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JP3942001B2 - 電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル,その製造方法及び蛋白質の分離分析方法 - Google Patents

電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル,その製造方法及び蛋白質の分離分析方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,生化学医薬分析を目的とする長期保存可能な電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル,その製造方法及び蛋白質の分離分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルは、蛋白質、糖質、脂質など生体を構成する重要な物質の検出及び定量分析を目的として、 生物学、医学、水産学、獣医学など多くの分野における基礎的研究手段として広く使用されている。特に、ポリアクリルアミドゲルは、人工的に合成された物質であるため、処方を変えることで分離特性の異なるゲルを容易に作成することができる。そのため、予め様々な分離特性を持つように量産されたプレキャストゲルを使用することで分析の手間を大幅に省くことができると共に、プレキャストゲルが均一で再現性が良いことから当該分野における生産および品質管理に貢献するところが大である。量産されたプレキャストゲルを供給するに際しては、保存安定性が良好であることが期待される。
【0003】
従来、電気泳動用ポリアクリルアミドゲルは蛋白質の生化学医薬分析用に、オルンスタイン(L.Ornstein,Ann.N.Y.Acad.Sci.121,321−349(1964))とデービス(B.J.Davis,Ann.N.Y.Acad.Sci.121, 404−427(1964))によって提案された方法や、レムリー(U.K.Laemmli,Nature227,680(1970))によって提案された方法が広く使用され、使用者がゲルを製造して使用してきた。特にドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSと略す)をゲルや泳動用緩衝液に添加することで手軽に蛋白質の分子量を推定できるレムリーの方法が広く普及している。レムリーの方法はゲル緩衝液としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(以下、トリスと略す)の塩酸による部分中和物を使用し、 泳動用緩衝液としてはトリス、グリシン塩を使用している(レムリーの泳動緩衝液)。この方法におけるゲル緩衝液ではpHが8.8になるようにトリスの約10〜20モル%を塩酸により部分中和する(レムリーのゲル緩衝液)。
【0004】
しかしながら、レムリーのゲル緩衝液のpHでは、アミド基は経時的に加水分解反応を受ける。加水分解反応は低温条件でも進行し、 ポリアクリルアミドゲルは部分的にアニオン基を有することになる。この結果、蛋白質の泳動距離が短くなると共に分離像は不鮮明となるので、ゲルを長期に保存することは出来ない。このため、予め量産したゲルを供給するプレキャストゲルにおいては、保管期限を限定して供給する必要があり、保管期間中のゲルを安定させるため、保存安定性が良好であることが望まれている。
【0005】
保存安定性の良いゲルを製造する方法に関しては、トリス、両性電解質及び酸から成るゲル緩衝液を内包した、長期保存安定性に優れ且つ測定可能な分子量範囲を著しく拡大したポリアクリルアミドゲルの製造方法が特開平4−184163公報に開示されている。この製造方法によるポリアクリルアミド電気泳動ゲルはレムリーの泳動用緩衝液を使用して分析可能であり、 両性電解質を含有するpH4.0〜7.5のゲル緩衝液を内包することを特徴とし、その実施例においてpH6.9〜7.4のゲルの製造が例示され、冷蔵保存で4 ヶ月の間は蛋白質の移動度に変化なく安定であるとされている。
【0006】
このゲル緩衝液は、ポリアクリルアミドゲルの加水分解を抑制する目的でトリスの中和率を高く設定して、泳動ゲル中のトリス強酸部分とトリス弱酸部分の境界付近での電位勾配の変化を両性電解質の添加によって緩やかにし、 レムリーのゲル緩衝液を使用して作成したゲルと同等の分画分子量範囲を持たせることを意図している。
【0007】
