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JP4210608B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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JP4210608B2 JP2004030486A JP2004030486A JP4210608B2 JP 4210608 B2 JP4210608 B2 JP 4210608B2 JP 2004030486 A JP2004030486 A JP 2004030486A JP 2004030486 A JP2004030486 A JP 2004030486A JP 4210608 B2 JP4210608 B2 JP 4210608B2
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Description

本発明は、優れた電磁変換特性及び走行耐久性を有する磁気記録媒体に関する。
磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオテープなどの磁気テープ又はフレキシブルディスクなどの磁気ディスクの分野で広く用いられている。これら磁気記録媒体のうち磁気テープは、PETフィルムなど非磁性支持体の一方の面上に、磁性塗料や金属蒸着膜などから構成される磁性層を設けると共に、この非磁性支持体の他方の面上にカーボンブラックを含む非磁性粉末を結合剤中に分散させたバックコート層を設けた構成のものが主流である。バックコート層は、カーボンブラックにより表面が粗面化され、走行システムに対する実際の接触面積を低減させてバックコート層表面の摩擦係数を低下させ、走行安定性を高める効果を与えている。
現在、バックコート層を有する磁気テープとしては、オーディオ用、ビデオ用、コンピューターのデータバックアップ用のテープなどが挙げられる。これらのうち、例えばデータバックアップ用テープの分野では、近年、記録情報の多様化・大容量化に伴い、高記録容量のものが商品化されている。
これら磁気テープの1巻当たりの記録容量を高めるには、(i)テープの総厚を薄くし、1巻当たりのテープ長を長くすること、(ii)磁性層を薄層化することで厚み損失を少なくした上で、記録波長を短くしたり、またトラック幅を狭くしたりすることで単位面積当たりの記録容量を上げることなどが必要である。(ii)の手法を用いると、磁気記録媒体から漏れる磁束が小さくなるため、磁性層と磁気ヘッドとのスペーシングの、出力に与える影響が大きくなる。例えば、磁性層に大きな突起やへこみが存在すると、スペーシングロスによる出力低下が起こり、エラーレートが高くなる。このスペーシングロスによる出力低下を改善するために、高容量データバックアップ用テープの磁性層の表面は、極めて平滑に仕上げられている。
しかし、たとえ磁性層の表面が平滑に仕上げられていても、粗面化されたバックコート層が設けられた磁気テープは、製造時、貯蔵時、使用時にわたって巻かれた状態では磁性層とバックコート層とが接触するため、バックコート層の表面状態が磁性層に転写されて磁性層が粗面化してしまう。このバックコート層の表面状態の転写による磁性層の凹凸は、スペーシングロスによる出力低下をもたらし、その結果ドロップアウトやエラーレートが高くなってしまう。
一方、バックコート層の転写を低減すべく、単純にバックコート層の表面を平滑にすると、バックコート層の走行システムに対する摩擦係数が高くなるため、走行安定性が著しく低下してしまう。
そこで、摩擦係数が低く走行安定性が良好で、且つバックコート層の表面凹凸の磁性層への転写が少ない磁気テープが望まれていた。
これまでにも、走行安定性向上とバックコート層突起の磁性層への転写抑制(出力低下の抑制により良好な電磁変換特性を得ること)とを両立させることが企図されており、例えば、バックコート層中に平均一次粒子径の異なるカーボンブラックを少なくとも2種以上含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。また、特許文献6には、異なる平均一次粒子径を有する複数種のカーボブラックを含み、表面粗さを規定したバックコート層が開示されている。
これらの先行技術においては、バックコート層の厚みは0.6〜2μmと比較的厚く設定されている。磁性層への転写が問題となるバックコート層表面の凹凸は、主にバックコート層表面に存在する粗大粒子による高突起成分であり、バックコート層が上記のように比較的厚い場合には、表面に粗大粒子が存在してもカレンダー処理によって層中に埋没させることができ、その結果、磁性層への転写を起こす高突起成分を減らすことが可能であった。
しかし、高記録容量化がさらに望まれるなか、磁気テープの1巻当たりのテープ長を確保するため、バックコート層の厚みはさらに薄くすることが求められている。バックコート層厚を最近の高容量記録媒体に求められている厚みにまで薄くすると、粗大粒子をバックコート層中へ埋没させることは難しくなるので、上記特許文献に開示される技術では、バックコート層表面に磁性層への転写が問題となる高突起成分が残存し易くなり、走行安定性と電磁変換特性とを両立させることは難しい。
特開昭60−38725号公報 特開昭63−300424号公報 特開平1−173422号公報 特開平2−141925号公報 特開平9−270115号公報 特許第3014009号公報
以上の事情に鑑み、本発明は、表面特性に優れ且つ低い摩擦係数を有するバックコート層を形成することによって、優れた電磁変換特性及び走行耐久性を有する磁気記録媒体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、バックコート層中に2種以上の平均一次粒子径の異なるカーボンブラックを含有させ、それら大小のカーボンブラック各々の平均一次粒子径と、それら平均一次粒子径の比とを規定することによって、走行時の摩擦係数を低減できる表面粗さと磁性層への転写の原因となる高突起成分の除去とを、バックコート層の厚みが薄い状況においても両立させ得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明においては、平均一次粒子径の小さいカーボンブラックB(微粒子カーボンブラック)の平均一次粒子径dBを20〜50nmとすることでバックコート層にある程度の凹凸を付与し表面の粗面化を図って走行安定性を確保し、平均一次粒子径の大きいカーボンブラックA(粗粒子カーボンブラック)の平均一次粒子径dAを75〜200nmし、さらにカーボンブラックAの平均一次粒子径dAに対するカーボンブラックBの平均一次粒子径dAの比dB/dAを0.25〜0.60とすることで、厚みが0.2〜0.6μmの薄バックコート層においても、バックコート層表面に高突起を露出させず転写による電磁変換特性の劣化を防ぐことにより前記の目的を達成する。
すなわち、本発明の目的は、以下の磁気記録媒体により達成される。
1.非磁性支持体の一方の面に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、該非磁性支持体の他方の面に、カーボンブラックを含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
バックコート層の厚みが0.2〜0.6μmであり、
バックコート層が、平均一次粒子径dAが75〜200nmのカーボンブラックAと、平均一次粒子径dBが20〜50nmのカーボンブラックBとを有し、かつカーボンブラックAとカーボンブラックBとの平均一次粒子径の比dB/dAが0.25〜0.60であり、
バックコート層の平均表面粗さRaが20nm〜30nmである、
ことを特徴とする磁気記録媒体。
2.バックコート層におけるカーボンブラックAとカーボンブラックBとの含有量の比率が、質量比でA/B=2/100〜8/100であることを特徴とする上記1に記載の磁気記録媒体。
3.記録波長が0.2〜0.5μmであることを特徴とする上記1または2に記載の磁気記録媒体。
4.リードトラック幅が3〜8μmであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
5.非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤中に分散してなる非磁性層を有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
本発明によれば、バックコート層厚が薄く高容量記録媒体に適し、バックコート層中の高突起の転写による電磁変換特性の劣化を防止し、且つ適度の高突起の付与により摩擦係数を減少させて走行安定性にも優れた磁気記録媒体を提供することができる。
以下に本発明の磁気記録媒体について、磁性層、非磁性層、非磁性支持体、バック層、下塗層、製法、物理特性に分けて詳細に説明する。
〔磁性層〕
<結合剤>
本発明の磁気記録媒体の磁性層に用いられる結合剤としては、結合剤として従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を使用できる。
熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)が、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものを使用できる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂又は反応型樹脂は、塗布液の状態で質量平均分子量が200,000以下のものが好ましい。また、これらの樹脂は、樹脂が熱分解するまでの間に軟化又は溶融しないものが好ましい。具体的には、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシーポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。
上記の結合剤について、より優れた分散性と耐久性とを得るためには、必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2(以上につき、Mは水素原子又はアルカリ金属塩基)、OH、NR12、N+123(R1〜R3は炭化水素基)、エポキシ基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基を用いる場合における極性基の量は、10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
上記の樹脂の詳細については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、電子線硬化型樹脂を各層に使用すると、塗膜強度が向上し、耐久性が改善されるだけでなく、表面が平滑化し、電磁変換特性もさらに向上できる。これらの例とその製造方法については、特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。
上記結合剤の市販されている商品名を具体的に挙げれば、例えば、ユニオンカーバイト社製:VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製:MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製:1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製:MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製:ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製:パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バ−ノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製:バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製:ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製:MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などが挙げられる。
上記の樹脂は単独又は組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、又はこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものが挙げられる。
ポリウレタン樹脂の構造としては、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。
本発明で使用可能なポリウレタン樹脂の市販されている商品名としては、例えば、東洋紡社製UR8200、UR8300、UR8700などが挙げられる。
本発明で使用可能なポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、これらのイソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。
上記イソシアネート類の市販されている商品名としては、例えば、日本ポリウレタン社製:コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMRミリオネートMTL、武田薬品社製:タケネートD−102,タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製:デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり、これらを単独又は硬化反応性の差を利用して二又はそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
本発明の磁性層で用いられる結合剤の含有量は、強磁性粉末の質量に対して5〜50質量%の範囲であり、10〜30質量%の範囲であることが好ましい。結合剤として塩化ビニル系樹脂を用いる場合には、結合剤の含有量は、強磁性粉末の質量に対して5〜30質量%であることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂を用いる場合には、ポリウレタン樹脂の含有量を強磁性粉末の質量に対して2〜20質量%とし、ポリイソシアネートの含有量を2〜20質量%の範囲とすることが好ましい。塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリイソシアネートは、相溶性と架橋形成の観点からこれらを組み合わせて用いることが好ましい。但し、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合には、ポリウレタンのみ、又はポリウレタンとイソシアネートのみを使用することもできる。
本発明においてポリウレタン樹脂を用いる場合、ガラス転移温度は−50〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、破断伸びは100〜2000%、破断応力は0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm2、降伏点は0.49〜98MPa(0.05〜10kg/mm2)が好ましい。
<強磁性粉末>
本発明で使用可能な強磁性粉末としては、強磁性金属粉末又は六方晶系フェライト粉末が挙げられる。
(強磁性金属粉末)
強磁性金属粉末としては、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Sm、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Sm、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Al、Nd、Smの少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。Coの含有量はFeに対して0原子%以上40原子%以下が好ましく、さらに好ましくは15原子%以上35原子%以下、より好ましくは20原子%以上35原子%以下である。Yの含有量は1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。Alは1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。
これらの強磁性粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号、特公昭45−18372号、特公昭47−22062号、特公昭47−22513号、特公昭46−28466号、特公昭46−38755号、特公昭47−4286号、特公昭47−12422号、特公昭47−17284号、特公昭47−18509号、特公昭47−18573号、特公昭39−10307号、特公昭46−39639号、米国特許第3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
強磁性金属粉末には少量の水酸化物、または酸化物が含まれてもよい。強磁性金属粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性金属粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
強磁性金属粉末のBET法による比表面積は45〜100m2/gが好ましく、60〜90m2/gがより好ましい。45m2/g以下ではノイズが高くなり、80m2/g以上では表面性が得にくく好ましくない。強磁性金属粉末の結晶子サイズは6〜15nmが好ましく、8〜15nmがより好ましい。強磁性金属粉末の平均長軸長は、好ましくは30〜60nmであり、さらに好ましくは30〜45nmである。強磁性金属粉末の針状比は3以上10以下が好ましく、さらには3以上8以下が好ましい。強磁性金属粉末の飽和磁化(σS)は70〜150emu/gが好ましく、80emu/g〜130emu/gがより好ましい。
