JP3681022B2 - 転がり軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受に係り、特に歯科用ハンドピースや工作機械などの高速回転用途に用いるのに好適な転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、歯科用ハンドピースでは、歯の削り作業を短時間で済ませて患者の不快感を軽減するために、先端に砥石が設けられた回転軸を可及的に高速(例えば40万rpm)で回転駆動し、砥石の周速度を高くして切れ味を良くしている。
【0003】
このような高速回転となる上記歯科用ハンドピースなどでは、一般的に、窒化けい素を主体とするセラミックス製の玉、ステンレス鋼製の内・外輪、ポリイミドやポリアミドイミドなどの合成樹脂製の冠形保持器などを組み合わせた構成の深溝型玉軸受を使用し、使用者が定期的に潤滑剤を供給するようになっている。この潤滑剤としては、人体に害のない、例えばポリαオレフィン(PAO)やISO規格VG32、VG68などの流動パラフィンなどが用いられ、ハンドピース駆動源となる圧縮空気に混入されて供給される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように、作業者が定期的に潤滑剤を供給する形態では、うっかりミスなどにより供給忘れが発生することがある。
【0005】
このような場合、保持器と、それを案内する内・外輪のいずれか一方との摺動動作が無潤滑で行われることになるため、保持器が早期段階で激しく摩耗して、摩耗粉が玉と内・外輪との間にかみ込んで、回転が停止するというロック現象を引き起こすことになる。このような事態が起こると、その後で潤滑剤を供給しても、回転させることができなくなるなど、使用不能となることが多い。したがって、軸受の交換が必要となる。
【0006】
したがって、本発明は、転がり軸受において、潤滑剤が枯渇しても、保持器と軌道輪との摺動部位の潤滑性を良好とし、長寿命を達成できるようにすることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の転がり軸受は、グリースまたはオイルを潤滑剤として用いる転がり軸受であって、少なくとも保持器の軌道案内面または軌道輪の保持器案内面に、ポリフルオロアルキル重合体またはエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、スルフォン基若しくはエステル基から選ばれる官能基付きのフルオロポリエーテル重合体と、パーフルオロポリエーテルとの混合物である含ふっ素重合体を乾燥処理した潤滑膜が形成されている。
【0008】
本発明の第2の転がり軸受は、グリースまたはオイルを潤滑剤として用いる転がり軸受であって、少なくとも保持器の軌道案内面または軌道輪の保持器案内面に、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物からなる固体状の潤滑膜が形成され、前記固体状の潤滑膜は、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が分散添加されている。
【0009】
なお、前述の固体状の潤滑膜は、分子間が結合した3次元の網状構造を有している。また、固体状の潤滑膜は、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が分散添加されている。この末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体は官能基を有していないもの、例えば官能基なしのパーフルオロポリエーテルなどの含ふっ素重合体とするのが好ましい。
【0010】
上記本発明では、潤滑剤の供給を忘れるなどして、軸受内部の潤滑剤が枯渇しても、保持器と軌道輪とが潤滑膜を介して摺接することになる。この潤滑膜は、発塵性および潤滑性に関して格段に優れていて膜切れを起こさないので、保持器と軌道輪との直接接触を防止する。
【0011】
このような潤滑剤の枯渇状態での使用時間が経過するに従い、トルク増加が起こって回転速度が低下するとともに発生音が変化することになるので、この変化によって潤滑剤の供給忘れを作業者に気付かせることが可能となる。このとき、潤滑膜によって軸受構成要素を保護しているので、焼き付きに至らずに済み、後で潤滑剤を供給したとき、通常どおりに動作させて再使用できるようになる。
【0012】
また、潤滑膜を末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物からなる固体状とする場合には、分子間が密に詰まった均質な構造であるので、潤滑作用が長期的に継続できるようになる。しかも、この固体状の潤滑膜に末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない含ふっ素重合体を流動可能な状態で分散添加しているため、この末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が膜表面から滲み出て潤滑作用に寄与する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図1および図5に示す実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1および図2は本発明の一実施例にかかり、図1は、転がり軸受の上半分の縦断面図、図2は、歯科用ハンドピースを示す断面図である。
