JP3628434B2 - 耐食性に優れた引抜きチューブ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内面の耐食性に優れる引抜きチューブを安価に製造する方法に関し、本発明により得られるチューブは熱交換器用チューブ等の内面の耐食性が必要とされる製品に好適である。
【0002】
【従来の技術】
自動車用熱交換器の冷媒通路を構成するアルミニウム合金チューブは、例えばJIS−3003合金製チューブ本体の内面に、JIS−3003合金より電気化学的に卑なJIS−7072合金が内張りされて内面の防食が図られている。
このようなチューブの製造方法には、圧延クラッド板を管状にロール成形しその縁端部を電縫加工する方法と、円筒状アルミニウム合金ビレットの内側に犠牲材となる円筒状内張材を嵌合した複合ビレットを熱間押出と引抜きにより製造する方法がある。
しかし、前記電縫加工法には、縁端部を溶接するため薄肉化に限界があり、溶接箇所は耐食性に劣り、さらにクラッド板の製造に高価な圧延設備を要するという問題がある。また前記嵌合式複合ビレットを用いる方法は、内張材のクラッド率のばらつきが大きく、所定のクラッド率を得ようとすると歩留まりが著しく低下し、また内張材には高度の寸法精度が要求されるため加工コストが嵩むという問題がある。
また、熱間押出成形したチューブ本体(芯材)の内面にZnを蒸着し、またはめっきする方法が考えられるが、蒸着法ではチューブ内面に十分なZn量を安定して付着させる技術がなく、めっき法は内面にめっきするためチューブの長さが限られ生産性に劣り、いずれも実用性に欠ける。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この他、アルミニウム中空ビレットの内面にZnまたはZn合金を溶射し、これを熱間で押出してパイプとする方法が特公昭58−51772号公報に開示されている。
この方法は安価であり、また太径の厚肉パイプの製造には有効であるが、熱交換器用チューブに代表されるような薄肉パイプの製造には適さない。その理由は、薄肉パイプを熱間押出法で直接製造するのは、熱間押出機のパワーが不足し、また肉部の厚さを十分精度良く出せないためである。
また前記公報の第4欄第2〜3行には、薄肉パイプの必要な場合は熱間押出成形後さらに引抜法で定寸に仕上げることが記載されているが、この記載にしたがって、実際に前記熱間押出後のパイプを引抜くと、溶射層が剥離し、さらにはこの剥離が原因で引抜き時にパイプが破断する場合があり、実用化できないものである。
本発明者等は、このような状況に鑑み鋭意研究を行い、溶射層と芯材との間に変形の緩衝層を形成することにより溶射層の剥離を防止できることを知見し、またビレット(芯材)に特定の合金を用いることにより溶射層の剥離を防止できることを知見し、さらに研究を進めて本発明を完成させるに至った。
本発明の目的は、内面の耐食性に優れる引抜きチューブを安価に製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、円筒状アルミニウム合金ビレットの内面にZnまたはZn合金を溶射し、このビレットを管状に熱間押出し、次いでこの押出管を引抜加工するチューブの製造方法において、前記ZnまたはZn合金を溶射した円筒状アルミニウム合金ビレットに、前記熱間押出の終了よりも前に、350℃以上500℃以下の温度で1時間以上48時間以下の熱処理を施し、さらに肉厚が1mm以上10mm以下の引抜き途中の管材に300℃以上500℃以下の温度で30分以上24時間以下の熱処理を1回以上施すことを特徴とする耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法である。
【0007】
請求項2記載の発明は、ビレットの均質化処理の際のビレット加熱時にZnまたはZn合金を溶射することを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法である。
【0008】
請求項3記載の発明は、ZnまたはZn合金を溶射した円筒状アルミニウム合金ビレットに施す熱処理を熱間押出の際のビレットの加熱を兼ねて施すことを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法である。
