速度がアウトプットシャフト回転センサ28で検知される。これら検知信号はTMCU9に送られる。
【0030】
この自動変速機ではマニュアルモードが設定され、ドライバのシフトチェンジ操作に基づくマニュアル変速も可能である。この場合、図1に示すように、クラッチ2の断接制御及び変速機3の変速制御は運転席に設けられたシフトチェンジ手段29からの変速指示信号を合図に行われる。即ち、ドライバが、シフトチェンジ手段29のシフトレバー29aをシフト操作すると、シフトチェンジ手段29に内蔵されたシフトスイッチが作動(ON)し、変速指示信号がTMCU9に送られ、これを基にTMCU9はクラッチアクチュエータ10、スプリッタアクチュエータ20、メインアクチュエータ21及びレンジアクチュエータ22を適宜作動させ、一連の変速操作(クラッチ断→ギヤ抜き→ギヤ入れ→クラッチ接)を実行する。そしてTMCU9は現在のシフト段をモニター31に表示する。
【0031】
図1に示すシフトチェンジ手段29において、Rはリバース、Nはニュートラル、Dはドライブ(基準位置)、UPは手動シフトアップ位置、DOWNは手動シフトダウン位置をそれぞれ意味する。シフトスイッチはこれら各ポジションに応じた信号を出力する。シフトレバー29aは図示しないスプリングなどによって付勢されており、ドライバがシフトレバー29aをUP又はDOWN側に手動操作した後シフトレバー29aから手を離すと自動的にDレンジへと復帰するようになっている。また運転席に、自動変速モードとマニュアル変速モードとを切り換えるモードスイッチ24と、変速を1段ずつ行うか段飛ばしで行うかを切り換えるスキップスイッチ25とが設けられる。
【0032】
自動変速モードでシフトレバー29aがDレンジに位置してるときは、後述するシフトアップマップ及びシフトダウンマップ(以下、両者を総合して単にシフトマップと言うときもある)に従って自動的に変速機3の変速が行われる。この自動変速モード中に、ドライバがシフトレバー29aを手動シフトアップ位置(UP)又は手動シフトダウン位置(DOWN)に手動操作した場合、シフトマップとは無関係にドライバの手動操作に応じて変速機3がシフトアップ又はシフトダウンされる。自動変速モードにおいて、スキップスイッチ25がOFF(通常モード)なら、シフトレバー29aの1回のUP又はDOWNの操作により、変速は1段ずつ行われる。これはトレーラ牽引時等、積載荷重が比較的大きいときに有効である。またスキップスイッチ25がON(スキップモード)なら変速は1段飛ばしで行われる。これはトレーラを牽引してないときや荷が軽いときなどに有効である。
【0033】
一方、マニュアル変速モードのときは、変速は完全にドライバの意思に従う。シフトレバー29aがDレンジのときは変速は行われず、現在ギヤが保持され、ドライバの積極的な意思でシフトレバー29aをUP又はDOWNに操作したときのみ、シフトアップ又はシフトダウンが可能である。このときも前記同様、スキップスイッチ25がOFFなら1回の操作につき変速は1段ずつ行われ、スキップスイッチ25がONなら変速は1段飛ばしで行われる。このモードではDレンジは現ギヤ段を保持するH(ホールド)レンジとなる。
【0034】
なお、運転席に非常用変速スイッチ27が設けられ、GSUの電磁弁等が故障したときはスイッチ27の手動切換により変速できるようになっている。
【0035】
図2に示すように、変速機3にあっては、インプットシャフト15、主軸33及びアウトプットシャフト4が同軸上に配置され、副軸32がそれらの下方に平行配置される。インプットシャフト15がクラッチ2のドリブンプレート2aに接続され、インプットシャフト15と主軸33とが相対回転可能に支持される。
【0036】
まずスプリッタ17とメインギヤ18の構成を説明する。インプットシャフト15にインプットギヤSHが回転可能に取り付けられる。また主軸33にも前方から順にギヤM4,M3,M2,M1,MRが回転可能に取り付けられる。MRを除くギヤSH,M4,M3,M2,M1は、それぞれ副軸32に固設されたカウンタギヤCH,C4,C3,C2,C1に常時噛合される。ギヤMRはアイドルリバースギヤIRに常時噛合され、アイドルリバースギヤIRは副軸32に固設されたカウンタギヤCRに常時噛合される。
【0037】
