JP4066832B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、環境保全若しくは省資源エネルギー化等の観点から、アイドリング時の燃料消費量及び排出ガスの低減などを図るため、車両が停止すると内燃機関(以下、「エンジン」ともいう。)を自動停止し、停止状態から発進指示があるとエンジンを自動的に再始動して車両を発進させるエンジン停止始動制御装置が知られている。この制御は、「アイドリングストップ」などとも呼ばれている。この種の車両の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
アイドリングストップを行わない通常の車両(以下、これを「通常車両」と呼ぶことがある。)の場合、車両の停止中においてもエンジンは所定のアイドリング回転数で動作する。即ち、エンジンを制御するECUは、車両の停止中であっても、エンジンがアイドリング回転数を維持するように必要な燃料噴射及び点火を行うよう制御している。しかし、アイドリングストップを自動的に行う場合、車両の停止中においては燃料噴射を停止し(燃料カット)、点火も停止する必要がある。このため、車両の停止状態、即ちアイドリングストップ時には、ECUは燃料噴射及び点火を停止させる信号を燃料噴射装置や点火装置へ供給する必要がある。上記の特許文献1に記載の車両では、アイドリングストップ時の燃料噴射や点火の制御信号も出力できるように、アイドリングストップ車両専用のECUを搭載している。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−304007号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
アイドリングストップ時の燃料噴射や点火の制御信号を生成するためには、上記特許文献1の車両などのように、アイドリングストップ車両専用のECUを開発する必要が生じる。また、そのようなアイドリングストップ車両専用のECUが故障した際には、アイドリングストップが実行不能となることにとどまらず、車両自体の通常の走行も不能となる恐れがある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、アイドリングストップ機能を有しない通常の車両に対して、容易かつ確実にアイドリングストップを実現することを可能とする内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの観点では、所定の停止条件が成立した場合に内燃機関を自動停止し、かつ、所定の始動条件が成立した場合に前記内燃機関を自動始動する内燃機関の制御装置において、前記内燃機関の電子制御ユニットは、前記内燃機関の自動停止及び自動始動のために要求される燃焼制御以外の燃焼制御を実行する主電子制御ユニットと、前記内燃機関の自動停止及び自動始動のために要求される燃焼制御を実行する副電子制御ユニットと、を備える。
【0008】
上記の内燃機関の制御装置は、例えば燃料噴射指示や点火指示などを供給して内燃機関の燃焼制御を行うための電子制御ユニットを備える。ここで、電子制御ユニットは、主電子制御ユニットと副電子制御ユニットとにより構成される。主電子制御ユニットは内燃機関の自動停止及び自動始動のために要求される燃焼制御以外の燃焼制御、即ち通常走行などに必要な燃焼制御を実行し、副電子制御ユニットは内燃機関の自動停止及び自動始動のために要求される燃焼制御を実行する。このように、電子制御ユニットを主電子制御ユニットと副電子制御ユニットで構成することにより、例えば主電子制御ユニットのみを有する通常車両に対して副電子制御ユニットを追加して、アイドリングストップにおける内燃機関の自動停止及び自動始動を実現することが可能となる。
【0009】
上記の内燃機関の制御装置の一態様では、前記副電子制御ユニットが正常に動作しない場合には、前記主電子制御ユニットが前記内燃機関の自動停止及び自動始動時に要求される燃焼制御以外の燃焼制御を実行する。このように副電子制御ユニットに故障や不具合が生じた場合でも、アイドリングストップなどの内燃機関の自動停止及び自動始動のための燃焼制御が不能となるのみで、通常走行などのための燃焼制御は確実に行うことができる。
【0010】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記主電子制御ユニットは運転者のイグニッションキー操作に応じて前記内燃機関の始動を制御する通常始動制御を実行し、前記副電子制御ユニットは、前記通常始動制御における制御量に基づいて、前記内燃機関の自動始動のための燃焼制御における制御量を決定する。この態様では、運転者がイグニッションキーを操作すると、主電子制御ユニットが内燃機関の通常始動制御を行う。副電子制御ユニットは、その際の制御量を検出し、それに基づいて、アイドリングストップなどにおける内燃機関の自動始動時の制御量を決定する。よって、内燃機関の特性などに応じて適切な制御量で自動始動を実行することができる。なお、制御量には、例えば燃料噴射量、点火時期などが含まれる。
【0011】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記主電子制御ユニットは、車両の停止中に前記内燃機関のアイドリングのための燃料噴射指示及び点火指示を出力し、前記副電子制御ユニットは、前記内燃機関の自動停止及び自動始動時には、前記主電子制御ユニットから出力される前記燃料噴射指示及び点火指示を無効化する。
【0012】
一般的に、アイドリングストップなどを行わない通常車両には主電子制御ユニットのみが搭載されている。これに副電子制御ユニットを追加してアイドリングストップを実施可能とする場合、車両の停止中には主電子制御ユニットは内燃機関のアイドリング回転を維持しようとして燃料噴射指示や点火指示を出力する。よって、副電子制御ユニットは、これらの指示を無効化することにより、当該車両でアイドリングストップを行うことを可能とする。
【0013】
さらに、上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記副電子制御ユニットは、前記主電子制御ユニットから出力される前記燃料噴射指示及び点火指示を無効化している間に、前記内燃機関の自動停止及び自動始動のために要求される制御信号を前記内燃機関に供給する。これにより、副電子制御ユニットは、自動停止及び自動始動に必要な燃料噴射指示や点火指示などを独自に出力して、アイドリングストップを実施する。
【0014】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記主電子制御ユニットは、前記副電子制御ユニットなしで、前記内燃機関の自動停止及び自動始動時に要求される燃焼制御以外の燃焼制御を実行可能とする。これにより、副電子制御ユニットに故障などが生じた場合でも、主電子制御ユニットによる通常走行のための制御などが保証される。
【0015】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記副電子制御ユニットは、前記主電子制御ユニットに対して脱着可能に構成することができる。これにより、主電子制御ユニットのみを有する通常車両に副電子制御ユニットを追加して、当該車両でアイドリングストップを実施可能とすることが容易にできるようになる。また、副電子制御ユニットに故障などが生じた場合には、副電子制御ユニットのみを交換などすることにより対策することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0017】
[車両の基本構成]
まず、本発明の実施形態として、アイドリングストップ技術を適用した車両について説明する。アイドリングストップ技術は、いわゆるエコラン車両又はハイブリット車両などにより実現される。ここで、「エコラン車両」とは、主としてエンジンの始動を目的とした電動機(モータジェネレータ)を搭載し、アイドリングストップによるエンジンの停止後、モータジェネレータによりエンジンを自動的に再始動する車両である。また、「ハイブリット車両」とは、エンジン及びモータジェネレータをそれぞれ動力源とするパワートレーンである。
【0018】
図1に、本発明に係る車両10のシステム構成を示す。
【0019】
