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JP3614997B2 - 乳酸菌検出用抗体及びそれを用いた乳酸菌検出方法 - Google Patents

乳酸菌検出用抗体及びそれを用いた乳酸菌検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビール中で増殖可能であり、混濁を引き起こす性質を有する有害な乳酸菌の検出に使用しうる抗体及びそれを用いる有害な乳酸菌の検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビール製造工程中に混入したビール汚染微生物のうち、ある種のものは製品ビール中で増殖可能であり、ビールを混濁させるなどの有害な作用を示し、ビールの品質を低下させる危険性があった。これらビール汚染菌の中でも、ラクトバチルス属等に属する有害な乳酸菌が最も問題になっており、これら有害な乳酸菌を迅速かつ高感度に検出する必要が指摘されていた。乳酸菌類は、大腸菌等に比べて、検査培地中での増殖速度が遅いことから、迅速、高感度かつ特異的に検出する方法が従来より種々提案されている。
【0003】
例えば、抗原抗体反応を利用してビール中の有害な乳酸菌を検出する方法は、特開平6−46881号公報に記載されている。この方法では、ラクトバチルス属第3群に属するラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・コリノイデス、ラクトバチルス・スエビカスを抗原としてモノクローナル抗体を作成し、これらモノクローナル抗体を用いてビール中のラクトバチルス属第3群に属する乳酸菌を迅速、高感度かつ特異的に検出することができるとしている。
【0004】
しかし、ビールの汚染に関与する乳酸菌であっても、製品ビール中で増殖可能であり、増殖によりビールの混濁を引き起こす性質(以下「ビール混濁能」という)を有する有害菌は、ラクトバチルス属第3群に属する乳酸菌の内の一部の菌であり、上記モノクローナル抗体を用いる方法では、ラクトバチルス属第3群に属する乳酸菌は検出できても、その中にはビール混濁能をもたない乳酸菌も多数存在し、ビール混濁能を有する乳酸菌を特異的に検出することはできなかった。
【0005】
一方、本発明者らの知見によると、後述するように、ビール混濁能を有する菌は、ラクトバチルス属第3群に属する乳酸菌ばかりではなく、その他にも存在することから、ビール混濁能を有する乳酸菌をすべて特異的に検出したい場合、上記方法では多数の抗体を併用する必要があり、十分対応することができなかった。
【0006】
また、ビール中の有害な乳酸菌を検出する別法として、特定の乳酸菌検出用プライマーを用いたPCR法を利用する方法(例えば、ASBC Journal、51,63(1993)、特開平7−289295号公報)も提案されているが、この方法も特定の菌株を検出する方法であって、ビール混濁能を有する乳酸菌を特異的に検出することができない上に、菌種毎に多数のプライマーを調製する必要があった。
【0007】
【発明が解決する課題】
ビール製造工程中に混入したビール汚染微生物のうち、製品ビール中で増殖可能であり、増殖によりビールの混濁を引き起こす、ビール混濁能を有する乳酸菌が、ビール汚染菌として実際上問題となっている。
【0008】
このようなビール混濁能を有する乳酸菌には、ラクトバチルス属に属するものとして、ラクトバチルス・ブレビス種に属する菌とラクトバチルス・リンドネリ種(正式分類名称は未報告。Back,W(1981)Monatsschrift fur Brauerei,34,267,Back,W.(1982)Brauwelt 45,1562 and 2090)があり、またペディオコッカス属に属するものとして、ペディオコッカス・ダムノサス種に属する菌が知られている。また、ラクトバチルス・ブレビス及びペディオコッカス・ダムノサスについては、その種に属するすべての菌がビール混濁能を有するわけではなく、それらの一部がビール混濁能を有するにすぎないことも知られている。
【0009】
そして、前記のモノクローナル抗体やPCR法を利用する検出方法、その他従来の乳酸菌の検出方法では、乳酸菌を分類学上の種(スピーシーズ)のレベル毎に判別することは可能であっても、製品ビールにおいて実際上問題になっているビール混濁能の有無というレベルでの判別は不可能であった。
【0010】