インプットシャフト15及び主軸33に取り付けられた各ギヤSH,M4…に、当該ギヤを選択し得るようドグギヤ36が一体的に設けられ、これらドグギヤ36に隣接してインプットシャフト15及び主軸33に第1〜第4ハブ37〜40が固設される。第1〜第4ハブ37〜40には第1〜第4スリーブ42〜45が嵌合される。ドグギヤ36及び第1〜第4ハブ37〜40の外周部と、第1〜第4スリーブ42〜45の内周部とにスプラインが形成されており、第1〜第4スリーブ42〜45は第1〜第4ハブ37〜40に常時係合してインプットシャフト15又は主軸33と同時回転すると共に、前後にスライド移動してドグギヤ36に対し選択的に係合・離脱する。即ち、スプリッタ17におけるハブ37とドグ36、およびメインギヤ18における副軸32側のドグ36と主軸33側のハブ37〜40とをスリーブ42〜45により係合・離脱させることによりギヤイン・ギヤ抜きが行われる。第1スリーブ42の移動をスプリッタアクチュエータ20で行い、第2〜第4スリーブ43〜45の移動をメインアクチュエータ21で行う。
【0038】
このように、スプリッタ17とメインギヤ18とは各アクチュエータ20,21によって自動変速され得る常時噛み合い式の構成とされる。また、スプリッタ17は、そのスプライン部に通常の機械的なシンクロ機構が存在するものであるが、メインギヤ18の各ギヤ段は各スプライン部にシンクロ機構が存在しないノンシンクロギヤ段となっている。このため、メインギヤ18の変速を伴う変速を実行する場合、後述のシンクロ制御なるものを行って副軸32側のドグギヤ回転数と主軸33側のスリーブ回転数とを同期(シンクロ)させ、シンクロ機構なしで変速できるようにしている。ここではメインギヤ18以外にスプリッタ17にもニュートラルポジションが設けられ、所謂ガラ音対策がなされている(特願平11-319915 号参照)。
【0039】
次にレンジギヤ19の構成を説明する。レンジギヤ19は遊星歯車機構34を採用しており、ハイ・ローいずれかのポジションに切り替えることができる。遊星歯車機構34は、主軸33の最後端に固設されたサンギヤ65と、その外周に噛合される複数のプラネタリギヤ66と、プラネタリギヤ66の外周に噛合される内歯を有したリングギヤ67とからなる。各プラネタリギヤ66は共通のキャリア68に回転可能に支持され、キャリア68はアウトプットシャフト4に連結される。リングギヤ67は管部69を一体的に有し、管部69はアウトプットシャフト4の外周に相対回転可能に嵌め込まれてアウトプットシャフト4とともに二重軸を構成する。
【0040】
第5ハブ41が管部69に一体的に設けられる。また第5ハブ41の後方に隣接して、アウトプットシャフト4にアウトプットシャフトドグギヤ70が一体的に設けられる。第5ハブ41の前方に隣接して、ミッションケース側に固定ドグギヤ71が設けられる。第5ハブ41の外周に第5スリーブ46が嵌合される。これら第5ハブ41、アウトプットシャフトドグギヤ70、固定ドグギヤ71及び第5スリーブ46にも前記同様にスプラインが形成され、第5スリーブ46が第5ハブ41に常時係合すると共に、前後にスライド移動してアウトプットシャフトドグギヤ70又は固定ドグギヤ71に対し選択的に係合・離脱する。第5スリーブ46の移動がレンジアクチュエータ22で行われる。レンジギヤ19のスプライン部には機械的なシンクロ機構が存在する。
【0041】
第5スリーブ46が前方に移動するとこれが固定ドグギヤ71に係合し、第5ハブ41と固定ドグギヤ71とが連結される。これによりリングギヤ67がミッションケース側に固定され、アウトプットシャフト4が1より大きい比較的大きな減速比(ここでは4.5)で回転駆動されるようになる。これがローのポジションである。
【0042】
一方、第5スリーブ46が後方に移動するとこれがアウトプットシャフトドグギヤ70に係合し、第5ハブ41とアウトプットシャフトドグギヤ70とが連結される。これによりリングギヤ67とキャリア68とが互いに固定され、アウトプットシャフト4が1の減速比で直結駆動されるようになる。これがハイのポジションである。このようにかかるレンジギヤ19ではハイ・ロー間の減速比が比較的大きく異なる。
【0043】
結局、この変速機3では、前進側において、スプリッタ17でハイ・ローの2段、メインギヤ18で4段、レンジギヤ19でハイ・ローの2段に変速可能であり、計2×4×2=16段に変速することができる。また後進側では、スプリッタ17のみでハイ・ローを切り替えて2段に変速することができる。