車両10は、図1に示すように、DCスタータ1と、エンジン2と、エンジン2から出力される駆動力により発電すると共にエンジン2を始動する際のセルモータとして駆動可能なモータジェネレータ3と、モータジェネレータ3等を制御するためのモータ制御装置4と、モータ制御装置4を介してモータジェネレータ3等と電力の授受を行う電源装置5と、モータジェネレータ3、モータ制御装置4及び電源装置5を各々接続する電源ケーブル6と、エンジン2から発生する駆動力を車輪に伝える動力伝達装置7と、車輪8とを備える。
【0020】
次に、上記各構成について、図1を参照して説明する。
【0021】
DCスタータ1は、エンジン2を始動させる直流方式のセルモータである。DCスタータ1はシャフトを有し、イグニションスイッチがON状態とされることにより、12V電源装置からの電力供給を受けて、そのシャフトを回転させる。DCスタータ1のシャフトが回転することにより、エンジン2のクランクシャフトが回され、エンジン2を始動する。具体的には、DCスタータ1のシャフトの先端部には、ピニオンギアが取り付けられている。ピニオンギアは、エンジン2のクランクシャフトに設けられたフライホイールのリングギアと噛み合っている。そのため、DCスタータ1は、エンジン2の始動により12V電源装置から電力供給を受けると、そのピニオンギアがフライホイールのリングギアと噛み合って回転し、フライホイールを回転させる。これにより、所定気筒数のピストンが連結されたクランクシャフトが回転させられるため、その回転駆動力によりエンジン2を始動することができる。なお、エンジンの始動のためにクランクシャフトを駆動することを「クランキング」と呼ぶ。
【0022】
エンジン2は、シリンダ内の混合気を爆発させて、動力を発生する内燃機関である。内燃機関には、ガソリンを燃料とするガソリンエンジン、又は軽油などを燃料とするディーゼルエンジンなどがある。ガソリンエンジンには、クランクシャフトが2回転する間に、吸気、圧縮、膨張、排気の1サイクルを完了して動力を発生する4サイクルガソリンエンジン、又はクランクシャフトが1回転する間に前記の1サイクルを完了する2サイクルガソリンエンジンがある。なお、本実施形態における車両10は、4サイクルガソリンエンジンであるとする。
【0023】
図2にエンジン2の概略構成の一例を示す。
【0024】
シリンダヘッド12に形成された吸気ポート24は吸気バルブ26により開閉される。吸気ポート24への吸気の供給は、吸気通路28を介してなされる。吸気通路28にはサージタンク30が設けられ、サージタンク30の上流にはスロットルバルブ32が設けられている。スロットルバルブ32は電動モータ34により開度(スロットル開度TA)が調整され、このスロットル開度TAはスロットル開度センサ36により検出されている。
【0025】
エンジン2はいわゆるポート噴射型のエンジンであり、吸気ポート24に燃料噴射弁14が設けられている。吸気ポート24内の吸気と、吸気ポート24内に噴射された燃料により混合気が生成され、シリンダブロック16、ピストン18及びシリンダヘッド12により区画された燃焼室20内に導入される。燃焼室20の天井部分には点火プラグ22が配置され、吸気ポート24から導入された混合気に対して点火可能としている。なお燃料噴射弁14には高圧燃料ポンプ(図示略)からデリバリパイプ14aを介して高圧燃料が供給されている。このことにより、圧縮行程末期においても燃料噴射弁14から燃焼室20内に燃料噴射が可能となっている。このデリバリパイプ14a内の燃料圧力は燃圧センサ14bにより検出されている。
【0026】
また、シリンダヘッド12に形成された排気ポート38は排気バルブ40により開閉される。燃焼室20から排気ポート38に排出された排気は、排気通路42及び排気浄化触媒(図示略)等を介して外部に排出される。
【0027】
燃焼室20内での混合気の燃焼に伴うピストン18の往復運動は、コンロッド44を介してクランクシャフト46の回転運動に変換される。クランクシャフト46は図示しないトルクコンバータや変速機を介して車輪8に動力を伝達している。
【0028】
また、このような動力伝達系とは別に、クランクシャフト46の一端は電磁クラッチ48を介してプーリ50(以下、「クランクシャフトプーリ」とも呼ぶ。)に接続されている。このプーリ50は、ベルト52により他の3つのプーリ54,56,58との間で動力の伝達が可能とされている。本例では、プーリ54によりエアコン用コンプレッサ60が駆動可能とされ、プーリ56によりパワーステアリングポンプ62が駆動可能とされている。もう一つのプーリ58(以下、「MGプーリ」とも呼ぶ。)は、モータジェネレータ3に連結されている。モータジェネレータ3はMGプーリ58側からのエンジン駆動力により発電を行う発電機としての機能と、MGプーリ58側へモータジェネレータ3の駆動力を供給する電動機としての機能とを併せ持っている。
【0029】
マイクロコンピュータを中心として構成されているECU70(Engine Control Unit)は、入出力装置、記憶装置、中央処理演算装置、などから構成され、車両10のシステムを統括制御する。ECU70は、エンジン2に搭載された各センサなどからの入力情報などに基づいて、車両10を最適な状態に制御する。具体的には、ECU70は、前述した燃圧センサ14bから燃料圧力、スロットル開度センサ36からスロットル開度TA、モータジェネレータ3内蔵の回転数センサからモータジェネレータ回転数、電源装置5の電圧あるいは充放電時の電流量、イグニッションスイッチ72のスイッチ状態、車速センサ74から車速SPD、アクセル開度センサ76からアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度ACCP)、ブレーキスイッチ78からブレーキペダルの踏み込み有無、エンジン回転数センサ80からクランクシャフト46の回転数(エンジン回転数NE)、エアフロメータ82から吸入空気量GA、冷却水温センサ84からエンジン冷却水温THW、アイドルスイッチ86からアクセルペダルの踏み込み有無状態、排気通路42に設けられた空燃比センサ88から空燃比検出値Vox、カム角センサ92からカムシャフトの回転位置を、クランク角センサ90からクランクシャフトの回転角度(クランク角度)を、それぞれ検出している。
【0030】
クランク角センサ90は、被検出物(例えば、金属など)を検出することが可能な磁気式センサなどであり、エンジン2内のクランクシャフト46近傍の所定の位置に設けられる。即ち、クランクシャフト46上の所定の位置には、外周に凹凸が形成された歯車(以下、「シグナルロータ」と呼ぶ。)が取り付けられるが、クランク角センサ90は、そのシグナルロータの歯数を検出することが可能な位置に設けられる。また、クランク角センサ90は、クランクシャフト46の回転角度(以下、「クランク角度」と呼ぶ。)を例えば10〜30°CA程度の分解能で検出することができる。クランクシャフト46が回転するとシグナルロータもそれに連動して回転する。このとき、クランク角センサ90は、そのシグナルロータの歯数を検出し、パルス信号としてECU70などに出力する。ECU70は、クランク角センサ90から出力されたパルス信号をカウントして、それをクランク角度に変換する。これにより、ECU70などは、クランク角度を検出する。また、クランク角センサ90は、エンジン2内に直接設けられるため、クランク角度を絶対角度として検出することができる。
【0031】
なお、クランク角センサ90は、シグナルロータの歯数を1つ検出すると、1つのパルス信号をECU70などに出力する。このため、クランク角センサ90から出力されるパルス信号は、クランクシャフト46が正転しても、あるいは逆転しても同様の出力状態となるため、ECU70などは、クランクシャフト46の正転又は逆転の別を検出することができない。
【0032】
このようにして得られたデータに基づいて、ECU70は、電動モータ34を駆動してスロットル開度TAを調整するとともに、燃料噴射弁14からの噴射時期を調整する。更に自動停止条件が成立すると、燃料噴射弁14からの燃料噴射を停止して、エンジン2の運転を自動停止させる。また、自動始動条件が成立するとモータジェネレータ3の駆動力により、プーリ58、ベルト52、プーリ50及び電磁クラッチ48を介してクランクシャフト46を回転させ、エンジン2を始動させる。更に、ECU70は、点火時期制御、その他の必要な制御を実行している。
【0033】
