JP3746707B2 - 溶接性に優れた高張力鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築構造物や橋梁などの大型構造物に好適に用いられ、引張強さが590MPa以上780MPa未満程度の高張力鋼板(以下、単に「590MPa級鋼板」と称すことがある)に関するものであり、殊に溶接性(大入熱HAZ靭性および耐溶接割れ性)に優れた高張力鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記大型構造物に用いられている590MPa級鋼板では、母材強度の確保という観点から合金成分を多量に添加しているので、冷却速度の速い小入熱溶接条件ではHAZ(溶接熱影響部)が硬化して溶接割れ(低温割れ)が生じやすく、かかる溶接割れの防止を目的として、溶接施工時に75℃程度の予熱を行う必要がある。従って、この予熱工程を省略できれば施工効率が大幅に向上し、且つコストダウンにもつながるため、予熱工程を省略しても溶接割れが生じない程度の耐溶接割れ性に優れた590MPa級鋼板の提供が切望されている。
【0003】
ところで、耐溶接割れ性の指標としては下式で定義されるPcm(%)というパラメーターが一般に用いられている。こうした観点から、例えば特開平10‐68045号公報には、このPcmを0.20%以下に制限することによって耐溶接割れ性を改善することが開示されている。
Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5×[B]
《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を示す》。
【0004】
一方、同じ590MPa級鋼板において、大入熱溶接時にHAZ靭性が劣化するという問題があることが指摘されている。こうした事態は、入熱が大きくなるとHAZ部の冷却速度が遅くなり、それに伴いHAZ部の焼入れ性が低下し、粗大な島状マルテンサイトを生成することに基づくことによって生じるとされている。こうしたこの問題は厚物、薄物いずれにおいても発生し、実際の溶接施工時に入熱制限が行われ、溶接効率が悪かった。
【0005】
大入熱溶接時のHAZ靭性の改善に当たっては、上記特開平10‐68045号公報の他、特開平10‐121191号公報において、下式で表される炭素当量(Ceq)を0.35〜0.40(%)と低く制限することが開示されている。
Ceq=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14
《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を示す》。
【0006】
このように、従来はPcmを低値に制御することにより小入熱溶接時の耐溶接割れ性を改善したり、あるいはCeqを制御することにより大入熱HAZ靭性を改善すると共に、合金成分の含有量制限に伴う母材強度低下を、製造プロセスを改良するなどして補っていた。これにより、590MPa級鋼板において、母材製造時の焼入れにおける冷却速度が比較的速い薄物では溶接時の予熱フリーを達成できたが、冷却速度が遅い厚物では溶接時の予熱フリーと母材強度の両立を達成することが困難であった。また、Cuの析出を利用して母材強度を確保する方法も開示されているが、冷却速度が遅い厚物では充分な母材強度が得られなかった。
【0007】
このように、小入熱溶接においてHAZ部は高温に加熱された後の冷却速度が速いため、硬化して溶接割れ(低温割れ)を起こしやすい。一方、母材は板厚が厚くなるほど冷却速度が遅くなるため、圧延後の焼入れ効果による強度確保が難しくなる。従って、590MPa級鋼板の厚物では、小入熱溶接時の溶接割れを防止するため冷却速度が速くなっても硬くならないようにした上で、鋼板製造時の冷却速度が遅く、焼入れ効果が得難い場合であっても如何に強度を確保するかが重要課題となる。
【0008】
また、厚物、薄物いずれにおいても、大入熱溶接においては、HAZ部の冷却速度が遅くなり、それに伴いHAZ部の焼入れ性が低下し、粗大な島状マルテンサイト組織を生成して靭性が低下するが、このHAZ靭性を改善するには、冷却速度が遅い場合であっても島状マルテンサイト組織の生成を如何なる方法で抑制するかが重要課題となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、溶接性(大入熱HAZ靭性および耐溶接割れ性)に優れた590MPa以上780MPa未満の高張力鋼板を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し得た本発明に係る溶接性に優れた高張力鋼板とは、C:0.010〜0.06%,Mn:1.0〜2.5%,Cr:0.1〜2.0%,Mo:1.5%以下(0%を含む),V:0.1%以下(0%を含む),Nb:0.1%以下(0%を含む),Ti:0.005〜0.03%,B:0.0006〜0.005%,N:0.002〜0.01%,Si:1%以下(0%を含まない),Al:0.2%以下(0%を含まない)を満たし、残部がFeおよび不可避不純物である鋼からなり、
