JP4133503B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に接続された自動変速機の変速制御を行なう際に、内燃機関がパワーオン状態かパワーオフ状態かを判定して、この判定に基づいてそれぞれの状態に対応した変速制御則に従ってアップシフト制御或いはダウンシフト制御を行なう、自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の電子制御自動変速装置において、変速制御時に、制御変速装置への入力トルクのパワーオンオフ状態に応じて異なる変速制御ロジックを用いて摩擦係合要素の係合,開放を制御する技術が知られている。
つまり、パワーオン状態においては、解放側係合要素を解放することにより、入力軸回転速度が上昇する。したがって、ダウンシフトの際には、解放側係合要素を解放して入力軸回転速度を上昇させ、これが目標変速段の同期回転速度に一致するのを待って結合側係合要素を係合させるというシンプルな制御でよいが、アップシフトの際には、解放側係合要素の解放と結合側係合要素の係合との開始タイミングを合わせた後、結合側係合要素により入力軸回転速度を目標変速段の同期回転速度まで引き下げるという微妙な制御を行なう必要がある。
【0003】
すなわち、アップシフトを行なう際にパワーオン状態であった場合に、解放側係合要素の解放と結合側係合要素の係合との開始タイミングを合わせずに、単純に解放側係合要素を解放してしまうとエンジンの吹き上がり(ランナップ)を起こし入力軸回転速度が上昇してしまう。そのため、結合側係合要素に低い油圧を供給していた場合、フィードバック制御により油圧を急激に上昇させることになり、係合時に大きな変速ショック(ランナップショック)が発生してしまう。
【0004】
そこで、低速段から高速段にアップシフトさせる時に、入力トルクがパワーオン状態にあると、先ず、解放側摩擦係合要素を徐々に解放させて変速装置の入力軸の回転数を変速開始直前の入力軸回転数よりも僅かに高い回転数に一旦上昇させた後、結合側摩擦係合要素の係合を開始させ、次いで、結合側の摩擦係合要素の係合力を調整し、入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を高速段確立回転数に向けて漸減させ、入力軸回転数が高速段確立回転数に到達した時点で結合側の摩擦係合要素の係合を完了させるようにしている(パワーオン時アップシフト制御)。
【0005】
一方、パワーオフ状態においては、解放側係合要素を解放することにより、入力軸回転速度が低下する。したがって、アップシフトの際には、解放側係合要素を解放して入力軸回転速度を低下させ、これが目標変速段の同期回転速度に一致するのを待って結合側係合要素を係合させるというシンプルな制御でよいが、ダウンシフトの際には、解放側係合要素の解放と結合側係合要素の係合との開始タイミングを合わせた後、結合側係合要素により入力軸回転速度を目標変速段の同期回転速度まで引き上げるという微妙な制御を行なう必要がある。
【0006】
すなわち、ダウンシフトを行なう際にパワーオフ状態であった場合に、解放側係合要素の解放と結合側係合要素の係合との開始タイミングを合わせずに、単純に解放側係合要素を解放してしまうとエンジンの吹け上がる力が不十分なため、回転の落ち込み(即ち、入力軸回転速度の下降)が生じ、変速制御を続けても入力軸回転速度が目標変速段の同期回転速度に達することがなく、結合側係合要素の係合(すなわち、変速)が行なえなくなってしまう。
【0007】
そこで、高速段から低速段にダウンシフトさせる時に、入力トルクがパワーオフ状態にあると、先ず、解放側摩擦係合要素を徐々に解放させて変速装置の入力軸の回転数を変速開始直前の入力軸回転数よりも僅かに低い回転数に一旦下降させた後、結合側の摩擦係合要素の係合を開始させ、その係合力を徐々に増加させ、入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を低速段確立回転数に向けて漸増させ、入力軸の回転数が低速段確立回転数より僅かに低い回転数に到達したとき係合を完了させるようにしている(パワーオフ時ダウンシフト制御)。
【0008】
一方、アップシフト時に入力トルクがパワーオフ状態である場合を更に説明すると、このときには、解放側の摩擦係合要素をシフト指令と同時に直に解放させると共に、結合側の摩擦係合要素を入力軸の回転数が所定回転数まで下降するまで係合開始直前位置で待機させる。そして、入力軸の回転数が所定回転数まで下降すると、結合側の摩擦係合要素の係合を開始させ、結合側の摩擦係合要素の係合力を徐々に強め、入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を高速段確立回転数に向けて漸減させ、入力軸回転数が高速段確立回転数に到達した時点で結合側の摩擦係合要素の係合を完了させるようにする(パワーオフ時アップシフト制御)。
【0009】
また、ダウンシフト時に入力トルクがパワーオン状態である場合を更に説明すると、このときには、先ず、解放側摩擦係合要素を徐々に解放させて入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を低速段確立回転数に向けて漸増させる。このとき、エンジンがパワーオン状態にあるため、解放側摩擦係合要素の摩擦トルクを一部解放するだけで入力軸の回転数は自力上昇する。そして、入力軸の回転数を低速段確立回転数より僅かに高い回転数に一旦上昇させた後、この回転数を保持しながら結合側の摩擦係合要素の係合を開始し、その係合力を徐々に増加させ係合を完了させるようにする(パワーオン時ダウンシフト制御)。
