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JP3885248B2 - 光触媒組成物 - Google Patents

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JP3885248B2
JP3885248B2 JP05514596A JP5514596A JP3885248B2 JP 3885248 B2 JP3885248 B2 JP 3885248B2 JP 05514596 A JP05514596 A JP 05514596A JP 5514596 A JP5514596 A JP 5514596A JP 3885248 B2 JP3885248 B2 JP 3885248B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光触媒組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体微粒子が禁制帯ギャップを越えるエネルギの光を吸収すると、電子−正孔対が励起子を作る。この励起子がその構造緩和の過程で電荷移動や表面捕捉反応を起すと、それぞれ還元反応・酸化反応を進行させ、光エネルギと化学エネルギの変換が行われる。かかる半導体を用いた光触媒反応は、太陽エネルギから直接燃料を作る方法として注目されたが、最近は環境浄化への応用を目指す動き[化学と工業 48,167(1995)]を強めている。
【0003】
光触媒としては、酸化チタンが報告されている[Nature 237,37(1972)]。酸化チタンの光触媒反応は固体表面で強い酸化力を発現し、多くの有機物をその最終的状態にまで酸化させることができることから、防汚、抗菌、防臭といった環境浄化の目的にも有効に機能すると考えられ、例えば、特開平6−198196号公報、特開平6−278241号公報等で提案されている。
【0004】
酸化チタン粒子を水中に分散させた系で、トリクロロエチレンが二酸化炭素や塩素イオン等に分解されることも報告されている[J.Catal.,82,404(1983)]。しかしこのような系では分散された酸化チタンの分離、回収が困難なため、工業的利用には進展していない。
【0005】
酸化チタンを固定化させる手法も種々提案されている。例えば水中で解膠させた酸化チタンゾルを基板上に施し、乾燥後、500℃程度で熱処理して調製した酸化チタン被膜は、高い触媒活性を持つ粒子と同等の触媒効果を発現したことが報告されている[Chem.Lett.,723(1994)、特開平6−278241]。しかしこのようにして形成された酸化チタン被膜は、一時的に膜状形態を持つが、脆く、容易に破壊されて触媒効果を失う欠点があった。
【0006】
またシリカゲルに酸化チタン粒子を担持させる試みもなされている[Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,359(1988)、J.Ceram.Soc.Jpn.,102,702(1994)]が、実質的に触媒濃度を下げてしまい、実用的ではなかった。
【0007】
また、酸化チタン光触媒を用いた抗菌タイルについても提案されている[工業材料 43,96(1995)]。これは酸化チタン粒子を混合してタイルを焼成したり、あるいは釉薬で酸化チタンをタイルに固定する方法で製造された[国際公開WO94/11092]ものであり、シリカゲル担持の場合と同様に触媒粒子の表面を広く遮蔽し、活性が低く、実用的ではなかった。そこでこのタイルは、低い活性を補い暗時の抗菌性を高めるために、銀や銅といった金属のイオンを担持させている。
【0008】
また、同様に銀イオンを担持させて抗菌効果を持たせた衛生陶器も知られている[日経マテリアルズ&テクノロジー 144,57(1994)]。これらのタイルや衛生陶器は抗菌性は有するが防汚性は充分ではない。
【0009】
一方、ゾル・ゲル法による金属酸化物膜の形成方法を用い、基板上に酸化チタンの被膜を設ける試みもなされている。例えば酸化チタンをコートした石英板や石英管を用いて水中のトリクロロエチレンを分解できることが報告されている[特開平7−100378号公報、水環境学会誌 17,324(1994)]。しかしこれらの酸化チタンコート層は、製膜工程を数回〜20回程繰返して初めて光触媒活性を発現できるもので、工業的にはほとんど利用されていない。
