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JP3889276B2 - 磁気検出素子 - Google Patents

磁気検出素子 Download PDF

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JP3889276B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、磁気センサやハードディスクなどに用いられる磁気検出素子に係り、特に磁界検出能力を向上させることができる磁気検出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
図24は、従来の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面から見た断面図である。
【0003】
図24に示す磁気検出素子は、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(giant magnetoresistive)素子の1種であるスピンバルブ型磁気検出素子と呼ばれるものであり、ハードディスクなどの記録媒体からの記録磁界を検出するものである。
【0004】
このスピンバルブ型磁気検出素子は、下から基板8、反強磁性層1、固定磁性層(ピン(Pinned)磁性層)2、非磁性材料層3、フリー磁性層(Free)4で構成された多層膜9と、この多層膜9の上層に形成された一対の縦バイアス層6,6及びこの縦バイアス層6,6の上に形成された一対の電極層7,7とで構成されている。
【0005】
前記反強磁性層1及び縦バイアス層6,6にはFe−Mn(鉄−マンガン)合金膜やNi−Mn(ニッケル−マンガン)合金膜、固定磁性層2及びフリー磁性層4にはNi−Fe(ニッケル−鉄)合金膜、非磁性材料層3にはCu(銅)膜、また電極層7,7にはCr膜が一般的に使用される。
【0006】
図24に示すように、固定磁性層2の磁化は、反強磁性層1との交換異方性磁界によりY方向(記録媒体からの漏れ磁界方向;ハイト方向)に単磁区化され、フリー磁性層4の磁化は、前記縦バイアス層6,6からの交換異方性磁界の影響を受けてX方向に揃えられることが望ましい。
【0007】
すなわち固定磁性層2の磁化と、フリー磁性層4の磁化とが、直交することが望ましい。
【0008】
このスピンバルブ型磁気検出素子では、縦バイアス層6,6上に形成された電極層7,7から、フリー磁性層4、非磁性材料層3及び固定磁性層2に検出電流(センス電流)が与えられる。ハードディスクなどの記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられると、フリー磁性層4の磁化がXからY方向へ向けて変化する。このフリー磁性層4内での磁化の方向の変動と、固定磁性層2の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し(これを磁気抵抗効果という)、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで図24に示すように、フリー磁性層4上に一対の縦バイアス層6を設け、前記縦バイアス層6との交換結合磁界によって前記フリー磁性層4の磁化を制御する、いわゆるエクスチェンジバイアス方式は、前記フリー磁性層4のトラック幅方向(図示X方向)の両側にハードバイアス層を設けて前記フリー磁性層4の磁化制御を行う、いわゆるハードバイアス方式に比べて、今後の狭トラック化に適切に対応できる磁化制御方法であると考えられた。
【0010】
しかしながら以下に説明するように、従来の製法で形成されたエクスチェンジバイアス構造では、次のような問題点があった。
【0011】
図24のスピンバルブ型磁気検出素子を製造するときには、多層膜9を形成した後、図25に示すように多層膜9上にリフトオフ用のレジスト層Rを形成し、イオンビームスパッタ法などを用いて縦バイアス層6,6、及び電極層7,7を成膜する。レジスト層R上には、縦バイアス層6,6と同じ組成の層6a,6a及び電極層7,7と同じ組成の層7a,7aが形成される。
【0012】
レジスト層Rの両端部によって覆われている領域は、スパッタ粒子が積層されにくい。従って、レジスト層Rの両端部によって覆われている領域付近は、縦バイアス層6,6及び電極層7,7は膜厚が薄く形成され、図24及び図25に示されるように縦バイアス層6,6及び電極層7,7の膜厚方向寸法がトラック両脇部分S,Sにおいて減少する。
【0013】
このため、トラック両脇部分S,Sにおけるフリー磁性層4と縦バイアス層6,6との交換結合の効果が減少してしまう。その結果、図24におけるフリー磁性層4のトラック両脇部分S,Sの磁化方向が、X方向に完全に固定されず、外部磁界が印加されたときに変化してしまう。
【0014】
特に、磁気記録媒体における記録密度を向上させるために、狭トラック化を図った場合、本来トラック幅Twの領域内で読み取るべき磁気記録トラックの情報だけでなく、隣接する磁気記録トラックの情報を、トラック両脇部分S,Sの領域において読み取ってしまうという、サイドリーディングが発生する可能性が生じるという問題があった。
【0015】
また上記した問題は、図26に示すCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子の場合にも起こる。CPP型とは、図26に示すように、多層膜9の上下に電極層70、71が設けられ、前記電極層70、71からの電流が前記多層膜9内を膜面と垂直な方向に流れる構造のことである。一方、図24、25に示す磁気検出素子は、電極層7からの電流が前記多層膜9内を膜面と平行な方向に流れ、このような電流方向を有する磁気検出素子をCIP(current in the plane)型の磁気検出素子と呼んでいる。
【0016】
図26に示すCPP型の磁気検出素子の場合も、縦バイアス層6の膜厚方向寸法がトラック両脇部分S,Sにおいて減少するため、トラック両脇部分S,Sにおけるフリー磁性層4と縦バイアス層6,6との交換結合の効果が減少してしまい、前記フリー磁性層4のトラック両脇部分S,Sの磁化方向が、X方向に完全に固定されず、外部磁界が印加されたときに変化してしまうという問題を有していた。
【0017】
しかもCPP型の磁気検出素子にエクスチェンジバイアス方式を用いる場合、上記した問題に加えて電流の分流ロスをより適切に抑制する必要性があった。図26に示すCPP型の磁気検出素子では電極層70、71から多層膜9内を流れる電流が、一対の縦バイアス層6間の間隔で決定されるトラック幅Tw(光学的なトラック幅)よりも両側に広がって流れるため、トラック幅Tw以外の部分に流れる電流が分流ロスになって再生出力の低下や実効トラック幅が広がる問題を招いたのである。
【0018】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、サイドリーディングを抑えることのできる磁気検出素子を提供することを目的とする。
【0019】
また本発明は、CPP型の磁気検出素子において、サイドリーディングの発生を抑制すると共に、電流の分流ロスや実効トラック幅の広がりを抑えることが可能な磁気検出素子を提供することを目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気検出素子は、下から第1の反強磁性、この第1の反強磁性層によって磁化方向が固定された固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層、非磁性中間層、強磁性層及び第2の反強磁性層の順に積層された多層膜を有し、
前記多層膜には、前記第2の反強磁性層及び前記強磁性層を貫通し、底面が前記非磁性中間層内に設けられ、この底面のトラック幅方向の幅寸法がトラック幅寸法に等しい凹部が形成されており、前記凹部の側面はトラック幅方向に対する垂直面となっており、
前記凹部に隣接するトラック幅方向の両側端部では、前記第2の反強磁性層との磁気的結合により磁化方向が揃えられた、前記強磁性層との磁気的結合により、前記第1磁性層の磁化前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ向けて固定され、
前記凹部の直下に位置する前記第1磁性層は、磁化が前記固定磁性層の磁化方向と交差する方向に向けられているとともに外部磁界により磁化方向が変化するフリー磁性層として機能することを特徴とするものである。
本発明では、前記凹部の側面をトラック幅方向に対して垂直面としている。すなわち、トラック幅領域から外れた全領域において、第2の反強磁性層が反強磁性を発生するために充分な膜厚を確実に有することができ、トラック幅領域から外れた全領域において前記第1磁性層の磁化方向を確実に固定することができる。
従って、磁気検出素子のトラック幅領域でのみ前記フリー磁性層の磁化方向を動かし、トラック幅領域周辺におけるサイドリーディングを防止することができる。
【0021】
本発明の磁気検出素子では、前記第2の反強磁性層が前記凹部の底面以外のすべての領域で反強磁性を発揮するために十分な膜厚を有するようにできる。そして、トラック幅が前記凹部の底面のトラック幅方向の幅寸法によって決定される。すなわち、前記凹部の底面に重なる部分でのみ、前記フリー磁性層などの外部磁界によって磁化方向が変化するフリー磁性層の磁化方向を変化させることができる。
【0022】
また、前記多層膜の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域が、実質的に記録磁界の再生に寄与し、磁気抵抗効果を発揮する感度領域となる。すなわち、本発明の磁気検出素子は、磁気検出素子の光学的トラック幅が磁気的トラック幅に等しくなり、不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0023】
しかも、前記凹部は、一様の厚さで成膜された前記第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法で前記凹部を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定できる。
【0024】
また、本発明では、前記凹部の底面が前記非磁性中間層内に位置しているので、前記第2の反強磁性層の下層にある強磁性層が、前記第2の反強磁性層との磁気的結合によって磁化方向がそろえられ、さらに、この強磁性層の下層に非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層の磁化方向が、前記強磁性層とのRKKY相互作用によって、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えられる。すなわち、前記第2の反強磁性層の下層において前記強磁性層、前記非磁性中間層、及び前記フリー磁性層がシンセティックフェリ構造となっており、前記フリー磁性層の磁化方向を一定方向に揃えることが容易になっている。従って、前記第2の反強磁性層と前記強磁性層との交換結合磁界が比較的弱くても、前記フリー磁性層の磁化方向を確実に、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。
【0025】
なお、前記フリー磁性層と前記強磁性層の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさは異なっている必要がある。前記フリー磁性層及び強磁性層の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさは、前記強磁性材料層の飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。
本発明では、前記非磁性中間層を、例えば、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成することができる。
【0026】
また、本発明では、前記強磁性層と前記第1磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0027】
組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成比はCoである。
【0028】
また、本発明では、前記第1磁性層と前記非磁性材料層と間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成することが好ましい。
【0029】
前記中間層が形成されるときには、前記強磁性層と前記第1磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0030】
組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoである。
【0031】
本発明では、前記強磁性層及び前記第1磁性層の両方を前記CoFeNiで形成することが好ましい。
【0032】
ところで本発明では、前記第2の反強磁性層の下層において前記強磁性層、前記非磁性中間層、及び前記フリー磁性層が積層フェリ構造であり、前記非磁性中間層を介して隣接する前記強磁性層とフリー磁性層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態である。
【0033】
この反平行磁化状態を適切に保つには、前記強磁性層と前記フリー磁性層の材質を改良して前記強磁性層と前記フリー磁性層間に働くRKKY相互作用における交換結合磁界を大きくする必要性がある。
【0034】
前記強磁性層と前記フリー磁性層を形成する磁性材料としてよく使用されるものにNiFe合金がある。NiFe合金は軟磁気特性に優れるため従来からフリー磁性層などに使用されていたが、前記強磁性層と前記フリー磁性層をNiFe合金を用いて積層フェリ構造にした場合、これらの層間の反平行結合力はさほど強くはない。
【0035】
そこで本発明では、前記強磁性層と前記フリー磁性層の材質を改良し、前記強磁性層と前記フリー磁性層間の反平行結合力を強め、トラック幅方向の両側に位置するフリー磁性層の両側端部が外部磁界に対し揺らがないようにし、サイドリーディングの発生を適切に抑制できるようにすべく、前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層、好ましくは両方の層にCoFeNi合金を使用することとしたのである。Coを含有させることで上記の反平行結合力を強めることができる。
【0036】
図23は、強磁性材料からなる薄膜を非磁性材料層を介して積層したいわゆる積層フェリ構造体のヒステリシスループの概念図である。例えば第1の強磁性材料層(F1)の単位面積あたりの磁気モーメント(飽和磁化Ms×膜厚t)は第2の強磁性材料層(F2)の単位面積あたりの磁気モーメントよりも大きいとする。また外部磁界を図示右方向に与えたとする。
【0037】
第1の強磁性材料層の単位面積あたりの磁気モーメントと第2の強磁性材料層の単位面積あたりの磁気モーメントとのベクトル和(|Ms・t(F1)+Ms・t(F2)|)で求めることができる単位面積あたりの合成磁気モーメントは、0磁界から外部磁界を大きくしていってもある時点までは、一定の大きさである。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが一定の大きさである外部磁界領域Aでは、前記第1の強磁性材料層と第2の強磁性材料層間に働く反平行結合力が、前記外部磁界よりも強いので、前記第1及び第2の強磁性材料層の磁化は適切に単磁区化され反平行状態に保たれている。
【0038】
ところが、さらに図示右方向への外部磁界を大きくしていくと、強磁性材料層の単位面積あたりの合成磁気モーメントは傾斜角を有して大きくなっていく。これは、前記外部磁界の方が、前記第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層間に働く反平行結合力よりも強いから、単磁区化していた第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の磁化が別々の方向に回転して反平行状態が崩れ、ベクトル和で求めることができる単位面積あたりの合成磁気モーメントが大きくなっていくのである。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが大きくなっていく外部磁界領域Bでは、もはや前記強磁性材料層の反平行状態は崩れた状態にある。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが大きくなり始める出発点の外部磁界の大きさをスピンフロップ磁界(Hsf)と呼んでいる。
【0039】
さらに図示右方向の外部磁界を大きくしていくと、第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層の磁化は、平行状態で単磁区化され、今度は外部磁界領域Aの場合と異なり、共に図示右方向に磁化され、この外部磁界領域Cでの単位面積あたりの合成磁気モーメントは一定値となる。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが一定値となる時点での外部磁界の大きさを飽和磁界(Hs)と呼んでいる。
【0040】
前記CoFeNi合金を第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層に使用すると、NiFe合金を使用した場合に比べて反平行状態が崩れるときの磁界、いわゆるスピンフロップ磁界(Hsf)を十分に大きくできることがわかった。
【0041】
第1及び第2の強磁性材料層にNiFe合金(比較例)及びCoFeNi合金(実施例)を用いて上記したスピンフロップ磁界の大きさを求めるための実験を以下の膜構成を用いて行った。
【0042】
基板/非磁性材料層(Cu)/第1の強磁性材料層(2.4)/非磁性中間層(Ru)/第2の強磁性材料層(1.4)
なお括弧書きは膜厚を示し単位はnmである。
【0043】