2.4%≦KP≦4.5%
を満足すると共に、(1)平均結晶粒径が10μm以下および/または(2)粒径:10〜250nmのNaCl型炭・窒化物が1×104個/mm2以上存在するものである点に要旨を有するものである。
但し、
KP(%)=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo]
《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。》
本発明の高張力鋼板は、KV≦0.12(%)を満足するものであることが好ましく、こうした要件を満足させることによって、大入熱HAZ靭性を更に改善することができる。
但し、
KV(%)=[V]+[Nb]
《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。》
【0011】
本発明の高張力鋼板においては、必要によって、(a)Ni:5%以下(0%を含まない)、(b)Cu:3%以下(0%を含まない)、(c)Ca:0.005%以下(0%を含まない)、(d)Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはZr:0.05%以下(0%を含まない)等を含有させることも有効であり、含有される成分の種類に応じて高張力鋼板の特性が更に改善される。また本発明の高張力鋼板は、肉厚が80mm以上のもので良好な溶接性と母材強度を有するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らが検討したところによれば、490MPa級の鋼板ではPcmの制御によって耐溶接割れ性の改善と母材強度の確保を両立することができたが、590MPa級鋼板ではPcmによる成分制御を行ったとしても、特に厚物において両特性の満足を図ることは困難であることが判明した。
【0013】
また、一般に、大入熱溶接時に上部ベイナイトを生成させると島状マルテンサイトが生成し、鋼のHAZ靭性が劣化するため、490MPa級の鋼板では、HAZにおいてフェライトを積極的に生成させるべく、Ceqを制御して大入熱HAZ靭性の改善が試みられてきたが、これは高強度化・厚肉化とは相反することであり、590MPa級鋼板での大入熱HAZ靭性の改善と厚肉化の両立を図ることも困難であった。
【0014】
そこで、本発明では成分設計に当たり、これまで耐溶接割れ性の指標とされてきたPcmおよび大入熱HAZ靭性確保の指標とされてきたCeqではなく、全く別のパラメーターにより耐溶接割れ性および大入熱HAZ靭性を制御できないか鋭意検討した。その結果、鋼組織を考慮した上記各式で表されるKPおよびKVを用い、さらにC量を極低減化し、Bを添加することにより良好な耐溶接割れ性、大入熱HAZ靭性と母材強度を達成できることを見出し、その技術的意義が認められたので先に出願している(特願2001−154512号)。
【0015】
本発明者らは、上記のような高張力鋼板を実現した後も、その特性の更なる改善を目指して更に検討を重ねた。その結果、上記KP値を適切な範囲に制御すると共に、(1)平均結晶粒径が10μm以下、および(2)粒径:10〜250nmのNaCl型炭・窒化物が1×104個/mm2以上存在する等の要件のうち少なくともいずれかの要件を満足させれば、その特性が更に改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
まず、本発明において耐溶接割れ性および大入熱HAZ靭性を改善する原理について説明する。上記の通り、本発明では、Cを極低Cに制限した上で、焼入れ性向上元素であるMnおよびCr、場合によってはさらにMoを積極的に添加し、該焼入れ向上元素の含有量によって定められるKP値を適切に制御し、必要によって、大入熱HAZ靭性低下元素であるVおよびNbの添加をBとの関係で規定したKV値を適切に制御するものである。これらの成分を適切に添加することにより、ベイナイトの連続冷却曲線(図1のCCT線図を参照)が短時間側且つ低温度側に移動すると共に、フェライトのCCT線が長時間側に移動することになる(実線から破線へ移動)。
