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JP4004133B2 - 炭窒化チタン被覆工具 - Google Patents

炭窒化チタン被覆工具 Download PDF

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JP4004133B2
JP4004133B2 JP07656198A JP7656198A JP4004133B2 JP 4004133 B2 JP4004133 B2 JP 4004133B2 JP 07656198 A JP07656198 A JP 07656198A JP 7656198 A JP7656198 A JP 7656198A JP 4004133 B2 JP4004133 B2 JP 4004133B2
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広志 植田
正幸 権田
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は炭窒化チタン被覆工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、被覆工具は超硬質合金、高速度鋼、特殊鋼からなる基体表面に硬質皮膜を化学蒸着法や、物理蒸着法により成膜して作製される。
このような被覆工具は皮膜の耐摩耗性と基体の強靭性とを兼ね備えており、広く実用に供されている。特に、高硬度材を高速で切削する場合、切削工具の刃先温度は1000℃前後まで上がり、被削材との接触による摩耗や断続切削等の機械的衝撃に耐える必要がある。このため、耐摩耗性と強靭性とを兼ね備えた被覆工具が重宝されている。
【0003】
硬質皮膜には、耐摩耗性と靭性に優れた周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる非酸化膜や耐酸化性に優れた酸化膜が単層あるいは多層膜状に形成されて用いられる。非酸化膜では例えばTiC、TiN、TiCNが利用され、酸化膜では特にα型酸化アルミニウムやκ型酸化アルミニウム等が利用されている。特に、周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭窒化物からなる非酸化膜は靭性と耐摩耗性に優れており被覆工具に多用されているが、膜中に発生するクラックを低減する等改善の余地が多く残っている。
【0004】
このため本発明者等は特許公報第2660180号や特願平8−195554により柱状晶の形態を持つ炭窒化膜を提案してきた。また、他にも、特開平6−158324や、特開平6−158325、特開平7−62542、特開平7−100701等が従来より提案されている。
【0005】
しかし、上記従来の提案はチタンの炭窒化物層の膜厚やマクロ組織、X線回折強度等に着目した内容であり、チタンの炭窒化物層の粒界の強度を高めるとともに隣接する他の層との膜密着性を高めることが可能なミクロ組織について言及していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の非酸化膜被覆工具におけるTiの炭窒化物層の欠点を踏まえて、本発明が解決しようとする課題はチタンの炭窒化物層の粒界の強度を高めるとともにチタンの炭窒化物層上に形成された他の層との膜密着性を高めることにより、従来に比して格段に切削耐久特性に優れた炭窒化チタン被覆工具を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究してきた結果、周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭窒化物からなる非酸化膜に双晶構造を持った結晶粒を含有させることにより、さらには特にチタン等の炭窒化物層に双晶構造を持った結晶粒を含有させることにより、これらの皮膜を被覆した工具の切削耐久特性等が優れることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち本発明は、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物、並びに酸化アルミニウムのいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を有しその少なくとも一層がチタンの炭窒化物層からなる炭窒化チタン被覆工具において、前記チタンの炭窒化物層が双晶構造を持った結晶粒を含有する炭窒化チタン被覆工具である。本発明の被覆工具は、チタンの炭窒化物層が双晶構造を持っておりかつ後述の図1、図4、図7からもわかるように双晶を形成する結晶粒が相互に直接接触しておりかつエピタキシャルに成長しているため、粒界の強度が高くなり良好な切削耐久特性が実現されていると判断される。
【0009】
また、本発明は、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物、並びに酸化アルミニウムのいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を有しその少なくとも一層がチタンの炭窒化物層からなる炭窒化チタン被覆工具において、前記チタンの炭窒化物を主とする層はfcc構造を持ち、その格子定数が0.427〜0.430nmである炭窒化チタン被覆工具である。格子定数が0.427nm未満の時はTiN膜(格子定数0.424nm)の特性に近く硬度が低くなり、0.430nmを超えるとTiC膜(格子定数0.4327nm)の特性に近く耐酸化性が低くなり、TiCN膜の特長である耐摩耗・耐酸化性のバランスが悪くなる欠点が生じる。
【0010】
また、本発明の被覆工具のチタンの炭窒化物層のX線回折強度はI(422)が最大であり、かつI(311)、I(220)、I(111)のいずれかがこれに次ぐ場合にチタンの炭窒化物層が双晶構造を持っており、優れた切削耐久特性が実現される。あるいはI(220)が最大であり、かつI(311)、I(422)、I(111)のいずれかがこれに次ぐ場合にチタンの炭窒化物層が双晶構造を持っており、優れた切削耐久特性が実現される。
