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JP3904447B2 - 磁気検出素子の製造方法 - Google Patents

磁気検出素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、磁気センサやハードディスクなどに用いられる磁気検出素子に係り、特に磁界検出能力を向上させることができる磁気検出素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図69は、従来の製造方法によって形成された磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面から見た断面図である。
【0003】
図69に示す磁気検出素子は、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(giant magnetoresistive)素子の1種であるスピンバルブ型磁気検出素子と呼ばれるものであり、ハードディスクなどの記録媒体からの記録磁界を検出するものである。
【0004】
このスピンバルブ型磁気検出素子は、下から基板8、反強磁性層1、固定磁性層(ピン(Pinned)磁性層)2、非磁性材料層3、フリー磁性層(Free)4で構成された多層膜9と、この多層膜9の上層に形成された一対の縦バイアス層6,6及びこの縦バイアス層6,6の上に形成された一対の電極層7,7とで構成されている。
【0005】
前記反強磁性層1及び縦バイアス層6,6にはFe−Mn(鉄−マンガン)合金膜やNi−Mn(ニッケル−マンガン)合金膜、固定磁性層2及びフリー磁性層4にはNi−Fe(ニッケル−鉄)合金膜、非磁性材料層3にはCu(銅)膜、また電極層7,7にはCr膜が一般的に使用される。
【0006】
図69に示すように、固定磁性層2の磁化は、反強磁性層1との交換異方性磁界によりY方向(記録媒体からの漏れ磁界方向;ハイト方向)に単磁区化され、フリー磁性層4の磁化は、前記縦バイアス層6,6からの交換異方性磁界の影響を受けてX方向に揃えられることが望ましい。
【0007】
すなわち固定磁性層2の磁化と、フリー磁性層4の磁化とが、直交することが望ましい。
【0008】
このスピンバルブ型磁気検出素子では、縦バイアス層6,6上に形成された電極層7,7から、フリー磁性層4、非磁性材料層3及び固定磁性層2に検出電流(センス電流)が与えられる。ハードディスクなどの記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられると、フリー磁性層4の磁化がXからY方向へ向けて変化する。このフリー磁性層4内での磁化の方向の変動と、固定磁性層2の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し(これを磁気抵抗効果という)、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで図69に示すように、フリー磁性層4上に一対の縦バイアス層6を設け、前記縦バイアス層6との交換結合磁界によって前記フリー磁性層4の磁化を制御する、いわゆるエクスチェンジバイアス方式は、前記フリー磁性層4のトラック幅方向(図示X方向)の両側にハードバイアス層を設けて前記フリー磁性層4の磁化制御を行う、いわゆるハードバイアス方式に比べて、今後の狭トラック化に適切に対応できる磁化制御方法であると考えられた。
【0010】
しかしながら以下に説明するように、従来の製法で形成されたエクスチェンジバイアス構造では、次のような問題点があった。
【0011】
従来、図69に示されるスピンバルブ型磁気検出素子を製造するときには、基板8上に、反強磁性層1、固定磁性層(ピン(Pinned)磁性層)2、非磁性材料層3、フリー磁性層(Free)4を順次連続成膜して多層膜9を形成し、さらに、この多層膜9の上層に縦バイアス層6,6及び電極層7,7を成膜していた。
【0012】
反強磁性層1から電極層7,7まで成膜した後に、まず固定磁性層2の磁化方向をY方向に揃えるための第1の磁場中アニールを行い、次にフリー磁性層4の磁化方向をX方向に揃えるための第2の磁場中アニールを行う必要がある。
【0013】
しかし、反強磁性層1から電極層7,7まで成膜した後に、第1の磁場中アニール及び第2の磁場中アニールを行うと、第2の磁場中アニールの際に反強磁性層1と固定磁性層2の界面に作用する交換異方性磁界がY方向からX方向に傾き、固定磁性層2の磁化方向とフリー磁性層4の磁化方向が非直交になり、出力信号波形の対称性が得られなくなる度合(アシンメトリー)が増大するという問題が生じていた。
【0014】
上述した問題は、特に反強磁性層1と縦バイアス層6が同じ組成を有する反強磁性材料によって形成されるときに顕著に現れる。
【0015】
また、図69のスピンバルブ型磁気検出素子を製造するときには、多層膜9を形成した後、図70に示すように多層膜9上にリフトオフ用のレジスト層Rを形成し、イオンビームスパッタ法などを用いて縦バイアス層6,6、及び電極層7,7を成膜する。レジスト層R上には、縦バイアス層6,6と同じ組成の層6a,6a及び電極層7,7と同じ組成の層7a,7aが形成される。
【0016】
レジスト層Rの両端部によって覆われている領域は、スパッタ粒子が積層されにくい。従って、レジスト層Rの両端部によって覆われている領域付近は、縦バイアス層6,6及び電極層7,7は膜厚が薄く形成され、図35及び図36に示されるように縦バイアス層6,6及び電極層7,7の膜厚方向寸法がトラック両脇部分S,Sにおいて減少する。
【0017】
このため、トラック両脇部分S,Sにおけるフリー磁性層4と縦バイアス層6,6との交換結合の効果が減少してしまう。その結果、図35におけるフリー磁性層4のトラック両脇部分S,Sの磁化方向が、X方向に完全に固定されず、外部磁界が印加されたときに変化してしまう。
【0018】
特に、磁気記録媒体における記録密度を向上させるために、狭トラック化を図った場合、本来トラック幅Twの領域内で読み取るべき磁気記録トラックの情報だけでなく、隣接する磁気記録トラックの情報を、トラック両脇部分S,Sの領域において読み取ってしまうという、サイドリーディングが発生する可能性が生じるという問題があった。
【0019】
また上記した問題は、図71に示すCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子の場合にも起こる。CPP型とは、図71に示すように、多層膜9の上下に電極層101、101が設けられ、電極層101、101からの電流が前記多層膜9内を膜面と垂直な方向に流れる構造のことである。一方、図69、70に示す磁気検出素子は、電極層7からの電流が前記多層膜9内を膜面と平行な方向に流れ、このような電流方向を有する磁気検出素子をCIP(current in the plane)型の磁気検出素子と呼んでいる。
【0020】
図71に示すCPP型の磁気検出素子の場合も、縦バイアス層6の膜厚方向寸法がトラック両脇部分S,Sにおいて減少するため、トラック両脇部分S,Sにおけるフリー磁性層4と縦バイアス層6,6との交換結合の効果が減少してしまい、前記フリー磁性層4のトラック両脇部分S,Sの磁化方向が、X方向に完全に固定されず、外部磁界が印加されたときに変化してしまうという問題を有していた。
【0021】
しかもCPP型の磁気検出素子にエクスチェンジバイアス方式を用いる場合、上記した問題に加えて電流の分流ロスをより適切に抑制する必要性があった。図71に示すCPP型の磁気検出素子では電極層101、101から多層膜9内を流れる電流が、一対の縦バイアス層6間の間隔で決定されるトラック幅Tw(光学的なトラック幅)よりも両側に広がって流れるため、トラック幅Tw以外の部分に流れる電流が分流ロスになって再生出力が低下したり、実効トラック幅が拡がるという問題を招いたのである。
【0022】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、サイドリーディングを抑えることのできる磁気検出素子を提供することを目的とする。
【0023】
また本発明は、CPP型の磁気検出素子において、サイドリーディングの発生を抑制すると共に、電流の分流ロスや実効トラック幅の拡がりを抑えることが可能な磁気検出素子を提供することを目的としている。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気検出素子の製造方法は、
(a)基板上に下から順に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、フリー磁性層、非磁性中間層、強磁性層、及び保護膜を有する多層膜を成膜する工程と、
(b)前記多層膜を、第1の熱処理温度、第1の大きさの磁界中で、磁場中アニールして前記固定磁性層の磁化方向を所定の方向に固定する工程と、
(c)前記保護膜、及び前記強磁性層を所定厚さ削る工程と、
(d)前記強磁性層を磁性材料を用いて再成膜し、さらに前記強磁性層上に第2の反強磁性層を連続成膜する工程と、
(e)前記第2の反強磁性層が積層された多層膜を、第2の熱処理温度、第2の大きさの磁界中で磁場中アニールすることにより、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に向ける工程と、
(f)前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対のレジストを積層し、前記第2の反強磁性層の前記レジストによって挟まれた部位をトラック幅方向に対して垂直方向に削り込むことにより凹部を形成する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0025】
本発明では、前記多層膜上に第2の反強磁性層を積層しない状態で、前記多層膜を、磁場中アニールして前記固定磁性層の磁化方向を所定の方向に固定するので、前記多層膜上に第2の反強磁性層を積層した状態では、前記第2の反強磁性層と強磁性層との間に交換異方性磁界が発生していない。
【0026】
すなわち、前記第2の反強磁性層による交換異方性磁界は、前記(e)の工程において始めて生じ、前記フリー磁性層の磁化方向を所定の方向に移動させることが容易になる。従って、前記フリー磁性層の磁化方向を、前記固定磁性層の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0027】
なお、前記(a)の工程と前記(d)の工程を、同一真空成膜装置内において行うことが好ましい。
【0028】
また、本発明の製造方法によって製造された磁気検出素子では、トラック幅が前記凹部の底面の幅寸法によって決定される。すなわち、前記凹部の底面に重なる部分でのみ、前記フリー磁性層などの外部磁界によって磁化方向が変化する磁性層の磁化方向を変化させることができる。しかも、前記凹部は、一様の厚さで成膜された前記第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法で前記凹部を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定できる。
【0029】
さらに、本発明では前記凹部の側面をトラック幅方向に対して垂直面となるようにすることが可能である。すなわち、トラック幅領域から外れた全領域において、第2の反強磁性層が反強磁性を発生するために充分な膜厚を有することができ、トラック幅領域から外れた全領域において前記フリー磁性層の磁化方向を確実に固定することができる。
【0030】
従って、磁気検出素子のトラック幅領域でのみ前記フリー磁性層の磁化方向を動かし、トラック幅領域周辺におけるサイドリーディングを防止することができる。
【0031】
または、本発明の磁気検出素子の製造方法は、
(g)基板上に下から順に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、フリー磁性層、非磁性中間層、強磁性層、及び他の反強磁性層を有する多層膜を成膜する工程と、
(h)前記多層膜を、第1の熱処理温度、第1の大きさの磁界中で、磁場中アニールして前記固定磁性層の磁化方向を所定の方向に固定する工程と、
(i)前記多層膜上に第2の反強磁性層を成膜する工程と、
(j)前記第2の反強磁性層が積層された多層膜を、第2の熱処理温度、第2の大きさの磁界中で磁場中アニールすることにより、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に向ける工程と、
(k)前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対のレジストを積層し、前記第2の反強磁性層の前記レジストによって挟まれた部位をトラック幅方向に対して垂直方向に削り込むことにより凹部を形成する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0032】
本発明でも、前記多層膜上に第2の反強磁性層を積層しない状態で、前記多層膜を、磁場中アニールして前記固定磁性層の磁化方向を所定の方向に固定するので、前記多層膜上に第2の反強磁性層を積層した状態では、前記第2の反強磁性層と強磁性層との間に交換異方性磁界が発生していない。
【0033】
すなわち、前記第2の反強磁性層による交換異方性磁界は、前記(j)の工程において始めて生じ、前記フリー磁性層の磁化方向を所定の方向に移動させることが容易になる。従って、前記フリー磁性層の磁化方向を、前記固定磁性層の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0034】
なお、前記(g)の工程を、同一真空成膜装置内において行うことが好ましい。
【0035】
また、本発明の製造方法によって製造された磁気検出素子でも、トラック幅が前記凹部の底面の幅寸法によって決定される。すなわち、前記凹部の底面に重なる部分でのみ、前記フリー磁性層などの外部磁界によって磁化方向が変化する磁性層の磁化方向を変化させることができる。しかも、前記凹部は、一様の厚さで成膜された前記第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法で前記凹部を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定できる。
【0036】
さらに、本発明では前記凹部の側面をトラック幅方向に対して垂直面となるようにすることが可能である。すなわち、トラック幅領域から外れた全領域において、第2の反強磁性層が反強磁性を発生するために充分な膜厚を有することができ、トラック幅領域から外れた全領域において前記フリー磁性層の磁化方向を確実に固定することができる。
【0037】
従って、磁気検出素子のトラック幅領域でのみ前記フリー磁性層の磁化方向を動かし、トラック幅領域周辺におけるサイドリーディングを防止することができる。
【0038】
さらに、本発明では、前記他の反強磁性層を伝導電子のスピン状態を保存する鏡面反射を生じる確率の高いエネルギーギャップを形成可能な材料によって構成することにより、前記他の反強磁性層を、伝導電子の平均自由行程を鏡面反射効果により延長する鏡面反射層として機能するようにできる。
【0039】
前記他の反強磁性層が鏡面反射層として機能するときは、前記フリー磁性層の膜厚が、15〜45Åの範囲に設定されることが好ましい。
【0040】
フリー磁性層の膜厚が15Åより薄いと強磁性材料層として機能するように形成することが難しくなり充分な磁気抵抗効果を得ることができない。
【0041】
また、フリー磁性層の膜厚が45Åより厚いと前記鏡面反射層に到達する前に散乱されてしまうアップスピンの伝導電子が増加して鏡面反射効果(specular effect)によって抵抗変化率が変化する割合が減少するため好ましくない。
【0042】
前記鏡面反射層となる前記他の反強磁性層は、例えばNiMnSb,PtMnSbなどの半金属ホイッスラー合金の、単層膜または多層膜として構成されることができる。
【0043】
これらの材料を用いることにより、隣接する層との間に、充分なポテンシャル障壁を形成することが可能であり、その結果充分な鏡面反射効果を得ることができる。
【0044】
なお、前記他の反強磁性層の厚さが0より大きく30Å以下であることが好ましい。
【0045】
前記他の反強磁性層の厚さが0より大きく30Å以下であると、前記(h)の工程において前記他の反強磁性層と強磁性層との間に交換結合磁界が発生しないので、前記強磁性層の磁化方向が、前記固定磁性層の磁化方向と同一方向に固定されることを防ぐことができる。従って、前記(i)の工程において、前記他の反強磁性層の上層に前記第2の反強磁性層を積層したときに、前記フリー磁性層の磁化方向が、前記固定磁性層の磁化方向と同一方向に固定されることを防ぐことができる。
【0046】
なお、前記他の反強磁性層の厚さが10Å以上30Å以下であることがより好ましい。
【0047】
また、前記(a)の工程において、前記強磁性層の上面に接して、非磁性層を積層してもよい。
【0048】
このとき、前記強磁性層は、前記非磁性層を介した前記第2の反強磁性層とのRKKY結合により、その磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ向けられる。
【0049】
前記第2の反強磁性層とのRKKY相互作用によって前記磁性層の磁化方向が揃えられるものは、前記第2の反強磁性層と前記磁性層とが直に接しているものよりも交換結合力を強くすることができる。
【0050】
なお、前記非磁性層を導電性材料によって形成することが好ましい。前記非磁性層は、例えば、Ru,Cu,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用いて形成することができる。特に、前記非磁性層がRuによって形成され、膜厚が8〜11Åであることが好ましい。
【0051】
本発明のように、前記非磁性が導電性材料によって形成されていると、前記非磁性層をスピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0052】
スピンバルブ型磁気検出素子にセンス電流を印加すると、伝導電子はおもに電気抵抗の小さい非磁性材料層付近を移動する。この伝導電子にはアップスピンとダウンスピンの2種類の電子が確率的に等量存在する。
【0053】
スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率は、これらの2種類の伝導電子の平均自由行程の行程差に対して正の相関を示す。
【0054】
ダウンスピンの伝導電子については、印加される外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層とフリー磁性層との界面で常に散乱され、フリー磁性層に移動する確率は低いまま維持され、その平均自由行程はアップスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて短いままである。
【0055】
一方、アップスピンの伝導電子については、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁性層の磁化方向と平行状態になったときに、非磁性材料層からフリー磁性層に移動する確率が高くなり、平均自由行程が長くなっている。これに対し、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁性層の磁化方向に対して平行状態から変化するに従って、非磁性材料層とフリー磁性層との界面で散乱される確率が増加し、アップスピンの伝導電子の平均自由行程が短くなる。
【0056】
このように外部磁界の作用によって、アップスピンの伝導電子の平均自由行程がダウンスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて大きく変化し、行程差が大きく変化する。すると、伝導電子全体の平均自由行程も大きく変化し、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)が大きくなる。
【0057】
ここで、フリー磁性層にバックド層が接続されると、フリー磁性層中を移動するアップスピンの伝導電子がバックド層内にまで移動することが可能になり、バックド層の膜厚に比例してアップスピンの伝導電子の平均自由行程をさらに伸ばすことができる。このため、いわゆるスピンフィルター効果を発現させることが可能となり、伝導電子の平均自由行程の行程差が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0058】
また、本発明では、前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0059】
組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成比はCoである。
【0060】
また、本発明では、前記フリー磁性層と前記非磁性材料層と間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成することが好ましい。
【0061】
前記中間層が形成されるときには、前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0062】
組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoである。
【0063】
本発明では、前記強磁性層及び前記フリー磁性層の両方を前記CoFeNiで形成することが好ましい。
【0064】
ところで本発明では、前記第2の反強磁性層の下層において前記強磁性層、前記非磁性中間層、及び前記フリー磁性層が積層フェリ構造となり、前記非磁性中間層を介して隣接する前記強磁性層とフリー磁性層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態である。
【0065】
この反平行磁化状態を適切に保つには、前記強磁性層と前記フリー磁性層の材質を改良して前記強磁性層と前記フリー磁性層間に働くRKKY相互作用における交換結合磁界を大きくする必要性がある。
【0066】
前記強磁性層と前記フリー磁性層を形成する磁性材料としてよく使用されるものにNiFe合金がある。NiFe合金は軟磁気特性に優れるため従来からフリー磁性層などに使用されていたが、前記強磁性層と前記フリー磁性層をNiFe合金を用いて積層フェリ構造にした場合、これらの層間の反平行結合力はさほど強くはない。
【0067】
そこで本発明では、前記強磁性層と前記フリー磁性層の材質を改良し、前記強磁性層と前記フリー磁性層間の反平行結合力を強め、トラック幅方向の両側に位置するフリー磁性層の両側端部が外部磁界に対し揺らがないようにし、サイドリーディングの発生を適切に抑制できるようにすべく、前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層、好ましくは両方の層にCoFeNi合金を使用することとしたのである。Coを含有させることで上記の反平行結合力を強めることができる。
【0068】
図30は、強磁性材料からなる薄膜を非磁性材料層を介して積層したいわゆる積層フェリ構造体のヒステリシスループの概念図である。例えば第1の強磁性材料層(F1)の単位面積あたりの磁気モーメント(飽和磁化Ms×膜厚t)は第2の強磁性材料層(F2)の単位面積あたりの磁気モーメントよりも大きいとする。また外部磁界を図示右方向に与えたとする。
【0069】
第1の強磁性材料層の単位面積あたりの磁気モーメントと第2の強磁性材料層の単位面積あたりの磁気モーメントとのベクトル和(|Ms・t(F1)+Ms・t(F2)|)で求めることができる単位面積あたりの合成磁気モーメントは、0磁界から外部磁界を大きくしていってもある時点までは、一定の大きさである。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが一定の大きさである外部磁界領域Aでは、前記第1の強磁性材料層と第2の強磁性材料層間に働く反平行結合力が、前記外部磁界よりも強いので、前記第1及び第2の強磁性材料層の磁化は適切に単磁区化され、反平行状態に保たれている。
【0070】
ところが、さらに図示右方向への外部磁界を大きくしていくと、強磁性材料層の単位面積あたりの合成磁気モーメントは傾斜角を有して大きくなっていく。これは、前記外部磁界の方が、前記第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層間に働く反平行結合力よりも強いから、単磁区化していた第1のフリー磁性層と第2のフリー磁性層の磁化が分散して多磁区化状態となり、ベクトル和で求めることができる単位面積あたりの合成磁気モーメントが大きくなっていくのである。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが大きくなっていく外部磁界領域Bでは、もはや前記強磁性材料層の反平行状態は崩れた状態にある。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが大きくなり始める出発点の外部磁界の大きさをスピンフロップ磁界(Hsf)と呼んでいる。
【0071】
さらに図示右方向の外部磁界を大きくしていくと、第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層の磁化は、再び単磁区化され、今度は外部磁界領域Aの場合と異なり、共に図示右方向に磁化され、この外部磁界領域Cでの単位面積あたりの合成磁気モーメントは一定値となる。この単位面積あたりの合成磁気モーメントが一定値となる時点での外部磁界の大きさを飽和磁界(Hs)と呼んでいる。
【0072】
前記CoFeNi合金を第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層に使用すると、NiFe合金を使用した場合に比べて反平行状態が崩れるときの磁界、いわゆるスピンフロップ磁界(Hsf)を十分に大きくできることがわかった。
