JP3603482B2 - 溶接用給電チップ装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接用給電チップ装置に係り、特に、自動化もしくは半自動化されたアーク溶接に使用される溶接ワイヤに対する給電および繰り出し用の溶接用給電チップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガスシールドアーク溶接にあっては、従来より、タングステン電極を装備した非溶極式のティグ(TIG)溶接と、溶接ワイヤを溶かしながらアーク溶接する溶極式のマグ(MAG)溶接,同じく溶極式のミグ(MIG)溶接が知られている。
【0003】
この内、溶極式のミグ溶接とマグ溶接は、使用するシールドガスによって区別される溶接法であり、両者間には本質的な相違はない。このため、この種の溶極式アーク溶接は、従来よりミグ・マグ溶接法と呼ばれている。
【0004】
図27にミグ・マグ溶接法の一例を示す。この図27におけるミグ・マグ溶接法では、まず、電極として機能する溶接ワイヤ101が、モータ102によって駆動される送給ローラ103によって給電チップ(溶接用給電チップ装置)104内を通して母材105に向けて連続的に送られる。そして、溶接ワイヤ101が、給電チップ104内を通過する際に溶接機106からの電流が当該溶接ワイヤ101に通電され、溶接ワイヤ101の先端部101Aと母材105との間にアークAc が発生する。ここで、記号Ga はシールド用ガスの流れを示す。
【0005】
そして、このアークAc が熱源となって溶接ワイヤ101の先端部101Aと母材105とを溶融させ、溶けたワイヤ先端が溶滴となって母材105に移行して溶融池105Aが形成される。この溶融池105Aが冷却されて溶接金属105Bとなり、継手が完成する。
更に、給電チップ104の外側周囲を取り囲んで溶接トーチ(シールドノズル部)107が装備され、ここからシールド用のガスGa が溶接箇所に向けて噴射され、これによって、アークAc と溶融池105Aとが周囲の空気に触れないように遮蔽されるようになっている。
【0006】
一方、上記従来例にあっては、給電チップ104における溶接ワイヤ101の繰り出しに際して、同時に高密度電流を効率良く溶接ワイヤ101に印加しなければならない。この場合、先端部からあまり離れた位置に溶接ワイヤ101への通電箇所を設定すると、先端部以外で溶接ワイヤ101が発熱して溶ける恐れがある。このため、かかる発熱等を回避しつつ高密度電流を効率良く且つ確実に溶接ワイヤ101に印加するため、多くの場合、溶接箇所に近い給電チップ104部分で高密度電流を溶接ワイヤ101に印加するように工夫されている。
【0007】
ここで、上記給電チップ(溶接用給電チップ装置)104部分の従来例を更に詳述する。
【0008】
〔給電チップの従来例1〕
図28(A)(B)に示す給電チップ111は、中心軸上に溶接ワイヤ挿通孔111aを備えた円筒状に形成され、図28(A)(B)に示すように上端部に取り付け用のねじ部111Aが設けられ、下端部周囲にはテーパ111Bが付された形状となっている。この場合、長さLは40〜45〔mm〕に設定され、直径DT は約10〔mm〕に設定されている。また、中央部の溶接ワイヤ挿通孔111aの直径は、挿通される溶接ワイヤ101の直径をD0 とすると、D0 +α(α=0.2〜0.4〔mm〕)となっている。
【0009】
そして、実際の使用に際しては、図29に示すように筒状保持部材112に保持されて溶接トーチ107内に装備され、又溶接ワイヤ101が溶接ワイヤ挿通孔111aに挿通され、しかる後、図27の状態に設定されるようになっている。この図29において、符号101Pは溶接ワイヤ101が湾曲され溶接ワイヤ挿通孔111a内の内壁面に当接して形成される給電ポイントを示す。これにより、母材(図示略)との間でアークAc が発生し前述したようにアーク溶接が行われる。
【0010】
一方、この図28の従来例1にあっては、給電ポイントが一定せず、このため、給電通路が断続的となるという事態が生じていた。
【0011】
〔給電チップの従来例2〕
図30にこれを示す。この図30に示す従来例(給電チップ121)は、前述した図28に於ける不都合を改善するためのもので、特開昭64ー18582号公報および実開昭62ー174785号公報に開示されているように、板ばね121A及びネジ121Bを用いて、溶接ワイヤ101を溶接ワイヤ挿通孔121aの内壁に押し付けるという手法を採っている。符号121bはワイヤ押圧部材を示す。
【0012】
このため、この図30における従来例にあっては、ワイヤ押圧部材121bの押圧作用によって給電ポイント101Pを確実に形成し、これによって安定した給電を継続し得るようになっている。
【0013】
〔給電チップの従来例3〕
図31(A)(B)にこれを示す。この図31(A)(B)に示す従来例(給電チップ131)は、特開平6ー304761号公報に開示されているように、外観は前述した図28の場合と同一であるが、その先端部に図31(B)に示すような断面三角形状の溶接ワイヤ挿通孔132aを備えた先端部材132を装備した点に特徴を備えている。その他の構成は前述した図28の場合と同一となっている。
【0014】
また、先端部材132の溶接ワイヤ挿通孔132aの断面形状としては、特開平6ー304761号公報では、更に上記図31(A)(B)における先端部材132の変形例として、図32(A)〜(D)に示す先端部材132A,132B,132C,132Dを提案している。この先端部材132A〜132Dは、それぞれ断面が多角形もしくは楕円形等の溶接ワイヤ挿通孔132Aa,132Ba,132Ca,132Daを備えている。そして、各溶接ワイヤ挿通孔132Aa,132Ba,132Ca,132Daの大きさは、内接円を想定した場合に当該内接円の直径を溶接ワイヤ101の直径寸法に対して0.05〜0.20〔mm〕だけ加算した大きさに設定されている。
【0015】
このため、この従来例3(図31〜図32)では、溶接ワイヤ101のガタ(中心線からのずれ)を小さくすると共に、断面空間を大きく設定し得るので、切り粉や切り屑等の異物に対しては断面内のコーナ部分を利用してこれらを有効に落下排出させることができ、また、溶接ワイヤ101を溶接ワイヤ挿通孔132a(又は132Aa〜132Da)内の内壁面で二箇所以上で接触させることができ(クサビ状の溝領域に入り込むため)、このため給電性が向上するという利点がある。
【0016】
〔給電チップの従来例4〕
図33〜35にこれを示す。この図33〜図35に示す従来例(給電チップ141)では、特開昭63ー90368号公報に開示されているように、外観は前述した図28の場合と同一で、その溶接ワイヤ挿通孔141aの周囲四箇所に当該溶接ワイヤ挿通孔141aに連なるシールドガス用のガス供給溝141bが設けられ、この溶接ワイヤ挿通孔141aおよびガス供給溝141b内にシールド用のガスを流通させるようにした点に特徴を備えている。
【0017】
更に、この図33〜図35に示す従来例では、コイルばね141Aおよび押圧ピン141Bによって溶接ワイヤ101を溶接ワイヤ挿通孔141a内の側壁に押しやって当該溶接ワイヤ101を偏心させ、これによって、給電チップ141と溶接ワイヤ101との当接状態を確実に設定しようとするものである。
このため、この図33〜図35における従来例にあっては、溶接トーチ(シールドノズル部)の全体的な小型化が可能となっており、また通常のノズル及び通常の給電チップを用いたものよりシールド効果を高めることができるという利点がある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来例1〜従来例4にあっては、以下に示す不都合が生じていた。
【0019】
即ち、図28〜図29に示す従来例1にあっては、給電チップ111の溶接ワイヤ挿通孔111aが、溶接ワイヤ101の直径より0.2〜0.4〔mm〕程度大きく設定されていることから、連続溶接によってワイヤ先端にズレ(中心位置から偏心)を生じ,同時に送給時の振動によって溶接箇所からはずれ易く、このため、ビードが蛇行するという不都合があった。
【0020】
更に、例えば真っ直ぐの溶接ワイヤ101を使用すると、溶接ワイヤ挿通孔111aが大きいため給電ポイントが得にくくなり、通電が安定せず、このため不安定なアークを生じ、溶接欠陥(品質不良)を起こし易い。
【0021】
また、図30に示す従来例2にあっては、図28における不都合が改善されアーク溶接を安定した状態で行う事が可能であるが、一方では、加工費が高騰し、更に、溶接ワイヤ101に付された押し出し力に抗して板ばね121Aにより押圧するため、経時的に、ワイヤ押圧部材121bによる噛み込みが発生し、溶接ワイヤ101を円滑に押し出すことができないという不都合が生じていた。
【0022】
更に又、ワイヤ押圧部材121bに対する噛み込みによって切り粉や切り屑等の異物が発生し、それが又かみ込みとなり、これが溶接ワイヤ挿通孔121a内に連続的に蓄積して溶接ワイヤ101の押し出し動作がかかる点においても阻害され、同時に摩擦の増加等も重なって溶接ワイヤ101が溶接ワイヤ挿通孔121aの内壁に溶着し易い。このため、溶接ワイヤ101の繰り出しの円滑化が阻害され、時には溶接ワイヤ101が不足して溶接箇所の品質低下をきたすという不都合が生じていた。
【0023】
図31〜図32に示す従来例3にあっては、給電チップ131を形成する銅もしくは銅合金から成る棒状部材の中心軸部分又は先端部材132に、断面三角形状もしくは四角形状等の溶接ワイヤ挿通孔131a,132a,132Aa〜 132Daを形成する構成であることから、生産コストが著しく増大するという不都合が常に存在していた。
【0024】
即ち、図28に示すように通常の丸穴の溶接ワイヤ挿通孔111aを備えた給電チップにあっては、ドリル加工ができるが、図31〜図32に示す断面形状の溶接ワイヤ挿通孔131a,132a,132Aa〜132Daにあっては、放電加工,超音波加工,ワイヤカット,スエージング等の加工となるため、多くの設備投資を必要とし、加工時間も長くなり、更に放電加工および超音波加工では電極等が必要となり、ワイヤカット,スエージング等の加工では消耗品が高価であり、従ってランニングコストも多大となり、生産性が悪く、単価も例えば丸穴の場合の10倍程度となるという不都合が生じていた。
【0025】
更に又、図33〜図35に示す従来例4にあっては、前述した従来例2(図30)の場合と同様に、溶接ワイヤ101を溶接ワイヤ挿通孔141a内の凸側壁に押しやって強制的に偏心させるようにしたことから、従来例2の場合と同様に切り粉や切り屑等が発生し易く、またワイヤと押圧ピン141B間に詰まり易く、且つ加工コストが高騰し,生産性が悪い等の不都合が常に存在していた。
【0026】
【発明の目的】
本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、とくに生産性が良好で、溶接ワイヤに対する給電を確実に成し得ると共に挿通動作の円滑化を図り、これによってアーク溶接の性能向上を図った溶接用給電チップ装置を提供することを、その目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、給電チップ本体と給電部とを備え、給電チップ本体は、中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備えた導電性部材からなる。又給電部は、少なくとも3個の導電性部材からなる球状部材を備え、且つ当該球状部材を、給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側にて同一平面上で同一円周上に配設固定されて成る。
そして、この各球状部材によって囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成する、という構成を採っている。
【0028】
このため、この請求項1記載の発明では、例えば図1乃至図4に示すように、給電チップ本体1のワイヤ案内穴1Cに溶接ワイヤ101を挿通し、その送出端では少なくとも三個の球状部材2に囲まれて形成される挿通孔3から溶接ワイヤ101をアーク溶接に適した所定長さに突出させ、しかるのち、所定の溶接動作に移行する。
【0029】
この場合、溶接ワイヤ101は、アーク溶接の進行とともに溶融消費されるため、その所定量が順次繰り出される。同時に溶接ワイヤ101は先端部がアークの発生位置の変化に応じて僅かに偏心するが、この場合、溶接ワイヤ101は挿通孔3の有する少なくとも三個の球状部材2相互間に形成された楔状の空間領域に挟み込まれるようにして当接する。このため、溶接ワイヤ101は確実に少なくとも二個の球状部材2に当接し通電状態が維持され、その送り出しも円滑に行われる。
【0030】
更に、継続使用の結果、溶接ワイヤに付着して切り粉等が給電チップ内に侵入しても、或いは溶接ワイヤ101と給電チップ本体1のワイヤ案内孔1Cの内面との接触により又は溶接ワイヤ101と球状部材2との接触によって切り粉等が発生しても、ワイヤ挿通孔3の断面形状が星型多角形状(但し球状部材2が三個の場合は図3(A)のように星型三角形状)であることから、楔形のコーナ部から当該切り粉等が自然落下する。このため、切り粉や切り屑によって挿通孔2が塞がることがなく、かかる点においても溶接ワイヤ101の挿通動作を更に円滑に成し得るという利点を備えている。
【0031】
請求項2記載の発明では、まず、給電チップ本体と給電部とを備えている。給電チップ本体は、中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備えた導電性部材から成る。又給電部は、少なくとも三個の球状部材を備え、且つ当該球状部材を、前述した給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側にて同一平面上で同一円周上に配設固定されて成る。
そして、この各球状部材によって囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成し、同時に、隣接する球状部材の少なくとも一方を導電性部材で形成する、という構成を採っている。
【0032】
このため、この請求項2記載の発明では、隣接する球状部材の少なくとも一方を導電性部材で形成したので、溶接ワイヤ101は当該導電性部材からなる球状部材に必ず接触することとなり、かかる点において前述した請求項1記載の発明とほぼ同等に機能する。また、導電性部材からなる球状部材以外の球状部材を耐磨耗性材料又は耐熱性材料で形成することによって給電部の耐久性の向上を図り得る。
【0033】
請求項3記載の発明では、上記請求項1又は2記載の発明において、前述した球状部材を、給電チップ本体にネジで固定する、という構成を採っている。
【0034】
このため、この請求項3記載の発明では、前述した請求項1又は2記載の発明と同等に機能するほか、各球状部材を単にねじで固定するようにしたので、給電チップ本体の構造を更に単純化すると共に、適当なスペーサを介在させる等によって各球状部材の固定位置をづらすこともでき、かかる点において溶接ワイヤ挿通孔の大きさを調整し変更することも可能となる。
【0035】
請求項4記載の発明では、上記請求項1又は2記載の発明において、球状部材は、給電チップ本体のワイヤ送出側に設けた環状突設部により形成される凹部に収納すると共に、ワイヤ送出口を有する環状蓋体で固定する、という構成を採っている。