請求項4記載の発明は、熱間押出の際のビレット加熱時にZnまたはZn合金を溶射することを特徴とする請求項3記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法である。
【0009】
請求項5記載の発明は、円筒状アルミニウム合金ビレットに0.05〜1.2wt%のSi、0.05〜1.2wt%のCu、0.05〜2.0wt%のFeを含有し、残部Alと不可避的不純物からなる円筒状アルミニウム合金ビレットを用い、かつ、前記円筒状アルミニウム合金ビレットの内面に溶射するZn合金としてAlを40wt%以下含有し、残部Znと不可避的不純物からなるZn-Al系合金を用いて、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする肉厚1mm以下の耐食性に優れた引抜きチューブである。
請求項6記載の発明は、円筒状アルミニウム合金ビレットに0.05〜1.2wt%のSi、0.05〜1.2wt%のCu、0.05〜2.0wt%のFeを含有し、2.0wt%以下のMn、2.0wt%以下のMg、2.0wt%以下のNi、0.3wt%以下のCr、0.3wt%以下のZr、0.3wt%以下のTi、0.3wt%以下のZnのうち1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避的不純物からなる円筒状アルミニウム合金ビレットを用い、かつ、前記円筒状アルミニウム合金ビレットの内面に溶射するZn合金としてAlを40wt%以下含有し、残部Znと不可避的不純物からなるZn-Al系合金を用いて、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする肉厚1mm以下の耐食性に優れた引抜きチューブである。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明を着想する前段階で、本発明者等は前記溶射層の剥離について種々検討し、剥離には2つのタイプがあることを見出した。
その1つは熱間押出時に生じる比較的小さな剥離で、この剥離は熱間押出パイプをそのまま使用する場合は殆ど問題にならない。特に特公昭58−51772号公報のように熱間押出パイプに熱処理を行えば、この剥離部分に周囲からZnが拡散するため全く問題にならない。
もう1つは、引抜きが進み管材(引抜管)の肉厚が薄くなると起きるもので、この剥離は溶射層(ZnまたはZn合金層)と芯材(アルミニウム合金)との間の変形挙動が大きく異なるために起きる。剥離部分は耐食性が極端に低下し、剥離が生じたまま引抜きを続けると管材が破断することがある。前記の熱間押出時に生じる小さな剥離は、この引抜工程での溶射層の剥離の起点になるものである。
熱間押出後に引抜きを行う場合、製造コストの点から押出サイズはできるだけ引抜き後の製品サイズに近づけるが、前記の熱間押出時に生じる微小な剥離は、熱間押出比を上げて押出パイプの肉厚を薄くするほど生じ易くなる。
【0011】
本発明はこのような剥離現象を踏まえて鋭意研究を進めて完成させるに至ったものである。
【0013】
請求項1記載の発明は、内面に Zn または Zn 合金を溶射した円筒状アルミニウム合金ビレットに熱処理を施し、溶射層と芯材との間に拡散層を形成し、この拡散層に緩衝的機能を持たせて、引抜きにおける溶射層と芯材間の変形挙動の急激な変化に起因する溶射層の剥離を抑制し、さらに、引抜き時に生じる溶射層 (Zn または Zn 合金層 ) の剥離を、引抜き途中に熱処理を施すことにより抑制するものである。
この発明で、前記内面に Zn または Zn 合金を溶射した円筒状アルミニウム合金ビレットに施す熱処理の温度が 350 ℃未満で時間が1時間未満では、緩衝材となる層が十分に形成されず、熱処理温度が 500 ℃を超えると Zn の蒸発及び酸化が激しくなって十分な耐食性が得られず、また 48 時間を越える処理は加熱コストがかかり経済的でない。したがって前記ビレットの熱処理条件は 350 ℃以上 500 ℃以下の温度で1時間以上 48 時間以下に限定する。生産性と耐食性の点から 380 ℃以上 480 ℃以下で 3 時間以上 24 時間以下が特に望ましい条件である。
