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JP4208574B2 - 環状脂肪族オキシムの製造方法 - Google Patents

環状脂肪族オキシムの製造方法 Download PDF

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JP4208574B2
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Description

技術分野
本発明は、環状脂肪族オキシムの製造する方法に関する。更に詳細には、本発明は環状脂肪族第一級アミンを、液相中で大気圧を越えた加圧条件下において、分子状酸素及び固体触媒の存在下で酸化させることを包含する環状脂肪族オキシムの製造方法であって、該固体触媒が周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の酸化物を含有することを特徴とする方法に関する。本発明によれば、危険性の少ない分子状酸素を酸化剤として用いながらも、液相中で、高い選択率で環状脂肪族オキシムを製造することが可能になり、また、固体触媒を用いることから、反応後の固体触媒と反応液との分離が極めて容易であり、触媒成分の分離回収に係わる煩雑な操作を必要としない。
従来技術
環状脂肪族オキシムは、酸化防止剤などとして有用な化合物であり、医薬や農薬などの有機工業化学の分野において原料として利用されている。環状脂肪族オキシムは環状脂肪族第一級アミンの酸化によって得られ、例えば、環状脂肪族第一級アミンがシクロヘキシルアミンである時には、対応する環状脂肪族オキシムとしてシクロヘキサノンオキシムが得られる。シクロヘキサノンオキシムは、酸化防止剤としてだけでなく、ナイロン−6の原料であるε−カプロラクタムの中間体として用いられる工業的に重要な化合物である。
脂環式又は脂肪族の第一級アミンを酸化してオキシムを得る従来の方法としては、脂環式又は脂肪族の第一級アミンをモリブデン、タングステン又はウランを活性金属種として含有する無機塩触媒の存在下で過酸化水素と反応させる方法、脂環式又は脂肪族の第一級アミンを有機溶媒中でチタン、モリブデン、タングステン及びバナジウムを含有する触媒の存在下にて有機ヒドロペルオキシドと反応させる方法が知られている。しかしながら、過酸化水素や有機ヒドロペルオキシドを酸化剤として用いるこれらの方法を工業的に実施する際には、既知の操作にて酸化剤を取扱うが、この操作には危険性が伴う。また、有機ヒドロペルオキシドを用いる場合には、ヒドロペルオキシドの還元に由来する副生成物が反応液に含まれる為、目的とするオキシムの分離及び精製が煩雑になる等の問題があった。
上記の問題を解決する為に、空気又は酸素等の分子状酸素を酸化剤として用いる次の方法(1)〜(4)が提案されている。
(1)モリブデン、タングステン及び/又はウランの水溶性塩類を触媒として用い、水及び分子状酸素の存在下で水銀ランプを用いて第一級アミンを光酸化させる方法(ドイツ特許第1021358号公報を参照)。
(2)第三級アルコール及び分子状酸素の存在下に、大気圧を超えた加圧条件下において好ましくはアンモニアガスを存在させ、タングステン酸、リンタングステン酸、モリブデン酸、セレン酸、亜セレン酸等の触媒を用いて第一級アミンを酸化させる方法(日本国特公昭47−25324号公報を参照)。
(3)シリカゲル又はアルミナ触媒や、アルミナと共に酸化タングステンを含有する固体触媒及び分子状酸素の存在下、気相にて第一級アミンを酸化させる方法(米国特許第4337358号公報、第4504681号公報、第4560797号公報及び第4624939号公報を参照)。
(4)周期律表の4族に属する金属を含有する均一系又は不均一系触媒及び分子状酸素の存在下、大気圧を超えた加圧条件下において、液相中で第一級アミンを酸化させる方法(欧州特許第395046号公報を参照)。
上記の方法のうち、方法(1)を実施するためには光が必要であり、その為の電力が多量に必要である上に、水銀ランプ等の維持管理が煩雑である。また、方法(1)及び(2)においては、通常は均一系触媒を用いる為、反応後の触媒成分の分離回収工程が煩雑になるという問題点がある。
方法(3)は固体触媒を用いる不均一系反応であるが、気相において、反応温度が120〜250℃という比較的過酷な操作条件下で反応を行っているため、触媒が容易に失活すると考えられる。本発明者等が検討した結果、反応温度が160℃以上の気相の操作条件下においては、触媒の表面に生成オキシムに由来すると思われるタール状副生成物及び副生した高沸点の有機化合物が蓄積し、触媒が容易に失活することが明らかとなった。
また、環状脂肪族第一級アミンの酸化反応は発熱反応であり、目的生成物であるオキシム類は熱的に不安定であることが知られている。従って、環状脂肪族第一級アミンの酸化反応を工業的に実施する上では、気相反応に比較して反応除熱が容易な液相反応が有利である。更に生成オキシムの逐次分解を抑制しうる温和な低温条件下において行うことができ、しかも触媒成分の分離回収が容易な不均一系触媒を用いて反応を行うことのできる製造方法の開発が望まれている。
方法(4)に関しては、上記欧州特許第395046号公報には、周期律表の4族に属する金属を含有する不均一系触媒の存在下、大気圧を超えた加圧条件下において、液相中で第一級アミンを反応させる方法が開示されており、酸化チタン等を不均一系触媒として用いた反応が例示されている。しかし、生成するオキシムの選択率は低く、約30〜50%である。
上記から明らかなように、従来技術には以下のような問題があった。酸化剤として過酸化物を使用するオキシムの製造方法には過酸化物の使用に由来する危険性及び操作の煩雑性が伴う。また、分子状酸素を酸化剤として用いる上記(1)〜(4)項に記載の方法は、触媒成分の分離回収が煩雑であり、しかも触媒が容易に失活する、オキシムの選択率が低いなどの問題を有している。従って、触媒の失活を抑制することができ、比較的低い温度で反応を行いながらも高いオキシム選択率を達成し、かつ、反応液と触媒成分の分離が容易な固体触媒を用いる製造方法の開発が望まれている。
発明の概要
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、環状脂肪族第一級アミンを、液相中で大気圧を越えた加圧条件下において、分子状酸素及び固体触媒の存在下で酸化させる方法において、周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の酸化物を含有する固体触媒を用いると、環状脂肪族オキシムを高選択率にて製造できることを見い出した。具体的には、上記のような固体触媒を上記のような液相における環状脂肪族オキシムの製造に用いることにより、通常50%以上、好適には70%以上の高い選択率で環状脂肪族オキシムを製造することができるのみならず、固体触媒を用いることから、反応後に固体触媒と反応液との分離は極めて容易であり、触媒成分の分離回収に係わる煩雑な操作を必要としない。本発明は、このような新たな知見に基いて完成されたものである。
従って、本発明の目的は、危険性の低い分子状酸素を酸化剤として用いながらも、液相中で、高い選択率で環状脂肪族オキシムを製造することができる環状脂肪族オキシムの製造方法を提供することにある。
発明の詳細な説明
本発明によれば、環状脂肪族第一級アミンを、液相中で大気圧を越えた加圧条件下において、分子状酸素及び固体触媒の存在下で酸化させることを包含する環状脂肪族オキシムの製造方法であって、該固体触媒が周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の酸化物を含有することを特徴とする方法が提供される。
次に本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.環状脂肪族第一級アミンを、液相中で大気圧を越えた加圧条件下において、分子状酸素及び固体触媒の存在下で酸化させることを包含する環状脂肪族オキシムの製造方法であって、該固体触媒が周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の酸化物を含有することを特徴とする方法。
2.該環状脂肪族第一級アミンがシクロヘキシルアミンであることを特徴とする、前項1に記載の方法。
3.該固体触媒が、周期律表第2、13及び14族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(b)の酸化物を更に含有することを特徴とする、前項1又は2に記載の方法。
4.該金属(a)が、ニオブ及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、前項3に記載の方法。
5.該金属(a)がタングステンであることを特徴とする、前項3に記載の方法。
6.該金属(b)がアルミニウム及びシリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、前項3〜5のいずれかに記載の方法。
7.該固体触媒中の該金属(a)の含有量が、1〜60重量%であることを特徴とする、前項1〜6のいずれかに記載の方法。
8.該固体触媒が、周期律表第4族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(c)の酸化物を更に含有することを特徴とする、前項1又は2に記載の方法。
9.該金属(a)が、ニオブ、タンタル及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、前項8に記載の方法。
10.該金属(a)がタングステンであることを特徴とする、前項8に記載の方法。
11.該金属(c)がチタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、前項8〜10のいずれかに記載の方法。
12.該金属(c)に対する該金属(a)の原子比が0.01〜1.0の範囲であることを特徴とする、前項8〜11のいずれかに記載の方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は環状脂肪族第一級アミンを酸化させて環状脂肪族オキシムを製造する方法である。本発明で用いる環状脂肪族第一級アミンに特に限定はないが、飽和の環状脂肪族第一級アミンが好ましい。具体的には、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロドデカニルアミン等を用いることができる。シクロヘキシルアミンからはシクロヘキサノンオキシム、シクロオクチルアミンからはシクロオクタノンオキシム、シクロペンチルアミンからはシクロペンタノンオキシム、シクロヘプチルアミンからはシクロドデカノンオキシム、シクロドデカニルアミンからはメチルシクロヘキサノンオキシムを製造することができる。また、脂肪族環が反応条件下において不活性な置換基(例えば、アルキル基)で置換された環状脂肪族第一級アミン(例えば、メチルシクロヘキシルアミン)を用いることもできる。
