JP3904332B2 - 水性エマルジョンとして繊維糸条に付着させる紡糸油剤用の添加剤及びこれを含有する紡糸油剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性エマルジョンとして繊維糸状に付着させる紡糸油剤(以下、単に紡糸油剤という)用の添加剤及びこれを含有する紡糸油剤に関する。近年、繊維の製造加工工程では省力化或いは合理化のため、めざましい勢いで高速化が進められている。例えば、ポリエステルやナイロン等の合成繊維の製糸速度は5000〜8000m/分に移行しつつある。このように繊維糸条の走行速度が高速化すると、繊維糸条からのこれに付着させた紡糸油剤の飛散が顕著になり、これによって作業環境の悪化、紡糸油剤の利用効率の低下、飛散物による走行障害等、各種の問題が生じる。このような状況下においては、紡糸油剤との相溶性に優れ、繊維糸条の高速化に対応できる優れた飛散防止性を有し、走行糸道に固状の障害物を形成しない添加剤の出現が強く要請される。本発明は、かかる要請に応える紡糸油剤用の添加剤及びこれを含有する紡糸油剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高速走行下における繊維糸条からのこれに付着させた紡糸油剤の飛散を防止するために用いる添加剤として、各種の高分子化合物が提案されている。これには例えば、1)分子量10万〜600万の高分子ポリエチレンオキサイド(特開平2−68370)、2)分子量5万〜2000万の高分子ポリアクリルアミド或はアクリルアミド共重合体(特開平3−59172)、3)ポリオキシアルキレン化合物と有機ポリイソシアネート化合物とから誘導される分子量10万〜50万の水溶性高分子化合物(特開平4−119128)、4)ポリアルキレングリコールと脂肪族カルボン酸とのジエステル或はジエポキシドとアルコールのオキシアルキレン付加物との反応生成物である両末端に親油基を有する鎖状高分子化合物(特開平5−44115)等がある。ところが、これら従来の添加剤には、紡糸油剤との相溶性が悪いため、高速走行下における繊維糸条からの油剤飛散防止性が不充分であり、その飛散物が走行糸道に固状の障害物を形成するという欠点がある。走行糸道に固状の障害物を形成すると、毛羽や糸切れを生じ、繊維糸条の品質を低下させるだけでなく、操業性をも低下させる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来の添加剤では、紡糸油剤との相溶性が悪いため、高速走行下における繊維糸条からの油剤飛散防止性が不充分であり、その飛散物が走行糸道に固状の障害物を形成する点である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者らは、上記課題を解決するべく研究した結果、紡糸油剤に加える添加剤として、特定の両親媒性ビニル共重合体が正しく好適であることを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、水性エマルジョンとして繊維糸条に付着させる紡糸油剤用の添加剤であって、下記の式1で示される構成単位A、下記の式2で示される構成単位B及び下記の式3で示される構成単位Cを主構成単位とし、全構成単位中に構成単位A、構成単位B及び構成単位Cを合計で80重量%以上の割合で有する数平均分子量30000〜30000000の両親媒性ビニル共重合体から成ることを特徴とする添加剤に係る。
【0006】
【式1】
【式2】
【式3】
【0007】
式1,式2,式3において、
R1,R2,R3:H又はCH3
R4:炭素数1〜24の炭化水素基
X1,X2:H、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又は炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基
M1:アルカリ金属、NH4又は第4級アンモニウムカチオン
【0008】
本発明の添加剤である両親媒性ビニル共重合体は、式1で示される構成単位A、式2で示される構成単位B及び式3で示される構成単位Cを主構成単位とするものであるが、これら以外の構成単位として下記の式4で示される構成単位Dを有するものが好ましい。
【0009】
【式4】
【0010】
式4において、
R5:H又はCH3
R6:水素又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基
n:5〜40の整数
【0011】
構成単位A〜Dの各構成単位は、それぞれ相当するビニル単量体を共重合することで形成される。構成単位Aを形成することとなるビニル単量体は下記の式5で示されるビニル単量体aであり、構成単位Bを形成することとなるビニル単量体は下記の式6で示されるビニル単量体bであって、構成単位Cを形成することとなるビニル単量体は下記の式7で示されるビニル単量体cである。また構成単位Dを形成することとなるビニル単量体は下記の式8で示されるビニル単量体dである。
【0012】
【式5】
【式6】
【式7】
【式8】
【0013】
式5,式6,式7,式8において、
R1〜R6,X1,X2,M1,n:式1〜式4と同じ
【0014】
式1で示される構成単位Aを形成することとなるビニル単量体aとしては、1)アクリルアミド、メタクリルアミド、2)N−メチロールアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−3−ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−3−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド等の、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基で置換されたN置換又はN,N置換(メタ)アクリルアミド、3)N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジプロピルメタクリルアミド等の、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基で置換されたN置換又はN,N置換(メタ)アクリルアミドが挙げられるが、なかでもアクリルアミド、メタクリルアミドが好ましい。
