JP3911060B2 - 酸化触媒系およびそれを用いた酸化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基質を酸素酸化して、対応する酸化物を効率よく生成させるのに有用な酸化触媒系およびこの触媒系を用いた酸化方法(若しくはケトン類,アルコール類,アルデヒド類,カルボン酸類の製造方法)に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化反応は、有機化学工業における最も基本的な反応の1つであり、種々の酸化方法、特に硝酸を用いて基質を酸化する方法が知られている。例えば、ナイロン66の原料であるアジピン酸は、シクロヘキサノール単独又はシクロヘキサノールとシクロヘキサンとの混合物(KAオイル)を硝酸で酸化する方法により製造されている。また、ポリエステルやポリアミドの原料となる長鎖ジカルボン酸(例えば、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸)は、対応する大環状シクロアルカン(例えば、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン)を硝酸で酸化する方法により製造されている。
しかし、これらの方法では、いずれも硝酸酸化により生成するN2 OおよびNOx を処理するために、高価な排ガス処理施設が必要となる。
【0003】
これらの点から、ブタジエンの酸化的カルボニル化方法やCO挿入法などによりアジピン酸の製造方法が検討されているものの、未だ技術的に工業化には至っていない。
【0004】
資源及び環境上の観点から好ましい酸化方法は、分子状酸素又は空気を酸化剤として直接利用する触媒的な酸化法である。そこで、コバルト触媒やホウ酸触媒の存在下、基質に分子状酸素を触媒的に直接接触させる酸化方法が検討されている。例えば、コバルト触媒やホウ酸触媒の存在下、シクロへキサンや大環状シクロアルカンなどのシクロアルカン、シクロアルケンに分子状酸素を触媒的に直接接触させる酸化方法が検討されている。しかし、コバルト触媒を触媒系に用いると、高価なコバルト成分を回収したり、コバルト触媒が析出する。また、触媒的な酸化法では、酸素を活性化するために高温や高圧を必要とするだけでなく、転化率及び選択率が未だ小さい。さらに、アジピン酸の製造においては、選択性を高いレベルに維持するため転化率を10%程度に抑制しながら、アジピン酸を生成させる必要がある。そのため、触媒的な酸化法では、温和な条件下、工業的に高い転化率および選択率で基質(シクロヘキサンなどのシクロアルカン,シクロアルケン)から対応する酸化物(アジピン酸、シクロヘキセノール、シクロヘキセノンなど)を生成させることが困難である。
【0005】
なお、大環状シクロアルカンの酸化に関して、特公昭43−3100号公報には、ホウ酸触媒の存在下、シクロドデカンを空気酸化し、生成物のうちシクロドデカノールは脱水素反応に供してシクロドデカノンを生成させ、シクロドデカノンをニトロシル硫酸と反応させ、ベックマン転位によりナイロン12の原料となるラクタムを得る方法が開示されている。しかし、シクロヘキサンに比べて大環状シクロアルカン類は安定で反応性が小さい。そのため、前記の空気酸化法では、シクロドデカンの転化率が小さく、シクロドデカノールを含めてもシクロドデカノンの収率が小さい。特に触媒的な酸化法では、温和な条件下、大環状シクロアルカンから、対応する酸化物(例えば、カルボニル化合物やカルボン酸)を高い収率で効率よく製造することが困難である。
【0006】
なお、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル発生剤を用い、酸素存在下で基質を酸化することも検討されている。しかし、この方法でも、シクロアルケンから対応する酸化化合物を高い選択率で収率よく得ることが困難である。
【0007】
一方、隣接する環の接合位や橋頭位に炭素−水素結合(メチリジン基)を有する多環式炭化水素は、石油の精製段階で豊富に得られる多環式芳香族化合物(例えば、ナフタレン、アセナフテン、アントラセン、フェナントレン、フェナレンやこれらのアルキル置換体など)を高温高圧下で水素添加並びに熱転移させることにより製造できる(特公昭52−2909号公報、特公昭52−12706号公報、特公昭53−35942号公報、特公昭53−35944号公報、特開昭60−246333号公報)。このような方法で生成する多環式炭化水素類は熱的に安定であり、耐熱性が要求される高級潤滑油などに利用されている。
【0008】
多環式炭化水素類は、アダマンタンなどのように三次元的に対称構造を有する化合物の他、各環が相互に安定化する骨格を有しているため、特異な機能を有する。そのため、多環式炭化水素類にヒドロキシル基を導入し、必要によりアクリル酸誘導体やカーボネートなどに誘導することにより、機能性を高めた種々の共重合体を得ることができる。例えば、橋頭位にメチン炭素原子を有する橋架け環式炭化水素において、官能基を導入したアダマンタンから、ポリエステルを製造する方法(特公昭42−26792号公報,特公昭43−937号公報,特公昭46−34628号公報,特開昭50−21090号公報)、ポリカーボネートを得る方法(米国特許3516969号明細書,米国特許3594427号明細書)、ポリアミドやポリイミドを得る方法(特公昭45−2024号公報、米国特許3832332号明細書,米国特許3814735号明細書)、ポリウレタンを得る方法(特公昭43−700号公報,特公昭43−6456号公報,特公昭44−6267号公報,特公昭44−12891号公報)、ポリスルフォンおよびポリスルフォネートを得る方法(米国特許3738960号明細書,米国特許3738965号明細書,米国特許3753950号明細書)、ビニルポリマーを得る方法(特公昭45−36950号公報,特公昭46−28419号公報)が提案されている。また、多環式炭化水素類をモノマーとするホモポリマーも提案されている(米国特許3649702号明細書)。
このような多環式炭化水素類を含む重合体は、一般に、機能性が高く、例えば、耐熱性、耐湿性、導光損失性、屈折率、複屈折率などの光学的特性、熱膨張率などの特性において、従来のポリマーでは達成できない高いレベルを有している。従って、光ファイバー、光学用素子、光学レンズ、ホログラム、光ディスク、コンタクトレンズなどの光学材料、有機ガラス用透明樹脂コーティング剤、導電性ポリマー、写真感光性材料、蛍光性材料などとしての利用が検討されている。
【0009】
一方、架橋環式炭化水素類のアルコール体から誘導されるアミノ誘導体は、パーキンソン氏病の治療薬「シンメトレル」などに代表されるように、高い薬理活性を示す各種の医薬・農薬を誘導する上で有用であり、例えば、アダマンタン、ヘミアダマンタン、ノルボルネン、テトラリンやこれらの誘導体などが利用されている。
【0010】
このように、橋頭位に官能基を有する多環式炭化水素類は幅広い用途を有する化合物であり、このような化合物の殆どは、対応するアルコール体から誘導されている。特に高機能性材料を得るためには、2以上の複数の橋頭位にヒドロキシル基が置換したポリオール体を用いるのが有利である。しかし、化学的に安定な多環式炭化水素類の橋頭位にヒドロキシル基を有効かつ効率よく導入することはかなり困難である。例えば、橋架け環式炭化水素類(例えば、アダマンタン又はその誘導体)を過剰量の臭素(例えば、10倍モル以上)を用いて臭素化し、生成した臭素化物を、化学量論量を越える過剰の硝酸銀や硫酸銀で加水分解することにより、ヒドロキシル基を導入している(Chem. Ber., 92 1629(1959), 93 226,1161(1960): J. Org. Che., 26 2207(1961))。
【0011】
しかし、この方法では、多量の臭素を必要とし、100℃程度で長時間反応させているだけでなく、高価な銀試薬も多量に消費する。特に2以上の橋頭位を逐次臭素化することが困難である。そのため、アダマンタンを用いる場合には、三臭化ホウ素,三臭化アルミニウムなどの触媒が必要となる。しかも、加水分解工程での損失が大きく、臭素化法を利用すると、生成したアルコール体を基準にして、アダマンタンモノオールが81%、アダマンタンジオールが57%程度しか回収されない。さらに、アダマンタントリオールは、アダマンタンから直接生成させることができず、高度に逐次臭素化した化合物を分離して加水分解する必要がある。そのため、アダマンタントリオールの収率は10〜30%程度と極めて低い(Tetrahedron Letters, 19 1841(1967); Just. Liebigs Ann. Chem., 717 60(1968))。
【0012】
アダマンタンジオールを得る方法として、クロム酸を用いる酸化法も知られている。例えば、特公昭42−16621号公報には、アダマンタンに対して5倍モル以上のクロム酸を用い、濃酢酸溶液中、90℃で反応させると、収率96%、選択率96%でアダマンタンジオールが得られることが開示されている。この方法は、多環式炭化水素類の橋頭位を酸化し、アルコール誘導体を生成させるのに有用である。しかし、高価なクロム酸を過剰に用いる必要があるとともに、毒性が高いだけでなく、後処理や回収設備を必要とし、経済性にも欠ける。また、クロム酸とともに過剰量の硫酸も必要とする。さらには、反応温度や溶媒としての酢酸濃度の管理を必要とし、反応操作性が高いとは言いがたい。しかも、アダマンタンジオールを生成させることはできるものの、反応条件を厳しくしてもトリオール以上のポリオール体への酸化が進行しない。
【0013】
分子状酸素又は空気を酸化剤として直接利用する触媒的な酸化法に関し、例えば、特公昭42−26792号公報には、触媒量のナフテン酸コバルトの存在下、無溶媒で、酸素圧7kg/cm2、170℃でアダマンタンを加熱し、アダマンタンの転化率が70%となった時点で反応を停止することが記載されている。このような方法で生成する反応混合物には、橋頭位が酸化されたアダマンタンモノオールが収率41%の割合で含まれているものの、ジオール体の含有量は痕跡量に過ぎない。しかも、転化率99%になるまで加熱を継続すると、アダマンタンジオールが収率25%の割合で生成するものの、異性化して酸化されたケトン誘導体が多量に副生するため、反応生成物から目的化合物の単離精製が極めて困難となる。
【0014】
このように、高機能化に有用なアダマンタンなどの多環式炭化水素類に関して、ケトン体の生成を抑制しつつ、ジオール体、特にトリオール、テトラオールなどのポリオール体を有効かつ効率よくすることは困難である。特に、温和な条件下、高い転化率および選択率でポリオール体を得ることは困難である。
【0015】
特開平5−310610号公報には、空気酸化触媒として前記コバルト以外の金属種について検討した結果が示されている。しかし、この文献に記載されている触媒は未だ触媒能が小さく、多環式炭化水素から対応する酸化化合物を高い選択率で収率よく得ることが困難である。
【0016】
また、隣接する環が互いに接合する部位の第3級炭素原子にヒドロキシル基が置換した化合物は、生理活性物質として有用であり、抗ウィルス剤、抗菌剤、食物ホルモンなどとしての利用価値が高い。また、環の接合部位の炭素原子に官能基が結合した化合物は、各種の香料、香気性化合物の原料として広く利用されている。そのため、環の接合部位にヒドロキシル基を有する第3級アルコール体は重要な化合物である。しかし、隣接する環の接合部位にメチリジン基を有する化合物を酸化すると、隣接する環の接合部位が酸化開裂し、対応するジケトン体が主成分として生成する。従って、ジケトン体の生成を抑制しつつ、環の接合部位にヒドロキシル基を導入することが困難であり、第3級アルコール体を得るためには基質特異性を利用した特殊な方法が採用されている。
例えば、特公昭62−5894号公報には、テトラヒドロインダンをエポキシ化したエポキシテトラヒドロインダンをアルミニウムアルコキシド触媒を用いて開環させ、第3級ヒドロキシル基を有するヘキサヒドロインダノールを得る方法が開示されている。このようなヘキサヒドロインダノールとその誘導体は、葉様、グリーン様、ショウノウ様、木質様、パチョリー様、ムスク様、根様、ベルベチ様、アメリカニンジン様、松根様、土様などの香気を呈する。そのため、コロン、食品、たばこなどの種々の材料の香料として利用されている。しかし、前記ヘキサヒドロインダノールを得るためには、インデンを部分水素添加してテトラヒドロインダンを生成させる工程と、生成したテトラヒドロインダンをエポキシ化する工程とを必要とするだけでなく、各反応工程での選択率が小さいため、エポキシ化合物の開環工程も含めると、目的化合物の収率は全体として非常に小さい。そのため、比較的安価なインデンを原料とするにも拘らず、経済的に有利に目的化合物を得ることが困難である。
【0017】
特公昭55−42972号公報には、1−ハロゲノトリシクロ[4.3.1.12,5 ]ウンデカンを加水分解することにより、1−ヒドロキシトリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンを得ることが開示されている。1−ヒドロキシトリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンは、薬理活性を示す化合物、例えば、強い抗ウィルス活性を示すアミノ体などの原料となる。特開昭51−13760号公報では、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンを臭素化することにより、1−ハロゲノトリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンを製造している。しかし、臭素化物の収率は65%程度であり、アミノ化工程を含めると、アミノ体の収率は60%未満である。さらに、対応する塩化物に至っては、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンから直接誘導できないため、1−ヒドロキシトリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンと塩化アシルとを反応させることにより生成させている。このように、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンは、多くの酸化可能な部位、すなわち、互いに隣接する環が接合する2か所の接合部位、2か所の橋頭位、7か所のメチレン部位を有している。そのため、クロム酸酸化や空気酸化などの従来の酸化方法では、ヒドロキシル基を高い選択性で直接導入できない。
【0018】
特公昭57−114538号公報には、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンを有機過酸化物で処理することにより、2−エンドヒドロキシエキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンを得ることが開示されている。このアルコール体は、ウッディ・カンファー様の強芳香を呈する香料物質であり、抗ウィルス作用、抗菌作用、植物ホルモン作用を有する生理活性物質である。このような特性は、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカンを有機過酸化物で処理することにより生成する2−ヒドロキシエンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカンにも認められる(特公昭57−114539号公報)。しかし、前記過酸化物による酸化では、目的化合物の収率が20〜50%程度と低い。なお、前記エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカンはジシクロペンタジエン誘導体として容易に得られる(特公昭51−36748号公報,Synth. Comm., 4, 225(1974))。
このように、環の開裂およびジケトン体の副生を抑制しつつ、多環式炭化水素類において互いに隣接する環が接合する接合部位の第3級炭素原子にヒドロキシル基を簡便かつ有効に導入することも困難である。
【0019】
さらに、メチル基が置換した芳香族化合物(例えば、トルエン)を硝酸や重クロム酸で酸化する方法により、カルボキシル基を有する芳香族化合物(例えば、安息香酸)が製造されている。これらの方法は比較的高い収率で安息香酸などのカルボキシル基を有する芳香族化合物を得る上で有用である。しかし、硝酸酸化法では、前記のように、生成するN2 OおよびNOx を処理するために、高価な排ガス処理施設が必要となる。また、重クロム酸を用い方法でも、クロム成分の処理が必要となる。
【0020】
空気酸化法を利用して安息香酸を製造する方法として、例えば、ナフテン酸コバルトを用いてトルエンを液相で酸化する方法、コバルト・マンガン酢酸塩と臭素化物とで構成された触媒系の存在下、トルエンを液相で酸化する方法が知られている。しかし、ナフテン酸コバルトを用いる方法は、転化率および選択率が小さく、安息香酸を効率よく得ることが困難である。一方、コバルト・マンガン酢酸塩を用いる方法は、比較的高い収率で安息香酸を製造できる。しかし、この方法では比較的高い温度(例えば、150〜250℃程度)で反応させる必要がある。そのため、温和な条件下、酸素酸化により、トルエンなどのメチル基が置換した芳香族炭化水素から対応するカルボン酸を高い収率で効率よく製造することが困難である。
【0021】
また、他の芳香族化合物、例えば、p−キシレンの空気酸化を酢酸コバルトと共酸化剤との存在下で行なうと、比較的低温(90〜160℃程度)でテレフタル酸を生成させることができる。しかし、この方法では、多量の触媒を循環させる必要があるだけでなく、テレフタル酸と当モルの酢酸が副生する。
【0022】
さらに、ポリアミドなどの合成樹脂、無水マレイン酸、可塑剤などの合成原料としてブテンジオールが利用されている。また、ブテンジオールから誘導されるブタンジオールは、例えば、テトラヒドロフラン、ブチロラクトン、ポリエステルやポリウレタンの合成原料として有用である。前記ブテンジオールやブタンジオールは、レッペ反応を利用してブチンジオールを生成させ、生成したブチンジオールを還元触媒を用いて水素添加することにより得ることができる。
一方、石油精製工程においてブタジエンなどの共役ジエンは多量に生成する。そのため、ブタジエンなどの共役ジエンから対応するブテンジオールなどのアルケンジオールを直接生成できるならば工業的に有用である。共役ジエンからジオールを製造する方法として、硝酸を用いて共役ジエンを酸化し、ジオール生成させることも考えられる。しかし、前記のように、硝酸酸化により生成するN2OおよびNOxを処理するために、高価な排ガス処理施設が必要となる。そのため、資源及び環境上の観点から、分子状酸素又は空気を酸化剤として直接利用する触媒的な酸化法によりアルケンジオールを効率よく製造可能ならばさらに有用である。また、酸素又は空気を酸化剤として利用する酸化方法が、共役ジエン類以外の共役化合物、例えば、アクリル酸又はその誘導体などのα,β−不飽和部位の酸化においても有効であり、効率よく対応する酸化物を製造することできれば、この酸素による酸化方法は極めて有用となる。
しかし、酸素酸化、特に温和な条件下での酸素酸化により、共役ジエン類、アクリル酸又はその誘導体などの共役化合物から、対応するジオール類又はその誘導体(例えば、アルケンジオール、アセタールなど)を高い選択率および収率で生成させることは困難である。
【0023】
日本化学会第67春季年会 1994年「講演予稿集II」第762頁には、バナドモリブドリン酸塩とN−ヒドロキシフタルイミドとを用いて、ベンジルアルコール,ベンズヒドロールなどのアルコール類を空気酸化すると、アセトフェノン,ベンゾフェノンなどのケトンが高い収率で生成すること、N−ヒドロキシフタルイミドを用いてテトラリン、イソクロマン、アダマンタンなどを酸素酸化すると、対応するモノアルコールやモノケトンが生成することが報告されている。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、排ガス処理を特に必要とせず、酸素酸化により、基質を効率よく酸化できる酸化触媒と、この触媒を用いた酸化方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、分子状酸素酸化により、高い転化率および選択率で基質(シクロアルカン類,シクロアルケン類、多環式炭化水素類、アルキル基置換芳香族性化合物、共役化合物など)から対応する酸化物(ケトン類,アルコール類,アルデヒド類,カルボン酸類など)を生成できる酸化触媒と、この触媒を用いた酸化方法、並びに前記酸化物の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、温和な条件下、酸素との接触により、基質(シクロアルカン類、シクロアルケン類、アルキル基置換芳香族性化合物)から、対応するカルボン酸類(アジピン酸などの長鎖ジカルボン酸類、芳香族カルボン酸類)やケトン類(シクロアルカノン類,シクロアルケノン類,芳香族ケトン類)を直接かつ効率よく高い転化率及び選択率で生成できる酸化触媒、およびこの触媒を用いた酸化方法、並び前記カルボン酸類やケトン類の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、酸素により多環式炭化水素類の橋頭位又は接合位のメチリジン基の部位を効率よく酸化できる酸化触媒、およびこの触媒を用いた酸化方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、縮合多環式炭化水素類、橋架け環式炭化水素類から対応するジオール以上のポリオールを高い転化率及び選択率で製造できる酸化触媒、およびこの触媒を用いた酸化方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、温和な条件下、多環式炭化水素類の環の開裂およびジケトン体の副生を抑制しつつ、接合位の第3級炭素原子にヒドロキシル基を高い効率で導入できる酸化触媒、および酸化方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、温和な条件下、酸素酸化によりアダマンタンジオール、トリオール以上のアダマンタンポリオールを有効かつ高い収率で得ることができるアダマンタンポリオールの製造方法を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、N−ヒドロキシフタルイミド化合物と助触媒とで構成された触媒系の存在下、基質を酸素又は空気酸化すると、常圧の比較的温和な条件下であっても、高い効率で酸化でき、対応する酸化物が高い選択率および収率で生成することを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の酸化触媒系は、式(1)