強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2質量%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は通常、4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し通常、0.1〜10質量%であり、表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また、形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、米粒状、紡錘状のいずれでもかまわない。強磁性金属粉末自体のSFD(switching field distribution)は小さい方が好ましく、0.8以下が好ましい。強磁性金属粉末のHcの分布を小さくする必要がある。尚、SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また、磁化反転がシャープでピークシフトも少なくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hcの分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲータイトの粒度分布を良くする、焼結を防止する、などの方法がある。
(六方晶系フェライト強磁性粉末)
本発明において磁性層に含まれる六方晶系フェライトとしては、例えば、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等を挙げることができる。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられる。その他、所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加したものを使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
本発明で使用可能な六方晶系フェライト粉末の平均板径は、記録密度によって異なるが、例えば10〜60nm、さらには10〜40nm、特には10〜35nmの範囲であることが好ましい。ここで板径とは、六方晶系フェライト磁性粉の六角柱底面の六角径の最大径を意味し、平均板径とはその算術平均である。特にトラック密度を上げるため、磁気抵抗ヘッドで再生する場合は、特に低ノイズにする必要があるため板径は35nm以下であることが好ましいが、10〜60nmの範囲であれば、熱揺らぎの影響を受けない安定な磁化が望め、且つノイズを抑えることができるため高密度磁気記録に好適となる。板状比(板径/板厚)は1〜15であることが望ましく、1〜7であることがより好ましい。板状比が1以上であれば、磁性層中の高充填性を維持しつつ、充分な配向性が得られるので好ましい。また板状比が15以下であれば、粒子間のスタッキングによる影響を受け難くなり、ノイズが大きくなることもない。
上記粒子サイズ範囲のBET法による比表面積SBETは30〜200m2/g であることが適当である。比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は、通常、狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
六方晶系フェライト強磁性粉末で測定される抗磁力(Hc)は、159〜239kA/m(2000〜3000Oe)程度が好ましい。抗磁力(Hc)は高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。抗磁力(Hc)は粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
六方晶系フェライト強磁性粉末の飽和磁化(σS)は、30〜80A・m2/kgであることが好ましく、50〜80A・m2/kgであることがより好ましい。微粒子になるほど小さくなる傾向がある。製法では結晶化温度又は熱処理温度時間を小さくする方法、添加する化合物を増量する、表面処理量を多くする方法等がある。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
磁性体(六方晶系フェライト、強磁性金属粉末いずれの場合も)を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10質量%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0質量%が選ばれる。
六方晶フェライトの製法としては、(1)酸化バリウム、酸化鉄、鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得ガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後、100℃以上で液相加熱し、洗浄、乾燥及び粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法、等があるが、本発明は製法を選ばない。
<磁性層の厚み及び抗磁力Hc>
本発明において、磁性層の厚みは0.2μm以下とすることが適当である。磁性層の厚みは、好ましくは0.02〜0.15μmであり、さらに好ましくは0.02〜0.13μmである。磁性層の厚みが0.2μm以下であれば、高密度記録時に安定したエラーレートが得られるため好ましい。さらに、製造コスト面でも有利である。
本発明において、磁性層の長手方向又は幅方向の抗磁力(Hc)の値は、自己減磁損失を減少させ、高密度記録を達成するために、159〜239kA/m(2000〜3000Oe)であることが適当である。抗磁力(Hc)の値が該下限値以上であれば、良好な高密度記録を達成できるので好ましい。一方、抗磁力(Hc)の値は、高いほど高密度記録時に高S/Nが得られるため好ましいが、余りに高すぎると消去率が低下することから、本発明では磁性層の長手方向又は面内方向のHcの上限値を239kA/mとすることが適当である。抗磁力(Hc)の値は、好ましくは159〜207kA/m(2200〜2600Oe)の範囲であり、さらに好ましくは183〜200kA/m(2300〜2500Oe)の範囲である。
なお、本明細書において、磁性層の長手方向とは、磁気テープの走行方向と一致する方向であり、幅方向と垂直関係にある方向をいう。また、本明細書において磁性層の面内方向とは、磁気ディスクにおける磁性層の中心から円周への方向をいう。
本発明において、磁性層の長手方向又は面内方向における上記抗磁力(Hc)を実現するために、本発明では、例えば、平均長軸長又は平均板径が60nm以下の微小な強磁性粉末であって、飽和磁化(σS)が110〜155Am2/kgであり、強磁性粉末の抗磁力(Hc)が159kA/m以上である強磁性粉末を使用することが適当である。
次に、本発明において上記の結合剤、強磁性粉末とともに磁性層に含有させることのできる添加物について説明する。
<カーボンブラック>
磁性層には、帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの目的で、カーボンブラックを使用することができる。磁性層に使用されるカーボンブラックはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒子径は5nm〜300nm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10質量%、タップ密度は0.1〜1g/cc、が好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製、#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15、RAVENMT−P、日本EC社製ケッチェンブラックEC、などが挙げられる。
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。
カーボンブラックを使用する場合は磁性体に対する量の0.1〜30質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。
本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは、例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
<研磨剤>
本発明において、磁性層に研磨剤を含有させることができる。研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独又は組み合わせで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。
本発明において研磨剤は、主成分以外の化合物又は元素を含む場合もあるが、主成分が90重量%以上であれば効果に変わりはない。これら研磨剤の平均粒子径は、0.01〜2μmであることが好ましく、電磁変換特性(特に、S/N)を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには、必要に応じて粒子径の異なる研磨剤を組み合わせ、あるいは単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。
