JP3864072B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の操舵系に対して操舵補助力を発生するアシストモータを有した電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電動パワーステアリング装置は、運転者による操舵時の操舵トルクを補助するために、トルクセンサによって操舵トルクを検出するとともに、車速センサによって車速を検出し、前記検出された車速およびトルクに応じてアシストモータを駆動し、操舵トルクにアシストトルクを付加してステアリングホイールの操作性を向上させるように構成されていた。
【0003】
また従来の電動パワーステアリング装置においては、前記ステアリングホイールの動きをダンピングするような反力(ダンピングトルク)を与えるダンピング制御を実施し、車両の不整挙動を防止するようにしていた。
【0004】
この電動パワーステアリング装置におけるダンピング制御は、例えば特開昭63−291769号公報に開示されているように、車速に応じて可変制御し、車速が大となるほどダンピングトルクを増大させるようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記特開昭63−291769号公報に開示された電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールの切り込み、戻し等の操舵状態に関係無くダンピングトルクを与えていた。
【0006】
一方、タイヤ(ステアリングホイール)を中立方向へ戻す方向にトルクが生じるセルフアライニングトルクは、ステアリングホイールの戻し時には操舵方向に作用し、切り込み時には操舵方向とは逆方向に作用し、特に高速走行時等にその発生量が大きくなる。
【0007】
このため前記のように切り込み、戻し等の操舵状態に関係無くダンピングトルクを与えると、切り込み時にアシスト量が不足したり、戻し時にダンピング量が不足したりするという問題があった。
【0008】
また、操舵フィーリングを向上させるために、アシストトルクをステアリングホイールに付与しない不感帯領域を設けているが、この不感帯領域においてステアリングホイールを中立方向へアシストする戻し制御を行う場合、この戻し制御とダンピング制御は相反する制御となるので、前記のように操舵状態に関係無くダンピングトルクを与えると、正常な制御が行われずハンチングを起こす恐れがある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、操舵状態に合わせたダンピングトルクを与え、切り込み時のアシスト量不足や戻し時のダンピング量不足等が発生しない電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の電動パワーステアリング装置は、運転者による操舵トルクを補助するアシストトルクを発生させるモータを備え、ステアリング系の操舵力を補助すると共に、操舵角速度に応じたダンピングトルクを前記アシストトルクに付与する電動パワーステアリング装置において、ステアリングの切り込み、戻しの操舵状態を判別する操舵状態判別手段と、前記操舵状態判別手段によって戻し状態と判別された場合に、切り込み状態と判別された場合よりも大きなダンピングトルクを与えるダンピングトルク付与手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
また、前記ダンピングトルク付与手段は、前記操舵状態判別手段によって戻し状態と判別された状態であって、且つ前記アシストトルクがステアリングホイールに付与されない操舵入力トルクの不感帯領域である場合に、戻し状態且つ不感帯領域でない場合よりも小さなダンピングトルクを与えることを特徴としている。
【0012】
また、前記操舵状態判別手段は、前記操舵トルクを検出した信号の極性、舵角速度を推定した信号の極性およびアシストトルクの大きさに基づいて、前記操舵トルク検出信号および舵角速度推定信号の極性が一致せず、且つ前記アシストトルクの大きさが零ではないときに第1の状態であると判定し、前記操舵トルク検出信号および舵角速度推定信号の極性が一致したときに第2の状態であると判定し、前記操舵トルク検出信号および舵角速度推定信号の極性が一致せず、且つ前記アシストトルクの大きさが零であるときに第3の状態であると判定し、
