本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サブタンクの構成がより簡素化されるとともに、サブタンクの圧力変動の吸収機能がより向上される液体噴射装置を提供することにある。
本発明は、主走査方向に沿って往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載されると共に、複数のヘッド液体供給口と複数のノズル開口とを有する液体噴射ヘッドと、前記キャリッジに搭載されると共に、前記液体噴射ヘッドの複数のヘッド液体供給口にそれぞれ連通する複数の液体貯留室用開口部を有するサブタンク部材と、を備え、前記サブタンク部材は、単一の一体部材として構成されており、前記複数の液体貯留室用開口部の各々は、所定面積の弾性隔壁によって閉鎖されて、液体貯留室を形成しており、前記複数の液体貯留室用開口部は、前記サブタンク部材に設けられた複数の液体連通路にそれぞれ連通しており、前記複数の液体連通路は、サブタンク部材の外部に設けられた複数のサブタンク液体供給口にそれぞれ連通していることを特徴とする液体噴射装置である。
本発明によれば、複数の液体貯留室が単一のサブタンク部材に形成されるため、複数の液体貯留室を別々の部品として構成する必要がなく、構造簡素化にとって有効である。
この場合、前記複数の液体貯留室用開口部の全てが、前記サブタンク部材の一側に設けられていることが好ましい。更に、前記複数の液体貯留室用開口部の開口面は、共通の平坦面内にあることが特に好ましい。
そのような場合、前記複数の液体貯留室用開口部の全てが、共通の弾性隔壁によって閉鎖され得る。この場合、弾性隔壁の配置が1回の工程で完了するため、製造工程の簡素化が促進される。
前記複数の液体連通路の各々の一部は、前記サブタンク部材に形成された液体連通路用開口部と、当該液体連通路用開口部を閉鎖する弾性隔壁と、によって形成されてもよい。
また、前記複数の液体貯留室用開口部及び前記複数の液体連通路用開口部の全てが、共通の弾性隔壁によって閉鎖されていることが好ましい。この場合、複数の液体貯留室の形成と複数の液体連通路の形成とが、弾性隔壁の1回の配置工程で完了するため、製造工程の簡素化が促進される。
あるいは、前記複数の液体貯留室用開口部の全てが、共通の第1の弾性隔壁によって閉鎖されており、前記複数の液体連通路用開口部の全てが、共通の第2の弾性隔壁によって閉鎖されていてもよい。
また、前記複数のサブタンク液体供給口は、1カ所に集められて配置されていることが好ましい。この場合、液体供給路を形成する液体供給チューブのような部材が、1カ所に集められて配置されたサブタンク液体供給口に接続されるため、両者の接続に要するスペースを可及的に小さくできる。これにより、独立に配置された複数のサブタンクの各々に液体供給チューブを接続する従来技術と比較して、サブタンクの顕著な小型化が可能である。
また、前記複数の液体貯留室用開口部の各々を閉鎖する前記弾性隔壁は、主走査方向と平行に配置されていることが好ましい。この場合、サブタンク部材が主走査方向に進退動作をしたときに、液体貯留室内の液体の慣性質量による慣性力が、直接弾性隔壁に作用することがない。すなわち、弾性隔壁は、その弾性的特性により液体の圧力変動を吸収する機能を正常に維持することができる。特に、主走査範囲の端部で進行方向が反転する時、サブタンクが急減速をして、前記の慣性力が大きく作用する。しかしながら、このような状況にあっても、正常な弾性隔壁の機能が維持できる。さらに、弾性隔壁自体の耐久性を向上させる点でも有利である。
更に、前記複数の液体貯留室用開口部の各々を閉鎖する前記弾性隔壁は、略水平に配置されていることが好ましい。この場合、弾性隔壁に対する垂直方向の液体貯留室の深さを小さくすることができ、前記垂直方向のサブタンクの寸法をできるだけ短くすることができ、キャリッジ近傍に要する占有空間を小さくすることが可能となる。
あるいは、前記複数の液体貯留室用開口部は、貫通開口部である。この場合、1つの液体貯留室に対して2箇所に弾性隔壁が配置されるため、弾性隔壁の有効作動面積を可及的に大きくすることができ、それに伴って液体貯留室の容積を小さくすることが可能となる。したがって、サブタンクが小型化されて、スペースの縮小や原価低減に有効である。
この場合、前記複数の液体貯留室用開口部の一側開口面は、共通の第1の平坦面にあり、前記複数の液体貯留室用開口部の他側開口面は、共通の第2の平坦面にあり、前記第1の平坦面と前記第2の平坦面とは平行であることが好ましい。