【0044】
次に、各アクチュエータ20,21,22について説明する。これらアクチュエータはエアタンク5の空圧で作動する空圧シリンダと、空圧シリンダへの空圧の給排を切り替える電磁弁とで構成される。そしてこれら電磁弁がTMCU9で選択的に切り替えられ、空圧シリンダを選択的に作動させるようになっている。
【0045】
スプリッタアクチュエータ20は、ダブルピストンを有した空圧シリンダ47と三つの電磁弁MVH,MVF,MVGとで構成される。スプリッタ17をニュートラルにするときはMVH/ON,MVF/OFF,MVG/ONとされる。スプリッタ17をハイにするときはMVH/OFF,MVF/OFF,MVG/ONとされる。スプリッタ17をローにするときはMVH/OFF,MVF/ON,MVG/OFFとされる。
【0046】
メインアクチュエータ21は、ダブルピストンを有しセレクト側の動作を担当する空圧シリンダ48と、シングルピストンを有しシフト側の動作を担当する空圧シリンダ49とを備える。空圧シリンダ48には三つの電磁弁MVC,MVD,MVEが設けられ、空圧シリンダ49には二つの電磁弁MVB,MVAが設けられる。
【0047】
セレクト側空圧シリンダ48は、MVC/OFF,MVD/ON,MVE/OFFのとき図の下方に移動し、メインギヤの3rd、4th又はN3を選択可能とし、MVC/ON,MVD/OFF,MVE/ONのとき中立となり、メインギヤの1st、2nd又はN2を選択可能とし、MVC/ON,MVD/OFF,MVE/OFFのとき図の上方に移動し、メインギヤのRev又はN1を選択可能とする。
【0048】
シフト側空圧シリンダ49は、MVA/ON,MVB/ONのとき中立となり、メインギヤのN1、N2又はN3を選択可能とし、MVA/ON,MVB/OFFのとき図の左側に移動し、メインギヤの2nd,4th又はRevを選択可能とし、MVA/OFF,MVB/ONのとき図の右側に移動し、メインギヤの1st又は3rdを選択可能とする。
【0049】
レンジアクチュエータ22は、シングルピストンを有した空圧シリンダ50と二つの電磁弁MVI,MVJとで構成される。空圧シリンダ50は、MVI/ON,MVJ/OFFのとき図の右側に移動し、レンジギヤをハイとし、MVI/OFF,MVJ/ONのとき図の左側に移動し、レンジギヤをローとする。
【0050】
ところで、後述するシンクロ制御に際して副軸32を減速制動するため、副軸32には副軸(カウンタシャフト)ブレーキ手段27が設けられる。副軸ブレーキ手段27は湿式多板ブレーキであって、エアタンク5の空圧で作動する。この空圧の給排を切り替えるため電磁弁MV BRKが設けられる。電磁弁MV BRKがONのとき副軸ブレーキ手段27に空圧が供給され、副軸ブレーキ手段27が作動状態となる。電磁弁MV BRKがOFFのときには副軸ブレーキ手段27から空圧が排出され、副軸ブレーキ手段27が非作動となる。
【0051】
さて、本発明の変速制御装置とは、変速時に変速機3、エンジン1及びクラッチ2を制御するものであり、本実施形態では、ECU6、TMCU9、クラッチアクチュエータ10及びギヤシフトユニットGSU等で構成される。以下、この変速制御装置による制御内容を説明する。
【0052】
TMCU9には図4及び図5にそれぞれ示すように、車両の運転状態に基づく変速機3の各ギヤ段の範囲を予め定めたシフトアップマップ及びシフトダウンマップとがメモリされており、TMCU9は、自動変速モードのとき、基本的にはこれらシフトマップに従って変速機3の変速を実行する。例えば図4のシフトアップマップにおいて、ギヤ段n(nは1から15までの整数)からn+1へのシフトアップ線図がアクセル開度(%)とアウトプットシャフト回転数(rpm)との関数で決められている。そしてマップ上では現在のアクセル開度(%)とアウトプットシャフト回転数(rpm)とからただ1点が定まる。車両加速中は、車輪に連結されたアウトプットシャフト4の回転数が次第に増加していく。そこで通常の自動変速モードでは、現在の1点が各線図を越える度に1段ずつシフトアップを行うこととなる。このときスキップモードであれば線図を交互に1本ずつ飛ばして2段ずつシフトアップを行う。
【0053】