【0011】
また、本発明の被覆工具はチタンの炭窒化物層の上に形成されている層も双晶構造を持ち、このチタンの炭窒化物層の上に形成されている層まで双晶構造が連続的に形成されている。このようにチタンの炭窒化物層とその上に形成されている層との間が連続的に形成されているので、両層間の密着性が優れるとともに各層内における粒界の強度が高められて優れた切削耐久特性が得られるものと判断される。
【0012】
また、前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層がチタンの炭化物、チタンの炭酸化物、チタンの炭窒酸化物、酸化アルミニウム膜のいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜からなることが好ましい。
【0013】
また、前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層が(422)面または(220)面からのX線回折強度が最も大きいことは両層間が何らかの形で連続的に成膜されていることを示し、良好な両層の密着性を実現したものと考えられる。
【0014】
また、チタンの炭窒化物層のPR(hkl)とその表面上に成膜された非酸化膜層のPR(hkl)とが比例することは両層間が何らかの形で連続的に成膜されていることを示し、良好な両層の密着性を実現したものと考えられる。
具体的にいえば、前記チタンの炭窒化物層の等価X線回折強度比(x)と前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層の等価X線回折強度比(y)との関係がy=ax+b で線形近似され、a=0.5〜1.5、b=−1〜1で表されるように構成された炭窒化チタン被覆工具が好ましく、また、その相関の強さを示す相関関数R2が0.9以上であることが好ましい。
また、前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層が前記チタンの炭窒化物層からエピタキシャルに成長していることが好ましい。
また、前記チタンの炭窒化物層または前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層の上にさらにチタンの酸化物層、チタンの炭酸化物層、チタンの窒酸化物層、チタンの炭窒酸化物層、酸化アルミニウム層のいずれか一種の単層皮膜または2種以上の多層皮膜が形成されていてもよい。
また、周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの少なくとも一種以上とFe、Ni、Co、W、Mo、Crのうちの少なくとも一種以上とからなる超硬質合金を基体とすることが実用的である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳説する。
本発明の被覆工具において、TiCN層のX線回折ピークの同定は、ASTMファイル(Powder Diffraction File Published by JCPDS International Center forDiffraction Data)に記載がないため、TiCとTiNのX線回折データ(ASTMファイルNo.29−1361とNo.38−1420)および本発明品を実測して得たX線回折パターンから求めた表1の数値を用いて行った。なお、TiCNのX線回折強度I0は表2に示したTiCのX線回折強度I0と同一と仮定した。
【0016】
【表1】
Figure 0004004133
【0017】
表2にASTMファイル No.32−1383に記載されているTiCのX線回折強度I0(hkl)とd定数からX線源に上記CuKα1線を用いた時に得られる2θ値を計算した結果をまとめた。X線回折強度I0(hkl)は等方的に配向しているTiC粉末粒子のX線回折強度を表している。
【0018】
【表2】
Figure 0004004133
【0019】
等価X線回折強度比PR(hkl)はTiCN、TiCの(hkl)面からのX線回折ピーク強度を定量的に評価するために次式により定義した。この値は表1、表2に記載された等方粒子のX線回折ピーク強度I0(hkl)に対する実測した皮膜のX線回折ピーク強度I(hkl)の相対強度を示している。PR(hkl)値が大きい程(hkl)面からのX線回折ピーク強度が他のX線回折ピーク強度よりも強く、(hkl)面方向に測定物(皮膜)が配向していることを示している。
PR(hkl)={I(hkl)/I0(hkl)}/[Σ{I(hkl)/I0
(hkl)}/8]・・・・・式(1)
但し、(hkl)=(111)、(200)、(220)、(311)、
(222)、(420)、(422)、(511)
【0020】
本発明の被覆工具を製作するために既知の成膜方法を採用できる。例えば、通常の化学蒸着法(熱CVD)、プラズマを付加した化学蒸着法(PACVD)、イオンプレーティング法等を用いることができる。用途は切削工具に限るものではなく、チタンの炭窒化物層を含む単層あるいは多層の硬質皮膜を被覆した耐摩耗材や金型、溶湯部品等でもよい。
【0021】
本発明の被覆工具において、チタンの炭窒化物層はTiCNに限るものではない。例えばTiCNにCr、Zr、Ta、Mg、Y、Si、Bを単独または二種以上組み合わせて0.3〜10重量%添加した膜でもよい。0.3重量%未満ではこれらを添加する効果が現れず、10重量%を超えるとTiCN膜の耐摩耗、高靭性の効果が低くなる欠点が現れる。
また、チタンの炭窒化物層はCH3CNとTiCl4とを反応させて成膜する所謂MT−TiCN膜に限るものではなく、CH4、N2、TiCl4を反応させて成膜する従来のTiCN膜でもよい。