【0015】
まず、図2において、歯科用ハンドピースの構成を簡単に説明する。歯科用ハンドピース50は、ハウジング51と、ハウジング51内に一端部が外部に突出した状態で配置される回転軸52と、回転軸52の途中部に固定されるタービン翼53と、タービン翼53の両側において回転軸52をハウジング51に回転自在に支持する転がり軸受Aとを備え、ハウジング51内に圧縮空気を供給することにより、タービン翼53および回転軸52が高速回転させられる。圧縮空気には、人体に害のない、例えばライオン(株)社製リポルーブ60などのポリαオレフィン(PAO)などが混入され、転がり軸受Aの内部をミスト状に通過して潤滑と冷却とを行う。
【0016】
転がり軸受Aは、図1に示すように、深溝型玉軸受と呼ばれるもので、内輪1と、外輪2と、球状の転動体3と、冠形の保持器4とを備えている。この転がり軸受Aにおいて、内・外輪1,2、転動体3および保持器4の転動、摺動部位には、下記する潤滑膜5が形成されている。
【0017】
内・外輪1,2は、耐食性材料により形成されている。この耐食性材料としては、例えばJIS規格SUS440Cなどのマルテンサイト系ステンレス鋼、例えばJIS規格SUS630などの析出硬化型ステンレス鋼に適当な硬化熱処理を施した金属材などが挙げられる。また、軽荷重用途では、例えばJIS規格SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼でもよい。
【0018】
転動体3は、セラミックス材により形成されている。このセラミックス材としては、焼結助剤として、イットリア(Y2O3)およびアルミナ(Al2O3)、その他、適宜、窒化アルミ(AlN)、酸化チタン(TiO2)、スピネル(MgAl2O4)を用いた窒化けい素(Si3N4)を主体とするものの他、アルミナ(Al2O3)や炭化けい素(SiC)、ジルコニア(ZrO2)、窒化アルミ(AlN)などを用いることができる。
【0019】
保持器4は、合成樹脂材料により形成されている。この合成樹脂材料としては、耐熱性を有する熱可塑性樹脂、例えば5〜10wt%のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)および10〜20wt%のグラファイトが充填されたTPI(熱可塑性ポリイミド)樹脂の他、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略称する)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などのふっ素系樹脂やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ナイロン46などのエンジニアリングプラスチックスなどが挙げられる。これらの樹脂には、適宜、ガラス繊維などの強化繊維が添加されてもよい。添加しない場合は、強度が低下するが、ポケット面で露出繊維が摩耗して軌道面にかみ込むのを回避することができる。
【0020】
潤滑膜5は、例えば官能基付きの含フッ素重合体からなり、この実施例では流動性を有する状態になっている。この官能基付きの含フッ素重合体としては、フルオロポリエーテル重合体またはポリフルオロアルキル重合体が好ましい。フルオロポリエーテル重合体は、−CXF2X−O−という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、いずれも数平均分子量が1000〜50000の重合体とするものが挙げられる。ポリフルオロアルキル重合体は、下記化学式1に示すものが挙げられる。また、前述の官能基は、金属に対して親和性の高いもの(例えばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、スルフォン基またはエステル基など)が好ましく、例えば下記化学式2,3に示すものが挙げられる。このような含フッ素重合体は、単独で用いるか、または2種以上を併用して用いてもよい。その場合は、より耐摩耗性の優れた膜が得られるように、組み合わされた基が互いに反応して重合体をより高分子量化させるように配慮するのが望ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