研磨剤のタップ密度は、0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5重量%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/gの範囲であることが好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は、針状、球状及びサイコロ状のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが、研磨性が高くて好ましい。具体的には、WO98/35345に記載のものが挙げられ、中でもダイヤモンドを同記載のごとく用いると、走行耐久性及び電磁変換特性の改善に有効である。磁性層、非磁性層に添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
<その他の添加剤>
本発明において磁性層に添加できるその他の添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などを有するものを用いることができる。
例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)およびこれらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
これらの具体例において、脂肪酸としては、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル、アルコール類ではオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
添加剤としては、また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
これらの添加剤は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
本発明で使用されるこれらの添加剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量、および相乗的効果を生み出す添加剤の併用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。
一般には添加剤の総量として、磁性層の強磁性粉末または非磁性層の非磁性粉末に対し、0.1質量%〜50質量%、好ましくは2質量%〜25質量%の範囲で選択される。
本発明にて用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層の塗料を製造する工程のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダ処理(カレンダーロールによる加熱加圧処理)した後、またはスリット終了後、磁性層表面に添加剤を塗布することもできる。
本発明では、磁性層の形成にあたり、結合剤及び強磁性粉末を、通常、磁性層形成塗料の調製の際に使用されている有機溶媒と共に混練分散して磁性層形成塗料とする。なお、磁性層形成塗料は、研磨剤やカーボンブラックおよびその他の添加剤を含むものであってもよい。
塗料に用いる有機溶媒としては、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン系;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエチルエーテル等のエステル系;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系;ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、スチレンなどのタール系(芳香族炭化水素);メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、ヘキサン等のものが使用できる。これらの溶媒は、通常任意の比率で2種以上混合して用いられる。また1質量%以下の量で微量の不純物(その溶媒自身の重合物、水分、原料成分等)を含んでもよい。これらの溶媒は磁性層形成塗料の合計固形分100質量部に対して100〜20000質量部で用いられる。好ましい磁性層形成塗料の好ましい固形分率は5〜20質量%である。有機溶媒の代わりに水系溶媒(水、アルコール、アセトン等)を使用することもできる。
磁性層形成塗料を構成する各成分の分散、混練の方法には特に制限はなく、また各成分の添加順序(結合剤、粉体、潤滑剤、溶媒等)、分散・混練中の添加位置、分散温度(0〜80℃)などは適宜設定することができる。磁性層形成塗料の調製には、通常の混練機、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、ゼグバリ(Szegvari)、アトライター、高速インペラー、分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、ニーダー、高速ミキサー、リボンブレンダー、コニーダー、インテンシブミキサー、タンブラー、ブレンダー、ディスパーザー、ホモジナイザー、単軸スクリュー押し出し機、二軸スクリュー押し出し機、及び超音波分散機などを用いることができる。通常分散・混練にはこれらの分散・混練機を複数備え、連続的に処理を行う。混練分散に関する技術の詳細は、T.C.PATTON著(テー.シー.パットン)" Paint Flow and Pigment Dispersion" (ペイント フロー アンド ピグメント ディスパージョン)1964年John Wiley & Sons 社発行(ジョン ウイリー アンド サンズ)や田中信一著「工業材料」25巻37(1977)などや当該書籍の引用文献に記載されている。これら分散、混練の補助材料として分散・混練を効率よく進めるため、球相当径で10cmφ〜0.05mmφの径のスチールボール、スチールビーズ、セラミックビーズ、ガラスビーズ、有機ポリマービーズを用いることができる。またこれら材料は球形に限らない。また、米国特許第2581414号及び同第2855156号などの明細書にも記載がある。本発明においても、上記の書籍や当該書籍の引用文献などに記載された方法に準じて混練分散を行い、磁性層形成塗料を調製することができる。
〔非磁性層〕
本発明の磁気記録媒体は、磁性層と非磁性支持体との間に、非磁性層を有してもよい。以下に非磁性層について詳細に説明する。
本発明における非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、たとえば不純物として、或いは意図的に少量の磁性粉を含んでも、本発明の効果を示すものである限り、本発明と実質的に同一の構成と見なすことができることは言うまでもない。
ここで非磁性層とは、非磁性層の残留磁束密度が実質的に10T・m以下又は抗磁力(Hc)が8kA/m(100Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力をもたないことを示す。また、非磁性層に磁性粉を含む場合でも、非磁性層の全無機粉末の1/2未満であることが好ましい。
非磁性層の厚みは、0.2〜5.0μmであることが好ましく、0.3〜3.0μmであることがより好ましく、1.0〜2.5μmであることがさらに好ましい。さらに非磁性層の代わりに軟磁性粉末と結合剤を含む軟磁性層を形成してもよい。軟磁性層の厚みは非磁性層と同様である。
本発明において非磁性層は、非磁性無機粉末と結合剤とを主体とするものが好ましい。非磁性層に用いられる非磁性無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独又は組み合わせで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、さらに好ましいのは二酸化チタン、α−酸化鉄である。
上記の非磁性無機粉末の平均粒子径は5〜200nmであることが好ましい。また、必要に応じて平均粒子径の異なる非磁性無機粉末を組み合わせることができ、さらに単独の非磁性無機粉末であっても粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性無機粉末の平均粒子径は10〜200nmである。特に非磁性無機粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径80nm以下であることが好ましく、針状金属酸化物である場合には、平均長軸長が300nm以下、さらには200nm以下であることが好ましい。
非磁性無機粉末のタップ密度は、好ましくは0.05〜2g/mlであり、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性無機粉末の含水率は0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.2〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。非磁性無機粉末のpHは2〜11、特には5.5〜10の間が好ましい。非磁性無機粉末の比表面積は1〜100m2/g、さらには5〜80m2/g、特には10〜70m2/gの範囲であることが好ましい。
