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JP3917032B2 - 表面処理アルミニウム缶用板材 - Google Patents

表面処理アルミニウム缶用板材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品を収納するアルミニウム缶、特に清涼飲料、アルコール飲料等飲料を収納するための2ピース缶のボディー材及びエンド材(蓋材)として好適な表面処理アルミニウム缶用板材及びその製造方法に関するものである。
特に、アルミニウム缶用ボディー材及びエンド材表面に有機樹脂フィルムをラミネートする際の板材と樹脂フィルムの接着性(密着性)、耐食性、加工性を改善する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から飲料缶をはじめとするアルミニウム缶用のボディー材やエンド材には、アルミニウム基材の表面に硫酸アルマイトやリン酸アルマイト等の多孔質の陽極酸化皮膜を下地層として形成し、その陽極酸化皮膜の表面に樹脂フィルムをラミネートした表面処理アルミニウム缶用板材が採用されている。
この表面処理アルミニウム缶用板材における陽極酸化皮膜は、基本的にはアルミニウム板の表面部分に形成される無孔質のバリア層の上に、多孔質層が成長して形成される。通常、このような多孔質陽極酸化皮膜の空孔率は、60〜70%である。なお、空孔率とは、陽極酸化皮膜の表面を見た場合に、孔のあいている面積を全面積で除算した値である。
【0003】
ところが、かかる従来の表面処理アルミニウム缶用板材は、必ずしも必要な接着性(密着性)や耐食性を満たすものではなかった。
すなわち、表面処理アルミニウム缶用板材は、缶に加工する際にラミネートした有機樹脂フィルムがアルミニウム表面から剥離しないよう強い接着性が要求されると共に、使用時においても強い密着性を保つことが要求される。
ボディー材の場合、絞りしごき、絞り加工に加えてストレッチ加工してさらにしごき加工を加えるような厳しい加工を行うので、板材と有機樹脂層の密着性が低い場合には有機樹脂層が剥離してしまう場合がある。
エンド材の場合、特に使用時に密着性が充分でないと、缶を開缶したときに、開缶タブの周辺で有機樹脂フィルムが剥がれて、フェザーリングと呼ばれる羽毛状の剥離が生じるという現象が生じてしまう。さらには、この剥離が大幅に生じると有機樹脂膜が延びて切断されなくなり、開缶が困難になるおそれもある。
また、表面処理アルミニウム缶用板材は、内容物に対する耐食性も要求される。耐食性が充分でないと、アルミニウムが飲料中に溶出し、アルミニウム臭が混入する現象が生じてしまう。
【0004】
一方、本発明者は、かねてより多孔質陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミ材の、耐食性、ガス放出性、アルミ基材に対する密着性を改善する目的で、空孔率が5%未満である無孔質の陽極酸化皮膜を得る技術について研究開発を進め、その成果を、特開平5−25694号、特開平8−283991号、特開平8−283990号、特開平9−184093号などにおいて特許出願していた。
そこで、かかる無孔質の陽極酸化皮膜を使用した表面処理アルミニウム缶エンド材についても検討したところ、フェザーリング及びアルミニウム臭混入の防止効果が得られたので、特開平11−12796号において出願をした。
さらには、表面処理アルミニウム材の耐食性、ガス放出性及び密着性は、無孔質ではなくとも、空孔率が5〜30%である微孔質陽極酸化皮膜であれば著しく改善できることを知見し、その研究成果は特願2000−379382号として出願した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平11−12796号に係る表面処理アルミニウム缶エンド材も、レトルト処理(100〜130℃に数分から数十分加温する処理)をする飲料缶に使用すると、フェザーリングやアルミニウム臭が混入することがあった。これは、強い温飲料水環境にさらされるために、フィルムの密着性が低下したり、フィルムに欠陥が生じて耐食性が低下するためであると考えられた。
ボディー材の場合もレトルト処理のような高温環境では有機樹脂層の密着性が低下し易く、有機樹脂層の剥離、浮き上がりが生じて下地のアルミニウムが飲料中に流出してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、樹脂フィルムの接着性(密着性)及び耐食性に優れ、フェザーリングやアルミニウム臭混入が生じない、2ピース缶のエンド材、及びアルミニウム溶出の少ないボディー材として好適な表面処理アルミニウム缶用板材を提供することを目的とする。
また本発明は、上記の優れた特性を有する表面処理アルミニウム缶用板材の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を検討した結果、密着性及び耐食性の低下は、フィルムから僅かに浸透してくる水分により、下地層の陽極酸化皮膜表面の水酸基(OH 基)を基点として水和反応が生じることに起因することを見出した。そして、かかる知見に基づき鋭意検討した結果、シランカップリング剤を用いれば、上記水酸基とシランカップリング剤の官能基が結合して、水酸基を基点とする水和反応を抑制できること、及びシランカップリング剤がアルミニウムと有機樹脂との結合を強めることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するため、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該金属基材の表面に形成された陽極酸化皮膜からなる下地層と、この下地層の表面に塗布されたシランカップリング剤の層と、このシランカップリング剤の層の表面に形成された有機樹脂層とを備え、前記陽極酸化皮膜の空孔率が30%以下で、かつ、シリコン(Si)、りん(P)、イオウ(S)成分のうち少なくとも一種を合計50ppm以上含有することを特徴とする表面処理アルミニウム缶用板材を提供する。
