JP3824282B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
強磁性微粉末と結合剤とを分散させてなる磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体において、とくに優れた電磁変換特性と耐久性をもつ磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオテープあるいはフロッピーディスクなどとして広く用いられている。磁気記録媒体は、強磁性粉末が結合剤(バインダ)中に分散された磁性層を非磁性支持体上に積層している。
磁気記録媒体は、電磁変換特性、走行耐久性および走行性能などの諸特性において高いレベルにあることが必要とされる。すなわち、音楽録音再生用のオーディオテープにおいては、より高度の原音再生能力が要求されている。また、ビデオテープについては、原画再生能力が優れているなど電磁変換特性が優れていることが要求されている。
【0003】
このような優れた電磁変換特性を有すると同時に、磁気記録媒体は前述のように良好な走行耐久性を持つことが要求されている。そして、良好な走行耐久性を得るために、一般には研磨材および潤滑剤が磁性層中に添加されている。
【0004】
しかしながら、研磨材によって優れた走行耐久性を得るためには、その添加量をある程度多くする必要があり、そのため強磁性粉末の充填度が低下する。また優れた走行耐久性を得るために粒子径の大きな研磨材を使用した場合には、磁性層表面に研磨材が過度に突出し易くなる。従って、研磨材による走行耐久性の改良は上記の電磁変換特性の劣化をもたらす場合がある。
【0005】
潤滑剤によって上記走行耐久性を向上させる場合には、その添加量を多くする必要があり、このため結合剤が可塑化され易くなり、磁性層の耐久性が低下する傾向がある。
また、上記耐久性および電磁変換特性を向上させるためには、磁性層の主成分の一つである結合剤も、当然のことながら重要な働きを担っている。従来から用いられている塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等では、磁性層の耐摩耗性が劣り、磁気テープの走行系部材を汚染するという問題があった。
【0006】
このような問題を改善する方法として、硬い結合剤を用いて磁性層の硬度を上げる方法が行われている。
例えば、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂からなる結合剤を用いた磁気記録媒体が特開平6−96437号公報に記載されており、実施例には、ウレタン基が2〜4mmol/gのウレタンが記載されているが、長鎖ジオールの含有量は不明であり、OH基に関しても明かなものでなく、また、特公平6−19821号公報には、同様に、ウレタンとウレアの合計が1.8〜3.0mmol/gのウレタンウレアが含まれている結合剤が記載されているが、樹脂合成例によれば、得られたポリウレタン樹脂中の長鎖ジオールの割合は61重量%であり、これらはウレタン結合濃度が大きく、耐久性に優れるものの塗布液の粘度の上昇に伴う分散性の低下によって電磁変換特性が低下してしまう欠点があった。
【0007】
また、環状構造を有する短鎖ジオールを用いたポリウレタン樹脂を結合剤としたものが提案されており、特開昭61−148626号公報には、ビスフェノールAが20%含まれるポリエステルポリオールを用いており、実施例から求めると、ウレタンに対してビスフェノールAの含有量は13重量%であり、ポリオール含有量69重量%のものが用いられているが、環状構造が溶剤への溶解性を低下させるために分散性が劣るという欠点があった。また、特開平1−251416号公報には、環状構造を有する短鎖ジオールとして、ビスフェノールAを鎖延長剤およびポリカーボネートポリオール原料に用いたポリウレタンが記載されており、実施例からビスフェノールAの含有量は16重量%であり、ポリオール含有量63重量%のものが用いられているが、同様に環状構造が溶剤への溶解性を低下させるために分散性が低下するという問題があった。また、ビスフェノールSを含むラクトン変性ポリオールを用いることが特公平7−21851号公報に記載されているが、実施例から求めるとポリオール含有量は52重量%であり、ビスフェノールSの含有量は13重量%のポリウレタンであるが、環状構造を有するために同様な問題があった。
【0008】
また、特開平1−267829号公報には、ポリウレタン樹脂が、環状構造を有するポリエーテルポリオールを使用するものであり、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物をジオール(分子量250〜3000)等を用いることが記載されているが、実施例はいずれもポリオール含有量が70重量%以上であり、またエーテル含有量が8mmol/g以上であるので、塗膜が軟らかくなりヘッド汚れなどの耐久性が低下するという欠点があった。
【0009】
また、特開昭61−190717号公報には、ポリウレタン樹脂としてポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオールを用いているが、実施例の記載によれば、ポリオール含有量は70重量%以上であり、同様に塗膜が軟らかくヘッド汚れなどが生じ耐久性が低下するという問題があった。
【0010】
特公平6−64726号公報には、イソシアネート末端プレポリマーに、分岐状ポリエステルポリオールを反応させたポリウレタン樹脂が記載されているが、合成例から求めるとOH基の含有量は8.2×10-5eq/gと多く、含有量が多く溶液の粘度が増加して分散性が劣る上、分岐ポリオールにより樹脂の強度の低下、繰り返し走行性の悪化等の問題も伴っていた。
【0011】
同様に、特開平3−44819号公報には、両末端に少なくとも1個のOH基を有する化合物とポリイソシアネートからなる結合剤を用いた磁気記録媒体が記載されているが、ポリエステルポリオールを用いることが記載されているのみであり、樹脂の強度の低下、繰り返し走行性の悪化等の問題があった。
【0012】
また、特開昭62−82510号公報には、主鎖および分岐鎖の末端数が平均3個以上であり、少なくとも2個の末端に一級水酸基があるポリウレタン樹脂を含有した結合剤が記載されており、実施例にはポリエステルポリオールが挙げられているが、樹脂の強度および繰り返し走行耐久性等が十分なものではなかった。
【0013】
以上のように、磁気記録媒体用結合剤として用いられる従来公知のポリウレタン樹脂やポリウレタンウレア樹脂は、一般的にポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の親水性セグメントを有する長鎖ジオールを用いることが記載されており、また、長鎖ジオールは、各先行技術に記載の実施例によると樹脂中の長鎖ジオールはいずれも25モル%以上含むものであった。
【0014】
しかし、上記ポリウレタン樹脂やポリウレタン−ウレア樹脂は前述した親水性セグメントを有するために有機溶剤との親和性を妨げ、親水性極性基が凝集をおこし易く、有機溶剤中における分子鎖の広がりが小さくなる方向にあり、強磁性微粉末の分散性を妨げる作用をするという欠点があった。
又、これらの親水性セグメントを持つ長鎖ジオールは、ポリエステルの場合には、エステル結合基が加水分解しやすく保存性が低下するという問題があり、ポリエーテルには、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのようにTgが低く、柔らかく強度の小さいものであった。
【0015】
ところで、磁性層を非磁性層の上に設けることにより磁性層厚味を薄くした磁気記録媒体が公知であるが、更に高密度記録を達成するために磁性層の厚さがより薄い、また、強磁性金属粉末も更に微小なものが必要になってきている。この強磁性金属粉末の微小化は分散性の低下を招き、ひいては磁性層の表面性を劣化させ、電磁変換特性を低下させ、更に耐久性を確保することが困難になってきている。
【0016】
即ち、強磁性金属粉末や非磁性粉末の分散性が優れ、かつ硬さ(即ち、高Tg、高ヤング率)と靱性(伸び)が両立した耐久性に優れたポリウレタン樹脂が望まれている状況下において、上述のポリウレタン樹脂は、上記課題に十分に応えることができないものであった。
