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JP3576328B2 - 低合金耐熱鋼及び蒸気タービンロータ - Google Patents

低合金耐熱鋼及び蒸気タービンロータ Download PDF

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JP3576328B2
JP3576328B2 JP23324596A JP23324596A JP3576328B2 JP 3576328 B2 JP3576328 B2 JP 3576328B2 JP 23324596 A JP23324596 A JP 23324596A JP 23324596 A JP23324596 A JP 23324596A JP 3576328 B2 JP3576328 B2 JP 3576328B2
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康治 守中
義弘 岡村
政智 鎌田
明次 藤田
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Japan Casting and Forging Corp
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱構造部材、特に火力発電用蒸気タービンロータ材として優れた性能を示す低合金耐熱鋼及びそれを用いた蒸気タービンロータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、火力発電用蒸気タービンプラントに用いられている高温用ロータ材の例としては、低合金系のCrMoV鋼や高Cr系の12Cr鋼が挙げられる。このうちCrMoV鋼は高温強度の限界から566℃までの蒸気温度のプラントに制限され、しかも蒸気温度によっては、ロータを冷却する必要があり構造が複雑になる。一方、12Cr鋼製のロータ材(例えば特開昭60−165359号公報、特開昭62−103345号公報など)は高温強度がCrMoV鋼よりも優れているため、最高600℃程度の蒸気温度のプラントに適用することも可能であるが、素材の製造が難しく高コストになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来技術の実状に鑑み、製造が容易で安価な低合金系の耐熱鋼であって、従来材のCrMoV鋼に比べて同等以上の靱性を有し、かつ高温強度特性に優れた新しい低合金耐熱鋼及びこの新耐熱鋼で構成される高温用蒸気タービンロータを提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく、CrMoV鋼を基本成分として合金元素の厳選を行って高温強度の改善を鋭意行い、靱性が高くかつ優れた高温特性を有する新しい高温用蒸気タービンロータ材を見出した。すなわち、本発明は次の(1)〜()の発明を含むものである。
【0005】
(1)重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、マンガン:1.0〜1.5%(1.0%を含まず)、クロム:0.8〜2.5%、ニッケル:0.1〜0.3%(0.3%を含まず)、バナジウム:0.05〜0.3%、モリブデン:1.5〜2.5%(1.5%を含まず)、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはニオブ及びタンタルを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
【0006】
(2)重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、クロム:0.8〜2.5%、バナジウム:0.05〜0.3%、ニオブ:0.01〜0.15%、モリブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはマンガン、ニッケル及びコバルトを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼
【0007】
)重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、クロム:0.8〜2.5%、バナジウム:0.05〜0.3%、モリブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはマンガン、ニッケル、コバルト、ニオブ及びタンタルを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
)重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、マンガン:0.1〜1.0%、クロム:0.8〜2.5%、バナジウム:0.05〜0.3%、モリブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはニッケル、コバルト、ニオブ及びタンタルを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