【0009】
本発明によれば、無孔質、又は微孔質の陽極酸化皮膜にシランカップリング剤を塗布することによって、シランカップリング剤の官能基であるシラノール基(−Si−OH)が、陽極酸化皮膜表面の水酸基と反応してAl−O−Si結合を形成する。そのため、水和の進行を抑制でき、極めて良好な耐食性、耐汚れ性、接着適性を示す表面処理アルミニウム材とすることができる。また、本発明の陽極酸化皮膜は、シリコン(Si)、りん(P)、イオウ(S)成分のうち少なくとも一種を合計50ppm以上含有しているものとした。
陽極酸化皮膜と有機樹脂フィルムとの接着力は、物理的接着力(主にアンカー効果)と化学的接着力(化学結合、水素結合、ファンデルワールス力)があるが、陽極酸化皮膜に上記Si、P、S成分が50ppm以上存在すると、Si−O−Si、Si−O−P、Si−O−Sの結合を形成し、シランカップリング剤との結合力を増進させることを見出したからである。
このSi、P、S成分による化学結合力の増進効果は、これらの成分が合計で50ppm以上含まれていることが好ましく、より好ましくは100ppm以上含まれているのが良い。これらの成分の中でも、Si又はPによる化学結合力の増進効果が大きく、特にSiによる効果が著しい。Siの場合は100ppm以上20,000ppm以下含有していると効果が大きい。また、P、Sについては、50ppm以上含まれていれば上記の効果を得ることができ、特にPは20,000ppm以下の範囲において効果が著しい。Sは25000ppm以下が好ましい。25000ppmを越えるとフィルム貼り合せ時に表面から揮発して密着性を低下させる場合がある。これらの成分を適量含んだ陽極酸化皮膜を得るには、これらの成分を適量含む電解質溶液を使用し、適正な電解条件を選択して陽極酸化処理を行う。さらに、本発明によれば、シランカップリング剤の有機官能基が有機樹脂と反応して強固な結合力を発揮し、金属基材と有機樹脂との間に強い接着力が付与される。そのため、接着性(密着性)及び耐食性に優れ、フェザーリングやアルミニウム臭混入が生じない、2ピース缶のエンド材、及びアルミニウム溶出の少ないボディー材として好適な表面処理アルミニウム缶用板材とすることができる。
【0010】
本発明において、陽極酸化皮膜の膜厚は、0.005μm以上とすることが望ましい。0.005μmより薄ければ耐食性向上の効果が得られないからである。
また、陽極酸化皮膜の膜厚は0.05μm以上とすることがより望ましい。これにより、安定した空孔率を有する皮膜の形成が可能となり、良好な耐食性及び密着性が得られる。
一方、陽極酸化皮膜の膜厚は0.5μm以下とすることが望ましい。陽極酸化皮膜の膜厚が厚いほど、金属基材を保護して腐食を防止する効果の向上が期待できるものの、あまり厚くしすぎると、缶の加工に際し表面にクラックが発生し、かえって密着性や耐食性が低下し、フェザーリングやアルミ臭混入が生じやすくなるからである。
なお、シランカップリング剤を塗布しない場合は、0.3μm以下としなければクラックによる耐腐食性低下が問題となるが、本発明によればシランカップリング剤がクラック内の水酸基と反応してAl−O−Si結合を形成する。そのため、水和の進行を抑制でき、陽極酸化皮膜の厚みを充分に確保して、極めて良好な耐食性、耐汚れ性、接着適性を示す表面処理アルミニウム材とすることができる。
また、陽極酸化皮膜の膜厚は0.3μm以下とすることが、さらに望ましい。これにより、プレス加工を行う場合に、クラックがさらに発生しにくくなり、接着性等の低下が起こりにくくなる。
【0011】
本発明において、前記シランカップリング剤の官能基としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、ウレイド基、又はクロロアルキル基が挙げられるが、エポキシ基、又はアミノ基である有機官能基を有することが、他の官能基を有する場合と比較して高い密着性を達成できるので望ましい。
【0012】
本発明において、前記シランカップリング剤の塗布量は、0.01mg/m以上であることが望ましい。0.01mg/m よりも少ないと、塗布による効果が得られないからである。
また、シランカップリング剤の塗布量は、0.1mg/m 以上であることが、より望ましい。これにより、均一性良く塗布できると共に、金属基材表面の圧延目などの凹凸の状態が多少変化しても、安定して良好な性能が得られる。
一方、シランカップリング剤の塗布量は、200mg/m 以下とすることが望ましい。200mg/m よりも多いと、プレス加工時に外部からの力が加わった際に、カップリング剤層の内部が破れる凝集破壊という現象が生じ、密着性が低下するからである。
【0013】
本発明において、前記有機樹脂層が、単層又は多層構造のポリエステル系樹脂からなり、全体の膜厚が3〜50μmであることが望ましい。
このように、ポリエステル系樹脂を用いることにより、加工性、耐衝撃性が向上する。また、樹脂自体に起因してアルミニウム缶内部の飲料の味を損なうこともない。