【0036】
このため、この請求項4記載の発明では、前述した請求項1又は2記載の発明と同等に機能するほか、組み立て及び保守が容易となる。
【0037】
ここで、請求項1乃至請求項4の記載において、給電チップ本体又は環状蓋体に形成される溶接ワイヤ案内孔の直径は、前述した球状部材のより設定されるワイヤ挿通孔の内接円の直径よりも大きく形成する。
【0038】
請求項5記載の発明では、給電チップ本体と、球状部材で形成される給電部とから成る。給電チップ本体は、導電性部材から成り、筒状中空部を有すると共に溶接ワイヤ導入側の中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備え、且つそのワイヤ送出側にワイヤ送出口を備えている。
又給電部は、複数段の球状部材の層からなる。この給電部の各段の層は、導電性部材から成る少なくとも三個の同一直径の球状部材からなる。この各球状部材を、保持体として機能する筒状中空部の内壁に当接した状態で同一平面上で且つ同一円周上に配設固定する。そして、上記各球状部材のより囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成する、という構成を採っている。
【0039】
このため、この請求項5記載の発明では、前述した請求項1記載の発明と同等に機能するほか、溶接ワイヤ101の挿通や切り屑等の排出が更に容易となり、また、溶接ワイヤ101が蛇行してもその複数箇所で球状部材に接触することから当該溶接ワイヤ101に対する通電状態をより有効に維持することが可能となる。
【0040】
請求項6記載の発明では、給電チップ本体と、球状部材で形成される給電部とから成る。給電チップ本体は、導電性部材から成り、筒状中空部を有すると共に溶接ワイヤ導入側の中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備え、且つそのワイヤ送出側にワイヤ送出口を備えて成る。また、給電部は、複数段の球状部材の層からなり、この給電部の各段の層は、少なくとも三個の同一直径の球状部材からなり、この各球状部材を、保持体として機能する筒状中空部の内壁に当接した状態で同一平面上で且つ同一円周上に配設固定して成る。
【0041】
給電部の各段の層は、導電性部材から成る球状部材の層と、これより小径のセラミック等の耐熱性部材から成る球状部材の層とを、一層おきに配設する。
そして、前述した導電性部材から成る球状部材により囲まれた中央に、溶接ワイヤ挿通孔を形成する、という構成を採っている。
【0042】
このため、この請求項6記載の発明では、前述した請求項5記載の発明と同等に機能するほか、とくに一層おきに配設される層は、耐熱性が良好であることから、全体的に耐久性向上を図ることができる。
【0043】
請求項7記載の発明では、上記請求項5又は6記載の発明において、ワイヤ送出口は、給電チップ本体のワイヤ送出側に装備された環状蓋体に設ける、という構成を採っている。
【0044】
このため、この請求項7記載の発明では、前述した請求項5又は6記載の発明と同等に機能するほか、メンテナンスおよび球状部材の取り換え組み立てが容易となる。
【0045】
請求項8記載の発明では、前述した請求項5又は6記載の発明において、ワイヤ案内孔は、給電チップ本体のワイヤ導入側に装備された環状蓋体に設ける、という構成を採っている。
【0046】
このため、この請求項8記載の発明でも、上記請求項7記載の発明とほぼ同等の機能を備えたものを得ることができる。
【0047】
請求項9記載の発明では、上記請求項5乃至8にいずれかに記載の発明において、各段の層を構成する円周回りに配置された球状部材は、隣接する層の球状部材に対して給電チップ本体の中心軸方向に沿って同一線上に同位相で配設する、という構成を採っている。
【0048】
このため、この請求項9記載の発明では、前述した5乃至8にいずれかに記載の発明と同等の機能を備えたものを得ることができる。
【0049】
請求項10記載の発明では、前述した請求項5乃至8にいずれかに記載の発明において、各段の層を構成する円周回りに配置された球状部材は、隣接する他の層の球状部材の相互間に位置するように中心点からみて所定角度ずらした状態で配設する、という構成を採っている。
【0050】
このため、この請求項10記載の発明では、前述した請求項5乃至8のいずれかに記載の発明と同等の機能を有するほか、各段の球状部材が安定した状態で給電チップ本体に収納されるため、溶接ワイヤの補給作業をより一層円滑に行うことができ、各段相互間の球状部材が相互に二箇所で当接するため、導通状態を更に確実なものとすることができる。
【0051】
請求項11記載の発明では、上記請求項10記載の発明において、給電チップ本体の中空部内に配設した球状部材は、給電チップ本体の内面と前述した給電チップ本体に装備された環状蓋体とによって固定する、という構成を採っている。
【0052】
このため、この請求項11記載の発明では、前述した請求項10記載の発明と同等に機能するほか、球状部材の交換等を含めて当該装置全体のメンテナンスが容易となる。
【0053】
請求項12記載の発明では、上述した請求項1乃至11のいずれかに記載の発明において、給電チップ本体に装備され,同一面上で且つ円状に配置された各球状部材を、相互に当接した状態で同一円周上に配置する、という構成を採っている。
【0054】
このため、この請求項12記載の発明では、上述した請求項1乃至11のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、とくに各球状部材を所定位置に固定するに際して給電チップ本体内の空間形状を例えば円筒状にすると、何らの係止手段を有することなくその内壁と各球状部材との相互作用によって各球状部材を一義的に固定することが可能となる。
【0055】
請求項13記載の発明では、上述した請求項1乃至11の何れかに記載の発明において、給電チップ本体に装備され同一面上で且つ円状に配置された各球状部材は、相互に所定間隔を隔てて同一円周上に配置すると共に、その間隔を溶接ワイヤの直径よりも小さく設定する、という構成を採っている。
【0056】
このため、この請求項13記載の発明では、前述した請求項1乃至11のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、中央部の空間が広げられることから同一太さの溶接ワイヤについて比較すると隣接する各球状部材を当接した場合に比べて相対的に各球状部材の直径を小さく設定することが可能となり、このため、給電チップ本体の外形を小さくすることができる。
【0057】
請求項14記載の発明では、上記請求項13記載の発明において、給電チップ本体に装備された同一円周上の各球状部材は、隣接する他の球状部材と相互に横連結部材を介して所定間隔を維持し且つ一体的に連結する、という構成を採っている。
【0058】
このため、この請求項14記載の発明では、前述した請求項13記載の発明と同等に機能するほか、中央部の空間が広げられることから同一太さの溶接ワイヤについて比較すると隣接する各球状部材を当接した場合に対して相対的に各球状部材の直径を小さく設定することが可能となり、ひいては、給電チップ本体の外径を小さくすることができる。更に、内部の各球状部材が定位置を容易に保持されることから装置全体の組み立てが容易となる。
【0059】
請求項15記載の発明では、前述した請求項9,10,12,13又は14記載の発明において、給電チップ本体に装備された各段の球状部材は、円周上の位置が同一の球状部材をそれぞれ縦連結部材により軸方向に連結し一体化する、という構成を採っている。
【0060】
このため、この請求項15記載の発明では、前述した請求項9,10,12,13又は14記載の発明と同等に機能するほか、各段の球状部材全体を係合したのちに当該球状部材全体を給電チップ本体内に収納することができるので、組み立て及び保守が容易となる。
【0061】
請求項16記載の発明では、上記請求項15記載の発明において、縦連結部材は、その両端部を給電チップ本体の所定位置に固定する、という構成を採っている。
このため、この請求項16記載の発明では、前述した請求項15記載の発明と同等の機能し組み立て及び保守が容易となる。
【0062】
請求項17記載の発明では、前述した請求項1乃至16のいずれかに記載の発明において、各球状部材に囲まれて形成されるワイヤ挿通孔の大きさを、当該ワイヤ挿通孔に内接する円を想定した場合の当該内接円の外径をD,溶接ワイヤの直径をD0 として、「D0 <D<D0 +0.2〔mm〕」の関係を維持し得る大きさとする、という構成を採っている。
【0063】
このため、この請求項17記載の発明では、前述した請求項1乃至16のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、ワイヤ挿通孔の通路が従来のものより小さいことから、溶接作業時における溶接ワイヤの振れが少なくなり、且つ溶接ワイヤへの給電回路の接触不良を有効に排除することができる。
【0064】
請求項18記載の発明では、前述した請求項1乃至17のいずれかに記載の発明において、導電性部材を、銅又は銅合金とする、という構成を採っている。
このため、この請求項18記載の発明では、前述した請求項1乃至17のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、電気抵抗が小さくなり従って発熱を有効に抑制することができ、とくに球状部材相互間の導通状態が更に円滑化され、過熱状態の発生が有効に抑制される。
【0065】
請求項19記載の発明では、前述した請求項2,3,4,6乃至18のいずれかに記載の発明において、給電部を構成する球状部材の内、導電性部材で形成されていない他の球状部材をセラミック等の耐磨耗性及び耐熱性を有する部材により形成する、という構成を採っている。
【0066】
このため、この請求項19記載の発明では、前述した請求項2,3,4,6乃至18のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、溶接ワイヤとの接触による球状部材の磨耗を抑制し且つ耐久性向上を図ることができる。
【0067】
請求項20記載の発明では、前述した請求項1乃至19のいずれかに記載の発明において、給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側に装備される環状蓋体を、電気絶縁部材により形成する、という構成を採っている。
【0068】
このため、この請求項20記載の発明では、前述した請求項1乃至19のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、溶接作業時におけるスパッタの付着を抑制し給電チップ本体の耐久性向上をはかることができる。
【0069】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0070】
〔第1の実施形態〕
図1に第1の実施形態を示す。この図1において符号1は導電性部材から成る柱状の給電チップ本体を示す。この給電チップ本体1は、図1の上端部分に本体装置(図示せず)への取付け用ネジ部1Aを備え、中心軸部分には溶接ワイヤ101挿通用のワイヤ案内孔1Cを備えている。このワイヤ案内孔1Cは、溶接ワイヤ101の直径D0 〔mm〕に対して「D0 +0.2〔mm〕」以上の大きさに設定されている。
【0071】
符号2は、給電チップ本体1の溶接ワイヤ送出側に装備された同一直径の球状部材を示す。この球状部材2は、本実施形態では同一円周上で且つ相互に当接した状態で四個装備されている。この四個の球状部材2は、給電チップ本体1の図1における下端部周囲に突出された環状突設部1B内に収納され、該環状突設部1Bにネジ止めされている。符号2aは球固定手段としてのネジ部材を示す。
【0072】
上記球状部材2は、本実施形態では銅又は銅合金によって形成されている。又、符号3は、四個の球状部材2によって囲まれて成る溶接ワイヤ101用のワイヤ挿通孔を示す。この四個の球状部材2によって形成されるワイヤ挿通孔3は、該ワイヤ挿通孔3に内接する円筒を想定した場合の当該内接円筒の外径をD(図1参照),溶接ワイヤ101の直径をD0 とすると、「D0 <D<D0 +0.2〔mm〕」の関係を維持した大きさに設定されている。
【0073】
このワイヤ挿通孔3は、四個の球状部材2によって囲まれていることから四角形状の空間領域を形成し、その四隅が楔状を成すようになっている。このため、溶接ワイヤ101はこの楔状の空間領域に入り込み易い状態,即ち四本の球状部材2の何れか2個に当接し易い状態となっている。その他の構成は、前述した図31に示す従来例と同一となっている。
【0074】
次に、上記第1実施形態の作用を説明する。
まず、ワイヤ案内孔1C,ワイヤ挿通孔3に溶接ワイヤ101を挿通し、その端部を四個の球状部材2によって囲まれて成るワイヤ挿通孔3の先端部からアーク溶接に適した所定長さに突出させ、しかるのち所定の溶接動作に移行する。
【0075】
この場合、ミグ・マグ溶接法では、溶接ワイヤ101は、アーク溶接の進行とともに溶融消費されるため、その所定量が順次繰り出される。同時に溶接ワイヤ101は多くの場合、その先端部がアークの発生位置の変化に応じて僅かに偏心するが、この偏心動作によって溶接ワイヤ101はワイヤ挿通孔3の有する四箇所の楔状空間領域の何れかに挟み込まれる。このため、溶接ワイヤ101は少なくとも二個の球状部材2に確実に当接することとなり、溶接ワイヤ101の偏心動作にあっても通電状態が確実に維持される。また、溶接ワイヤ101は、ワイヤ挿通孔3に内接すると想定される円よりもその直径が前述したように幾分小さく設定されていることから、その送り出しも円滑に行われる。
【0076】
更に、継続使用の結果、溶接ワイヤに付着して給電チップ内に切り粉やゴミが侵入しても,或いは溶接ワイヤ101と球状部材2との接触等によって切り粉や切り屑が発生しても、ワイヤ挿通孔3の断面形状が四角形状であり四箇所のコーナ部から当該切り粉等が自然落下する。このため、切り粉や切り屑によってワイヤ挿通孔3が塞がることがなく、かかる点においても溶接ワイヤ101の挿通動作を円滑に成し得るという利点を備えている。
【0077】
また、球状部材2を球固定手段としてのネジ部材2aによって個別に給電チップ本体1に固定したので、溶接ワイヤ101に対する給電回路を当該球状部材2を介しても確実に形成することができ、更に必要に応じて個別に交換することがき、このため、かかる点において装備全体の保守性および耐久性の向上を図り得るという利点がある。
【0078】
ここで、四個の球状部材2を導電性材料で形成したがその一部をセラミック等の耐磨耗性及び耐熱性に優れた材料で形成してもよい。この場合、隣り合ういずれか一方は導電性材料とする。
又、図1に示す第1の実施形態にあっては、四個の球状部材2を一段装備した場合を例示したが、球状部材2については個数を限定するものではなく、図3(A)に示すように球状部材2を三個装備しても、図3(B)に示すように球状部材2を五個装備しても、又図3(C)に示すように球状部材2を六個装備してもよい。又、一段で三個以上の球状部材を複数段に重ねて装備してもよい。
【0079】