比較例での第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層には、Niの組成比が80原子%でFeの組成比が20原子%からなるNiFe合金を使用した。このときのスピンフロップ磁界(Hsf)は約59(kA/m)であった。
【0044】
次に実施例での第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層には、Coの組成比が87原子%で、Feの組成比が11原子%で、Niの組成比が2原子%からなるCoFeNi合金を使用した。このときのスピンフロップ磁界(Hsf)は約293(kA/m)であった。
【0045】
このように第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層にはNiFe合金を用いるよりもCoFeNi合金を用いる方が、スピンフロップ磁界を効果的に向上させることができることがわかった。
【0046】
すなわち、前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層、好ましくは両方の層にCoFeNi合金を使用すると、前記強磁性層と前記フリー磁性層のスピンフロップ磁界を効果的に向上させることができる。
【0047】
次に、CoFeNi合金の組成比について説明する。CoFeNi合金は、非磁性中間層であるRu層と接することでNiFe合金を用いる場合より、磁歪が1×6-6〜6×10-6程度、正側にシフトすることがわかっている。
【0048】
前記磁歪は−3×10-6から3×10-6の範囲内であることが好ましい。また保磁力は790(A/m)以下であることが好ましい。磁歪が大きいと、成膜ひずみや、他層間での熱膨張係数の差などによって応力の影響を受けやすくなるから前記磁歪は低いことが好ましい。また保磁力は低いことが好ましく、これによってフリー磁性層の外部磁界に対する磁化反転を良好にすることができる。
【0049】
本発明では、非磁性材料層/フリー磁性層/非磁性中間層/強磁性層の膜構成で形成されるとき、前記CoFeNiのFe組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好ましい。Feの組成比が17原子%よりも大きくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなると共に軟磁気特性を劣化させて好ましくない。
【0050】
またFeの組成比が9原子%よりも小さくなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、軟磁気特性の劣化を招き好ましくない。
【0051】
またNiの組成比が10原子%よりも大きくなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、非磁性材料層との間でNiの拡散等による抵抗変化量(ΔR)及び抵抗変化率(ΔR/R)の低下を招き好ましくない。
【0052】
またNiの組成比が0.5原子%よりも小さくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなって好ましくない。
【0053】
また上記した組成範囲内であれば保磁力を790(A/m)以下にすることができる。
【0054】
次に、前記フリー磁性層と前記非磁性材料層と間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成するとき、具体的には、例えば非磁性材料層/中間層(CoFe合金)/フリー磁性層/非磁性中間層/強磁性層の膜構成で形成されるとき、前記CoFeNiのFe組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好ましい。Feの組成比が15原子%よりも大きくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなると共に軟磁気特性を劣化させて好ましくない。
【0055】
またFeの組成比が7原子%よりも小さくなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、軟磁気特性の劣化を招き好ましくない。
【0056】
またNiの組成比が15原子%よりも大きくなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなって好ましくない。
【0057】
またNiの組成比が5原子%よりも小さくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなって好ましくない。
【0058】
また上記した組成範囲内であれば保磁力を790(A/m)以下にすることができる。
【0059】
なお、CoFeやCoで形成された中間層はマイナス磁歪を有しているため、前記中間層を第1のフリー磁性層と非磁性材料層間に介在させない膜構成の場合に比べて、CoFeNi合金のFe組成をやや少なくし、Ni組成をやや多くしている。
【0060】
また上記の膜構成のように、非磁性材料層とフリー磁性層間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を介在させることで、フリー磁性層と非磁性材料層間での金属元素の拡散をより効果的に防止することができて好ましい。
【0063】
また、前記強磁性層と前記第2の反強磁性層の間に非磁性層が形成されていてもよい。このとき、前記強磁性層は、前記非磁性層を介した前記第2の反強磁性層とのRKKY結合により、その磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ向けられる。
【0064】
前記第2の反強磁性層とのRKKY相互作用によって前記強磁性層の磁化方向が揃えられるものは、前記第2の反強磁性層と前記強磁性層とが直に接しているものよりも交換結合力を強くすることができる。
【0065】
なお、前記非磁性層は、例えば、Ru,Cu,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用いて形成することができる。特に、前記非磁性層がRuによって形成され、膜厚が8〜11Åであることが好ましい。
【0066】
また本発明では、前記と前記第2の反強磁性層の下層に、他の反強磁性層が積層されていてもよい。
【0067】
前記他の反強磁性層は後に述べる本発明の磁気検出素子の製造方法において、前記第1の反強磁性層を磁場中熱処理するときに、前記他の反強磁性層の下層にある層が大気に触れて酸化することを防止する機能を有する。
【0068】
前記他の反強磁性層の領域の厚さは、0より大きく30Å以下であることが好ましい。
【0069】
本発明のように、前記フリー磁性層の上面に接して積層された前記非磁性中間層が導電性材料によって形成されていると、前記非磁性中間層をスピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0070】
スピンバルブ型磁気検出素子にセンス電流を印加すると、伝導電子はおもに電気抵抗の小さい非磁性材料層付近を移動する。この伝導電子にはアップスピンとダウンスピンの2種類の電子が確率的に等量存在する。
【0071】
スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率は、これらの2種類の伝導電子の平均自由行程の行程差に対して正の相関を示す。
【0072】
ダウンスピンの伝導電子については、印加される外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層とフリー磁性層との界面で常に散乱され、フリー磁性層に移動する確率は低いまま維持され、その平均自由行程はアップスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて短いままである。
【0073】
一方、アップスピンの伝導電子については、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁性層の磁化方向と平行状態になったときに、非磁性材料層からフリー磁性層に移動する確率が高くなり、平均自由行程が長くなっている。これに対し、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁性層の磁化方向に対して平行状態から変化するに従って、非磁性材料層とフリー磁性層との界面で散乱される確率が増加し、アップスピンの伝導電子の平均自由行程が短くなる。
【0074】
このように外部磁界の作用によって、アップスピンの伝導電子の平均自由行程がダウンスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて大きく変化し、行程差が大きく変化する。すると、伝導電子全体の平均自由行程も大きく変化し、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)が大きくなる。
【0075】
ここで、フリー磁性層にバックド層が接続されると、フリー磁性層中を移動するアップスピンの伝導電子がバックド層内にまで移動することが可能になり、バックド層の膜厚に比例してアップスピンの伝導電子の平均自由行程をさらに伸ばすことができる。このため、いわゆるスピンフィルター効果を発現させることが可能となり、伝導電子の平均自由行程の行程差が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0076】
本発明では、前記フリー磁性層の膜厚が15〜45Åの範囲に設定されることが好ましい。
【0077】
スピンフィルター効果によるアップスピンの伝導電子とダウンスピンの伝導電子の平均自由行程差の拡大はフリー磁性層の膜厚が比較的薄い場合により効果を発揮する。
【0078】
フリー磁性層の膜厚が15Åより薄いと強磁性材料層として機能するように形成することが難しくなり充分な磁気抵抗効果を得ることができない。また、鏡面反射(specular reflection)せずに通常の散乱(diffusive scattering)をする伝導電子も存在するため、抵抗変化率が低下してしまうので好ましくない。
【0079】
また、フリー磁性層の膜厚が45Åより厚いと前記非磁性中間層に到達する前に散乱されてしまうアップスピンの伝導電子が増加してスピンフィルター効果によって抵抗変化率が変化する割合が減少するため好ましくない。
【0080】
また、前記固定磁性層は、単位面積あたりの磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層が、非磁性中間層を介して積層され、前記非磁性中間層を介して隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態であることが好ましい。
【0081】
固定磁性層が非磁性中間層の上下に強磁性材料層が積層されたものとして形成されると、これら複数層の強磁性材料層が互いの磁化方向を固定しあい、全体として固定磁性層の磁化方向を一定方向に強力に固定することができる。すなわち、第2の反強磁性層と固定磁性層との交換結合磁界Hexを大きな値として得ることができる。
【0082】
また、固定磁性層の固定磁化による反磁界(双極子磁界)を、複数層の強磁性材料層の静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャンセルできる。これにより、固定磁性層の固定磁化による反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層の変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0083】
従って、フリー磁性層の変動磁化の方向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシンメトリーの小さい対称性の優れた磁気検出素子を得ることが可能になる。
【0084】
ここで、アシンメトリーとは、再生出力波形の非対称性の度合いを示すものであり、再生出力波形が与えられた場合、波形が対称であればアシンメトリーが小さくなる。従って、アシンメトリーが0に近づく程再生出力波形が対称性に優れていることになる。
【0085】
前記アシンメトリーは、フリー磁性層の変動磁化の方向と固定磁性層の固定磁化の方向とが直交しているときに0となる。アシンメトリーが大きくずれるとメディアからの情報の読み取りが正確にできなくなり、エラーの原因となる。このため、前記アシンメトリーが小さいものほど、再生信号処理の信頼性が向上することになり、スピンバルブ磁気検出素子として優れたものとなる。
【0086】
また、固定磁性層の固定磁化による反磁界(双極子磁界)Hdは、素子高さ方向において、その端部で大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、フリー磁性層内における単磁区化が妨げられる場合があるが、固定磁性層を上記の積層構造とすることにより双極子磁界HdをほぼHd=0とすることができ、これによってフリー磁性層内に磁壁ができて磁化の不均一が発生しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止することができる。
【0087】
なお、前記強磁性材料層の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさは、前記強磁性材料層の飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。
【0088】
前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されることができる。
【0089】
なお、本発明では、前記第1の反強磁性層と前記第2の反強磁性層を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、前記第1の反強磁性層の磁化方向と前記第2の反強磁性層の磁化方向を直交させることが容易に可能となり、外部磁界が印加されていない状態で、前記フリー磁性層と前記固定磁性層の磁化方向を直交させることができる。
【0090】
前記第1の反強磁性層、あるいは、前記第2の反強磁性層、又は、前記第1の反強磁性層及び前記第2の反強磁性層は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成されることができる。
【0091】
ここで、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0092】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0093】
第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層として、これらの適切な組成範囲の合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。
【0094】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0095】
本発明における磁気検出素子は、前記多層膜のトラック幅方向の両側端部上には電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し平行な方向に流れる、いわゆるCIP(current in the plane)型の磁気検出素子であってもよいし、あるいは前記多層膜の上下に電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流れる、いわゆるCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子であってもよい。
【0096】
本発明では前記CPP型の磁気検出素子の場合、前記多層膜の上に設けられた上部電極層は、磁性材料で形成された上部シールド層であることが好ましい。磁気検出素子の製造を容易化することができると共に、ギャップ長Glを短くすることができ高記録密度化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造できる。
【0097】
かかる場合、前記第2反強磁性層上、および前記凹部のトラック幅方向の両側端面には絶縁層が設けられ、前記上部電極層は、前記絶縁層上から前記凹部の底面にかけて形成されていることが好ましい。これによって前記上部電極層から前記多層膜に流れる電流が前記第2反強磁性層に分流するのを適切に回避でき再生出力が大きく実効再生トラック幅の狭い、高密度化に適した磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0098】
なお本発明では、前記第2の反強磁性層上に形成された絶縁層と、前記凹部のトラック幅方向の両側端面に形成された絶縁層は、別体で形成されることが好ましい。
【0099】
また本発明では前記CPP型の磁気検出素子の場合、前記多層膜の下に設けられた下部電極層は、磁性材料で形成された下部シールド層であることが好ましい。磁気検出素子の製造を容易化することができると共に、ギャップ長Glを短くすることができ高記録密度化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造できる。
【0100】
かかる場合、前記下部電極層のトラック幅方向の中央には、前記多層膜方向に突出した突出部が設けられ、この突出部の上面が前記多層膜の下面と接し、前記下部電極層のトラック幅方向の両側端部と前記多層膜間には絶縁層が設けられることが好ましい。これによって前記下部電極層から前記多層膜に流れる電流がトラック幅寸法から広がって流れ難く、前記電流の分流ロスを抑制し、再生出力が大きく実効再生トラック幅の狭い磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0101】
また本発明では、前記突出部の上面と、前記下部電極層の両側端部上に設けられた前記絶縁層の上面とは同一平面で形成されることが好ましい。
【0102】