【0010】
その他、微細粒子を重ねた形状で被膜形成できるCVD膜[J.Chem.Soc.Faraday Trans.,1,81,3117(1985)]を用い、粒子同等の高い触媒活性を発現しようとした試み[J.Photochem.Photobiol.A,50,283(1989)]や、たばこのヤニを光分解するとした酸化チタンコートガラスなども提案されている[日刊工業新聞 1995年1月5日]が、エネルギの高い紫外光の照射を必要とし、一般の住環境下での効果は不充分であった。
【0011】
このように酸化チタン等の多くの半導体光触媒化合物は、無尽蔵な太陽光を利用して環境浄化の機能を発揮しうる材料として着目されたが、従来その効果を損なうことなく、実用的使用形態に加工する技術がなかったため、活性化のために通常得られる太陽光よりも短波長側の光を必要としたり、短期のきわめて限られた用途にしか使用できなかったりと、従来は半導体光触媒化合物の機能を充分に発現させえなかった。
【0012】
酸化チタンは通常、アナターゼ型とルチル型の2つの結晶相に大別され、両相ともに光触媒活性を示すことが知られている。一般にはアナターゼ型の方が高い効果を持つと考えられているが、活性化の因子は結晶相以外にも多く、一概には決められない。
【0013】
ガラス等の基板上にゾル・ゲル法やスパッタリング等で酸化チタン膜を設けると、通常アナターゼ型が得られる。こうしたアナターゼ型のUVスペクトルを観察すると、400nm近傍の光とはほとんど相互作用を持たないことが報告されている[J.Mater.Sci.,23,2259(1988)、Bull.Chem.Soc.Jpn.,67,843(1994)]。したがって太陽光からは励起に必要なエネルギは得られず、触媒効果はほとんど見られなかった。
【0014】
ゾル・ゲル法で得られたアナターゼ型を1000℃で焼成すると、ルチル型に転位する[J.Mater.Sci.,28,2353(1993)]。また、チタンアルコキシドとジエタノールアミンのアルコール溶液から調製されたゾルを用い、650℃で焼成してもルチル型が得られる[溶融塩 31,158(1988)]。
【0015】
これらのルチル型は白濁状を呈するものの、400nm近傍の光と強い相互作用を持つことから太陽光下でも強い活性を発現するものと期待されたが、実際はこれらの膜もほとんど触媒効果を発現しなかった。これは、ルチル型膜が触媒活性の小さい(110)面に配向するためと考えられている[化学工業 1988,482、Chem.Lett.,1994,855]。
【0016】
このように、アナターゼ型では太陽エネルギを吸収せず、ルチル型では活性を持たないうえに白濁してしまうといった課題があったため、従来は酸化チタン膜を太陽光下で有効に利用できなかった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、太陽光や室内照明光の下で、優れた防汚、防臭、抗菌性を発現する光触媒組成物の提供を目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、半導体光触媒化合物からなる成分(1)と、365±45nmの波長域の光を吸収し、成分(1)に励起子を形成させる化合物からなる成分(2)とを含有する光触媒組成物であって、前記成分(1)はアナターゼ型の酸化チタンであり、かつ前記成分(2)のマトリクスまたはバインダとしての機能を有し、前記成分(2)は微粒子の酸化チタンであり、前記微粒子の酸化チタンはルチル型の酸化チタンである光触媒組成物提供する。
【0019】
本発明の光触媒組成物における成分(1)は光触媒活性が高く、成分(2)は太陽光中でも高エネルギ域の光を効率良く吸収する。成分(1)と成分(2)は相互に補完しあって、高い触媒活性を発現する。すなわち、従来は機能を充分に発現できなかった半導体光触媒化合物を効率よく利用できる。
【0020】
本発明で用いる成分(1)の半導体光触媒化合物としては、バンドギャップ、相当するエネルギを持つ光の波長、安定性、安全性等の観点から判断すると、酸化チタンが最適である。なかでも形状や環境にほとんど依存することなく高い触媒活性を発現することから、アナターゼ型を用いる。
【0021】