【0010】
このように、アップシフトやダウンシフトを行なう際に入力トルクのパワーオンオフ状態により異なる変速制御ロジックを用いて変速するため、パワーオンオフ状態を正しく判定することが重要となる。
このようなパワーオンオフ状態を判定する手法として、エンジン回転数情報とエンジン負荷情報とに基づいて行なうものが一般的であり、この場合のエンジン負荷情報としては、一般に、ECUから入力した一吸気行程あたりの吸気量(吸気量情報)A/Nやスロットル開度θTH等とエンジン回転速度Neとが用いられる(特許文献1参照)。
【0011】
つまり、図6に示すように、エンジン回転数状態に応じてエンジン負荷の境界線(パワーオンオフ判定線)を設定し、エンジン負荷状態がこのパワーオンオフ判定線よりも高負荷であればパワーオンと判定し、エンジン負荷状態がこのパワーオンオフ判定線よりも低負荷であればパワーオフと判定するのである。ただし、パワーオンオフ判定線はダウンシフト用とアップシフト用とで異なり、ダウンシフト用のパワーオンオフ判定線(実線で示す)は比較的高負荷域にあり、アップシフト用のパワーオンオフ判定線(破線で示す)は比較的低負荷域にある。
【0012】
これは、パワーオンオフが曖昧な低負荷領域(図A中で、両パワーオンオフ判定線に挟まれた領域)において、ダウンシフトの場合はパワーオフと判断させて確実にシフトを完了させ、アップシフトはパワーオンと判断させてエンジンの吹き上がりを防止するためである。
つまり、このようなダウンシフトの設定は、上述のように、ダウンシフトの際に、パワーオフ状態にも拘わらずパワーオンであると判定した場合、解放側係合要素を解放しても、入力軸回転速度は上昇しない(逆に低下する)。そのため、制御を続けても入力軸回転速度が目標変速段の同期回転速度に達せず、結合側係合要素の係合(すなわち、変速)が行なえなくなってしまうからである。
【0013】
また、このようなアップシフトの設定は、上述のように、アップシフトの際に、パワーオン状態にも拘わらずパワーオフであると判定した場合、結合側係合要素が係合し始める前に解放側係合要素が解放されてしまい、変速機構が一時的にニュートラル状態となって、エンジンの吹き上がりにより入力軸回転数が急上昇し、結合側係合要素が係合した瞬間に大きなショックが発生して変速フィーリングが著しく悪化するからである。
【0014】
【特許文献1】
特開平8−145162号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のパワーオンオフ判定線を用いて判定を行なう場合、エンジン運転状態がパワーオンオフ判定線の付近にあるとき変速指令があると、シフト動作を開始してからシフト動作を完了するまでの間に、エンジン負荷は内部抵抗のみ(又はこれに近い状態)となってエンジン負荷が一時的に低下するとともにエンジン回転速度が上昇するので、エンジン運転状態がパワーオン側からパワーオンオフ判定線を超えてパワーオフ側へと変化し、パワーオンオフ判定が切り替わってしまうことがある。この場合には、変速動作の途中でシフトロジックが変わるので、変速フィーリングが著しく悪化してしまう。
【0016】
そこで、図7に示すように、通常時(シフト動作を開始していない場合)やパワーオフ判定中でのパワーオン移行判定のためにパワーオンオフ判定線Lu1,Ld1とは別に、このパワーオンオフ判定線Lu1,Ld1よりもエンジン負荷の低い側に、シフト動作中にパワーオン判定中でのパワーオフ移行判定のためのパワーオンオフ判定線Lu2,Ld2を設定して、パワーオンオフ判定マップにいわゆるヒステリシスを設けることが考えられる。
【0017】
この場合には、判定線Lu1,Ld1に基づくパワーオン判定の結果、パワーオンに応じたシフト動作(アップシフト或いはダウンシフト)を行なっている間に、エンジン負荷の低下やエンジン回転速度の上昇があって、判定線Lu1,Ld1のパワーオン側からパワーオフ側にエンジン運転状態が変化しても、判定線Lu2,Ld2を超えるまでは、パワーオンに応じたシフト動作を続行できるようにする。このため、変速動作の途中でシフトロジックが変更され難くなり、変速フィーリングの悪化を抑制できる。
【0018】
しかし、アップシフトに関するパワーオンオフ判定線Lu1がエンジン負荷の低い領域に設けられているのに対して、ダウンシフトに関するパワーオンオフ判定線Ld1はエンジン負荷の高い領域に設けられているので、シフト動作中に、エンジン負荷が内部抵抗のみ(又はこれに近い状態)となった場合、エンジン負荷の落ち込みは、ダウンシフトに関するパワーオンオフ判定の場合の方が、アップシフトに関するパワーオンオフ判定の場合よりも著しい。
【0019】
したがって、アップシフトとダウンシフトとで、パワーオンオフ判定マップにヒステリシス(即ち、通常の判定線Ld1とヒステリシス用の判定線Ld2との差)を同程度設けたのでは、変速動作の途中でのシフトロジックの変更を抑え難く、これによる変速フィーリングの悪化を防ぎ難い。
【0020】