本発明の課題は、ビール混濁能を有する乳酸菌類を特異的に、精度よくかつ迅速・簡便に検出できる方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、製品ビールにおいて実際上問題になっているビール混濁能を有する乳酸菌のみを選択的に検出しうる抗体を見いだすべく鋭意研究し、ビールから見いだされた数多くの乳酸菌について、その乳酸菌を抗原として免疫して得られた抗体について種々検討する過程において、ビール混濁能を有するラクトバチルス・ブレビス菌の中でも、嫌気条件下でグルコース資化能をもたない菌株を抗原として免疫を行なって得られた抗体が、偶然にも上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビス菌を抗原として用いて得られる乳酸菌検出用抗体に関する。
【0013】
また、本発明は、ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビス菌、例えばラクトバチルス・ブレビスL50株(FERM BP−5683)を抗原として用いて得られる、ビール混濁能を有するラクトバチルス・ブレビス又はペディオコッカス・ダムノサスに属する乳酸菌と特異的に反応する乳酸菌検出用の抗血清又はその精製物からなる抗体に関する。
【0014】
そしてまた、本発明は、ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビス菌を抗原として用いて得られる抗体を使用することを特徴とするビール混濁能を有する乳酸菌の検出方法に関する。
【0015】
さらに、本発明は、ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビス菌、例えばラクトバチルス・ブレビスL50株(FERM BP−5683)を抗原として用いて得られる、ビール混濁能を有する乳酸菌と特異的に反応する抗血清又はその精製物からなる抗体を使用して、ビール混濁能を有するラクトバチルス・ブレビス又はペディオコッカス・ダムノサスに属する乳酸菌を検出する方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明において、「ビール混濁能」とは、前述したように、ビール中で増殖可能であり、増殖によりビールの混濁を引き起こす性質をいい、本発明におけるビール混濁能を有する菌とはビール中、特に最終製品ビール中で増殖し、混濁を生じさせる菌をいう。ここで「混濁」とは、目視により微生物に由来する濁りが認められることをいう。
【0017】
本発明において、「検出」とは、検査して見つけ出すことという通常の意味の他、「識別」及び「同定」をも意味する。
【0018】
ビール混濁能を有する乳酸菌として、前記のように、ラクトバチルス・ブレビス種に属する菌を挙げることができ、このラクトバチルス・ブレビスはビール有害菌としてもっとも有名な菌の一つではあるが、ラクトバチルス・ブレビス種に属するすべての菌がこのようなビール混濁能を有するわけではない。
【0019】
本発明において、抗原として用いる「ラクトバチルス・ブレビス菌」は、ビール混濁能を有していることが必要条件であるが、さらに、このラクトバチルス・ブレビス菌は嫌気条件下でグルコースが資化できない、すなわち嫌気条件下でグルコース資化能をもたないことも必要条件である。
【0020】
乳酸菌は通性嫌気性細菌であり、酸素の存在下でも生育しうるが、酸素の非存在下、すなわち嫌気条件下でも生育しうる。かかる嫌気条件下でグルコース資化能をもたないということは、嫌気条件下でグルコースを唯一の炭素源としてその菌を培養した場合、生育が認められないことをいう。
【0021】
これら2つの条件を合わせ有するラクトバチルス・ブレビス菌は、ビール工場などの汚染菌の中から、乳酸菌選択培地を用いて乳酸菌を生育させ、生育した乳酸菌の中からビール混濁能を有する菌株を選別し、その中から嫌気条件下でグルコース資化能がない菌株を選択することによって得ることができる。
【0022】
ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能がないラクトバチルス・ブレビス菌株を抗原として抗体を得る方法としては、よく知られている公知の方法を用いることができる。
【0023】
具体的には、上記菌株を処理することなく、あるいはアルカリ処理等の前処理(特開平4−72570号公報参照)の後、菌体を、必要に応じて適当なアジュバンドと混合し、適当な哺乳類動物(例えばウサギ)に免疫を行い、その後、必要に応じて複数回追加免疫を行って、目的とする抗体を含む抗血清が得られる。
【0024】
得られた抗血清を通常知られている吸収操作やカラムクロマトグラフィーなどの方法により精製して、より純度の高い抗体を得ることももちろん可能であるが、実用上は抗血清の状態で使用しても効果の点ではなんら問題はなく、この抗血清の状態で使用しうる簡便さは本発明の抗体の一つの特徴である。