【0017】
従来では、高冷却速度ではマルテンサイト、低冷却速度ではフェライトまたは上部ベイナイトを生成するために、硬さの冷却速度感受性が大きく、小入熱溶接時のHAZ部の硬さ低減(耐溶接割れ性の改善)と母材強度の確保が両立できず、予熱フリーの達成が困難であったが、本発明によれば、高冷却速度、低冷却速度のいずれにおいても低温変態ベイナイトを生成し、硬さの冷却速度感受性が低下し、溶接時のHAZ部の硬さ低減(耐溶接割れ性の改善)と母材強度確保を両立ならしめたのである。
【0018】
一方、大入熱溶接の場合、HAZの冷却速度が遅くなるため、従来はフェライトまたは上部ベイナイトを生成し、それに伴い粗大且つ塊状の島状マルテンサイト組織が生成してHAZ靭性が劣化していたが、本発明では、冷却速度が遅くても低温変態ベイナイトが生成するため塊状ではなくフィルム状のマルテンサイト組織になると同時に、極低Cであるため生成するマルテンサイト組織が微細となり、HAZ靭性を確保できたのである。
【0019】
上記の観点から本発明では、KP値([Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo])を2.4〜4.5%の範囲とする必要がある。このKP値が2.4%未満になると、上記効果を有効に発揮させることができず、590MPa以上の母材強度を達成することができなくなる。一方、KP値が4.5%を超えると、大入熱HAZ靭性が低下することになる。尚、KP値の好ましい下限は2.5%である。また、KP値の好ましい上限は4.3%であり、より好ましくは4.0%、更に好ましくは3.5%である。
【0020】
本発明の高張力鋼板では、(1)平均結晶粒径が10μm以下、および(2)粒径:10〜250nmのNaCl型炭・窒化物が1×104個/mm2以上存在する等の要件のうち少なくともいずれかの要件を満足させることによって、その特性が更に改善されるものとなるが、これらの要件を規定することによる作用は次の通りである。
【0021】
本発明の成分系(後述する)では、組織の平均結晶粒径を10μm以下に微細化することによって、より高い母材靭性を得ることができる。即ち、組織の平均結晶粒径が10μmを超えると、母材靭性が低下することになる。この平均結晶粒径は、好ましくは4μm以下とするのが良い。
【0022】
結晶粒径を微細化する手段については様々あり、特に限定するものではないが、例えば焼入れ熱処理時の加熱温度や圧延終了温度(FRT)を下げたることが有効な手段として挙げられる。また、焼入れ処理を複数回繰り返すことにことも有効である。具体的には、FRTを850℃以下とした上で、焼入れ熱処理時の加熱温度をAc3点〜940℃とし、必要によりこの焼入れ処理を複数回繰り返す方法が挙げられる。但し、圧延後の熱処理を省略した非調質鋼であっても、こうした組織を得ることができる。尚、本発明における結晶粒径は、後記実施例に示す如く、EBSP(Electron Backscatter Diffraction Pattern)を用いた方法により決定する。
【0023】
一方、粒径:10〜250nmのNaCl型炭・窒化物が1×104個/mm2以上存在させる(析出させる)ことによって、大入熱溶接時のγ粒粗大化を抑制し、大入熱HAZ靭性を向上させることができる。本発明で対象とする炭・窒化物は炭化物、窒化物および炭窒化物のいずれをも含むが(本発明ではこれを「炭・窒化物」と称している)、TiNを主体とするものとなる。またこの炭・窒化物の粒径を10〜250nmとしたのは、10nm未満にするためにはTi含有量を0.005%未満とする必要があり(後述するTi含有量参照)、また250nmを超えると、その効果(析出効果)が十分に達成されなくなる。更に、この炭・窒化物はNaCl型のものに限定したが、これは高温でも安定であるため、γ粒成長時にピンニングサイトとして作用するという理由からである。
【0024】
上記のような炭・窒化物はその効果を発揮させるためには、1×104個/mm2以上存在させる必要があるが、好ましくは5×104個/mm2以上存在させるのが良い。また、この炭・窒化物の存在個数の上限については、特に限定されるものではないが、HAZのγ粒径(〜100μm程度)という観点からして1×105個/mm2程度であることが好ましい。
【0025】