ここで、、図1では、球状部材2を同一円周上にて当接した場合を例示したが、図4に示すように、球状部材2の相互間に所定の間隙Sを隔てて同一円周上に等間隔に装備してもよい。この場合、間隙Sは溶接ワイヤ101の直径よりも小さく設定されている。
【0080】
又、図4(A)では球状部材2が四個の場合を示し、図4(B)では球状部材2が三個の場合を示す。このようにすると、球状部材2で囲まれるワイヤ挿通孔3部分の空間断面積が大きくなり、同一の溶接ワイヤ101を使用するに際しては相対的に給電チップ本体1の直径を小さくすることができ、取り扱いが容易となるという利点がある。
更に、球状部材2を図1に示す如く給電チップ本体内に取り付ける場合は、給電チップ本体の外径を小さくすることができる。
【0081】
また、球状部材2の相互間には、図4(C)に示すように球連結手段としての横連結部材4を装備してもよい。このようにすると、組み立てが容易となり生産性向上を図り得る。また、球状部材2の材質については、導電性良好な部材であれば銅又は銅合金以外のものであってもよい。
【0082】
〔第2の実施形態〕
図5に第2の実施形態を示す。この図5に示す第2の実施形態は、球状部材3の球固定手段として前述したネジ部2aに代えて環状蓋体10を装備した点に特徴を備えている。
【0083】
この環状蓋体10は、図5に示すように断面U字状に形成され、給電チップ本体11の図5における下端部に螺合されている。ここで、給電チップ本体11の図5における下端部に形成された環状突設部11Bの内側の深さは、前述した球状部材3の直径寸法よりも小さく設定されている。これによって四個の球状部材3が一括して給電チップ本体11に着脱自在に装着され、同時に当該各球状部材3と給電チップ本体11との当接状態が堅牢となるように設定されている。
【0084】
ここで、上記環状蓋体10については本実施形態にあっては銅又は銅合金にて形成されているが、セラミック等の電気絶縁性及び耐熱性を有する部材によって形成すると更によい。
また、上記環状蓋体10に形成されるワイヤー送出口10Aの直径は、球状部材で形成される星型多角形のワイヤー挿通孔101の外径寸法よりも大きく且つ球状部材3の固定支持には支障のない程度に小さく形成されている。その他の構成は前述した図1の第1の実施形態と同一となっている。
【0085】
このようにしても前述した図1乃至図2の第1実施形態の場合と同等の作用効果を有するほか、着脱が容易となり保守性及び生産性を更に有効に改善し得るという利点があり、また、環状蓋体をセラミック等の電気絶縁性材料で形成することにより、スパッタの付着を抑制する効果も備えるという利点がある。更に、送出孔10Aは比較的大きく形成されるため、切り粉や切り屑の排出には支障を生じない。
【0086】
〔第3の実施形態〕
図6乃至図9に第3の実施形態を示す。この図6乃至図9において、符号21は給電チップ本体を示す。この給電チップ本体21は、導電性部材から成り、図6乃至図7に示すように上端部に取付け用ネジ部21Aを備え、中心軸部分には溶接ワイヤ101を挿通するワイヤ案内孔21Cを備え、また、中央部から下方部分には筒状部21Bを備えている。
【0087】
給電チップ本体21の筒状部21B内には、ワイヤ挿通孔23の一部を成す同一直径の球状部材22が、前述した給電チップ本体21の内壁に当接した状態で複数段(図7では9段)にわたって収納装備されている。この各段の球状部材22は、同一円周上に所定間隔Sを隔てて三個等間隔に配設され、これによって当該球状部材22部分における前述したワイヤ挿通孔23が形成されている。
【0088】
ここで、前述した各段の球状部材22は、給電チップ本体21の中心軸に沿った方向に隣接する一方の段の各球状部材22が他方の段の各球状部材22の相互間に位置するように、各段ごとに所定角度回転した状態(所定角度ずらした状態)で配設されている。これによって、上下方向における各球状部材22が相互に安定した位置に設定される。
図7の場合、一方の段と他方の段とが、相互に60°回転した状態に配設されている(図8参照)。符号24は、上記各球状部材22の配設位置を固定するための縦連結部材としての位置固定バーを示す。
【0089】
また、上記各球状部材22は、本実施形態にあっては各段の球状部材2の全体を銅もしくは銅合金によって形成したが、一つ置きの段に位置する複数の球状部材をセラミック等の耐熱性及び耐磨耗性に優れた材料により形成してもよい。
【0090】
符号25は、給電チップ本体21の図7における下端部に螺合装備された環状蓋体を示す。また、符号26は、筒状部21A内の上端部に配設された環状押圧板を示す。この環状押圧板26は銅又は銅合金から成り、りん青銅等からなるコイルばね27によって常時図7の下方に押圧されている。
このため、適度の押圧力が前述した各球状部材22に印加され、給電チップ本体21と各球状部材22とが適度に当接され、当該各球状部材22を介して給電チップ本体21から溶接ワイヤ101に所定の溶接電流が通電されるようになっている。
【0091】
前述した位置固定バー(縦連結部材)24は、等間隔に六本装備され、それぞれ前述した各球状部材22の中心部を貫通してこれらと同一円周上に配設されている。そして、この位置固定バー24は、本実施形態にあってはその図7における下端部が環状保持板24Aに固定され、上端部が環状押圧板26の上下動を許容しつつ当該環状押圧板26を貫通して前述したコイルばね27が装備された空間内に突設されている。
【0092】
このため、上述した各球状部材22相互間の当接状態を維持しつつ当該各球状部材22の相互間が安定状態で固定されるようになっている。かかる状態は、保守時に溶接ワイヤ101を抜き取った場合にも維持される。そして、この場合、各球状部材22は位置固定バー24と共に筒状部21B内に対して一体的に挿脱され、これによって組み立てが容易となり保守作業も容易となる。
【0093】
このようにしても、前述した図1(第1実施形態)と同等の作用効果を有するほか、球状部材22相互間に溶接ワイヤ101の直径よりも小さい間隙Sを設けたので、当該球状部材22に囲まれた中心軸部分の空間が広げられることから、球状部材22の相互間を当接した場合に比較して各球状部材22の直径を小さく設定することが可能となり、更に、溶接ワイヤ101の交換補給時に残存する溶接ワイヤ101を給電チップ本体21から引き抜いても位置固定バー24および環状保持板24Aが機能して内部の各球状部材22が定位置を保持されることとなり、このため、溶接ワイヤ101の補給作業の円滑化を図ることができる。また、各段の球状部材22の全体を位置固定バー24及び環状保持板24Aと環状押圧板26とで係合したのち給電チップ本体21内に収納することができるので、組み立ておよび保守が容易となる。
【0094】
更に、各段の球状部材22にあっては、上述したように、各段の三個の各球状部材22が他方の段の三個の各球状部材22の相互間に位置するように、各段ごとに所定角度(60°)ずらした状態で安定装備したので、溶接ワイヤ101の補給作業をより一層円滑に行うことができ、各段相互間の球状部材22が相互に二箇所で当接するため、導通状態を更に確実なものとすることができる。
【0095】
ここで、上記図7の実施形態にあっては、各球状部材22の内、一段置きに球状部材22の材質を変化させた場合を例示したが、各段共、銅又は銅合金のものとセラミック等の絶縁体で形成したものとを少なくとも一つ置きに配置してもよい。このように、各球状部材22の内の一部をセラミック等の絶縁体で形成すると、耐磨耗性が良好となり全体的に耐久性向上を期待することができる。
【0096】
また、上記図7の実施形態にあっては、各球状部材22の連結手段として位置固定バー(縦連結部材)24および環状保持板24Aを装備した場合を例示したが、これに代えて図4(C)に示すように、球状部材2の相互間に横連結部材4を装備してもよい。このようにすると、構成をより簡略化することができる。
【0097】
〔第4の実施形態〕
この第4の実施形態では、給電チップ本体31を単純な円筒状とし、その上下端を環状蓋体で形成するようにしたものである。
【0098】
図10にこれを示す。この図10に示す第4の実施形態は、給電チップ本体31を円筒状部材31Aで形成すると共にこの円筒状部材31Aの上端部を形成する環状蓋体として取付けネジ部31Bを着脱自在に装備し、これによって球状部材32で形成されるワイヤ挿通孔33を長く設定した点に特徴を備えている。その他の構成は前述した図7〜図9に示す第3の実施形態と同一となっている。
【0099】
このようにしても前述した第3の実施形態(図7〜図9)と同等の作用効果を有するほか、給電チップ本体31を円筒状部材31Aで形成し且つ内部に球状部材32を収納したので、全体的に内部空間が多くなり、このため給電チップ装置全体の軽量化を図ることができ、可搬性を良好なものとすることができる。
【0100】
〔第5の実施形態〕
図11乃至図14にこれを示す。この図11乃至図14に示す第5の実施形態では、給電チップ本体41が、銅又は銅合金から成る円筒状部材41Aと、この円筒状部材41Aの図12における上下端部に装備された環状蓋体41B,41Cとにより構成されている。
【0101】
更に、給電チップ本体41内には、同一面上で且つ同一円周上に四個の球状部材42が、相互に当接して複数段にわたって収納され装備されている。そして、各段の四個の球状部材42は、相互に他方の段の各球状部材42に対して相互に45°ずれた状態で収納されている(図13,図14参照)。符号43はワイヤ挿通孔を示す。このワイヤ挿通孔43の大きさについては前述した図1の場合と同一に設定されている。
【0102】
ここで、円筒状部材41Aの図12における上端部に装備された環状蓋体41Bは、りん青銅等の導電性良好な弾性材からなり、一部に内径側に通ずるスリット溝41Baを備え、スプリングバック等の手法によって円筒状部材41Aに装着されるようになっている。
また、円筒状部材41Aの図12における下端部に装備された環状蓋体41Cは、円筒状部材41Aと同一の素材によって形成されている。その他の構成は前述した図10に示す第4の実施形態と同一となっている。
【0103】
このようにしても、前述した第4実施例(図10)とほぼ同等の作用効果を有するほか、給電チップ本体41に図12の上方に突出した取付けねじ部がないことから、装置全体をより一層軽量化することができる。また、給電チップ本体41内で複数段に積層された状態の各球状部材42を各段に四個配設すると共に同一円周上に相互に当接した状態で収納したので、前述した各実施形態の場合と異なり、各球状部材42を連結する連結手段が不要となり、その分、装置全体の簡略化および軽量化を図ることができ、従って保守性および生産性向上を図ることができる。
【0104】
ここで、環状蓋体に形成された案内孔41BA,送出孔41CAは、前述した第1乃至第2の実施形態のワイヤー案内孔及びワイヤー送出孔と同様の大きさに形成される。
また、上記第5実施形態にあっては、全ての球状部材42を銅又は銅合金等の導電性部材で形成した場合を例示したが、一段置きにセラミック等の耐熱性に優れた部材で且つ直径を導電性部材のものより小さく形成したものを装備するようにしてもよい。
【0105】
〔第6の実施形態〕
図15にこれを示す。この図15に示す第6の実施形態では、給電チップ本体51は、銅又は銅合金から成るり且つ送出口51Abを備えた環状の底板部51Aaを有する円筒状部材51Aと、この円筒状部材51Aの図15の上端部に着脱自在に螺合装備された取付けねじ部51Bとを備えて構成されている。符号51Cは、取付けねじ部51Bの中心軸部分に設けられた溶接ワイヤ101用のワイヤ案内孔を示す。
【0106】
また、給電チップ本体51内には、前述した図12の場合と同様に各段とも4個の球状部材52が複数段にわたって収納装備されている。この各段に装備された4個の球状部材52は同一円周上に相互に当接して装備されている。
【0107】
更に、給電チップ本体51の円筒状部材51A内の空間には、図15における各球状部材52の上側に、該各球状部材52を下方に押圧するための押圧用環状蓋体53と、この押圧用環状蓋体53を球状部材52側に押圧するコイルばね54と、該コイルばね54を保持する環状スペーサ55とが装備されている。
【0108】
この環状スペーサ55および押圧用環状蓋体53は銅又は銅合金から成り、コイルばね54はりん青銅等によって形成されている。また、各球状部材52はそれぞれ銅又は銅合金によって形成されている。ワイヤー案内孔51C及びワイヤー送出口51Abの直径は、例えば前述した第3の実施形態(図6乃至図9参照)の場合と同一となっている。
その他の構成は前述した図11〜14に示す第5の実施形態と同一となっている。
【0109】
このようにしても、前述した第5実施例(図11〜図14図)とほぼ同等の作用効果を有するほか、取付けねじ部51Bを円筒状部材51Aに着脱自在に螺合装備したので、保守性が良好なものとなっている。
【0110】
一方、図15において、球状部材52が複数段の各段とも球状部材52の相互間に間隙を設定した場合であっても、2〜3段の場合又は相互間の間隙が僅かの場合で各段に配設される球状部材が3〜5個程度の場合は、所定の位置に球状部材を配置して組み立てた後、球状部材の上下方向の移動がないようにその上下を環状蓋体で固定することで、当該各球状部材は円筒状部分の内壁に押圧固定される。この場合は、例えば図7に示すような位置固定バー(縦連結部材)24および環状保持板24Aが不要となる。
【0111】
〔第7の実施形態〕
図16乃至図18にこれを示す。この図16乃至図18に示す第7の実施形態では、給電チップ本体56が、銅又は銅合金から成る円筒状部材56Aと、この円筒状部材56Aの図16における上下端部に装備された環状蓋体56B,56Cとにより構成されている。この場合、環状蓋体56Bは、ネジ止めによって装備されるようになっている。
【0112】
この給電チップ本体56内には、前述した第5実施形態(図11〜図14)における球状部材42の大きさ(直径)を小さくした球状部材57が三段にわたって層状に装備され、各段には四個の球状部材57が等間隔に配設されている。符号58は中心軸部分にワイヤ案内穴58aを備えた柱状スペーサを示す。また、各段の球状部材57の相互間には、図17に示すように隙間Sが設けられている。符号57aは球状部材57によって囲まれた空間に形成される溶接ワイヤ挿通孔を示す。また、各段の球状部材57及び柱状スペーサ58は、給電チップ本体56と同様に銅又は銅合金で形成されている。
【0113】
更に、図16の下端部に螺合装備された環状蓋体56Cには、中心部に溶接ワイヤ送出口56Caが設けられ、そのその図16における上面側(球状部材57を受ける面)に、所定幅wの十字状凹溝56Cb(図18参照)が形成されている。この十字状凹溝56Cbの幅wは、本実施形態では球状部材57の半径寸法とほぼ同程度で、深さはw/3程度に設定されている。その他の構成は、前述した第5の実施形態(図11〜図14)の場合と同一となっている。
【0114】
このようにしても、前述した第5の実施形態(図11〜図14)とほぼ同等の作用効果を有するほか、とくに前述した球状部材57が柱状スペーサ58とする共に給電チップ本体56内に収納されると、当該環状蓋体56Cの十字状凹溝56Cbに前述した球状部材57が入り込み、これによって球状部材57は等間隔に配置され、同時に円周方向への移動も阻止される。
【0115】
