JP4126530B2 - 収差補正素子、光ピックアップ装置及び記録再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回折レンズを有する収差補正素子、収差補正素子を備えた光ピックアップ装置、及びこの光ピックアップ装置を用いた記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、波長400nm程度の青紫色半導体レーザ光源と、開口数(NA)が0.85程度まで高められた対物レンズを用いた新しい高密度光ディスクシステムの研究・開発が進んでいる。一例として、開口数0.85、使用波長400nmの光ディスク(以下、本明細書では「高密度DVD」と呼ぶ。)では、DVD(開口数0.6、使用波長650nm、記憶容量4.7GB)と同程度の大きさで、20〜30GBの情報の記録が可能である。
【0003】
かかる高密度DVD用の光学系においては、従来のCDやDVDでは問題とならなかった、半導体レーザ光源の縦モードホップにより対物レンズで発生する色収差、および、様々な誤差要因による球面収差の変化、の2点が顕在化する。
【0004】
このうち、半導体レーザ光源の縦モードホップにより対物レンズで発生する色収差は、半導体レ一ザ光源の波長が400nm程度に短くなるために顕在化する問題である。光ディスクシステムにおいて、光源として用いられる半導体レーザは、温度変化や出力変化により発振される光のモードが飛び、瞬時的に波長が変化する。モードホップによる波長の変化は数nm程度と微少であるが、波長が400nm程度と短い青紫色半導体レーザを使用する場合は、モードホップによるわずかな波長変化であっても、対物レンズで発生する色収差は大きな量となる。これは、400nmの波長領域では、光学材料の分散が非常に大きくなるためである。したがって、青紫色半導体レーザを光源に使用する高密度DVDでは、対物レンズの色収差を補正しておく必要がある。
【0005】
高密度DVD用の対物レンズの色収差を補正するための素子としては、特開2001−256672公報に記載されている回折レンズが公知である。高密度DVD用の対物レンズの色収差を補正するには、大きな回折パワーが必要となることから、特開2001−256672公報に記載されている回折レンズの隣合う輪帯段差の間隔の最小値は、10μm程度と非常に小さく、かかる回折レンズをモールド成形で作製する場合に、輪帯段差の転写不良に起因して発生する位相不整合部分による光量損失の影響が大きくなり、十分な光利用効率が得られない恐れがある。
【0006】
また、球面収差の変化は、対物レンズのNAが、0.85程度まで高められたために顕在化する問題である。光ディスクシステムにおいて、球面収差は、光ディスクの保護層の厚みの誤差、2層ディスクの層間ジャンプ、対物レンズの製造誤差、対物レンズの温度変化、等の要因で発生し、その発生量は対物レンズのNAの4乗に比例して大きくなる。したがって、対物レンズのNAが0.85程度まで高められる高密度DVDでは、球面収差の変化を補正するための収差補正素子が必要である。このような収差補正素子としては、正レンズと負レンズとから構成され、正レンズと負レンズとの間隔をアクチュエータにより可変調整することで光ディスクの情報記録面に集光されたスポットの球面収差の変化を補正する収差補正素子が公知である(特開2000−131603号公報)。
【0007】
ところが、特開2000−131603号公報に記載の収差補正素子のように、比重の大きなガラスレンズで構成されていると、アクチュエータにかかる負担が増大するので、高速回転する光ディスクに追従して、情報記録面上のスポットの球面収差の変化を補正するためには、より高性能なアクチュエータが必要となり、光ピックアップ装置の製造コストが増大してしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、高密度DVD用の光ピックアップ装置において用いられる回折レンズを有する収差補正素子であって、対物レンズの色収差を十分に補正しつつも、回折レンズの隣合う輪帯段差の間隔が緩和され、輪帯段差の転写不良による光量損失が小さく抑えられた収差補正素子、および、この収差補正素子を備えた光ピックアップ装置であって、高速回転する光ディスクに追従して収差補正素子の構成レンズの間隔を可変調整するためのアクチュエータの負担を低減することで、製造コストを小さく抑えた光ピックアップ装置を提供することを目的とする。