【0015】
式2で示される構成単位Bを形成することとなるビニル単量体bとしては、1)アクリル酸のアルカリ金属塩、NH4塩及び第4級アンモニウム塩、2)メタクリル酸のアルカリ金属塩、NH4塩及び第4級アンモニウム塩が上げられるが、なかでもアクリル酸のアルカリ金属塩、メタクリル酸のアルカリ金属塩が好ましい。
【0016】
式3で示される構成単位Cを形成することとなるビニル単量体cとしては、1)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル等の、炭素数1〜24のアルキル基を有するアクリル酸アルキル、2)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル等の、炭素数1〜24のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルが挙げられるが、なかでも炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルが好ましい。
【0017】
式4で示される構成単位Dを形成することとなるビニル単量体dは、いずれもエトキシ単位の繰り返し数が5〜40であって、片末端が水素であるヒドロキシポリエトキシエチルアクリレート、片末端が水素であるヒドロキシポリエトキシエチルメタクリレート、また片末端が炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基で封鎖された、片末端封鎖型ポリエトキシエチルアクリレート、片末端封鎖型ポリエトキシエチルメタクリレートである。これには例えば、1)ヒドロキシポリエトキシエチルアクリレート、2)ヒドロキシポリエトキシエチルメタクリレート、3)メトキシポリエトキシエチルアクリレート、エトキシポリエトキシエチルアクリレート、プロポキシポリエトキシエチルアクリレート、ブトキシポリエトキシエチルアクリレート、ペントキシポリエトキシエチルアクリレート、ヘキシトキシポリエトキシエチルアクリレート、シクロヘキシトキトポリエトキシエチルアクリレート等の片末端封鎖型ポリエトキシエチルアクリレート、4)メトキシポリエトキシエチルメタクリレート、エトキシポリエトキシエチルメタクリレート、プロポキシポリエトキシエチルメタクリレート、ブトキシポリエトキシエチルメタクリレート、ペントキシポリエトキシエチルメタクリレート、ヘキソキシポリエトキシエチルメタクリレート、シクロヘキソキシポリエトキシエチルメタクリレート等の片末端封鎖型ポリエトキシエチルメタクリレートが挙げられるが、なかでもエトキシ単位の繰り返し数が6〜30のメトキシポリエトキシエチルアクリレートが好ましい。
【0018】
本発明の添加剤である両親媒性ビニル共重合体は、以上説明したような構成単位A、構成単位B及び構成単位Cを主構成単位とし、全構成単位中にこれらを合計で80重量%以上有するものであるが、構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dで構成されるものが好ましい。
【0019】
本発明は、両親媒性ビニル共重合体を構成する各構成単位の割合を特に制限するものではないが、構成単位A〜Cを主構成単位とするものの場合、全構成単位中に10〜50重量%の構成単位A、10〜50重量%の構成単位B及び30〜80重量%の構成単位C(合計80〜100重量%)を有するものが好ましく、全構成単位中に20〜45重量%の構成単位A、20〜45重量%の構成単位B及び35〜60重量%の構成単位C(合計80〜100重量%)を有するものが更に好ましい。また構成単位A〜C以外の構成単位として構成単位Dを有するものの場合、8〜40重量%の構成単位A、8〜40重量%の構成単位B、24〜64重量%の構成単位C及び1〜20重量%の構成単位D(合計100重量%)で構成されるものが好ましく、10〜35重量%の構成単位A、10〜35重量%の構成単位B、30〜35重量%の構成単位C及び3〜15重量%の構成単位D(合計100重量%)で構成されるものが更に好ましい。
【0020】
本発明の添加剤である両親媒性ビニル共重合体はその数平均分子量(GPC法、プルラン換算、以下同じ)を30000〜30000000のものとするが、1000000〜15000000のものとするのが好ましい。
【0021】
本発明の添加剤である両親媒性ビニル共重合体は、次のような合成方法で得ることができる。例えば鉱物油、ケロシン等の非ラジカル重合性有機溶媒に分子量2000未満でHLB8〜10の非イオン性界面活性剤、分子量2000以上の油溶性の非イオン性界面活性剤及びHLB3〜5のソルビタン脂肪酸エステルを溶解し、油相を調製する。別に、各構成単位を形成することとなる所要量の各ビニル単量体を水に溶解し、水相を調製しておく。反応容器に前記油相を入れ、そこへ高速撹拌下に前記水相をゆっくり添加し、油中水系エマルジョンを調製する。その後、撹拌数を抑え、内温を30℃程度に調節し、反応容器内を窒素置換後、トルエン等の非ラジカル重合性有機溶媒に溶解した油溶性ラジカル開始剤を加えて重合を開始し、所定時間、ビニル単量体混合物を油中水系ラジカル共重合して、両親媒性ビニル共重合体を油中水系エマルジョンとして得る。
【0022】