また本発明では、前記非磁性材料層は非磁性導電材料で形成されることが好ましい。前記非磁性材料層が非磁性導電材料で形成された磁気検出素子を、スピンバルブGMR型磁気抵抗効果素子(CPP−GMR)と呼んでいる。
【0103】
また本発明では、CPP型の磁気検出素子である場合、前記非磁性材料層は絶縁材料で形成されてもよい。この磁気検出素子をスピンバルブトンネル型磁気抵抗効果型素子(CPP−TMR)と呼んでいる。
【0104】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0105】
図1の磁気検出素子は、基板11上に第1の反強磁性層12が積層され、さらに第1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13cからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17、第2の反強磁性層18、及び電極層19が、スパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって成膜されたものである。ここで、第2の反強磁性層18と強磁性層17がフリー磁性層15に対する縦バイアス層となる。
【0106】
第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0107】
第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18として、これらの合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、強磁性層との間に、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層12、及び第2の反強磁性層18を得ることができる。
【0108】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0109】
第1の反強磁性層12の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Å、例えば200Åである。なお、本実施の形態の磁気検出素子は、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成することができる。
【0110】
ここで、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18を形成するための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0111】
また、後の記述において図1の磁気検出素子の製造方法を説明するときに、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18の磁化方向を直交させるために適した、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18を形成するための前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金の組成範囲を示す。
【0112】
第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層13cは、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ましい。また、第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層13cは同一の材料で形成されることが好ましい。
【0113】
また、非磁性中間層13b及び16は、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0114】
非磁性材料層は、固定磁性層13とフリー磁性層15との磁気的な結合を防止し、またセンス電流が主に流れる層であり、Cu,Cr,Au,Agなど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0115】
フリー磁性層15及び強磁性層17は、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ましい。また、フリー磁性層15及び強磁性層17は同一の材料で形成されることが好ましい。
電極層19は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成膜される。
【0116】
本実施の形態の磁気検出素子は電極層19,19と凹部21との間にトラック幅方向の段差ができる。なお、第2の反強磁性層18上に前述したTa,Crなどからなる保護層を介して電極層19,19が積層されてもよい。このとき前記保護層は電極下地層として機能する。
【0117】
図1の磁気検出素子では、第2の反強磁性層18及び強磁性層17を貫通する凹部21が形成されている。凹部21の側面21a,21aは、基板11の表面に対して垂直になっている。すなわち、凹部21の側面21a,21aは、トラック幅方向(図示X方向)に対して垂直になっている。図1では、底面21bが非磁性中間層16内に位置するように、凹部21が形成されている。また、凹部21の底面21bのトラック幅方向の幅寸法はトラック幅寸法Twに等しい。
【0118】
図1に示される磁気検出素子では、強磁性層17が、第2の反強磁性層18との磁気的結合(交換結合)によって磁化方向がトラック幅方向(図示X方向)と反平行方向に固定され、さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層18の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向方向に揃えることが容易になっている。
【0119】
従って、第2の反強磁性層18と強磁性層17との交換結合磁界が比較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。
【0120】
本実施の形態では、第2の反強磁性層18のトラック幅領域に対向した部位が先細りしないので、フリー磁性層15の磁化方向は凹部21の底面21bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dで、反強磁性を発揮するために十分な膜厚を有する第2の反強磁性層18との磁気的結合によって固定される。
【0121】
凹部21の底面21bに重なるフリー磁性層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0122】
従って、磁気検出素子のトラック幅Twは、凹部21の底面21bの幅寸法によって決定され、しかも、トラック幅Twから外れた領域で記録信号を読み取ってしまうサイドリーディングを防止することができる。
【0123】
上述したように、本発明では、凹部21は一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、基板11の表面に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法Twで凹部21を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定できる。
【0124】
また、磁気検出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0125】
さらに、本実施の形態では磁気検出素子の側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるように形成されることが可能なので、フリー磁性層15のトラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0126】
また本実施の形態では、フリー磁性層15及び強磁性層17の少なくとも一方を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0127】
組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成はCoである。
【0128】
これによりフリー磁性層15と強磁性層17間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)にまで大きくすることができる。
【0129】
よって、フリー磁性層15及び強磁性層17の両側端部の磁化を適切に反平行状態にピン止めでき、サイドリーディングの発生を抑制することができる。
【0130】
なおフリー磁性層15及び強磁性層17の双方を前記CoFeNi合金で形成することが好ましい。これにより、より安定して高いスピンフロップ磁界を得ることができ、フリー磁性層15と強磁性層17とを適切に反平行状態に磁化できる。
【0131】
また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層15と強磁性層17の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。
【0132】
さらに、フリー磁性層15の軟磁気特性の向上、非磁性材料層14間でのNiの拡散による抵抗変化量(ΔR)や抵抗変化率(ΔR/R)の低減の抑制を適切に図ることが可能である。
【0133】
また、図1に示される磁気検出素子では、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0134】
スピンフィルター効果について説明する。図21及び図22はスピンバルブ型磁気検出素子においてバックド層によるスピンフィルター効果を説明するための模式説明図であり、図21はバックド層がない構造例を示す模式図であり、図22はバックド層のある構造例を示す模式図である。
【0135】
巨大磁気抵抗GMR効果は、主として電子の「スピンに依存した散乱」によるものである。つまり磁性材料、ここではフリー磁性層の磁化方向に平行なスピン(例えばアップスピン)を持つ伝導電子の平均自由行程λ+と、磁化方向に逆平行なスピン(例えばダウンスピン)を持つ伝導電子の平均自由行程λ−の差を利用したものである。図21及び図22では、アップスピンを持つ伝導電子を上向き矢印で表わし、ダウンスピンを持つ伝導電子を下向き矢印で表わしている。電子がフリー磁性層を通り抜けようとするときに、この電子がフリー磁性層の磁化方向に平行なアップスピンを持てば自由に移動できるが、反対にダウンスピンを持ったときには直ちに散乱されてしまう。
【0136】
これは、アップスピンを持つ電子の平均自由行程λ+が、例えば、50オングストローム程度であるのに対して、ダウンスピンを持つ電子の平均自由行程λ−が6オングストローム程度であり、10分の1程度と極端に小さいためである。フリー磁性層115の膜厚は、6オングストローム程度であるダウンスピンを持つ電子の平均自由行程λ−よりも大きく、50オングストローム程度であるアップスピンを持つ電子の平均自由行程λ+よりも小さく設定されている。
【0137】
従って、電子がフリー磁性層115を通り抜けようとするときに、この電子がフリー磁性層115の磁化方向に平行なアップスピンを持てば自由に移動できるが、反対にダウンスピンを持ったときには直ちに散乱されてしまう(フィルタアウトされる)。
【0138】
固定磁性層113で発生し、非磁性材料層114を通過するダウンスピン電子は、フリー磁性層115と非磁性材料層114との界面付近で散乱され、フリー磁性層115にはほとんど到達しない。つまり、このダウンスピン電子は、フリー磁性層115の磁化方向が回転しても平均自由行程に変化はなく、GMR効果による抵抗変化率に影響しない。従ってGMR効果にはアップスピン電子の挙動のみを考えればよい。
【0139】
固定磁性層115で発生したアップスピン電子はこのアップスピン電子の平均自由行程λ+より薄い厚さの非磁性材料層114中を移動し、フリー磁性層115に到達し、アップスピン電子はフリー磁性層115内を自由に通過できる。これは、アップスピン電子がフリー磁性層115の磁化方向に平行なスピンを持っているためである。
【0140】
固定磁性層の磁化方向とフリー磁性層の磁化方向が反平行となる状態では、アップスピン電子はフリー磁性層115の磁化方向に平行なスピンを持った電子でなくなる。すると、アップスピン電子は、フリー磁性層115と非磁性材料層114との界面付近で散乱されることになり、アップスピン電子の有効平均自由行程が急激に減少する。すなわち、抵抗値が増大する。抵抗変化率は、アップスピン電子の有効平均自由行程の変化量と正の相関関係を有する。
【0141】
図22に示すように、バックド層Bsが設けられている場合には、フリー磁性層115を通過したアップスピン電子はバックド層Bsにおいて、このバックド層Bsの材料で決定される追加平均自由行程λ+bを移動した後散乱する。すなわち、バックド層Bsを設けたことにより、アップスピン電子の平均自由行程λ+が追加平均自由行程λ+b分だけ延びる。
【0142】
バックド層として機能する非磁性中間層16を有する本実施の形態では、アップスピンの伝導電子の平均自由行程を伸ばすことができる。このため、外部磁界の印加によるアップスピン電子の平均自由行程の変化量が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0143】
また、本実施の形態では、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成した場合でも、第1の反強磁性層12の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層18の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。すなわち、本実施の形態では、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定できる。
【0144】
また、本実施の形態では、基板11上に直接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して第1の反強磁性層12が積層されてもよい。
【0145】
スピンフィルター効果によるアップスピンの伝導電子とダウンスピンの伝導電子の平均自由行程差の拡大はフリー磁性層の膜厚が比較的薄い場合により効果を発揮する。
【0146】
フリー磁性層15の膜厚が15Åより薄いと強磁性材料層として機能するように形成することが難しくなり充分な磁気抵抗効果を得ることができない。
【0147】
また、フリー磁性層15の膜厚が45Åより厚いと前記鏡面反射層に到達する前に散乱されてしまうアップスピンの伝導電子が増加して鏡面反射効果(specular effect)によって抵抗変化率が変化する割合が減少するため好ましくない。
【0148】
また、図1では、単位面積あたりの磁気モーメントが異なる前記第1固定磁性層13aと前記第2固定磁性層13cが、前記非磁性中間層13bを介して積層されたものが、一つの固定磁性層13として機能する。
【0149】
第1固定磁性層13aは反強磁性層12と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、第1固定磁性層13aと反強磁性層12との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じ、第1固定磁性層13aの磁化方向が図示Y方向に固定される。第1固定磁性層13aの磁化方向が図示Y方向に固定されると、非磁性中間層13bを介して対向する第2固定磁性層13cの磁化方向が、第1固定磁性層13aの磁化方向と反平行の状態で固定される。
【0150】
なお、第1固定磁性層13aの磁気モーメントと第2固定磁性層13cの磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が固定磁性層13の磁化方向となる。
【0151】
このように、第1固定磁性層13aと第2固定磁性層13cの磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、第1固定磁性層13aと第2固定磁性層13cとが互いに他方の磁化方向を固定しあうので、全体として固定磁性層13の磁化方向を一定方向に安定させることができるので好ましい。
【0152】
第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層13cは、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ましい。また、第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層13cは同一の材料で形成されることが好ましい。図1では、前記第1固定磁性層13a及び前記第2固定磁性層13cを同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの単位面積あたりの磁気モーメントを異ならせている。
【0153】
また、非磁性中間層13bは、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0154】
固定磁性層13が非磁性中間層13bの上下に第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層13bが積層されたものとして形成されると、第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層13bが互いの磁化方向を固定しあい、全体として固定磁性層113の磁化方向を一定方向に強力に固定することができる。すなわち、第1の反強磁性層12と固定磁性層13との交換結合磁界Hexを、例えば80〜160kA/mと、大きな値として得ることができる。
【0155】