そのような場合、前記複数の液体貯留室用開口部の一側開口面は、共通の第1の弾性隔壁によって閉鎖され、前記複数の液体貯留室用開口部の他側開口面は、共通の第2の弾性隔壁によって閉鎖され得る。この場合、弾性隔壁の配置が両面各1回の工程で完了するため、製造工程の簡素化が促進される。
あるいは、本発明は、主走査方向に沿って往復移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載されると共に、複数のヘッド液体供給口と複数のノズル開口とを有する液体噴射ヘッドと、前記キャリッジに搭載されると共に、前記液体噴射ヘッドの複数のヘッド液体供給口にそれぞれ連通する複数の液体貯留室用開口部を有するサブタンク部材と、を備え、前記複数の液体貯留室用開口部の各々は、所定面積の弾性隔壁によって閉鎖されて、液体貯留室を形成しており、前記複数の液体貯留室用開口部は、前記サブタンク部材に設けられた複数の液体連通路にそれぞれ連通しており、前記複数の液体連通路は、サブタンク部材の外部に設けられた複数のサブタンク液体供給口にそれぞれ連通しており、前記複数のサブタンク液体供給口は、1カ所に集められて配置されていることを特徴とする液体噴射装置である。
本発明によれば、液体供給路を形成する液体供給チューブのような部材が、1カ所に集められて配置されたサブタンク液体供給口に接続されるため、両者の接続に要するスペースを可及的に小さくできる。これにより、独立に配置された複数のサブタンクの各々に液体供給チューブを接続する従来技術と比較して、サブタンクの顕著な小型化が可能である。
前記弾性隔壁は、例えば、合成樹脂製フィルムによって構成されている。合成樹脂製フィルムは、例えば、ポリフェニレンサルファイドフィルムまたはポリイミドフィルムである。これらのフィルムは、液体に対する十分な化学的耐久性と、液体の圧力変動に適合するコンプライアンス機能と、を備える。
また、本発明は、主走査方向に沿って往復移動するキャリッジに搭載されるサブタンク部材であって、単一の一体部材として構成され、液体噴射ヘッドの複数のヘッド液体供給口にそれぞれ連通する複数の液体貯留室用開口部と、前記複数の液体貯留室用開口部にそれぞれ連通する複数の液体連通路と、前記複数の液体連通路にそれぞれ連通する複数のサブタンク液体供給口と、を備え、前記複数の液体貯留室用開口部の各々は、所定面積の弾性隔壁によって閉鎖されて、液体貯留室を形成していることを特徴とするサブタンク部材である。
あるいは、本発明は、主走査方向に沿って往復移動するキャリッジに搭載されるサブタンク部材であって、液体噴射ヘッドの複数のヘッド液体供給口にそれぞれ連通する複数の液体貯留室用開口部と、前記複数の液体貯留室用開口部にそれぞれ連通する複数の液体連通路と、前記複数の液体連通路にそれぞれ連通する複数のサブタンク液体供給口と、を備え、前記複数の液体貯留室用開口部の各々は、所定面積の弾性隔壁によって閉鎖されて、液体貯留室を形成しており、前記複数のサブタンク液体供給口は、1カ所に集められて配置されていることを特徴とするサブタンク部材である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態としてのインクジェット式記録装置であるインクジェットプリンタ1(以下、単にプリンタ1と称する。)の概略平面図である。図2(A)は、キャリッジ2を斜め上側から見た斜視図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B線断面図である。図3(A)は、キャリッジ2およびサブタンク3の縦断面図である。図3(B)は、図3(A)のB−B線断面図であり、図3(C)は、図3(A)のC−C線断面図である。
プリンタ1は、図1に示すように、サブタンク3及び記録ヘッド4が搭載されたキャリッジ2と、プリンタ本体5と、から主に構成されている。プリンタ本体5には、キャリッジ2を主走査方向に沿って往復移動させるヘッド走査機構と、記録紙6を紙送り方向に送り出す紙送り機構と、インク増粘により低下し得る記録ヘッド4の機能を回復させる回復機構と、記録ヘッド4に供給するインクを貯留したインクタンク20A、20B、20C、20D(インク供給源の一種)と、が設けられている。
キャリッジ2は、図2(A)に示すように、略長方形の板状に形成された取付ベース10を有している。取付ベース10の上面側にサブタンク3が設けられ、下面側に記録ヘッド4が設けられている。より詳細には、取付ベース10の上面にサブタンク3を取付けるための結合枠部11が設けられており、この結合枠部11の内側にインク供給針12A、12B、12C、12D及び針部フィルタ13(図3参照)が取付けられている。インク供給針12A、12B、12C、12D及び針部フィルタ13は、それぞれ、サブタンク3に形成された複数のインク貯留室8A、8B、8C、8Dに対応して設けられている。また、取付ベース10の下面には、図3に示すように、記録ヘッド4が直接接合されている。結合枠部11の下方側には、流路形成部14が形成されている。流路形成部14の内部にはインク導入路15が形成され、当該インク導入路15は、取付ベース10に設けられたインク導入路15’と連通している。これにより、インク導入路15、15’は、針部フィルタ13から記録ヘッド4まで延びている。