前記ダンピングトルク付与手段は、前記各状態時のダンピングトルクの大きさが、第1の状態時のダンピングトルク>第2の状態時のダンピングトルク>第3の状態時のダンピングトルクとなるダンピングトルクを与えることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら本発明の一実施形態例を説明する。図1は、本発明が適用される電動パワーステアリング装置の全体構成を示している。図1において、ステアリングホイール1は、入力軸側ステアリングシャフト2a、出力軸側ステアリングシャフト2b、ユニバーサルジョイント3、中間シャフト4およびユニバーサルジョイント5を介してピニオン軸6に連結されている。
【0014】
このピニオン軸6の下端部は、水平に延びるラック軸7に噛合し、該ラック軸7とピニオン軸6によってラックアンドピニオン機構を構成している。ラック軸7の両端部は、タイロッド8a,8bを各々介して操向車輪(図示省略)に接続され、ラック軸7が水平方向に移動することで左右の車輪が操舵されるようになっている。
【0015】
ステアリングシャフト2aにはステアリングホイール1の操舵トルクを検出するトルクセンサ9が設けられ、該ステアリングホイール1の操舵力を補助するアシストモータ10が減速器11を介してステアリングシャフト2bに結合されている。
【0016】
12はパワーステアリング装置を制御するコントロールユニットであり、バッテリ13からイグニッションスイッチ14を介して電力が供給され、トルクセンサ9で検出された操舵トルクと車速センサ15で検出された車速に基づいてモータ駆動電流(目標電流指令値)を求め、該目標電流指令値に基づいてアシストモータ10に供給する電流を制御する。
【0017】
コントロールユニット12は、ステアリングの切り込み、戻し等の操舵状態を判別する操舵状態判別機能と、該判別された操舵状態に応じたダンピングトルクを与えるダンピングトルク付与機能等を実行する、例えばマイクロコンピュータを有しており、具体的には図2のように構成されている。
【0018】
図2において図1と同一部分は同一符号をもって示している。21はFET(電界効果トランジスタ)22a〜22dをブリッジ接続して成るブリッジ回路であり、その橋絡点にアシストモータ10が接続されている。このFET22aとFET22bの共通接続点は電流検出用抵抗23を介してバッテリ13の正極に接続されている。FET22cとFET22dの共通接続点は接地されている。
【0019】
アシストモータ10の端子電圧はモータ端子電圧検出手段24によって検出され、アシストモータ10に流れる電流は、電流検出用抵抗23に流れる電流に基づいて、例えばオペアンプを備えて成るモータ電流検出手段25により検出される。26は前記モータ端子電圧検出手段24およびモータ電流検出手段25の出力信号に基づいて舵角速度を推定する舵角速度推定手段である。
【0020】
27は車速センサ15の出力に基づいて車速を演算する車速算出手段である。
【0021】
28aはトルクセンサ9の出力に基づいて操舵トルクを演算する操舵トルク算出手段である。28bは車速算出手段27および操舵トルク算出手段28aの出力に基づいて基本アシストトルクを演算する基本アシストトルク算出手段である。28cは車速算出手段27および操舵トルク算出手段28aの出力に基づいて微分補正トルクを演算するトルク微分補正トルク算出手段である。28dは、舵角速度推定手段26、車速算出手段27および操舵状態判別手段29の各出力に基づいてダンピングトルクを演算するダンピングトルク算出手段である。28eは車速算出手段27および操舵状態判別手段29の出力に基づいて戻しトルクを演算する戻しトルク算出手段である。
【0022】
前記操舵状態判別手段29は、舵角速度推定手段26、操舵トルク算出手段28aおよび基本アシストトルク算出手段28bの各出力に基づいて、切り込み、戻し等の操舵状態を判別する。
【0023】
30は基本アシストトルク算出手段28b、トルク微分補正トルク算出手段28c、ダンピングトルク算出手段28dおよび戻しトルク算出手段28eからトータルのアシストトルクを求め、該トータルアシストトルクに基づいて指示電流を算出する指示電流算出手段である。この指示電流の算出は、具体的には例えば、求められたトータルアシストトルクに1/トルク定数を乗じるか、又はトータルアシストトルク:モータ電流対応マップを参照することで行われる。