本発明で用いる環状脂肪族第一級アミンとしては、シクロヘキシルアミンが最も好ましい。シクロヘキシルアミンの製造方法に特に限定はないが、例えば、シクロヘキセンとNHによる直接アミノ化反応によってシクロヘキシルアミンを製造する方法[日本国特開昭57−4948号公報(EP 39918に対応)、日本国特開昭64−75453号公報(EP 305564に対応)、日本国特開平9−194438号公報(EP 785185に対応)、日本国特開平10−72409号公報(EP 802176に対応)、日本国特開平10−291968号公報(EP 846675に対応)等を参照];シクロヘキサノールとNHによるアミノ化反応によってシクロヘキシルアミンを製造する方法[日本国特公昭41−7575号公報、日本国特公昭51−41627号公報、日本国特公昭51−32601号公報(USP 3520933に対応)、日本国特開平6−1758号公報等を参照];アニリン、ニトロベンゼン、ニトロシクロヘキサン等の水素化反応によってシクロヘキシルアミンを製造する方法などを用いることができる。
シクロヘキシルアミンの純度に特に制限は無く、例えば、シクロヘキサノール、ジシクロヘキシルアミン、ニトロシクロヘキサン、N−シクロヘキシリデン−シクロヘキシルアミン等の、上記したシクロヘキシルアミンの製造方法において副生する有機化合物や水が微量に含まれていても特に問題はない。しかしながら、シクロヘキシルアミンに含まれる該副生有機化合物の総濃度は5モル%以下が好ましい。また、水の含有量については、反応条件下で液相が不均一相にならない量であることが好ましい。換言すれば、本発明の酸化反応を後述する溶媒を用いて実施する際に、反応条件下で液相が水を主成分とする相と溶媒が主成分とする相とに分離しないことが好ましい。
本発明の製造方法に用いる固体触媒は、周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の酸化物を含有する固体触媒である。周期律表の第5及び6族の金属は、脱硝脱硫反応の他、広く有機化合物の酸化反応における触媒として用いられている。上記金属(a)の酸化物を含有する触媒と、酸化剤として酸素や空気等の分子状酸素との存在下、気相中で行う従来の接触酸化反応は、200℃以上の高い温度で行う必要がある。これは、分子状酸素が金属酸化物触媒を介して何らかの酸素活性種へ変換される際に、大きな活性化エネルギーを要する為であると考えられる。脂肪族又は脂環式アミン類の酸化触媒としては、周期律表第5族及び/又は第6族に属する金属の化合物を用いる液相反応が公知であるが、先に述べたように、このような公知技術においては酸化剤として有機ヒドロペルオキシドのような強酸化剤が必要である。
「従来技術」に述べた方法(3)のように、酸化タングステンを含む固体触媒と分子状酸素を用いて気相中で脂肪族又は脂環式アミン類の酸化を行う不均一系反応も知られている。それに対し、酸化タングステンをアルミナと組み合わせた固体触媒を用いた液相反応も試みられている[JOURNAL OF CATALYSIS 83,487−490(1983)]。この方法においては、大気圧以下の低い圧力下で、酸素を反応系に導入しながらシクロヘキシルアミン溶液と固体触媒を還流条件で加熱しているが、酸化反応は進行しなかった。この結果から、分子状酸素を用いる液相における環状脂肪族アミンの酸化反応においては、周期律表第5に属する金属及び/又は周期律表第6族に属する金属の酸化物を含有する固体触媒は有効な触媒とはなり得ないと考えられていた。
しかしながら、本発明者等は、環状脂肪族第一級アミンの液相酸化反応触媒及び反応条件について鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の酸化物を含有する固体触媒の存在下、液相中で大気圧を越えた加圧条件下、即ち分子状酸素が液相中に存在する条件下に、環状脂肪族第一級アミンの酸化反応を行うと、環状脂肪族オキシムを高選択率にて製造できることを見い出した。
本発明に用いる固体触媒に用いる周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の例としては、Cr、Nb、Ta、Mo、W等が挙げられる。
本発明に用いることのできる固体触媒は、上記金属(a)以外の金属の酸化物を更に含有することが好ましい。具体的には、本発明において用いる固体触媒の好ましい2つの態様として、以下の固体触媒が挙げられる。
(α)周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の酸化物と周期律表第2、13及び14族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(b)の酸化物を含有する固体触媒、並びに
(β)周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)と周期律表第4族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(c)の酸化物を含有する固体触媒。
初めに上記固体触媒(α)について説明する。
本発明に用いる固体触媒の好ましい一つの態様である固体触媒(α)に用いる金属(a)としてはNb及びWが好ましく、特にWが好ましい。
固体触媒(α)に用いる金属(b)は周期律表第2、13及び14族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属であれば特に限定はないが、Mg、Ca、Ba、B、Al、Ga、Siなどが挙げられ、特にAlとSiが好ましい。金属(b)の酸化物としては、MgO、CaO、BaO、Al、SiO等の単独酸化物、SiO−Al、B−Al、Ga−SiO、MgO−SiO、CaO−SiO等の複合酸化物が挙げられる。また、各種の細孔構造を有するアルミノシリケート類、合成又は天然ゼオライト類なども挙げられる。単独酸化物としてはAl又はSiOが好ましく、複合酸化物としてはSiO−Alが好ましい。
固体触媒(α)は、金属(a)の酸化物と金属(b)の酸化物とを混練法により物理的に単純混合したものでもよいが、金属(a)の酸化物が金属(b)の酸化物に担持された担持触媒や、米国特許第4624939号のゾル−ゲル法で得られる触媒などを用いることが好ましい。
金属(a)の酸化物を金属(b)の酸化物に担持する方法の例としては、以下の方法が挙げられる。金属(a)の酸化物の前駆体として、少なくとも1種の金属(a)(Cr、Nb、Ta、Mo、W等)のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシド、硝酸塩、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、酸化物炭酸塩等を用いる。また、金属(a)の酸化物としてNb及び/又はTaの酸化物を用いる場合には、その前駆体として金属(a)の酸性錯体(例えば、Nbのハロゲン化物を加水分解して得られる、水和型の酸化ニオブゲルを、蓚酸又は酒石酸の水溶液に溶解して得られるNbと蓚酸又は酒石酸との酸性錯体)又はそのアンモニウム塩(日本国特開平7−309787号公報参照)も用いることができる。更に、金属(a)の酸化物としてNbの酸化物を用いる場合には、その前駆体として蓚酸水素ニオブ[(NbHC]などの酸性化合物を用いることもできる。また、金属(a)の酸化物としてWの酸化物を用いる場合には、その前駆体として、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウムなどのオキシアンモニウム塩、及びタングステン酸のアルカリ金属塩なども用いることができる。上記のような金属(a)の前駆体を水又はアルコール等の適当な溶媒に溶解して溶液を得る。得られた溶液に上記金属(b)の酸化物からなる酸化物担体(Al、SiO、SiO−Al等)を浸漬し、公知の含浸法(例えば蒸発乾固法)、吸着法(例えば平衡吸着法)等の方法を用いて金属(a)の酸化物を金属(b)の酸化物を含む担体に担持させる。次に室温〜約150℃の温度範囲で、必要に応じて更に減圧下で乾燥処理を行って溶媒を除去し、その後、気相下にて純酸素、空気、酸素含有ガス等の気流中、約300〜500℃の高温下で加熱焼成し、金属(a)の酸化物が金属(b)の酸化物に担持された固体触媒(α)を得る。また、二種類以上の金属(a)の酸化物を担持せしめる際には、二種類以上の金属(a)の酸化物を同時に又は順次に担持せしめる調製方法を用いることができる。
このような担持法において好適に用いられる酸化物担体としてはAl、SiO及びSiO−Alが挙げられる。酸化物担体は広い比表面積を有することが好ましく、具体的には100m/g以上、より好ましくは200m/g以上である。Alを単独で用いる際には、γ−Alが好ましい。
金属(a)の酸化物と金属(b)の酸化物とを含有する固体触媒をゾル−ゲル法で調製する方法としては、以下の方法が挙げられる。少なくとも1種の金属(a)(Cr、Nb、Ta、Mo及びW等)の可溶性塩類を含む水溶液と、少なくとも1種の金属(b)(Al及びSi等)のアルコキシド類とを混合して加水分解させた後、室温〜150℃の温度範囲で、必要に応じて減圧下で乾燥処理を行って水及び副生したアルコールを除去し、ゲル状物を得る。次いで、得られたゲル状物を気相下にて純酸素、空気、酸素含有ガス等の気流中に高温下で加熱焼成することにより固体触媒を調製する。このようにしてゾル−ゲル法により得られた固体触媒の構造については未だ明らかではないが、金属(a)の酸化物と金属(b)の酸化物とが複合化されたもの(即ち、金属(a)の原子と金属(b)の原子とが酸素原子を介して化学的に結合している構造体)が含まれていると考えられる。
ゾル−ゲル法については、例えば、米国特許第4624939号の酸素含有タングステン化合物とアルミナを用いた触媒調製法を参照することができ、この方法によって調製された固体触媒を本発明に用いることもできる。上記米国特許第4624939号では得られた触媒を高温の気相反応条件下における分子状酸素を用いた環状脂肪族アミンの酸化に用いてオキシムを製造しているが、本発明の方法のような比較的低い温度の液相条件下における酸化反応に有用であるとは考えられなかった。しかし、本発明者らの研究によって、この触媒も本発明の方法に好ましく用いることが可能であることが明らかとなった。