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、アップシフトとダウンシフトとで、パワーオンオフ判定を適切に行なえるようにして、変速フィーリングを常に良好なものにできるようにした、自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の自動変速機の制御装置は、内燃機関に連結され、該内燃機関のパワーオン状態とパワーオフ状態とにそれぞれ対応した変速制御則に従ってアップシフト制御或いはダウンシフト制御を行なう自動変速機の制御装置であって、該内燃機関の負荷と回転速度とをパラメータとして規定される運転領域を、判定線を挟んで高負荷側のパワーオン運転領域と低負荷側のパワーオフ運転領域とに区分して、該負荷と該機関回転速度との検出情報から該内燃機関の運転状態が該パワーオン運転領域と該パワーオフ運転領域とのいずれであるかによってパワーオンオフを判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に応じた変速制御則で変速制御を行なう変速制御手段とをそなえている。
【0022】
該判定手段で用いる該判定線は、アップシフト制御用判定線とダウンシフト制御用判定線とで別設定されている。
内燃機関が、パワーオンとパワーオフとの境界付近の運転状態にあるときには、アップシフト制御ではパワーオンに対応した変速制御則で制御した方がフェイルセーフであり、ダウンシフト制御ではパワーオフに対応した変速制御則で制御した方がフェイルセーフであるため、アップシフト制御用判定線とダウンシフト制御用判定線とで別設定することにより、これに対応できる。
【0023】
さらに、該アップシフト制御用判定線及び該ダウンシフト制御用判定線は、いずれも判定にヒステリシスを加えるように、パワーオン状態での該変速制御を実施している最中に用いる制御実施時判定線と、その他の状態で用いる通常時判定線とで別設定され、該ダウンシフト制御用判定線と該アップシフト制御用判定線とで該ヒステリシスが異なる大きさに設定されている。
【0024】
判定にヒステリシスを設けるようにすれば、制御を安定させることができるが、アップシフト制御時とダウンシフト制御時とでは、必要とするヒステリシスの大きさ(通常時判定線と制御実施時判定線との差)が異なるため、ダウンシフト制御用判定線とアップシフト制御用判定線とでヒステリシスを異なる大きさに設定することで、これに対応できる。
【0025】
パワーオン時のアップシフト制御則では、該内燃機関の吹け上がりを抑えるように変速制御が行なわれ、パワーオフ時のダウンシフト制御則では、該自動変速機の入力軸回転速度を上昇させて確実に変速段切替を完了できるように変速制御が行なわれることが好ましい。
該通常時判定線として、第1アップシフト制御用判定線と、該第1アップシフト制御用判定線よりも高負荷側に位置する第1ダウンシフト制御用判定線とが設けられることが好ましい。
【0026】
これにより、第1アップシフト制御用判定線が比較的低めに設定されることになり、パワーオン,オフを確実に判定できない領域においてパワーオンと判定することになるため、パワーオン時のアップシフト制御則にしたがってアップシフトが実施されることになる。このパワーオン時のアップシフト制御則では、内燃機関の吹き上がりを防止するように変速制御が行なわれるため、円滑に変速処理が行なわれる。
【0027】
また、第1ダウンシフト制御用判定線は比較的高めに設定されることになり、パワーオン,オフを確実に判定できない領域においてパワーオフと判定することになるため、パワーオフ時のダウンシフト制御則にしたがってダウンシフトが実施されることになる。このパワーオフ時のダウンシフト制御則では、自動変速機の入力軸回転速度を上昇させて確実に変速段切替を完了できるように変速制御が行なわれるため、自動変速機の入力軸回転速度が上昇しなくて変速が完了しないといった事態を回避できる。
【0028】
さらに、該内燃機関がパワーオン状態であるとの判定により変速制御を実施している際に変速制御を安定させるために用いる該制御実施時判定線として、該第1アップシフト制御用判定線よりも低負荷側に第1シフト量分だけシフトして別設定された第2アップシフト制御用判定線と、該第1ダウンシフト制御用判定線よりも低負荷側に第2シフト量分だけシフトして別設定された第2ダウンシフト制御用判定線とが設けられることが好ましい。
【0029】
変速制御実施時には一時的にエンジン負荷が低下するため、該通常時判定線の付近でパワーオン判定がされると、その後の変速制御実施中に、内燃機関の運転領域がパワーオン運転領域から該通常時判定線を超えてパワーオン運転領域に変化する場合がある。しかし、変速制御実施中には、通常時判定線(第1アップシフト制御用判定線又は第1ダウンシフト制御用判定線)よりも低負荷側に設けられた制御実施時判定線(第2アップシフト制御用判定線又は第2ダウンシフト制御用判定線)によって判定が行なわれるので、内燃機関の運転領域についての判定結果が、パワーオン運転領域から該通常時判定線を超えてパワーオン運転領域に変化しにくく、変速制御中に変速制御則が変更されるといった不具合が回避される。
【0030】
さらに、該第2シフト量が、該第1シフト量よりも大きく設定されていることが好ましい。
