JP3620071B2 - 自動車用アンチスキッド装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、自動車用アンチスキッド装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のアンチスキッド装置では、各車輪毎に車輪速度を検出する車輪速度センサが設けられ、同センサによる車輪速度情報から車輪速度の最も低い車輪を制御基準輪として制動圧が増減制御される。また、この種の装置の課題である4輪の荷重バランスがくずれる高μ路での急旋回に対して、近年では、車体の旋回状態に応じて制御特性を変化させるようにした装置も提案されている。
【0003】
例えば特開平1−204850号公報のアンチスキッド装置では、車体の横方向加速度を検出し、該横方向加速度が設定値以上であり且つ車速が設定値以上であったとき、車体が急旋回(Jターン)しているとみなして制御特性をノーマル特性から旋回時特性に切り換えるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のアンチスキッド装置では、急旋回時において制御特性を変更するという制御思想は示してあるものの、滑らか且つ安定性の高い制動を実現するには具体的な手法が十分に開示されておず、より現実的なアンチスキッド装置が望まれていた。
【0005】
この発明は、上記問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、急旋回時における滑らかで且つ安定性の高い制動を実現することができる自動車用アンチスキッド装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、図10に示すように、車輪M12毎に設けられた複数のブレーキ用ホイールシリンダに対して制動圧を同時制御する制動制御アクチュエータM13と、各車輪M12毎の車輪速度を検出する車輪速度検出手段M14と、前記車輪速度検出手段M14による車輪速度情報から最もロック傾向を示す車輪を基準にして制動圧を制御する制動制御手段M15と、車体M11の急旋回時にブレーキがかけられた場合に、前記車輪速度検出手段M14による車輪速度情報から後内輪がロックされているか否かを判別するとともに車体M11の前後方向の荷重移動量と横方向の荷重移動量とを算出し、前記後内輪がロック状態であり、且つ、前記車体の前後方向の荷重移動量と前記横方向の荷重移動量との和から求められる全荷重移動量が予め求められている後内輪荷重を超える場合に、後内輪の浮き上がりに伴う同輪のロック発生を検出する後内輪浮き上がり検出手段M16とを備え、前記制動制御手段M15は、前記後内輪浮き上がり検出手段M16による後内輪の浮き上がりに伴うロック発生時においては、該後内輪を除く他の車輪の車輪速度情報に基づき制動圧の制御を行うことを要旨としている。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、車体M11の横方向加速度が所定の判定レベルを超えた場合、制御の基準となる車体速度を、それまでの全車輪同一から左右独立に切り換えるように構成している。
【0015】
【作用】
請求項1に記載の発明によれば、制動制御手段M15は、車輪速度検出手段M14による車輪速度情報から最もロック傾向を示す車輪を基準にして制動圧を制御する。また、制動制御手段M15は、後内輪浮き上がり検出手段M16により車体M11の旋回時における後内輪の浮き上がりに伴うロック発生が検出されると、該後内輪を除く他の車輪の車輪速度情報に基づき制動圧の制御を行う。
【0016】
つまり、上述したように、急旋回時には後内輪が浮き上がってロックし易くなる。従って、最もロック傾向を示す車輪を基準に制動圧を制御する、いわゆるローセレクト制御の場合、ロック輪を基準とすることで以後、十分な制動圧が得られなくなる。しかし、本構成によれば、後内輪のロック発生後も所望の制動圧が得られる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、車体M11の横方向加速度が所定の判定レベルを超えた場合、制御の基準となる車体速度を、それまでの全車輪同一から左右独立に切り換える。この場合、車体の旋回状態に合った制御が実現される。