【0073】
第1及び第2の強磁性材料層にNiFe合金(比較例)及びCoFeNi合金(実施例)を用いて上記したスピンフロップ磁界の大きさを求めるための実験を以下の膜構成を用いて行った。
【0074】
基板/非磁性材料層(Cu)/第1の強磁性材料層(2.4)/非磁性中間層(Ru)/第2の強磁性材料層(1.4)
なお括弧書きは膜厚を示し単位はnmである。
【0075】
比較例での第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層には、Niの組成比が80原子%でFeの組成比が20原子%からなるNiFe合金を使用した。このときのスピンフロップ磁界(Hsf)は約59(kA/m)であった。
【0076】
次に実施例での第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層には、Coの組成比が87原子%で、Feの組成比が11原子%で、Niの組成比が2原子%からなるCoFeNi合金を使用した。このときのスピンフロップ磁界(Hsf)は約293(kA/m)であった。
【0077】
このように第1の強磁性材料層及び第2の強磁性材料層にはNiFe合金を用いるよりもCoFeNi合金を用いる方が、スピンフロップ磁界を効果的に向上させることができることがわかった。
【0078】
すなわち、前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層、好ましくは両方の層にCoFeNi合金を使用すると、前記強磁性層と前記フリー磁性層のスピンフロップ磁界を効果的に向上させることができる。
【0079】
次に、CoFeNi合金の組成比について説明する。CoFeNi合金は、非磁性中間層であるRu層と接することでNiFe合金を用いる場合より、磁歪が1×6-6〜6×10-6程度、正側にシフトすることがわかっている。
【0080】
前記磁歪は−3×10-6から3×10-6の範囲内であることが好ましい。また保磁力は790(A/m)以下であることが好ましい。磁歪が大きいと、成膜ひずみや、他層間での熱膨張係数の差などによって応力の影響を受けやすくなるから前記磁歪は低いことが好ましい。また保磁力は低いことが好ましく、これによってフリー磁性層の外部磁界に対する磁化反転を良好にすることができる。
【0081】
本発明では、非磁性材料層/フリー磁性層/非磁性中間層/強磁性層の膜構成で形成されるとき、前記CoFeNiのFe組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好ましい。Feの組成比が17原子%よりも大きくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなると共に軟磁気特性を劣化させて好ましくない。
【0082】
またFeの組成比が9原子%よりも小さくなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、軟磁気特性の劣化を招き好ましくない。
【0083】
またNiの組成比が10原子%よりも大きくなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、非磁性材料層との間でNiの拡散等による抵抗変化量(ΔR)及び抵抗変化率(ΔR/R)の低下を招き好ましくない。
【0084】
またNiの組成比が0.5原子%よりも小さくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなって好ましくない。
【0085】
また上記した組成範囲内であれば保磁力を790(A/m)以下にすることができる。
【0086】
次に、前記フリー磁性層と前記非磁性材料層と間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成するとき、具体的には、例えば非磁性材料層/中間層(CoFe合金)/フリー磁性層/非磁性中間層/強磁性層の膜構成で形成されるとき、前記CoFeNiのFe組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好ましい。Feの組成比が15原子%よりも大きくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなると共に軟磁気特性を劣化させて好ましくない。
【0087】
またFeの組成比が7原子%よりも小さくなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなると共に、軟磁気特性の劣化を招き好ましくない。
【0088】
またNiの組成比が15原子%よりも大きくなると、磁歪が3×10-6よりも大きくなって好ましくない。
【0089】
またNiの組成比が5原子%よりも小さくなると、磁歪が−3×10-6よりも負に大きくなって好ましくない。
【0090】
また上記した組成範囲内であれば保磁力を790(A/m)以下にすることができる。
【0091】
なお、CoFeやCoで形成された中間層はマイナス磁歪を有しているため、前記中間層を第1のフリー磁性層と非磁性材料層間に介在させない膜構成の場合に比べて、CoFeNi合金のFe組成をやや少なくし、Ni組成をやや多くしている。
【0092】
また上記の膜構成のように、非磁性材料層とフリー磁性層間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を介在させることで、フリー磁性層と非磁性材料層間での金属元素の拡散をより効果的に防止することができて好ましい。
【0093】
本発明では、前記凹部の底面が前記第2の反強磁性層内に位置するように、前記凹部を形成することができる。
【0094】
前記凹部の底面が前記第2の反強磁性層内に位置すると、前記フリー磁性層と前記強磁性層が、前記非磁性中間層を介して隣接し、前記フリー磁性層の磁化方向と前記強磁性層の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となる。このとき、前記フリー磁性層、前記非磁性中間層及び前記強磁性層からなる多層膜がひとつのフリー磁性層、いわゆるシンセティックフェリフリー磁性層として機能する。シンセティックフェリフリー磁性層では、前記フリー磁性層の膜厚を薄くすることと同等の効果が得られ、フリー磁性層の磁化が変動しやすくなり、磁気抵抗効果素子の磁界検出感度が向上する。なお、前記フリー磁性層と前記強磁性層の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさは異なっている必要がある。前記フリー磁性層及び強磁性層の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさは、前記強磁性材料層の飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。
【0095】
なお、前記凹部の底面の下部に位置する前記第2の反強磁性層の領域の厚さ、または前記凹部の底面の下部に位置する前記第2の反強磁性層の領域と前記他の反強磁性層の厚さの合計を0より大きく30Å以下にすると、前記凹部の底面の下部に位置する前記第2の反強磁性層の領域、または前記凹部の底面の下部に位置する前記第2の反強磁性層の領域と前記他の反強磁性層の領域では前記強磁性層との間に交換結合磁界が発生しないので好ましい。
【0096】
なお、前記(g)の工程において、前記多層膜を前記他の反強磁性層を有するものとして形成した場合には、前記凹部の底面が前記他の反強磁性層内に位置するように、前記凹部を形成してもよい。
【0097】
このとき、前記凹部の底面の下部に位置する前記他の反強磁性層の領域の厚さを0より大きく30Å以下にすると、前記凹部の底面の下部に位置する前記他の反強磁性層の領域では、前記強磁性層との間に交換異方性磁界が発生しないので好ましい。
【0098】
あるいは、前記強磁性層の上面に接して、非磁性層が積層された多層膜を形成した場合には、前記凹部の底面が前記非磁性層内に位置するように前記凹部を形成してもよい。
【0099】
また、前記凹部の底面が前記強磁性層内に位置するように、前記凹部を形成しても、あるいは、前記凹部の底面が前記非磁性中間層内に位置するように、前記凹部を形成してもよい。
【0100】
前記凹部の底面が前記強磁性層内または前記非磁性中間層内に位置していると、前記第2の反強磁性層の下層にある強磁性層が、前記第2の反強磁性層との交換結合によって磁化方向が揃えられ、さらに、この強磁性層の下層に非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層の磁化方向が、前記強磁性層とのRKKY相互作用によって、前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に揃えられる。すなわち、前記第2の反強磁性層の下層において前記強磁性層、前記非磁性中間層、及び前記フリー磁性層がシンセティックフェリ構造となっており、前記フリー磁性層の磁化方向を一定方向に揃えることが容易になっている。従って、前記第2の反強磁性層と前記強磁性層との交換結合磁界が比較的弱くても、前記フリー磁性層の磁化方向を確実に一定方向に揃えることが容易になる。
【0101】
なお、前記フリー磁性層と前記強磁性層の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさは異なっている必要がある。前記フリー磁性層及び強磁性層の単位面積あたりの磁気モーメントの大きさは、前記強磁性材料層の飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。
【0102】
なお、前記(e)又は(j)の工程において、第2の熱処理温度を第1の反強磁性層のブロッキング温度より低い温度に設定し、第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層の交換異方性磁界より小さくすることが好ましい。
【0103】
なお、前記第2の磁界の大きさを前記フリー磁性層及び強磁性層の飽和磁界及び前記フリー磁性層及び強磁性層の反磁界より大きくすることがより好ましい。
【0104】
なお、本発明では、前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対の電極層を積層する工程を有することにより、前記多層膜の各層の膜面に対し平行な方向に電流が流れる磁気検出素子を形成できる。
【0105】
あるいは、本発明では、前記(f)または(k)の工程の代りに、
(l)または(u) 前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対の電極層を積層し、前記第2の反強磁性層の前記一対の電極層によって挟まれた部位を削り込むことにより前記凹部を形成する工程を有してもよい。
【0106】
なお、本発明では、前記多層膜の上下に電極層が設けられ、電流が前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流れるCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子を形成することができる。
【0107】
CPP型の磁気検出素子を形成するときには、
前記(a)あるいは(g)工程の前に、
(m)あるいは(v)基板上に、下部電極層を形成する工程を有することが必要であり、
さらに、前記(f)、(k)工程の代わりに以下の工程を有することが好ましい。
(n)あるいは(w)前記第2の反強磁性層上に絶縁層を成膜する工程と、
(o)あるいは(x)前記絶縁層上に、トラック幅方向の中央部に穴部を設けたレジストを積層し、前記絶縁層及び前記第2の反強磁性層の前記穴部に露出する部位を削り込むことにより凹部を形成する工程と、
(p)あるいは(y)前記凹部の底面に電気的に導通する上部電極層を形成する工程。
【0108】
本発明では、前記第2の反強磁性層上に前記絶縁層を設けることにより、前記上部電極層から前記第2反強磁性層へのセンス電流の分流を低減できる。
【0109】
また、上部電極層の一部が前記凹部の中に入り込むことによって、前記上部電極層のトラック幅方向の中央に、前記多層膜方向に突出した突出部を形成できるので、センス電流の電流路を絞り込むことができ出力の向上及びサイドリーディングの低減を図ることができる。
【0110】
また、前記(o)工程と前記(p)工程の間、あるいは、前記(x)工程と前記(y)工程の間に、
(q)あるいは(z)前記凹部から前記絶縁層上にかけて他の絶縁層を成膜する工程と、
(r)あるいは(α)前記凹部の底面上に積層された前記他の絶縁層を除去する工程と、
を有すると、
前記凹部の側面と前記上部電極層との間の絶縁もとることができるので好ましい。
【0111】
また、前記(m)工程と前記(a)工程の間、あるいは、前記(v)工程と前記(g)工程の間に、
(s)あるいは(β)前記下部電極層のトラック幅方向の中央に、前記多層膜方向に突出した突出部を形成する工程と
(t)あるいは(γ)前記下部電極層の前記突出部のトラック幅方向の両側部に絶縁層を設ける工程とを有し、
前記(a)あるいは(g)工程において、
前記突出部の上面が前記多層膜の下面と接するように、前記多層膜を形成すると、センス電流の電流路を絞り込むことができ出力の向上及びサイドリーディングの低減を図ることができるので好ましい。
【0112】
なお、前記(t)あるいは(γ)工程において、
前記突出部の上面と、前記下部電極層の両側端部上に設けられた前記絶縁層の上面を同一平面にすると、前記多層膜を平坦面上に形成することができるので好ましい。
【0113】
また、前記下部電極層及び/又は前記上部電極層を、磁性材料で形成すると、前記下部電極層及び/又は前記上部電極層をシールド層として機能させることができるので磁気検出素子の構造が単純になり製造が容易になる、また、ギャップ長を短くすることができ高記録密度化に適切に対応可能な磁気検出素子を製造できるので好ましい。
【0114】
さらに、前記上部電極層を、前記凹部の底面と電気的に導通する非磁性導電性材料で形成される層と磁性材料で形成される層が積層されたものにすると、前記上部電極層の磁性材料で形成される層から、前記フリー磁性層への磁気的な影響を低減できるので好ましい。
【0115】
また本発明では、前記非磁性材料層を非磁性導電材料で形成することが好ましい。前記非磁性材料層が非磁性導電材料で形成された磁気検出素子を、スピンバルブGMR型磁気抵抗効果素子(CPP−GMR)と呼んでいる。
【0116】
また本発明では、CPP型の磁気検出素子である場合、前記非磁性材料層を絶縁材料で形成してもよい。この磁気検出素子をスピンバルブトンネル型磁気抵抗効果型素子(CPP−TMR)と呼んでいる。
【0117】
また、前記固定磁性層を単位面積あたりの磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層が非磁性中間層を介して積層されたものとして形成されると、これら複数層の強磁性材料層が互いの磁化方向を固定しあい、全体として固定磁性層の磁化方向を一定方向に強力に固定することができる。すなわち、第1の反強磁性層と固定磁性層との交換結合磁界Hexを、例えば80〜160kA/mと、大きな値として得ることができる。従って、第1の反強磁性層によって固定磁性層の磁化方向をハイト方向に向けるための磁場中アニールを行った後の、第2の反強磁性層によって強磁性層またはフリー磁性層の磁化方向をトラック幅方向に向けるための磁場中アニールによって、固定磁性層の磁化方向がトラック幅方向に傾いて固定されることを防ぎつつ、第2の反強磁性層による縦バイアス磁界を大きくすることができる。
【0118】
また、固定磁性層の固定磁化による反磁界(双極子磁界)を、複数層の強磁性材料層の静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャンセルできる。これにより、固定磁性層の固定磁化による反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層の変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0119】
従って、フリー磁性層の変動磁化の方向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシンメトリーの小さい対称性の優れたスピンバルブ型磁気検出素子を得ることが可能になる。
【0120】
ここで、アシンメトリーとは、再生出力波形の非対称性の度合いを示すものであり、再生出力波形が与えられた場合、波形が対称であればアシンメトリーが小さくなる。従って、アシンメトリーが0に近づく程再生出力波形が対称性に優れていることになる。
【0121】
前記アシンメトリーは、フリー磁性層の変動磁化の方向と固定磁性層の固定磁化の方向とが直交しているときに0となる。アシンメトリーが大きくずれるとメディアからの情報の読み取りが正確にできなくなり、エラーの原因となる。このため、前記アシンメトリーが小さいものほど、再生信号処理の信頼性が向上することになり、スピンバルブ磁気検出素子として優れたものとなる。
【0122】
また、固定磁性層の固定磁化による反磁界(双極子磁界)Hdは、素子高さ方向において、その端部で大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、フリー磁性層内における単磁区化が妨げられる場合があるが、固定磁性層を上記の積層構造とすることにより双極子磁界HdをほぼHd=0とすることができ、これによってフリー磁性層内に磁壁ができて磁化の不均一が発生しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止することができる。
【0123】
なお、前記非磁性中間層を、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成することができる。
【0124】
ただし、本発明では、前記固定磁性層を単層の強磁性材料層として形成してもよい。
【0125】
本発明では、前記第1の反強磁性層と前記第2の反強磁性層を、同じ組成の反強磁性材料を用いて形成した場合でも、前記フリー磁性層の磁化方向を、前記固定磁性層の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0126】
前記第1の反強磁性層及び/又は前記第2の反強磁性層を、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成することが好ましい。
【0127】
ここで、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0128】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0129】
第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層として、これらの適切な組成範囲の合金を使用し、これを熱処理することにより、強磁性層との界面で大きな交換結合磁界を発生する第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。
【0130】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0131】
【発明の実施の形態】
図1から図6は、本発明の磁気検出素子の製造方法の第1の実施の形態を示す断面図である。各図において磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見ている。
【0132】
まず、基板11上に第1の反強磁性層12を積層する。さらに第1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13cからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層13が積層され、固定磁性層13の上層に非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17及び保護層18が積層されて、多層膜Aが形成される。図1は、多層膜Aが形成された状態を示す断面図である。
【0133】
第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17及び保護層18はスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜装置内で形成される。
【0134】
第1の反強磁性層12は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0135】
第1の反強磁性層12として、これらの合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する第1の反強磁性層12及び固定磁性層13の交換結合膜を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層12及び固定磁性層13の交換結合膜を得ることができる。
【0136】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0137】
第1の反強磁性層12の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Åである。
【0138】
第1の固定磁性層13a、第2の固定磁性層13c、フリー磁性層15、及び強磁性層17は、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合金、CoまたはCoFeにより形成されることが好ましい。また、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cは、同一の材料で形成されることが好ましい。また、フリー磁性層15及び強磁性層17は、同一の材料で形成されることが好ましい。
【0139】
また、非磁性中間層13b及び非磁性中間層16は、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0140】
非磁性材料層14は、固定磁性層13とフリー磁性層15との磁気的な結合を防止し、またセンス電流が主に流れる層であり、Cu,Cr,Au,Agなど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0141】
なお、保護層18は、多層膜Aを磁場中アニールにかけるときに、強磁性層17が酸化することを防ぐ機能を有するものであり、Taなどからなる。
【0142】
次に、図1の多層膜Aを第1の熱処理温度、Y方向を向いた第1の大きさの磁界中で、第1の磁場中アニールを行い、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間に交換異方性磁界を発生させ、固定磁性層13の磁化方向を図示Y方向に固定する。本実施の形態では、前記第1の熱処理温度を270℃、磁界の第1の大きさを800k(A/m)としている。
【0143】
多層膜Aを第1の磁場中アニールにかけたときに、保護層18は、その表面から10〜20Å程度酸化する。そこで、保護層18をイオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)によって除去する。
【0144】
さらに、図2に示されるように、強磁性層17を所定の厚さ削る。強磁性層17を削るのは、次の工程において、強磁性層17上に第2の反強磁性層19を積層するときに、強磁性層17上に第2の反強磁性層19を真空中で連続成膜することが必要なためである。強磁性層17の削り量t1は特に規定されないが、本実施の形態では、10Å削っている。
【0145】
次に、図3に示すごとく、図2に示された強磁性層17の研削後の表面17a上に、強磁性層17を再成膜し、さらに強磁性層17上に第2の反強磁性層19を連続成膜する。強磁性層17を再成膜するときには、図1の工程において最初に強磁性層17を成膜したときに用いた強磁性材料と同じ強磁性材料を用いる。ただし、強磁性層17の図2の工程において削られた厚さt1と、図3の工程において再成膜する分の強磁性層17の厚さは必ずしも同じでなくてよい。
【0146】
第2の反強磁性層19は、第1の反強磁性層12と同様に、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0147】
第2の反強磁性層19の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Å、例えば200Åである。
【0148】
ここで、第1の反強磁性層12及び第2の反強磁性層19を形成するための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0149】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0150】
第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層として、これらの適切な組成範囲の合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生することのできる第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、強磁性層との間に48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層及び第2の反強磁性層を得ることができる。
【0151】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0152】
なお、本実施の形態の磁気検出素子は、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層19を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成することができる。