モータジェネレータ3は、プーリ50、プーリ58及びベルト52を通じて、クランクシャフト46と連結されている。クランクシャフト46に連結されたクランクシャフトプーリ50又はモータジェネレータ3に連結されたMGプーリ58の一方が回転駆動することにより、ベルト52を介して他方に動力が伝達される。
【0034】
モータジェネレータ3は、後述する電源装置5からの電力供給を受けて回転駆動するモータ(電動機)としての機能を有するとともに、車輪8からの回転駆動力を受けて回転している場合には三相コイルの両端に起電力を生じさせるジェネレータ(発電機)としての機能を併せ持つ。モータジェネレータ3が電動機として機能する場合には、モータジェネレータ3は電源装置5からの電力供給を受けて回転し、その回転駆動力をクランクシャフトプーリ50に伝達してクランクシャフト46を回転させエンジン2を始動する。一方、モータジェネレータ3が発電機として機能する場合には、車輪8からの回転駆動力がクランクシャフト46及びクランクシャフトプーリ50を介してモータジェネレータ側のMGプーリ58に伝達され、モータジェネレータ3を回転させる。モータジェネレータ3が回転することによってモータジェネレータ3内で起電力が発生し、その起電力が、モータ制御装置4を介して直流電流に変換され、電源装置5に電力を供給する。これにより、電源装置5は充電される。
【0035】
図1に戻り、モータ角センサ3aは、検出部にホール素子などが好適に適用され、モータジェネレータ3内の所定の位置に設けられる。モータ角センサ3aは、モータジェネレータ3のシャフトの回転角度を、概ね7.5°CA単位の高い分解能で検出することができる。モータジェネレータ3が電源装置5からの電力供給を受けて回転駆動すると、モータ角センサ3aは、そのシャフトの回転角度を検出する。具体的には、モータ角センサ3aは、U、V、Wの各相の交流電流をそれぞれ検出できるように、それらの各相に設けられる。各モータ角センサ3aは、U、V、Wの各相の交流電流をそれぞれ検出してパルス信号に変換し、モータ制御装置4に出力する。
【0036】
モータ制御装置4は、エンジン2内に設けられ、モータジェネレータ3及び電源装置5と電源ケーブル6によりそれぞれ接続される。モータ制御装置4は、主として、インバータ、コンバータ、又は制御用コンピュータなどから構成される。
【0037】
インバータは、電源装置5からの高電圧直流電流を所定の3相交流電流に変換して、モータジェネレータ3に電力を供給する。また、インバータは、逆にモータジェネレータ3から生じた起電力(3相交流電流)を、電源装置5を充電するのに適した直流電流に変換する。
【0038】
コンバータは、所定の直流電圧から所定の直流電圧へ変換するDC/DC変換装置である。即ち、コンバータは、電源装置5の定格電圧(例えば、36V電圧)を所定の電圧(例えば、12V電圧)に降圧して、補機類などの駆動、又は車両に搭載された12V電源装置への充電を行う。
【0039】
制御用コンピュータは、インバータやコンバータの制御を行う。即ち、制御用コンピュータは、モータジェネレータ3の駆動トルクや発電量を最適な状態に制御すると共に、電源装置5への充電量を最適な状態に制御して充電を行う。具体的には、モータジェネレータ3が電動機として機能する場合には、制御用コンピュータは、電源装置5から供給された電力に基づいて、モータジェネレータ3の駆動トルクや発電量の制御を行う。これにより、モータジェネレータ3が電動機として機能するのに最適な状態に制御される。一方、モータジェネレータ3が発電機として機能する場合には、制御用コンピュータは、モータジェネレータ3から生じた起電力に基づいて、所定の直流電流を電源装置5に供給して電源装置5の充電を行う。
【0040】
また、モータ制御装置4は、上述したモータ角センサ3aから出力されたパルス信号の数をカウントすることにより、モータジェネレータ3のシャフトの回転角度に変換する。さらに、モータ制御装置4は、その変換後の回転角度に基づいてクランクシャフトプーリ50とMGプーリ58との回転比率からクランク角度への変換を行う。これにより、モータ制御装置4は、クランク角度を、概ね3°CA単位の高い分解能で検出することができる。
【0041】
さらに、モータ制御装置4は、モータジェネレータ3のシャフトの正転又は逆転の別を検出することもできる。即ち、モータジェネレータ3のシャフトが正転したときと、逆転したときではU、V、Wの各相のパルス信号の出力状態が異なる。モータジェネレータ3のシャフトが正転したときのU、V、Wの各相のパルス信号は、位相差により、先ずU相のパルス信号が一定時間出力され、その後遅れてV相のパルス信号が一定時間出力され、さらにその後遅れてW相のパルス信号が一定時間出力され、それらが周期的に繰り返される出力状態となる。これに対し、モータジェネレータ3のシャフトが逆転したときのU、V、Wの各相のパルス信号は、正転の場合とは逆のパルス信号の出力状態となる。つまり、W相、V相、U相の順にパルス信号が一定時間それぞれ周期的に繰返される出力状態となる。そのため、モータ制御装置4は、それらの位相差を利用してモータジェネレータ3のシャフトの正転又は逆転の別を検出することができる。
【0042】
電源装置5は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池などの2次電池である。電源装置5は、車両10のスペースの効率化などを図るため、例えば、車両10の後部などに設置される。電源装置5は、例えば、36Vなどの定格電圧とすることができる。そのため、電源装置5は、モータジェネレータ3の起動、又は車両制動時におけるエネルギー回生などにおいて高い入出力特性を有する。電源装置5は、具体的には、補機類やモータジェネレータ3などに対して電力を供給する。モータジェネレータ3への電力供給は、主として、車両10が停止中に行われる。また、車両10が走行中、あるいは制動時の場合には、モータジェネレータ3から発生する起電力がモータ制御装置4を介して、直流電流に変換され電源装置5に供給される。これにより、電源装置5を充電することができる。
【0043】
電源ケーブル6は、上述したように、モータジェネレータ3とモータ制御装置4、及びモータ制御装置4と電源装置5とにそれぞれ接続され、直流電流や3相交流電流を流す役割を果たす。
【0044】
動力伝達装置7は、主として、トルクコンバータ、ロックアップクラッチ、変速機、動力切換機構などから構成される。これらが有機的に作用することにより、動力伝達装置7は、走行状態などに応じて、エンジン2、又はモータジェネレータ3から発生する回転駆動力を車輪8に伝達し又は遮断する。また、動力伝達装置7は、制動時などにおいては、逆に車輪8からの回転駆動力をモータジェネレータ3に伝達する。
【0045】
車輪8は、動力伝達装置7からの回転駆動力を路面に伝える車軸、及びタイヤなどである。本実施形態においては、車輪8として後輪を図示している。
【0046】
次に、クランク角センサ90とカム角センサ92の例について説明する。
【0047】
図3に示すように(図2では図示を略している)、クランクシャフト46にはシグナルロータ91が取り付けられている。このシグナルロータ91の外周部には、クランクシャフト46の軸線を中心として等角度間隔(ここでは10°間隔)に配置された34個の歯(突起部分)91aと、1個の幅広の欠歯(歯が存在しない部分)91bが設けられている。欠歯91bの長さは、歯91aの2個分に相当する。そして、シグナルロータ91の外周部に対向して、クランク角センサ90が設けられている。クランクシャフト46が回転した場合には、シグナルロータ91の各歯91aおよび欠歯91bが順次クランク角センサ90の近傍を通過することにより、クランク角センサ90からはそれら各歯91aおよび欠歯91bの通過数に対応したパルス状の回転信号(以下「NE信号」と称する)が出力される。
【0048】
一方、吸気カムシャフト27の外周面には3個の突起27a,27b,27cが吸気カムシャフト27の軸線を中心として90°(180°CAに相当する)間隔に配列して設けられている。したがって両端の突起27aと突起27cとの間隔は180°(360°CAに相当する)となっている。これら突起27a〜27cに対向するように、突起27a〜27cを検出して検出信号を出力するカム角センサ92が設けられている。吸気カムシャフト27が回転した場合には、突起27a〜27cがカム角センサ92の近傍を通過する。これにより、カム角センサ92からは、突起27a〜27cのそれぞれの通過に対応してパルス状の検出信号が出力される。