また、本発明の被覆工具において、チタンの炭窒化物層の上層はTiC、TiCO、TiCNOに限るものではない。例えばTiNあるいは原料ガスにCH3CNガスを用いずにN2ガスを用いて成膜した他のTiCN等の膜でもよく、さらには例えばTiCにCr、Zr、Ta、Mg、Y、Si、Bを単独または二種以上組み合わせて0.3〜10重量%添加した膜でもよい。0.3重量%未満ではこれらを添加する効果が現れず、10重量%を超えるとTiC膜の耐摩耗の効果が低くなる欠点が現れる。
また、上記層には本発明の効果を消失しない範囲で不可避の添加物、不純物を例えば数重量%程度まで含むことが許容される。
また、下地膜はTiNに限るものではなく、例えば下地膜としてTiC膜を成膜した場合も下記実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
本発明の被覆工具に被覆することができる酸化アルミニウム膜としてκ型酸化アルミニウム単相またはα型酸化アルミニウム単相の膜を用いることができる。また、κ型酸化アルミニウムとα型酸化アルミニウムとの混合膜でもよい。また、κ型酸化アルミニウムおよび/またはα型酸化アルミニウムと、γ型酸化アルミニウム、θ型酸化アルミニウム、δ型酸化アルミニウム、χ型酸化アルミニウムの少なくとも一種以上とからなる混合膜でもよい。また、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウム等に代表される他の酸化物との混合膜でもよい。
【0023】
本発明の被覆工具において、チタンの炭窒化物層、チタンの炭化物層、チタンの炭酸化物層、チタンの炭窒酸化物層、酸化アルミニウム層は必ずしも最外層である必要はなく、例えばさらにその上に少なくとも一層のチタン化合物(例えばTiN層等)を被覆してもよい。
【0024】
次に本発明の被覆工具を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものでない。
下記の実施例および比較例において、単に%と記しているのは重量%を意味している。
【0025】
(実施例1)
WC72%,TiC8%,(Ta,Nb)C11%,Co9%の組成よりなる切削工具用超硬基板をCVD炉内にセットし、その表面に、化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成した。続いて、750〜950℃でTiCl4ガスを0.5〜2.5vol%、CH3CNガスを0.5〜2.5vol%、N2ガスを25〜45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力を20〜100Toorの条件として反応させることにより6μm厚さのTiCN膜を成膜した。その後、950〜1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比を4〜10としたTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル2,200ml/分で5〜30分間流してまず成膜し、そのまま連続して本構成ガスにさらに2.2〜110ml/分のCO2ガスを追加して5〜30分間成膜することによりチタンの炭化物および炭酸化物からなる層を作製した。
続いてAl金属小片を詰め350℃に保温した小筒中にH2ガス310ml/分とHClガス130ml/分とを流すことにより発生させたAlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分とをCVD炉内に流し、1010〜1020℃で反応させることにより所定の厚さのα型酸化アルミニウム膜を成膜し本発明の被覆工具を得た。
【0026】
図1は実施例1の条件で作製した本発明の代表的な被覆工具のミクロ組織の一例を示している。また図2は図1に対応した模式図である。
図1は、チタンの炭窒化物層(図2の11)、チタンの炭化物および炭酸化物からなる層(図2の12)、酸化アルミニウム層(図2の13)部分のミクロ組織を(株)日立製作所製の透過電子顕微鏡(H−9000NA)により5万倍で撮影した写真である。
図1、図2より、チタンの炭窒化物層の結晶粒(図2の11a、11bはその一部)上にチタンの炭化物および炭酸化物からなる層(図2の12a、12bはその一部)が形成されている。さらにその上に酸化アルミニウム層(図2の13aはその一部)が形成されている。図1、図2に示される11a、11b部分の電子線回折像を上記透過電子顕微鏡により照射径25nmで観察した結果、両者はfcc結晶構造を持つとともに(110)面が同一面内(図1の写真面内)にあることがわかった。さらに11aと11bとが11cを境界にして鏡映の関係にあることから本発明の被覆工具はチタンの炭窒化物層11が双晶構造を持った結晶粒を含有していることがわかった。また、その上に成膜されているチタンの炭化物および炭酸化物からなる層中の12a、12bの電子線回折像から両者もfcc結晶構造の(110)面が同一面内(図1の写真面内)にあることがわかった。よって、12a、12bが双晶関係にあることや、チタンの炭窒化物層11a、11b上にチタンの炭化物および炭酸化物からなる層12a、12bがエピタキシャルに成長していることがわかる。また、図1、図2より双晶境界部11cと12cが連続していることがわかる。
ここで、図1の透過電子顕微鏡写真は成膜面の断面を厚さ20μm以下に研磨した後、さらにイオンミリングにより膜断面の厚さを極端に薄くした状態で電子線を膜断面を透過させて撮影したものである。このため、チタンの炭窒化物層および/またはチタンの炭化物層、炭酸化物層の双晶部分が観察される確率は低いと考えられる。したがって、図1のように一視野に一乃至二箇所の双晶部分が観測されるということはかなりの頻度でチタンの炭窒化物層および/またはチタンの炭化物層、炭酸化物層に双晶部分が存在していると判定される。
【0027】
図3は実施例1の条件で作製した本発明品の代表的な皮膜部分を試料面にして理学電気(株)製のX線回折装置(RU−200BH)を用いて2θ−θ走査法により2θ=10〜145度の範囲で測定したX線回折パターンである。X線源にはCuKα1線(λ=0.15405nm)を用い、ノイズ(バックグランド)は装置に内蔵されたソフトにより除去した。
