JP3858004B2 - 重金属固定化剤および重金属含有物の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却(飛)灰(焼却灰または焼却飛灰を意味する、以下同じ。)、鉱滓、土壌および汚泥などの固体粉末もしくはスラリー、または工場排水、洗煙排水(ゴミ焼却場などの煙突に付いたススを水で洗い落とす際に生じる排水)および廃棄物埋め立て処分地の浸出水などの水溶液もしくは懸濁液中に存在する重金属を固定化して重金属の溶出を防止することのできる重金属固定化剤および重金属固定化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、焼却(飛)灰、鉱滓、土壌および汚泥などの固体粉末またはスラリー中に存在する重金属を固定化して重金属の溶出を防止するために添加される薬剤としては、ポリアミンやポリエチレンイミンに二硫化炭素を付加させた水溶性の(高分子)キレート化剤(例えば、特許文献1、2参照)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−231921号公報
【特許文献2】
特開平6−15280号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの水溶性の(高分子)キレート化剤は溶解度または溶液粘度の点から高濃度の水溶液にすることが困難であり比較的希薄な水溶液で用いられることから、多量の薬剤水溶液を取り扱わねばならない、余分な水を添加するため添加後の重量、容積の増大を招くなど、作業性において問題が多い。また、有害ガス(例えば二硫化炭素、硫化水素および二酸化硫黄)の発生においても問題がある。さらにポリエチレンイミンの場合は高価でありコスト上の問題も生じている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、ピペラジンジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩(a1)とピペラジンビスジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩(a2)からなる重金属固定化剤において、(a1)と(a2)の合計重量に基づく(a1)の割合が1〜50%である重金属固定化剤;該重金属固定化剤と、その他の重金属固定化剤(a3)を組み合わせてなる重金属固定化剤;並びに、重金属を含有する、固体粉末、スラリー、水溶液または懸濁液に該重金属固定化剤及び必要により水を含有させて撹拌または混練する重金属含有物の処理方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の重金属固定化剤は、ピペラジンジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩(a1)とピペラジンビスジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩(a2)からなる[重金属固定化剤(I)]か、あるいは(a1)、(a2)およびその他の重金属固定化剤(a3)を組み合わせてなり[重金属固定化剤(II)]、(a1)と(a2)の合計重量に基づく(a1)の割合は(I)および(II)のいずれにおいても0.05〜50%、下限は好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.5%、とくに1%、上限は好ましくは30%、さらに好ましくは20%、とくに10%である。
該(a1)の割合が0.05%未満であると重金属固定化剤中から有害ガス(二硫化炭素、硫化水素、二酸化硫黄等)が発生し易くなり、また50%を超えると水に溶解した際の保存安定性[とくに低温(約0℃以下)]での保存安定性が悪くなる(析出物を生じる)。
【0007】
(I)および(II)におけるアルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらのうち、水溶液として使用する場合、高濃度にできるとの観点から好ましいのは、ナトリウム、カリウム、とくに好ましいのはカリウムである。
【0008】
重金属固定化剤(I)の製造方法としては、特に限定はなく公知の製造方法(特開平8−269434号公報等)を用いることができる。例えば、外部から温調可能なガラス製容器に所定量の水、ピペラジンを投入し、充分溶解させた後、所定量のアルカリ金属水酸化物(例えば水酸化カリウム)を加え、撹拌下冷却しながら二硫化炭素を滴下し、約40℃で反応させる方法等が挙げられる。
この時の反応温度は、特に限定はないが、通常0〜80℃、好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは20〜60℃である。またこの反応は発熱反応であり、上記温度範囲内にするため、反応中は冷却しながら行うことが好ましい。
【0009】