しかし、pH6.9〜7.4の範囲のゲル緩衝液を内包したポリアクリルアミドゲルは冷蔵保存で5 ヶ月以上経過すると蛋白質の移動度に変化が現れる。またスラブゲルの場合、ゲルの形状が変化しガラスプレートがずれ易くなる。その結果、泳動分析上のハンドリングが悪くなり、ガラスのずれによるゲルの剥離などの問題も生ずる。pHを6.8以下にすると保存安定性が更に向上することが推測されるが、泳動時間が長くなる、分離能が悪化すると言う問題があり、5ヶ月以上の保存安定性を持つ蛋白質の分離能が良好でかつ、レムリーのゲル緩衝液を使用して作成したゲルの測定対象と同等の分画分子量範囲を持たせたポリアクリルアミドゲルを得ることができなかった。
【0008】
また、特表平9−512907公報には、中性pH長寿命プレキャスト電気泳動ゲルのためのシステムが表示されている。このシステムでゲル緩衝液はpHが中性付近の一価有機アミン又は置換アミンを含有し、 約6 〜7の間のpHに塩酸で滴定されている。泳動用緩衝液はMOPS、MES、ACES、MOPSO、TES、HEPES又はTAPSOから成る群から選択される両性イオンを含み、 水酸化ナトリウム又は有機塩基で約7のpHに滴定されている。ゲル緩衝液、泳動緩衝液共に中性に設定することで、 ポリアクリルアミドゲルの加水分解を抑制すると同時に蛋白質が完全に還元されたままで分離されるような緩衝液システムである。この電気泳動用システムでは12カ月の間は安定とされている。
【0009】
しかし、特表平9−512907公報に表示されているシステムでは、専用の分子量マーカーを用いなければならない。また、特表平9−512907公報に表示されているポリアクリルアミドゲルは公知の泳動用緩衝液、例えば汎用に利用されているグリシンを含有するレムリーの泳動緩衝液を使用しても、泳動速度が極めて遅く蛋白質の分離分析に使用することが不可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、具体的には、冷蔵保存で6 ヶ月以上蛋白質の分離能及びゲルの形状共に安定で、かつレムリーのゲル緩衝液を使用して作成されたゲルの測定対象と同等の分画分子量範囲を持たせたポリアクリルアミドプレキャストゲルを得る点について解決すべき課題がある。予め様々な分離特性を持つように量産されたプレキャストゲルは、保存安定性が良好であれば、保管有効期限を長く設定することが可能である。また、分析方法が普及しているレムリーの泳動緩衝液が使用できれば、使用者が経済的かつ効率的に分析を遂行することができる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,上記の課題を解決するものであり,保存安定性に優れ,保管有効期限が長く,また,分析方法が普及しているレムリーの泳動緩衝液を使用可能とする,長期保存安定性を有する電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル,その製造方法及び蛋白質の分離分析方法を提供することである。
【0012】
本発明者らはレムリーの泳動用緩衝液が使用可能な長期安定性を持つ電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル、その製造方法及びその使用方法について鋭意検討した結果、以下の発明に到達した。すなわち、ゲル緩衝液のpH を6.0〜6.8の範囲とし、トリス、グリシン、1種又は2種以上の共存両性電解質を含有した特定濃度の泳動ゲル緩衝液を使用することにより、半年から1年以上ゲルの形状、泳動像に変化の無いゲルを得ることが出来た。また、その使用方法及びそれを製造する方法も見出した。
【0013】
この発明は、上記の目的を達成するため、次のように構成されている。即ち、この発明は、泳動用緩衝液の組成がトリス及び両性電解質を含有する水溶液である電気泳動法に用いるポリアクリルアミドプレキャストゲルにおいて、そのゲルが特定範囲の使用量のトリス、グリシン、特定の塩基解離定数、特定の添加量の両性電解質および、共存両性電解質とグリシンの濃度合計の濃度が特定範囲の両性電解質、および特定のpHである緩衝液を用いて調製されていることを特徴とする電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルに関する。即ち、この発明は、泳動用緩衝液の組成がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び両性電解質を含有する水溶液である電気泳動法に用いるポリアクリルアミドプレキャストゲルにおいて、前記ゲルは、
(1)前記トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度が0.07mol/L〜0.2mol/Lの範囲にあり、