しかし、本発明の成分(1)は、加工、成形(例えばコーティングなど)されて、本発明の光触媒組成物に特定の連続した形状を付与する機能と、成分(2)のマトリクスまたはバインダとしての機能とを担う。したがって本発明における成分(1)は、成形加工性(例えば成膜性)に優れるものが好ましい。特に、適当な加熱処理等によって半導体光触媒化合物に変換でき、しかも易成形加工性(例えば易成膜性)を有するその前駆体化合物を経て形成されるものが好ましい。
【0022】
【0023】
本発明における酸化チタンを形成するための前駆体化合物としては、最終的に酸化チタンとなる化合物の全てを使用でき、チタンのアルコキシド、アセチルアセトネート、カルボキシレート、キレート、およびペルオキソチタン酸またはこれらの部分縮合体等が、取扱の容易な点で特に好ましい。
【0024】
成分(2)は、成分(1)の中に散在し、365±45nmの波長域の光の吸収能を有する。成分(2)は、(a)この波長域の光を吸収して電荷分離を起こしたり、または、(b)接する成分(1)に作用して電荷分離を引き起こす。(a)と(b)の作用を同時に奏することもある。
【0025】
電荷分離とは、1)電子−正孔対が励起子を形成した状態、2)独立した電子および独立した正孔に分離した状態、3)電子−正孔対の励起子、独立した電子、独立した正孔が、それぞれ電荷移動と、表面および/または界面での捕捉反応を経て、酸化・還元反応を起こし消滅するまでの、1)から3)に至るすべての状態を指す。
【0026】
本発明で用いる成分(2)は、前記の(a)または(b)の作用が高く、成分(1)と安定した複合体を形成できる、365±45nmの波長域の光との相互作用が高いルチル型の酸化チタンを用いる。
【0027】
また本発明の光触媒組成物を構成する成分(2)には、金属酸化物の微粒子を用いるのも好適である。その理由としては、1)触媒活性等の相互作用が、表面および/または界面での反応であるため微粒子状であることが有効であること、2)微粒子粒径を変えることにより、強い相互作用を持つ波長域を制御できること、などが挙げられる。
【0028】
例えば酸化チタンの場合では、1〜100nmの粒径の微粒子が好適である。1nm未満では相互作用を持つ光の波長域が小さくなり、太陽光エネルギでは活性を示さなくなる。100nm超では強靭な薄膜が得にくくなる。
【0029
【0030】
さらに成分(2)には、光触媒用として市販されている酸化チタン粒子を使用できる。かかる粒子は前述のように合理的な固定化方法がなく、工業的利用は進んでいなかった。本発明においては、成分(1)が、成分(2)である光触媒用酸化チタン粒子を分散・固化させるマトリクスおよび/またはバインダとして機能する。加えて励起された成分(2)から強力な作用を受け、成分(1)自体も、単独であるよりさらに活性化され、特に高効率の光触媒組成物が製造できる。
【0031】
本発明の光触媒組成物には、その他にも種々の化合物を配合できる。特に成分(1)の担う形態保持、マトリクス、バインダ等の機能を補完、補強する目的、および成形加工性(例えば成膜性)を高める目的等から、他の金属酸化物を加えることは好ましい。なかでも酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等は、一般に成形加工性(例えば成膜性)を高め、強靭性を付与できる点から好ましく用いられる。
【0032】
【0033】
本発明の光触媒組成物は、さまざまな形態で利用できる。光触媒の作用部位は前述のように表面であることから、粒子状形態が最も効果的であるが、反応の場のみならず反応後の取扱いも含め、粒子の取扱いは困難である。一方、バルクなブロック形態のものでは利用効率が低い。
【0034】
成形加工性、取扱い、利用効率等の点から、薄膜の形態が最も有効である。本発明の光触媒組成物は薄膜成形が容易であり、薄膜での触媒活性も高い。薄膜形態の場合、その膜厚は薄いほど利用効率は高いが、成形性の観点から、10nm以上であることが好ましい。また厚くしても利用効率を上げることは少なくなることから、100μm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の光触媒組成物は、透明膜または半透明膜に容易に成形できるため、光エネルギを有効に取込みうる。しかも透明基材にも適用でき、基材の外観、表情を損なうことなく、新たな機能を付与できる。
