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JP3906992B2 - 新規パンの製造方法 - Google Patents

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JP3906992B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規パンの製造に関するものであり、更に詳細には、新規パン酵母を用いて、従来未知の新しいタイプのパン、特に従来にない風香味を有するパンを効率的に製造する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、製パン業界では、工程の合理化、効率化のため、また、食嗜好の多様化等消費者サイドからの各種のニーズにも対応するため、各種の要望が数多くなされている。例えば、消費者からの強い要望である焼き立てパンの効率的提供のために、冷凍パン生地を利用することが行われるようになり(そのために、冷凍耐性パン酵母という新しいタイプの酵母が開発され:例えば、特許文献1参照)、また、ひとつの酵母で食パンにも菓子パンにも使用できるような高糖生地・低糖生地兼用の新規パン酵母も新たに育種、開発されて、作業効率を高めるだけでなく、嗜好性の面でも高い評価を受けるパンの製造方法も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−234058号公報
【0004】
【特許文献2】
特開平9−149785号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記した製パン業界及び消費者サイドからの要望の内、食嗜好の多様化から、従来にない新しいタイプのパンに対する消費者の要望が強いことに着目し、特に風味、香りの面において従来にない全く新しいタイプのパンを効率的に製造するという技術課題を設定した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記技術課題を解決する目的でなされたものであって、本発明者らは、各方面から検討の結果、製パン工程ではなくパン製造用酵母に着目し、新規酵母を育種することによって目的を達成することとした。
【0007】
パン製造用酵母(以後、パン酵母とする)の重要な発酵能力は、小麦粉を主成分とした生地中において、速やかに炭酸ガスを発生させ、生地を大きく膨張させることである。その一方、清酒、ワイン、ビールなどの酒類製造用の醸造酵母では、原料の違いはあるものの、糖分からアルコールを生成することが最も重要な発酵性能であり、同じ酵母Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)ではあるが、求められる基本的な発酵性質が異なる。つまり、醸造酵母は、アルコール収率に重点が置かれ、選抜・育種されてきた背景から、通常、パン酵母に求められる生地中での炭酸ガス発生能は低下していることが多く、それゆえ、製パンには適応しがたく、不向きとされてきた。
【0008】
また、既述したように、昨今の食嗜好の多様化から、主食の一つであるパンにも多様な特徴が求められる様になっている。その中の一つの話題に香気がある。より独特な特徴のある香りを有するパン、逆に香りの少ないパンなどが求められ、味や食感といったこれまでの観点とは異なる嗜好性分野が生じてきている。
【0009】
このような業界の現状において、本発明者らは、製パンのみにとらわれることなく広範囲に検討を行った結果、酒類などの醸造発酵性飲料では、古くからその香気を楽しみ、差別化する環境があったことに注目した。つまり、醸造発酵性飲料を製造するために用いられる酵母(要するに、醸造酵母であるが)は、パン酵母にない、あるいはより発達した香気成分生成機構を有していることに着目したのである。醸造酵母を製パンへ応用することで、パンに新たな香りの特徴を提案できる可能性があるとの着想を得、本発明者らは、醸造酵母の中から、製パン性能をも兼ね備える菌株を選抜、あるいはそれを基本に育種・改良することで、パンの香り嗜好の多様化に対応できるとの着想を得た。
【0010】