重金属固定化剤(I)は、(a1)と(a2)を別々に製造した後に配合してもよいし、一度に製造してもよい。製造プロセスの簡略化の観点から、後者の方法がより好ましい。この際、(a1)と(a2)の合計重量に基づく(a1)の割合M〔(a1)×100/[(a1)+(a2)](重量%)、以下同じ〕を上記範囲に調整する方法としては、滴下する二硫化炭素の量を反応生成物(a1)および(a2)の量比が上記範囲になった時点でストップすることによって調整することができる。
上記割合Mは(I)を重水にて5%程度に希釈した後、1H−NMRを測定し、(a1)および(a2)それぞれのピペラジン骨格中のメチレン基水素の積分比から算出できる。すなわち、(a1)のメチレン基水素は、TMS(テトラメチルシラン)を基準として2.88および4.35ppm付近にシグナルを示し、(a2)のメチレン基水素は4.42ppm付近にシグナルを示すので、(a1)および(a2)それぞれのピークの積分値合計の割合からモル比を算出し、重量比に変換することにより求めることができる。
【0010】
重金属固定化剤(I)を後述の重金属含有物(B)の処理に使用するに当たっては、後述するその他の重金属固定化剤(a3)を併用してもよい。
【0011】
重金属固定化剤(II)は、(a1)、(a2)およびその他の重金属固定化剤(a3)を組み合わせてなるものであり、組み合わせる方法には、予め製造した(a1)および(a2)と(a3)を混合する方法と、(a1)、(a2)および(a3)の混合物を一度に製造する方法が含まれる。
【0012】
(a1)および(a2)と(a3)を混合する場合の(a3)としては、(a1)および(a2)を除く公知のもの、例えば有機系重金属固定化剤および無機系重金属固定化剤が使用できる。
有機系重金属固定化剤としては、ジチオカルバミン酸基、チオカルバミン酸基、チオアミド基、チオウレイド基、キサントゲン酸基、チオール基、チオフェノール基およびこれらのアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウムまたはアミン(炭素数1〜8のモノ−、ジ−およびトリアルキルアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン)塩基を有する化合物などが挙げられる。
これらのうち、重金属固定化能の観点から好ましいのはジチオカルバミン酸基およびこれらのアルカリ金属塩基を有する化合物[例えば、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジプロピルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、、ポリアミンやポリエチレンイミンに二硫化炭素を付加させた高分子重金属固定化剤(特開平3−231921号公報、特開平6−15280号公報等に記載のもの)およびこれらのアルカリ金属塩]である。
無機系重金属固定化剤としては、一硫化ナトリウム、ポリ(2〜5)硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0013】
(a1)、(a2)および(a3)の混合物を一度に製造する方法としては、例えば上記(I)の製造方法に準じてピペラジンおよび1種以上のその他のアミンを共存させて二硫化炭素と反応させる方法が挙げられる。
上記その他のアミンとしては、脂肪族アミン[例えばモノアミン(炭素数1〜32、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−およびi−プロピルアミン、n−、i−、sec−およびt−ブチルアミン、アミルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、エチルヘキシルアミン、メチル−t−ブチルアミンおよびジn−ブチルアミン)、ポリアミン(炭素数2〜32、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、モノメチルアミノプロピルアミンおよびメチルイミノビスプロピルアミン)];脂環式アミン[例えばモノアミン(炭素数5〜32、例えばシクロヘキシルアミンおよびメチルシクロヘキシルアミン)、ポリアミン(炭素数5〜32、例えばシクロヘキシルジアミン)];芳香(脂肪)族アミン[例えばモノアミン(炭素数6〜32、例えばアニリンおよびベンジルアミン)、ポリアミン(炭素数6〜32、例えばフェニレンジアミン、キシレンジアミンおよびジアミノフェニルエーテル)]および複素環含有アミン[炭素数4〜32、例えばピペリジン、ピペラジン、ホモピペラジン、1−メチルピペラジン、1−アミノエチルピペラジン、1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサンおよびメラミン]などが挙げられる。
【0014】
重金属固定化剤(II)中の(a1)と(a2)の合計含有率は、有害ガス発生の観点から好ましくは少なくとも30重量%、さらに好ましくは少なくとも50重量%、とくに好ましくは少なくとも70重量%である。
【0015】