図3のX線回折パターンから、TiCN(チタンの炭窒化物層)の各ピークの2θ値は表1の2θ値とよい符合を示した。なお、図3等のX線回折パターンから実測される2θ値は表1に記載されている2θ値の前後で微妙に異なるため、測定されたX線回折パターンにおけるTiCN(炭窒化チタン)のピークの同定は、2θ値とともに、その前後のWCのピーク、TiCのピーク、TiCNのピーク、TiNのピーク、κ-Al23のピーク、α-Al23のピーク等との位置関係も考慮して決定した。
また、図3から、チタンの炭窒化物層のX線回折強度I(hkl)は面間距離dが0.0875nmの(422)面が最も強く、次に面間距離dが0.1516nmの(220)面あるいは0.1293nmの(311)面、その次に面間距離dが0.2477nmの(111)面の強度が強いことがわかる。
さらに、図3から、本発明品のチタンの炭窒化物層の格子定数を求めたところ、表3の結果が得られた。表3より、測定誤差の非常に小さな2θ≧40度において、本発明品のチタンの炭窒化物層の格子定数は平均値±3σn-1で0.428〜0.429nmの範囲にあった。なお、(111)面は2θが低角度のため測定誤差によって見掛け上格子定数が大きくなっている。また、(400)面は回折ピークが弱く読み取りが困難であり、(511)面は回折ピーク強度が低く、しかもピーク幅が広く、2θ値の読み取りが困難であるため格子定数の計算からは除外した。
【0028】
【表3】
Figure 0004004133
【0029】
次に、実施例1の条件で製作した切削工具5個を用いて鋳物の被削材を以下の条件で1時間連続切削試験した後に、各切削工具のチタンの炭窒化物層や酸化アルミニウム層の剥離状況を倍率200倍の光学顕微鏡により観察し、評価した。
被削材 FC250(HB230)
切削速度 300m/min
送り 0.3mm/rev
切り込み 2.0mm
水溶性切削油使用
この切削試験の結果、上記本発明品はいずれも1時間連続切削後もチタンの炭窒化物層やアルミナ層の剥離が見られず切削工具として耐久性に優れていることが判明した。
【0030】
次に、実施例1の条件で製作した切削工具5個を用いて以下の条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察し、評価した。
被削材 SCM材
切削条件 100 m/min
送り 0.3 mm/rev
切り込み 2.0 mm
この切削試験後の本発明品はいずれも刃先が健全で欠損不良は認められず、切削耐久特性が優れていることがわかった。
【0031】
(従来例1)
チタンの炭窒化物層のミクロ組織と切削特性との相関を明確にするために行った従来例を以下に説明する。
実施例1と同様に組成がWC72%、TiC8%、(Ta、Nb)C11%、Co9%の切削工具用超硬基板の表面に化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成した。次に、990℃でTiCl4ガスを1〜2vol%、CH4ガスを3〜6vol%、N2ガスを32vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し成膜圧力75Toorの条件で反応させることにより6μm厚さのTiCN膜を成膜した。その後、950〜1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が4〜10のTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル2,200ml/分で5〜30分間流してまず成膜し、そのまま連続して本構成ガスにさらに2.2〜110ml/分のCO2ガスを追加して5〜30分間成膜することによりチタンの炭化物および炭酸化物からなる層を作製した。
続いてAl金属小片を詰め350℃に保温した小筒中にH2ガスを310ml/分とHClガス130ml/分とを流すことにより発生させたAlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分とをCVD炉内に流し1010〜1020℃で反応させることにより所定の厚さのα型酸化アルミニウム層を成膜し従来の炭窒化チタン被覆工具を得た。
この従来の炭窒化チタン被覆工具において、チタンの炭窒化物層近傍を上記と同様に透過電子顕微鏡で観察したが、チタンの炭窒化物層に双晶構造部は見られなかった。
【0032】
次に、従来例1の条件で作製した切削工具5個を用いて実施例1と同一の条件で連続切削試験を行った結果、これら従来例品はいずれも10分間連続切削後にチタンの炭窒化物層や酸化アルミニウム層の剥離が見られた。
また、従来例1の条件で作製した切削工具5個を実施例1と同一条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察した結果、いずれにも大きな欠けが発生しており切削工具として劣っていることが判明した。
上記の連続切削試験および断続切削試験で剥離や欠けを発生した部分をミクロ観察したところ、剥離や欠けのほとんどが粒界部から発生していた。
【0033】
(実施例2)
組成がWC72%,TiC8%,(Ta,Nb)C11%,Co9%の切削工具用超硬基板をCVD炉内にセットし、その表面に化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成した。次に、750〜950℃でTiCl4ガスを0.5〜2.5vol%、CH3CNガスを0.5〜2.5vol%、N2ガスを25〜45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し成膜圧力を20〜100Toorの条件で反応させることにより6μm厚さのTiCN膜を成膜した。その後、950〜1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が4〜10のTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル2,200ml/分で5〜30分間流してまず成膜し、そのまま連続して本構成ガスにさらに2.2〜110ml/分のCO2ガスを追加して5〜30分間成膜することによりチタンの炭化物および炭酸化物からなる層を作製した。
