JP3617187B2 - 高強度コネクティングロッドの製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や建設機械等のエンジンの中で用いられるコネクティングロッド(以下、コンロッドという)の製法に関し、特に、通常は機械的特性(座屈強度や曲げ疲労強度など)を高めるため熱間鍛造後に実施される焼入れ・焼戻しの調質処理をせずとも、優れた機械的特性を得ることのできるコンロッドを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等の燃費低減や排ガス排出量を低減するため、車体の軽量化に対する要求は益々強くなっている。特にエンジン部品であるコンロッドは動力部品であり、その軽量化は運動慣性力の低減に直結するので、燃費や排ガス排出量の低減に大きな効果を奏することが期待される。
【0003】
コンロッドを軽量化するには、エンジンのシリンダー側端部(小端部)とクランクシャフト側端部(大端部)をつなぐIセクション部の座屈強度と曲げ疲労強度の向上が必要となる。これらの強度を高めるには、引張強さを高め、あるいは引張強さとの相関性の高い硬さを高めることが有効であるが、硬さを上げると機械加工を行なう際の上記小端部と大端部の被削性が悪くなるという問題が生じてくる。
【0004】
そこで本発明者等は、座屈強度や曲げ疲労強度と各種鋼材の材料特性との関係について種々検討を行った結果、これらの強度特性は引張強さよりもむしろ耐力との相関性が高く、耐力を上げてやれば上記の強度特性が大幅に改善されることを知った。そこで、被削性を保持したままで座屈強度や曲げ疲労強度を高めるための手段として、それら強度特性と耐力との間に高い相関関係がある点に着目し、引張強さ(硬さ)を上げずにIセクション部の耐力を高める方法、即ち、引張強さに対する耐力の比で算出される降伏比を高める方法が考えられる。
【0005】
他方、通常の機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼においては、必要な強度と靭性を確保するため熱間鍛造後に焼入れ・焼戻し処理の調質処理が行なわれてきた。しかし近年、この様な調質処理に要するエネルギーの節約と仕掛り品のコスト低減を目的として、例えばJIS G 4051に規定される機械構造用炭素鋼やJIS G 4106に規定される機械構造用マンガン鋼などに、VやNb等の析出硬化型元素を添加した非調質鋼が開発され、自動車のエンジン部品等に適用されている。
【0006】
これらの非調質鋼は、熱間鍛造の後冷却して組織をフェライト・パーライト混合組織とし、フェライト部にVやNb等の炭化物や窒化物を析出させることによって目標強度を得るものであり、この様な非調質鋼を使用すると、熱間鍛造後の焼入れ・焼戻し処理を省略することができ、更には焼入れ時に発生する熱処理歪みが減少するためその後の矯正加工が簡略化されるといった利点に加えて、焼割れが発生しにくくなって不良品の発生率も減少し、部品製造コストを大幅に低減することが可能となる。こうしたことから最近では、高い引張強度が要求される機械構造用部品に対しても適用可能な非調質鋼が開発されており(例えば特開昭63−199848号公報等)、これらはコンロッド用としても活用可能である。
【0007】
ところで上記の様な非調質鋼は、いずれもVやNb等の炭・窒化物形成元素を添加し、それら炭・窒化物の析出硬化によって引張強さや耐力等の強度特性を高めており、そのため特に高強度タイプの非調質鋼を得るには、V等の元素を多量添加しなければならない。しかし、これらの元素は高価であるため素鋼材コストが高くなり、非調質化によるコスト低減の利点が有効に生かせなくなる。
【0008】
また、調質処理を省略してコスト低減を可能にしたフェライト・パーライト組織の非調質鋼では、矯正加工によって降伏比も低下することが確認された。例えば前述したJIS G 4051に規定される中炭素鋼にVを添加した鋼を用いて製造した部品に加工率5%の矯正加工を施した場合、矯正加工前には0.7程度であった降伏比(0.01%耐力と引張強さの比)が0.5以下にまで低下する。従って、こうした傾向を生かして降伏比を高めることができれば、優れた被削性を確保しつつ高強度化を果たすことができるので、この様な要件を満足し、しかもコストアップの原因となるVやNb等の析出硬化元素を添加することなく、非調質のままで優れた降伏比と被削性を示し、座屈強度や曲げ疲労強度に優れたコンロッドを製造することのできる技術の開発が望まれる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、優れた座屈強度と曲げ疲労強度の求められる高強度コンロッドを製造することのできる方法、殊に、V等の高価な析出硬化型元素を添加することなく、非調質のままで高い耐力と降伏比を有し、被削性等の機械加工性にも優れたコンロッドを得ることのできる方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る高強度コンロッドの製法は、