また、本実施の形態では、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)を、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cの静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャンセルできる。これにより、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層15の変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0156】
従って、フリー磁性層15の変動磁化の方向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシンメトリーの小さい対称性の優れた磁気検出素子を得ることが可能になる。
【0157】
また、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)Hdは、素子高さ方向において、その端部で大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、フリー磁性層15内における単磁区化が妨げられる場合があるが、固定磁性層13を上記の積層構造とすることにより双極子磁界HdをほぼHd=0とすることができ、これによってフリー磁性層15内に磁壁ができて磁化の不均一が発生しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止することができる。
【0158】
ただし、固定磁性層13が単層の強磁性材料層として形成されてもよい。
このスピンバルブ型磁気検出素子においては、電極層19、19からフリー磁性層15、非磁性材料層14、固定磁性層13に定常電流が与えられ、図示Z方向に走行する磁気記録媒体からの漏れ磁界が図示Y方向に与えられると、フリー磁性層15の磁化方向が図示X方向から図示Y方向に向けて変動する。このフリー磁性層15内での磁化方向の変動と第2の固定磁性層13bの磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この抵抗変化に基づく電圧変化により磁気記録媒体からの漏れ磁界が検出される。
【0159】
なお、フリー磁性層15と非磁性材料層14の間にCoなどからなる拡散防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層はフリー磁性層15と非磁性材料層14の相互拡散を防止する。また、第2固定磁性層13bと非磁性材料層14の間にCoなどからなる拡散防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層は第2固定磁性層13bと非磁性材料層14の相互拡散を防止する。
【0160】
本実施の形態の磁気検出素子の製造方法を説明する。
図1に示された磁気検出素子の第1の製造方法を説明する。
【0161】
まず、基板11上に第1の反強磁性層12を積層する。さらに第1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13cからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層13が積層され、固定磁性層13の上層に非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17、第2の反強磁性層18まで積層された多層膜A1を、スパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜装置中で連続成膜する。
【0162】
第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0163】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0164】
第1の反強磁性層12の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Åである。
【0165】
第1固定磁性層13a及び第2固定磁性層13cが、同一の材料で形成されることが好ましい。また、フリー磁性層15及び強磁性層17が、同一の材料で形成されることが好ましい。
【0166】
本発明では、このように、反強磁性層12から第2の反強磁性層18まで連続して成膜する。したがって各層の表面を大気に触れさせることがなく、前記各層の表面が大気に触れた場合のように、大気に触れた表面をイオンミリングや逆スパッタによりクリーニングしてからその上の層を形成する必要がないため、容易に製造することができる。また、再現性が良好な製造方法とすることができる。さらに、前記各層の表面をイオンミリングや逆スパッタによりクリーニングする必要がないため、再付着物によるコンタミや、表面の結晶状態の乱れによる交換結合磁界の発生に対する悪影響など、クリーニングすることに起因する不都合が生じない製造方法とすることができる。また本発明では連続成膜のため、クリーニング工程が無くても、反強磁性層12と第1の固定磁性層13a間、および第2の反強磁性層18と強磁性層17間に適切に交換結合磁界を発生させることができる。
【0167】
次に、第1の熱処理工程を行う。まずトラック幅Tw(図示X方向)と直交する方向である第1の磁界(図示Y方向)を印加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間、および第2の反強磁性層18と強磁性層17との間に交換結合磁界を発生させて、第1の固定磁性層13aおよび強磁性層17の磁化を同一方向に固定すると共に、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界を、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換結合磁界よりも大とする。
【0168】
第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界を、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換結合磁界よりも大とするために、前記第1の熱処理温度を220℃以上で245℃以下にすることが好ましい。
【0169】
これにより第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界を1.58×104(A/m)以上にでき、またより好ましくは230℃以上とすれば4.74×104(A/m)以上の高い交換結合磁界を得ることができる。
【0170】
一方、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換結合磁界は、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界よりも小さくなる。
【0171】
次に、第2の熱処理工程を行う。この工程では第1の磁界と直交する方向の第2の磁界(トラック幅方向)を印加しつつ、前記第1の熱処理温度よりも高い第2の熱処理温度を施す。また前記第2の印加磁界の大きさを、前記第1の熱処理工程時の第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換結合磁界よりも大きく、且つ第1の熱処理工程時の第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界よりも小さくする。なお、前記第2の磁界の大きさを前記フリー磁性層及び強磁性層の飽和磁界及び前記フリー磁性層及び強磁性層の反磁界より大きくまた、前記フリー磁性層と強磁性層の間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さくすることがより好ましい。
【0172】
本発明では、第2の熱処理温度を250℃以上で270℃以下に設定することが好ましい。
【0173】
これにより第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換結合磁界を3.16×104(A/m)以上にでき、先の第1の熱処理工程にて発生した交換結合磁界よりも大きくできる。
【0174】
またこのとき、第2の印加磁界を先の第1の熱処理工程時にて発生した第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界よりも小さくすることで、第1の反強磁性層12に第2の印加磁界が印加されても、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界が劣化することがなく、固定磁性層13の磁化方向をハイト方向に固定したままにすることが可能になる。なお固定磁性層13はシンセティックフェリ構造であるので、磁化状態は安定化し、第1の固定磁性層13aと第2の固定磁性層13bの磁化は反平行状態になる。
【0175】
以上のように2回の熱処理工程の温度と印加磁界の大きさ及び方向を適切に調整することで、固定磁性層13の磁化方向とフリー磁性層15の磁化方向を適切にしかも容易に交叉するように調整することが可能である。
【0176】
なお上記した第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13a及び第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換結合磁界の大きさは、それぞれの層の組成比に大きく左右されるため、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18の成膜の際に組成比の調整を行うことが好ましい。
【0177】
例えば、第1の反強磁性層12をXmMn100-m(但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種以上の元素)からなる合金で形成したとき、組成比を示すmを、46原子%≦m≦53.5原子%とすることが好ましい。またより好ましい組成範囲は、mが48.5原子%以上で52.7原子%以下である。
【0178】
また第1の反強磁性層12をPtmMn100-m-nn(但し、Zは、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)で形成したとき、組成比を示すm、nを、46原子%≦m+n≦53.5原子%、0.2原子%≦n≦40原子%とすることが好ましい。またより好ましいm+nの組成範囲は、48.5原子%以上で52.7原子%以下である。
【0179】
また第1の反強磁性層12をPtqMn100-q-jj(但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)で形成したとき、組成比を示すq、jを、46原子%≦q+j≦53.5原子%、0.2原子%≦j≦10原子%とすることが好ましい。またより好ましいq+jの組成範囲は、48.5原子%以上で52.7原子%以下である。
【0180】
また第2の反強磁性層18をXmMn100-m(但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種以上の元素)からなる合金で形成したとき、組成比を示すmを、49原子%≦m≦55.5原子%とすることが好ましい。またより好ましいmは、49.5原子%以上で54.5原子%以下である。
【0181】
また前記第2の反強磁性層18をPtmMn100-m-nn(但し、Zは、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)で形成したとき、組成比を示すm、nを、49原子%≦m+n≦55.5原子%、0.2原子%≦n≦40原子%とすることが好ましい。またm+nは49.5原子%以上で54.5原子%以下であることがより好ましい。
【0182】
また前記第2の反強磁性層18をPtqMn100-q-jj(但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)で形成したとき、組成比を示すq、jは、49原子%≦q+j≦55.5原子%、0.2原子%≦j≦10原子%とすることが好ましい。なおq+jのより好ましい範囲は49.5原子%以上で54.5原子%以下である。
【0183】
また本発明では、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18の双方の組成を同じにしてもよい。かかる場合、以下の組成比を有することが好ましい。
【0184】
すなわち第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18を、XmMn100-m(但し、Xは、Pt、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種以上の元素)からなる合金で形成するとき、第1の反強磁性層12および第2の反強磁性層18の組成比を示すmを、49原子%≦m≦53.5原子%とすることが好ましい。なおより好ましい組成範囲はmは49.5原子%以上で52.7原子%以下である。また上限は51.2原子%以下であることが最も好ましい。
【0185】
また、第1の反強磁性層12および第2の反強磁性層18を、PtmMn100-m -nn(但し、Zは、Pd、Ir、Rh、Ru、Osのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)で形成したとき、組成比を示すm、nを、49原子%≦m+n≦53.5原子%、0.2原子%≦n≦40原子%とすることが好ましい。なおより好ましい組成範囲はmは49.5原子%以上で52.7原子%以下である。また上限は51.2原子%以下であることが最も好ましい。
【0186】
また第1の反強磁性層12および第2の反強磁性層18を、PtqMn100-q-jj(但し、Lは、Au、Ag、Cr、Ni、Ne、Ar、Xe、Krのうちの少なくとも1種または2種以上の元素)で形成したとき、組成比を示すq、jを、49原子%≦q+j≦53.5原子%、0.2原子%≦j≦10原子%とすることが好ましい。なおより好ましい組成範囲はmは49.5原子%以上で52.7原子%以下である。また上限は51.2原子%以下であることが最も好ましい。
【0187】
また第1の反強磁性層12の組成と、第2の反強磁性層18の組成を異ならしめ、例えば第1の反強磁性層12のMn濃度を第2の反強磁性層のMn濃度よりも多くすることにより、第1の熱処理後の両者の交換結合磁界の差をより顕著にでき、第2の熱処理後にフリー磁性層15と固定磁性層13の磁化をより確実に直交状態とすることが可能となる。またかかる場合、交換結合磁界の差を顕著にできる組み合わせを多数選択でき、設計の自由度が向上する。
【0188】
以上説明した組成範囲内であれば、第1の熱処理を施したとき、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界を大きくできると共に、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換結合磁界を第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換結合磁界よりも大きくでき、さらに第2の熱処理を施したとき、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換結合磁界を先の交換結合磁界よりも大きくすることができる。
【0189】
よって上記した固定磁性層13とフリー磁性層15の磁化の直交化を適切に行うことが可能である。
【0190】
次に、第2の反強磁性層18上にレジストを積層し、第2の反強磁性層18上をトラック幅Twの間隔を開けてマスキングする。第2の反強磁性層18の前記レジストによってマスクされない部分を、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などによって、基板11の表面に対する垂直方向、すなわちトラック幅方向(図示X方向)に対する垂直方向に削り込むことにより凹部21を形成する。凹部21の側面21a,21aは、トラック幅方向に対して垂直になっている。凹部21の底面21bが非磁性中間層16内に位置するように、凹部21を形成する。
【0191】
すなわち、強磁性層17の磁化方向は、凹部21の底面21bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層18との交換結合によって固定される。従って、強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して積層されているフリー磁性層15の磁化方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ強磁性層17とのRKKY相互作用により固定される。
【0192】
凹部21の底面21bに重なるフリー磁性層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0193】
従って、磁気検出素子のトラック幅は、前記凹部の幅寸法Twによって決定される。
【0194】
凹部21の形成後、凹部21の幅寸法(=トラック幅Tw)より広い幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジストを第2の反強磁性層18上に形成し、第2の反強磁性層18上であって、前記リフトオフ用のレジストによって覆われていない領域に電極層19,19をスパッタ法や蒸着法によって成膜する。電極層19,19は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成膜される。電極層19,19の成膜後、レジスト層21を除去して磁気検出素子を得る。
【0195】
この磁気検出素子は電極層19,19と凹部21との間にトラック幅方向の段差ができる。なお、第2の反強磁性層18上に前述したTa,Crなどからなる保護層を介して電極層19,19が積層されてもよい。
【0196】
なお、上記説明では第2の反強磁性層18の上層に前記レジストを積層して、第2の反強磁性層18に凹部を形成した後、第2の反強磁性層18の上層に電極層19,19を積層したが、第2の反強磁性層18の上層に電極層19を成膜した後、電極層19をマスクとして第2の反強磁性層18に凹部を形成すると、図6に示されるような電極層19の傾斜面19aと凹部21の側面21aが連続面となる磁気検出素子が得られる。