【0026】
【化7】
(式中、R1 及びR2 は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R1 及びR2 は互いに結合して二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、nは1〜3の整数を示す。NとXとの間の結合は単結合又は二重結合を示す)
で表されるイミド化合物と、リンバナドモリブデン酸を除く助触媒とで構成されている。助触媒には、周期表2A族,遷移金属,および周期表3B族からなる群から選択された元素を含む助触媒が含まれる。
前記イミド化合物(1)と助触媒とで構成された酸化触媒系では種々の基質を効率よく酸化でき、基質に対応するケトン類,アルデヒド類,アルコール類やカルボン酸類を生成させることができる。そのため、本発明の方法では、前記イミド化合物(1)と助触媒とで構成された酸化触媒系の存在下、基質と酸素とを接触させる。
【0027】
なお、基質が、(a)シクロアルカン類、(b)シクロアルケン類、(c1)多環式炭化水素類のうち、環の構成単位としてメチリジン基を含む、アダマンタン以外の多環式炭化水素類、(d1)芳香族性化合物のうち、少なくとも1つのアルキル基が置換した芳香族性化合物、(e)共役化合物から選択された化合物である場合、前記助触媒を用いることなく、前記イミド化合物(1)で構成された酸化触媒の存在下で基質が酸化される。
また、前記助触媒の共存下(すなわち、イミド化合物(1)と助触媒とで構成された酸化触媒系の存在下)で基質を酸素酸化する場合、基質がベンジル位にヒドロキシル基を有する芳香族化合物であるとき、助触媒はリンバナドモリブデン酸ではない。すなわち、助触媒が周期表5A族元素や周期表6A族元素で構成されたポリ酸(ヘテロポリ酸,イソポリ酸)であるとき、ポリ酸は、通常、イソポリ酸である。なお、基質が(a)シクロアルカン類、(b)シクロアルケン類、(c1)アダマンタン以外の多環式炭化水素類、(d1)少なくとも1つのアルキル基が置換した芳香族性化合物、(e)共役化合物であるとき、前記ヘテロポリ酸として、リンバナドモリブデン酸を使用してもよい。すなわち、この場合、助触媒として、前記酸化物、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、錯体、イソポリ酸又はその塩およびヘテロポリ酸又はその塩から選ばれた少なくとも一種を用いることができる。
好ましい態様の酸化方法では、助触媒として、周期表2A族,遷移金属,および周期表3B族からなる群から選択された元素を含む化合物であって、酸化物、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、錯体、イソポリ酸又はその塩から選択された化合物が使用される。
【0028】
本発明は、前記イミド化合物(1)で構成された酸化触媒、又はイミド化合物(1)と助触媒とで構成された酸化触媒系の存在下、前記基質を酸化してケトン類、アルコール類、アルデヒド類又はカルボン酸類を製造する方法も開示する。さらに、本発明は、基質の酸化のための前記イミド化合物(1)で構成された酸化触媒の使用、又はイミド化合物(1)と助触媒とで構成された酸化触媒系の使用も開示する。
【0029】
なお、本明細書において、「カルボン酸」とは、遊離のカルボキシル基を有する化合物に限らず、反応条件により生成する塩,エステルや酸無水物などのように、実質的にカルボン酸と等価なカルボン酸誘導体も含む意味に用いる。
また、アダマンタンとその誘導体を単に「アダマンタン成分」と言う場合がある。なお、多環式炭化水素類の橋頭位のメチリジン基は基「−HC<」、隣接する環の接合位のメチリジン基は基「>CH−CH<」で表すことができる。また、「二価の遷移金属化合物」には、反応系中で生成する遷移金属化合物も含まれる。
さらに、「アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの誘導体」を「(メタ)アクリル酸又はその誘導体」と総称する場合がある。また、「共役化合物」とは、二重結合と単結合とが交互に位置する化合物(例えば、ブタジエンなど)に限らず、不飽和結合(二重結合および三重結合)が単結合を介して又は介することなく交互に位置する化合物(例えば、共役ポリエンなど)も含む意味に用いる。そのため、不飽和ジオールが「共役ジエン類」に対応する酸化物である限り、単一の二重結合のみならず、複数の二重結合や三重結合を有する不飽和ジオールも「アルケンジオール」と総称する。
【0030】
【発明の実施の形態】
[イミド化合物]
前記式(1)で表される化合物において、置換基R1 及びR2 のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。好ましいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。
【0031】
アリール基には、フェニル基、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が含まれる。
【0032】
アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。好ましいアルコキシカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。
【0033】
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基が例示できる。
【0034】
前記置換基R1 及びR2 は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(1)において、R1 およびR2 は互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環族環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
【0035】
【化8】
(式中、R3 〜R6 は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。窒素原子「N」と「X」との結合は単結合又は二重結合を示す。R1 、R2 およびnは前記に同じ)
置換基R3 〜R6 において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R3 〜R6 は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。
【0036】
前記式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、窒素原子「N」と「X」との結合は単結合又は二重結合である。また、nは、通常、1〜3程度、好ましくは1又は2である。式(1)で表される化合物は酸化反応において一種又は二種以上使用できる。
【0037】
前記式(1)で表されるイミド化合物に対応する酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸 1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環族多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環族多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。
好ましいイミド化合物としては、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなどが挙げられる。特に好ましい化合物は、脂環族多価カルボン酸無水物、なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれる。
【0038】
前記イミド化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH2 OHとを反応させて酸無水物基を開環した後、閉環してイミド化することにより調製できる。
【0039】
このようなイミド化合物は、酸化活性が高く、温和な条件であっても、特定の基質の酸化反応を触媒的に促進できる。さらに、前記イミド化合物と助触媒との共存下で種々の基質を酸化すると、転化率及び/又は選択率が向上する。そのため、本発明では、特定の基質については、前記イミド化合物で構成された酸化触媒の存在下で酸化し、基質に対応するケトン類,アルコール類,アルデヒド類やカルボン酸類を生成させる。また、本発明では、前記イミド化合物と助触媒とで構成された触媒系の存在下、基質を効率よく高い選択率で酸化し、基質に対応するケトン類,アルコール類,アルデヒド類やカルボン酸類を生成させることができる。
【0040】
[助触媒]
助触媒としての共酸化剤には、金属化合物、例えば、周期表2A族元素(マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムなど)、遷移金属化合物や、ホウ素化合物などのように周期表3B族元素(ホウ素B、アルミニウムAlなど)を含む化合物が含まれる。助触媒は、一種又は二種以上組合わせて使用できる。
前記遷移金属の元素としては、例えば、周期表3A族元素(例えば、スカンジウムSc、イットリウムYの外、ランタンLa、セリウムCe、サマリウムSmなどのランタノイド元素、アクチニウムAcなどのアクチノイド元素)、周期表4A族元素(チタンTi、ジルコニウムZr、ハフニウムHfなど)、5A族元素(バナジウムV、ニオブNb、タンタルTaなど)、6A族元素(クロムCr、モリブデンMo、タングステンWなど)、7A族元素(マンガンMn、テクネチウムTc,レニウムReなど)、8族元素(鉄Fe、ルテニウムRu、オスミウムOs、コバルトCo、ロジウムRh、イリジウムIr、ニッケルNi、パラジウムPd、白金Ptなど)、1B族元素(銅Cu、銀Ag、金Auなど)、2B族元素(亜鉛Zn,カドミウムCdなど)などが挙げられる。
好ましい助触媒を構成する元素には、遷移金属の元素(例えば、ランタノイド元素、アクチノイド元素などの周期表3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素)、3B族元素(ホウ素化合物など)が含まれる。特に、前記式(1)で表されるイミド化合物と組合せたとき、Ti,Zrなどの4A族元素、Vなどの5A族元素、Cr、Mo、Wなどの6A族元素、Mn,Tc,Reなどの7A族元素、Fe、Ru、Co、Rh、Niなどの8族元素、Cuなどの1B族元素を含む化合物は、高い酸化活性を示す。
【0041】
助触媒は、前記元素を含み、かつ酸化能を有する限り特に制限されず、金属単体、水酸化物などであってもよいが、通常、前記元素を含む金属酸化物(複酸化物または酸素酸塩)、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、前記金属元素を含む配位化合物(錯体)やヘテロポリ酸(特にイソポリ酸)又はその塩などである場合が多い。なお、前記式(1)で表されるイミド化合物との組合せにより構成される酸化触媒系において、周期表5A族および6A族元素を含む化合物のうちリンバナドモリブデン酸は除かれる。
【0042】
また、ホウ素化合物としては、例えば、水素化ホウ素(例えば、ボラン、ジボラン、テトラボラン、ペンタボラン、デカボランなど)、ホウ酸(オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸など)、ホウ酸塩(例えば、ホウ酸ニッケル、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガンなど)、B2 O3 などのホウ素酸化物、ボラザン、ボラゼン、ボラジン、ホウ素アミド、ホウ素イミドなどの窒素化合物、BF3 、BCl3 、テトラフルオロホウ酸塩などのハロゲン化物、ホウ酸エステル(例えば、ホウ酸メチル、ホウ酸フェニルなど)などが挙げられる。好ましいホウ素化合物には、水素化ホウ素、オルトホウ酸などのホウ酸又はその塩など、特にホウ酸が含まれる。これらの助触媒は一種又は二種以上使用できる。
【0043】
水酸化物には、例えば、Mn(OH)2 ,MnO(OH),Fe(OH)2 ,Fe(OH)3 などが含まれる。金属酸化物には、例えば、Sm2 O3 、TiO2 、ZrO2 、V2 O3 、V2 O5 、CrO、Cr2 O3 、MoO3 、MnO、Mn3 O4 ,Mn2 O3 ,MnO2 ,Mn2 O7 ,FeO、Fe2 O3 、Fe3 O4 、RuO2 、RuO4 、CoO、CoO2 、Co2 O3 、RhO2 、Rh2 O3 、Cu2 O3 などが含まれ、複酸化物または酸素酸塩としては、例えば、MnAl2 O4 ,MnTiO3 ,LaMnO3 ,K2 Mn2 O5 ,CaO・xMnO2 (x=0.5,1,2,3,5),マンガン酸塩[例えば、Na3 MnO4 ,Ba3 [MnO4 ]2 などのマンガン(V)酸塩,K2 MnO4 ,Na2 MnO4 ,BaMnO4 などのマンガン(VI)酸塩、KMnO4 ,NaMnO4 ,LiMnO4 ,NH4 MnO4 ,CsMnO4 ,AgMnO4 ,Ca(MnO4 )2 ,Zn(MnO4 )2 ,Ba(MnO4 )2 ,Mg(MnO4 )2 ,Cd(MnO4 )2 などの過マンガン酸塩]が含まれる。
有機酸塩としては、例えば、酢酸コバルト、酢酸マンガン、プロピオン酸コバルト、プロピオン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸マンガンなどのC2-20脂肪酸塩、チオシアン酸マンガンや対応するCe塩、Ti塩,Zr塩,V塩,Cr塩、Mo塩,Fe塩、Ru塩,Ni塩、Pd塩、Cu塩,Zn塩などが例示され、無機酸塩としては、例えば、硝酸コバルト、硝酸鉄、硝酸マンガン、硝酸ニッケル、硝酸銅などの硝酸塩やこれらに対応する硫酸塩,リン酸塩および炭酸塩(例えば、硫酸コバルト、硫酸鉄、硫酸マンガン、リン酸コバルト、リン酸鉄、リン酸マンガン、炭酸鉄、炭酸マンガン、過塩素酸鉄など)が挙げられる。また、ハロゲン化物としては、例えば、SmCl3 、SmI2 、TiCl2 、ZrCl2 、ZrOCl2 、VCl3 、VOCl2 、MnCl2 ,MnCl3 、FeCl2 、FeCl3 、RuCl3 、CoCl2 、RhCl2 、RhCl3 、NiCl2 、PdCl2 、PtCl2 、CuCl、CuCl2 などの塩化物や、これらに対応するフッ化物,臭化物やヨウ化物(例えば、MnF2 ,MnBr2 ,MnF3 ,FeF2 、FeF3 、FeBr2 、FeBr3 、FeI2 、CuBr、CuBr2 など)などのハロゲン化物、M1 MnCl3 ,M1 2MnCl4 ,M1 2MnCl5 ,M1 2MnCl6 (M1 は一価金属を示す)などの複ハロゲン化物などが挙げられる。
【0044】
錯体を形成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基などのアルコキシ基、アセチル、プロピオニルなどのアシル基、メトキシカルボニル(アセタト)、エトキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル基、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、塩素、臭素などハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、H2 O(アコ)、ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン)などのリン化合物、NH3 (アンミン)、NO、NO2 (ニトロ)、NO3 (ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。錯体又は錯塩において、同種又は異種の配位子は一種又は二種以上配位していてもよい。
配位子は、例えば、OH、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アセチルアセトナト、ハロゲン原子、CO、CN、H2 O(アコ)、トリフェニルホスフィンなどのリン化合物や、NH3 、NO2 、NO3 を含めて窒素含有化合物である場合が多い。
【0045】
前記遷移金属元素と配位子は適当に組合せて錯体を構成することができ、例えば、アセチルアセトナト錯体(Ce,Sm,Ti,Zr,V,Cr,Mo,Mn,Fe,Ru,Co,Ni,Cu,Znなどのアセチルアセトナト錯体や、チタニルアセチルアセトナト錯体TiO(AA)2 、ジルコニルアセチルアセトナト錯体ZrO(AA)2 、バナジルアセチルアセトナト錯体VO(AA)2 など)、シアノ錯体(ヘキサシアノマンガン(I)酸塩,ヘキサシアノ鉄(II)酸塩など)、カルボニル錯体やシクロペンタジエニル錯体(トリカルボニルシクロペンタジエニルマンガン(I)、ビスシクロペンダジエニルマンガン(II)、ビスシクロペンタジエニル鉄(II)、Fe(CO)5 ,Fe2 (CO)9 ,Fe3 (CO)12など)、ニトロシル化合物(Fe(NO)4 ,Fe(CO)2 (NO)2 など)、チオシアナト錯体(コバルトチオシアナト,マンガンチオシアナト,鉄チオシアナトなど)、アセチル錯体(酢酸コバルト,酢酸マンガン,酢酸鉄,酢酸銅,酢酸ジルコニルZrO(OAc)2 、酢酸チタニルTiO(OAc)2 、酢酸バナジルVO(OAc)2 など)などであってもよい。
【0046】
ポリ酸(イソポリ酸やヘテロポリ酸)は、例えば、周期表5A族又は6A族元素、例えば、V(バナジン酸),Mo(モリブデン酸)およびW(タングステン酸)の少なくとも一種である場合が多く、中心原子は特に制限されず、例えば、Cu、Be、B、Al、Si、Ge、Sn、Ti、Th、N、P、As、Sb、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、S、Se、Te、Mn、I、Fe、Co、Ni、Rh、Os、Ir、Pt、Cuなどであってもよい。ヘテロポリ酸の具体例としては、例えば、コバルトモリブデン酸塩、コバルトタングステン酸塩、モリブデンタングステン酸塩、マンガンモリブデン酸塩、マンガンタングステン酸塩、マンガンモリブデンタングステン酸塩、バナドモリブドリン酸塩、マンガンバナジウムモリブデン酸塩、マンガンバナドモリブドリン酸塩などが挙げられる。なお、前記のように、本発明の酸化触媒系を構成する助触媒において、好ましいポリ酸はイソポリ酸であり、バナジウム−モリブデン系のヘテロポリ酸(リンバナドモリブデン酸)又はその塩は除かれる。
【0047】
これらの助触媒は基質の種類などに応じて単独で又は二種以上組合わせて使用でき、助触媒の種類によっては、例えば、次のような特徴的な機能が発現する。
【0048】
1.助触媒を構成する遷移金属化合物において元素の原子価は特に制限されず、2〜6価程度であってもよいが、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物、二価のマンガン化合物など)を助触媒として用いると、酸化活性を向上できる。例えば、三価の遷移金属化合物に代えて、二価の遷移金属化合物を前記イミド化合物と組合わせた触媒系では、酸化反応生成物を短時間にしかも高い選択率および収率で誘導できる。また、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルトなどの周期表8族元素を含む化合物)を助触媒として用いると、低温(例えば、10〜60℃)、特に室温(15〜30℃程度)であっても、基質(例えば、メチル基が置換した芳香族性化合物など)を定量的に酸化でき、対応する酸化物(例えば、カルボン酸など)を生成できる。
【0049】
2.周期表4A族元素(Ti,Zrなど)、6A族(Cr,Moなど)、および7A族元素(Mnなど)のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を助触媒として用いると、反応条件が厳しくても、触媒(特にイミド化合物)の失活を大きく抑制できる。そのため、工業的に有利に基質を酸素酸化又は空気酸化することができる。
【0050】
3.周期表4A族元素(Ti,Zrなど),5A族元素(Vなど),6A族元素(Cr,Moなど),7A族元素(Mnなど)および8族元素(Fe,Coなど)を含む化合物を助触媒として用いると、酸化活性が大きく向上し、基質を有効に酸化できる。例えば、周期表5A族元素(Vなど),周期表7A族元素(Mnなど)や周期表8族元素(Coなど)を含む化合物を助触媒とする触媒系は、活性が高い。また、周期表7A族元素(Mnなど)や周期表8族元素(Feなど)を含む化合物を助触媒とする触媒系は、基質(例えば、シクロアルカン類など)に対して高活性であり、高い選択率で対応する酸化物(例えば、ケトン類やジカルボン酸類など)を生成できる。特に周期表5A族元素(Vなど)を含む化合物を助触媒として使用すると、基質の複数の部位[多環式炭化水素類(アダマンタンなど)の橋頭位や接合位など]を効率よく酸化でき、複数のヒドロキシル基が導入された生成物(例えば、フダマンタンポリオールなど)を得ることができる。
【0051】
4.式(1)で表されるイミド化合物と、周期表1B族元素(Cuなど)を含む助触媒との組合わせで酸化触媒系を構成すると、酸化反応において選択率を大きく向上できるとともに、イミド化合物の失活を抑制でき工業的に有利である。
【0052】