引抜き途中の熱処理は、肉厚が 1mm 以上 10mm 以下の管材に1回以上施して行われる。ここで熱処理を行うときの管材の肉厚を 1mm 以上 10mm 以下に限定した理由は、熱処理を 1mm 未満まで行わないと溶射層が剥離することがあり、また 10mm を超える厚さで熱処理を行っても、その後の引抜きで肉厚が薄くなると拡散層の厚さもだんだん薄くなりその効果が十分に得られなくなるためである。
熱処理の回数は、剥離を確実に防止するために 2 回以上行ってもよいが、経済的には少ない方が望ましい。熱処理は 300 ℃以上かつ 30 分以上で十分な厚さの拡散層が形成される。また 500 ℃を超えると Zn の蒸発及び酸化が激しくなり耐食性が低下する。また 24 時間を超える処理は加熱コストがかかり経済的でない上に Zn がチューブの内部にまで拡散して耐食性が逆に低下することがある。
したがって引抜き途中の管材に施す熱処理条件は 300 ℃以上 500 ℃以下の温度で 30 分以上 24 時間以下に限定するが、生産性と耐食性の点から 320 ℃以上 430 ℃以下で1時間以上4時間以下が望ましい。この熱処理は引抜き途中の管材の焼鈍を兼ねて行っても良い。
請求項1の発明は、ZnまたはZn合金を溶射した円筒状アルミニウム合金ビレットに熱処理を施したのち、さらに引抜き途中の管材に熱処理を施すもので、拡散層が厚く形成され、剥離がより確実に抑制される。
【0014】
本発明において、熱処理で生じる拡散層も防食に役立つ。拡散層が形成された場合の腐食の進行は、表層のZnまたはZn合金が犠牲防食層として先に溶解し、この層がなくなった後に拡散層が犠牲防食層として溶解する。
チューブをより成形性が要求される用途に用いるときは、チューブは最終焼鈍を行いO材等としても構わない。
このようにして製造されたチューブは、内面に犠牲防食層を有するため、特にチューブ内に冷媒を通す熱交換器用チューブ等として有用である。
【0015】
円筒状アルミニウム合金ビレットは、アルミニウム合金の円柱ビレットを穴開け加工したり、押出により円筒状にしたり、最初から円筒状に鋳造することにより作製できる。ビレットの内面は機械的または化学的に処理し、溶射されるZnまたはZn合金が付着し易くしておくことが望ましい。
【0016】
円筒状アルミニウム合金ビレットの内面に溶射するZnまたはZn合金の自然電位はアルミニウム合金ビレットの自然電位より 200mV以上卑であることが望ましい。その理由は、溶射法で形成されるZnまたはZn合金層の厚さは従来のクラッド法などに較べて薄いため、電位差が十分にないと防食効果が十分に発現しないためである。特には 300mv以上卑であることが望ましい。さらに熱間押出時の成形性も考慮すると、純Znまたは Zn−Al系合金を溶射するのが望ましい。
溶射法としては、線爆溶射法が適しているが、火炎溶射法、プラズマ溶射法、ア−ク溶射法なども適用できる。
【0017】
本発明において、溶射を熱間押出工程前に行う理由は、熱間押出時にアルミニウム合金とZnまたはZn合金層を完全に拡散接合させるためである。
溶射はアルミニウム合金ビレットを加熱していない状態で行っても良い。それは、通常の溶射ではアルミニウム合金側を加熱していないとZnまたはZn合金がアルミニウム合金に完全に接合しないが、本発明の場合は溶射後に行う熱間押出で完全に接合されるためである。
【0018】
しかし、アルミニウム合金ビレットは加熱しておいた方がZnが付着し易く、溶射Znの歩留まりが高くなる。
アルミニウム合金ビレットを加熱して溶射を行う場合、溶射直後にそのまま拡散のための熱処理を行うとエネルギー的に効率が良い。逆にアルミニウム合金ビレットの均質化処理の際または熱間押出の際の加熱時等に、溶射を行うようにしてもエネルギー的に効率が良い。前記均質化処理での加熱とは均質化処理が完了してビレットを冷却する途中の状態も含める。
前述のように、熱間押出の際の加熱を利用して溶射や熱処理を行うと、通常行われている熱間押出の加熱時間である 0〜30分と比較して加熱時間は長くなるが、全体的にエネルギーの節約が図れる。
【0019】
溶射後の円筒状アルミニウム合金ビレットの熱間押出には、従来のアルミニウム合金管の熱間押出と同じ方法が適用できる。押出方法は直接押出でも間接押出でも構わない。
