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JP3694802B2 - 非線形最適状態フィードバック制御方法及び装置 - Google Patents

非線形最適状態フィードバック制御方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明による非線形最適状態フィードバック制御方法及び装置は、石炭焚きボイラ等の脱硝あるいは脱硫制御装置のような非線形な化学反応系を最適に制御するに好適であり、また本来的に不安定な物理現象に起因して運転条件に外乱が不可避であるような系をフィードバックにより、安定に制御するに好適な最適状態フィードバック制御方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明が生じた技術的背景を、脱硝装置の制御系を例に説明する。
【0003】
ここでいう脱硝装置とは、燃焼排ガスの流路に脱硝反応のための触媒を設置し、還元剤としてNH3を燃焼排ガス中に注入し、設置した前記触媒上で注入したNH3と燃焼排ガス中のNOxを反応させて、窒素と水にする装置のことである。
【0004】
【数1】
Figure 0003694802
【0005】
排ガス中のNOxは、注入するNH3と上記(1)式で示す反応により、窒素と水になるので、基本的には、注入するNH3量は、処理すべきNOx量に見合った量を注入することになる。注入したNH3はNOxとの反応に使用される以外に、触媒表面上に吸着しうる量だけ吸着する。したがって、NOxとの反応に使用される量と触媒表面上に吸着される量の合計量を超えてNH3を注入すると、余分のものがリークNH3として装置から流出する。一方、注入するNH3量が処理すべきNOx量に対して不足すると、NOxが処理しきれなくなり、出口NOx濃度を所定値以下にすることができなくなる。
【0006】
本発明が適用される脱硝制御系に関し、その従来の技術になる制御装置の系統の1例を説明する。出口NOx濃度は出口NOx濃度設定値と減算器にて比較され偏差、すなわち出口NOx濃度偏差が出力される。出口NOx濃度偏差はPI(比例・積分)の調節器に入力され、その出力は注入NH3のモル比修正量である。一方、前記出口NOx濃度設定値を入力として関数発生器にて必要モル比が演算され、これと先のモル比修正量とが加算器で加算されて修正モル比が算出される。この修正モル比が入り口NOx流量と乗算器で乗算されて必要NH3流量が得られる。実測されたNH3流量はこの必要NH3流量と減算器で比較され、偏差すなわちNH3流量偏差が算出される。このNH3流量偏差を入力としてPI調節器で、NH3流量調節量が得られる。なお、前記修正モル比に乗算される入口NOx流量は、入口NOx濃度と燃焼排ガス流量とを乗算器で乗算演算した結果として算出され、燃焼排ガス流量は空気流量を入力とする関数発生器による出力である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術になる出口NOx濃度制御結果の例を第6図に示す。この第6図では、時間500(単位(sec))、出口NOx濃度501,出口NOx濃度設定下限504と出口NOx濃度設定上限505,またリークNH3濃度502,とリークNH3濃度の上限506(これら501,502,504,505,506は単位(ppm))、さらにNH3注入量503(単位(m3/h))いずれもその取りうる最小値〜最大値を0〜100%に無次元化して表示したものである。図によれば、NH3注入量503がNH3吸着量に相応した値となっていないので、出口NOx濃度501が、a点に示すように設定範囲から大きく逸脱する場合がある。また、NH3注入量503自体もc点に示すように一時的にかなり大量に投入されており、その結果、リークNH3濃度502が、b点に示すように、一時的にかなり高くなって無駄・不経済が生じている。
【0008】
すなわち、この従来技術になる制御装置では、制御仕様として出口NOx濃度を設定値に近づけることのみ考慮されているため、以下の問題が発生する。
【0009】
a.触媒上へのNH3吸着量が評価/算定されない。従って触媒上へのNH3吸着量に相応した量のNH3が注入される訳ではないので、例えば吸着量が残存しているような負荷下げ時に出口NOxの過剰除去・設定範囲からの下方への逸脱が起こる場合がある。
【0010】
b.注入したNH3が反応に寄与せず煙突側にリークする量についても制御仕様が設定されていない。従って、たとえば石炭焚きボイラであって、入口NOx濃度がミル入り動作における空気量と燃料量のアンバランスによってピーキーに上昇するような負荷上げ時に、NH3が過剰注入されてリークNH3濃度が制限をオーバする場合がある。
【0011】
c.NH3注入量の総量を制御仕様として抑制している訳ではなく、このため、場合によりNH3注入量が過剰になり不経済となる。
【0012】
そこで、触媒上への吸着NH3量を制御系統内蔵のシミュレーションモデルによって評価した上で、操作量としてのNH3注入量の偏差と使用量総量を、状態変数としての出口NOx濃度値偏差とともに同時に抑える、のが望ましい。
【0013】
このために、最適制御を適用する事が考えられる。すなわち、
1)脱硝系の動特性のシミュレーション・モデルを制御装置に内蔵し、入口NOx濃度、出口NOx濃度、NH3注入量、吸着NH3量、の関係を時間的に計算で追いかけた上で、
2)負荷変化中の、出口NOx濃度偏差、注入NH3量の偏差、の時間積分値、さらにNH3量使用量総量が抑制されるように制御仕様を設定する、
ことである。
【0014】
しかし、この最適制御の適用に当たって、従来技術の最適制御では以下の問題があった;
a.制御装置に内蔵するシミュレーション・モデルはどのようなものでも良いわけではなく、操作量(脱硝系統の場合はこれはスカラー変数であって、注入NH3量)と状態変数(出口NOx濃度、また場合により吸着NH3量)との関係、すなわち状態変数の時間変化率を与える状態方程式(下記(2)式)が線形でなければならない。
【0015】
【数2】
Figure 0003694802
【0016】