ここで、膜厚を3μm以上とすべきなのは、これよりも薄いと水分が透過しやすくなり、また、有機樹脂層の不具合に基づく欠陥が生じやすくなるからである。この膜厚は、8μm以上であることがより望ましい。これにより、缶に加工した際でもフィルムの破れはなくなり、また、水分の透過も少なくなり良好な耐食性、密着性が得られる。
一方、膜厚を50μm以下とすべきなのは、これ以上厚くすると、加工時に潤滑性が悪いために、加工不良を生じやすくなるからである。この膜厚は、20μm以下であることがより望ましい。これにより、加工不良がなくなる。
【0014】
本発明において、前記有機樹脂層がポリエステル樹脂から成る場合、シランカップリング剤の層に接する部分は、テレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分を3%以上共重合することによって、及び/又は共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートに共重合成分を含む共重合ポリエステル樹脂を混合した後の樹脂全体の共重合成分が3%以上になるように混合することによって、ポリエチレンテレフタレートよりも低融点とされたポリエステル系樹脂とすることが望ましい。
すなわち、多層構造の場合は、シランカップリング剤に接する接着層がテレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分を3%以上共重合することによって、及び/又は共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートに共重合成分を含む共重合ポリエステル樹脂を混合した後の樹脂全体の共重合成分が3%以上になるように混合することによって、ポリエチレンテレフタレートよりも低融点とされたポリエステル系樹脂であることが望ましい。また、単層構造の場合は、全体がテレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分を3%以上共重合することによって、及び/又は共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートに共重合成分を含む共重合ポリエステル樹脂を混合した後の樹脂全体の共重合成分が3%以上になるように混合することによって、ポリエチレンテレフタレートよりも低融点とされたポリエステル系樹脂であることが望ましい。
通常のポリエステル系樹脂の溶融温度は約260℃であり、シランカップリング剤に接着する際に溶融温度まで加熱すると、シランカップリング剤が熱分解してしまう場合がある。しかし、このように、テレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分を3%以上共重合することによって、及び/又は共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートに共重合成分を含む共重合ポリエステル樹脂を混合した後の樹脂全体の共重合成分が3%以上になるように混合することによって、ポリエチレンテレフタレートよりも低融点とされたポリエステル系樹脂とすると、溶融温度を240℃以下に低下させることができる。このため、シランカップリング剤を熱分解してしまうことなく、ポリエステル樹脂層を接着することができる。
テレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分は、50%以下共重合する。また、ポリエチレンテレフタレート以外の共重合ポリエステルを50%以下混合することが好ましい。いずれも50%を超えると融点が低下し過ぎて板との貼り合わせが困難となるからである。
また、本発明の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該金属基材の表面に形成された陽極酸化皮膜からなる下地層と、この下地層の表面に塗布されたシランカップリング剤の層と、このシランカップリング剤の層の表面に形成された有機樹脂層とを備え、前記陽極酸化皮膜の空孔率が30%以下で、かつ、シリコン(Si)、りん(P)、イオウ(S)成分のうち少なくとも一種を合計50ppm以上含有する表面処理アルミニウム缶用板材の製造方法であって、
前記金属基材の表面に、硫酸、リン酸、珪酸塩、リン酸塩のいずれかを含む電解液によって陽極酸化皮膜を形成し、前記電解液から前記陽極酸化皮膜へSi、P、Sの少なくとも1種を合計50ppm以上含有させるとともに、この陽極酸化皮膜の表面にシランカップリング剤を塗布し、さらにその表面に有機樹脂層を形成することを特徴とする。
前記製造方法において表面処理アルミ缶用板材として、先の陽極酸化皮膜の膜厚、シランカップリング剤、有機樹脂層の各種条件のいずれかに記載の表面処理アルミ缶用板材に適用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム缶用の板材Aを示すもので、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材1と、この金属基材1の表面に形成された陽極酸化皮膜からなる下地層2と、この下地層の表面にシランカップリング剤が塗布された塗布層3と、このシランカップリング剤の層の表面に形成された有機樹脂層4とを具備して板状に形成されている。
【0016】