また、醸造酵母の中で、とりわけビール製造用酵母(以後、ビール酵母とする)は、菌体中に、ビタミン、ミネラル、蛋白質などを豊富に含んでいることから、乾燥菌体は、栄養補助食品に利用され、また、菌体に含まれる蛋白質や核酸などを分解・抽出した酵母エキスは、調味料素材や微生物栄養源として利用されており、近年、ビール酵母の健康指向性は高まっており、消費者の関心の的である。ビール酵母を使用することは、パン香気に特徴を付与するのと同時に、より話題性を高め、パン商品の付加価値を高めることでもある。そこで、本発明者らは、醸造酵母の中でも、ビール酵母を素材に製パン性能の高い菌株を選抜することとした。
【0011】
ビール酵母は、ビールの製造工程から説明すると、大きく2つに大別される。上面発酵酵母と下面発酵酵母である。上面発酵酵母は、Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)に属し、発酵中に発生する炭酸ガスとともにビール仕込みタンクの液面に浮かんできて、泡とともに厚い褐色のクリーム状の層を形成する。下面発酵酵母は、Saccharomyces carlsbergensis(サッカロマイセス・カールスベルゲンシス)に属し(現在、微生物学の分類上では、S.cerevisiaeと同属種に区分させる)、液面には浮かばず、発酵末期に沈殿する性質を有する。
【0012】
これら上面及び下面発酵酵母の内、炭酸ガスを多く生成する、つまりパン酵母に求められる条件を潜在的に持ち合わせている酵母は上面発酵酵母であることは容易に推察できるところである。しかしながら、本発明者らは、発想を転換して、解決すべき技術課題が従来にない新しいタイプの製パンである点に鑑み、あえて予測とは逆に、パン酵母に不向きとされる下面発酵酵母に着目した。
【0013】
そして、本発明者らは、非常に多数の下面発酵酵母について広範なスクリーニングを行ったが、目的とする酵母を得るには至らなかった。そこで、目的とする酵母を得るには、野生株の単なるスクリーニングでは目的が達成されないとの観点にたち、目的とする酵母を積極的に育種する必要を認めた。しかしながら、1回の操作では目的とする酵母を分離することはできなかった。
【0014】
そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、ランダムではなくシステマティックに段階をおって育種する必要性を認めた。そして、本発明の目的に適合したパン酵母を育種するには、第1段階として、ビール酵母保存菌株の内から、糖蜜を基本成分とする培地で生育し得る菌株をスクリーニングして第1次選抜を行った後、第2段階として、炭酸ガス発生量の多い菌株をスクリーニングして、第2次選抜を行った。
【0015】
しかしながら、第2次選抜で得た菌株も、製パン可能な最低限の炭酸ガス発生量しか示さず、直ちに実用に供し得るものではなかったので、鋭意検討の結果、第3段階として、突然変異処理することとした。その結果、例えば変異誘発剤としてエチルメタンスルホネート(EMS)を使用して得た変異株は、炭酸ガス発生量が高く、充分製パンに使用できることが確認された。
【0016】
そこで、この変異株を用いて製パンしたところ、ガス発生量が元株に比して大幅に改善されただけでなく、一般用パンイーストで製造したパンと比較しても遜色がないばかりか、香りが全く異なることが官能検査からもまた香気成分の機器分析からも確認され、全く新しいパンの製造にはじめて成功するに至った。
【0017】
このように、本発明に係るパンは従来未知の全く新しいタイプのものであって、特に風香味に特徴を有している。そして、このような新規なパンを製造するのに成功した源であるビール酵母由来のパン酵母も新規であって、その内の1株をサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ni−NB0301と命名し、この新規菌株を特許生物寄託センターにFERM P−19190として寄託した。
【0018】
本菌株は、ビール酵母(特に、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス:Saccharomyces carlsbergensis)を親株とし、糖蜜を基本成分とした培地を用いた培養が可能であり;後記するように抗生物質耐性を有し;生地発酵性が高く(つまり、製パン性にすぐれ);従来にない風香味を有する新しいタイプのパンを製造できる;といった特徴を有するものであって、このような菌株は、従来知られておらず、新規である。また、このような菌株を含有する生地、それを用いて製造したパンも、新規である。