b.制御仕様としても、下記(3式)に示すような、操作量偏差(脱硝制御では注入NH3量偏差)の平方と状態変数偏差(脱硝制御では出口NOx濃度偏差)の平方の適当な加重平均の、例えば制御開始時点t1から制御終了時点t2迄の時間積分が最小になるようにする、下記(4)式の形しかとれない。
【0017】
【数3】
Figure 0003694802
【0018】
【数4】
Figure 0003694802
【0019】
c.さらに、制御終了時点での状態変数偏差(出口NOx濃度偏差)をも抑制しようとした場合、b.の時間積分と同時に最小化しなければならないが、最小化すべき量としては、下記(5),(6)式に示す、制御終了時点での状態変数偏差(脱硝制御では出口NOx濃度偏差)の平方しか採用できない。
【0020】
【数5】
Figure 0003694802
【0021】
【数6】
Figure 0003694802
【0022】
以上のa,b,c,を全て満たす場合に限り、操作量を状態変数のフィードバックとして、下記(7)式で算出できる。
【0023】
【数7】
Figure 0003694802
【0024】
しかし、このような線形性を仮定した最適な状態フィードバック制御、は以下の理由で現実の脱硝系統に適用できない。
【0025】
▲1▼.注入NH3量に対して出口NOx濃度は必ずしも比例的には応答せず、吸着NH3量が多ければ、それに応じて出口NOxは過剰に減少しがちなのは自明である。また触媒の温度が低ければ、当然のことながら、活性が落ちて出口NOx濃度が余り減少しなくなる。すなわち、制御装置に内蔵されるシミュレーション・モデルがある程度の精度を要求されるとするなら、線形のモデルでは役にたたない。また線形化するとしたら平衡点周りのテイラー展開を計算することになるが、これは平衡点自体が時々移り変わること、更にテイラー展開のためには偏微分係数の算定が必要であること、の点から計算時間を消費するものである。
【0026】
▲2▼.また、実際には測定される出口NOx濃度と出口NOx濃度設定値との偏差はゼロが要求される訳ではなく、ある幅のバンド(例えば設定値プラス10ppm、マイナス10ppm等)での制御仕様となり、この場合は状態変数偏差すなわち出口NOx濃度とその設定値との差の平方、の時間積分を抑えることが本当に最適な制御を導くか、は必ずしも自明でない。さらに、NH3総使用量は単純に注入NH3量自身、すなわち操作量の1乗の時間積分値であって、状態変数偏差の平方と操作量の平方しか時間積分の被積分関数に採用出来ないようではNH3総使用量を制御する、との制御仕様を表現出来ず、現実の役には立たない。
【0027】
▲3▼.さらに、制御終了時点での状態変数偏差についても、偏差ゼロが要求されるわけではなく、出口NOx濃度偏差の平方のみしか最小化できないのでは実用上で使いにくい、との問題があった。
【0028】
そこで、上のa,b,c,いずれかの制約を外す事が考えられる。すなわち、a.前記(2)式で示される状態方程式が非線形である事を許容する。
【0029】
あるいは、
b.被積分関数である下記(8)式の形を任意にとる。
【0030】
【数8】
Figure 0003694802
【0031】
さらに、また、
c.制御終了時点の状態変数偏差の関数、すなわち下記(9)式で示される終端コスト関数の形を任意にとる。
【0032】
【数9】
Figure 0003694802
【0033】
しかし、上記aの場合、従来の最適制御理論では、操作量(注入すべきNH3量)を、状態変数(出口NOx濃度の計測値及び場合により吸着NH3量のシミュレーションによる推算値)のフィードバック(状態フィードバック)として構成することが出来ず、下記(10)式に示す時間関数として算出される。
【0034】
【数10】
Figure 0003694802
【0035】
この時間関数は予め設定された脱硝系統のシミュレーション・モデル(状態方程式で表現される)を制御仕様((8)式と(9)式で表現される)と結合して算定されるものである。従って出口NOxの濃度がどのような値になっていても、それを反映できず、系の状態の推移を見ながら制御をかける、との考えを適用できない。すなわち、このような時間関数(前記(10)式)で制御を行うと、予め設定したシミュレーション・モデルが完全に正しく、且つ外乱も無い、との理想的場合に限って制御仕様を満足することができる。実際には脱硝制御などであれば常に火炉側での燃焼には揺らぎ/外乱が付きものであり、排ガス温度従って触媒温度も揺らぐ、さらに入口NOx濃度も変動するから、このような時間関数で構成した操作量では系を制御できず、ハンチング等が出現する恐れがある。更に、この従来技術の最適制御理論に基づく時間関数による操作量計算の方法では、状態変数も操作量と同時に、下記(11)式に示す時間関数として計算されるが、このような時間関数計算に際して以下に説明する「2点境界値問題」という難点があった。
【0036】
【数11】
Figure 0003694802
【0037】
すなわち、操作量ベクトルの解関数と状態変数ベクトルの解関数は、時間についての1階の常微分方程式を満たすものであるが、これを解くには、時間に関する境界条件を与える必要がある。この従来技術の最適制御理論では、状態変数ベクトルの解関数については制御開始時点t1での初期条件(下記(12)式)を与え、操作量ベクトルの解関数については制御終了時点t2での終期条件(下記(13)式)を与えるものとなる。
【0038】
【数12】
Figure 0003694802
【0039】
【数13】
Figure 0003694802
【0040】
従って、まず制御開始時点t1での操作量ベクトルの解関数の値を仮に設定して初期値問題として状態変数ベクトルの解関数及び操作量ベクトルの解関数を解く。この解が操作量ベクトルの解関数の制御終了時点t2での終期条件を満足するまで仮設定値を探索する。すなわち、この2点境界値問題は収束計算を要するものである。
【0041】
以上を要するに解決すべき問題としては、下記1,2,3がある。
【0042】
1.従来のPI(比例・積分)調節器によるフィードバック制御では出口NOx濃度の設定値への漸近を目的とするものの、吸着NH3の多少に応じたNH3注入量の制御はできず、このため