これにより、第1ダウンシフト制御用判定線は比較的高負荷側に設けられるので、この第1ダウンシフト制御用判定線に基づいてパワーオンと判定された場合には、変速制御実施中の一時的なエンジン負荷低下が著しいが、第2ダウンシフト制御用判定線の第1ダウンシフト制御用判定線に対する低負荷側へのシフト量が比較的大きく設定されているので、変速制御実施中の一時的なエンジン負荷低下が著しくても、内燃機関の運転領域についての判定結果が、パワーオン運転領域から通常時判定線を超えてパワーオン運転領域に変化しにくくなるため、ダウンシフト制御時により一層生じ易い変速制御中における変速制御則の変更についても十分に回避できる。
【0031】
さらに、該第1アップシフト制御用判定線を、想定される基準判定線に対して所定のマージン分だけ低負荷側に設け、該第2アップシフト制御用判定線を、該第1アップシフト制御用判定線に対して該第1シフト量分だけ低負荷側に設け、該第2ダウンシフト制御用判定線を、該基準判定線に対して所定のマージン分だけ高負荷側に設け、該第1ダウンシフト制御用判定線を、該第2ダウンシフト制御用判定線に対して該第2シフト量分だけ高負荷側に設けるようにすることが好ましい。
【0032】
これにより、パワーオン,オフを確実に判定できない領域において、アップシフト時にはパワーオンと判定することになるため、パワーオン時のアップシフト制御則にしたがってアップシフトが実施され、内燃機関の吹き上がりを確実に防止して円滑に変速処理が行なわれるようになり、ダウンシフト時にはパワーオフと判定することになるため、パワーオフ時のダウンシフト制御則にしたがって自動変速機の入力軸回転速度を上昇させて確実に変速段切替を完了できるように変速制御が行なわれるようになる。
【0033】
また、制御実施中は、通常時判定線(第1アップシフト制御用判定線又は第1ダウンシフト制御用判定線)に対して低負荷側にシフトして設けられた制御実施時判定線(第2アップシフト制御用判定線又は第2ダウンシフト制御用判定線)によって判定が行なわれるので、内燃機関の運転領域についての判定結果が、パワーオン運転領域から該通常時判定線を超えてパワーオン運転領域に変化しにくく、変速制御中に変速制御則が変更されるといった不具合が回避される。
【0034】
特に、制御実施時判定線の通常時判定線に対して低負荷側へのシフト量に関し、ダウンシフトの場合の第2シフト量がアップシフトの場合の第1シフト量よりも大きく設定されるので、ダウンシフト制御時により一層生じ易い変速制御中における変速制御則の変更についても十分に回避できる。
なお、該内燃機関の負荷として、充填効率が用いられていることが好ましい。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5は本発明の一実施形態としての自動変速機の変制御装置を示すもので、図1はその自動変速機をそなえた車両の駆動系の構成図、図2はその制御装置におけるパワーオンオフ判定に用いる判定マップを示す図、図3はその制御装置におけるパワーオンオフ判定に用いる充填効率を説明する図、図4はその変速制御に用いるシフトマップ、そのパワーオンオフ判定を説明するフローチャートである。
【0036】
図1に示すように、内燃機関である自動車用のガソリンエンジン(以下、単にエンジンと記す)1の後端には自動変速機2が接続され、この自動変速機2を介してエンジン出力が図示しない駆動輪に伝達される。自動変速機2は、トルクコンバータ3,変速機本体4,油圧コントローラ5から構成されている。変速機本体4は複数組のプラネタリギヤの他、油圧クラッチや油圧ブレーキ等の油圧摩擦係合要素を内蔵している。また、油圧コントローラ5には、一体に形成された油圧回路の他、油圧制御用の複数の電磁弁が収納されている。
【0037】
エンジン1と自動変速機2とは、それぞれ図示しない入出力装置,多数の制御プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM,BURAM等),中央処理装置(CPU),タイマカウンタ等を具えた、ECU(エンジン用電子制御ユニット)6と変速制御手段としての機能を有するTCU(トランスミッション用電子制御ユニット)7とにより駆動制御される。
【0038】
ECU6の入力側には、エンジン回転速度Neや各気筒のクランク角度を検出するためのクランク角センサ8,冷却水温TWを検出する水温センサ9,吸気流量QAを検出するエアフローセンサ10,スロットル開度θTHを検出するスロットルセンサ11,スロットル弁の全閉状態を検出するアイドルスイッチ12等の他、図示しない各種のセンサやスイッチ類が接続されている。
【0039】
一方、TCU7の入力側には、トルクコンバータ4のタービンシャフトの回転数(入力軸回転数)NTを検出するNTセンサ13,車速Vに対応する速度データであるトランスファドライブギヤ回転数(回転速度)NOを検出するNOセンサ14の他、油温センサやインヒビタスイッチ等、種々のセンサやスイッチ類が接続されている。
【0040】
また、ECU6とTCU7とは信号ケーブル15により接続されており、シリアル通信により互いに情報を交換できるようになっている。そして、ECU6は、各種の入力情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期等、エンジン1の総合的な制御を行う。