)重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、クロム:0.8〜2.5%、ニッケル:0.1〜0.3%(0.3%を含まず)、バナジウム:0.05〜0.3%、モリブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはマンガン、ニオブ及びタンタルを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
【0008】
)前記(1)、()、()のいずれか1つの低合金耐熱鋼において、重量%で窒素:0.01〜0.05%及びホウ素:0.001〜0.015%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする低合金耐熱鋼。
)前記(2)の低合金耐熱鋼において、重量%で窒素:0.01〜0.05%、ホウ素:0.001〜0.015%及びタンタル:0.01〜0.15%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする低合金耐熱鋼。
【0009】
)前記(1)〜()のいずれか1つの低合金耐熱鋼で構成されてなることを特徴とする蒸気タービンロータ。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明における各成分範囲の限定理由を述べる。
炭素:炭素は、熱処理時の焼入れ性を確保するとともに材料強度を高める効果がある。また、炭化物を形成して高温におけるクリープ破断強度の向上に寄与する。本合金系では0.15%未満の添加では十分な材料強度が得られないため、下限値を0.15%とする。一方、炭素の添加量が多すぎると靱性が低下し、かつ、高温での使用中に炭窒化物が凝集粗大化して、高温長時間クリープ破断強度を劣化させる。そのため添加量の上限を0.35%とする。材料強度特性と優れた靱性を兼ね揃えるために特に望ましい範囲は0.2〜0.3%である。
【0011】
ケイ素:ケイ素は脱酸材としての効果がある反面、基地を脆化させる元素である。脱酸効果を十分に期待する場合、最大0.35%までの添加を許容するが、本発明材の製造において、製鋼過程での真空カーボン脱酸法を適用する場合は、特にケイ素による脱酸効果をさほど期待しなくてもよく、添加量を最小限度にとどめることが可能となる。ただし、極端にケイ素量を低くするためには原料の厳選が必要となりコストが上昇するため、下限を0.005%とする。よってケイ素の成分範囲を0.005〜0.3%とする。望ましい範囲は、0.005〜0.05%であるが、この場合は真空カーボン脱酸法を採用することを前提とする。
【0012】
マンガン:マンガンは脱酸材として作用するとともに鍛造時の熱間割れを防止するのに有効な元素である。また、熱処理時の焼入れ性を高める作用がある。しかし、マンガンを加えるとその量に応じてクリープ破断強度が劣化するため添加の最大量を1.0%とした。ただし、含有量を0.1%未満に制御するためには、原料鋼の厳選と過度の精錬工程が必要となりコスト高を招くため、最低量を0.1%に設定している。
【0013】
クロム:クロムは熱処理時の焼入れ性を高めるとともに炭化物及び/又は炭窒化物を形成してクリープ破断強度の改善に寄与し、かつマトリックス中に溶け込んで耐酸化性を改善する。またマトリックス自体を強化することでもクリープ破断強度の向上に寄与する。0.8%未満であるとその効果が十分でなく、2.5%を越える量を添加すると本合金系ではクリープ破断強度が低下する傾向にある。したがって、添加範囲を0.8〜2.5%とする。望ましい範囲は1.2〜1.6%である。
【0014】
ニッケル:ニッケルは熱処理時の焼入れ性を高め、引張強さや耐力を向上させるほか、特に靱性を高めるのに有効である。しかしその反面、長時間クリープ破断強度はニッケル添加により低下する。本発明合金の特徴の一つは、ニッケル添加による焼入れ性や靱性向上を期待せず、逆に長時間クリープ破断強度に及ぼすニッケルの悪影響を排除することを目的に、ニッケル含有量の上限を長時間クリープ破断強度に及ぼす悪影響が極端には現れない0.3%未満に制限している点である。長時間クリープ破断強度を最重視する場合、ニッケル含有量は低いほど望ましいが、0.1%未満に抑制するためには原料の厳選が必要となりコストが上昇するため、下限を0.1%とする。
【0015】
バナジウム:バナジウムは熱処理時の焼入れ性を高めるとともに炭化物及び/又は炭窒化物となってクリープ破断強度を改善する。0.05%未満では十分な効果が得られない。また、逆に0.3%を越える量を添加するとむしろクリープ破断強度は低下してしまう。このため、成分範囲を0.05〜0.3%とする。
【0016】
ニオブ:ニオブは焼入れ性を高めるとともに炭化物及び/又は炭窒化物を形成して高温強度の改善に寄与する。また、高温加熱時の結晶粒成長を適度に抑制し、組織の均質化に寄与する。添加量が0.01%未満ではその効果はなく、また0.15%を越える量を添加すると、鋼塊製造時に生成したニオブの炭化物あるいは炭窒化物が熱処理(溶体化処理)時にマトリックスに十分に固溶できず、使用中に粗大化して長時間のクリープ破断強度を低下させる。そこで成分範囲を0.01%〜0.15%に限定する。
【0017】
モリブデン:モリブデンは熱処理時の焼入れ性を高めるとともにマトリックス中や炭化物及び/又は炭窒化物中に固溶してクリープ破断強度を改善する。添加量が0.1%未満であれば顕著な効果は期待されない。一方、多量に添加すると靱性が低下するとともにコスト高を招くために、添加量の上限を1.5%に制限している。