炭・窒化物を上記のように析出させる手段については様々あり、特に限定するものではないが、例えば(A)TiとNの成分バランスを最適化する、(B)溶製凝固時のスラブ厚みを薄くする(例えば、300mm以下)、(C)水冷等によって溶製凝固時の冷却速度を大きくする等が有効な手段として挙げられる。
【0026】
本発明の高張力鋼板においては、KV値([V]+[Nb])を0.12%以下に制御することも有効である。即ち、VおよびNbは大入熱HAZ靭性を低下させる元素であるので、これらの元素によって規定されるKV値を適切な範囲に制御することによって、大入熱HAZ靭性を改善できるのである。こうした観点からすれば、VおよびNbは、後述する必要含有量の範囲内でできるだけ低く設定することが推奨され、より好ましくは0.06%以下、更に好ましくは0.04%以下とするのが良い。
【0027】
本発明の高張力鋼板において、上記の効果を発揮させるためにはその化学成分組成も適切に調整する必要があるが、本発明鋼板における基本成分であるC,Mn,Cr,Mo,V,Nb,Ti,BおよびN等の範囲限定理由は次の通りである。
【0028】
C:0.010〜0.06%
Cは、溶接時におけるHAZ部の耐溶接割れ性と母材強度を両立させ、且つ大入熱HAZ靭性を改善するために重要な元素である。こうした効果を発揮させるためには、少なくとも0.010%以上含有させる必要があるが、0.06%を超えると高冷却速度側で低温変態ベイナイトでなくマルテンサイトが生成するようになり、耐溶接割れ性および大入熱HAZ靭性が改善されない。C含有量の好ましい下限は0.020%であり、より好ましくは0.025%以上とするのが良く、好ましい上限は0.050%であり、より好ましくは0.045%以下とするのが良い。
【0029】
Mn:1.0〜2.5%
Mnは焼入れ性を改善する作用を有し、高冷却速度乃至低冷却速度で低温変態ベイナイトを生成しやすくする。Mn含有量が1.0%未満であると、所望の焼入れ性改善作用が発揮されず、母材強度が不足する。しかしながら、Mn含有量が過剰になって2.5%を超えると、HAZ部の耐溶接割れ性が劣化することになる。Mn含有量の好ましい下限は1.25%であり、好ましい上限は2.0%であり、より好ましくは1.6%以下とするのが良い。
【0030】
Cr:0.1〜2.0%
CrはMnと同様に、焼入れ性を改善する作用を有し、高冷却速度乃至低冷却速度で低温変態ベイナイトを生成しやすくする。Cr含有量が0.1%未満であると、所望の焼入れ性改善作用が発揮されず、母材強度が不足する。しかしながら、Cr含有量が過剰になって2.0%を超えると、HAZ部の耐溶接割れ性が劣化することになる。Cr含有量の好ましい下限は0.5%であり、より好ましくは0.6%以上とするのが良く、好ましい上限は1.5%であり、より好ましくは1.2%以下とするのが良い。
【0031】
Mo:1.5%以下(0%を含む)
Moは上記MnおよびCrと同様に焼入れ性を改善する作用を有し、高冷却速度乃至低冷却速度で低温変態ベイナイトを生成しやすくするが、過剰に含有されるとHAZ部の耐溶接割れ性が劣化するので、1.5%を上限として含有しても良い。Mo含有量の好ましい上限は1.0%であり、より好ましくは0.5%以下とするのが良い。
【0032】
V:0.1%以下(0%を含む)
Vは少量の添加により焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める作用がある。但し、0.1%を超えて含有させると大入熱HAZ靭性が低下する。V含有量の好ましい上限は0.06%であり、より好ましくは0.04%以下とするのが良い。
【0033】
Nb:0.1%以下(0%を含む)
Nbはγ粒径を微細化し、これにより変態後のベイナイトブロックサイズが微細化されるため、母材靭性の向上に寄与する。但し、Nbの添加量が0.1%を超えると大入熱HAZ靭性が低下する。Nb含有量の好ましい上限は0.06%であり、より好ましくは0.04%以下とするのが良い。
【0034】
Ti:0.005〜0.03%
TiはNと窒化物を形成して大入熱溶接時におけるHAZ部のγ粒を微細化し、HAZ靭性改善に寄与する点で有用である。こうした効果を発揮させるためには、Tiは0.005%以上含有させる必要があるが、Ti含有量が0.03%を超えると逆にHAZ靭性が低下することになる。Ti含有量の好ましい下限は0.007%であり、好ましい上限は0.02%程度である。
【0035】
B:0.0006〜0.005%