また、今日、8ミリビデオテープ、あるいは更に民生用DVCに適したビデオテープとして、強磁性金属薄膜を用いたテープ(ME)があるが、強磁性金属粉末を用いた塗布型テープ(MP)は、MEに比べ、耐久性、経済性等において優れているという利点がある反面、電磁変換特性において劣る所がある。
そして、微粒子磁性体を用いた塗布型磁気記録媒体は、更なる走行耐久性及び電磁変換特性の改善が望まれている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高度な耐久性と再生出力の優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供することを課題とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成よりなる。
1)非磁性支持体上に強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録媒体または前記磁性層と前記非磁性支持体の間に更に無機粉末と結合剤とを含む下層塗布層を設けた磁気記録媒体において、前記磁性層中の結合剤または前記下層塗布層中の結合剤の少なくとも一つの結合剤が環状構造とエーテル基とを含むポリウレタン樹脂であり、かつ前記磁性層および/または下層塗布層中に、芳香族有機酸化合物を前記ポリウレタン樹脂と同一層中に含むことを特徴とする磁気記録媒体。
2)前記芳香族有機酸化合物が、pKa3以下の有機酸もしくはその塩であることを特徴とする前記1)の磁気記録媒体。
3)非磁性支持体上に鉄を主成分とした強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録媒体または前記磁性層と前記非磁性支持体の間に更に無機粉末と結合剤とを含む下層塗布層を設けた磁気記録媒体において、少なくとも前記磁性層中に前記1)記載のポリウレタン樹脂および芳香族有機燐酸化合物を含有し、磁性層を蛍光X線で測定したFeに対するPの強度比が0.2〜2.0であることを特徴とする磁気記録媒体。
4)ポリウレタン樹脂中に1分子あたり3〜20個のOH基を有することを特徴とする前記1)〜3)の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
5)ポリウレタン樹脂は分子中に、−SO3M、−OSO3M、−COOM、−PO3MM′、−OPO3MM′、−NRR′、−N+RR′R″COO-(ここで、MおよびM′は、各々独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンであり、R、R′およびR″は各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を示す)から選ばれた少なくとも1種の極性基を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
6)ポリウレタン樹脂は、環状構造を有する短鎖ジオールとエーテル基を含む長鎖ジオールを含むポリウレタン樹脂であることを特徴とする前記1)〜5)の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
7)前記短鎖ジオールは、分子量が50以上500未満であることを特徴とする前記6)に記載の磁気記録媒体。
8)前記短鎖ジオールは、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールPおよびこれらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールであることを特徴とする前記6)または7)に記載の磁気記録媒体。
9)前記短鎖ジオールは、水素化ビスフェノールAおよびそのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物であることを特徴とする前記6)〜8)の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
10)前記長鎖ジオールは、分子量が500以上のジオールであって、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS又はビスフェノールPにエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれらの両者を付加させたもの、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする前記6)に記載の磁気記録媒体。
11)前記長鎖ジオールは、下記の式2で示される化合物であることを特徴とする前記6)または10)に記載の磁気記録媒体。
【化2】
式2中、Xは、水素原子、またはメチル基であり、nおよびmの値は、3〜24である。
12)前記磁性層中の結合剤または前記下層塗布層中の結合剤の少なくとも一つの結合剤が、ジオールと有機ジイソシアネートを主要原料とした反応生成物であるポリウレタン樹脂からなり、環状構造を有する短鎖ジオール単位をポリウレタン樹脂中に17〜40重量%含み、かつポリウレタン樹脂全体に対して、エーテル基を1.0〜5.0mmol/gを含む長鎖ジオール単位をポリウレタン樹脂中に10〜50重量%含む結合剤であることを特徴とする前記1)〜11)の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
【0019】
請求項1の発明は、特定構造のポリウレタン樹脂と芳香族有機酸化合物とを組み合わせて用いることにより、従来よりも更に強磁性粉末、非磁性粉末、軟磁性粉末等の各種粉体の分散性を向上させ、磁気記録媒体の耐久性を向上させるものである。
ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂の環状構造が、剛直性に、エーテル基が柔軟性に寄与すると共に溶解性が向上し、慣性半径(分子の広がり)が大きくなり、前記粉体の分散性が向上すると考えられ、かつそれら構造によりポリウレタン樹脂自身の硬さ(高ガラス転移点Tg、高ヤング率)と靱性(伸び)の特性が両立されることから、耐久性の改善が計れるものと考えられる。
【0020】
更に、芳香族有機酸化合物は、粉体表面に強く吸着することから、粉体表面に吸着した芳香族有機酸化合物によってポリウレタン樹脂が多くかつ強く吸着するために更に粉体の分散性が向上し、かつ耐久性が向上するものと考えられる。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1と同じポリウレタン樹脂を用い、請求項1の発明の芳香族有機化合物として芳香族有機燐酸化合物(以下、燐化合物ともいう)を選択すると共にその添加量を適正範囲に規定し、かつ強磁性粉末として鉄を主体とした強磁性粉末を選択してこれらを少なくとも磁性層に含有させることにより電磁変換特性及び耐久性を改善することができる。この請求項3の発明は、ポリウレタン樹脂及び燐化合物の効果は、各々上記ポリウレタン樹脂及び芳香族有機化合物と同様であるが、磁性層におけるP/Feを規定したことにより電磁変換特性及び耐久性の向上した磁気記録媒体を安定して提供できると言う効果がある。
【0022】
ポリウレタン樹脂中のOH基の含有量は、1分子あたり3個〜20個であることが好ましく、より好ましくは1分子あたり4個〜5個である。1分子あたり3個未満であるとイソシアネート硬化剤との反応性が低下するために、塗膜強度が低下し、耐久性が低下しやすい。また、20個より大であると溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下しやすい。
【0023】
ポリウレタン樹脂中のOH基の含有量を調整するために用いる化合物としては、OH基が3官能以上の化合物を用いることができる。具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水トリメリット酸、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール等が挙げられ、従来技術として説明した特公平6−64726号に記載のポリエステルポリオール原料として用いられる2塩基酸と前記化合物をグリコール成分として得られる3官能以上OH基をもつ分岐ポリエステル、ポリエーテルエステルが挙げられる。好ましくは、3官能のものが好ましく、4官能以上になると反応過程においてゲル化しやすい。