【0024】
31は、モータ電流検出手段25および指示電流算出手段30の出力に基づいて、前記ブリッジ回路21の各FETをパルス幅変調(PWM)制御するためのオン、オフのデューティ比を決定するPWMデューティ決定手段である。
【0025】
32は、PWMデューティ決定手段31で決定されたデューティ比に基づいてブリッジ回路21の各FETをパルス幅変調(PWM)制御するパワー素子駆動手段である。
【0026】
前記アシストモータ10の駆動回路として働くブリッジ回路21の制御は、一例として次のような制御が行われる。すなわち、FET22a又は22bがパルス幅変調制御され、FET22c又は22dが連続してオン制御される。
【0027】
このためバッテリ13から電流検出用抵抗23を介してブリッジ回路21に供給される電流は、FET22a(又は22b)→アシストモータ10→FET22d(又は22c)→接地なる経路で流れ、アシストモータ10は右回転(又は左回転)する。これによって、ステアリングホイール1により操舵操作されている方向へ回転して、操舵力を補助する。
【0028】
ここでモータ端子電圧検出手段24およびモータ電流検出手段25の各出力に基づいて、舵角速度推定手段26が舵角速度を推定することができる根拠を以下に述べる。
【0029】
モータの電圧方程式は次のように示される。
【0030】
V=(L・dI/dt)+IR+E
=(LS+R)・I+Ke・ω…(1)
但し、Vは端子間電圧[V]、Lはインダクタンス[H]、Sはd/dt、Iは電流[A]、Rは抵抗[Ω]、Eは逆起電圧[V]、Keは逆起電圧定数[V/rad/s]、ωはモータの角速度[rad/s]である。
【0031】
定常状態ではインダクタンスの影響は無視できるため、前記(1)式を簡略化して、
V=IR+Ke・ω…(2)
(2)式より、モータ角速度は下式で表される。
【0032】
ω=(V−IR)/Ke…(3)
抵抗値R[Ω]、逆起電圧定数Ke[V/rad/s]はモータ固有の定数値であるから、モータ端子間電圧V[V]とモータ電流I[A]を計測する事でモータ角速度が求められる。
【0033】
操舵角速度[rad/s]は、定常状態ではモータ角速度の1/減速ギア比として求める事ができる。
【0034】
ただし、(3)式と最終段の操舵角速度の算出は、過渡状態を無視した定常状態での簡略方法であることと、電流制御がPI制御によるフィードバック制御であること、及びモータ駆動がPWMによる電圧の高速スイッチングであることから、実測の電流値及び端子電圧値には高周波ノイズが重畳するため、(3)式を単純に適用しただけでは実用的なモータ角速度の推定、すなわち操舵角速度の推定はまず無理である。そこで、実用的には最低限(3)式の出力にLPF(ローパスフィルター)処理を施したり、電流値、端子電圧値の区間平均値を使う、移動平均を行う、すなわち入力値のLPF処理を施したりするものである。
【0035】
前記操舵状態判別手段29は、前記操舵トルク算出手段28aの出力信号の極性、舵角速度推定手段26の出力信号の極性および基本アシストトルク算出手段28bの出力の大きさに基づいて、図3に示す処理を実行して、切り込み、戻し等の操舵状態を判別する。
【0036】
図3(a)において、まず操舵トルクTorqueが正又は0であるか否かをステップS1で判定し、正又は0である場合はステップS2において操舵角速度Strgspdが正又は0であるか否かを判定する。
【0037】
ステップS2の判定結果がYESである場合は、操舵トルクと操舵角速度が共に正で同符号(同極性)であるため操舵操作が切り込み中と判断し、ステップS3において操舵状態判定値Statusを「0」にセットし、処理を終了する。
【0038】
また前記ステップS1で操舵トルクが正又は0ではないと判定されたときは、ステップS4において操舵角速度Strgspdが正又は0であるか否かを判定する。そしてステップS4の判定結果がNOである場合は、操舵トルクと操舵角速度が共に負で同符号(同極性)であるため操舵操作が切り込み中と判断し、ステップS3において操舵状態判定値Statusを「0」にセットし、処理を終了する。
【0039】