金属(a)の酸化物と金属(b)の酸化物とを含有する固体触媒の場合には、固体金属触媒中の金属(a)の含有量は、1〜60重量%であることが好ましく、2〜40重量%であることがより好ましい。金属(a)の含有量が上記範囲未満の場合には、環状脂肪族オキシムの選択率が低下し、また、金属(a)の含有量が上記範囲を超える場合には、反応速度が著しく低下する。本発明においては、金属(a)の含有量は蛍光X線分析装置を用いて絶対検量線法に従って定量することができる。
金属(a)の酸化物が金属(b)の酸化物に担持された固体触媒である場合には、固体金属触媒中の金属(a)の含有量は2〜30重量%であることが更に好ましい。上記のゾル−ゲル法により調製された固体触媒の場合には、固体金属触媒中の金属(a)の含有量は3〜40重量%であることが更に好ましい。
また、金属(b)に対する金属(a)の原子比、即ち、(周期律表第5及び/又は6族金属原子)/(周期律表第2、13及び/又は14族金属原子)、が0.002〜3.0の範囲であることが好ましく、0.005〜1.0の範囲であることが更に好ましい。
次に上記固体触媒(β)について説明する。
本発明に用いる固体触媒のもう一つの好ましい態様である固体触媒(β)に用いる金属(a)としては、Nb,Ta及びWが好ましく、特にWが好ましい。
固体触媒(β)に用いる金属(c)としては、Ti、Zr及びHf等が挙げられる。固体触媒(β)に含まれる金属(c)の酸化物としては、TiOやZrOなどの単独酸化物や、TiO−ZrOなどの複合酸化物を用いることが好ましい。また、TiOやZrOには、一部不純物としてSiOが含有されているものを用いてもかまわない。
固体触媒(β)は、金属(a)の酸化物と金属(c)の酸化物とを混練法により物理的に単純混合したものでもよいが、金属(a)の酸化物が金属(c)の酸化物に担持された担持触媒や、金属(a)と金属(c)とを含有する複合酸化物を固体触媒として用いることもできる。
金属(a)の酸化物が金属(c)の酸化物に担持された担持触媒を調製する方法として、以下の方法を例示することができる。金属(a)の酸化物の前駆体として、金属(a)(Nb、Ta及びW等)のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物等を用いる。また、金属(a)の酸化物としてWの酸化物を用いる場合には、その前駆体として、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウムなどのオキシアンモニウム塩、及びタングステン酸のアルカリ金属塩なども用いることができる。金属(a)の酸化物としてNb及び/又はTaの酸化物を用いる場合には、その前駆体として金属(a)の酸性錯体(例えば、Nbのハロゲン化物を加水分解して得られる、水和型の酸化ニオブゲルを、蓚酸又は酒石酸の水溶液に溶解して得られるNbと蓚酸又は酒石酸との酸性錯体)又はそのアンモニウム塩(日本国特開平7−309787号公報参照)も用いることができる。更に、金属(a)の酸化物としてNbの酸化物を用いる場合には、その前駆体として蓚酸水素ニオブ[(NbHC]などの酸性化合物を用いることもできる。上記のような金属(a)の前駆体を水又はアルコール等の適当な溶液に溶解して溶液を得る。得られた溶液に少なくとも1種の金属(c)(Ti及びZr等)の固体酸化物、酸化物ゾル又は水酸化物等を単独にて、又はこれらを所定の割合で混合したもの、もしくは予め調製されたTiO−ZrO複合酸化物固体を浸漬し、公知の含浸法(例えば蒸発乾固法)、吸着法(例えば平衡吸着法)等の方法を用いて金属(a)を金属(c)の酸化物に担持させる。その後、室温〜約150℃の温度範囲で(必要に応じて更に減圧下で)乾燥処理を行って溶媒を除去し、その後、気相下にて純酸素、空気、酸素含有ガス等の気流中、約300〜500℃の高温下で加熱焼成し、金属(a)の酸化物が金属(c)の酸化物に担持された固体触媒(β)を得る。また、二種類以上の金属(a)の酸化物を担持せしめる際には、二種類以上の金属(a)の酸化物を同時に又は順次に担持せしめる調製方法を用いることができる。
このような担持法において金属(c)の酸化物としてTiOを用いる場合には、比表面積の大きなアナターゼ型結晶態や無定型態のTiO、あるいは水酸化チタニウムを用いることが好ましい。また、金属(c)の酸化物としてZrOを含む触媒を製造する場合には、比表面積の大きな単斜晶系や正方晶系のZrO、あるいは一般式ZrO(OH)又はZr(OH)で示される水酸化ジルコニウムを原料として用いることが好ましい。
上記したように、本発明の方法においては、金属(a)と金属(c)とを含有する複合酸化物を固体触媒として用いることもできる。「金属(a)と金属(c)とを含有する複合酸化物」とは、金属(a)と金属(c)と酸素を含み、金属(a)の原子と金属(c)の原子とが酸素原子を介して化学的に結合している構造体であることが元素分析によって確認されている酸化物である。
上記構造体の具体例としては、金属(c)の原子に酸素酸イオンとして金属(a)の原子が結合されたものや、金属(c)の酸化物における金属(c)の原子の一部が金属(a)の原子に置換されたものが考えられる。例えば、タングステン酸化物とジルコニアを含む触媒について、JOURNAL OF CATALYSIS 168,431−441(1997)やJOURNAL OF THE CHEMICAL SOCIETY FARADAY TRANSACTIONS 90(1),193−202(1994)に記載されている。
本発明で固体触媒(β)として用いることのできる複合酸化物は、金属(a)の酸化物と、これとは別に形成された金属(c)の酸化物との単なる物理的混合物とは異なる酸性特性(固体表面上に生成する酸点の強度とその量)を有すると考えられる。例えば、金属(a)としてのタングステンと、金属(b)としてのチタニウム又はジルコニウムとからなる複合酸化物は、化学的相互作用により特有の酸性特性を生ずることが知られている。そして、この酸性特性を利用し、固体触媒としてアルコール類の脱水反応、オレフィン類の水和反応、アルカン類の骨格異性化反応等のさまざまな不均一系反応へ適用する例が知られている。
本発明者等は、環状脂肪族第一級アミンの液相における酸化反応に用いる触媒及び反応条件について鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、上述した複合固体酸化物、即ち、周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)と周期律表第4族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(c)とを含有する複合酸化物、も本発明の方法において固体触媒として有効に利用できることを見出したのである。
固体触媒(β)として複合酸化物を用いる場合には、金属(a)の酸化物の化学種はある特定の原子価状態に限定されるものではない。これらの化学種は、複合酸化物において、その化学種がとりうるいずれのプラスの酸化価で存在してもよい。
本発明で固体触媒(β)として用いる複合酸化物を調製する方法に特に限定はなく、公知の触媒調製法を用いることができる。具体的には、以下の共沈法やゾル−ゲル法で調製することができる。
1)共沈法
初めに、少なくとも1種の金属(a)の酸化物の前駆体と、少なくとも1種の金属(c)の酸化物の前駆体を任意の割合で水性媒体に溶解させた水溶液を調製する。金属(a)の酸化物の前駆体としては、金属(a)(Nb、Ta及びW等)の可溶性塩類、好ましくは水性媒体に可溶である可溶性化合物を用いることができ、例えば、アンモニウム塩、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、酸化物炭酸塩等を用いることができる。金属(c)の酸化物(TiO、ZrO又はTiO−ZrO等)の原料としては、好ましくは水性媒体に可溶である可溶性金属化合物が用いられる。例えば、TiOを金属(c)の酸化物として含有する触媒を製造する際には、四塩化チタン、硫酸チタン又は蓚酸チタン等を原料として用いることができ、ZrOを金属(c)の酸化物として含有する触媒を製造する際には、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム等を原料として用いることができる。
次に、好ましくは60℃以下の温度を保持しながら、上記で調製した水溶液を撹拌し、水溶液の最終pHが5〜11の範囲になるように、塩基性化合物の水溶液を添加して沈殿物を得る。中和、沈殿させるのに用いる塩基性化合物としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、これらのうち、得られる共沈物スラリーの取扱い性の点からアンモニアの水溶液(アンモニア水)が好適に用いられる。なお、金属(a)の水溶液が塩基性の場合は、金属(a)を含有する水溶液をアンモニア水と同時に、金属(c)の酸化物の前駆体を溶解させた水溶液に添加し、沈殿物を得ることもできる。
上記沈殿操作により得られた金属(a)の酸化物の前駆体と金属(c)の酸化物の前駆体からなる沈殿物を、沈殿物スラリーから分離し、よく洗浄した後、室温〜約150℃の温度範囲で(必要に応じて更に減圧下で)乾燥処理を行う。次いで、気相下にて純酸素、空気、酸素含有ガス等の気流中、約300〜700℃の高温下で加熱焼成し、金属(a)と金属(c)とを含有する複合酸化物を得る。
2)ゾル−ゲル法
少なくとも1種の金属(a)のアルコキシド、及び少なくとも1種の金属(c)のアルコキシドを所望の比率で混合し、低級アルコール等の非水性溶媒中で必要に応じて加熱することにより均一溶液を調製する。金属(a)のアルコキシドと、金属(c)のアルコキシドのリガンド(アルコキシ基)の種類は互いに同一でも異なっていてもよい。金属アルコキシドのリガンドの種類としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられる。複数の異種金属アルコキシドの溶解性は、リガンド種及び溶媒種によって異なる為、使用する金属種に応じて、均一な溶液が得られる組み合わせを任意に選択すればよい。