【0025】
本発明の抗体は、また、再現性良く調製できることも特徴の一つである。すなわち、特定のラクトバチルス・ブレビス菌株を抗原として用いれば、製造ロットが変わったとしても、常に目的の効果を有する抗体が安定的に得られる。
【0026】
本発明の抗体としては、上記のような抗血清又はその精製物の他、ビール混濁能を有するラクトバチルス・ブレビスの菌体で免疫したマウスの脾臓からの抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞とを常法により細胞融合し、得られるハイブリドーマから得られる、ビール混濁能を有する乳酸菌に対して特異的に反応するモノクローナル抗体を挙げることができる。
【0027】
さらに、本発明の抗体は、ビール混濁能を有する乳酸菌のうち、免疫源として用いたラクトバチルス・ブレビス種のみならず、上記ペディオコッカス属のダムノサス種とも反応し、他方、ビール混濁能を有さないラクトバチルス・ブレビス種やペディオコッカス・ダムノサス種の菌やその他の乳酸菌とは反応しないという大きな特徴を有している。
【0028】
したがって、ビール混濁能を有する乳酸菌の別の一種である、上記のラクトバチルス・リンドネリを検出することができる抗体と組み合わせて使用すれば、前述したビール混濁能を有する3種の乳酸菌すべての検出が可能になる。そして、かかるラクトバチルス・リンドネリに対する抗体も、ラクトバチルス・リンドネリで同様に免疫すれば得られることが確認されている。
【0029】
本発明を用いたビール混濁能を有する乳酸菌の検出は、対象となるビール汚染菌に対して、本発明の抗体を反応させ、凝集反応が見られるか否かで判別するだけでよく、ビール工場等実際の現場で、迅速かつ高感度でビール混濁能を有する乳酸菌を検出する場合には、対象となる製品ビールをメンブレンフィルターで濾過して、フィルター上に存在する菌を乳酸菌選択増殖培地(例えば、m−NBB培地;Technical Quarterly of Master Brewers Association of Americas,22,61(1985))で培養した後、上記抗血清からあらかじめ精製して得られたIgG抗体とのイムノブロットを、例えば「免疫化学実験法」(A.Johnstone,R.Thorpe著 西村書店)に記載されているような常法にしたがって行えばよい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1(L50株による抗体の作成)
ビールから分離した、ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビスL50株をm−NBB培地で培養後、集菌した菌体を0.1Nの水酸化ナトリウムに懸濁し、室温で10分間処理する。この処理菌体を再度集菌し、生理食塩水にて洗浄した菌体を抗原とした。この抗原をウサギに対し静脈注射により免疫した。5日の間隔で6回追加免疫を行い、血中の抗体価が上昇し平衡に達したときに全採血を実施し抗血清を得た。このラクトバチルス・ブレビスL50株(Lactobacillus brevisL50)は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に平成8年9月30日、受託番号FERM BP−5683として寄託されている。
【0032】
この抗血清中には、ビール混濁能の有無にかかわらず、ラクトバチルス・ブレビスに属する菌株すべてに反応しうる非特異的抗体が混入している可能性がある。かかる非特異的抗体を抗血清から除去するため、ビール混濁能がないラクトバチルス・ブレビスJCM1170株(理化学研究所より入手可能)のアルカリ処理菌体を得られた抗血清中に混合し、室温で1時間撹拌して、上記非特異的抗体をJCM1170株に吸着せしめた。この吸着処理後、遠心分離により、JCM1170株の菌体から上清を分離し、ビール混濁能を有する菌に対して特異的に反応する抗血清を取得した(以下、この抗血清を「L50抗体」という。)。
【0033】
上記吸収処理によって、この抗血清のL50株への反応力価の低下は認められなかった。また、L50株を抗原として4羽のウサギに対して免疫を行い、そのすべてから同等の抗体が得られることを確認し、本発明の抗体が再現性よく調製しうることがわかった。
【0034】
実施例2(L53株による抗体の作成)