前記ステップS2の判定結果がNOであるか又はステップS4の判定結果がYESである場合は、操舵トルクと操舵角速度が異符号(異極性)であるため戻し操舵中と判断し、ステップS5においてアシストトルクAtorqueが0でないか否かを判定する。
【0040】
そしてステップS5の判定結果がYESである場合は、戻し操舵中であってアシストが行われていると判断し、ステップS6において操舵状態判定値Statusを「1」にセットし、処理を終了する。
【0041】
またステップS5の判定結果がNOである場合は、戻し操舵中で且つアシスト不感帯であると判断し、ステップS7において操舵状態判定値Statusを「2」にセットし、処理を終了する。
【0042】
尚前記アシスト不感帯は、操舵フィーリングを向上させるために一般的に舵角中立近傍に設定されているが、これはドライバーにハンドル中立であることを知らせるために必要であり、車速の増大と共に不感帯は増大する。
【0043】
前記アシストトルクAtorqueは、図6に示すように操舵トルクTorqueに対するモータのアシストトルク値を表す。図6において、X1は車速0[km/h]時のアシスト不感帯を、X2は車速100[km/h]時のアシスト不感帯を各々示している。
【0044】
前記操舵状態判定値Statusは、例えば後述する図7における操舵角、操舵トルク、操舵角速度、アシストトルクのタイムチャート上の操舵状態を、0〜2の数値で表したものであり、Status=0は舵角中点からの切り込み工程(第2の状態)を示し、Status=1は舵角中点への戻し工程(第1の状態)を示し、Status=2は戻し工程中であって且つアシスト不感帯であること(第3の状態)を示している。
【0045】
また前記操舵状態判別手段29は、図3(b)の処理を実行して操舵状態を判別しても良い。図3(b)では、操舵トルクTorqueと操舵角速度Strgspdを符号付き整数で表し、両者の排他的論理和をとっており、該排他的論理和が負であれば両者は異符号であり、戻し操舵中である事が判定でき、また排他的論理和が正であれば両者は同符号であり、切り込み操舵中であると判定できる。
【0046】
まずステップS1において、操舵トルクTorqueと操舵角速度Strgspdの排他的論理和EXORを求める。
【0047】
次にステップS2において前記EXORが負であるか否かを判定し、その判定結果がNOである場合(正である場合)には、操舵操作が切り込み中と判断し、ステップS3において操舵状態判定値Statusを「0」にセットし、処理を終了する。
【0048】
また前記ステップS2の判定結果がYESである場合(EXORが負である場合)には、戻し操舵中と判断し、ステップS4においてアシストトルクAtorqueが0か否かを判定する。
【0049】
そしてステップS4の判定結果がNOである場合には、戻し操舵中であってアシストが行われていると判断し、ステップS5において操舵状態判定値Statusを「1」にセットし、処理を終了する。
【0050】
またステップS4の判定結果がYESである場合には、戻し操舵中で且つアシスト不感帯であると判断し、ステップS6において操舵状態判定値Statusを「2」にセットし、処理を終了する。
【0051】
前記ダンピングトルク算出手段28dは、前記舵角速度推定手段26、車速算出手段27および操舵状態判別手段29の各出力に基づいて、図4に示す処理を実行して、ダンピングトルクを演算する。
【0052】
図4(a)において、まずステップS1において操舵状態判定値Statusが2ではないか否かを判定し、その結果がNOである場合(判定結果が2である場合)には、戻し工程中であって且つアシスト不感帯であるため、ステップS2においてダンピングトルクDampingを0にセットして処理を終了する。
【0053】
また前記ステップS1の判定結果がYESである場合(判定結果が2ではない場合)には、ステップS3において図4(b)に示す舵角速度係数マップDGMAPを参照して操舵状態判定値Statusと舵角速度Strgspdから舵角速度依存係数DGainを算出する。この際、DGMAPは舵角速度Strgspdの絶対値を参照する。この舵角速度係数マップDGMAPには、操舵状態判定値Statusが0の場合よりも1の場合のほうが大きい値(DGain)となるデータがマップとして記憶されている。
【0054】