a.出口NOx濃度の過度の低下、すなわち設定値からのアンダーシュート、
b.過剰なNH3注入によるリークNH3濃度のオーバシュート、
c.NH3使用総量の過剰による不経済性の発生、
の問題がある。
【0043】
2.それを回避するために吸着NH3量や出口NOx濃度などの動特性モデルに基づき、NH3注入量や出口NOx濃度の偏差あるいはNH3使用の総量に関わる制御仕様設定による最適制御を考える事もできるが、その場合、外乱を抑えることも考慮してフィードバック制御の形をとろうとすると、
a.線形の状態方程式(動特性モデル)にしなければならず、この場合平衡点ごとのテイラー展開をすることになるが平衡点自体が時間的に変化していき、また平衡点での偏微分係数計算、という計算時間を消費する問題がある、
b.制御仕様としてはNH3注入量の偏差の平方と出口NOx濃度の偏差の平方の適当な加重平均の時間積分の最小化、しか取れない、
c.制御終了時点での出口NOx濃度を抑えようとした場合でもその偏差の平方の最小化、しか許容されない、
との強い制約がつく問題があって非線形性が強い脱硝制御には全く不適になる。
【0044】
3.そのような制約をはずす事も可能ではあるが、
a.操作量であるNH3注入量を出口NOx濃度をフィードバックして構成する、とのフィードバック制御が不可能となってしまい、これは脱硝制御が本来燃焼に関わる外乱、揺らぎの著しい系の制御であることを考えれば全く不適切な制御方法である、
b.この場合時間関数として操作量であるNH3注入量が算出されるのであるが、この時間関数を算出するに当たって制御開始時点と終了時点の2つの時点の境界条件を同時に満足しなければならない「2点境界値問題」を不可避的に解くことになり、この2点境界値問題は収束計算を必要とするものである、との問題がある。
【0045】
本発明の目的は、石炭焚きボイラ等の脱硝あるいは脱硫制御装置のような非線形な化学反応系を最適に制御すること、また本来的に不安定な物理現象に起因して運転条件に外乱が不可避であるような系をフィードバックにより、安定に制御することにある。
【0046】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、操作量(脱硝制御の場合注入NH3量)と状態変数(出口NOx濃度及び場合により吸着NH3量)の状態方程式が有する非線形特性はそのまま保持し、操作量と状態変数の任意の関数であるラグランジュ関数の制御開始から終了までの時間積分値と、制御終了時点の状態変数の任意の関数である終端コスト関数の和を最小化する制御仕様とし、なおかつ操作量を状態変数のフィードバックで表現して2点境界値問題のごとき収束計算は不要な非線形最適状態フィードバック制御とした。
【0047】
具体的には、対象系の状態を表現するための、対象系の状態を表現する状態変数ベクトル、対象系に入力してこれを制御する操作量ベクトル、及び時間を引数とする、状態変数と同じ成分数を有するベクトル値関数であるソース関数を発生させるソース関数発生器と、対象系の状態が制御開始時点から制御終了時点に亘り最適に制御されるための条件を表現する、状態変数ベクトル、操作量ベクトル、及び時間を引数とするスカラー値関数であるラグランジュ関数、及び、制御終了時点での操作量ベクトルを制御するための、制御終了時点での状態変数ベクトルを引数とするスカラー値関数である終端コスト関数と、を発生させるラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器と、前記ソース関数発生器、ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器から発生された関数を入力とし、対象系をラグランジュ関数と終端コスト関数で表現される制御仕様通りに制御するための操作量ベクトルを計算するための、状態変数ベクトルと時間を引数とする位相関数を計算する位相関数計算器と、前記位相関数計算器において計算される位相関数の偏微分係数を、状態変数ベクトルの計測値を引数として計算した値を用いて操作量を計算する操作量計算器と、を含んで構成した非線形最適状態フィードバック制御装置である。
【0048】
前記ソース関数発生器が発生するソース関数は、現在時刻における状態変数ベクトルの時間変化率が、現在時刻における状態変数ベクトル値、操作量ベクトル値、及び現在の時点、とを引数とするベクトル値関数に等しいことを表すものであることが望ましい。
【0049】
前記ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器は、制御開始時点から制御終了時点までのラグランジュ関数の時間積分値と、制御終了時点での状態変数ベクトル値の関数である終端コスト関数値との和が、最小もしくは最大になる条件として制御仕様を設定するものであることが望ましい。
【0050】
前記位相関数計算器は、状態変数ベクトルと、状態変数ベクトルについての偏微分演算子及び時間の関数であるトータルハミルトニアン演算子を計算するトータルハミルトニアン演算子計算器、状態変数ベクトルと時間との複素数のスカラー関数である波動関数を計算する波動関数ソルバと、複素数である該波動関数を絶対値部分と位相部分とに分解する波動関数分解器と、を含んでなることが望ましい。
【0051】
前記操作量計算器は、ラグランジュ関数の操作量ベクトルによる偏微分係数の、ソース関数の操作量ベクトルによる偏微分係数に対する比率として計算される、操作量ベクトルと状態変数ベクトルと時間との関数を、位相関数の状態変数ベクトルによる偏微分係数に等しいとおいて得られる操作量ベクトルに対する方程式において、状態変数ベクトルに現時刻の計測値を、時間として現在の時刻を、それそれ代入して得られる方程式を操作量ベクトルについて解くものであることが望ましい。
【0052】
前記トータルハミルトニアン演算子計算器は、状態変数ベクトルによる偏微分演算子の関数である操作量ベクトル演算子を、ソース関数の引数である操作量の代わりに代入したソース関数演算子と、同じく操作量ベクトル演算子をラグランジュ関数の引数である操作量の代わりに代入したラグランジュ関数演算子、を入力し、ラグランジュ関数演算子に負号を付した演算子と、状態変数ベクトルによる偏微分演算子とソース関数演算子とのベクトル内積、との和である演算子であるトータルハミルトニアン演算子を出力するものであることが望ましい。