ヘッド走査機構は、ハウジングの左右方向に架設されたガイド部材9と、ハウジングの一方側に設けられたパルスモータ16と、パルスモータ16の回転軸に接続されて回転駆動される駆動プーリー17と、ハウジングの他方側に取付けられた遊転プーリー18と、駆動プーリー17及び遊転プーリー18の間に掛け渡されると共にキャリッジ2に結合されたタイミングベルト19と、パルスモータ16の回転を制御する制御部(図示せず)と、から構成されている。これにより、パルスモータ16を作動させることによって、キャリッジ2、即ち、記録ヘッド4を、記録紙6の幅方向である主走査方向に往復移動させることができる。
なお、本実施の形態では、4種類のインクが使用される。このため、サブタンク3には、4つのインク貯留室8A、8B、8C、8Dが主走査方向に並んで配設されている。インク貯留室の数は4つに限られない。6色のインクが使用される場合には、6つのインク貯留室が配設される。
図1に示すように、プリンタ本体5の横端部に、4色分の4つのインクタンク(またはインクカートリッジ)20A、20B、20C、20Dが配置されている。ここから延びるインク供給チューブ21A、21B、21C、21Dが、サブタンク3の分岐部(後述する)に接続されている。サブタンク3は、インクタンクが交換される時でも、そのまま継続して使用される。
サブタンク3は、本実施の形態では、単一のサブタンク形成部材(サブタンク部材)22と、後述する弾性シート31と、によって構成されている。例えば、サブタンク形成部材22は、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂材料からインジェクション成型で作られ得る。
サブタンク形成部材22は、全体に分厚い板状の形態を有している。4つの有底の凹形状のインク貯留室用開口部(開口穴)が、主走査方向に並んだ状態でサブタンク形成部材22に形成されている。インク貯留室用開口部は、弾性シート31によって封止されて、インク貯留室8A、8B、8C、8Dを形成している。
サブタンク形成部材22の4つのインク貯留室用開口部の開口面は、共通の平坦な面23内にある。また、本実施の形態のサブタンク形成部材22には、この端面23において開口する4つの連通路用開口部が形成されている。4つの連通路用開口部は、平行な溝状に形成されており、各連通路用開口部は各インク貯留室用開口部と連続している。
サブタンク形成部材22の一部は、略直方体の形状を有する分岐部25を構成している。前記分岐部25には、接続ジョイント形成面26が形成されている。接続ジョイント形成面26には、インク供給チューブ21A、21B、21C、21Dがそれぞれ接続されるパイプ状の接続ジョイント27A、27B、27C、27Dが、突出した状態で設けられている。本実施の形態では、連通路用開口部は分岐部25にまで延びており、前記面23は接続ジョイント形成面26とは異なった面である。
前記連通路用開口部は、弾性シート31によって封止されて、分岐部25からインク貯留室8A、8B、8C、8Dにインクをそれぞれ供給する連通路29A、29B、29C、29Dを形成している。各連通路29A、29B、29C、29Dは、分岐部25の内部に形成された内部連通路30A、30B、30C、30Dを介して、各接続ジョイント27A、27B、27C、27Dに連通している。
前記端面23に、弾性隔壁である弾性シート31が接着剤を用いて接合されている。これにより、各インク貯留室8A、8B、8C、8Dは、圧力変動吸収機能を有している。弾性シート31は、ポリフェニレンサルファイドフィルムまたはポリイミドフィルム等の合成樹脂製フィルムで構成される。
本実施の形態では、前記端面23がキャリッジ2の主走査方向と略平行となるように調整されている。したがって、前記面23に接合された弾性シート31も、キャリッジ2の主走査方向と略平行になっている。
図2(A)及び図3(A)に示すように、サブタンク3の下面側には、各インク貯留室8A、8B、8C、8Dと連通する円筒状の針接続部32A、32B、32C、32Dがインク貯留室8A、8B、8C、8Dの直下にそれぞれ配置されている。サブタンク3がキャリッジ2に搭載されるとき、結合枠部11の各インク供給針12A、12B、12C、12Dが相対的に各針接続部32A、32B、32C、32Dの内部に進入する。これにより、各インク貯留室8A、8B、8C、8Dは、各インク供給針12A、12B、12D、12D、インク導入路15、15’等を介して、記録ヘッド4のノズル開口と連通状態となる。なお、図3において、33A、33B、33C、33Dはゴム製のシール部材である。