熱間押出された管材がチューブとして必要なサイズより大きい場合、そのサイズまで引抜きを行う。引抜きはパスの途中で中間焼鈍を入れるなど、従来と同じ方法で行えば良い。
【0020】
本発明において、円筒状ビレットには、チューブの製造に適した熱間押出と引抜加工が可能な任意のアルミニウム合金が使用できる。その理由は、ZnまたはZn合金(Znが50wt% 以上の合金)はどのようなアルミニウム合金よりも電気化学的に卑なため、どのようなアルミニウム合金に対しても防食効果を有するためである。具体的には、JIS−3003に代表される Al−Mn系合金、JIS−1100やJIS−1050に代表される純Al系合金、JIS−6063に代表されるAl−Mg−Si系合金などが挙げられる。
【0021】
請求項5及び6記載の発明は、ビレットに特定組成の合金を用いて溶射層の剥離を防止したものである。
以下に請求項5及び6記載の発明における合金の各添加元素の役割を述べる。
Siは強度上昇に寄与する。Siの量が0.05wt%未満ではその効果が十分でなく、1.2wt%を超えると合金の引抜き性が低下し、この発明のようなZnまたはZn-Al系合金を溶射した管材を引抜く場合、引抜き破断が生じ易くなる。したがって、Siは0.05wt%以上1.2wt%以下とするが、特に0.8wt%以下が良好な押出性が得られ望ましい。
【0022】
Cuはこの発明において最も重要な必須元素である。
ビレット内面にZnまたは Zn−Al系合金を溶射して押出した押出管をさらに引抜くと、溶射層(Znまたは Zn−Al系合金層)と管材(アルミニウム合金の引抜管)との間の変形挙動は大きく異なるので、引抜き工程が進み、管材の肉厚が薄くなると引抜き時に溶射層が管材から剥離してしまう。この剥離は溶射層が薄いほど生じ難くなるが、その代わり耐食性が低下する。ここでアルミニウム合金にCuを添加すると管材の変形抵抗が増し、溶射層の変形挙動に近づき剥離が生じ難くなる。さらにCuはアルミニウム合金の自然電位を高め、溶射層との電位差を増すために溶射層を薄くすることができる。Cuは固溶状態で合金中に存在し強度向上にも寄与する。
Cuの含有量は 0.05wt%未満ではその効果が十分に得られず、1.2wt%を超えると合金の成形性が低下して引抜きが難しくなる。したがってCuの含有量は 0.05wt%以上1.2wt%以下とするが、特には0.1wt%以上0.6wt%以下が望ましい。
【0023】
Feは結晶粒を微細にし強度を高める作用を有する。その含有量は 0.05wt%以下ではその効果が十分に得られず、2.0wt%を超えて添加した場合成形性が低下し、引抜き時に割れてしまう。したがってFeの含有量は0.05〜2.0wt%とする。
【0024】
2.0wt%以下のMn、2.0wt%以下のMg、2.0wt%以下のNi、0.3wt%以下のCr、0.3wt%以下のZr、0.3wt%以下のTi、0.3wt%以下のZnは強度や成形性を調整するために添加する任意添加元素である。Mn、Ni、Cr、Zr、Tiを上限を超えて添加すると成形性が低下し、引抜き時に割れてしまう。またMgおよびZnを上限を超えて添加すると耐食性が低下する。
【0025】
以上が本発明の芯材合金の成分であるが、鋳塊組織の微細化のために添加される Bや強度向上を目的として添加される V等、上記以外の元素はそれぞれ0.05wt% 以下であれば含有されていても構わない。
【0026】
請求項5及び6記載の発明では、前記組成の円筒状アルミニウム合金ビレットの内面にZnまたは40wt%以下のアルミニウムを含有し残部Znと不可避不純物からなるZn-Al系合金を溶射し、このビレットに熱間押出を行い、さらに引抜きにより肉厚1mm以下のチューブに加工する。
この発明で、溶射するZn合金をAlを40wt%以下含有するAl-Zn系合金に限定した理由は、Alが40wt%を超えると前記組成のビレットに対して電位が十分に低くならず、本発明のような薄肉のチューブを製造する場合は十分な耐食性を確保できなくなるためである。
尚、本発明において、溶射するZnまたはZn合金は、不可避不純物が各々0.05wt%以下であれば含有されていても構わない。
【0027】