【0024】
本発明のポリウレタン樹脂は、分子中に−SO3 M、−OSO3 M、−COOM、−PO3 MM′、−OPO3 MM′、−NRR′、−N+ RR′R″COO- (ここで、MおよびM′は、各々独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンであり、R、R′およびR″は各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を示す)から選ばれた少なくとも1種の極性基を含むことが好ましく、とくに好ましくは、−SO3 M、−OSO3 Mである。これらの極性基の量は好ましくは、1×10-5〜2×10-4eq/gであり、特に好ましくは5×10-5〜1×10-4eq/gである。1×10-5eq/gより少ないと強磁性粉末への吸着が不充分となるために分散性が低下し、2×10-4eq/gより多くなると溶剤への溶解性が低下するので分散性が低下する。
【0025】
また、本発明に使用されるポリウレタン樹脂は、ジオールと有機ジイソシアネートを主要原料とした反応生成物であるポリウレタン樹脂からなり、ジオール成分としては、環状構造を有する短鎖ジオール単位とエーテル基を含む長鎖ジオール単位とを含むことが好ましい。
【0026】
環状構造を有する短鎖ジオールとは、飽和又は不飽和の環状構造を有し、かつ分子量が500未満のジオールを意味する。例えば、ビスフェノールA、下記の式1で示される水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールPおよびこれらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の芳香族、脂環族を有するジオールが好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
さらに好ましくは、式1で示す水素化ビスフェノールAおよびそのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物が挙げられる。
【0029】
また、環状構造を有する短鎖ジオールは、分子量が50以上500未満のものから選ばれ、より好ましくは100〜400、最も好ましくは100〜300である。50未満では、磁性層がもろくなり耐久性が低下する。また500以上の場合(即ち、本発明で言う短鎖ジオールを使用しない場合)、磁性層のガラス転移温度Tgが低下し、軟らかくなり耐久性が低下する。
また、前記環状構造を有する短鎖ジオールと共に、分子量500未満の他のジオールを併用することができる。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、N−ジエタノールアミンのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物等の直鎖又は分枝のジオールを挙げることができる。
【0030】
これらを用いることによって、環状構造により高強度、高Tgであって、高耐久性の塗布膜が得られる。さらに分岐CH3 の導入により溶剤への溶解性に優れるため高分散性が得られる。
【0031】
ポリウレタン樹脂中の短鎖ジオール単位の含有量は、17〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜30重量%である。17重量%未満では、得られる塗膜が軟らかくなりすぎ充分な強度が得られず、スチル耐久性が低下する。また、40重量%より大では、溶剤への溶解性が低下し、強磁性粉末の分散性が低下しやすいので電磁変換特性が低下しやすいとともに、磁性層の強度が小さくなる。
【0032】
また、長鎖ジオールとは、分子量が500以上のジオールであって、具体的には、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS又はビスフェノールPにエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれらの両者を付加させたもの、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく、とくに下記の式2で示される化合物が好ましい。
【0033】
【化2】
【0034】
また、nおよびmの値は、3〜24であり、好ましくは3〜20であり、より好ましくは4〜15である。n、mが3よりも小さいとウレタン結合濃度が高くなり、溶剤への溶解性が低下したり、塗膜が脆くなりやすく、さらに分散性、耐久性が低下する。n、mが24よりも大きくなると塗膜が軟らかくなり、スチル耐久性が低下する。
【0035】
また、長鎖ジオールにおいて、Rは、以下の▲1▼、▲2▼が好ましく、
【0036】
【化3】
【0037】
▲1▼のものがより好ましい。
また、式2の長鎖ジオールにおいて、Xは、水素原子、またはメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。なお、n又はmでくくられるカッコ内のXはすべて同じである必要はなく、水素原子とメチル基が混ざっていてもよい。
本発明の特に好ましい態様で使用されるポリウレタン樹脂は、環状構造を有するので、塗膜強度が高く、耐久性に優れ、プロピレンの分岐CH3 を有するので、溶剤への溶解性に富み分散性に優れる。
【0038】
長鎖ジオールの重量平均分子量(Mw)は、500〜5000であり、5000以上では塗膜強度が低下し、軟らかくなるので耐久性が低下する。従って、より好ましい重量平均分子量は700〜3000の範囲から選ばれる。
エーテル基を含む長鎖ジオール単位の含有量は、ポリウレタン樹脂中10〜50重量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜40重量%である。10重量%未満であると溶剤への溶解性が低下するので分散性が低下する。また、50重量%より大であると塗膜強度が低下するので耐久性が低下する。 該長鎖ジオール単位のエーテル基の含有量は、ポリウレタン樹脂中に1.0〜5.0mmol/gであることが好ましく、より好ましくは2.0〜4.0mmol/gである。1mmol/g未満であると磁性体への吸着性が低下し、分散性が低下する。一方、5.0mmol/gより大であると、溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下する。
【0039】
本発明のポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは、18000〜56000、更に好ましくは23000〜34000であり、重量平均分子量(Mw)は、好ましくは、30000〜100000、更に好ましくは40000〜60000である。これら範囲より小さいと磁性層の強度が低下し、耐久性が低下する。また、これら範囲より大では溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下する。
【0040】
本発明のポリウレタン樹脂のガラス転移温度Tgは、0〜200℃であり、好ましくは、30〜150℃、さらに好ましくは、30〜130℃の範囲とされる。0℃未満のものは高温での磁性層の強度が低下するので耐久性、保存性が低下する。また、200℃より大のものはカレンダー成形性が低下し、電磁変換特性が低下する。
【0041】
本発明の結合剤を磁性層に用いる場合には、本発明のポリウレタン樹脂に塩化ビニル系の合成樹脂を併用しても良い。併用することができる塩化ビニル系樹脂の重合度は200〜600が好ましく、250〜450が特に好ましい。塩化ビニル系樹脂はビニル系モノマー、例えば酢酸ビニル、ビニルアルコール、塩化ビニリデン、アクリロニトリルなどを共重合させたものでもよい。また、ニトロセルロース樹脂などのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等を併用しても良く、これらは、単独でも組み合わせでも使用することができる。