前記のように、4つの針接続部32A、32B、32C、32Dは、シール部材33A、33B、33C、33Dを介して一斉にインク供給針12A、12B、12C、12Dと嵌め合わされる。このため、サブタンク3とキャリッジ2との結合剛性は高く、サブタンク3は安定に固定され得る。
前記のように、複数のインク貯留室8A、8B、8C、8Dは、1つのサブタンク形成部材22と弾性シート31とから形成されている。従って、複数のインク貯留室8A、8B、8C、8Dを別々の部品として構成する従来技術と比べて、構造簡素化の点で有利である。さらに、連通路29A、29B、29C、29D、30A、30B、30C、30Dも単一のサブタンク形成部材22に形成されているので、インクの円滑な流通の点でも好適である。
また、1つのサブタンク形成部材22に形成された複数のインク貯留室用開口部が、前記端面23に接合された弾性シート31と共にインク貯留室8A、8B、8C、8Dを形成するので、インク貯留室8A、8B、8C、8Dの構成が著しく簡素化される。また、1枚の弾性シート31を前記端面23に接合することにより、複数のインク貯留室8A、8B、8C、8Dを1回の弾性シート31の接合で形成することができるので、製造工程の簡素化が促進される。
また、単一の前記端面23に連通路用開口部が開口しているので、連通路用開口部は簡単に形成できる。そして、前記連通路29A、29B、29C、29Dが、連通路用開口部によって溝状の形態に容易に形成される。特に、前記端面23は1枚の弾性シート31で覆われるので、連通路29A、29B、29C、29Dの形成と、各インク貯留室8A、8B、8C、8Dの形成とが、一時に達成され、製作工程の低減が得られる。特に、前記弾性シート31が1枚のフィルム部材で構成される場合、弾性シート31の接合工程の簡素化が更に促進される。
また、各インク貯留室8A、8B、8C、8Dへのインク供給の基点になる分岐部25がサブタンク形成部材22の一部によって構成されているので、複数種類のインクの各インク貯留室8A、8B、8C、8Dへの分配が、簡素化された構造によって実現できる。また、分岐部25は、小型化された形態でサブタンク3の本体から突出することができるので、サブタンク3をコンパクトに形成するのに好都合である。
また、インク供給チューブ21A、21B、21C、21Dは、接続ジョイント形成面26に集約して配置された接続ジョイント27A、27B、27C、27Dに集約された状態で結合される。このため、インク供給チューブ21A、21B、21C、21Dと分岐部25との接続に要するスペースが可及的に少なくなる。すなわち、従来技術における独立に配置された複数のサブタンクへの個々の配管が回避されて、サブタンク3がよりコンパクトに配置され得る。
前記連通路用開口部が、(接続ジョイント形成面26以外の)分岐部25まで延びているので、前記連通路29A、29B、29C、29Dは、分岐部25からインク貯留室8A、8B、8C、8Dへの一貫した流路構成となっており、また、連通路29A、29B、29C、29Dの構成も簡素である。
また、前記弾性シート31が前記主走査方向と略平行となるように、前記サブタンク3の搭載姿勢が設定されている。このため、サブタンク3が主走査方向に進退動作をしたときに、インク貯留室8A、8B、8C、8D内のインクの慣性質量による慣性力は、直接弾性シート31に作用することがない。すなわち、弾性シート31は、その弾性的特性によりインクの圧力変動を吸収する機能を正常に維持することができる。特に、主走査範囲の端部で進行方向が反転する時、サブタンク3が急減速して、前記の慣性力が大きく作用するのであるが、このような状況にあっても、正常な弾性シート31の機能が維持できる。さらに、弾性シート31自体の耐久性を向上させる点でも有利である。
次に、図4は、本発明の第2の実施の形態のインクジェット式記録装置のキャリッジの斜視図である。
本実施の形態では、前記端面23がほぼ水平となるようにサブタンク3の搭載姿勢が設定されている。そして、円筒状の針接続部は、図示されていないが、弾性シート31と対向する側に配置されている。それ以外は、前記第1の実施の形態と略同様であり、同様の部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
