JP3975927B2 - 圧電振動片と圧電振動片を利用した圧電デバイス、ならびに圧電デバイスを利用した携帯電話装置および圧電デバイスを利用した電子機器 - Google Patents
圧電振動片と圧電振動片を利用した圧電デバイス、ならびに圧電デバイスを利用した携帯電話装置および圧電デバイスを利用した電子機器 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電振動片と、この圧電振動片をパッケージに収容した圧電デバイス、ならびに圧電デバイスを利用した携帯電話と電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、パッケージ内に圧電振動片を収容した圧電振動子や圧電発振器等の圧電デバイスが広く使用されている。
図8は、このような圧電デバイスの構成例を示す概略斜視図である(特許文献1参照)。
図において、圧電デバイス1は、パッケージ2の内部に、圧電振動片3を収容している。パッケージ2はこの場合、絶縁材料を浅い箱状に形成したもので、内部に圧電振動片3を収容固定した後で、蓋体4により封止されるようになっている。
【0003】
圧電振動片3は、例えば水晶をエッチングすることにより図8のような形状とされている。図示されているように、圧電振動片3は、基部5と、この基部5から平行に延びる一対の振動腕6,7を備える、所謂、音叉型水晶振動片で構成されている。
圧電振動片3には、図示しない励振電極が形成されている。パッケージ2内には、電極部8,8が設けられており、圧電振動片3の基部5が、導電性接着剤8a,8aを用いてこの電極部8,8に対して接合されている。
【0004】
これにより、外部からパッケージ2の電極部8,8を介して圧電振動片3に駆動電圧を印加することにより、振動腕6と振動腕7は矢印に示すように、その先端を互いに接近・離間させる屈曲振動が、所定の振動周波数で行われる。このような振動に基づく振動周波数を取り出すことにより、制御クロック信号等の各種信号に利用されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特許第3229005号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図9は、上述した圧電デバイス1に用いられる圧電振動片3の一部を示す図である。
圧電振動片3の基部5の幅方向を二分する仮想の中心線C1に関して、振動腕6と振動腕7は、構造的に同じ剛性を備えることが好ましい。すなわち、圧電振動片3が正しく振動するためには、中心線C1に関して、図において左右の構造が同じ剛性を備えていないと、各振動腕6,7の屈曲振動がばらついてしまい、振動性能に悪影響が出る。
【0007】
このような剛性上のアンバランスの原因として考えられるのは、圧電振動片3を形成するための圧電材料が、エッチングによる異方性を示すことである。
すなわち、圧電振動片3は、図8のような音叉形状を形成するために、例えば水晶ウエハ等の圧電材料をエッチングする必要がある。このエッチングの際に、図9に示す振動腕6と振動腕7との間の股部9に、ヒレ状の異形部9aが形成される。この異形部9aは、例えば図9に示されているように、中心線C1よりも右側で大きな面積となっており、このような構造によって、図において右側の振動腕7が動きにくくなり、中心線C1の左右の剛性の相違、言い換えれば、振動腕6と振動腕7との剛性の相違が生じる。
【0008】
図10は圧電振動片3の上述した屈曲振動におけるベクトル解析図であり、基部5から、各振動腕6,7の先端にいくに従って、およそa,b,c,d,e,f,g,h,iの領域毎に変位量が大きくなる。
従来の圧電振動片3の場合、例えば、振動周波数が3.4944・10の4乗Hz(ヘルツ)=34.944kHz(キロヘルツ)であり、例えば、ある任意の電界エネルギー(圧電作用)を印加した時の各振動腕6,7の先端部iの変位量は、図のX方向が6.57・10のマイナス3乗μm、Y方向が4.02・10のマイナス4乗μm、Z方向が3.49・10のマイナス6乗μmである。これは正常の状態よりも各振動腕6,7の先端部の変位量が大きくなり、特にZ方向の変位量が大きくなってしまっている。
【0009】
これによって、振動腕6よりも振動腕7のほうが剛性が高いことから、図示されているように、振動腕7の根元もしくは付け根付近のベクトル渦が崩れて、下方の基部5側に移動している。剛性が低い振動腕6側のベクトル渦はこれより上方に移動し、左右でベクトル渦の形態がバランスしなくなっていることが理解される。このような振動により、圧電振動片3のCI(クリスタルインピーダンス)値が高くなってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、所謂音叉型の圧電振動片において、左右の振動腕の剛性の相違による振動特性の悪化を防止してCI値を抑制することができる圧電振動片と、このような圧電振動片を使用した圧電デバイス、ならびに圧電デバイスを利用した携帯電話と電子機器を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的は、第1の発明によれば、エッチングによる異方性を有する圧電材料により形成されており、基部から平行に延びる一対の振動腕を備えた音叉型の圧電振動片であって、前記基部の前記各振動腕の間に位置する股部と、前記股部には、前記基部の幅方向の中心またはこの中心から、前記各振動腕側のうち、より剛性の高い方に寄った位置に、前記各振動腕の延びる方向に沿って切り込みを形成した、圧電振動片により、達成される。