【0018】
【実施例】
(第1実施例)
以下、この発明を具体化した第1実施例について、図面に従い説明する。
【0019】
図1は、X配管(ダイアゴナル配管)の油圧2系統で構成される自動車用アンチスキッド装置の概略を示す油圧回路図である。図1のアンチスキッド装置において、ブレーキペダル1には同ペダル1の踏み込み力を倍力するブレーキブースタ2が接続され、同ブレーキブースタ2にはタンデム型のマスタシリンダ12が連結されている。ブレーキブースタ2は、エンジン28にて発生するインテークマニホールドの負圧(インテーク負圧)と大気圧との圧力差を利用し、ブレーキペダル1の踏み込みに伴い圧力差を調圧してマスタシリンダ12のピストン(図示しない)に加わる力を増大させるものである。
【0020】
詳しくは、ブレーキブースタ2には、ダイアフラム3にて区画された第1パワーシリンダ4と第2パワーシリンダ5とが形成されている。第1及び第2パワーシリンダ4,5には、負圧ポート6,7を通じてエンジン28のインテーク負圧が導入されるようになっており、その負圧レベルは電磁式2位置制御弁からなる第1の負圧制御弁8,第2の負圧制御弁9の連通・遮断動作に従い制御される。第1及び第2の負圧制御弁8,9は、ECU26によりその位置が制御され、ECU26からの入力信号がない時(コイル非励磁時)、第1の負圧制御弁8は連通位置に、第2の負圧制御弁9は遮断位置に保持されている(図示の状態)。
【0021】
また、第2パワーシリンダ5には、大気圧ポート10を通じて大気圧が導入される。このとき、大気圧は、ブレーキペダル1の踏み込みに応じて調圧バルブ(図示しない)により調圧されて第2パワーシリンダ5に導入される。そのため、第2パワーシリンダ5は第1パワーシリンダ4に対して大きな圧力差を生じる。大気圧ポート10の開閉は電磁式2位置制御弁からなる大気圧制御弁11にて制御される。大気圧制御弁11は、ECU26からの入力信号がない時(コイル非励磁時)、連通位置に保持されている(図示の状態)。
【0022】
マスタシリンダ12は第1油圧ポート13,第2油圧ポート14を有しており、そのうち第1油圧ポート13には、第1油圧配管15を経て右前(FR)輪のホイールシリンダ17と左後(RL)輪のホイールシリンダ18とが連通されている。また、第2油圧ポート14には、第2の油圧配管16を経て右後(RR)輪のホイールシリンダ19と左前(FL)輪のホイールシリンダ20とが連通されている。油圧配管15,16において左右後(RL,RR)輪側には、前輪及び後輪において油圧差を発生するためのPバルブ(プロポーショニングバルブ)21が配設されている。
【0023】
また、各車輪には、各々の車輪速度を検出する車輪速度センサ22,23,24,25が設けられており、各々のセンサ信号は電子制御装置(以下、ECUという)26に入力される。これら車輪速度センサ22〜25としては例えば電磁ピックアップ式或いは光電変換式等のセンサが用いられる。また、ブレーキペダル1にはペダル踏み込み操作の有無を検出するブレーキスイッチ27が付設されており、その検出信号はECU26に入力される。
【0024】
ECU26は、マイクロコンピュータを中心に構成されており、各車輪速度センサ22〜25からの入力信号を基に推定車体速度を算出する。そして、ECU26は、推定車体速度と車輪速度とから各車輪のロック傾向を判定すると共に、各車輪のアンチスキッド制御モードを判定する。このとき、ECU26は、最もロック傾向を示す車輪の制御モードを基準にしてアンチスキッド制御を実施する(ローセレクト制御)。
【0025】
なお、本実施例では、ブレーキブースタ2、第1,第2の負圧制御弁8,9、大気圧制御弁11及びマスタシリンダ12により制動制御アクチュエータが構成され、車輪速度センサ22〜25により車輪速度検出手段が構成されている。また、ECU26により旋回状態検出手段、第1の制動制御手段、第2の制動制御手段、制動制御手段及び後内輪浮き上がり検出手段が構成されている。
【0026】
ここで、各アンチスキッド制御モード(増圧モード・保持モード・減圧モード)におけるアンチスキッド装置の動作を簡単に説明する。