Bは焼入れ性改善元素で、低冷却速度で低温変態ベイナイトを生成しやすくすると共に、小入熱溶接時におけるHAZ部の耐溶接割れ性と母材強度確保を両立させる上で有用な元素である。B含有量が0.0006%未満では焼入れ性改善効果が期待できず、母材強度が不足してしまう。好ましくは0.0007%以上、さらに好ましくは0.001%以上である。但し、B含有量が0.005%を超えるとかえって焼入れ性が低下し、母材強度が不足する。好ましくは0.003%以下とするのが良い。
【0036】
N:0.002〜0.01%
Nは上記の通り、Tiと窒化物を形成して大入熱溶接時におけるHAZ靭性改善に寄与する点で有用である。但し、NはBと結合して固溶Bを減少させ、Bの焼入れ性向上作用を阻害し、母材の靭性および大入熱HAZ靭性を低下させる作用も有しており、Nの含有量が0.01%を超えるとその作用が顕著になる。好ましくは0.008%以下である。また、N含有量が0.002%未満ではTiとの窒化物形成による大入熱HAZ靭性改善の効果が十分でない。好ましくは0.0030%以上である。
【0037】
本発明の高張力鋼板においては、上記基本成分の他(残部)は実質的に鉄からなるものであるが、これら以外にも微量成分を含み得るものであり、こうした高張力鋼板も本発明の範囲に含まれるものである。上記微量成分としては不純物、特にP,S等の不可避不純物が挙げられ、これらは本発明の効果を損なわない程度で許容される。こうした観点から、不可避不純物としてのP,SはP:0.02%以下、S:0.01%以下に夫々抑制することが好ましい。
【0038】
また本発明の高張力鋼板には、必要によってNi,Cu,Ca,Mg,Zr,Si,Al等を含有させることも有効であり、含有される成分の種類に応じて高張力鋼板の特性が更に改善される。必要によって含有される元素の範囲限定理由は下記の通りである。
【0039】
Ni:5%以下(0%を含まない)
Niは母材靭性向上に有用な元素であるが、5%を超えて添加するとスケール疵が発生しやすくなるため、その上限を5%とすることが好ましい。より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下にするのが良い。
【0040】
Cu:3%以下(0%を含まない)
Cuは固溶強化および析出強化により母材強度を向上させると共に、焼入れ性向上作用も有する元素である。但し、3%を超えて添加すると大入熱HAZ靭性が低下するため、その上限を3%とすることが好ましい。より好ましくは2%以下、更に好ましくは1.2%以下にするのが良い。
【0041】
Ca:0.005%以下(0%を含まない)
CaはMnSを球状化して、介在物の異方性を低減する効果を有する元素である。こうした効果を発揮させるためには0.0005%以上添加することが好ましい。より好ましくは0.001%以上である。但し、0.005%を超えて過剰に含有させると母材靭性が低下するので、その上限を0.005%とすることが好ましい。より好ましくは0.004%以下とするのが良い。
【0042】
Mg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはZr:0.05%以下(0 %を含まない)
MgおよびZrは、HAZ靭性を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、過剰に含有させると却ってHAZ靭性が劣化するので、Mgで0.005%以下、Zrで0.05以下とするのが良い。より好ましくは、Mg:0.003%以下、Zr:0.03%以下とするのが良い。
【0043】
Si:1%以下(0%を含まない)および/またはAl:0.2%以下(0%を含まない)
SiおよびAlは脱酸剤として有用な元素である。またAlはNを固定して、固溶Bを増加させることにより、Bに基づく焼入れ性を向上する作用をも発揮する。これらの効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、Siで1%、Alで0.2%を超えて過剰に含有されると母材靭性(Siでは母材靭性と溶接性)が低下する。より好ましくはSiで0.6%以下、Alで0.1%以下、更に好ましくはSiで0.3%以下、Alで0.05%以下とするのが良い。
【0044】
本発明の高張力鋼板を製造するには、(1)平均結晶粒径が10μm以下、(2)粒径:10〜250nmのNaCl型炭・窒化物が1×104個/mm2以上、を満足させるための製造条件を考慮する他は、上記化学組成を満足する鋼を用い、通常用いられる高張力鋼板の製造工程、および条件(温度、時間など)を適宜採用すれば良い。そして、本発明の高張力鋼板では、肉厚が80mm以上のものでも良好な溶接性と母材強度を有するものとなるが、肉厚が80mm未満のものであってもこうした特性が得られるのは勿論である。