非磁性無機粉末の結晶子サイズは、0.004〜1μmであることが好ましく、0.04〜0.1μmであることがさらに好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は、5〜100ml/100gが好ましく、10〜80ml/100gであることがより好ましく、20〜60ml/100gであることがさらに好ましい。比重は、好ましくは1〜12であり、3〜6であることがさらに好ましい。形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれであってもよい。モース硬度は、4〜10であることが好ましい。非磁性無機粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は、1〜20μmol/m2が好ましく、2〜15μmol/m2、であることがより好ましく、3〜8μmol/m2であることがさらに好ましい。pHは、3〜6の間にあることが好ましい。
これらの非磁性無機粉末の表面には、表面処理によりAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnO、Y23が存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層にシリカを存在させる方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
本発明の下層に用いられる非磁性無機粉末の具体的な例及び製造法としては、WO98/35345に記載のものが例示される。
非磁性層にはさらに目的に応じて、有機質粉末を添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
非磁性層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、有機溶媒、分散方法、含有量その他は、上記の磁性層のそれが適用できる。もちろん、その種類、量等は、目的とする非磁性層に応じて最適に定められるべきものである。例えば、非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面への滲み出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面への滲み出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。
〔非磁性支持体〕
本発明の磁気記録媒体に用いられる非磁性支持体は、可撓性支持体であることが好ましく、該支持体の長手方向又は面内各方向に対する100℃、30分での熱収縮率は3%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。80℃30分での熱収縮率は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。さらに該支持体の長手方向又は面内各方向に対する100℃、30分での熱収縮率と、80℃、30分での熱収縮率とが10%以内の差で等しいことが好ましい。
これら支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、芳香族又は脂肪族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミド(ポリアラミド)などの高強度支持体を用いることが好ましい。また必要に応じて、磁性層面と支持体のベース面での表面粗さを変えることができ、例えば、特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行ってもよい。また本発明の支持体としてアルミニウム又はガラス基板を適用することも可能である。
さらに本発明で使用される非磁性支持体は、その中心面平均表面粗さRaが、原子間力顕微鏡(AFM)、例えばDigital Instrument社製のNanoscope IIIを用いて測定したとき、好ましくは4.0nm以下、より好ましくは2.0nm以下であるのがよい。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機粉末が挙げられる。支持体の最大高さRmaxは1μm以下、十点平均粗さRzは0.5μm以下、中心面山高さRpは0.5μm以下、中心面谷深さRvは0.5μm以下、中心面面積率Srは10〜90%、平均波長λaは5〜300μmが好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01〜1μmの大きさのもの各々を0.1mm2当り0〜2000個の範囲でコントロールすることができる。
本発明に用いられる非磁性支持体のF−5値は、49〜490MPa(5〜50kg/mm2)であることが好ましい。破断強度は、49〜980MPa(5〜100kg/mm2)であることが好ましい。また弾性率は、980〜19600MPa(100〜2000kg/mm2)であることが好ましい。温度膨張係数は10-4〜10-8/℃であり、10-5〜10-6/℃であることが好ましい。湿度膨張係数は10-4/RH%以下であり、好ましくは10-5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は、支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
非磁性支持体の厚みは、通常2〜100μmの範囲であり、好ましくは2〜80μmである。コンピューター用磁気記録テープの場合には、3.0〜6.5μmであり、好ましくは3.0〜6.0μm、さらに好ましくは4.0〜5.5μmの範囲の厚さのものが使用される。
〔バックコート層〕
次に、本発明の特徴的な構成要素であるバックコート層について説明する。
本発明のバックコート層は、平均一次粒子径dAが75〜200nmのカーボンブラックAと、平均一次粒子径dBが20〜50nmのカーボンブラックBとを有する。
粗粒子状のカーボンブラックAは固体潤滑剤としての機能を有しており、このカーボンブラックAを含有することによりバックコート層の表面に微小突起を形成して接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。一方、微粒子状のカーボンブラックBを含有することにより、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、この場合カーボンブラックBの添加は特に有効である。またカーボンブラックBは、液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。
これらの機能を発揮する上で、カーボンブラックAの平均一次粒子径dAは、80〜150nmが好ましく、90〜120nmがより好ましい。カーボンブラックBの平均一次粒子径dBは、25〜50nmが好ましく、30〜45nmがより好ましい。
さらに本発明においては、使用されるカーボンブラックA及びBの平均一次粒子径の比もまた重要であり、その比dB/dAは0.25〜0.60の範囲であることが必要であり、好ましくは0.3〜0.5、さらに好ましくは0.3〜0.45であるのがよい。dB/dAの値が上記範囲の上限値を超えると、バックコート層の走行システムに対する実勢の接触面積が増加し、摩擦係数が高くなって走行安定性が悪くなるので、好ましくない。また、下限値を下回ると、バックコート層の高突起成分が磁性層に転写されて、ドロップアウトなどが増加してしまうので好ましくない。
バックコート層に使用するカーボンブラックA及びBの含有比率A/B(質量比)は、2/100〜8/100が好ましく、2/100〜7/100がより好ましく、3/100〜6/100が特に好ましい。カーボンブラックA及びBの含有比率を上記範囲にすると、走行安定性と磁性層へ突起成分が転写することの抑制とが両立した突起分布となるので好ましい。
バックコート層中に含まれるカーボンブラックの合計の含有量は、結合剤100質量部に対して、30〜80質量部であることが好ましく、45〜65質量部であることがより好ましい。
本発明におけるバックコート層用のカーボンブラック(A)及びカーボンブラック(B)は、何れも、その比表面積が5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、pHは2〜10、含水率は0.1〜10重量%、タップ密度は0.1〜1g/mlの範囲であることが好ましい。これらカーボンブラックは、市販品としてWO98/35345に記載のものを使用することができる。
