JP3987351B2 - 水圧エレベータ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水圧を用いて人や貨物を昇降する水圧エレベータ装置に関し、特にホームエレベータに好適な水圧エレベータ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液圧を用いて人や貨物を昇降させるエレベータとしては、乗り籠の昇降用駆動装置に油を作動流体として使用する油圧シリンダを用いた油圧エレベータが広く利用されている。油圧エレベータの制御には、油圧シリンダへの作動油の供給・排出を行なう油圧ポンプを駆動する電動機をインバータにより駆動制御する各種の制御方式及び制御装置が提案されている。
【0003】
図1は、従来の油圧エレベータの油圧回路を含む基本的構成例を示す図である。同図に示すように、油圧エレベータは、乗り籠100、油圧シリンダ110、パイロット操作式逆止弁120、油圧ポンプ130、電動機140、インバータ150、制御装置160及びタンク(リザーバ)170を具備して構成されている。乗り籠100の位置を検出する位置検出器190、191の出力は制御装置160に入力され、該制御装置160は切換弁180やインバータ150を制御するようになっている。
【0004】
乗り籠100をプランジャ111を介して昇降させる油圧シリンダ110の下部にパイロット操作式逆止弁120を介して油圧ポンプ130が接続されており、油圧ポンプ130は電動機140により正逆回転するようになっている(以下、乗り籠100を上昇させる方向の回転を正方向とする)。電動機140の回転方向及び回転速度はインバータ150の位相反転及び周波数制御により変化する。パイロット操作式逆止弁120は、油圧シリンダ110の下部の油圧をパイロット圧として導入する切換弁180により開閉される。また、油圧ポンプ130と並列にリリーフ弁200が設けられている。
【0005】
上記のように構成された油圧エレベータでは、インバータ150によって電動機140が正方向に回転(運転)されると、タンク170内の作動油が油圧ポンプ130に吸入され、該油圧ポンプ130から吐出された作動油はパイロット操作式逆止弁120を介して、油圧シリンダ110の下部に供給され、これによりプランジャ111が伸長して、乗り籠が上昇するようになっている。油圧ポンプ130を停止すると、パイロット操作式逆止弁120は自然に閉じ、プランジャ111の位置が保持されるため、乗り籠100は停止する。
【0006】
また、乗り籠100を下降させる場合には、インバータ150により電動機140を逆方向に回転させると同時に、切換弁180を励磁(開弁)して、油圧シリンダ110の作動油をパイロット操作式逆止弁120のパイロットポート121に供給し、該パイロット操作式逆止弁120を開弁する。これにより油圧シリンダ110の下部の油が油圧ポンプ130に吸入され、タンク170に放出されることによりプランジャ111及び乗り籠100は下降する。この乗り籠100の上昇・下降の速度は、制御装置160により、インバータ150を制御し、該インバータ150から電動機140に供給される電力周波数を変化させることにより制御する。
【0007】
上記構成の油圧エレベータにおいて、下降時にパイロット操作式逆止弁120を開弁すると、油圧シリンダ110のプランジャ111下部の圧力が急激に低下し、プランジャ111が急激に下降するため、乗り籠100にもショックが伝わり、乗り心地が悪いという問題がある。また、下降時には油圧シリンダ110の圧力により油圧ポンプ130が駆動され、モータとして作用してしまうため、電動機140が回転させられインバータ150が過負荷になったり、所望の速度よりも速い速度となってしまうという問題もある。さらに油温や作動圧力により油圧機器の特性(特に油圧ポンプのリーク量)が変化し、停止位置近傍の低速領域の特性がばらついて、滑らかな動作特性や良好な停止位置精度が得難いという問題もある。
【0008】
上記問題点を解決する種々の方法が提案されている。例えば、特開平8−231144号公報に開示されている油圧エレベータの制御方法及び装置がある。該制御方法及び装置においては、油温や圧力による油圧機器のばらつきの影響を低減するために、乗り籠の速度を検出する速度検出手段を別途設け、該乗り籠の速度を所望の速度となるように、インバータへの速度制御指令値を出力するものである。
【0009】
また、特開平6−239541号公報に開示されている油圧エレベータの制御装置においては、逆止弁の油圧シリンダ側と、油圧ポンプ側にそれぞれ圧力検出器を設け、起動時の油圧ポンプ出力の圧力制御を行ないながら滑らかな挙動を実現し、運転開始後には、該乗り籠の移動に伴う油圧の変化により、起動補償値の補正を行うことで、乗り籠の速度精度と着床レベル精度の改善を行うようにしている。
【0010】
上記提案されている油圧エレベータの制御技術では、油圧機器のばらつきの影響を低減するために、動作中の速度や圧力のフィードバック補償を行なっており、良好な速度制御特性や着床レベル精度の改善のために、高度な制御装置や特殊な制御弁、検出器などが必要となる。そのため、高度な制御装置の分だけ価格が高くなる上、性能を維持するために適切なメンテナンスも必要となる。業務用のエレベータに該油圧エレベータの制御技術を用いるのであれば、法定点検により頻繁にメンテナンスされ、多少の初期コストがかかっても問題は少ない。しかしながら、家庭用の所謂ホームエレベータの場合は、初期投資が大きくなることや、法定点検期間が長いため適切なメンテナンスで性能を維持しつづけることが難しいという問題がある。
【0011】
また、特開平7−330230号公報に開示されている油圧エレベータの運転方法によれば、エレベータの下降運転開始時に油圧ポンプ内部のリーク量より少ない量の作動油を該油圧ポンプと制御弁の間に送り込みつつ、該リーク量と送り込み量の差を制御弁を通してシリンダ内の作動油で補充することで、複雑な制御装置を必要とせずにエレベータの下降開始時に滑らかな挙動を実現している。
【0012】