【0049】
ここで、エンジン2が駆動している時においてECU70に入力されるクランク角センサ90、およびカム角センサ92からの信号を図4に示す。図4(a)は吸気カムシャフト27の回転に伴いカム角センサ92内に発生する電圧波形を示すものである。図4(b)は、図4(a)の電圧波形をパルス状のカム角信号(G2信号)に変換したものである。図4(c)はクランクシャフト46の回転に伴いクランク角センサ90内に発生する電圧波形を示すものである。図4(d)は図4(c)の電圧波形をNE信号に変換したものである。本例では、NE信号のうち、歯91aに対応するパルス数は、クランクシャフト46の1回転(360°CA)当たり34個となっている。また、クランク角センサ90から出力される回転信号のうち、欠歯91bに対応する部分ではパルスの間隔が2パルス存在しないことにより広くされている。このパルス間隔が広い部分の数は、クランクシャフト46の1回転(360°CA)当たり1つとなっている。
【0050】
ECU70は、上述したクランク角センサ90のNE信号およびカム角センサ92からのカム角信号に基づきクランクシャフト46および吸気カムシャフト27の回転位相を検知する。そして、ECU70は、クランクシャフト46および吸気カムシャフト27の回転位相から各気筒(#1〜#4)について気筒判別を行い、それら各気筒(#1〜#4)のうち燃料噴射や点火を行うべき気筒を選択する。
【0051】
[車両の動作]
次に、上記の構成からなる車両10の動作について説明する。車両10は、停車、発進、通常走行、加速走行、又は制動などの各運転状態に応じて、各種の動作を行う。
【0052】
車両10の自動停止(アイドリングストップ)中では、エンジン2は停止状態である。この状態において、エアーコンプレッサ、ウォータポンプ、又はパワーステアリングポンプなどの補機類の駆動が必要な場合には、モータジェネレータ3は、エンジン2を駆動させることなく、電源装置5からの電力供給を受けて、それらの補機類を駆動する。ただし、エンジン2とモータジェネレータ3とは各々のプーリを介してVベルトで回動自在に接続されているため、この状態においては、モータジェネレータ3のシャフトが回転することにより、その回転駆動力がエンジン2に伝達されてしまう。そこで、上記補機類のみを駆動するためには、エンジン2のクランクシャフトが回転しないように電磁クラッチを作動させて、モータジェネレータ3からの回転駆動力を遮断する。これにより、エンジン2を駆動させることなく、補機類のみ駆動させることができる。
【0053】
車両10の発進時、即ち、アイドリングストップ状態のときに運転者がブレーキペダルから足を離すと、モータジェネレータ3は、アイドリング回転数付近まで回転数を上昇する。そして、運転者がアクセルペダルを踏むことにより、モータジェネレータ3はエンジン2のクランクシャフトを回転させてエンジン2を自動再始動する。また、ブレーキOFF操作、つまり運転者がブレーキペダルから足を離した状態から一定時間が経過した場合においても、最適な動力性能を得るためエンジン2を自動再始動することができる。
【0054】
通常走行時には、車両10は、一般的な車両と同様にエンジン2からの駆動力が車輪8に伝達されて走行する。なお、通常走行時において電源装置5の電圧が低下している場合には、車輪8からの駆動力がモータジェネレータ3に伝達されてモータジェネレータ3が発電を行う。これにより、モータジェネレータ3は発電機として機能し、電源装置5の不足する電力を補充するために、電源装置5に対して充電を行う(以下、この運転状態を「回生」と呼ぶ。)。よって、電源装置5は、常時、適正な充電状態に維持される。
【0055】
車両10が登坂走行や加速走行をするときには、適切な動力性能を発揮するため、前記した通常走行時の状態に加えて、電源装置5の電力を使用してモータジェネレータ3を駆動し、モータジェネレータ3による回転駆動力をエンジン2の回転駆動力に付与することができる(以下、この運転状態を「アシスト」と称する。)これにより、車両10は、エンジン2及びモータジェネレータ3の2つの動力源を効果的に使用して、高い動力性能を得ることができる。
【0056】
減速などにおける制動時には、車輪8による駆動力が、動力伝達装置7、エンジン2を介してモータジェネレータ3に伝達され回生が行われる。
【0057】
[エンジンの停止制御]
次に、上述した車両10のエンジンの停止制御について説明する。上述したように、車両10は、走行停止時にはアイドリングストップ、つまりエンジン2を自動停止する。その後、運転者が、ブレーキペダルから足を離すと同時にモータジェネレータ3はエンジン2のアイドリング回転数付近まで回転を上昇する。そして、運転者がアクセルペダルを踏むことによりモータジェネレータ3が回転駆動し、その回転駆動力によりエンジン2を自動再始動させる。このとき、車両10では、エンジン2の自動始動時にスムーズな発進を可能とするために、アイドリングストップ時にエンジン2の内部において、クランク角度が最適なクランク角度停止位置に停止するように制御される。以下の例では、車両停止時におけるエンジンの慣性エネルギーを効果的に活用して正確な停止制御を行う。
【0058】
以下、クランク角度を最適なクランク角度停止位置に停止制御させる方法について述べる。なお、最適なクランク角度停止位置は、圧縮行程にある気筒において、エンジン2の再始動時に圧縮行程上死点の乗越しが容易なクランク角度の停止位置とすることができる。例えば、本例のような4気筒エンジンの場合、クランク角度停止位置がクランク角度90°CA〜120°CAの範囲内にあれば最適なクランク角度停止位置となる。
【0059】
概要を説明すると、通常の車両10の停止制御方法は、ECU70がアイドリング状態から所定のタイミングでエンジン2への燃料カットを実行し、その後のエンジン2の有する慣性エネルギーによって自然とエンジン2を停止させる。しかし、燃料カット時のエンジン回転数の大きさによってエンジン2の有する慣性エネルギーは毎回まちまちとなり、それに連動してクランク角度停止位置も毎回異なってしまう。そのため、通常の車両10の停止制御方法では、クランク角度を最適なクランク角度停止位置に停止制御させることが困難となり、実際に車両が停止した際のクランク角度停止位置によっては次回のエンジン始動負荷が大きくなる。よって、モータジェネレータ3の有する出力トルクとの関係では、エンジン2のクランクシャフトを回転させることができず、エンジン2の自動再始動が失敗する確率が高くなる。
【0060】
そこで、本例においては、燃料カット後のエンジン回転数を所定のタイミングで一定にすることにより、その時点においてエンジン2が有する慣性エネルギーを一定にする。そして、その後はその時点でエンジン2が有する慣性エネルギーを利用してエンジン2の回転を停止させる。これにより、毎回確実に、クランク角度を最適なクランク角度停止位置へ停止制御させることができる。
【0061】
特に本実施形態においては、エンジン回転数を一定にさせる方法としてモータジェネレータ3を使用する。つまり、燃料カット後のクランクシャフトに所定のタイミングでモータジェネレータ3からの回転駆動力を付与することで(以下、「モータリング」と呼ぶ。)、エンジン2の有する慣性エネルギーを一定にする。これにより、エンジン停止時のクランク角度を最適なクランク角度停止位置に停止制御させる。クランク角度が最適なクランク角度停止位置にあれば、エンジン始動時におけるエンジン始動負荷を最小限にすることができ、エンジン2の自動再始動の失敗を効果的に防止することができる。
【0062】
モータジェネレータ3を利用したエンジン停止時の回転数制御の様子を図5に示す。図5において、波形100は本実施形態のエンジン停止制御によるエンジン回転数の変化を示す。波形101はエンジン停止制御における燃料カット信号波形を示し、燃料カット信号がHレベルになると燃料カットを実行する。波形102はモータジェネレータ3の駆動信号(MG駆動信号)波形を示し、Hレベルの区間でモータジェネレータ3が駆動される。
【0063】
今、時刻t0で運転者がアクセルペダルを離したとすると、時刻t0以降はエンジン2の回転数は、ほぼそのエンジンのアイドリング回転数NE1となる。時刻t1において運転者がブレーキペダルを踏み込んだとすると、その時点でECU70は燃料カット信号をHレベルとし、燃料カットを指示する。時刻t1にて燃料カットが実行されると、エンジン2の回転数は徐々に低下する。ECU70は、エンジン回転数が予め決められたモータ設定回転数NE2まで低下したことを検出すると(時刻t2)、MG駆動信号をHレベルとし、モータジェネレータ3を駆動させ、エンジン2をモータジェネレータ3による駆動に切り換える。