バックコート層中には、前記の少なくとも2種類以上のカーボンブラックの他に、通常、無機粉末が含まれる。このような無機粉末はモース硬度5〜9の硬質無機粉末を使用することが好ましい。モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バック層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。硬質無機粉末をカーボンブラックと共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバック層となる。硬質無機粉末の平均粒子径は80〜250nmの範囲にあることが好ましく、100〜210nmの範囲にあることがさらに好ましい。
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr23)を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは併用してもよい。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して、3〜30質量部であることが好ましく、3〜20湿量部であることがより好ましい。
バックコート層中には、無機粉末として前記の硬質無機質粉末と共に、モース硬度3〜4.5の軟質無機粉末を併用することができる。モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行による摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもない。軟質無機粉末の併用により、表面の粗いガイドポールに対しての摺動特性が向上し、バック層の摩擦係数の安定化も図ることができる。軟質無機粉末の平均粒子径は、30〜50nmの範囲にあることが好ましい。
モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
バックコート層内に軟質無機粉末を使用する場合には、軟質無機粉末と硬質無機粉末との硬さの差が2以上(さらに好ましくは、2.5以上、特に、3以上)となるように軟質無機粉末と硬質無機粉末とを選択して使用することが好ましい。軟質無機粉末は、カーボンブラックの合計100質量部に対して、好ましくは10〜140質量部、さらに好ましくは35〜100質量部の範囲の量で使用することができる。
バックコート層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、バックコート層表面ににじみ出ることによって、バックコート層表面と巻かれて隣接する磁性層との間の摩擦及び、バックコート層表面とドライブの摺動ガイドポールとの間の摩擦などを緩和し、円滑に摺接状態を維持させるために添加される。バックコート層用の潤滑剤としては、前記磁性層について用いられる潤滑剤と同様のものを使用することができる。
バックコート層における潤滑剤の添加量は、カーボンブラック100質量部に対して、好ましくは1〜5質量部の範囲で添加される。
バックコート層の形成に使用される結合剤も、前記磁性層について用いられる結合剤と同様のものを使用することができる。もちろん、その種類、量等は、目的とするバックコート層に応じて最適に定められるべきものである。
本発明におけるバックコート層の厚みは、0.2〜0.6μmである。記録容量の高容量化する上では、さらに0.3〜0.6μmであることが好ましく、0.4〜0.6μmであることが特に好ましい。
また本発明においては、バックコート層の平均表面粗さRaが20nm〜30nmあることが必要であり、22nm〜28nm、さらには23nm〜26nmの範囲であることが好ましい。平均表面粗さRaが上記範囲の下限値未満であると、走行時の摩擦係数が高くなり走行耐久性が低下するので好ましくなく、また上限値を超えて大きすぎると、脱落によりドロップアウトが増加するので好ましくない。
なお、 平均表面粗さRaの測定は、Digital Instrument社Nanoscope III[原子間力顕微鏡(AFM)]を用いて行うことができる。この場合、15×15μm角の測定試料に対して、稜角70°、曲率半径100mm以下の四角錐のSiN探針を使って、コンタクトモードでVer.3.25のソフトウエアが利用できる。
〔下塗層〕
本発明の磁気記録媒体においては、必要に応じて、非磁性支持体と非磁性層の間に下塗層を設けてもよい。下塗層を設けることによって非磁性支持体と非磁性層との接着力を向上させることができる。下塗層には、有機溶媒可溶性のポリエステル樹脂が使用される。下塗層の厚みは、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.1〜0.7μmである。
〔各層の構成〕
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は、前記のとおり、非磁性支持体が、通常2〜100μmの範囲であり、好ましくは2〜80μmである。コンピューター用磁気記録テープの場合には、3.0〜6.5μmであり、好ましくは3.0〜6.0μm、さらに好ましくは4.0〜6.0μmの範囲の厚さのものが使用される。
下塗層の厚みは、好ましくは0.1〜2.0μm、より好ましくは0.1〜0.7μmである。
本発明の磁気記録媒体の非磁性層及び磁性層の厚みは、用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化される。本発明では前述したとおり、磁性層の厚みを0.2μm以下とするのが好ましく、0.02〜0.15μmの範囲とすることがより好ましく、0.02〜0.13μmの範囲とすることがさらに好ましい。また、非磁性層の厚みは、0.2〜5.0μmであることが好ましく、0.3〜3.0μmであることがより好ましく、1.0〜2.5μmであることがさらに好ましい。
磁性層を2層有する磁気記録媒体の場合には、非磁性層や軟磁性層は設けても設けなくともよく、例えば、支持体から遠い側の磁性層の厚みを0.01〜0.1μmが好ましく、より好ましくは0.01〜0.05μmとして、支持体から近い側の磁性層の厚みを0.05〜0.15μmとすることができる。
磁気記録媒体全体の厚みは、好ましくは3.0〜10μm、さらに好ましくは5.0〜9.0μm、特に好ましくは6.0〜8.5μmの範囲であるのがよい。
〔磁気記録媒体の製法〕
本発明の磁気記録媒体の磁性層形成塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程は、それぞれ2段階以上に別れていてもかまわない。本発明の磁気記録媒体に使用する磁性粉末、非磁性粉末、放射線硬化型樹脂、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などのすべての原料は、どの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンなどの結合剤を、混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合、磁性粉末又は非磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)は、磁性粉末100重量部に対し15〜500重量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層形成塗料及び非磁性層形成塗料を分散させるには、ガラスビーズを用いることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
非磁性層形成塗料と磁性層形成塗料とは、逐次又は同時に重層塗布されてもよく、また、磁性層を2層有する場合には、下層磁性層形成塗料と上層磁性層形成塗料とは、逐次又は同時に重層塗布されてもよい。好ましくは、非磁性支持体上に非磁性層形成塗料を塗布・乾燥して非磁性層を形成し、次いでこの非磁性層上に磁性層形成塗料を塗布・乾燥して磁性層を形成すること、すなわち、乾燥後塗布法(wet on dry塗布法)により非磁性層及び磁性層を形成するのがよい。
上記磁性層形成塗料又は非磁性層形成塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。 これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
なお、本発明で重層構成の磁気記録媒体を塗布する場合、以下のような方式を用いることが好ましい。
(1)磁性層形成塗料の塗布で一般的に用いられる、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布などの装置により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態のうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような、1つの塗布ヘッドに塗料通液スリットを2個有する塗布装置を用いて、上下層をほぼ同時に塗布する方法。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する方法。
なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号公報に開示されている数値範囲を満足する必要がある。