C:0.2〜0.6%(以下、特記しない限りmass%を意味する)
Si:0.05〜2.5%
Mn:0.83〜2.0%
Al:0.001〜0.06%
N:0.003〜0.030%
を含有すると共に、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を熱間鍛造し、冷却後3〜20%の加工率で冷間加工した後、323〜673Kの温度域で下記(1)式の条件を満たす時間の時効処理を行なうところに要旨がある。
(log TK)+(4000/TK)−13.1 ≦ logt≦ (log TK)+(4000/TK)−8.6……(1)
[式中、TKは加熱温度(絶対温度)、tは加熱時間(hr)、log Xはlog10 Xを表わす。]
上記本発明を実施するに当たっては、後で詳述する如く、他の元素としてCr:0.2〜1.5%を含有する鋼材を使用し、あるいは更に他の元素としてS:0.12%以下(0%を含まない)、Pb:0.3%以下(0%を含まない)、Zr:0.2%以下(0%を含まない)、Ca:0.010%以下(0%を含まない)、Te:0.10%以下(0%を含まない)およびBi:0.10%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する鋼材を使用することによって、その性能を一段と高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記の様に本発明では、鋼材の成分組成を特定し、殊にVやNbの如き高価な析出硬化型元素無添加の鋼を用いて、熱間鍛造後に軽度の冷間加工を施し、且つこれまで非調質鋼では採用されたことのない静的ひずみ時効処理を適正な温度・時間条件で行なうことによって、被削性を保持したままでコンロッドの座屈特性や曲げ疲労特性を左右する重要な強度特性である耐力と降伏比を一段と高めることに成功したものである。
【0012】
以下、本発明において鋼材の成分組成を規定した理由、更には熱間鍛造後の冷間加工率や時効処理条件を定めた理由を詳細に説明していく。
まず鋼材の化学成分を定めた理由を明らかにする。
【0013】
C:0.2〜0.6%
Cは、熱間鍛造・冷却後における鍛造品の金属組織中のパーライト量を増大させて必要な強度を確保するのに重要な元素であり、しかも固溶Cは、冷間加工によって導入された転移を時効処理により固着して耐力等の向上にも寄与する作用を有しており、それらの作用を有効に発揮させるには少なくとも0.2%以上含有させなければならない。しかしC量が多くなり過ぎると、靭性が低下すると共に被削性も大幅に低下してくるので、0.6%以下に抑えなければならない。強度特性と靭性および被削性を考慮してより好ましいC量は0.3〜0.55%の範囲である。
【0014】
Si:0.05〜2.5%
Siは、鋼材溶製時の脱酸に有効に作用する他、鋼材のフェライト地に固溶して熱間鍛造・冷却後の鍛造品を強化するのに有効な元素であり、特に該鍛造品の耐力の向上に有効に作用する。こうした作用を有効に発揮させるには少なくとも0.05%以上含有させなければならないが、多過ぎると被削性に悪影響が現れてくると共に、熱間鍛造時の脱炭を促進して疲労特性に悪影響を及ぼす様になるので、2.5%を上限とする。Siのより好ましい範囲は0.1〜2.0%である。
【0015】
Mn:0.3〜2.0%
Mnは、鋼材溶製時の脱酸・脱硫元素として有効な元素であり、また鍛造品のフェライト地に固溶してフェライトを強化すると共に、パーライト焼入れ性を高めてパーライト量を増大させ、パーライト中のラメラー間隔を細かくして降伏比や疲労強度増大に寄与する。こうした効果を有効に発揮させるには、少なくとも0.3%以上含有させなければならないが、多過ぎると、熱間鍛造・冷却後の金属組織中にベイナイトが生成して耐力が低下し、被削性に悪影響を及ぼす様になるので、2.0%以下に抑えなければならない。Mnのより好ましい含有率は0.5〜1.8%の範囲である。