【0012】
第1の発明の構成によれば、各振動腕の間に位置する股部に切り込みを設けている。しかもこの切り込みは、前記基部の幅方向の中心か、この中心よりもより剛性の高い側に寄った位置に設けられる。股部に切り込みを設けることにより、切り込みによって分割される領域が動きやすくなることで、屈曲振動の際のCI値が低減される。また、この切り込みが剛性の高い側に寄った位置に設けられることで、剛性が高い方の振動腕をより動きやすくし、これにより、各振動腕の剛性バランスの不良に基づく振動特性の悪化を防止することができる。
ここで、切り込みは、基部に股部側から切れ目を入れる構成や、基部に股部側からスリットを設ける構成等を含むものである。さらに、各振動腕の間の股部に形成される異形形状のバランスだけでなく、材料厚みの相違に基づく各振動腕の剛性の相違等にも適用できる。
したがって、本発明は、左右の振動腕の剛性の相違による振動特性の悪化を防止してCI値を抑制することができる圧電振動片を提供することができるという効果を発揮できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記股部が、前記より剛性の高い側に相当する箇所に前記異方性に基づく異形部を備えることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、圧電材料の異方性に基づいて、エッチングによる異形部が前記股部の中心よりも片側によって形成されている。または異形部の主要な部分もしくは大きな面積の部分が前記股部の中心よりも片側によって形成されている。これにより、当該異形部によって、中心よりも片側が動きにくくなっているので、そのような領域に前記切り込みを形成することで、剛性バランスを改善することができる。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明のいずれかの構成において、前記中心を通る仮想の幅方向の中心線Cと、この中心線Cから前記より剛性の高い側の前記振動腕の内側面との距離をLとした場合に、前記切り込みが前記中心線CからL/2の範囲に形成されていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、エッチングによる異形部が前記股部の中心よりも片側に寄って形成されている場合には、前記中心線CからL/2の範囲に切り込みを形成することで、前記片側に異形部の一部を残すことができ、動き易さと剛性の高さがバランスして、前記片側と他方との剛性バランスを適切に調整することができる。
【0015】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかの構成において、前記圧電材料が水晶であることを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、単結晶の水晶は、エッチングによる異方性を発揮して前記異形部を形成するので、前記切り込みを設けることで、適切に剛性バランスを調整することができる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明の構成において、前記各振動腕の長さ方向が前記水晶のY軸(機械軸)であり、前記各振動腕の幅方向が前記水晶のX軸(電気軸)であり、前記各振動腕の厚み方向が前記水晶のZ軸(光軸)であり、さらに、前記切り込みが、前記股部のプラスX方向寄りに設けられていることを特徴とする。
第5の発明の構成によれば、前記股部のプラスX方向側に形成されるエッチングによる異形部は、マイナスX方向側に形成される異形部よりも大きいことから、前記股部のプラスX方向寄りに、前記切り込みを設けることで、動きにくい方の振動腕を、より動き易くすることができる。
【0017】
上述の目的は、第6の発明によれば、エッチングによる異方性を有する圧電材料により形成されており、基部から平行に延びる一対の振動腕を備えた音叉型の圧電振動片をケースもしくはパッケージ内に収容した圧電デバイスであって、前記圧電振動片が、前記基部の前記各振動腕の間に位置する股部と、前記股部には、前記基部の幅方向の中心またはこの中心から、前記各振動腕側のうち、より剛性の高い方に寄った位置に、前記各振動腕の延びる方向に沿って切り込みを形成した、圧電デバイスにより、達成される。
