JP3578531B2 - 樹脂製器具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン蒸着膜により表面性状が改質された樹脂製器具に関し、例えば体腔内に導入して使用される医療用の樹脂製器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、様々な分野で樹脂製器具が使用されているが、器具の用途によっては、十分な柔軟性が要求されるのと同時に、特定の方向への剛性が要求される場合がある。
【0003】
具体例を挙げれば、例えば、医療用器具として周知のバルーンカテーテルにおいては、カテーテルシャフトは、手元側での操作によって先端側のバルーンを血管内で押し進めねばならないため、手元側で加えられた力を先端側まで伝達できる特性(以下、プッシャビリティという)に優れているものが望ましく、それには軸方向の力に対する剛性が要求される。一方、血管には大小の曲がりくねった箇所があるため、曲がったところをスムーズに通過できる特性(以下、フレキシビリティという)に優れているものが望ましく、それには十分な柔軟性が要求される。
【0004】
また、バルーンは、パンピング時のレスポンスが良好なものほど望ましく、それには十分な柔軟性が要求される。一方、血管内を前進する際に、血管内部に形成された石灰化部に接触しても損傷しない程度の強度が要求される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術によれば、以下に述べるような問題があった。
第1に、上記プッシャビリティとフレキシビリティとは、互いに相反する面があり、両者を共に向上させることは困難で、要求される性能に応じて折衷的な対応をとらざるを得なかった。
【0006】
より詳しく説明すると、プッシャビリティは軸方向に力を伝達する性能であるため、これを改善するには、少なくとも軸方向への圧縮に対する剛性を高くせねばならない。一方、フレキシビリティは屈曲箇所をスムーズに通過する性能であるため、これを改善するには、曲げに対する剛性を低くしなくてはならない。しかし、従来のバルーンカテーテルは、カテーテルシャフトが均質な材料からなるチューブ材で構成されていたため、プッシャビリティとフレキシビリティとを同時に改善する様な剛性にすることはできず、プッシャビリティ又はフレキシビリティのどちらかを優先して改善するか、双方を程々に改善するより仕方がなかった。
【0007】
また、第2に、バルーンのパンピング時のレスポンスの改善と、バルーンの十分な強度の確保とを、同時に達成することも容易ではなかった。
より詳しく説明すると、バルーンのパンピング時のレスポンスを改善するには、バルーンをより薄くすることが望ましい。しかし、バルーンを薄くし過ぎると強度が低下して、血管内で石灰化部に接触した様な場合に損傷しやすくなるため、ある程度以上にバルーンを薄くすることはできず、それ以上はレスポンスの改善を行うことは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、樹脂が本来有する柔軟性を損なうことなく、特定方向の剛性を向上させた樹脂製器具を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、請求項1記載の樹脂製器具は、
長尺状又はフィルム状の柔軟な樹脂製の基材の表面に、該基材よりも硬質なイオン蒸着膜を形成することにより、曲げには柔軟に変形する一方、表面に平行な方向には剛性を増すように構成された樹脂製器具であって、
樹脂材料を長尺チューブ状に形成してなる柔軟に湾曲可能なカテーテルシャフトと、樹脂材料を袋状に形成してなり、前記カテーテルシャフトの先端に設けられた柔軟に拡張/収縮可能なバルーンとを備えたバルーンカテーテルとして構成されており、
前記カテーテルシャフト及び/又は前記バルーンの表面の一部に、前記イオン蒸着膜が形成されていること