【0016】
Al:0.001〜0.060%
Alは、鋼材溶製時の脱酸元素として有効に作用するほか、窒化物の生成によりオーステナイト結晶粒を微細化して靭性向上に寄与する元素であり、それらの効果を有効に発揮させるには0.001%以上含有させなければならない。しかし、多過ぎるとオーステナイト結晶粒が却って粗大化して靭性に悪影響を及ぼす様になるので、0.06%以下に抑えなければならない。こうした利害得失を考慮してAlのより好ましい範囲は0.003〜0.050%である。
【0017】
N:0.003〜0.030%
Nは、鋼材のフェライト地に固溶して熱間鍛造・冷却後の鍛造品を強化するのに有効な元素であり、しかも固溶Nは、冷間加工により導入された転移を時効処理によって固着し耐力の向上に寄与する。更にAl等の窒化物形成元素と結合してオーステナイト結晶粒を微細化し、靭性の向上にも寄与する。こうした効果を有効に発揮させるには0.003%以上含有させなければならないが、多くなり過ぎると靭性や熱間加工性が劣化し、鋳造や熱間加工時に割れを発生し易くなるので、0.030%以下に抑えなければならない。こうしたNの利害得失を考慮してより好ましいN含有量の範囲は0.005〜0.020%である。
本発明で使用する鋼材における上記以外の残部成分は鉄と不可避不純物であるが、要求特性によっては下記の様な元素を含有させることも有効である。
【0018】
Cr:0.2〜1.5%
Crは、前記Mnと同様にパーライト焼入れ性を高めて降伏比および疲労強度を高める作用を有する点で有効な元素であり、こうした効果は0.2%程度以上含有させることによって有効に発揮される。しかし添加量が多くなり過ぎると、鍛造品の金属組織中にベイナイトが生成して耐力が低下してくるので、1.5%以下に抑えなければならない。
【0019】
S:0.12%以下、Pb:0.30%以下、Zr:0.20%以下、
Ca:0.010%以下、Te:0.10%以下、Bi:0.10%以下
よりなる群から選択される1種以上
これらの元素は何れも被削性向上元素であり、またZr,Ca,Te,Biは、MnSを粒状化して鍛造品の異方性を改善する作用を有しており、これらを1種以上含有させることによって、それらの効果は夫々上限値程度で飽和し、それ以上に被削性や異方性改善効果を高めることはできず、中でもSが多くなり過ぎると靭性に悪影響が現われてくるので、夫々上限値を超える添加は避けなければならない。
【0020】
本発明では、上記の様に鋼材の成分組成を規定することによって、高価なV等を含有させることなく、非調質のままでも従来材に比べて遜色のない、あるいはむしろ優れた強度特性を有するコンロッド用非調質鋼を安価に提供することを可能にするものであるが、その目的を達成するには、上記成分組成の要件に加えて、従来の非調質鋼では採用されたことのない時効処理を施すことが必要となる。そしてこの時効処理は、熱間鍛造によって所定形状に成形してから冷却し、3〜20%の加工率で冷間加工を行なってから、323〜673Kの温度範囲で前記式(1)の要件を満たす条件下に行なうことを必須とするので、以下それらの条件を定めた理由を説明する。
【0021】
冷間加工率:3〜20%
冷間加工率が3%未満では、時効効果が不十分になると共に矯正加工も不十分になって機械加工代が多くなり、更には曲がりによって疲労強度が劣化するといった問題が生じてくる。しかしながら、冷間加工率を過度に大きくしてもそれ以上に時効効果を高めることはできず、かえって鍛造品に割れが生じ易くなるので、その上限は20%以下に定めた。なおここで規定する冷間加工率とは、据え込み加工時における元の高さに対する減少率をいう。
【0022】
加熱温度:323〜673K
本発明では、熱間鍛造後冷却された鍛造品に所定加工率の冷間加工を施し、その後の加熱により、前記冷間加工で導入された転移を固着させることによって強度特性、殊に耐力向上を図るものであり、それにより高価な合金元素を添加せずとも高レベルの耐力と降伏比を与え、ひいては優れた被削性を確保しつつ疲労特性を高めるものであり、こうした特性を確実に発揮させるには、冷間加工後の加熱温度を少なくとも323K(50℃)以上に設定しなければならない。しかしながら、加熱温度が673K(400℃)を超えて過度に高くなると、過時効となって強度がかえって低下してくるので673Kを上限とする。加熱温度のより好ましい範囲は353〜573K(80〜300℃)である。