【0045】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0046】
【実施例】
実施例1
下記表1に示す化学成分組成の鋼を通常の溶製法により溶製し、スラブとした後、下記表2に示す条件で熱間圧延および熱処理を行って、所定の板厚からなる高張力鋼板を製造した。尚、「熱処理条件2」の熱処理は、「熱処理条件1」の熱処理の後に行った。また、実験No.12のものについては、熱処理条件1を2回実施した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
このようにして得られた各鋼板について、下記の要領で平均結晶粒径、析出物のサイズおよび個数を測定すると共に、母材特性[強度および靭性(vE-60)]を評価した。また本発明で基準とする母材レベル(590MPa≦引張強さ<780MPa、vE-60≧47J)をクリアしたものについては、さらに溶接性(耐溶接割れ性および大入熱HAZ靭性)を評価した。
【0050】
[平均結晶粒径]
EBSPを用いて方位解析を行い、傾角が10°以上の境界を結晶粒界として、結晶粒径を決定した。このとき測定位置は各鋼板の板厚1/4部位、測定領域:70μ角、測定ステップ:0.2μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1以下の測定点は測定対象から削除した。また、結晶粒径が0.5μm以下の結晶については測定ノイズと判断し、平均結晶粒径計算の対象から外した。更に、測定領域の端に掛かる結晶粒についても、平均結晶粒径計算の対象から外した。尚、本発明鋼板の主体組織はベイナイトであるが、フェライト、パーライト、マルテンサイトを含む組織においても上記の方法により結晶粒径を決定できる。
【0051】
[析出物のサイズ、個数]
抽出レプリカ法によって析出物(NaCl型の炭・窒化物)を抽出後、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって、サイズおよび個数を測定した。尚、NaCl型の炭・窒化物の測定に当たっては、TEM観察によりその形状が略四角形状として見えるものは、NaCl型の炭・窒化物として判断し、略四角形状でないものについてはX線分析によりその析出物に含まれる元素を調査し、例えばTiとNが分析されれば該析出物はTiNと判断し、化合物の型から該析出物がNaCl型か否か判断した(他の化合物についても同様である)。このとき、観察倍率4万倍で測定範囲2μm角の領域をn=10で撮影し、画像解析装置によって、粒径10〜250nmの個数をカウントした。
【0052】
[母材特性試験]
▲1▼引張試験:各鋼板の板厚1/4部位からJIS4号試験片を採取し、引張試験を行うことにより0.2%耐力および引張強さを測定した。590MPa≦引張強さ<780MPaを合格とした。また、引張試験の際に、降伏比についても測定した。
▲2▼衝撃試験:各鋼板の板厚1/4部位からJIS4号試験片を採取し、シャルピー衝撃試験をおこなうことにより吸収エネルギー(vE-60)を得た。vE-60≧47Jを合格とした。
【0053】
[溶接性試験]
▲1▼HAZ靭性:入熱80〜120kJ/mm(エレクトロスラグ溶接法)で溶接を行い、図2に示す部位からJIS4号試験片を採取してシャルピー衝撃試験を行い、ボンド部の吸収エネルギー(vE-20)を求めた。vE-20≧15Jを合格とした。
▲2▼耐溶接割れ性:JIS Z 3158に記載のy形溶接割れ試験法に基づいて、入熱1.7kJ/mmで被覆アーク溶接を行い、ルート割れ防止予熱温度を測定した。25℃以下を合格とした。
【0054】
これらの試験結果を、平均結晶粒径および析出物個数と共に、下記表3に示すが、本発明で規定する要件を満足するもの(No.1,2,4〜6,9,10,12〜18,28〜37)では、母材特性および溶接性のいずれにも優れていることが分かる。これに対して、本発明で規定する要件のいずれかを欠くもの(No.3,7,8,11,19〜27)では、耐溶接割れ性、大入熱HAZ靭性、母材特性(強度,靭性)の少なくともいずれかが低下していることが分かる。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、溶接性(耐溶接割れ性および大入熱HAZ靭性)に優れた、590MPa以上780MPa未満の鋼板を提供することができた。本発明によれば板厚が80mm以上の厚物であっても、上記の特性を備えた高張力鋼板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成分設計の考え方を説明するための模式的なCCT線図である。