【0197】
また、前記第2の磁場中アニールは、第2の反強磁性層18に凹部21を形成した後行ってもよい。
【0198】
また、本実施の形態では、基板11上に直接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して反強磁性層12が積層されてもよい。
【0199】
図1に示された磁気検出素子の第2の製造方法を説明する。
まず、基板11上に第1の反強磁性層12を積層する。さらに第1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13cからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層13が積層され、固定磁性層13の上層に非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17が積層されて、多層膜A2が形成される。なお、図示されていないが、強磁性層17上にTaなどからなる保護層を積層してもよい。第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17及び前記保護層はスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜装置内で形成される。
【0200】
第1の反強磁性層12、第1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13c、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17の材料及び膜厚は前記第1の製造方法と同じである。
【0201】
次に、強磁性層17または前記保護層まで積層された前記多層膜を第1の熱処理温度、Y方向を向いた第1の大きさの磁界中で、第1の磁場中アニールを行い、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間に交換異方性磁界を発生させ、固定磁性層13の磁化方向を図示Y方向に固定する。本実施の形態では、前記第1の熱処理温度を270℃、磁界の第1の大きさを800k(A/m)としている。
【0202】
前記多層膜を第1の磁場中アニールにかけたときに、前記保護層は、その表面から10〜20Å程度酸化する。そこで、前記保護層をイオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)によって除去する。
【0203】
さらに、強磁性層17を所定の厚さ削る。強磁性層17を削るのは、次の工程において、強磁性層17上に第2の反強磁性層18を積層するときに、強磁性層17上に第2の反強磁性層18を真空中で連続成膜することが必要なためである。
【0204】
次に、強磁性層17の研削後の表面上に、強磁性層17を再成膜し、さらに強磁性層17上に第2の反強磁性層18を連続成膜する。強磁性層17を再成膜するときには、最初に強磁性層17を成膜したときに用いた強磁性材料と同じ強磁性材料を用いると磁気的結合を良好にできるので好ましい。第2の反強磁性層18の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Å、例えば200Åである。
【0205】
第2の反強磁性層18の材料も上述した第1の製造方法で用いた材料と同じである。
ここで、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18を形成するための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0206】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0207】
第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18として、これらの適切な組成範囲の合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、強磁性層との間に48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。
【0208】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
なお、本実施の形態の磁気検出素子は、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成することができる。
【0209】
また、第2の反強磁性層18の上層にTaなどの非磁性材料からなる保護層を成膜してもよい。
【0210】
次に第2の反強磁性層18まで形成された多層膜を、第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間に交換異方性磁界を発生させ、強磁性層17の磁化方向を図示X方向と反平行方向に固定する。本実施の形態では、前記第2の熱処理温度を250℃、磁界の第2の大きさを24k(A/m)としている
第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換異方性磁界は、第2の磁場中アニール工程において始めて生じる。従って、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けるためには、前記第2の熱処理温度を、第1の反強磁性層12による交換結合磁界が消失するブロッキング温度より低い温度に設定し、前記第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層12と固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界より小さくするだけでよい。なお、前記第2の磁界の大きさを前記フリー磁性層及び強磁性層の飽和磁界及び前記フリー磁性層及び強磁性層の反磁界より大きく、また前記フリー磁性層と強磁性層の間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さくすることがより好ましい。また、第2の磁場中アニールをこれらの条件下で行えば、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の反強磁性層12と固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。すなわち、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0211】
次に、第2の反強磁性層18上にレジストを積層し、第2の反強磁性層18上をトラック幅Twの間隔を開けてマスキングする。第2の反強磁性層18の前記レジストによってマスクされない部分を、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などによって、基板11の表面に対する垂直方向、すなわちトラック幅方向(図示X方向)に対する垂直方向に削り込むことにより凹部21を形成する。凹部21の側面21a,21aは、トラック幅方向に対して垂直になっている。凹部21の底面21bが非磁性中間層16内に位置するように、凹部21を形成する。
【0212】
強磁性層17の磁化方向は、凹部21の底面21bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層18との交換結合によって固定される。従って、強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して積層されているフリー磁性層15の磁化方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ強磁性層17とのRKKY相互作用により固定される。
【0213】
凹部21の底面21bに重なるフリー磁性層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0214】
従って、磁気検出素子のトラック幅は、前記凹部の幅寸法Twによって決定される。上述したように、本発明では、凹部21は一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層42を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、基板11の表面に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法Twで凹部21を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅Twを正確に規定できる。
【0215】
凹部21の形成後、凹部21の幅寸法(=トラック幅Tw)より広い幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジストを第2の反強磁性層18上に形成し、第2の反強磁性層18上であって、前記リフトオフ用のレジストによって覆われていない領域に電極層19,19をスパッタ法や蒸着法によって成膜する。電極層19,19は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成膜される。電極層19,19の成膜後、レジスト層21を除去して磁気検出素子を得る。
【0216】
本製造方法によって形成された磁気検出素子は電極層19,19と凹部21との間にトラック幅方向の段差ができる。なお、第2の反強磁性層18上に前述したTa,Crなどからなる保護層を介して電極層19,19が積層されてもよい。
【0217】
なお、上記説明では第2の反強磁性層18の上層に前記レジストを積層して、第2の反強磁性層18に凹部を形成した後、第2の反強磁性層18の上層に電極層19,19を積層したが、第2の反強磁性層18の上層に電極層19を成膜した後、電極層19をマスクとして第2の反強磁性層18に凹部を形成すると、図6に示されるような電極層19の傾斜面19aと凹部21の側面21aが連続面となる磁気検出素子が得られる。
【0218】
また、前記第2の磁場中アニールは、第2の反強磁性層18に凹部21を形成した後行ってもよい。
【0219】
また、本実施の形態では、基板11上に直接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して反強磁性層12が積層されてもよい。
【0220】
図2は、本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0221】
図2の磁気検出素子でも図1の磁気検出素子と同様に、基板11側から第1の反強磁性層12、第1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13c、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、及び強磁性層17が順に積層されている。
【0222】
第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、及び強磁性層17の材料は図1に示された磁気検出素子の製造方法において用いた材料と同じである。
【0223】
本実施の形態の薄膜磁気素子は、フリー磁性層15と非磁性材料層14との間に中間層61が設けられている点で図1に示された薄膜磁気素子と異なっている。中間層61はCoFe合金やCo合金で形成されることが好ましい。特にCoFe合金で形成されることが好ましい。
【0224】
中間層61が形成されたことで、非磁性材料層14との界面での金属元素等の拡散防止、及び、抵抗変化量(ΔR)、抵抗変化率(ΔR/R)の向上を図ることができる。なお中間層61は5Å程度で形成される。
【0225】
特に非磁性材料層14と接するフリー磁性層15を上記組成比のCoFeNi合金で形成すれば、非磁性材料層14との間における金属元素の拡散を適切に抑制できるから、フリー磁性層15と非磁性材料層14間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層61を形成する必要性は、フリー磁性層15をNiFe合金などのCoを含まない磁性材料で形成する場合に比べて少ない。
【0226】
しかしフリー磁性層15をCoFeNi合金で形成する場合でも、フリー磁性層15と非磁性材料層14との間にCoFe合金やCoからなる中間層61を設けることが、フリー磁性層15と非磁性材料層14間での金属元素の拡散をより確実に防止できる観点から好ましい。
【0227】
またフリー磁性層15と非磁性材料層14間に中間層61を設け、フリー磁性層15及び強磁性層17の少なくとも一方をCoFeNi合金で形成するとき、前記CoFeNi合金のFeの組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好ましい。
【0228】
これによりフリー磁性層15と強磁性層17間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)にまで大きくすることができる。
【0229】
よって、フリー磁性層15及び強磁性層17cの両側端部の磁化を適切に反平行状態にピン止めでき、サイドリーディングの発生を抑制することができる。
【0230】
なお本発明では、フリー磁性層15及び強磁性層17の双方を前記CoFeNi合金で形成することが好ましい。これにより、より安定して高いスピンフロップ磁界を得ることができる。
【0231】
また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層15及び強磁性層17の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。さらに、前記フリー磁性層15の軟磁気特性の向上を図ることができる。
【0232】
図3は、本発明の第3の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0233】
図3の磁気検出素子でも図1の磁気検出素子と同様に、基板11側から第1の反強磁性層12、第1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13B、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、及び強磁性層17が順に積層されている。
【0234】
第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、及び強磁性層17の材料は図1に示された磁気検出素子の製造方法において用いた材料と同じである。
【0235】
図3では、強磁性層17と第2の反強磁性層18の間に、非磁性層30及び他の反強磁性層31が形成されている。
【0236】
他の反強磁性層31は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0237】
他の反強磁性層31は、後述する図3の磁気検出素子の製造方法において、第1の反強磁性層12に交換異方性磁界を発生されるために磁場中熱処理する工程において、非磁性層30の酸化を防ぐためのものである。
【0238】
非磁性層30は、Ruによって形成され、膜厚は8〜11Åである。また、非磁性層は、Ru,Cu,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用いて形成することもできる。
また、第2の反強磁性層18と電極層19の間にTa,CRなどからなる電極下地層(保護層)が形成されてもよい。
【0239】
なお、フリー磁性層15と非磁性材料層14の間にCoなどからなる拡散防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層はフリー磁性層15と非磁性材料層14の相互拡散を防止する。また、第2固定磁性層13cと非磁性材料層14の間にCoなどからなる拡散防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層は第2固定磁性層13cと非磁性材料層14の相互拡散を防止する。
【0240】
図3に示される磁気検出素子では、強磁性層17が、第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層31との非磁性層30を介したRKKY相互作用によって磁化方向がトラック幅方向と反平行方向に固定され、さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層18の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向に平行な方向に揃えることが容易になっている。
【0241】
従って、第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層31と強磁性層17とのRKKY相互作用が比較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。なお、フリー磁性層15の磁化方向が固定磁性層13の磁化方向に対して直交していることが好ましい。
【0242】
本実施の形態では、第2の反強磁性層18、他の反強磁性層31、非磁性層30及び強磁性層17を貫通し、底面41bが非磁性中間層16内に位置している凹部41が形成されている。凹部41の底面41bのトラック幅方向の幅寸法がトラック幅寸法に等しい。凹部41の側面41a,41aは、トラック幅方向に対する垂直面となっている。
【0243】
本実施の形態でも、第2の反強磁性層18のトラック幅領域に対向した部位が先細りしない。フリー磁性層15の磁化方向は、凹部41の底面41bの下部に位置する領域以外のトラック幅方向両端部D,Dで反強磁性を発揮するために十分な膜厚を有する第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層31との交換結合によって固定される。
【0244】