(2)前記両性電解質がグリシンと1種又は2種以上の共存両性電解質から成り、
1.前記共存両性電解質の塩基解離定数pKbが8.3<pKb<9.6の範囲にあり、
2.前記共存両性電解質の添加量が前記グリシンに対して0.1〜30mol%の範囲にあり、
3.前記共存両性電解質と前記グリシンの濃度の合計が0.1〜0.3mol/Lの範囲にあり、
(3)pHが6.0〜6.8の範囲
にある緩衝液を用いて調製されていることを特徴とする電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルに関する。
【0014】
この電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルにおいて、前記共存両性電解質が分子内にアニオン性基とカチオン性基を同数有するアミノ酸である。
【0015】
更に、この電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルにおいて、前記共存両性電解質が、セリン、グルタミン、トリプトファン、メチオニン、又はフェニルアラニンである。
【0016】
また、この発明は、アクリルアミド、多官能架橋剤、水、および前述の緩衝液の混合物を特定のpH条件で重合開始剤の存在下に重合することを特徴とする電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルの製造方法に関する。即ち、この発明は、アクリルアミド、多官能架橋剤、水、並びに下記組成の緩衝液
(1)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度が0.07mol/L〜0.1mol/Lの範囲にあり、
(2)両性電解質がグリシンと1種又は2種以上の共存両性電解質から成り、
1.前記共存両性電解質の塩基解離定数pKbが8.3<pKb<9.6の範囲にあり、
2.前記共存両性電解質の添加量が前記グリシンに対して0.1〜30mol%の範囲にあり、
3.前記共存両性電解質と前記グリシンの濃度の合計が0.1〜0.3mol/Lの範囲にある
から成る混合物を、pHが6.0〜6.8の範囲にある条件で重合開始剤の存在下に重合することを特徴とする電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルの製造方法に関する。
【0017】
更に,この発明は,泳動用緩衝液としてドデシル硫酸塩が存在するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及びグリシンを含有する泳動用緩衝液を用い,請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルを用いることを特徴とする蛋白質の分離分析方法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のゲルは、ゲル中に含有する緩衝液の組成が、トリス、グリシン、1種又は2種以上の共存両性電解質からなり、ゲル中のトリス濃度は、0.07mol/L〜0.2mol/L、好ましくは0.08mol/L〜0.1mol/Lである。この範囲は、 レムリーのゲル緩衝液を使用して作成したゲルと同等の泳動時間を有するために必要なゲル中のリーディングイオンの量を含有させることの出来る範囲である。ゲル中のトリス濃度が0.07mol/Lよりも低い場合、泳動像全体が不鮮明となり蛋白質の分離分析に使用しがたいものとなる。ゲル中のトリス濃度が0.2mol/Lより高くなるとゲル中のリーディングイオン濃度が高くなり、泳動時間が延長し、分析の作業効率が悪くなる。
【0019】
また、両性電解質はグリシンと1種又は2種以上の共存両性電解質から成り、共存両性電解質の塩基解離定数pKbの範囲は8.3<pKb<9.6、好ましくは9.0<pKb<9.6である。グリシン単独ではゲル緩衝液のpHを7以下にした場合、レムリーのゲル緩衝液を用いて作成したゲルの測定対象と同等の分画分子量範囲を持たせることはできない。また、共存両性電解質の塩基解離定数pKbがpKb<8.3の場合、トリスよりもpKbが低いことになるため、 ゲル緩衝液のpHを変化させ、 また分画分子量範囲を大幅に広くしてしまう。pKb>9.6の場合、グリシンよりも塩基解離定数が高いことになるため、ゲル内の電位勾配の変化を緩やかにする作用に寄与しない。9.0<pKb<9.6であるセリン、トリプトファン、フェニルアラニン等を使用するとpKbの低いものから順に陽極側へ移動し、 ゲル内の電位勾配の変化は緩やかなものとなる。従ってレムリーのゲル緩衝液を用いて作成したゲルの測定対象と同等の分画分子量範囲を持たせることができる。