第6の発明の構成によれば、圧電デバイスに利用される圧電振動片の各振動腕の間に位置する股部に切り込みを設けている。この切り込みは、第1の発明の場合と同様に作用するので、圧電振動片の振動腕をより動きやすくし、これにより、各振動腕の剛性バランスの不良に基づく振動特性の悪化を防止することができる。
【0018】
上述の目的は、第7の発明によれば、エッチングによる異方性を有する圧電材料により形成されており、基部から平行に延びる一対の振動腕を備えた音叉型の圧電振動片をケースもしくはパッケージ内に収容した圧電デバイスを利用した携帯電話装置であって、前記圧電振動片が、前記基部の前記各振動腕の間に位置する股部と、前記股部には、前記基部の幅方向の中心またはこの中心から、前記各振動腕側のうち、より剛性の高い方に寄った位置に、前記各振動腕の延びる方向に沿って切り込みを形成した圧電デバイスにより、制御用のクロック信号を得るようにした、携帯電話装置により、達成される。
上述の目的は、第8の発明によれば、エッチングによる異方性を有する圧電材料により形成されており、基部から平行に延びる一対の振動腕を備えた音叉型の圧電振動片をケースもしくはパッケージ内に収容した圧電デバイスを利用した電子機器であって、前記圧電振動片が、前記基部の前記各振動腕の間に位置する股部と、前記股部には、前記基部の幅方向の中心またはこの中心から、前記各振動腕側のうち、より剛性の高い方に寄った位置に、前記各振動腕の延びる方向に沿って切り込みを形成した圧電デバイスにより、制御用のクロック信号を得るようにした、電子機器により、達成される。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1ないし図3は、本発明の圧電デバイスの実施形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のA−A線概略断面図、図3は図1のB−B線切断端面図である。
図において、圧電デバイス30は、圧電振動子を構成した例を示しており、圧電デバイス30は、パッケージ36内に圧電振動片32を収容している。パッケージ36は、例えば、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して形成される複数の基板を積層した後、焼結して形成されている。複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間S2を形成するようにされている。この実施形態は、パッケージ36の厚さを最小とするために、第1の基板63と第2の基板64を積層して形成されていおり、第2の基板64の内側の材料を除去することで、内部空間S2のスペースを形成している。
この内部空間S2が圧電振動片を収容するための収容空間である。
【0020】
パッケージ36の内部空間S2内の図において左端部付近において、内部空間S2に露出して内側底部を構成する第1の基板63には、例えば、タングステンメタライズ上にニッケルメッキ及び金メッキで形成した電極部31,31が設けられている。
この電極部31,31は、外部と接続されて、駆動電圧を供給するものである。この各電極部31,31の上に導電性接着剤43,43が塗布され、この導電性接着剤43,43の上に圧電振動片32の基部51の幅方向両端部に設けた引き出し電極33,33が載置されて、導電性接着剤43,43が硬化されるようになっている。各引出し電極33,33は、後述する圧電振動片32の励振電極にそれぞれ接続されている(図示せず)。尚、導電性接着剤43,43としては、接合力を発揮する接着剤成分としての合成樹脂剤に、銀製の細粒等の導電性の粒子を含有させたものが使用でき、シリコーン系、エポキシ系またはポリイミド系導電性接着剤等を利用することができる。
【0021】
圧電振動片32は、エッチングによる異方性を有する圧電材料を使用して形成されており、例えば単結晶の水晶が用いられる。水晶以外にもタンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。
図1において、圧電振動片32は、例えば、エッチングによる異方性を有する圧電材料としての水晶を音叉型に加工されて形成されている。この場合、図1に示すX軸が電気軸、Y軸が機械軸及びZ軸が光軸となるように水晶の単結晶から切り出されることになる。
また、圧電振動片32は、パッケージ36側と固定される基部51と、この基部51を基端として、図において右方に向けて、二股に別れて平行に延びる一対の振動腕34,35を備えており、全体が音叉のような形状とされた、所謂、音叉型圧電振動片が利用されている。
【0022】
さらに圧電振動片32は、好ましくは、基部51の各振動腕34,35の基端部近傍に、基部51の幅を縮幅するようにして設けたくびれ部、もしくは切欠き部48,48を備えている。圧電振動片32は、この切欠き部48,48を備えることにより、各振動腕34,35からの振動の基部51側への漏れ込みが抑制されるようになっている。