前述の官能基付きの含ふっ素重合体として、より詳しくは、パーフルオロポリエーテル(PFPE)あるいはその誘導体との混合物、具体的に例えばモンテカチーニ社の商品名フォンブリン(FONBLIN)Yスタンダード、フォンブリンエマルジョン(FE20、EM04など)またはフォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DEAL、FONBLIN Z DIAC、FONBLIN Z DISOC、FONBLIN Z DOL、FONBLIN Z DOLTX2000、FONBLIN Z TETRAOLなど)が好適に用いられる。これら例示したものは、いずれも濃度が濃く、金属に対する親和性がきわめて悪いので、そのままでは膜状に付着させることが困難である。そのため、下記するような方法で形成するのが好ましい。
【0025】
次に、上述した潤滑膜5の形成方法の一例を説明する。
【0026】
(a) 内・外輪1,2、転動体3および保持器4をそれぞれ組み立てて転がり軸受Aを完成状態としてから、この内・外輪1,2間で転動体3の存在する箇所において、用意した溶液をスポイドなどにより数滴、注入し、数回回転させることにより、内・外輪1,2および保持器4の転動、摺動部位と転動体3の表面とに液状膜を付着させる(付着処理)。この溶液の付着はスプレーを用いて行うこともできるし、また、溶液中に浸漬してもよい。ここで用意する溶液は、例えばフォンブリンエマルジョンFE20(フォンブリン濃度20mass%)を適当な希釈溶媒でフォンブリン濃度を0.25mass%にまで希釈したものである。なお、前述の希釈溶媒は、メタノール溶液、アルコール溶液や水などの揮発性のものとすることができる。
【0027】
(b) 液状膜を付着した転がり軸受Aの全体を40〜50度で約3分間加熱し、液状膜に含む溶媒を除去する(乾燥処理)。
【0028】
(c) この後、軸受使用環境での雰囲気温度を考慮して、例えば150〜300度で15〜30分間、加熱する(仕上げ乾燥処理)。例えば、歯科用ハンドピース50では、例えば135℃〜180℃以上の高温蒸気にて滅菌処理(オートクレーブ処理)が行われるので、この温度を考慮すればよい。これにより、転がり軸受Aの動作時や前述した滅菌処理時に溶媒や油成分などの不要な発塵がない流動性を有する潤滑膜5が得られる。
【0029】
このようにすれば、転がり軸受Aの構成要素の転動、摺動部位に潤滑膜5を好適な膜厚で形成することができる。なお、(a)、(b)は必要に応じて数回繰り返すようにしてもよく、最終的には、潤滑膜5の膜厚を例えば0.2μm以下に設定する。但し、使用潤滑油の性状、膜形成方法や生成後の膜厚などは、適宜に設定すればよい。
【0030】
以上説明した転がり軸受Aでは、発塵性および潤滑性に関して格段に優れる潤滑膜5を形成しているから、転がり軸受Aに対する潤滑剤供給を忘れるなどして、軸受内部の潤滑剤が枯渇したときでも、保持器4と内輪1または外輪2とが潤滑膜5を介して摺接することになり、それらの直接接触を防止するので、該摺接部位が早期段階ではほとんど摩耗せずに済む。しかも、このような潤滑剤の枯渇状態での使用時間が経過するに従い、トルク増加が起こって回転速度が低下するとともに発生音が変化することになるので、この変化によって潤滑剤の供給忘れを作業者に気付かせることが可能となる。このとき、潤滑膜5によって軸受構成要素を保護しているので、焼き付きに至らずに済み、後で潤滑剤を供給したとき、通常どおりに動作させて再使用できるようになる。
【0031】
なお、本発明は上記実施例のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0032】
(1) 上記実施例では、軸受形式として深溝型玉軸受を引用しているが、その他の種類の転がり軸受に本発明を適用できる。
【0033】
(2) 上記実施例では、潤滑膜5を内・外輪1,2、転動体3、保持器4のすべてに形成しているが、少なくとも内・外輪1,2だけ、あるいは保持器4だけに形成することができる。
【0034】
(3) 上記実施例では、潤滑膜5を内輪1の外周面と、外輪2の内周面と、転動体3および保持器4の表面全体とに形成しているが、内・外輪1,2の表面全体にも形成してもよい。この場合、例えば上記(a)の処理において用意する溶液中に、内・外輪1,2、転動体3、保持器4を個別に浸漬するか、あるいはそれらを組み立てた完成状態の軸受Aを浸漬すればよい。また、潤滑膜5は、保持器4の案内形式に応じて、該当する面(例えば内輪案内の場合だと内輪1の軌道を除く外周面、外輪案内の場合だと外輪2の軌道を除く内周面)にのみ形成してもよい。さらに、潤滑膜5は、保持器4の案内面(内輪案内の場合だと内周面、外輪案内の場合だと外周面)のみに形成してもよい。
【0035】
(4) 上記実施例では、転がり軸受Aとして密封装置を持たない開放形のものを例示しているが、密封装置を装着したものとしてもよい。
【0036】
(5) 上記実施例では、流動性を有する潤滑膜5を示しているが、下記するような固体状の潤滑膜5も本発明に含む。図3は、固体状の潤滑膜の構造を模式的に表した構造図、図4は、固体状の潤滑膜の硬化前の状態での性状分析結果を示すグラフ、図5は、固体状の潤滑膜の硬化後の状態での性状分析結果を示すグラフである。
【0037】