また、上述のように、球状部材57の直径を前述した第5実施形態(図11〜図14)の場合に比較して小さくすると共に球状部材57相互間に溶接ワイヤ101の直径よりも小さい隙間Sを設けたので、給電チップ本体56の中心軸上に形成される球状部材57で囲まれた空間の内接円の直径Dを、前述した第5実施形態(図11〜図14)の場合に比較して大きくすることができる。このことは、同一太さの溶接ワイヤ101を使用する場合を考えると、相対的に給電チップ本体56を細く形成することができ、かかる点において軽量化が促進され、取り扱い易くなる。
【0116】
そして、組み立てに際しては、円筒状部材56Aの底部に環状蓋体56Cをねじ込み、その後、溶接ワイヤ挿通孔57aに内接する外径を備えた円柱部材(図示せず)を中心軸上において球状部材57を収納配置した後に柱状スペーサ58を挿入し、これを環状蓋体56Bで固定し、その後に前述した中心部の円柱を引く抜けばよい。
【0117】
ここで、上記第7実施形態にあっては、全ての球状部材57を銅又は銅合金等の導電性部材で形成した場合を例示したが、一段置きにセラミック等の耐熱性及び耐磨耗性に優れた部材を装備するようにしてもよい。
【0118】
〔第8の実施形態〕
図19乃至図20にこれを示す。この図19乃至図20に示す第8の実施形態では、給電チップ本体61は、銅又は銅合金から成る円筒状部材61Aと、この円筒状部材61Aの図19における上下端部に着脱自在に嵌合装備された一方と他方の環状蓋体61B,61Cとにより構成されている。
【0119】
この給電チップ本体61内には、4個の球状部材62が複数段にわたって収納装備されている。この各段に装備された4個の球状部材62は同一円周上に相互に当接して装備されている。符号63は各球状部材62によって囲まれてなるワイヤ挿通孔を示す。
この場合、各段の4個の各球状部材62は、下方の段の各球状部材62に順次積み重なるようにして中心軸に沿って四列平行に配設され、同時に各球状部材62を縦連結手段としての位置固定バー64でこれらを貫通して連結した点に特徴を備えている。
【0120】
更に、上記位置固定バー64は、図19に下端部側がボルトヘッドを形成し、上端部がねじ部を成している。そして、前述した一方の環状蓋体61Bに位置固定バー64のボルトヘッドが係止され、他方の環状蓋体61Cに位置固定バー64のねじ部が二重ねじ構造で固定装備され、これによって装置全体が位置固定バー64によって一体化された状態となっている。その他の構成は前述した図11〜図14に示す第5の実施形態と同一となっている。
【0121】
このようにしても、前述した第5実施例(図11〜図14)とほぼ同等の作用効果を有するほか、全体が位置固定バー64によって一体化された状態となっているため、構造が更に単純化されることから保守性および生産性が更に良好なものとなっている。
【0122】
〔第9の実施形態〕
図21にこれを示す。この図21に示す第9の実施形態では、各球状部材62と円筒状部材61Aとの間に形成される四箇所の空間61Kの内の一箇所に、当該空間内に内接すると想定される直径を備えた円柱部材70を収納装備する。そして、各各球状部材62を円筒状部材61Aの内壁に密着した状態に設定し、前述した四本の位置固定バー64を省略する。その他の構成は前述した図19乃至図20(第8の実施形態)と同一となっている。
【0123】
このようにしても、前述した図19乃至図20(第8の実施形態)のものと同等の作用効果を有するほか、図19乃至図20における四本の位置固定バー64が不要となることから、各球状部材62の孔加工および位置固定バー64に対する串刺し状の組み立て作業等が不要となり生産性を大幅に向上させることができるという利点がある。
【0124】
【実施例】
ここで、前述した図1に示す実施形態において、複数個の球状部材によって形成されワイヤ挿通孔に内接する円筒を想定し、その想定される円筒の直径Dと球状部材の直径D1 との関係を検討してみた。図1乃至図6に示す各実施形態に対応した検討結果を図22乃至図25に示す。
【0125】
この場合、図22では球状部材が三個の場合を示し、図23では球状部材が四個の場合を示し、図24では球状部材が五個の場合を示し、図25では球状部材が六本の場合を示す。又、これらをまとめた検討結果を図26に示す。
【0126】
これによると、図1乃至図6に示す各実施形態においては、球状部材の数が多いほど当該球状部材の直径を小さくすることができ、溶接用給電チップ装置の全体的な直径も小さくすることができるという結果を得ることができた。
【0127】
一方、この検討結果は、球状部材の相互間に適当な間隔を設けることによって逆に当該球状部材の直径を小さくすることができ、装置全体的の直径も小さくすることも可能となることが判明した。
【0128】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、溶接用ワイヤ用のワイヤ挿通孔を少なくとも三個の球状部材によって形成するようにしたので、溶接ワイヤに対する球状部材の直径の大きさを適当に選択設定することによって当該溶接ワイヤとこれに当接するワイヤ挿通孔の内壁面との間隔を特に孔加工をすることなく小さく設定し得るので、溶接ワイヤの振れを有効に抑制することができ、従って溶接ワイヤによる溶接箇所の狙い位置の位置ずれを小さくすることができ、同時に溶接ワイヤの連続した挿通移動を円滑に成し得ると共に、複数箇所での接触が可能となることから安定した導通(給電)状態を得ることができる。
【0129】
また、ワイヤ挿通孔の空間断面形状が、例えば四個の球状部材を使用した場合には星型四角形状という異形(円形でない)と成り、このため、円形加工孔の場合に比較して切り粉や切り屑等の異物を逃がすための連続した空間が形成され、従って切り粉や切り屑等の異物による挿通孔の目つまり及びこれに伴う溶接ワイヤの座屈等を大幅に少なくすることができ、かかる点において溶接ワイヤの挿通動作の円滑化を図ることができ、従って、溶接ワイヤを連続して安定した状態で溶接箇所に送りだすことができ、このため、溶接箇所におけるアークに不安定状態の発生が少なくなり、良好なアーク溶接を継続することができる。
【0130】
更に、溶接ワイヤのワイヤ挿通孔を異形の挿通孔としたにもかかわらず,これを複数の球状部材で容易に形成し得るので、生産上の困難性を有効に改善することができる。
【0131】
そして、特に、連続使用によってワイヤ挿通孔が一部磨耗した場合には、当該磨耗にかかる箇所の球状部材(多くはアーク溶接側に位置する球状部材)のみを交換すればよいこととなり、かかる点において装置全体の耐久性を著しく強化することができ、複数個の球状部材を収納したので全体的に内部空間が多くなり、その分、給電チップ本体部分の軽量化を達成することができ、可搬性がよいという従来にない優れた溶接用給電チップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図2】図1の底面図である。
【図3】図1内に開示した球状部材と溶接ワイヤとの関係を示す他の例で、図3(A)は球状部材が三個の場合を示し、図3(B)は球状部材が五個の場合を示し、図3(C)は球状部材が六個の場合を示す。
【図4】図1内に開示した球状部材相互間に隙間Sを設定した場合の例を示す図で、図4(A)は球状部材が四個の場合を示し、図4(B)は球状部材が三個の場合を示し、図4(C)は球状部材が3個の場合の他の例を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す正面図で、図6(A)は正面図、図6(B)は底面図である。
【図7】図6(A)のAーA線に沿った断面図である。
【図8】図7のAーA線に沿った断面図である。
【図9】図7のBーB線に沿った断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態を示す平面図である。
【図12】図11のAーA線に沿った断面図である。
【図13】図12のAーA線に沿った断面図である。
【図14】図12のBーB線に沿った断面図である。
【図15】本発明の第6の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図16】本発明の第7の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図17】図16のAーA線に沿った拡大断面図である。
【図18】図11内に開示した下方の環状蓋体の例を示す拡大斜視図である。
【図19】本発明の第8の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図20】図19のAーA線に沿った断面図である。
【図21】本発明の第9の実施形態を示す一部省略した横断面図である。
【図22】図1に開示した第1の実施形態の具体的な実施例を示す図で、図22(A)は球状部材が三個の場合の当該球状部材によって形成される挿通孔の大きさ(内接円)と球状部材との関係を示す説明図、図22(B)は図22(A)の具体的寸法の例を示す図表である。
【図23】図1に開示した第1の実施形態の具体的な実施例を示す図で、図23(A)は球状部材が四個の場合の当該球状部材によって形成される挿通孔の大きさ(内接円)と球状部材との関係を示す説明図、図23(B)は図23(A)の具体的寸法の例を示す図表である。
【図24】図1に開示した第1の実施形態の具体的な実施例を示す図で、図24(A)は球状部材が五個の場合の当該球状部材によって形成される挿通孔の大きさ(内接円)と球状部材との関係を示す説明図、図24(B)は図24(A)の具体的寸法の例を示す図表である。
【図25】図1に開示した第1の実施形態の具体的な実施例を示す図で、図25(A)は球状部材が六個の場合の当該球状部材によって形成される挿通孔の大きさ(内接円)と球状部材との関係を示す説明図、図25(B)は図25(A)の具体的寸法の例を示す図表である。
【図26】図22乃至図25に開示した各実施例における球状部材の大きさD1 と挿通孔に内接すると想定される円筒領域の直径Dとの関係を示す示す線図である。
【図27】ミグ・マグ溶接法を示す説明図である
【図28】図27内に開示された給電チップの従来例1を示す図で、図28(A)は縦断面図、図28(B)は図28(A)の底面図である。
【図29】図28における従来例1の使用状態を示す一部省略した説明図である。
【図30】図27内に開示された給電チップの従来例2を示す縦断面図である。
【図31】図27内に開示された給電チップの従来例3を示す図で、図31(A)は縦断面図、図31(B)は図31(A)のAーA線に沿った断面図である。
【図32】図31に示す従来例3の変形例を示す図で、図32(A)はワイヤ挿通孔が四角形の場合を示し、図32(B)はワイヤ挿通孔が五角形の場合を示し、図32(C)はワイヤ挿通孔が円形と十字状スリットとの組み合わせからなる形状の場合を示し、図32(D)はワイヤ挿通孔が楕円形の場合を示す説明図である。
【図33】図27内に開示された給電チップの従来例4を示す縦断面図である。
【図34】図33のAーA線に沿った断面図である。
【図35】図33のBーB線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1,11,21,31,41,51,56,61 給電チップ本体
2,22,32,42,52,57,62 球状部材
2a 球固定手段としてのネジ部材
3,23,33,43,57a,63 ワイヤ挿通孔
4 球固定手段としての横連結部材
10,25,41B,41C,61B,61C,56B,56C 環状蓋体
24,64 球固定手段としての位置固定バー(縦連結部材)
24A 連結部材保持手段としての環状保持板
101 溶接ワイヤ
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接用給電チップ装置に係り、特に、自動化もしくは半自動化されたアーク溶接に使用される溶接ワイヤに対する給電および繰り出し用の溶接用給電チップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガスシールドアーク溶接にあっては、従来より、タングステン電極を装備した非溶極式のティグ(TIG)溶接と、溶接ワイヤを溶かしながらアーク溶接する溶極式のマグ(MAG)溶接,同じく溶極式のミグ(MIG)溶接が知られている。
【0003】
この内、溶極式のミグ溶接とマグ溶接は、使用するシールドガスによって区別される溶接法であり、両者間には本質的な相違はない。このため、この種の溶極式アーク溶接は、従来よりミグ・マグ溶接法と呼ばれている。
【0004】
図27にミグ・マグ溶接法の一例を示す。この図27におけるミグ・マグ溶接法では、まず、電極として機能する溶接ワイヤ101が、モータ102によって駆動される送給ローラ103によって給電チップ(溶接用給電チップ装置)104内を通して母材105に向けて連続的に送られる。そして、溶接ワイヤ101が、給電チップ104内を通過する際に溶接機106からの電流が当該溶接ワイヤ101に通電され、溶接ワイヤ101の先端部101Aと母材105との間にアークAc が発生する。ここで、記号Ga はシールド用ガスの流れを示す。
【0005】
そして、このアークAc が熱源となって溶接ワイヤ101の先端部101Aと母材105とを溶融させ、溶けたワイヤ先端が溶滴となって母材105に移行して溶融池105Aが形成される。この溶融池105Aが冷却されて溶接金属105Bとなり、継手が完成する。
更に、給電チップ104の外側周囲を取り囲んで溶接トーチ(シールドノズル部)107が装備され、ここからシールド用のガスGa が溶接箇所に向けて噴射され、これによって、アークAc と溶融池105Aとが周囲の空気に触れないように遮蔽されるようになっている。
【0006】
一方、上記従来例にあっては、給電チップ104における溶接ワイヤ101の繰り出しに際して、同時に高密度電流を効率良く溶接ワイヤ101に印加しなければならない。この場合、先端部からあまり離れた位置に溶接ワイヤ101への通電箇所を設定すると、先端部以外で溶接ワイヤ101が発熱して溶ける恐れがある。このため、かかる発熱等を回避しつつ高密度電流を効率良く且つ確実に溶接ワイヤ101に印加するため、多くの場合、溶接箇所に近い給電チップ104部分で高密度電流を溶接ワイヤ101に印加するように工夫されている。
【0007】
ここで、上記給電チップ(溶接用給電チップ装置)104部分の従来例を更に詳述する。
【0008】
〔給電チップの従来例1〕
図28(A)(B)に示す給電チップ111は、中心軸上に溶接ワイヤ挿通孔111aを備えた円筒状に形成され、図28(A)(B)に示すように上端部に取り付け用のねじ部111Aが設けられ、下端部周囲にはテーパ111Bが付された形状となっている。この場合、長さLは40〜45〔mm〕に設定され、直径DT は約10〔mm〕に設定されている。また、中央部の溶接ワイヤ挿通孔111aの直径は、挿通される溶接ワイヤ101の直径をD0 とすると、D0 +α(α=0.2〜0.4〔mm〕)となっている。
【0009】
そして、実際の使用に際しては、図29に示すように筒状保持部材112に保持されて溶接トーチ107内に装備され、又溶接ワイヤ101が溶接ワイヤ挿通孔111aに挿通され、しかる後、図27の状態に設定されるようになっている。この図29において、符号101Pは溶接ワイヤ101が湾曲され溶接ワイヤ挿通孔111a内の内壁面に当接して形成される給電ポイントを示す。これにより、母材(図示略)との間でアークAc が発生し前述したようにアーク溶接が行われる。