先ず、増圧モード(図1の状態)では、ECU26は、第1の負圧制御弁8が連通位置に、第2の負圧制御弁9が遮断位置に、大気圧制御弁11が連通位置に位置させる。すると、第1パワーシリンダ4にはエンジン28からのインテーク負圧が作用すると共に、第2パワーシリンダ5の大気圧ポート10には大気圧が作用する。このとき、ブレーキブースタ2は、インテーク負圧と、ブレーキペダル1の踏み込み操作に対して調圧バルブ(図示しない)にて調圧された第2パワーシリンダ5の圧力との圧力差に応じてマスタシリンダ12に加わる力を倍力する。その結果、マスタシリンダ12により発生する油圧が上昇し、ホイールシリンダ17〜20が増圧される。
【0027】
また、保持モードでは、ECU26は、第1の負圧制御弁8を遮断位置に、第2の負圧制御弁9を遮断位置に、大気圧制御弁11を遮断位置に位置させる。すると、第1,第2パワーシリンダ4,5へのインテーク負圧及び大気圧が遮断され、第1パワーシリンダ4と第2パワーシリンダ5の圧力差が保持されるため、マスタシリンダ12に発生する油圧と共にホイールシリンダ17〜20の制動圧が保持される。
【0028】
さらに、減圧モードでは、ECU26は、第1の負圧制御弁8を遮断位置に、第2の負圧制御弁9を連通位置に、大気圧制御弁11を遮断位置に位置させる。すると、第1,第2パワーシリンダ4,5が連通され、圧力差が減少するため、マスタシリンダ12の油圧が低下する。その結果、ホイールシリンダ17〜20が減圧される。
【0029】
次に、本実施例における特有の作用・効果を、図2〜図8を用いて説明する。ここで、図2はECU26により実行されるアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートであり、図3,図5,図7は図2のサブルーチンである。
【0030】
さて、図2のルーチンがスタートすると、ECU26は、先ずステップ100で車輪速度センサ22〜25の検出結果から得られた車輪速度VW を入力する。そして、ECU26は、ステップ101で車輪速度VW に基づき車輪加速度GW を算出すると共に、続くステップ102で推定車体速度VSOと推定車体加速度GSOとを算出する。また、ECU26は、ステップ103で車体の推定横方向加速度(以下、横Gという)を算出すると共に、推定車体加速度GSOと横Gとの推定合成加速度(以下、合成Gという)を算出する。
【0031】
ここで、
横G={VSO・(VO −Vi )}/B
合成G=√(GSO 2 +横G2 )
但し、VO :外輪最大車輪速度
Vi :内輪最大車輪速度
B:車体のトレッド
である。
【0032】
さらに、ECU26は、ステップ104で車体の前後方向の荷重移動量ΔWX と、横方向の荷重移動量ΔWY とを算出する。
ここで、
ΔWX =W・GX ・(H/2L)
ΔWY =W・GY ・(H/2B)
但し、W:車体重量
GX :制動減速度(=推定車体加速度GSO)
GY :横G
H:車体の重心高
L:車体のホイールベース
である。なお、これらの車輪速度による車体挙動の推定演算は、この種の複数輪を同時制御する制動制御アクチュエータにおいては制動限界まで至らない車輪が2輪以上あるため、演算精度上有利である。
【0033】
その後、ECU26は、ステップ105で横Gが第1の判定値G1 を超えているか否かを判別する。横G≦G1 の場合、ECU26はステップ107に進み、4輪同一の基準速度VSOを設定する(前記ステップ102の推定車体速度VSOに等しい)。横G>G1 の場合、ECU26はステップ106に進み、左右独立の基準速度VS1,VS2を設定する。
【0034】
次いで、ECU26は、ステップ108でブレーキスイッチ27がオンであるか否かを判別し、スイッチ=オフであればステップ100にリターンし、スイッチ=オンであればステップ200で後述の制御モード設定ルーチンを実行する。その後、ECU26は、ステップ109で上記ステップ200で設定された制御モードに基づいて各制御弁8,9,11に制御信号を出力する。
【0035】