上記で調製した均一溶液に加水分解用の脱イオン水、又は必要に応じてモノアルコールの水溶液を加えて撹拌し、複数の金属アルコキシドの加水分解を行って、ゲルを得る。通常、加水分解は室温で数時間にて完結するが、反応系を加熱して分解時間を短縮させてもよい。また、加水分解速度を向上させる為に、触媒として働くのに十分な量(通常、金属アルコキシドの総モル量に対するモル比として、0.1〜0.01)の酸又は塩基、例えば硝酸、アンモニア水等を用いてもよい。
次いで、生成したゲルを取り出し、加水分解されたリガンドに由来するアルコール、溶媒及び過剰の水を除去する為に、室温〜約150℃の温度範囲で(必要に応じて減圧下で)乾燥処理を行う。次いで、約300〜700℃の高温下で加熱焼成し、金属(a)と金属(c)とを含有する複合酸化物を得る。
また、上記の非水性溶媒を用いないか、もしくは上記の方法と比較して少量の非水性溶媒しか用いずに、金属(a)及び金属(c)のアルコキシドの混合物を加水分解して直接固体ゲルを得る調製法を用いることもできる。具体的には、例えば、非水性溶媒を用ないか、もしくは少量用いて金属(a)のアルコキシド及び金属(c)のアルコキシドを乾燥させた気相雰囲気下にて所望の比率で混合することで、均一な混合液又は溶液を調製する。次いで、用いた金属アルコキシドの総アルコキシ基に対して約2倍当量以上の脱塩水を、調製した金属アルコキシドの均一な混合液又は溶液に添加する。添加の際には金属アルコキシド混合液又は溶液を強撹拌し、かつ除熱する。アルコキシドはほぼ瞬時に加水分解するので、ケーク状の固体ゲルが得られる。次いで、室温〜約150℃の温度範囲で(必要に応じて減圧下で)乾燥処理を行い、水及び副生したアルコールを除去する。次いで、約300〜700℃の高温下で固体ゲルを加熱焼成し、金属(a)と金属(c)とを含有する複合酸化物を得る。
また、上記のゾル−ゲル法の1種として知られる配位化学的ゾル−ゲル法を用いて複合酸化物を調製することもできる。この方法は、均一な溶液中で異種の金属原子が互いにジオールを介して結合した架橋錯体を形成させることが特徴であり、一方の金属元素の近傍に異種の金属元素が存在することになり、より均質で結晶化度の低い複合酸化物を得る手法として知られている。
具体的には、金属(a)(Nb、Ta及びW等)のアルコキシド、及び金属(c)(Ti及びZr等)のアルコキシドを所望の比率で混合し、錯体を形成するためにジオールを加えて均一な溶液を調製する。架橋用リガンドとして用いるジオール類は、2つの水酸基の間に2個以上のメチレン基が結合されており、かつ、周期律表第5及び6族の金属原子(Nb、Ta及びW等)と周期律表第4族の金属原子(Ti及びZr等)とを結合して不溶性の錯体を形成しないものであることが好ましい。具体的には、ピナコール、ヘキシレングリコール等がジオールとして好適に用いられる。
金属(a)のアルコキシド、及び金属(c)のアルコキシドのリガンド(アルコキシ基)をジオール類により置換するには、所望の複数の金属アルコキシドをジオールに添加して得られる均一溶液を約60〜150℃の温度に加熱撹拌する。錯体形成の速度を向上させる為には、遊離したリガンドに由来するモノアルコールを連続的に蒸留で除去する方法、又は触媒として酸のエステル類、例えば、ジメチル硫酸等を少量添加する方法を選択することもできる。
上記のように錯形成反応液を調製後、約70〜100℃で溶液を撹拌しながら、これに加水分解用の脱イオン水、又は必要に応じてモノアルコールあるいは溶媒として用いたジオールの水溶液を添加し、錯形成された複数の金属アルコキシドを加水分解してゲル状の生成物を得る。次いで、得られたゲル状の生成物を約100℃以下の温度条件で十分に熟成させる。次いで、ゲルを取り出し、約100〜150℃の温度範囲において減圧下で乾燥処理を行い、乾燥したゲルを約500〜700℃の高温下で加熱焼成し、金属(a)と金属(c)とを含有する複合酸化物を得る。
上記以外の方法でも固体触媒(β)として用いることができる複合酸化物を調製することができる。具体的には、例えば、以下のような方法で複合酸化物を調製することもできる。金属(a)の可溶性塩類を含む水溶液を用いて、撹拌下に、金属(c)のアルコキシド類を瞬時に加水分解させた後、室温〜約150℃の温度範囲で(必要に応じて減圧下で)乾燥処理を行い、水及び副生したアルコールを除去してゲル状の化合物を得る。次いで、得られたゲル状化合物を気相中にて純酸素、空気、酸素含有ガス等の気流中で約400℃以上の高温下で加熱焼成し、複合酸化物を得る。
固体触媒(β)においては、金属(c)に対する金属(a)の原子比、即ち、(周期律表第5及び/又は6族金属原子)/(周期律表第4族金属原子)、が0.01〜1.0の範囲であることが好ましい。本発明で用いる固体触媒(β)においては、金属(c)に対する金属(a)の原子比は、金属酸化物の組み合わせ、調製方法や条件などに併せて任意に選択することができるが、0.015〜0.5がより好ましく、0.02〜0.3が最も好ましい。金属(c)に対する金属(a)の原子比は、金属(a)の存在量と金属(c)の存在量とをそれぞれ蛍光X線分析装置を用いて測定し、求めることができる。
本発明の環状脂肪族オキシムの製造方法においては、環状脂肪族第一級アミンを、液相中で大気圧を越えた加圧条件下において、分子状酸素及び上記の固体触媒の存在下で酸化させる。
本発明の方法においては、酸化反応は液相で行う。環状脂肪族第一級アミンが液状に保たれる条件であれば、無溶媒で反応を実施することもできるが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒を用いることで液相のアミン濃度が高くなりすぎることを防ぐことができ、高いアミン濃度によって顕著になる固体触媒表面の着色及び触媒活性の低下を防止することができる。本発明の製造方法に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール等の炭素数1〜10の第一級、第二級又は第三級アルコール;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数6〜10の脂肪族又は脂環式炭化水素;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;トリエチルアミン;ジメトキシエタン;ジオキサン;ジグリム;水等を用いることができる。
溶媒の存在下で環状脂肪族オキシムを製造する際には、反応基質である環状脂肪族アミンの濃度は、該溶媒と該環状脂肪族アミンとの合計重量に対して、通常1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%とする。環状脂肪族アミンの種類にもよるが、アミンの濃度が高すぎると固体触媒表面に副生成物の蓄積と思われる着色が顕著になり、触媒活性の低下を招くので好ましくない。また、アミンの濃度が低すぎると、単位反応器容量当たりの環状脂肪族オキシムの生産性が低下する。
本発明の方法では、分子状酸素を含有する気体の存在下で、液相中で環状脂肪族第一級アミンを固体触媒と接触させる。分子状酸素を含有する気体は、純酸素又は酸素と不活性気体との混合気体であり、不活性気体としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を用いることができる。混合気体には空気も含まれる。分子状酸素を含有する気体としては空気や、酸素と不活性気体の混合気体が好ましい。分子状酸素を含有する気体中に少量の水分あるいはNH3が含まれていてもよい。
酸素と不活性気体の混合気体を用いる場合には、分子状酸素と不活性気体とを任意の混合比率にて反応系に供給することができるが、酸素濃度は反応系内に形成される気相部が爆発組成とならない範囲が好ましい。爆発組成の形成は環状脂肪族アミン、溶媒等の蒸気圧及び酸素と不活性気体の濃度を厳密に制御することで回避することができるが、予め爆発限界酸素濃度以下に調整された酸素と不活性気体の混合気体を用いることで、可燃性蒸気の気相部濃度によらず爆発組成の形成を回避することができる。
本発明の方法は、環状脂肪族第一級アミンの酸化反応を液相中で行うことを特徴とする。従って、気体として反応系内に導入される分子状酸素は反応条件下において、触媒が存在している液相中に任意の濃度で溶解していることが必要である。例えば、減圧又は大気圧下で反応基質、生成物又は溶媒の混合液が還流状態となる温度条件で酸素含有気体を導入する方法は、液相中に溶解する酸素量は極めて少ないために好ましくない。酸素を液相中に任意の濃度で溶解せしめる方法としては、大気圧を越えた加圧条件下において、酸素含有気体を液相と接触させればよい。
好ましい反応系内の圧力範囲は、全圧(絶対圧力として表示)が500〜15,000kPa、より好ましくは1,000〜10,000kPa、且つ酸素分圧が30〜3,000kPa、より好ましくは60〜2,000kPaの範囲である。全圧が500kPa未満であり、酸素分圧が30kPa未満の低圧条件下においては、反応速度が低下する傾向にある。また、全圧が15,000kPaを超え、酸素分圧が3,000kPaを超える高圧条件下においては、環状脂肪族オキシムへの反応選択性が低下する傾向が見られる。例えば、酸素と不活性気体の混合気体を用いて回分反応を実施する際には、用いる触媒及び反応条件に応じて、必要な環状脂肪族第一級アミンの反応量(つまり、反応に要する酸素量)を考慮した上で、任意の酸素濃度を有する混合気体を所望の全圧にて供給して反応を実施すればよい。
本発明の方法では、反応温度は通常50〜150℃が好ましく、より好ましくは60〜145℃、最も好ましくは80〜140℃の範囲である。150℃を越えた高温では、生成するオキシムの逐次分解反応が進行し、高沸点状の副生物の比率が増加して、オキシムへの反応選択性が低下する傾向が見られる。また、50℃未満の低温では、反応速度が低下する傾向がある。
本発明の方法においては、環状脂肪族第一級アミンを、液相中で大気圧を越えた加圧条件下において、分子状酸素及び固体触媒の存在下で酸化させることで環状脂肪族オキシムを製造する。この場合、反応系における触媒の状態は不均一であり、反応場は液相であるが、反応を行うにあたっては、上述した如く、分子状酸素を含有する気体を用いて反応系に酸素を供給する必要がある。従って、加圧条件下の反応系内において、液相と酸素含有気体を十分に接触せしめることが好ましい。また、反応方式に特に制限はなく、回分式、半回分式、連続式等のいずれでもよい。