次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分およびH2Sガス8ml/分とをCVD炉内に流し1010℃でα型酸化アルミニウム膜を成膜した。その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50ml/分とN2ガス1.3l/分を流し1010℃で窒化チタン膜を形成した本発明の炭窒化チタン被覆工具を作製した。
【0034】
図4は実施例2の条件で製作した本発明の代表的な被覆工具において観察されたチタンの炭窒化物層、チタンの炭化物および炭酸化物からなる層、および酸化アルミニウム層近傍の透過電子顕微鏡写真の一例である。図5は図4に対応した模式図である。
図4、図5において、チタンの炭窒化物層の結晶粒(図5の21a、21bはその一部)上にチタンの炭化物および炭酸化物からなる層(図5の22a、22bはその一部)が形成されており、さらにその上に酸化アルミニウム層(図5の23a、23bはその一部)が形成されている。
図4、図5に示される21a、21b部分の電子線回折像を(株)日立製作所製の透過電子顕微鏡H−9000NAにより照射径25nmで観察した結果、両者はfcc結晶構造を持つとともに(110)面が同一面内(図4の写真面内)にあり、21aと21bとが21cを境界にして鏡映の関係にあることがわかった。すなわち、本発明の被覆工具を構成するチタンの炭窒化物層が双晶構造を持っていることを確認した。また、その上に成膜されているチタンの炭化物および炭酸化物からなる層中の22a、22bからも両者が双晶関係にあることを示す電子線回折像が得られた。さらに、双晶境界部21cと22cとが連続していることがわかった。
【0035】
図6は実施例2の条件で作製した本発明の被覆工具の皮膜部分を試料面にして2θ−θ走査法により測定したX線回折パターンを示している。
図6から、チタンの炭窒化物層のX線回折強度は面間距離dが0.0875nmの(422)面が最も強く、次いで面間距離dが0.1516nmの(220)面あるいは面間距離dが0.2477nmの(111)面の強度が強いことがわかる。
さらに、図6から、本発明品のチタンの炭窒化物層の格子定数を求めたところ、表4の結果が得られた。表4より、測定誤差の非常に小さな2θ≧40度において、本発明品のチタンの炭窒化物層の格子定数は平均値±3σn-1で0.427〜0.430nmの範囲にあった。なお、(111)面は2θが低角度のため測定誤差によって見掛け上格子定数が大きくなっている。また、(400)面は回折ピークが弱く読み取りが困難であり、(511)面は回折ピーク強度が低くしかもピーク幅が広く、2θ値の読み取りが困難であるため格子定数の計算からは除外した。
【0036】
【表4】
Figure 0004004133
【0037】
次に、実施例2の条件で製作した切削工具5個を用いて鋳物の被削材を以下の条件で1時間連続切削試験した後に、各切削工具のチタンの炭窒化物層や酸化アルミニウム層の剥離状況を倍率200倍の光学顕微鏡により観察し、評価した。
被削材 FC25(HB230)
切削速度 300m/min
送り 0.3mm/rev
切り込み 2.0mm
水溶性切削油使用
この切削試験の結果、上記本発明品はいずれも1時間連続切削後もチタンの炭窒化物層や酸化アルミニウム層の剥離が見られず切削耐久特性が優れていることが判明した。
また、実施例2の条件で製作した切削工具5個を以下の条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察し、評価した。
被削材 SCM材
切削条件 100 m/min
送り 0.3 mm/rev
切り込み 2.0 mm
この切削試験後の上記本発明品はいずれも刃先が健全で欠損不良等は全く認められなかった。
【0038】
(従来例2)
チタンの炭窒化物層のミクロ組織と炭窒化チタン被覆工具の切削耐久特性との相関をさらに明確にするために行った従来例を以下に説明する。
上記実施例と同様にWC72%、TiC8%、(Ta、Nb)C11%、Co9%の組成の切削工具用超硬基板の表面に化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成した。次に、990℃でTiCl4ガスを1〜2vol%、CH4ガスを3〜6vol%、N2ガスを32vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し成膜圧力75Toorの条件で反応させることにより6μm厚さのTiCN膜を成膜した。その後、950〜1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が4〜10のTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル2,200ml/分で5〜30分間流してまず成膜し、そのまま連続して本構成ガスにさらに2.2〜110ml/分のCO2ガスを追加して5〜30分間成膜することによりチタンの炭化物および炭酸化物からなる層を作製した。
次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分およびH2Sガス8ml/分とをCVD炉内に流し1010℃でα型酸化アルミニウム膜を成膜した。その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50ml/分とN2ガス1.3l/分を流し1010℃で窒化チタン膜を形成した従来の炭窒化チタン被覆工具を作製した。
この従来の被覆工具においてチタンの炭窒化物層近傍を実施例2と同様に透過電子顕微鏡で観察したが、チタンの炭窒化物層に双晶構造部は見られなかった。
【0039】
従来例2の条件で作製した切削工具5個を用いて上記実施例と同一の条件で連続切削試験を行った結果、この従来例品はいずれも10分間連続切削後にチタンの炭窒化物層や酸化アルミニウム層の剥離が見られた。