【0042】
他の合成樹脂を併用する場合には、磁性層に含まれる前記ポリウレタン樹脂は、結合剤中(樹脂成分と硬化剤の総量)に10〜100重量%未満を含有されていることが好ましく、さらに好ましくは20〜100重量%未満の量である。10重量%未満では溶媒への溶解性が低下し、分散性が低下する。
【0043】
また、本発明は本発明のポリウレタン樹脂のウレタン結合を形成する成分として、あるいは更にポリウレタン樹脂または他の併用される樹脂同士を架橋させる硬化剤としてポリイソシアネート化合物、好ましくは有機ジイソシアネートを使用することができる。
【0044】
有機ジイソシアネート化合物の例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0045】
磁性層、下層塗布層(以下、「下層」ともいう)等の塗布層中に含まれるポリイソシアネート化合物は結合剤(樹脂成分と硬化剤との合計を意味する。以下同様。)中に5〜50重量%の範囲で含有されていることが好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%の範囲である。
【0046】
また、電子線照射による硬化処理を行う場合には、ウレタンアクリレート等のような反応性二重結合を有する化合物を使用することができる。
結合剤の重量は、強磁性粉末100重量部に対して、通常15〜40重量部の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは20〜30重量部である。また、後述するように下層塗布層を設けた場合の結合剤は、非磁性粉末あるいは軟磁性粉末に対し通常、5〜35重量部である。
【0047】
次に請求項1の発明に使用される芳香族有機酸化合物について説明する。
本発明に用いられる芳香族有機酸化合物は、各種粉体に強く吸着するものであって、ポリウレタン樹脂との親和性が高いものが好ましい。従って、芳香族有機酸化合物としては、なるべく解離定数の大きな(強酸)が好ましく、pKa3以下の有機酸もしくはその塩が適している。ただし、Coを被着した酸化系磁性体の場合は、強酸によりCoが溶出する場合もあるので、この場合はpKa3以上のもの、例えば、安息香酸等が用いられる。本発明において、pKa3以下の芳香族有機酸化合物とは、pKa3の芳香族有機酸化合物と同等もしくはそれよりも強酸のものを言う。従って、pKa値のそのものの数値は3以下となる。
【0048】
本発明において使用される芳香族有機酸化合物とは、遊離酸のほか、その塩あるいはその誘導体、例えば、エステル等を含む概念である。また、上記した粉体への吸着とは、物理吸着の他、共有結合を含む化学吸着を包含する概念である。pKa3以下の有機酸としては、α−ナフチルリン酸、フェニルリン酸、ジフェニルリン酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸などもしくはそれらの塩がある。
【0049】
芳香族有機酸化合物の使用法としては、上記特性が発揮できる態様であれば、特に制限はないが、好ましくは、塗料調製において粉体と結合剤を混練する時に同時に添加するか、あるいは粉体を結合剤との混練の前に予め粉体に芳香族有機酸化合物を表面処理することが挙げられる。
芳香族有機酸化合物の粉体に対する使用量は、粉体に対する芳香族有機酸化合物の吸着量により、決定されるが、通常、芳香族有機酸化合物の飽和吸着量の1割〜2倍が使用でき、飽和吸着量の±5割が好ましく、目安としては、粉体に対して10〜400μmol/gが挙げられる。
請求項3の発明に使用する燐化合物は、前記芳香族有機酸化合物のpKa3以下の有機酸として例示した燐化合物が挙げられる。具体的には、α−ナフチルリン酸、フェニルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸などもしくはそれらの塩等が挙げられる。
燐化合物の強磁性粉末に対する使用量は、強磁性粉末1kgに対して0.05〜0.5mol、好ましくは0.1〜0.45molの範囲であり、強磁性粉末に対する燐化合物の吸着量等により、適宜選定される。
請求項3の発明は、磁性層のP/Fe比は、蛍光X線測定による強度比で0.2〜2.0の範囲に規定されるが、好ましくはこのP/Fe比は、0.4〜1.6の範囲であり、更に好ましくは0.5〜1.2の範囲である。P/Fe比が0.2より小さいと強磁性粉末の分散性が劣り、Raが大きくなり、再生出力が低下し、耐久性が悪化する。また、P/Fe比が2.0より大きいと摩擦係数μ値が大きくなり、耐久性が極めて劣るようになる。
本発明において、蛍光X線によるP/Fe比の測定は、以下の条件に従って求められる値を指す。
(1) サンプルテープから磁性層を剥離して、粉状にしたものをプレスして固める。
(2) 上記(1)で得た試料に対して、下記の測定条件、測定方法でFeに対するPの強度比を算出したものである。
Feに対するPの強度比:
測定装置 リガク製ガイガーフレックス3064M型
RhX線管を用い、電圧・電流は50kV・50mAとした。
FeKα線強度測定には分光結晶LiF{220}検出器シンチレーションカウンターを用いた。PKα線強度測定には分光結晶Ge{111}検出器プロポーショナルカウンターを用いた。両方とも、20秒間、積算し、それを3回繰り返して平均を取った。FeKα線強度に対するPKα線強度の比をFeに対するPの強度比とする。
【0050】
本発明の磁気記録媒体の形状は、基本的には任意であり、テープ、ディスク、シート、カード等が挙げられる。
請求項1の発明の磁気記録媒体の層構成は、基本的には磁性層または磁性層と下層塗布層を支持体上に有するものであり、芳香族有機酸化合物およびポリウレタン樹脂を同一層内に少なくとも一層以上含む構成であれば、あらゆる構成のものが採用され得る。
また、請求項3の発明の磁気記録媒体の層構成は、少なくとも磁性層にポリウレタン樹脂と燐化合物を含むものであれば特に制限はないが、重層の場合は最上層に少なくともポリウレタン樹脂と燐化合物を含むことが必要である。
請求項1及び3の発明の層構成としては、例えば、磁性層単層、磁性層重層、磁性層と非記録層との重層等が例示される。ここで、磁性層とは磁気により記録再生可能な強磁性粉末を含有する層を指し、非記録層とは実質的に強磁性粉末を含まない層で非磁性層または軟磁性層を指し、通常、非磁性粉末あるいは軟磁性粉末を含む。
【0051】
層構成における各層の厚味は、例えば、以下の通りである。
▲1▼ 磁性層単層では通常、0.2〜5μm、好ましくは0.5〜3μmである。
▲2▼ 重層構成は以下の通りである。上層は下層上に設けられる磁性層となる。
a 上層:磁性層、下層:磁性層の場合
上層は通常、0.2〜2μm、好ましくは0.2〜1.5μmであり、下層は0.8〜3μmである。
【0052】
b 上層:磁性層、下層:非磁性層の場合
上層は通常、0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μmであり、下層は0.8〜3μmである。
c 上層:磁性層、下層:軟磁性層の場合
上層は通常、0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μmであり、更に好ましくは0.1〜0.4μm、下層は0.8〜3μmである。
【0053】
請求項1の発明の磁気記録媒体が多層構成の場合、本発明のポリウレタン樹脂と芳香族有機酸化合物とは少なくとも同一の層に含有させることが必要であるが、少なくとも最上層に含有させることが好ましく、各層に含有させることが更に好ましい。
請求項1の発明の磁性層に使用される強磁性粉末は、強磁性酸化鉄、コバルト含有強磁性酸化鉄、バリウムフェライト粉末又は強磁性金属粉末等である。強磁性粉末はSBET (BET比表面積)が40〜80m2 /g、好ましくは50〜70m2 /gである。結晶子サイズは12〜25nm、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。長軸長は0.05〜0.25μmであり、好ましくは0.07〜0.2μmであり、特に好ましくは0.08〜0.15μmである。強磁性粉末のpHは7以上が好ましい。