【0153】
また、第2の反強磁性層19の上層にTaなどの非磁性材料からなる保護層を成膜してもよい。
【0154】
次に第2の反強磁性層19まで形成された多層膜Bを、第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、第2の反強磁性層19と強磁性層17との間に交換異方性磁界を発生させ、強磁性層17の磁化方向を図示X方向と反平行方向に固定する。本実施の形態では、前記第2の熱処理温度を250℃、磁界の第2の大きさを24k(A/m)としている。
【0155】
第2の反強磁性層19による交換異方性磁界は、第2の磁場中アニール工程において始めて生じる。従って、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間の交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層19による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けるためには、前記第2の熱処理温度を、第1の反強磁性層12による交換結合磁界が消失するブロッキング温度より低い温度に設定し、前記第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層12による交換異方性磁界より小さくするだけでよい。また、第2の磁場中アニールをこれらの条件下で行えば、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層19を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層19による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。すなわち、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0156】
なお、第2の磁場中アニール時の第2の磁界の大きさは、フリー磁性層15及び強磁性層17の飽和磁界、及びフリー磁性層15及び強磁性層17の反磁界より大きく、フリー磁性層15と強磁性層17との間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さいことが好ましい。
【0157】
次に、図4に示すように、第2の反強磁性層19上にレジスト20,20を積層し、第2の反強磁性層19上をトラック幅Twの間隔を開けてマスキングする。
【0158】
さらに、図5に示すように、第2の反強磁性層19のレジスト20,20によってマスクされない部分を、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などによって、基板11の表面11aに対する垂直方向、すなわちトラック幅方向(図示X方向)に対する垂直方向に削り込むことにより凹部21を形成する。凹部21の側面21a,21aは、トラック幅方向に対して垂直になっている。図5では、凹部21の底面21bが第2の反強磁性層19内に位置するように、凹部21を形成している。
【0159】
このとき、凹部21の底面21bの下部に位置する第2の反強磁性層19の領域の厚さt2を0より大きく30Å以下にする。
【0160】
本実施の形態のように、凹部21の底面21bの下部に位置する第2の反強磁性層19の領域の厚さt2を0より大きく30Å以下にすると、凹部21の底面21bに位置する第2の反強磁性層19の領域では、第2の磁場中アニールによって不規則−規則変態が生じず、強磁性層17との間に交換結合磁界が発生しない。
【0161】
第2の反強磁性層19はトラック幅領域から外れた全領域において、反強磁性を発生するために充分な膜厚を有し、トラック幅領域から外れた全領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向を確実に固定することができる。すなわち、強磁性層17の磁化方向は、凹部21の底面21bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層19との交換結合によって固定される。従って、強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して積層されているフリー磁性層15の磁化方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ強磁性層17とのRKKY相互作用により固定される。
【0162】
凹部21の底面21bに重なるフリー磁性層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0163】
従って、磁気検出素子のトラック幅は、前記凹部の幅寸法Twによって決定され、しかも、トラック幅Twから外れた領域で記録信号を読み取ってしまうサイドリーディングを防止することができる。上述したように、本発明では、凹部21は一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層19を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、基板11の表面11aに対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法Twで凹部21を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅Twを正確に規定できる。
【0164】
凹部21の形成後、図6に示すように凹部21の幅寸法(=トラック幅Tw)より広い幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジスト25を第2の反強磁性層19上に形成し、第2の反強磁性層19上であって、レジスト25によって覆われていない領域に電極層22,22をスパッタ法や蒸着法によって成膜する。電極層22,22は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成膜される。電極層22,22の成膜後、レジスト層25を除去して図7に示されるような磁気検出素子を得る。
【0165】
本実施の形態の製造方法によって形成された磁気検出素子は電極層22,22と凹部21との間にトラック幅方向の段差ができる。なお、第2の反強磁性層19上に前述したTa,Crなどからなる保護層を介して電極層22,22が積層されてもよい。
【0166】
なお、上記説明では第2の反強磁性層19の上層にレジスト20,20を積層して、第2の反強磁性層19に凹部を形成した後、第2の反強磁性層19の上層に電極層22,22を積層したが、第2の反強磁性層19の上層に電極層22を成膜した後、電極層22上にトラック幅方向にトラック幅寸法の間隔を開けて一対のレジストを積層して、電極層22及び第2の反強磁性層19に凹部を形成してもよい。
【0167】
また、前記第2の磁場中アニールは、第2の反強磁性層19に凹部21を形成した後行ってもよい。
【0168】
また、本実施の形態では、基板11上に直接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して反強磁性層12が積層されてもよい。
【0169】
なお、多層膜Aを形成するときに、フリー磁性層15と非磁性材料層14の間に、Coなどからなる拡散防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層はフリー磁性層15と非磁性材料層14の相互拡散を防止する。又、第2の固定磁性層13cと非磁性材料層14の間に、Coなどからなる拡散防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層は第2の固定磁性層13cと非磁性材料層14の相互拡散を防止する。
【0170】
また、フリー磁性層15及び強磁性層17は、それぞれの単位面積あたりの磁気モーメントが異なるように形成されている。単位面積あたりの磁気モーメントは、飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。従って、例えば、フリー磁性層15及び強磁性層17を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、フリー磁性層15及び強磁性層17の単位面積あたりの磁気モーメントを異ならせることができる。
【0171】
なお、フリー磁性層15と非磁性材料層14の間に、Coなどからなる拡散防止層が形成される場合には、フリー磁性層15の磁気モーメントと前記拡散防止層の単位面積あたりの磁気モーメントの和と、強磁性層17の単位面積あたりの磁気モーメントを異ならせることが好ましい。
【0172】
図7は、上述した本発明の実施の形態の製造方法によって製造された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0173】
図7の磁気検出素子では、凹部21の底面21bが縦バイアス層となる第2の反強磁性層19内に位置している。従って、フリー磁性層15と強磁性層17が、非磁性中間層16を介して隣接し、フリー磁性層15の磁化方向と強磁性層17の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となる。このとき、フリー磁性層15、非磁性中間層16及び強磁性層17からなる多層膜がひとつのフリー磁性層、すなわちシンセティックフェリフリー磁性層Fとして機能する。シンセティックフェリフリー磁性層Fでは、フリー磁性層15の膜厚を薄くして、フリー磁性層15の磁化を変動しやすくすることと同等の効果が得られ、磁気抵抗効果素子の磁界検出感度が向上する。
【0174】
フリー磁性層15の磁気モーメントと強磁性層17の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向がシンセティックフェリフリー磁性層Fの磁化方向となる。
【0175】
ただし、固定磁性層13の磁化方向との関係で出力に寄与するのはフリー磁性層15の磁化方向のみである。
【0176】
また、フリー磁性層と強磁性層の磁気的膜厚の関係が異ならされていると、シンセティックフェリフリー磁性層Fのスピンフロップ磁界を大きくできる。
【0177】
スピンフロップ磁界とは、磁化方向が反平行である2つの磁性層に対し、外部磁界を印加したときに、2つの磁性層の磁化方向が反平行でなくなる外部磁界の大きさを差す。
【0178】
図30は、シンセティックフェリフリー磁性層Fのヒステリシスループの概念図である。このM−H曲線は、シンセティックフェリフリー磁性層Fに対してトラック幅方向から外部磁界を印加したときの、シンセティックフェリフリー磁性層Fの磁化Mの変化を示したものである。なお、以下の説明中では、フリー磁性層15を第1フリー磁性層、強磁性層17を第2フリー磁性層、シンセティックフェリフリー磁性層Fを単にフリー磁性層と呼ぶことにする。
【0179】
また、図30中、F1で示す矢印は、第1フリー磁性層の磁化方向を表わし、F2で示す矢印は、第2フリー磁性層の磁化方向を表わす。
【0180】
図30に示すように、外部磁界が小さいときは、第1フリー磁性層と第2フリー磁性層がフェリ磁性状態、すなわち矢印F1及びF2の方向が反平行になっているが、外部磁界Hの大きさがある値を越えると、第1フリー磁性層と第2フリー磁性層のRKKY結合が壊され、フェリ磁性状態を保てなくなる。これが、スピンフロップ転移である。またこのスピンフロップ転移が起きるときの外部磁界の大きさがスピンフロップ磁界であり、図30ではHsfで示している。なお、図中Hcfは、フリー磁性層の磁化の保磁力を示している。
【0181】
第1フリー磁性層及び第2フリー磁性層の、それぞれの単位面積あたりの磁気モーメントが異なるように形成されているとフリー磁性層のスピンフロップ磁界Hsfが大きくなる。これにより、フリー磁性層がフェリ磁性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、フリー磁性層のフェリ磁性状態の安定度が増す。
【0182】
また本実施の形態では、フリー磁性層15及び強磁性層17の少なくとも一方を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0183】
組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成はCoである。
【0184】
これによりフリー磁性層15と強磁性層17間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)にまで大きくすることができる。
【0185】
よって、フリー磁性層15及び強磁性層17の両側端部の磁化を適切に反平行状態にピン止めでき、サイドリーディングの発生を抑制することができる。
【0186】
なおフリー磁性層15及び強磁性層17の双方を前記CoFeNi合金で形成することが好ましい。これにより、より安定して高いスピンフロップ磁界を得ることができ、フリー磁性層15と強磁性層17とを適切に反平行状態に磁化できる。
【0187】
また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層15と強磁性層17の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。
【0188】
さらに、フリー磁性層15の軟磁気特性の向上、非磁性材料層14間でのNiの拡散による抵抗変化量(ΔR)や抵抗変化率(ΔR/R)の低減の抑制を適切に図ることが可能である。
【0189】
なお、強磁性層17の厚さtf2は0.5〜2.5nmの範囲であることが好ましい。また、フリー磁性層15の厚さtf1は2.5〜4.5nmの範囲であることが好ましい。なお、フリー磁性層15の厚さtf1が3.0〜4.0nmの範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは3.5〜4.0nmの範囲であることである。フリー磁性層15の厚さtf1が前記の範囲を外れると、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率を大きくすることができなくなるので好ましくない。
【0190】
図7の磁気検出素子では、縦バイアス層である第2の反強磁性層19はトラック幅領域から外れた全領域(トラック幅方向両端部D,D)において反強磁性を発生するために充分な膜厚を有し、トラック幅領域から外れた全領域において強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向を確実に固定することができる。
【0191】
凹部21の底面21bに重なるフリー磁性層15及び強磁性層17の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向または図示X方向と反平行方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0192】
従って、磁気検出素子のトラック幅は、凹部21の幅寸法Twによって決定され、しかも、トラック幅Twから外れた領域で記録信号を読み取ってしまうサイドリーディングを防止することができる。
【0193】
また、第2の反強磁性層19との反強磁性結合は凹部21の底面21bに重ならないトラック幅方向両端部D,Dにのみ働き、凹部21の底面21bに重なる領域Eには作用しない。
【0194】
従って、第2の反強磁性層19に形成された凹部21の幅寸法として設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域が、実質的に記録磁界の再生に寄与し、磁気抵抗効果を発揮する感度領域となり、磁気検出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0195】
さらに、本実施の形態では磁気検出素子の側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるように形成されることが可能なので、フリー磁性層15のトラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0196】
また、図1の工程において前記第1の固定磁性層13aと前記第2の固定磁性層13cを単位面積あたりの磁気モーメントが異なるものとして形成している。従って、前記第1の固定磁性層13aと前記第2の固定磁性層13cを、前記非磁性中間層13bを介して積層されたものが、一つの固定磁性層13として機能する。
【0197】
第1の固定磁性層13aは反強磁性層12と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、第1の固定磁性層13aと反強磁性層12との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じ、第1の固定磁性層13aの磁化方向が図示Y方向に固定される。第1の固定磁性層13aの磁化方向が図示Y方向に固定されると、非磁性中間層13bを介して対向する第2の固定磁性層13cの磁化方向が、第1の固定磁性層13aの磁化方向と反平行の状態で固定される。
【0198】
なお、第1の固定磁性層13aの磁気モーメントと第2の固定磁性層13cの磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が固定磁性層13の磁化方向となる。
【0199】
このように、第1の固定磁性層13aと第2の固定磁性層13cの磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、第1の固定磁性層13aと第2の固定磁性層13cとが互いに他方の磁化方向を固定しあうので、全体として固定磁性層13の磁化方向を一定方向に安定させることができるので好ましい。
【0200】
第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cは、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ましい。また、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cは同一の材料で形成されることが好ましい。
【0201】
図7では、前記第1の固定磁性層13a及び前記第2の固定磁性層13cを同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの単位面積あたりの磁気モーメントを異ならせている。
【0202】
また、非磁性中間層13bは、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0203】
固定磁性層13が非磁性中間層13bの上下に第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cが積層されたものとして形成されると、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cが互いの磁化方向を固定しあい、全体として固定磁性層13の磁化方向を一定方向に強力に固定することができる。すなわち、第1の反強磁性層12と固定磁性層13との交換結合磁界Hexを例えば80〜160kA/mと、大きな値として得ることができる。従って、第1の反強磁性層12に接する第1の固定磁性層13aの磁化方向をハイト方向に向けるための第1の磁場中アニールを行った後の、トラック幅方向の磁界中の第2の磁場中アニールによって、固定磁性層13の磁化方向がトラック幅方向に傾いて固定されることを防ぎつつ、第2の反強磁性層19による縦バイアス磁界を大きくすることができる。
【0204】
また、本実施の形態では、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)を、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cの静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャンセルできる。これにより、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層15の変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0205】
従って、フリー磁性層15の変動磁化の方向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシンメトリーの小さい対称性の優れたスピンバルブ型磁気検出素子を得ることが可能になる。
【0206】
また、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)Hdは、素子高さ方向において、その端部で大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、フリー磁性層15内における単磁区化が妨げられる場合があるが、固定磁性層13を上記の積層構造とすることにより双極子磁界HdをほぼHd=0とすることができ、これによってフリー磁性層15内に磁壁ができて磁化の不均一が発生しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止することができる。
【0207】
このスピンバルブ型磁気検出素子においては、電極層22、22からシンセティックフェリフリー磁性層F、非磁性材料層14、固定磁性層13に定常電流が与えられ、図示Z方向に走行する磁気記録媒体からの漏れ磁界が図示Y方向に与えられると、シンセティックフェリフリー磁性層Fのうちフリー磁性層15の磁化方向が図示X方向から図示Y方向に向けて変動する。この第1のフリー磁性層15内での磁化方向の変動と第2の固定磁性層13cの磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この抵抗変化に基づく電圧変化により磁気記録媒体からの漏れ磁界が検出される。
【0208】
なお、図5に示された工程において凹部21を形成するときに、凹部21の底面21bが第2の反強磁性層19内に位置するようにしたが、この底面21bが強磁性層17内に位置するように凹部を形成して、図8に示される磁気検出素子を得ることもできる。
【0209】
図8の磁気検出素子では、トラック幅Twの領域内において第2の反強磁性層19を除去しているので、第2の反強磁性層19の厚みにばらつきがある場合でも、凹部21の底面21bに第2の反強磁性層19が残ることがないため、トラック幅Twを精度よく画定でき、高記録密度化に対応可能なスピンバルブ型磁気検出素子を得ることができる。また、第2の反強磁性層19を完全に除去することは簡単であるため、容易に製造することができる。
【0210】
または、底面21bが非磁性中間層16内に位置するように凹部21を形成して、図9に示される磁気検出素子を得ることもできる。
【0211】
図9に示される磁気検出素子では、強磁性層17が、第2の反強磁性層19との磁気的結合(交換結合)によって磁化方向がトラック幅方向(図示X方向)と反平行方向に固定され、さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層19の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向に揃えることが容易になっている。
【0212】
従って、第2の反強磁性層19と強磁性層17との交換結合磁界が比較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。
【0213】
また、図9に示される磁気検出素子では、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0214】
スピンフィルター効果について説明する。図31及び図32はスピンバルブ型磁気検出素子においてバックド層によるスピンフィルター効果を説明するための模式説明図であり、図31はバックド層がない構造例を示す模式図であり、図32はバックド層のある構造例を示す模式図である。
【0215】
巨大磁気抵抗GMR効果は、主として電子の「スピンに依存した散乱」によるものである。つまり磁性材料、ここではフリー磁性層の磁化方向に平行なスピン(例えばアップスピン)を持つ伝導電子の平均自由行程λ+と、磁化方向に逆平行なスピン(例えばダウンスピン)を持つ伝導電子の平均自由行程λ−の差を利用したものである。図31及び図32では、アップスピンを持つ伝導電子を上向き矢印で表わし、ダウンスピンを持つ伝導電子を下向き矢印で表わしている。電子がフリー磁性層を通り抜けようとするときに、この電子がフリー磁性層の磁化方向に平行なアップスピンを持てば自由に移動できるが、反対にダウンスピンを持ったときには直ちに散乱されてしまう。
【0216】
これは、アップスピンを持つ電子の平均自由行程λ+が、例えば、50オングストローム程度であるのに対して、ダウンスピンを持つ電子の平均自由行程λ−が6オングストローム程度であり、10分の1程度と極端に小さいためである。フリー磁性層115の膜厚は、6オングストローム程度であるダウンスピンを持つ電子の平均自由行程λ−よりも大きく、50オングストローム程度であるアップスピンを持つ電子の平均自由行程λ+よりも小さく設定されている。
【0217】
従って、電子がフリー磁性層115を通り抜けようとするときに、この電子がフリー磁性層115の磁化方向に平行なアップスピンを持てば自由に移動できるが、反対にダウンスピンを持ったときには直ちに散乱されてしまう(フィルタアウトされる)。
【0218】
固定磁性層113で発生し、非磁性材料層114を通過するダウンスピン電子は、フリー磁性層115と非磁性材料層114との界面付近で散乱され、フリー磁性層115にはほとんど到達しない。つまり、このダウンスピン電子は、フリー磁性層115の磁化方向が回転しても平均自由行程に変化はなく、GMR効果による抵抗変化率に影響しない。従ってGMR効果にはアップスピン電子の挙動のみを考えればよい。