前述の固体状の潤滑膜5は、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物からなる。末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物は、−CXF2X−O−という一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、いずれも平均分子量が数百万以上で硬化反応により分子間が結合した3次元の網状構造を有している。3次元の網状構造とは、化学構造上の表現であって、膜の断面が網状になっているのではなく、分子間が網状のように連続してつながって密に詰まった均質な構造になっていることを意味している。このような化合物としては、下記化学式4に示すような末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を用いて、化学構造を変化させたものとすることができる。前述の末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体としては、パーフルオロポリエーテル(PFPE)の誘導体、具体的に例えばモンテカチーニ社の商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOCなど)が好適に用いられる。
【0038】
【化4】
【0039】
次に、上述した潤滑膜5の形成方法の一例を説明する。
【0040】
(a) 固体状の潤滑膜5を得るための溶液を用意し、この溶液を用いて転がり軸受Aの任意の必要部位に液状膜を付着させる(付着処理)。ここで用意する溶液は、末端がイソシアネートの官能基付き含ふっ素重合体〔フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOC)〕を希釈溶媒(ふっ素系溶剤SV90D)で含ふっ素重合体の濃度を1mass%にまで希釈したものである。
【0041】
(b) 液状膜を付着した対象のみあるいは転がり軸受Aの全体を40〜50℃で約1分間加熱し、液状膜に含む溶媒を除去する(乾燥処理)。この時点では、液状膜のままであり、流動性を有している。
【0042】
(c) この後、例えば100〜200℃で20時間、加熱する(硬化処理)。これにより、液状膜の化学構造が変化することにより硬化反応して固体状の潤滑膜5が得られる。ちなみに、この硬化処理では、液状膜に存在している官能基付き含ふっ素重合体の個々について、下記化学式5〜8に示すような4種の硬化反応でもって末端のイソシアネート(NCO)が消失し、各官能基付き含ふっ素重合体が互いに結合することにより3次元の網状構造となる。結合は、化学式5,6に示すような硬化反応でもって、図3(a)に模式的に示すように直線的に架橋するとともに、化学式7,8に示すような硬化反応でもって、図3(b)に模式的に示すように3次元方向で架橋する。なお、図3では、下記化学式9に示すように、上記化学式4を簡略化して模式的に表している。
【0043】
【化5】
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
このようにすれば、転がり軸受Aの必要部位に固体状の潤滑膜5を好適な膜厚で形成することができる。なお、(a)、(b)は必要に応じて数回繰り返すようにしてもよく、最終的には、潤滑膜5の膜厚を例えば0.2μm以下に適宜設定する。
【0049】
ここで、(a)で用意した溶液を濃縮乾燥しただけの状態(流動性がある状態)と、(a)で用意した溶液をステンレス鋼板などの試料に付着して硬化した状態とについて、その性状を分析したので説明する。
【0050】
前者は、FT−IR法(フーリエ変換−赤外分光、液膜法)で分析している。その結果は、図4のグラフに示すように、ふっ素系のピーク以外にNH(330cm−1)、N=C=O(2279cm−1)、NHC=O(1712cm−1,1546cm−1)、ベンゼン(1600cm−1)などのピークが見られ、ベンゼン環、NHC=O結合、イソシアネートが官能基として存在していることが確認できる。ここでは、薄膜と厚膜との場合についてそれぞれ調べているが、膜厚に関係なく分析が行えた。後者は、FT−IR法(フーリエ変換−赤外分光、高感度反射法)で分析している。その結果は、図5のグラフに示すように、ベンゼン環やNHC=O結合のピークが見られるが、イソシアネートのピークが見られない。つまり、これらの結果に基づき、上記化学式5〜8に示す硬化反応による官能基の化学構造変化が確認される。
【0051】
以上説明した固体状の潤滑膜5は、それ自体が3次元の網状構造をもって、被覆対象上に緻密に被覆されるとともに自己潤滑性を有するため、上記実施例よりもさらに一層長期にわたって優れた回転特性を発揮できるようになる。この他、固体状であるから、衝撃荷重に対し若干ながらも緩衝作用を発揮するので、耐衝撃性に優れるものとなる。
【0052】
この実施例において、上記(c)の硬化処理については、加熱に代えて、紫外線、赤外線、γ線、電子線などの電磁波(光)のエネルギーを利用することができる。また、(b)の乾燥処理は、省略してもよい。
【0053】