また、この光ピックアップ装置を備えた記録再生装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による収差補正素子は、500nm以下の波長の光を発生する光源と、前記光源から出射された光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させるための、像側開口数が0.8以上とされた対物レンズと、の間に配置される収差補正素子であって、前記収差補正素子は、少なくとも1つの光学面上に複数の同心状の輪帯段差からなる回折構造が形成された回折面を有する回折レンズと、相対的にアッベ数の大きい正レンズと相対的にアッベ数が小さい負レンズとが接合されたダブレットレンズと、からなる2群3枚構成を有し、次式(1)を満たすことを特徴とする。
【0010】
Pλ2>Pλ0>Pλ1 (1)
ただし、
Pλ0:所定の波長の光における、前記収差補正素子の近軸パワー(mm−1)
Pλ1:所定の波長の光より10nm短い波長における、前記収差補正素子の近軸パワー(mm−1)
Pλ2:所定の波長の光より10nm長い波長における、前記収差補正素子の近軸パワー(mm−1)
【0011】
本発明による収差補正素子は、収差補正素子の構成を、回折レンズと、相対的にアッベ数の大きい正レンズと相対的にアッベ数が小さい負レンズとが接合されたダブレットレンズと、を有する2群3枚構成とすることで、色収差の補正作用を、回折レンズと、ダブレットレンズとに振り分けた。これにより、回折レンズの回折パワーが小さくなり、隣合う輪帯段差の間隔が緩和され、輪帯段差の転写不良による光量損失を小さく抑えることができる。
【0012】
そして、本発明による収差補正素子の近軸パワーが、(1)式を満たすような波長依存性を有することで、色収差が残留した高NA対物レンズの色収差を良好に補正することができる。
【0013】
また、上記収差補正素子において回折レンズの輪帯段差の転写不良による光量損失を小さく抑えるためには、回折レンズの隣合う輪帯段差の間隔の最小値が(2)式を満たすのが好ましく、(3)式を満たすのがより好ましい。
ΛMIN>0.02mm (2)
ΛMIN>0.03mm (3)
ただし、
ΛMIN:前記回折レンズの前記回折構造の隣合う輪帯段差の光軸に垂直な方向の間隔の最小値
【0014】
さらに、回折レンズの輪帯段差の転写不良による光量損失を小さく抑えるためには、回折レンズの両面上に輪帯段差を形成して、回折パワーを2つの面に振り分けることで、1面あたりの回折パワーが小さくするのが好ましい。
【0015】
さらに、回折レンズの輪帯段差の転写不良による光量損失を小さく抑えるためには、各輪帯段差の光軸方向の段差量Δ(mm)を(4)式を満たすように決定するのが好ましい。
【0016】
Δ=m・λ/(Nλ−1) (4)
ただし、
λ:前記光源が発生する光の波長(mm)
Nλ:前記波長における前記回折レンズの屈折率
【0017】
(4)式は、各輪帯段差で発生する回折光のうち、mを2以上の整数として、m次の回折光の光量が他のいずれの次数の回折光の光量よりも大きくなるように、各輪帯段差の光軸方向の段差量を決定することを意味する。これにより、1次回折光が最大の光量を有するように段差量を決定する場合に比して、隣合う輪帯段差の間隔をm倍とすることができる。
【0018】
対物レンズの色収差を十分に補正しつつも、回折レンズの隣合う輪帯段差の間隔を緩和し、輪帯段差の転写不良による光量損失が小さく抑えるためには、ダブレットレンズの正レンズのアッベ数と、負レンズのアッベ数との差が(5)式を満たすことが好ましい。これにより、ダブレットレンズの色収差補正作用を十分大きくできるので、回折レンズの回折パワーが小さくて済み、隣合う輪帯段差の間隔を緩和できる。
【0019】
また、ダブレットレンズの正レンズの屈折率と、負レンズの屈折率との差が(6)式を満たすのが好ましい。これにより、接合面での光線の屈折が大きくなり過ぎないので、接合面での高次収差の発生を抑制でき、性能の良好な収差補正素子を得ることができる。
【0020】
νdP−νdN>15 (5)
|NλP−NλN│<0.1 (6)
ただし、
νdP:前記正レンズのd線のアッベ数
νdN:前記負レンズのd線のアッベ数
NλP:前記光源が発生する光の波長における前記正レンズの屈折率
NλN:前記光源が発生する光の波長における前記負レンズの屈折率
【0021】