前記構成を採用すれば、弾性シート31に対する垂直方向のインク貯留室8A、8B、8C、8Dの深さを小さくすることができ、前記垂直方向(鉛直方向)のサブタンク3の寸法を短くすることができる。これにより、キャリッジ2近傍に要する占有空間を小さくすることが可能となる。
次に、図5(A)乃至図5(C)は、本発明の第3の実施の形態におけるサブタンクを示す図である。
本実施の形態では、端面23とは反対側でも、インク貯留室用開口部が平坦な裏端面34内において開口している。そして、この裏端面34に、第2の弾性シート31’が接合されている。それ以外は、前記第1の実施の形態と略同様であり、同様の部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
前記構成では、各インク貯留室8A、8B、8C、8Dが2つの面において弾性シート31、31’を有することができる。これにより、弾性シート31の有効作動面積を可及的に大きくすることができ、それに伴って各インク貯留室8A、8B、8C、8Dの容積を小さくすることが可能となる。したがって、サブタンク3の更なる小型化が可能となって、スペースの縮小やコスト低減に有効である。
次に、図6(A)及び図6(B)は、本発明の第4の実施におけるサブタンクを示す図である。
本実施の形態では、端面23とは異なったサブタンク形成部材22の上部35に、溝状の平行な連通路用開口部が形成されている。図6(B)に示すように、溝状の連通路用開口部には、封止部材である第3の弾性シート31”が接着されて、連通路29A’、29B’、29C’、29D’が形成されている。それ以外は、前記第1の実施の形態と略同様であり、同様の部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
前記構成では、端面23に連通路用開口部を設ける必要がないので、端面23の面積を小さくすることができる。それに伴って、サブタンク3の縦方向及び横方向等の寸法が短縮され、サブタンク3が小型化され得る。とくに、このような寸法短縮を装置本体の高さ方向において有効に活用すれば、装置本体の高さを縮小するのに有効である。また、第3の弾性シート31”は、弾性シート31と共通の材料を用いることが好ましい。
その他、図6(B)に対応する図7に示すように、上部35の肉厚を利用して、例えば断面円形の連通路29A”、29B”、29C”、29D”が形成されてもよい。
次に、図8は、本発明の第5の実施の形態におけるサブタンクの斜視図である。
本実施の形態では、4つのインク貯留室8A、8B、8C、8Dが2×2の行列型に配列されている。それ以外は、前記第1の実施の形態と略同様であり、同様の部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
前記構成を採用すれば、平面的に見たサブタンク3の寸法が縦・横いずれにおいてもキャリッジ2の大きさの範囲内に収まることができ、サブタンク3をコンパクトにキャリッジ2とユニット化することができる。
さて、本発明は、前記のように、単一のサブタンク形成部材22を用いることを特徴としている。しかし、これとは別に、サブタンクのインク供給口(接続ジョイント)が集められて配置された構造も本発明の特徴である。
図9は、後者の特徴に関する本発明の第6の実施の形態のキャリッジを示す斜視図である。
本実施の形態では、前述のサブタンク形成部材22が複数の部材で構成されている。すなわち、各サブタンク形成部材22A、22B、22C、22Dに1つずつインク貯留室8A、8B、8C、8Dが設けられ、サブタンク形成部材22A、22B、22C、22Dが接着剤で一体化されている。さらに、連通路用開口部が形成された連通路部材22Eも別部材で構成され、この連通路部材22Eの一部が分岐部25となっている。この連通路部材22Eとサブタンク形成部材22A、22B、22C、22Dとは、接着等で一体化されている。
前記構成によっても、前記第1の実施の形態と略同様の作用効果が得られる。また、必要なインク種類数に応じてインク貯留室8A、8B、8C、8Dを自由に組み合わせることができるため、サブタンク3の設計を簡単に変更することができる。さらに、サブタンク形成部材22A、22B、22C、22Dや連通路部材22Eをあらかじめ製作しておき、その時々の要請に応じて種々な仕様のサブタンク3を提供することができるので、成型金型の種類を削減したりして、コスト低減が促進される。
なお、1つのサブタンク形成部材に2つのインク貯留室が形成されてもよいことは勿論である。