【0219】
固定磁性層115で発生したアップスピン電子はこのアップスピン電子の平均自由行程λ+より薄い厚さの非磁性材料層114中を移動し、フリー磁性層115に到達し、アップスピン電子はフリー磁性層115内を自由に通過できる。これは、アップスピン電子がフリー磁性層115の磁化方向に平行なスピンを持っているためである。
【0220】
固定磁性層の磁化方向とフリー磁性層の磁化方向が反平行となる状態では、アップスピン電子はフリー磁性層115の磁化方向に平行なスピンを持った電子でなくなる。すると、アップスピン電子は、フリー磁性層115と非磁性材料層114との界面付近で散乱されることになり、アップスピン電子の有効平均自由行程が急激に減少する。すなわち、抵抗値が増大する。抵抗変化率は、アップスピン電子の有効平均自由行程の変化量と正の相関関係を有する。
【0221】
図32に示すように、バックド層Bsが設けられている場合には、フリー磁性層115を通過したアップスピン電子はバックド層Bsにおいて、このバックド層Bsの材料で決定される追加平均自由行程λ+bを移動した後散乱する。すなわち、バックド層Bsを設けたことにより、アップスピン電子の平均自由行程λ+が追加平均自由行程λ+b分だけ延びる。
【0222】
バックド層として機能する非磁性中間層16を有する本実施の形態では、アップスピンの伝導電子の平均自由行程を伸ばすことができる。このため、外部磁界の印加によるアップスピン電子の平均自由行程の変化量が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0223】
図10は、本発明の第4の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0224】
本実施の形態では、フリー磁性層15と非磁性材料層14との間に中間層61が設けられた多層膜A2aを有する点で図1から図7に示された磁気検出素子の製造方法と異なっている。中間層61はCoFe合金やCo合金で形成されることが好ましい。特にCoFe合金で形成されることが好ましい。
【0225】
中間層61が形成されることで、非磁性材料層14との界面での金属元素等の拡散防止、及び、抵抗変化量(ΔR)、抵抗変化率(ΔR/R)の向上を図ることができる。なお中間層61は5Å程度で形成される。
【0226】
特に非磁性材料層14と接するフリー磁性層15を上記組成比のCoFeNi合金で形成すれば、非磁性材料層14との間における金属元素の拡散を適切に抑制できるから、フリー磁性層15と非磁性材料層14間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層61を形成する必要性は、フリー磁性層15をNiFe合金などのCoを含まない磁性材料で形成する場合に比べて少ない。
【0227】
しかしフリー磁性層15をCoFeNi合金で形成する場合でも、フリー磁性層15と非磁性材料層14との間にCoFe合金やCoからなる中間層61を設けることが、フリー磁性層15と非磁性材料層14間での金属元素の拡散をより確実に防止できる観点から好ましい。
【0228】
またフリー磁性層15と非磁性材料層14間に中間層61を設け、フリー磁性層15及び強磁性層17の少なくとも一方をCoFeNi合金で形成するとき、前記CoFeNi合金のFeの組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好ましい。
【0229】
これによりフリー磁性層15と強磁性層17間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)にまで大きくすることができる。
【0230】
よって、フリー磁性層15及び強磁性層17の両側端部の磁化を適切に反平行状態にピン止めでき、サイドリーディングの発生を抑制することができる。
【0231】
なお本発明では、フリー磁性層15及び強磁性層17の双方を前記CoFeNi合金で形成することが好ましい。これにより、より安定して高いスピンフロップ磁界を得ることができる。
【0232】
また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層15及び強磁性層17の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。さらに、前記フリー磁性層15の軟磁気特性の向上を図ることができる。
【0233】
また、フリー磁性層15と非磁性材料層14との間に中間層61を設け、底面21bが非磁性中間層16内に位置するように凹部21を形成して図11に示される磁気検出素子を形成してもよい。
【0234】
中間層61はCoFe合金やCo合金で形成されることが好ましい。特にCoFe合金で形成されることが好ましい。
【0235】
図11に示される磁気検出素子では、強磁性層17が、第2の反強磁性層19との磁気的結合(交換結合)によって磁化方向がトラック幅方向(図示X方向)と反平行方向に固定され、さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向は、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層19の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向に揃えることが容易になっている。
【0236】
フリー磁性層15と非磁性材料層14間に中間層61を設ける本実施の形態では、フリー磁性層15及び強磁性層17の少なくとも一方をCoFeNi合金で形成するとき、前記CoFeNi合金のFeの組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoであることが好ましい。
【0237】
これによりフリー磁性層15と強磁性層17間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)にまで大きくすることができる。
【0238】
よって、フリー磁性層15及び強磁性層17の両側端部の磁化を適切に反平行状態にピン止めでき、サイドリーディングの発生を抑制することができる。
【0239】
なお本発明では、フリー磁性層15及び強磁性層17の双方を前記CoFeNi合金で形成することが好ましい。これにより、より安定して高いスピンフロップ磁界を得ることができる。
【0240】
また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層15及び強磁性層17の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。さらに、前記フリー磁性層15の軟磁気特性の向上を図ることができる。
【0241】
なお、図11に示される磁気検出素子でも、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0242】
図12から図16は、本発明の磁気検出素子の製造方法の実施の形態を示す断面図である。各図において磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見ている。
【0243】
まず、基板11上に第1の反強磁性層12を積層する。さらに第1の固定磁性層13a、非磁性中間層13b、第2の固定磁性層13cからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層13が積層され、固定磁性層13の上層に非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17、非磁性層30、及び他の反強磁性層31が積層されて、多層膜A1が形成される。図12は、多層膜A1が形成された状態を示す断面図である。
【0244】
第1の反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性材料層14、フリー磁性層15、非磁性中間層16、強磁性層17、非磁性層30、及び他の反強磁性層31はスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜装置内で形成される。
【0245】
第1の反強磁性層12及び他の反強磁性層31は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0246】
第1の反強磁性層12及び他の反強磁性層31として、これらの合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する第1の反強磁性層12及び他の反強磁性層31を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を発生させ、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第1の反強磁性層12及び他の反強磁性層31を得ることができる。
【0247】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0248】
第1の反強磁性層12の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Åである。なお、他の反強磁性層31の膜厚は、約30Åであり、他の反強磁性層31の膜厚がこの厚さであると、熱処理を施しても、交換結合磁界は発生しない。
【0249】
第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cは、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ましい。また、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cは同一の材料で形成されることが好ましい。
【0250】
また、非磁性中間層13bは、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0251】
非磁性材料層14は、固定磁性層13とフリー磁性層15との磁気的な結合を防止し、またセンス電流が主に流れる層であり、Cu,Cr,Au,Agなど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0252】
フリー磁性層15及び強磁性層17は、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ましい。フリー磁性層15及び強磁性層17は、同一の材料で形成されることが好ましい。
【0253】
非磁性層30は、Ruによって形成され、膜厚は8〜11Åである。また、非磁性層は、Ru,Cu,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用いて形成することもできる。
【0254】
次に、図12の多層膜A1を第1の熱処理温度、Y方向を向いた第1の大きさの磁界中で、第1の磁場中アニールを行い、第1の反強磁性層12に交換異方性磁界を発生させ、固定磁性層13の磁化方向を図示Y方向に固定する。本実施の形態では、前記第1の熱処理温度を270℃、磁界の第1の大きさを800k(A/m)としている。
【0255】
ここで、他の反強磁性層31の膜厚は30Åである。他の反強磁性層31の膜厚が30Å以下であると、他の反強磁性層31を磁場中アニールにかけても不規則構造から規則構造への変態が生じず、交換異方性磁界が発生しない。従って、多層膜A1を第1の磁場中アニールにかけたときに、他の反強磁性層31には交換異方性磁界が発生せず、強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向が図示Y方向に固定されることはない。
【0256】
多層膜A1を第1の磁場中アニールにかけたときに、他の反強磁性層31は、その表面から10〜20Å程度酸化する。そこで、多層膜A1の状態で他の反強磁性層31の表面をイオンミリングによって20Å程削り、酸化した部分を除去する。このように、本実施の形態では、多層膜A1の最上層に他の反強磁性層31が積層されているので、非磁性層30及び強磁性層17の酸化を防ぐことができる。ただし、非磁性層30上に他の反強磁性層31を積層せずに第1の磁場中アニールにかけ、非磁性層30の酸化した部分をイオンミリングによって削ってもよい。
【0257】
次に、図13に示すごとく、多層膜A1上に、第2の反強磁性層32を成膜する。
【0258】
第2の反強磁性層32は、第1の反強磁性層12と同様に、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0259】
第2の反強磁性層32の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Å、例えば200Åである。
【0260】
ここで、第2の反強磁性層32を形成するための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0261】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0262】
第2の反強磁性層32として、これらの適切な組成範囲の合金を使用し、これを熱処理することにより、第2の反強磁性層32,他の反強磁性層31と強磁性層17との間に大きな交換結合磁界を発生する交換結合膜を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、強磁性層との間に48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた第2の反強磁性層32を得ることができる。
【0263】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0264】
なお、本実施の形態の磁気検出素子は、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層32を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成することができる。
【0265】
また、第2の反強磁性層32の上層にTaなどの非磁性材料からなる保護層を成膜してもよい。
【0266】
次に第2の反強磁性層32まで形成された多層膜Bを、第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、第2の反強磁性層32,他の反強磁性層31と強磁性層17との間に、非磁性層30を介したRKKY相互作用による、交換異方性磁界を発生させ、強磁性層17の磁化方向を図示X方向と反平行方向に固定する。強磁性層17の磁化方向が図示X方向と反平行方向に固定されると、フリー磁性層15の磁化方向も非磁性中間層16を介した強磁性層17とのRKKY相互作用によって、強磁性層17の磁化方向と反平行方向に固定される。本実施の形態では、前記第2の熱処理温度を250℃、磁界の第2の大きさを24k(A/m)としている。
【0267】
第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31による交換異方性磁界は、第2の磁場中アニール工程において始めて生じる。従って、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けるためには、前記第2の熱処理温度を、第1の反強磁性層12による交換結合磁界が消失するブロッキング温度より低い温度に設定し、前記第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層12による交換異方性磁界より小さくするだけでよい。また、第2の磁場中アニールをこれらの条件下で行えば、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層32を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層32による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。すなわち、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0268】
なお、第2の磁場中アニール時の第2の磁界の大きさは、フリー磁性層15及び強磁性層17の飽和磁界、及びフリー磁性層15及び強磁性層17の反磁界より大きく、フリー磁性層15及び強磁性層17の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さいことが好ましい。
【0269】
次に、図14に示すように、第2の反強磁性層32上にレジスト40,40を積層し、第2の反強磁性層32上をトラック幅Twの間隔を開けてマスキングする。
【0270】
さらに、図15に示すように、第2の反強磁性層32のレジスト40,40によってマスクされない部分を、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などによって、基板11の表面11aに対する垂直方向、すなわちトラック幅方向に対する垂直方向に削り込むことにより凹部41を形成する。凹部の側面41a,41aは、トラック幅方向に対して垂直になっている。図15では、凹部41の底面41bが第2の反強磁性層32内に位置するように、凹部41を形成している。又凹部41の底面41bが他の反強磁性層31内に位置するようにしてもよい。
【0271】
このとき、第2の反強磁性層32の、凹部41の底面41bの下部に位置する領域の厚さと他の反強磁性層31の厚さの合計t3を、0より大きく30Å以下にする。本実施の形態のように、第2の反強磁性層32の、凹部41の底面41bの下部に位置する領域の厚さと他の反強磁性層31の厚さの合計t3を0より大きく30Å以下にすると、凹部41の底面41bの下部に位置する第2の反強磁性層32と他の反強磁性層31の領域では、第2の磁場中アニールによって不規則−規則変態が生じず、交換結合磁界が発生しない。
【0272】
すなわち、強磁性層17の磁化方向は、凹部41の底面41bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31との、非磁性層30を介したRKKY相互作用によって固定される。従って、強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して積層されているフリー磁性層15の磁化方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ強磁性層17とのRKKY相互作用により固定される。
【0273】
凹部41の底面41bに重なるフリー磁性層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0274】
従って、磁気検出素子のトラック幅は、前記凹部の幅寸法Twによって決定される。上述したように、本発明では、凹部41は一様の厚さで成膜された第2の反強磁性層32、もしくは第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、基板11の表面11aに対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法Twで凹部41を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅Twを正確に規定できる。
【0275】
凹部41の形成後、図16に示すように凹部41の幅寸法(=トラック幅Tw)より広い幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジスト42を第2の反強磁性層32上に形成し、第2の反強磁性層32上であって、レジスト42によって覆われていない領域に電極層43,43をスパッタ法や蒸着法によって成膜する。電極層43,43は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成膜される。電極層43,43の成膜後、レジスト層42を除去して、図17に示される磁気検出素子を得る。
【0276】
本実施の形態の製造方法によって形成された磁気検出素子は電極層43,43と凹部41との間にトラック幅方向の段差ができる。なお、第2の反強磁性層32上に前述したTa,Crなどからなる保護層を介して電極層43,43が積層されてもよい。
【0277】
なお、上記説明では第2の反強磁性層32の上層にレジスト40,40を積層して、第2の反強磁性層32に凹部を形成した後、第2の反強磁性層32の上層に電極層43,43を積層したが、第2の反強磁性層32の上層に電極層43を成膜した後、電極層43上にトラック幅方向にトラック幅寸法の間隔を開けて一対のレジストを積層して、電極層43及び第2の反強磁性層32に凹部を形成してもよい。
【0278】
また、前記第2の磁場中アニールは、第2の反強磁性層32、もしくは第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31に凹部41を形成した後行ってもよい。
【0279】
また、本実施の形態では、基板11上に直接第1の反強磁性層12が積層されているが、基板11上にアルミナ層及びTa等からなる下地層を介して反強磁性層12が積層されてもよい。
【0280】
なお、多層膜A1を形成するときに、フリー磁性層15と非磁性材料層14の間に、Coなどからなる拡散防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層はフリー磁性層15と非磁性材料層14の相互拡散を防止する。また、第2の固定磁性層13cと非磁性材料層14の間にCoなどからなる拡散防止層が形成されていてもよい。この拡散防止層は第2の固定磁性層13cと非磁性材料層14の相互拡散を防止する。
【0281】
また、フリー磁性層15及び強磁性層17は、それぞれの単位面積あたりの磁気モーメントが異なるように形成されている。単位面積あたりの磁気モーメントは、飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。従って、例えば、フリー磁性層15及び強磁性層17を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、フリー磁性層15及び強磁性層17の単位面積あたりの磁気モーメントを異ならせることができる。
【0282】
なお、フリー磁性層15と非磁性材料層14の間に、Coなどからなる拡散防止層が形成される場合には、フリー磁性層15の磁気モーメントと前記拡散防止層の単位面積あたりの磁気モーメントの和と、強磁性層17の単位面積あたりの磁気モーメントを異ならせることが好ましい。
【0283】
図17は、上述した本発明の実施の形態の製造方法によって製造された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0284】
図17の磁気検出素子では、凹部41の底面41bが縦バイアス層となる第2の反強磁性層32と他の反強磁性層31のうち第2の反強磁性層32内に位置している。従って、フリー磁性層15と強磁性層17が、非磁性中間層16を介して隣接し、フリー磁性層15の磁化方向と強磁性層17の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となる。このとき、フリー磁性層15、非磁性中間層16及び強磁性層17からなる多層膜がひとつのフリー磁性層、すなわちシンセティックフェリフリー磁性層Fとして機能する。シンセティックフェリフリー磁性層Fでは、フリー磁性層15の膜厚を薄くして、フリー磁性層15の磁化を変動しやすくすることと同等の効果が得られ、磁気抵抗効果素子の磁界検出感度が向上する。
【0285】
フリー磁性層15の磁気モーメントと強磁性層17の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向がシンセティックフェリフリー磁性層Fの磁化方向となる。
【0286】
ただし、固定磁性層13の磁化方向との関係で出力に寄与するのはフリー磁性層15の磁化方向のみである。
【0287】
フリー磁性層15及び強磁性層17の、それぞれの単位面積あたりの磁気モーメントが異なるように形成されているとシンセティックフリー磁性層Fのスピンフロップ磁界Hsfが大きくなる。これにより、シンセティックフリー磁性層Fがフェリ磁性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、フェリ磁性状態の安定度が増す。
【0288】
なお、強磁性層17の厚さtf2は0.5〜2.5nmの範囲であることが好ましい。また、フリー磁性層15の厚さtf1は2.5〜4.5nmの範囲であることが好ましい。なお、フリー磁性層15の厚さtf1が3.0〜4.0nmの範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは3.5〜4.0nmの範囲であることである。フリー磁性層15の厚さtf1が前記の範囲を外れると、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率を大きくすることができなくなるので好ましくない。
【0289】
図17の磁気検出素子では、第2の反強磁性層32はトラック幅領域から外れた全領域(トラック幅方向両端部D,D)において反強磁性を発生するために充分な膜厚を有し、トラック幅領域から外れた全領域において強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向を確実に固定することができる。また、本実施の形態のように、縦バイアス層である第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31とのRKKY相互作用によって強磁性層17の磁化方向が揃えられるものは、縦バイアス層である第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31と強磁性層17とが直に接しているものよりも交換結合力を強くすることができる。