【0019】
以下、本発明について詳述する。
【0020】
「第1段階目」として、ビール酵母中より、通常のパン酵母を培養する条件で容易に培養可能な菌株を選抜した。現在、工業レベルにおけるパン酵母の培養は、菌体収量が発酵性糖分に対して最大となる様に設計されており、おおよそその収率は50%である。つまり、1kgの糖から、500gの菌体が生産できる。ところが、様々な負の要因が関与し、その歩留まりが低下することがある。その一つとして、廃糖蜜(以後、糖蜜とする)の性質があげられる。酵母は、ブドウ糖(グルコース)の様な構造の簡単な糖は速やかに吸収し、資化するが、複雑な糖は、その代謝が遅れる。つまり単位時間当たりの菌体生育が低下する。発酵性糖分を供給するために通常は、糖蜜が用いられる。つまり、糖蜜中の糖分が酵母生育に与える影響、いわゆる「相性」が重要であり、菌株を選択する上で、糖蜜を糖源に培養が十分に可能であることが、最重要ポイントのひとつである。
【0021】
発明者らの研究室保存のビール酵母菌株群を、糖蜜を基本成分とする培地で生育させた。保存菌株は、American Type Culture Collection(ATCC)より分譲いただき、保存している醸造用に選別された野生株であり、Saccharomyces carlsbergensis(サッカロマイセス・カールスベルゲンシス)である。供試菌株数は、29株であり、試験番号およびATCC番号は、下記の通りである。
【0022】
No. 1−ATCC 2345 No. 2−ATCC 2700 No. 3−ATCC 9080
No. 4−ATCC 9373 No. 5−ATCC 10596 No. 6−ATCC 24556
No. 7−ATCC 24904 No. 8−ATCC 24966 No. 9−ATCC 26251
No.10−ATCC 26602 No.11−ATCC 26789 No.12−ATCC 28518
No.13−ATCC 28519 No.14−ATCC 28520 No.15−ATCC 28521
No.16−ATCC 28522 No.17−ATCC 28523 No.18−ATCC 28524
No.19−ATCC 28827 No.20−ATCC 36265 No.21−ATCC 36266
No.22−ATCC 36267 No.23−ATCC 42367 No.24−ATCC 44966
No.25−ATCC 46787 No.26−ATCC 46991 No.27−ATCC 60728
No.28−ATCC 60729 No.29−ATCC 60730
【0023】
なお、No.8菌株(ATCC 24966)は、ビール醸造用酵母であって下記文献にも記載されており、別途入手したものである。B.Hess(Saccharomyces carlsbergensis)。ビール醸造用酵母、ピルビン酸キナーゼの生産(Hoppe−Seylers Z.Physiol.Chem.352:139−150、1970;ibid.,353:435−440、1972)。
【0024】
YPD保存用寒天スラント上に生育した上記ビール酵母群を、それぞれ一白金耳量、無菌的に、大型試験管で5ml容に調製したYPD液体培地に接種した。これを30℃、一昼夜、振とう培養をした。YPD培地の組成は、20g/Lポリペプトン、10g/L酵母エキス、20g/Lグルコース、pH5.2とした。得られた培養液を、500ml容坂口振とうフラスコで120ml容に調製した糖蜜基本培地に全量を接種し、30℃、48時間、振とう培養をした。糖蜜基本培地の組成は、1.9g/L硫酸アンモニウム、1.3g/L尿素、0.5g/Lリン酸二水素カリウム、0.5g/L硫酸マグネシウム七水和物、発酵性糖分25g/L相当糖蜜、pH5.2とした。得られた培養液中から酵母菌体を回収するため、遠心分離した。分離菌体を無菌水にて2回洗浄し、再度、無菌水に懸濁した。この溶液の酵母乾物量を測定し、単位発酵性糖分当たりの酵母収率を算出した。この酵母溶液は、使用まで暗所、冷蔵保存した。
【0025】
供試ビール酵母29株中、糖蜜基本培地での単位発酵性糖分当たりの酵母収率が40%以上であった菌株、つまり、糖蜜を糖源に容易に培養が可能であったと考えられた菌株は、下記18株であり、1次選抜株とした。