5.式(1)で表されるイミド化合物と、周期表7A族元素を含む化合物(マンガン化合物など)と、周期表8族元素を含む化合物(鉄化合物など)とを組み合わせて酸化触媒系を構成すると、触媒活性がさらに向上し、高い転化率および選択率で、有効かつ効率よく酸化物を生成させることができる。この複合触媒系において、周期表8族元素を含む化合物(第2の助触媒)の割合は、特に制限されず、例えば、周期表7A族元素を含む化合物(第1の助触媒)1モルに対して0.1〜25モル(例えば、0.1〜20モル)、好ましくは0.2〜15モル、さらに好ましくは0.5〜10モル程度である場合が多い。
【0053】
前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又はイミド化合物および前記助触媒で構成される酸化触媒系は、均一系であってもよく、不均一系であってもよい。また、前記酸化触媒又は酸化触媒系は、担体に触媒成分が担持された固体触媒であってもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。固体触媒における触媒成分の担持量は、担体100重量部に対して、式(1)で表されるイミド化合物0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度である。また、助触媒の担持量は、担体100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜25重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度である。
【0054】
式(1)で表されるイミド化合物に対する助触媒の割合は、反応速度、選択率を損わない範囲で選択でき、例えば、イミド化合物1モルに対して、助触媒0.001〜10モル、好ましくは0.005〜5モル、さらに好ましくは0.01〜3モル程度であり、0.01〜5モル(特に0.001〜1モル)程度である場合が多い。
【0055】
なお、助触媒の量が増加するにつれて、イミド化合物の活性が低下する場合がある。そのため、酸化触媒系の高い活性を維持するためには、助触媒の割合は、イミド化合物1モルに対して、有効量以上であって0.1モル以下(例えば、0.001〜0.1モル、好ましくは0.005〜0.08モル、さらに好ましくは0.01〜0.07モル程度)であるのが好ましい。
【0056】
酸化反応(換言すれば、ケトン類,アルコール類,アルデヒド類やアルコール類の製造方法)において、前記式(1)で表されるイミド化合物の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、基質1モルに対して0.001〜1モル(0.01〜100モル%)、好ましくは0.001〜0.5モル(0.1〜50モル%)、さらに好ましくは0.01〜0.30モル程度であり、0.01〜0.25モル程度である場合が多い。
また、助触媒(共酸化剤)の使用量も、反応性および選択率を低下させない範囲で適当に選択でき、例えば、基質1モルに対して0.0001モル(0.1モル%)〜0.7モル(70モル%)、好ましくは0.0001〜0.5モル、さらに好ましくは0.001〜0.3モル程度であり、0.0005〜0.1モル(例えば、0.005〜0.1モル)程度である場合が多い。
ポリ酸(イソポリ酸やヘテロポリ酸)又はその塩を助触媒として使用する場合、基質100重量部に対して0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部程度である。
【0057】
[基質]
前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又はイミド化合物と助触媒とで構成された酸化触媒系を用いると、種々の基質を有効に酸化でき、基質に対応するケトン類,アルコール類,アルデヒド類,カルボン酸類などを生成させることができる。基質の種類は特に制限されず、広い範囲の飽和又は不飽和化合物、例えば、炭化水素類(脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類)、複素環式化合物、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルデヒド類、アミン類などが使用できる。
これらの基質は、種類に応じて、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子(ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などの炭素数1〜6程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基)、オキソ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1-4 アルキル基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基)、アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6程度のアシル基)、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基などが置換していてもよい。
【0058】
好ましい基質には、例えば、次のような工業的に有用な化合物が含まれる。
(a)シクロアルカン類
シクロアルカン類としては、3〜30員のシクロアルカン環を有する化合物、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、シクロペンタデカン、シクロヘキサデカン、シクロオクタデカン、シクロノナデカン、シクロエイコサン、シクロドコサン、シクロテトラコサン、シクロトリアコンタンなどが例示できる。
【0059】
置換基を有するシクロアルカン類としては、例えば、ヒドロキシル基を有するシクロアルカン(シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロデカノール、シクロウンデカノール、シクロドデカノール、シクロテトラデカノール、シクロエイコサノールなど)、オキソ基を有するシクロアルカン(シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジメチルシクロヘキサノン、シクロヘキサジオン、シクロペンタノン、シクロオクタノン、シクロオクタジオン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、シクロテトラデカノン、シクロオクタデカノン、シクロエイコサノン)、アルキル基を有するシクロアルカン(メチルシクロヘキサン,1,2−ジメチルシクロヘキサン,イソプロピルシクロヘキサン,メチルシクロオクタンなど)などが含まれる。
【0060】
好ましいシクロアルカン類は、5〜30員環、特に6〜25員環、なかでも6〜20員環(例えば、6〜16員環)の化合物が含まれる。
また、本発明の方法では、8員環以上(例えば、8〜30員環)、好ましくは8〜25員環、特に工業的に有用な8〜20員環(例えば、8〜16員環)の化合物であっても有効に酸化できる。
【0061】
前記イミド化合物(1)で構成された酸化触媒、又はイミド化合物(1)と助触媒とで構成された触媒系の存在下、このようなシクロアルカン類を酸素により酸化すると、常圧の空気又は酸素雰囲気下であっても、高い転化率および選択率で、主に、対応するジカルボン酸又はシクロアルカノンが生成する。
例えば、シクロヘキサン又はその誘導体(シクロヘキサノンやシクロヘキサノールなど)を酸化すると、高い転化率および選択率でアジピン酸を効率よく生成できる。
アジピン酸を得るための基質(脂環族C6 化合物)としては、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノンが使用できる。基質としては、シクロヘキサン、シクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンの少なくとも1つの成分を用いればよく、二種以上の成分を組み合わせて使用してもよい。なお、シクロヘキサン単独でも高い転化率および選択率でアジピン酸を生成させることができるが、シクロヘキサンの酸化物であるシクロヘキサノールやシクロヘキサノンの共存下でシクロヘキサンを酸化したり、シクロヘキサノールやシクロヘキサノンを酸化すると、転化率および選択率をさらに向上できる。
前記の酸化方法でシクロヘキサン又はその誘導体を酸化すると、温和な条件下のみならず、反応温度及び/又は反応圧力を高くして反応速度を大きくしても、副生物が殆ど生成せず、生成物の殆どがアジピン酸であるという特色がある。そのため、アジピン酸の分離精製を極めて簡単かつ容易に行なうことができ、ナイロン66、ポリエステルや可塑剤などの原料となるアジピン酸を製造する上で極めて有用である。
【0062】
また、前記酸化触媒や酸化触媒系を利用すると、酸化に対する反応性が小さな8員以上、特に9員以上の大環状シクロアルカン類(例えば、10〜30員のシクロアルカン類)であっても、酸素に対する反応性が特異的に急激に向上し、高い効率で酸化でき、ケトン体(特にモノケトン体)やジカルボン酸を高い収率で得ることができる。すなわち、本発明の方法では、大環状シクロアルカン類を、温和な条件下、高い転換率および選択率で酸化し、ケトン類やジカルボン酸類(特に大環状モノケトン類および長鎖ジカルボン酸類)を得ることができる。例えば、シクロオクタンを酸化すると、シクロオクタノンやスベリン酸を生成させることができ、9員以上のシクロアルカン類と酸素とを接触させて酸化すると、対応するシクロアルカノン又は長鎖ジカルボン酸を生成させることができる。なお、モノケトン体はジカルボン酸の前駆体となるとともに、ラクタムの原料ともなる。また、モノケトン体は酸化反応の進行にともなってジカルボン酸に変換される。そのため、ポリエステル、ポリアミドや可塑剤などの原料となる炭素数8以上の長鎖ジカルボン酸やその前駆体となるモノケトン化合物を製造する上で極めて有用である。
【0063】
基質がシクロアルカン類であるとき、特に有効な助触媒は、少なくとも周期表7A族元素(Mnなど)を含む化合物で構成されている。また、有効な助触媒は周期表7A族元素(Mnなど)を含む化合物と周期表8族元素(Feなど)を含む化合物との組み合わせで構成できる。
また、助触媒として、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物やマンガン化合物など)を用いると、シクロアルカン類(例えば、シクロオクタン)から、ジケトンの副生を大きく抑制しつつ、シクロアルカノン(例えば、シクロオクタノン)、特にジカルボン酸(例えば、スベリン酸)の選択率および収率を顕著に高めることができる。
【0064】
(b)シクロアルケン類
シクロアルケン類には、3〜30員のシクロアルケン環を有する化合物、例えば、環状オレフィン(例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、イソホロン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロデカエン、シクロドデカエンなど)、シクロアルカジエン類(例えば、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエンなどのシクロヘキサジエン類、1,3−シクロヘプタジエンなどのシクロヘプタジエン類、1,5−シクロオクタジエンなどのシクロオクタジエン類、シクロデカジエン、シクロドデカジエンなど)、シクロアルカトリエン類(例えば、シクロオクタトリエンなど)、シクロアルカテトラエン類(例えば、シクロオクタテトラエンなど)などが挙げられる。好ましいシクロアルケン類には、3〜30員環(例えば、3〜20員環)、好ましくは3〜16員環、特に3〜12員環(例えば、5〜10員環)を有する化合物が含まれる。
【0065】
置換基を有するシクロアルケン類としては、例えば、C1-4アルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基を有するシクロアルケン(例えば、シクロヘキセンカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、シクロヘキサジエンカルボン酸、シクロヘキサジエンジカルボン酸、シクロゲラニウム酸、シクロゲラニオール、シクロシトラール、シクロゲラニオレンなど)、オキソ基を有するシクロアルケノン(例えば、シクロヘキセノン、シクロオクテノンなど)などが含まれる。
【0066】
前記イミド化合物は、酸化活性が高く、穏和な条件であっても、シクロアルケン類の酸化反応を触媒的に促進してシクロアルケン類を効率よく酸素酸化できる。そのため、シクロアルケン類を効率よく酸化して、対応するシクロアルケン類の酸化物(例えば、ケトン類、アルコール類、アルデヒド類やカルボン酸類)、特にシクロアルケノン類やシクロアルケノール類を高い選択率で生成できる。さらに、前記式(1)で表されるイミド化合物と助触媒との共存下でシクロアルケン類を酸化すると、転化率及び/又は選択率をさらに向上できる。
【0067】
(c)環の構成単位としてメチリジン基を含む多環式炭化水素類
前記多環式炭化水素類には、少くとも1つのメチリジン基(すなわち、メチン炭素−水素結合−CH<)を有する橋架け環式炭化水素類(例えば、架橋環式炭化水素、テルペン類など)および縮合多環式炭化水素類が含まれる。メチリジン基を有する環は、通常、非芳香族性環であり、不飽和二重結合を有する橋架け環又は縮合環であってもよい。オルソ(ortho)縮合又はオルソアンドペリ(ortho and peri)縮合している縮合多環式炭化水素類は、メチリジン基を有する非芳香族性環を有する限り、芳香族性環が縮合していてもよい。多環式炭化水素類において、2以上のメチリジン基が橋頭位及び/又は接合位に存在する場合が多い。
なお、橋架け環式炭化水素類においても、隣接する環が互いに共有する2つのメチリジン基で結合する縮合多環式炭化水素類を構成する場合がある。このような化合物においては、橋頭位および接合位のうち少くともいずれか一方の部位のメチリジン基を酸化し、第3級炭素原子にヒドロキシル基を導入してもよい。ヒドロキシル基の導入部位は基質の種類に応じて選択できる。また、オキソ基は前記橋頭位および接合位に隣接する部位(第2級炭素原子)に導入される場合が多い。
【0068】
橋架け環式炭化水素類のうち架橋環式炭化水素類としては、例えば、2環式炭化水素(例えば、ツジャン、カラン、ピナン、ボルナン(カンファン)、ボルニレン、ノルボルネン、ノルボルナン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンなど)、3環式炭化水素(例えば、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、ホモブレダン(すなわちトリシクロ[5.2.1.03,8]デカン)、アダマンタン、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカンなど)、4環式炭化水素(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなど)などの他、ジシクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどのジエンの二量体、これらの二量体の水素添加物(例えば、ジシクロヘキサン、ジシクロペンタン、ジシクロペンテン、ジシクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなど)およびこれらの誘導体が挙げられる。
架橋環式炭化水素類としては、環を構成する炭素数が7〜16程度(特に炭素数6〜14程度)の2環式ないし4環式炭化水素、例えば、2以上の複数の橋頭位又は接合位に炭素−水素結合を有する化合物、特に、ピナン、ボルナン、ボルニレン、ノルボルネン、ノルボルナンなどの2環式炭化水素、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、ホモブレダン、アダマンタンなどの3環式炭化水素を用いる場合が多い。橋頭位の第3級炭素原子にヒドロキシル基が導入可能な架橋環式炭化水素類には、例えば、ノルボルネン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、ホモブレダン、アダマンタンやこれらの誘導体などが含まれる。
接合位の第3級炭素原子にヒドロキシル基が導入可能な架橋環式炭化水素類には、例えば、エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン、エンドトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなどが含まれる。
【0069】
テルペン類には、例えば、単環式モノテルペン(リモネン、テルピノレン、テルピネン、フェランドレン、メンテンなど)、二環式モノテルペン(カロン、ピネン、ピナン、カンファー(ショウノウ)、カンフェン、ボルネン、ツヨン、フェンコン)、単環式セスキテルペン(ビサボレン、ジンギベレン)、二環式セスキテルペン(カジネン、サンタレン、セリネン、サントニン、カリオフィレンなど)、三環式セスキテルペン(コパエン、サンタレン、ロンギフォレンなど)、ジテルペン(ビタミンAなど)、トリテルペン(アムブレイン、アミリン、ルペオールなど)、テトラテルペン(カロチン,ルテインなどのカロチノイド)、ポリテルペン、これらの誘導体が含まれる。
【0070】
縮合多環式炭化水素類としては、例えば、5ないし8員環が縮合した縮合多環式芳香族炭化水素類の水素添加により生成する種々の化合物、例えば、デカリン、パーヒドロアセナフチレン、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロフェナレン、ヘキサヒドロインダンなどが挙げられる。縮合多環式炭化水素類では5又は6員環が縮合している場合が多い。また、縮合多環式炭化水素類では、接合位のメチリジン基が酸化される場合が多い。
【0071】
置換基を有する多環式炭化水素類のうち、架橋環式炭化水素類の誘導体としては、例えば、ハロゲン原子を有する誘導体(例えば、2−クロロノルボルナン、1−クロロアダマンタン、1,3−ジクロロアダマンタンなど)、アルキル基を有する誘導体(2,2−ジメチルノルボルナン、2,7,7−トリメチル−2−ノルボルネン、1−メチルアダマンタン、1−エチルアダマンタン、1−n−フロピルアダマンタン、1−イソプロピルアダマンタン、1−n−ブチルアダマンタン、1−s−ブチルアダマンタン、1−t−ブチルアダマンタン、1−ペンチルアダマンタン、1−ヘキシルアダマンタン、1−シクロヘキシルアダマンタン、1,3−ジメチルアダマンタン、1−メチル−3−エチルアダマンタン、1,3−ジシクロヘキシルアダマンタン、1,3,5−トリメチルアダマンタン、1−エチル−3,5−ジメチルアダマンタン、ヘミアダマンタンなどの炭素数1-6 程度のアルキル基を有する化合物)、ヒドロキシル基を有する誘導体(例えば、カンフェニロール、ボルネオール、イソボルネオール、1−アダマンタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3,5−アダマンタントリオール、1−メチル−3−アダマンタノール、1−メチル−3,5−アダマンタンジオール、1−エチル−3−アダマンタノール、1−エチル−3,5−アダマンタンジオール、1,3−ジメチル−5−アダマンタノール、1−メチル−3−エチル−5−アダマンタノール、1−プロピル−3−アダマンタノール、1−プロピル−3,5−アダマンタンジオールなど)、アルコキシ基(1−メトキシアダマンタン、1,3−ジメトキシアダマンタン、1−エトキシアダマンタン、1,3−ジエトキシアダマンタンなど)、オキソ基を有する誘導体(カンファーキノン,カンフェニロン、2−アダマンタノン、メチルアダマンタノン、ジメチルアダマンタノンなど)、アシル基を有する誘導体(ホルミルノルボルネン、ホルミルアダマンタンなど)、カルボキシル基を有する誘導体(カンファン酸,カンフェニル酸など)、アルキルオキシカルボニル基を有する誘導体(メトキシカルボニルカンファン,エトキシカルボニルカンフェニルなど)、アミノ基を有する誘導体(ボルニルアミンなど)、ビニル基を有する誘導体(ビニルノルボルネンなど)などが挙げられる。
【0072】
環状テルペン誘導体としては、例えば、環状テルペンアルコール(メントール、カルボメントール、テルピネオール、テルピネオール、カルベオール)、環状テルペンアルデヒド(カルボメントン、フェランドラール、ペリラルデヒドなど)、環状テルペンケトン(ヨノン、イロン、メントン、カルボメントン、ツヨンなど)、環状テルペンオキシド(シネオール、ピノール、アスカリドールなど)、環状テルペンカルボン酸(カンフェン酸、ショウノウ酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、レボピマル酸、デキストロピマール酸など)などが例示できる。
【0073】
縮合多環式炭化水素類の誘導体としては、例えば、アルキル基を有する誘導体(メチルデカリン、エチルデカリン、n−プロピルデカリン、イソプロピルデカリン、n−ブチルデカリン、s−ブチルデカリン、t−ブチルデカリン、シクロヘキシルデカリン、ジメチルデカリン、メチルエチルデカリン、トリメチルデカリン、エチルジメチルデカリン、テトラメチルデカリン、これらに対応するヘキサヒドロインダン類など)、ヒドロキシル基を有する誘導体(例えば、デカロール)、オキソ基を有する誘導体(例えば、デカロン)、カルボキシル基を有する誘導体(例えば、デカリンカルボン酸など)、アミノ基を有する誘導体(デカリルアミン)などが例示できる。
【0074】
前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又は前記イミド化合物および助触媒で構成された酸化触媒系を利用すると、環の構成単位としてメチリジン基を含む多環式炭化水素類を効率よく酸素酸化でき、多環式炭化水素類の酸化物(ケトン類、アルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類)、特にケトン類やアルコール類を高い選択率で生成させることができる。そのため、本発明の方法では、多環式炭化水素類(例えば、複数の橋頭位又は接合位にメチリジン基を有する2環ないし4環の多環式炭化水素類)と酸素とを接触させ、橋頭位又は接合位にヒドロキシル基が導入されたヒドロキシル基含有多環式炭化水素類を高い選択率および収率で得ることができる。