ここで、上記ステップ200の制御モード設定ルーチンを説明する。この制御モード設定ルーチンは、車体の旋回時において、その旋回状態に応じたアンチスキッド制御を実現するためのものであり、具体的には、例えば図3,図5,図7に示すいずれかの制御プログラムが実施される。図4,図6,図8は、上記各制御モード設定ルーチンの処理動作をより具体的に示すタイミングチャートである。以下、図3,図5,図7の順にルーチンの詳細な内容について記述する。
【0036】
さて、図3に示す制御モード設定ルーチンにおいて、ECU26は、ステップ201で横Gが第2の判定値G2 (>G1 )よりも大きいか否かを判別する。横G≦G2 の場合、ECU26は、ステップ203で直線走行を想定した通常のタイミングにて減圧が開始されるよう、減圧開始の判定基準となるスリップ率のしきい値を設定する(通常減圧開始タイミング処理)。一方、横G>G2 の場合、ECU26は、ステップ202で上記通常のタイミング(ステップ203のタイミング)よりも早期に減圧が開始されるよう、スリップ率のしきい値を通常時よりも小さく設定する(減圧開始タイミング早期化処理)。
【0037】
その後、ECU26は、ステップ204で各車輪毎に制御モードを判定する。すなわち、ECU26は、スリップ率のしきい値及び車輪加速度GW (減速度)のしきい値で表されるモード判定マップを用い、各車輪毎に増圧・保持・減圧のモードのいずれかの制御モードを判定する。そして、ECU26は続くステップ205で、全4輪のうち最もロック傾向を示す車輪の制御モードを基準にしてその時の制御モードを決定し(4輪ローセレクト)、その後、本ルーチンを終了して図2のルーチンに戻る。
【0038】
図3のルーチンによる動作を図4のタイミングチャートを用いて、より具体的に説明する。図4では、車体の旋回により横Gが発生し、その横Gが時間t1で第1の判定値G1 を上回り、さらに、時間t2で第2の判定値G2 を上回っている。時間t3でブレーキペダル1が踏み込まれると、制動力が発生する。そして、時間t4で減圧が開始されると制動力が一旦低下し、その後、車輪速度の回復に従い制動力が上昇している。時間t2以降、図3のステップ201がYESとなるため、この時間t4は通常よりも早期化された減圧開始タイミングである。
【0039】
つまり、車体の急旋回時にブレーキをかける場合、後内輪が浮き上がり気味になり、その後内輪車輪速度が最も早く低下する。この場合、図に破線で示す如く、減圧開始タイミングを早期側に変更しない従来の制御では、減圧が効き出すまでに後内輪のロック傾向(後内輪車輪速度の低下)が顕著になり、そのため、以後の制動力の回復が大幅に遅れる。また、時間t5に示すように、減圧開始遅れによりオバーステアを招き易くなる。これに対して、図3の処理によれば、ステップ202にて減圧開始タイミングが早期化されて、後内輪の速度低下が小さく抑えられる。その結果、後内輪のロック傾向が素早く解消されると共に、制動力の回復も早くなり、急旋回時における滑らかで且つ安定性の高い制動を実現することができる。
【0040】
次に、図5に示す制御モード設定ルーチンでは、ECU26は、ステップ211で通常の減圧開始タイミングが得られるよう、スリップ率のしきい値を設定する。その後、ECU26は、ステップ212でアンチスキッド制御の開始前(減圧開始前)であるか否かを判別し、続くステップ213で合成Gが第3の判定値G3 (>G1 ,G2 )を超えているか否かを判別する。
【0041】
この場合、ステップ212がYES,ステップ213がNOであれば(アンチスキッド制御開始前、合成G≦G3 の場合)、ECU26はステップ215に進み、制御モードを増圧モードとした後、図2のルーチンに戻る。ステップ212、213が共にYESであれば(アンチスキッド制御開始前、合成G>G3 の場合)、ECU26はステップ214に進み、制御モードを保持モード(若しくは、緩減モード)とした後、図2のルーチンに戻る。
【0042】
また、ステップ212がNOであれば(アンチスキッド制御後の場合)、ECU26はステップ216に進む。そして、ECU26は、ステップ216で車輪速度に応じて各車輪毎に制御モードを判定し、続くステップ217で最もロック傾向を示す車輪を基準にしてその時の制御モードを決定する。このステップ216,217の処理は通常通りの4輪ローセレクト処理である。