しかしながら、上記開示されている油圧エレベータの運転においては、作動油の油温や圧力による油圧機器の性能(特に油圧ポンプのリーク量)のばらつきが考慮されておらず、常に適切な挙動が得られないという問題がある。また、油圧ポンプのリーク量よりも少ない量の作動油を該油圧ポンプと制御弁の間に送り込むためには、電動機を極めて低速で運転しなくてはならないが、電動機の回転速度が低速になればなるほど、大きな電流が必要となる。
【0013】
このため、電動機が大電流を流すことで発熱し、故障したり寿命が短くなる可能性が高く、また、インバータが流すことができる電流値(許容電流値)を越えて停止したり、ブレーカが落ちる可能性もある。従って、この障害を避けるために、定格運転時に必要な能力のインバータや電動機よりも大きな能力の機器が必要になるという問題がある。
【0014】
一方、清水を作動流体として用いる水圧により、人や貨物を昇降させる昇降機も商品化されているが、これらは仮設使用を前提とした高所作業台ないし貨物リフトであり、屋内に常設され日常の使用に供されるエレベータ装置としては、速度精度、着床レベル精度、滑らかな昇降起動及び停止等の種々の点で技術的に満足できるものではない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、作動流体として水を用い、複雑な制御装置や高度な制御機器を用いなくても、簡単な構成で良好な着床レベルと乗り心地を実現できる水圧エレベータ装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、乗り籠をプランジャを介して昇降させる水圧シリンダと、タンクから前記水圧シリンダに作動水流路を介して作動水を給排水する水圧ポンプと、水圧シリンダと水圧ポンプ間の作動水流路に設けたパイロット操作式逆止弁と、該パイロット操作式逆止弁と水圧シリンダ間の作動水流路から分岐してタンクに連通する作動水流路に設けた常時閉の制御弁と、水圧ポンプを駆動する電動機と、電動機に周波数を制御して駆動電力を供給するインバータと、インバータ、パイロット操作式逆止弁及び制御弁の動作を制御する制御装置と、水圧シリンダとパイロット操作式逆止弁間の作動水流路に設けた第一の圧力検出手段と、乗り籠の位置を検出しその検出信号を制御装置に出力する位置検出手段とを備えて水圧エレベータを構成し、制御装置は乗り籠の上昇運転時、第一の圧力検出手段の出力に基づき、第1の遅延時間を演算し、インバータを介して乗り籠の位置及び速度を目的着床レベルの近くまで制御し、位置検出手段により停止位置を検知した後に、第1の遅延時間だけ前記水圧ポンプの運転を継続してから該水圧ポンプを停止するようにインバータを制御することを特徴とする。
【0017】
上記のように制御装置は、乗り籠の上昇運転時、第一の圧力検出手段の出力に基づき、第1の遅延時間を演算し、インバータを介して乗り籠の位置及び速度を目的着床レベルの近くまで制御し、位置検出手段により停止位置を検知した後に、第1の遅延時間だけ前記水圧ポンプの運転を継続してから該水圧ポンプを停止するようにインバータを制御するので、乗客数等乗り籠荷重によらずいつも同じ位置に着床でき、乗り心地が向上する。また、複雑な制御装置や高度な制御機器を用いなくても、簡単な構成で目的着床レベルに精度よく、着床できる。また、作動流体に水を用いるので、乗り籠の挙動に与える作動流体の温度の影響を低減することができ、温度の影響を補償するのに必要な機器が不要となる。
【0018】
従来の油圧エレベータにおいて問題であった油圧機器の特性の変化は、圧力や温度による機器の特性の変化が小さな作動流体を用いることで改善が可能である。エレベータの基本的な駆動部分を作動流体に水を用いる水圧機器で構成したので、温度の変化による機器の特性の変化を低減することができる。また、乗り籠の下降時には、圧力の影響を受けにくい制御弁で該乗り籠の着床時の速度及び位置を制御するようにしたので、圧力の影響を低減することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、乗り籠をプランジャを介して昇降させる水圧シリンダと、タンクから水圧シリンダに作動水流路を介して作動水を給排水する水圧ポンプと、水圧シリンダと水圧ポンプ間の作動水流路に設けたパイロット操作式逆止弁と、該パイロット操作式逆止弁と水圧シリンダ間の作動水流路から分岐してタンクに連通する作動水流路に設けた常時閉の制御弁と、水圧ポンプを駆動する電動機と、電動機に周波数を制御して駆動電力を供給するインバータと、インバータ、パイロット操作式逆止弁及び制御弁の動作を制御する制御装置と、水圧シリンダとパイロット操作式逆止弁間の作動水流路に設けた第一の圧力検出手段と、乗り籠の位置を検出しその検出信号を制御装置に出力する位置検出手段とを備えて水圧エレベータを構成し、制御装置は乗り籠の下降運転時、第一の圧力検出手段の出力に基づき、第3の遅延時間を演算し、パイロット操作式逆止弁とインバータを介して、乗り籠の位置及び速度を目的着床レベル近くまで制御した後、制御弁による位置及び速度の制御に切り換え、位置検出手段により停止位置を検知してから、第3の遅延時間だけ制御弁の開状態を継続した後に該制御弁を閉止するように制御することを特徴とする。
【0020】
上記のように制御装置は乗り籠の下降運転時、第一の圧力検出手段の出力に基づき、第3の遅延時間を演算し、パイロット操作式逆止弁とインバータを介して、乗り籠の位置及び速度を目的着床レベル近くまで制御した後、制御弁による位置及び速度の制御に切り換え、位置検出手段により停止位置を検知してから、第3の遅延時間だけ制御弁の開状態を継続した後に該制御弁を閉止するように制御するので、乗客数等乗り籠荷重によらずいつも同じ位置に着床でき、乗り心地が向上する。また、複雑な制御装置や高度な制御機器を用いなくても、簡単な構成で目的着床レベルに精度よく、着床できる。また、作動流体に水を用いるので、乗り籠の挙動に与える作動流体の温度の影響を低減することができ、温度の影響を補償するのに必要な機器が不要となる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水圧エレベータ装置において、制御装置は、制御弁による位置及び速度の制御への切り換えを、インバータによる水圧ポンプの停止に至る減速運転中に行うことを特徴とする。