上記のような油中水系ラジカル共重合で両親媒性ビニル共重合体を合成する場合、各構成単位を形成することとなるビニル単量体の混合物と水との合計(前記水相)/非ラジカル重合性有機溶媒=20/80〜80/20(重量%)の割合となるようにするが、30/70〜70/30(重量%)の割合となるようにするのが好ましい。構成単位A〜Cを主構成単位とし、全構成単位中にこれらを80重量%以上の割合で有する両親媒性ビニル共重合体を油中水系ラジカル共重合で合成する場合には例えば、構成単位Aを形成することとなるビニル単量体a/構成単位Bを形成することとなるビニル単量体b/構成単位Cを形成することとなるビニル単量体c=10〜50/10〜50/30〜80(重量%)の割合で含有し且つこれらを合計で80重量%以上の割合で含有するビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=20/80〜80/20(重量%)の割合とした反応系で、油中水系ラジカル共重合する。また構成単位A〜Dで構成される両親媒性ビニル共重合体を油中水系ラジカル共重合で合成する場合には例えば、構成単位Aを形成することとなるビニル単量体a/構成単位Bを形成することとなるビニル単量体b/構成単位Cを形成することとなるビニル単量体c/構成単位Dを形成することとなるビニル単量体d=8〜40/8〜40/24〜64/1〜20(重量%)の割合から成るビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=20/80〜80/20(重量%)の割合とした反応系で、油中水系ラジカル共重合する。
【0023】
油中水系ラジカル共重合により構成単位A〜Dで構成される両親媒性ビニル共重合体を合成する場合、かかる両親媒性ビニル共重合体としては、次の第1工程、第2工程及び第3工程を経て得られるものが特に好ましい。
第1工程:ビニル単量体a/ビニル単量体b/ビニル単量体c=10〜50/10〜50/30〜80(重量%)の割合から成るビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=20/80〜80/20(重量%)の割合とした反応系で、油溶性ラジカル開始剤存在下に、油中水系ラジカル共重合した後、ラジカル停止し、ラジカル停止した共重合体を得る工程
第2工程:ラジカル停止した共重合体を含む反応系に油溶性ラジカル開始剤を加えて該共重合体をラジカル活性化する工程
第3工程:ラジカル活性化した共重合体を含む反応系にビニル単量体dを、第1工程で用いたビニル単量体aとビニル単量体bとビニル単量体cとの合計/ビニル単量体d=80/20〜99/1(重量%)の割合となるように加えて、油中水系ラジカル共重合させ、両親媒性ビニル共重合体を得る工程
【0024】
第1工程におけるビニル単量体a〜cの油中水系ラジカル共重合では例えば、予め非ラジカル重合性有機溶媒に分子量2000未満でHLB8〜10の非イオン性界面活性剤、分子量2000以上の油溶性の非イオン性界面活性剤及びHLB3〜5のソルビタン脂肪酸エステルを溶解した油相を調製しておき、また別にビニル単量体a〜cを水に溶解した水相を調製しておく。反応容器に前記油相を入れ、更に高速撹拌下で前記水相をゆっくり添加し、油中水系エマルジョンを調製する。その後、撹拌数を抑え、内温を30℃程度に調節し、反応容器内を窒素置換後、非ラジカル重合性有機溶媒に溶解したそれ自体は公知の油溶性ラジカル開始剤を加えて油中水系ラジカル共重合を行なう。
【0025】
第1工程では、ビニル単量体a〜cの油中水系ラジカル共重合において、その反応系のラジカル停止を適時に行ない、ラジカル停止した共重合体を得る。ラジカル停止の方法としては、ラジカルが反応系から完全に消失してラジカル共重合反応が実質的に停止するまで反応を継続する方法でもよいが、強制的にラジカルを分解消失させるそれ自体は公知のラジカル停止剤を反応系に加える方法が好ましい。後述する第2工程、更には第3工程へと円滑に移行させると共に、得られるラジカル停止した共重合体の分子量調節がし易いからである。
【0026】
第2工程では、第1工程で得たラジカル停止した共重合体を含む反応系にそれ自体は公知の油溶性ラジカル開始剤を加えて、該共重合体をラジカル活性化する。
【0027】
第3工程では、第2工程でラジカル活性化した共重合体にビニル単量体dを加えて更に油中水系ラジカル共重合を行ない、アルコキシポリオキシエチレン鎖を有する共重合体すなわち本発明の両親媒性ビニル共重合体を得る。第3工程で用いるビニル単量体dの量は、第1工程で用いたビニル単量体a〜cの合計/ビニル単量体d=80/20〜99/1(重量%)、好ましくは85/15〜97/3(重量%)の割合となるようにする。
【0028】
第1工程、第2工程及び第3工程によって得られる両親媒性ビニル共重合体は、油中水系エマルジョンの状態にある。かかる油中水系エマルジョンは、もともと本発明が紡糸油剤を水性エマルジョンとして繊維糸条に付着させるものであるから、そのまま添加剤として利用できるが、紡糸油剤の水性エマルジョンを調製する際の便宜上、分子量2000未満でHLB8〜10の非イオン性界面活性剤、水溶性ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン誘導体及びHLB12〜14の水溶性非イオン性界面活性剤から成る転相用界面活性剤を加えておくのが好ましい。
【0029】
本発明は、以上説明した添加剤の使用方法を特に制限するものではない。これには例えば、1)紡糸油剤に添加剤を加えた後、水性エマルジョンとする方法、2)紡糸油剤の水性エマルジョンに、添加剤を加える方法、3)紡糸油剤の水性エマルジョンと添加剤の水性エマルジョンとを混合する方法等が挙げられる。
【0030】
本発明の紡糸油剤は、以上説明した添加剤を0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%の割合で含有するものである。
【0031】