ディスク状磁気記録媒体の場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。六方晶系フェライトは、一般的に面内及び垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用い円周配向としてもよい。
テープ状磁気記録媒体の場合は、コバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
カレンダー処理ロールには、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロール又は金属ロールを用いて処理するが、特に両面磁性層とする場合は金属ロール同士で処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好ましくは196kN/m(200kg/cm)以上、さらに好ましくは294kN/m(300kg/cm)以上である。
〔物理特性〕
磁気記録媒体が磁気ディスクの場合、角形比は2次元ランダムの場合、好ましくは0.55〜0.67であり、0.58〜0.64であることがより好ましい。また、3次元ランダムの場合、角形比は0.45〜0.55であることが好ましい。垂直配向の場合、角形比は垂直方向に通常0.6以上であり、0.7以上であることが好ましい。また、反磁界補正を行った場合は、通常0.7以上であり、0.8以上であることが好ましい。2次元ランダム及び3次元ランダムとも配向度比は0.8以上であることが好ましい。2次元ランダムの場合、垂直方向の角形比、垂直方向のBr及び垂直方向のHcは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすることが好ましい。また磁気記録媒体が磁気テープの場合、角形比は0.7以上、好ましくは0.8以上である。
本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において、通常0.5以下であり、0.3以下であることが好ましい。表面固有抵抗は、磁性面104〜1012Ω/sqであることが好ましく、帯電位は−500V〜+500Vであることが好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で980〜19600MPa(100〜2000kg/mm2)であることが好ましく、破断強度は、98〜686MPa(10〜70kg/mm2)であることが好ましい。磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で980〜14700MPa(100〜1500kg/mm2)であることが好ましい。残留伸びは、0.5%以下であることが好ましく、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は、70〜150℃であり、非磁性層のそれは非磁性層に本発明で用いられるポリウレタン樹脂を含む結合剤を使用した場合は、70〜150℃であり、使用しない場合は、50〜100℃であることが好ましい。磁性層の損失弾性率は、1×105〜8×108Paの範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の長手方向と幅方向、又は面内各方向で10%以内であり、且つほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は、100mg/m2以下であることが好ましく、10mg/m2以下であることがさらに好ましい。塗布層が有する空隙率は、非磁性層、磁性層とも30容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがさらに好ましい。空隙率は、高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方がよい場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
本発明の磁性層における中心面平均表面粗さRa及び10点平均粗さRzは、それぞれ5〜50nmであることが好ましい。また、磁性層の最大高さRmaxは0.5μm以下、中心面山高さRpは0.3μm以下、中心面谷深さRvは0.3μm以下、中心面面積率Srは20〜80%、平均波長λaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面の突起数は、10〜20nmの大きさのものを100μm2あたり5〜1000個の範囲であることが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダー処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。本発明の磁気記録媒体は、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし、走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りをよくするなどである。
〔記録特性〕
大容量、高記録密度の磁気記録媒体としては、磁性層の記録波長は0.2〜0.5μmが好ましく、0.3〜0.4μmがより好ましい。また、リードトラック幅は、3〜8μmが好ましく、4.0〜7.5μmがより好ましい。
記録再生には、磁気抵抗型の再生ヘッド(MRヘッド)を用いる磁気記録再生システムに好適に用いることができる。MRヘッドの種類には特に制限はなく、GMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。
〔実施例1〕
(磁性層形成塗料及び非磁性層形成塗料の調製)
<塗料の作製>
・磁性層形成塗料
強磁性金属粉体 100質量部
Co/Fe=30原子%
Hc:2350Oe(187kA/m)
BET:55m2/g
表面処理層:Al23,SiO2,Y23
平均長軸長:57nm、平均針状比:5
σS:120A・m2/kg
塩化ビニル重合体 10質量部
「MR110」(商品名)日本ゼオン(株)製
ポリウレタン樹脂 5質量部
「UR8200」(商品名)東洋紡(株)製
α−アルミナ(モース硬度9) 5質量部
平均粒子径:180nm
カーボンブラック(平均粒子径:180nm) 0.5質量部
平均一次粒子径:80nm
ブチルステアレート 1質量部
ステアリン酸 0.5質量部
メチルエチルケトン 90質量部
シクロヘキサノン 30質量部
トルエン 60質量部
上記の各成分をオープンニーダーで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネート化合物[「コロネートL」(商品名)日本ポリウレタン(株)製]を5質量部加え、さらにメチルエチルケトン/シクロヘキサノン(容量比:6/4)混合溶媒40質量部を加え、1μm高平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層形成塗料液を調製した。
・非磁性層形成塗料
非磁性粉体 α−Fe23 ヘマタイト 80質量部
平均長軸長:0.12μm、SBET:50m2/g
pH:9、タップ密度:0.8
DBP吸油量:27〜38g/100g
表面処理層:Al23、SiO2
カーボンブラック 20質量部
平均一次粒子径:16nm、SBET:250m2/g
pH:8.0、DBP吸油量:80ml/100g
揮発分:1.5質量%
塩化ビニル重合体 12質量部
「MR110」(商品名)日本ゼオン(株)製
ポリウレタン樹脂 5質量部
「UR8200」(商品名)東洋紡(株)製
α−アルミナ(モース硬度9) 5質量部
平均粒子径:0.2μm
ブチルステアレート 1質量部
ステアリン酸 0.5質量部
メチルエチルケトン 100質量部
シクロヘキサノン 50質量部
トルエン 50質量部
上記の各成分をオープンニーダーで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネート化合物[「コロネートL」(商品名)日本ポリウレタン(株)製]を5質量部加え、さらにメチルエチルケトン/シクロヘキサノン(容量比:6/4)混合溶媒40質量部を加え、1μm高平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成塗料液を調製した。
・バックコート層形成塗料
(i)バックコート層形成用カーボンペースト組成
1)カーボンペーストA
カーボンブラック粉末A 100質量部
平均一次粒子径(dA):100nm、SBET:20m2/g
pH:7.0、DBP吸油量:67ml/100g
揮発分:1.0質量%
ニトロセルロース 50質量部
「セルノバBTH1/2」(商品名)旭化成(株)製
ポリウレタン樹脂 15質量部
「N−2301」(商品名)日本ポリウレタン(株)製
分散剤 4質量部
メチルエチルケトン 240質量部
トルエン 160質量部
カーボンブラック粉末A全量と、処方量の分散剤及びニトロセルロース、並びに処方量の40質量%の各溶媒を加えて、ディスパーで攪拌後、サンドグラインダーでジルコニアビーズ(1mmφ)を用いて12時間分散させた後、サンドグラインダーでジルコニアビーズ(0.5mmφ)を用いて12時間分散させた。次いで、処方量のポリウレタン樹脂、残りの処方量の60質量%の各溶媒を加えてディスパーで攪拌後、サンドグラインダーでジルコニアビーズ(1mmφ)を用いて6時間分散させた。