【0064】
そして、所定期間(時刻t2〜t3)にわたりモータジェネレータ3は予め決定されたモータ設定回転数NE2でエンジン2を駆動し、所定期間が経過するとECU70はモータジェネレータ3の駆動を停止する(時刻t3)。時刻t3でモータジェネレータ3による駆動力が除去されると、エンジン2はその時点で有する慣性エネルギーのみにより回転するのでエンジン回転数は徐々に低下し、時刻t4付近でエンジン2は停止する。
【0065】
このように、エンジン停止時にエンジン2の駆動を一旦モータジェネレータ3による駆動に切り替え、エンジン2を所定の回転数NE2に保持した後でエンジンの駆動力を除去する。駆動力を除去した時点でエンジン2が有する慣性エネルギーは主としてその時点のエンジン回転数により決まるので、必ず所定のエンジン回転数NE2にエンジンの回転数を維持してから駆動力を除去するようにすれば、エンジン2は毎回同じ慣性エネルギーを持ち、同じ推移で停止する。
【0066】
次に、上述のように所定のエンジン回転数NE2で駆動力を除去した後、エンジンが停止するまでのエンジンの挙動を説明する。図6は、エンジン2に対する駆動力を除去した後のエンジン2のクランク角度の変位を示す。図6において、縦軸は所定気筒のクランク角度の変位(°CA)を示す。なお、前記所定気筒とは、クランク角度が0°CA〜180°CAに変位するとき圧縮行程にある気筒、例えば、#3気筒を対象とする。一方、横軸は時間(秒)を示す。
【0067】
具体的には、縦軸は、所定気筒に対応するピストンが圧縮行程から膨張行程に移行する際のクランク角度変位(°CA)を示しており、クランク角度変位が、下死点(0°CA)から上死点(180°CA)まで、30°CA間隔毎に示される。一方、横軸は、モータリング停止時(0(秒))から所定気筒のクランク角度を最適なクランク角度停止位置に停止制御させるまでの経過時間(0.6(秒))を0.1(秒)間隔毎に示したものである。
【0068】
次に、図中のグラフについて説明する。図中には2種類のグラフが示されている。これは、モータジェネレータ3による駆動(モータリング)停止時のエンジン回転数が高い場合のグラフ110と低い場合のグラフ112である。即ち、0秒から0.1秒の間において、傾きが大きいグラフ110はモータリング停止時のエンジン回転数が高い場合のクランク角度変位を示し、傾きが小さいグラフ71はモータリング停止時のエンジン回転数が低い場合のクランク角度変位を示す。
【0069】
先ず、0秒から0.1秒付近においては、所定気筒に対応するピストンが圧縮行程の下死点から上死点に上昇している様子を示している。所定気筒に対応するピストンは、0.1秒経過直後に圧縮行程上死点近傍まで上昇する。このときは、エンジン2のクランクシャフト46は正転している。
【0070】
その後、所定気筒に対応するピストンは圧縮行程上死点(180°CA)の乗越しができずに、0.3秒付近までエンジン2のクランクシャフトは逆転する。これは以下の理由による。即ち、所定気筒に対応するピストンが圧縮行程上死点に接近することにより、シリンダ内の容積は次第に小さくなり、圧力が高まってくる。これに比例して、シリンダ内においてはピストンを押し返そうとする圧縮反力116(以下、「コンプレッション反力」と呼ぶ。)も大きくなってくる。したがって、圧縮行程上死点付近では、シリンダ内におけるコンプレッション反力が最も大きい状態となるので、その時のエンジンが有する慣性エネルギーによってはコンプレッション反力に対抗できず、所定気筒に対応するピストンが圧縮行程下死点側に押し返される結果となる。このように、所定気筒に対応するピストンは、圧縮行程上死点への乗越しができずにエンジン2のクランクシャフトが逆転する。
【0071】
その後、所定気筒に対応するピストンは、圧縮行程下死点側に移行するが、0.3秒付近においてエンジン2のクランクシャフト46は再び逆転する。つまり、エンジン2のクランクシャフトは正転する。これは以下の理由による。即ち、このとき、クランクシャフトが逆転することにより、所定気筒が圧縮行程にある状態で膨張行程にあった他気筒に対応するピストンは、膨張行程下死点側に下降する。膨張行程では吸排気弁がともに閉状態となっているため、ピストンが膨張行程下死点側に下降するのに従い、シリンダ内の容積が次第に大きくなる。これによって、シリンダ内では負圧が形成されると共に、その負圧が次第に大きくなる。したがって、他気筒に対応するピストンは、その負圧に起因する反力118によって上死点側の方向に再び引き戻される。これにより、エンジン2のクランクシャフトは再び正転する。
【0072】
その後、0.3秒付近からエンジン2の有する慣性エネルギーが徐々に低下し、0.6秒後にエンジン2が停止する。これにより、クランク角度停止位置は、クランク角度90°CA〜120°CAの範囲内に収束する。クランク角度停止位置が、最終的にクランク角度90°CA〜120°CAの範囲内に収束すれば、最適なクランク角度停止位置に停止制御されたことになり、停止制御は成功といえる。
【0073】
また、上述のエンジン停止制御によれば、エンジン停止時において各気筒がどの行程で停止するかを、エンジン停止前に予測することができる。図5に示すように、上記のエンジン停止制御では、燃料カット後に所定のモータリング期間を設けてエンジンの回転数を予め決められた所定回転数に維持することにより、その時点においてエンジンが有する慣性エネルギーを一定とした後、モータリングを終了してエンジンの駆動力を除去し、エンジンを停止させる。よって、モータリング終了後に、エンジンが何回転してから停止するかは、モータリング終了時においてエンジンが有する慣性エネルギー、即ち、モータリングにより維持されるエンジン回転数やモータリング期間などに依存する。逆に言えば、モータリング回転数を一定に維持しているので、モータリング終了後にエンジン(クランクシャフト)が停止するまでに何回転するかは常に一定となる。
【0074】
よって、前述のカム角センサ92などを利用した気筒判別により、モータリング開始時において各気筒がどの行程にあるかを検出しておけば、その後にモータリング期間にわたりモータリングを実行し、最終的にエンジンが停止したときに各気筒がどの行程になるかを予測することができる。例えば、モータリング終了時にある特定の行程にある気筒が次の圧縮上死点を乗り越えることができるが、2つ目の圧縮上死点を乗り越えることはできないように、モータリング終了時の慣性エネルギー、つまりモータリング終了時のエンジン回転数が決定されているとすれば、エンジンが停止したときにその気筒は圧縮行程にあることになる。また、モータリング期間中にエンジンが何回転するかはモータリング期間に応じて既知である。よって、ECU70は、モータリング停止時又はモータリング開始時における各気筒の行程の情報と、モータリング終了後にエンジンが慣性エネルギーにより何回転するかを示す情報などに基づいて、エンジン停止時に各気筒がどの行程になるかを、エンジン停止制御の実行中に予測することができる。以下に述べる本発明のエンジンの停止始動制御においては、この予測結果を利用して、エンジン停止後に特定の行程にあると予測される気筒内に対して、エンジン停止前に混合気を封入する。
【0075】
[停止始動制御]
次に、エンジンの停止始動制御について述べる。この停止始動制御は、上述した最適なクランク角度停止位置への停止制御を実行する際に、エンジン停止時に圧縮行程で停止すると予測される気筒に予め燃料噴射を行って混合気を燃焼室内に封入しておき、エンジン始動時、モータジェネレータによるクランキングに加えて、その混合気に対して点火を行うことにより、エンジン2の早期始動を行う。
【0076】
まず、基本的原理を説明する。ここでは、例えば、アイドリングストップなどのエンジン停止時に、上述のエンジン停止制御を行うとともに、エンジン停止時に各気筒がどの行程となるかを予測し、エンジン停止時に圧縮行程になると予測される気筒を特定する。なお、エンジン停止時に各気筒がどの行程にあるかは、先に述べた方法で予測することができる。
【0077】