を特徴とする。
【0012】
次に、請求項2記載の樹脂製器具は、
前記カテーテルシャフトが、同軸に配置された内側チューブ及び外側チューブからなり、前記イオン蒸着膜が、前記カテーテルシャフトの一部である、前記内側チューブの表面に形成されていること
を特徴とする。
【0013】
次に、請求項3記載の樹脂製器具は、
前記イオン蒸着膜が、前記バルーンの一部である、前記バルーンが折り畳まれた際に折り目として外部に突出する箇所に形成されていること
を特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
上記請求項1記載の樹脂製器具によれば、長尺状又はフィルム状の柔軟な樹脂製の基材の表面に、基材よりも硬質なイオン蒸着膜を形成してあるため、表面に平行な方向には剛性が増し、樹脂製器具が圧縮を受けた様な場合であっても、座屈等が発生しにくくなる。その一方、この膜を曲げる様な方向へ変形させると、膜には簡単に亀裂が生じるため、樹脂本来の曲げやすさは損なわれない。
【0015】
上記イオン蒸着膜とは、イオン蒸着法により形成される薄膜のことである。このイオン蒸着法とは、イオン蒸着薄膜形成装置(例えば日新電機株式会社製等)を使って、金属等を蒸発させて蒸着させると共に、加速したイオンを照射して薄膜を形成する技術で、イオン蒸着法によれば、蒸着物質の種類及び量、イオンの種類、量、及び照射速度等を調整することにより、基材に対して比較的強く結合した薄膜を形成することができる。
【0016】
イオン蒸着膜の厚さについては、同程度の柔軟性を残す場合でも、蒸着物質の種類によって異なり、特に、器具の使用目的等のより、そもそも要求される柔軟性が異なるため、一概には特定できないが、目安として1000オングストローム〜10μm程度とすればよく、イオン蒸着膜を厚くするほど剛性は高くなる傾向があるので、それを考慮して目的に合わせて適宜厚さを調整すればよい。
【0017】
イオン蒸着膜形成物質としては、金属系では、Au,Ag,Ni,Al,Mo,Pt,Ta,Ti,W、および、その他各種合金類を使うことができる。また、セラミックス系では、Al2 O3 ,BN,Si2 O3 ,TiN,バイオガラス等を使うことができる。
【0018】
なお、必要箇所にのみイオン蒸着膜を形成するには、イオン蒸着膜の形成が不要な箇所に予めマスキングを施しておき、その上で、金属の蒸着等を行えばよい。
ちなみに、イオン蒸着膜を基材よりも硬度の高い物質で形成した場合には、器具の表面に傷がつきにくくなるという利点もある。また、イオン蒸着膜を基材よりも摩擦係数の小さい物質で形成した場合には、器具の表面の滑りが良くなる。また、放射線不透過物質で形成した場合には、器具の位置をX線等によって透視することができる。この場合、器具全体にイオン蒸着膜を形成すれば、その全体をX線等により造影することができるが、特定部分にイオン蒸着膜を形成し、特定部分の存在位置や向きの確認等に応用することもできる。また、イオン蒸着膜を耐捻れ性の高い物質で形成すれば、長尺材の手元側から遠位端部へ良好にトルクが伝達される。また、銀等の抗菌性のある物質で形成すれば、抗菌性を付与することができる。また、イオン蒸着膜を抗血栓性のある物質で形成すれば、血管内に導入した時に血栓が生じにくくなる。これらは、イオン蒸着膜を形成する物質を適宜選択することにより、いずれか一つの点について改善することも、複数の点を同時に改善することも可能である。
【0021】
また、上記請求項1記載の樹脂製器具は、カテーテルシャフト及びバルーンを備えたバルーンカテーテルとして構成されており、カテーテルシャフト及び/又はバルーンの表面の一部に、前記イオン蒸着膜が形成されている。まず、カテーテルシャフトの表面にイオン蒸着膜が形成されている場合、本バルーンカテーテルを血管内で押し進める際には、カテーテルシャフト及びイオン蒸着膜は圧縮荷重を受けるが、イオン蒸着膜によってカテーテルシャフトの圧縮に対する抵抗力は向上しているので、軸方向への力を有効に伝達できる。また、このイオン蒸着膜は、厚さを適宜調整することにより、亀裂が入りやすい状態にできるので、カテーテルシャフトの湾曲が妨げられることはない。したがって、プッシャビリティ及びフレキシビリティの双方が共に改善される。