【0020】
また、共存両性電解質の添加量はグリシンに対して0.1〜30mol%、好ましくは1〜20mol%である。0.1mol%より低添加量の場合、レムリーのゲル緩衝液を使用して作成したゲルの測定対象と同等の分画分子量範囲を持たせる効果が現れず、逆に30mol%よりも多く添加した場合は泳動像が不鮮明で実用に耐えないものとなる。
【0021】
また、共存両性電解質とグリシンの濃度の合計が0.1〜0.3mol/Lであり、好ましくは0.1〜0.2mol/Lである。全両性電解質濃度が0.1mol/Lよりも少なく、0.3mol/Lより多くなると泳動像が不鮮明で実用に耐えないものとなる。
【0022】
また、本発明に用いる両性電解質は、分子内にアニオン基とカチオン基を同数有するものが望ましく、 本発明のゲル緩衝液中では全てのアニオン性基と全てのカチオン性基が解離して電気的に中性となり、pK値よりも高いpHではアニオン性基のみが解離しカチオン性基の解離が抑制されるため負に帯電する。この為に上記両性電解質は実質的に1価の弱酸としての挙動を示す。
【0023】
本発明のプレキャストゲル、その使用方法、およびその製造方法に使用するゲル緩衝液のpHは、6.0〜6.8であり、好ましくは6.3である。pH6.8よりも高い場合、ポリアクリルアミドゲルの加水分解が進行し易くなり、保管有効期限を長く持たせることが出来ない。pH6.0より低い場合、ポリアクリルアミドゲルとしての安定性は良好であるが、蛋白質の泳動像が不鮮明で実用に耐えないものとなる。pH6.8では冷蔵保存で6 ヶ月もち、さらにpH6.3ではアクリルアミド自体のpHに近いため、 pH6.8に比べ加水分解速度が著しく減少する。その結果1年もの長期間ゲルの形状、泳動像共に変化は見られず安定である。
【0024】
本発明のプレキャストゲルの使用方法は、トリス、及び両性電解質を含有する泳動用緩衝液を使用して蛋白質の分離分析をする方法であり、特にトリス0.025mol/L、グリシン0.192mol/L、SDS0.1重量%である組成の泳動用緩衝液を使用することが望ましい。この組成はレムリーによって提案されたゲル緩衝液で、蛋白質の分離分析方法として広く普及しているため、使用者が経済的かつ効率的に分析を遂行することができる。グリシン以外の両性電解質、たとえばMOPSを含有した泳動用緩衝液を使用しても蛋白質の分離分析を行うことは出来るが、広く普及しているレムリーのゲル緩衝液を使用して作成したゲルの分画分子量範囲よりも広くなってしまう。
【0025】
本発明のプレキャストゲルの製造方法は、ゲル緩衝液のpH調整と両性電解質の添加以外は、従来公知の電気泳動用ポリアクリルアミドゲルの製造方法に従って製造することができる。例えば、アクリルアミドと共存する架橋を目的とした水溶性ジビニル化合物としては、N,N' −メチレンビスアクリルアミド(以下、BISと略す)が最も多用されているが、その他N,N' −ジアリル酒石酸アミド等の一般的なジビニル化合物も使用することができる。
【0026】
本発明のプレキャストゲルの製造方法におけるモノマー水溶液には、ゲルに弾力性を持たせゲル強度を向上させるため、アガロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリメチルビニルエーテル等の水溶性ポリマーを含有させることもできる。他のモノマーを共重合することもできる。
【0027】
本発明のプレキャストゲルの製造方法におけるモノマーの重合は、重合開始剤、紫外線照射および電離性放射線の照射により発生するラジカルによって行われる。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム(以下、APSと略す)等の過酸化物と、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TEMEDと略す)等の還元剤を併用するレドックス型の重合開始剤が賞用されるが、これら特に限定されるものではない。上記過酸化物及び還元剤は全モノマーに対し、 0.05〜5%(重量/容量)が使用される。また、重合温度は開始剤が機能する温度であれば特に限定されないが、通常15〜50℃の範囲が好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