次にステップS4において、図4(c)に示す車速係数マップDVMAPを参照して操舵状態判定値Statusと車速VSpeedから車速依存係数DVspdを算出する。この車速係数マップDVMAPには、車速が大となるほど車速依存係数DVspdが増大し、且つ操舵状態判定値Statusが0の場合よりも1の場合のほうが大きい値(DVspd)となるデータがマップとして記憶されている。
【0055】
次にステップS5において、舵角速度依存係数DGainと車速依存係数DVspdを乗じてダンピングトルクDampingを算出する。
【0056】
次にステップS6において、舵角速度Strgspdの方向を判定(負であるか否かを判定)し、正であれば何もしないで処理を終了し、負であればステップS7においてDampingに負の符号を付して処理を終了する。
【0057】
前記戻しトルク算出手段28eは、車速算出手段27および操舵状態判別手段29の出力に基づいて図5に示す処理を実行して、戻しトルクRTorqueを演算する。
【0058】
図5(a)において、まず操舵状態判定値Statusが2である(すなわち戻し操舵中で且つアシスト不感帯である場合の値)か否かを判定し、その結果がNOである場合にはステップS2において戻しトルクRTorqueを0にセットして処理を終了する。
【0059】
また前記ステップS1の判定結果がYESである場合(Statusが2である場合)には、ステップS3において図5(b)に示す戻しトルク係数マップRTMAPを参照して車速毎に戻しトルクRTorqueを算出する。戻しトルク係数マップRTMAPには、車速に対応した戻しトルクRTorqueのデータがマップとして記憶されている。
【0060】
次にステップS4において、操舵トルクTorqueの方向を判定(負であるか否かを判定)し、正であれば何もしないで処理を終了し、負であればステップS5において戻しトルクRTorqueに負の符号を付して処理を終了する。
【0061】
尚、前記図2の指示電流算出手段30においては、トータルアシストトルク=基本アシストトルク(算出手段28bの出力)+トルク微分補正トルク(算出手段28cの出力)−ダンピングトルク(算出手段28dの出力)−戻しトルク(算出手段28eの出力)を演算してトータルアシストトルク(モータトルク)を求め、該求められたトータルアシストトルクに1/トルク定数を乗じるか、又はトータルアシストトルク:モータ電流対応マップを参照して指示電流を算出している。
【0062】
次に上記のように構成された装置の動作を、操舵角、操舵トルク、操舵角速度、アシストトルクのタイムチャートにて操舵状態の一例を示した図7とともに述べる。
【0063】
図7の時刻tnから時刻tn+1までの期間は、図1のステアリングホイール1を右回転させている切り込み行程であり、操舵トルクTorqueと操舵角速度Strgspdがともに同符号(同極性)であるため、図3(a)又は(b)のステップS2およびS3において操舵状態判定値Status=0と判定される。このためこの期間は、図4(b)の舵角速度係数マップDGMAPおよび図4(c)の車速係数マップDVMAPの各Status=0のデータを採用して、図4(a)のステップS3〜S7が実行され、ダンピングトルクDampingが算出される。
【0064】
この際、前記各マップDGMAP,DVMAPにおけるStatus=0のデータ(舵角速度依存係数DGain、車速依存係数DVspd)は比較的小さいので、時刻tnから時刻tn+1までの切り込み行程時に、アシスト量が不足する事態は避けられる。尚この期間中はStatus=0であるので、図5(a)のステップS1,S2に示すように戻しトルクRTorque=0となる(戻しトルクはかけない)。
【0065】
また他の実施形態例としては、切り込み行程時にダンピング制御を禁止するように構成してもよい。すなわち例えば、図4(b)の舵角速度係数マップDGMAPおよび図4(c)の車速係数マップDVMAPの各Status=0のデータとして、操舵角速度Strgspd、車速VSpeedに対してすべて0の値となるデータをマップとして記憶しておく。
【0066】
また例えば、図4(b)の舵角速度係数マップDGMAPおよび図4(c)の車速係数マップDVMAPに記憶しておくデータを、Status=1の分のみとし、図4(a)のステップS1において「操舵状態判定値Statusは1であるか否か」を判定するように変更しても良い。