請求項3の発明の磁性層に使用される強磁性粉末は、鉄を主成分としたもので、強磁性酸化鉄、コバルト含有強磁性酸化鉄、バリウムフェライト粉末又は強磁性金属粉末等であるが、特に強磁性金属粉末が好ましい。強磁性金属粉末のSBET (BET比表面積)は通常、30〜70、好ましくは35〜60m2 /g、更に好ましくは40〜55m2 /gである。結晶子サイズは通常、100〜300Å、好ましくは100〜200Åであり、特に好ましくは130〜200Åである。長軸長は通常、0.03μm〜0.3μmであり、好ましくは0.05〜0.25μmであり、特に好ましくは0.05〜0.15μmである。強磁性粉末のpHは7以上が好ましい。また、強磁性金属粉末の抗磁力Hcは、通常、1000〜3000Oe、好ましくは1500〜3000Oe、更に好ましくは1800〜2700Oeの範囲であり、また、強磁性金属粉末の飽和磁化σS は、通常、100〜180emu/g、好ましくは110〜170emu/g、更に好ましくは120〜160emu/gの範囲である。
強磁性金属粉末としてはFe、Ni、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Co−Ni−Fe等の単体または合金が挙げられ、金属成分の20重量%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、金、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、銀、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマスを含む合金を挙げることができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。これらの強磁性粉末の製法は既に公知であり、本発明で用いる強磁性粉末についても公知の方法に従って製造することができる。
【0054】
強磁性粉末の形状に特に制限はないが、通常は針状、粒状、サイコロ状、米粒状および板状のものなどが使用される。とくに針状の強磁性粉末を使用することが好ましい。
【0055】
上記の樹脂成分、硬化剤および強磁性粉末を、通常、磁性塗料の調製の際に使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗料とする。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。
なお、磁性塗料は、上記成分以外に、α−Al2 O3 、Cr2 O3 等の研磨材、カーボンブラック等の帯電防止剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、分散剤など通常使用されている添加剤あるいは充填剤を含むものであってもよい。
【0056】
次に請求項1または3の発明が多層構成の場合における下層非磁性層または下層磁性層について説明する。本発明の下層に用いられる無機粉末は、磁性粉末、非磁性粉末を問わない。例えば非磁性粉末の場合、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機化合物、非磁性金属から選択することができる。無機化合物としては例えば酸化チタン(TiO2 、TiO)、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、酸化クロム、酸化亜鉛、酸化すず、酸化タングステン、酸化バナジウム、炭化ケイ素、酸化セリウム、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、ゲーサイト、水酸化アルミニウムなどが単独または組合せで使用される。特に好ましいのは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタンである。非磁性金属としては、Cu、Ti、Zn、Al等が挙げられる。これら非磁性粉末の平均粒径は0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性粉末の平均粒径は0.01μm〜0.2μmである。非磁性粉末のpHは6〜9の間が特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m2 /g、好ましくは5〜50m2 /g、更に好ましくは7〜40m2 /gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmが好ましい。DBPを用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。
【0057】
軟磁性粉末としては、粒状Fe、Ni、粒状マグネタイト、Fe−Si、Fe−Al、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Co−Ni、Fe−Al−Co(センダスト)合金、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mg−Znフェライト、Mg−Mnフェライト、その他、近角聡信著(「強磁性体の物理(下)磁気特性と応用」(裳華房、1984年)、368〜376頁)に記載されているもの等が挙げられる。
【0058】
これらの非磁性粉末、軟磁性粉末の表面にはAl2O3 、SiO2、TiO2、ZrO2,SnO2,Sb2O3 ,ZnO で表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3 、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、更に好ましいのはAl2O3 、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0059】
下層にカ−ボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。このためにはゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
カーボンブラックの比表面積は100〜500m2 /g、好ましくは150〜400m2 /g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カ−ボンブラックの平均粒径は5nm〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カ−ボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ml、が好ましい。本発明に用いられるカ−ボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化学社製、#3050B,3150B,3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B,#970B、#850B、MA−600、コロンビアンカ−ボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 8800,8000,7000,5750,5250,3500,2100,2000,1800,1500,1255,1250 、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
【0060】
本発明の下層にはまた、無機粉末として磁性粉末を用いることもできる。磁性粉末としては、γ−Fe2 O3 、Co変性γ−Fe2 O3 、α−Feを主成分とする合金、CrO2 等が用いられる。下層の磁性体は、目的に応じて選定することができ、本発明の効果は磁性体の種類には依存しない。ただし、目的に応じて、上下層で性能を変化させることは公知の通りである。例えば、長波長記録特性を向上させるためには、下層磁性層のHcは上層磁性層のそれより低く設定することが望ましく、また、下層磁性層のBrを上層磁性層のそれより高くする事が有効である。それ以外にも、公知の重層構成を採る事による利点を付与させることができる。
【0061】