通常、エンジン停止中に圧縮行程にある気筒は吸排気弁ともに閉状態となっているため、いわゆる直噴型エンジンとは異なり、本実施形態のようなポート噴射型エンジンではエンジン停止後にその気筒の燃焼室内に混合気を封入することはできない。そのため、エンジン停止時に圧縮行程になると予測される気筒(以下、「停止時圧縮行程気筒」とも呼ぶ。)の燃焼室内に混合気を封入しておくためには、その気筒の吸気行程で予め燃料噴射を行っておく必要がある。そこで、エンジン停止時に例えば#3気筒が圧縮となると予測される場合には、ECU70は、その気筒について圧縮行程の前行程である吸気行程で燃料噴射を行い、燃焼室内に予め混合気を封入しておく。この燃料噴射を行う時点ではエンジンは停止前であり、吸気行程にある当該気筒の燃焼室内は負圧状態となっているため、通常通り、吸気ポートで噴射された燃料を含む混合気を確実に燃焼室内に吸入することができる。これにより、エンジン停止制御が完了し、エンジンが停止したときには、停止時圧縮行程気筒(本例では#3気筒)の燃焼室内には混合気が封入された状態となる。
【0078】
エンジン始動時には、ECU70は、モータジェネレータ3によりクランキングを行うとともに、その停止時圧縮行程気筒(#3気筒)に対して点火を行って爆発エネルギーを発生してクランクシャフトを回転させることにより、エンジン2の早期始動を行うことができる。
【0079】
なお、このようにしてエンジン停止時に停止時圧縮行程気筒に封入されている混合気は、エンジン停止制御中、即ちエンジン停止前の状態におけるA/Fセンサ出力に基づく良好な空燃比となっている。また、前述のエンジン停止制御の説明にて述べたように、慣性エネルギーを利用してエンジンを停止する際には、停止直前にエンジンの回転が反転するので、封入された混合気は燃焼室内でピストンにより圧縮及び膨張を繰り返すことになり、空気と燃料とがよく混ざった状態となる。さらに、エンジン停止後も、未だエンジンが暖機状態にあるため、その混合気はシリンダからの熱を受けて燃焼室内で対流を生じ、空気と燃料の混合を促進する。これらの理由により、燃焼室内では霧状化した均質な混合気が保持され、その混合気は着火し易い状態となっている。よって、エンジン始動時の点火により円滑に燃焼し、エンジンの早期始動が可能となる。
【0080】
図7は、エンジン停止直前における各気筒の状態を示す行程図、及び、行程図に対応するタイムチャートを示す。図7では、停止時圧縮行程気筒は#3気筒であると仮定している。なお、本実施形態では、4気筒エンジンの例を説明するが、本発明の適用はこれに限られるものではない。また、エンジン2の点火順序は、図7に示すように、例えば、#1気筒−#3気筒−#4気筒−#2気筒の順とするが、本発明の適用はこれに限られるものではない。
【0081】
ここでのエンジン停止制御は、基本的には先に図5及び図6を参照して説明したものと同様である。即ち、運転者がアクセルをオフした後、ブレーキオンの検出時など(時刻t1)に燃料カット信号がオンとなり、燃料カットが行われる。これにより、原則として時刻t1以降は燃料の噴射は行われない。その後、エンジン回転数が所定回転数まで低下すると、時刻t2でMG駆動信号がオンとなり、モータリングが開始される。モータリングは所定時間経過後の時刻t3で終了し、その後、エンジンは図6に示した挙動を示して時刻t4で停止する。なお、エンジンが停止した位置を図中では実停止位置として波線で示している。
【0082】
エンジン停止状態では、停止時圧縮行程気筒である#3気筒が圧縮行程になる。ECU70はこれをエンジン停止制御中、例えばモータリング開始時などに既に予測している。そして、ECU70は、停止時圧縮行程気筒である#3気筒に対し、エンジン停止直前の吸気行程で燃料噴射を行う(矢印210を参照)。つまり、燃焼カット信号を参照するとわかるように、燃料カット信号の変化後は原則として燃料噴射は行わないのであるが、停止時圧縮行程気筒に混合気を封入するために、例外的に停止時圧縮行程気筒がエンジン停止直前の吸気行程にある間に限り、燃料カットを一時的に中断して燃料を噴射している(時刻t5〜t6)。これにより、エンジン停止時に圧縮行程となった#3気筒は混合気が封入された状態となる。時刻t4でエンジンが停止する付近ではECU70は点火カット信号をオンとし、全気筒で点火を停止する。
【0083】
次に、こうしてエンジンが停止した後の始動制御について図8を参照して説明する。図8は、停止制御後におけるエンジン2の始動制御例を示す行程図である。なお、図8に示す実停止位置は、図7に示す実停止位置と同様である。
【0084】
図8に示すように、先ず、#4気筒は実停止位置において吸気行程となっている。よって、エンジン2の早期始動を図るため、ECU70は、エンジン始動条件が具備されると、燃料カット信号をオフとし、吸気行程にある#4気筒の燃焼室内に対してEFIを通じて燃料噴射を実行する(矢印220参照)。
【0085】
また、実停止位置において、#3気筒は前述のように圧縮行程にあり、#3気筒の燃焼室内には混合気が封入されている。よって、ECU70は、#3気筒の燃焼室内に封入された混合気に対して点火を実行する(矢印221参照)ことにより、クランクシャフトを回転させる。具体的には、ECU70は、エンジン始動条件が具備されると、点火カット信号をオンからオフにし、#3気筒が圧縮上死点に到達したとき点火装置に対して点火指令信号を送信する。これにより、ECU70は、そのとき生じる燃焼圧によりクランクシャフトを回転させる。その後は、通常通り燃料の噴射及び点火が実行される。
【0086】
このように、本実施形態によれば、エンジン始動時には、モータジェネレータによるクランキングに加えて、エンジン停止時に停止時圧縮行程気筒に封入しておいた混合気を燃焼させて爆発エネルギーを発生してクランクシャフトを駆動するので、エンジン2の早期の初爆が実現され、エンジン始動を迅速化することができる。
【0087】
[追加EFIシステム]
次に、本発明の特徴である追加EFIシステムについて説明する。エコラン車両においては、上述のエンジン停止始動制御をECU70が実行することにより、アイドリングストップを実施することができる。しかし、そのためには、上述のエンジン停止始動制御を行ってアイドリングストップ機能を実現するための専用ECUが必要となる。これに対し、本発明は、アイドリングストップ機能を有しない車両に搭載されているECU(以下、これを「通常ECU」と呼ぶ。)に対して、アイドリングストップを実現するために必要な制御を実行する追加ユニット(追加EFI)を付加し、通常ECUと追加EFIにより、専用ECUと同等の制御が実現するものである。即ち、通常車両に対して、追加EFIを後付けで付加することにより、その車両においてアイドリングストップを実現することができるようになる。そうすれば、例えば追加EFIに何らかの故障や不具合が生じた場合でも、その車両はアイドリングストップを実施できないだけで済み、通常の車両としては支障無く走行することができる。
【0088】
図9に、本発明の追加EFIシステムを備える車両の概略構成を示す。なお、図1に示すものと同一の構成要素には同一の符号を付し、説明は省略する。図9に示すように、追加EFIシステムは、通常ECU300に加えて、追加EFI310を備える。通常ECU300はアイドリングストップ機能を備えない通常車両に搭載されているECUであり、車両の停止時には所定のアイドリング回転数にてエンジンの動作を維持する制御を行うように構成されている。一方、追加EFI310は、アイドリングストップを実施するために必要な信号をエンジン2に供給するように構成されており、車両の停止時にエンジン2を停止させる制御を行う。具体的には、車両の停止時に、エンジン2内のインジェクタ(噴射制御装置)250による燃料噴射を停止する(燃料カット)とともに、イグナイタ(点火制御装置)240による点火を禁止する。これにより、車両の停止時にエンジン2は停止する。一方、車両の始動時には、インジェクタ250及びイグナイタ240を制御して、エンジン2を始動する。
【0089】
追加EFI310は、通常車両に対して、後付けユニットとして追加が可能なように構成されている。図9において、通常車両の状態では、コネクタ330Aと330B、コネクタ330Cと330Dがそれぞれ接続されており、エンジン2は通常ECU300のみに接続されている。そのときには、追加EFI310はもちろん存在しない。よって、通常ECU300の制御下で車両は通常走行を実施し、アイドリングストップは実施しない。つまり、車両の停止時には、通常ECU300内のEFIは所定のタイミングでインジェクタ250に噴射指示を送るとともにイグナイタ240に点火指示を送り、エンジン2は所定のアイドリング回転数で動作を続ける。