添加剤を加える紡糸油剤は一般に、潤滑剤成分と界面活性剤成分とを主成分とするものである。本発明は潤滑剤成分や界面活性剤成分を特に制限するものではないが、潤滑剤成分としては、30℃の粘度が5×10-6〜2×10-4m2/sの鉱物油、総炭素数が14〜70のエステル化合物、総炭素数が16〜70のエーテルエステル化合物及び重量平均分子量が500〜15000のポリエーテル化合物から選ばれる一つ又は二つ以上が好ましく、なかでもブチルステアレート、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、ラウリルオレート、イソトリデシルステアレート等の総炭素数24〜47の直鎖脂肪酸エステル、30℃の粘度が1×10-5〜8×10-5m2/sの鉱物油がより好ましい。これらの潤滑剤成分は紡糸油剤中に20〜90重量%とするのが好ましく、30〜80重量%とするのが更に好ましい。
【0032】
また界面活性剤成分としては、1)いずれもオキシアルキレン基がオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基からなる、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド等の、ポリオキシアルキレン基を有する非イオン性界面活性剤、2)ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等の多価アルコール部分エステル型の非イオン性界面活性剤、3)ジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミン、脂肪酸モノアルカノールアミド、脂肪酸ジアルカノールアミド、ポリアルキレンポリアミンの脂肪酸アミド等の脂肪族含窒素非イオン性界面活性剤、4)アルキルスルホネート塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、5)アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルエチルアンモニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩等のカチオン性界面活性剤、6)アルキルジメチルベタイン、アルキルイミダゾリンのベタイン化合物等の両性界面活性剤が好ましい。かかる界面活性剤成分は紡糸油剤中に5〜75重量%とするのが好ましく、15〜65重量%とするのが更に好ましい。
【0033】
本発明の紡糸油剤を繊維糸条へ付着させるに際しては、合目的的に他の成分、例えば抗酸化剤、防腐剤、防錆剤等を用いることもできるが、その使用量は可及的に少量とするのが好ましい。
【0034】
本発明は本発明の紡糸油剤を水性エマルジョンとする以外は、それを繊維糸条に付着させる方法を特に制限するものではなく、これには紡糸油剤の水性エマルジョンを繊維糸条に付着させる公知の方法が適用できる。例えば、紡糸油剤の水性エマルジョンを、合成繊維の紡糸工程における未配向糸、部分配向糸、延伸された配向糸等に対し、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等で、紡糸油剤として0.1〜3重量%付着させる。
【0035】
本発明の紡糸油剤を付着させる繊維糸条としては、1)エチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステルフィラメント糸条、2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドフィラメント糸条、3)ポリアクリロニトリル、モダアクリル等のポリアクリルフィラメント糸条、4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィラメント糸条が挙げられるが、なかでもポリエステルフィラメント糸条、ポリアミドフィラメント糸条に付着させる場合に効果が高く、ポリエステル部分延伸糸、ポリアミド部分延伸糸及びポリエステル直接紡糸延伸糸に付着させる場合により効果が高い。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明に係る添加剤の実施形態としては、次の1)〜3)が挙げられる。
1)アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/メタクリル酸エチル=25/25/50(重量%)の割合から成るビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=60/40(重量%)の割合とした反応系で、油中水系ラジカル共重合した両親媒性ビニル共重合体であって、アクリルアミドから形成された構成単位を25重量%、アクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を25重量%及びメタクリル酸エチルから形成された構成単位を50重量%の割合で有する数平均分子量10000000の両親媒性ビニル共重合体から成る添加剤。
【0037】
2)アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/メタクリル酸エチル/メトキシポリエトキシ(エトキシ単位の繰り返し数n=22)エチルアクリレート=30/20/40/10(重量%)の割合から成るビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=60/40(重量%)の割合とした反応系で、油中水系ラジカル共重合した両親媒性ビニル共重合体であって、アクリルアミドから形成された構成単位を30重量%、アクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を20重量%、メタクリル酸エチルから形成された構成単位を40重量%及びメトキシポリエトキシ(n=22)エチルアクリレートから形成された構成単位を10重量%の割合で有する数平均分子量15000000の両親媒性ビニル共重合体から成る添加剤。
【0038】
3)下記の第1工程、第2工程及び第3工程を経て得られる両親媒性ビニル共重合体から成る添加剤。