2)カーボンペーストB
カーボンブラック粉末B 100質量部
平均一次粒子径(dB):25nm、SBET:94m2/g
pH:9.0、DBP吸油量:71ml/100g
揮発分:1.0質量%
ニトロセルロース 50質量部
「セルノバBTH1/2」(商品名)旭化成(株)製
ポリウレタン樹脂 15質量部
「N−2301」(商品名)日本ポリウレタン(株)製
分散剤 4質量部
メチルエチルケトン 240質量部
トルエン 160質量部
カーボンブラック粉末Aの代わりにカーボンブラック粉末Bを用いる以外は、カーボンブラックペーストAと同様にして調製した。
3)バックコート層形成塗料
カーボンペーストB 1000質量部
カーボンペーストA 30質量部
ポリウレタン樹脂 400質量部
「N−2301」(商品名)日本ポリウレタン(株)製
α−アルミナ(モース硬度9) 5質量部
平均粒子径:0.2μm
ポリイソシアネート化合物 30質量部
「コロネートL」(商品名)日本ポリウレタン(株)製
ポリエステル樹脂 20質量部
メチルエチルケトン 4000質量部
カーボンペーストB及びカーボンペーストAの全量、ポリウレタン樹脂、α−Al23を加えてディスパーで攪拌後、サンドグラインダーでジルコニアビーズ(1mmφ)を用いて3時間分散させた。次いで、ポリイソシアネート化合物、ポリエステル樹脂及び溶媒をそれぞれ全量加え、ディスパーで攪拌後、1μm高平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、バックコート層形成塗料液を調製した。
<磁気テープの作製>
非磁性支持体として、厚み6μmのポリアラミド(芳香族アミド)フィルムを用い、その表面にコロナ放電処理を施して中心面平均表面粗さが2nmで親水性となるようにした後、前記非磁性層形成塗料を乾燥後の厚みが1.5μmとなるように塗布し、その直後に前記磁性層形成塗料を乾燥後の厚みが0.2μmとなるように同時重層塗布して、両層がまだ湿潤状態にあるうちに6000Gの磁力を持つコバルト磁石と6000Oeの磁力を持つソレノイドにより配向させ乾燥させた。次に、非磁性支持体のもう一方の表面に、乾燥後の厚みが0.5μmとなるようにバックコート層形成塗料を塗布し、金属ロールとエポキシ樹脂製ロールから構成される七段のカレンダーで、温度100℃、分速150m/分にて処理を行った後、熱処理を施した。得られた塗装フィルムを1/2インチ幅にスリットし、磁性層を表面研磨処理してデジタル記録用磁気テープを作製した。
〔実施例2〜6及び比較例1〜8〕
カーボンペーストA,Bに用いるカーボンブラック粉末A,Bを、表1に示すカーボンブラック粉末A,カーボンブラック粉末Bに変更する以外は、実施例1と同様にして磁気テープをそれぞれ作製した。
Figure 0004210608
<磁気記録媒体の評価>
実施例及び比較例で得られた磁気テープの特性を以下の方法により測定した。測定結果は表2に示す。
1)バックコート層の表面粗さ(Ra):
磁気テープ試料のバックコート層の表面粗さ(Ra)を、原子間力顕微鏡(AFM)[Digital Instrument社製のNanoscope III]を用いて測定した。
2)バックコート層表面の摩擦係数(μ値):
4mmφのSUS420Jステンレス鋼製のピンに対して、磁気テープ試料のバックコート層表面を荷重10gで接触させながら180゜の方向に摺動させたときの摺動抵抗値T2(g)を求め、下記のオイラーの式より摩擦係数(μ値)を求めた。測定は同じ試片について100パスまで行い、1パス目及び100パス目のμ値を求めた。
オイラーの式:μ値=(1/π)ln(T2/10)
3)バックコート層表面の摺動傷の評価:
上記2)の摩擦係数を測定後、磁気テープ試料のバックコート層表面の摺動部分を微分干渉顕微鏡200倍で観察し、摺動傷の状態を評価した。評価は5段階の官能評価とし、最も傷が少ない場合を5、最も傷が多い場合を1とした。
4)磁性層の凹み:
磁気テープ試料の磁性層表面の250μm×350μmの面積について、3次元表面構造解析顕微鏡[「New View 5010」(商品名)ZYGO社製]を用いて測定し、基準面に対して20nm以上の深さの凹みの個数を調べた。
5)ドロップアウト数:
磁気テープ試料に記録トラック幅15μm、記録波長0.36μm、テープ送り速度2.5m/秒で信号を記録し、MRヘッドを用いてリードトラック幅7.5μm、テープ送り速度2.5m/秒で信号を再生した。このとき、0.08μsec以上の時間、出力が50%以上低下したときの、記録1MB当たりのドロップアウト個数を調べた。
Figure 0004210608
<評価結果>
上記の表から、実施例1〜4は、摩擦係数(μ値)が低く、摺動傷が少なく、走行安定性に優れていることが分かる。またバックコート層表面の磁性層への転写が少ないため、磁性層の凹みが少なくなっており、ドロップアウトが少ないことが分かる。
比較例1は、バックコート層の平均表面粗さRaが低いため摩擦係数(μ値)が高く、走行耐久性が劣る。さらにdB/dAが小さすぎるため、バックコート層の突起が磁性層に転写されドロップアウトが増加している。
比較例2は、バックコート層の平均表面粗さRaは高いものの、カーボンブラックAの摩擦低減効果が無く、走行安定性が劣る。
比較例3は、バックコート層の平均表面粗さRaを高くしすぎたため、走行安定性は確保できるものの、バックコート層の突起が磁性層に転写されてドロップアウトが増加している。
比較例4は、バックコート層の平均表面粗さRaを低くしすぎたため、バックコート層の突起の磁性層への転写は抑制できるものの、走行安定性が劣る。
比較例5は、カーボンブラックAの平均一次粒子径(dA)が大きすぎるため、走行安定性は確保できるものの、バックコート層の突起が磁性層に転写されてドロップアウトが増加している。
比較例6は、カーボンブラックBの平均一次粒子径(dB)が小さすぎるため、バックコート層の平均表面粗さRaが小さくなりすぎて走行安定性に劣るばかりでなく、dB/dAが小さすぎるため、バックコート層の突起が磁性層に転写されドロップアウトが増加している。
比較例7は、カーボンブラックBの平均一次粒子径(dB)が大きくdB/dAが大きすぎ、カーボンブラックAとカーボンブラックBとの含有量の比率A/Bが小さすぎるため、バックコート層の突起が磁性層に転写されるのは抑制できるものの、走行時の摩擦係数が高く、走行耐久性が劣る。
比較例8は、カーボンブラックAの平均一次粒子径(dA)が大きくdB/dAが小さすぎ、カーボンブラックAとカーボンブラックBとの含有量の比率A/Bが大きすぎるため、走行時の摩擦係数は小さく走行耐久性は良好だが、バックコート層の突起が磁性層に転写されてドロップアウトが増加している。
以上の結果から、厚みが0.2〜0.6μmのバックコート層において、平均一次粒子径dAが75〜200nmのカーボンブラックAと、平均一次粒子径dBが20〜50nmのカーボンブラックBとを有し、かつカーボンブラックAとカーボンブラックBとの平均一次粒子径の比dB/dAが0.25〜0.60であり、平均表面粗さRaが20nm〜30nmであるバックコート層を形成することで、優れた電磁変換特性及び走行耐久性を有する磁気記録媒体を提供できることが分かる。

Claims (5)

  1. 非磁性支持体の一方の面に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、該非磁性支持体の他方の面に、カーボンブラックを含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
    バックコート層の厚みが0.2〜0.6μmであり、
    バックコート層が、平均一次粒子径dAが75〜200nmのカーボンブラックAと、平均一次粒子径dBが20〜50nmのカーボンブラックBとを有し、かつカーボンブラックAとカーボンブラックBとの平均一次粒子径の比dB/dAが0.25〜0.60であり、
    バックコート層の平均表面粗さRaが20nm〜30nmである、
    ことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. バックコート層におけるカーボンブラックAとカーボンブラックBとの含有量の比率が、質量比でA/B=2/100〜8/100であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 記録波長が0.2〜0.5μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. リードトラック幅が3〜8μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
  5. 非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤中に分散してなる非磁性層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
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