分子状酸素含有気体の供給方法としては、例えば、回分式の混合撹拌槽型反応器を用いる場合には、分子状酸素含有気体を反応系内に形成される液相部に直接吹き込んでもよいし、液相部と接触して存在する気相部に導入してもよい。反応によって消費される分子状酸素を補給するためには、任意の気相酸素分圧を保持させるように連続的又は断続的に、純酸素、空気又は希釈酸素ガスを反応系に供給することができる。この他にも、例えば、回分式反応を実施する際には、目的とする基質アミンの反応量に対して、予め、十分な酸素量を保持する酸素含有気体を導入した後、消費酸素の補給を行うことなく目的の反応率に達するまで任意の時間、反応を継続させることもできる。
本発明の方法で用いる固体触媒の形状は、実施する反応形態、例えば、固定床方式、流動床方式や懸濁触媒方式に応じて粉末状、又は破砕状、粒子状及び柱状等に成形したものを使用することができる。固体触媒の使用量は、実施する反応方式、反応形態、反応温度、用いる溶媒の種類、固体触媒の種類によって任意に選ぶことができ、特に限定はない。
例えば、少なくとも1種の金属(a)の酸化物と少なくとも1種の金属(b)の酸化物を含有する固体触媒[固体触媒(α)]を用い、回分式反応器にて、粉末状の固体触媒を液相に懸濁させて反応を実施する際には、固体触媒(α)は、環状脂肪族第一級アミンに対する重量比として、0.05〜50となる量を用いることが好ましい。また、少なくとも1種の金属(a)の酸化物と少なくとも1種の金属(c)の酸化物とを含有する固体触媒(β)を用いる場合にも、環状脂肪族第一級アミンに対する固体触媒(β)の重量比が、0.05〜50の範囲となる量の固体触媒を用いることが好ましい。
反応時間は上述した反応方法、反応温度、触媒量等の操作条件によって、また生成する環状脂肪族オキシムの収率の実質的な目標値を決めて任意に選ぶことができる。例えば、回分式反応器にて粉末状の固体触媒を液相に懸濁させて反応を実施する際は、通常約0.5〜10時間である。
本発明の方法では、環状脂肪族アミンの転化率が通常は4〜50%、好ましくは4〜40%、より好ましくは4〜30%に保たれる条件を選択することで、高い環状脂環族オキシムの選択率を達成することができる。生成した環状脂肪族オキシムは、反応器中の混合物から慣用の手段、例えば、蒸留又は抽出によって回収することができる。通常、未反応の環状脂肪族第一級アミンを、反応器に循環させて再使用することが好ましい。未反応の環状脂肪族アミンの再使用を考慮した際、工業的に本発明の酸化反応を実施する上で、目的生成物である環状脂肪族オキシムの反応選択率を向上させることはアミンの転化率の向上に比して極めて重要、かつ、有効である。
本発明によれば、通常50%以上、好適には70%以上の高い選択率で環状脂肪族オキシムを製造することができる。反応後の固体触媒と反応液の分離は極めて容易であり、例えば濾過などで触媒を回収することができる。従って、本発明の製造方法は、均一系触媒を用いた反応においては必須となる触媒成分の分離回収に係わる煩雑な操作を必要としない。
発明を実施するための最良の形態
以下に挙げる実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において種々の物性は以下の方法により測定した。
(1) 固体触媒に含まれる金属量の測定
固体触媒に含まれる金属の量は、蛍光X線分析装置(RIX−3000型、日本国、理学電気工業製)を用い、以下の条件で測定した。
X線励起条件
ターゲット元素:Rh
管電圧:50kV
管電流:50mA
分光結晶:AlとSiの測定にはポリエチレンテレフタレート、その他の金属には弗化リチウム
検出器:シンチレーションカウンター型検出器
サンプルの調製
既知量の固体触媒に結晶性セルロースを希釈混合して混合粉体を得、得られた混合粉体をアルミリングにとり、錠剤成型器を用いて圧力20tの条件でタブレットを作製した。
検量線の作製
固体触媒の代りに異なる量の金属酸化物を含有するタブレットを上記と同様に作製し、金属の波長強度を測定して検量線を作成した。
(2)シクロヘキシルアミンの添加率及びシクロヘキサノンオキシムの選択率
実施例及び比較例においてシクロヘキシルアミンの酸化反応の結果を評価するために用いるシクロヘキシルアミンの転化率及びシクロヘキサノンオキシムの選択率は、それぞれ下記の式によって定義される。
Figure 0004208574
反応生成物の分析はガスクロマトグラフィーで行った。ガスクロマトグラフィーは、米国、J&W SCIENTIFIC社製のキャピラリーカラム(30cm、商品名:DB−1701)を用い、FID検出器を用いて行った。
(3)溶出金属濃度の測定
固体触媒から反応液に溶出した金属の濃度をICP発光分光分析法にて測定した。ICP発光分光分析装置として日本国、理学電気工業製のJY138型を用い、高周波出力が1.4kWの条件で有機溶媒用トーチを用いて測定した。
実施例1
<酸化タングステンとアルミナを含有する固体触媒の調製>
市販のアルミニウムブトキシド10gをガラスビーカーに入れ、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(メタタングステン酸アンモニウム0.31gを5gの水に溶解させたもの)をガラス棒で撹拌しながら少量ずつ滴下した。生成したゲル状生成物を常温下で約1時間風乾した後、さらに120℃にて一夜真空乾燥させて乾燥物を得た。得られた乾燥物をガラス製管状炉に入れ、常圧空気気流下で400℃にて4時間の焼成処理に付し、酸化タングステンとアルミナを含有する固体触媒を得た。得られた固体触媒のタングステン含有量は約9重量%だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
ガス自給式撹拌翼を備えたSUS316製の総容量100mlの高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール14gを仕込み、そこに上記で調製した酸化タングステン/アルミナ固体触媒0.14gを懸濁した。系内を窒素ガスで置換した後、7%の酸素を含有する窒素の混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を6,000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は420kPaだった。次いで、撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
上記と同じ条件でシクロヘキシルアミンの酸化反応を6時間及び8時間行い、それぞれシクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、触媒の分散した反応液のスラリーを反応器から回収し、アスピレーターと接続した吸引濾過器を用いて触媒を濾別した。具体的には、濾紙として、日本国、アドバンテック東洋(株)製の定量濾紙No.5Cをおいたロート上に反応液のスラリーを滴下し、濾紙上に固体触媒を回収し、反応液を濾液として回収した。
回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、シクロヘキシルアミンの転化率はそれぞれ4時間の反応で8.6%、6時間の反応で23.4%、8時間の反応で39.5%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率はそれぞれ4時間の反応で74.5%、6時間の反応で68.3%、8時間の反応で65.2%だった。
ICP発光分光分析装置で反応液を分析した結果、固体触媒から反応液に溶出したタングステンの濃度は0.1ppm以下であった。
上記の結果から明らかなように、本発明の方法を用いると、60%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。また、簡便な濾過法を用いて反応液と固体触媒を分離することができた。
実施例2
反応溶媒として、t−ブチルアルコールの代りにn−ブチルアルコール14gを用いた以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキシルアミンの転化率は5.5%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は50.2%だった。
実施例3
反応溶媒として、t−ブチルアルコールの代りにアセトニトリル14gを用いた以外は実施例1と同様に4時間反応反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキシルアミンの転化率は14.8%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は74.0%だった。
実施例4
反応溶媒として、t−ブチルアルコールの代りにベンゾニトリル14gを用いた以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキシルアミンの転化率は10.3%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は67.7%だった。
実施例5
反応溶媒として、t−ブチルアルコールの代りにシクロヘキサン14gを用いた以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキシルアミンの転化率は4.4%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は63.3%だった。
実施例6
反応溶媒として、t−ブチルアルコールの代りに水14gを用いた以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキシルアミンの転化率は5.8%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は62.5%だった。
実施例7
<酸化タングステンがアルミナに担持されてなる固体触媒の調製>
市販のγ−アルミナ(比表面積:282m/g)(日本国、西尾工業製)を120℃にて一夜真空乾燥し、担体として用いた。パラタングステン酸アンモニウム5水和物1.42gを60gの水に溶解した後、乾燥したγ−アルミナ10gをそこに添加して懸濁溶液とした。
この懸濁溶液をガラスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに設置し、常圧下に温度90℃のオイルバスに浸して1.5時間ゆっくり撹拌混合してスラリーを得た。
次いで得られたスラリーを以下の濃縮乾固処理に付した。オイルバスの温度を90℃から120℃に昇温し、系内圧力は約2時間かけて常圧から20kPaまでゆっくりと減圧してフラスコ内のスラリーから水分を蒸発させた。水分の蒸発に伴い、スラリーはケーク状になり、最終的にはケークが乾燥して破壊粒のような大きさの異なる粉体からなる凝集乾燥物を得た。