前記金属基材1は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、飲料缶に用いた場合の耐ブローアップ性の点から、エンド材向けにはAl−Mg系のJIS5000系合金が、ボディー材向けにはAl−Mn系のJIS3000系合金が好適に採用できる。なお、金属基材1としては、この合金等の表面に付着した油脂分を除去し、基材表面の不均質な酸化皮膜などを除去するための前処理が施されたものも使用できる。
【0017】
前記下地層2は、前記金属基材1を陽極酸化することで形成される。この陽極酸化処理(いわゆるアルマイト処理)は、基材を構成するアルミニウム又はアルミニウム合金を電解液に浸漬して陽極処理を行う陽極酸化処理によって陽極酸化皮膜を形成するものである。
下地層2は、このような陽極酸化処理を後述する特定の方法で行うことにより、空孔率30%以下の微孔質又は無孔質の陽極酸化皮膜(アルマイト被膜)から形成されている。なお、空孔率とは、陽極酸化皮膜表面の測定領域において孔の形成されている部分の面積を全測定面積で除算した値、すなわち、空孔率={(孔のあいている面積)/(全測定面積)}×100の関係式で示されるものである。
また、下地層2の膜厚は、0.005〜0.5μmとされている。これは、0.005μmより薄ければ耐食性が得られず、一方、0.5μmよりも厚いと、多孔質化しやすくなり、無孔質膜又は微孔質膜とすることが困難だからである。なお、より望ましい膜厚の範囲は0.05〜0.3μmである。
【0018】
前記塗布層3は、シランカップリング剤を下地層2に塗布することにより形成されている。シランカップリング剤とは、分子中に2個以上の反応基を持つ有機ケイ素単量体をいう。この反応基には、無機質(ガラス、金属など)と化学結合する反応基と、有機材料(各種合成樹脂)と化学結合する反応基とが含まれる。無機質と化学結合する反応基としてはシラノール基(−Si−OH)がある。また、有機質と化学結合する反応基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、又はウレイド基などがある。
【0019】
塗布層3におけるシランカップリング剤の塗布量は、0.01〜200mg/m である。これは、0.01mg/m よりも少ないと、塗布による効果が得られず、200mg/m よりも多いと、加工時等に外部からの力が加わった際に、カップリング剤層の内部が破れる凝集破壊という現象が生じ、密着性が低下するからである。なお、より望ましい塗布量は、0.1〜200mg/mである。
【0020】
本実施形態において、有機樹脂層4は、塗布層3に直接接する接着層4aと、その表面に形成された表層4bとからなる。接着層4aは、テレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分を3%以上共重合することによって、及び/又は共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートに共重合成分を含む共重合ポリエステル樹脂を混合した後の共重合成分が樹脂全体の3%以上になるように混合することによって、ポリエチレンテレフタレートよりも低融点とされたポリエステル系樹脂で、その融点はポリエチレンテレフタレートのみの場合よりも低い200℃である。接着層4aの主構成単位は、エチレンテレフタレートの重合体である。
共重合成分を3%以上共重合するとは、樹脂中のテレフタル酸の含有mol濃度を基準にして、例えば、共重合成分であるイソフタル酸がテレフタル酸の含有mol濃度の3mol%以上の割合でイソフタル酸に置き替わった構造であることを示している。また、例えば、イソフタル酸を共重合成分とするポリエチレンイソフタレートを混合する場合には、混合する前のテレフタル酸のmol%に対して、混合後にはイソフタル酸が3mol%以上添加されたmol濃度になるように混合する。
【0021】
接着層4aにおいて共重合するテレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、セバシン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、マレイン酸、イタコン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、フマール酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4’−オキシ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、トリメリット酸などの多官能のカルボン酸およびそのエステル誘導体が挙げられ、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−2−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルモルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−、m−、およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、2,5−ナフタレンジオール、p−キシレンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどのグリコール成分を挙げることができる。
【0022】