また、従来例2の条件で作製した切削工具5個を実施例2と同一条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察した結果、いずれにも大きな欠けが発生しており、切削工具として耐久性が劣っていることが判明した。
前記の連続切削試験、断続切削試験により発生した剥離、欠けはほとんどが粒界部から発生していた。
【0040】
(実施例3)
WC72%,TiC8%,(Ta,Nb)C11%,Co9%の組成の切削工具用超硬基板をCVD炉内にセットし、その表面に、化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成した。次に、750〜950℃でTiCl4ガスを0.5〜2.5vol%、CH3CNガスを0.5〜2.5vol%、N2ガスを25〜45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し成膜圧力を20〜100Toorの条件で反応させることにより6μm厚さのTiCN膜を成膜した。その後、950〜1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が4〜10のTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル2,200ml/分で120分間流してチタンの炭化物層を成膜した。次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO、CO2混合ガス150ml/分およびH2Sガス8ml/分とをCVD炉内に60分間流し1010℃でκ型酸化アルミニウムを成膜した。その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50ml/分とN2ガス1.3l/分を30分間流し1010℃で窒化チタン膜を成膜し本発明の被覆工具を作製した。
【0041】
図7は実施例3の条件で作製した代表的な炭窒化チタン被覆工具において、チタンの炭窒化物層とチタンの炭化物層と酸化アルミニウム層の近傍を(株)日立製作所製の透過電子顕微鏡(H−9000NA)により5万倍で撮影した写真の一例である。図8は図7に対応した模式図である。
図7、図8より、チタンの炭窒化物層内に双晶構造を有する結晶粒(図8の31a、31b)が存在している。さらに、その上に成膜されているチタンの炭化物層にも双晶構造部分(図8の32a、32b)が存在しており、双晶境界部31cと32cとが連続している。このことから両者(31aと32a、31bと32b)が連続して形成されていることがわかる。
【0042】
図9は図7、図8における双晶部分32aの中央近傍の電子線回折像を(株)日立製作所製の透過電子顕微鏡H−9000NAにより照射径25nmで撮影したものである。同様に、図10は双晶部分32bの中央近傍の電子線回折像であり、図11は双晶境界部32cの中央近傍の電子線回折像である。さらに、図12は図9の、図13は図10の、図14は図11の電子線回折スポットの指数付けを各々行ったものである。図9〜図14より双晶部分32a、32bはいずれもfcc構造の(110)面が同一平面内に写っており、32aと32b部分の回折像は2−22、1−11、000、−11−1の各スポットを共有する鏡面になっており32cの粒界を境に32a部分と32b部分とが双晶関係にあることがわかる。
【0043】
また、図15は上記と同様にして図7、図8における双晶部分31aの中央近傍の電子線回折像を撮影したものである。同様に、図16は双晶部分31bの中央近傍の電子線回折像であり、図17は双晶境界部31cの中央近傍の電子線回折像である。さらに、図18は図15の、図19は図16の、図20は図17の電子線回折スポットの指数付けを各々行ったものである。図15〜図20より、上記32a、32b部分と同様に、31a、31b部分の両者もfcc構造の(110)面が同一平面内に写っており、31a部分と31b部分の回折像が2−22、1−11、000、−11−1の各スポットを共有する鏡面になっており31cの粒界を境に31a部分と31b部分とが双晶関係にあることがわかる。さらに、図7〜図20より31a、31bの双晶境界部31cと32a、32bの双晶境界部32cとは連続しており、チタンの炭窒化物層とその上に成膜された層との双晶構造部とが連続していること、また、31aと32aおよび31bと32bとはそれぞれの(110)面が平行に成長しており、32aと32bとは31aと31bとからエピタキシャルに成長していることがわかる。
【0044】
図21は実施例3の条件で作製した代表的な本発明の被覆工具の皮膜部分を上記実施例と同様にして試料面にして理学電気(株)製のX線回折装置(RU−200BH)を用いて2θ−θ法により2θ=10〜145°の範囲で測定したX線回折パターンである。
図21から本発明品のチタンの炭窒化物層のX線回折強度はTiCNの面間距離dが0.1516nmの(220)面が最も強く、次いでTiCNの面間距離dが0.2477nmの(111)面の強度が強いことがわかる。
【0045】
上記本発明品において、TiCN層およびTiC層部分のX線回折強度I(hkl)の測定結果を表5、表6にまとめた。さらに、表7、表8にそれぞれ表5、表6から求めた等価X線回折強度比PR(hkl)をまとめた。
【0046】
【表5】
Figure 0004004133
【0047】
【表6】
Figure 0004004133
【0048】
【表7】
Figure 0004004133
【0049】
【表8】
Figure 0004004133
【0050】
図22は表7、表8の本発明品No.31〜39におけるTiCN膜の等価X線回折強度比PR(hkl)とTiC膜の等価X線回折強度比PR(hkl)との相関を示している。