本発明の重金属固定化剤の形態は、固体もしくは水溶液のいずれであってもよい。水溶液の場合の重金属固定化剤純分含量は、輸送上の観点から、下限は好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、とくに好ましくは30重量%、最も好ましくは35重量%、また、低温保存時の安定性の観点から上限は好ましくは70重量%、さらに好ましくは60重量%、とくに好ましくは55重量%、最も好ましくは50重量%である。
また、重金属固定化剤の形態が水溶液の場合のpH[濃度20重量%、25℃]は、保存時の安定性の観点から好ましくは11〜14、さらに好ましくは12〜14である。
【0016】
本発明の重金属固定化剤は、ブロック状固体、粉体、液体、スラリー、ペーストなど、種々の性状の重金属含有物(B)中の重金属の固定化に有効であるが、焼却(飛)灰、鉱滓、土壌、汚泥などの固体粉末やスラリーまたは工場排水、洗煙排水、廃棄物埋め立て処分場の浸出水などの水溶液や懸濁液中の重金属の固定化においてさらに効果的であり、高温の焼却(飛)灰中の重金属の固定化にはとくに効果的である。
【0017】
本発明の重金属固定化剤の使用量は、該重金属含有物中に含まれる重金属含有量によって任意に調整可能であり特に限定は無いが、重金属含有物の重量(固体、粉体、ペーストの場合はそれらの全重量、また、液体、スラリーの場合は固形分の全重量)に基づいて、重金属固定化効果の観点から、固形分として、下限は好ましくは0.1重量%、さらに好ましくは0.2重量%、とくに好ましくは0.3重量%、また、薬剤コストの観点から上限は好ましくは30重量%、さらに好ましくは20重量%、とくに好ましくは10重量%である。
【0018】
本発明の重金属固定化剤を添加する際の重金属含有物(B)の温度は、固体粉末の場合、処理時に温度調整をすることなく、処理コスト低減の観点から下限は好ましくは20℃、さらに好ましくは50℃、とくに好ましくは80℃、最も好ましくは100℃、また、有害ガス発生防止の観点から、上限は好ましくは400℃、さらに好ましくは350℃、とくに好ましくは300℃、最も好ましくは250℃である。
前記従来の重金属固定化剤では安定に処理できなかった高温の焼却(飛)灰(温度100〜300℃)についても、耐熱性に優れる本発明の重金属固定化剤は安定に処理できる性能を有することから、好適に用いられる。
また水を含有する上記スラリー、水溶液または懸濁液の場合は、本発明の重金属固定化剤が有効に作用するとの観点から好ましい下限は5℃、大がかりな処理装置を要しないとの観点から好ましい上限は100℃である。
【0019】
本発明の重金属固定化剤の被処理物への添加方法としては、特に限定されることはなく、前記固体もしくは水溶液の形態のまま被処理物に添加する方法、予め該固体を水に溶解または該水溶液を希釈(例えば約10倍)して重金属固定化剤濃度0.1〜70重量%の水溶液とした後に被処理物に添加してもよい。また該重金属固定化剤と水を別々に順序不同で添加してもよい。
【0020】
本発明の、重金属含有物(B)の処理方法において、(B)が固体粉末またはスラリーである場合は、重金属固定化剤および必要により水を、固体粉末またはスラリーの表面に散布するだけでもよいが、重金属の固定化効果の観点から固体粉末またはスラリーに添加して混練することがより好ましい。さらに、固体粉末が焼却(飛)灰の場合には、上記添加方法に加え、煙道排ガス中に重金属固定化剤の水溶液を噴霧して添加してもよい。
また、(B)が水溶液または懸濁液などの排水である場合は、重金属固定化剤および必要により水を排水に添加するだけでもよいが、該排水に添加した後に撹拌して重金属を不溶化せしめることがより好ましい。
【0021】
本発明の、重金属含有物(B)の処理方法においては、必要により通常用いられる凝集剤やpH調整剤を併用してもかまわない。
凝集剤としては、無機系〔硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、塩化第2鉄等〕、有機系〔ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリルアミド系ポリマー[ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド部分加水分解物、ポリ(メタ)アクリルアミドメチロール化カチオン化物、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸(塩)共重合物、(メタ)アクリルアミドとジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合物の4級化物、(メタ)アクリルアミドとジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物の共重合物等]、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレートポリマーの4級化物、ポリエチレンイミン、天然物系[グアーガム、アルギン酸塩、キトサン等]等〕が挙げられる。
凝集剤を併用する場合の使用量は、重金属含有物(B)の重量に基づいて、通常5重量%以下、充分な凝集効果を発揮させるとの観点から好ましくは0.0001〜3重量%である。