図5のシフトダウンマップにおいても同様に、ギヤ段n+1(nは1から15までの整数)からnへのシフトダウン線図がアクセル開度(%)とアウトプットシャフト回転数(rpm)との関数で決められている。そしてマップ上では現在のアクセル開度(%)とアウトプットシャフト回転数(rpm)とからただ1点が定まる。車両減速中はアウトプットシャフト4の回転数が次第に減少していくので、通常の自動変速モードでは、現在の1点が各線図を越える度に1段ずつシフトダウンを行う。スキップモードであれば線図を交互に1本ずつ飛ばして2段ずつシフトダウンする。
【0054】
なお上述したように、自動変速モード中であっても、ドライバがシフトレバー29aを手動シフトアップ位置(UP)又は手動シフトダウン位置(DOWN)に手動操作したときは、これらシフトマップとは無関係に変速が行われる。
【0055】
一方、マニュアルモードのときは、これらシフトマップと無関係にドライバが自由にシフトアップ・ダウンを行える。通常モードなら1回のシフトチェンジ操作で1段変速でき、スキップモードなら1回のシフトチェンジ操作で2段変速できる。
【0056】
またTMCU9は、アウトプットシャフト回転センサ28により検知される現在のアウトプットシャフト回転数の値から現在の車速を換算し、これをスピードメータに表示する。つまり車速がアウトプットシャフト回転数から間接的に検知され、アウトプットシャフト回転数と車速とは比例関係にある。
【0057】
次に、ノンシンクロギヤ段であるメインギヤ18の各ギヤ段のギヤインを伴う変速を実行する場合におけるシンクロ制御の内容を説明する。
【0058】
図6、図7に示すように、TMCU9には、スプリッタ17及びメインギヤ18における各ギヤの歯数ZSH,Z1 〜Z4 ,ZR ,ZCH,ZC1〜ZC4,ZCRと、レンジギヤ19におけるハイ・ローの減速比とが予め記憶されている。そこでTMCU9は、メインギヤ18のギヤ歯数と、副軸回転センサ26によって検知される副軸回転数(rpm)とに基づいて、次回変速先となるメインギヤ18のギヤ段(目標メインギヤ段)におけるドグギヤ回転数(rpm)を算出する。また、TMCU9は、次回変速先となるレンジギヤ19のギヤ段(目標レンジギヤ段)の減速比と、アウトプットシャフト回転センサ28によって検知されるアウトプットシャフト回転数(rpm)とに基づき、メインギヤ18におけるスリーブ回転数(rpm)を算出する。ここで、スリーブは主軸のハブに嵌合されているものであるため、当然スリーブ回転数=ハブ回転数となる。
【0059】
図7の表の左欄において、左端に記載された「1st」、「2nd」…「Rev」の語は目標メインギヤ段を示している。また括弧内の「1st」、「2nd」…の語は各目標メインギヤ段が担当する変速機全体としての目標ギヤ段を示している。例えば、メインギヤ18の「1st」(ギヤM1)が担当する変速機全体のギヤ段は「1st」、「2nd」、「9th」、「10th」である。括弧内の語は最初の二つと後の二つとがレンジギヤ19のロー・ハイで切り分けられる。例えばメインギヤ「1st」だと「1st」、「2nd」がレンジギヤロー、「9th」、「10th」がレンジギヤハイである。そして最初の二つ又は後の二つの中において、先と後とがスプリッタ17のロー・ハイで切り分けられる。例えばメインギヤ「1st」でレンジギヤローだと、スプリッタローで変速機は「1st」、スプリッタハイで変速機は「2nd」となる。またメインギヤ「1st」でレンジギヤハイだと、スプリッタローで変速機は「9th」、スプリッタハイで変速機は「10th」となる。目標メインギヤ段の「2nd」、「3rd」、「4th」についても同様である。
【0060】
目標メインギヤ段「Rev」ではレンジギヤ19による切り分けは行われず、スプリッタ17のみで切り分けがなされる。スプリッタハイでリバース「high」、スプリッタローでリバース「low」となる。
【0061】
図7の表の右欄は副軸32側であるドグギヤ回転数(rpm)の算出式を示している。例えば目標メインギヤ段「1st」だと、副軸回転センサ26による検出値(副軸回転数(rpm))に、ギヤ比ZC1/Z1 を乗じた値が、ギヤM1に固設されたドグギヤ36の回転即ちドグギヤ回転数(rpm)となる。目標メインギヤ段「Rev」では、副軸回転数(rpm)に減速比CRev を乗じた値がドグギヤ回転数(rpm)となる。