なかでも、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸などのジカルボン酸およびそのエステル誘導体が好ましく、また、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール成分が好ましい。
【0023】
接着層4aにおいて混合するポリエチレンテレフタレート以外の共重合ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル、共重合ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどを挙げることができる。
【0024】
また、表層4bは、ポリエチレンテレフタレートの共重合体で、その融点は230℃である。表層4bとしては、この他に種々の材質を選択可能である。例えば、塗料としては熱硬化性ビニル系塗料、ビニルオルガノゾル系塗料、エポキシ尿素系塗料、エポキシフェノール系塗料、エポキシアクリル系塗料などを使用することができる。
なお、有機樹脂層4を単層とする場合には、全体に接着層4aと同じ材質を使用する。
【0025】
なお、本実施形態においては、説明の便宜上金属基材1の片面のみの積層状態を図示して説明したが、金属基材の他の面にも各層を積層しても良いことはもちろんである。特に有機樹脂層4は、金属基材1の両面側に形成されることが望ましい。これは、金属基材1の内面側は飲料と接するのでアルミニウムの溶出を防止する必要があると共に、金属基材1の外面にも有機樹脂層4を形成することにより、成形加工時の金型の損耗を防止できるからである。
【0026】
本実施形態の板材Aによれば、無孔質、又は微孔質の陽極酸化皮膜である下地層2を備えているので、孔から腐食性物質が侵入しにくく、耐食性が向上する。また、シランカップリング剤を塗布して形成される塗布層3を備えることによって、下地層2の孔やクラック内の水酸基とシランカップリング剤の官能基が結合して、水和反応に起因する腐食を防止することができる。
さらに、シランカップリング剤の有機官能基が有機樹脂と反応することにより、塗布層3が強固な結合力を発揮し、有機樹脂層4の密着性をより強固なものとすることができる。また、接着層4aとして、低融点の樹脂を使用しているので、融着時にシランカップリング剤を分解してしまうこともない。
このように、板材Aは接着性(密着性)及び耐食性に優れ、フェザーリングやアルミニウム臭混入が生じない。そのため、2ピース缶のエンド材として好適に使用できる。また、ボディー材としても好適に使用できる。
【0027】
次に、本実施形態の表面処理アルミニウム缶用の板材Aの製造方法について説明する。
本実施形態の板材Aは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面を電解処理することにより陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜の表面にシランカップリング剤を塗布し、さらにその表面に有機樹脂層を形成することにより、製造することができる。
【0028】
上記陽極酸化皮膜として空孔率30%以下の無孔質又は微孔質の酸化皮膜を形成するには、陽極酸化皮膜が多孔質化する前の段階で電解を停止し、多孔質皮膜が成長する前の段階の皮膜を得ることにより行う方法が好ましい。
【0029】
ここで用いる電解液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、珪酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、フタル酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、及び硼酸塩の内から選ばれた塩または混合物を用いることができる。これらの溶液を用いることにより、安定して空孔率を調整することができる。
濃度は塩の種類や電解条件によっても異なるが、おおむね2〜150g/l程度である。これらの塩を電解液に用いて電解処理を行うと、陽極酸化皮膜中にシリコン、リン、ホウ素などを導入することができる。これにより、陽極酸化皮膜と有機樹脂層との化学的接着力を増進させることができる。
なお、ホウ酸塩は液抵抗が比較的高く、高速処理した場合に皮膜の均一性が低下する場合が有る。
【0030】
これらの電解液を用いてアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材を陽極酸化すると、電解の初期段階において無孔質のバリア層と称される陽極酸化皮膜が成長し、この無孔質の陽極酸化皮膜の成長が所定の段階まで進むと、この無孔質の皮膜上に多孔質層が急激に成長して多孔質の陽極酸化皮膜が生成される。ここで多孔質の陽極酸化皮膜とは、無孔質の薄いバリア層の上に多孔質層が成長したものを意味する。
【0031】
次に、この種の陽極酸化皮膜の成長モデルを図2に示すグラフを参照して説明する。
図2に示すグラフの横軸は下地層である陽極酸化皮膜の厚さ、縦軸はその空孔率を示す。この図に示すように、通常多孔質陽極酸化皮膜を製造すると、150〜1000Å程度の膜厚の無孔質膜が生成した後、膜厚がほとんど増加しないまま急激な空孔率の上昇が起こり、空孔率が30%を越えるあたりから膜厚増加と空孔率増加の関係が比例関係に移るような成長曲線を示す。
【0032】
図2に示す成長曲線は、陽極酸化皮膜のモデル的な一例であるが、電解液の濃度や種類、印加電圧、印加電流密度を多少異なる条件としたとしても、ある膜厚の無孔質層が生成した後、空孔率が急激に上昇し、その後空孔率30%を越えるあたりから膜厚増加と空孔率増加の関係が比例関係に移るようになって多孔質陽極酸化皮膜が生成する傾向は同様となる。