【0022】
pH調整剤としては、特に限定はなく、例えば鉱酸(例えば硫酸、塩酸およびリン酸)、無機固体酸性物質(例えば酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安およびスルファミン酸)および有機酸(炭素数2〜12、例えばシュウ酸およびこはく酸);または無機アルカリ性物質(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、消石灰、生石灰およびアンモニア)および有機アルカリ性物質(例えばグアニジン)が挙げられる。
pH調整剤を併用する場合の使用量は、(B)の性状により任意に調整可能であり特に限定は無いが、(B)の重量に基づいて、通常30重量%以下、処理後の重量を低減させるとの観点から好ましくは0.1〜10重量%である。
【0023】
上記固体粉末またはスラリーに添加して混練する際の混練装置としては、特に限定はなく通常のもの、例えばニーダー、ホバートミキサー等が挙げられる。
また上記排水に添加して撹拌する際の撹拌装置としては、特に限定は無く、撹拌ができるものであれば全ての撹拌装置が挙げられる。
【0024】
(B)に含まれる重金属としては、鉛、カドミウム、銅、亜鉛、水銀、クロム、ニッケル、ヒ素およびセレン等が挙げられるが、本発明の重金属固定化剤はこれらのうち、特に鉛、カドミウム、銅、亜鉛、水銀およびニッケルに対して重金属固定化効果が高い。
【0025】
本発明の重金属固定化剤は、焼却(飛)灰、鉱滓、土壌および汚泥などの固体粉末もしくはスラリー、または工場排水、洗煙排水および廃棄物埋め立て処分地の浸出水などの水溶液もしくは懸濁液中に存在する重金属を固定化して重金属の溶出を防止するためなどに幅広く用いられる。
【実施例】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0026】
<合成例1>
冷却・撹拌可能で、窒素置換が可能な耐圧性反応容器にイオン交換水600部、ピペラジン100部を仕込み完全に溶解した後、48.5%の水酸化カリウム水溶液135部を仕込み、200rpmで撹拌した。反応容器を完全に密閉にした後、窒素雰囲気下、35℃にて二硫化炭素89部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度にて3時間熟成を行うことによって、ピペラジンジチオカルバミン酸カリウムの29%水溶液(X1)を得た。(X1)における割合Mは80%であった。
【0027】
<合成例2>
イオン交換水269部、48.5%の水酸化カリウム水溶液269部、二硫化炭素177部を用いた以外は合成例1と同様にして、ピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの45%水溶液(X2)を得た。(X2)におけるMは0.04%であった。
【0028】
<合成例3>
イオン交換水269部、48.5%の水酸化カリウム水溶液256部、二硫化炭素167部を用いた以外は合成例1と同様にして、ピペラジンジチオカルバミン酸カリウムとピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの混合物の44%水溶液(X3)を得た。(X3)におけるMは3%であった。
【0029】
<合成例4>
イオン交換水269部、48.5%の水酸化カリウム水溶液242部、二硫化炭素159部を用いた以外は合成例1と同様にして、ピペラジンジチオカルバミン酸カリウムとピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの混合物の44%水溶液(X4)を得た。(X4)におけるMは7%であった。
【0030】
<合成例5>
合成例1で得られた(X1)153部と合成例2で得られた(X2)148部を配合することにより、ピペラジンジチオカルバミン酸カリウムとピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの混合物の37%水溶液(X5)を得た。(X5)におけるMは32%であった。
【0031】
<合成例6>
イオン交換水269部、ピペラジン80部、ジエチルアミン34部、48.5%の水酸化カリウム水溶液269部、二硫化炭素167部を用いた以外は合成例1と同様にしてジエチルアミンジチオカルバミン酸カリウム、ピペラジンジチオカルバミン酸カリウムおよびピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの混合物の45%水溶液(X6)を得た。(X6)におけるMは4%、また1H−NMRから重金属固定化剤中のピペラジンジチオカルバミン酸カリウムとピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの合計含有率は、80重量%であった。
【0032】
<合成例7>