【0023】
各振動腕34,35には、それぞれ長さ方向に延びる溝44,44を有している。この各溝44,44は、図3に示されているように、各振動腕34,35の表裏両面に形成されている。圧電振動片32の基部51の端部には、図1で説明したように、パッケージ36の電極部31,31と接続するための引き出し電極33,33が形成されている。各引き出し電極33,33は、圧電振動片32の基部51の表裏に設けられている。これらの各引き出し電極33,33は、各振動腕34,35の溝44,44内に設けた励振電極と接続されている。
【0024】
圧電振動片32の駆動電極である励振電極は、図3に示すように、第1の電極61と第2の電極62とでなっており、この第1の電極61と第2の電極62とは、それぞれ図1の各引き出し電極33,33に接続されている。そして、この第1の電極61と第2の電極62は互いに分離されているとともに、図3に示されているように、各振動腕34,35の領域では、各溝44,44とこれら振動腕34,35の側面部とに、電極どうしが互いに対向する位置を占めるように形成されている。
これにより、第1の電極61と第2の電極62に駆動電圧が印加されると、図3に矢印で示すように、電界を形成することができ、駆動電圧の周波数変化に基づいて各振動腕34,35に屈曲振動を生じるようになっている。
【0025】
パッケージ36の開放された上端には、蓋体39が接合されることにより、封止されている。蓋体39は、好ましくは、パッケージ36に封止固定した後で、図2に示すように、外部からレーザ光LBを圧電振動片32の金属被覆部もしくは励振電極の一部(図示せず)に照射して、質量削減方式により周波数調整を行うために、光を透過する材料,特に、薄板ガラスにより形成されている。
蓋体39として適するガラス材料としては、例えば、ダウンドロー法により製造される薄板ガラスとして、例えば、硼珪酸ガラスが使用される。
【0026】
図4は、図1の圧電振動片32の各振動腕34,35の付け根もしくは根元の領域を拡大して示す説明図である。
図示されているように、振動腕34と振動腕35の間の領域には、略U字状の股部37が位置している。ここで、説明の便宜のため、この股部37の中心、すなわち、圧電振動片32の幅方向(図4のX方向)の中心を通り、振動腕34及び振動腕35の長さ方向に沿った仮想の中心線Cを設定する。そして、この中心線Cを含み、中心線CよりもプラスX方向に寄った位置に、切り込み70が設けられている。
【0027】
切り込み70は、振動腕34及び振動腕35の長さ方向に沿って形成されている。切り込み70は、切れ目もしくはスリット等であり、貫通している必要がある。
この切り込み70は、圧電振動片32において、屈曲振動する振動腕34と振動腕35との剛性の相違に考慮して設けられるものである。すなわち、所謂音叉型圧電振動片の場合は、圧電振動片32の振動腕34と振動腕35とは同一の形状で同一の構造を備えていることから、本来同じ剛性とされている。しかしながら、例えば、製造工程において、水晶ウエハをエッチングして圧電振動片32を形成する場合には、振動腕34と振動腕35とが厳密に同一の形状,構造とならない場合があり、どちらかの剛性が高くなる。
特に、エッチングによる異方性がある上記水晶等を材料とした場合には、図4に示されているように、股部37やその他の箇所に、マスクパターン等と一致しない異形な形状が形成される異形部73ができることがある。
【0028】
この異形部73は、例えば、図4に示されているように、基部51や各振動腕34,35の材料厚みよりも厚みの薄いヒレ状の部分として形成される。そして、この異形部73は、股部37の中心線Cに関して、X方向のマイナス側では比較的面積が小さく、股部37の中心線Cに関して、X方向のプラス側では比較的面積が大きくなる。
このような左右のアンバランスな形態を備える異形部の形成によって、振動腕35は、振動腕34よりも剛性が高くなり、その分動きが悪くなって、屈曲振動の性能に悪影響を与える。
【0029】
そこで、図4において、少なくとも、中心線Cに沿って、好ましくは、中心線CよりもX方向プラス側に寄った位置に切り込み70を形成する。これにより、圧電振動片32の振動腕34と振動腕35とは切り込み70によって、さらに左右に分離され、しかも異形部72の大きさをバランスさせることができるので、圧電振動片32の振動腕34と振動腕35との剛性をほぼ一致させることができる。
【0030】
この場合、好ましくは、図4に示されているように、切り込み70を形成する位置が、中心線Cと、この中心線CからX方向プラス側の振動腕35の内側面35aとの距離をLとした場合に、1/2Lの範囲(点線で示した切り込み70−1から70−2の範囲)に形成される。