第1工程:アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム/メタクリル酸エチル=17.6/35.3/47.1(重量%)の割合から成るビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=60/40(重量%)の割合とした反応系で、油溶性ラジカル開始剤としての2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)の存在下に、油中水系ラジカル共重合した後、ラジカル停止剤として3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを加えてラジカル停止し、ラジカル停止した共重合体を得る工程
第2工程:ラジカル停止した共重合体を含む反応系に油溶性ラジカル開始剤として2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を加え、該共重合体をラジカル活性化する工程
第3工程:ラジカル活性化した共重合体に、メトキシポリエトキシ(n=22)エチルアクリレートを、第1工程で用いたアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムとメタクリル酸エチルとの合計/メトキシポリエトキシ(n=22)エチルアクリレート=85/15(重量%)の割合となるように加えて、油中水系ラジカル共重合させ、アクリルアミドから形成された構成単位を15重量%、アクリル酸ナトリウムから形成された構成単位を30重量%、メタクリル酸エチルから形成された構成単位を40重量%及びメトキシポリエトキシ(n=22)エチルアクリレートから形成された構成単位を15重量%の割合で有する数平均分子量8000000の両親媒性ビニル共重合体を得る工程
【0039】
また本発明に係る紡糸油剤の実施形態としては、次の4),5)が挙げられる。
4)前記1)の添加剤を0.05重量%、潤滑剤成分としてラウリルオクタノエート/30℃の粘度が1.3×10-5m2/sの鉱物油=67/33(重量比)の割合の混合物を60重量%及び界面活性剤成分としてポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB9.0)/デシルスルホネートカリウム塩/オレイン酸カリウム塩=98/1/1(重量比)の割合の混合物を39.84重量%の割合で含有する紡糸油剤。
【0040】
5)前記3)の紡糸油剤用添加剤を0.5重量%、潤滑剤成分として重量平均分子量1000のポリエーテル/重量平均分子量10000のポリエーテル/ブトキシポリエトキシエチルラウレート=60/10/15(重量比)の割合の混合物を85重量%及び界面活性剤成分としてポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB11.4)/オクタン酸ジエタノールアミド/ラウリルホスフェートジエタノールアミン塩=40/35/25(重量比)の割合の混合物を13.38重量%の割合で含有する紡糸油剤。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例等において、部は重量部を、また%は重量%を意味する。
【0042】
試験区分1(両親媒性ビニル共重合体等の合成及び油中水系エマルジョンの調製)
・両親媒性ビニル共重合体P−1(実施例1)の合成及び油中水系エマルジョンPE−1の調製
イオン交換水400g、アクリルアミド125g(1.75モル)、アクリル酸ナトリウム125g(1.38モル)及びメタクリル酸エチル250g(2.25モル)を高圧ホモジナイザー処理して水相を調製した。別に、フラスコに30℃の粘度が4×10-6m2/sの流動パラフィン600g及び界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB9.2)30gとポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)−ポリオキシエチレン−ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)共重合体(HLB5.5)15gとソルビタンオレイン酸エステル(HLB13.2)5gとを仕込み、均一に溶解して油相を調製した。調製した油相へ高速撹拌下に前記水相をゆっくりと添加し、10分間撹拌を続け油中水系エマルジョンを調製した。フラスコ内の雰囲気を窒素置換して反応系の温度を温水浴にて30℃に調整した。次に15gのトルエンにラジカル開始剤として1gの2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を溶解した溶液を添加してラジカル重合を開始し、8時間重合反応を継続して油中水系ラジカル共重合反応を完結し、両親媒性ビニル共重合体を含有する油中水系エマルジョンを得た。得られた両親媒性ビニル共重合体を分析したところ、アクリルアミドから形成された構成単位/アクリル酸ナトリウムから形成された構成単位/メチルメタクリレートから形成された構成単位=25/25/50(重量%)の割合で有する数平均分子量10000000の両親媒性ビニル共重合体P−1であった。更に、両親媒性ビニル共重合体P−1を含有する油中水系エマルジョンの温度を20℃に調整した後、転相用界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB9.2)を30g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)を30gを添加して両親媒性ビニル共重合体P−1を30.8%含有する油中水系エマルジョンPE−1を得た。
【0043】
・両親媒性ビニル共重合体P−2〜P−7(実施例2〜7),ビニル共重合体R−1〜R−4(比較例1〜4)の合成及び油中水系エマルジョンPE−2〜PE−7,RE−1〜RE−4の調製