【0010】
一方、この図28の従来例1にあっては、給電ポイントが一定せず、このため、給電通路が断続的となるという事態が生じていた。
【0011】
〔給電チップの従来例2〕
図30にこれを示す。この図30に示す従来例(給電チップ121)は、前述した図28に於ける不都合を改善するためのもので、特開昭64ー18582号公報および実開昭62ー174785号公報に開示されているように、板ばね121A及びネジ121Bを用いて、溶接ワイヤ101を溶接ワイヤ挿通孔121aの内壁に押し付けるという手法を採っている。符号121bはワイヤ押圧部材を示す。
【0012】
このため、この図30における従来例にあっては、ワイヤ押圧部材121bの押圧作用によって給電ポイント101Pを確実に形成し、これによって安定した給電を継続し得るようになっている。
【0013】
〔給電チップの従来例3〕
図31(A)(B)にこれを示す。この図31(A)(B)に示す従来例(給電チップ131)は、特開平6ー304761号公報に開示されているように、外観は前述した図28の場合と同一であるが、その先端部に図31(B)に示すような断面三角形状の溶接ワイヤ挿通孔132aを備えた先端部材132を装備した点に特徴を備えている。その他の構成は前述した図28の場合と同一となっている。
【0014】
また、先端部材132の溶接ワイヤ挿通孔132aの断面形状としては、特開平6ー304761号公報では、更に上記図31(A)(B)における先端部材132の変形例として、図32(A)〜(D)に示す先端部材132A,132B,132C,132Dを提案している。この先端部材132A〜132Dは、それぞれ断面が多角形もしくは楕円形等の溶接ワイヤ挿通孔132Aa,132Ba,132Ca,132Daを備えている。そして、各溶接ワイヤ挿通孔132Aa,132Ba,132Ca,132Daの大きさは、内接円を想定した場合に当該内接円の直径を溶接ワイヤ101の直径寸法に対して0.05〜0.20〔mm〕だけ加算した大きさに設定されている。
【0015】
このため、この従来例3(図31〜図32)では、溶接ワイヤ101のガタ(中心線からのずれ)を小さくすると共に、断面空間を大きく設定し得るので、切り粉や切り屑等の異物に対しては断面内のコーナ部分を利用してこれらを有効に落下排出させることができ、また、溶接ワイヤ101を溶接ワイヤ挿通孔132a(又は132Aa〜132Da)内の内壁面で二箇所以上で接触させることができ(クサビ状の溝領域に入り込むため)、このため給電性が向上するという利点がある。
【0016】
〔給電チップの従来例4〕
図33〜35にこれを示す。この図33〜図35に示す従来例(給電チップ141)では、特開昭63ー90368号公報に開示されているように、外観は前述した図28の場合と同一で、その溶接ワイヤ挿通孔141aの周囲四箇所に当該溶接ワイヤ挿通孔141aに連なるシールドガス用のガス供給溝141bが設けられ、この溶接ワイヤ挿通孔141aおよびガス供給溝141b内にシールド用のガスを流通させるようにした点に特徴を備えている。
【0017】
更に、この図33〜図35に示す従来例では、コイルばね141Aおよび押圧ピン141Bによって溶接ワイヤ101を溶接ワイヤ挿通孔141a内の側壁に押しやって当該溶接ワイヤ101を偏心させ、これによって、給電チップ141と溶接ワイヤ101との当接状態を確実に設定しようとするものである。
このため、この図33〜図35における従来例にあっては、溶接トーチ(シールドノズル部)の全体的な小型化が可能となっており、また通常のノズル及び通常の給電チップを用いたものよりシールド効果を高めることができるという利点がある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来例1〜従来例4にあっては、以下に示す不都合が生じていた。
【0019】
即ち、図28〜図29に示す従来例1にあっては、給電チップ111の溶接ワイヤ挿通孔111aが、溶接ワイヤ101の直径より0.2〜0.4〔mm〕程度大きく設定されていることから、連続溶接によってワイヤ先端にズレ(中心位置から偏心)を生じ,同時に送給時の振動によって溶接箇所からはずれ易く、このため、ビードが蛇行するという不都合があった。
【0020】
更に、例えば真っ直ぐの溶接ワイヤ101を使用すると、溶接ワイヤ挿通孔111aが大きいため給電ポイントが得にくくなり、通電が安定せず、このため不安定なアークを生じ、溶接欠陥(品質不良)を起こし易い。
【0021】
また、図30に示す従来例2にあっては、図28における不都合が改善されアーク溶接を安定した状態で行う事が可能であるが、一方では、加工費が高騰し、更に、溶接ワイヤ101に付された押し出し力に抗して板ばね121Aにより押圧するため、経時的に、ワイヤ押圧部材121bによる噛み込みが発生し、溶接ワイヤ101を円滑に押し出すことができないという不都合が生じていた。
【0022】
更に又、ワイヤ押圧部材121bに対する噛み込みによって切り粉や切り屑等の異物が発生し、それが又かみ込みとなり、これが溶接ワイヤ挿通孔121a内に連続的に蓄積して溶接ワイヤ101の押し出し動作がかかる点においても阻害され、同時に摩擦の増加等も重なって溶接ワイヤ101が溶接ワイヤ挿通孔121aの内壁に溶着し易い。このため、溶接ワイヤ101の繰り出しの円滑化が阻害され、時には溶接ワイヤ101が不足して溶接箇所の品質低下をきたすという不都合が生じていた。
【0023】
図31〜図32に示す従来例3にあっては、給電チップ131を形成する銅もしくは銅合金から成る棒状部材の中心軸部分又は先端部材132に、断面三角形状もしくは四角形状等の溶接ワイヤ挿通孔131a,132a,132Aa〜 132Daを形成する構成であることから、生産コストが著しく増大するという不都合が常に存在していた。
【0024】
即ち、図28に示すように通常の丸穴の溶接ワイヤ挿通孔111aを備えた給電チップにあっては、ドリル加工ができるが、図31〜図32に示す断面形状の溶接ワイヤ挿通孔131a,132a,132Aa〜132Daにあっては、放電加工,超音波加工,ワイヤカット,スエージング等の加工となるため、多くの設備投資を必要とし、加工時間も長くなり、更に放電加工および超音波加工では電極等が必要となり、ワイヤカット,スエージング等の加工では消耗品が高価であり、従ってランニングコストも多大となり、生産性が悪く、単価も例えば丸穴の場合の10倍程度となるという不都合が生じていた。
【0025】
更に又、図33〜図35に示す従来例4にあっては、前述した従来例2(図30)の場合と同様に、溶接ワイヤ101を溶接ワイヤ挿通孔141a内の凸側壁に押しやって強制的に偏心させるようにしたことから、従来例2の場合と同様に切り粉や切り屑等が発生し易く、またワイヤと押圧ピン141B間に詰まり易く、且つ加工コストが高騰し,生産性が悪い等の不都合が常に存在していた。
【0026】
【発明の目的】
本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、とくに生産性が良好で、溶接ワイヤに対する給電を確実に成し得ると共に挿通動作の円滑化を図り、これによってアーク溶接の性能向上を図った溶接用給電チップ装置を提供することを、その目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、給電チップ本体と給電部とを備え、給電チップ本体は、中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備えた導電性部材からなる。又給電部は、少なくとも3個の導電性部材からなる球状部材を備え、且つ当該球状部材を、給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側にて同一平面上で同一円周上に配設固定されて成る。
そして、この各球状部材によって囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成する、という構成を採っている。
【0028】
このため、この請求項1記載の発明では、例えば図1乃至図4に示すように、給電チップ本体1のワイヤ案内穴1Cに溶接ワイヤ101を挿通し、その送出端では少なくとも三個の球状部材2に囲まれて形成される挿通孔3から溶接ワイヤ101をアーク溶接に適した所定長さに突出させ、しかるのち、所定の溶接動作に移行する。
【0029】
この場合、溶接ワイヤ101は、アーク溶接の進行とともに溶融消費されるため、その所定量が順次繰り出される。同時に溶接ワイヤ101は先端部がアークの発生位置の変化に応じて僅かに偏心するが、この場合、溶接ワイヤ101は挿通孔3の有する少なくとも三個の球状部材2相互間に形成された楔状の空間領域に挟み込まれるようにして当接する。このため、溶接ワイヤ101は確実に少なくとも二個の球状部材2に当接し通電状態が維持され、その送り出しも円滑に行われる。
【0030】
更に、継続使用の結果、溶接ワイヤに付着して切り粉等が給電チップ内に侵入しても、或いは溶接ワイヤ101と給電チップ本体1のワイヤ案内孔1Cの内面との接触により又は溶接ワイヤ101と球状部材2との接触によって切り粉等が発生しても、ワイヤ挿通孔3の断面形状が星型多角形状(但し球状部材2が三個の場合は図3(A)のように星型三角形状)であることから、楔形のコーナ部から当該切り粉等が自然落下する。このため、切り粉や切り屑によって挿通孔2が塞がることがなく、かかる点においても溶接ワイヤ101の挿通動作を更に円滑に成し得るという利点を備えている。
【0031】
請求項2記載の発明では、まず、給電チップ本体と給電部とを備えている。給電チップ本体は、中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備えた導電性部材から成る。又給電部は、少なくとも三個の球状部材を備え、且つ当該球状部材を、前述した給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側にて同一平面上で同一円周上に配設固定されて成る。
そして、この各球状部材によって囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成し、同時に、隣接する球状部材の少なくとも一方を導電性部材で形成する、という構成を採っている。
【0032】
このため、この請求項2記載の発明では、隣接する球状部材の少なくとも一方を導電性部材で形成したので、溶接ワイヤ101は当該導電性部材からなる球状部材に必ず接触することとなり、かかる点において前述した請求項1記載の発明とほぼ同等に機能する。また、導電性部材からなる球状部材以外の球状部材を耐磨耗性材料又は耐熱性材料で形成することによって給電部の耐久性の向上を図り得る。
【0033】
請求項3記載の発明では、上記請求項1又は2記載の発明において、前述した球状部材を、給電チップ本体にネジで固定する、という構成を採っている。
【0034】
このため、この請求項3記載の発明では、前述した請求項1又は2記載の発明と同等に機能するほか、各球状部材を単にねじで固定するようにしたので、給電チップ本体の構造を更に単純化すると共に、適当なスペーサを介在させる等によって各球状部材の固定位置をづらすこともでき、かかる点において溶接ワイヤ挿通孔の大きさを調整し変更することも可能となる。
【0035】
請求項4記載の発明では、上記請求項1又は2記載の発明において、球状部材は、給電チップ本体のワイヤ送出側に設けた環状突設部により形成される凹部に収納すると共に、ワイヤ送出口を有する環状蓋体で固定する、という構成を採っている。
【0036】
このため、この請求項4記載の発明では、前述した請求項1又は2記載の発明と同等に機能するほか、組み立て及び保守が容易となる。
【0037】
ここで、請求項1乃至請求項4の記載において、給電チップ本体又は環状蓋体に形成される溶接ワイヤ案内孔の直径は、前述した球状部材のより設定されるワイヤ挿通孔の内接円の直径よりも大きく形成する。
【0038】
請求項5記載の発明では、給電チップ本体と、球状部材で形成される給電部とから成る。給電チップ本体は、導電性部材から成り、筒状中空部を有すると共に溶接ワイヤ導入側の中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備え、且つそのワイヤ送出側にワイヤ送出口を備えている。
又給電部は、複数段の球状部材の層からなる。この給電部の各段の層は、導電性部材から成る少なくとも三個の同一直径の球状部材からなる。この各球状部材を、保持体として機能する筒状中空部の内壁に当接した状態で同一平面上で且つ同一円周上に配設固定する。そして、上記各球状部材のより囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成する、という構成を採っている。
【0039】
このため、この請求項5記載の発明では、前述した請求項1記載の発明と同等に機能するほか、溶接ワイヤ101の挿通や切り屑等の排出が更に容易となり、また、溶接ワイヤ101が蛇行してもその複数箇所で球状部材に接触することから当該溶接ワイヤ101に対する通電状態をより有効に維持することが可能となる。
【0040】
請求項6記載の発明では、給電チップ本体と、球状部材で形成される給電部とから成る。給電チップ本体は、導電性部材から成り、筒状中空部を有すると共に溶接ワイヤ導入側の中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備え、且つそのワイヤ送出側にワイヤ送出口を備えて成る。また、給電部は、複数段の球状部材の層からなり、この給電部の各段の層は、少なくとも三個の同一直径の球状部材からなり、この各球状部材を、保持体として機能する筒状中空部の内壁に当接した状態で同一平面上で且つ同一円周上に配設固定して成る。
【0041】
給電部の各段の層は、導電性部材から成る球状部材の層と、これより小径のセラミック等の耐熱性部材から成る球状部材の層とを、一層おきに配設する。
そして、前述した導電性部材から成る球状部材により囲まれた中央に、溶接ワイヤ挿通孔を形成する、という構成を採っている。
【0042】
このため、この請求項6記載の発明では、前述した請求項5記載の発明と同等に機能するほか、とくに一層おきに配設される層は、耐熱性が良好であることから、全体的に耐久性向上を図ることができる。
【0043】
請求項7記載の発明では、上記請求項5又は6記載の発明において、ワイヤ送出口は、給電チップ本体のワイヤ送出側に装備された環状蓋体に設ける、という構成を採っている。
【0044】
このため、この請求項7記載の発明では、前述した請求項5又は6記載の発明と同等に機能するほか、メンテナンスおよび球状部材の取り換え組み立てが容易となる。
【0045】
請求項8記載の発明では、前述した請求項5又は6記載の発明において、ワイヤ案内孔は、給電チップ本体のワイヤ導入側に装備された環状蓋体に設ける、という構成を採っている。
【0046】
このため、この請求項8記載の発明でも、上記請求項7記載の発明とほぼ同等の機能を備えたものを得ることができる。
【0047】
請求項9記載の発明では、上記請求項5乃至8にいずれかに記載の発明において、各段の層を構成する円周回りに配置された球状部材は、隣接する層の球状部材に対して給電チップ本体の中心軸方向に沿って同一線上に同位相で配設する、という構成を採っている。