フリー磁性層15の凹部41の底面41bの下部に位置する領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層31との交換結合によって磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0245】
従って、磁気検出素子のトラック幅Twは、凹部41の底面41bのトラック幅方向の幅寸法によって決定され、しかも、トラック幅Twから外れた領域で記録信号を読み取ってしまうサイドリーディングを防止することができる。
【0246】
上述したように、本発明では、凹部41は一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、基板11の表面に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法Twで凹部41を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定できる。
【0247】
また、磁気検出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0248】
さらに、本実施の形態では磁気検出素子の側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるように形成されることが可能なので、フリー磁性層15の幅方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0249】
また、図3に示される磁気検出素子では、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0250】
また、図4に示されるように、強磁性層17の上層に直接、他の反強磁性層31が積層されてもよい。図4の磁気検出素子では、強磁性層17の磁化方向は、他の反強磁性層31及び第2の反強磁性層18との交換結合によって図示X方向と反平行方向にそろえられる。
【0251】
さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層18の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向に揃えることが容易になっている。
【0252】
従って、第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層31と強磁性層17との交換結合が比較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。なお、フリー磁性層15の磁化方向が固定磁性層13の磁化方向に対して直交していることが好ましい。
【0253】
フリー磁性層15の磁化方向は、凹部41の底面41bの下部に位置する領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、確実に第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層31との交換結合によって固定される。
【0254】
フリー磁性層15の凹部41の底面41bの下部に位置する領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層31との交換結合によって磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0255】
また、図4に示される磁気検出素子でも、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0256】
また、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の実施の形態と同様に、第1の反強磁性層12と固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層18、他の反強磁性層31と強磁性層17との間の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる
また、図5に示されるように、非磁性層30の上層に第2の反強磁性層18が直接積層されてもよい。図5の磁気検出素子では、強磁性層17の磁化方向は、第2の反強磁性層18とのRKKY相互作用によって図示X方向と反平行方向にそろえられる。
【0257】
さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層18の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向に揃えることが容易になっている。
【0258】
従って、第2の反強磁性層18と強磁性層17とのRKKY相互作用が比較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。なお、フリー磁性層15の磁化方向が固定磁性層13の磁化方向に対して直交していることが好ましい。
【0259】
フリー磁性層15の磁化方向は、凹部41の底面41bの下部に位置する領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、確実に第2の反強磁性層18との磁気的結合によって固定される。
【0260】
フリー磁性層15の凹部41の底面41bの下部に位置する領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、第2の反強磁性層18とのRKKY相互作用によって磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0261】
また、図5に示される磁気検出素子でも、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0262】
また、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の実施の形態と同様に、第1の反強磁性層12と固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。
【0263】
このスピンバルブ型磁気検出素子においては、電極層19、19からフリー磁性層15、非磁性材料層14、固定磁性層13に定常電流が与えられ、図示Z方向に走行する磁気記録媒体からの漏れ磁界が図示Y方向に与えられると、フリー磁性層15の磁化方向が図示X方向から図示Y方向に向けて変動する。このフリー磁性層15内での磁化方向の変動と第2の固定磁性層13cの磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この抵抗変化に基づく電圧変化により磁気記録媒体からの漏れ磁界が検出される。
【0264】
図3に示された磁気検出素子の製造方法を説明する。
まず、基板11側から第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層非磁性層16、他の反強磁性層31からなる多層膜A2を形成する。
【0265】
第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17、非磁性層30及び他の反強磁性層31はスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって同一真空成膜装置中で連続成膜される。
【0266】
第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、及び強磁性層17の材料は図1に示された磁気検出素子の製造方法において用いた材料と同じである。
【0267】
非磁性層30は、Ruによって形成され、膜厚は8〜11Åである。また、非磁性層は、Ru,Cu,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用いて形成することもできる。
【0268】
他の反強磁性層31は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0269】
次に、多層膜A2を第1の熱処理温度、Y方向を向いた第1の大きさの磁界中で、第1の磁場中アニールを行い、第1の反強磁性層12に交換異方性磁界を発生させ、固定磁性層13の磁化方向を図示Y方向に固定する。本実施の形態では、前記第1の熱処理温度を270℃、磁界の第1の大きさを800k(A/m)としている。
【0270】
ここで、他の反強磁性層31の膜厚は0Åよりも大きく30Å以下である。他の反強磁性層31の膜厚が30Å以下であると、他の反強磁性層31を磁場中アニールにかけても不規則構造から規則構造への変態が生じず、非磁性層30を介した強磁性層17との間にRKKY相互作用に基づく交換異方性磁界が発生しない。従って、多層膜A2を第1の磁場中アニールにかけたときに、他の反強磁性層31には交換異方性磁界が発生せず、強磁性層17の磁化方向が図示Y方向に固定されることはない。
【0271】
多層膜A2を第1の磁場中アニールにかけたときに、他の反強磁性層31は、その表面から10〜20Å程度酸化する。そこで、多層膜A2の状態で他の反強磁性層31の表面をイオンミリングによって20Å程削り、酸化した部分を除去する。
【0272】
次に、多層膜A2上に、第2の反強磁性層である第2の反強磁性層18を成膜する。
【0273】
第2の反強磁性層18は、第1の反強磁性層12と同様に、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0274】
第2の反強磁性層18の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Å、例えば200Åである。
【0275】
ここで、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18を形成するための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0276】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0277】
第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層18として、これらの適切な組成範囲の合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、強磁性層との間に48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。
【0278】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0279】
なお、本実施の形態の磁気検出素子は、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成することができる。
【0280】
また、第2の反強磁性層18の上層にTaなどの非磁性材料からなる保護層を成膜してもよい。
【0281】
次に第2の反強磁性層18まで形成された多層膜を、第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、非磁性層30を介したRKKY相互作用によって第2の反強磁性層18と強磁性層17との間に交換異方性磁界を発生させ、強磁性層17の磁化方向を図示X方向と反平行方向に固定する。強磁性層17の磁化方向が図示X方向と反平行方向に固定されると、フリー磁性層15の磁化方向も非磁性中間層16を介した強磁性層17とのRKKY相互作用によって、図示X方向に固定される。本実施の形態では、前記第2の熱処理温度を250℃、磁界の第2の大きさを24k(A/m)としている。
【0282】
第2の反強磁性層18の交換異方性磁界は、第2の磁場中アニール工程において始めて生じる。従って、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、非磁性層30を介した第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けるためには、前記第2の熱処理温度を、第1の反強磁性層12による交換結合磁界が消失するブロッキング温度より低い温度に設定し、前記第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界より小さくするだけでよい。なお、前記第2の磁界の大きさを前記フリー磁性層及び強磁性層の飽和磁界及び前記フリー磁性層及び強磁性層の反磁界より大きく、また前記フリー磁性層と強磁性層の間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さくすることがより好ましい。また、第2の磁場中アニールをこれらの条件下で行えば、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層18を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層18と強磁性層17との間の交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。すなわち、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0283】
次に、第2の反強磁性層18上にレジストを積層し、第2の反強磁性層18上をトラック幅Twの間隔を開けてマスキングする。第2の反強磁性層18の前記レジストによってマスクされない部分を、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などによって、基板11の表面に対する垂直方向、すなわちトラック幅方向に対する垂直方向に削り込むことにより凹部41を形成する。凹部41の側面41a,41aは、トラック幅方向に対して垂直になっている。凹部41の底面41bが非磁性中間層16内に位置するように、凹部41を形成する。
【0284】
すなわち、強磁性層17の磁化方向は、凹部41の底面41bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、確実に第2の反強磁性層18及び他の反強磁性層31との交換結合によって固定される。従って、強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して積層されているフリー磁性層15の磁化方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ確実に強磁性層17とのRKKY相互作用により固定される。
【0285】
凹部41の底面41bに重なるフリー磁性層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0286】
従って、磁気検出素子のトラック幅は、前記凹部の幅寸法Twによって決定される。上述したように、本発明では、凹部41は一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層42を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、基板11の表面に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法Twで凹部41を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅Twを正確に規定できる。
【0287】
凹部41の形成後、凹部41の幅寸法(=トラック幅Tw)より広い幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジストを第2の反強磁性層18上に形成し、第2の反強磁性層18上であって、前記リフトオフ用のレジストによって覆われていない領域に電極層19,19をスパッタ法や蒸着法によって成膜する。電極層19,19は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成膜される。電極層19,19の成膜後、前記レジスト層を除去して磁気検出素子を得る。
【0288】
本製造方法によって製造された磁気検出素子は電極層19,19と凹部41との間にトラック幅方向の段差ができる。なお、第2の反強磁性層18上に前述したTa,Crなどからなる保護層を介して電極層19,19が積層されてもよい。このとき前記保護層は電極下地層として機能する。
【0289】
なお、上記説明では第2の反強磁性層18の上層に前記レジストを積層して、第2の反強磁性層18に凹部を形成した後、第2の反強磁性層18の上層に電極層19,19を積層したが、第2の反強磁性層18の上層に電極層19を成膜した後、電極層19をマスクとして第2の反強磁性層18に凹部を形成すると、図7に示されるような電極層19の傾斜面19aと凹部41の側面41aが連続面となる磁気検出素子が得られる。
【0290】
また、前記第2の磁場中アニールは、第2の反強磁性層18に凹部41を形成した後行ってもよい。
【0291】
また、本実施の形態では、基板11上に直接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して反強磁性層12が積層されてもよい。
【0292】
また図8に示される磁気検出素子のように電極層50,50が第1の反強磁性層12から第2の反強磁性層18まで積層された積層体の両側端部に接続されてもよい。
【0293】
本実施の形態の磁気検出素子は、非磁性材料層14やフリー磁性層15に比べて抵抗値の高い第2の反強磁性層18を介さずに、電極層50,50から非磁性材料層14及びフリー磁性層15付近にセンス電流を与える割合を向上させることができる。また、磁気抵抗変化率に寄与する前記積層体と電極層50,50との間の接続抵抗を低減させることができ、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)を大きくさせることができる。
【0294】