【0033】
図2に示す陽極酸化皮膜の成長モデルからみると、下地層として用いる空孔率30%以下の無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜を得るためには、陽極酸化皮膜の成長過程で空孔率が低い状態において電解処理を停止すれば良いこととなる。尚、図2に示す成長モデルからみると、電解の初期段階では空孔率5%以下の無孔質層陽極酸化皮膜も存在するので、陽極酸化処理の最初期段階において電解を停止することで無孔質陽極酸化皮膜を得ることもできる。
【0034】
下地層として無孔質又は微孔質陽極酸化皮膜を得るには、膜厚0.005〜0.5μm以下の範囲、空孔率30%以下となるような電解条件で電解処理を停止すれば良い。これらの条件において陽極酸化皮膜のより好ましい範囲としては、膜厚0.05μm〜0.3μm、空孔率10%である。
【0035】
ここで用いる電解液として、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸の1種又は2種以上を選択する場合、一般に、陽極酸化皮膜の膜厚が電解電圧(V)×(14〜16)の値を越えると、多孔質化を開始することがわかっている。よって、この電圧以下で膜厚を制御するならば、無孔質の陽極酸化皮膜あるいは微孔質の陽極酸化皮膜を形成することができる。この関係から、微孔質陽極酸化皮膜を製造する場合に膜厚(Å)は、電解電圧(V)×25よりも小さく設定することが好ましく、電解電圧(V)×18よりも小さく設定することがより好ましい。
【0036】
さらに、前記陽極酸化皮膜上にシランカップリング剤の塗布層を形成する。この塗布層は、シランカップリング剤をアルコールなどの揮発性溶媒によって希釈して塗布するのが好ましい。塗布の方法に特に限定はなく、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディッピング法などの従来から知られている方法を採用することができる。
塗布した後には、90〜250℃の熱処理を行う。熱処理の時間は、熱処理温度等に応じて、適宜調整することができる。すなわち、熱処理温度が高いほど処理時間は短く、熱処理温度が低いほど処理時間は長くすることが望ましい。例えば、240℃では15秒、180℃では30秒、90℃では300秒などとすることができる。
この熱処理により、無機材料である金属基材とシランカップリング剤との結合を強くすることができる。また、シランカップリング同士の結合も強くすることができる。そのため、耐食性、密着性を向上させることができる。
【0037】
さらに、前記シランカップリング剤の塗布層の表面に有機樹脂層4を形成する。有機樹脂層4のラミネートは、特にその条件が限定されることはないが、適当な有機樹脂膜を用意し、これをベーキング処理したアルミニウム材の陽極酸化皮膜の表面に積層し、この積層物を、有機樹脂膜の融点以上の温度に上げた加熱ローラ等に通過させて有機樹脂膜を熱融着させる。ローラによってかけられる線圧は有機樹脂膜の材質や厚み等により適当に決定される。また、加熱ローラの他に、ヒートプレス等によってもラミネートが可能である。
【0038】
【実施例】
表1に本発明の試験例及び比較例について種々の条件で下地層となる陽極酸化処理をした場合の、電解条件と得られた陽極酸化皮膜の特性を示した。なお、本発明は表1に示す試験例に限定されるものではない。
【0039】
【表1】
Figure 0003917032
【0040】
表1に示す各試験例及び比較例の製造方法は以下のとおりである。まず、アルミニウム合金素材としてエンド材としては0.1mmまで圧延したJIS5052板材を準備した。ボディー材としては厚さ0.3mmまで圧延したJIS3004板材を準備した。この板材を界面活性剤を2%含む50℃の脱脂液に60秒間浸漬してボディー材のみ30秒間水洗した後、10%NaOH水溶液で50℃で30秒間エッチングした後、30秒間水洗した。引き続き、10%HNO3溶液で30秒間洗浄した後、30秒間水洗した。
【0041】
次いで、上記アルミニウム合金を陽極にして、電解処理を行い陽極酸化皮膜の下地層を形成した。各々の電解条件と形成された下地層の空孔率及び膜厚、並びにSi、P、B、S若しくはC成分の種類とその含有量を表1に合わせて示した。
尚、下地層の空孔率は、陽極酸化皮膜表面を任意に10ヶ所10万倍の電子顕微鏡で観察し、表面に存在する孔の総面積を板材の全面積で除して算出した。この際、50〜2000Å程度の大きさで深さが50Åを越えるものを目安として孔とした。また、金属間化合物の周辺は皮膜形成が不連続なため、観察から除いた。
【0042】
電解処理を終了した後、板材を15秒間水洗し、120℃の温度で乾燥した。そして、この板材にシランカップリング剤を塗布し、さらに、熱処理をして塗布層を形成した。シランカップリング剤が有する官能基、塗布量、熱処理の温度、時間は、各々表2に示すとおりである。
次に、有機樹脂層を合わせて240℃の加熱ローラーに通過させて貼り合わせを行った。形成された有機樹脂層の組成、膜厚は、表2に示すとおりである。
【0043】
【表2】
Figure 0003917032
【0044】
このようにして得られた各試験例、比較例の表面処理アルミニウム缶用エンド材について、フェザーリング性、アルミ溶出性、加工性を評価した。これらの結果を表3にまとめて示した。
【0045】
【表3】