【0036】
本発明の光触媒組成物は、多くの有機物をその最終段階にまで酸化し、防汚、防臭、抗菌する。膜状に成形された本発明の光触媒組成物は、種々の形状の成形加工体に適用できるので、種々の製品に防汚、防臭、抗菌性能を付与できる。
【0037】
本発明の光触媒組成物を表面に施したガラス、セラミックス、タイル、セメント、コンクリート等は、窓、鏡、壁、屋根、床、天井、内装材等に、有効に用いられる。さらにソーラー電池、ソーラー温水器等の受光面に用いることも、汚れの付着や藻の発生を防止できるので効果的である。
【0038】
本発明における成分(1)および成分(2)には、市販材料をそのまま、または、一般的な処理や反応を施して使用できる。
【0039】
成分(2)の添加量は、成分(1)および成分(2)の総量に対して0.01〜68重量%であることが好ましい。0.01重量%以上で限られた光エネルギを有効に取込むことができ、68重量%以下で高い光活性と耐久性が得られる。一方、68重量%超では膜は脆くなったり、安定性を失ったりし、高い光活性を発現、維持するのが困難となる。
【0040】
成分(1)と成分(2)の一体化も、一般的に行われている化学的手法、物理的手法、およびそれらを組合わせた手法等を用い、容易に行える。例えば、成分(1)の前駆体であるチタンアルコキシドのアルコール溶液に、成分(2)の市販の酸化チタン微粒子を加えて混合したゾル液を用いると、アナターゼ型中に金属酸化物微粒子を分散して複合化させた、本発明の光触媒組成物が調製できる。かかる複合体を用いた被膜は、その金属酸化物の屈折率や粒子径の選択により、透明膜ともなりうる。
【0041】
【0042】
【0043】
ただし、成分(2)に酸化チタンの微粒子を用いる場合は、成分(1)である酸化チタンの前駆体溶液および/または分散液と微粒子分散液との間に、ゲル化や凝集といった好ましくない現象を起こすことが多いので、特に注意を要する。このような現象を避ける方法としては、例えば酸化チタン微粒子にポリメチルシロキサン、脂肪酸、高級アルコールなどを修飾させた後、エタノール、キシレンなどの有機溶液に分散させた有機系酸化チタン分散液を、酸化チタン前駆体の有機溶液などと混合する方法が例示できる。
【0044】
かかる有機系の酸化チタン分散液と有機系の前駆体溶液との混合液は、一方を撹拌しながら他方を添加する方法によっても、あるいは両方を混合した後、1〜2分撹拌する方法によっても容易に調製できる。
【0045】
他の方法としては、水で解膠させた水系酸化チタンゾルをペルオキソチタン酸等の水溶液および/または水分散液と混合する方法等がある。かかる水系のゾルと水系の前駆体溶液および/または分散液の混合も、pH調整等により容易に行える。
【0046】
アナターゼ型酸化チタンへの金属イオンドーピングも、チタンアルコキシド等の溶液にドープ金属の塩化合物等を加えたゾル液を用い、上記のようなゾル・ゲル法を用いて行える。
【0047】
本発明の光触媒組成物からなる膜を成形体等に施す方法は、触媒組成、成形体形状等をも加味して決められるが、光触媒組成物を形成する原料をスプレーコート、ディップコート、スピンコート、スパッタリング等の方法を用いて行える。
【0048】
上記のようにして調合され、特定の形状を付与された光触媒組成物の原料成分は、乾燥され、焼成されて、本発明の光触媒組成物となる。乾燥は、溶媒や分散媒にも依存するが、通常は室温〜200℃の範囲で行われる。室温より低い温度では長時間を要したり、乾燥不良を起こしがちで好ましくない。一方、200℃を超える温度では、本来光触媒組成物の形成に寄与すべき前駆体成分の一部までも揮散させるので好ましくない。
【0049】
焼成は、前駆体化合物の特性にも依存するが、100〜1000℃の範囲で行うのが一般的である。例えば前駆体化合物にペルオキソチタン酸類を用いると、100℃程度でも強力な連続体に焼成できる。しかしこれより低い温度では脆くなり、好ましくない。一方、1000℃超では、アナターゼ型を残したまま焼成するのが困難となるので好ましくない。焼成方法は、瞬間的に焼成温度に至らせる方法や、数時間かけて焼成する方法など種々採用できる。
【0050】