【0022】
更に、カテーテルシャフトの表面が硬質になっているため、血管内の石灰化部等を通過させる際には、カテーテルシャフトに対する食い込み現象が発生せず、よりスムーズに石灰化部等を通過させることができる。また更に、イオン蒸着膜を設けない場合に比べ、手元側から遠位端部へ良好にトルクが伝達されるので、より屈曲した血管内を容易に誘導することができる。
【0023】
なお、イオン蒸着膜に亀裂が入りやすい状態となっているが、この亀裂はカテーテルシャフトを所望の曲率で曲げるのに最低限必要な箇所にのみ発生するので、それ以外の部分では、イオン蒸着膜の連続性が損なわれておらず、イオン蒸着膜を設けない場合に比べると、イオン蒸着膜に亀裂が生じた後であっても、軸方向への力を有効に伝達でき、耐捻れ性等も良好である。
【0024】
一方、バルーンの表面にイオン蒸着膜が形成されている場合には、バルーンの表面が硬質になっているため、血管内の石灰化部等を通過させる際に、バルーンに傷がついたり、破損したりする恐れがなく、よりスムーズに石灰化部等を通過させることができる。また、上記の通り、イオン蒸着膜の厚さを適宜調整すれば、イオン蒸着膜に亀裂が入りやすい状態にできるので、イオン蒸着膜がバルーンの拡張・収縮を妨げることはない。特に、イオン蒸着膜によって損傷が防止されるので、ベースとなるフィルム自体は薄くすることができ、パンピング時のレスポンスは良好になる。
【0025】
ところで、カテーテルシャフトにイオン蒸着膜を形成する場合、カテーテルシャフトが、同軸に配置された内側チューブ及び外側チューブからなる、いわゆるダブルルーメンタイプのものであれば、イオン蒸着膜は、外側チューブ又は内側チューブのいずれの表面に形成されていてもよい。両者を比較すると、外側チューブにイオン蒸着膜を形成すれば、血管中で受ける損傷に対する強度は高くすることができるものと期待されるが、請求項2に記載の如く、内側チューブにイオン蒸着膜を形成すれば、イオン蒸着膜自体が血流中に晒されることがなく、人体に対する影響が物理的に皆無となるので、イオン蒸着膜を形成する物質を選択する際の自由度が高く、対圧縮性の高い物質や低摩擦係数の物質を選ぶなど、機能本位で材料の選択ができる。
【0026】
また更に、ダブルルーメンタイプのバルーンカテーテルで、内側チューブの一部がバルーンの内部を貫通している場合には、イオン蒸着膜が、内側チューブの表面で、特に、バルーンの内部、及びその前後10mm以内の範囲についてのみ形成されているとよい。ダブルルーメンタイプのバルーンカテーテルの場合、バルーンよりも手元側では、カテーテルシャフトが二重管となっているが、バルーンの内部では、内側チューブだけとなるため、例えば血管内を押し進める際に、二重管となっている箇所よりも座屈し易い傾向がある。その点、この様な箇所にイオン蒸着膜が形成してあれば、バルーン部分における内側チューブの座屈等を防止できる。
【0027】
更に、イオン蒸着膜をバルーンの表面に形成するに当たっては、請求項3に記載の如く、イオン蒸着膜が、バルーンの表面の内、バルーンが折り畳まれた際に折り目として外部に突出する箇所に形成されていると、イオン蒸着膜によって最も損傷しやすい部分が補強され、しかも、損傷を受けにくい部分は、より柔軟に拡張・収縮できるので、更にパンピング時のレスポンスが優れたものとなる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる変形が可能である。
【0029】
【実施例】