【0053】
前記波動関数ソルバは、トータルハミルトニアン演算子を状態変数ベクトルと時間とを引数とする複素数スカラー関数である波動関数に作用させて得られる複素数スカラー値関数が、波動関数の時間による偏微分に虚数単位と実数である揺らぎ定数とを乗じて得られる複素数スカラー値関数に等しいと設定することで得られる波動関数に対する線形偏微分方程式のソルバであることが望ましい。
【0054】
前記波動関数ソルバの境界条件を、制御終了時点での波動関数が、終端コスト関数に虚数単位を乗じ揺らぎ定数で除し負号を付した量の指数関数に任意の状態変数ベクトル値に対しても等しいと設定する境界条件設定部を有することが望ましい。
【0055】
前記波動関数分解器が、前記波動関数ソルバによって計算された状態変数ベクトルと時間の任意値における波動関数を入力し、波動関数とその複素共役の積の平方根であるところの絶対値である実数スカラー値関数である絶対値関数と、波動関数の位相、すなわち波動関数の実数部分に対する虚数部分の比率の逆正接関数が、それを揺らぎ定数で除した量に等しい量であるところの位相関数とを出力するものであることが望ましい。
【0056】
触媒出口NOx濃度の計測値が出口NOx濃度設定幅に入るように触媒へのNH3注入量を操作する触媒脱硝制御装置において、状態変数ベクトルが触媒出口NOx濃度と触媒吸着NH3濃度であり、操作量ベクトルがNH3注入量であり、スカラー値関数が、触媒出口NOx濃度と出口NOx濃度設定幅の偏差の絶対値を最小化するものであるように表現される関数である請求項1乃至9のいずれかに記載の非線形最適制御状態フィードバック制御装置を設ける。
【0057】
また、pH実測値が設定値に追従するように石灰石量を操作する脱硫制御装置において、状態変数ベクトルがpHであり、操作量ベクトルが石灰石流量であり、スカラー値関数がpHとその設定値の偏差の時間積分値が最小化するものであるように表現される関数である請求項1乃至9のいずれかに記載の非線形最適制御状態フィードバック制御装置を設ける。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関わる脱硝制御装置の一実施形態を図面と数式を用いて説明する。第1図は、非線形最適状態フィードバック制御の概要を示すものである。図中の枠20については、作図の便宜上、詳細を図2に示した。以下、番号順に説明する。
【0059】
1)状態方程式及び2)評価指数:
a.下記(14)式に示す状態方程式は、以下に説明するように非線形のままとして扱う。
【0060】
【数14】
Figure 0003694802
【0061】
状態変数は2次元ベクトルでNOx濃度[ppm]と吸着NH3濃度[ppm]、操作量はスカラーでNH3注入量[kg/sec]である。上記(14)式は次の2式をベクトル的に纏めて記したものである;
【0062】
【数15】
Figure 0003694802
【0063】
【数16】
Figure 0003694802
【0064】
b.次に制御仕様(評価指標)は、NOx濃度,吸着NH3濃度とNH3注入量の任意の関数であってよいが、ここでは通常の偏差平方の加重平均型の下記(17)式と注入NH3の総量を表現するための下記(18)式の和である、下記(19)式とする。
【0065】
【数17】
Figure 0003694802
【0066】
【数18】
Figure 0003694802
【0067】
【数19】
Figure 0003694802
【0068】
c.更に制御終了時点の状態変数については、本実施例では、特に考慮せず、下記(20)式とし、制御仕様は下記(21)式である。
【0069】
【数20】
Figure 0003694802
【0070】
【数21】
Figure 0003694802
【0071】
すなわち、制御仕様は、操作量と状態変数のラグランジュ関数の制御開始時点t1から終了時点t2までの時間積分値と、終端コスト関数値の和の最小化である。この制御仕様により、出口NOx濃度が設定値に接近することを前記ラグランジュ関数の一部分((17)式)の第1項で表現し、これと同時に従来のPIフィードバックでは表現できなかったNH3のリーク量抑制については同じく前記ラグランジュ関数の一部分((17)式)の第2項で、また注入NH3量の総量の抑制は前記ラグランジュ関数の別の一部分((18)式)で、それぞれ表現されることになる。
【0072】
3)〜8)の事前off−line計算:
ここでは要するにフィードバック関数を計算するための位相関数なる関数を計算する。すなわち、状態変数ベクトルと同次元のベクトルである補助変数ベクトルを用い、3)で定義されるトータル・ハミルトニアンを状態変数の偏微分演算子化して得られるトータル・ハミルトニアン演算子を使って、下記(22)式(図2の7)に示す式)に示す線形波動方程式を解く。
【0073】
【数22】
Figure 0003694802
【0074】
トータル・ハミルトニアン演算子は、図2の3)で定義されるトータル・ハミルトニアンの右辺に現われるラグランジュ関数をラグランジュ関数演算子に、また補助変数ベクトルを補助変数ベクトル演算子に、さらに、ソース関数をソース関数演算子に、それぞれ置き換えることで計算される量である。
【0075】
(22)式の複素関数解は、下記(23)式で表される。すなわち、波動関数の位相部分を揺らぎ定数倍した関数が求める位相関数である。
【0076】
【数23】
Figure 0003694802
【0077】
9)状態フィードバック計算:
補助変数ベクトルを以上で計算した位相関数の状態変数ベクトルについての偏微分に負号を付したベクトルで置き換えてトータル・ハミルトニアンに代入し、その操作量ベクトルに対する偏微分が0(ゼロ)になる点が、求める最適な操作量ベクトルである。これは図1の9)、すなわち下記(24)式に示しているように状態変数ベクトルを使って表されており、状態フィードバックが実現している。
【0078】
【数24】
Figure 0003694802
【0079】