【0090】
このような通常車両に対して、追加EFI310を付加することにより、当該車両をアイドリングストップ機能を有するエコラン車両とすることができる。具体的には、図9に示すように、コネクタ330Aと330Bの間、及び、コネクタ330Cと330Dの間に追加EFI310を挿入する。これにより、車両の停止時にアイドリングストップを実施することができるようになる。
【0091】
まず概略を説明すると、車両停止時には、前述のように通常ECU300は、エンジン2をアイドリング回転数で回転させるように、インジェクタ250に噴射指示を送るとともにイグナイタ240に点火指示を送る。しかし、追加EFI310は、通常ECU300からの噴射指示及び点火指示を無効化し、インジェクタ250による燃料噴射及びイグナイタ240による点火を禁止する。これに加えて、追加EFI310は上述のエンジン停止始動制御に必要な噴射指示や点火指示をエンジン2に供給する。これにより、車両停止中はエンジン2は停止され、アイドリングストップが実施される。なお、こうしてアイドリングストップあが実施されたときには、通常ECU300は噴射指示及び点火指示を出力しているにも拘わらずエンジン2が停止するという状態になるが、その場合には通常ECU300はリセット状態となり、クランキングによるエンジン始動の待機状態となるので、問題は生じない。
【0092】
次に、通常ECU300及び追加EFI310について詳しく説明する。図10に通常ECU300の構成、並びにインジェクタ250及びイグナイタ240との電気的接続関係を示す。また、図11に追加EFI310の構成、並びにインジェクタ250、イグナイタ240及び通常ECU300との電気的接続関係を示す。なお、本例では、エンジン2は4気筒エンジンであり、インジェクタ250及びイグナイタ240をそれぞれ4つずつ搭載している。
【0093】
まず、通常ECU300について説明する。通常車両の状態、つまり追加EFI310が接続される前の状態では、前述のようにコネクタ330Aと330Bは接続され、コネクタ330Cと330Dは接続されている(図9参照)。よって、各気筒のインジェク250はスイッチ341と直列接続される。即ち、各気筒について、12V電源→インジェクタ250→スイッチ341→GND(接地)という電気回路が構成される。通常ECU300は、スイッチ341をオン/オフすることにより、インジェクタ250による噴射の有無を制御する。
【0094】
一方、各気筒のイグナイタ240は12V電源とGNDの間に接続されている。通常ECU300は、スイッチ342を介して点火指示信号IGT1〜4を各イグナイタ240に供給して点火を実行する。なお、抵抗343は各イグナイタ240の点火のフェイルチェックのために設けられている。
【0095】
このような構成により、通常車両の状態では、通常ECU300は、各気筒毎に、スイッチ341を制御して噴射制御を行い、かつ、スイッチ342を制御して点火制御を行う。
【0096】
さて、これに対して図11に示す追加EFI310が接続されると、車両はアイドリングストップ機能を有するエコラン車両となる。図11に示す各コネクタは図10に示すコネクタ330A〜Dに接続される。よって、インジェクタ250及びイグナイタ240と通常ECU300との間に、図11に示す追加EFI310が挿入されることになる。
【0097】
インジェクタ側の電気的接続に関しては、図11に示すように、追加EFI310内のインジェクタ側の各スイッチ338は、通常ECU300内の各スイッチ341と並列に接続されることになる。よって、追加EFI310は、スイッチ338を制御することにより、通常ECU300によらず各気筒毎の燃料噴射を制御することが可能となる。
【0098】
また、ここで重要なことは、インジェクタ側の12V電源とインジェクタ250との間に電源遮断スイッチ336が挿入されることである。即ち、インジェクタ側の電気的構成は、12V電源→電源遮断スイッチ336→インジェクタ250→スイッチ338及びスイッチ341の並列接続→GNDとなる。よって、追加EFI310が電源遮断スイッチ336をオフすることにより、通常ECU300によるスイッチ341の制御及び追加EFI310によるスイッチ338の制御は無効化される。言い換えれば、通常ECU300が車両停止中にエンジンをアイドリング回転に維持しようとしてスイッチ341を制御して燃料噴射指示を出力しても、追加EFI310が電源遮断スイッチ336をオフにしてしまえば、燃料噴射は強制的に停止される。
【0099】
また、イグナイタ側の接続も基本的にはインジェクタ側と同様の考え方に基づく。つまり、電源遮断スイッチ335により、各イグナイタへの電源供給が遮断される。図10及び図11からわかるように、イグナイタ側の電源ラインの接続状態は、12V電源→電源遮断スイッチ335→イグナイタ250→GNDとなる。よって、車両停止時に通常ECU300がエンジン2のアイドリング回転を維持しようとして点火指示を出力しても、追加EFI310が電源遮断スイッチ335をオフにしてしまえば、通常ECU330からの点火指示は無効化される。
【0100】
また、追加EFI310内のイグナイタ側の各スイッチ337は、通常ECU300内の各スイッチ342と並列接続されることになる。よって、追加EFI310は、スイッチ337を制御することにより、独自にイグナイタ240による各気筒毎の点火制御を行うことができる。
【0101】
さらに、図11に示すように、追加EFI310にはエンジン2の各部に設けられたセンサ出力が状態把握信号350として入力されている。追加EFI310はこれらのセンサ出力に基づいて、アイドリングストップにおけるエンジン停止条件やエンジン始動条件などを判定を行い、判定結果に基づいてエンジン停止許可やエンジン始動要求を生成して、エンジンの停止制御や始動制御を実施する。
【0102】
なお、例えばアイドリングストップ実施中にエンジン停止制御に失敗して適切なクランク角度位置にエンジンを停止できなかった場合などには、追加EFI310はスタータモータ360に駆動信号を供給し、スタータモータ360によりクランキングを行ってエンジンを始動させることができるように構成されている。
【0103】
次に、上述の追加EFIシステムによるアイドリングストップ時の制御例について説明する。図12は、エンジン停止制御時の各気筒の行程図、並びに通常ECU及び追加EFIから出力される制御信号のタイミングチャートである。また、図13はエンジン始動制御時の各気筒の行程図、並びに通常ECU及び追加EFIから出力される制御信号のタイミングチャートである。
【0104】
まず、図12を参照して、停止制御例について説明する。追加EFIシステムによる停止制御は基本的には図7を参照して説明した停止制御と同様である。即ち、停止時圧縮行程気筒を予め予測しておき、エンジン停止前にその気筒に燃料噴射を行っておく。
【0105】
図12を参照すると、追加EFI310は、図11に示す状態把握信号350に基づいてアイドリングストップによるエンジン停止条件が具備されたか否かを判定し、具備されたときにエンジン停止許可信号をオンとする(時刻t1)。この後、追加EFI310はエンジン停止制御を開始する。その場合でも、通常ECU300は通常車両状態と同様に、エンジンをアイドリング回転数に維持すべく燃料噴射指示及び点火指示を出力し続ける(図12の行程図の各矢印及び符号(▽)を参照)。しかし、追加EFI310は前述のように電源遮断スイッチ336によりインジェクタ250による燃料噴射を強制的に禁止するので、結果的に燃料噴射は行われない。電源遮断スイッチ336による燃料カット信号が図12に示されている。エンジン停止許可信号がオンとなった時刻t1以後は、電源遮断スイッチ336により燃料カットが実施される。よって、図12の行程図からもわかるように、通常ECU300からは燃料噴射指示が出力されているにも拘わらず、電源遮断スイッチ336により強制的に燃料カットが実施されている。但し、停止時圧縮行程気筒に燃料を封入しておくため、矢印210aに示すように、追加EFI310は時刻t5〜t6の間だけ一時的に燃料カットを中断する。これにより、通常ECU300から出力された燃料噴射指示は時刻t5〜t6の間だけ有効となり、停止時圧縮行程気筒(図12の例では#3気筒)に燃料が噴射される。その後は、再び燃料カット信号がオンとなり(時刻t6)、追加EFI310が電源遮断スイッチ336をオンして燃料カットを実施するので、通常ECU300からの燃料噴射指示は無効化される。