また、TCU7も、入力情報に基づき、油圧コントローラ5を介して変速機本体4内の油圧摩擦係合要素を駆動し、自動変速機2の変速制御を行なう。
【0041】
ここでは、TCU7は、入力されるエンジン運転状態、即ち、トランスファドライブギヤ回転数(車速に対応するパラメータ)NOとスロットル開度(エンジン負荷に対応するパラメータ)θTHとから、例えば図4に示すようなマップに基づいて、変速段の切り替え(アップシフト又はダウンシフト)を判定する変速判定手段7aをそなえ、この変速判定手段7aの判定によって、変速段の切り替えが必要なときには、油圧コントローラ5を介して変速機本体4内の油圧摩擦係合要素を駆動し、自動変速機2の変速制御を行なう。
【0042】
さらに、TCU7には、アップシフト及びダウンシフトに応じて、エンジン運転状態が、変速機入力軸の回転を増加させるパワーオン状態であるか、変速機入力軸の回転を減少させるパワーオフ状態であるかを判定するパワーオンオフ判定手段7bが設けられ、TCU7では、アップシフト,ダウンシフトの種別及びこのパワーオンオフ判定手段7bによるパワーオンオフ判定の結果に応じて、次のようなそれぞれの変速制御則(公知の技術である)によって、各油圧摩擦係合要素の駆動を行なうようになっている。
【0043】
つまり、アップシフトを行なう際にパワーオン状態であった場合に、解放側係合要素の解放と結合側係合要素の係合との開始タイミングを合わせずに、単純に解放側係合要素を解放してしまうとエンジンの吹き上がり(ランナップ)を起こし入力軸回転速度が上昇してしまう。そのため、結合側係合要素に低い油圧を供給していた場合、フィードバック制御により油圧を急激に上昇させることになり、係合時に大きな変速ショック(ランナップショック)が発生してしまう。
【0044】
そこで、低速段から高速段にアップシフトさせる時に、入力トルクがパワーオン状態にあると(パワーオン時アップシフト制御)、先ず、解放側摩擦係合要素を徐々に解放させて変速装置の入力軸の回転数を変速開始直前の入力軸回転数よりも僅かに高い回転数に一旦上昇させた後、結合側摩擦係合要素の係合を開始させ、次いで、結合側の摩擦係合要素の係合力を調整し、入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を高速段確立回転数に向けて漸減させ、入力軸回転数が高速段確立回転数に到達した時点で結合側の摩擦係合要素の係合を完了させるようにしている。
【0045】
一方、アップシフト時にパワーオフ状態である場合には(パワーオフ時アップシフト制御)、解放側の摩擦係合要素をシフト指令と同時に直に解放させると共に、結合側の摩擦係合要素を入力軸の回転数が所定回転数まで下降するまで係合開始直前位置で待機させる。そして、入力軸の回転数が所定回転数まで下降すると、結合側の摩擦係合要素の係合を開始させ、結合側の摩擦係合要素の係合力を徐々に強め、入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を高速段確立回転数に向けて漸減させ、入力軸回転数が高速段確立回転数に到達した時点で結合側の摩擦係合要素の係合を完了させるようにする。
【0046】
これに対し、ダウンシフトを行なう際にパワーオフ状態であった場合に、解放側係合要素の解放と結合側係合要素の係合との開始タイミングを合わせずに、単純に解放側係合要素を解放してしまうとエンジンの吹け上がる力が不十分なため、回転の落ち込み(即ち、入力軸回転速度の下降)が生じ、変速制御を続けても入力軸回転速度が目標変速段の同期回転速度に達することがなく、結合側係合要素の係合(すなわち、変速)が行なえなくなってしまう。
【0047】
そこで、高速段から低速段にダウンシフトさせる時に、パワーオフ状態にあると(パワーオフ時ダウンシフト制御)、先ず、解放側摩擦係合要素を徐々に解放させて変速装置の入力軸の回転数を変速開始直前の入力軸回転数よりも僅かに低い回転数に一旦下降させた後、結合側の摩擦係合要素の係合を開始させ、その係合力を徐々に増加させ、入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を低速段確立回転数に向けて漸増させ、入力軸の回転数が低速段確立回転数より僅かに低い回転数に到達したとき係合を完了させるようにしている。
【0048】
一方、ダウンシフト時にパワーオン状態である場合には(パワーオン時ダウンシフト制御)、先ず、解放側摩擦係合要素を徐々に解放させて入力軸回転数の変化率を所定値に制御しながら入力軸回転数を低速段確立回転数に向けて漸増させる。このとき、エンジンがパワーオン状態にあるため、解放側摩擦係合要素の摩擦トルクを一部解放するだけで入力軸の回転数は自力上昇する。そして、入力軸の回転数を低速段確立回転数より僅かに高い回転数に一旦上昇させた後、この回転数を保持しながら結合側の摩擦係合要素の係合を開始し、その係合力を徐々に増加させ係合を完了させるようにする。
【0049】
ところで、パワーオンオフ判定手段7bでは、図2(a),(c)に示すような判定マップを用いて、パワーオンオフ状態を判定するようになっている。ここで用いる判定マップは、エンジン回転速度Neとエンジン負荷情報としての充填効率Ecとに基づいてパワーオンオフを判定するようになっている。