両親媒性ビニル共重合体P−1の合成及び油中水系エマルジョンPE−1の調製と同様にして、両親媒性ビニル共重合体P−2〜P−7,ビニル共重合体R−1〜R−4及び対応する油中水系エマルジョンPE−2〜PE−7,RE−1〜RE4を得た。これらの内容を表1にまとめて示した。
【0044】
・両親媒性ビニル共重合体P−8(実施例8)の合成及び油中水系エマルジョンPE−8の調製
イオン交換水430g、アクリルアミド75g(1.05モル)、アクリル酸ナトリウム150g(1.65モル)及びメタクリル酸エチル200g(1.8モル)を高圧ホモジナイザー処理して水相を調製した。別に、フラスコに30℃の粘度が2×10-6m2/sの流動パラフィン570g及び界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB9.2)30gとポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)−ポリオキシエチレン−ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)共重合体(HLB5.5)15gとソルビタンオレイン酸エステル(HLB13.2)5gとを仕込み、均一に溶解して油相を調製した。調製した油相へ高速撹拌下に前記水相をゆっくりと添加し、10分間撹拌を続け油中水系エマルジョンを調製した。フラスコ内の雰囲気を窒素置換して反応系の温度を温水浴にて30℃に調整した。次に15gのトルエンにラジカル開始剤として1gの2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を溶解した溶液を添加してラジカル重合を開始し、8時間重合反応を継続した(第1工程)。そして3−メルカプト−1,2−プロパンジオールの20%水溶液2gを投入してラジカル停止した(第2工程)。最後に、15gのトルエンに1gの2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を溶解した溶液を添加して、ラジカル停止した共重合体をラジカル活性化した後、メトキシポリエトキシ(n=22)エチルアクリレート75g(0.075モル)を投入し、6時間反応を継続して油中水系ラジカル共重合反応を完結し、両親媒性ビニル共重合体を含有する油中水系エマルジョンを得た。得られた両親媒性ビニル共重合体を分析したところ、アクリルアミドから形成された構成単位/アクリル酸ナトリウムから形成された構成単位/メチルメタクリレートから形成された構成単位/メトキシポリエトキシ(n=22)エチルメタクリレートから形成された構成単位=15/30/40/15(重量%)の割合で有する数平均分子量8000000の両親媒性ビニル共重合体P−8であった。更に、両親媒性ビニル共重合体P−8を含有する油中水系エマルジョンの温度を20℃に調整した後、転相用界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB9.2)を30g及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)を30gを添加して両親媒性ビニル共重合体P−8を30.4%含有する油中水系エマルジョンPE−8を得た。
【0045】
・両親媒性ビニル共重合体P−9,P−10(実施例9,10)の合成及び油中水系エマルジョンPE−9,PE−10の調製
両親媒性ビニル共重合体P−8の合成及び油中水系エマルジョンPE−8の調製と同様にして、両親媒性ビニル共重合体P−9,P−10及び対応する油中水系エマルジョンPE−9,PE−10を得た。これらの内容を表1にまとめて示した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1において、
*1:各ビニル単量体の油中水系ラジカル共重合に用いた非ラジカル重合性有機溶媒
*2:各ビニル単量体を油中水系ラジカル共重合させるときの反応系における、ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒(重量%)、但し実施例8〜10は第1工程におけるそれらの割合(重量%)
A−1:アクリルアミドから形成された構成単位
A−2:メタクリルアミドから形成された構成単位
B−1:アクリル酸ナトリウム塩から形成された構成単位
B−2:メタクリル酸NH4塩から形成された構成単位
C−1:メタリル酸エチルから形成された構成単位
C−2:アクリル酸2エチルヘキシルから形成された構成単位
D−1:メトキシポリエトキシ(n=22)エチルアクリレートから形成された構成単位
D−2:ヒドロキシポリエトキシ(n=12)エチルメタクリレートから形成された構成単位
S−1:30℃の粘度が4×10-6m2/sの流動パラフィン
S−2:30℃の粘度が2×10-6m2/sの鉱物油
【0048】
試験区分2(紡糸油剤の水性エマルジョンの調製)
・紡糸油剤(実施例11〜20,比較例5〜8)の水性エマルジョンの調製
試験区分1で調製した両親媒性ビニル共重合体P−1を30.8%含有する油中水型エマルジョンPE−1を0.16部(両親媒性ビニル共重合体P−1として0.05部)、潤滑剤成分L−1{ラウリルオクタノエート/30℃の粘度が1.3×10-5m2/sの鉱物油=67/33(重量比)の割合から成る混合物}を60部及び界面活性剤成分DT−2{ポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB9.0)/デシルスルホネートカリウム塩/オレイン酸カリウム塩=98/1/1(重量比)の割合の混合物}を39.84部及び水3.1部をビーカーに秤量し、撹拌して紡糸油剤(実施例11)の97%水性エマルジョンを調製した。紡糸油剤(実施例11)の場合と同様にして、紡糸油剤(実施例12〜20),(比較例5〜8)の97%水性エマルジョンを調製した。これらの内容を表2にまとめて示した。