【0048】
このため、この請求項9記載の発明では、前述した5乃至8にいずれかに記載の発明と同等の機能を備えたものを得ることができる。
【0049】
請求項10記載の発明では、前述した請求項5乃至8にいずれかに記載の発明において、各段の層を構成する円周回りに配置された球状部材は、隣接する他の層の球状部材の相互間に位置するように中心点からみて所定角度ずらした状態で配設する、という構成を採っている。
【0050】
このため、この請求項10記載の発明では、前述した請求項5乃至8のいずれかに記載の発明と同等の機能を有するほか、各段の球状部材が安定した状態で給電チップ本体に収納されるため、溶接ワイヤの補給作業をより一層円滑に行うことができ、各段相互間の球状部材が相互に二箇所で当接するため、導通状態を更に確実なものとすることができる。
【0051】
請求項11記載の発明では、上記請求項10記載の発明において、給電チップ本体の中空部内に配設した球状部材は、給電チップ本体の内面と前述した給電チップ本体に装備された環状蓋体とによって固定する、という構成を採っている。
【0052】
このため、この請求項11記載の発明では、前述した請求項10記載の発明と同等に機能するほか、球状部材の交換等を含めて当該装置全体のメンテナンスが容易となる。
【0053】
請求項12記載の発明では、上述した請求項1乃至11のいずれかに記載の発明において、給電チップ本体に装備され,同一面上で且つ円状に配置された各球状部材を、相互に当接した状態で同一円周上に配置する、という構成を採っている。
【0054】
このため、この請求項12記載の発明では、上述した請求項1乃至11のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、とくに各球状部材を所定位置に固定するに際して給電チップ本体内の空間形状を例えば円筒状にすると、何らの係止手段を有することなくその内壁と各球状部材との相互作用によって各球状部材を一義的に固定することが可能となる。
【0055】
請求項13記載の発明では、上述した請求項1乃至11の何れかに記載の発明において、給電チップ本体に装備され同一面上で且つ円状に配置された各球状部材は、相互に所定間隔を隔てて同一円周上に配置すると共に、その間隔を溶接ワイヤの直径よりも小さく設定する、という構成を採っている。
【0056】
このため、この請求項13記載の発明では、前述した請求項1乃至11のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、中央部の空間が広げられることから同一太さの溶接ワイヤについて比較すると隣接する各球状部材を当接した場合に比べて相対的に各球状部材の直径を小さく設定することが可能となり、このため、給電チップ本体の外形を小さくすることができる。
【0057】
請求項14記載の発明では、上記請求項13記載の発明において、給電チップ本体に装備された同一円周上の各球状部材は、隣接する他の球状部材と相互に横連結部材を介して所定間隔を維持し且つ一体的に連結する、という構成を採っている。
【0058】
このため、この請求項14記載の発明では、前述した請求項13記載の発明と同等に機能するほか、中央部の空間が広げられることから同一太さの溶接ワイヤについて比較すると隣接する各球状部材を当接した場合に対して相対的に各球状部材の直径を小さく設定することが可能となり、ひいては、給電チップ本体の外径を小さくすることができる。更に、内部の各球状部材が定位置を容易に保持されることから装置全体の組み立てが容易となる。
【0059】
請求項15記載の発明では、前述した請求項9,10,12,13又は14記載の発明において、給電チップ本体に装備された各段の球状部材は、円周上の位置が同一の球状部材をそれぞれ縦連結部材により軸方向に連結し一体化する、という構成を採っている。
【0060】
このため、この請求項15記載の発明では、前述した請求項9,10,12,13又は14記載の発明と同等に機能するほか、各段の球状部材全体を係合したのちに当該球状部材全体を給電チップ本体内に収納することができるので、組み立て及び保守が容易となる。
【0061】
請求項16記載の発明では、上記請求項15記載の発明において、縦連結部材は、その両端部を給電チップ本体の所定位置に固定する、という構成を採っている。
このため、この請求項16記載の発明では、前述した請求項15記載の発明と同等の機能し組み立て及び保守が容易となる。
【0062】
請求項17記載の発明では、前述した請求項1乃至16のいずれかに記載の発明において、各球状部材に囲まれて形成されるワイヤ挿通孔の大きさを、当該ワイヤ挿通孔に内接する円を想定した場合の当該内接円の外径をD,溶接ワイヤの直径をD0 として、「D0 <D<D0 +0.2〔mm〕」の関係を維持し得る大きさとする、という構成を採っている。
【0063】
このため、この請求項17記載の発明では、前述した請求項1乃至16のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、ワイヤ挿通孔の通路が従来のものより小さいことから、溶接作業時における溶接ワイヤの振れが少なくなり、且つ溶接ワイヤへの給電回路の接触不良を有効に排除することができる。
【0064】
請求項18記載の発明では、前述した請求項1乃至17のいずれかに記載の発明において、導電性部材を、銅又は銅合金とする、という構成を採っている。
このため、この請求項18記載の発明では、前述した請求項1乃至17のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、電気抵抗が小さくなり従って発熱を有効に抑制することができ、とくに球状部材相互間の導通状態が更に円滑化され、過熱状態の発生が有効に抑制される。
【0065】
請求項19記載の発明では、前述した請求項2,3,4,6乃至18のいずれかに記載の発明において、給電部を構成する球状部材の内、導電性部材で形成されていない他の球状部材をセラミック等の耐磨耗性及び耐熱性を有する部材により形成する、という構成を採っている。
【0066】
このため、この請求項19記載の発明では、前述した請求項2,3,4,6乃至18のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、溶接ワイヤとの接触による球状部材の磨耗を抑制し且つ耐久性向上を図ることができる。
【0067】
請求項20記載の発明では、前述した請求項1乃至19のいずれかに記載の発明において、給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側に装備される環状蓋体を、電気絶縁部材により形成する、という構成を採っている。
【0068】
このため、この請求項20記載の発明では、前述した請求項1乃至19のいずれかに記載の発明と同等に機能するほか、溶接作業時におけるスパッタの付着を抑制し給電チップ本体の耐久性向上をはかることができる。
【0069】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0070】
〔第1の実施形態〕
図1に第1の実施形態を示す。この図1において符号1は導電性部材から成る柱状の給電チップ本体を示す。この給電チップ本体1は、図1の上端部分に本体装置(図示せず)への取付け用ネジ部1Aを備え、中心軸部分には溶接ワイヤ101挿通用のワイヤ案内孔1Cを備えている。このワイヤ案内孔1Cは、溶接ワイヤ101の直径D0 〔mm〕に対して「D0 +0.2〔mm〕」以上の大きさに設定されている。
【0071】
符号2は、給電チップ本体1の溶接ワイヤ送出側に装備された同一直径の球状部材を示す。この球状部材2は、本実施形態では同一円周上で且つ相互に当接した状態で四個装備されている。この四個の球状部材2は、給電チップ本体1の図1における下端部周囲に突出された環状突設部1B内に収納され、該環状突設部1Bにネジ止めされている。符号2aは球固定手段としてのネジ部材を示す。
【0072】
上記球状部材2は、本実施形態では銅又は銅合金によって形成されている。又、符号3は、四個の球状部材2によって囲まれて成る溶接ワイヤ101用のワイヤ挿通孔を示す。この四個の球状部材2によって形成されるワイヤ挿通孔3は、該ワイヤ挿通孔3に内接する円筒を想定した場合の当該内接円筒の外径をD(図1参照),溶接ワイヤ101の直径をD0 とすると、「D0 <D<D0 +0.2〔mm〕」の関係を維持した大きさに設定されている。
【0073】
このワイヤ挿通孔3は、四個の球状部材2によって囲まれていることから四角形状の空間領域を形成し、その四隅が楔状を成すようになっている。このため、溶接ワイヤ101はこの楔状の空間領域に入り込み易い状態,即ち四本の球状部材2の何れか2個に当接し易い状態となっている。その他の構成は、前述した図31に示す従来例と同一となっている。
【0074】
次に、上記第1実施形態の作用を説明する。
まず、ワイヤ案内孔1C,ワイヤ挿通孔3に溶接ワイヤ101を挿通し、その端部を四個の球状部材2によって囲まれて成るワイヤ挿通孔3の先端部からアーク溶接に適した所定長さに突出させ、しかるのち所定の溶接動作に移行する。
【0075】
この場合、ミグ・マグ溶接法では、溶接ワイヤ101は、アーク溶接の進行とともに溶融消費されるため、その所定量が順次繰り出される。同時に溶接ワイヤ101は多くの場合、その先端部がアークの発生位置の変化に応じて僅かに偏心するが、この偏心動作によって溶接ワイヤ101はワイヤ挿通孔3の有する四箇所の楔状空間領域の何れかに挟み込まれる。このため、溶接ワイヤ101は少なくとも二個の球状部材2に確実に当接することとなり、溶接ワイヤ101の偏心動作にあっても通電状態が確実に維持される。また、溶接ワイヤ101は、ワイヤ挿通孔3に内接すると想定される円よりもその直径が前述したように幾分小さく設定されていることから、その送り出しも円滑に行われる。
【0076】
更に、継続使用の結果、溶接ワイヤに付着して給電チップ内に切り粉やゴミが侵入しても,或いは溶接ワイヤ101と球状部材2との接触等によって切り粉や切り屑が発生しても、ワイヤ挿通孔3の断面形状が四角形状であり四箇所のコーナ部から当該切り粉等が自然落下する。このため、切り粉や切り屑によってワイヤ挿通孔3が塞がることがなく、かかる点においても溶接ワイヤ101の挿通動作を円滑に成し得るという利点を備えている。
【0077】
また、球状部材2を球固定手段としてのネジ部材2aによって個別に給電チップ本体1に固定したので、溶接ワイヤ101に対する給電回路を当該球状部材2を介しても確実に形成することができ、更に必要に応じて個別に交換することがき、このため、かかる点において装備全体の保守性および耐久性の向上を図り得るという利点がある。
【0078】
ここで、四個の球状部材2を導電性材料で形成したがその一部をセラミック等の耐磨耗性及び耐熱性に優れた材料で形成してもよい。この場合、隣り合ういずれか一方は導電性材料とする。
又、図1に示す第1の実施形態にあっては、四個の球状部材2を一段装備した場合を例示したが、球状部材2については個数を限定するものではなく、図3(A)に示すように球状部材2を三個装備しても、図3(B)に示すように球状部材2を五個装備しても、又図3(C)に示すように球状部材2を六個装備してもよい。又、一段で三個以上の球状部材を複数段に重ねて装備してもよい。
【0079】
ここで、、図1では、球状部材2を同一円周上にて当接した場合を例示したが、図4に示すように、球状部材2の相互間に所定の間隙Sを隔てて同一円周上に等間隔に装備してもよい。この場合、間隙Sは溶接ワイヤ101の直径よりも小さく設定されている。
【0080】
又、図4(A)では球状部材2が四個の場合を示し、図4(B)では球状部材2が三個の場合を示す。このようにすると、球状部材2で囲まれるワイヤ挿通孔3部分の空間断面積が大きくなり、同一の溶接ワイヤ101を使用するに際しては相対的に給電チップ本体1の直径を小さくすることができ、取り扱いが容易となるという利点がある。
更に、球状部材2を図1に示す如く給電チップ本体内に取り付ける場合は、給電チップ本体の外径を小さくすることができる。
【0081】
また、球状部材2の相互間には、図4(C)に示すように球連結手段としての横連結部材4を装備してもよい。このようにすると、組み立てが容易となり生産性向上を図り得る。また、球状部材2の材質については、導電性良好な部材であれば銅又は銅合金以外のものであってもよい。
【0082】
〔第2の実施形態〕
図5に第2の実施形態を示す。この図5に示す第2の実施形態は、球状部材3の球固定手段として前述したネジ部2aに代えて環状蓋体10を装備した点に特徴を備えている。
【0083】
この環状蓋体10は、図5に示すように断面U字状に形成され、給電チップ本体11の図5における下端部に螺合されている。ここで、給電チップ本体11の図5における下端部に形成された環状突設部11Bの内側の深さは、前述した球状部材3の直径寸法よりも小さく設定されている。これによって四個の球状部材3が一括して給電チップ本体11に着脱自在に装着され、同時に当該各球状部材3と給電チップ本体11との当接状態が堅牢となるように設定されている。
【0084】
ここで、上記環状蓋体10については本実施形態にあっては銅又は銅合金にて形成されているが、セラミック等の電気絶縁性及び耐熱性を有する部材によって形成すると更によい。
また、上記環状蓋体10に形成されるワイヤー送出口10Aの直径は、球状部材で形成される星型多角形のワイヤー挿通孔101の外径寸法よりも大きく且つ球状部材3の固定支持には支障のない程度に小さく形成されている。その他の構成は前述した図1の第1の実施形態と同一となっている。
【0085】
このようにしても前述した図1乃至図2の第1実施形態の場合と同等の作用効果を有するほか、着脱が容易となり保守性及び生産性を更に有効に改善し得るという利点があり、また、環状蓋体をセラミック等の電気絶縁性材料で形成することにより、スパッタの付着を抑制する効果も備えるという利点がある。更に、送出孔10Aは比較的大きく形成されるため、切り粉や切り屑の排出には支障を生じない。
【0086】
〔第3の実施形態〕
図6乃至図9に第3の実施形態を示す。この図6乃至図9において、符号21は給電チップ本体を示す。この給電チップ本体21は、導電性部材から成り、図6乃至図7に示すように上端部に取付け用ネジ部21Aを備え、中心軸部分には溶接ワイヤ101を挿通するワイヤ案内孔21Cを備え、また、中央部から下方部分には筒状部21Bを備えている。
【0087】
給電チップ本体21の筒状部21B内には、ワイヤ挿通孔23の一部を成す同一直径の球状部材22が、前述した給電チップ本体21の内壁に当接した状態で複数段(図7では9段)にわたって収納装備されている。この各段の球状部材22は、同一円周上に所定間隔Sを隔てて三個等間隔に配設され、これによって当該球状部材22部分における前述したワイヤ挿通孔23が形成されている。
【0088】
ここで、前述した各段の球状部材22は、給電チップ本体21の中心軸に沿った方向に隣接する一方の段の各球状部材22が他方の段の各球状部材22の相互間に位置するように、各段ごとに所定角度回転した状態(所定角度ずらした状態)で配設されている。これによって、上下方向における各球状部材22が相互に安定した位置に設定される。