【0022】
上記のように制御弁による位置及び速度の制御への切り換えを、インバータによる水圧ポンプの停止に至る減速運転中に行うので、パイロット操作式逆止弁とインバータとを介しての制御において十分に減速させ、その後に切り換えることで乗り籠への衝撃を緩和し乗り心地が更に向上する。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の水圧エレベータ装置において、制御装置は、第一の圧力検出手段の出力により、更に第2の遅延時間を演算し、インバータによる水圧ポンプの停止に至る減速運転中に行う制御弁による位置及び速度の制御への切り換えにおいて、パイロット操作式逆止弁を閉弁させるための信号出力と、制御弁を開弁させるための信号出力との間に第2の遅延時間に等しい時間間隔を設けたことを特徴とする。
【0024】
上記のように第一の圧力検出手段の出力により、更に第2の遅延時間を演算し、インバータによる水圧ポンプの停止に至る減速運転中に行う制御弁による位置及び速度の制御への切り換えにおいて、パイロット操作式逆止弁を閉弁させるための信号出力と、制御弁を開弁させるための信号出力との間に第2の遅延時間に等しい時間間隔を設けたので、パイロット操作式逆止弁と制御弁とが両方ともに開状態となってしまう事態を避け、一方でパイロット操作式逆止弁が全閉するとほぼ同時に制御弁を開くように設定できるから、乗り籠への衝撃を緩和でき乗り心地が更に向上するという効果を有するものである。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか1に記載の水圧エレベータ装置において、パイロット操作式逆止弁と前記水圧ポンプ間の作動水流路に第二の圧力検出手段を設け、制御装置は、乗り籠の下降運転開始時に、インバータに水圧ポンプを水圧シリンダに作動水を供給する方向に運転する指令信号を出力し、第二の圧力検出手段の圧力検出値が前記第一の圧力検出値を超えた時点で、パイロット操作式逆止弁に開弁指令を出力するとともに、水圧ポンプを水圧シリンダから作動水を排出する方向に運転する指令信号を出力することを特徴とする。
【0026】
上記のように制御装置は、乗り籠の下降運転開始時、インバータに水圧ポンプを水圧シリンダに作動水を供給する方向に運転する指令信号を出力し、第二の圧力検出手段の圧力検出値が第一の圧力検出手段の圧力検出値を超えた時点で、パイロット操作式逆止弁に開弁指令を出力するととともに、該水圧ポンプを水圧シリンダから作動水を排出する方向に運転する指令信号を出力する機能を具備し、更にパイロット操作式逆止弁が緩慢に開弁する様に構成したので、乗り籠の下降開始時の圧力や速度の急変がなく、良好な乗り心地で下降開始が実現できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例を図面に基いて説明する。図2は本発明に係る水圧エレベータの水圧回路を含む基本的構成例を示す図である。本水圧エレベータは、乗り籠1、水圧シリンダ2、パイロット操作式逆止弁3、水圧ポンプ4、電動機5、インバータ6、制御装置7、タンク8で構成されている。乗り籠1の昇降位置を検出する検出器16a〜16eの検出出力、第一圧力検出器9及び第二圧力検出器10の検出出力は制御装置7に入力されるようになっている。
【0028】
本水圧エレベータでは、水圧シリンダ2とパイロット操作式逆止弁3間の作動水流路に圧力を検出する第一圧力検出器9、パイロット操作式逆止弁3と水圧ポンプ4間の作動水流路に圧力を検出する第二圧力検出器10が設けられている。後に詳述するように、第一圧力検出器9は乗り籠1の着床レベル(停止位置)精度の改善及び下降時の起動補償に用いられ、第二圧力検出器10は下降時の起動補償に用いられる。
【0029】
水圧シリンダ2内の圧力作動水をパイロット操作式逆止弁3のパイロットポート3aに供給する電磁切換弁11の供給ポートには、図示しないオリフィスが挿入されている。これにより、パイロット操作式逆止弁3の開弁時に電磁切換弁11を介して該パイロット操作式逆止弁3のパイロットポート3aに供給される作動水の流量が制限されるため、パイロット操作式逆止弁3の開弁動作が緩慢となる。
【0030】
水圧シリンダ2とパイロット操作式逆止弁3の間の作動水流路は更に分岐され、後述する乗り籠1の下降時の速度と位置を制御する制御弁12を介して、タンク8に接続されている。なお、制御弁12は絞り弁12aと切換弁12bから構成されている。
【0031】
また、水圧ポンプ4とタンク8の間には、プランジャ2aに加わる荷重により圧力が変動する水圧シリンダ2の作動水により水圧ポンプ4が駆動され、該乗り籠1が過速することを防止するための、逆止弁13とリリーフ弁14が設けられている。他の構成は、水圧機器を用いたことを除けば、図1に示す従来の油圧エレベータと同じであるから、その説明は省略する。
【0032】
本発明に係る水圧エレベータは、水圧機器によりエレベータを構成することにより、下記のような利点がある。
液圧ポンプ(油圧ポンプや水圧ポンプなどの容積式)の吐出流量は、実吐出流量をQ1、理論吐出流量をQth(=n×Vth、但しn:回転速度、Vth:理論押しのけ容積)、ポンプのリーク量ΔQを用いて
Q1=Qth−ΔQ …(1)
と表される。
【0033】
上記式(1)のポンプのリーク量ΔQは、一般的には,ポンプの吸込側圧力と吐出側圧力との差ΔP1と動粘度νの比に対して
ΔQ∝ΔP1/ν …(2)
となる関係があることが知られている。従って、ポンプの実吐出量は、動粘度νが温度によって大きく変化すれば、ポンプのリーク量ΔQは圧力と温度によって変化するが、変化が小さければ、概圧力の変化のみで評価できることとなる。
【0034】
油圧システムの作動流体である鉱油の場合は、一般に用いられるISO VG 32を例として評価すると、油温が20度から50度まで変化すると、動粘度νはおよそ90cStから20cStまで変化する。一方、水圧システムで用いる添加物を加えない水の場合には、動粘度νはおよそ1cStから0.55cSt程度であり、絶対量の変化は極めて小さく、変化の割合にしても鉱油よりも少ないため、温度によるポンプのリーク量ΔQの変化は鉱油を用いる場合よりも少なくなる。