【0049】
・紡糸油剤(比較例9〜12)の水性エマルジョンの調製
前記潤滑剤成分L−1を60部、前記界面活性剤成分DT−1を39.5部及び水3.1部をビーカーに秤量し、撹拌して、水性エマルジョンとした。別に高分子量ポリエチレンオキサイド(分子量2000000)を水で希釈して1%水溶液とした。そして前記水性エマルジョン、高分子量ポリエチレンオキサイドの1%水溶液及び水を混合して、潤滑剤成分L−1と界面活性剤成分DT−1との合計/高分子量ポリエチレンオキサイド(分子量2000000)=99.5/0.5(重量比)となるようにした紡糸油剤(比較例9)の10%水性エマルジョンを調製した。紡糸油剤(比較例9)の場合と同様にして、紡糸油剤(比較例10〜12)の10%水性エマルジョンを調製した。これらの内容を表2にまとめて示した。
【0050】
試験区分3(添加剤及びこれを含有する紡糸油剤の評価)
・紡糸油剤の水性エマルジョンにおける添加剤の相溶性評価
・相溶性試験(相溶性評価1)
試験区分2で調製した各例の紡糸油剤の水性エマルジョンを30℃で30日間静置後、その外観を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。但し比較例9〜12については、試験区分2で調製した水性エマルジョンの水分が3%になるまで水分蒸発したものを試験に供した。
○:固形物或はゲル状物の発生が認められず、相溶性良好。
△:固形物或はゲル状物の発生がわずかに認められ、相溶性やや不良。
×:固形物或はゲル状物の発生が顕著に認められ、相溶性不良。
【0051】
・相溶性試験(相溶性評価2)
試験区分2で調製した各例の紡糸油剤の水性エマルジョンを水で希釈して10%水性エマルジョンとした。この10%水性エマルジョン1gを直径100mmのシャーレに採り、110℃で2時間熱風乾燥処理した後、以下の基準で評価した。但し、比較例9〜12についてはそのまま試験に供した。以上の結果を表2にまとめて示した。
○:固形物或はゲル状物の発生が認められず、相溶性は良好。
△:固形物或はゲル状物の発生がわずかに認められ、相溶性やや不良。
×:固形物或はゲル状物の発生が顕著に認められ、相溶性不良。
【0052】
・走行糸状からの飛散防止性及び飛散物外観の評価
固有粘度0.64、酸化チタン含有量0.2%のポリエチレンテレフタレートチップを常法により乾燥した後、エクストルーダーを用いて295℃で紡糸した。口金から吐出して冷却固化した後の走行糸条に、試験区分2で調製した各例の紡糸油剤の水性エマルジョンを更に水希釈した10%水性エマルジョン(比較例9〜12については試験区分2で調製した紡糸油剤の10%水性エマルジョンそのまま)を、計量ポンプを用いたガイド給油法にて、付着量1.1%となるように付着させた後、引き続きガイドで集束させて、表面速度4000m/分で表面温度90℃の第1ゴテッドローラーと、表面速度5000m/分で表面温度130℃の第2ゴテッドローラーとで延伸後、4900m/分の速度で巻き取り、75デニール36フィラメントの延伸糸を得た。ここで延伸糸50000mを製造した時に、給油ガイドの下部、給油ガイドと第1ゴテッドローラーの中間に位置するインターレーサー部分及び第1ゴテッドローラーの下部に飛散した紡糸油剤のエマルジョンを濾紙で回収した。回収濾紙を60℃×24時間加熱処理して水分を除去した後、秤量し、回収した紡糸油剤の重量を算出して、飛散防止性を以下の基準で評価した。また飛散物外観の評価は、給油ガイド及び第1ゴテッドローラーへの固状物の堆積を肉眼観察により以下の基準でおこなった。結果をまとめて表2に示した。
【0053】
飛散防止性
◎:回収紡糸油剤の重量が10mg未満であり、優れている。
○:回収紡糸油剤の重量が10mg以上30mg未満であり、良好である。
△:回収紡糸油剤の重量が30mg以上100mg未満であり、やや問題がある。
×:回収紡糸油剤の重量が100mg以上であり、問題がある。
【0054】
飛散物外観
◎:固状物の堆積がほとんど観察されない。
○:固状物の堆積が僅かに観察される。
△:固状物の堆積がある程度観察される。
×:固状物の堆積が顕著に観察される。
【0055】
【表2】
【0056】
表2において、
P−1〜P−10,R−1〜R−4:表1に記載の両親媒性ビニル共重合体等PE−1〜PE−10,RE−1〜RE−4:試験区分1で調製した両親媒性ビニル共重合体を含有する油中水系エマルジョン
R−5:高分子量ポリエチレン(分子量200万)
R−6:ポリアクリルアミド(分子量1000万)
R−7:ポリオキシアルキレングリコール(エチレングリコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加した平均分子量2000の化合物)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリウレタン(分子量40万)
R−8:PEG2000ジカプレート
L−1:ラウリルオクタノエート/30℃の粘度が1.3×10-5m2/sの鉱物油=67/33(重量比)の割合の混合物
L−2:重量平均分子量1000のポリエーテル/重量平均分子量10000のポリエーテル/ブトキシポリエトキシエチルラウレート=60/10/15(重量比)の割合の混合物
DT−1:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB11.4)/オクタン酸ジエタノールアミド/ラウリルホスフェートジエタノールアミン塩=40/35/25(重量比)の割合の混合物
DT−2:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB9.0)/デシルスルホネートカリウム塩/オレイン酸カリウム塩=98/1/1(重量比)の割合の混合物
E−1〜E−4:油中水系ラジカル重合に用いた原料であって、原料のビニル単量体、ラジカル開始剤及びラジカル停止剤を除いた下記構成の原料