【0043】
この図5のルーチンによる動作を図6のタイミングチャートを用いて、より具体的に説明する。なお、図6では、時間t23がアンチスキッド制御の開始タイミングを示している。
【0044】
さて、図6において、車体の旋回により合成Gが増加し、時間t21でブレーキペダル1が踏み込まれると、以降、横Gは略一様に減少するのに対し、合成Gは制動による車輪回転の乱れにより脈動しながら変化する。そして、時間t21〜時間t23の期間では、合成G>G3 となるか否かに応じて増圧モード又は保持モードによる制動制御が実施される。すなわち、例えば合成G≦G3 となる時間t21では、図5のステップ215の処理により油圧が増圧され、制動力が増加する。また、例えば合成G>G3 となる時間t22では、図5のステップ214の処理により制動力が保持される。そして、時間t23以降、図5のステップ216,217の処理により4輪ローセレクトが実施される。
【0045】
つまり、車体の急旋回時にブレーキをかける場合、後内輪車輪速度の急激な低下と合成Gの脈動を生じる。この場合、図に破線で示す如く、アンチスキッド制御開始前には常に増圧モードとなる従来の制御では、後内輪のロック傾向が顕著になることにより制動力の回復に時間を要する。これに対して、図5の処理によれば、後内輪のロック傾向を含む車体の不安定要素を合成Gの増加により判定し、その不安定要素を解消すべく、制動力が保持(若しくは緩減)される。その結果、制動力がいち早く回復し、急旋回時における滑らかで且つ安定性の高い制動を実現することができる。
【0046】
次に、図7に示す制御モード設定ルーチンでは、ECU26は、ステップ221で通常の減圧開始タイミングが得られるよう、スリップ率のしきい値を設定する。また、ECU26は、ステップ222で各車輪毎に制御モードを判定する。その後、ECU26は、ステップ223,224で後内輪の浮き上がりの有無を判別する。具体的には、ECU26は、ステップ223で後内輪がロックしたか否かを判別し、続くステップ224で車体の全荷重移動量が後内輪荷重を超えるか否かを判別する。ここで、全荷重移動量は、前後方向荷重移動量ΔWX と横方向荷重移動量ΔWY との和から求められ(=ΔWX +ΔWY )、後内輪荷重は車体毎に予め求められている。
【0047】
この場合、ステップ223,224のいずれかがNOであれば、ECU26は、後内輪の浮き上がりが生じていないとしてステップ226に進み、前記ステップ222の制御モードの判定結果を用い、4輪のうちで最もロック傾向を示す車輪を基準にしてその時の制御モードを決定する(4輪ローセレクト)。また、ステップ223,224が共にYESであれば、ECU26は、後内輪の浮き上がりが生じたとしてステップ225に進み、前記ステップ222の制御モードの判定結果を用い、後内輪を除く3輪のうちで最もロック傾向を示す車輪を基準にしてその時の制御モードを決定する(3輪ローセレクト)。
【0048】
この図7のルーチンによる動作を図8のタイミングチャートを用いて、より具体的に説明する。なお、図8では、時間t31がブレーキ開始を、時間t32が後内輪のロックを、時間t33が後内輪のロック解消を示している。
【0049】
さて、図8において、車体の旋回により車体の荷重移動量が増大し、時間t31でブレーキペダル1が踏み込まれると、横方向荷重移動量ΔWY は略一様に減少するのに対し、全荷重移動量(=ΔWX +ΔWY )は脈動しながら変化する。そして、時間t31〜t32の期間では、図7のステップ226の処理により4輪ローセレクト処理が実施される。また、後内輪がロックし、且つ全荷重移動量が後内輪荷重WR を超える時間t32〜t33の期間では、図7のステップ225の処理により後内輪(ロック輪)を除く3輪にてローセレクト処理が行われる。その後、時間t33にて後内輪のロックが解除されると、3輪ローセレクト処理から4輪ローセレクト処理に切り換えられる。
【0050】