特に、前記イミド化合物と二価の遷移金属化合物とで構成された触媒系、前記イミド化合物と、周期表4A族元素(Ti,Zrなど)、5A族元素(Vなど)、6A族元素(Cr,Moなど)、7A族元素(Mnなど)および8族元素(Coなど)から選ばれた元素を含有する化合物とで構成された触媒系を利用すると、多環式炭化水素類の転化率を高め、ヒドロキシル基含有多環式炭化水素類を高い選択率および収率で得ることができる。
【0075】
なお、基質としてアダマンタン成分を用いる場合、本発明では、直接的又は間接的に複数の橋頭位にヒドロキシル基を導入し、アダマンタンポリオールを生成させることもできる。複数の橋頭位にヒドロキシル基が導入されたアダマンタンポリオールは、(1)前記イミド化合物と助触媒とで構成された酸化触媒系の存在下、アダマンタンおよびその誘導体から選択されたアダマンタン成分と酸素とを接触させる方法、(2)前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又はこのイミド化合物と助触媒とで構成された酸化触媒系の存在下、アダマンタンモノオール,アダマンタンジオールおよびアダマンタントリオールのうち少くとも1つの成分を含むアダマンタン成分と酸素とを接触させ、さらに高度にヒドロキシル化されたアダマンタンポリオールを生成させる方法により製造できる。
前記(1)の方法では、前記イミド化合物と助触媒との種類を選択して組み合わせて触媒系を構成することにより、アダマンタンポリオールの単離精製に大きな障害となるケトン体の生成を大きく抑制しつつ、アダマンタンポリオールの収率を顕著に高めることができる。例えば、助触媒としての二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物)を前記イミド化合物と組合わせた触媒系でアダマンタン成分を酸化すると、温和な条件であっても、アダマンタンジオールなどのポリオールを高い選択率および収率で得ることができ、ケトン体の副生が殆どない。特に、反応温度を高めたり、反応時間が経過しても、ケトン体の副生が殆どなく、アダマンタンモノオールよりもアダマンタンジオールなどのポリオール体の生成量を多くすることができる。
さらに、周期表4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、および8族元素から選択された元素を含有する化合物、特に周期表5A族元素(Vなど)を含む化合物を助触媒として用いると、温和な条件であっても、アダマンタン成分から、アダマンタンジオールなどのポリオール、特にアダマンタントリオールやアダマンタンテトラオールを高い選択率および収率で得ることができる。
【0076】
さらに、前記(2)の方法、すなわち、アダマンタンのアルコール体の存在下(例えば、アダマンタンのアルコール体単独、又はアダマンタンのアルコール体とアダマンタンとを含むアダマンタン成分を用いて)、アダマンタン成分を酸素酸化すると、さらに高度にヒドロキシル基が導入されたアダマンタンポリオールを有効かつ収率よく得ることができる。例えば、アダマンタンモノオール単独やアダマンタンモノオールとアダマンタンとで構成されたアダマンタン成分を酸化すると、2以上の複数の橋頭位にヒドロキシル基が導入されたアダマンタンポリオール(アダマンタンジオール、アダマンタントリオールやアダマンタンテトラオールなど)を得ることができ、アダマンタンジオール単独やアダマンタンジオールとアダマンタンとで構成されたアダマンタン成分を酸化すると、3以上の複数の橋頭位にヒドロキシル基が導入されたアダマンタンポリオール(アダマンタントリオールやアダマンタンテトラオールなど)を得ることができる。また、アダマンタントリオール単独やアダマンタントリオールを含むアダマンタン成分を酸化すると、アダマンタンテトラオールを得ることができる。そのため、アダマンタンポリオールを製造する場合には、アダマンタンモノオール,アダマンタンジオールおよびアダマンタントリオールのうち少くとも1つの成分を含むアダマンタン成分を用い、さらに高度にヒドロキシル基が導入されたアダマンタンポリオールを得てもよい。
【0077】
(2)の方法において、アダマンタンポリオールを製造する場合、アダマンタンのアルコール体が少くとも共存する系でアダマンタン成分を反応させればよく、アダマンタンモノオール,アダマンタンジオール又はアダマンタントリオールの含有量は特に制限されず、アダマンタン成分全体に対して5モル%以上(例えば、10〜100モル%)、好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%程度である。
なお、前記(2)の方法でも、助触媒としては二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物など)や、周期表4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、および8族元素から選択された元素を含有する化合物が有効である。
【0078】
(d)芳香族性環の隣接位にメチル基又はメチレン基を有する芳香族性化合物前記芳香族性化合物は、少くとも1つのメチル基又はメチレン基が芳香族性環に置換した芳香族性化合物であればよく、芳香族性環は、芳香族炭化水素環、芳香族性複素環のいずれであってもよい。なお、芳香族性化合物が、ビフェニル、ターフェニル、ビナフタレン、ビピリジンなどの芳香族素環が結合した環集合化合物である場合、少くとも1つの芳香族性環にメチル基又はメチレン基が置換していればよい。また、芳香族性複素環において、メチル基又はメチレン基は複素環に結合していてもよく、縮合複素環の芳香族炭化水素環に結合していてもよい。好ましい化合物にはベンジル位にメチル基又はメチレン基を有する化合物が含まれる。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、縮合環式炭化水素環(例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ベンズアントラセンなどの2〜8個のベンゼン環がオルソortho縮合またはオルソアンドペリortho and peri縮合した縮合環)が挙げられる。
芳香族性複素環には、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、ピランなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キサントン、キサンテン、クロマン、イソクロマン、クロメンなどの縮合環)、ヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、ベンゾチオフェンなど)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどの6員環、インドール、インドレン、イソインドール、インダゾール、インドリン、イソインドリン、キノリン、イソキノリン、キノリンキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、プリン、カルバゾール、アクリジン、ナフトキノリン、フェナントロジン、フェナントロリン、ナフチリジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フタロシアニン、アントラシアニンなどの縮合環)などが含まれる。
工業的に有用な芳香族性化合物は、芳香族炭化水素環、6員複素環や縮合複素環、好ましくは炭素数6〜14の芳香族炭化水素環、特に炭素数6〜10の芳香族炭化水素環(中でもベンゼン環又はナフタレン環)を有する場合が多い。
【0079】
本発明の方法では、芳香族性化合物のメチル基又はメチレン基を効率よく酸化できるので、メチル基又はメチレン基の置換数は特に制限されず、芳香族性環の種類や大きさに応じて広い範囲(例えば、1〜10、好ましくは1〜8程度)から選択できる。
(d1)メチル基が置換した芳香族性化合物
メチル基が置換した芳香族性化合物としては、例えば、1〜6個程度のメチル基が置換した芳香族炭化水素類(トルエン、o−,m−,p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン(メシチレン)、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(デュレン)、1,2,3,4,5,6−ヘキサメチルベンゼン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、1,5−ジメチルナフタレン、2,5−ジメチルナフタレン、メチルアントラセン,ジメチルアントラセン,トリメチルアントラセン,4,4′−ジメチルビフェニルなど)、1〜6個程度のメチル基が置換した複素環化合物(例えば、2−メチルフラン、3−メチルフラン、2−メチルピラン、3−メチルピラン、4−メチルピラン、3,4−ジメチルピラン、4−メチルクロメン、6−メチルクロマン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジンなどのピコリン、2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジンなどのルチジン、2,3,4−トリメチルピリジン、2,3,5−トリメチルピリジン、2,3,6−トリメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンなどのコリジン、4−メチルインドール、5−メチルインドール、7−メチルインドール、メチルキノリンなど)が例示できる。
好ましい芳香族性化合物において、メチル基の置換数は、分子中1〜4個(例えば、1又は2個)程度である場合が多い。特に1〜4個程度のメチル基が置換したC6-10芳香族炭化水素や5員又は6員複素環を含む複素環化合物(中でも、メチル基が置換したベンゼン誘導体)には、カルボン酸を製造する上で工業的に有用な化合物が多い。
【0080】
(d2)芳香族性環の隣接部位にメチレン基を有する化合物
芳香族性環の隣接部位にメチレン基を有する化合物には、炭素数2以上のアルキル基又は置換アルキル基が置換した芳香族性化合物、および環状メチレン基を有する芳香族性化合物が含まれる。
前記アルキル基又は置換アルキル基を有する芳香族性化合物としては、例えば、アルキル基を有する芳香族炭化水素類(エチルベンゼン,プロピルベンゼン,クメン,ブチルベンゼン,イソブチルベンゼン,1,4−ジエチルベンゼン、1−エチル−4−ペンチルベンゼンなどのC2-6 アルキル基を有する芳香族炭化水素類、ジベンジル,ジフェニルメタン,トリフェニルメタン,1−ベンジルナフタレンなどの置換アルキル基を有する芳香族炭化水素類など),アルキル基を有する複素環化合物(エチルピリジン,イソプロピルピリジン,ブチルピリジンなど)などが例示できる。
環状メチレン基を有する芳香族性化合物としては、5〜8員環が縮合した縮合多環式芳香族炭化水素類(ジヒドロナフタレン,インデン,インダン,テトラリン,フルオレン,フェナレン,α−テトラロン,β−テトラロン,インダノンなど)などが例示できる。
【0081】
芳香族性化合物(d)は芳香族性環と隣接する部位にメチル基とともにメチレン基を有していてもよい。このような化合物としては、例えば、少なくとも1つのメチル基と少なくとも1つのC2-10アルキル基を有するアルキル置換炭化水素(例えば、1−メチル−2−エチルベンゼン、1−メチル−3−エチルベンゼン、1−メチル−4−エチルベンゼン、1−メチル−3−イソプロピルベンゼン、1−メチル−4−イソプロピルベンゼン(シメン)、1−メチル−4−プロピルベンゼン、1−メチル−4−ブチルベンゼン、1−メチル−4−t−ブチルベンゼン、1,2−ジメチル−3−エチルベンゼン、1,2−ジメチル−4−エチルベンゼン、1,3−ジメチル−5−エチルベンゼン、1,3−ジメチル−4−エチルベンゼン、1,3−ジメチル−2−エチルベンゼン、1,4−ジメチル−2−エチルベンゼン、1−メチル−2−エチルナフタリンなどのメチル基とC2-6 アルキル基を有するアルキル置換炭化水素)、アルキル置換複素環化合物(例えば、2−エチル−4−メチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジン、4−エチル−2−メチルピリジンなど)、少なくとも1つのメチル基と環状メチレン基を有する炭化水素(3−メチルインデンなど)などが例示できる。
【0082】
芳香族性化合物は、メチル基又はメチレン基とともに他の置換基を有していてもよい。このような芳香族性化合物としては、カルボキシル基置換炭化水素(例えば、4−メチル安息香酸、1,2−ジメチルベンゼン−4−カルボン酸など)、ハロゲン含有炭化水素(例えば、4−クロロ−1−メチルベンゼン、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ジメチルベンゼン、3,4,5,6−テトラブロモ−1,2−ジメチルベンゼンなど)、ヒドロキシル基含有炭化水素(例えば、o−,m−,p−クレゾールなどのクレゾール類、2,3−キシレノール、チモールなど)、ヒドロキシル基が保護された芳香族炭化水素[例えは、アルコキシ基含有炭化水素(2−メトキシ−1−メチルベンゼン、3−メトキシ−1−メチルベンゼン、4−メトキシ−1−メチルベンゼン、4−エトキシ−1−メチルベンゼン、4−イソプロポキシ−1−メチルベンゼンなど)、アシルオキシ基置換炭化水素(2−アセチルオキシ−1−メチルベンゼン、3−アセチルオキシ−1−メチルベンゼン、4−アセチルオキシ−1−メチルベンゼン、4−プロピオニルオキシ−1−メチルベンゼン、4−ブチリルオキシ−1−メチルベンゼンなど)など]、置換基を有しているもよいアミノ基含有炭化水素(4−アミノ−1−メチルベンゼン、4−ジメチルアミノ−1−メチルベンゼンなど)などの芳香族炭化水素類、ハロゲン含有ピリジン誘導体(例えば、2−クロロ−4−メチルピリジンなど)などの複素環化合物類が例示できる。
【0083】
前記イミド化合物で構成された酸化触媒、又はイミド化合物と助触媒とで構成された酸化触媒系の存在下、このような芳香族性化合物を酸素との接触により酸化すると、メチル基又は芳香族性環に隣接するメチレン基を極めて高い効率で酸化でき、メチル基含有芳香族性化合物からはアルデヒド類、特にカルボキシル基含有芳香族性化合物を高い選択率および収率で得ることができ、メチレン基を有する芳香族性化合物からはケトン類を高い選択率および収率で得ることができる。特に、温和な条件下で反応しても、短時間内に反応が円滑に進行し、カルボキシル基を有する芳香族性化合物又はケトン類が高い選択率および収率で得られる。さらに、複数のメチル基を有する芳香族性化合物を酸化する場合、反応時間などの反応条件をコントロールすることにより、反応の進行に応じてメチル基が残存するカルボン酸を生成させることができ、さらに反応を進行させると、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を得ることも容易である。そのため、本発明の方法は、少くとも1つのメチル基又はメチレン基を有する芳香族性化合物と酸素とを接触させ、カルボキシル基を有する芳香族性化合物又はケトン類を生成させるのに有用である。本発明の好ましい方法には、メチル基が置換したベンゼン誘導体(例えば、トルエン、キシレンなど)を酸素と接触させ、工業的に有用な化合物であるカルボキシル基を有するベンゼン誘導体(例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など)を生成させる方法、C2-6 アルキル基が置換した芳香族炭化水素類(例えば、エチルベンゼンなど)を酸素と接触させ、工業的に有用な化合物であるカルボニル基を有するベンゼン誘導体(例えば、アセトフェノンなど)を生成させる方法が含まれる。
【0084】
なお、二価の遷移金属化合物(例えば、二価のコバルト化合物など)を助触媒として用いると、低温(例えば、10〜60℃)、特に室温(15〜30℃)程度の温和な条件下であっても、ポリカルボン酸やケトン類の選択率および収率を向上できる。例えば、p−キシレンを酸化すると、温和な条件下、反応時間が1/2程度であっても、テレフタル酸を短時間内に高い選択率および収率で得ることができる。なお、二価の遷移金属化合物を前記イミド化合物と組合わせた触媒系でo−キシレンを空気又は酸素酸化すると、無水フタル酸も生成する。
【0085】
そのため、本発明の方法は、芳香族性化合物を、温和な条件下、高い転換率および選択率で酸化し、モノカルボン酸、ポリカルボン酸などのカルボキシル基含有化合物やケトン類を得る上で有用である。特に、安息香酸などの芳香族モノカルボン酸や、ポリエステル、ポリアミドなどの原料となる芳香族ポリカルボン酸(特に芳香族ジカルボン酸)を製造する上で極めて有用である。
【0086】
(e)共役化合物
共役化合物には、共役ジエン類、α,β−不飽和ニトリル又は下記式(2)で表される化合物(α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体)などが含まれる。
【0087】
【化9】
[式中、R7 は、水素原子又はメチル基を示し、Yは、−OR8 (R8 は、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、グリシジル基、ジアルキルアミノ−アルキル基を示す),−NR9 R10(R9 およびR10は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を示す)を示す]
共役ジエン類には、例えば、ブタジエン(1,3−ブタジエン)、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)などの共役二重結合を有する化合物、二重結合と三重結合とを有する化合物(ビニルアセチレン、ジビニルアセチレンなど)およびこれらの誘導体などが含まれる。共役ジエン類の誘導体には、例えば、2−クロロブタジエン、2,3−ジクロロブタジエンなどのハロゲン原子(ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子)を有する化合物、2−エチルブタジエン、2,3−ジメチルブタジエンなどのアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルなどの炭素数1〜4程度の低級アルキル基)を有する化合物、ブタジエン−1−カルボン酸などのカルボキシル基を有する化合物などが例示できる。好ましい共役ジエン類は、ブタジエンおよびイソプレンである。
【0088】
共役ジエン類の酸素酸化によりアルケンジオールが生成する。生成するアルケンジオールは、共役ジエン類に対応するジオールである限り、ヒドロキシル基の置換位置は特に制限されない。例えば、ブタジエンの酸化により生成するブテンジオールは、2−ブテン−1,4−ジオール、1−ブテン−3,4−ジオールなどであってもよく、ブテンジオールはシス体又はトランス体のいずれであってもよい。
【0089】
α,β−不飽和ニトリルには、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが含まれる。
前記式(2)で表される共役化合物は、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体に相当する。
前記式(2)において置換基R8 のうち、アルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、テトラデシル基などの炭素数1〜20程度の直鎖又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。好ましいアルキル基には、炭素数1〜15程度のアルキル基、特に炭素数1〜12程度(例えば、1〜10程度)のアルキル基が含まれる。アリール基には、フェニル基、ナフチル基などが含まれる。シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの5〜10員環のシクロアルキル基が含まれる。
ヒドロキシアルキル基には、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル基などの炭素数2〜10程度のヒドロキシアルキル基が含まれる。好ましいヒドロキシアルキル基には、炭素数2〜4程度のヒドロキシアルキル基、特に炭素数2又は3程度のヒドロキシアルキル基が含まれる。
ジアルキルアミノ−アルキル基には、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジブチルアミノエチル基などのジC1-4 アルキルアミノ−C2-3 アルキル基などが含まれる。
【0090】
置換基R8 は、通常、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2又は3のヒドロキシルアルキル基、グリシジル基などである場合が多い。
このような置換基を有する化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸グリシジル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0091】
「Y」で表される置換アミノ基−NR9 R10において、R9 及びR10のうち、アルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル基などの炭素数1〜10程度のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基には、炭素数1〜6程度のアルキル基、特に炭素数1〜4程度のアルキル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基には、ヒドロキシ−C1-10アルキル、好ましくはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル基が含まれる。
【0092】