【0026】
No. 3−ATCC 9080 No. 4−ATCC 9373 No. 5−ATCC 10596
No. 6−ATCC 24556 No. 8−ATCC 24966 No. 9−ATCC 26251
No.10−ATCC 26602 No.11−ATCC 26789 No.13−ATCC 28519
No.15−ATCC 28521 No.16−ATCC 28522 No.17−ATCC 28523
No.18−ATCC 28524 No.22−ATCC 36267 No.23−ATCC 42367
No.26−ATCC 46991 No.27−ATCC 60728 No.28−ATCC 60729
【0027】
「第2段階目」として、調製した酵母溶液を用い、パン生地を作製し、発酵させ、発酵段階で発生する炭酸ガス量を計測した。つまり、日本イースト工業会法の手法に従い、小麦粉100g仕込みの中種配合で、無糖生地を調製し、ファーモグラフにて、炭酸ガスの発生量を計測した。調製生地40gを計測瓶に詰め、5分毎に120分間の発生ガス量を調べ、90分後のトータルガス発生量を比較した。その結果を、図1に示した。一般用パンイースト(日本甜菜製糖株式会杜製)のガス発生量を対照区とした時、1次選抜のビール酵母は、全て100%を下回り、大部分が製パンには、不十分と考えられた。しかし、No.8−ATCC 24966株は、80%を越えており、製パン可能な最低限のレベルを確保していたことから、この株を2次選抜株とした。
【0028】
ところが、2次選抜株ATCC 24966株の生地中における炭酸ガス発生量は、先にも記述した通り、製パン可能な最低限のレベルであり、通常パン酵母と比較して、生地膨張力が弱い実体にあると考察された。そこで、「第3段階目」として、2次選抜株ATCC 24966株を素材とし、これを適当な化学薬品で直接処理し、人工突然変異を誘発し、元株より生地発酵性能が改善された菌株を取得することを行った。
【0029】
人工突然変異を利用し、菌株の生産性を向上させたり、これまでにはない形質を新たに付与することは、産業上、頻繁に行われており、成功例が多い。その中でも菌の染色体DNAを直接アタックし、変異させる薬剤が中心に使用されている。本発明では、酵母で最も使用頻度の高いエチルメタンサルホネート(EMS)を用いた。EMSの様なアルキル化剤使用では、DNA中のグアニンの7位をアルキル化し、4級アンモニウム窒素を生じさせ、デオキシリボシド結合が不安定になり切断されやすくなる。すなわち、脱グアニンを起こし、修復機構で修復されても、異なった塩基が入ることが可能であり、その結果、変異が導入されると考えられている。一度導入された変異が復帰する可能性が低いのが、本法の特徴である。
【0030】
なお、突然変異処理としては、上記のほか、γ線、紫外線、温度差等の物理的処理、および、エチジウムブロマイド、ナイトロジェンマスタード、ジエポキシブタン、コルヒチン、パーオキサイド、プリン誘導体、N−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン等変異誘導剤処理といった常法が適宜利用できる。
【0031】
また、本技術には、EMS処理等の突然変異処理した菌株から効率良く目的(生地発酵性能が向上した)の菌株を選抜する操作が必要である。これには菌体を生育させる培地中に、適当な抗真菌剤を混合し、この培地中に生育可能となった菌株を選抜することで解決できると考えた。これは、適度な抗生物質抵抗性を獲得した菌体は、基本的な生育、糖代謝、発酵性などの能力が向上することが多い点に着目したものであり、抗真菌剤としては、各種使用可能であり、例えばクロトリマゾールが非限定的に例示される。
【0032】
つまり、YPD保存用寒天スラント上のATCC 24966株を、一白金耳量、無菌的に、大型試験管で5ml容に調製したYPD液体培地に接種した。これを30℃、一昼夜、振とう培養をした。菌体を回収するため、遠心分離を行った。その後、1.0×10の8乗細胞個/mlの濃度となるように、SD培地に再懸濁した。ここに、終濃度が2%となるように、EMSを加えた。SD培地の組成は、20g/Lグルコース、6.7g/L酵母ニトロゲンベース(アミノ酸フリー)とした。このEMS反応液を30℃、30分間保温した。先に、この処理によって致死率が50%程度になることを確認している。