E−1:水(400部)、非ラジカル重合性溶媒S−1(600部)、油中水系ラジカル重合用界面活性剤{ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB9.2)/ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)−ポリオキシエチレン−ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)共重合体(HLB5.5)/ソルビタンオレイン酸エステル(HLB13.2)=60/30/10(重量比)から成る混合物}50部、トルエン15部及び転相用界面活性剤{ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB9.2)/ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)=50/50(重量比)から成る混合物}60部の割合で構成される混合物
E−2:前記E−1において、非ラジカル重合性溶媒S−1をS−2とした混合物
E−3:前記E−1において、トルエンの量を30部とした混合物
E−4:前記E−3において、非ラジカル重合性溶媒S−1をS−2とした混合物
【0057】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明の添加剤は紡糸油剤との相溶性に優れ、これを含有する紡糸油剤はその水性エマルジョンを高速走行下の繊維糸状に付着させた場合においても、繊維糸条からの油剤飛散を効果的に防止でき、飛散物による繊維糸状への障害を防止できるという効果がある。
Claims (9)
- 水性エマルジョンとして繊維糸条に付着させる紡糸油剤用の添加剤であって、下記の式1で示される構成単位A、下記の式2で示される構成単位B及び下記の式3で示される構成単位Cを主構成単位とし、全構成単位中に構成単位A、構成単位B及び構成単位Cを合計で80重量%以上の割合で有する数平均分子量30000〜30000000の両親媒性ビニル共重合体から成ることを特徴とする添加剤。
【式1】
【式2】
【式3】
(式1,式2,式3において、
R1,R2,R3:H又はCH3
R4:炭素数1〜24の炭化水素基
X1,X2:H、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又は炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基
M1:アルカリ金属、NH4又は第4級アンモニウムカチオン) - 両親媒性ビニル共重合体が、全構成単位中に10〜50重量%の構成単位A、10〜50重量%の構成単位B及び30〜80重量%の構成単位Cを有するものである請求項1記載の添加剤。
- 両親媒性ビニル共重合体が、8〜40重量%の構成単位A、8〜40重量%の構成単位B、24〜64重量%の構成単位C及び1〜20重量%の構成単位Dで構成されるものである請求項2記載の添加剤。
- 両親媒性ビニル共重合体が、構成単位Aを形成することとなるビニル単量体a/構成単位Bを形成することとなるビニル単量体b/構成単位Cを形成することとなるビニル単量体c=10〜50/10〜50/30〜80(重量%)の割合で含有し且つこれらを合計で80重量%以上の割合で含有するビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=20/80〜80/20(重量%)の割合とした反応系で、油中水系ラジカル共重合したものである請求項3記載の添加剤。
- 両親媒性ビニル共重合体が、構成単位Aを形成することとなるビニル単量体a/構成単位Bを形成することとなるビニル単量体b/構成単位Cを形成することとなるビニル単量体c/構成単位Dを形成することとなるビニル単量体d=8〜40/8〜40/24〜64/1〜20(重量%)の割合から成るビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=20/80〜80/20(重量%)の割合とした反応系で、油中水系ラジカル共重合したものである請求項4記載の添加剤。
- 両親媒性ビニル共重合体が、次の第1工程、第2工程及び第3工程を経て得られるものである請求項2記載の添加剤。
第1工程:ビニル単量体a/ビニル単量体b/ビニル単量体c=10〜50/10〜50/30〜80(重量%)の割合から成るビニル単量体混合物を、該ビニル単量体混合物と水との合計/非ラジカル重合性有機溶媒=20/80〜80/20(重量%)の割合とした反応系で、油溶性ラジカル開始剤存在下に、油中水系ラジカル共重合した後、ラジカル停止し、ラジカル停止した共重合体を得る工程
第2工程:ラジカル停止した共重合体を含む反応系に油溶性ラジカル開始剤を加えて該共重合体をラジカル活性化する工程
第3工程:ラジカル活性化した共重合体を含む反応系にビニル単量体dを、第1工程で用いたビニル単量体aとビニル単量体bとビニル単量体cとの合計/ビニル単量体d=80/20〜99/1(重量%)の割合となるように加えて、油中水系ラジカル共重合させ、両親媒性ビニル共重合体を得る工程 - 水性エマルジョンとして繊維糸条に付着させる紡糸油剤であって、請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の添加剤を0.001〜10重量%の割合で含有することを特徴とする紡糸油剤。
- 更に下記の潤滑剤成分と界面活性剤成分とを含有する請求項8記載の紡糸油剤。
潤滑剤成分:30℃の粘度が5×10-6〜2×10-4m2/sの鉱物油、総炭素数が14〜70のエステル化合物、総炭素数が16〜70のエーテルエステル化合物及び重量平均分子量500〜15000のポリエーテル化合物から選ばれる一つ又は二つ以上
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