【0018】
タングステン:タングステンはマトリックス中や炭化物中に固溶してクリープ破断強度を改善する。添加量が0.1%未満であれば顕著な効果は期待されない。一方、過剰に添加すると偏析する恐れがあり、またフェライト相が出現、増加するため添加量の上限を2.5%に制限している。望ましい添加量は1.0%〜2.0%である。
【0019】
次に、本発明の他の特徴点である成分限定理由を述べる。なお、前述の説明で既に述べた成分については限定理由は同じなので、ここでは、ニオブを無添加とした理由及びマンガン、モリブデンの成分限定理由について説明する。
【0020】
ニオブ:ニオブは前述したように重要な役割を有する元素であるが、前記構成の範囲内の添加量でも、他の強化元素添加量との兼ね合いや、鋼塊の製造や鍛造、熱処理工程での微妙な温度差などにより、得られた素材の靱性が異常に低下したり、クリープ破断特性において切欠弱化傾向が現れる危険性がある。そこでこのような危険性を回避するために、前記構成における成分系からニオブを排除した点が本構成の特徴である。
しかし、ニオブを排除した結果、焼入れ性や高温強度特性の低下あるいは高温加熱時の結晶粒成長に起因した局所的な高温強度低下が懸念される。そこでこれらの点を補うため、マンガン及び/又はモリブデンの添加量を増し、マンガン及び/又はモリブデンの含有量が重量%でマンガン:1.0(1.0%含まず)〜1.5%、モリブデン:1.5(1.5%含まず)〜2.5%となるようにしている。
【0021】
マンガン:マンガンは、主として焼入れ性不足分を補うための添加であり、その分高温強度特性や靱性を若干犠牲にしている。最低添加量を前記構成の上限値とし、最大添加量を1.5%としている。最大添加量を1.5%としたのは、これ以上の添加では高温強度特性や靱性の低下が大きすぎるためである。
【0022】
モリブデン:モリブデンは、焼入れ性及び高温強度特性不足を補うために添加するものであり、その分コストの上昇や靱性の低下を若干容認している。最低添加量を前記構成の上限値とし、最大添加量を2.5%としている。最大添加量を2.5%としたのは、これ以上の添加では靱性の低下が大きすぎるためである。
【0023】
次に、本発明の更なる特徴点である成分限定理由を述べる。マンガン、ニッケル以外の元素については前記構成の場合と同じであるのでこでは省略し、マンガン及び/又はニッケルを排除する目的及び作用についてのみ説明する。
【0024】
マンガン:マンガンは脱酸材として作用するとともに鍛造時の熱間割れを防止するのに有効な元素である。また、熱処理時の焼入れ性を高める作用がある。しかし、マンガンを加えるとその量に応じてクリープ破断強度が劣化する。含有量を0.1%以下に制御するためには、原料鋼の厳選と過度の精錬工程が必要となりコスト高を招くが、コストの上昇をあえて許容し、かつ、マンガン添加によるその他の利点も期待せず、クリープ破断強度の確保を最重点に考えてマンガンを排除した点に本構成の新規性がある。
【0025】
ニッケル:ニッケルは熱処理時の焼入れ性を高め、引張強さや耐力を向上させるほか、特に靱性を高めるの有効である。しかし、ニッケルを加えるとその量に応じてクリープ破断強度が劣化する。含有量を0.1%以下に制御するためには、原料鋼の厳選と過度の精錬工程が必要となりコスト高を招くが、コストの上昇をあえて許容し、かつ、ニッケル添加によるその他の利点も期待せず、クリープ破断強度の確保を最重点に考えてニッケルを排除した点に本構成の新規性がある。
【0026】
次に、本発明の更なる特徴点である成分限定理由を述べる。ニオブ以外の元素については前記構成と同じであるのでこでは省略し、ニオブを排除する目的及び作用についてのみ説明する。
ニオブ:ニオブは前述したように重要な役割を有する元素であるが、前記構成の範囲内の添加量でも、他の強化元素添加量との兼ね合いや、鋼塊の製造や鍛造、熱処理工程での微妙な温度差などにより、得られた素材の靱性が異常に低下したり、クリープ破断特性において切欠弱化傾向が現れる危険性がある。そこでこのような危険性を回避するために、クリープ破断強度を若干犠牲にして、前記構成における成分系からニオブを排除した点が本構成の特徴である。
【0027】
次に、本発明の更なる特徴点である成分限定理由を述べるが、窒素、タンタル、ホウ素以外の元素については前記構成と同じであるのでこでは省略し、特に窒素、タンタル、ホウ素を添加する目的及び作用についてのみ説明する。
窒素:窒素は炭素や合金元素とともに炭窒化物を形成して高温強度の改善に寄与する。0.01%未満では十分な炭窒化物を形成することができないために、クリープ破断強度への寄与が十分に得られない。また0.05%を越える量を添加すると、長時間側で炭窒化物が凝集粗大化して、十分なクリープ破断強度を得ることができなくなる。また、靱性の低下も引き起こす。このため、0.01〜0.05%とする。
【0028】
タンタル:タンタルはニオブと同じく炭窒化物を形成して高温強度の改善に寄与する。また、高温で析出する炭化物及び/又は炭窒化物を微細にして長時間クリープ破断強度の改善に寄与する。添加量が0.01%未満ではその効果はなく、また0.15%を越える量を添加すると、鋼塊製造時に生成したタンタルの炭化物及び/又は炭窒化物が熱処理(溶体化処理)時にマトリックスに十分に固溶できず、使用中に粗大化して長時間のクリープ破断強度を低下させる。そこで成分範囲を0.01%〜0.15%に限定する。