【0106】
また、時刻t2〜t3の間は、前述のように停止制御のためのモータリングが実施される。さらに、時刻t7では追加EFI310がイグナイタ240側の電源遮断スイッチ335をオンすることにより、点火カットを実施する。燃料カットの場合と同様に、通常ECU300はアイドリング回転を維持しようとして点火指示をイグナイタへ出力し続けるのであるが、追加EFI310が電源遮断スイッチ335をオンして点火カットを行うことにより、通常ECU300からの点火指示は無効化される。その結果、時刻t7以後は点火が禁止される。
【0107】
なお、通常ECUが燃料噴射指示及び点火指示を出力しているにも拘わらず変料噴射や点火が行われない場合、通常ECUはリセット状態となるので、通常ECUの制御自体に問題は生じない。
【0108】
このように、停止制御時には、通常ECU300はエンジンのアイドリング回転を維持しようとして燃料噴射指示及び点火指示を出力し続けるが、追加EFI310が電源遮断スイッチ335及び336を制御して、通常ECU300からの燃料噴射指示及び点火指示を無効化することにより、アイドリングストップ時の停止制御が可能となる。
【0109】
次に、図13を参照して、エンジン始動制御例について説明する。前提として、図13に示すように、停止時圧縮行程気筒である#3気筒内に燃料が封入された状態でエンジン2は実停止位置に停止しているものとする。ここで、追加EFI310は、状態把握信号350に基づいてエンジン始動条件が具備されたと判定すると、エンジン始動要求を出力するとともに、モータジェネレータによるモータリングを開始する。通常ECU300は、エンジンが一旦停止してしまうと、エンジンが回転を開始し、クランクシャフトが動き出して気筒判別が可能な状態となるまでは、燃料噴射指示や点火指示を出力することができないように構成されている。つまり、図13に示すように、気筒判別が可能となるまでの間は、通常ECU300からはインジェクタやイグナイタへ指示を供給することはできない。その間に、追加EFI310は燃料噴射や点火を制御してアイドリングストップ時の始動制御を実行する。
【0110】
具体的には、図13において、追加EFI310は、エンジン始動要求後まず吸気行程気筒(#4気筒)に燃料噴射を行い(矢印270)、さらに停止時圧縮行程気筒である#3気筒に点火を実施する(符号275)。この点火によりクランクシャフトの回転駆動力が生まれる。また、同時に追加EFI300はモータ制御装置4を制御してモータジェネレータ3によるモータリングを行う。その後も、追加EFI310は吸気行程となる気筒に燃料噴射を行い(矢印271、272)、膨張行程となる気筒に点火を実施する(符号276)。こうして、追加EFI310の制御によりアイドリングストップ時のエンジン始動制御が行われる。そして、気筒判別が可能となると(波線280以後)、通常ECUからの燃料噴射指示及び点火指示に従って燃料噴射及び点火が実施され、エンジンは通常の走行状態となる。
【0111】
以上のように、エンジンの始動制御時には、エンジンが回転を始め、通常ECU300が気筒判別可能となるまでの間は追加EFI310が燃料噴射及び点火を制御してアイドリングストップ状態からのエンジン始動制御を実施する。そして、気筒判別が可能となった後は、通常ECUからの燃料噴射指示及び点火指示に従ってエンジンを動作させる。
【0112】
なお、このようにアイドリングストップ時のエンジン始動制御時には追加EFI310が燃料噴射や点火を制御することになるが、追加EFI310は、例えばスタータモータを利用した通常のエンジン始動時などにおいて通常ECU300が出力する燃料噴射量や点火時期などをモニタし、最適な制御量を記憶しておくことができる。よって、アイドリングストップ時のエンジン始動制御においては、記憶しておいた適切な制御量に従って燃料噴射指示や点火指示を出力することにより、エンジンを円滑に始動させることが可能となる。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、通常車両に対して追加ユニットを付加することにより、アイドリングストップ機能を実現することができる。その際、追加ユニット側に何らかの不具合などが生じた場合でも、アイドリングストップが不能となったり始動性が悪化するだけですみ、通常のECUにより通常走行は可能である。よって、既存の通常車両に対して簡易のアイドリングストップ機能を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する車両のシステム構成を示す。
【図2】図1に示す車両のエンジンの概略構成図を示す。
【図3】クランク角センサ及びカム角センサの構成を示す図である。
【図4】クランク角センサ及びカム角センサの出力信号波形を示す。
【図5】エンジン停止制御によるエンジン回転数の推移を示すグラフである。
【図6】エンジン停止制御によるクランク角度位置の変化の様子を示すグラフである。
【図7】エンジン停止制御例を示す。
【図8】停止制御後のエンジン始動制御例を示す。
【図9】本発明による追加EFIシステムの構成を示す。
【図10】図9に示す通常ECUの構成を示す。
【図11】図9に示す追加EFIの構成を示す。
【図12】追加EFIシステムによるエンジン停止制御例を示す。
【図13】追加EFIシステムによるエンジン始動制御例を示す。
【符号の説明】
1 DCスタータ
2 エンジン
3 モータジェネレータ
4 モータ制御装置
5 電源装置
6 電源ケーブル
7 動力伝達装置
8 車輪
9 ECU
10 車両
Claims (7)
- 所定の停止条件が成立した場合に内燃機関を自動停止し、かつ、所定の始動条件が成立した場合に前記内燃機関を自動始動する内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の電子制御ユニットは、前記内燃機関の自動停止及び自動始動のために要求される燃焼制御以外の燃焼制御を実行する主電子制御ユニットと、前記内燃機関の自動停止及び自動始動のために要求される燃焼制御を実行する副電子制御ユニットと、を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記副電子制御ユニットが正常に動作しない場合には、前記主電子制御ユニットが前記内燃機関の自動停止及び自動始動時に要求される燃焼制御以外の燃焼制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記主電子制御ユニットは運転者のイグニッションキー操作に応じて前記内燃機関の始動を制御する通常始動制御を実行し、
前記副電子制御ユニットは、前記通常始動制御における制御量に基づいて、前記内燃機関の自動始動のための燃焼制御における制御量を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記主電子制御ユニットは、車両の停止中に前記内燃機関のアイドリングのための燃料噴射指示及び点火指示を出力し、
前記副電子制御ユニットは、前記内燃機関の自動停止及び自動始動時には、前記主電子制御ユニットから出力される前記燃料噴射指示及び点火指示を無効化することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記副電子制御ユニットは、前記主電子制御ユニットから出力される前記燃料噴射指示及び点火指示を無効化している間に、前記内燃機関の自動停止及び自動始動のために要求される制御信号を前記内燃機関に供給することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記主電子制御ユニットは、前記副電子制御ユニットなしで、前記内燃機関の自動停止及び自動始動時に要求される燃焼制御以外の燃焼制御を実行可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記副電子制御ユニットは、前記主電子制御ユニットに対して脱着可能に構成されることを特徴とする請求項6に記載の内燃機関の制御装置。
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