置換基R9 及びR10は、同一又は異なっていてもよく、通常、水素原子、炭素数1〜4程度のアルキル基、炭素数1又は2のヒドロキシアルキル基である場合が多い。
このような置換基を有する化合物として、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体などが挙げられる。
【0093】
これらのα,β−不飽和ニトリル、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を酸素との接触により酸化させると、α,β−不飽和結合部位が選択的に酸化され、高い転化率及び選択率で下記式(3a)又は(3b)で表される化合物が生成する。
【0094】
【化10】
(式中、Zは、酸素原子又は−OR11bを示し、R11aおよびR11bは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アシル基を示し、mは0又は1を示す。式中、炭素原子「C」と「Z」との結合は、単結合又は二重結合を示す。R7 、Yは前記に同じ。但し、Zが酸素原子であるとき、mは0、炭素原子CとZとの結合は二重結合であり、Zが−OR11bであるとき、mは1、炭素原子CとZとの結合は単結合である)
前記式(3a)又は(3b)で表される化合物において、置換基R11aおよびR11bのうち、アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル基などのC1-6アルキル基、アシル基には、アセチル、プロピオニル基などのC2-6アシル基が含まれる。これらのアルキル基、アシル基は、溶媒との反応により生成する場合がある。
【0095】
この酸化反応では、ジオール類(Zが−OR11bであり、R11aおよびR11bがともに水素原子である化合物)が、基本的に生成すると思われ、脱水反応により、アルデヒド又はその誘導体(Zが酸素原子である化合物)が生成する場合がある。また、反応溶媒として、プロトン性溶媒(酢酸、プロピオン酸などの有機酸、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類など)を用いると、アセタール又はアシルオキシ化合物などのジオール誘導体(Yが−OR11bであり、R11aおよびR11bの少なくとも一方がアルキル基又はアシル基である化合物)が生成する場合がある。これらのアルデヒド又はその誘導体、またはアセタールなどのジオール誘導体は、ジオール類と等価な化合物である。例えば、反応溶媒として、アルコール(メタノールなど)を用い、アクリロニトリルを酸化させると、1,1−ジアルコキシプロピオニトリル(1,1−ジメトキシプロピオニトリルなど)が生成する場合がある。また、アルコール(メタノールなど)溶媒中、アクリル酸メチルを酸化させると、1,1−ジアルコキシプロピオン酸メチル(1,1−ジメトキシプロピオン酸メチルなど)が生成する場合がある。
【0096】
前記のように、本発明では、共役化合物の空気又は酸素酸化により、共役化合物に対応する酸化物、例えば、共役ジエン類から対応する酸化物であるアルケンジオール(例えば、ブタジエンから、ポリアミドなどの合成樹脂、無水マレイン酸、可塑剤、ブタンジオールなどの合成原料として使用されるブテンジオール)を製造したり、α,β−不飽和ニトリル、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体から前記式(3a)(3b)で表される化合物を製造する上で有用である。
【0097】
(f)その他の基質
その他の基質としては、例えば、メチレン基を有する複素環化合物(f1)、メチン炭素原子(メチリジン基)を有する鎖状炭化水素類(f2)、不飽和結合の隣接部位にメチレン基を有する化合物(f3)、カルボニル基の隣接部位にメチレン基を有する化合物(f4)などが例示できる。
【0098】
(f1)メチレン基を有する複素環化合物
メチレン基を有する複素環化合物には、窒素原子,酸素原子,硫黄原子から選ばれたヘテロ原子を有する5又は6員環化合物、又はヘテロ原子を有する5又は6員環が芳香族性環に縮合した縮合複素環化合物、例えば、ジヒドロフラン,テトラヒドロフラン,ピラン,ジヒドロピラン,テトラヒドロピラン,ピペリジン,ピペラジン,ピロリジン,キサンテンなどが含まれる。
【0099】
(f2)メチン炭素原子(メチリジン基)を有する鎖状炭化水素類
メチン炭素原子を有する鎖状炭化水素類には、第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類、例えば、イソブタン,イソペンタン,イソヘキサン,3−メチルペンタン,2,3−ジメチルブタン,2−メチルヘキサン,3−メチルヘキサン,2,3−ジメチルペンタン,2,4−ジメチルペンタン,2,3,4−トリメチルペンタン,3−エチルペンタン,2,3−ジメチルヘキサン,2,4−ジメチルヘキサン,3,4−ジメチルヘキサン,2,5−ジメチルヘキサン,2−プロピルヘキサン,2−メチルヘプタン,4−メチルヘプタン,2−エチルヘプタン,3−エチルヘプタン,2,6−ジメチルヘプタン,2−メチルオクタン,3−メタルオクタン,2,7−ジメチルオクタン,2−メチルノナンなどの炭素数4〜10程度の脂肪族炭化水素類などが例示できる。
(f3)不飽和結合の隣接部位にメチレン基を有する化合物
化合物(f3)には、二重結合及び/又は三重結合を有する炭素数3〜12程度の鎖状不飽和炭化水素類、例えば、プロピレン,1−ブテン,2−ブテン,ブタジエン,1−ペンテン,2−ペンテン,イソプレン,1−ヘキセン,2−ヘキセン,1,5−ヘキサジエン,2,3−ジメチル−2−ブテン,3−ヘキセン,1−ヘプテン,2−ヘプテン,1,6−ヘプタジエン,1−オクテン,2−オクテン,3−オクテン,1,7−オクタジエン,2,6−オクタジエン,2−メチル−2−ブテン,1−ノネン,2−ノネン,デカエン,デカジエン,ドデカエン,ドデカジエン,ドデカトリエン,ウンデカエン,ウンデカジエン,ウンデカトリエンなどが含まれる。
【0100】
(f4)カルボニル基の隣接部位にメチレン基を有する化合物
カルボニル基の隣接部位に(活性)メチレン基を有する化合物には、アルデヒド類,ケトン類,カルボン酸又はその誘導体などが含まれる。
アルデヒド類には、脂肪族アルデヒド類(アセトアルデヒド,プロピオンアルデヒド,ブチルアルデヒド,イソブチルアルデヒド,ペンチルアルデヒド,ヘキシルアルデヒド,ヘプチルアルデヒド,オクチルアルデヒド,ノニルアルデヒド,デシルアルデヒドなどのC2-12アルキルモノアルデヒド、マロンアルデヒド,スクシンアルデヒド、アジピンアルデヒド,セバシンアルデヒドなどの脂肪族ポリアルデヒドなど)、芳香族アルデヒド類(ベンズアルデヒド,アニスアルデヒドなど)、脂環族アルデヒド(ホルミルシクロヘキサン,シクロネラールなど)、複素環アルデヒド(ニコチンアルデヒド,フルフラールなど)などが含まれる。
【0101】
ケトン類としては、脂肪族ケトン類(アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソプロピルケトン,メチルイソブチルケトン,メチル−t−ブチルケトン,2−ペンタノン,3−ペンタノン,2−ヘキサノン,3−ヘキサノン,2−ヘプタノン,3−ヘプタノン,4−ヘプタノン,2−オクタノン,3−オクタノン,4−オクタノン,2−ノナノン,2−デカノンなど)、芳香族ケトン類(アセトフェノン,プロピオフェノンなど)などが例示できる。
カルボン酸又はその誘導体には、例えば、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体(マロン酸又はそのエステル、コハク酸又はそのエステル,グルタル酸又はそのエステルなど)などが例示できる。
【0102】
[酸化反応]
基質の酸化に利用される酸素は、活性酸素であってもよいが、分子状酸素を利用するのが経済的に有利である。分子状酸素は特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素を使用してもよい。操作性及び安全性のみならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。
酸素の使用量は、基質の種類に応じて選択でき、通常、基質1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。基質に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多く、特に空気や酸素などの分子状酸素を含有する雰囲気下で反応させるのが有利である。
【0103】
本発明の酸化方法は、通常、反応に不活性な有機溶媒中で行なわれる。有機溶媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機カルボン酸やオキシカルボン酸、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、t−ブタノール、t−アミルアルコールなどのアルコール類、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、これらの混合溶媒など挙げられる。なお、過剰量の基質を用いることにより、基質を反応溶媒として利用してもよい。溶媒としては、酢酸などの有機酸、アセトニトリル,ベンゾニトリルなどのニトリル類を用いる場合が多い。
【0104】
反応をプロトン酸の存在下で行なうと、酸化反応を円滑に行なうことができ、高い選択率および収率で目的化合物を得ることができる。このプロトン酸は、前記のように溶媒として用いてもよい。プロトン酸としては、有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機カルボン酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸などのオキシカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸など)、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)が含まれる。
【0105】
本発明の方法は、比較的温和な条件であっても酸化反応が円滑に進行するという特色がある。反応温度は、基質や触媒系の種類などに応じて適当に選択でき、例えば、0〜300℃、好ましくは30〜250℃、さらに好ましくは50〜200℃程度であり、通常、70〜150℃程度で反応する場合が多い。なお、前記のように、酸化触媒系の種類によっては、室温などの比較的低温でも酸化反応を円滑に進行させることができる。また、アダマンタンポリオールを製造する場合、例えば、温度40〜150℃、特に60〜120℃(例えば、70〜110℃)程度で反応させると、短時間内にアダマンタンポリオールが生成しやすい。
【0106】
反応は、常圧または加圧下で行なうことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1〜100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ましくは2〜70atm、さらに好ましくは5〜50atm程度である場合が多い。反応時間は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、30分〜48時間、好ましくは1〜36時間、さらに好ましくは2〜24時間程度の範囲から適当に選択できる。
反応は、分子状酸素の存在下又は分子状酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行なうことができる。反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により、容易に分離精製できる。
【0107】
【発明の効果】
本発明では、排ガス処理を特に必要とせず、酸素酸化又は空気酸化により、基質を効率よく酸化でき、基質に対応する酸化物を効率よく得ることができる。例えば、分子状酸素による酸化により、高い転化率および選択率で基質から対応する酸化物を生成できる。また、温和な条件下、酸素との接触により、基質(シクロアルカン類、シクロアルケン類、アルキル基置換芳香族性化合物)から、対応するカルボン酸類(アジピン酸などの長鎖ジカルボン酸類、芳香族カルボン酸類)やケトン類(シクロアルカノン類,シクロアルケノン類,芳香族ケトン類)を直接かつ効率よく高い転化率及び選択率で生成させることができる。
さらに、酸素により多環式炭化水素類の橋頭位又は接合位のメチリジン基の部位を効率よく酸化でき、縮合多環式炭化水素類、橋架け環式炭化水素類から対応するジオール以上のポリオールを高い転化率及び選択率で製造できる。さらには、温和な条件下、多環式炭化水素類の環の開裂およびジケトン体の副生を抑制しつつ、接合位の第3級炭素原子にヒドロキシル基を高い効率で導入でき、酸素酸化によりアダマンタンジオール、トリオール以上のアダマンタンポリオールを有効かつ高い収率で得ることができる。
【0108】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
参考例A1−1
シクロヘキサン1.68g(20ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.26g(1.6ミリモル)、マンガンアセチルアセトナートMn(AA)20.043g(0.12ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロヘキサンの転化率55%および選択率82%でアジピン酸が得られた(収率45%)。また、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0109】
参考例A2
マンガンアセチルアセトナートに代えて、酸化マンガンMnO2を用いる以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサンの転化率50%、収率42%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0110】
参考例A3
マンガンアセチルアセトナートに代えて、塩化マンガンMnCl2を用いる以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサンの転化率55%、収率43%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0111】
参考例A4
マンガンアセチルアセトナートに代えて、酢酸マンガンMn(OAc)2を用いる以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサンの転化率60%、収率50%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0112】
参考例A5
溶媒として酢酸に代えてベンゾニトリルを用いる以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサンの転化率45%,収率38%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0113】
参考例A6
酸素圧を10kg/cm2とする以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサンの転化率75%,収率54%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0114】
参考例A7
反応温度を120℃とする以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサンの転化率70%,収率42%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0115】
参考例A8
シクロヘキサンに代えてシクロへキサノンを用いる以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサノンの転化率100%,収率95%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0116】
参考例A9
シクロヘキサンに代えてシクロへキサノールを用い、撹拌時間を10時間とする以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、シクロヘキサノールの転化率95%,収率90%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0117】
参考例A10
シクロヘキサンに代えて、シクロヘキサノンとシクロへキサノールとを50:50(重量比)の割合で混合した混合物を用い、撹拌時間を8時間とする以外、参考例A1−1と同様にして反応させたところ、転化率95%,収率90%でアジピン酸が得られた。なお、KAオイル(シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノール)の生成は認められなかった。
【0118】
参考例A11
シクロヘキサン1.68g(20ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.26g(1.6ミリモル)、Mn(AA)20.043g(0.12ミリモル)、鉄アセチルアセトナートFe(AA)20.06g(0.24ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間撹拌した。シクロヘキサンの転化率72%で、アジピン酸が収率65%(シクロヘキサン基準の選択率91%)で得られた。また、グルタル酸が収率5%(シクロヘキサン基準の選択率7%)で得られた。
【0119】
参考例A12
シクロヘキサン1.68g(20ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.26g(1.6ミリモル)、Mn(AA)20.005g(0.02ミリモル)、Fe(AA)20.02g(0.08ミリモル)、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間撹拌した。シクロヘキサンの転化率56%で、アジピン酸が収率52%(シクロヘキサン基準の選択率92%)で得られた。また、グルタル酸が収率3%(シクロヘキサン基準の選択率5%)で得られた。
【0120】
参考例B1−1
シクロオクタン1.12g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)30.015g(0.06ミリモル)、ベンゾニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で20時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロオクタンの転化率94%で、シクロオクタノン(収率43%)、シクロオクタジオン(収率13%)、スベリン酸(収率22%)およびその他の生成物(収率16%)が得られた。
【0121】
参考例B1−2
コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)30.015g(0.06ミリモル)に代えて、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)20.015g(0.06ミリモル)を用いる以外、参考例B1−1と同様にして反応させたところ、シクロオクタンの転化率99%で、シクロオクタノン(収率41%)、シクロオクタジオン(収率9%)、スベリン酸(収率45%)およびその他の生成物(収率4%)が得られた。
【0122】
参考例B2
コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)30.015g(0.06ミリモル)に代えて、マンガン(II)アセチルアセトナートMn(AA)20.021g(0.06ミリモル)を用いる以外、参考例B1−1と同様にして反応させたところ、シクロオクタンの転化率94%で、シクロオクタノン(収率6%)、シクロオクタジオン(収率10%)、スベリン酸(収率74%)およびその他の生成物(収率4%)が得られた。
【0123】
参考例B3
シクロオクタン10ミリモルに代えてシクロノナン10ミリモルを用いる以外、参考例B1−1と同様にして反応させたところ、シクロノナンの転化率93%で、シクロノナノン(収率34%)、アゼライン酸(収率56%)およびその他の生成物(収率3%)が得られ、シクロノナジオンは検出されなかった。
【0124】
参考例B4
シクロオクタン10ミリモルに代えてシクロノナン10ミリモルを用いるとともに、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)30.015g(0.06ミリモル)に代えてコバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)20.015g(0.06ミリモル)を用いる以外、参考例B1−1と同様にして反応させたところ、シクロノナンの転化率99%で、シクロノナノン(収率29%)、アゼライン酸(収率66%)およびその他の生成物(収率4%)が得られ、シクロノナジオンは検出されなかった。
【0125】
参考例B5
シクロオクタン10ミリモルに代えてシクロノナン10ミリモルを用いるとともに、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)30.015g(0.06ミリモル)に代えてマンガン(II)アセチルアセトナートMn(AA)20.021g(0.06ミリモル)を用いる以外、参考例B1−1と同様にして反応させたところ、シクロノナンの転化率93%で、シクロノナノン(収率5%)、アゼライン酸(収率83%)およびその他の生成物(収率5%)が得られ、シクロノナジオンは検出されなかった。
【0126】
前記参考例B1〜5の結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
参考例B6