【0290】
凹部41の底面41bに重なるフリー磁性層15及び強磁性層17の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向または図示X方向と反平行方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0291】
従って、磁気検出素子のトラック幅は、凹部41の幅寸法Twによって決定され、しかも、トラック幅Twから外れた領域で記録信号を読み取ってしまうサイドリーディングを防止することができる。
【0292】
また、縦バイアス層である第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31と強磁性層17との間の交換結合は凹部41の底面41bに重ならないトラック幅方向両端部D,Dにのみ働き、凹部41の底面41bに重なる領域Eには作用しない。
【0293】
従って、縦バイアス層である第2の反強磁性層32と他の反強磁性層31のうち第2の反強磁性層32に形成された凹部41の幅寸法として設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域が、実質的に記録磁界の再生に寄与し、磁気抵抗効果を発揮する感度領域となり、磁気検出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0294】
さらに、本実施の形態では磁気検出素子の側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるように形成されることが可能なので、フリー磁性層15の幅方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0295】
また、図1の工程において前記第1の固定磁性層13aと前記第2の固定磁性層13cを単位面積あたりの磁気モーメントが異なるものとして形成している。従って、前記第1の固定磁性層13aと前記第2の固定磁性層13cを、前記非磁性中間層13bを介して積層されたものが、一つの固定磁性層13として機能する。
【0296】
第1の固定磁性層13aは反強磁性層12と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、第1の固定磁性層13aと反強磁性層12との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じ、第1の固定磁性層13aの磁化方向が図示Y方向に固定される。第1の固定磁性層13aの磁化方向が図示Y方向に固定されると、非磁性中間層13bを介して対向する第2の固定磁性層13cの磁化方向が、第1の固定磁性層13aの磁化方向と反平行の状態で固定される。
【0297】
なお、第1の固定磁性層13aの磁気モーメントと第2の固定磁性層13cの磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が固定磁性層13の磁化方向となる。
【0298】
このように、第1の固定磁性層13aと第2の固定磁性層13cの磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、第1の固定磁性層13aと第2の固定磁性層13cとが互いに他方の磁化方向を固定しあうので、全体として固定磁性層13の磁化方向を一定方向に安定させることができるので好ましい。
【0299】
第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cは、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にNiFe合金またはCoにより形成されることが好ましい。また、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cは同一の材料で形成されることが好ましい。
【0300】
図17では、前記第1の固定磁性層13a及び前記第2の固定磁性層13cを同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの単位面積あたりの磁気モーメントを異ならせている。
【0301】
また、非磁性中間層13bは、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0302】
固定磁性層13が非磁性中間層13bの上下に第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cが積層されたものとして形成されると、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cが互いの磁化方向を固定しあい、全体として固定磁性層13の磁化方向を一定方向に強力に固定することができる。すなわち、第1の反強磁性層12と固定磁性層13との交換結合磁界Hexを例えば80〜160kA/mと、大きな値として得ることができる。従って、第1の反強磁性層12に接する第1の固定磁性層13aの磁化方向をハイト方向に向けるための第1の磁場中アニールを行った後の、トラック幅方向の磁界中における第2の磁場中アニールによって、固定磁性層13の磁化方向がトラック幅方向に傾いて固定されることを防ぎつつ、第2の反強磁性層32による縦バイアス磁界を大きくすることができる。
【0303】
また、本実施の形態では、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)を、第1の固定磁性層13a及び第2の固定磁性層13cの静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャンセルできる。これにより、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層15の変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0304】
従って、フリー磁性層15の変動磁化の方向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシンメトリーの小さい対称性の優れたスピンバルブ型磁気検出素子を得ることが可能になる。
【0305】
また、固定磁性層13の固定磁化による反磁界(双極子磁界)Hdは、素子高さ方向において、その端部で大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、フリー磁性層15内における単磁区化が妨げられる場合があるが、固定磁性層13を上記の積層構造とすることにより双極子磁界HdをほぼHd=0とすることができ、これによってフリー磁性層15内に磁壁ができて磁化の不均一が発生しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止することができる。
【0306】
また、非磁性層30を導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0307】
また、本実施の形態では、他の反強磁性層31を鏡面反射層として形成することも可能である。他の反強磁性層31を鏡面反射層として形成するためには、他の反強磁性層31を、例えばNiMnSb,PtMnSbなどの半金属ホイッスラー合金の、単層膜または多層膜として形成すればよい。
【0308】
これらの材料を用いることにより、隣接する層との間に、充分なポテンシャル障壁を形成することが可能であり、その結果充分な鏡面反射効果を得ることができる。
【0309】
鏡面反射効果について説明する。図33及び図34は、スピンバルブ型磁気検出素子において鏡面反射層S1による鏡面反射効果を説明するための模式説明図である。スピンフィルター効果の説明において上述したように、GMR効果では固定磁性層113の固定磁化方向によって規定されるアップスピン電子の挙動のみを考えればよい。
【0310】
固定磁性層の磁化方向とフリー磁性層の磁化方向が平行となる状態では、図33及び図34に示すように、アップスピン電子は、非磁性材料層114からフリー磁性層115にまで到達する。そして、フリー磁性層115内部を移動してフリー磁性層115と鏡面反射層S1との界面付近に到達する。
【0311】
ここで図33に示す鏡面反射層がない場合には、アップスピン電子がフリー磁性層115中を移動し、その上面において散乱する。このため、平均自由行程は図に示すλ+となる。
【0312】
一方、図34のように、鏡面反射層S1がある場合には、フリー磁性層115と鏡面反射層S1との界面付近にポテンシャル障壁が形成されるため、アップスピン電子がフリー磁性層115と鏡面反射層S1との界面付近で鏡面反射(鏡面散乱)する。
【0313】
通常、伝導電子が散乱した場合には、その電子の持っているスピン状態(エネルギー、量子状態など)は変化する。しかし、鏡面散乱した場合には、このアップスピン電子はスピン状態が保存されたまま反射される確率が高く、再びフリー磁性層115中を移動することになる。つまり、鏡面反射よって、アップスピンの伝導電子のスピン状態が維持されるので、あたかも散乱されなかったようにフリー磁性層中を移動することになる。
【0314】
これは、アップスピン電子が鏡面反射した分、反射平均自由行程λ+sだけ平均自由行程が延びたことを意味する。
【0315】
固定磁性層の磁化方向とフリー磁性層の磁化方向が反平行となる状態では、アップスピン電子はフリー磁性層115の磁化方向に平行なスピンを持った電子でなくなる。すると、アップスピン電子は、フリー磁性層115と非磁性材料層114との界面付近で散乱されることになり、アップスピン電子の有効平均自由行程が急激に減少する。すなわち、抵抗値が増大する。抵抗変化率は、アップスピン電子の有効平均自由行程の変化量と正の相関関係を有する。
【0316】
鏡面反射層として機能する他の反強磁性層31を有する本実施の形態では、アップスピンの伝導電子の平均自由行程を伸ばすことができる。このため、外部磁界の印加によるアップスピン電子の平均自由行程の変化量が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0317】
スピンフィルター効果、鏡面反射効果によるアップスピンの伝導電子とダウンスピンの伝導電子の平均自由行程差の拡大はフリー磁性層の膜厚が比較的薄い場合により効果を発揮する。
【0318】
このスピンバルブ型磁気検出素子においては、電極層43、43からシンセティックフェリフリー磁性層F、非磁性材料層14、固定磁性層13に定常電流が与えられ、図示Z方向に走行する磁気記録媒体からの漏れ磁界が図示Y方向に与えられると、シンセティックフェリフリー磁性層Fのうちフリー磁性層15の磁化方向が図示X方向から図示Y方向に向けて変動する。この第1のフリー磁性層15内での磁化方向の変動と第2の固定磁性層13cの磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この抵抗変化に基づく電圧変化により磁気記録媒体からの漏れ磁界が検出される。
【0319】
なお、図15に示された工程において凹部41を形成するときに、凹部41の底面41bが第2の反強磁性層32内に位置するようにしたが、この底面41bが強磁性層17内に位置するように凹部41を形成して、図18に示される磁気検出素子を得ることもできる。
【0320】
図18の磁気検出素子では、トラック幅Twの領域内において第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31を完全に除去しているので、縦バイアス層である第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31の厚みにばらつきがある場合でも、凹部41の底面41bに縦バイアス層が残ることがないため、トラック幅Twを精度よく画定でき、高記録密度化に対応可能なスピンバルブ型磁気検出素子を得ることができる。また、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31を完全に除去することは簡単であるため、容易に製造することができる。
【0321】
または、底面41bが非磁性中間層16内に位置するように凹部41を形成して、図19に示される磁気検出素子を得ることもできる。
【0322】
図19に示される磁気検出素子では、強磁性層17が、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31との非磁性層30を介したRKKY相互作用によって磁化方向がトラック幅方向(図示X方向)と反平行方向に固定され、さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層32の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向に揃えることが容易になっている。
【0323】
従って、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31と強磁性層17とのRKKY相互作用が比較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。
【0324】
また、図18に示される磁気検出素子では、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0325】
また、図12に示された工程において、強磁性層17の成膜後、非磁性層30を積層せず、強磁性層17の上層に他の反強磁性層31を直接積層した多層膜を形成し、この多層膜を第1の磁場中アニールにかけ、その後前記多層膜上に第2の反強磁性層32を積層し、例えば図20に示される磁気検出素子を得てもよい。
【0326】
図20の磁気検出素子は、強磁性層17の上層に他の反強磁性層31及び第2の反強磁性層32が積層されているため、強磁性層17の磁化方向は、他の反強磁性層31及び第2の反強磁性層32との交換結合によって図示X方向と反平行方向に揃えられる。
【0327】
さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわち、縦バイアス層となる第2の反強磁性層32、他の反強磁性層31及び強磁性層17の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向に揃えることが容易になっている。
【0328】
従って、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31と強磁性層17との交換結合が比較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。
【0329】
フリー磁性層15の磁化方向は、凹部41の底面41bの下部に位置する領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31との交換結合によって固定される。
【0330】
フリー磁性層15の凹部41の底面41bの下部に位置する領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31との交換結合によって磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0331】
また、図20に示される磁気検出素子では、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0332】
フリー磁性層15の成膜後、非磁性層30を積層せずに他の反強磁性層17を積層する製造方法でも、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0333】
また、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層32を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の実施の形態と同様に、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層32による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。
【0334】
なお、図20に示される磁気検出素子では、底面41bが非磁性中間層16内に位置するように凹部41が形成されているが、底面41bが、強磁性層17内、他の反強磁性層31内、又は第2の反強磁性層32内に位置するように凹部41が形成されてもよい。これらの場合、得られた磁気検出素子では、強磁性層17、非磁性中間層16及びフリー磁性層15が、いわゆるシンセティックフェリフリー磁性層として働くことになる。
【0335】
また、図12に示された工程において、非磁性層30の成膜後、他の反強磁性層31を積層しない多層膜A3の状態で第1の磁場中アニールにかけ、その後多層膜A3上に第2の反強磁性層32を積層し、例えば図21に示される磁気検出素子を得てもよい。ただし、多層膜A3の状態で第1の磁場中アニールにかけると非磁性層30の上面に酸化層が形成されるので、第2の反強磁性層32を積層する前に非磁性層30に形成された酸化層をイオンミリングなどで削って除去する必要がある。
【0336】
図21の磁気検出素子は、非磁性層30の上層に第2の反強磁性層32が積層されているため、強磁性層17の磁化方向は、第2の反強磁性層32とのRKKY相互作用によって図示X方向と反平行方向に揃えられる。
【0337】
さらに、この強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して形成されたフリー磁性層15の磁化方向も、強磁性層17とのRKKY相互作用によって、トラック幅方向(図示X方向)に揃えられる。すなわち、第2の反強磁性層32の下層の領域(トラック幅方向両端部D,D)において強磁性層17、非磁性中間層16、及びフリー磁性層15がシンセティックフェリ構造となっており、フリー磁性層15の磁化方向をトラック幅方向に揃えることが容易になっている。
【0338】
従って、第2の反強磁性層32と強磁性層17とのRKKY相互作用が比較的弱くても、フリー磁性層15の磁化方向を確実に固定磁性層13の磁化方向と交叉する方向に揃えることが容易になる。
【0339】
フリー磁性層15の磁化方向は、凹部41の底面41bの下部に位置する領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層32との磁気的結合によって固定される。
【0340】
フリー磁性層15の凹部41の底面41bの下部に位置する領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、第2の反強磁性層32とのRKKY相互作用によって磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0341】
また、図21に示される磁気検出素子では、非磁性中間層16はトラック幅Twの領域内において、フリー磁性層15の保護層として機能する。また、非磁性中間層16を、導電性を有する材料を用いて形成することにより、スピンフィルター効果を有するバックド層(backedlayer)として機能させることが可能になる。
【0342】
非磁性層30上に他の反強磁性層31を積層しない製造方法でも、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0343】
また、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層32を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の実施の形態と同様に、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層32による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。
【0344】
なお、図21に示される磁気検出素子では、底面41bが非磁性中間層16内に位置するように凹部41が形成されているが、底面41bが、強磁性層17内、他の反強磁性層31内、又は第2の反強磁性層32内に位置するように凹部41が形成されてもよい。これらの場合、得られた磁気検出素子では、強磁性層17、非磁性中間層16及びフリー磁性層15が、いわゆるシンセティックフェリフリー磁性層として働くことになる。
【0345】
上述した図1から図6に示した本発明の製造方法の実施の形態では、第2の反強磁性層である第2の反強磁性層19を成膜して第2の磁場中アニールをした後に、第2の反強磁性層19上にレジストをパターニングして凹部21を形成した。しかし、以下に示すように第2の反強磁性層19を成膜して第2の磁場中アニールをした後に、第2の反強磁性層19上にトラック幅方向に間隔を開けて形成された一対の電極層を形成し、この電極層をマスクにして凹部を形成してもよい。
【0346】
図3に示した工程終了後、すなわち第1の熱処理温度、第1の大きさの磁界中で第1の磁場中アニールをした後、第2の反強磁性層19を成膜して形成された多層膜Bを第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大きさの磁界中で、第2の磁場中アニールを行い、第2の反強磁性層19と強磁性層17との間に交換異方性磁界を発生させ、フリー磁性層15の磁化方向を図示X方向に固定した後、図22示すように第2の反強磁性層19の表面に、トラック幅分より若干広い領域を覆うリフトオフ用のレジスト51を積層する。レジスト層51には、その下面に切り込み部51a,51aが形成されている。なお、図示していないが、第2の反強磁性層19の上層にTa、Crなどからなる保護層を形成してもよい。
【0347】
さらに図23に示す工程によって、第2の反強磁性層19の上層に電極層23,23を成膜する。本実施の形態では、電極層23,23の成膜の際に使用されるスパッタ法は、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、あるいはコリメーションスパッタ法のいずれか1種以上であることが好ましい。なお、第2の磁場中アニールによって第2の反強磁性層19または第2の反強磁性層19上に形成された保護層が酸化したときは、第2の反強磁性層19の表面または前記保護層の表面をイオンミリングなどによって削り、酸化した部分を除去する。
【0348】
本実施の形態では、多層膜Bの形成された基板11を、電極層23,23の組成で形成されたターゲットに対し垂直方向に置き、これにより例えばイオンビームスパッタ法を用いることで、前記多層膜Bに対し垂直方向から電極層23,23を成膜する。
【0349】
レジスト層51の切り込み部51a,51a付近には、スパッタ粒子が積層されにくい。従って、レジスト層51の切り込み部51a,51a付近では、電極層23,23は膜厚が薄く形成され、電極層23,23に傾斜面23a,23aが形成される。電極層23,23は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成膜される。なお、レジスト層51上には、電極層23,23と同じ組成の層23bが形成される。電極層23,23を成膜した後、レジスト層51を除去すると、図23に示す状態になる。
【0350】
さらに、図24に示すように、電極層23,23をマスクとして、第2の反強磁性層19の電極層23,23によって覆われていない部分を、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などによって、削り込むことにより凹部24を形成する。凹部24の側面24a,24aは、電極層23,23の傾斜面23a,23aを含む傾斜面となっている。図24では、凹部24の底面24bが第2の反強磁性層19内に位置するように、凹部24を形成している。
【0351】
このとき、凹部24の底面24bの下部に位置する第2の反強磁性層19の領域の厚さt4を0より大きく30Å以下にする。
【0352】
本実施の形態では、凹部24の底面24bの幅寸法がトラック幅Twを規定する。凹部24の底面24bの幅寸法は、図22に示した工程において、レジスト51の寸法を調節すること及び図24の工程において凹部24の深さ寸法を調節することにより規定することができる。
【0353】
なお、図24に示した工程において、底面24bが強磁性層17内に位置するように凹部24を形成してもよい。または、底面24bが非磁性中間層16内に位置するように凹部24を形成してもよい。
【0354】
図25は、図22から図24に示された工程を経て形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図である。
【0355】
この磁気検出素子は、図7の磁気検出素子とほとんど同じであり、凹部24の側面24a,24aが基板11の表面11aに対する垂直方向に対する傾斜面となっている点でのみ異っている。基板11の表面11aに対する垂直方向とはトラック幅方向(図示X方向)に垂直方向に等しい。側面24a,24aの基板11の表面11aに対する垂直方向に対する傾斜角は20°である。
【0356】
凹部24の底面24bに重なる第2の反強磁性層19の領域の厚さt4を0より大きく30Å以下にし、凹部24の底面24bに重なる第2の反強磁性層19の領域に磁場中アニールによる不規則−規則変態を生じさせず、交換結合磁界が発生しないようにしている。
【0357】
従って、強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向は、凹部24の底面24bに重なる部分以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層19との交換結合によって固定される。
【0358】