Figure 0003917032
【0046】
フェザーリング性の評価は、エンド材を蓋に成形した後、塩素イオンを50ppm含むイオン交換水を充填した缶にパッキングし、120℃で30分間レトルト処理し、その後、プルトップ缶を開けてフェザーリング面積(開口部のフィルム残留面積)を測定した。
そして、この面積が0.5mm 未満の場合を○、0.5mm 以上2.0mm 以下を△、2.0mm を超える場合を×とした。
【0047】
また、アルミ溶出性の評価は、エンド材を蓋に成形した後、塩素イオンを50ppm含むイオン交換水を充填した缶にパッキングし、120℃で30分間レトルト処理し、その後、50℃において3ヶ月間保管した後、充填液を取り出してアルミニウムの含有量を発光分光分析法(検出限界:0.01ppm)により測定した。
そして、この測定法によりアルミニウムが検出されなかった場合を○、僅かでも検出された場合×とした。
【0048】
また、加工性の評価は、エンド材を蓋に成形した後、1%硫酸銅に3%塩酸を添加した水溶液に24時間浸漬し、フィルム面に銅の検出が見られた場合を×、見られなかった場合を○とした。
なお、銅の析出は、フィルム面に穴や破けが生じていることを示すものである。
【0049】
表3に結果を示すように、下記のことが確認された。まず、試験例5等に示すように、下地層の空孔率28%以下では、いずれの評価項目も良好であったが、比較例1,5に示すように、空孔率52%,38%では良好な結果が得られなかった。これにより、下地層の空孔率は、30%以下とすべきことが確認された。
【0050】
次に、試験例1、5等に示すように、下地層の膜厚が0.005〜0.5μmの範囲では、いずれの評価項目も良好であったが、試験例10,11に示すように、この範囲をわずかでもはずれると、フェザーリング性がやや劣る結果となった。これにより、下地層の膜厚は、0.005〜0.5μmが好ましいことが確認された。
【0051】
次に、試験例に示すように、下地層にSi、P、S若しくはC成分が50ppm以上含まれると、いずれの評価項目もほぼ良好であったが、比較例2に示すように40ppm、比較例3に示すように含有無し、比較例4に示すように他の成分を含有したものでは、いずれの項目でも良好な結果が得られなかった。これにより、下地層にSi、P、S若しくはC成分を50ppm以上含むことが望ましいことが確認された。下地層にBを含んだ試験例9はフェザーリング性及び加工密着性(1)及び加工密着性(2)がやや劣る結果となった。
【0052】
次に、試験例に示すように、シランカップリング剤が、エポキシ基又はアミノ基である有機官能基を有する場合では、いずれの評価項目も良好であったが、試験例12に示すように、メタクリル基の場合には、フェザーリング性がやや劣る結果となった。これにより、シランカップリング剤の官能基として好適なのは、エポキシ基又はアミノ基であることが確認された。
【0053】
次に、試験例6、7等に示すように、シランカップリング剤の塗布量が、0.01〜180mg/m の場合では、いずれの評価項目もほぼ良好であったが、試験例14に示すように、塗布量が220mg/m の場合では、フェザーリング性にやや問題が見られた。また、試験例13に示すように、塗布量が0.004mg/m の場合にも、フェザーリング性にやや問題が見られた。これにより、シランカップリング剤の塗布量は、0.01〜200mg/mが好ましいことが確認された。
【0054】
次に、試験例に示すように、有機樹脂層の膜厚は、3〜50μmの場合では、いずれの評価項目も良好であったが、試験例15に示すように、50μmを越えるとフェザーリング性についてやや劣る結果が得られた。また、試験例16に示すように、3μmより小さいと、フェザーリング性についてやや劣る結果が得られた。これにより、有機樹脂層の膜厚は、3〜50μmが好ましいことが確認された。
【0055】
次に、実施例3等に示すように、塗布層に接する有機樹脂層(接着層)に、イソフタル酸が3%以上含まれると、融点が240℃以下となり、いずれの評価項目も良好であったが、実施例17に示すように、当該有機樹脂層(接着層)に含まれるイソフタル酸が3%に満たないと融点が250℃となり、フェザーリング性がやや劣る結果が得られた。
また、ポリエステル系樹脂に代えて、ポリオレフィン系樹脂を用いると、実施例18に示すように、フェザーリング性が若干問題であった。
これらにより、有機樹脂層の材質としてはポリエステル系樹脂が好適であり、塗布層に接する部分には、3%以上のイソフタル酸が含まれることが好ましいことが確認された。
【0056】
一方、ボディー材について、加工密着性(1)、加工密着性(2)、アルミ溶出性を評価した。加工密着性(1)の評価は、ラミネート材をブランキング、カップ成形、DI加工(深絞り→しごき)、ボトム成形、ネック加工、フランジ加工をして350ccの缶ボディーを各実施例、比較例で10000缶ずつ成形した。そして缶の壁部と底部の有機樹脂層の剥離を観察した。剥離の無い場合を○、5個以下に僅かでも剥離がみられる場合を△、5個を越えるものに剥離がみられる場合を×とした。加工密着性(2)の評価は、缶ボディーに、塩素イオンを50ppm含むイオン交換水を充填して蓋を付けてパッキングし、120℃で30分間レトルト処理した後、蓋を開けて、缶の胴中央まで切れ込みを入れた後、胴周方向に引き裂いた。引き裂き部の観察を行い、剥離のみられない場合を○、剥離が引き裂き部から3mm以内を△、3mmを越える剥離の見られた場合を×とした。アルミ溶出性の評価は、前述のエンド材の場合と同様に行った。表3に結果を示すように、本発明に係る試験例は比較例より特性が優れることがわかる。