以上の各実施の形態において、前記弾性シート31、31’、31”は、ポリフェニレンサルファイドフィルムまたはポリイミドフィルム等の合成樹脂製フィルムから構成され得る。これらのフィルムは、インクに対する十分な化学的耐久性と、インクの圧力変動に適合するコンプライアンス機能と、を有する。弾性シートの厚さは、インク貯留室8A、8B、8C、8Dの圧力変動を良好に対処するために、10μm以下、好ましくは5μm以下である。
また、前記弾性シート31、31’、31”は、ポリエチレン等のヤング率の比較的小さい合成樹脂製フィルムから構成されてもよい。この場合は、前記ポリイミドフィルム等と比べ、厚みを2倍にしても同等の効果がえられる。更に、ポリエチレンフィルムはポリエチレン製サブタンクに熱溶着で接合することができるので、製造上の簡素化も図れる。
その他、前記弾性シート31、31’、31”は、ブチルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、エラストマ等のゴム部材から構成されてもよく、厚み0.4mm程度で十分な効果がえられる。このようなゴム部材が使用される場合、圧力ダンパとしての弾性的な動作性が合成樹脂製シートよりも高い。すなわち、すぐれたダンパ機能がえられる。
また、以上の各実施の形態において、弾性シート31のインク貯留室8A、8B、8C、8Dの各々を形成する各部分の中央には、硬質材料により形成された受圧板が取り付けられていてもよい。この受圧板は、印刷動作等によりキャリッジ2が動いた場合に弾性シート31を動かしてインク貯留室内の圧力に変化をおよぼさないように、軽量であることが必要である。例えば、受圧板は、ポリエチレンやポリプロピレンといったプラスチック材料で形成されることが望ましい。
受圧板は、前記弾性シート31に対して、熱溶着により予め取り付けられ得る。あるいは、接着剤、両面接着テープ等により取り付けられてもよい。インク貯留室が後述するようにごく薄い円筒状の空間を形成する場合においては、受圧板は円板状であって、インク貯留室に対して同心円状に配置されることが望ましい。
図10は、サブタンク形成部材のインク連通路及びインク貯留室に自己封止弁機構が設けられた場合を示す断面図である。この場合、インク連通路129は、図10に示されたように、小容積の円筒状空間を有している。バネ受け座133が、サブタンク形成部材122の側面において嵌め込まれ、インク連通路129は、バネ受け座133と弾性シート131’とによって封止されている。弾性シート131’は、サブタンク形成部材122に対して熱溶着されている。
また、サブタンク形成部材122は、インク連通路129とインク貯留室108とを区画する隔壁135を有している。この隔壁135には、後述する可動バルブ138を摺動可能に支持する支持孔136が形成されている。前記可動バルブ138は、板状部材138aと、板状部材138aの中央部に一体に成形されて前記支持孔136内を摺動移動するロッド部材138bと、により構成されている。
さらに、板状部材138aとバネ受け座133との間には、コイル状のシールバネ139が配置されている。このシールバネ139の作用により、板状部材138aは隔壁135側に僅かな押圧力で付勢されている。一方、隔壁135には、支持孔136を囲むように円環状に形成されたゴム製のシール部材141が取り付けられている。したがって、可動バルブ138における板状部材138aは、シールバネ139の付勢力により、シール部材141に当接するようになっている。例えば、シール部材141はOリング等である。
隔壁135に形成された支持孔136は、図11に拡大して示したように、間欠的な切欠き孔142aを有している。これにより、前記インク連通路129からインク貯留室108に至るインク連通路が確保されている。そして、図11には示されていないが、シール部材141が、4つの切欠き孔142aの外側を囲むように、隔壁135に設けられている。
一方、インク貯留室108は、円筒状の凹部(インク貯留室用開口部)と弾性シート131とにより構成されている。凹部が形成された端面に、弾性シート131が熱溶着手段により密着状態に取り付けられている。そして、前記したように、弾性シート131の外側に、円板状の受圧板123が同心に取り付けられている。
また、インク貯留室108内には、コイル状の負圧保持バネ140が、可動バルブ138を構成するロッド部材138bを取り巻くように配置されている。負圧保持バネ140の一端は、隔壁135に形成された円環状の凸部によって保持されており、負圧保持バネ140の他端は、弾性シート131に固定されて、弾性シート131を引張っている。そして、負圧保持バネ140は、受圧板123がインク貯留室108を圧縮するように移動する時に、インク貯留室108の容積を拡張する方向に弾性シート131を付勢する。