上記(24)式を状態方程式に代入することにより、図1の最下段に示すように状態変数ベクトルの時間的推移を知ることができる。
【0080】
さて、上述のように、状態フィードバックを計算するには、前記(22)式(図2の7)に示す式)に示す線形波動方程式を解かねばならない。この線形波動方程式は波動関数ψの時間1階の微分方程式であるから、初期あるいは終期での波動関数ψの分布を与えればそれを時間の順方向、あるいは逆方向に積分していくことで任意時点での波動関数ψは計算される。注意すべきは、この時間境界条件は制御開始、終了の2点でともに与える必要は全くなく、単に開始時点あるいは終了時点のいずれか1点で与えておけばよいことである。このため、本発明の方法では2点境界条件という難問題は発生しない。
【0081】
この時間境界条件として本発明では、下記(25)式、及び(26)式をとるものとする。;
【0082】
【数25】
Figure 0003694802
【0083】
【数26】
Figure 0003694802
【0084】
すなわち、下記(27)式と設定する。
【0085】
【数27】
Figure 0003694802
【0086】
この境界条件は何ら収束計算等を必要とするものでなく、単にこの終期条件から時間逆方向に線形波動方程式を時間積分することで、任意時点での波動関数ψが、従って位相関数が計算され、任意時点での状態フィードバックを示す下記(28)式、すなわち、脱硝制御装置においては下記(29)式が計算されるものとなる。
【0087】
【数28】
Figure 0003694802
【0088】
【数29】
Figure 0003694802
【0089】
図3は本発明になる非線形最適状態フィードバック制御装置を具備せる脱硝制御装置の一実施例を示す図である。本図に示す制御と従来制御との違いは、唯一、従来制御において出口NOx濃度偏差を入力としてモル比修正量を出力するPI調節器が、本発明にかかる非線形最適状態フィードバック制御装置1000に置き換わっていることである。
【0090】
図4は、図3の非線形最適状態フィードバック制御装置1000の中身を示している。図示の非線形最適状態フィードバック制御装置1000は、ソース関数発生器1010と、ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器1015と、これら両者の出力側に接続されかつ出口NOx濃度偏差108及び出口NOx濃度107が入力され位相関数出力値1021を出力する位相関数計算器1020と、位相関数計算器1020の出力側に接続され位相関数出力値1021を入力としてモル比修正量109を出力する操作量計算器1030と、を含んで構成されている。
【0091】
ソース関数発生器1010は、図1の1)右辺の関数の値を、また、ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器1015は図1の2)の右辺の2つの関数の値を、それぞれ時々刻々に発生させる。位相関数計算器1020では図1,図2の3)〜8)を計算し、位相関数出力値1021を出力している。この位相関数出力値1021が操作量計算器1030に入力され、演算結果がモル比修正量109(操作量ベクトル)として出力される。操作量計算器1030は図1の9)を計算している。
【0092】
ソース関数発生器1010は、対象系の状態を表現するための、対象系の状態を表現する状態変数ベクトル、対象系に入力してこれを制御する操作量ベクトル、及び時間を引数とする、状態変数と同じ成分数を有するベクトル値関数であるソース関数を発生させる。ソース関数発生器は、現在時刻における状態変数ベクトルの時間変化率が、該ソース関数の現在時刻における状態変数ベクトル値、操作量ベクトル値、及び現在の時点、とを引数とするベクトル値である。
【0093】
ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器1015は、対象系の状態が制御開始時点から制御終了時点に亘り最適に制御されるための条件を表現する、状態変数ベクトル、操作量ベクトル、及び時間を引数とするスカラー値関数であるラグランジュ関数、及び、制御終了時点での操作量ベクトルを制御するための、制御終了時点での状態変数ベクトルを引数とするスカラー値関数である終端コスト関数と、を発生させる。ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器は、制御開始時点から制御終了時点までのラグランジュ関数の時間積分値と、制御終了時点での状態変数ベクトル値の関数である終端コスト関数値との和が、最小もしくは最大になる条件として制御仕様が設定されるものである。
【0094】
位相関数計算器1020は、前記ソース関数発生器、ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器から発生された関数を入力とし、対象系をラグランジュ関数と終端コスト関数で表現される制御仕様通りに制御するための操作量ベクトルを計算するための、状態変数ベクトルと時間を引数とする位相関数を計算する。具体的には、位相関数計算器は、状態変数ベクトルと、状態変数ベクトルについての偏微分演算子及び時間の関数であるトータルハミルトニアン演算子を計算するトータルハミルトニアン演算子計算器、状態変数ベクトルと時間との複素数のスカラー関数である波動関数を計算する波動関数ソルバと、複素数である該波動関数を絶対値部分と位相部分とに分解する波動関数分解器と、を含んで構成されている。
【0095】
トータルハミルトニアン演算子計算器は、図2の3),4),5),6)の演算を実行する。状態変数ベクトルによる偏微分演算子の関数である操作量ベクトル演算子を、ソース関数の引数である操作量の代わりに代入したソース関数演算子と、同じく操作量ベクトル演算子をラグランジュ関数の引数である操作量の代わりに代入したラグランジュ関数演算子、を入力し、ラグランジュ関数演算子に負号をつけた演算子と、状態変数ベクトルによる偏微分演算子とソース関数演算子とのベクトル内積、との和である演算子であるトータルハミルトニアン演算子を出力するものである。
【0096】