また、本発明による収差補正素子の回折レンズは、モールド成形時の輸帯段差の転写性、および製造コストの観点から、プラスチックレンズであるのが好ましい。さらに、本発明による収差補正素子を備えた光ピックアップ装置において、収差補正素子の構成レンズの間隔をアクチュエータにより可変調整することで、光ディスクの情報記録面に集光されたスポットの球面収差の変化を補正する場合には、このプラスチックレンズを上記のアクチュエータにより光軸方向に変移させるようにすることで、アクチュエータの負担を低減できる。
【0022】
また、本発明による記録・再生装置は、上記光ピックアップ装置を搭載し、音声および/または画像の記録、および/または、音声および/または画像の再生が可能である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態に係る、集光光学系を含む光ピックアップ装置の構成を概略的に示す図である。図1の光ピックアップ装置1は、光源としての半導体レーザ2と、半導体レーザ2からの発散光束を平行光束に変換するコリメータ3と、収差補正素子4と、対物レンズ5と、を有している。
【0024】
半導体レーザ2は波長400nm程度の光を発生するGaN系青紫色レーザである。また、波長400nm程度の光を発生する光源としては上記のGaN系青紫色レーザのほかに、SHG青紫色レーザであってもよい。
【0025】
また、コリメータ3と対物レンズ5との間の平行光束中に配置された収差補正素子4は、両面に略同心円状の回折構造が形成された回折レンズ4aと、相対的にアッベ数の大きい正レンズと、相対的にアッベ数の小さい負レンズとが接合されたダブレットレンズ4bと、からなる2群3枚構成のビームエキスパンダであり、回折レンズ4aは、プラスチックレンズである。
【0026】
回折レンズ4aに形成された回折構造の隣合う輪帯段差の光軸方向に垂直な方向の間隔は、回折レンズ4aの有効径内で、その最小値が上述の(2)式を満たすように設定されているので、回折レンズ4aをモールド成形で作製する際の、輪帯段差の転写不良に起因して発生する光量損失の影響が小さく、十分な光利用効率を得ることができる。なお、本実施の形態では、回折レンズ4aの両面に回折構造を形成したが、一方の面だけに回折構造を形成しても良い。
【0027】
対物レンズ5は、収差補正素子4からの光束を高密度光ディスク6の保護層6aを介して情報記録面6b上に回折限界内で集光するレンズであって、保持部材5aにより一体とされた2枚のレンズ5c、5dから構成されており、少なくとも1つの非球面を有し、光ディスク6側の開口数は0.85とされている。また、対物レンズ5は、光軸に対し垂直に延びた面を持つフランジ部5bを有し、このフランジ部5bにより、対物レンズ5を光ピックアップ装置1に精度よく取り付けることができる。
【0028】
本実施の形態では、対物レンズ5は2群2枚構成のレンズとしたが、この形態に限られず、例えば、1群1枚構成の対物レンズとしても良い。
【0029】
半導体レーザ2から射出された発散光束は、コリメータ3を透過して平行光束となり、さらに、偏光ビームスプリッタ7、および1/4波長板8を経て円偏光となり、収差補正素子4を透過した後、対物レンズ5によって高密度光ディスク6の保護層6aを介して情報記録面6b上に形成されるスポットとなる。対物レンズ5は、その周辺に配置された2軸アクチュエータ9によってフォーカシング制御およびトラッキング制御される。
【0030】
情報記録面6bで情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズ5、収差補正素子4、および1/4波長板8を透過した後、偏光ビームスプリッタ7によって反射され、シリンドリカルレンズ10を経ることによって、収斂光束となるとともに、非点収差が与えられ、光検出器11に収束する。そして、光検出器11の出力信号を用いて高密度光ディスク6に記録された情報を読み取ることができる。
【0031】
本実施の形態において、収差補正素子4は、上述の(1)式を満たすような波長特性を有するので、半導体レーザ2から射出される光の瞬間的な波長変化に対して、対物レンズ5とは、逆符号で、かつその絶対値が略一致した軸上色収差を発生する。そのため、半導体レーザ2から出射された光束は、収差補正素子4と対物レンズ5とを通過することによって、半導体レーザ2から射出される光の波長が瞬間的に変化した場合でも、ほとんど軸上色収差なく情報記銀面6b上に集光される。
【0032】
さらに、収差補正素子4の回折レンズ4aは、1軸アクチュエータ12により、光軸方向に沿って変移可能となっており、情報記録面6b上に集光されたスポットの球面収差の変化を打ち消すことができるので、情報記録面6b上に集光されたスポットは常に球面収差が小さく抑えられた状態となる。
【0033】