下層磁性層または下層非磁性層のバインダー、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は磁性層のそれが適用できる。特に、バインダー量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。以上の材料により調製した磁性塗料を非磁性支持体上に塗布して磁性層を形成する。
【0062】
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等の公知のものが使用できる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドである。これらの非磁性支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、などを行っても良い。また本発明に用いることのできる非磁性支持体は中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの非磁性支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μ以上の粗大突起がないことがこのましい。
【0063】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に塗布液を好ましくは塗布層の乾燥後の層厚が0.05〜5μmの範囲内、より好ましくは0.07〜3μmになるように塗布する。ここで複数の磁性塗料もしくは非磁性塗料を逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。
上記磁性塗料を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。
【0064】
これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0065】
本発明を二層以上の構成の磁気記録媒体に適用する場合、塗布する装置、方法の例として以下のものを提案できる。
(1)磁性塗料の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず下層を塗布し、下層が未乾燥の状態のうちに特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、上層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、上下層をほぼ同時に塗布する。
【0066】
本発明で用いる非磁性支持体の磁性塗料が塗布されていない面にバックコート層(バッキング層)が設けられていてもよい。バックコート層は、非磁性支持体の磁性塗料が塗布されていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられた層である。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
バックコート層は特に本発明の磁気記録媒体がテープ媒体の場合に好適に設けられる。
【0067】
なお、非磁性支持体の磁性塗料およびバックコート層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられいてもよい。
【0068】
塗布された磁性塗料の塗布層は、磁性塗料の塗布層中に含まれる強磁性粉末を磁場配向処理を施した後に乾燥される。
このようにして乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、たとえばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
【0069】
カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
【0070】
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は100〜500Kg/cmの範囲であり、好ましくは200〜450Kg/cmの範囲であり、特に好ましくは300〜400Kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
【0071】
得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0072】
本発明のポリウレタン樹脂は、芳香族や脂環族などの環状構造を含む短鎖ジオールを多く含むので従来のポリウレタン樹脂に比べて、高強度、高Tgが得られる。特に高温環境での繰り返し走行などに優れる。また、短鎖ジオール含量が多いので実質的にポリウレタン樹脂中のウレタン結合濃度が増加するので、更に高強度、高Tgが得られる。
【0073】
また、従来のポリウレタン樹脂では環状構造やウレタン結合濃度が増加すると溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下するが本発明のポリウレタンは溶剤への溶解性にも優れている利点がある。
これは、本発明のポリウレタン樹脂には好ましくは、親水性のエ−テル基を1.0〜5.0mmol/gを含む長鎖ジオール単位を10〜50重量%含まれているので溶剤への溶解性を低下させずにポリウレタンの磁性体への吸着がしやすくなるため、かつ磁性体やその他の粉体表面に芳香族有機酸化合物を有するので更に分散性が向上したと考えられる。
【0074】
また、適度な延伸性も付与できるので磁性層が脆くならないので繰り返し走行性も低下しない利点もある。
さらには、短鎖ジオールに環状構造を持つのでウレタン結合近傍に立体障害性が付与されるので分子間でのウレタン結合同志の会合がしにくくなるためにウレタン結合濃度が高くても溶解性が低下しない利点を持つ。
【0075】
分子末端で分岐したOH基を更に含有すると末端以外のOH基に比べて、運動性が高く、磁性体への吸着がしやすくなるために、更に分散性が向上する作用をもつと考えられる。また、一般的に用いられているイソシアネート系硬化剤との反応性も向上するので、より高度な耐久性が得られた。
【0076】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0077】
【実施例】
以下の記載の「部」は「重量部」を示し、%は重量%を示す。
〔ポリウレタン樹脂の調製〕
(ポリウレタン樹脂Aの合成)
還流式冷却器、撹拌機を具備し、予め窒素置換した容器に式1のジオールであるHBpA、式2のジオールであるBpA−PPO700およびDEISおよびその他のジオール(PCL400および/またはPPG400)を表1記載のモル比としてシクロヘキサノンとジメチルアセトアミドを50:50の重量比で含む混合溶媒に溶解し、窒素気流下で60℃で溶解した。触媒として、ジ−n−ジブチルスズジラウレートを使用した原料の総量に対して60ppm加えてもよい。
【0078】
次に、表1に示したジイソシアネート化合物であるMDIを加え90℃にて6時間加熱反応し、−SO3 Na基が8×10-5モル/g導入されたMw45000でMn25000のポリウレタン樹脂Aを得た。
(ポリウレタン樹脂B〜Iの合成)
表1に記載の要素を変更して、ポリウレタン樹脂Aに準じてポリウレタン樹脂B〜Iを合成した。
(ポリウレタン樹脂J)
表1に記載の要素を変更して、ポリウレタン樹脂Jを合成した。
(ポリウレタン樹脂K)
特開平1−267829号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、ビスフェノールAに対してエチレンオキサイドを付加反応させて得られたポリオールおよび4,4−ジフェニルメタンジジイソシアネートをポリイソシアネート成分として使用してポリウレタン樹脂Kを合成した。
【0079】
【表1】
【0080】
ポリウレタン樹脂A〜Iは、本発明範囲のもの、ポリウレタン樹脂J,Kは、本発明範囲外のものである。
表における略号は、下記のものを示す。
HBpA:水素化ビスフェノールA(新日本理化製リカビノールHB)
BpA-PPO700:ビスフェノールAのポリプロピレンオキシド付加物(分子量700)
PCL400:ポリカプロラクトンポリオール(分子量400)
PPG400:ポリプロピレングリコール(分子量400)
DEIS:スルホイソフタル酸エチレンオキド付加物(田岡化学製 DEIS)