得られた凝集乾燥物を更に120℃にて一夜真空乾燥させてから次の粉体化処理に付した。凝集乾燥物をステンレス製の乳鉢に入れて乳棒で粉壊し、微粉状に近づいた凝集乾燥物をめのう製の乳鉢に移して更に細かくなるように粉壊した。粉壊した乾燥物をふるい(メッシュサイズ:75μm)にかけ、ふるいを通過したもののみを回収して粒径が75μm以下の粉体を得た。
次いで、得られた粉体をガラス製の管状炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて4時間焼成し、酸化タングステンがアルミナに担持されてなる固体触媒を得た。得られた固体触媒のタングステン含有量は約9重量%だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
実施例1と同じ高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール14gを仕込み、そこに上記で調製した固体触媒0.3gを懸濁した。系内を窒素ガスで置換した後、7%の酸素を含有する酸素/窒素混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を7、000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は490kPaだった。次いで、撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は7.4%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は65.0%だった。
ICP発光分光分析装置で反応液を分析した結果、固体触媒から反応液に溶出したタングステンの濃度は0.1ppm以下であった。
上記の結果から明らかなように、酸化タングステンがアルミナに担持されてなる固体触媒を用いた場合にも、実施例1と同様に60%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。また、簡便な濾過法を用いて反応液と固体触媒を分離することができた。
実施例8
<酸化タングステンがシリカに担持されてなる固体触媒の調製>
市販のシリカ(比表面積:300m/g)(AEROSIL−300、日本国、日本アエロジル製)を120℃にて一夜真空乾燥し、担体として用いた。メタタングステン酸アンモニウム1.34gを50gの水に溶解した後、乾燥したシリカ10gをそこに添加して懸濁溶液とした。この懸濁溶液を用いて実施例7と同様に固体触媒を調製し、酸化タングステンがシリカに担持されてなる固体触媒を得た。得られた固体触媒のタングステン含有量は約9重量%だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
実施例1と同じ高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール14gを仕込み、そこに上記で調製した固体触媒0.3gを懸濁した。系内を窒素ガスで置換した後、7%の酸素を含有する酸素/窒素混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を7,000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は490kPaだった。次いで撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は6.5%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は51.7%だった。
実施例9
<酸化タングステンがシリカ−アルミナ担体に担持されてなる固体触媒の調製>
市販のシリカ−アルミナ成形体(比表面積400m/g)(N631HN、日本国、日揮化学製)を実施例7と同様に粉体化処理に付して粉体を得、得られた粉体を120℃にて一夜真空乾燥し、シリカ−アルミナの乾燥粉体を得た。メタタングステン酸アンモニウム1.34gを50gの水に溶解した後、シリカ−アルミナの乾燥粉体10gをそこに添加して懸濁溶液とした。この懸濁溶液を用いて実施例7と同様に固体触媒を調製し、酸化タングステンがシリカ−アルミナ担体に担持されてなる固体触媒を得た。得られた固体触媒のタングステン含有量は約9重量%だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
実施例1と同じ高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール14gを仕込み、そこに上記で調製した固体触媒0.3gを懸濁させた。系内を窒素ガスで置換した後、7%の酸素を含有する酸素/窒素混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を7,000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は490kPaだった。次いで撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行ない、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は6.0%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は57.4%だった。
実施例10
<酸化ニオブがアルミナに担持されてなる固体触媒の調製>
市販のγ−アルミナ(比表面積:282m/g)(日本国、西尾工業製)を120℃にて一夜真空乾燥した。蓚酸水素ニオブ10.68gを45gの蓚酸水溶液に溶解した後、乾燥したγ−アルミナ10gをそこに添加して懸濁溶液とした。
この懸濁溶液をガラスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに設置し、常圧下に温度90℃のオイルバスに浸して1.5時間ゆっくり撹拌混合させてスラリーを得た。
次いで得られたスラリーを以下の濃縮乾固処理に付した。オイルバスの温度を90℃から120℃に昇温し、系内圧力は約2時間かけて常圧から20kPaまでゆっくりと減圧してフラスコ内のスラリーから水分を蒸発させた。水分の蒸発に伴い、スラリーはケーク状になり、最終的にはケークが乾燥して破壊粒のような大きさの異なる粉体からなる凝集乾燥物を得た。
得られた凝集乾燥物を更に120℃にて一夜真空乾燥させてから次の粉体化処理に付した。凝集乾燥物をステンレス製の乳鉢に入れて乳棒で粉壊し、微粉状に近づいた凝集乾燥物をめのう製の乳鉢に移して更に細かくなるように粉壊した。粉壊した乾燥物をふるい(メッシュサイズ:75μm)にかけ、ふるいを通過したもののみを回収して粒径が75μm以下の粉体を得た。
次いで、得られた粉体をガラス製の管状炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて4時間焼成処理を実施し、酸化ニオブがアルミナに担持されてなる固体触媒を得た。得られた固体触媒のニオブ含有量は約9重量%だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
実施例1と同じ高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール14gを仕込み、そこに上記で調製した固体触媒0.14gを懸濁した。系内を窒素ガスで置換した後、7%の酸素を含有する酸素/窒素混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を6,000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は420kPaだった。次いで、撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は8.2%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は64.4%だった。
ICP発光分光分析装置で反応液を分析した結果、固体触媒から反応液に溶出したニオブの濃度はいずれも0.1ppm以下であった。
上記の結果から明らかなように酸化ニオブがアルミナに担持されてなる固体触媒を用いても、実施例1や7と同様に60%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。また、簡便な濾過法を用いて反応液と触媒成分を分離することができた。
実施例11
<酸化タングステン及び酸化モリブデンがアルミナに担持されてなる固体触媒の調製>
市販のγ−アルミナ(比表面積:282m/g)(日本国、西尾工業製)を120℃にて一夜真空乾燥した。メタタングステン酸アンモニウム1.37gとパラモリブデン酸アンモニウム0.185gを60gの水に溶解させた後、乾燥したγ−アルミナ10gをそこに添加して懸濁溶液とした。
この懸濁溶液をガラスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに設置し、常圧下に温度90℃のオイルバスに浸して2時間ゆっくり撹拌混合させてスラリーを得た。
次いで得られたスラリーを以下の濃縮乾固処理に付した。オイルバスの温度を90℃から120℃に昇温し、系内圧力は約2時間かけて常圧から20kPaまでゆっくりと減圧してフラスコ内のスラリーから水分を蒸発させた。水分の蒸発に伴い、スラリーはケーク状になり、最終的にはケークが乾燥して破壊粒のような大きさの異なる粉体からなる凝集乾燥物を得た。
得られた凝集乾燥物をガラス製管状炉に入れ、常圧窒素気流下で120℃にて5時間乾燥処理を行った後、実施例7と同様に粉体化処理に付し、粒径が75μm以下の粉体を得た。得られた粉体を再度ガラス製管状炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて4時間焼成し、酸化タングステンと酸化モリブデンがアルミナに共担持されてなる固体触媒を得た。得られた固体触媒のタングステン含有量は約9重量%であり、モリブデンの含有量は約1重量%だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