【0033】
反応後、遠心分離によって菌体を回収し、5%チオ硫酸ナトリウム溶液で1回、無菌水で2回洗浄した。この菌体を無菌水に再懸濁し、適当量に希釈し、終濃度で20μg/mlとなるように、クロトリマゾールを添加したSD培地上に塗抹した。塗抹培地を、30℃、2〜3日間、静置培養した。この静置培養の際、プレート上に先に出現し、比較的大きく形成したコロニーを陽性コロニーとして選抜した。1.0×10の11乗細胞個を変異処理して、15株の陽性コロニーを取得した。菌株番号を下記の通りとした。
【0034】
No. 1−NiNB03−1 No. 2−NiNB03−2 No. 3−NiNB03−3
No. 4−NiNB03−4 No. 5−NiNB03−5 No. 6−NiNB03−6
No. 7−NiNB03−7 No. 8−NiNB03−8 No. 9−NiNB03−9
No.10−NiNB03−10 No.11−NiNB03−11 No.12−NiNB03−12
No.13−NiNB03−13 No.14−NiNB03−14 No.15−NiNB03−15
【0035】
取得した15株を、先に記した糖蜜基本培地を用いて培養し、菌体を回収し、その菌体を用い、先に記した日本イースト工業会法の手法に従い、パン生地を作製し、発酵させ、発酵段階で発生する炭酸ガス量を計測した。小麦粉100g仕込みの中種配合で、無糖生地を調製し、ファーモグラフにて、炭酸ガスの発生量を計測した。その結果を、図2に示した。変異処理前のATCC 24966元株(対照区)と比較して、優位にガス発生量が改善され、一般用パンイースト(対照区)と比較しても、遜色のない菌株を1菌株取得した。No.5−NiNB03−5である。つまり、本菌株は、糖蜜培地で良好な生育を示し、パン生地発酵性能が改良され、ビール酵母を起源とするが、通常パン酵母として十分に使用可能なレベルに改善された有能菌株であると考えられる。
【0036】
本菌株を、「Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)Ni−NB0301株」と命名し、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号FERM P−19190として登録した。
【0037】
本発明により、新しいタイプのパンを製造し得る新規酵母が明らかにされたので、上記したような工程を経ることなく、ビール酵母、野生酵母、各機関が保存しておりあるいは販売している酵母等をスクリーニングすることによって、直接、目的菌株を育種することもできるし、突然変異処理した後に、目的菌株を育種することも可能である。その際、クロトリマゾール等の抗生物質添加培地を選択培地として使用すると、目的菌株の選択が効率的に行われる。そして、このようにして得た新規パン酵母を使用することにより、独特の香味を有する新しいタイプのパンを効率的に製造することができる。
【0038】
本発明の実施例を以下に示す。
【0039】
実施例1:Saccharomyces cerevisiae (サッカロマイセス・セレビシエ)Ni−NB0301株を用いた製パン試験
Ni−NB031株を2L容ジャーファメンターで培養し、菌体を大量製造した。500ml容坂口振とうフラスコで、糖蜜基本培地を用い、各供試菌株について使用種菌量12gに見合う本数の培養を行い、遠心分離により菌体を回収し、無菌水にて2回洗浄したものを種菌とした。培養温度30℃における飽和溶存酸素量2ppm以上を維持し、糖蜜流加培養を行った。流加糖蜜量は、81.27g、培養時間は、11.5時間、攪拌数は、700rpmで行った。窒素源は、尿素あるいは硫酸アンモニウムを使用し、ビタミン類、その他の塩類は適宜加えた。培養後、菌体は、遠心分離にて回収し、洗浄した。
【0040】
培養菌体を用い、日本イースト工業会の食パン4時間中種法仕込み法に従い、食パンを焼成した。その時の結果を表1に示した。Ni−NB0301株を使用した食パンは、ATCC 24966株使用パンより、優れたスコアーを示し、一般用イースト使用パンと、遜色のない結果となった。
【0041】
Figure 0003906992
【0042】