【0035】
また、層流領域における配管内圧力損失(管摩擦係数)ΔP2と配管内通過流量Q2の関係は、ポンプのリーク量ΔQと同じく
Q2∝ΔP2/ν …(3)
であるため、圧力と温度の影響を受ける。しかし、作動流体が水である場合には、動粘度νが小さいために配管内は乱流領域であることが多く、層流領域は流量が小さな領域に限られる。この乱流領域での管摩擦係数に与える粘度の影響は小さいため,温度による影響はほとんど受けないと考えて良い。
【0036】
一方、絞り弁やスプール弁などのオリフィス型の流量制御弁の流量特性は、通過流量Q3と、弁前後差圧ΔP3、弁開口面積Aとの間に
Q3∝A√ΔP3 …(4)
となる関係があることが知られており、開口面積Aが同一であれば弁前後差圧ΔP3の平方根に比例し、温度(粘度)の影響は受けず、また、ポンプのリーク量ΔQや配管抵抗の変化よりは圧力による影響は小さい。
【0037】
このように、作動流体を水とすることにより、機器の特性が温度の影響を受けにくくすることができ、機器の特性の変化は概圧力に依存すると考えて良い。このため、作動流体に水を用いる水圧エレベータでは、温度の影響を補償するための機器や制御方法が不要となり、簡単な構成で、機器の特性変化を補償できる。
【0038】
次に、本発明に係る水圧エレベータの別の利点を示すために、運転時の動作制御方法及び水圧エレベータの挙動について、該乗り籠の上昇運転時と下降運転時とに分けて説明する。
【0039】
〔上昇運転時〕
図3は、図2に示す水圧エレベータの上昇運転時の電動機速度、インバータ指令信号及び位置検出出力のタイミングを示す図である。制御装置7は、乗り籠1のドアの閉信号が与えられると、それと同時に第一圧力検出器9の圧力検出値を読み取り、後述する「遅延時間1」を計算し、該計算した「遅延時間1」を制御装置7に設けられた図示しないメモリに記憶する。
【0040】
乗り籠1のドアが閉じた後、制御装置7は図3(b)に示すようにインバータ6にインバータ指令信号として「高速1」を送出する。該インバータ6は、予め設定された変化率で電動機5に供給する駆動電力の周波数を変化させ、図3(a)に示すように該電動機5を既定の定格速度まで加速する。これにより、水圧ポンプ4は正回転で回転する。
【0041】
水圧ポンプ4が正回転を開始すると、タンク8から水が逆止弁13を介して該水圧ポンプ4に吸込され、該水圧ポンプ4内で加圧され、パイロット操作式逆止弁3を通り、水圧シリンダ2に供給される。これにより、プランジャ2aを伸長し、該プランジャ2aの上昇により乗り籠1が上昇する。
【0042】
ここで、水圧ポンプ4を定格速度で運転している(即ち水圧ポンプ4の回転速度nが大きい)場合には、該水圧ポンプ4のリーク量は吐出流量に比べて少ないため、プランジャ2aの伸長速度(即ち乗り籠1の上昇速度)に大きな影響を及ぼさない。従って、乗り籠1の乗客数(積載荷重)が異なっても、該乗り籠1は概ね同じ速度で上昇する。
【0043】
インバータ6は、制御装置7から図3(b)に示す「高速1」の指令信号が送出されている間、所定の一定周波数を維持し、乗り籠1は定格速度で上昇を続ける。その後、制御装置7が乗り籠1が減速開始位置に達したことを位置検出器16bを介して検知すると、図3(b)に示すようにインバータ指令信号を「低速1」に切り換える。なお、該減速開始位置は始動時からの時間管理によって所定時間経過したら減速開始位置としてもよい。また、位置検出器16a〜eは、例えば、リミットスイッチや光電スイッチで構成される。
【0044】
上記「低速1」のインバータ指令信号に切り換えられたインバータ6は、電動機5に供給する駆動電力の周波数を予め設定された変化率で変化させ、図3(a)に示すように該電動機5を既定の速度まで減速する。なお、上記減速時の周波数の変化率は、加速時の変化率と同じでも異なっていても良い。これにより水圧シリンダ2への作動水流入量が減少し、プランジャ2aの伸長速度が減速し、乗り籠1の上昇速度が減速する。
【0045】
この着床速度近傍の低速領域では、水圧ポンプ4の回転速度nは小さく、該水圧ポンプ4の吐出水量も小さいために、プランジャ2aに加わる荷重により変動する水圧シリンダ2の内圧に起因する水圧ポンプ4のリーク量が変動するので、乗り籠1の速度が大きく変化することになる。
【0046】
しかし、乗り籠1の着床速度が上記圧力の影響によって変化したとしても、制御装置7が乗り籠1が停止位置に達したことを位置検出器16aを介して検知するまで、水圧ポンプ4の運転を維持すれば、圧力の変化による水圧ポンプ4のリーク量変化の影響は低減できる。また、乗り籠1が停止位置に達した時点で、制御装置7からインバータ6に停止信号を送ると、該インバータ6は電動機5に供給する駆動電力の周波数を既定の変化率で変化させ、該駆動電力を止めることで電動機5を停止する。しかし、該電動機5の回転が完全に停止する僅かな期間にも、水圧ポンプ4から作動水が吐出されて、乗り籠1は上昇する(以下、制御装置7が停止位置を検知してから、実際に乗り籠1が停止するまでの距離を空走距離、該空走距離に対応する時間を空走期間と呼ぶ)。
【0047】
空走距離を考慮しなければ、上記のように水圧ポンプ4のリーク量の変化は、乗り籠1が着床レベルに到達するまで水圧ポンプ4の運転を保持すれば補償することが可能であるが、実際には空走距離の変化によって、着床レベル(停止位置)が変化する。そこで、該圧力の変化による空走距離の変化を抑制するために、空走期間を意図的に増減し、水圧ポンプ4の運転期間を増減することで、この空走距離が略同一になるように補正する。即ち、図3(c)に示す位置検出器16aの位置検出出力により、乗り籠1が停止位置に達したことを制御装置7が検知すると、該制御装置7は事前に記憶した「遅延時間1」待機してから、インバータ6に停止信号を送出する。
【0048】