強磁性層17及びフリー磁性層15の凹部24の底面24bに重なる部分Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、第2の反強磁性層19との交換結合によって磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向と反平行方向または図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。従って、磁気検出素子のトラック幅Twは、凹部24の底面24bの幅寸法によって決定される。
【0359】
図22から図24に示した凹部24の形成方法を用いて形成された磁気検出素子でも、強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になり、また磁気検出素子のトラック幅Twを正確に規定できる。
【0360】
さらに、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層19を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層19による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。
【0361】
また、上述した図12から図16に示した本発明の製造方法の実施の形態では、第2の反強磁性層である第2の反強磁性層32を成膜して第2の磁場中アニールをした後に、第2の反強磁性層32上にレジストをパターニングして凹部41を形成した。しかし、以下に示すように第2の反強磁性層32を成膜して第2の磁場中アニールをした後に、第2の反強磁性層32上にトラック幅方向に間隔を開けて形成された一対の電極層を形成し、この電極層をマスクにして凹部を形成してもよい。
【0362】
図13に示した工程終了後、すなわち第1の熱処理温度、第1の大きさの磁界中で第1の磁場中アニール後、第2の反強磁性層32を成膜して形成された多層膜B2を第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、第2の反強磁性層32による交換異方性磁界を発生させ、強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向を図示X方向と反平行方向または図示X方向に固定した後、図26に示すように第2の反強磁性層32の表面に、トラック幅分より若干広い領域を覆うリフトオフ用のレジスト61を積層する。レジスト層61には、その下面に切り込み部61a,61aが形成されている。なお、図示していないが、第2の反強磁性層32の上層にTa、Crなどからなる保護層を形成してもよい。
【0363】
さらに、第2の反強磁性層32の上層に電極層44,44を成膜する。本実施の形態では、電極層44,44の成膜の際に使用されるスパッタ法は、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、あるいはコリメーションスパッタ法のいずれか1種以上であることが好ましい。なお、第2の磁場中アニールによって第2の反強磁性層32または第2の反強磁性層32上に形成された保護層が酸化したときは、第2の反強磁性層32の表面または前記保護層の表面をイオンミリングなどによって削り、酸化した部分を除去する。
【0364】
本実施の形態では、多層膜B2の形成された基板11を、電極層44,44の組成で形成されたターゲットに対し垂直方向に置き、これにより例えばイオンビームスパッタ法を用いることで、前記多層膜B2に対し垂直方向から電極層44,44を成膜する。
【0365】
レジスト層61の切り込み部61a,61a付近には、スパッタ粒子が積層されにくい。従って、レジスト層61の切り込み部61a,61a付近では、電極層44,44は膜厚が薄く形成され、電極層44,44に傾斜面44a,44aが形成される。電極層44,44は、例えば、Au、W、Cr、Taなどを用いて成膜される。なお、レジスト層61上には、電極層44,44と同じ組成の層44bが形成される。電極層44,44を成膜した後、レジスト層61を除去すると、図27に示す状態になる。
【0366】
さらに、図28に示すように、電極層44,44をマスクとして、第2の反強磁性層32の電極層44,44によって覆われていない部分を、イオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)などによって、削り込むことにより凹部45を形成する。凹部45の側面45a,45aは、電極層44,44の傾斜面44a,44aを含む傾斜面となっている。図28では、底面45bが第2の反強磁性層32内に位置するように、凹部45を形成している。
【0367】
このとき、凹部45の底面45bの下部に位置する第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31の領域の厚さt5を0より大きく30Å以下にする。
【0368】
本実施の形態では、凹部45の底面45bの幅寸法がトラック幅Twを規定する。凹部45の底面45bの幅寸法は、図26に示した工程において、レジスト61の寸法を調節すること及び図28の工程において凹部45の深さ寸法を調節することにより規定することができる。
【0369】
なお、図28に示した工程において、底面45bが強磁性層17内に位置するように凹部45を形成してもよい。または、底面45bが非磁性中間層16内に位置するように凹部45を形成してもよい。図29に底面45bが非磁性中間層16内に位置するように凹部45が形成された磁気検出素子を示す。
あるいは、底面45bが他の反強磁性層31内に位置するように凹部45を形成してもよいし、底面45bが非磁性層30内に位置するように凹部45を形成してもよい。
【0370】
図28に示された磁気検出素子は、図17の磁気検出素子とほとんど同じであり、凹部45の側面45a,45aが基板11の表面11aに対する垂直方向に対する傾斜面となっている点でのみ異っている。基板11の表面11aに対する垂直方向とはトラック幅方向(図示X方向)に対する垂直方向に等しい。側面45a,45aの基板11の表面11aに対する垂直方向に対する傾斜角は20°である。
【0371】
凹部45の底面45bに重なる第2の反強磁性層32の領域の厚さ及び他の反強磁性層31の厚さの合計tを0より大きく30Å以下にし、凹部45の底面45bに重なる第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31の領域に磁場中アニールによる不規則−規則変態を生じさせず、非磁性層30を介したRKKY相互作用が発生しないようにしている。
【0372】
従って、強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向は、凹部45の底面45bに重なる部分以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31とのRKKY相互作用によって固定される。
【0373】
強磁性層17及びフリー磁性層15の凹部45の底面45bに重なる部分Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、第2の反強磁性層32とのRKKY相互作用によって磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向と反平行方向又は図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。従って、磁気検出素子のトラック幅Twは、凹部45の底面45bの幅寸法によって決定される。
【0374】
図26から図28に示した凹部45の形成方法を用いて形成された磁気検出素子でも、強磁性層17及びフリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になり、また磁気検出素子のトラック幅Twを正確に規定できる。
【0375】
さらに、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層32を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層32による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。
【0376】
なお、上述した実施の形態において、固定磁性層13を単層の強磁性材料層として形成してもよい。
【0377】
また、図8、図9、図17、図18、図19、図20、図21、図25、図28、図29に示された磁気検出素子を製造するときも、フリー磁性層15及び強磁性層17の少なくとも一方を、以下の組成を有する磁性材料で形成することが好ましい。
【0378】
組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成はCoである。
【0379】
これにより、フリー磁性層15と強磁性層17間で発生するRKKY相互作用における交換結合磁界を強くすることができる。具体的には、反平行状態が崩れるときの磁界、すなわちスピンフロップ磁界(Hsf)を約293(kA/m)にまで大きくすることができる。
【0380】
また上記した組成範囲内であると、フリー磁性層15及び強磁性層17の磁歪を−3×10-6から3×10-6の範囲内に収めることができ、また保磁力を790(A/m)以下に小さくできる。
【0381】
さらに、フリー磁性層15の軟磁気特性の向上、非磁性材料層14間でのNiの拡散による抵抗変化量(ΔR)や抵抗変化率(ΔR/R)の低減の抑制を適切に図ることが可能である。
【0382】
また、フリー磁性層15と非磁性材料層14との間に、CoFe合金やCo合金で形成される中間層が設けられてもよい。
【0383】
中間層が設けられる場合には、前記CoFeNi合金のFeの組成比を7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比を5原子%以上で15原子%以下で、残り組成比をCoとすることが好ましい。
【0384】
なお上述した磁気検出素子を用いて磁気ヘッドを構成するときには、基板11と第1の反強磁性層12の間に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層、この下地層上に積層される磁性合金からなる下部シールド層、及びこの下部シールド上に積層される絶縁性材料からなる下部ギャップ層が形成される。磁気検出素子は前記下部ギャップ層上に積層される。また、この磁気検出素子上には、絶縁性材料からなる上部ギャップ層、及びこの上部ギャップ層上に積層される磁性合金からなる上部シールド層が形成される。また、前記上部シールド層上に書き込み用のインダクティブ素子が積層されてもよい。
【0385】
ところで図1ないし図29では、多層膜A1、A2、A3のトラック幅方向(図示X方向)の両端部D上に電極層22、43、44が設けられ、前記電極層19から前記多層膜内に流れる電流が、前記多層膜内を各層の膜面に対して平行な方向に流れるCIP(current in the plane)型の磁気検出素子の製造方法を説明した。
【0386】
一方、図35以降で説明する磁気検出素子の製造方法は、前記多層膜の上下に電極層が設けられ、前記電極層から前記多層膜内に流れる電流が、前記多層膜の各層の膜面に対し垂直方向に流れるCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子の製造方法である。
【0387】
まず、図35では、基板上(図示せず)にNiFeなどの磁性材料からなり下部シールド層を兼ねる下部電極層70を形成し、その上に図1で形成したのと同じ多層膜Aを形成する。
【0388】
その後、図36では、図2に示された工程と同様に、多層膜Aを第1の熱処理温度、Y方向を向いた第1の大きさの磁界中で、第1の磁場中アニールを行い、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間に交換異方性磁界を発生させ、固定磁性層13の磁化方向を図示Y方向に固定する。本実施の形態では、前記第1の熱処理温度を270℃、磁界の第1の大きさを800k(A/m)としている。
【0389】
多層膜Aを第1の磁場中アニールにかけたときに、保護層18は、その表面から10〜20Å程度酸化する。そこで、保護層18をイオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)によって除去する。
【0390】
さらに、図36に示されるように、強磁性層17を所定の厚さ削る。強磁性層17を削るのは、次の工程において、強磁性層17上に第2の反強磁性層19を積層するときに、強磁性層17上に第2の反強磁性層19を真空中で連続成膜することが必要なためである。強磁性層17の削り量t1は特に規定されないが、本実施の形態では、10Å削っている。
【0391】
次に、図37に示すごとく、図36に示された強磁性層17のエッチング後の表面17a上に、強磁性層17を再成膜し、さらに強磁性層17上に第2の反強磁性層19、絶縁層71を連続成膜する。強磁性層17を再成膜するときには、図35の工程において最初に強磁性層17を成膜したときに用いた強磁性材料と同じ強磁性材料を用いる。ただし、強磁性層17の図36の工程において削られた厚さt1と、図37の工程において再成膜する分の強磁性層17の厚さは必ずしも同じでなくてよい。
【0392】
絶縁層71は、例えばAl23、SiO2、AlN、TiCなどの絶縁材料で形成される。
【0393】
次に絶縁層71まで形成された多層膜B3を、第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、第2の反強磁性層19と強磁性層17との間に、交換異方性磁界を発生させ、強磁性層17の磁化方向を図示X方向と反平行方向に固定する。強磁性層17の磁化方向が図示X方向と反平行方向に固定されると、フリー磁性層15の磁化方向も非磁性中間層16を介した強磁性層17とのRKKY相互作用によって、図示X方向に固定される。本実施の形態では、前記第2の熱処理温度を250℃、磁界の第2の大きさを24k(A/m)としている。
【0394】
第2の反強磁性層19による交換異方性磁界は、第2の磁場中アニール工程において初めて生じる。従って、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層19による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けるためには、前記第2の熱処理温度を、第1の反強磁性層12による交換結合磁界が消失するブロッキング温度より低い温度に設定し、前記第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層12による交換異方性磁界より小さくするだけでよい。また、第2の磁場中アニールをこれらの条件下で行えば、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層19を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層19による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。すなわち、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0395】
なお、第2の磁場中アニール時の第2の磁界の大きさは、フリー磁性層15及び強磁性層17の飽和磁界、及びフリー磁性層15及び強磁性層17の反磁界より大きく、フリー磁性層15と強磁性層17間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さいことが好ましい。
【0396】
次に、絶縁層71の上に露光現像によってトラック幅方向(図示X方向)の中央部に穴部90aが設けられたレジスト層90を形成する。レジスト層90の内側端面90bは、絶縁層71の表面(または基板表面)に対する垂直面である。ただし、側端面90bは下面から上面にかけて徐々に穴部90aのトラック幅方向への間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されてもよい。
【0397】
次に図39に示す矢印F方向からのイオンミリングによってレジスト層90に覆われていない絶縁層71を完全に削り込み、さらに第2反強磁性層19を途中まで削り込む。図39では、多層膜に形成された凹部21の側面21aは絶縁層71の表面(または基板表面)に対する垂直面である。そして、図40に示すように前記レジスト層90を除去する。
【0398】
図39工程では、凹部21の底面21bが第2の反強磁性層19内に位置するように、凹部21を形成している。
【0399】
このとき、第2の反強磁性層19の、凹部21の底面21bの下部に位置する領域の厚さt2を、0より大きく30Å以下にする。本実施の形態のように、第2の反強磁性層19の、凹部21の底面21bの下部に位置する領域の厚さt2を0より大きく30Å以下にすると、凹部21の底面21bの下部に位置する第2の反強磁性層19の領域では、第2の磁場中アニールによって不規則−規則変態が生じず、交換結合磁界が発生しない。そして、凹部21が形成されないトラック幅方向両端部D,Dでは、第2の磁場中アニールによって、第2の反強磁性層19に不規則−規則変態が生じ、第2の反強磁性層19と強磁性層17との間に交換結合磁界が発生する。
【0400】
すなわち、強磁性層17の磁化方向は、凹部21の底面21bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層との間の交換結合磁界によって固定される。従って、強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して積層されているフリー磁性層15の磁化方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ強磁性層17とのRKKY相互作用により固定される。
【0401】
凹部21の底面21bに重なるフリー磁性層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0402】
なおレジスト層90の内側端面90bが傾斜面あるいは湾曲面である時又はイオンミリングにおけるイオンビーム入射角が垂直方向から傾いているときには、前記イオンミリングによる削り込みによって多層膜に形成された凹部21の側面21aも傾斜面あるいは湾曲面として形成される。
【0403】
また、前記第2の磁場中アニールは、第2の反強磁性層19に凹部21を形成した後行ってもよい。
【0404】
図41に示す工程では、絶縁層71上から前記凹部21の側面21a及び底面21bにかけてAl23、SiO2、AlNあるいはTiCなどの絶縁材料からなる他の絶縁層72をスパッタ成膜する。スパッタ法には、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法などを使用できる。
【0405】
ここで注意すべき点は、他の絶縁層72を形成する際のスパッタ角度θ1にある。図19に示すようにスパッタ方向Gは、多層膜の各層の膜面の垂直方向に対しθ1のスパッタ角度を有しているが本発明では前記スパッタ角度θ1をできる限り大きくして(すなわちより寝かせて)、凹部21の側面21aに他の絶縁層72が成膜されやすいようにすることが好ましい。例えば前記スパッタ角度θ1は50°から70°である。
【0406】
このように前記スパッタ角度θ1を大きくすることで、凹部21の側面21aに形成される他の絶縁層72のトラック幅方向(図示X方向)への膜厚tz1を、第2反強磁性層19の上面及び凹部21の底面21bに形成される他の絶縁層72の膜厚tz2よりも厚く形成できる。このように他の絶縁層72の膜厚を調整しないと次工程でのイオンミリングで、凹部21の側面21aの他の絶縁層72がすべて除去されてしまい、あるいは他の絶縁層72が残ってもその膜厚は非常に薄くなり、適切に分流ロスを低減させるための絶縁層として機能させることができない。
【0407】
次に図42に示すように多層膜の各層の膜面と垂直方向(図示X方向と垂直方向)あるいは垂直方向に近い角度(多層膜の各層表面の垂直方向に対し0°から20°の角度からイオンミリングを施す。このとき凹部21の底面21bに形成された他の絶縁層72を適切に除去するまでイオンミリングを施す。このイオンミリングによって絶縁層71の上面に形成された他の絶縁層72も除去される。一方、凹部21の側面21aに形成された他の絶縁層72も若干削れるものの、凹部21の底面21bに形成された他の絶縁層72よりも厚い膜厚tz1を有し、しかもイオンミリングのミリング方向Hは、凹部21の側面21aに形成された他の絶縁層72から見ると浅い入射角度になるため、凹部21の側面21aに形成された他の絶縁層72は、凹部21の底面21bに形成された他の絶縁層72に比べて削られ難く、よって凹部21の側面21aには適度な膜厚の他の絶縁層72が残される。
【0408】
その状態が図42である。凹部21の側面21aに残される他の絶縁層72のトラック幅方向における膜厚tz3は5nmから10nmであることが好ましい。
【0409】
図42に示すように第2反強磁性層19上面は絶縁層71によって覆われ、また凹部21の側面21aは前記他の絶縁層72によって覆われた状態になっている。 そして絶縁層71、72から凹部21の底面21bにかけて、NiFeなどの磁性材料からなり上部シールド層を兼ねる上部電極層73をメッキ形成する。
【0410】
以上のようにして図44に示される磁気検出素子が形成される。
なお図44に示すCPP型の磁気検出素子では下部シールド層を兼ねる下部電極層70及び上部シールド層を兼ねる上部電極層73を多層膜の上下に接して形成しているが、このような構成によって電極層とシールド層とを別々に形成する必要性が無くなり、CPP型の磁気検出素子の製造を容易化することが可能になる。
【0411】
しかも電極機能とシールド機能とを兼用させれば、シールド層間の間隔で決定されるギャップ長G1を非常に短くすることができ、今後の高記録密度化により適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0412】
ただし、必要ならば、絶縁層71、72から凹部21の底面21bにかけて点線で示された非磁性層74を積層した後、非磁性層74上に上部電極層73を形成してもよい。非磁性層74は、Ta、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuなどの非磁性導電材料で形成されることが好ましい。
【0413】
非磁性層74は、上部ギャップ層としての役割を有するものであるが、非磁性層74は凹部21の底面21b上にも形成されるため、電流経路の出入口となる凹部21の底面21b上を例えば絶縁材料からなる非磁性層74で覆うことは前記電流が多層膜内に流れにくくなるため好ましくない。よって本発明では非磁性層74を非磁性導電材料で形成することが好ましい。
【0414】
また、本発明では、多層膜の上面及び/または下面に、例えばAu、W、Cr、Taなどからなる電極層を設け、多層膜と反対側の電極層の面にギャップ層を介して磁性材料製のシールド層を設ける構成であってもかまわない。
【0415】
図44に示される磁気検出素子は、第2の反強磁性層19上を絶縁層71によって、また凹部21の側面21a上を適切に絶縁層72,72によって覆うことができ、シールド層から流れる電流が、第2反強磁性層19等に分流せず、前記電流は前記凹部21の底面21b上の絶縁層72、72間の間隔で決定されるトラック幅Tw内を適切に流れる。よって図44に示す構造の磁気検出素子であれば、電流経路がトラック幅Twから広がるのを抑制でき再生出力が大きく、実効トラック幅が狭いCPP型の磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0416】
さらに、上部電極層73は、凹部21によって多層膜A2に対する電流経路が絞り込まれるので多層膜A2の両側部に電流が分流することを適切に抑制でき、より効果的に再生出力の大きい磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0417】
図45に示される磁気検出素子は、図35から図43に示された製造方法と同様の製造方法を用いて形成されたものであり、図8に示された磁気検出素子をCPP型の磁気検出素子としたものに相当する。図46は、図9に示された磁気検出素子を同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図47は、図10に示された磁気検出素子をCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図48は図11に示された磁気検出素子を同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態である。
【0418】
すなわち図45ないし図48に示す磁気検出素子ではいずれも、第1反強磁性層12の下に下部シールド層を兼用した下部電極層70が設けられ、また第2反強磁性層19上には絶縁層71が設けられ、凹部21の側面21a、21aに他の絶縁層72が設けられ、さらに絶縁層71上、及び他の絶縁層72上から凹部21の底面21b上にかけて上部シールド層を兼用した上部電極層73が設けられている。
【0419】
なお、図45から図48に示される磁気検出素子は凹部21の底面21bの位置が異なっているものであるが、底面21bの位置は図39工程のミリング工程の削り量を調節することで調節することができる。
【0420】
図49以降で説明する磁気検出素子の製造方法は、図17から図21に示されるような、強磁性層17の上に非磁性層30と他の反強磁性層31の少なくとも一方が積層される磁気検出素子をCPP型の磁気検出素子として形成するための製造方法である。
【0421】
まず、図49では、基板上(図示せず)にNiFeなどの磁性材料からなり下部シールド層を兼ねる下部電極層70を形成し、その上に図12で形成したのと同じ多層膜A1を形成する。