横幅12cm、縦10cmの長方形のガラス板と、上部に凹状の切り込みの入った同寸法のガラス板の間に、厚さ1mmのスペーサーとモノマー液が漏れないようにシリコンのシールを挟みガラスプレートを組み立てる。アクリルアミド濃度10%(%T)、BIS濃度5%(%T)、並びに表1に記載する濃度の緩衝液組成から成るモノマー溶液に対し、APS0.0025mol/LおよびTEMED0.0075mol/Lとなるように添加混合後、プレート内に注入し、25℃下で重合させ、電気泳動用ポリアクリルアミドゲルを得た。
そのポリアクリルアミドゲルを用いて市販の蛋白質分子量マーカーを電気泳動し、移動距離を測定した。
【表1】
Figure 0003942001
【0029】
蛋白質分子量マーカーは、2−メルカプトエタノール、SDSを用いて処理し、7重量%グリセリン及び0.05重量%ブロモフェノールブルー(以下、BPBと略す)を加えて試験に供した。泳動用緩衝液の組成はトリス0.025mol/L、グリシン0.192mol/L、SDS0.1重量%のレムリー処方である。電気泳動は20mA定電流で行い、BPBの泳動末端が下から5mmの所で通電を中止した。染色は、0.25重量%クマシーブリリアントブルー(以下、CBBと略す)G−250、10容量%酢酸、30容量%メタノール溶液中で振とう機を使用して45分間行い、脱色は7容量%酢酸、3容量%メタノール溶液中で振とう機を使用して90分間行った。
表2は製造直後の移動度であり、また表3は5℃で6ヶ月間保存後の移動度である。移動度とは蛋白質の移動距離をパーセントで表したものである。
Figure 0003942001
【表2】
Figure 0003942001
【表3】
Figure 0003942001
【0030】
ゲル緩衝液の酸による中和率の低いレムリーのゲル緩衝液を使用して作成したゲルは、高pHの為に長期保存により移動度が低下し、分離能が悪化する。トリスの中和率を上げ、 ゲル緩衝液中に両性電解質としてグリシンのみ添加した場合、長期保存による移動度低下は見られないが低分子領域が検出されない。また、pHを6.8とし、グリシンと共存両性電解質としてトリシン(8.3>pKb)を添加した場合、分画分子量範囲を大幅に広くしてしまう。
【0031】
これに対し、9.0<pKb<9.6であるセリンをグリシンと共存両性電解質として使用するとpKbの低いものから順に陽極側へ移動し、 ゲル内の電位勾配の変化は緩やかなものとなる。従ってトリスの中和率を上げ、 緩衝液pHを6.8または6.3にしてもレムリーのゲル緩衝液を用いて作成したゲルの測定対象と同等の分画分子量範囲を持たせることができ、また長期保存による移動度低下は見られない。
【0032】
実施例2
実施例1と同様のガラスプレートを用い、表4に記載する濃度の緩衝液組成から成るモノマー組成でポリアクリルアミドゲルを製造し、実施例1と同一条件で電気泳動を行った結果を表5に示す。
【表4】
Figure 0003942001
【表5】
Figure 0003942001
【0033】
実施例3
実施例1と同様のガラスプレートを用い、アクリルアミド濃度10%(%T)、BIS濃度5%(%T)、並びに表1に記載する試料−1の緩衝液組成から成るモノマー溶液で10%ポリアクリルアミドゲルを製造し、表6に記載する泳動用緩衝液で実施例1と同様に電気泳動を行った結果を表7に示す。
【表6】
Figure 0003942001
【表7】
Figure 0003942001
【0034】
本発明のプレキャストゲルの使用方法は、トリス、及び両性電解質を含有する泳動用緩衝液を使用して蛋白質の分離分析をする方法であり、特にレムリーによって提案されたトリス0.025mol/L、グリシン0.192mol/L、SDS0.1重量%である組成の泳動用緩衝液を使用することが望ましい(試料−5)。レムリーの方法は蛋白質の分離分析方法として広く普及しているため、使用者が経済的かつ効率的に分析を遂行することができる。グリシン以外の両性電解質、たとえばMOPSを含有した泳動用緩衝液(比較試料−5)を使用しても蛋白質の分離分析を行うことは出来るが、広く普及しているレムリーのゲル緩衝液を使用して作成したゲルの分画分子量範囲よりも広くなってしまう。
【0035】
実施例4
実施例1と同様のガラスプレートを用い、アクリルアミド濃度10%(%T)、BIS濃度5%(%T)、並びに表8に記載する濃度の緩衝液組成から成るモノマー溶液緩衝液組成で10%ポリアクリルアミドゲルを製造し、5℃下に12ヶ月間保存し、テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック、型式U−2129)でガラスプレートを上下に引っ張り、その引っ張り強度を測定した結果を表9に示す。
【表8】