また、図1に示したような光ピックアップ装置は、例えば、高密度DVDのような次世代の高密度記録媒体、CD、CD-R,CD-RW,CD-Video,CD-ROM、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RW、DVD+RW、MD等の光情報記録媒体に対してコンパチブルなプレーヤーまたはドライブ等、あるいはそれらを組み込んだAV機器、パソコン、その他の情報端末等の音声および/または画像の記録装置および/または再生装置に搭載することができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例における非球面は光軸方向をX軸、光軸に垂直な方向の高さをh、屈折面の曲率半径をrとするとき次の数1で表す。但し、κを円すい係数、A2iを非球面係数とする。
【0035】
【数1】
【0036】
また、本実施例の回折レンズに設けた輪帯状の回折構造は光路差関数Φbとして次の数2により表すことができる。ここで、nは該回折構造で発生する回折光のうち最大の回折光量を有する回折光の回折次数であり、hは光軸に垂直な高さであり、b2jは光路差関数の係数である。
【0037】
【数2】
【0038】
〈実施例1〉
【0039】
表1に実施例1の光学系に関するデータを示し、図2に光路図を示す。また、実施例1の光学系の諸元を以下に示す。
【0040】
対物レンズ:
設計波長:405nm、
焦点距離:1.765mm、
像側開口数:0.85、
入射光束径:φ3.00mm
【0041】
収差補正素子:
設計波長:405nm、
焦点距離:∞、
像側開口数:0、
入射光束径:φ2.97mm、
出射光束径:φ4.00mm
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1の光学系は、2群2枚構成のプラスチック対物レンズの光源側に、両面に回折構造が形成された回折レンズと、アッベ数が25.5の負レンズ(FD60;HOYA社製)とアッベ数が46.6の正レンズ(TAF5;HOYA社製)とを接合したダブレットレンズとからなる2群3枚構成の収差補正素子としてのビームエキスパンダを備える。なお、回折レンズは、プラスチックレンズとした。色収差の補正作用を、回折レンズと、ダブレットレンズとに振り分け、さらに、回折レンズの回折パワーを2つの面に振り分けることで、隣合う輪帯段差の最小値を表2に示すように、有効径内で0.03mmと緩和している。これにより、輪帯段差の転写不良による光量損失を小さく抑えることができる。
【0044】
【表2】
【0045】
また、上述の(5)、(6)式を満たすように、ダブレットレンズの正レンズと負レンズの材料を選択することで、ダブレットレンズによる色収差補正効果を十分に得るとともに、接合面における高次収差の発生を抑制した。図3は、実施例1の光学系の405±5nmにおける球面収差図および軸上色収差を示す図であり、波長に関わらず、結像位置がほとんど移動しないことを示している。
【0046】
図4は、実施例1の光学系の波長特性を示す図である。対物レンズの波長特性(図4において、「対物レンズ」に対応する)は、ビームエキスパンダ(図4において「対物レンズ+エキスパンダ」に対応する)により良好に補正されていることがわかる。なお、図4において、対物レンズは、波長405nmのベストフォーカス位置に固定されている。
【0047】
図5は、実施例1の光学系の球面収差補正特性を示す図である。光ディスクの保護層の厚さの誤差により発生する球面収差をビームエキスパンダの回折レンズを光軸方向に変移することで良好に補正している。図5において、「エキスパンダ間隔」は回折レンズとダブレットレンズとの光軸上の距離を表す。
【0048】
なお、表1のレンズデータにおいて、回折面係数は、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定されている。
【0049】
〈実施例2〉
【0050】
表3に実施例2の光学系に関するデータを示し、図6に光路図を示す。また、実施例2の光学系の諸元を以下に示す。
【0051】
対物レンズ:
設計波長:405nm、
焦点距離:1.765mm、
像側開口数:0.85、
入射光束径:φ3.00mm
【0052】
収差補正素子:
設計波長:405nm、
焦点距離:∞、
像側開口数:0、
入射光束径:φ2.97mm、
出射光束径:φ4.00mm
【0053】
【表3】
【0054】