シクロオクタン1.12g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、120℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロオクタンの転化率95%でスベリン酸が得られた(収率70%)。
【0128】
参考例B7
シクロノナン1.26g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロノナンの転化率92%で、シクロノナノン(収率46%)、アゼライン酸(収率42%)が得られた。
【0129】
参考例B8
シクロデカン1.40g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、シクロデカンの転化率96%で、シクロデカノン(収率39%)、セバシン酸(収率48%)およびシクロデカンジオン(収率5%)が得られた。
【0130】
参考例B9
反応温度を90℃とする以外、参考例B8と同様にして反応させたところ、シクロデカンの転化率90%で、シクロデカノン(収率64%)、セバシン酸(収率14%)およびシクロデカンジオン(収率9%)が得られた。
【0131】
参考例B10
反応温度を120℃とする以外、参考例B8と同様にして反応させたところ、シクロデカンの転化率99%で、シクロデカノン(収率24%)、セバシン酸(収率71%)が得られた。
【0132】
参考例B11
Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)に代えてMn(AA)20.021g(0.06ミリモル)を用いる以外、参考例B8と同様にして反応させたところ、シクロデカンの転化率89%で、シクロデカノン(収率4%)、セバシン酸(収率82%)が得られた。
【0133】
参考例B12
シクロデカン1.40g(10ミリモル)に代えてメチルシクロデカン1.54g(10ミリモル)を用いる以外、参考例B8と同様にして反応させたところ、メチルシクロデカンの転化率85%で、9−オキソデカン酸(収率67%)、2−メチルシクロデカノン(収率15%)が得られた。
【0134】
参考例B13
シクロドデカン1.68g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、シクロドデカンの転化率96%で、シクロドデカノン(収率36%)、ドデカン二酸(収率51%)およびシクロドデカンジオン(収率7%)が得られた。
【0135】
参考例B14
Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)に代えてMn(AA)20.021g(0.06ミリモル)を用い、100℃で8時間撹拌する以外、参考例B13と同様にして反応させたところ、シクロドデカンの転化率92%で、シクロドデカノン(収率2%)、ドデカン二酸(収率84%)およびシクロドデカンジオン(収率6%)が得られた。
【0136】
参考例B15
85℃で6時間撹拌する以外、参考例B13と同様にして反応させたところ、シクロドデカンの転化率84%で、シクロドデカノン(収率69%)、ドデカン二酸(収率12%)およびシクロドデカンジオン(収率3%)が得られた。
【0137】
参考例B16
シクロテトラデカン1.96g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、シクロテトラデカンの転化率92%で、シクロテトラデカノン(収率32%)、ドデカンジカルボン酸(収率52%)およびシクロテトラデカンジオン(収率8%)が得られた。
【0138】
参考例C1
シクロヘキセン1.64g(20ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.26g(1.6ミリモル)、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)20.043g(0.12ミリモル)、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロヘキセンの転化率90%で、2−シクロヘキセン−1−オン(シクロヘキセン基準の選択率72%,収率65%)と、2−シクロヘキセン−1−オール(シクロヘキセン基準の選択率14%,収率13%)とが得られた。
【0139】
参考例C2
シクロヘキセンに代えてシクロペンテンを用いる以外、参考例C1と同様にして反応させたところ、シクロペンテンの転化率80%で、2−シクロペンテン−1−オン(シクロペンテン基準の選択率66%,収率53%)と2−シクロペンテン−1−オール(シクロペンテン基準の選択率21%,収率17%)が得られた。
【0140】
参考例C3
シクロオクテン1.10g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)20.021g(0.06ミリモル)、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロオクテンの転化率95%で、2−シクロオクテン−1−オン(シクロオクテン基準の選択率82%,収率78%)と、2−シクロオクテン−1−オール(シクロオクテン基準の選択率16%,収率15%)とが得られた。
【0141】
参考例C4
アセトニトリルに代えて酢酸を用い反応温度を90℃とする以外、参考例C1と同様にして反応させたところ、シクロヘキセンの転化率95%で、2−シクロヘキセン−1−オン(シクロヘキセン基準の選択率43%,収率41%)と、1−アセチルオキシ−2−シクロヘキセン(シクロヘキセン基準の選択率45%,収率43%)とが得られた。
【0142】
比較例C1
シクロヘキセン1.64g(20ミリモル)、アゾビスイソブチロニトリル(5モル%)、アセトニトリル25mlの混合液を、酸素雰囲気下、90℃で4時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロヘキセンの転化率34%で、2−シクロヘキセン−1−オン(シクロヘキセン基準の選択率12%,収率4%)と、2−シクロヘキセン−1−オール(シクロヘキセン基準の選択率3%,収率1%)とが得られた。
【0143】
参考例D1−1
アダマンタン1.36g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)30.015g(0.06ミリモル)、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、90℃で8時間撹拌した。アダマンタンの転化率65%で、1−アダマンタノール(アダマンタン基準の選択率71%,収率46%)、1,3−アダマンタンジオール(アダマンタン基準の選択率17%,収率11%)、2−アダマンタノン(アダマンタン基準の選択率9%,収率6%)が得られた。アルコール体の選択率は89%である。
【0144】
参考例D2−1〜D7−1
表2に示す条件で反応させる以外、参考例D1−1と同様にして反応させたところ、表2の結果が得られた。なお、表2中、「化合物1」は1−アダマンタノール、「化合物2」は1,3−アダマンタンジオール、「化合物3」は2−アダマンタノンを示す。また、表2中の「その他」の生成物は殆どがアダマンタンのケトアルコール体であった。
【0145】
参考例D1−2〜D6−2
コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)30.015gに代えてコバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)20.015gを用いる以外、参考例D2−1〜D7−1と同様な条件で反応させたところ、表2に示す結果を得た。
【0146】
参考例D7−2
酢酸に代えてベンゾニトリルを用いる以外、参考例D4−2と同様にして反応させたところ、表2に示す結果を得た。なお、表2中の参考例において、「その他」の生成物は殆どが1,3,5−アダマンタントリオールおよび1,3,5,7−アダマンタンテトラオールであり、ケトアルコール体は検出されなかった。
【0147】
【表2】
参考例D8
1,3−ジメチルアダマンタン1.64g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で6時間撹拌した。1,3−ジメチルアダマンタンの転化率99%で、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアダマンタン(収率39%)、1,3−ジヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン(収率58%)が得られた。アルコール体の選択率は97%である。
【0148】
参考例D9
反応温度を60℃に変更した以外は参考例D8と同様に反応させたところ、1,3−ジメチルアダマンタンの転化率74%で、1−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアダマンタン(収率49%)、1,3−ジヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン(収率22%)が得られた。アルコール体の選択率は96%である。
【0149】
参考例D10
1−アダマンタノール1.52g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で3時間撹拌した。1−アダマンタノールの転化率80%で、1,3−アダマンタンジオール(1−アダマンタノールに対する選択率66%,収率53%)、1,3,5−アダマンタントリオール(1−アダマンタノールに対する選択率33%,収率26%)が得られた。アルコール体の選択率は99%である。
【0150】
参考例D11
85℃で6時間撹拌する以外、参考例D10と同様にして反応させたところ、1−アダマンタノールの転化率99%で、1,3−アダマンタンジオール(1−アダマンタノールに対する選択率42%,収率42%)、1,3,5−アダマンタントリオール(1−アダマンタノールに対する選択率46%,収率46%)、1,3,5,7−アダマンタンテトラオール(1−アダマンタノールに対する選択率10%,収率10%)が得られた。アルコール体の選択率は99%である。
【0151】
参考例D12
95℃で6時間撹拌する以外、参考例D10と同様にして反応させたところ、1−アダマンタノールの転化率99%で、1,3−アダマンタンジオール(1−アダマンタノールに対する選択率22%,収率22%)、1,3,5−アダマンタントリオール(1−アダマンタノールに対する選択率41%,収率41%)、1,3,5,7−アダマンタンテトラオール(1−アダマンタノールに対する選択率36%,収率36%)が得られた。アルコール体の選択率は99%である。
【0152】
参考例D13
1,3−アダマンタンジオール1.68g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、95℃で6時間撹拌した。1,3−アダマンタンジオールの転化率99%で、1,3,5−アダマンタンジオール(1,3−アダマンタンジオールに対する選択率37%,収率37%)、1,3,5,7−アダマンタンテトラオール(1,3−アダマンタンジオールに対する選択率62%,収率62%)が得られた。アルコール体の選択率は99%である。
【0153】
参考例D14
アダマンタン0.68g(5ミリモル)、1−アダマンタノール0.76g(5ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、ベンゾニトリル25mLの混合物を、酸素雰囲気下、85℃で6時間撹拌した。アダマンタンの転化率91%で、1−アダマンタノール(収率33%)、1,3−アダマンタンジオール(収率41%)、1,3,5−アダマンタントリオール(収率21%)が得られた。アルコール体の選択率は99%である。
【0154】
参考例D15
ノルボルナン0.96g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で15時間撹拌した。ノルボルナンの転化率99%で、1−ヒドロキシノルボルナン(ノルボルナンに対する選択率44%,収率44%)、1,2−ヒドロキシノルボルナン(ノルボルナンに対する選択率55%,収率55%)が得られた。アルコール体の選択率は99%になる。
【0155】
参考例D16
トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン1.5g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で15時間撹拌した。トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンの転化率99%で、1−ヒドロキシトリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン(トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンに対する選択率24%,収率24%)、ジヒドロキシトリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン(トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカンに対する選択率75%,収率75%)が得られた。アルコール体の選択率は99%である。
【0156】
参考例D17
ピナン1.38g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.13g(0.8ミリモル)、Co(AA)20.015g(0.06ミリモル)、アセトニトリル25mLの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間撹拌した。ピナンの転化率90%で、2−ピナロール(ピナンに対する選択率91%,収率82%)が得られた。
【0157】
実施例D18
cis−デカリン1.38g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1.0ミリモル)、MoO3 0.007g(0.05ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、50℃で6時間撹拌した。cis−デカリンの転化率65%で、1−ヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率71%,収率46%)、1,6−ジヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率17%,収率11%)、メチレン部位が酸化されたヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率6%,収率4%)、1,6−デカンジオン(消費したcis−デカリンに対する選択率5%,収率3%)が得られた。アルコール体の選択率は94%である。
【0158】
実施例D19
cis−デカリン1.38g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1.0ミリモル)、MoO3 0.007g(0.05ミリモル)、ベンゾニトリル10mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌した。cis−デカリンの転化率85%で、1−ヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率72%,収率61%)、1,6−ジヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率21%,収率18%)、メチレン部位が酸化されたヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率2%,収率2%)、1,6−デカンジオン(cis−デカリンに対する選択率4%,収率3%)が得られた。アルコール体の選択率は95%である。
【0159】
実施例D20
cis−デカリン1.38g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1.0ミリモル)、MoO3 0.007g(0.05ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌した。cis−デカリンの転化率91%で、1−ヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率66%,収率60%)、1,6−ジヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率21%,収率19%)、メチレン部位が酸化されたヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率4%,収率4%)、1,6−デカンジオン(cis−デカリンに対する選択率9%,収率8%)が得られた。アルコール体の選択率は91%である。
【0160】
実施例D21
cis−デカリン1.38g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1.0ミリモル)、マンガンアセチルアセトナートMn(AA)3 0.017g(0.05ミリモル)、ベンゾニトリル10mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌した。cis−デカリンの転化率75%で、1−ヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率71%,収率55%)、1,6−ジヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率16%,収率12%)、メチレン部位が酸化されたヒドロキシ−cis−デカリン(cis−デカリンに対する選択率4%,収率3%)、1,6−デカンジオン(cis−デカリンに対する選択率5%,収率4%)が得られた。アルコール体の選択率は93%である。
【0161】
実施例D22
エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン1.36g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1.0ミリモル)、MoO3 0.007g(0.05ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、65℃で6時間撹拌した。エンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの転化率51%で、2−ヒドロキシエンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(基質に対する選択率45%,収率23%)、2,6−ジヒドロキシエンドトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(基質に対する選択率49%,収率25%)、ジシクロ[5.2.1]デカン−2,6−ジオン(基質に対する選択率4%,収率2%)が得られた。アルコール体の選択率は94%である。
【0162】
実施例D23
エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン1.36g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1.0ミリモル)、MoO3 0.007g(0.05ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、65℃で6時間撹拌した。エキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの転化率43%で、2−ヒドロキシエキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(基質に対する選択率72%,収率31%)、2,6−ジヒドロキシエキソトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(基質に対する選択率23%,収率10%)、ジシクロ[5.2.1]デカン−2,6−ジオン(基質に対する選択率5%,収率2%)が得られた。アルコール体の選択率は95%である。
【0163】
実施例D24
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン1.62g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1.0ミリモル)、MoO3 0.007g(0.05ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌した。テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンの転化率55%で、1−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン(基質に対する選択率67%,収率37%)、1,6−ジヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン(基質に対する選択率18%,収率10%)、トリシクロ[6.2.1.13,0]ドデカン−2,7−ジオン(基質に対する選択率13%,収率7%)が得られた。アルコール体の選択率は85%である。
【0164】
実施例D25
cis−パーヒドロインダン1.26g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1.0ミリモル)、MoO3 0.007g(0.05ミリモル)、酢酸10mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌した。cis−パーヒドロインダンの転化率87%で、1−ヒドロキシ−cis−パーヒドロインダン(基質に対する選択率62%,収率54%)、1,6−ジヒドロキシ−cis−パーヒドロインダン(基質に対する選択率31%,収率27%)、メチレン部位が酸化されたヒドロキシ−cis−パーヒドロインダン(基質に対する選択率3%,収率2%)、1,6−ノナンジオン(基質に対する選択率5%,収率4%)が得られた。アルコール体の選択率は95%である。