Figure 0003942001
【表9】
Figure 0003942001
【0036】
ゲル緩衝液のpHを下げることで蛋白質の移動度のみならず、プレキャストゲルの形状も安定に保つことができる。ポリアクリルアミドゲルは加水分解すると膨潤し易くなり、プレキャストゲルのガラスプレートがずれやすくなる。pH7.5では加水分解は進行し易く、 ガラスプレートをずらすのに必要な力( 引っ張り強度) は5℃保存2ヶ月後には約1/3となる。それに対し、pH6.8では5℃保存6ヶ月までガラスプレートの引っ張り強度は製造直後と同程度を保っており、さらにpH6.3ではアクリルアミド自体のpHに近いため、 pH6.8に比べ加水分解速度が著しく減少する。その結果1年もの長期間ゲルの形状に変化は見られず安定である。
【0037】
【発明の効果】
本発明は,トリス,及び両性電解質,特にグリシンを含有する泳動緩衝液を使用する分離分析用の電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル,その製造方法及び蛋白質の分離分析方法に関するものであり,長期保存可能であるので,高品質のゲルを広範囲に供給することが可能である。

Claims (5)

  1. 泳動用緩衝液の組成がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び両性電解質を含有する水溶液である電気泳動法に用いるポリアクリルアミドプレキャストゲルにおいて,前記ゲルは,
    (1)前記トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度が0.07mol/L〜0.2mol/Lの範囲にあり,
    (2)前記両性電解質がグリシンと1種又は2種以上の共存両性電解質から成り,
    1.前記共存両性電解質の塩基解離定数pKbが8.3<pKb<9.6の範囲にあり,2.前記共存両性電解質の添加量が前記グリシンに対して0.1〜30mol%の範囲にあり,3.前記共存両性電解質と前記グリシンの濃度の合計が0.1〜0.3mol/Lの範囲にあり,
    (3)pHが6.0〜6.8の範囲にある緩衝液を用いて調製されていることを特徴とする電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル。
  2. 前記共存両性電解質が,分子内にアニオン性基とカチオン性基を同数有するアミノ酸であることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル。
  3. 前記共存両性電解質が,セリン,グルタミン,トリプトファン,メチオニン,又はフェニルアラニンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル。
  4. アクリルアミド,多官能架橋剤,水,並びに下記組成の緩衝液
    (1)トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度が0.07mol/L〜0.1mol/Lの範囲にあり,
    (2)両性電解質がグリシンと1種又は2種以上の共存両性電解質から成り,1.前記共存両性電解質の塩基解離定数pKbが8.3<pKb<9.6の範囲にあり,2.前記共存両性電解質の添加量が前記グリシンに対して0.1〜30mol%の範囲にあり,3.前記共存両性電解質と前記グリシンの濃度の合計が0.1〜0.3mol/Lの範囲にあることから成る混合物を,pHが6.0〜6.8の範囲にある条件で重合開始剤の存在下に重合することを特徴とする電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルの製造方法。
  5. 泳動用緩衝液としてドデシル硫酸塩が存在するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及びグリシンを含有する泳動用緩衝液を用い,請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲルを用いることを特徴とする蛋白質の分離分析方法。
JP34383599A 1999-12-02 1999-12-02 電気泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル,その製造方法及び蛋白質の分離分析方法 Expired - Fee Related JP3942001B2 (ja)

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