MDI:4,4−ジフェニルメタンジジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
塗布液処方
〔単層磁性液処方または上層磁性液処方a〕
強磁性金属粉末(Fe−Co合金) 100部
Co含有量:20重量%、Al:8重量%、Y:4重量%
Hc:2300Oe、σS :140emu/g、SBET :52m2 /g、
長軸長:0.1μm、結晶子サイズ:160Å、pH:9
芳香族有機酸化合物 (表2及び3記載)
ポリウレタン樹脂(表1〜3記載) 8部
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン:MR110) 10部
カーボンブラック(平均粒子径:80nm) 1部
アルミナ(平均粒子径:0.2μm) 5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 1.2部
ポリイソシアネート 6部
日本ポリウレタン製 コロネートL
メチルエチルケトン 120部
シクロヘキサノン 120部
〔下層非磁性液処方a〕
非磁性粉末 TiO2 100部
平均粒径:35nm、SBET :40m2 /g、Alで表面処理、TiO2 含有率:90%以上、pH:7.5
芳香族有機酸化合物 (表3記載)
ポリウレタン樹脂(表1、3記載) 8部
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン:MR110) 10部
カーボンブラック(平均粒子径:20nm) 15部
アルミナ(平均粒子径:0.2μm) 10部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 1.2部
ポリイソシアネート 6部
日本ポリウレタン製 コロネートL
メチルエチルケトン 120部
シクロヘキサノン 120部
〔下層磁性液処方b〕
Co変性マグネタイト 100部
Co含有量:3重量%、Al:1.5重量%、Si:0.8重量%
Hc:850Oe、σS :80emu/g、SBET :35m2 /g、
長軸長:0.25μm、結晶子サイズ:230Å、pH:8.4
芳香族有機酸化合物(安息香酸) 4.5部
ポリウレタン樹脂A(表1、3記載) 8部
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン:MR110) 10部
カーボンブラック(平均粒子径:20nm) 15部
アルミナ(平均粒子径:0.2μm) 10部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 1.2部
ポリイソシアネート 6部
日本ポリウレタン製 コロネートL
メチルエチルケトン 120部
シクロヘキサノン 120部
〔下層軟磁性液処方c〕
粒状マグネタイト 100部
平均粒子径:50nm、SBET :20m2 /g、
吸油量(DBPA):20cc/100g、pH:9.0
芳香族有機酸化合物(ベンゼンスルホン酸Na) 4.5部
ポリウレタン樹脂A(表1、3記載) 8部
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン:MR110) 10部
カーボンブラック(平均粒子径:20nm) 15部
アルミナ(平均粒子径:0.2μm) 10部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 1.2部
ポリイソシアネート 6部
日本ポリウレタン製 コロネートL
メチルエチルケトン 120部
シクロヘキサノン 120部
【0081】
実施例1〜8、比較例1〜7
単層磁性液処方または上層磁性液処方aの各成分を混練分散したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。得られた磁性塗料を乾燥後の厚さが2.5μmになるように、厚さ10μmのポリエチレンナフタレート支持体の表面にリバースロールを用いて塗布した。磁性塗料が塗布された非磁性支持体を、磁性塗料が未乾燥の状態で3000ガウスの磁石で磁場配向を行い、さらに乾燥後、金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合わせによるカレンダー処理を速度100m/分、線圧300Kg/cm、温度90℃)で行った後8mm幅にスリットした。
【0082】
実施例9〜13、比較例8〜10
下層非磁性液処方a、下層磁性液処方bまたは下層軟磁性液処方cの各成分を混練分散したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、各塗布液を調製した。得られた塗布液を乾燥後の厚さが処方aの場合は2.0μm、処方bの場合は2.5μm、処方cの場合は2.0μmとなるように、厚さ10μmのポリエチレンナフタレート支持体の表面にリバースロールを用いて塗布し、更にその直後に磁性塗布液処方aをその上に乾燥後の厚さが下層処方aの場合は0.2μm、下層処方b(実施例10)の場合は0.5μm、下層処方c(実施例11)の場合は0.2μmとなるように、同時重層塗布した。その後、実施例1と同様に処理して各試料を得た。
【0083】
以上のようにして得られた実施例および比較例の磁気記録媒体の特性を下記の測定方法によって測定し、その結果を表2及び3に示す。
〔測定方法〕
1.Ra:デジタルオプチカルプロフィメーター(WYKO製)を用いたる光干渉法により、カットオフ0.25mmの条件で中心線平均粗さをRaとした。
2.再生出力(λ=0.5μm):試料テープにVTR(SONY製:TR705)を用いて7MHzの信号を記録し、再生した。比較例1の基準テープに記録した7MHzの再生出力を0dBとしたときのテープの相対的な再生出力を測定した。
3.1000パス後の出力変化(繰り返し走行性):60分長のテープを2のVTRを用いて40℃80%RH環境下で1000回連続繰り返し走行させ、1回目の出力を0dBとして出力低下を測定した。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
表2は単層構成の磁気記録媒体の例を示すが、この表2に示すように本発明のポリウレタン樹脂A〜Iおよび芳香族有機酸化合物を含む実施例は、本発明のポリウレタン樹脂を含むが芳香族有機酸化合物を含まない比較例1〜6、本発明のポリウレタン樹脂および芳香族有機酸化合物の両者を含まない比較例7に比べ再生出力および走行耐久性に優れていることがわかる。
【0087】
また、表3は重層構成の例を示すが、この表3から、本発明のポリウレタン樹脂および芳香族有機酸化合物を下層および上層に含む実施例9〜12は、本発明のポリウレタン樹脂を両層に含むが、両層に芳香族有機酸化合物を含まない比較例8〜9、両層に本発明のポリウレタン樹脂以外のポリウレタン樹脂を用いた比較例10に比べ再生出力および走行耐久性に優れていることがわかる。上層のみに本発明のポリウレタン樹脂と芳香族有機酸化合物を含む実施例13も比較例よりも性能は優れていることが分かる。
実施例14〜20、比較例10〜15
〔単層磁性液処方〕
強磁性金属粉末(Fe−Co合金) 100部
Co含有量:20重量%、Al:8重量%、Y:4重量%
Hc:2300Oe、σS :140emu/g、SBET :52m2 /g、
長軸長:0.1μm、結晶子サイズ:160Å、pH:9
燐化合物 (表4記載)
ポリウレタン樹脂(表1及び4記載) 8部
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン:MR110) 10部
カーボンブラック(平均粒子径:80nm) 1部
アルミナ(平均粒子径:0.2μm) 5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 1.2部
ポリイソシアネート 6部
日本ポリウレタン製 コロネートL
メチルエチルケトン 120部
シクロヘキサノン 120部
実施例1と同様に上記磁性液処方を用いて、8mmビデオテープの試料を作成した。
実施例21〜22、比較例16〜17
〔上層磁性液処方〕
強磁性金属粉末(Fe−Co合金) 100部
Co含有量:20重量%、Al:8重量%、Y:4重量%
Hc:2300Oe、σS :140emu/g、SBET :52m2 /g、