図7の場合、一方の段と他方の段とが、相互に60°回転した状態に配設されている(図8参照)。符号24は、上記各球状部材22の配設位置を固定するための縦連結部材としての位置固定バーを示す。
【0089】
また、上記各球状部材22は、本実施形態にあっては各段の球状部材2の全体を銅もしくは銅合金によって形成したが、一つ置きの段に位置する複数の球状部材をセラミック等の耐熱性及び耐磨耗性に優れた材料により形成してもよい。
【0090】
符号25は、給電チップ本体21の図7における下端部に螺合装備された環状蓋体を示す。また、符号26は、筒状部21A内の上端部に配設された環状押圧板を示す。この環状押圧板26は銅又は銅合金から成り、りん青銅等からなるコイルばね27によって常時図7の下方に押圧されている。
このため、適度の押圧力が前述した各球状部材22に印加され、給電チップ本体21と各球状部材22とが適度に当接され、当該各球状部材22を介して給電チップ本体21から溶接ワイヤ101に所定の溶接電流が通電されるようになっている。
【0091】
前述した位置固定バー(縦連結部材)24は、等間隔に六本装備され、それぞれ前述した各球状部材22の中心部を貫通してこれらと同一円周上に配設されている。そして、この位置固定バー24は、本実施形態にあってはその図7における下端部が環状保持板24Aに固定され、上端部が環状押圧板26の上下動を許容しつつ当該環状押圧板26を貫通して前述したコイルばね27が装備された空間内に突設されている。
【0092】
このため、上述した各球状部材22相互間の当接状態を維持しつつ当該各球状部材22の相互間が安定状態で固定されるようになっている。かかる状態は、保守時に溶接ワイヤ101を抜き取った場合にも維持される。そして、この場合、各球状部材22は位置固定バー24と共に筒状部21B内に対して一体的に挿脱され、これによって組み立てが容易となり保守作業も容易となる。
【0093】
このようにしても、前述した図1(第1実施形態)と同等の作用効果を有するほか、球状部材22相互間に溶接ワイヤ101の直径よりも小さい間隙Sを設けたので、当該球状部材22に囲まれた中心軸部分の空間が広げられることから、球状部材22の相互間を当接した場合に比較して各球状部材22の直径を小さく設定することが可能となり、更に、溶接ワイヤ101の交換補給時に残存する溶接ワイヤ101を給電チップ本体21から引き抜いても位置固定バー24および環状保持板24Aが機能して内部の各球状部材22が定位置を保持されることとなり、このため、溶接ワイヤ101の補給作業の円滑化を図ることができる。また、各段の球状部材22の全体を位置固定バー24及び環状保持板24Aと環状押圧板26とで係合したのち給電チップ本体21内に収納することができるので、組み立ておよび保守が容易となる。
【0094】
更に、各段の球状部材22にあっては、上述したように、各段の三個の各球状部材22が他方の段の三個の各球状部材22の相互間に位置するように、各段ごとに所定角度(60°)ずらした状態で安定装備したので、溶接ワイヤ101の補給作業をより一層円滑に行うことができ、各段相互間の球状部材22が相互に二箇所で当接するため、導通状態を更に確実なものとすることができる。
【0095】
ここで、上記図7の実施形態にあっては、各球状部材22の内、一段置きに球状部材22の材質を変化させた場合を例示したが、各段共、銅又は銅合金のものとセラミック等の絶縁体で形成したものとを少なくとも一つ置きに配置してもよい。このように、各球状部材22の内の一部をセラミック等の絶縁体で形成すると、耐磨耗性が良好となり全体的に耐久性向上を期待することができる。
【0096】
また、上記図7の実施形態にあっては、各球状部材22の連結手段として位置固定バー(縦連結部材)24および環状保持板24Aを装備した場合を例示したが、これに代えて図4(C)に示すように、球状部材2の相互間に横連結部材4を装備してもよい。このようにすると、構成をより簡略化することができる。
【0097】
〔第4の実施形態〕
この第4の実施形態では、給電チップ本体31を単純な円筒状とし、その上下端を環状蓋体で形成するようにしたものである。
【0098】
図10にこれを示す。この図10に示す第4の実施形態は、給電チップ本体31を円筒状部材31Aで形成すると共にこの円筒状部材31Aの上端部を形成する環状蓋体として取付けネジ部31Bを着脱自在に装備し、これによって球状部材32で形成されるワイヤ挿通孔33を長く設定した点に特徴を備えている。その他の構成は前述した図7〜図9に示す第3の実施形態と同一となっている。
【0099】
このようにしても前述した第3の実施形態(図7〜図9)と同等の作用効果を有するほか、給電チップ本体31を円筒状部材31Aで形成し且つ内部に球状部材32を収納したので、全体的に内部空間が多くなり、このため給電チップ装置全体の軽量化を図ることができ、可搬性を良好なものとすることができる。
【0100】
〔第5の実施形態〕
図11乃至図14にこれを示す。この図11乃至図14に示す第5の実施形態では、給電チップ本体41が、銅又は銅合金から成る円筒状部材41Aと、この円筒状部材41Aの図12における上下端部に装備された環状蓋体41B,41Cとにより構成されている。
【0101】
更に、給電チップ本体41内には、同一面上で且つ同一円周上に四個の球状部材42が、相互に当接して複数段にわたって収納され装備されている。そして、各段の四個の球状部材42は、相互に他方の段の各球状部材42に対して相互に45°ずれた状態で収納されている(図13,図14参照)。符号43はワイヤ挿通孔を示す。このワイヤ挿通孔43の大きさについては前述した図1の場合と同一に設定されている。
【0102】
ここで、円筒状部材41Aの図12における上端部に装備された環状蓋体41Bは、りん青銅等の導電性良好な弾性材からなり、一部に内径側に通ずるスリット溝41Baを備え、スプリングバック等の手法によって円筒状部材41Aに装着されるようになっている。
また、円筒状部材41Aの図12における下端部に装備された環状蓋体41Cは、円筒状部材41Aと同一の素材によって形成されている。その他の構成は前述した図10に示す第4の実施形態と同一となっている。
【0103】
このようにしても、前述した第4実施例(図10)とほぼ同等の作用効果を有するほか、給電チップ本体41に図12の上方に突出した取付けねじ部がないことから、装置全体をより一層軽量化することができる。また、給電チップ本体41内で複数段に積層された状態の各球状部材42を各段に四個配設すると共に同一円周上に相互に当接した状態で収納したので、前述した各実施形態の場合と異なり、各球状部材42を連結する連結手段が不要となり、その分、装置全体の簡略化および軽量化を図ることができ、従って保守性および生産性向上を図ることができる。
【0104】
ここで、環状蓋体に形成された案内孔41BA,送出孔41CAは、前述した第1乃至第2の実施形態のワイヤー案内孔及びワイヤー送出孔と同様の大きさに形成される。
また、上記第5実施形態にあっては、全ての球状部材42を銅又は銅合金等の導電性部材で形成した場合を例示したが、一段置きにセラミック等の耐熱性に優れた部材で且つ直径を導電性部材のものより小さく形成したものを装備するようにしてもよい。
【0105】
〔第6の実施形態〕
図15にこれを示す。この図15に示す第6の実施形態では、給電チップ本体51は、銅又は銅合金から成るり且つ送出口51Abを備えた環状の底板部51Aaを有する円筒状部材51Aと、この円筒状部材51Aの図15の上端部に着脱自在に螺合装備された取付けねじ部51Bとを備えて構成されている。符号51Cは、取付けねじ部51Bの中心軸部分に設けられた溶接ワイヤ101用のワイヤ案内孔を示す。
【0106】
また、給電チップ本体51内には、前述した図12の場合と同様に各段とも4個の球状部材52が複数段にわたって収納装備されている。この各段に装備された4個の球状部材52は同一円周上に相互に当接して装備されている。
【0107】
更に、給電チップ本体51の円筒状部材51A内の空間には、図15における各球状部材52の上側に、該各球状部材52を下方に押圧するための押圧用環状蓋体53と、この押圧用環状蓋体53を球状部材52側に押圧するコイルばね54と、該コイルばね54を保持する環状スペーサ55とが装備されている。
【0108】
この環状スペーサ55および押圧用環状蓋体53は銅又は銅合金から成り、コイルばね54はりん青銅等によって形成されている。また、各球状部材52はそれぞれ銅又は銅合金によって形成されている。ワイヤー案内孔51C及びワイヤー送出口51Abの直径は、例えば前述した第3の実施形態(図6乃至図9参照)の場合と同一となっている。
その他の構成は前述した図11〜14に示す第5の実施形態と同一となっている。
【0109】
このようにしても、前述した第5実施例(図11〜図14図)とほぼ同等の作用効果を有するほか、取付けねじ部51Bを円筒状部材51Aに着脱自在に螺合装備したので、保守性が良好なものとなっている。
【0110】
一方、図15において、球状部材52が複数段の各段とも球状部材52の相互間に間隙を設定した場合であっても、2〜3段の場合又は相互間の間隙が僅かの場合で各段に配設される球状部材が3〜5個程度の場合は、所定の位置に球状部材を配置して組み立てた後、球状部材の上下方向の移動がないようにその上下を環状蓋体で固定することで、当該各球状部材は円筒状部分の内壁に押圧固定される。この場合は、例えば図7に示すような位置固定バー(縦連結部材)24および環状保持板24Aが不要となる。
【0111】
〔第7の実施形態〕
図16乃至図18にこれを示す。この図16乃至図18に示す第7の実施形態では、給電チップ本体56が、銅又は銅合金から成る円筒状部材56Aと、この円筒状部材56Aの図16における上下端部に装備された環状蓋体56B,56Cとにより構成されている。この場合、環状蓋体56Bは、ネジ止めによって装備されるようになっている。
【0112】
この給電チップ本体56内には、前述した第5実施形態(図11〜図14)における球状部材42の大きさ(直径)を小さくした球状部材57が三段にわたって層状に装備され、各段には四個の球状部材57が等間隔に配設されている。符号58は中心軸部分にワイヤ案内穴58aを備えた柱状スペーサを示す。また、各段の球状部材57の相互間には、図17に示すように隙間Sが設けられている。符号57aは球状部材57によって囲まれた空間に形成される溶接ワイヤ挿通孔を示す。また、各段の球状部材57及び柱状スペーサ58は、給電チップ本体56と同様に銅又は銅合金で形成されている。
【0113】
更に、図16の下端部に螺合装備された環状蓋体56Cには、中心部に溶接ワイヤ送出口56Caが設けられ、そのその図16における上面側(球状部材57を受ける面)に、所定幅wの十字状凹溝56Cb(図18参照)が形成されている。この十字状凹溝56Cbの幅wは、本実施形態では球状部材57の半径寸法とほぼ同程度で、深さはw/3程度に設定されている。その他の構成は、前述した第5の実施形態(図11〜図14)の場合と同一となっている。
【0114】
このようにしても、前述した第5の実施形態(図11〜図14)とほぼ同等の作用効果を有するほか、とくに前述した球状部材57が柱状スペーサ58とする共に給電チップ本体56内に収納されると、当該環状蓋体56Cの十字状凹溝56Cbに前述した球状部材57が入り込み、これによって球状部材57は等間隔に配置され、同時に円周方向への移動も阻止される。
【0115】
また、上述のように、球状部材57の直径を前述した第5実施形態(図11〜図14)の場合に比較して小さくすると共に球状部材57相互間に溶接ワイヤ101の直径よりも小さい隙間Sを設けたので、給電チップ本体56の中心軸上に形成される球状部材57で囲まれた空間の内接円の直径Dを、前述した第5実施形態(図11〜図14)の場合に比較して大きくすることができる。このことは、同一太さの溶接ワイヤ101を使用する場合を考えると、相対的に給電チップ本体56を細く形成することができ、かかる点において軽量化が促進され、取り扱い易くなる。
【0116】
そして、組み立てに際しては、円筒状部材56Aの底部に環状蓋体56Cをねじ込み、その後、溶接ワイヤ挿通孔57aに内接する外径を備えた円柱部材(図示せず)を中心軸上において球状部材57を収納配置した後に柱状スペーサ58を挿入し、これを環状蓋体56Bで固定し、その後に前述した中心部の円柱を引く抜けばよい。
【0117】
ここで、上記第7実施形態にあっては、全ての球状部材57を銅又は銅合金等の導電性部材で形成した場合を例示したが、一段置きにセラミック等の耐熱性及び耐磨耗性に優れた部材を装備するようにしてもよい。
【0118】
〔第8の実施形態〕
図19乃至図20にこれを示す。この図19乃至図20に示す第8の実施形態では、給電チップ本体61は、銅又は銅合金から成る円筒状部材61Aと、この円筒状部材61Aの図19における上下端部に着脱自在に嵌合装備された一方と他方の環状蓋体61B,61Cとにより構成されている。
【0119】
この給電チップ本体61内には、4個の球状部材62が複数段にわたって収納装備されている。この各段に装備された4個の球状部材62は同一円周上に相互に当接して装備されている。符号63は各球状部材62によって囲まれてなるワイヤ挿通孔を示す。
この場合、各段の4個の各球状部材62は、下方の段の各球状部材62に順次積み重なるようにして中心軸に沿って四列平行に配設され、同時に各球状部材62を縦連結手段としての位置固定バー64でこれらを貫通して連結した点に特徴を備えている。
【0120】
更に、上記位置固定バー64は、図19に下端部側がボルトヘッドを形成し、上端部がねじ部を成している。そして、前述した一方の環状蓋体61Bに位置固定バー64のボルトヘッドが係止され、他方の環状蓋体61Cに位置固定バー64のねじ部が二重ねじ構造で固定装備され、これによって装置全体が位置固定バー64によって一体化された状態となっている。その他の構成は前述した図11〜図14に示す第5の実施形態と同一となっている。
【0121】
このようにしても、前述した第5実施例(図11〜図14)とほぼ同等の作用効果を有するほか、全体が位置固定バー64によって一体化された状態となっているため、構造が更に単純化されることから保守性および生産性が更に良好なものとなっている。
【0122】
〔第9の実施形態〕
図21にこれを示す。この図21に示す第9の実施形態では、各球状部材62と円筒状部材61Aとの間に形成される四箇所の空間61Kの内の一箇所に、当該空間内に内接すると想定される直径を備えた円柱部材70を収納装備する。そして、各各球状部材62を円筒状部材61Aの内壁に密着した状態に設定し、前述した四本の位置固定バー64を省略する。その他の構成は前述した図19乃至図20(第8の実施形態)と同一となっている。
【0123】
このようにしても、前述した図19乃至図20(第8の実施形態)のものと同等の作用効果を有するほか、図19乃至図20における四本の位置固定バー64が不要となることから、各球状部材62の孔加工および位置固定バー64に対する串刺し状の組み立て作業等が不要となり生産性を大幅に向上させることができるという利点がある。
【0124】
【実施例】
ここで、前述した図1に示す実施形態において、複数個の球状部材によって形成されワイヤ挿通孔に内接する円筒を想定し、その想定される円筒の直径Dと球状部材の直径D1 との関係を検討してみた。図1乃至図6に示す各実施形態に対応した検討結果を図22乃至図25に示す。