L50株と同様に、ビールから分離した、ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビスL53株を使用する以外は、実施例1と同様に抗血清を取得し、ビール混濁能を有する菌に対して特異的に反応する抗血清を取得した(以下、この抗血清を「L53抗体」という。)。また、L53株を抗原として4羽のウサギに対して免疫を行い、そのすべてから同等の抗体が得られることを確認し、本発明の抗体が再現性よく調製しうることがわかった。
【0035】
比較例1(ビール混濁能をもたない菌株による抗体の作成)
ビール混濁能をもたないラクトバチルス・ブレビスとして、上記JCM1170株を抗原として、実施例1と同様な免疫操作で全採血を実施し抗血清を取得した(以下、この抗血清を「JCM1170抗体」という。)。得られた抗血清は、ビール混濁能の有無にかかわらず、ラクトバチルス・ブレビスに属するすべての菌株に反応し、ビール混濁能のない菌による前記のような吸収処理を実施することはできなかった。
【0036】
比較例2(嫌気条件下でグルコース資化能を有する菌株による抗体の作成)
ビール混濁能を有するが、嫌気条件下でグルコース資化能をも有するラクトバチルス・ブレビスL63株を使用する以外は、実施例1と同様に抗血清を取得した(以下、この抗血清を「L63抗体」という。)。得られた抗血清はL50抗体に比べて、混濁能を有する乳酸菌の識別力が劣っていた。また、このL63株菌を抗原として複数のウサギに免疫し、得られた抗血清について調べたところ、それぞれの個体によって抗血清の性能にバラツキがあり、L63株を用いた場合は再現性が得られないことが判明した。
【0037】
実施例3(本発明の抗体の特異的反応性)
ビール工場から分離されるラクトバチルス・ブレビスとペディオコッカス・ダムノサスとには、ビール混濁能を有する株とビール混濁能をもたない株が混在している。そこで、ビール工場から分離された、ラクトバチルス・ブレビスに属するビール混濁能を有する34株とビール混濁能をもたない20株を、またペディオコッカス・ダムノサスに属するビール混濁能を有する20株とビール混濁能をもたない20株のそれぞれを供試菌とし、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で得られた抗体の、これら供試菌に対する特異性を凝集反応により確かめた。
【0038】
凝集反応は次のようにして実施した。回転凝集板のウェルに1024倍又は64倍に希釈した抗血清を100μlずつ入れ、そこに約0.2g/mlの濃度となるように生理食塩水で懸濁されたアルカリ処理済の菌体を40μlずつ添加した。凝集板をローテーターの上でゆるやかに7分間回転させ、菌体の凝集反応が見られるか否かを確認した。
【0039】
上記4種類の抗体と上記ビール混濁能を有する供試菌及びビール混濁能をもたない供試菌との凝集反応の結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003614997
【0041】
表1中、分母の数値は供試菌株数を表し、分子の数値は凝集反応陽性数を表している。表1から明らかなように、L50抗体は、1024倍の希釈倍率の抗体でラクトバチルス・ブレビスを完全に識別し、他方、ビール混濁能をもたないラクトバチルス・ブレビスをも完全に識別した。また、L53抗体は、1024倍の希釈倍率の抗体で、ビール混濁能を有するラクトバチルス・ブレビスを97%という極めて高い確率で識別し、他方、ビール混濁能をもたないラクトバチルス・ブレビスの誤認率は5%という極めて低いものであった。
【0042】
また、これらL50抗体とL53抗体は、64倍の希釈倍率の抗体で、ビール混濁能を有するペディオコッカス・ダムノサスを完全に識別し、他方、ビール混濁能をもたないペディオコッカス・ダムノサスをも完全に識別した。
【0043】
このような高い識別能力を有する、L50抗体とL53抗体とは、ビール工場の現場におけるビール混濁能を有する乳酸菌の検出において、充分実用に供しうるものである。
【0044】
これに対し、比較例1のJCM1170抗体は、1024倍の希釈倍率の抗体で、ビール混濁能を有するラクトバチルス・ブレビスとビール混濁能をもたないラクトバチルス・ブレビスとを全く識別できなかった。
【0045】
また、L63抗体は、1024倍の希釈倍率の抗体で、ビール混濁能を有するラクトバチルス・ブレビスを76%の確率で識別し、他方、ビール混濁能をもたないラクトバチルス・ブレビスの誤認率は15%であり、この程度の識別能力の抗体は実用に供することができるものとはいえない。
【0046】
実施例4(本発明の抗体の交差反応性)