図10に示す実施の形態において、負圧保持バネ140のコイル径は、シールバネ139のコイル径とほぼ同寸法であり、比較的小径である。好ましくは、負圧保持バネ140は、弾性シート131を介して、受圧板123のほぼ中央部に当接するようになっている。
一方、インク貯留室108からのインク出口145が、インク貯留室108の最上部に形成されている。そして、インク貯留室108のインク出口145に連通するインク導出溝が、インク貯留室108を形成する凹部に沿って円弧状に形成されている。なお、インク貯留室108のインク出口145とこれに連通するインク導出溝は、サブタンク形成部材122に形成されており、前記弾性シート131によって封止されている。
そして、インク導出溝により形成されるインク連通路は、サブタンク形成部材122の内部インク連通路を介して、記録ヘッド4のノズル開口と連通している。本実施の形態では、インク貯留室108のインク出口145が重力方向に見て最上部に形成されているので、例えば記録装置に初めてインクが導入される初期インク充填時において、インク貯留室108内に空気(気泡)を残さずにインクを充填させることができる。
ここで、非印刷状態、すなわち、インクが消費されない状態においては、シールバネ139によるバネ荷重W1が板状部材138aに加わっており、また、板状部材138aにはインク連通路129に供給されるインクの加圧力P1も加わっている。これにより、板状部材138aは、図10(A)に示されたように、シール部材141に当接して、閉弁状態(自己封止状態)を形成する。
一方、印刷状態、すなわち、インクが消費される状態においては、インク貯留室108のインクの減少に伴い、弾性シート131がサブタンク形成部材122の側に変位する。この時、弾性シート131に取り付けられた受圧板123は、インク貯留室108の容積を縮小する方向に移動し、コイル状の負圧保持バネ140を圧縮する。また、受圧板123の中央部が弾性シート131を介してロッド部材138bの端部に当接する。
ここで、負圧保持バネ140のバネ荷重をW2とし、弾性シート131自身の変位反力をWdとし、インクが消費されることによるインク貯留室108内の負圧をP2とする。この時、P2>W1+P1+Wd+W2であれば、弾性シート131がロッド部材138bを押圧し、これにより、板状部材138aとシール部材141との当接が解かれ、図10(B)に示されたように、開弁状態が形成される。
これにより、インク連通路129内におけるインクが、切欠き孔142aを介してインク貯留室108内に補給される。インク貯留室108内へのインクの流入により、インク貯留室108内の負圧が解消される。これに伴い、可動バルブ138が移動して、図10(A)に示された閉弁状態が再び形成され、インク連通路129からインク貯留室108へのインクの補給が停止される。
なお、可動バルブ138の開閉の動作について、図10(B)は極端に誇張した状態を示している。現実には、弾性シート131は可動バルブ138を構成するロッド部材138bの端部に当接しつつ均衡状態を保ち、インクの消費にしたがってほんの僅かに開弁されるのみである。すなわち、インク貯留室108に対して、インクは逐次僅かずつ補給される。
なお、受圧板123は、弾性シート131の変位作用を当該受圧板123の全面積において受けることができる。したがって、弾性シート131の変位作用が確実に可動バルブ138に伝達され得る。これにより、可動バルブ138による開閉弁作用の信頼性を向上させることができる。
また、負圧保持バネ140は、弾性シート131に当接してインク貯留室108の容積を拡張する方向に受圧板123を付勢する。これにより、キャリッジの往復移動によって受圧板123が移動することが抑制され、可動バルブ138による開閉弁作用の誤動作が効果的に低減される。
負圧保持バネ140は、インクへの重力によりインク貯留室108の下方において弾性シート131が外側に膨出する作用も、効果的に抑制する。すなわち、負圧保持バネ140は、インク貯留室108を常に若干の負圧状態に維持する作用を有する。これにより、弾性シート131に取り付けられた受圧板123を、常に垂直状態に維持させることができ、可動バルブ138による開閉弁作用の誤動作が効果的に低減される。
さらに、インク貯留室108内にインクが補給された場合においても、負圧保持バネ140が拡張しつつインク貯留室108を若干の負圧状態に保つように作用する。このため、インク貯留室108内の圧力変動が低減され得る。これにより、記録ヘッド4のノズル開口からの正常なインク滴の吐出動作を保証することができる。