なお、充填効率Ecは、図3(a)に示すように、エンジン回転速度Ne及びスロットル開度θTHに対応するもので、また、エンジン出力トルクを示す平均有効圧Peは、図3(b)に示すように、エンジン回転速度Ne及びこの充填効率Ecに対応するものであり、エンジン負荷情報として採用でき、エンジン回転速度Ne及びエアフローセンサ10で検出される吸気流量QA等から容易に算出できる。
【0050】
パワーオンオフ判定マップは、アップシフト用とダウンシフト用とで別設定される。
アップシフト用のものには、図2(a)に示すように、第1アップシフト制御用判定線LU1と第2アップシフト制御用判定線LU2とが設けられる。第1アップシフト制御用判定線LU1は、変速制御を実施していない際及びパワーオフ状態であるとの判定により変速制御を実施している際に用いる通常時判定線としてのアップシフト制御用判定線であり、第2アップシフト制御用判定線LU2は、パワーオン状態であるとの判定により変速制御を実施している際に変速制御を安定させるために用いる制御実施時判定線としてのアップシフト制御用判定線である。
【0051】
また、ダウンシフト用のものには、図2(c)に示すように、第1ダウンシフト制御用判定線LD1と第2ダウンシフト制御用判定線LD2とが設けられる。第1ダウンシフト制御用判定線LD1は、変速制御を実施していない際及びパワーオフ状態であるとの判定により変速制御を実施している際に用いる通常時判定線としてのダウンシフト制御用判定線であり、第2ダウンシフト制御用判定線LD2は、パワーオン状態であるとの判定により変速制御を実施している際に変速制御を安定させるために用いる制御実施時判定線としてのダウンシフト制御用判定線である。
【0052】
このように、パワーオンオフ判定マップは、アップシフト用とダウンシフト用とでいずれも通常時判定線と制御実施時判定線とが別設定され、判定にヒステリシスが与えられるようになっている。
パワーオンオフ判定マップにおいて、パワーオンとパワーオフとの境界上に位置する判定線は、エンジンの内部抵抗等のみを各回転速度で回転させることができるエンジン負荷レベル(ここでは、充填効率Ec)として求めることができる。しかし、このときの負荷レベルは、エンジンの温度状態等の種々のパラメータによって変化するので、予め設定された基準のエンジン状態での負荷レベルとして、基準判定線LBを設定することはできるものの、この基準判定線LBによってパワーオンオフを判定したのでは、エンジン状態が基準のものからずれたら、判定結果も間違ったものになってしまうことがある。
【0053】
前述のように、アップシフトの際に、パワーオン状態にも拘わらずパワーオフであると判定した場合、結合側係合要素が係合し始める前に解放側係合要素が解放されてしまい、変速機構が一時的にニュートラル状態となって、エンジンの吹き上がりにより入力軸回転数が急上昇し、結合側係合要素が係合した瞬間に大きなショックが発生して変速フィーリングが著しく悪化する。また、ダウンシフトの際に、パワーオフ状態にも拘わらずパワーオンであると判定した場合、解放側係合要素を解放しても、入力軸回転速度は上昇しない(逆に低下する)。そのため、制御を続けても入力軸回転速度が目標変速段の同期回転速度に達せず、結合側係合要素の係合(すなわち、変速)が行なえなくなってしまう。
【0054】
そこで、アップシフトの際には、基準判定線LBに対して一定のマージンM1分だけ低負荷側にシフトした位置に第1アップシフト制御用判定線LU1を設定し、この第1アップシフト制御用判定線LU1よりも低負荷側の運転領域を、パワーオフアップシフト適用可能領域としている[図2(b)参照]。更にこの第1アップシフト制御用判定線LU1から予め設定された第1シフト量S1だけ低負荷側にシフトした位置に第2アップシフト制御用判定線LU2を設定している。
【0055】
なお、マージンM1は、エンジン状態の基準状態からのずれを考慮した場合にも、第1アップシフト制御用判定線LU1が確実にパワーオフである領域に存在するように設定される。もちろん、マージンM1は可能な限り小さい量に設定される。
また、第1シフト量S1は、第1アップシフト制御用判定線LU1に基づくパワーオン判定の結果、パワーオン時アップシフト制御により変速操作を実施している際に予想しうる発生可能なエンジン負荷減少量に応じて設定される。これにより、第1アップシフト制御用判定線LU1に近い運転状態でパワーオン判定された場合にも、変速操作中には、第2アップシフト制御用判定線LU2に基づいてパワーオンオフが判定されるため、変速操作中に制御則が変更されることが抑止されるようになっている。なお、アップシフト時にはパワーオン時アップシフト制御からパワーオフ時アップシフト制御に変更されても変速フィーリングへの影響は少ないので、第1シフト量S1は少なめに設定できる。
【0056】
一方、ダウンシフトの際には、基準判定線LBに対して一定のマージンM2分だけ高負荷側にシフトした位置に第2ダウンシフト制御用判定線LD2を設定し、この第2ダウンシフト制御用判定線LD2よりも高負荷側の運転領域を、パワーオンダウンシフト適用可能領域としている[図2(d)参照]。更にこの第2ダウンシフト制御用判定線LD2から予め設定された第2シフト量S2だけ高負荷側にシフトした位置に第1ダウンシフト制御用判定線LD1を設定している。
【0057】