熱間押出後の押出管は肉厚1mm以下のチューブとして必要なサイズまで引抜かれる。本発明では、引抜き中にZn系合金層が剥がれ難いように芯材(ビレット)の組成を特定しているため、1mm以下の肉厚に十分引抜き可能である。引抜きは、途中で中間焼鈍を入れる等、従来通り行えばよい。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
JIS−3003またはJIS−1050のアルミニウム合金の円筒状ビレット (外径400mm,内径80mm, 長さ990mm)の内面にZnまたは Zn−Al合金を溶射し、これを熱間押出と引抜きにより肉厚 0.9mmの管材に加工した。次にこの管材を中間焼鈍を入れながら引抜いて外径30mm、肉厚 0.4mmのチューブとした。熱間押出前のビレットの熱処理または/および引抜加工途中の管材の熱処理は適宜行った。前記円筒状ビレットは円柱ビレットを中ぐりし内面を平滑に切削加工して作製した。
【0029】
(比較例1)
均質化処理後、Zn溶射を行わずに熱間押出し、次いで引抜きを行った。引抜き途中で熱処理は施さなかった。
【0030】
(比較例2)
均質化処理後、Zn溶射を行ない、熱処理を施さずに熱間押出し、次いで引抜きを行った。引抜き途中で熱処理は施さなかった。
【0031】
(従来例1)
JIS−3003合金板(芯材)の片面にJIS−7072合金板(内張材)を圧延によりクラッドした厚さ 0.4mmのクラッド板をJIS−7072合金側を内側にして管状にロール成形し、この管状体の縁端部を電縫加工して外径30mmのチューブを作製した。クラッド板に占める内張材の断面積比は10%とした。
【0032】
得られたチューブを長さ50mmに切断し、これを長手方向に切り開いて板状に成形し、この板状体の外面(非Zn面)を樹脂でマスキングしてサンプルとした。
このサンプルをOY水 (Cl1−300ppm、 SO4 2−100ppm、Cu2+1ppm、Fe3+30ppm)に浸漬し、88℃での8時間保持と室温での16時間保持を繰返すサイクル試験を最長5ヵ月間実施した。試験後のサンプルについて表面性状を調べた。
表面性状の結果は、5ヵ月の試験後において、貫通孔食のないものを○、貫通孔食があるものを×とした。尚、比較例2、3のものは、引抜き中に肉厚 0.7mmで破断したため、肉厚 0.8mmのチューブについて試験した。結果を、製造条件を併記して表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1より明らかなように、本発明例品 (No.1〜8)は、いずれも5カ月間浸漬後も貫通孔食が発生しておらず、優れた耐食性を有している。
これに対して、比較例の No.9,12はZn溶射を行わなかったため、No.10,11は押出前と引抜き途中に熱処理を施さなかったため溶射層が剥離しいずれにも貫通孔食が発生した。従来品はクラッド板の製造に高価な圧延機を要しコスト高であった。
【0035】
(実施例2)
表2のNo.a〜gの組成のアルミニウム合金の円筒状ビレット (外径400mm,内径80mm, 長さ990mm)の内面に純Znまたは Zn−Al系合金を溶射し、これを熱間押出と引抜きにより外径30mm、肉厚 0.4mmのチューブとした。引抜き途中、熱処理を適宜施した。前記円筒状ビレットは円柱ビレットを中ぐりし内面を平滑に切削加工して作製した。
【0036】
(比較例4)
表2のNo.a,eの組成のアルミニウム合金の円筒状ビレットを用い、純Znまたは Zn−Al系合金の溶射を行わなかった他は、実施例1と同じ方法により外径30mm、肉厚 0.4mmのチューブを製造した。
【0037】
(比較例5)
表2のNo.hの組成のアルミニウム合金の円筒状ビレットを用いた他は、実施例1と同じ方法により外径30mm、肉厚 0.4mmのチューブを製造した。
【0038】
得られた各々のチューブについて実施例と同様にしてサイクル試験を行い、試験後のサンプルについて表面性状を調べた。表面性状の結果は、5ヵ月の試験後において、貫通孔食がなくかつ孔食が浅いものを◎、貫通孔食がなくかつ孔食がやや深いものを○、5ヵ月以内に貫通孔食が生じたものを×と表記した。
結果を、製造条件を併記して表3に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