【0125】
この場合、図22では球状部材が三個の場合を示し、図23では球状部材が四個の場合を示し、図24では球状部材が五個の場合を示し、図25では球状部材が六本の場合を示す。又、これらをまとめた検討結果を図26に示す。
【0126】
これによると、図1乃至図6に示す各実施形態においては、球状部材の数が多いほど当該球状部材の直径を小さくすることができ、溶接用給電チップ装置の全体的な直径も小さくすることができるという結果を得ることができた。
【0127】
一方、この検討結果は、球状部材の相互間に適当な間隔を設けることによって逆に当該球状部材の直径を小さくすることができ、装置全体的の直径も小さくすることも可能となることが判明した。
【0128】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、溶接用ワイヤ用のワイヤ挿通孔を少なくとも三個の球状部材によって形成するようにしたので、溶接ワイヤに対する球状部材の直径の大きさを適当に選択設定することによって当該溶接ワイヤとこれに当接するワイヤ挿通孔の内壁面との間隔を特に孔加工をすることなく小さく設定し得るので、溶接ワイヤの振れを有効に抑制することができ、従って溶接ワイヤによる溶接箇所の狙い位置の位置ずれを小さくすることができ、同時に溶接ワイヤの連続した挿通移動を円滑に成し得ると共に、複数箇所での接触が可能となることから安定した導通(給電)状態を得ることができる。
【0129】
また、ワイヤ挿通孔の空間断面形状が、例えば四個の球状部材を使用した場合には星型四角形状という異形(円形でない)と成り、このため、円形加工孔の場合に比較して切り粉や切り屑等の異物を逃がすための連続した空間が形成され、従って切り粉や切り屑等の異物による挿通孔の目つまり及びこれに伴う溶接ワイヤの座屈等を大幅に少なくすることができ、かかる点において溶接ワイヤの挿通動作の円滑化を図ることができ、従って、溶接ワイヤを連続して安定した状態で溶接箇所に送りだすことができ、このため、溶接箇所におけるアークに不安定状態の発生が少なくなり、良好なアーク溶接を継続することができる。
【0130】
更に、溶接ワイヤのワイヤ挿通孔を異形の挿通孔としたにもかかわらず,これを複数の球状部材で容易に形成し得るので、生産上の困難性を有効に改善することができる。
【0131】
そして、特に、連続使用によってワイヤ挿通孔が一部磨耗した場合には、当該磨耗にかかる箇所の球状部材(多くはアーク溶接側に位置する球状部材)のみを交換すればよいこととなり、かかる点において装置全体の耐久性を著しく強化することができ、複数個の球状部材を収納したので全体的に内部空間が多くなり、その分、給電チップ本体部分の軽量化を達成することができ、可搬性がよいという従来にない優れた溶接用給電チップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図2】図1の底面図である。
【図3】図1内に開示した球状部材と溶接ワイヤとの関係を示す他の例で、図3(A)は球状部材が三個の場合を示し、図3(B)は球状部材が五個の場合を示し、図3(C)は球状部材が六個の場合を示す。
【図4】図1内に開示した球状部材相互間に隙間Sを設定した場合の例を示す図で、図4(A)は球状部材が四個の場合を示し、図4(B)は球状部材が三個の場合を示し、図4(C)は球状部材が3個の場合の他の例を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す正面図で、図6(A)は正面図、図6(B)は底面図である。
【図7】図6(A)のAーA線に沿った断面図である。
【図8】図7のAーA線に沿った断面図である。
【図9】図7のBーB線に沿った断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態を示す平面図である。
【図12】図11のAーA線に沿った断面図である。
【図13】図12のAーA線に沿った断面図である。
【図14】図12のBーB線に沿った断面図である。
【図15】本発明の第6の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図16】本発明の第7の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図17】図16のAーA線に沿った拡大断面図である。
【図18】図11内に開示した下方の環状蓋体の例を示す拡大斜視図である。
【図19】本発明の第8の実施形態を示す一部省略した縦断面図である。
【図20】図19のAーA線に沿った断面図である。
【図21】本発明の第9の実施形態を示す一部省略した横断面図である。
【図22】図1に開示した第1の実施形態の具体的な実施例を示す図で、図22(A)は球状部材が三個の場合の当該球状部材によって形成される挿通孔の大きさ(内接円)と球状部材との関係を示す説明図、図22(B)は図22(A)の具体的寸法の例を示す図表である。
【図23】図1に開示した第1の実施形態の具体的な実施例を示す図で、図23(A)は球状部材が四個の場合の当該球状部材によって形成される挿通孔の大きさ(内接円)と球状部材との関係を示す説明図、図23(B)は図23(A)の具体的寸法の例を示す図表である。
【図24】図1に開示した第1の実施形態の具体的な実施例を示す図で、図24(A)は球状部材が五個の場合の当該球状部材によって形成される挿通孔の大きさ(内接円)と球状部材との関係を示す説明図、図24(B)は図24(A)の具体的寸法の例を示す図表である。
【図25】図1に開示した第1の実施形態の具体的な実施例を示す図で、図25(A)は球状部材が六個の場合の当該球状部材によって形成される挿通孔の大きさ(内接円)と球状部材との関係を示す説明図、図25(B)は図25(A)の具体的寸法の例を示す図表である。
【図26】図22乃至図25に開示した各実施例における球状部材の大きさD1 と挿通孔に内接すると想定される円筒領域の直径Dとの関係を示す示す線図である。
【図27】ミグ・マグ溶接法を示す説明図である
【図28】図27内に開示された給電チップの従来例1を示す図で、図28(A)は縦断面図、図28(B)は図28(A)の底面図である。
【図29】図28における従来例1の使用状態を示す一部省略した説明図である。
【図30】図27内に開示された給電チップの従来例2を示す縦断面図である。
【図31】図27内に開示された給電チップの従来例3を示す図で、図31(A)は縦断面図、図31(B)は図31(A)のAーA線に沿った断面図である。
【図32】図31に示す従来例3の変形例を示す図で、図32(A)はワイヤ挿通孔が四角形の場合を示し、図32(B)はワイヤ挿通孔が五角形の場合を示し、図32(C)はワイヤ挿通孔が円形と十字状スリットとの組み合わせからなる形状の場合を示し、図32(D)はワイヤ挿通孔が楕円形の場合を示す説明図である。
【図33】図27内に開示された給電チップの従来例4を示す縦断面図である。
【図34】図33のAーA線に沿った断面図である。
【図35】図33のBーB線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1,11,21,31,41,51,56,61 給電チップ本体
2,22,32,42,52,57,62 球状部材
2a 球固定手段としてのネジ部材
3,23,33,43,57a,63 ワイヤ挿通孔
4 球固定手段としての横連結部材
10,25,41B,41C,61B,61C,56B,56C 環状蓋体
24,64 球固定手段としての位置固定バー(縦連結部材)
24A 連結部材保持手段としての環状保持板
101 溶接ワイヤ
Claims (20)
- 給電チップ本体と給電部とにより成り、
前記給電チップ本体は、中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備えた導電性部材からなり、
前記給電部は、少なくとも三個の導電性部材からなる球状部材を備え、且つ当該球状部材を、前記給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側にて同一平面上で同一円周上に配設固定し、
この各球状部材によって囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成してなる溶接用給電チップ装置。 - 給電チップ本体と給電部とにより成り、
前記給電チップ本体は、中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備えた導電性部材からなり、
前記給電部は、少なくとも三個の球状部材を備え、且つ該球状部材を、前記給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側にて同一平面上で同一円周上に配設固定し、
この各球状部材によって囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成してなり、
隣接する球状部材の少なくとも一方を導電性部材で形成してなる溶接用給電チップ装置。 - 前記球状部材は、前記給電チップ本体にネジで固定されてなる請求項1又は2記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記球状部材は、前記給電チップ本体のワイヤ送出側に設けた環状突設部により形成される凹部に収納すると共に、ワイヤ送出口を有する環状蓋体で固定して成る請求項1又は2記載の溶接用給電チップ装置。
- 給電チップ本体と球状部材で形成される給電部とからなり、前記給電チップ本体は、導電性部材から成り、筒状中空部を有すると共に溶接ワイヤ導入側の中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備え、且つそのワイヤ送出側にワイヤ送出口を備えて成り、
前記給電部は、複数段の球状部材の層からなり、
この給電部の各段の層は、導電性部材から成る少なくとも三個の同一直径の球状部材からなり、この各球状部材を、保持体として機能する筒状中空部の内壁に当接した状態で同一平面上で且つ同一円周上に配設固定して成り、
上記各球状部材により囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成して成る溶接用給電チップ装置。 - 給電チップ本体と球状部材で形成される給電部とからなり、前記給電チップ本体は、導電性部材から成り、筒状中空部を有すると共に溶接ワイヤ導入側の中心軸部分に溶接ワイヤ案内孔を備え、且つそのワイヤ送出側にワイヤ送出口を備えて成り、
前記給電部は、複数段の球状部材の層からなり、
この給電部の各段の層は、少なくとも三個の同一直径の球状部材からなり、この各球状部材を、保持体として機能する筒状中空部の内壁に当接した状態で同一平面上で且つ同一円周上に配設固定して成り、
前記各段の層は、導電性部材から成る球状部材の層と、これより小径のセラミック等の耐熱性部材から成る球状部材の層とを、一層おきに配設して成り、
前記導電性部材から成る球状部材により囲まれた中央に溶接ワイヤ挿通孔を形成して成る溶接用給電チップ装置。 - 前記ワイヤ送出口は、前記給電チップ本体のワイヤ送出側に装備された環状蓋体に設けられて成る請求項5又は6記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記ワイヤ案内孔は、前記給電チップ本体のワイヤ導入側に装備された環状蓋体に設けられて成る請求項5又は6記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記各段の層を構成する円周回りに配置された球状部材は、隣接する層の球状部材に対して前記給電チップ本体の中心軸方向に沿って同一線上に同位相で配設して成る請求項5乃至8のいずれかに記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記各段の層を構成する円周回りに配置された球状部材は、隣接する他の層の球状部材の相互間に位置するように中心点からみて所定角度ずらした状態で配設して成る請求項5乃至8のいずれかに記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記給電チップ本体の中空部内に配設した球状部材は、前記給電チップ本体の内面と前記給電チップ本体に装備された環状蓋体とによって固定されて成る請求項10記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記給電チップ本体に装備され同一面上で且つ円状に配置された前記各球状部材は、相互に当接した状態で同一円周上に配置して成る請求項1乃至11のいずれかに記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記給電チップ本体に装備され同一面上で且つ円状に配置された前記各球状部材は、相互に所定間隔を隔てて同一円周上に配置すると共に、その間隔を前記溶接ワイヤの直径よりも小さく設定して成る請求項1乃至11のいずれかに記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記給電チップ本体に装備された同一円周上の各球状部材は、隣接する他の球状部材と相互に横連結部材を介して所定間隔が維持され一体的に連結されて成る請求項13記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記給電チップ本体に装備された前記各段の球状部材は、円周上の位置が同一の球状部材をそれぞれ縦連結部材により軸方向に連結し一体化して成る請求項9,10,12,13又は14に記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記縦連結部材は、その両端部が前記給電チップ本体の所定位置に固定されて成る請求項15記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記各球状部材に囲まれて形成されるワイヤ挿通孔の大きさを、当該ワイヤ挿通孔に内接する円を想定した場合の当該内接円の外径をD,溶接ワイヤの直径をD0 として、「D0 <D<D0 +0.2〔mm〕」の関係を維持し得る大きさとした請求項1乃至16のいずれかに記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記導電性部材を、銅又は銅合金とした請求項1乃至17のいずれかに記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記給電部を構成する球状部材の内、導電性部材で形成されていない他の球状部材をセラミック等の耐熱性及び耐磨耗性部材により形成したことを特徴とする請求項2,3,4,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17又は18項記載の溶接用給電チップ装置。
- 前記給電チップ本体の溶接ワイヤ送出側に装備される環状蓋体を、電気絶縁部材により形成したことを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載の溶接用給電チップ装置。
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