【図2】エレクトロスラグ溶接時のボンド靭性の試験片採取位置を示す概略説明図である。
Claims (9)
- C :0.010〜0.06%(質量%の意味、以下同じ),
Mn:1.0〜2.5%,
Cr:0.1〜2.0%,
Mo:1.5%以下(0%を含む),
V :0.1%以下(0%を含む),
Nb:0.1%以下(0%を含む),
Ti:0.005〜0.03%,
B :0.0006〜0.005%,
N :0.002〜0.01%,
Si:1%以下(0%を含まない),
Al:0.2%以下(0%を含まない)
を満たし、残部がFeおよび不可避不純物である鋼からなり、
2.4%≦KP≦4.5%
を満足すると共に、平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする溶接性に優れた高張力鋼板。
但し、
KP(%)=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo]
《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。》 - C :0.010〜0.06%,
Mn:1.0〜2.5%,
Cr:0.1〜2.0%,
Mo:1.5%以下(0%を含む),
V :0.1%以下(0%を含む),
Nb:0.1%以下(0%を含む),
Ti:0.005〜0.03%,
B :0.0006〜0.005%,
N :0.002〜0.01%,
Si:1%以下(0%を含まない),
Al:0.2%以下(0%を含まない)
を満たし、残部がFeおよび不可避不純物である鋼からなり、
2.4%≦KP≦4.5%
を満足すると共に、粒径:10〜250nmのNaCl型炭・窒化物が1×104個/mm2以上存在するものであることを特徴とする溶接性に優れた高張力鋼板。
但し、
KP(%)=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo]
《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。》 - C :0.010〜0.06%,
Mn:1.0〜2.5%,
Cr:0.1〜2.0%,
Mo:1.5%以下(0%を含む),
V :0.1%以下(0%を含む),
Nb:0.1%以下(0%を含む),
Ti:0.005〜0.03%,
B :0.0006〜0.005%,
N :0.002〜0.01%,
Si:1%以下(0%を含まない),
Al:0.2%以下(0%を含まない)
を満たし、残部がFeおよび不可避不純物である鋼からなり、
2.4%≦KP≦4.5%
を満足すると共に、平均結晶粒径が10μm以下であり、且つ粒径:10〜250nmのNaCl型炭・窒化物が1×104個/mm2以上存在するものであることを特徴とする溶接性に優れた高張力鋼板。
但し、
KP(%)=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo]
《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。》 - KV≦0.12(%)を満足するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高張力鋼板。
但し、
KV(%)=[V]+[Nb]
《式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。》 - 更にNi:5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高張力鋼板。
- 更にCu:3%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の高張力鋼板。
- 更にCa:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の高張力鋼板。
- 更にMg:0.005%以下(0%を含まない)および/またはZr:0.05%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の高張力鋼板。
- 肉厚が80mm以上である請求項1〜8のいずれかに記載の高張力鋼板。
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