つまり、車体の急旋回時にブレーキをかける場合、車体の荷重移動により後内輪が浮き上がり、同後内輪がロックし易くなることは既に述べた。この場合、図に破線で示す如く、後内輪が浮き上がってロックした際にも4輪ローセレクト制御を行う従来の制御では、制動力が著しく低下し、その際に制動力が殆ど得られないばかりか、以降の制動力の回復にも多大な時間を要する。これに対して、図7の処理によれば、後内輪を除く3輪にてローセレクト制御がなされるため、制動力の低下が最小限に抑えられる。この場合、後内輪のロック解消時期は若干遅れることになるが、所望の制動力が得られる。その結果、この図7の処理においても、急旋回時における滑らかで且つ安定性の高い制動を実現することができる。
【0051】
以上詳述したように、本実施例のアンチスキッド装置では、3通りの制御方法を示したがいずれの場合にも、本発明の目的を達成することができる。
(第2実施例)
上記第1実施例で述べたアンチスキッド制御は、他の構成からなるアンチスキッド装置にも具体化しても本発明の目的を達成することが可能であり、以下、アンチスキッド装置の構成を変更した第2実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。つまり、上記第1実施例では、ブレーキブースタ2の第1,第2パワーシリンダ4,5に作用する圧力を制御することで、マスタシリンダ12の油圧を制御していたが、本第2実施例では、マスタシリンダ12の下流側にて油圧制御回路を構成している。
【0052】
図9は第2実施例におけるアンチスキッド装置の構成を示している。図9において、第2油圧配管16には、電磁式2位置切換弁からなる増圧制御弁30,減圧制御弁31、リザーバ32、及び駆動モータ34により駆動される油圧ポンプ33が設けられ、これらにより油圧制御回路が構成されている。そして、この油圧制御回路の制動制御アクチュエータ(制御弁30,31、駆動モータ34)に与えられるECU26の指令により、第2油圧配管16に接続された右後(RR)輪,左前(FL)輪のホイールシリンダ19,20の制動圧が制御される。
【0053】
一方、第1油圧配管15には、右前(FR)輪,左後(RL)輪のホイールシリンダ17,18の制動圧を第2油圧配管16の油圧に応答して間接的に制御するためのモジュレータ35が配設されている。このモジュレータ35は、第1油圧配管15のホイールシリンダ側の油圧が第2油圧配管16のホイールシリンダ側の油圧と略等しくなるよう油圧を調整する。
【0054】
制御モード毎にモジュレータ35の動作を略述すれば、通常ブレーキ状態では、第2油圧配管16の油圧がモジュレータ35の第2圧力室40に導入されて、ピストン38が図の左方に移動している。このとき、弁体36と弁座37とが離れ、マスタシリンダ12からの油圧の供給を受けてホイールシリンダ17,18が増圧される。保持モードでは、ピストン38が右方へ移動し弁体36と弁座37とが当接した状態で、ピストン38がある位置で静止しているため、ホイールシリンダ17,18の制動圧が保持される。また、減圧モードでは、弁体36と弁座37とが当接した状態でピストン38がさらに右方へ移動し、第1圧力室39の容積拡大による圧力低下に伴いホイールシリンダ17,18が減圧される。さらに、増圧モードでは、弁体36と弁座37とが当接した状態でピストン38が左方へ移動し、第1圧力室39の容積縮小による圧力上昇に伴いホイールシリンダ17,18が増圧される。
【0055】
そして、上記構成のアンチスキッド装置では、上記第1実施例と同様のアンチスキッド制御が実施される(図2,図3,図5,図7の処理等)。この場合、ECU26は、増圧制御弁30,減圧制御弁31,駆動モータ34に対して制御指令を行う。
【0056】
なお、本発明は上記実施例の他に、次の様態にて具体化することができる。
(1)上記実施例では、各車輪毎に制御モードを判定しておき、その後、最もロック傾向を示す車輪を基準にして実際に用いる制御モードを決定していたが、この方法を変更してもよい。例えば、4輪の車輪速度から制御の基準となる車輪(制御基準輪)を直接選択し、その制御基準輪の車輪速度から実際の制御モードを決定するようにしてもよい。
【0057】
(2)図3のルーチンにおいて、ステップ202の減圧開始タイミングの早期化の程度を、横Gの大きさ(値)に比例させて決定するようにしてもよい。