【0062】
一方、図7の下段は、主軸33側であるスリーブ43、44、45の回転即ちスリーブ回転数(rpm)の算出式を示している。次回変速先の目標レンジギヤ段がHighのときは、減速比が1なので、アウトプットシャフト回転センサ28の検出値(アウトプットシャフト回転数(rpm))がそのままスリーブ回転数(rpm)となる。また目標レンジギヤ段がLowのときは、減速比がCRG=4.5なので、アウトプットシャフト回転数(rpm)に減速比CRGを乗じた値がスリーブ回転数(rpm)となる。
【0063】
シンクロ制御では、これら副軸32に連動するドグギヤ回転数と主軸33側のスリーブ回転数(ハブ回転数)とをギヤイン可能な範囲内に近付ける制御を行う。具体的には回転差Δ=(ドグギヤ回転数−スリーブ回転数)を計算し、この値をギヤイン可能な範囲に入れる制御を行う。例えば、シフトアップ時などのように、変速先のギヤ段においてドグギヤ回転数>スリーブ回転数となっている場合には、クラッチ2を断してギヤ抜きした後、副軸ブレーキ手段27(以下CSBという)を作動させて、副軸32を減速制動してドグギヤ回転数を下げてシンクロさせる。他方、シフトダウン時などのように、変速先のギヤ段においてドグギヤ回転数<スリーブ回転数となっている場合、ダブルクラッチ制御を行い、ドグギヤ回転を上げてシンクロさせる。
【0064】
ダブルクラッチ制御は以下の如きである。図8に示すように、時刻t1 で変速指示信号があった場合、まずクラッチ断し、ギヤ抜きを行う。ギヤ抜きは、クラッチが切れ始めた直後の位置、言い換えれば半クラッチ領域に入った直後の位置p1 で開始する。エンジン制御は、クラッチ位置がp1 となった時点から、実アクセル開度から離れた疑似アクセル開度に基づく制御に移行される。このとき、ECU6は変速先のギヤ段における副軸32側のドグギヤ回転数と主軸33側のスリーブ回転数とをシンクロさせるために必要な目標副軸回転数Yに相当する目標エンジン回転数Xを算出し、実際のエンジン回転数を目標エンジン回転数Xまで上昇させて一定に保持する。本実施形態では目標エンジン回転数Xは、現在のアウトプットシャフト回転数に、変速先の目標ギヤ段(変速機全体におけるギヤ段のことで、1〜16速のうちのいずれか一つ)のギヤ比を乗じて目標エンジン回転数Xを算出する。このように、アウトプットシャフト回転数から直接目標エンジン回転数Xを算出するようにすれば計算が容易となり、制御を簡易化できる。
【0065】
ギヤ抜き後、クラッチが一瞬接続され、これにより副軸32の回転数が目標副軸回転数Y付近まで上昇し、ドグギヤ回転数とスリーブ回転数との回転差がギヤイン可能な範囲内となる。この直後クラッチが再び断され、ギヤインが実行される。ギヤインは、クラッチ切り終わり直前となる位置、言い換えれば半クラッチ領域から抜け出る直前の位置p2 から開始される。ギヤイン終了後、直ちにクラッチが再接続され、クラッチが完接されるとダブルクラッチ制御が終了し、エンジン及び副軸回転数が実アクセル開度に従った回転に移行する。
【0066】
さて、以上説明してきたような変速制御装置であるが、本発明では、自動変速モードで走行中にドライバの手動操作によりシフトダウンマップとは無関係なシフトダウンが行われた場合、その後、ドライバの望まないシフトアップを防止すべく改良が加えられている。
【0067】
具体的には、自動変速モードで走行中にドライバがシフトチェンジ手段29のシフトレバー29aを手動シフトダウン位置に操作してシフトダウンを行った場合、その後、シフトダウンのための手動操作が終了してシフトレバー29aがDレンジ(基準位置)に戻されても、アクセル開度センサ8(アクセル開度検出手段)により検出されたアクセル開度が予めTMCU9に入力された設定値より大きい間は、図4のシフトアップマップに従ったシフトアップを禁止する。
【0068】
ここで、アクセル開度の設定値は、90%程度の比較的大きな値に設定される。即ち、アクセル開度が大きい(アクセルが踏み込まれている)ことは、ドライバが車両に対して大きな駆動力を求めていると見なすことができるため、その間はシフトレバー29aを基準位置に戻してもシフトアップすることがないように、シフトアップマップを無効にする。そして、アクセル開度が設定値より小さくなった(アクセルが戻された)ときは、追い越しや上り坂などが終了して大きな駆動力を確保する必要がなくなったと見なすことができるため、シフトアップマップに従ったシフトアップの禁止(シフトアップマップの無効)を解除する。