実施例1と同じ高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール14gを仕込み、そこに上記で調製した固体触媒0.3gを懸濁した。系内を窒素ガスで置換した後、7%の酸素を含有する酸素/窒素混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を7,000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は490kPaだった。次いで撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は9.5%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は58.7%だった。
実施例12
<酸化タングステンとチタニアを含有する固体触媒の調製>
メタタングステン酸アンモニウム水和物を200gの水に溶解した後、市販のアモルファス型チタニア(TiO:99.9%)(日本国、和光純薬製)40gをそこに添加して懸濁スラリーとした。
この懸濁スラリーをガラスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに設置し、常圧下に温度90℃のオイルバスに浸して、1.5時間ゆっくり撹拌混合させた。
次いでスラリーを以下の濃縮乾固処理に付した。オイルバスの温度を90℃から120℃に昇温し、系内圧力は約2時間かけて常圧から20kPaまでゆっくりと減圧してフラスコ内のスラリーから水分を蒸発させた。水分の蒸発に伴い、スラリーはケーク状になり、最終的にはケークが乾燥して破壊粒のような大きさの異なる粉体からなる凝集乾燥物を得た。
得られた凝集乾燥物を更に120℃にて一夜真空乾燥させてから次の粉体化処理に付した。凝集乾燥物をステンレス製の乳鉢に入れて乳棒で粉壊し、微粉状に近づいた凝集乾燥物をめのう製の乳鉢に移して更に細かくなるように粉壊した。粉壊した乾燥物をふるい(メッシュサイズ:75μm)にかけ、ふるいを通過したもののみを回収して粒径が75μm以下の粉体を得た。
次いで、得られた粉体をガラス製の管状炉に入れ、常圧下、空気を供給しながら500℃にて4時間焼成し、酸化タングステンとチタニアを含有する固体触媒を得た。得られた固体触媒のW/Ti原子比は約0.06だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
実施例1と同じ高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール14gを仕込み、そこに上記で調製した固体触媒0.28gを懸濁した。系内を窒素ガスで置換した後、7%の酸素を含有する酸素/窒素混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を6000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は420kPaだった。次いで、撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は11.5%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は71.8%だった。
ICP発光分光分析装置で反応液を分析した結果、固体触媒から反応液に溶出したW及びTiの濃度はいずれも0.1ppm以下であった。
上記の結果から明らかなように、酸化タングステンとチタニアを含有する固体触媒を用いても、70%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。また、簡便な濾別法を用いて反応液と触媒成分を分離することができた。
比較例1
メタタングステン酸アンモニウム水和物を用いず、市販のアモルファス型チタニアの懸濁スラリーのみを用いること以外は実施例12と同様に触媒を調製し、酸化タングステンを含有しないチタニア固体触媒を得た。
上記の方法で調製したチタニア固体触媒0.28gを触媒として用いる以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は3.6%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は50.2%だった。
実施例13
反応溶媒として、t−ブチルアルコールの代りにアセトニトリル14gを用いた以外は実施例12と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキシルアミンの転化率は22.0%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は71.3%だった。
実施例14
反応溶媒として、t−ブチルアルコールの代りにベンゾニトリル14gを用いた以外は実施例12と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキシルアミンの転化率は13.8%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は58.7%だった。
実施例15
反応溶媒として、t−ブチルアルコールの代りに水14gを用いた以外は実施例12と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。シクロヘキシルアミンの転化率は17.1%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は70.5%だった。
実施例16
<酸化タングステンとジルコニアを含有する固体触媒の調製>
メタタングステン酸アンモニウム水和物を200gの水に溶解した後、市販のジルコニア(商標:RC−100)(日本国、第一希元素化学工業製)30gをそこに添加して懸濁スラリーとした。上記の懸濁スラリーを用いて実施例12と同様に固体触媒を調製し、酸化タングステンとジルコニアを含有する固体触媒を得た。得られた固体触媒のW/Zr原子比は約0.09だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
実施例1と同じ高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール14gを仕込み、そこに上記で調製した固体触媒0.30gを懸濁した。系内を窒素ガスを用いて置換した後、7%の酸素を含有する酸素/窒素混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を7000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は490kPaだった。次いで撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は8.8%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は73.6%だった。
ICP発光分光分析装置で反応液を分析した結果、固体触媒から反応液に溶出したW及びZrの溶出濃度はいずれも0.1ppm以下であった。
上記の結果から明らかなように、酸化タングステンとジルコニアを含有する固体触媒を用いても、実施例12と同様に70%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。また、簡便な濾別法を用いて反応液と触媒成分を分離することができた。
比較例2
メタタングステン酸アンモニウム水和物を用いず、市販のジルコニアの懸濁スラリーのみを用いる以外は実施例16と同様に触媒の調製し、酸化タングステンを含有しないジルコニア固体触媒を得た。
上記の方法で調製したジルコニア固体触媒0.30gを触媒として用いる以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。反応後、固体触媒を濾別した後に、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は1.2%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は29.4%だった。
実施例17
<ジルコニア−チタニア複合酸化物担体の調製>
市販のジルコニウムテトラノルマルプロポキシドとチタニウムテトライソプロポキシドを、これらアルコキシドの合計量に対して約2.5倍モル量のヘキシレングリコールに溶解し、ガラス反応器中で撹拌しながら、120℃の油浴中で3時間処理した。次いで油浴温度を90℃に昇温し、撹拌下に、エタノール水溶液を、エタノール水溶液中の水の量がアルコキシドの合計量に対して約4倍モルとなる量を滴下して加水分解を行い、ゲル状の生成物を得た。生成したゲルを一夜熟成させた後、130℃で真空乾燥させ、乾燥したゲルをガラス製管状炉に入れ、常圧下で空気を供給しながら550℃にて5時間焼成処理を実施し、白色のジルコニア−チタニア複合酸化物を得た。得られた複合酸化物のZr/Ti原子比は約1.0だった。
<酸化タングステンとジルコニア−チタニア複合酸化物を含有する固体触媒の調製>
メタタングステン酸アンモニウム水和物を200gの水に溶解した後、上記で調製したジルコニア−チタニア複合酸化物30gをそこに添加して懸濁スラリーとした。
上記の懸濁スラリーを用いて実施例12と同様に固体触媒を調製し、酸化タングステンとジルコニア−チタニア複合酸化物を含有する固体触媒を得た。得られた固体触媒のW/(Ti+Zr)原子比は約0.08だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
固体触媒として上記で製造した固体触媒0.28gを用いる以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は10.9%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は72.2%だった。
上記の結果から明らかなように、酸化タングステンとジルコニア−チタニア複合酸化物を含有する固体触媒を用いても、実施例12及び16と同様に70%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。
比較例3
実施例17と同様の方法で調製したジルコニア−チタニア複合酸化物(酸化タングステンを含有しない)0.28gを固体触媒として用いる以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は6.5%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は48.0%だった。