【0023】
(log TK)+(4000/TK)−13.1 ≦ logt≦ (log TK)+(4000/TK)−8.6
[式中、Tk は加熱温度(K:絶対温度)、tは加熱時間(hr)、 log Xは log 10 X表わす。]
冷間加工後に行なわれる時効処理による強化効果は、前記加熱温度のみならず加熱時間によっても変わってくる。そこで、前記適正加熱温度域で加熱処理を行なうときの好ましい加熱処理時間を明らかにすべく研究を重ねた結果、該加熱時間を絶対値として規定するのではなく、加熱温度(Tk )との関数として上記式の関係を満たす様に設定してやれば、時効処理による強化効果が極めて有効且つ確実に発揮されることをつきとめた。そして logtの値が左辺の値未満では、時効処理によってもたらされる耐力や降伏比向上効果が有効に発揮されず、一方右辺の値を超えると過時効となって強度特性が低下し、いずれの場合も本発明の目的が果たせなくなる。
【0024】
ちなみに図1は、後述する実施例を含めて時効処理の温度と時間が耐力と降伏比に及ぼす影響をグラフ化して示したものであり、 logtの値が logTK+4000/TK−13.1未満では0.01%耐力や降伏比が低下し、また logtの値が logTK+4000/TK−8.6 を超えると0.01%降伏比が低下傾向を示し、いずれの場合も本発明で期待される時効処理効果を有効に生かせなくなることが分かる。
【0025】
尚本発明では、コンロッド用非調質鋼としての引張強さや耐力等については特に規定しなかったが、熱間鍛造後冷却し冷間加工後に前述の条件で時効処理することによって得られるコンロッド用非調質鋼材は、前記成分組成の特定と冷間加工率、更には時効処理条件の設定により、V等の高価な元素を添加せずとも800N/mm2 程度以上といった高レベルの引張強さを発揮すると共に、耐力は0.01%耐力で500N/mm2 程度以上となり、卓越した耐力と降伏比を有し、優れた被削性と強度特性(疲労特性)を兼ね備えたコンロッドとなる。
【0026】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明の構成および作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0027】
実施例1
表1に示す化学組成の鋼を真空炉によって溶製した後、引張特性が重視されるコンロッドのIセクション部と同等の引張特性が得られる様に鍛造加工を行なった。具体的には、まず熱間鍛造によって1片が20mmの角棒に鍛伸した後、1250℃に加熱してから8mmの板厚に鍛造加工して空冷する。この8mm板厚材を幅14mm、長さ80mmに機械加工した後、幅方向から5%の冷間加工率で圧縮加工を施し、従来のV添加非調質鋼である比較鋼14,15および調質鋼である比較鋼25以外は、200℃(427K)で20分間(1/3時間)の時効処理を行なった後、JIS 14号Bの引張試験片を作製して引張試験に供した。
【0028】
次に、ドリル切削性が重視される大端部と同様の硬さが得られる様、下記の鍛造加工を行なった。即ちまず、熱間鍛造で直径40mmの丸棒に鍛伸し、その後1250℃に加熱してから直径25mmの丸棒に鍛造加工し冷却した後、各供試材についてドリル寿命を調べた。ドリル寿命としての評価は、材質SKH51、直径10mmのドリルを使用し、切削速度20m/min,送り速度0.15mm/rev,無潤滑の条件で、ドリルが破損するまでに切削できた穴の合計長さをドリル寿命とした。
【0029】
なお比較鋼25は、上記の工程で熱間鍛造後に870℃で30分間加熱してから油焼入れ・500℃×2時間の焼戻し処理(調質処理)を行なって調質鋼の例とした。結果を表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
表1,2において、No.1〜13は本発明の規定要件をすべて満足する実施例で、耐力、引張強さ、降伏比のいずれにおいても高く、No.14,15のV添加非調質鋼よりも優れた強度特性を示しており、ドリル寿命も良好である。また、従来の調質鋼(No.25)に比べても、同等の耐力と降伏比を示している。
【0033】
これらに対し、本発明で規定するいずれかの要件を欠く比較鋼(No.16〜24)は、下記の通り耐力、降伏比、引張強さ、ドリル寿命の1つ以上が満足されない。
No.16:鋼中のC量が不足するため、耐力および引張強さが低い。
No.17:鋼中のC量が多過ぎるため、ドリル寿命が短い。