【0029】
ホウ素:ホウ素は焼入れ性を高めるとともに粒界強度を高くする作用がある。このため、クリープ破断強度の改善に寄与する。しかし、過剰に添加するとかえって焼入れ性が低下したり、靱性が低下するといった悪影響が現れる。したがって、実際に添加量を制御できる最低量の0.001%を下限値とし、上限値を悪影響が現れない0.015%とする。望ましい範囲としては0.002〜0.006%である。
【0030】
以上説明した本発明の低合金耐熱鋼は、従来材のCrMoV鋼に比べて同等以上の靱性を有し、かつ高温強度特性に優れた新しい低合金耐熱鋼であり、特に高温用蒸気タービンロータ材として優れた性能を有している。
【0031】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
各実施例において、全ての材料は、50kg真空高周波溶解炉にて溶製し、加熱温度:1200℃にて鍛造を行った。各種試験に用いた試験材熱処理は、胴径1200φのロータを油冷したときの中心部を模擬した焼入れ処理を行い、次いで焼戻しは0.2%耐力がおよそ70±2kgf/mmになるように各材料の焼戻し温度を決めて行った。ただし、例1における一部の比較材では、目標の0.2%耐力を得られないものがあった。
【0032】
(例1)
表1に試験に供した材料の化学成分を示す。試料番号1〜8が参考材、試料番号9〜14が比較材に相当する。表2に表1の参考材及び比較材の機械的性質及びクリープ破断特性を示す。比較材のうち、試料番号9及び10は十分に焼きが入らず、焼戻し温度を下げても目標の0.2%耐力に到達しなかった鋼種である。
【0033】
シャルピー衝撃吸収エネルギー(常温試験)は、参考材、比較材を問わず、炭素含有量の影響が強く現れており、高炭素材ほど低い値を示している。しかし、参考材のシャルピー衝撃吸収エネルギーは、いずれも3.7kgf−m以上の値を示しており、タービンロータ材としての使用を考えた場合、十分に高い衝撃値を確保できていることがわかる。
600℃で15kgf/mmの荷重を負荷した場合のクリープ破断時間に着目すると、参考材は比較材を大幅に上回る破断時間を示しており、クリープ破断特性が十分に高いことがわかる。
以上のことは、参考材における各種元素の適切な成分設計が靱性の確保とクリープ破断強度の向上に有効であったことを示している。
【0034】
(例2)
表3に試験に供した本発明材料の化学成分を、表4に機械的性質及びクリープ破断特性を示す。試料番号15〜18の試験材の特性を表2に示した参考材の特性と比較すると、シャルピー衝撃吸収エネルギー(常温試験)は同一炭素量レベルで比較して若干低め、600℃で15kgf/mmの荷重を負荷した場合のクリープ破断時間もいくぶん短めであるが、それでも表2の比較材に比べて優れた特性を有していることがわかる。
以上のことは、例1の参考材の成分系において制御が難しいニオブを添加しない材料でも、マンガンやモリブデンの適切な添加によって、適度な靱性、クリープ破断強度を確保できることを示している。
【0035】
(例3)
表5に試験に供した本発明材料及び参考材の化学成分を示す。試料番号19は例1で用いた試料番号2の鋼の成分をベースとした本発明材、試料番号20、21、22は例1で用いた試料番号5の鋼の成分をベースとしたもので試料番号20及び21は参考材、22は本発明材である。
【0036】
表6に表5の本発明材及び参考材の機械的性質及びクリープ破断特性を示す。表6の本発明材及び参考材のシャルピー衝撃値吸収エネルギー(常温試験)はベース材とほぼ同レベルにある。かつ、600℃で15kgf/mmの荷重を負荷した場合のクリープ破断時間に着目すると、表6の本発明材及び参考材例1のベース材に比べて確実に破断時間がのびていることがわかる。以上のことは、例1の参考材の組成の低合金耐熱鋼のマンガン及び/又はニッケルを鉄で置換することで、クリープ破断強度がより一層向上することを示している。
【0037】
(例4)
表7に試験に供した本発明材料の化学成分を示す。試料番号23は例3で用いた試料番号19の鋼の成分をベースとした本発明材(試料番号19のベース材は例1の試料番号2の鋼)、試料番号24、25、26はそれぞれ例3で用いた試料番号20、21、22の鋼の成分をベースとした本発明材(試料番号20、21、22のベース材は例1の試料番号5の鋼)である。
【0038】
表8に表7の本発明材の機械的性質及びクリープ破断特性を示す。表8の本発明材のシャルピー衝撃値吸収エネルギー(常温試験)はベース材とほぼ同レベルにある。かつ、600℃で15kgf/mmの荷重を負荷した場合のクリープ破断時間に着目すると、表8の本発明材の破断時間は、例3のベース材に比べて若干短くなっている。しかし例1の試料番号2、5の鋼に比べると破断時間は長いことがわかる。以上のことは、例3の組成の材料において、制御が難しいニオブを添加しない材料でも、適度な靱性、クリープ破断強度を確保できることを示している。
【0039】
(例5)
表9に試験に供した本発明材及び参考材の化学成分を示す。試料番号27、28は例1の試料番号2の鋼の成分をベースとした参考材、試料番号29、30は例1の試料番号5の鋼の成分をベースとした参考材、試料番号31、32、33、34及び35はそれぞれ例2の試料番号16、例2の試料番号18、例3の試料番号21、例3の試料番号22及び例4の試料番号26の鋼の成分をベースとした材料で試料番号31、32及び34は本発明材、試料番号33、35は参考材である。