【0422】
その後、図49では、図12に示された工程と同様に、多層膜A1を第1の熱処理温度、Y方向を向いた第1の大きさの磁界中で、第1の磁場中アニールを行い、第1の反強磁性層12と第1の固定磁性層13aとの間に交換異方性磁界を発生させ、固定磁性層13の磁化方向を図示Y方向に固定する。本実施の形態では、前記第1の熱処理温度を270℃、磁界の第1の大きさを800k(A/m)としている。
【0423】
多層膜A1を第1の磁場中アニールにかけたときに、他の反強磁性層31は、その表面から10〜20Å程度酸化する。そこで、他の反強磁性層31をイオンミリングまたは反応性イオンエッチング(RIE)によって除去する。
【0424】
次に、図50に示すごとく、他の反強磁性層31上に第2反強磁性層32、絶縁層71を連続成膜する。
【0425】
絶縁層71は、例えばAl23、SiO2、AlN、TiCなどの絶縁材料で形成される。
【0426】
次に絶縁層71まで形成された多層膜B4を、第2の熱処理温度、X方向を向いた第2の大きさの磁界中で、第2の磁場中アニールにかけて、第2の反強磁性層32,他の反強磁性層31と強磁性層17との間に、非磁性層30を介したRKKY相互作用による、交換異方性磁界を発生させ、強磁性層17の磁化方向を図示X方向と反平行方向に固定する。強磁性層17の磁化方向が図示X方向と反平行方向に固定されると、フリー磁性層15の磁化方向も非磁性中間層16を介した強磁性層17とのRKKY相互作用によって、図示X方向に固定される。本実施の形態では、前記第2の熱処理温度を250℃、磁界の第2の大きさを24k(A/m)としている。
【0427】
第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31による交換異方性磁界は、第2の磁場中アニール工程において初めて生じる。従って、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けるためには、前記第2の熱処理温度を、第1の反強磁性層12による交換結合磁界が消失するブロッキング温度より低い温度に設定し、前記第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層12による交換異方性磁界より小さくするだけでよい。また、第2の磁場中アニールをこれらの条件下で行えば、第1の反強磁性層12と第2の反強磁性層32を同じ組成の反強磁性材料を用いて形成しても、第1の反強磁性層12による交換異方性磁界の方向を図示Y方向に向けたまま、第2の反強磁性層32による交換異方性磁界を図示X方向と反平行方向に向けることができる。すなわち、フリー磁性層15の磁化方向を、固定磁性層13の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0428】
なお、第2の磁場中アニール時の第2の磁界の大きさは、フリー磁性層15及び強磁性層17の飽和磁界、及びフリー磁性層15及び強磁性層17の反磁界より大きく、フリー磁性層15と強磁性層17間の反平行結合が崩れるスピンフロップ磁界より小さいことが好ましい。
【0429】
次に、絶縁層71の上に露光現像によってトラック幅方向(図示X方向)の中央部に穴部90aが設けられたレジスト層91を形成する。レジスト層91の内側端面91bは、絶縁層71の表面(または基板表面)に対する垂直面である。ただし、内側端面91bは下面から上面にかけて徐々に穴部91aのトラック幅方向への間隔が広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されてもよい。
【0430】
次に図51に示す矢印I方向からのイオンミリングによってレジスト層91に覆われていない絶縁層71を完全に削り込み、さらに第2反強磁性層32を途中まで削り込む。
【0431】
イオンミリング終了後の状態を図52に示す。図52では、多層膜A1に形成された凹部41の側面41aは絶縁層71の表面(または基板表面)に対する垂直面である。そして、図53に示すように前記レジスト層91を除去する。
【0432】
図51工程では、凹部41の底面41bが第2の反強磁性層32内に位置するように、凹部41を形成している。又凹部41の底面41bが他の反強磁性層31内に位置するようにしてもよい。
【0433】
このとき、第2の反強磁性層32の、凹部41の底面41bの下部に位置する領域の厚さと他の反強磁性層31の厚さの合計t3を、0より大きく30Å以下にする。本実施の形態のように、第2の反強磁性層32の、凹部41の底面41bの下部に位置する領域の厚さと他の反強磁性層31の厚さの合計t3を0より大きく30Å以下にすると、凹部41の底面41bの下部に位置する第2の反強磁性層32と他の反強磁性層31の領域では、第2の磁場中アニールによって不規則−規則変態が生じず、交換結合磁界が発生しない。そして、凹部41が形成されないトラック幅方向両端部D,Dでは、第2の磁場中アニールによって、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31に不規則−規則変態が生じ、第2の反強磁性層32と強磁性層17との間にRKKY相互作用が発生する。
【0434】
すなわち、強磁性層17の磁化方向は、凹部41の底面41bに重なる領域以外のトラック幅方向両端部D,Dでのみ、第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31との、非磁性層30を介したRKKY相互作用によって固定される。従って、強磁性層17の下層に非磁性中間層16を介して積層されているフリー磁性層15の磁化方向も、トラック幅方向両端部D,Dでのみ強磁性層17とのRKKY相互作用により固定される。
【0435】
凹部41の底面41bに重なるフリー磁性層15の領域Eは、外部磁界が印加されない状態おいて、磁化方向が固定された両端部D,Dにならって図示X方向に揃えられ、外部磁界が印加されるとその磁化方向が変化する。
【0436】
なおレジスト層91の内側端面91bが傾斜面あるいは湾曲面であるとき、またはイオンミリングのイオンビーム入射角が垂直方向から傾斜しているときには、前記イオンミリングによる削り込みによって多層膜に形成された凹部41の側面41aも傾斜面あるいは湾曲面として形成される。
【0437】
また、前記第2の磁場中アニールは、第2の反強磁性層32、もしくは第2の反強磁性層32及び他の反強磁性層31に凹部41を形成した後行ってもよい。
【0438】
図54に示す工程では、絶縁層71上から凹部41の側面41a及び底面41bにかけてAl23、SiO2、AlNあるいはTiCなどの絶縁材料からなる他の絶縁層72をスパッタ成膜する。スパッタ法には、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法などを使用できる。
【0439】
図54に示すようにスパッタ方向Jは、多層膜の各層の膜面の垂直方向に対しθ2のスパッタ角度を有しているが本発明ではスパッタ角度θ2をできる限り大きくして(すなわちより寝かせて)、凹部41の側面41aに他の絶縁層72が成膜されやすいようにすることが好ましい。例えば前記スパッタ角度θ2は50°から70°である。
【0440】
このように前記スパッタ角度θ2を大きくすることで、凹部41の側面41aに形成される他の絶縁層72のトラック幅方向(図示X方向)への膜厚tz4を、絶縁層71の上面及び凹部41の底面41bに形成される他の絶縁層72の膜厚tz5よりも厚く形成できる。
【0441】
次に図55に示すように多層膜A1の各層の膜面と垂直方向(図示X方向と垂直方向)あるいは垂直方向に近い角度(多層膜の各層表面の垂直方向に対し0°から20°の角度からイオンミリングを施す。このとき凹部41の底面41bに形成された他の絶縁層72を適切に除去するまでイオンミリングを施す。このイオンミリングによって絶縁層71の上面に形成された他の絶縁層72も除去される。一方、凹部41の側面41aに形成された他の絶縁層72も若干削れるものの、凹部41の底面41bに形成された他の絶縁層72よりも厚い膜厚tz4を有し、しかもイオンミリングのミリング方向Kは、凹部41の側面41aに形成された他の絶縁層72から見ると角度が浅くなる方向になるため、凹部41の側面41aに形成された他の絶縁層72は、凹部41の底面41bに形成された他の絶縁層72に比べて削られ難く、よって凹部41の側面41aには適度な膜厚の他の絶縁層72が残される。
【0442】
その状態が図55である。凹部41の側面41aに残される他の絶縁層72のトラック幅方向における膜厚tz6は5nmから10nmであることが好ましい。
【0443】
図55に示すように第2反強磁性層32上面は絶縁層71によって覆われ、また凹部41の側面41aは他の絶縁層72によって覆われた状態になっている。
【0444】
そして、図56に示すように、絶縁層71、72から凹部41の底面41bにかけて、NiFeなどの磁性材料からなり上部シールド層を兼ねる上部電極層73をメッキ形成する。
【0445】
以上のようにして図57に示される磁気検出素子が形成される
なお、必要ならば、絶縁層71、72から凹部41の底面41bにかけて点線で示された非磁性層74を積層した後、非磁性層74上に上部電極層73を形成してもよい。非磁性層74は、Ta、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuなどの非磁性導電材料で形成されることが好ましい。非磁性層74は、上部ギャップ層としての役割を有するものであるが、非磁性層74は凹部41の底面41b上にも形成されるため、電流経路の出入口となる凹部41の底面41b上を例えば絶縁材料からなる非磁性層74で覆うことは前記電流が多層膜内に流れにくくなるため好ましくない。よって本発明では非磁性層74を非磁性導電材料で形成することが好ましい。
【0446】
図57に示される磁気検出素子は、第2反強磁性層32上、および凹部41の側面41a上を適切に絶縁層71、72によって覆うことができ、電極層から流れる電流が、第2反強磁性層32等に分流せず、前記電流は凹部41の底面41b上の絶縁層72、72間の間隔で決定されるトラック幅Tw内を適切に流れる。よって図57に示す構造の磁気検出素子であれば、電流経路がトラック幅Twから広がるのを抑制でき再生出力が大きく実効トラック幅の狭いCPP型の磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0447】
さらに、上部電極層73は、凹部41によって多層膜A1に対する電流経路が絞り込まれるので多層膜A1の両側部に電流が分流することを適切に抑制でき、より効果的に再生出力の大きい磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0448】
図58に示される磁気検出素子は、図49から図56に示された製造方法と同様の製造方法を用いて形成されたものであり、図18に示された磁気検出素子をCPP型の磁気検出素子としたものに相当する。図59は、図19に示された磁気検出素子を同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態である。なお、図58及び59に示される磁気検出素子は凹部41の底面41bの位置が図57に示される磁気検出素子と異なっているものであるが、底面41bの位置は図51工程のミリング工程の削り量を調節することで調節することができる。
【0449】
また、図60は、図20に示された磁気検出素子をCPP型の磁気検出素子にした実施形態、図61は図21に示された磁気検出素子を同様にCPP型の磁気検出素子にした実施形態である。
【0450】
なお、図60及び61に示される磁気検出素子でも、凹部41の底面41bの位置が、強磁性層17、非磁性層30、他の反強磁性層31、第2反強磁性層32のいずれかの内になるように、変更することができる。
【0451】
図62ないし図64に示す磁気検出素子は、図44及び図57と同様にCPP型の磁気検出素子であるが、下部シールド層を兼ねる下部電極層80の形状が図44及び図57のそれとは異なっている。
【0452】
図62に示す磁気検出素子は、図44と同じ多層膜A2の膜構成を有し、しかも第2反強磁性層19上には絶縁層71が形成され、凹部21の側面21aには他の絶縁層72が形成され、さらに絶縁層71上から凹部21の底面21b上にかけて上部シールド層を兼用した上部電極層73が設けられており、この点で図44と一致している。
【0453】
図44と異なるのは、NiFeなどの磁性材料からなる下部シールド層を兼用した下部電極層80のトラック幅方向(図示X方向)の中央部に、多層膜A2方向(図示Z方向)に突出した突出部80aが設けられ、この突出部80aの上面80a1が多層膜A2の下面に接しており、突出部80aから多層膜A2内に(あるいは多層膜A2から突出部80aに)電流が流れるようになっている点である。
【0454】
そして図62に示す磁気検出素子では下部電極層80のトラック幅方向(図示X方向)における両側端部80bと多層膜A2間に絶縁層81が設けられている。絶縁層81は、Al23、SiO2、AlNやTiCなどの絶縁材料で形成される。
【0455】
図62に示す磁気検出素子では、下部電極層80は、突出部80aの形成によって多層膜A2に対する電流経路が絞り込まれ、さらに下部電極層80の両側端部80bと多層膜A2間に絶縁層81が設けられたことで、両側端部80bから多層膜A2内に電流が分流することを適切に抑制でき、より効果的に再生出力の大きい磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0456】
なお、図62に示す磁気検出素子では、下部電極層80の突出部80aの上面80a1のトラック幅方向(図示X方向)の幅寸法は領域Eのトラック幅方向(図示X方向)における幅寸法と一致しているが、上面80a1の幅寸法が領域Eの幅寸法より広くてもよい。より好ましくは上面80a1の幅寸法がトラック幅Twと一致することである。これによってより効果的に多層膜A2に対しトラック幅Twの領域内にのみ電流を流すことができ再生出力の大きい磁気検出素子を製造することが可能である。
【0457】
また図62に示す実施形態では、下部電極層80に形成された突出部80aのトラック幅方向(図示X方向)における両側面80a2は、突出部80aのトラック幅方向における幅寸法が、多層膜A2から離れる(図示Z方向と逆方向)にしたがって徐々に広がる傾斜面あるいは湾曲面で形成されているが、両側面80a2は、トラック幅方向(図示X方向)に対して垂直面であってもかまわない。
【0458】
図63に示す実施形態は、図62に示す実施形態と同じ形状の下部電極層80を有している。すなわち図63に示す下部電極層80のトラック幅方向(図示X方向)の中央部には、多層膜A2方向(図示Z方向)に突出した突出部80aが設けられ、この突出部80aの上面80a1が多層膜A2の下面に接しており、突出部80aから多層膜A2内に(あるいは多層膜A2から突出部80aに)電流が流れるようになっている。そして下部電極層80のトラック幅方向(図示X方向)における両側端部80bと多層膜A2間に絶縁層が設けられている。
【0459】
図63に示す実施形態では図62と異なって、第2反強磁性層19上に絶縁層71が設けられておらず、また凹部21の側面21aに他の絶縁層72が設けられていない。そしてNiFeなどの磁性材料からなり、上部シールド層を兼用する上部電極層82は第2反強磁性層19上から凹部21の側面21a上及び底面21b上にかけて直接接合されている。
【0460】
図63に示す実施形態では、図62に示す実施形態に比べて上部電極層82と第2反強磁性層19間、及び上部電極層82と凹部21の側面21a間が絶縁されていないので、電流経路はトラック幅Twよりも広がりやすく再生出力は劣るものと考えられるが、図71に示す従来に比べて、多層膜A2の下面側で、下部電極層80に形成された突出部80aによって電流経路を絞り込むことができ、電流経路の広がりを抑えて再生出力の低下を抑制することができる。
【0461】
また図62及び図63に示す磁気検出素子では、下部電極層80に形成された突出部80aの上面80a1と、その両側に形成された絶縁層81の上面81aとが同一平面で形成されていることが好ましい。これによって突出部80a上から絶縁層81上にかけて形成される多層膜A2の各層の膜面をトラック幅方向に、より平行に形成でき、再生特性に優れた磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0462】
図64に示す磁気検出素子も、図62及び図63に示す磁気検出素子と同様に、下部電極層80のトラック幅方向の中央部に突出部80aが形成されたものである。そして下部電極層80のトラック幅方向(図示X方向)における両側端部80bと多層膜A1間に絶縁層81が設けられている。
【0463】
図64に示す磁気検出素子でも、下部電極層80は、突出部80aの形成によって多層膜A1に対する電流経路が絞り込まれ、さらに下部電極層80の両側端部80bと多層膜A1間に絶縁層81が設けられたことで、両側端部80bから多層膜A1内に電流が分流することを適切に抑制でき、より効果的に再生出力の大きい磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0464】
また、図65に示す磁気検出素子は、図64に示される磁気検出素子から絶縁層71及び他の絶縁層72が除かれ、上部シールド層を兼用する上部電極層82が第2反強磁性層32上から凹部41の側面41a上及び底面41b上にかけて直接接合されているものである。図65に示す磁気検出素子も、図71に示す従来に比べて、多層膜A1の下面側で、下部電極層80に形成された突出部80aによって電流経路を絞り込むことができ、電流経路の広がりを抑えて再生出力の低下を抑制することができる。
【0465】
図62ないし図65に示す磁気検出素子の下部電極層80及び絶縁層81の製造方法を説明する。
【0466】
まず、図66に示すように、NiFeなどの磁性材料を用いて、下部電極層80をメッキまたはスパッタ形成し、表面をポリシング等で平滑化処理した後、下部電極層80のトラック幅方向(図示X方向)の中央部上にレジスト層92を形成する。
【0467】
次に、図67に示すように、このレジスト層92に覆われていない下部電極層80の両側端部80bをイオンミリングで途中まで削り込む。これによって下部電極層80のトラック幅方向の中央部に突出部80aを形成することができる。
【0468】
さらに、図68に示すように、レジスト層92に覆われていない下部電極層80の両側端面80b上に絶縁層81をスパッタ成膜し、絶縁層81の上面81aが下部電極層80の突出部80aの上面80a1とほぼ同一平面となった時点で前記スパッタ成膜を終了する。そしてレジスト層92を除去する。
【0469】
なおレジスト層92を除去した後、下部電極層80の突出部80aの上面80a1及び絶縁層81の上面81aをCMPなどを用いて研磨し、突出部80aの上面80a1と絶縁層81の上面81aを高精度に同一平面となるようにしてもよい。この場合最初のポリシング等の平滑化処理を省略することができる。
【0470】
レジスト層92を除去した後、下部電極層80及び絶縁層81上に、多層膜A1またはA2を積層する。
【0471】
図44ないし図48に示す磁気検出素子または図57ないし図65に示すCPP型の磁気検出素子では下部シールド層を兼ねる下部電極層70または80及び上部シールド層を兼ねる上部電極層73または82を多層膜の上下に接して形成しているが、このような構成によって電極層とシールド層とを別々に形成する必要性が無くなり、CPP型の磁気検出素子の製造を容易化することが可能になる。
【0472】
しかも電極機能とシールド機能とを兼用させれば、シールド層間の間隔で決定されるギャップ長G1を非常に短くすることができ、今後の高記録密度化により適切に対応可能な磁気検出素子を製造することが可能になる。
【0473】
ただし、必要ならば、絶縁層71、72から凹部21の底面21b、または絶縁層71、72から凹部41の底面41bにかけて点線で示された非磁性層74、83を積層した後、非磁性層74、83上に上部電極層73または82を形成してもよい。非磁性層74、83は、Ta、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuなどの非磁性導電材料で形成されることが好ましい。
【0474】
非磁性層74、83は、上部ギャップ層としての役割を有するものであるが、非磁性層74、83は凹部21の底面21bまたは凹部41の底面41b上にも形成されるため、電流経路の出入口となる凹部21の底面21b上または凹部41の底面41bを例えば絶縁材料からなる非磁性層74、83で覆うことは前記電流が多層膜内に流れにくくなるため好ましくない。よって本発明では非磁性層74、83を非磁性導電材料で形成することが好ましい。
【0475】
また、本発明では、多層膜の上面及び/または下面に、例えばAu、W、Cr、Taなどからなる電極層を設け、多層膜と反対側の電極層の面にギャップ層を介して磁性材料製のシールド層を設ける構成であってもかまわない。
【0476】
図44ないし図48に示す磁気検出素子または図57ないし図65に示すCPP型の磁気検出素子においても、図7ないし図11または図17ないし図21のCIP型の磁気検出素子と同じ効果を期待することができる。
【0477】
すなわち本発明では、凹部21は一様の厚さで成膜された第2反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向(図示X方向)に対し垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法で凹部21を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅Twを正確に規定できる。
【0478】
また、磁気検出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)Twの領域に不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅Twを小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0479】
さらに、本実施の形態では磁気検出素子の側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるように形成されることが可能なので、フリー磁性層15のトラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。以上によってサイドリーディングの発生を適切に抑制することが可能になる。
【0480】
なお、図44ないし図48に示す磁気検出素子または図57ないし図65に示す磁気検出素子では多層膜A1または多層膜A2を構成する非磁性材料層14がCuなどの非磁性導電材料で形成されてもよいし、あるいは非磁性材料層14がAl23やSiO2などの絶縁材料で形成されてもよい。前者の磁気検出素子はスピンバルブGMR型磁気抵抗効果素子と呼ばれる構造(CPP−GMR)であり、後者の磁気検出素子はスピンバルブトンネル型磁気抵抗効果型素子(CPP−TMR)と呼ばれる構造である。
【0481】
トンネル型磁気抵抗効果型素子は、トンネル効果を利用して抵抗変化を生じさせるものであり、固定磁性層13とフリー磁性層15との磁化が反平行のとき、最も前記非磁性材料層14を介してトンネル電流が流れにくくなって、抵抗値は最大になり、一方、前記固定磁性層13とフリー磁性層15との磁化が平行のとき、最もトンネル電流は流れ易くなり抵抗値は最小になる。
【0482】
この原理を利用し、外部磁界の影響を受けてフリー磁性層15の磁化が変動することにより、変化する電気抵抗を電圧変化(定電流動作の場合)または電流変化(定電圧動作の場合)としてとらえ、記録媒体からの洩れ磁界が検出されるようになっている。
【0483】
以上詳述した図44ないし図48または図57ないし図65に示すCPP型磁気検出素子では、その上に書き込み用のインダクティブ素子が積層されていてもよい。
【0484】
また本発明の磁気検出素子は、磁気センサやハードディスクなどに用いられる。
【0485】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明では、前記多層膜上に第2の反強磁性層を積層しない状態で、前記多層膜を、磁場中アニールして前記固定磁性層の磁化方向を所定の方向に固定するので、前記多層膜上に第2の反強磁性層を積層した状態では、前記第2の反強磁性層による交換異方性磁界が発生していない。
【0486】
すなわち、前記第2の反強磁性層による交換異方性磁界は、前記第2の反強磁性層の積層後の第2の磁場中アニールにおいて始めて生じ、前記フリー磁性層の磁化方向を所定の方向に移動させることが容易になる。従って、前記フリー磁性層の磁化方向を、前記固定磁性層の磁化方向と直交する方向に固定することが容易になる。
【0487】
また、本発明の製造方法によって製造された磁気検出素子では、トラック幅が前記凹部の底面の幅寸法によって決定される。すなわち、前記凹部の底面に重なる部分でのみ、前記フリー磁性層などの外部磁界によって磁化方向が変化する磁性層の磁化方向を変化させることができる。しかも、前記凹部は、一様の厚さで成膜された前記第2の反強磁性層を、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンミリングを用いて、トラック幅方向に対する垂直方向に削るだけで形成することができるので、正確な幅寸法で前記凹部を形成することが可能になる。すなわち、磁気検出素子のトラック幅を正確に規定できる。
【0488】
さらに、本発明では前記凹部の側面をトラック幅方向に対して垂直面となるようにすることが可能である。すなわち、トラック幅領域から外れた全領域において、第2の反強磁性層による反強磁性が発生するために充分な膜厚を有することができ、トラック幅領域から外れた全領域において前記フリー磁性層の磁化方向を確実に固定することができる。