この「遅延時間1」は空荷(即ち、乗り籠の荷重のみでプランジャ2aに加わる荷重が小さい)の場合に最小値、定格荷重の時が最大値となる図4に示すような関係から求めたものである。図4はこの上昇運転時の「遅延時間1」と乗り籠1の荷重の関係を示す図である。同図に示すように、「遅延時間1」は空荷、即ちプランジャ2aに加わる荷重がもっとも小さい乗り籠1の荷重のみの場合に最小値となり、定格荷重の場合に最大値となる。
【0049】
「遅延時間1」によって空走期間の調整を行わない場合には、電動機5(水圧ポンプ4)の回転数が同一であっても、プランジャ2aに加わる荷重が小さいときには水圧ポンプ4のリーク量が小さいため、乗り籠1の速度が速くなり、空走距離が伸び、逆に荷重が大きいときには水圧ポンプ4のリーク量が多くなり、乗り籠1の速度が遅くなるため空走距離が短くなる。
【0050】
しかし、図4に示すように、乗り籠1の荷重(乗客や貨物)の増減によって「遅延時間1」を計算することで空走距離を同一にすることができ、乗り籠1の着床レベルを同一にすることができる。乗り籠1が始動してから停止するまでの間、乗り籠1の荷重が変化しないため、プランジャ2aに加わる荷重による水圧ポンプ4に作用する圧力は略同一であるとみなすことができるから、始動時の圧力により、「遅延時間1」が計算できる。
【0051】
電動機5が停止し、水圧ポンプ4から水圧シリンダ2へ作動水が供給されなくなると、プランジャ2aが停止するとともに乗り籠1が停止する。このとき、パイロット操作式逆止弁3は電磁切換弁11が励磁されていない状態なので、通常の逆止弁として機能し、水圧シリンダ2から水圧ポンプ4へ作動水流が流れることなく、乗り籠1の位置は保持される。
【0052】
なお、遅延時間を決定する方法は、複雑な補間演算式を用いたり、テーブルピックアップによっても良いが、水圧ポンプ4のリーク量の特性を鑑みると図4に示す「遅延時間1」と荷重の計算式は妥当であるし、水圧エレベータの性能実験でも十分な結果が得られた。
【0053】
〔下降運転時〕
図5は、水圧エレベータの下降(乗り籠下降)運転時の電動機速度及びインバータ指令信号と時間の関係を示す図であり、図6は下降開始時の電動機速度及び各種信号と時間の関係、図7は下降停止時の電動機速度及び各種信号と時間の関係を示す図である。
【0054】
乗客が乗り籠1に搭乗すると、第一圧力検出器9で水圧シリンダ2とパイロット操作式逆止弁3間の作動水流路の圧力を測定する。下降信号が制御装置7に与えられると、該制御装置7は第一圧力検出器9で測定した圧力に基いて後述する「遅延時間2」及び「遅延時間3」を計算して図示しないメモリに記憶する。制御装置7は、乗り籠1のドアが完全に閉まり切った時点で、図5(b)に示すように「低速2」のインバータ指令信号をインバータに送り、乗り籠1を上昇させる方向に電動機5を運転する。該インバータ6は、電動機5に供給する駆動電力の周波数を予め設定された変化率で変化させ、電動機5を「低速2」に対応する速度まで加速する。
【0055】
「低速2」に対応する電動機5の速度は、プランジャ2aに乗り籠1の最大積載荷重(定格荷重)が加わったときの水圧ポンプ4のリーク量よりも多くの作動水を水圧ポンプ4が吐出すように設定されている。また、水圧ポンプ4の性能は、上述の通り温度の影響をほとんど受けず、圧力による水圧ポンプ4のリーク量の変化は性能試験によって簡単に求めることができるため、事前に水圧ポンプ4の上記回転数を設定することが可能であり、その後の調整の必要はない。また、水圧ポンプ4をそのリーク量よりも少ない吐出流量の極低速で運転する必要がないため、電動機5に過大な電流を流す必要がない。
【0056】
このとき水圧ポンプ4の吐出側の圧力、即ちパイロット操作式逆止弁3と水圧ポンプ4の間の圧力を第二圧力検出器10で検出し、制御装置7に取り込む。水圧ポンプ4の吐出側圧力の増加に伴い、図6(a)に示すように水圧ポンプ4のリーク量も増加するため、該圧力は図6(b)に示すように電動機5の回転速度に対して概ね一次遅れの特性を示して上昇する。水圧ポンプ4側の圧力と水圧シリンダ2側の圧力が同じ圧力に達した時点では、パイロット操作式逆止弁3は図示しないバネで付勢されているため開弁せず、水圧ポンプ4側の圧力(第二圧力検出器10で検出)が水圧シリンダ2側の圧力(第一圧力検出器9で検出)よりもわずかに高くなって初めて開弁する。
【0057】
制御装置7は、水圧ポンプ4側の圧力が、水圧シリンダ2側の圧力よりも大きくなったことを検知すると、図5(b)、図6(c)に示すように乗り籠1を下降方向に高速に運転する「高速2」のインバータ指令信号をインバータ6に送出し、同時に図6(d)に示すように電磁切換弁11に励磁信号を送出する。これにより、水圧シリンダ2の作動水を該電磁切換弁11を介してパイロット操作式逆止弁3のパイロットポート3aに供給し、該パイロット操作式逆止弁3の開弁を開始する。
【0058】
インバータ6は「高速2」のインバータ指令信号を受けると、電動機5に供給する駆動電力の周波数を予め設定された変化率で低減させ、その後位相を反転させて該周波数を増加させる。即ち、図5(a)に示すように電動機5の回転速度を正回転方向から逆回転方向に滑らかに移行させる。この電動機5が減速しながらも正回転している間に、パイロット操作式逆止弁3は図6(d)に示すように緩慢に開弁(所定時間かけて開弁)するため、水圧ポンプ4に作用する圧力は概一定となり、リーク量は一定となるから、電動機5の回転数が低減すると、水圧ポンプ4の吐出流量は該リーク量を下回るようになる。この水圧ポンプ4の吐出流量の低減分をパイロット操作式逆止弁3から水圧ポンプ4に向けての流出流量で補う形となり、水圧シリンダ2側からの作動水の排出量が徐々に増加し、乗り籠1が徐々に下降し始める。
【0059】
その後、電動機5はインバータ6からの駆動電力により、正回転から逆回転に移行し、水圧シリンダ2内の作動水は、パイロット操作式逆止弁3を通り、該水圧ポンプ4に吸込まれ、乗り籠1は下降を始める。上記のように乗り籠1の始動時に圧力の急激な変化がなく、また急激な速度変化も生じないため、該乗り籠1の滑らかな始動開始を実現できる。
【0060】
なお、第二圧力検出器10は、水圧シリンダ2側の圧力と水圧ポンプ4側の圧力との差が所定の値を超えたことを検知すればよいので、フィードバック制御に使用するような高精度のセンサである必要はなく、例えば、差圧スイッチのようなものでも良い。