実施例18
<酸化タングステンとチタニアを含有する固体触媒の調製>
市販のチタニウムテトライソプロポキシド10.5gをガラスビーカーに入れ、ガラス棒で撹拌しながら、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(メタタングステン酸アンモニウム0.93gを13.2gの熱水に溶解させたもの)を少量ずつ滴下してゲル状の生成物を得た。生成したゲルを室温で約4時間風乾した後、さらに120℃にて一夜真空乾燥させた。次いで、乾燥したゲルをガラス製管状炉に入れ、常圧下、空気気流下で400℃にて4時間焼成処理を実施し、酸化タングステンとチタニアを含有する固体触媒を得た。得られた固体触媒のW/Ti原子比は約0.10だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
実施例1と同じ高圧オートクレーブ式反応器にシクロヘキシルアミン1.4gとt−ブチルアルコール12gを仕込み、そこに上記で調製した固体触媒0.28gを懸濁させた。系内を窒素ガスを用いて置換した後、7%の酸素を含有する酸素/窒素混合ガスを気相部に導入し、系内全圧を6000kPaまで昇圧した。この時の酸素分圧は420kPaである。次いで撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は18.1%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は69.5%だった。
ICP発光分光分析装置で反応液を分析した結果、固体触媒から反応液に溶出したW及びTiの濃度はいずれも0.1ppm以下であった。
上記の結果から明らかなように、酸化タングステンとチタニアを含有する固体触媒を用いても、実施例1、7や10と同様に、60%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。また、簡便な濾別法を用いて反応液と触媒成分を分離することができた。
実施例19
<酸化ニオブとチタニアを含有する固体触媒の調製>
市販のチタニウムテトライソプロポキシド10.5gとニオブペンタエトキシド0.4gをガラスビーカーに入れて混合し、均一な混合アルコキシド溶液を調製した。次いで、脱イオン水13.8gをガラス棒で撹拌しながら少量ずつ滴下してゲル状の生成物を得た。ゲル状生成物を室温で約4時間風乾した後、さらに120℃にて一夜真空乾燥させた。次いで、乾燥したゲルをガラス製管状炉に入れ、常圧下、空気気流下で400℃にて4時間焼成処理を実施し、酸化ニオブとチタニアを含有する固体触媒を得た。得られた固体触媒のNb/Ti原子比は約0.035だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
上記で調製した固体触媒0.28gを用いた以外は実施例1と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを得た。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は7.8%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は61.7%だった。
ICP発光分光分析装置で反応液を分析した結果、固体触媒から反応液に溶出したNb及びTiの濃度はいずれも0.1ppm以下であった。
上記の結果から明らかなように、酸化ニオブとチタニアを含有する固体触媒を用いても、実施例1、7、10及び18と同様に60%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。また、簡便な濾別法を用いて反応液と触媒成分を分離することができた。
実施例20
<酸化タンタルとチタニアを含有する固体触媒の調製>
ニオブペンタエトキシドの代りにタンタルペンタエトキシド0.52gを用いた以外は、実施例19と同様に固体触媒を調製し、酸化タンタルとチタニアを含有する固体触媒を得た。得られた固体触媒のTa/Ti原子比は約0.035だった。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
上記で調製した固体触媒0.28gを用いた以外は実施例18と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は7.6%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は63.8%だった。
ICP発光分光分析装置で反応液を分析した結果、固体触媒から反応液に溶出したTa及びTiの濃度はいずれも0.1ppm以下であった。
上記の結果から明らかなように、酸化タンタルとチタニアを含有する固体触媒を用いても、実施例1、7、10、18及び19と同様に60%以上の高い選択率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができた。また、簡便な濾別法を用いて反応液と触媒成分を分離することができた。
比較例4
<チタニア固体触媒の調製>
市販のチタニウムテトライソプロポキシド10.5gをガラスビーカーに入れ、ガラス棒で撹拌しながら、脱イオン水13.8gを少量ずつ滴下してゲル状の生成物を得た。得られたゲル状生成物をもちいて実施例18と同様に固体触媒を調製し、チタニア固体触媒を得た。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
上記で調製した固体触媒0.28gを用いた以外は実施例18と同様に4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は4.3%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は45.5%だった。
比較例5
(欧州特許第395046号公報に記載の方法)
<チタニア固体触媒の調製>
市販のチタニウムテトライソプロポキシド10gをガラスビーカーに入れ、水10gをゆっくり滴下しながら撹拌し、さらに室温にて約4時間混合を継続して沈殿物を得た。得られた沈殿物を水で洗浄した後、ガラス製管状炉に入れ常圧窒素気流下で120℃にて12時間乾燥し、さらに200℃で2時間乾燥した。乾燥した沈殿物を実施例7と同様に粉体化処理に付し、粒径が75μm以下の粉状の固体触媒を得た。
<シクロヘキシルアミンの酸化反応>
マグネチックスターラーを備えたSUS316製の高圧オートクレーブ式反応器(総容量100ml)にシクロヘキシルアミン2.97gとジグリム7mlを仕込み、上記で得られた固体触媒0.4gを懸濁した。系内を窒素ガスで置換した後、純酸素を気相部に導入し、系内全圧を3140kPaまで昇圧した。次いで、撹拌しながら120℃まで昇温した後、4時間反応を行い、シクロヘキサノンオキシムを製造した。
反応後、実施例1と同様に固体触媒を濾別して反応液を回収した。回収した反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキシルアミンの転化率は31.2%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は22.5%だった。
本比較例に示す方法では、簡便な濾過法を用いて反応液と触媒成分を分離することができたものの、シクロヘキサノンオキシムの選択率は22.5%と非常に低かった。
産業上の利用可能性
本発明の方法によれば、危険性の少ない分子状酸素を酸化剤として用いながらも、液相中で、高い選択率で環状脂肪族オキシムを製造することができる。また、本発明の方法においては、固体触媒を用いることから、反応後の固体触媒と反応液との分離が極めて容易であり、触媒成分の分離回収に係わる煩雑な操作を必要としないため工業的に非常に有利である。

Claims (12)

  1. 環状脂肪族第一級アミンを、液相中で大気圧を越えた加圧条件下において、分子状酸素及び固体触媒の存在下で酸化させることを包含する環状脂肪族オキシムの製造方法であって、該固体触媒が周期律表第5及び6族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(a)の酸化物を含有することを特徴とする方法。
  2. 該環状脂肪族第一級アミンがシクロヘキシルアミンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 該固体触媒が、周期律表第2、13及び14族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(b)の酸化物を更に含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 該金属(a)が、ニオブ及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 該金属(a)がタングステンであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  6. 該金属(b)がアルミニウム及びシリコンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 該固体触媒中の該金属(a)の含有量が、1〜60重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 該固体触媒が、周期律表第4族に属する金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属(c)の酸化物を更に含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  9. 該金属(a)が、ニオブ、タンタル及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  10. 該金属(a)がタングステンであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  11. 該金属(c)がチタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 該金属(c)に対する該金属(a)の原子比が0.01〜1.0の範囲であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
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