これに加えて、本実施の形態によると、インク貯留室108の負圧状態は、負圧保持バネ140のバネ荷重とシールバネ139のバネ荷重とが加わることにより、確保されるようになっている。換言すれば、バネ荷重を負圧保持バネ140とシールバネ139とに分割することができる。したがって、閉弁状態において可動バルブ138をシール部材141に当接させるためのシールバネ139のバネ荷重を、小さく選定することが可能となる。
したがって、エラストマー樹脂等によるシール部材141への当接圧を低減させることができ、これによりシール部材141の異常な変形を防止することができる。また、シール部材141に過大なバネ荷重が加わることを阻止することができるので、シール部材141を構成するエラストマー樹脂に含有される油脂等の不純物がインクに混入する等の問題を回避することができる。
一方、前記実施の形態においては、可動バルブ138が最大限に移動した状態おいて、負圧保持バネ140が更に圧縮可能なストロークを残すように、各寸法関係が設定されていることが望ましい。図12は、そのような寸法関係を説明するための図である。
図12では、可動バルブ138が最大限に移動した状態でのシールバネ139の密着高さがL1で示されており、当該状態における負圧保持バネ140の圧縮高さがL2で示されている。すなわち、シールバネ139がたとえ密着状態にまで圧縮された場合においても、負圧保持バネ140が密着されない状態を保つように寸法関係が設定される。換言すれば、シールバネ139および負圧保持バネ140として同一規格(寸法)のバネ部材がそれぞれ用いられる場合には、L1<L2の関係が設定される。図12に示す形態においては、インクは負圧保持バネ140の隙間を通ってインク貯留室108内に流れ込むため、もし負圧保持バネ140が密着してしまうと、インクの流路が塞がれて、インクの供給が行われなくなってしまう可能性がある。したがって、前記したようにL1<L2等を設定して、この問題を回避することが好ましい。
また、図13に示すように、負圧保持バネ140のコイル径を、図10に示した形態に比較して、より大きくしてもよい。この場合、負圧保持バネ140は、弾性シート131を介して、円板状に形成された受圧板123の周縁付近に当接するようになっている。
この構成によると、受圧板123は、その周縁付近で負圧保持バネ140によって当接される。このため、インクへの重力によりインク貯留室108の下方において弾性シート131が外側に膨出する作用が抑制され、受圧板123を常に垂直状態に維持させることができ、可動バルブ138による開閉弁作用の誤動作が効果的に低減される。
あるいは、図14に示すように、負圧保持バネとしてコイル径の小さな複数のコイルバネ140a、140bが利用されてもよい。この構成においても、インクへの重力によりインク貯留室108の下方において弾性シート131が外側に膨出する作用が抑制され、受圧板123を常に垂直状態に維持させることができ、可動バルブ138による開閉弁作用の誤動作が効果的に低減される。
なお、図14に示す実施の形態においては、2本のコイルバネ140a、140bが用いられているが、それ以上の数のコイルバネを利用することもできる。n本のコイルバネを利用する場合においては、負圧保持バネによるバネ荷重を前記したようにW2とする場合、1本あたりのコイルバネによるバネ荷重はW2/nに設定する必要がある。
更には、図15に示すように、負圧保持バネとして板バネ140Aが採用されてもよい。この板バネ140Aの両端部は、図15(B)に示すように、同方向に折り曲げ成形されて一対の脚部140d、140eを構成している。そして、その中央部には、切り起こし部140fが前記脚部の折り曲げ方向とは逆方向に形成されている。
前記した構成の板バネ140Aは、図15(A)に示すように、一方の脚部140dがインク貯留室108内においてサブタンク形成部材122に固定されている。また、切り起こし部140fを形成することに伴って穿設された開口に、可動バルブのロッド部材138bが挿入され、切り起こし部140fの先端部が、弾性シート131を介して受圧板123のほぼ中央部に当接するようになっている。
この構成においても、受圧板123の変位に対抗して、板バネ140Aがインク貯留室108の容積を拡張する方向に弾性シート131を付勢することができる。
なお、以上の説明はインクジェット記録装置についてなされているが、本発明は、広く液体噴射装置全般を対象としたものである。液体の例としては、インクの他に、グルー、マニキュア、回路形成のための導電性液体(液体金属)等が用いられ得る。更に、本発明は、液晶等の表示体におけるカラーフィルタの製造用装置、有機ELディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機噴射装置、等にも適用され得る。