【0165】
実施例D26
反応温度140℃で6時間撹拌する以外、実施例D18と同様にして反応させたところ、cis−デカリンの転化率95%で、1−ヒドロキシ−cis−デカリン(基質に対する選択率18%,収率17%)、1,6−ジヒドロキシ−cis−デカリン(基質に対する選択率3%,収率3%)、1,6−デカンジオン(基質に対する選択率73%,収率69%)が得られた。アルコール体の選択率は21%である。
【0166】
参考例D27
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、銅(II)アセチルアセトナートCu(AA)20.05ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、アダマンタンの転化率53%で、1−アダマンタノール(収率50%)、2−アダマンタノン(収率4%)が得られた。アルコール体およびケトン体の選択率は97%である。
【0167】
参考例D28
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)40.05ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、アダマンタンの転化率43%で、1−アダマンタノール(収率28%)、1,3−アダマンタンジオール(収率6%)、2−アダマンタノン(収率3%)が得られた。
【0168】
参考例D29
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、ジルコニル酢酸塩ZrO(OAc)20.05ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、アダマンタンの転化率91%で、1−アダマンタノール(収率42%)、1,3−アダマンタンジオール(収率31%)、2−アダマンタノン(収率7%)が得られた。
【0169】
参考例D30
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、バナジルアセチルアセトナートVO(AA)20.05ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌したところ、アダマンタンの転化率98%で、1−アダマンタノール(収率25%)、1,3−アダマンタンジオール(収率34%)、アダマンタントリオール(収率6%)、アダマンタンテトラオール(収率6%)が得られた。
【0170】
参考例D31
バナジルアセチルアセトナートVO(AA)2に代えて、バナジウムアセチルアセトナートV(AA)30.05ミリモルを用いる以外、参考例D30と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率99%で、1−アダマンタノール(収率27%)、1,3−アダマンタンジオール(収率34%)、アダマンタントリオール(収率6%)、アダマンタンテトラオール(収率7%)が得られた。
【0171】
参考例D32
バナジルアセチルアセトナートVO(AA)2に代えて、酸化バナジウムV2O50.05ミリモルを用いる以外、参考例D30と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率99%で、1−アダマンタノール(収率24%)、1,3−アダマンタンジオール(収率35%)、アダマンタントリオール(収率6%)、アダマンタンテトラオール(収率8%)が得られた。
【0172】
参考例D33
バナジルアセチルアセトナートVO(AA)2に代えて、酸化バナジウムV2O30.05ミリモルを用いる以外、参考例D30と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率99%で、1−アダマンタノール(収率23%)、1,3−アダマンタンジオール(収率36%)、アダマンタントリオール(収率8%)、アダマンタンテトラオール(収率8%)が得られた。
【0173】
参考例D34
バナジルアセチルアセトナートVO(AA)2に代えて、塩化バナジルVOCl2を用いる以外、参考例D30と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率98%で、1−アダマンタノール(収率28%)、1,3−アダマンタンジオール(収率32%)、アダマンタントリオール(収率5%)、アダマンタンテトラオール(収率4%)が得られた。
【0174】
参考例D35
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド2ミリモル、バナジウムアセチルアセトナートV(AA)30.1ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、85℃で10時間撹拌したところ、アダマンタンの転化率99%で、1−アダマンタノール(収率8%)、1,3−アダマンタンジオール(収率22%)、アダマンタントリオール(収率33%)、アダマンタンテトラオール(収率20%)が得られた。
【0175】
実施例D36
バナジウムアセチルアセトナートV(AA)3に代えて、マンガンアセチルアセトナートMn(AA)30.1ミリモルを用いる以外、参考例D35と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率97%で、1−アダマンタノール(収率49%)、1,3−アダマンタンジオール(収率24%)、アダマンタントリオール(収率3%)、アダマンタンテトラオール(収率2%)が得られた。
【0176】
実施例D37
バナジウムアセチルアセトナートV(AA)3に代えて、モリブデン酸H2MoO40.1ミリモルを用いる以外、参考例D35と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率99%で、1−アダマンタノール(収率57%)、1,3−アダマンタンジオール(収率22%)、アダマンタントリオール(収率3%)、アダマンタンテトラオール(収率3%)が得られた。
【0177】
参考例D38
バナジウムアセチルアセトナートV(AA)3に代えて、銅(II)アセチルアセトナートCu(AA)20.1ミリモルを用いる以外、参考例D35と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率49%で、1−アダマンタノール(収率42%)、1,3−アダマンタンジオール(収率6%)が得られた。
【0178】
参考例D39
バナジウムアセチルアセトナートV(AA)3に代えて、亜鉛(II)アセチルアセトナートZn(AA)20.1ミリモルを用いる以外、参考例D35と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率40%で、1−アダマンタノール(収率30%)、1,3−アダマンタンジオール(収率7%)が得られた。
【0179】
参考例D40
バナジウムアセチルアセトナートV(AA)3に代えて、アルミニウム(III)アセチルアセトナートAl(AA)30.1ミリモルを用いる以外、参考例D35と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率15%で、1−アダマンタノール(収率10%)、1,3−アダマンタンジオール(収率2%)が得られた。
【0180】
実施例D41
バナジウムアセチルアセトナートV(AA)3に代えて、マグネシウム(II)アセチルアセトナートMg(AA)20.1ミリモルを用いる以外、参考例D35と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率22%で、1−アダマンタノール(収率13%)、1,3−アダマンタンジオール(収率2%)が得られた。
【0181】
参考例D42
バナジウムアセチルアセトナートV(AA)3に代えて、ヨウ化サマリウムSmI20.1ミリモルを用いる以外、参考例D35と同様に反応させたところ、アダマンタンの転化率34%で、1−アダマンタノール(収率22%)、1,3−アダマンタンジオール(収率4%)が得られた。
【0182】
実施例E1
トルエン0.921g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1ミリモル)、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.015g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、トルエンの転化率95%、安息香酸が収率95%で得られた(選択率100%)。
【0183】
実施例E2
100℃で4時間攪拌する以外、実施例E1と同様にして反応したところ、トルエンの転化率93%、安息香酸が収率92%で得られた(選択率99%)。
【0184】
実施例E3
p−キシレン1.06g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.32g(2ミリモル)、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)3 0.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で12時間攪拌したところ、p−キシレンの転化率99%で、テレフタル酸(収率71%)およびp−メチル安息香酸(収率24%)が得られた。
【0185】
実施例E4
100℃で6時間攪拌する以外、実施例E3と同様に反応したところ、p−キシレンの転化率99%で、テレフタル酸(収率9%)およびp−メチル安息香酸(収率76%)が得られた。
【0186】
実施例E5
p−キシレン1.06g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1ミリモル)、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で12時間攪拌したところ、p−キシレンの転化率99%で、テレフタル酸(収率70%)およびp−メチル安息香酸(収率27%)が得られた。
【0187】
実施例E6
100℃で6時間攪拌する以外、実施例E5と同様に反応したところ、p−キシレンの転化率99%で、テレフタル酸(収率57%)およびp−メチル安息香酸(収率42%)が得られた。
【0188】
実施例E7
o−キシレン1.06g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1ミリモル)、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、o−キシレンの転化率98%で、フタル酸(収率40%)、o−メチル安息香酸(収率46%)および無水フタル酸(収率10%)が得られた。
【0189】
実施例E8
o−キシレン1.06g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1ミリモル)、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)3 0.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、o−キシレンの転化率92%で、フタル酸(収率18%)、o−メチル安息香酸(収率71%)が得られた。
【0190】
実施例E9
4−t−ブチル−1−メチルベンゼン1.49g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1ミリモル)、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)3 0.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、4−t−ブチル−1−メチルベンゼンの転化率95%で、4−t−ブチル安息香酸(収率88%)が得られた。
【0191】
参考例E10
4−t−ブチル−1−メチルベンゼン1.49g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.03g(0.2ミリモル)、コバルト(III)アセチルアセトナートCo(AA)30.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で12時間攪拌したところ、4−t−ブチル−1−メチルベンゼンの転化率70%で、4−t−ブチル安息香酸(収率64%)が得られた。
【0192】
実施例E11
4−t−ブチル−1−メチルベンゼン1.49g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1ミリモル)、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、4−t−ブチル−1−メチルベンゼンの転化率99%で、4−t−ブチル安息香酸(収率94%)が得られた。
【0193】
実施例E12
4−メトキシ−1−メチルベンゼン1.23g(10ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.16g(1ミリモル)、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.018g(0.05ミリモル)、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌したところ、4−メトキシ−1−メチルベンゼンの転化率99%で、4−メトキシ安息香酸(収率93%)が得られた。
【0194】
実施例E13
4−メトキシ−1−メチルベンゼン10ミリモルに代えて、4−アセチルオキシ−1−メチルベンゼン10ミリモルを用いる以外、実施例E12と同様に反応させたところ、基質の転化率95%で、4−アセチルオキシ安息香酸(収率92%)が得られた。
【0195】
実施例E14
4−メトキシ−1−メチルベンゼン10ミリモルに代えて、p−クレゾール10ミリモルを用いるとともに、酢酸25mlに代えてベンゾニトリル25mlを用いる以外、実施例E12と同様に反応させたところ、基質の転化率約70%で、4−ヒドロキシ安息香酸(収率18%)と4−ヒドロキシベンズアルデヒド(収率37%)が得られた。
【0196】
実施例E15
4−メトキシ−1−メチルベンゼン10ミリモルに代えて、2−メチルフラン10ミリモルを用いる以外、実施例E12と同様に反応させたところ、基質の転化率92%で、フラン−2−カルボン酸(収率88%)が得られた。
【0197】
実施例E16
4−メトキシ−1−メチルベンゼン10ミリモルに代えて、2−メチルピラン10ミリモルを用いる以外、実施例E12と同様に反応させたところ、基質の転化率85%で、ピラン−2−カルボン酸(収率83%)が得られた。
【0198】
実施例E17
トルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、クロム(III)アセチルアセトナートCr(AA)3 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で6時間攪拌したところ、トルエンの転化率42%で安息香酸(収率37%)が得られた。
【0199】
実施例E18
トルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、ニッケル(II)アセチルアセトナートNi(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で6時間攪拌したところ、トルエンの転化率37%で安息香酸(収率32%)が得られた。
【0200】
参考例E19
トルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、バナジウム(III)アセチルアセトナートV(AA)30.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で8時間攪拌したところ、トルエンの転化率80%で安息香酸(収率68%)が得られた。
【0201】
参考例E20
エチルベンゼン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、バナジウム(III)アセチルアセトナートV(AA)30.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で8時間攪拌したところ、エチルベンゼンの転化率84%でアセトフェノン(収率76%)が得られた。
【0202】
参考例E21
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、酢酸銅(Cu(OAc)2)0.05ミリモル、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で3時間攪拌したところ、デュレンの転化率95%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率59%)が得られた。
【0203】
実施例E22
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、マンガン(II)アセチルアセトナートMn(AA)2 0.05ミリモル、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で3時間攪拌したところ、デュレンの転化率94%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率57%)が得られた。
【0204】
実施例E23
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、60℃で3時間攪拌したところ、デュレンの転化率約100%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率87%)が得られた。
【0205】
実施例E24
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約20℃)℃で12時間攪拌したところ、デュレンの転化率約100%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率87%)が得られた。
【0206】
実施例E25
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、マンガン(II)アセチルアセトナートMn(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で6時間攪拌したところ、デュレンの転化率98%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率36%)が得られた。
【0207】
実施例E26
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、鉄(III)アセチルアセトナートFe(AA)3 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で3時間攪拌したところ、デュレンの転化率86%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率44%)が得られた。
【0208】
実施例E27
メシチレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、混合溶媒(アセトニトリル/酢酸=4/1)25mlの混合物を、酸素雰囲気下、70℃で3時間攪拌したところ、メシチレンの転化率86%で3,5−ジメチル安息香酸(収率63%)が得られた。
【0209】
参考例E28
3−エチルトルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、酢酸銅(Cu(OAc)2)0.05ミリモル、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間攪拌したところ、3−エチルトルエンの転化率90%でm−メチルアセトフェノン(収率57%)、3−エチル安息香酸(収率7%)が得られた。
【0210】
実施例E29
3−エチルトルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間攪拌したところ、3−エチルトルエンの転化率93%でm−メチルアセトフェノン(収率55%)、3−エチル安息香酸(収率6%)が得られた。
【0211】
実施例E30
4−エチルトルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間攪拌したところ、4−エチルトルエンの転化率99%でp−メチルアセトフェノン(収率66%)、4−エチル安息香酸(収率10%)が得られた。
【0212】
実施例E31
4−エチルトルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、80℃で6時間攪拌したところ、4−エチルトルエンの転化率96%でp−メチルアセトフェノン(収率52%)、4−エチル安息香酸(収率6%)が得られた。
【0213】
実施例E32
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約20℃)で12時間攪拌したところ、デュレンの転化率100%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率93%)が得られた。
【0214】
実施例E33
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、混合溶媒(酢酸/アセトニトリル=1/20)25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約20℃)で12時間攪拌したところ、デュレンの転化率100%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率94%)が得られた。