【0057】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の表面処理アルミニウム缶用板材は、樹脂フィルムの接着性(密着性)及び耐食性に優れ、フェザーリングやアルミニウム臭混入が生じず、また加工性も良い。このため、2ピース缶のエンド材及びボディー材として好適に使用できる。また本発明に係る製造方法によれば、上記の優れた特性を有する表面処理アルミニウム缶用板材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る表面処理アルミニウム缶用板材の1実施形態の構造を示す断面図である。
【図2】 陽極酸化皮膜を形成する場合の膜厚と空孔率の関係を示すモデル図である。
【符号の説明】
A・・・板材、1・・・金属基材、2・・・下地層(陽極酸化皮膜)、3・・・塗布層(シランカップリング剤)、4・・・有機樹脂層、4a・・・接着層、4b・・・表層

Claims (9)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該金属基材の表面に形成された陽極酸化皮膜からなる下地層と、この下地層の表面に塗布されたシランカップリング剤の層と、このシランカップリング剤の層の表面に形成された有機樹脂層とを備え、前記陽極酸化皮膜の空孔率が30%以下で、かつ、シリコン(Si)、りん(P)、イオウ(S)成分のうち少なくとも一種を合計50ppm以上含有することを特徴とする表面処理アルミニウム缶用板材。
  2. 前記陽極酸化皮膜の膜厚が0.005〜0.5μmであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理アルミニウム缶用板材。
  3. 前記シランカップリング剤が、エポキシ基、又はアミノ基である有機官能基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理アルミニウム缶用板材。
  4. 前記シランカップリング剤の塗布量が、0.01〜200mg/m であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の表面処理アルミニウム缶用板材。
  5. 前記有機樹脂層が、単層又は多層構造のポリエステル系樹脂からなり、全体の膜厚が3〜50μmであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の表面処理アルミニウム缶用板材。
  6. 前記有機樹脂層がシランカップリング剤の層に接する接着層を含む多層構造であり、前記接着層がテレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分を3%以上共重合することによって、及び/又は共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートに共重合成分を含む共重合ポリエステル樹脂を混合した後の樹脂全体の共重合成分が3%以上になるように混合することによって、ポリエチレンテレフタレートよりも低融点とされたポリエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項5に記載の表面処理アルミニウム缶用板材。
  7. 前記有機樹脂層が、単層構造であり、テレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分を3%以上共重合することによって、及び/又は共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートに共重合成分を含む共重合ポリエステル樹脂を混合した後の樹脂全体の共重合成分が3%以上になるように混合することによって、ポリエチレンテレフタレートよりも低融点とされたポリエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項5に記載の表面処理アルミニウム缶用板材。
  8. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該金属基材の表面に形成された陽極酸化皮膜からなる下地層と、この下地層の表面に塗布されたシランカップリング剤の層と、このシランカップリング剤の層の表面に形成された有機樹脂層とを備え、前記陽極酸化皮膜の空孔率が30%以下で、かつ、シリコン(Si)、りん(P)、イオウ(S)成分のうち少なくとも一種を合計50ppm以上含有する表面処理アルミニウム缶用板材の製造方法であって、
    前記金属基材の表面に、硫酸、リン酸、珪酸塩、リン酸塩のいずれかを含む電解液によって陽極酸化皮膜を形成し、前記電解液から前記陽極酸化皮膜へSi、P、Sの少なくとも1種を合計50ppm以上含有させるとともに、この陽極酸化皮膜の表面にシランカップリング剤を塗布し、さらにその表面に有機樹脂層を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム缶用板材の製造方法。
  9. 前記表面処理アルミ缶用板材として、請求項2〜7のいずれかに記載の表面処理アルミ缶用板材に適用することを特徴とする請求項8に記載の表面処理アルミニウム缶用板材の製造方法。
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