この固体状の潤滑膜5の場合、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物中に、フルオロポリエーテルなどの末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない含ふっ素重合体を流動可能に分散添加した構造とすることもできる。この場合、具体的に、上記形成方法の(a)の付着処理において、用意する溶液を、末端がイソシアネートの官能基付き含ふっ素重合体〔例えば商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOCなど)〕と、含ふっ素重合体として官能基なし含ふっ素重合体〔例えば商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z−60など)〕とを所定の割合で混合したものとすればよい。この場合では、(c)の硬化処理において、官能基なし含ふっ素重合体が、官能基付き含ふっ素重合体と結合しないので、これが、固体状の潤滑膜5の内部において流動可能となり、膜表面から滲み出るなどして潤滑作用を発揮することになる。
【0057】
【発明の効果】
本発明の転がり軸受では、少なくとも保持器と軌道輪とが摺接する可能性のある部位に発塵性および潤滑性に優れた潤滑膜を形成しているから、たとえ軸受内部の潤滑剤が枯渇しても、前記摺接部位の早期摩耗を防止でき、ひいては軸受の破損を未然に防止できる。
【0058】
しかも、潤滑剤の枯渇状態での使用時間が経過するに従い、トルク増加が起こって回転速度が低下し、回転速度の低下に伴い発生する音が変化することになるが、この変化によって潤滑剤の供給忘れを作業者に気付かせることが可能となる。このとき、潤滑膜によって軸受構成要素を保護しているので、ほとんど損傷せずに済むし、後で潤滑剤を供給したとき、通常どおりに動作させて再使用できるようになる。
【0059】
また、潤滑膜を末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物からなる固体状とする場合には、分子間が密に詰まった均質な構造であるので、潤滑作用が長期的に継続できるようになる。しかも、この固体状の潤滑膜に末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない含ふっ素重合体を流動可能な状態で分散添加しているため、この末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が膜表面から滲み出て潤滑作用に寄与するので、潤滑性の一層の向上に貢献できる。
【0060】
したがって、例えば歯科用ハンドピースなどの高速回転で使用される場合において、潤滑剤の供給忘れがあっても、軸受の破損を回避できて、再度の潤滑剤供給によりそのまま継続して再使用できるようになるなど、うっかりミスに対する安全対策が万全となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる転がり軸受の上半分の縦断面図
【図2】本発明の転がり軸受を用いた歯科用ハンドピースを示す断面図
【図3】固体状の潤滑膜の構造を模式的に表した構造図
【図4】固体状の潤滑膜の硬化前の状態での性状分析結果を示すグラフ
【図5】固体状の潤滑膜の硬化後の状態での性状分析結果を示すグラフ
【符号の説明】
A 転がり軸受
1 内輪
2 外輪
3 転動体
4 保持器
5 潤滑膜
Claims (4)
- グリースまたはオイルを潤滑剤として用いる転がり軸受であって、少なくとも保持器の軌道案内面または軌道輪の保持器案内面に、ポリフルオロアルキル重合体またはエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、スルフォン基若しくはエステル基から選ばれる官能基付きのフルオロポリエーテル重合体と、パーフルオロポリエーテルとの混合物である含ふっ素重合体を乾燥処理した潤滑膜が形成されている、ことを特徴とする転がり軸受。
- グリースまたはオイルを潤滑剤として用いる転がり軸受であって、少なくとも保持器の軌道案内面または軌道輪の保持器案内面に、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体を硬化処理したことで形成された含ふっ素高分子化合物からなる固体状の潤滑膜が形成され、前記固体状の潤滑膜は、末端がイソシアネート官能基付き含ふっ素重合体と結合しない流動可能な含ふっ素重合体が分散添加されている、ことを特徴とする転がり軸受。
- 前記流動可能な含ふっ素重合体が官能基を有していない、請求項2に記載の転がり軸受。
- 前記固体状の潤滑膜は、分子間が結合した3次元の網状構造を有している、請求項2または3に記載の転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25907496A JP3681022B2 (ja) | 1995-12-21 | 1996-09-30 | 転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (3)
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