例えば所定温度に加熱された基板に本発明の光触媒組成物を形成する原料を施し、一時に乾燥、焼成および成形加工を行う方法をも採用できる。かかる方法では、乾燥温度が200℃以上である場合が多いが、揮散してしまう前駆体化合物を加味して原料成分を調合し対処することにより、所定温度に加熱された基板上にも成形加工でき、連続生産に適する方法となりうる。
【0051】
【作用】
本発明の光触媒組成物は、太陽光等の一般住環境下で得られる光エネルギによって励起され、高い触媒活性を示す。本発明の光触媒組成物は、光エネルギ源として太陽光が好適であるが、一般の室内照明灯である蛍光灯の発する光においても有効である。さらにブラックライト、フィラメントランプ、水銀灯からの光等においても有効である。
【0052】
本発明の光触媒組成物は、光エネルギの取込みと触媒活性作用とを機能的に結び付け、高効率の光触媒機能を発現している。
【0053】
触媒がその機能を発現するためには、a)光エネルギを吸収する、b)吸収したエネルギで励起子を形成する、c)励起子は反応の場に移動してその機能を発現する、といった経路を経る。例えば酸化チタンは現在最も優れた光触媒であると考えられている。しかも酸化チタンのバンドギャップに相当するエネルギを持つ光の波長が400nm前後であることから、太陽光からも充分な励起エネルギを得ることができるものと期待された。
【0054】
しかし、本発明の光触媒組成物を構成する成分(1)でもある酸化チタンのアナターゼ型薄膜単体に、300nm近傍の紫外線を照射すると膜表面で強力な酸化力が発現されるのに対し、太陽光を照射してもほとんど触媒効果は観察されない。すなわちアナターゼ型薄膜は、励起に必要なエネルギを吸収しさえすれば上記のb)とc)を支障なく進められるが、太陽光からのエネルギは吸収できないため、太陽光下では触媒活性をほとんど示さなかったものと判断された。
【0055】
そこで上記a)の役割を担うものとして、本発明では新たに成分(2)を導入している。すなわち成分(2)は、365±45nm波長域の光を吸収し、成分(2)に吸収された光エネルギは直接的および/または間接的に成分(1)に作用し、成分(1)に励起子を形成させ、触媒活性を発現させている。
【0056】
成分(2)自体が触媒効果を持つ場合は、本発明の光触媒組成物の触媒効果がさらに高まる。また、成分(2)に金属イオンを含有する場合は、金属イオンが光吸収能が高いことに加えて、優れた励起子トラップ作用を有する。そしてトラップされた励起子は反応の場に効率良く運ばれ触媒作用をさらに高める。
【0057】
【実施例】
[例1(比較例)]
5gのアセチルアセトン、55gのイソプロパノール、20gのエチレングリコール、20gのテトラヒドロフランを混合した溶液に、100mmolのテトラブトキシチタンを加えて溶解させた。この溶液に、1mmolの硝酸と200mmolの水を加えて1時間撹拌混合し、ゾル液Aを得た。このゾル液Aを市販のフロートガラスにスピンコートして120℃にて乾燥後、800℃にて20分間焼成して、光触媒コートガラスを得た。
【0058】
この光触媒コートガラスについて、X線回折分析したところ、アナターゼ型とルチル型の両方の生成が確認され、成分(2)のルチル型の含有割合は、X線回折パターンのピーク面積から20重量%であると推定された。
【0059】
[例2(比較例)]
ゾル液Aの100gに、酸化亜鉛のトルエン分散液(粒径が10〜25nmである市販の酸化亜鉛を2g含有)6.67gを加えて撹拌混合し、ゾル液Bを得た。このゾル液Bを市販のフロートガラスにスピンコートして120℃にて乾燥後、500℃にて10分間焼成して、光触媒コートガラスを得た。
【0060】
[例3(比較例)
テトラブトキシチタン100mmolの代りにテトライソプロポキシチタン100mmolを用いた他は、例1と同様にしてゾル液Cを調製した。このゾル液Cの100gに、酸化チタンのトルエン分散液(粒径が15〜30μmである市販のアナターゼ型酸化チタンに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを8重量%グラフトさせた後、トルエンに分散させた分散液であって、酸化チタンを1.5g含有)7.5gを加えて撹拌混合し、ゾル液Dを得た。このゾル液Dを市販のフロートガラスにディップコートして120℃にて乾燥後、500℃にて10分間焼成して、光触媒コートガラスを得た。
【0061】
[例4]