なお、マージンM2は、エンジン状態の基準状態からのずれを考慮した場合にも、第2アップシフト制御用判定線LD2が確実にパワーオンである領域に存在するように設定される。もちろん、マージンM2は可能な限り小さい量に設定される。
また、第2シフト量S2は、第1ダウンシフト制御用判定線LD1に基づくパワーオン判定の結果、パワーオン時ダウンシフト制御により変速操作を実施している際に予想しうる発生可能なエンジン負荷減少量に応じて設定される。これにより、第1ダウンシフト制御用判定線LD1に近い運転状態でパワーオン判定された場合にも、変速操作中には、第2ダウンシフト制御用判定線LD2に基づいてパワーオンオフが判定されるため、変速操作中に制御則が変更されることが確実に抑止されるようになっている。
【0058】
この結果、第1シフト量S1に比べて第2シフト量S2が大きく設定されることになり、アップシフト時のヒステリシスに比べてダウンシフト時のヒステリシスが大きく設定されることになる。
【0059】
本発明の一実施形態としての自動変速機の制御装置は、上述のように構成されているので、例えば、図5に示すように、変速段切替制御中におけるパワーオンオフ判定が行なわれ、これに基づく変速制御が行なわれる。
つまり、変速段切替制御中には、ダウンシフト中であるか否(アップシフト中)かが判定され(ステップS10)、ダウンシフト中ならダウンシフト用判定マップ[図2(c)参照]が採用され(ステップS30)、アップシフト中ならアップシフト用判定マップ[図2(a)参照]が採用される(ステップS20)。
【0060】
前回の判定で、パワーオンと判定されたか否かに基づいて(ステップS40)、パワーオンと判定されていれば、制御実施時判定線(第2アップシフト制御用判定線LU2又は第2ダウンシフト制御用判定線LD2)とエンジン回転速度に応じたエンジン負荷(充填効率Ec)とを比較して(ステップS50)、パワーオンと判定されていなければ、通常時判定線(第1アップシフト制御用判定線LU1又は第1ダウンシフト制御用判定線LD1)とエンジン回転速度に応じたエンジン負荷(充填効率Ec)とを比較して(ステップS60)、パワーオン判定(ステップS70)又はパワーオフ判定(ステップS80)を行なう。
【0061】
このように、エンジンがパワーオン状態であるとの判定により変速制御を実施している際に変速制御を安定させるために用いる制御実施時判定線として、第1アップシフト制御用判定線よりも低負荷側に第1シフト量分だけシフトして別設定された第2アップシフト制御用判定線と、第1ダウンシフト制御用判定線よりも低負荷側に第2シフト量分だけシフトして別設定された第2ダウンシフト制御用判定線とを設けるので、変速制御実施時に一時的なエンジン負荷低下で、変速制御実施中に、内燃機関の運転領域がパワーオン運転領域から該通常時判定線を超えてパワーオン運転領域側に変化しても、変速制御実施中には、通常時判定線(第1アップシフト制御用判定線又は第1ダウンシフト制御用判定線)よりも低負荷側に設けられた制御実施時判定線(第2アップシフト制御用判定線又は第2ダウンシフト制御用判定線)によって判定が行なわれるので、内燃機関の運転領域についての判定結果が、パワーオン運転領域から該通常時判定線を超えてパワーオン運転領域に変化しにくく、変速制御中に変速制御則が変更されるといった不具合が回避される。
【0062】
さらに、第1シフト量S1に比べて第2シフト量S2が大きく設定されることになり、アップシフト時のヒステリシスに比べてダウンシフト時のヒステリシスが大きく設定されているので、第1ダウンシフト制御用判定線に基づいてパワーオンと判定された場合には、変速制御実施中の一時的なエンジン負荷低下が著しくなっても、内燃機関の運転領域についての判定結果が、パワーオン運転領域から通常時判定線を超えてパワーオフ運転領域に変化しにくくなるため、ダウンシフト制御時により一層生じ易い変速制御中における変速制御則の変更についても十分に回避できる。例えば図2(c)に示すように、変速制御実施中の一時的なエンジン負荷低下によって、エンジン状態が点P1の状態から点P2の状態へと大きく変化しても、変速制御則は変更されなくなり、安定した制御が行なわれる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、エンジンの負荷として、充填効率が用いられているがこれに限定されるものではなく、種々のエンジンの負荷パラメータを用いることができる。
【0064】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の自動変速機の制御装置によれば、内燃機関がパワーオンとパワーオフとの境界付近の運転状態にありパワーオン,オフを確実に判定できないときには、アップシフト制御では、判定線を比較的低めに設定することにより、パワーオン時のアップシフト制御則にしたがって、内燃機関の吹き上がりを防止するように変速制御を行ない、円滑な変速処理が実現可能になり、ダウンシフト制御では、判定線を比較的高めに設定することにより、パワーオフ時のダウンシフト制御則にしたがって、自動変速機の入力軸回転速度を上昇させて確実に変速段切替を完了できるように変速制御を行なうことが可能になる。
【0065】