【0069】
更に、シフトアップマップに従ったシフトアップを禁止した状態でエンジン回転センサ7(エンジン回転速度検出手段)により検出されたエンジン回転速度が設定値より大きくなったときには、変速機3を自動的に1段(スキップモードであれば2段)シフトアップする。これによって、エンジン1のオーバーランを防止できると共に、シフトアップマップの無効が解除されたときに極端に高いギヤ段へとシフトアップされることを防止できる。
【0070】
以下、シフトアップマップに従ったシフトアップの禁止、及びその禁止解除を行うための制御プログラムについて、図9及び図10のフローチャートを用いて説明する。これらフローチャートは、TMCU9によって所定時間(ex.32msec)毎に繰り返し実行される。
【0071】
最初に、図9を用いてシフトアップマップに従ったシフトアップの禁止について説明する。
【0072】
まず、ステップS1において、モードスイッチ24により選択される現在の変速モードが自動変速モードであるかどうかを判定する。マニュアル変速モードであれば、シフトアップマップによるシフトアップを禁止する必要はないので終了する。自動変速モード中であると判定された場合、ステップS2に進んで、既にシフトアップマップが無効にされているかどうかを判定する。
【0073】
シフトアップマップが無効とされていない場合は、ステップ3に進みシフトレバー29aがDOWN位置(手動シフトダウン位置)にあるかどうかを判定する。シフトレバー29aがDOWNに手動操作されていなければ、シフトアップマップによるシフトアップを禁止する必要はないので終了する。一方、シフトレバー29aがDOWN位置にあると判定された場合、ドライバが大きな駆動力で走行することを望んでいると判定できるので、ステップS4に進み、シフトマップを無視して変速機3を1段シフトダウンする(スキップモードであれば2段)。
【0074】
続いてステップS5に進み、シフトアップマップを無効にする。これによって、その後、シフトチェンジ手段29のシフトレバー29aがDレンジ(基準位置)に戻されても、シフトアップマップに従ったシフトアップは禁止されることになる。なお、シフトダウンマップは無効とされないため、車両の運転状態によってはシフトダウンマップに従ったシフトダウンが実行される。
【0075】
一方、ステップS2において既にシフトアップマップが無効とされていると判定された場合は、ステップS6に進み、エンジン回転センサ7により検出されたエンジン回転速度が予めTMCU9に入力された設定値1よりも大きいかどうかを判定する。この設定値1はエンジンの最高回転速度の90%程度に設定されるものであり、本実施形態では2000rpmである。エンジン回転速度が設定値1以下である場合は終了する。エンジン回転速度が設定値1よりも大きいと判定された場合、ステップS7に進み、現在のギヤ段が最高ギヤ段よりも低速段であるかどうかを判定する。現ギヤ段が最高ギヤ段であれば、当然シフトアップを行うことなく終了する。現ギヤ段が最高ギヤ段よりも低速段である場合、ステップS8に進み変速機3を1段(スキップモードであれば2段)シフトアップする。即ち、シフトアップマップに従ったシフトアップを禁止した状態であっても、エンジン回転速度が極端に上昇した場合には変速機3を自動的に1段又は複数段シフトアップすることによって、エンジン1のオーバーランを防止している。
【0076】
このように、TMCU9は、「特許請求の範囲」におけるシフトアップ禁止手段及びシフトアップ指示手段としての機能を有している。
【0077】
次に図10を用いて、シフトアップマップに従ったシフトアップの禁止解除について説明する。
【0078】