次に、本発明の実施の形態をより一層明確にするため、本発明を適用したバルーンカテーテルの実施例について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の実施の形態の一例に過ぎず、本発明の実施の形態を、以下に例示する具体的な材料や形状等に制限するものではない。
【0030】
[第1実施例]
第1実施例としてのバルーンカテーテル1は、図1に示す通り、柔軟なポリウレタン製のフィルムからなる紡錘形の袋状体で、内部に給排されるヘリウムガスによって拡張・収縮するバルーン3と、バルーン3に連通させて設けられ、上記ヘリウムガスの給排路となる内腔を有する柔軟なポリウレタン製のチューブからなる外側チューブ5と、バルーン3及び外側チューブ5の内部に同軸的に配置され、図示しないガイドワイヤの挿通路となる内腔を有する内側チューブ7と、バルーン3の先端側に設けられ、内側チューブ7に連通する内腔を有し、血管壁を傷つけないように先端側に丸みがつけられた先端チップ9と、外側チューブ5の内腔に連通するガス供給用ポート11、および内側チューブ7の内腔に連通するガイドワイヤ用ポート13を有するコネクタ15と、バルーン3の内部で内側チューブ7に固着されたステンレス製の筒状部材であるマーカー17とを備えている。なお、図1は、バルーンカテーテル1の全体構造の概略を示す図であって、各部の寸法の縦横比等は実際のものとは異なっている。
【0031】
また、このバルーンカテーテル1の特徴的な構成として、内側チューブ7の表面(図示斜線部)に、イオン蒸着膜19が形成されている。このイオン蒸着膜19は、イオン蒸着薄膜形成装置(日新電機株式会社製)を使って、チタンを蒸着させると共に、アルゴンイオンを加速して照射することにより形成したもので、アルゴンイオンによりチタン原子が内側チューブ7の表面にたたき込まれることにより、イオン蒸着膜19は内側チューブ7に対して比較的強く結合している。この様なイオン蒸着膜19は、内側チューブ7の曲げに伴って亀裂が入りやすく、イオン蒸着膜19が内側チューブ7の湾曲を妨げることはない。また、イオン蒸着膜19は、亀裂は入りやすいものの、亀裂により分割されたブロックは、内側チューブ7の表面において、内側チューブ7の軸方向へ密に詰まった状態で配置されているため、イオン蒸着膜19によって内側チューブ7の圧縮に対する抵抗力は向上し、軸方向への力を有効に伝達できる。したがって、プッシャビリティ及びフレキシビリティの双方が共に改善される。
【0032】
また、外側チューブ5の内部にイオン蒸着膜19があるので、イオン蒸着膜19自体が血流中に晒されることがなく、イオン蒸着膜19による人体に対する影響が物理的に皆無となる。したがって、イオン蒸着膜19を形成する物質の種類によらず、確実に従来のバルーンカテーテルと同等の安全性が確保されるので、イオン蒸着膜19を形成する物質を選択する際の自由度が高い。
【0033】
ところで、イオン蒸着膜19を内側チューブ7に設ける場合、特に、バルーン3の内部、及びその前後10mm以内の範囲についてのみ、イオン蒸着膜19を形成してもよい。この様な部分にイオン蒸着膜19が形成してあれば、比較的強度が不足しやすいバルーン部分において、内側チューブ7の座屈等を防止できる。
【0034】
次に、別の実施例について説明する。なお、以下の実施例では、イオン蒸着膜の形成箇所以外は、第1実施例と同様なので、同じ構成には同じ符号をつけてその説明を省略する。
[第2実施例]
第2実施例としてのバルーンカテーテル21は、図2に示す通り、第1実施例のものとほぼ同様に構成され、特徴的な構成として、外側チューブ5の表面(図示斜線部)に、イオン蒸着膜23が形成されている。このイオン蒸着膜23は、第1実施例と同様の方法で、イオン蒸着薄膜形成装置(日新電機株式会社製)を使って、シリコンを蒸着させると共に、酸素イオンを加速して照射することにより形成したものである。なお、酸素イオンは、シリコンをバルーン3の表面にたたき込むと同時に、蒸着したシリコンと反応して酸化物を形成し、シリコンはより化学的に安定な状態となる。