【0215】
実施例E34
デュレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約20℃)で3時間攪拌したところ、デュレンの転化率98%で2,4,5−トリメチル安息香酸(収率93%)、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド(収率5%)が得られた。
【0216】
実施例E35
メシチレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約15℃)で18時間攪拌したところ、メシチレンの転化率60%で3,5−ジメチル安息香酸(収率20%)、3,5−ジメチルベンズアルデヒド(収率30%)が得られた。
【0217】
実施例E36
メシチレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約15℃)で6時間攪拌したところ、メシチレンの転化率61%で3,5−ジメチル安息香酸(収率23%)、3,5−ジメチルベンズアルデヒド(収率25%)が得られた。
【0218】
実施例E37
トルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約15℃)で24時間攪拌したところ、トルエンの転化率71%で安息香酸(収率66%)、ベンズアルデヒド(収率3%)が得られた。
【0219】
実施例E38
トルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、酢酸コバルト(Co(OAc)2 ) 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約15℃)で24時間攪拌したところ、トルエンの転化率72%で安息香酸(収率60%)、ベンズアルデヒド(収率3%)が得られた。
【0220】
実施例E39
p−t−ブチルトルエン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルト(II)アセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、室温(約15℃)で18時間攪拌したところ、p−t−ブチルトルエンの転化率94%でp−t−ブチル安息香酸(収率71%)、p−t−ブチルベンズアルデヒド(収率2%)が得られた。
【0221】
実施例F1
フルオレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、マンガンアセチルアセトナートMn(AA)3 0.05ミリモル、ベンゾニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、フルオレンの転化率32%でフルオレノンが得られた(収率28%)。
【0222】
実施例F2
フルオレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、マンガンアセチルアセトナートMn(AA)2 0.05ミリモル、ベンゾニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、フルオレンの転化率38%でフルオレノンが得られた(収率30%)。
【0223】
参考例F3
フルオレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、バナジウムアセチルアセトナートV(AA)30.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、90℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、フルオレンの転化率54%でフルオレノンが得られた(収率48%)。
【0224】
実施例F4
フルオレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、90℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、フルオレンの転化率68%でフルオレノン(収率44%)、フルオレノール(収率3%)が得られた。
【0225】
参考例G1
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)40.05ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で6時間撹拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率74%で、1−アダマンタノール(収率40%)、1,3−アダマンタンジオール(収率8%)、2−アダマンタノン(収率6%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの100%が残存していた。
【0226】
参考例G2
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)4に代えて、チタニウム(II)アセチルアセトナートTi(AA)20.05ミリモルを用いる以外、参考例G1と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率55%で、1−アダマンタノール(収率33%)、1,3−アダマンタンジオール(収率6%)、2−アダマンタノン(収率6%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの100%が残存していた。
【0227】
実施例G3
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)4に代えて、クロム(III)アセチルアセトナートCr(AA)30.05ミリモルを用いる以外、参考例G1と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率57%で、1−アダマンタノール(収率33%)、1,3−アダマンタンジオール(収率2%)、2−アダマンタノン(収率6%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの100%が残存していた。
【0228】
実施例G4
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)4に代えて、マンガン(III)アセチルアセトナートMn(AA)30.05ミリモルを用いる以外、参考例G1と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率68%で、1−アダマンタノール(収率37%)、1,3−アダマンタンジオール(収率7%)、2−アダマンタノン(収率5%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの85%が残存していた。
【0229】
実施例G5
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)4に代えて、マンガン(II)アセチルアセトナートMn(AA)20.05ミリモルを用いる以外、参考例G1と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率67%で、1−アダマンタノール(収率39%)、1,3−アダマンタンジオール(収率6%)、2−アダマンタノン(収率5%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの91%が残存していた。
【0230】
実施例G6
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)4に代えて、モリブデン酸H2MoO40.05ミリモルを用いる以外、参考例G1と同様にして反応させたところ、アダマンタンの転化率79%で、1−アダマンタノール(収率49%)、1,3−アダマンタンジオール(収率15%)、2−アダマンタノン(収率7%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの89%が残存していた。
【0231】
参考例G7
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、クロム(IV)アセチルアセトナートCr(AA)40.1ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、85℃で6時間撹拌した。アダマンタンの転化率90%で、1−アダマンタノール(収率38%)、1,3−アダマンタンジオール(収率24%)、1,3,5−アダマンタントリオール(収率4%)、2−アダマンタノン(収率8%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの97%が残存していた。
【0232】
参考例G8
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(AA)40.1ミリモル、酢酸25mLの混合物を、酸素雰囲気下、85℃で6時間撹拌した。アダマンタンの転化率80%で、1−アダマンタノール(収率34%)、1,3−アダマンタンジオール(収率26%)、1,3,5−アダマンタントリオール(収率3%)、2−アダマンタノン(収率6%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの88%が残存していた。
【0233】
実施例G9
シクロヘキサン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、マンガンアセチルアセトナートMn(AA)3 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、110℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロヘキサンの転化率85%でアジピン酸(収率70%)、シクロヘキサノン(収率5%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの77%が残存していた。
【0234】
参考例G10
フルオレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、ジルコニウムアセチルアセトナートZr(AA)40.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、90℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、フルオレンの転化率68%でフルオレノン(収率42%)、フルオレノール(収率4%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの67%が残存していた。
【0235】
実施例G11
シクロヘキサン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、110℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、シクロヘキサンの転化率76%でシクロヘキサノン(収率36%)、シクロヘキサノール(収率1%)、アジピン酸(収率29%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの48%が残存していた。
【0236】
実施例G12
フルオレン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)2 0.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、90℃で6時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、フルオレンの転化率59%でフルオレノン(収率40%)、フルオレノール(収率4%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの48%が残存していた。
【0237】
参考例G13
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、バナジウムアセチルアセトナートV(AA)30.05ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で3時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率94%でアダマンタノール(収率40%)、アダマンタンジオール(収率25%)、アダマンタントリオール(収率2%)、アダマンタノン(収率7%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの49%が残存していた。
【0238】
参考例G14
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、バナジウムアセチルアセトナートV(AA)30.03ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で3時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率89%でアダマンタノール(収率42%)、アダマンタンジオール(収率24%)、アダマンタントリオール(収率2%)、アダマンタノン(収率7%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの54%が残存していた。
【0239】
実施例G15
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、リンバナドモリブデン酸PV5 Mo7 O40・30H2 O 0.03ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で3時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率57%でアダマンタノール(収率37%)、アダマンタンジオール(収率7%)、アダマンタノン(収率6%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの61%が残存していた。
【0240】
実施例G16
アダマンタン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド 1ミリモル、リンバナドタングステン酸PV4 W8 O40・30H2 O 0.03ミリモル、酢酸25mlの混合物を、酸素雰囲気下、75℃で3時間攪拌した。反応液中の生成物を液体クロマトグラフィー分析により調べたところ、アダマンタンの転化率49%でアダマンタノール(収率36%)、アダマンタンジオール(収率7%)、アダマンタノン(収率5%)が生成し、N−ヒドロキシフタルイミドの59%が残存していた。
【0241】
参考例H1
ブタジエン1.08g(20ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.26g(1.6ミリモル)、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)20.03g(0.12ミリモル)、アセトニトリル25mlの混合物を、酸素雰囲気下、60℃で6時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、ブタジエンの転化率35%で、2−ブテン−1,4−ジオール(ブタジエン基準の選択率63%、収率22%)と、1−ブテン−3,4−ジオール(ブタジエン基準の選択率23%、収率8%)とが得られた。アルコール体の選択率は86%である。
【0242】
参考例H2
アクリロニトリル1.06g(20ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.26g(1.6ミリモル)、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)20.03g(0.12ミリモル)、メタノール25mlの混合物を、酸素雰囲気下、50℃で3時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、アクリロニトリルの転化率99%で、1,1−ジメトキシプロピオニトリルが収率99%で得られた。
【0243】
参考例H3
アクリル酸メチル1.72g(20ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド0.26g(1.6ミリモル)、コバルトアセチルアセトナートCo(AA)20.03g(0.12ミリモル)、メタノール25mlの混合物を、酸素雰囲気下、50℃で3時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、アクリル酸メチルの転化率99%で、1,1−ジメトキシプロピオン酸メチルが収率99%で得られた。
Claims (30)
- 下記式(1)
- 下記式(1)
- 式(1)で表されるイミド化合物において、R1およびR2が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の5〜12員環を形成する請求項1又は2記載の酸化方法。
- 式(1)で表されるイミド化合物において、R1およびR2が互いに結合して、置換基を有していてもよいシクロアルカン環、置換基を有していてもよいシクロアルケン環、置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族環を形成する請求項1又は2記載の酸化方法。
- 式(1)で表されるイミド化合物が、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミドおよびN,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドからなる群から選択された少なくとも一種の化合物である請求項1又は2記載の酸化方法。
- 助触媒が、酸化物、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、錯体およびイソポリ酸又はその塩から選ばれた少なくとも一種である請求項1又は2記載の酸化方法。
- 錯体が、アセチルアセトナト錯体、シアノ錯体、カルボニル錯体、シクロペンタジエニル錯体、ニトロシル化合物、チオシアナト錯体又はアセチル錯体である請求項7記載の酸化方法。
- 助触媒が、Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,およびNiからなる群から選択された元素を含む請求項1記載の酸化方法。
- 助触媒がMg元素を含む請求項2記載の酸化方法。
- 式(1)で表されるイミド化合物と、周期表7A族元素を含む化合物と、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群から選択された元素を含む化合物とで構成されている請求項1記載の酸化方法。
- 式(1)で表されるイミド化合物と、マンガン化合物と、鉄化合物とで構成されている請求項11記載の酸化方法。
- 鉄、コバルトおよびニッケルからなる群から選択された元素を含む化合物の割合が、周期表7A族元素を含む化合物1モルに対して0.1〜20モルである請求項11記載の酸化方法。
- 多環式炭化水素類が、橋頭位に少なくとも1つのメチリジン基を有する架橋環式炭化水素類又はテルペン類、隣接する環の接合位に少なくとも1つのメチリジン基を有する縮合多環式炭化水素類である請求項1又は2記載の酸化方法。
- 多環式炭化水素類が、複数のメチリジン基を有する2環式ないし4環式炭化水素類である請求項1又は2記載の酸化方法。
- アダマンタンモノオール,アダマンタンジオールおよびアダマンタントリオールのうち少くとも1つの成分を含むアダマンタン成分と酸素とを接触させ、さらに高度にヒドロキシル化されたアダマンタンポリオールを生成させる請求項1又は2記載の酸化方法。
- アダマンタンモノオール,アダマンタンジオール又はアダマンタントリオールの含有量が、アダマンタン成分全体に対して5モル%以上である請求項16記載の酸化方法。
- シクロアルカン類が、3〜30員のシクロアルカン環を有する化合物である請求項1又は2記載の酸化方法。
- 酸化触媒系の存在下、3〜30員のシクロアルカン環を有する化合物を酸素により酸化し、対応するジカルボン酸又はシクロアルカノンを生成させる請求項1又は2記載の酸化方法。
- 多環式炭化水素類が、アダマンタンおよびその誘導体である請求項1又は2記載の酸化方法。
- 酸化触媒系の存在下、多環式炭化水素類を分子状酸素により酸化し、ヒドロキシル基が導入された化合物を生成させる請求項1又は2記載の酸化方法。
- 酸化触媒系の存在下、アダマンタンおよびその誘導体から選択されたアダマンタン成分と酸素とを接触させ、複数の橋頭位にヒドロキシル基が導入されたアダマンタンポリオールを生成させる請求項1又は2記載の酸化方法。
- 化合物(d)が、少なくとも1つのアルキル基が置換した芳香族性化合物である請求項1又は2記載の酸化方法。
- 化合物(d)が、芳香族性複素環、炭素数6〜14の芳香族炭化水素環を有する請求項1又は2記載の酸化方法。
- 化合物(d)が、少くとも1つのメチル基を有する芳香族炭化水素類である請求項1又は2記載の酸化方法。
- 酸化触媒系の存在下、少くとも1つのメチル基を有する芳香族性化合物と酸素とを接触させ、カルボキシル基を有する芳香族性化合物を生成させる請求項1又は2記載の酸化方法。
- 式(1)で表されるイミド化合物の使用量が、基質1モルに対して0.001〜1モルである請求項1又は2記載の酸化方法。
- 助触媒の使用量が、基質1モルに対して0.0001〜0.7モルである請求項1又は2記載の酸化方法。
- 式(1)
- 式(1)
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