波動関数ソルバは、図2の7)の演算を行うもので、トータルハミルトニアン演算子を状態変数ベクトルと時間とを引数とする複素数スカラー関数である波動関数に作用させて得られる複素数スカラー値関数が、波動関数の時間による偏微分に虚数単位と実数である揺らぎ定数とを乗じて得られる複素数スカラー値関数に等しいと設定することで得られる波動関数に対する線形偏微分方程式のソルバである。
【0097】
波動関数ソルバの境界条件が、制御終了時点での波動関数が、終端コスト関数に虚数単位を乗じ揺らぎ定数で除し負号を付した量の指数関数に任意の状態変数ベクトル値に対しても等しいと設定する境界条件設定部を有する。
【0098】
波動関数分解器は、図2の8)の演算を行う。前記波動関数ソルバによって計算された状態変数ベクトルと時間の任意値における波動関数を入力し、波動関数とその複素共役の積の平方根であるところの絶対値である実数スカラー値関数である絶対値関数と、波動関数の位相、すなわち波動関数の実数部分に対する虚数部分の比率の逆正接関数が、それを揺らぎ定数で除した量に等しい量であるところの位相関数とを出力するものである。
【0099】
操作量計算器1030は、前記位相関数計算器において計算される位相関数の偏微分係数を、状態変数ベクトルの計測値を引数として計算した値を用いて操作量を計算する。詳細にいうと、操作量計算器は、ラグランジュ関数の操作量ベクトルによる偏微分係数の、ソース関数の操作量ベクトルによる偏微分係数に対する比率として計算される、操作量ベクトルと状態変数ベクトルと時間との関数を、位相関数の状態変数ベクトルによる偏微分係数に等しいとおいて得られる操作量ベクトルに対する方程式において、状態変数ベクトルに現時刻の計測値を、時間として現在の時刻を、代入して得られる方程式を操作量ベクトルについて解くものである。
【0100】
次に以上説明の状態フィードバックを制御線図で表現すると図3となる。ここでは、従来のPIによるフィードバック制御であるPI調節器が非線形最適状態フィードバック制御装置1000に置き換わっている。この非線形最適状態フィードバック制御装置1000には、出口NOx濃度偏差108及び出口NOx濃度107が入力され、出力としてモル比修正量109を得る。非線形最適状態フィードバック制御装置1000の中身は図4に示す通りで、ソース関数発生器1010、ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器1015、位相関数計算器1020及び操作量計算器1030から構成される。
【0101】
ソース関数発生器1010と、ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器1015の出力が位相関数計算器1020に代入されて位相関数の関数形がここで計算され、この関数の偏微分値を出口NOx濃度107で計算することでモル比修正量109が操作量計算器1030から出力される。
【0102】
図5に本発明の方法による出口NOx濃度の制御結果を示す。NH3注入量503はNH3吸着量に相応した値となっており、出口NOx濃度501は、a点で示されるように、過剰除去がなくなり、設定範囲内すなわち出口NOx濃度設定下限504と出口NOx濃度設定上限505の間に収まっている。NH3注入量503自体も、c点のように一時的に高くなっていても、図6に示す従来制御の場合より低く抑えられており、経済的となっている。また、リークNH3濃度502も、b点に示すように設定範囲、すなわちリークNH3濃度上限506をオーバーしていない。
【0103】
本発明に係る他の実施例として、本発明になる非線形最適状態フィードバック制御装置を実装する脱硫制御装置の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0104】
図7は脱硫制御装置の一部をなすポンプ台数制御装置を示す。図示のポンプ台数制御装置は、ベース循環量デマンド演算器701と、減算器709aと、減算器709aの出力側に接続された除算器710aと、除算器710aの出力側に接続された減算器709bと、減算器709bの出力側に接続された非線形最適状態フィードバック制御装置711aと、前記ベース循環量デマンド演算器701と非線形最適状態フィードバック制御装置711aの出力側に接続された加算器707aと、加算器707aの出力側に接続されたポンプ台数決定ロジック702と、を含んで構成されている。
【0105】
ベース循環量デマンド演算器701は、処理ガス量703、実pH値704、入口Sox濃度705、及び脱硫率設定値706を入力としてベース循環量デマンド717を出力する。一方、減算器709aで入口Sox濃度705と出口Sox濃度708の偏差が算出され、該偏差が除算器710aで入口Sox濃度705で除算されて実脱硫率718が算出される。算出された実脱硫率718と脱硫率設定値706の偏差(脱硫率偏差)が減算器709bで算出される。算出された脱硫率偏差,出口Sox濃度708,脱硫率設定値706,入口Sox濃度705が非線形最適状態フィードバック制御装置711aに入力される。非線形最適状態フィードバック制御装置711aは上記入力に基づいて最適フィードバック719を出力する。出力された最適フィードバック719と前記ベース循環量デマンド717が加算器707aで加算され、その出力信号がポンプ台数決定ロジック702に入力されてポンプ台数が決まる。
【0106】
図8は脱硫制御装置の一部をなすpH制御装置である。図示のpH制御装置は、処理ガス量703と入り口Sox濃度705を入力とする乗算器712aと、乗算器712aの出力側に接続された関数発生器713a,関数発生器713bと、関数発生器713aに接続され関数発生器713aの出力と実pH値704を入力とする減算器709cと、減算器709cに接続され減算器709cの出力と実pH値704と石灰石スラリ流量716を入力とする非線形最適状態フィードバック制御装置711bと、関数発生器713bの出力と非線形最適状態フィードバック制御装置711bの出力を入力とする加算器707bと、加算器707bの出力と前記乗算器712aの出力を入力とする乗算器712bと、乗算器712bの出力側に接続され乗算器712bの出力と石灰石スラリ流量716を入力とする減算器709dと、減算器709dの出力側に接続されたPI調節器714と、PI調節器714の出力で開度制御される石灰石スラリ流調弁715と、を含んで構成されている。