(3)図7のルーチンでは、荷重移動量により後内輪の浮き上がりを検出していたが(ステップ224)、ブレーキ開始から後内輪ロックに至る時間を計測して、その時間が極めて短い時に浮き上がりと判定する等、他の方法に変更してもよい。
【0058】
(4)上記各実施例では、1チャンネル式のアンチスキッド装置に具体化していたが、車体の左右車輪を独立に制御する2チャンネル方式や、前輪独立−後輪同時の3チャンネル方式等、他の制御方式を持った装置に具体化してもよい。
【0059】
(5)上記実施例では、旋回状態を検出する場合に車輪速度を用いていたが、加速度センサ(Gセンサ)を設けて、車体の横方向又は前後方向に作用する加速度を直接検出するようにしてもよい。
【0061】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、急旋回時における後内輪のロック発生後も所望の制動圧を得ることができる。
【0062】
請求項2に記載の発明によれば、車体の旋回状態に合った制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例における自動車用アンチスキッド装置の構成を示す油圧回路図である。
【図2】ECUにより実行されるアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2の制御モード設定ルーチン(ステップ200)を示すフローチャートである。
【図4】図3のルーチンをより具体的に説明するためのタイミングチャートである。
【図5】図2の制御モード設定ルーチン(ステップ200)を示すフローチャートである。
【図6】図5のルーチンをより具体的に説明するためのタイミングチャートである。
【図7】図2の制御モード設定ルーチン(ステップ200)を示すフローチャートである。
【図8】図7のルーチンをより具体的に説明するためのタイミングチャートである。
【図9】第2実施例における自動車用アンチスキッド装置の構成を示す油圧回路図である。
【図10】クレームに対応するブロック図である。
【符号の説明】
2…制動制御アクチュエータとしてのブレーキブースタ、8…制動制御アクチュエータとしての第1の負圧制御弁、9…制動制御アクチュエータとしての第2の負圧制御弁、11…制動制御アクチュエータとしての大気圧制御弁、12…制動制御アクチュエータとしてのマスタシリンダ、17〜20…ホイールシリンダ、22〜25…車輪速度検出手段としての車輪速度センサ、26…旋回状態検出手段,第1の制動制御手段,第2の制動制御手段,制動制御手段,後内輪ロック検出手段としてのECU、30…制動制御アクチュエータとしての増圧制御弁、31…制動制御アクチュエータとしての減圧制御弁、34…制動制御アクチュエータとしての駆動モータ、35…制動制御アクチュエータとしてのモジュレータ。
Claims (2)
- 車輪毎に設けられた複数のブレーキ用ホイールシリンダに対して制動圧を同時制御する制動制御アクチュエータと、
各車輪毎の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、
前記車輪速度検出手段による車輪速度情報から最もロック傾向を示す車輪を基準にして制動圧を制御する制動制御手段と、
車体の急旋回時にブレーキがかけられた場合に、前記車輪速度検出手段による車輪速度情報から後内輪がロックされているか否かを判別するとともに車体の前後方向の荷重移動量と横方向の荷重移動量とを算出し、前記後内輪がロック状態であり、且つ、前記車体の前後方向の荷重移動量と前記横方向の荷重移動量との和から求められる全荷重移動量が予め求められている後内輪荷重を超える場合に、後内輪の浮き上がりに伴う同輪のロック発生を検出する後内輪浮き上がり検出手段と
を備え、
前記制動制御手段は、前記後内輪浮き上がり検出手段による後内輪の浮き上がりに伴うロック発生時においては、該後内輪を除く他の車輪の車輪速度情報に基づき制動圧の制御を行うことを特徴とする自動車用アンチスキッド装置。 - 車体の横方向加速度が所定の判定レベルを超えた場合、制御の基準となる車体速度を、それまでの全車輪同一から左右独立に切り換える請求項1に記載の自動車用アンチスキッド装置。
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