これにより、切り込み70よりもX方向プラス側に異形部73の一部72を残すことができる。このため、切り込み70よりもX方向マイナス側に残る異形部の他の一部71と、上記異形部の一部72とを面積的にほぼ同一にすることができ、動き易さと剛性の高さがバランスして、振動腕34と振動腕35の剛性バランスを適切に調節することができる。
【0031】
図5は、本実施形態の圧電振動片32の屈曲振動におけるベクトル解析図であり、いずれの図においても基部51から、各振動腕34,35の先端にいくに従って、およそa,b,c,d,e,f,g,h,iの領域毎に変位量が大きくなる。 尚、図5及び図6においては、図示の都合上、圧電振動片32の詳細な形状は表れていないが、図1ないし図4で説明した形状及び構造と同じであることは言うまでもない。
【0032】
図示されているように、図5は、煩雑を避けるため、切り込み等の部分を含む細部を省略しているが、圧電振動片32の屈曲振動におけるベクトル解析図である。図において、基部51から、各振動腕34,35の先端にいくに従って、およそa,b,c,d,e,f,g,h,iの領域毎に順次変位量が大きくなる。図6は振動腕34−1,35−1を等しい剛性バランスで形成した場合の理想的な圧電振動片32−1の屈曲振動におけるベクトル解析図である。この図においても、基部51−1から、各振動腕34−1,35−1の先端にいくに従って、およそa,b,c,d,e,f,h,g,h,iの領域毎に順次変位量が大きくなる。
【0033】
図5の圧電振動片32では、例えば、振動周波数が3.4394・10の4乗Hz(ヘルツ)=34.394kHz(キロヘルツ)であり、例えば、各振動腕34,35の先端部の変位量は、図のX方向が2.41・10のマイナス3乗μm、Y方向が1.21・10のマイナス4乗μm、Z方向が7.76・10のマイナス7乗μmである。
図6の理想状態の圧電振動片32−1では、例えば、振動周波数が3.3781・10の4乗Hz(ヘルツ)=33.781kHz(キロヘルツ)であり、例えば、各振動腕34−1,35−1の先端部の変位量は、図のX方向が2.51・10のマイナス3乗μm、Y方向が1.26・10のマイナス4乗μm、Z方向が8.40・10のマイナス7乗μmである。
【0034】
本実施形態の圧電振動片32を表す図5と、理想状態の図6及び、従来の圧電振動片について作成した図10をそれぞれ比較すると、図10よりも図5は、図6にきわめて近いことが理解される。
すなわち、切り込みを形成した図5の圧電振動片32では、図10の従来例と比較すると、Z方向の変位量が一桁程度小さくなっており、図6の理想状態ときわめて近い。これにより、図5に示されているように、左右の振動腕34,35のベクトル渦は、ほぼ左右対称となって、剛性バランスが大幅に改善されている。
【0035】
このように、本実施形態の圧電振動片32によれば、各振動腕34,35の間に位置する股部37に切り込み70を設けることにより、切り込みによって分離された各振動腕34,35の付け根部分が動きやすくなることで、屈曲振動の際のCI値が低減される。特に、この切り込み70が剛性の高い側に寄った位置に設けられることで、剛性が高い方の振動腕35をより動きやすくし、これにより、各振動腕34,35の剛性バランスの不良に基づく振動特性の悪化を防止することができる。
【0036】
図7は、本発明の上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。
図において、送信者の音声を受信するマイクロフォン308及び受信内容を音声出力とするためのスピーカ309を備えており、さらに、送受信信号の変調及び復調部に接続された制御部としての集積回路等でなるCPU(Central
Processing Unit)301を備えている。
CPU301は、送受信信号の変調及び復調の他に画像表示部としてのLCDや情報入力のための操作キー等でなる情報の入出力部302や、RAM,ROM等でなる情報記憶手段としてのメモリ303の制御を行うようになっている。このため、CPU301には、圧電デバイス30が取り付けられて、その出力周波数をCPU301に内蔵された所定の分周回路(図示せず)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにされている。このCPU301に取付けられる圧電デバイス30は、圧電デバイス30等単体でなくても、圧電デバイス30等と、所定の分周回路等とを組み合わせた発振器であってもよい。
【0037】
CPU301は、さらに、温度補償水晶発振器(TCXO)305と接続され、温度補償水晶発振器305は、送信部307と受信部306に接続されている。これにより、CPU301からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償水晶発振器305により修正されて、送信部307及び受信部306に与えられるようになっている。
【0038】