【0107】
上記構成の装置は以下のように動作する。処理ガス量703と入り口Sox濃度705が乗算器712aで乗算されて処理すべきSox量が計算される。これを関数発生器713aで変換した量が実pH値704と減算器709cで比較され、両者の偏差と実pH値704及び石灰石スラリ流量716が非線形最適状態フィードバック制御装置711bに入力される。非線形最適状態フィードバック制御装置711bの出力と、Sox量(乗算器712aの出力)の関数発生器713bによる変換値とが加算器707bで加算される。加算結果とSox量(乗算器712aの出力)とが乗算器712bで乗算され、その乗算結果と石灰石スラリ流量716の偏差が減算器709dで算出される。算出された該偏差をPI調節器714にて演算することで石灰石スラリ流調弁715の開度が決まる。
【0108】
図9に本発明に係る制御装置によるpH制御結果のトレンドを、図10にその従来制御による結果をそれぞれ示す。いずれも静定〜負荷上昇〜下降〜静定のプロセスであって、入り口SOx濃度901は、両図で同じ条件で変動する。石灰石スラリ流調弁715の開度制御により循環される石灰石量904を操作してpH値903を制御しているが図10の従来制御でみられる操作量(石灰石量)904、制御量(pH値)903両者のハンチングが、本発明に係る制御装置による結果を示す図9では、よく抑えられている。また、脱硫率902についても同様で、従来制御で見られるハンチングが本発明に係る制御ではよく抑えられている。
【0109】
なお、この図9、図10は、時間900(単位(sec))、入口SOx濃度901(単位(ppm))、pH値903(無次元)、石灰石量904(単位(kg/h))のいずれも、その取りうる最小値〜最大値を0〜100%に無次元化して表示したものである。脱硫率902(単位(%))についてはそのままの0〜100%表示である。
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば以下の効果が得られる。
【0111】
(1)非線形関数の線形化が不要となるので、時々刻々に平衡点を設置した上での平衡点周りのテイラー展開を計算しなくてすむ。このため偏微分係数計算に要する計算時間が不要となり、制御に要する計算時間が短縮される。
【0112】
(2)制御終了時点における任意の境界条件を設定可能であり、その場合であっても2点境界値問題を解く必要がなく、収束計算等による計算時間消費量が短縮される。
【0113】
(3)非線形特性が強い脱硝系等のような化学反応系であって、時々刻々に入口NOx濃度が変動する系に対しては、そもそも平衡点を計算算出することが困難であって、このため線形化不要とする本発明の制御方法は計算時間短縮の点からメリットが大きい。
【0114】
(4)従来の非線形最適制御方法であれば、操作量、脱硝制御の場合ならNH3注入量を計測値(出口NOx濃度等)の状態フィードバックとして計算することは困難であり、従来は操作量は時間の関数として設定せざるを得なかったが、本発明によれば、状態フィードバックとなるので外乱に対する耐性が強い制御が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る非線形最適状態フィードバック制御の手順図である。
【図2】図1の部分の詳細を示す制御手順図である。
【図3】本発明の実施例である脱硝制御装置の制御線図である。
【図4】図3に示す実施例の非線形最適状態フィードバック制御部分の構成を示す概念図である。
【図5】図3に示す実施例による脱硝制御装置の制御結果を示す概念図である。
【図6】従来のPI制御になる脱硝制御装置の制御結果を示す概念図である。
【図7】本発明の実施例である脱硫制御装置のうちポンプ台数制御の制御線図である。
【図8】本発明の実施例である脱硫制御装置のうちpH値によるスラリ量制御の制御線図である。
【図9】図8に示す本発明の実施例による脱硫制御装置のpH値によるスラリ量制御結果を示す概念図である。
【図10】従来制御になる脱硫制御装置のpH値によるスラリ量制御結果を示す概念図である。
【符号の説明】
101 入口NOx濃度
102 空気流量
103 燃焼排ガス流量
104 入口NOx流量
105 出口NOx濃度設定値
106 必要モル比
107 出口NOx濃度
108 出口NOx濃度偏差
109 モル比修正量
110 修正モル比
111 必要NH3流量
112 NH3注入量
113 NH3流量偏差
114 NH3流量調節量
201a,201b 関数発生器
202a,202b 減算器
203c 調節器
204a,204b 乗算器
205c 加算器
500 時間
501 出口NOx濃度
502 リークNH3濃度
503 NH3注入量
504 出口NOx濃度設定下限
505 出口NOx濃度設定上限
506 リークNH3濃度上限
701 ベース循環量デマンド演算器
702 ポンプ台数決定ロジック
703 処理ガス量
704 実pH値
705 入口SOx濃度
706 脱硫率設定値
707a,707b 加算器
708 出口SOx濃度
709a,709b,709c,709d 減算器
710a 除算器
711a,711b 非線形最適状態フィードバック制御装置
712a,712b 乗算器
713a,713b 関数発生器
714 PI調節器
715 石灰石スラリ流調弁
716 石灰石スラリ流量
717 ベース循環量デマンド
718 実脱硫率
719 最適フィードバック
900 時間
901 入口SOx濃度
902 脱硫率
903 pH値
904 石灰石量
1000 非線形最適状態フィードバック制御装置
1010 ソース関数発生器
1015 ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器
1020 位相関数計算器
1021 位相関数出力値
1030 操作量計算器

Claims (11)