【0489】
従って、磁気検出素子のトラック幅領域でのみ前記フリー磁性層の磁化方向を動かし、トラック幅領域周辺におけるサイドリーディングを防止することができる。
【0490】
また本発明における磁気検出素子はCIP型の磁気検出素子でもCPP型の磁気検出素子でもどちらにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態である磁気検出素子の製造方法の一工程を示す断面図、
【図2】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図1の次工程を示す断面図、
【図3】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図2の次工程を示す断面図、
【図4】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図3の次工程を示す断面図、
【図5】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図4の次工程を示す断面図、
【図6】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図5の次工程を示す断面図、
【図7】 本発明の第1の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図8】 本発明の第2の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図9】 本発明の第3の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図10】 本発明の第4の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図11】 本発明の第5の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図12】 本発明の第6の実施の形態である磁気検出素子の製造方法の一工程を示す断面図、
【図13】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図12の次工程を示す断面図、
【図14】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図13の次工程を示す断面図、
【図15】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図14の次工程を示す断面図、
【図16】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図15の次工程を示す断面図、
【図17】 本発明の第6の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図18】 本発明の第7の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図19】 本発明の第8の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図20】 本発明の第9の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図21】 本発明の第10の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図22】 本発明の第11の実施の形態である磁気検出素子の製造方法の一工程を示す断面図、
【図23】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図22の次工程を示す断面図、
【図24】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図23の次工程を示す断面図、
【図25】 本発明の第11の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図26】 本発明の第12の実施の形態である磁気検出素子の製造方法の一工程を示す断面図、
【図27】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図26の次工程を示す断面図、
【図28】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図27の次工程を示す断面図、
【図29】 本発明の第13の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図30】 シンセティックフェリフリー型のフリー磁性層のヒステリシスループの概念図、
【図31】 バックド層によるスピンフィルター効果を説明するための様式説明図、
【図32】 バックド層によるスピンフィルター効果を説明するための様式説明図、
【図33】 鏡面反射層による鏡面反射効果を説明するための模式説明図、
【図34】 鏡面反射層による鏡面反射効果を説明するための模式説明図、
【図35】 本発明の第14の実施の形態である磁気検出素子の製造方法の一工程を示す断面図、
【図36】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図35の次工程を示す断面図、
【図37】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図36の次工程を示す断面図、
【図38】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図37の次工程を示す断面図、
【図39】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図38の次工程を示す断面図、
【図40】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図39の次工程を示す断面図、
【図41】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図40の次工程を示す断面図、
【図42】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図41の次工程を示す断面図、
【図43】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図42の次工程を示す断面図、
【図44】 本発明の第14の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図45】 本発明の第15の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図46】 本発明の第16の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図47】 本発明の第17の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図48】 本発明の第18の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図49】 本発明の第19の実施の形態である磁気検出素子の製造方法の一工程を示す断面図、
【図50】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図49の次工程を示す断面図、
【図51】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図50の次工程を示す断面図、
【図52】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図51の次工程を示す断面図、
【図53】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図52の次工程を示す断面図、
【図54】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図53の次工程を示す断面図、
【図55】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図54の次工程を示す断面図、
【図56】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図55の次工程を示す断面図、
【図57】 本発明の第19の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図58】 本発明の第20の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図59】 本発明の第21の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図60】 本発明の第22の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図61】 本発明の第23の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図62】 本発明の第24の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図63】 本発明の第25の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図64】 本発明の第26の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図65】 本発明の第27の実施の形態によって形成された磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図66】 本発明の第24から第27の実施の形態の磁気検出素子の製造方法の一工程を示す断面図、
【図67】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図66の次工程を示す断面図、
【図68】 本発明の磁気検出素子の製造方法における、図67の次工程を示す断面図、
【図69】 従来の磁気検出素子の断面図、
【図70】 従来の磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図71】 従来の磁気検出素子の断面図、
【符号の説明】
11 基板
12 第1の反強磁性層
13 固定磁性層
13a 第1の固定磁性層
13b 非磁性中間層
13c 第2の固定磁性層
14 非磁性材料層
15 フリー磁性層
16 非磁性中間層
17 強磁性層
19、32 第2の反強磁性層
21、24、41、45 凹部
30 非磁性層
31 他の反強磁性層
18 保護層
22、23、43、44 電極層
70 下部電極層
71 絶縁層
72 他の絶縁層
73 上部電極層

Claims (45)

  1. (a)基板上に下から順に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、フリー磁性層、非磁性中間層、強磁性層、及び保護膜を有する多層膜を成膜する工程と、
    (b)前記多層膜を、第1の熱処理温度、第1の大きさの磁界中で、磁場中アニールして前記固定磁性層の磁化方向を所定の方向に固定する工程と、
    (c)前記保護膜、及び前記強磁性層を所定厚さ削る工程と、
    (d)前記強磁性層を磁性材料を用いて再成膜し、さらに前記強磁性層上に第2の反強磁性層を連続成膜する工程と、
    (e)前記第2の反強磁性層が積層された多層膜を、第2の熱処理温度、第2の大きさの磁界中で磁場中アニールすることにより、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に向ける工程と、
    (f)前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対のレジストを積層し、前記第2の反強磁性層の前記レジストによって挟まれた部位をトラック幅方向に対して垂直方向に削り込むことにより凹部を形成する工程と、
    を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
  2. 前記(f)工程において、前記凹部の底面が前記第2の反強磁性層内に位置するように、前記凹部を形成する請求項記載の磁気検出素子の製造方法。
  3. 前記凹部の底面の下部に位置する前記第2の反強磁性層の領域の厚さを0より大きく30Å以下にする請求項記載の磁気検出素子の製造方法。
  4. 前記(f)おいて、前記凹部の底面が前記強磁性層内に位置するように、前記凹部を形成する請求項記載の磁気検出素子の製造方法。
  5. 前記(f)工程において、前記凹部の底面が前記非磁性中間層内に位置するように、前記凹部を形成する請求項記載の磁気検出素子の製造方法。
  6. 前記(e)工程おいて、第2の熱処理温度を第1の反強磁性層のブロッキング温度より低い温度に設定する請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  7. 前記(e)工程おいて、第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層の交換異方性磁界より小さくする請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  8. 前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対の電極層を積層する工程を有する請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  9. 前記(f)工程代りに、
    (l)前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対の電極層を積層し、前記第2の反強磁性層の前記一対の電極層によって挟まれた部位を削り込むことにより凹部を形成する工程を有する請求項に記載の磁気検出素子の製造方法。
  10. 前記(a)工程の前に、
    (m)基板上に、下部電極層を形成する工程を有し、
    前記(f)工程の代わりに、
    (n)前記第2の反強磁性層上に絶縁層を成膜する工程と、
    (o)前記絶縁層上に、トラック幅方向の中央部に穴部を設けたレジストを積層し、前記絶縁層及び前記第2の反強磁性層の前記穴部に露出する部位を削り込むことにより凹部を形成する工程と、
    (p)前記凹部の底面に電気的に導通する上部電極層を形成する工程と、
    を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  11. 前記(o)工程と前記(p)工程の間に、
    (q)前記凹部から前記絶縁層上にかけて他の絶縁層を成膜する工程と、
    (r)前記凹部の底面上に積層された前記他の絶縁層を除去する工程と、
    を有する請求項10記載の磁気検出素子の製造方法。
  12. 前記(m)工程と前記(a)工程の間に、
    (s)前記下部電極層のトラック幅方向の中央に、前記多層膜方向に突出した突出部を形成する工程と
    (t)前記下部電極層の前記突出部のトラック幅方向の両側部に絶縁層を設ける工程とを有し、
    前記(a)工程において、
    前記突出部の上面が前記多層膜の下面と接するように、前記多層膜を形成する請求項10又は11に記載の磁気検出素子の製造方法。
  13. 前記(t)工程において、
    前記突出部の上面と、前記下部電極層の両側端部上に設けられた前記絶縁層の上面を同一平面にする請求項12記載の磁気検出素子の製造方法。
  14. 前記(a)の工程において、前記固定磁性層を、単位面積あたりの磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層を、非磁性中間層を介して積層することによって形成する請求項1ないし13のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  15. (g)基板上に下から順に、第1の反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、フリー磁性層、非磁性中間層、強磁性層、及び他の反強磁性層を有する多層膜を成膜する工程と、
    (h)前記多層膜を、第1の熱処理温度、第1の大きさの磁界中で、磁場中アニールして前記固定磁性層の磁化方向を所定の方向に固定する工程と、
    (i)前記多層膜上に第2の反強磁性層を成膜する工程と、
    (j)前記第2の反強磁性層が積層された多層膜を、第2の熱処理温度、第2の大きさの磁界中で磁場中アニールすることにより、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向に向ける工程と、
    (k)前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対のレジストを積層し、前記第2の反強磁性層の前記レジストによって挟まれた部位をトラック幅方向に対して垂直方向に削り込むことにより凹部を形成する工程と、
    を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
  16. 前記(g)の工程において、前記強磁性層の上面に接して、非磁性層を積層する請求項15に記載の磁気検出素子の製造方法。
  17. 前記他の反強磁性層とのRKKY結合により前記強磁性層の磁化方向が前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ向けられる請求項16に記載の磁気検出素子の製造方法。
  18. 前記非磁性層をRu,Cu,Ag,Auのうち1種または2種以上の元素を用いて形成する請求項16または17に記載の磁気検出素子の製造方法。
  19. 前記(k)の工程において、前記凹部の底面が前記第2の反強磁性層内に位置するように、前記凹部を形成する請求項15ないし18のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  20. 前記凹部の底面の下部に位置する前記第2の反強磁性層の領域と前記他の反強磁性層の厚さの合計を0より大きく30Å以下にする請求項19に記載の磁気検出素子の製造方法。
  21. 前記(k)の工程において、前記凹部の底面が前記強磁性層内に位置するように、前記凹部を形成する請求項15ないし18のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  22. 前記(k)の工程において、前記凹部の底面が前記非磁性中間層内に位置するように、前記凹部を形成する請求項15ないし18のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  23. 前記(k)の工程において、前記凹部の底面が前記他の反強磁性層内に位置するように前記凹部を形成する請求項15ないし18のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  24. 前記凹部の底面の下部に位置する前記他の反強磁性層の領域の厚さ を0より大きく30Å以下にする請求項23に記載の磁気検出素子の製造方法。
  25. 前記(k)の工程において、前記凹部の底面が前記非磁性層内に位置するように前記凹部を形成する請求項16ないし18のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  26. 前記(j)の工程において、第2の熱処理温度を第1の反強磁性層のブロッキング温度より低い温度に設定する請求項15ないし25のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  27. 前記(j)の工程において、第2の磁界の大きさを第1の反強磁性層の交換異方性磁界より小さくする請求項15ないし26のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  28. 前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対の電極層を積層する工程を有する請求項15ないし27のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  29. 前記(k)の工程の代りに、
    (u)前記第2の反強磁性層上に、トラック幅方向に間隔をあけて一対の電極層を積層し、前記第2の反強磁性層の前記一対の電極層によって挟まれた部位を削り込むことにより凹部を形成する工程を有する請求項28に記載の磁気検出素子の製造方法。
  30. 前記(g)工程の前に、
    (v)基板上に、下部電極層を形成する工程を有し、
    前記(k)工程の代わりに、
    (w)前記第2の反強磁性層上に絶縁層を成膜する工程と、
    (x)前記絶縁層上に、トラック幅方向の中央部に穴部を設けたレジストを積層し、前記絶縁層及び前記第2の反強磁性層の前記穴部に露出する部位を削り込むことにより凹部を形成する工程と、
    (y)前記凹部の底面に電気的に導通する上部電極層を形成する工程と、
    を有する請求項15ないし27のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  31. 前記(x)工程と前記(y)工程の間に、
    (z)前記凹部から前記絶縁層上にかけて他の絶縁層を成膜する工程と、
    (α)前記凹部の底面上に積層された前記他の絶縁層を除去する工程と、
    を有する請求項30に記載の磁気検出素子の製造方法。
  32. 前記(v)工程と前記(g)工程の間に、
    (β)前記下部電極層のトラック幅方向の中央に、前記多層膜方向に突出した突出部を形成する工程と
    (γ)前記下部電極層の前記突出部のトラック幅方向の両側部に絶縁層を設ける工程とを有し、
    前記(g)工程において、
    前記突出部の上面が前記多層膜の下面と接するように、前記多層膜を形成する請求項30または31に記載の磁気検出素子の製造方法。
  33. 前記(γ)工程において、
    前記突出部の上面と、前記下部電極層の両側端部上に設けられた前記絶縁層の上面を同一平面にする請求項32記載の磁気検出素子の製造方法。
  34. 前記(g)の工程において、前記固定磁性層を、単位面積あたりの磁気モーメントの大きさが異なる複数の強磁性材料層を、非磁性中間層を介して積層することによって形成する請求項15ないし33のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  35. 前記下部電極層、あるいは、前記上部電極層、又は、前記下部電極層及び前記上部電極層を、磁性材料で形成する請求項10ないし13、30ないし33のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  36. 前記上部電極層を、前記凹部の底面と電気的に導通する非磁性導電性材料で形成される層と磁性材料で形成される層が積層されたものとして形成する請求項10ないし13、30ないし33、35のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  37. 前記非磁性材料層を非磁性導電材料で形成する請求項10ないし13、30ないし33、35、36のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  38. 前記非磁性材料層を絶縁材料で形成する請求項10ないし13、33ないし33、35、36のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  39. 前記非磁性中間層を、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成する請求項14又は34に記載の磁気検出素子の製造方法。
  40. 前記第1の反強磁性層と前記第2の反強磁性層を、同じ組成の反強磁性材料を用いて形成する請求項1ないし39のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  41. 前記第1の反強磁性層及び/又は前記第2の反強磁性層を、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成する請求項1ないし40のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  42. 前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成する請求項1ないし41のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
    組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は9原子%以上で17原子%以下で、Niの組成比は0.5原子%以上で10原子%以下で、残りの組成比はCoである。
  43. 前記フリー磁性層と前記非磁性材料層との間にCoFe合金あるいはCoからなる中間層を形成する請求項1ないし41のいずれかに記載の磁気検出素子の製造方法。
  44. 前記強磁性層と前記フリー磁性層のうち少なくとも一層を、以下の組成を有する磁性材料で形成する請求項43記載の磁気検出素子の製造方法。
    組成式がCoFeNiで示され、Feの組成比は7原子%以上で15原子%以下で、Niの組成比は5原子%以上で15原子%以下で、残りの組成比はCoである。
  45. 前記強磁性層及び前記フリー磁性層を前記CoFeNiで形成する請求項42または44に記載の磁気検出素子の製造方法。
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