更に、各菌株について、液体発酵力の測定を行った。同測定は以下によって行った。すなわち、「Influence of Dough Constituents on Fermentation (Cereal Chemistry,Vol.22(1945)」に記載の組成において、発酵培地の炭素源を10%のスクロースとしたもの(F10)、40%のスクロースとしたもの(F40)、8%のマルトースとしたもの(M8)を用い、200mgの乾物重量の酵母が、30℃、3時間で発生する炭酸ガス発生量(mg)を重量法で求めた。
【0043】
得られた結果を下記表2に示した。その結果から明らかなように、Ni−NB0301株(A)を使用した食パンは、ATCC 24966株(B)使用パンより、優れた発酵性を示し、一般用イースト(C)使用パンと同等ではないが、実用性が確認された。
【0044】
Figure 0003906992
【0045】
実施例2: Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)Ni−NB0301株を用いた食パンの香気成分分析
実施例1において焼成した食パンで、Ni−NB0301株と一般用イースト使用分について、食パンの香気成分を分析した。ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS、日立製作所 モデルM2500)を用い、TENAX捕集装置に香気成分を捕集し、加熱脱着後、分析を行った。その結果を、図3に示した。
【0046】
その結果から明らかなように、Ni−NB0301株使用のパンは、一般用イースト使用パンとは、明らかに香りのパターンが相違している、具体的には例えば、エタノール、n−プロパノール、イソブタノール、イソアミルアルコール、アセトイン、酢酸、2一エチルヘキサノール、およびフェネチルアルコールなどの個々の香気物質含量が異なり、独特の特徴のある香りを有した食パンであると判断された。このような香気成分のパターンを示すパンは従来報告されていないし、実際に香りをかいだり試食したりしてみた結果からも、このようなパンは従来知られておらず、新規であることが確認された。
【0047】
本菌株使用に係るパンは、一般用イーストに係るパンに比して、官能面からは、香気の出力値が低いため、マイルドな好ましい香りを有し、成分分析面からは、アセトインの量は多いものの、イソブタノールやイソアミルアルコールの量は少なくなっており、本菌株はアルコール(エタノール)生産性が高いビール酵母由来であるにもかかわらず、エタノール生産量は、エタノール生産を主機能としないパン酵母(一般用イースト)よりも低い点も確認された。
【0048】
【発明の効果】
本発明によって、従来未知の全く新しいタイプのパン酵母が育種、分離された。本菌株は、ビール酵母を親株とし、これを突然変異処理して得られたものであるが、糖蜜含有培地で良く生育し、発酵力が高くて製パン性にすぐれ、抗生物質耐性を有し、新しいタイプのパン、特に風香味に関して従来にない、パンを製造し得るものであり、パンの多様化を希求している消費者のニーズにも適合している。また、本発明に係る新規菌株は、人工的に突然変異させた菌株から選択するほか、保存菌株、野生株等からスクリーニングして分離することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第2段階目における各菌株のガス発生量の相対値を示す。
【図2】第3段階目における人工突然変異株のガス発生量の相対値を示す。
【図3】一般用イースト及びNi−NB0301株を用いて製造したパンの香気成分の測定結果を示す。

Claims (4)

  1. ビール製造用下面発酵酵母由来のサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ni−NB0301(FERM P−19190)を使用すること、を特徴とする新規パンの製造方法。
  2. 請求項1に記載の方法で製造してなる新規パン。
  3. 請求項1において使用した酵母を含有してなること、を特徴とする新規パン生地。
  4. ビール製造用下面発酵酵母由来のサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Ni−NB0301(FERM P−19190)。
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