また、フリー磁性層15の単磁区化を保った状態で電極層50,50からフリー磁性層15付近に直接センス電流を与えることができるため、サイドリーディングを防止することができ、一層の高記録密度化に対応することができる。
【0295】
なお、一対の電極層50,50は、少なくともフリー磁性層15、非磁性材料層14、固定磁性層13の膜面方向両側に配置されるものであってもよい。
【0296】
なお、上述した実施の形態の磁気検出素子磁気検出素子において、固定磁性層13が単層の強磁性材料層として形成されてもよい。
【0297】
また、図3ないし図8に示された磁気検出素子でも、フリー磁性層15及び強磁性層17の少なくとも一方を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0298】
組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成はCoである。
【0299】
これにより、フリー磁性層15と強磁性層17間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)にまで大きくすることができる。
【0300】
また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層15及び強磁性層17の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。
【0301】
さらに、フリー磁性層15の軟磁気特性の向上、非磁性材料層14間でのNiの拡散による抵抗変化量(ΔR)や抵抗変化率(ΔR/R)の低減の抑制を適切に図ることが可能である。
【0302】
また、フリー磁性層15と非磁性材料層14との間に、CoFe合金やCo合金で形成される中間層91が設けられてもよい。
【0303】
中間層91が設けられる場合には、前記CoFeNi合金のFeの組成比を7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比を5原子%以上で15原子%以下で、残り組成比をCoとすることが好ましい。
【0304】
図1から図8に示された磁気検出素子を用いて磁気ヘッドを構成するときには、基板11と第1の反強磁性層12の間に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層、この下地層上に積層される磁性合金からなる下部シールド層、及びこの下部シールド上に積層される絶縁性材料からなる下部ギャップ層が形成される。磁気検出素子は前記下部ギャップ層上に積層される。また、この磁気検出素子上には、絶縁性材料からなる上部ギャップ層、及びこの上部ギャップ層上に積層される磁性合金からなる上部シールド層が形成される。また、前記上部シールド層上に書き込み用のインダクティブ素子が積層されてもよい。
【0305】
ところで図1ないし図8に示す磁気検出素子は、多層膜A1、A2のトラック幅方向(図示X方向)の両端部D上に電極層19が設けられ、前記電極層19から前記多層膜内に流れる電流が、前記多層膜内を各層の膜面に対して平行な方向に流れるCIP(current in the plane)型の磁気検出素子と呼ばれる構造である。
【0306】
一方、図9以降で説明する磁気検出素子は、前記多層膜の上下に電極層が設けられ、前記電極層から前記多層膜内に流れる電流が、前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流れるCPP(current perpendicular to the plane)型と呼ばれる構造であり、本発明は、前記CPP型の磁気検出素子にも適用可能である。
【0307】
CPP型の磁気検出素子においても、図1ないし図8のCIP型の磁気検出素子と同じ効果を期待することができる。
【0308】
すなわち本発明では、凹部21は一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向(図示X方向)に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法Twで凹部21を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定できる。
【0309】
また、磁気検出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0310】
さらに、本実施の形態では磁気検出素子の側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるように形成されることが可能なので、フリー磁性層15のトラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。以上によってサイドリーディングの発生を適切に抑制することが可能になる。
【0311】
ところで図9に示す磁気検出素子の多層膜A1の構造は図1に示す多層膜A1と同じ膜構成であるが、以下の点で構造が異なる。
【0312】
図9に示す多層膜A1の下には下部電極を兼ねた下部シールド層74が設けられている。前記下部シールド層74はパーマロイ(NiFe)などの磁性材料でメッキ形成されたものである。
【0313】
また図9に示すように前記第2反強磁性層18上には絶縁層72が設けられている。前記絶縁層72は、例えばAl23、SiO2、AlN、TiCなどの絶縁材料で形成される。
【0314】
また前記凹部21は、前記絶縁層72、第2の反強磁性層18及び強磁性層17を貫通し、前記凹部21の側面21aは、前記絶縁層72、第2の反強磁性層18及び強磁性層17の内側端面の連続面として形成されている。前記側面21aはトラック幅方向に対して垂直面となっている。
【0315】
図9に示すように前記凹部21の側面21aには、絶縁層73が形成されている。前記絶縁層73は、例えばAl23、SiO2、AlN、TiCなどの絶縁材料で形成される。
【0316】
本発明では、前記第2の反強磁性層18上に形成された絶縁層72と、前記凹部21の側面21aに形成された絶縁層73とは別体で形成される。後述する製造方法によれば、絶縁層72、73を別々に形成することができ、それぞれの絶縁層72、73は分流ロスを防ぐことができる適度な膜厚を有して形成される。
【0317】
また図9に示すように、前記絶縁層73上から前記凹部21の底面21bにかけて上部電極を兼ねた上部シールド層75が設けられている。
【0318】
このように図9に示す磁気検出素子では前記多層膜A1の上下に電極を兼ねたシールド層74、75が設けられ、前記シールド層74、75間に流れる電流は、前記多層膜A1内を膜面に対し垂直な方向に流れるようになっている。
【0319】
図9に示す磁気検出素子では、前記第2反強磁性層18の上面、および凹部21の側面21aが絶縁層72、73によって覆われているので、前記上部シールド層75から前記多層膜A1内に流れる電流が、第2反強磁性層18等に分流せず、前記電流は前記凹部21の底面21b上の絶縁層73、73間の間隔で決定されるトラック幅Tw内を適切に流れる。よって図9に示す構造の磁気検出素子であれば、電流経路がトラック幅Twから広がるのを抑制でき再生出力の大きいCPP型の磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0320】
また図9に示すように前記絶縁層72上から絶縁層73上、および凹部21の底面21b上にかけて点線で描かれた非磁性層76が設けられていてもよい。前記非磁性層76は、Ta、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuなどの非磁性導電材料で形成されることが好ましい。前記非磁性層76は、上部ギャップ層としての役割を有するものであるが、前記非磁性層76は前記凹部21の底面21b上にも形成されるため、電流経路の出入口となる凹部21の底面21b上を例えば絶縁材料からなる非磁性層76で覆うことは前記電流が多層膜A1内に流れにくくなるため好ましくない。よって本発明では前記非磁性層76を非磁性導電材料で形成することが好ましい。
【0321】
また図9に示す磁気検出素子では多層膜A1を構成する非磁性材料層14がCuなどの非磁性導電材料で形成されてもよいし、あるいは前記非磁性材料層14がAl23やSiO2などの絶縁材料で形成されてもよい。前者の磁気検出素子はスピンバルブGMR型磁気抵抗効果素子(CPP−GMR)と呼ばれる構造であり、後者の磁気検出素子はスピンバルブトンネル型磁気抵抗効果型素子(CPP−TMR)と呼ばれる構造である。
【0322】
トンネル型磁気抵抗効果型素子は、スピントンネル効果を利用して抵抗変化を生じさせるものであり、固定磁性層13とフリー磁性層15との磁化が反平行のとき、最も前記非磁性材料層14を介してトンネル電流が流れにくくなって、抵抗値は最大になり、一方、前記固定磁性層13とフリー磁性層15との磁化が平行のとき、最もトンネル電流は流れ易くなり抵抗値は最小になる。
【0323】
この原理を利用し、外部磁界の影響を受けてフリー磁性層15の磁化が変動することにより、変化する電気抵抗を電圧変化(低電流動作時)あるいは電流変化(低電圧動作時)としてとらえ、記録媒体からの洩れ磁界が検出されるようになっている。
【0324】
図10は、図2に示す磁気検出素子を図9と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図11は、図3に示す磁気検出素子を図9と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図12は、図4に示す磁気検出素子を図9と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図13は図5に示す磁気検出素子を図9と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図14は図6に示す磁気検出素子を図9と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、および図15は図7に示す磁気検出素子を図9と同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態である。
【0325】
すなわち図10ないし図15に示す磁気検出素子ではいずれも、第1反強磁性層12の下に下部電極を兼用した下部シールド層74が設けられ、また第2の反強磁性層18上には絶縁層72が設けられ、凹部21、41の側面21a、41aに絶縁層73が設けられ、さらに前記絶縁層72上、及び絶縁層73上から前記凹部21、41の底面21b、41b上にかけて上部電極を兼用した上部シールド層75が設けられている。
【0326】
図14及び図15に示す磁気検出素子での凹部21の側面21aは、底面21bから図示Z方向に離れるにしたがって徐々にトラック幅方向(図示X方向)の間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されているが、このように前記側面21aを傾斜面や湾曲面で形成すると、前記側面21aに適切な膜厚を有する絶縁層73を形成しやすくなり、分流ロスの低減を適切に図ることができて好ましい。
【0327】
図16及び図17に示す磁気検出素子は、図9ないし図15と同様にCPP型の磁気検出素子であるが、下部シールド層74の形状が図9ないし図15のそれとは異なっている。
【0328】
図16に示す実施形態は、図9と同じ多層膜A1の膜構成を有し、しかも第2の反強磁性層18上には絶縁層72が形成され、凹部21の側面21aには絶縁層73が形成され、さらに前記絶縁層72、73及び凹部21の底面21b上にかけて上部電極を兼用した上部シールド層75が設けられており、この点で図9と一致している。
【0329】
図9と異なるのは、下部電極を兼用した下部シールド層74のトラック幅方向(図示X方向)の中央部に、前記多層膜A1方向(図示Z方向)に突出した突出部74aが設けられ、この突出部74aの上面74a1が前記多層膜A1の下面に接しており、前記突出部74aから前記多層膜A1内に(あるいは多層膜A1から前記突出部74aに)電流が流れるようになっている点である。
【0330】
そして図16に示す実施形態では前記下部シールド層75のトラック幅方向(図示X方向)における両側端部74bと前記多層膜A1間に絶縁層77が設けられている。前記絶縁層77は、Al23、SiO2、AlNやTiCなどの絶縁材料で形成される。
【0331】
図16に示す実施形態では、下部シールド層74は、突出部74aの形成によって多層膜A1に対する電流経路が絞り込まれ、さらに前記下部シールド層74の両側端部74bと多層膜A1間に絶縁層77が設けられたことで、前記両側端部74bから前記多層膜A1内に電流が分流することを適切に抑制でき、より効果的に再生出力が大きく実効トラック幅が狭い磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0332】
図16に示す実施形態では、前記下部シールド層74の突出部74aの上面74a1のトラック幅方向(図示X方向)の幅寸法は領域Eのトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法と一致しているが、前記上面74a1の幅寸法が前記領域Eの幅寸法より広くてもよい。より好ましくは前記上面74a1の幅寸法がトラック幅Twと一致することである。これによってより効果的に多層膜A1に対しトラック幅Twの領域内にのみ電流を流すことができ再生出力の大きい磁気検出素子を製造することが可能である。
【0333】
また図16に示す実施形態では、前記下部シールド層74に形成された突出部74aのトラック幅方向(図示X方向)における両側面74a2は、前記突出部74aのトラック幅方向における幅寸法が、前記多層膜A1から離れる(図示Z方向と逆方向)にしたがって徐々に広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されているが、前記両側面74a2は、トラック幅方向(図示X方向)に対して垂直面であってもかまわない。
【0334】
図17に示す実施形態は、図16に示す実施形態と同じ形状の下部シールド層74を有している。すなわち図17に示す下部シールド層74のトラック幅方向(図示X方向)の中央部には、前記多層膜A1方向(図示Z方向)に突出した突出部74aが設けられ、この突出部74aの上面74a1が前記多層膜A1の下面に接しており、前記突出部74aから前記多層膜A1内に(あるいは多層膜A1から前記前記突出部74aに)電流が流れるようになっている。そして前記下部シールド層74のトラック幅方向(図示X方向)における両側端部74bと前記多層膜A1間に絶縁層77が設けられている。
【0335】
図17に示す実施形態では図16と異なって、第2の反強磁性層18上に絶縁層72が設けられておらず、また凹部21の両側面21aに絶縁層73が設けられていない。そして上部電極を兼用した上部シールド層75は前記第2の反強磁性層18上から前記凹部21の両側面21a上及び底面21b上にかけて直接接合されている。
【0336】
図17に示す実施形態では、図16に示す実施形態に比べて上部シールド層75と第2の反強磁性層18間、及び前記上部シールド層75と凹部21の両側面21a間が絶縁されていないので、電流経路はトラック幅Twよりも広がりやすく再生出力は劣るものと考えられるが、図26に示す従来に比べて、多層膜A1の下面側で、下部シールド層74に突出部74aの形成によって電流経路を絞り込むことができ、電流経路の広がりを抑えて再生出力の低下を抑制することができる。
【0337】
また図16及び図17に示す磁気検出素子では、下部シールド層74に形成された突出部74aの上面74a1と、その両側に形成された絶縁層77の上面とが同一平面で形成されていることが好ましい。これによって前記突出部74a上から絶縁層77上にかけて形成される多層膜A1の各層の膜面をトラック幅方向に、より平行に形成でき、再生特性に優れた磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0338】
なお図9ないし図17に示すCPP型の磁気検出素子ではいずれも下部シールド層74及び上部シールド層75を多層膜の上下に接して形成し、前記シールド層74、75に電極層の機能を持たせているが、このような構成によって電極層とシールド層とを別々に形成する必要性が無くなり、CPP型の磁気検出素子の製造を容易化することが可能になる。
【0339】
しかも前記電極機能とシールド機能とを兼用させれば、シールド層間の間隔で決定されるギャップ長G1を非常に短くすることができ(図9を参照、なお非磁性層76が設けられる場合は、非磁性層76の膜厚も含めてギャップ長Glが決定される)、今後の高記録密度化により適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0340】
ただし本発明では、図9ないし図17に示す実施形態に限るものではなく、前記多層膜の上面及び/または下面に、例えばAu、W、Cr、Taなどからなる電極層を設け、前記多層膜と反対側の前記電極層の面にギャップ層を介して磁性材料製のシールド層を設ける構成であってもかまわない。
【0341】
次に代表的に図14に示すCPP型の磁気検出素子の製造方法について以下に説明する。
【0342】
まずメッキ形成された磁性材料製の下部シールド層74上に、第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17、第2の反強磁性層18及び絶縁層72を連続スパッタ成膜する。熱処理条件等については上述した通りである。
【0343】
次に図18に示すように前記絶縁層72の上に露光現像によってトラック幅方向(図示X方向)の中央部に穴部78aが設けられたレジスト層78を形成する。前記レジスト層78の内側端面78bは、下面から上面にかけて徐々に前記穴部78aのトラック幅方向への間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成される。
【0344】