図22より、本発明品のチタンの炭窒化物層とこの層上に形成されたチタンの炭化物層とは等価X線回折強度比PR(hkl)が比例していることがわかる。すなわち、チタンの炭窒化物層の等価X線回折強度比(x)とこの層の上に形成されたチタンの炭化物層の等価X線回折強度比(y)との関係を線形近似:y=ax+bで求めたとき、a=0.5〜1.5、b=−1〜1の範囲に入ることがわかった。具体例を挙げれば、チタンの炭窒化物層を実質的に構成するTiCNとチタンの炭化物層を実質的に構成するTiCとの間のPR(hkl)の相関において、PR(422)の線形近似では y=0.88x+0.51 でかつ相関係数R2=0.97で表すことができた。また、PR(311)の線形近似でy=1.62x−0.57 でかつ相関係数R2=0.92で表すことができた。
【0051】
次に、図23は表7、表8に示したTiCN層とTiC層の等価X線回折強度比PR(111)、PR(220)、PR(311)、PR(422)を対象として相関を求めたものであり、両者の相関を y=1.03x+0.06 でかつ相関係数R2=0.92で表すことができた。
【0052】
次に、上記図21から、実施例3の条件で製作した本発明の被覆工具を構成するチタンの炭窒化物層の格子定数を求めたところ、表9の結果が得られた。表9より、測定誤差の非常に小さな2θ≧40度において、本発明品のチタンの炭窒化物層の格子定数は平均値±3σn-1で0.428〜0.430nmの範囲にあった。なお、(111)面は2θが低角度のため測定誤差によって見掛け上格子定数が大きくなっている。また、(400)面は回折ピークが弱く読み取りが困難であり、(511)面は回折ピーク強度が低く、しかもピーク幅が広く、2θ値の読み取りが困難であるため格子定数の計算からは除外した。
【0053】
【表9】
Figure 0004004133
【0054】
次に、実施例3の条件で製作した本発明の切削工具5個を用いて鋳物の被削材を以下の条件で1時間連続切削試験した後に、各切削工具のチタンの炭窒化物層や酸化アルミニウム層の剥離状況を倍率200倍の光学顕微鏡により観察した。
被削材 FC25(HB230)
切削速度 300m/min
送り 0.3mm/rev
切り込み 2.0mm
水溶性切削油使用
この切削試験の結果、上記本発明品はいずれも1時間連続切削後もチタンの炭窒化物層や酸化アルミニウム層の剥離が見られず切削工具として優れていることが判明した。
また、実施例3の条件で製作した切削工具5個を以下の条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察し、評価した。
被削材 SCM材
切削条件 100 m/min
送り 0.3 mm/rev
切り込み 2.0 mm
この切削試験後の上記本発明品はいずれも刃先が健全で欠損不良が認められず、切削耐久特性が優れていることがわかった。
【0055】
(従来例3)
本発明品と同様にWC72%、TiC8%、(Ta、Nb)C11%、Co9%の組成の切削工具用超硬基板の表面に化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成した。次に、990℃でTiCl4ガスを1〜2vol%、CH4ガスを3〜6vol%、N2ガスを32vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し成膜圧力75Toorの条件で反応させることにより6μm厚さのTiCN膜を成膜した。その後、950〜1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が4〜10のTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル2,200ml/分で120分間流してチタンの炭化物層を成膜した。次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO、CO2混合ガス150ml/分およびH2Sガス8ml/分とをCVD炉内に60分間流し1010℃でκ型酸化アルミニウムを成膜した。その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50ml/分とN2ガス1.3l/分を30分間流し1010℃で窒化チタン膜を成膜し従来例品を作製した。
前記従来例品を構成するチタンの炭窒化物層近傍を実施例3と同様にして透過電子顕微鏡で観察したが、チタンの炭窒化物層に双晶構造部は見られなかった。
【0056】
次に、従来例3の条件で作製した切削工具5個を用いて上記実施例3と同一の条件で連続切削試験を行った結果、この従来例品はいずれも10分間連続切削後にチタンの炭窒化物層や酸化アルミニウム層の剥離が見られた。
また、従来例3の条件で作製した切削工具5個を実施例3と同一条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察した結果、いずれにも刃先先端に大きな欠けが発生しており、切削工具として切削耐久特性が劣っていることが判明した。
【0057】
このように、双晶構造を有したチタンの炭窒化物層を被覆した本発明の被覆工具は従来に比して格段に切削耐久特性を改善するものである。
【0058】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、チタンの炭窒化物層自体の機械強度およびその上に成膜した上層膜との密着性が良く、切削耐久特性に優れた有用な炭窒化チタン被覆工具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具のセラミック材料の組織写真の一例である。
【図2】図1に対応した模式図である。
【図3】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具のX線回折パターンの一例を示す図である。
【図4】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具のセラミック材料の組織写真の一例である。
【図5】図4に対応した模式図である。
【図6】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具のX線回折パターンの一例を示す図である。