まず、ステップS101において、モードスイッチ24により選択される現在の変速モードが自動変速モードであるかどうかを判定する。マニュアル変速モードであれば終了する。自動変速モード中であると判定された場合、ステップS102に進んで、シフトレバー29aがUP位置(手動シフトアップ位置)にあるかどうかを判定する。シフトレバー29aがUP位置にあると判定された場合、ドライバがシフトアップを望んでいると判定できるため、ステップS106に進みシフトアップマップの無効を解除する。続いてステップS107に進んでタイマーをクリアして終了する。変速機3はシフトマップとは無関係に1段又は複数段シフトアップされることになる。その後、シフトチェンジ手段29のシフトレバー29aがDレンジ(基準位置)に戻されたならば、TMCU9はシフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って変速機3を変速する。
【0079】
一方、ステップS102でシフトレバー29aがUP位置にないと判定された場合、ステップS103に進み、アクセル開度センサ8(アクセル開度検出手段)により検出されたアクセル開度が、予めTMCU9に入力された設定値2よりも大きいかどうかを判定する。この設定値2は比較的大きな値に設定されるものであり、本実施形態では90%である。アクセル開度が設定値2より大きいと判定された場合、ドライバが依然として大きな駆動力を望んでいると判断できるので、終了してシフトアップマップの無効状態を維持する。
【0080】
一方、ステップS103において、アクセル開度が設定値2以下であると判定された場合、ステップS104に進み、TMCU9内に設けられたタイマー手段により、アクセル開度が設定値2以下となっている期間の計測を開始する(タイマーインクリメント)。次に、ステップS105に進み、タイマー手段により計測された期間が、予めTMCU9に入力された設定値3よりも大きいかどうかを判定する。設定値3はここでは3Sである。タイマー手段により計測された期間が設定値3以下であれば、終了してシフトアップマップの無効状態を維持する。
【0081】
タイマー手段により計測された期間が設定値3よりも大きい場合、ステップS106に進み、シフトアップマップの無効を解除、即ち、シフトアップマップに従ったシフトアップの禁止を解除する。次いで、ステップS107へと進みタイマーをクリアして終了する。よって、以降TMCU9はシフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って変速機3を変速する。このように、TMCU9は「特許請求の範囲」における、シフトアップ禁止解除手段及びタイマー手段としての機能も有している。
【0082】
このように、本実施形態では、自動変速モード中にドライバの手動操作によるシフトダウンが行われた場合、その後、シフトレバー29aがDレンジ(基準位置)に戻されても、アクセル開度が所定値以下となるか、ドライバの手動操作によるシフトアップが行われるまでの間は、シフトアップマップによるシフトアップを禁止する。従って、ドライバが大きな駆動力を望んでいる最中に変速機3がシフトアップされてしまうことがなく、ドライバの意思に合った変速制御が可能となる。
【0083】
また、シフトアップマップによるシフトアップを禁止している間であっても、エンジン回転速度が所定値よりも大きくなったときには変速機3が自動的に1段又は複数段シフトアップされるため、エンジン1のオーバーランを防止できると共に、シフトアップ禁止が解除されたときに極端に高いギヤ段へシフトアップされることを防止できる。
【0084】
なお、本発明はこれまで説明してきた変速制御装置に限定はされず、シフトマップに従って自動変速すると共に、ドライバの手動操作があったときにはシフトマップとは無関係に変速する自動変速モードを備えたものであればあらゆる変速制御装置に適用できる。
【0085】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ドライバの手動操作によりシフトマップとは無関係に変速機をシフトダウンした後、ドライバの望まないシフトアップを防止できると共に、シフトアップの禁止が解除されたときに極端に高いギヤ段へシフトアップされることを防止できるという優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の自動変速装置を示す構成図である。
【図2】自動変速機を示す構成図である。
【図3】自動クラッチ装置を示す構成図である。
【図4】シフトアップマップである。
【図5】シフトダウンマップである。
【図6】変速機内の各ギヤの歯数を示す。
【図7】ドグギヤ回転及びスリーブ回転の算出式を示す。
【図8】ダブルクラッチ制御の内容を示すタイムチャートである。