【0067】
次に図7の時刻tn+1から時刻tn+2までの期間は、図1のステアリングホイール1を右切り戻ししている戻し行程であり、操舵トルクTorqueと操舵角速度Strgspdは異符号(異極性)であり、且つアシストトルクは零ではない(アシスト不感帯ではない)ので、図3(a)のステップS5,S6又は図3(b)のステップS4,S5において操舵状態判定値Status=1と判定される。このためこの期間は、図4(b)の舵角速度係数マップDGMAPおよび図4(c)の車速係数マップDVMAPにおける各Status=1のデータを採用して、図4(a)のステップS3〜S7が実行され、ダンピングトルクDampingが算出される。
【0068】
この際、前記各マップDGMAP,DVMAPにおけるStatus=1のデータ(舵角速度依存係数DGain、車速依存係数DVspd)は、前記Status=0と判定された場合(切り込み行程の場合)よりも大きいので、時刻tn+1から時刻tn+2までの戻し行程時に、ダンピング量が不足する事態は避けられる。尚この期間中はStatus=1であるので、図5(a)のステップS1,S2に示すように戻しトルクRTorque=0となる(戻しトルクはかけない)。
【0069】
次に図7の時刻tn+2から時刻tn+3までの期間は、図1のステアリングホイール1を右切り戻ししている戻し行程であり、且つアシスト不感帯領域を示している。この状態では、アシストトルクが付与されないため、ステアリングホイールを戻し方向にアシストするトルクはセルフアライニングトルクだけとなる。このためこの状態ではダンピングトルクを最小限に留めておくことが好ましい。
【0070】
時刻tn+2から時刻tn+3までの期間において、操舵トルクTorqueと操舵角速度Strgspdは異符号(異極性)であり、且つアシストトルクが零である(アシスト不感帯である)ので、図3(a)のステップS5,S7又は図3(b)のステップS4,S6において操舵状態判定値Status=2と判定される。
【0071】
このためこの期間は、図4(a)のステップS1,S2が実行されることによって、ダンピングトルクDamping=0となり(ダンピングトルクはかからない)、一方図5(a)のステップS3〜S5が実行されることによって、車速毎の戻しトルクRTorqueが算出される。
【0072】
これによって戻し行程で且つアシスト不感帯である場合に、セルフアライニングトルクのみによって戻し方向に正常にアシストすることができる。また、戻し制御と相反するダンピング制御を抑制し、ハンチング発生を防止することができる。
【0073】
また他の実施形態例としては、前記戻し行程で且つアシスト不感帯である場合に極く僅かのダンピングトルクを与えるように構成してもよい。すなわち例えば、図4(b)の舵角速度係数マップDGMAPおよび図4(c)の車速係数マップDVMAPに、Status=0の場合の値よりも更に小さい値となるStatus=2のデータをマップとして記憶しておき、図4(a)のステップS1,S2の処理を削除するようにしても良い。
【0074】
前記各操舵状態時のダンピングトルクの大きさは、戻し行程時であるStatus=1(第1の状態時)のダンピングトルク>切り込み行程時であるStatus=0(第2の状態時)のダンピングトルク>戻し行程で且つアシスト不感帯であるStatus=2(第3の状態時)のダンピングトルク、となる。
【0075】
尚、前記図2のブリッジ回路21のFET22a〜22dは、前述したようにFET22a又は22bをPWM制御し、FET22c又は22dを連続してオン制御するに限らず、他の制御方式で制御されるものであっても良い。
【0076】
前記図2において、モータ端子電圧検出手段24およびモータ電流検出手段25の出力信号に基づいて舵角速度を推定するように舵角速度推定手段26を構成したので、操舵角センサ等を特別に設ける必要はない。
【0077】
前記図4(c)の車速係数マップDVMAPには、車速が大となるほど車速依存係数DVspdが増大するデータをマップとして記憶しておき、車速が大となるほどダンピングトルクを増大させるようにしているので、セルフアライニングトルクの大きい高車速時にダンピングトルクを大きく発生させて適切なダンピング制御を行うことができる。
【0078】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば次のような優れた効果が得られる。