長軸長:0.1μm、結晶子サイズ:160Å、pH:9
燐化合物 (表5記載)
ポリウレタン樹脂(表1及び5記載) 8部
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン:MR110) 10部
カーボンブラック(平均粒子径:80nm) 1部
アルミナ(平均粒子径:0.2μm) 5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 1.2部
ポリイソシアネート 6部
日本ポリウレタン製 コロネートL
メチルエチルケトン 120部
シクロヘキサノン 120部
〔下層非磁性液処方〕
非磁性粉末 TiO2 100部
平均粒径:35nm、SBET :40m2 /g、Alで表面処理、TiO2 含有率:90%以上、pH:7.5
燐化合物 (表5記載)
ポリウレタン樹脂(表1、5記載) 8部
塩化ビニル樹脂(日本ゼオン:MR110) 10部
カーボンブラック(平均粒子径:20nm) 15部
アルミナ(平均粒子径:0.2μm) 10部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 1.2部
ポリイソシアネート 6部
日本ポリウレタン製 コロネートL
メチルエチルケトン 120部
シクロヘキサノン 120部
下層非磁性液処方の各成分を混練分散したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、各塗布液を調製した。得られた塗布液を乾燥後の厚さが2.0μmとなるように、厚さ10μmのポリエチレンナフタレート支持体の表面にリバースロールを用いて塗布し、更にその直後に磁性塗布液処方をその上に乾燥後の厚さが0.2μmとなるように、同時重層塗布した。その後、実施例1と同様に処理して各試料を得た。
【0088】
以上のようにして得られた実施例15〜23および比較例10〜17の磁気記録媒体の特性を上記と同様の測定方法によって測定し、その結果を表4及び5に示す。
尚、摩擦係数μ値は、以下の方法により測定した。
荷重:20g/8mm、速度:14mm/sec、部材:SUS420J、Ra 0.08μm、ラップ角:180°、パス回数:1→100 最大値をμ値として採用、環境:40℃80%
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
表4は単層構成の磁気記録媒体の例を示すが、この表4に示すように本発明のポリウレタン樹脂および燐化合物を含み、かつP/Fe比が本発明の範囲の実施例は、本発明のポリウレタン樹脂を含むが燐化合物を含まないか(比較例10)、P/Fe比を満たさない比較例11〜12(比較例11は下限より小、比較例12は上限より大)、本発明のポリウレタン樹脂および燐化合物の両者を含まない比較例13、燐化合物及びP/Fe比を満足するが、本発明以外のポリウレタン樹脂を用いた比較例14〜15に比べ再生出力および走行耐久性に優れていることがわかる。
【0092】
また、表5は重層構成の例を示すが、この表5から、本発明のポリウレタン樹脂および燐化合物を少なくとも上層に含み、かつP/Fe比が本発明の範囲である実施例21及び22(但し、実施例22の下層のポリウレタン樹脂は本発明以外)は、本発明のポリウレタン樹脂を両層に含むが両層に燐化合物を含まない比較例16及び本発明のポリウレタン樹脂を両層に含むが上層に燐化合物を多量に含むためP/Fe比が本発明の上限を越えかつ下層には燐化合物を含まない比較例17に比べ、μ値が低く、かつ再生出力および走行耐久性に優れていることがわかる。
【0093】
【発明の効果】
本発明のポリウレタン樹脂および芳香族有機酸化合物を含有する磁気記録媒体及び本発明のポリウレタン樹脂及び燐化合物をP/Fe比が所定の値となるように磁性層に含む磁気記録媒体は、強磁性粉末やその他の粉体の分散性が一層向上するため、表面性が更に改善されて電磁変換特性が向上し、また塗膜強度が高く、特に高温環境での繰り返し走行耐久性が向上する。
Claims (12)
- 非磁性支持体上に強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録媒体または前記磁性層と前記非磁性支持体の間に更に無機粉末と結合剤とを含む下層塗布層を設けた磁気記録媒体において、前記磁性層中の結合剤または前記下層塗布層中の結合剤の少なくとも一つの結合剤が環状構造とエーテル基とを含むポリウレタン樹脂であり、かつ前記磁性層および/または下層塗布層中に、芳香族有機酸化合物を前記ポリウレタン樹脂と同一層中に含むことを特徴とする磁気記録媒体。
- 前記芳香族有機酸化合物が、pKa3以下の有機酸もしくはその塩であることを特徴とする請求項1の磁気記録媒体。
- 非磁性支持体上に鉄を主成分とした強磁性粉末を結合剤中に分散してなる磁性層を設けた磁気記録媒体または前記磁性層と前記非磁性支持体の間に更に無機粉末と結合剤とを含む下層塗布層を設けた磁気記録媒体において、少なくとも前記磁性層中に請求項1記載のポリウレタン樹脂および芳香族有機燐酸化合物を含有し、磁性層を蛍光X線で測定したFeに対するPの強度比が0.2〜2.0であることを特徴とする磁気記録媒体。
- ポリウレタン樹脂中に1分子あたり3〜20個のOH基を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
- ポリウレタン樹脂は分子中に、−SO3M、−OSO3M、−COOM、−PO3MM′、−OPO3MM′、−NRR′、−N+RR′R″COO-(ここで、MおよびM′は、各々独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンであり、R、R′およびR″は各々独立に炭素数1〜12のアルキル基を示す)から選ばれた少なくとも1種の極性基を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
- ポリウレタン樹脂は、環状構造を有する短鎖ジオールとエーテル基を含む長鎖ジオールを含むポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記短鎖ジオールは、分子量が50以上500未満であることを特徴とする請求項6に記載の磁気記録媒体。
- 前記短鎖ジオールは、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールPおよびこれらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールであることを特徴とする請求項6または7に記載の磁気記録媒体。
- 前記短鎖ジオールは、水素化ビスフェノールAおよびそのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物であることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記長鎖ジオールは、分子量が500以上のジオールであって、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS又はビスフェノールPにエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれらの両者を付加させたもの、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする請求項6に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層中の結合剤または前記下層塗布層中の結合剤の少なくとも一つの結合剤が、ジオールと有機ジイソシアネートを主要原料とした反応生成物であるポリウレタン樹脂からなり、環状構造を有する短鎖ジオール単位をポリウレタン樹脂中に17〜40重量%含み、かつポリウレタン樹脂全体に対して、エーテル基を1.0〜5.0mmol/gを含む長鎖ジオール単位をポリウレタン樹脂中に10〜50重量%含む結合剤であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
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