【0061】
次に電動機5が既定の定格速度に達し、乗り籠1が一定の速度で下降している間は、水圧ポンプ4は水圧シリンダ2内の作動水を吸込み、リリーフ弁14を介してタンク8に吐出することを除けば上昇時と略同じである。乗り籠1の下降時に水圧ポンプ4から吐出される作動水を直接タンク8に戻さないのは、リリーフ弁14により水圧ポンプ4の吐出圧を所定圧力に保持することで、水圧ポンプ4が水圧シリンダ2側の圧力の影響を受けずに、乗り籠1の下降速度が過速することを防止するためである。
【0062】
制御装置7が位置検出器16cを介して乗り籠1が減速開始位置に達したことを検知すると、図5(b)に示すように「低速3」のインバータ指令信号をインバータ6へ出力する。該「低速3」のインバータ指令信号によりインバータ6は、予め設定された変化率で電動機5に供給する駆動電力の周波数を変化させ、図5(a)に示すように該電動機5を既定の速度まで減速する。これにより水圧ポンプ4の作動水の吸込流量も減少し、プランジャ2aの伸長速度が減速するとともに、乗り籠1の下降速度が減速するが、この時の乗り籠1の速度は、圧力の影響を受けて変化する。
【0063】
この低速領域での乗り籠1の速度は、上昇運転時においてはプランジャ2aに加わる荷重の増加により、水圧ポンプ4のリーク量が増大すると低下するのに対し、下降運転時においては該圧力の増加により水圧ポンプ4のリーク量が増大すると水圧シリンダ2の排出流量が増加するため、速度が上昇するという逆の傾向を示す。
【0064】
乗り籠1が減速した後、制御装置7が該乗り籠1の着床レベルの手前に達したことを位置検出器16dを介して検知すると、図7(b)に示すようにインバータ6に停止信号を出力する。該インバータ6は、既定の変化率で電動機5に供給する駆動電力の周波数を変化させ、駆動電力の供給を停止することで電動機5は停止する。
【0065】
また、制御装置7は、インバータ6に停止信号を出力した後、既定の減速待機期間経過後に図7(c)に示すように電磁切換弁11への励磁信号の出力を停止することで、該電磁切換弁11を消磁し、パイロット操作式逆止弁3を閉弁する。また、制御装置7は、乗り籠1の下降開始時に記憶した「遅延時間2」だけ待機して、図7(d)に示すように制御弁12の切換弁12bを励磁する。
【0066】
パイロット操作式逆止弁3が完全に閉弁すると、水圧シリンダ2から排水される作動水は、制御弁12の絞り弁12aを介してタンク8に排出される状態に切り替り、図7(a)に示すように乗り籠1の下降速度は、着床直前の速度となる。このように、乗り籠1の着床直前の速度は絞り弁12aを通過する作動水の流量により制限される。この絞り弁12aの通過流量は、上記式(4)より絞り弁12a前後の圧力差ΔP3の平方根に比例するため、水圧ポンプ4のリーク量よりも圧力による影響は小さい。
【0067】
通常、エレベータにおいて、着床時(停止時)の衝撃を避けるため、着床直前の速度は極めて低速に設定する。乗り籠1の上昇運転時には、水圧ポンプ4のリーク量の分だけ乗り籠1の速度が遅くなるため、インバータ6による電動機5の回転数を制御して水圧ポンプ4の回転数を過小にせずとも乗り籠1を極めて低速に運転することも可能である。しかし乗り籠1の下降運転時には、水圧シリンダ2内から水圧ポンプ4のリーク量の分だけ作動水が排出されてしまうため、乗り籠1の速度は速くなる。インバータ6は、水圧ポンプ4のリーク量に相当する回転速度より低い回転数で運転することは困難であるから、インバータ6によって乗り籠1の速度を極低速に制御することは困難である。
【0068】
従って、着床直前に乗り籠1の下降速度を極低速に制御するためにはインバータ6による速度制御から、制御弁12による速度制御に切り替える必要がある。インバータ6による下降速度と制御弁12による乗り籠1の下降速度の間には、ある程度の差があるため、前記の速度制御の切り替えを急激に行うと乗り籠1の下降速度が急速に低下して、該乗り籠1に衝撃が作用して乗り心地が悪くなる。そこで、制御装置7がインバータ6に停止信号を送出し、電動機5(即ち水圧ポンプ4)が減速している途中で、制御弁12による速度制御に切り替えることで、切り替え時の衝撃の発生を抑制する。
【0069】
インバータ6から電動機5へ供給する駆動電力の停止までの周波数を適切に設定してあれば、電動機5(即ち水圧ポンプ4)の回転数はしだいに減速し、水圧ポンプ4の吸込量も滑らかに低減する。従って、水圧シリンダ2からの作動水の排出量が次第に減少するため、乗り籠1の下降速度は滑らかに低下する。電動機5が停止するまでの時間は概一定であるから、制御装置7がインバータ6に停止指令を送出してから一定時間、即ち減速待機期間の間、待機してから制御弁12による速度制御に切り替えれば、乗り籠1の下降速度が充分に低下してから制御弁12による速度制御に切り替えることができる。なお、本実施形態例では減速待機時間を一定としたが、例えば後述の「待機時間3」と同様にプランジャ2aに加わる荷重に応じて適切に調整してもよい。
【0070】
また、制御弁12を開弁するタイミングをパイロット操作式逆止弁3が閉弁するタイミングとずらしている。即ち、制御装置7が図7(c)に示す電磁切替弁励磁信号を停止するタイミングから図7(d)に示すように「遅延時間2」だけ遅れて制御弁12の切換弁12bを励磁する切換弁励磁信号を出力している。これは、パイロット操作式逆止弁3が完全に閉弁する前に制御弁12の切換弁12bを開弁してしまうと、水圧ポンプ4及び切換弁12bの両方から水圧シリンダ2内の作動水が排出され、乗り籠1の下降速度が増速し、その後パイロット操作式逆止弁3を閉弁すると、作動水の排出が切換弁12bにより制限され、乗り籠1の下降速度が急速に減速し、該乗り籠1が振動して乗り心地が極めて悪くなることを防止するためである。
【0071】
また、パイロット操作式逆止弁3の閉弁の応答速度は水圧シリンダ2のプランジャ2aに加わる荷重の影響で若干変化するため、これを補正するために制御装置7は水圧シリンダ2側の圧力を第一圧力検出器9を介して読み取り、該読み取った圧力に基いて「遅延時間2」を計算し、制御弁12の切換弁12bを励磁するための切替弁励磁信号を送るタイミングを調整している。