このように、制御部を備えたデジタル式携帯電話装置300のような電子機器に、上述した実施形態に係る圧電振動片32と、これらを利用した圧電デバイス30を利用することにより、各振動腕34,35の剛性バランスを改善して、CI値を抑制できるので、適切な振動を実現できることから、正確なクロック信号を生成することができる。
【0039】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
また、この発明は、パッケージ内、あるいは金属製の筒状のケース等に圧電振動片を収容するものであれば、圧電振動子、圧電発振器等の名称にかかわらず、全ての圧電デバイスに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の圧電デバイスの実施形態を示す概略平面図。
【図2】 図1のA−A線概略断面図。
【図3】 図1のB−B線切断端面図。
【図4】 図1の圧電振動片の各振動腕の付け根もしくは根元の領域を拡大して示す説明図である。
【図5】 図1の圧電振動片の屈曲振動におけるベクトル解析図。
【図6】 振動腕の剛性バランスについて理想状態の圧電振動片の屈曲振動におけるベクトル解析図。
【図7】 本発明の実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図。
【図8】 従来の圧電デバイスの一例を示す概略斜視図。
【図9】 図8の圧電デバイスに使用される圧電振動片の部分拡大図。
【図10】 図8の圧電デバイスに使用される圧電振動片の屈曲振動におけるベクトル解析図。
【符号の説明】
30・・・圧電デバイス、32・・・圧電振動片、34,35・・・振動腕、36・・・パッケージ、37・・・股部、70・・・切り込み、73・・・異形部。
Claims (8)
- エッチングによる異方性を有する圧電材料により形成されており、基部から平行に延びる一対の振動腕を備えた音叉型の圧電振動片であって、
前記基部の前記各振動腕の間に位置する股部と、
前記股部には、前記基部の幅方向の中心またはこの中心から、前記各振動腕側のうち、より剛性の高い方に寄った位置に、前記各振動腕の延びる方向に沿って切り込みを形成した
ことを特徴とする、圧電振動片。 - 前記股部が、前記より剛性の高い側に相当する箇所に前記異方性に基づく異形部を備えることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
- 前記中心を通る仮想の幅方向の中心線Cと、この中心線Cから前記より剛性の高い側の前記振動腕の内側面との距離をLとした場合に、前記切り込みが前記中心線CからL/2の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の圧電振動片。
- 前記圧電材料が水晶であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電振動片。
- 前記各振動腕の長さ方向が前記水晶のY軸(機械軸)であり、前記各振動腕の幅方向が前記水晶のX軸(電気軸)であり、前記各振動腕の厚み方向が前記水晶のZ軸(光軸)であり、さらに、前記切り込みが、前記股部のプラスX方向寄りに設けられていることを特徴とする請求項4に記載の圧電振動片。
- エッチングによる異方性を有する圧電材料により形成されており、基部から平行に延びる一対の振動腕を備えた音叉型の圧電振動片をケースもしくはパッケージ内に収容した圧電デバイスであって、
前記圧電振動片が、
前記基部の前記各振動腕の間に位置する股部と、
前記股部には、前記基部の幅方向の中心またはこの中心から、前記各振動腕側のうち、より剛性の高い方に寄った位置に、前記各振動腕の延びる方向に沿って切り込みを形成した
ことを特徴とする、圧電デバイス。 - エッチングによる異方性を有する圧電材料により形成されており、基部から平行に延びる一対の振動腕を備えた音叉型の圧電振動片をケースもしくはパッケージ内に収容した圧電デバイスを利用した携帯電話装置であって、
前記圧電振動片が、
前記基部の前記各振動腕の間に位置する股部と、
前記股部には、前記基部の幅方向の中心またはこの中心から、前記各振動腕側のうち、より剛性の高い方に寄った位置に、前記各振動腕の延びる方向に沿って切り込みを形成した圧電デバイスにより、制御用のクロック信号を得るようにしたことを特徴とする、携帯電話装置。 - エッチングによる異方性を有する圧電材料により形成されており、基部から平行に延びる一対の振動腕を備えた音叉型の圧電振動片をケースもしくはパッケージ内に収容した圧電デバイスを利用した電子機器であって、
前記圧電振動片が、
前記基部の前記各振動腕の間に位置する股部と、
前記股部には、前記基部の幅方向の中心またはこの中心から、前記各振動腕側のうち、より剛性の高い方に寄った位置に、前記各振動腕の延びる方向に沿って切り込みを形成した圧電デバイスにより、制御用のクロック信号を得るようにしたことを特徴とする、電子機器。
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