No.18:鋼中のSi量が多過ぎるため、ドリル寿命が短い。
No.19:鋼中のMn量が不足するため、耐力、降伏比共に低い。
No.20:鋼中のMn量が多過ぎるため過冷却組織が生成し、耐力、降伏比共に低くなっている。
【0034】
No.21:鋼中のCr量が多過ぎるためベイナイトが生成し、ドリル寿命が低下している。
No.22:鋼中のN量が多過ぎるため引張強さが過度に高まり、ドリル寿命が短くなっている。
No.23:鋼中のN量が不足するため、耐力、降伏比共に低い。
No.24:Si量が下限値未満の比較例であり、耐力と降伏比が不十分である。
【0035】
実施例2
前記表1に示した鋼種1,6を選択し、夫々について、幅方向からの圧縮加工時の冷間加工率を0〜25%に変えた以外は上記実施例1と全く同様にして引張試験片を作製し、引張試験を行なった。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
表3から明らかである様に、いずれの鋼種についても、5〜15%の冷間加工率で加工を行なったものの耐力および引張強さは大幅に上昇しているのに対し、、加工率が3%未満では十分な強度上昇がみられず、また加工率が20%を超えて過度に高めても、加工率15%のものに対して顕著な強度上昇は認められず、耐力はむしろ低下傾向を示していることが分かる。
【0038】
実施例3
前記表1に示した鋼種1,6について、時効温度と時効時間のみを表4に示す様に変更した以外は前記実施例1と同様にして引張試験片を作製し、引張試験を行なった。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4からも明らかである様に、用いる鋼材の成分組成や熱間鍛造後の冷間加工率が規定要件を満たすものであっても、時効処理時の加熱温度に対して時効時間が前記式(1)の要件を外れる比較例では、0.01%耐力および降伏比が低く、満足のいく座屈強度や曲げ疲労特性を期待できないことが分かる。これらに対し本発明で規定する温度・時間の要件を満足する時効処理を施した実施例は、引張強さ、耐力、降伏比の何れにおいても高い値を示しており、冷間加工後に過不足のない時効処理を施すことにより強度特性や疲労特性等を効果的に高め得ることが理解される。
【0041】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、鋼の成分組成を特定すると共に、熱間鍛造の後冷却してから所定の加工率で冷間加工した後、所定の温度域で且つ該温度を加味した所定時間の時効処理を行なうことによって、従来の調質鋼やV等の高価な析出硬化型元素を加えた非調質鋼と同等以上の耐力と降伏比を有し疲労特性に優れると共に被削性にも優れた、高性能で安価な高強度コンロッドを提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】時効処理の温度と時間が耐力と降伏比に及ぼす影響を整理して示したグラフである。
Claims (3)
- C:0.2〜0.6%(以下、特記しない限りmass%を意味する)
Si:0.05〜2.5%
Mn:0.83〜2.0%
Al:0.001〜0.06%
N:0.003〜0.030%
を含有すると共に、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材を熱間鍛造し、冷却後3〜20%の加工率で冷間加工した後、323〜673Kの温度域で下記式の条件を満たす時間の時効処理を行なうことを特徴とする高強度コネクティングロッドの製法。
(log TK)+(4000/TK)−13.1 ≦ logt≦ (log TK)+(4000/TK)−8.6
[式中、TKは加熱温度(絶対温度)、tは加熱時間(hr)、log Xはlog10 Xを表わす。] - 鋼材が、他の元素として、Cr:0.2〜1.5%を含有するものである請求項1に記載の製法。
- 鋼材が、更に他の元素として、S:0.12%以下(0%を含まない)、Pb:0.3%以下(0%を含まない)、Zr:0.2%以下(0%を含まない)、Ca:0.010%以下(0%を含まない)、Te:0.10%以下(0%を含まない)およびBi:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである請求項1または2に記載の製法。
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