表3より明らかなように、本発明例品 (No.14 〜21) は、いずれも5カ月間浸漬後も貫通孔食は発生しなかった。これはチューブ本体にCuが含有されていてZn系合金層の密着性が良好なためである。中でも引抜き途中に熱処理を施して拡散層を形成したもの( No.14,16,17,19,20,21) は孔食が浅く耐食性が極めて優れている。
これに対して、比較例の No.22,24 はZn溶射を行わなかったため、またNo.23 はビレットにCuが含有されていなく、又熱処理を施していないためZn系合金層が剥離して、いずれにも貫通孔食が発生した。
【0042】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明では、熱処理により溶射層と芯材との間に拡散層を形成することにより、あるいはビレット(芯材)の合金組成を特定することにより、引抜き時の溶射層の剥離を抑制したので、耐食性に優れるチューブが得られる。また高価な圧延設備や円筒状内張材を必要とせずチューブを安価に製造できる。依って工業上顕著な効果を奏する。
Claims (6)
- 円筒状アルミニウム合金ビレットの内面にZnまたはZn合金を溶射し、このビレットを管状に熱間押出し、次いでこの押出管を引抜加工するチューブの製造方法において、前記ZnまたはZn合金を溶射した円筒状アルミニウム合金ビレットに、前記熱間押出の終了よりも前に、350℃以上500℃以下の温度で1時間以上48時間以下の熱処理を施し、さらに肉厚が1mm以上10mm以下の引抜き途中の管材に、300℃以上500℃以下の温度で30分以上24時間以下の熱処理を1回以上施すことを特徴とする耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法。
- ビレットの均質化処理の際のビレット加熱時にZnまたはZn合金を溶射することを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法。
- ZnまたはZn合金を溶射した円筒状アルミニウム合金ビレットに施す熱処理を熱間押出の際のビレット加熱を兼ねて施すことを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法。
- 熱間押出の際のビレット加熱時にZnまたはZn合金を溶射することを特徴とする請求項3記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法。
- 円筒状アルミニウム合金ビレットに0.05〜1.2wt%のSi、0.05〜1.2wt%のCu、0.05〜2.0wt%のFeを含有し、残部Alと不可避的不純物からなる円筒状アルミニウム合金ビレットを用い、かつ、前記円筒状アルミニウム合金ビレットの内面に溶射するZn合金としてAlを40wt%以下含有し、残部Znと不可避的不純物からなるZn-Al系合金を用いて、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする肉厚1mm以下の耐食性に優れた引抜きチューブ。
- 円筒状アルミニウム合金ビレットに0.05〜1.2wt%のSi、0.05〜1.2wt%のCu、0.05〜2.0wt%のFeを含有し、2.0wt%以下のMn、2.0wt%以下のMg、2.0wt%以下のNi、0.3wt%以下のCr、0.3wt%以下のZr、0.3wt%以下のTi、0.3wt%以下のZnのうち1種または2種以上を含有し、残部Alと不可避的不純物からなる円筒状アルミニウム合金ビレットを用い、かつ、前記円筒状アルミニウム合金ビレットの内面に溶射するZn合金としてAlを40wt%以下含有し、残部Znと不可避的不純物からなるZn-Al系合金を用いて、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の耐食性に優れた引抜きチューブの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする肉厚1mm以下の耐食性に優れた引抜きチューブ。
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1996
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