【0040】
表10に表9の本発明材及び参考材の機械的性質及びクリープ破断特性を示す。表10の本発明材のシャルピー衝撃値吸収エネルギー(常温試験)はベース材とほぼ同レベルにある。かつ、600℃で15kgf/mmの荷重を負荷した場合のクリープ破断時間に着目すると、表10の本発明材はベース材に比べて確実に破断時間がのびていることがわかる。以上のことは、例1〜4の組成の低合金耐熱鋼の鉄の一部を、窒素、ホウ素、タンタルのいずれか1種以上で適切に置換することで、クリープ破断強度がより一層向上することを示している。
【0041】
【表1】
Figure 0003576328
【0042】
【表2】
Figure 0003576328
【0043】
【表3】
Figure 0003576328
【0044】
【表4】
Figure 0003576328
【0045】
【表5】
Figure 0003576328
【0046】
【表6】
Figure 0003576328
【0047】
【表7】
Figure 0003576328
【0048】
【表8】
Figure 0003576328
【0049】
【表9】
Figure 0003576328
【0050】
【表10】
Figure 0003576328
【0051】
【発明の効果】
本発明の低合金耐熱鋼は、従来材のCrMoV鋼に比べて同等以上の靱性を有し、かつ高温強度特性に優れた新しい低合金耐熱鋼であり、特に高温用蒸気タービンロータ材として優れた性能を有している。
また、本発明の蒸気タービンロータは、優れた高温強度及び靱性を有しており、これにより、低コストで高効率の発電プラントの建設が可能となり、化石燃料の節約に寄与するとともに二酸化炭素の発生量を抑制するうえで有用である。

Claims (8)

  1. 重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、マンガン:1.0〜1.5%(1.0%を含まず)、クロム:0.8〜2.5%、ニッケル:0.1〜0.3%(0.3%を含まず)、バナジウム:0.05〜0.3%、モリブデン:1.5〜2.5%(1.5%を含まず)、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはニオブ及びタンタルを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
  2. 重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、クロム:0.8〜2.5%、バナジウム:0.05〜0.3%、ニオブ:0.01〜0.15%、モリブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはマンガン、ニッケル及びコバルトを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
  3. 重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、クロム:0.8〜2.5%、バナジウム:0.05〜0.3%、モリブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはマンガン、ニッケル、コバルト、ニオブ及びタンタルを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
  4. 重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、マンガン:0.1〜1.0%、クロム:0.8〜2.5%、バナジウム:0.05〜0.3%、モリブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはニッケル、コバルト、ニオブ及びタンタルを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
  5. 重量%で炭素:0.15〜0.35%、ケイ素:0.005〜0.35%、クロム:0.8〜2.5%、ニッケル:0.1〜0.3%(0.3%を含まず)、バナジウム:0.05〜0.3%、モリブデン:0.1〜1.5%、タングステン:0.1〜2.5%を含み、残部が不可避的不純物及び鉄からなり、不純物元素として含まれるものを除いてはマンガン、ニオブ及びタンタルを含まないことを特徴とする低合金耐熱鋼。
  6. 請求項1、3、5のいずれか1項に記載の低合金耐熱鋼において、重量%で窒素:0.01〜0.05%及びホウ素:0.001〜0.015%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする低合金耐熱鋼。
  7. 請求項2に記載の低合金耐熱鋼において、重量%で窒素:0.01〜0.05%、ホウ素:0.001〜0.015%及びタンタル:0.01〜0.15%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする低合金耐熱鋼。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の低合金耐熱鋼で構成されてなることを特徴とする蒸気タービンロータ
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