【図9】シフトアップマップに従ったシフトアップの禁止制御を示すフローチャートである。
【図10】シフトアップマップに従ったシフトアップの禁止解除制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
3 変速機
6 エンジンコントロールユニット
7 エンジン回転速度検出手段
8 アクセル開度検出手段
9 トランスミッションコントロールユニット
10 クラッチアクチュエータ(クラッチブースタ)
29 シフトチェンジ手段
29a シフトレバー
Claims (5)
- 手動操作可能なシフトレバー等のシフトチェンジ手段を備え、そのシフトチェンジ手段が基準位置に位置しているときには、車両の車速とアクセル開度とに基づき変速機の各ギヤ段の範囲を予め定めたシフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って変速機を自動変速し、上記シフトチェンジ手段が上記基準位置から手動操作されたときには上記シフトアップマップ及びシフトダウンマップとは無関係に上記手動操作に応じたギヤ段への自動変速を実行し、その後、上記シフトチェンジ手段が上記基準位置に戻されたならば再び上記シフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って変速機を自動変速する自動変速モードを備えた変速制御装置であって、
車両のアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
シフトダウンのための上記シフトチェンジ手段の手動操作が終了して上記シフトチェンジ手段が上記基準位置へと戻されて上記変速機が上記シフトアップマップ及びシフトダウンマップに従って自動変速されるときに、そのシフトアップマップに従ったシフトアップを禁止するか否かを、車速に拘わらず、上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度から判断し、かつ該アクセル開度が、上記手動操作によりシフトダウンされたギヤ段による駆動力がドライバの望む駆動力であるとみなせる所定値よりも大きい間は、上記駆動力を確保するために上記シフトアップマップに従ったシフトアップを禁止するシフトアップ禁止手段とを備えたことを特徴とする変速制御装置。 - 上記シフトアップ禁止手段によって上記シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された後、上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度が上記所定値以下となったときに上記シフトアップの禁止を解除するシフトアップ禁止解除手段を備えた請求項1記載の変速制御装置。
- 上記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度が上記所定値以下となっている期間を計測するタイマー手段と、
上記シフトアップ禁止手段によって上記シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された後、上記タイマー手段により計測された期間が所定値よりも大きくなったときに上記シフトアップの禁止を解除するシフトアップ禁止解除手段とを備えた請求項1記載の変速制御装置。 - 上記シフトアップ禁止手段によって上記シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された後、シフトアップのための上記シフトチェンジ手段の手動操作が行われたときに上記シフトアップの禁止を解除するシフトアップ禁止解除手段を備えた請求項1〜3いずれかに記載の変速制御装置。
- 車両のエンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
上記シフトアップ禁止手段により上記シフトアップマップに従ったシフトアップが禁止された状態で上記エンジン回転速度検出手段により検出されたエンジン回転速度が所定値よりも大きくなったときに変速機のシフトアップを指示するシフトアップ指示手段とを備えた請求項1〜4いずれかに記載の変速制御装置。
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