【0035】
したがって、第1実施例の場合と同様に、イオン蒸着膜23が外側チューブ5の湾曲を妨げず、しかも、イオン蒸着膜23によって外側チューブ5の圧縮に対する抵抗力は向上し、軸方向への力を有効に伝達できる。したがって、プッシャビリティ及びフレキシビリティの双方が共に改善される。
【0036】
また、特に、外側チューブ5の表面にイオン蒸着膜23があるので、外側チューブ5自体の血管中で受ける損傷に対する強度は高くなるものと期待される。また、シリコンの酸化物は、化学的に不活性で無害な物質なので、人体に対する悪い影響もない。
【0037】
[第3実施例]
第3実施例としてのバルーンカテーテル31は、図3に示す通り、第1、第2実施例のものとほぼ同様に構成され、特徴的な構成として、バルーン3の表面(図示斜線部)に、イオン蒸着膜33が形成されている。このイオン蒸着膜33は、第1、第2実施例と同様の方法で、イオン蒸着薄膜形成装置(日新電機株式会社製)を使って、銀を蒸着させると共に、ネオンイオンを加速して照射することにより形成したものである。
【0038】
この様なイオン蒸着膜33は、バルーン3の拡張に伴って亀裂が入りやすく、イオン蒸着膜33がバルーン3の拡張・収縮を妨げることはない。また、イオン蒸着膜33は、バルーン3自体を構成するフィルムに比べて硬度が高く、ベースとなるフィルムを薄くしても、イオン蒸着膜33によってバルーン3全体の硬度を高くすることができる。したがって、ベースとなるフィルムを薄くすることにより、パンピング時のレスポンスは良好となり、イオン蒸着膜33が形成されていることで、バルーン3の損傷を防止することができる。
【0039】
[第4実施例]
第4実施例としてのバルーンカテーテル41は、図4に示す通り、第1〜第3実施例のものとほぼ同様に構成され、特徴的な構成として、バルーン3の表面の内、バルーン3が折り畳まれた際に折り目として外部に突出する箇所(図示斜線部)に、イオン蒸着膜43が形成されている。このイオン蒸着膜43も、第1〜第3実施例と同様の方法で、イオン蒸着薄膜形成装置(日新電機株式会社製)を使って、チタンを蒸着させると共に、アルゴンイオンを加速して照射することにより形成したものである。
【0040】
第3実施例でも説明した通り、イオン蒸着膜43は、バルーン3の拡張・収縮を妨げることはない。また、イオン蒸着膜43は、バルーン3の最も損傷しやすい部分を補強しているので、ベースとなるフィルムを薄くしても、バルーン3の損傷を防止することができる。しかも、損傷を受けにくい部分については、イオン蒸着膜43を設けてないので、バルーン3がより柔軟に拡張・収縮でき、更にパンピング時のレスポンスが優れたものとなる。
【0041】
[参考例]
上記第1〜第4実施例では、バルーンカテーテルについて説明したが、バルーンカテーテルと同様に、体腔内へ導入される長尺部分を備えた医療用器具であれば、その長尺部分に上記の様なイオン蒸着膜を形成することにより、種々の効果を得ることができる。
【0042】
例えば、心臓血管カテーテルの場合、全体にイオン蒸着膜を形成しておけば、プッシャビリティおよびフレキシビリティが改善される他、血管内における滑りが良好となり、また、X線による造影が可能となる。また、イオン蒸着膜により、カテーテルが捻れにくくなるので、手元側の操作によるトルクを遠位端側に良好に伝達できるようになる。
【0043】
また、ドレンチューブの場合、全体あるいは体内に入る部分に銀を含むイオン蒸着膜を形成しておけば、抗菌性を付与することができ、しかも、必要な柔軟性を確保しながら、チューブが折れ曲がりにくくなるという利点もある。
更に、IVH用チューブの場合、体内に入る部分に抗菌性物質あるいは抗血栓性物質のイオン蒸着膜を形成しておけば、チューブに抗菌性あるいは抗血栓性を付与できる。
【0044】