(1)請求項1〜3に記載の発明によれば、切り込み/戻し状態に合わせたダンピングトルクを与えているので、切り込み時のアシスト量不足や、戻し時のダンピング量不足等が発生する虞れはない。
(2)請求項2、3に記載の発明によれば、戻し行程で且つアシスト不感帯である場合に、ダンピングトルクを最小限に留めることが可能となり、セルフアライニングトルクのみによって戻し方向に正常にアシストすることができる。また、戻し制御と相反するダンピング制御を抑制し、ハンチング発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した電動パワーステアリング装置の一例を示す構成図。
【図2】本発明の一実施形態例の要部のブロック図。
【図3】本発明の操舵状態判別手段の処理の流れを表し、(a)は一実施形態例のフローチャート、(b)は他の実施形態例のフローチャート。
【図4】本発明のダンピングトルク算出手段の一実施形態例を表し、(a)は処理のフローチャート、(b)は舵角速度係数マップを説明する特性図、(c)は車速係数マップを説明する特性図。
【図5】本発明の戻しトルク算出手段の一実施形態例を表し、(a)は処理のフローチャート、(b)は戻しトルク係数マップを説明する特性図。
【図6】電動パワーステアリング装置における操舵トルク対アシストトルクの特性図。
【図7】電動パワーステアリング装置における操舵状態の一例を表す、操舵角、操舵トルク、操舵角速度、アシストトルクのタイムチャート。
【符号の説明】
1…ステアリングホイール
9…トルクセンサ
10…アシストモータ
12…コントロールユニット
13…バッテリ
15…車速センサ
21…ブリッジ回路
22a〜22d…FET
23…電流検出用抵抗
24…モータ端子電圧検出手段
25…モータ電流検出手段
26…舵角速度推定手段
27…車速算出手段
28a…操舵トルク算出手段
28b…基本アシストトルク算出手段
28c…トルク微分補正トルク算出手段
28d…ダンピングトルク算出手段
28e…戻しトルク算出手段
29…操舵状態判別手段
30…指示電流算出手段
31…PWMデューティ決定手段
32…パワー素子駆動手段
Claims (3)
- 運転者による操舵トルクを補助するアシストトルクを発生させるモータを備え、ステアリング系の操舵力を補助すると共に、操舵角速度に応じたダンピングトルクを前記アシストトルクに付与する電動パワーステアリング装置において、
ステアリングの切り込み、戻しの操舵状態を判別する操舵状態判別手段と、
前記操舵状態判別手段によって戻し状態と判別された場合に、切り込み状態と判別された場合よりも大きなダンピングトルクを与えるダンピングトルク付与手段とを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記ダンピングトルク付与手段は、前記操舵状態判別手段によって戻し状態と判別された状態であって、且つ前記アシストトルクがステアリングホイールに付与されない操舵入力トルクの不感帯領域である場合に、戻し状態且つ不感帯領域でない場合よりも小さなダンピングトルクを与えることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記操舵状態判別手段は、
前記操舵トルクを検出した信号の極性、舵角速度を推定した信号の極性およびアシストトルクの大きさに基づいて、
前記操舵トルク検出信号および舵角速度推定信号の極性が一致せず、且つ前記アシストトルクの大きさが零ではないときに第1の状態であると判定し、
前記操舵トルク検出信号および舵角速度推定信号の極性が一致したときに第2の状態であると判定し、
前記操舵トルク検出信号および舵角速度推定信号の極性が一致せず、且つ前記アシストトルクの大きさが零であるときに第3の状態であると判定し、
前記ダンピングトルク付与手段は、
前記各状態時のダンピングトルクの大きさが、第1の状態時のダンピングトルク>第2の状態時のダンピングトルク>第3の状態時のダンピングトルクとなるダンピングトルクを与えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
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