さらに、判定にヒステリシスを加えるようにアップシフト制御用判定線及びダウンシフト制御用判定線を設定しているので、変速制御実施中に制御則が切り替わるような不具合が抑制され、安定した変速制御を実施できるようになる。特に、ダウンシフト制御用判定線を比較的高めに設定した場合、変速制御実施中における運転状態の変化が大きいため制御則が切り替わり易いが、ダウンシフト制御用判定線のヒステリシスを大きく取っているので、この場合にも変速制御実施中に制御則が切り替わるような不具合が抑制され、安定した変速制御を実施できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動変速機をそなえた車両の駆動系の構成図である。
【図2】本発明の一実施形態としての自動変速機の制御装置におけるパワーオンオフ判定に用いる判定マップを示す図であり、(a)はアップシフト時用判定マップを示し、(b)はパワーオフアップシフト制御ロジックを適用可能なエンジン運転領域を示し、(c)はダウンシフト時用判定マップを示し、(d)はパワーオフダウンシフト制御ロジックを適用可能なエンジン運転領域を示す。
【図3】本発明の一実施形態としての自動変速機の制御装置におけるパワーオンオフ判定に用いる充填効率を説明する図であり、(a)はエンジン回転速度及びスロットル開度に対する充填効率を示すグラフ、(b)はエンジン回転速度及び充填効率に対する平均有効圧を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態としての自動変速機の制御装置による変速制御に用いるシフトマップである。
【図5】本発明の一実施形態としての自動変速機の制御装置におけるパワーオンオフ判定を説明するフローチャートである。
【図6】従来のパワーオンオフ判定用の判定マップを示す図である。
【図7】本発明の案出過程で考えられたパワーオンオフ判定用の判定マップを示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
2 自動変速機
3 トルクコンバータ
4 変速機本体
5 油圧コントローラ
6 ECU(エンジン用電子制御ユニット)
7 変速制御手段としてのTCU(トランスミッション用電子制御ユニット)
7a 変速判定手段
7b パワーオンオフ判定手段
Claims (5)
- 内燃機関に連結され、該内燃機関のパワーオン状態とパワーオフ状態とにそれぞれ対応した変速制御則に従ってアップシフト制御或いはダウンシフト制御を行なう自動変速機の制御装置であって、
該内燃機関の負荷と回転速度とをパラメータとして規定される運転領域を、判定線を挟んで高負荷側のパワーオン運転領域と低負荷側のパワーオフ運転領域とに区分して、該負荷と該機関回転速度との検出情報から該内燃機関の運転状態が該パワーオン運転領域と該パワーオフ運転領域とのいずれであるかによってパワーオンオフを判定する判定手段と、
該判定手段の判定結果に応じた変速制御則で変速制御を行なう変速制御手段とをそなえ、
該判定手段で用いる該判定線は、アップシフト制御用判定線とダウンシフト制御用判定線とで別設定され、さらに、該アップシフト制御用判定線及び該ダウンシフト制御用判定線は、いずれも判定にヒステリシスを加えるように、パワーオン状態での該変速制御を実施している最中に用いる制御実施時判定線と、その他の状態で用いる通常時判定線とで別設定され、
該ダウンシフト制御用判定線と該アップシフト制御用判定線とで該ヒステリシスが異なる大きさに設定されている
ことを特徴とする、自動変速機の制御装置。 - パワーオン時のアップシフト制御則では、該内燃機関の吹け上がりを抑えるように変速制御が行なわれ、パワーオフ時のダウンシフト制御則では、該自動変速機の入力軸回転速度を上昇させて確実に変速段切替を完了できるように変速制御が行なわれる
ことを特徴とする、請求項1記載の自動変速機の制御装置。 - 該通常時判定線として、第1アップシフト制御用判定線と、該第1アップシフト制御用判定線よりも高負荷側に位置する第1ダウンシフト制御用判定線とが設けられるとともに、
該内燃機関がパワーオン状態であるとの判定により変速制御を実施している際に変速制御を安定させるために用いる該制御実施時判定線として、該第1アップシフト制御用判定線よりも低負荷側に第1シフト量分だけシフトして別設定された第2アップシフト制御用判定線と、該第1ダウンシフト制御用判定線よりも低負荷側に第2シフト量分だけシフトして別設定された第2ダウンシフト制御用判定線とが設けられ、
該第2シフト量が、該第1シフト量よりも大きく設定されている
ことを特徴とする、請求項2記載の自動変速機の制御装置。 - 該第1アップシフト制御用判定線は、想定される基準判定線に対して所定のマージン分だけ低負荷側に設けられ、
該第2アップシフト制御用判定線は、該第1アップシフト制御用判定線に対して該第1シフト量分だけ低負荷側に設けられ、
該第2ダウンシフト制御用判定線は、該基準判定線に対して所定のマージン分だけ高負荷側に設けられ、
該第1ダウンシフト制御用判定線は、該第2ダウンシフト制御用判定線に対して該第2シフト量分だけ高負荷側に設けられている
ことを特徴とする、請求項3記載の自動変速機の制御装置。 - 該内燃機関の負荷として、充填効率が用いられていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の自動変速機の制御装置。
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