【0072】
また、速度センサなどを用いて、乗り籠1の下降速度が適切な速度に減速したことを検知して、制御弁12による速度制御に切り換えるタイミング(「遅延時間2」)を決定することも可能であるが、速度センサを用いても機器の応答速度の変化には対応できない。そこで、上記のようにすることで簡単な構成で、機器の応答速度の変化にも対応することが可能となる。
【0073】
乗り籠1の下降速度が制御弁12による速度制御領域に達した後に、制御装置7は位置検出器16eを介して乗り籠1が着床レベルに達したことを検知すると(図7(e)参照)、「遅延時間3」だけ待機して制御弁12の切換弁12bの励磁を停止し(図7(d)参照)、切換弁12bを閉弁とする。切換弁12bが閉弁することで、水圧シリンダ2内の作動水の排出はなくなり、プランジャ2aが停止し、乗り籠1の位置が保持される。
【0074】
上記のように乗り籠1の着床レベルを位置検出器16eで検知した後に、「遅延時間3」だけ待機して切換弁12bを閉弁するのは、乗り籠1の上昇運転時の空走距離の変化と同様の理由からである。即ち、プランジャ2aに加わる荷重の変化により作動水が制御弁12を通過する流量が変化することで、制御弁12の切換弁12bの閉弁動作が遅れる間に乗り籠1が下降する距離が変化することを補正するためである。
【0075】
図8は、本水圧エレベータの下降運転時の「遅延時間3」と乗り籠1の荷重の関係を示す図である。同図に示すように、「遅延時間3」と乗り籠1の関係は、図4に示す本水圧エレベータの上昇運転時の「遅延時間1」と乗り籠1の荷重との関係とは逆の関係になる。「遅延時間3」は、乗り籠1が空荷、即ちプランジャ2aに作用する荷重が最も小さい乗り籠1の荷重のみの場合に最大値となり、定格荷重の場合に最小値となる線形補間を用いている。
【0076】
これは、プランジャ2aに加わる荷重が小さく水圧シリンダ2に作用する圧力が小さい場合には、切換弁12bを励磁した後の該切換弁12bに流れる作動水の流量が少ないため、乗り籠1の空走距離が短く、該圧力が大きい場合には、乗り籠1の空走距離が長くなるためである。上記式(4)に表される絞り弁12aの特性を考慮すると、より複雑な圧力の平方根に比例する計算式の方が原理的には良好な結果が得られることも考えられるが、本特許出願の発明者が行った水圧エレベータの性能実験によれば、図8に示すような線形補間で十分な着床レベルの精度が得られることがわかった。
【0077】
水圧エレベータを上記のように構成することにより、乗り籠1の上昇・下降の動作制御は、圧力(荷重)や温度によらず常に一定の周波数や変化率によるインバータ制御で行い、単に動作のタイミングを変更しているだけであるため、インバータ6が電動機5に供給する駆動電力の周波数を圧力や温度によって変化させたり、該周波数や水圧シリンダ2に作用する圧力を連続的に制御する必要がないので、高度な制御装置は必要ない。
【0078】
また、該乗り籠1の上昇・下降の動作制御に必要な演算の精度は、0.01秒程度であり、インバータ6に制御装置7が停止信号を与えてから乗り籠1が停止するまでのわずかな時間(1秒以下)を補正するだけであるため、8ビット程度の演算精度があれば、十分な精度が得られる。このため、図4及び図8に示すような線形補間の計算式のために高性能なCPU(中央演算処理装置)も必要ではない。
【0079】
さらに、乗り籠1の上昇・下降の動作制御は、乗り籠1の運転期間中に圧力を測定したり、遅延時間1、2、3の計算を実施する必要がないため、安価なPLC(シーケンス制御装置)の時間管理機能と演算機能で実現可能であり、乗り籠1の動作開始時に必要な計算にかかる時間も短いため、乗り籠1のドアの開閉の間に演算可能であり、演算のための動作の遅れも生じない。
【0080】
【発明の効果】
以上、説明したように各請求項に記載の発明によれば下記のような優れた効果が得られる。
【0081】
請求項1に記載の発明によれば、制御装置は、乗り籠の上昇運転時、第一の圧力検出手段の出力に基づき、第1の遅延時間を演算し、インバータを介して乗り籠の位置及び速度を目的着床レベルの近くまで制御し、位置検出手段により停止位置を検知した後に、第1の遅延時間だけ水圧ポンプの運転を継続してから該水圧ポンプを停止するようにインバータを制御するので、乗客数等乗り籠荷重によらずいつも同じ位置に着床でき、乗り心地が向上する。また、作動媒体として水を用いているのでエレベータ装置の構成が簡素化できる。
【0082】
請求項2に記載の発明によれば、制御装置は前記乗り籠の下降運転時、第一の圧力検出手段の出力に基づき、第3の遅延時間を演算し、パイロット操作式逆止弁とインバータを介して、乗り籠の位置及び速度を目的着床レベル近くまで制御した後、制御弁による位置及び速度の制御に切り換え、前記位置検出手段により停止位置を検知してから、第3の遅延時間だけ制御弁の開状態を継続した後に該制御弁を閉止するように制御するので、乗客数等乗り籠荷重によらずいつも同じ位置に着床でき、乗り心地が向上する。また、作動媒体として水を用いているのでエレベータ装置の構成が簡素化できる。
【0083】
請求項3に記載の発明によれば、制御装置は、制御弁による位置及び速度の制御への切り換えを、インバータによる水圧ポンプの停止に至る減速運転中に行うので、パイロット操作式逆止弁とインバータとを介しての制御において十分に減速させ、その後に切り換えることで乗り籠への衝撃を緩和し乗り心地が更に向上する。
【0084】
請求項4に記載の発明によれば、制御装置は、第一の圧力検出手段の出力により、更に第2の遅延時間を演算し、インバータによる水圧ポンプの停止に至る減速運転中に行う前記制御弁による位置及び速度の制御への切り換えにおいて、パイロット操作式逆止弁を閉弁させるための信号出力と、制御弁を開弁させるための信号出力との間に第2の遅延時間に等しい時間間隔を設けたので、パイロット操作式逆止弁と制御弁とが両方ともに開状態となってしまう事態を避け、一方でパイロット操作式逆止弁が全閉するとほぼ同時に制御弁を開くように設定できるから、乗り籠への衝撃を緩和でき乗り心地が更に向上する。