  1. 対象系の状態を表現するための、対象系の状態を表現する状態変数ベクトル、対象系に入力してこれを制御する操作量ベクトル、及び時間を引数とする、状態変数と同じ成分数を有するベクトル値関数であるソース関数を発生させるソース関数発生器と、
    対象系の状態が制御開始時点から制御終了時点に亘り最適に制御されるための条件を表現する、状態変数ベクトル、操作量ベクトル、及び時間を引数とするスカラー値関数であるラグランジュ関数、及び、制御終了時点での操作量ベクトルを制御するための、制御終了時点での状態変数ベクトルを引数とするスカラー値関数である終端コスト関数と、を発生させるラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器と、
    前記ソース関数発生器、ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器から発生された関数を入力とし、対象系をラグランジュ関数と終端コスト関数で表現される制御仕様通りに制御するための操作量ベクトルを計算するための、状態変数ベクトルと時間を引数とする位相関数を計算する位相関数計算器と、
    前記位相関数計算器において計算される位相関数の偏微分係数を、状態変数ベクトルの計測値を引数として計算した値を用いて操作量を計算する操作量計算器と、を含んでなる非線形最適状態フィードバック制御装置。
  2. 前記ソース関数発生器が発生するソース関数は、現在時刻における状態変数ベクトルの時間変化率が、現在時刻における状態変数ベクトル値、操作量ベクトル値、及び現在の時点、とを引数とするベクトル値関数に等しいことを示すものであることを特徴とする請求項1記載の非線形最適状態フィードバック制御装置。
  3. 前記ラグランジュ関数及び終端コスト関数発生器が、制御開始時点から制御終了時点までのラグランジュ関数の時間積分値と、制御終了時点での状態変数ベクトル値の関数である終端コスト関数値との和が、最小もしくは最大になる条件として制御仕様を設定するものであることを特徴とする請求項1記載の非線形最適状態フィードバック制御装置。
  4. 前記位相関数計算器が、状態変数ベクトルと、状態変数ベクトルについての偏微分演算子及び時間の関数であるトータルハミルトニアン演算子を計算するトータルハミルトニアン演算子計算器、状態変数ベクトルと時間との複素数のスカラー関数である波動関数を計算する波動関数ソルバと、複素数である該波動関数を絶対値部分と位相部分とに分解する波動関数分解器と、を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の非線形最適状態フィードバック制御装置。
  5. 前記操作量計算器が、ラグランジュ関数の操作量ベクトルによる偏微分係数の、ソース関数の操作量ベクトルによる偏微分係数に対する比率として計算される、操作量ベクトルと状態変数ベクトルと時間との関数を、位相関数の状態変数ベクトルによる偏微分係数に等しいとおいて得られる操作量ベクトルに対する方程式において、状態変数ベクトルに現時刻の計測値を、時間として現在の時刻を、代入して得られる方程式を操作量ベクトルについて解くものであることを特徴とする請求項1に記載の非線形最適状態フィードバック制御装置。
  6. 前記トータルハミルトニアン演算子計算器が、状態変数ベクトルによる偏微分演算子の関数である操作量ベクトル演算子を、ソース関数の引数である操作量の代わりに代入したソース関数演算子と、同じく操作量ベクトル演算子をラグランジュ関数の引数である操作量の代わりに代入したラグランジュ関数演算子、を入力し、ラグランジュ関数演算子に負号をつけた演算子と、状態変数ベクトルによる偏微分演算子とソース関数演算子とのベクトル内積、との和である演算子であるトータルハミルトニアン演算子を出力するものであることを特徴とする請求項4に記載の非線形最適状態フィードバック制御装置。
  7. 前記波動関数ソルバが、トータルハミルトニアン演算子を状態変数ベクトルと時間とを引数とする複素数スカラー関数である波動関数に作用させて得られる複素数スカラー値関数が、波動関数の時間による偏微分に虚数単位と実数である揺らぎ定数とを乗じて得られる複素数スカラー値関数に等しいと設定することで得られる波動関数に対する線形偏微分方程式のソルバであることを特徴とする請求項4に記載の非線形最適状態フィードバック制御装置。
  8. 前記波動関数ソルバの境界条件を、制御終了時点での波動関数が、終端コスト関数に虚数単位を乗じ揺らぎ定数で除し負号を付した量の指数関数に任意の状態変数ベクトル値に対しても等しいと設定する境界条件設定部を有することを特徴とする請求項7に記載の非線形最適状態フィードバック制御装置。
  9. 前記波動関数分解器が、前記波動関数ソルバによって計算された状態変数ベクトルと時間の任意値における波動関数を入力し、波動関数とその複素共役の積の平方根であるところの絶対値である実数スカラー値関数である絶対値関数と、波動関数の位相、すなわち波動関数の実数部分に対する虚数部分の比率の逆正接関数が、それを揺らぎ定数で除した量に等しい量であるところの位相関数とを出力するものであることを特徴とする請求項7に記載の非線形最適状態フィードバック制御装置。
  10. 触媒出口NOx濃度の計測値が出口NOx濃度設定幅に入るように触媒へのNH3注入量を操作する触媒脱硝制御装置において、状態変数ベクトルが触媒出口NOx濃度と触媒吸着NH3濃度であり、操作量ベクトルがNH3注入量であり、スカラー値関数が、触媒出口NOx濃度と出口NOx濃度設定幅の偏差の絶対値を最小化するものであるように表現される関数である請求項1乃至9のいずれかに記載の非線形最適状態フィードバック制御装置を有してなることを特徴とする触媒脱硝制御装置。
  11. pH実測値が設定値に追従するように石灰石量を操作する脱硫制御装置において、状態変数ベクトルがpHであり、操作量ベクトルが石灰石流量であり、スカラー値関数がpHとその設定値の偏差の時間積分値が最小化するものであるように表現される関数である請求項1乃至9のいずれかに記載の非線形最適状態フィードバック制御装置を有してなることを特徴とする脱硫制御装置。
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