また更に、内視鏡用チューブの場合でも、全体にイオン蒸着膜を形成しておけば、柔軟性を損なうことなく、プッシャビリティおよびフレキシビリティを改善できる。
加えて、イオン蒸着膜の一部だけをX線不透過物質で形成すれば、その部分がX線透視した時に、各位置を示すマーカーとなる。
【0045】
以上、本発明の実施例についていくつか説明したが、本発明の具体的な構成については、上記実施例以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲内の種々なる態様を採用することができる。
例えば、実施例では、カテーテルシャフト(内側チューブ又は外側チューブ)の全体にイオン蒸着膜を設けたが、例えば、手前寄りの1/2の範囲にイオン蒸着膜を設け、先端寄りの1/2にはイオン蒸着膜を設けない構成としても良い。こうすると、手元側にはより高いプッシャビリティを付与すると共に、先端側では比較的フレキシビリティを高くすることができる。
【0046】
また、実施例では、カテーテルシャフトのみ、または、バルーンのみにイオン蒸着膜を形成する例を示したが、カテーテルシャフト及びバルーンの双方にイオン蒸着膜を形成してもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上の様に、本発明の樹脂製器具によれば、樹脂が本来有する柔軟性を損なうことなく、特定方向の剛性を向上させることができる。また、基材表面の物理的性質又は化学的性質を、イオン蒸着膜を設けない場合とは異なるものに改善することができるので、例えば抗菌性等を付与することができるといった副次的な効果もある。
【0049】
特に、カテーテルシャフトにイオン蒸着膜を形成した場合は、カテーテルシャフトのプッシャビリティ及びフレキシビリティの双方が共に優れたものに改善され、また、バルーンにイオン蒸着膜を形成した場合は、バルーンの強度が高く、その分バルーンを形成するフィルムを薄くできるので、バルーン拡張時のレスポンスも改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のバルーンカテーテルを示す正面図である。
【図2】第2実施例のバルーンカテーテルを示す正面図である。
【図3】第3実施例のバルーンカテーテルを示す正面図である。
【図4】第4実施例のバルーンカテーテルを示す正面図である。
【符号の説明】
1,21,31,41・・・バルーンカテーテル、3・・・バルーン、5・・・外側チューブ、7・・・内側チューブ、9・・・先端チップ、11・・・ガス供給用ポート、13・・・ガイドワイヤ用ポート、15・・・コネクタ、17・・・マーカー、19,23,33,43・・・イオン蒸着膜。
Claims (3)
- 長尺状又はフィルム状の柔軟な樹脂製の基材の表面に、該基材よりも硬質なイオン蒸着膜を形成することにより、曲げには柔軟に変形する一方、表面に平行な方向には剛性を増すように構成された樹脂製器具であって、
樹脂材料を長尺チューブ状に形成してなる柔軟に湾曲可能なカテーテルシャフトと、樹脂材料を袋状に形成してなり、前記カテーテルシャフトの先端に設けられた柔軟に拡張/収縮可能なバルーンとを備えたバルーンカテーテルとして構成されており、
前記カテーテルシャフト及び/又は前記バルーンの表面の一部に、前記イオン蒸着膜が形成されていること
を特徴とする樹脂製器具。 - 前記カテーテルシャフトが、同軸に配置された内側チューブ及び外側チューブからなり、前記イオン蒸着膜が、前記カテーテルシャフトの一部である、前記内側チューブの表面に形成されていること
を特徴とする請求項1記載の樹脂製器具。 - 前記イオン蒸着膜が、前記バルーンの一部である、前記バルーンが折り畳まれた際に折り目として外部に突出する箇所に形成されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂製器具。
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