ピペラジンジチオカルバミン酸カリウムの29%水溶液(X1)259部とピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの45%水溶液(X2)56部を配合することにより、ピペラジンジチオカルバミン酸カリウムとピペラジンビスジチオカルバミン酸カリウムの混合物の32%水溶液(X7)を得た。(X7)におけるMは60%であった。
【0033】
<合成例8>
ピペラジンの代わりにジエチレントリアミン100部、イオン交換水670部、48.5%の水酸化カリウム水溶液の代わりに48%水酸化ナトリウム水溶液243部、二硫化炭素221部を用いた以外は合成例1と同様にして、N1,N2,N3−ジチオカルボキシ−ジエチレントリアミンのナトリウム塩31%水溶液(X8)を得た。
【0034】
<合成例9>
ピペラジンの代わりにテトラエチレンペンタミン100部、イオン交換水828部、48.5%の水酸化カリウム水溶液306部、二硫化炭素201部を用いた以外は合成例1と同様にして、N1,N2,N3,N4,N5−ジチオカルボキシ−テトラエチレンペンタミンのカリウム塩28%水溶液(X9)を得た。
【0035】
<実施例1〜4、比較例1〜4>
本発明の重金属固定化剤(X3〜X6)および比較の重金属固定化剤(X2、X7〜X9)の水溶液を容量50mlの密栓式ガラス瓶に入れ、0℃または−10℃に調整したインキュベーター内に1週間静置し、結晶が析出するか否かを試験した。結果を表1に示す。この結果から、本発明の重金属固定化剤(実施例1〜4)は、0℃または−10℃で保存期間1週間では結晶の析出は見られなかった。
【0036】
<実施例5〜8、比較例5〜8>
都市ゴミ焼却により生じた焼却飛灰50部を200mlのガラス製容器(直径5cm×高さ10.2cm円筒形)に秤り取り、蓋をして密閉にした後、200℃に温調した循風乾燥機内で1時間加熱した。乾燥機から取り出した後、瞬時に本発明の重金属固定化剤(X3〜X6)および比較の重金属固定化剤(X2、X7〜X9)の水溶液を、重金属固定化剤の固形分として0.8部、水8部をそれぞれ添加し、スパーテルで素早く(約30秒間)十分に混練した。
再度蓋をし、上記乾燥機内で30分間温調した後、取り出した直後の容器内の気相部のアミン、二硫化炭素、硫化水素濃度をガス検知管[アミンはガステック(株)製No.180L、二硫化炭素はガステック(株)製No.13、硫化水素はガステック(株)製No.4LT]を用いて測定した。結果を表2に示す。この結果から、本発明の重金属固定化剤(実施例5〜8)は、比較の重金属固定化剤(比較例5〜8)と比べて発生ガス量が著しく少なく、耐熱性が高いことがわかる。
【0037】
<実施例9〜12、比較例9〜12>
上記実施例5〜8および比較例5〜8で試験した後の処理飛灰と未処理飛灰(重金属固定化剤を添加していないもの)について溶出試験(環境庁告示13号)を行い溶出した鉛イオン濃度を原子吸光を用いて測定した。結果を表3に示す。この結果から、本発明の重金属固定化剤(実施例9〜12)は、比較の重金属固定化剤(比較例9〜12)と比べて重金属固定化可能に優れることがわかる。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【発明の効果】
本発明の重金属固定化剤は、下記の効果を奏することから極めて有用である。
(1)重金属含有物に添加する際に、高濃度の水溶液として用いることができ作業性に優れる。
(2)高濃度水溶液の低温保存安定性に優れる。
(3)重金属含有物、とくに焼却(飛)灰、鉱滓、土壌および汚泥などの固体粉末もしくはスラリー、または工場排水、洗煙排水および廃棄物埋め立て処分地の浸出水などの水溶液もしくは懸濁液中に存在する重金属を速やかに固定化して重金属の溶出を防止する機能に優れる。
(4)耐熱性が良好で、高温の焼却(飛)灰中の重金属の固定化機能に優れる。
(5)二硫化炭素、硫化水素および二酸化硫黄などの有害ガスの発生が極めて少ない。
Claims (7)
- ピペラジンジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩(a1)とピペラジンビスジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩(a2)からなる重金属固定化剤において、(a1)と(a2)の合計重量に基づく(a1)の割合が1〜50%である重金属固定化剤。
- さらに、その他の重金属固定化剤(a3)を組み合わせてなる請求項1記載の重金属固定化剤。
- アルカリ金属がカリウムである請求項1または2記載の重金属固定化剤。
- (a1)と(a2)の合計含有率が30〜100重量%である請求項1〜3のいずれか記載の重金属固定化剤。
- 重金属を含有する、固体粉末、スラリー、水溶液または懸濁液に請求項1〜4のいずれか記載の重金属固定化剤および必要により水を含有させて撹拌または混練する重金属含有物(B)の処理方法。
- (B)が焼却(飛)灰である請求項5記載の処理方法。
- 焼却(飛)灰の温度が100〜300℃である請求項6記載の処理方法。
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