【0085】
請求項5に記載の発明によれば、制御装置は、乗り籠の下降運転開始時、インバータに水圧ポンプを水圧シリンダに作動水を供給する方向に運転する指令信号を出力し、第二の圧力検出手段の圧力検出値が第一の圧力検出手段の圧力検出値を超えた時点で、パイロット操作式逆止弁に開弁指令を出力するととともに、該水圧ポンプを水圧シリンダから作動水を排出する方向に運転する指令信号を出力する機能を具備するので、乗り籠の下降開始時の圧力や速度の急変がなく、良好な乗り心地で下降開始が実現できる。
【0086】
上記請求項1乃至5に記載の発明では、水圧エレベータを構成する検出器や制御装置に高度で複雑なものを使用する必要がないため、信頼性の高い水圧エレベータ装置を安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の油圧エレベータの構成例を示す図である
【図2】 本発明にかかる水圧エレベータの構成例を示す図である。
【図3】 本水圧エレベータの上昇運転時の電動機(乗り籠)の速度及び指令信号と時間の関係を示す図である。
【図4】 本水圧エレベータの上昇運転時の「遅延時間1」と乗り籠の荷重の関係を示す図である。
【図5】 本水圧エレベータの下降運転時の電動機(乗り籠)の速度及び指令信号と時間の関係を示す図である。
【図6】 本水圧エレベータの下降開始時の電動機(乗り籠)の速度及び各種信号と時間の関係を示す図である。
【図7】 本水圧エレベータの下降停止時の電動機(乗り籠)の速度及び各種信号と時間の関係を示す図である。
【図8】 本水圧エレベータの下降運転時の「遅延時間3」と乗り籠の荷重の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 乗り籠
2 水圧シリンダ
3 パイロット操作式逆止弁
4 水圧ポンプ
5 電動機
6 インバータ
7 制御装置
8 タンク
9 第一圧力検出器
10 第二圧力検出器
11 電磁切換弁
12 制御弁
13 逆止弁
14 リリーフ弁
15 リリーフ弁
16a〜e 位置検出器
Claims (5)
- 乗り籠をプランジャを介して昇降させる水圧シリンダと、タンクから前記水圧シリンダに作動水流路を介して作動水を給排水する水圧ポンプと、前記水圧シリンダと水圧ポンプ間の作動水流路に設けたパイロット操作式逆止弁と、該パイロット操作式逆止弁と水圧シリンダ間の作動水流路から分岐して前記タンクに連通する作動水流路に設けた常時閉の制御弁と、前記水圧ポンプを駆動する電動機と、前記電動機に周波数を制御して駆動電力を供給するインバータと、前記インバータ、パイロット操作式逆止弁及び制御弁の動作を制御する制御装置と、前記水圧シリンダとパイロット操作式逆止弁間の作動水流路に設けた第一の圧力検出手段と、前記乗り籠の位置を検出しその検出信号を前記制御装置に出力する位置検出手段とを備えて水圧エレベータを構成し、
前記制御装置は前記乗り籠の上昇運転時、前記第一の圧力検出手段の出力に基づき、第1の遅延時間を演算し、前記インバータを介して前記乗り籠の位置及び速度を目的着床レベルの近くまで制御し、前記位置検出手段により停止位置を検知した後に、前記第1の遅延時間だけ前記水圧ポンプの運転を継続してから該水圧ポンプを停止するように前記インバータを制御することを特徴とする水圧エレベータ装置。 - 乗り籠をプランジャを介して昇降させる水圧シリンダと、タンクから前記水圧シリンダに作動水流路を介して作動水を給排水する水圧ポンプと、前記水圧シリンダと水圧ポンプ間の作動水流路に設けたパイロット操作式逆止弁と、該パイロット操作式逆止弁と水圧シリンダ間の作動水流路から分岐して前記タンクに連通する作動水流路に設けた常時閉の制御弁と、前記水圧ポンプを駆動する電動機と、前記電動機に周波数を制御して駆動電力を供給するインバータと、前記インバータ、パイロット操作式逆止弁及び制御弁の動作を制御する制御装置と、前記水圧シリンダとパイロット操作式逆止弁間の作動水流路に設けた第一の圧力検出手段と、前記乗り籠の位置を検出しその検出信号を前記制御装置に出力する位置検出手段とを備えて水圧エレベータを構成し、
前記制御装置は前記乗り籠の下降運転時、前記第一の圧力検出手段の出力に基づき、第3の遅延時間を演算し、前記パイロット操作式逆止弁と前記インバータを介して、前記乗り籠の位置及び速度を目的着床レベル近くまで制御した後、前記制御弁による位置及び速度の制御に切り換え、前記位置検出手段により停止位置を検知してから、前記第3の遅延時間だけ前記制御弁の開状態を継続した後に該制御弁を閉止するように制御することを特徴とする水圧エレベータ装置。 - 請求項2に記載の水圧エレベータ装置において、
前記制御装置は、前記制御弁による位置及び速度の制御への切り換えを、前記インバータによる前記水圧ポンプの停止に至る減速運転中に行うことを特徴とする水圧エレベータ装置。 - 請求項3に記載の水圧エレベータ装置において、
前記制御装置は、前記第一の圧力検出手段の出力により、更に第2の遅延時間を演算し、前記インバータによる前記水圧ポンプの停止に至る減速運転中に行う前記制御弁による位置及び速度の制御への切り換えにおいて、前記パイロット操作式逆止弁を閉弁させるための信号出力と、前記制御弁を開弁させるための信号出力との間に前記第2の遅延時間に等しい時間間隔を設けたことを特徴とする水圧エレベータ装置。 - 請求項2乃至4のいずれか1に記載の水圧エレベータ装置において、
前記パイロット操作式逆止弁と前記水圧ポンプ間の作動水流路に第二の圧力検出手段を設け、
前記制御装置は、前記乗り籠の下降運転開始時に、前記インバータに前記水圧ポンプを前記水圧シリンダに作動水を供給する方向に運転する指令信号を出力し、前記第二の圧力検出手段の圧力検出値が前記第一の圧力検出手段の圧力検出値を超えた時点で、前記パイロット操作式逆止弁に開弁指令を出力するとともに、前記水圧ポンプを前記水圧シリンダから作動水を排出する方向に運転する指令信号を出力することを特徴とする水圧エレベータ装置。
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