【図7】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具のセラミック材料の組織写真の一例である。
【図8】図7に対応した模式図である。
【図9】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具の電子線回折像を透過電子顕微鏡で観察した写真である。
【図10】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具の電子線回折像を透過電子顕微鏡で観察した写真である。
【図11】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具の電子線回折像を透過電子顕微鏡で観察した写真である。
【図12】図9の電子線回折像に指数付けを行った図である。
【図13】図10の電子線回折像に指数付けを行った図である。
【図14】図11の電子線回折像に指数付けを行った図である。
【図15】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具の電子線回折像を透過電子顕微鏡で観察した写真である。
【図16】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具の電子線回折像を透過電子顕微鏡で観察した写真である。
【図17】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具の電子線回折像を透過電子顕微鏡で観察した写真である。
【図18】図15の電子線回折像に指数付けを行った図である。
【図19】図16の電子線回折像に指数付けを行った図である。
【図20】図17の電子線回折像に指数付けを行った図である。
【図21】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具のX線回折パターンの一例を示す図である。
【図22】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具の等価X線回折強度比PRの膜間の相関の一例を示す図である。
【図23】本発明に係わる炭窒化チタン被覆工具の等価X線回折強度比PRの膜間の相関の一例を示す図である。

Claims (12)

  1. 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物、並びに酸化アルミニウムのいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を有しその少なくとも一層がチタンの炭窒化物層からなる炭窒化チタン被覆工具において、前記チタンの炭窒化物層が双晶構造を持った結晶粒を含有することを特徴とする炭窒化チタン被覆工具。
  2. 前記チタンの炭窒化物層がfcc構造を持ち、格子定数が0.427〜0.430nmである請求項1に記載の炭窒化チタン被覆工具。
  3. 前記チタンの炭窒化物層が(422)面または(220)面からのX線回折強度が最も大きい請求項1または2に記載の炭窒化チタン被覆工具。
  4. 前記チタンの炭窒化物層の上に双晶構造を持った結晶粒を含有する層が形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の炭窒化チタン被覆工具。
  5. 前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層の双晶境界部が下地である前記チタンの炭窒化物層の双晶境界部から連続している請求項4に記載の炭窒化チタン被覆工具。
  6. 前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層がチタンの炭酸化物、チタンの炭窒酸化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜からなる請求項4または5に記載の炭窒化チタン被覆工具。
  7. 前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層が(422)面または(220)面からのX線回折強度が最も大きい請求項4乃至6のいずれかに記載の炭窒化チタン被覆工具。
  8. 前記チタンの炭窒化物層の等価X線回折強度比と前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層の等価X線回折強度比とが比例している請求項4乃至7のいずれかに記載の炭窒化チタン被覆工具。
  9. 前記チタンの炭窒化物層の等価X線回折強度比(x)と前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層の等価X線回折強度比(y)との関係がy=ax+bで線形近似され、a=0.5〜1.5、b=−1〜1である請求項4乃至8のいずれかに記載の炭窒化チタン被覆工具。
  10. 前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層がエピタキシャルに成長している請求項4乃至9のいずれかに記載の炭窒化チタン被覆工具。
  11. 前記チタンの炭窒化物層または前記チタンの炭窒化物層の上に形成された層の上にさらにチタンの酸化物層、チタンの炭酸化物層、チタンの窒酸化物層、チタンの炭窒酸化物層、酸化アルミニウム層のいずれかの単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜が形成されている請求項4乃至10のいずれかに記載の炭窒化チタン被覆工具。
  12. 周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの少なくとも一種以上とFe、Ni、Co、W、Mo、Crのうちの少なくとも一種以上とからなる超硬質合金を基体とする請求項1乃至11のいずれかに記載の炭窒化チタン被覆工具。
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