例3で用いたアナターゼ型酸化チタンのトルエン分散液7.5gの代りにルチル型酸化チタンのトルエン分散液(粒径が10〜30μmである市販のルチル型酸化チタンに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを8重量%グラフトさせた後、トルエンに分散させた分散液であって、酸化チタンを1.5g含有)7.5gを用いた他は、例3と同様にして、ゾル液Eを得た。このゾル液Eを市販のフロートガラスにディップコートして120℃にて乾燥後、500℃にて10分間焼成して、光触媒コートガラスを得た。
【0062】
[例5(比較例)]
5gのアセチルアセトン、55gのイソプロパノール、20gのエチレングリコール、20gのテトラヒドロフランを混合した溶液に、80mmolのテトライソプロポキシチタンと14mmolの塩化スズを加えて溶解させた。この溶液に1mmolの硝酸と188mmolの水を加えて1時間撹拌混合し、ゾル液Fを得た。このゾル液Fを市販のフロートガラスにディップコートして120℃にて乾燥後、500℃にて10分間焼成して、光触媒コートガラスを得た。
【0063】
[例6(比較例)]
5gのアセチルアセトン、55gのイソプロパノール、20gのエチレングリコール、20gのテトラヒドロフランを混合した溶液に、100mmolのテトライソプロポキシチタンと0.1mmolの五塩化モリブデンを加えて溶解させた。この溶液に1mmolの硝酸と200mmolの水を加えて1時間撹拌混合し、ゾル液Gを得た。このゾル液Gを市販のフロートガラスにディップコートして120℃にて乾燥後、500℃にて10分間焼成して、光触媒コートガラスを得た。
【0064】
[例7〜8(比較例)]
ブランクテストとして、市販のフロートガラスのみを用いた場合(例7)と、焼成温度を800℃の代りに500℃とした他は例1と同様にして得た光触媒コートガスの場合(例8)についても試験した。例8の光触媒コートについて、X線回折分析したところ、成分(1)であるアナターゼ型のみが確認され、ルチル型は確認されなかった。
【0065】
[評価]
以上の例1〜8の光触媒コートガラス(ただし例7は市販のフロートガラス)について、汚染物除去率を測定した結果を表1に示す。なお、汚染物除去率は、市販水溶性染料の5%エタノール溶液でマーク後、10時〜16時の間太陽光下に暴露し、次式で求めた。
【0066】
汚染物除去率(%)=100(△E −△E )/△E
ここで、△E は光触媒コートガラスに対する汚染物マークガラスの色差、△E は汚染物マークガラスを6時間太陽光下に暴露した後の光触媒コートガラスに対する色差を示す。
【0067】
表1より明らかなように、本発明の光触媒組成物を用いた光触媒コートガラスは汚染物除去率が高い。成分(2)として、酸化チタン粒子を用いた場合には、特に良好な結果が得られる。
【0068】
また、以上の評価とは別に、基材への密着性、強度、耐久性についても評価した結果、例1〜6はいずれの性能も実用上問題ない充分な性能を有することが確認された。
【0069】
【表1】
Figure 0003885248
【0070】
【発明の効果】
本発明の光触媒組成物は、太陽光や室内照明光の下で、優れた防汚、防臭、抗菌性等を発現する。また本発明の光触媒組成物は、製造容易であり、種々の形状に加工できる。さらに基材への密着性も高く、強度、耐久性等にも優れる。

Claims (3)

  1. 半導体光触媒化合物からなる成分(1)と、365±45nmの波長域の光を吸収し、成分(1)に励起子を形成させる化合物からなる成分(2)とを含有する光触媒組成物であって、
    前記成分(1)はアナターゼ型の酸化チタンであり、かつ前記成分(2)のマトリクスまたはバインダとしての機能を有し、
    前記成分(2)は微粒子の酸化チタンであり、前記微粒子の酸化チタンはルチル型の酸化チタンである光触媒組成物。
  2. 前記成分(2)の添加量は、成分(1)および成分(2)の総量に対して0.01〜68重量%である請求項1に記載の光触媒組成物。
  3. 前記微粒子の酸化チタンの平均粒径が1〜100nmである請求項1に記載の光触媒組成物。
JP05514596A 1995-03-13 1996-03-12 光触媒組成物 Expired - Fee Related JP3885248B2 (ja)

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