上記L50抗体とL53抗体の2つの抗体について、ラクトバチルス・ブレビス及びペディオコッカス・ダムノサス以外の、ビール混濁能をもたない他の乳酸菌群との交差反応性についても調べた。抗体の希釈倍率については、ラクトバチルス属に対しては1024倍、それ以外に対しては64倍で行った。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
Figure 0003614997
【0048】
表2の「反応性」の項中、凝集反応が認められたものを「+」、認められなかったものを「−」でそれぞれ示す。表2からもわかるように、これらL50抗体とL53抗体は、ビール混濁能を有するラクトバチルス・ブレビスL50株とペディオコッカス・ダムノサスB20株とのみ反応し、他のビール混濁能をもたない、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属、ラクトコッカス属及びロイコノストック属に属する乳酸菌とは反応しない。
【0049】
実施例5(標識抗体を使用したビール混濁乳酸菌の特異検出法)
L50株を抗原として得られた抗血清から、例えば「免疫化学実験法」(A.Johnstone,R.Thorpe著 西村書店)に記載されているような常法にしたがってイムノグロブリンG(IgG)を精製し、西洋ワサビペルオキシダーゼによって標識した。
【0050】
一方、各種ラクトバチルス・ブレビス及びペディオコッカス・ダムノサスのそれぞれをビール中に懸濁し、ポリカーボネート製メンブレンフィルター(47mm径、ポアサイズ、0.6μm、ニュークリポア社製)上に、10個程度のコロニーが出現するように濾過し、m−NBB培地のプレート上で培養を行った。マイクロコロニーが出現した段階でフィルターを剥がし、0.1N水酸化ナトリウムで10分間処理した後、生理食塩水で洗浄した。このフィルターを免疫実験用ブロッキング剤「ブロックエース」(雪印乳業株式会社製)の原液1mlで30分間処理した。
【0051】
このブロッキング処理済みのフィルターを、上記酵素標識されたIgGの1000倍希釈液(抗体濃度としては、約4μg/ml)1mlで30分間抗原抗体反応を行った。IgGの希釈には、生理食塩水で10倍希釈したブロックエースを用いた。
【0052】
この抗原抗体反応後のフィルターを、Tween20の0.2%含有の10倍希釈ブロックエースで洗浄後乾燥し、次いで、0.1%ジアミノベンジジン(DAB、pH7.2、Trisバッファーで作製)と0.02%Hとの1:1混合液1mlと反応させた。その結果、ビール混濁能を有する株のみ着色が認められた。
【0053】
【発明の効果】
本発明によると、製品ビール中で増殖し、ビールの混濁を引き起こし、ビールの品質を低下させる、ビール汚染菌の中で問題となっているビール混濁能を有する乳酸菌を、迅速・簡便かつ高精度で検出することができる。

Claims (10)

  1. ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビス菌を抗原として用いて得られる乳酸菌検出用抗体。
  2. 抗体が、抗血清又はその精製物である請求項1記載の乳酸菌検出用抗体。
  3. 抗体が、ビール混濁能を有する乳酸菌と特異的に反応するものである請求項1又は2記載の乳酸菌検出用抗体。
  4. ビール混濁能を有する乳酸菌が、ラクトバチルス・ブレビス又はペディオコッカス・ダムノサスに属する乳酸菌である請求項3記載の乳酸菌検出用抗体。
  5. ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビス菌が、ラクトバチルス・ブレビスL50株(FERM BP−5683)である請求項1〜4のいずれか記載の乳酸菌検出用抗体。
  6. ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビス菌を抗原として用いて得られる抗体を使用することを特徴とするビール混濁能を有する乳酸菌の検出方法。
  7. 抗体が、抗血清又はその精製物である請求項6記載の乳酸菌の検出方法。
  8. 抗体が、ビール混濁能を有する乳酸菌と特異的に反応するものである請求項6又は7記載の乳酸菌の検出方法。
  9. ビール混濁能を有する乳酸菌が、ラクトバチルス・ブレビス又はペディオコッカス・ダムノサスに属する乳酸菌である請求項8記載の乳酸菌の検出方法。
  10. ビール混濁能を有し、かつ嫌気条件下でグルコース資化能をもたないラクトバチルス・ブレビス菌が、ラクトバチルス・ブレビスL50株(FERM BP−5683)である請求項6〜9のいずれか記載の乳酸菌の検出方法。
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