実施例2の光学系は、1群1枚構成のプラスチック対物レンズの光源側に、アッベ数が46.6の正レンズ(TAF5;HOYA社製)と、アッベ数が25.5の負レンズ(FD60;HOYA社製)とを接合したダブレットレンズと、両面に回折構造が形成された回折レンズと、からなる2群3枚構成の収差補正素子としてのビームエキスパンダを備える。なお、回折レンズは、プラスチックレンズとした。色収差の補正作用を、回折レンズと、ダブレットレンズとに振り分け、さらに、回折レンズの回折パワーを2つの面に振り分けることで、隣合う輪帯段差の最小値を表4に示すように、有効径内で0.05mmと緩和している。これにより、輪帯段差の転写不良による光量損失を小さく抑えることができる。
【0055】
【表4】
【0056】
また、上述の(5)、(6)式を満たすように、ダブレットレンズの正レンズと負レンズの材料を選択することで、ダブレットレンズによる色収差補正効果を十分に得るとともに、接合面における高次収差の発生を抑制した。図7は、実施例2の光学系の405±5nmにおける球面収差図および軸上色収差を示す図であり、波長に関わらず、結像位置がほとんど移動しないことを示している。
【0057】
図8は、実施例2の光学系の波長特性を示す図である。対物レンズの波長特性(図8において、「対物レンズ」に対応する)は、ビームエキスパンダ(図8において「対物レンズ+エキスパンダ」に対応する)により良好に補正されていることがわかる。なお、図8において、対物レンズは、波長405nmのベストフォーカス位置に固定されている。
【0058】
図9は、実施例2の光学系の球面収差補正特性を示す図である。温度変化(実施例2の光学系の設計温度は25℃である)に伴う、対物レンズの屈折率変化により発生する球面収差をビームエキスパンダの回折レンズを光軸方向に変移することで良好に補正している。図9において、「エキスパンダ間隔」は回折レンズとダブレットレンズとの光軸上の距離を表す。また、図9において、球面収差を算出する際には、温度変化に伴うプラスチックレンズ(実施例2の光学系においては、回折レンズと対物レンズである)の屈折率変化(その変化率は、−10×10−5/degである)と、半導体レーザ光源の波長変化(その変化率は、+0.05nm/degである)とを考慮している。
【0059】
なお、表3のレンズデータにおいて、回折面係数は、1次回折光が最大の回折光量を有するように決定されている。
【0060】
表1及び表3のレンズデータにおいて、r(mm)は曲率半径、d(mm)は面間隔、N404、N405、N406はそれぞれ、波長404nm、405nm、406nmにおける屈折率を表す。
【0061】
上述の表または図では、10のべき乗の表現にE(またはe)を用いて、例えば、E−02(=10−2)のように表す場合がある。
【0062】
本明細書において、回折面、あるいは、回折構造が形成された(光学)面とは、光学素子の表面、例えばレンズの表面に、レリーフを設けて、入射光束を回折させる作用を持たせる面のことをいい、同一光学面に回折を生じる領域と生じない領域がある場合は、回折を生じる領域をいう。また、回折構造または回折パターンとは、この回折を生じる領域のことをいう。レリーフの形状としては、例えば、光学素子の表面に、光軸を中心として略同心円状の輪帯として形成され、光軸を含む平面でその断面をみれば、各輪帯は鋸歯状、あるいは階段状のような形状が知られているが、そのような形状を含むものである。
【0063】
また、本明細書において、情報の記録および再生とは、上記のような光情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録すること、情報記録面上に記録された情報を再生することをいう。本発明の集光光学系は、記録だけあるいは再生だけを行うために用いられるものであってもよいし、記録および再生の両方を行うために用いられるものであってもよい。また、ある光情報記録媒体に対しては記録を行い、別の光情報記録媒体に対しては再生を行うために用いられるものであってもよいし、ある光情報記録媒体に対しては記録または再生を行い、別の光情報記録媒体に対しては記録および再生を行うために用いられるものであってもよい。なお、ここでいう再生とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、高密度DVDのような高密度光記録媒体用の光ピックアップ装置において対物レンズの色収差を十分に補正しつつ、回折レンズの隣合う輪帯段差の間隔が緩和され、輪帯段差の転写不良による光量損失を小さく抑えることができる収差補正素子を提供できる。
【0065】