次に図18に示す矢印F方向からのイオンミリングによって前記レジスト層78に覆われていない絶縁層72、第2反強磁性層18、強磁性層17を完全に削り込み、さらに非磁性中間層16を途中まで削り込む(図18に示す点線部分の各層が除去される)。
【0345】
なお前記レジスト層78の内側端面78bが傾斜面あるいは湾曲面であるため、またイオンミリングのイオンビーム入射角Fが垂直方向から傾いているため、前記イオンミリングによる削り込みによって多層膜に形成された凹部21の両側端面21aも傾斜面あるいは湾曲面として形成される。そして前記レジスト層78を除去する。
【0346】
図19に示す工程では、前記絶縁層72上から前記凹部21の側面21a及び底面21bにかけてAl23、SiO2、AlNあるいはTiCなどの絶縁材料からなる絶縁層73をスパッタ成膜する。スパッタ法には、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法などを使用できる。
【0347】
ここで注意すべき点は、前記絶縁層73を形成する際のスパッタ角度θ1にある。図19に示すようにスパッタ方向Gは、多層膜の各層の膜面の垂直方向に対しθ1のスパッタ角度を有しているが本発明では前記スパッタ角度θ1をできる限り大きくして(すなわちより寝かせて)、凹部21の側面21aに絶縁層73が成膜されやすいようにすることが好ましい。例えば前記スパッタ角度θ1は50〜70°である。
【0348】
このように前記スパッタ角度θ1を大きくすることで、前記凹部21の側面21aに形成される絶縁層73のトラック幅方向(図示X方向)への膜厚T1を、第2反強磁性層72の上面及び凹部21の底面21bに形成される絶縁層73の膜厚T2よりも厚く形成できる。このように前記絶縁層73の膜厚を調整しないと次工程でのイオンミリングで、前記凹部21の側面21aの絶縁層73がすべて除去されてしまい、あるいは絶縁層73が残ってもその膜厚は非常に薄くなり、適切に分流ロスを低減させるための絶縁層として機能させることができない。
【0349】
次に図19に示すように多層膜の各層の膜面と垂直方向(図示Z方向と平行な方向)あるいは垂直方向に近い角度(多層膜の各層表面の垂直方向に対し0°〜20°程度)からイオンミリングを施す。このとき前記凹部21の底面21bに形成された絶縁層73を適切に除去するまでイオンミリングを施す。このイオンミリングによって第2反強磁性層72の上面に形成された絶縁層73も除去される。一方、前記凹部21の側面21aに形成された絶縁層73も若干削れるものの、前記凹部21の底面21bに形成された絶縁層73よりも厚い膜厚T1を有し、しかもイオンミリングのミリング方向Hは、前記凹部21の側面21aに形成された絶縁層73から見ると斜め方向になるため、凹部21の側面21aに形成された絶縁層73は、凹部21の底面21bに形成された絶縁層73に比べて削られ難く、よって前記凹部21の側面21aには適度な膜厚の絶縁層73が残される。
【0350】
その状態が図20である。前記凹部21の側面21aに残される絶縁層73のトラック幅方向における膜厚T3は5〜10nm程度であることが好ましい。
【0351】
図20に示すように前記第2反強磁性層18上面は絶縁層72によって覆われ、また前記凹部21の側面21aは前記絶縁層73によって覆われた状態になっている。そして必要ならば、前記絶縁層72、73から前記凹部21の底面21bにかけて図14に示す非磁性層76を形成した後、上部電極を兼ね備えた上部シールド層75をメッキ形成する。
【0352】
以上のようにして形成された磁気検出素子では、第2反強磁性層18上、および凹部21の側面21a上を適切に絶縁層72、73によって覆うことができ、シールド層から流れる電流の分流ロスを適切に抑制できるCPP型の磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0353】
なお図9ないし図13、および図15、16に示す多層膜の上側領域も図18ないし図20と同じ工程によって形成することができるので、説明を省略する。
【0354】
図16及び図17に示す磁気検出素子では下部シールド層74に突出部74a及び前記下部シールド層74の両側端部74bと多層膜間に絶縁層77を形成するものであるが、これはまず下部シールド層74をメッキやスパッタで形成し表面を平滑化するポリシングを施した後、前記下部シールド層74のトラック幅方向(図示X方向)の中央部上にレジスト層を形成し、このレジスト層に覆われていない前記下部シールド層74の両側端部74bをイオンミリングで途中まで削り込む。これによって前記下部シールド層74のトラック幅方向の中央部に突出部74aを形成することができる。
【0355】
さらに前記レジスト層に覆われていない前記下部シールド層74の両側端面74a上に絶縁層77をスパッタ成膜し、前記絶縁層77の上面が前記下部シールド層74の突出部74aの上面74a1とほぼ同一平面となった時点で前記スパッタ成膜を終了する。そして前記レジスト層を除去する。なお前記レジスト層を除去した後、前記下部シールド層74の突出部74aの上面74a1及び絶縁層77の上面をCMPなどを用いて研磨し、前記突出部74aの上面74a1と絶縁層77の上面を高精度に同一平面となるようにしてもよい。この場合、最初のポリシング工程は不要である。
【0356】
以上詳述した図9ないし図17に示すCPP型磁気検出素子では、その上に書き込み用のインダクティブ素子が積層されていてもよい。
【0357】
また図1ないし図17に示す磁気検出素子は、磁気センサやハードディスクなどに用いられる。
【0358】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明によれば、前記第2の反強磁性層及び前記強磁性層を貫通し、底面が前記非磁性中間層内に設けられ、この底面のトラック幅方向の幅寸法がトラック幅寸法に等しい凹部が形成されており、トラック幅が前記凹部の底面のトラック幅方向の幅寸法によって決定される。すなわち、前記凹部の底面に重なる部分でのみ、前記フリー磁性層などの外部磁界によって磁化方向が変化するフリー磁性層の磁化方向を変化させることができる。
【0359】
従って、トラック幅Twから外れた領域で記録信号を読み取ってしまうサイドリーディングを防止することができる。
【0360】
また、前記多層膜の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域が、実質的に記録磁界の再生に寄与し、磁気抵抗効果を発揮する感度領域となる。すなわち、本発明の磁気検出素子は、磁気検出素子の光学的トラック幅が磁気的トラック幅に等しくなり、不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0361】
しかも、前記凹部は、一様の厚さで成膜された前記第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法で前記凹部を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定できる。
【0362】
また、本発明では、前記凹部の底面が前記非磁性中間層内に位置しているので、前記第2の反強磁性層の下層にある強磁性層が、前記第2の反強磁性層との磁気的結合によって磁化方向がそろえられ、さらに、この強磁性層の下層に非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層が、前記強磁性層とのRKKY相互作用によって磁化方向が、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に、揃えられる。すなわち、前記第2の反強磁性層の下層において前記強磁性層、前記非磁性中間層、及び前記フリー磁性層がシンセティックフェリ構造となっており、前記フリー磁性層の磁化方向を一定方向に揃えることが容易になっている。従って、前記第2の反強磁性層と前記強磁性層との交換結合磁界が比較的弱くても、前記フリー磁性層の磁化方向を確実に、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。
【0363】
また本発明における磁気検出素子はCIP型の磁気検出素子でもCPP型の磁気検出素子でもどちらにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図2】本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図3】本発明の第3の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図4】本発明の第4の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図5】本発明の第5の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図6】本発明の第6の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図7】本発明の第7の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図8】本発明の第8の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図9】本発明の第9の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図10】本発明の第10の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図11】本発明の第11の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図12】本発明の第12の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図13】本発明の第13の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図14】本発明の第14の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図15】本発明の第15の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図16】本発明の第16の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図17】本発明の第17の実施の形態の磁気検出素子の断面図、
【図18】図14に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図19】図18の次に行なわれる一工程図、
【図20】図19の次に行なわれる一工程図、
【図21】バックド層によるスピンフィルター効果を説明するための様式説明図、
【図22】バックド層によるスピンフィルター効果を説明するための様式説明図、
【図23】フリー磁性層を積層フェリ構造としたときの前記フリー磁性層のヒステリシスループの概念図、
【図24】従来の磁気検出素子の断面図、
【図25】従来の磁気検出素子の製造工程を示す一工程図、
【図26】従来のCPP型の磁気検出素子の断面図、
【符号の説明】
11 基板
12 第1の反強磁性層
13 固定磁性層
13a 第1の固定磁性層
13b 非磁性中間層
13c 第2の固定磁性層
14 非磁性材料層
15 フリー磁性層
16 非磁性中間層
17 強磁性層
18 第2の反強磁性層
19 電極層
21、41 凹部
21a、41a (凹部の)側面
72、73、77 絶縁層
74 下部シールド層
74a 突出部
75 上部シールド層
76 非磁性層
78 レジスト層

Claims (25)

  1. 下から第1の反強磁性、この第1の反強磁性層によって磁化方向が固定された固定磁性層、非磁性材料層、第1磁性層、非磁性中間層、強磁性層及び第2の反強磁性層の順に積層された多層膜を有し、
    前記多層膜には、前記第2の反強磁性層及び前記強磁性層を貫通し、底面が前記非磁性中間層内に設けられ、この底面のトラック幅方向の幅寸法がトラック幅寸法に等しい凹部が形成されており、前記凹部の側面はトラック幅方向に対する垂直面となっており、
    前記凹部に隣接するトラック幅方向の両側端部では、前記第2の反強磁性層との磁気的結合により磁化方向が揃えられた、前記強磁性層との磁気的結合により、前記第1磁性層の磁化前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ向けて固定され、
    前記凹部の直下に位置する前記第1磁性層は、磁化が前記固定磁性層の磁化方向と交差する方向に向けられているとともに外部磁界により磁化方向が変化するフリー磁性層として機能することを特徴とする磁気検出素子。
  2. 前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている請求項1に記載の磁気検出素子。
  3. 前記強磁性層と前記第1磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成する請求項1または2に記載の磁気検出素子。
    組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成比はCoである。
  4. 前記第1磁性層と前記非磁性材料層と間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成する請求項1または2に記載の磁気検出素子。
  5. 前記強磁性層と前記第1磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成する請求項4記載の磁気検出素子。
    組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoである。
  6. 前記強磁性層及び前記第1磁性層を前記CoFeNiで形成する請求項3または5に記載の磁気検出素子。
  7. 前記強磁性層と前記第2の反強磁性層の間に、非磁性層が形成されている請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子。
  8. 前記非磁性層がRu,Cu,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用いて形成されている請求項に記載の磁気検出素子。
  9. 前記非磁性層がRuによって形成され、膜厚が8〜11Åである請求項に記載の磁気検出素子。
  10. 前記第2の反強磁性層の下層に、他の反強磁性層が形成されている請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子。
  11. 前記他の反強磁性層の厚さが0より大きく30Å以下である請求項10に記載の磁気検出素子。
  12. 前記固定磁性層は、単位面積あたりの磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層が、非磁性中間層を介して積層され、前記非磁性中間層を介して隣接する前記強磁性材料層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態である請求項1ないし11のいずれかに記載の磁気検出素子。
  13. 前記非磁性中間層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている請求項12に記載の磁気検出素子。
  14. 前記第1の反強磁性層と前記第2の反強磁性層が、同じ組成の反強磁性材料を用いて形成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の磁気検出素子。
  15. 前記第1の反強磁性層、あるいは、前記第2の反強磁性層、又は、前記第1の反強磁性層及び前記第2の反強磁性層は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成される請求項1ないし14のいずれかに記載の磁気検出素子。
  16. 前記多層膜のトラック幅方向の両側端部上には電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し平行な方向に流れる請求項1ないし15に記載の磁気検出素子。
  17. 前記多層膜の上下に電極層が設けられ、電流は前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流れる請求項1ないし15記載の磁気検出素子。
  18. 前記多層膜の上に設けられた上部電極層は、磁性材料で形成された上部シールド層である請求項17記載の磁気検出素子。
  19. 前記第2の反強磁性層上、および前記凹部のトラック幅方向の両側端面には絶縁層が設けられ、前記上部電極層は、前記絶縁層上から前記凹部の底面にかけて形成されている請求項17または18に記載の磁気検出素子。
  20. 前記第2の反強磁性層上に形成された絶縁層と、前記凹部のトラック幅方向の両側端面に形成された絶縁層は、別体で形成される請求項19記載の磁気検出素子。
  21. 前記多層膜の下に設けられた下部電極層は、磁性材料で形成された下部シールド層である請求項17ないし20のいずれかに記載の磁気検出素子。
  22. 前記下部電極層のトラック幅方向の中央には、前記多層膜方向に突出した突出部が設けられ、この突出部の上面が前記多層膜の下面と接し、前記下部電極層のトラック幅方向の両側端部と前記多層膜間には絶縁層が設けられる請求項17ないし21のいずれかに記載の磁気検出素子。
  23. 前記突出部の上面と、前記下部電極層の両側端部上に設けられた前記絶縁層の上面とは同一平面で形成される請求項22記載の磁気検出素子。
  24. 前記非磁性材料層は非磁性導電材料で形成される請求項1ないし23のいずれかに記載の磁気検出素子。
  25. 前記非磁性材料層は絶縁材料で形成される請求項17ないし23のいずれかに記載の磁気検出素子。
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