また、この収差補正素子を備える光ピックアップ装置であって、高速回転する光ディスクに追従して収差補正素子の構成レンズの間隔を可変調整するためのアクチュエータの負担を低減することで、製造コストを小さく抑えることができる光ピックアップ装置、及びこの光ピックアップ装置を用いた記録・再生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態による光ピックアップ装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】実施例1の光学系の光路図である。
【図3】実施例1の光学系の405±5nmにおける球面収差および軸上色収差を示す図である。
【図4】実施例1の光学系の波長特性を示す図である。
【図5】実施例1の光学系の球面収差補正特性を示す図である。
【図6】実施例2の光学系の光路図である。
【図7】実施例2の光学系の405±5nmにおける球面収差および軸上色収差を示す図である。
【図8】実施例2の光学系の波長特性を示す図である。
【図9】実施例2の光学系の球面収差補正特性を示す図である。
【符号の説明】
1 光ピックアップ装置
2 半導体レーザ
4 収差補正素子
4a 回折レンズ
4b ダブルレットレンズ
5 対物レンズ
6 高密度光ディスク
6a 保護層
6b 情報記録面
9 2軸アクチュエータ
11 光検出器
12 1軸アクチュエータ
Claims (8)
- 500nm以下の波長の光を発生する光源と、前記光源から出射された光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させるための、像側開口数が0.8以上とされた対物レンズと、の間に配置される収差補正素子であって、
前記収差補正素子は、少なくとも1つの光学面上に複数の同心状の輪帯段差からなる回折構造が形成された回折面を有する回折レンズと、相対的にアッベ数の大きい正レンズと相対的にアッベ数が小さい負レンズとが接合されたダブレットレンズと、からなる2群3枚構成を有し、
次式を満たすことを特徴とする収差補正素子。
Pλ2>Pλ0>Pλ1
ただし、
Pλ0:所定の波長の光における、前記収差補正素子の近軸パワー(mm−1)
Pλ1:所定の波長の光より10nm短い波長における、前記収差補正素子の近軸パワー(mm−1)
Pλ2:所定の波長の光より10nm長い波長における、前記収差補正素子の近軸パワー(mm−1) - 次式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の収差補正素子。
ΛMIN>0.02mm (2)
ただし、
ΛMIN:前記回折レンズの前記回折構造の隣合う輪帯段差の光軸に垂直な方向の間隔の最小値 - 次式を満たすことを特徴とする請求項2に記載の収差補正素子。
ΛMIN>0.03mm (3) - 前記回折レンズの両面上に、複数の同心状の輪帯段差からなる回折構造が形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の収差補正素子。
- mを2以上の整数としたとき、次式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の収差補正素子。
Δ=m・λ/(Nλ−1)
ただし、
Δ:前記輪帯段差の光軸方向の段差量(mm)
λ:前記光源が発生する光の波長(mm)
Nλ:前記波長における前記回折レンズの屈折率 - 500nm以下の波長の光を発生する光源と、前記光源から出射された光束を光情報記録媒体の情報記録面に集光させるための、像側開口数が0.8以上とされた対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間に配置される収差補正素子と、を備えた光ピックアップ装置であって、
前記光ピックアップ装置は、前記収差補正素子として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の収差補正素子を有し、
前記回折レンズはプラスチックレンズであって、
前記プラスチックレンズの位置を光軸方向に可変調整するためのアクチュエータを有し、
前記プラスチックレンズの位置を光軸方向に可変調整することで、前記情報記録面に集光されたスポットの球面収差の変化を補正することを特徴とする光ピックアップ装置。 - 請求項7に記載の光ピックアップ装置を搭載したことを特徴とする音声および/または画像の記録、および/または、音声および/または画像の再生装置。
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