JP3550726B2 - 低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、優れた低温靱性を有する高張力鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近のエネルギー資源の開発は、今までは顧みられなかったような厳しい環境下で行われるようになってきた。この傾向は、石油や天然ガスなどの分野において顕著であり、例えば北極圏のような極寒の地での開発も精力的に行われている。
このような環境下でのエネルギー資源の開発はまた、採取した資源の輸送に使用されるパイプラインなどの低温用鋼材に対して、今まで以上に優れた品質を求めており、例えば、強度のほか低温靭性に対する要求は、一層厳しさを増してきている。
一方、エネルギー源としてLPG,LEG,LNGなどの液化ガスの利用も着実に増えつつあり、これら液化ガスの運搬や貯蔵用容器として使用される鋼材として、優れた材質とくに低温の材質特性と経済性を兼ね備えた低温用鋼材の供給が望まれている。
【0003】
ところで、上記各用途に供される低温用鋼材として、従来から、2.5 〜 9%Ni鋼が開発され広く実用化されている。この既知の低温用鋼材は、熱間圧延後の鋼材をいったん冷却した後、Ac3 変態点以上の温度に再加熱し、その温度から焼きならしまたは焼入れ(以下、この熱処理を「Q」で略記する)し、その後 Ac1変態点〜Ac3 変態点に再加熱した後焼入れ(以下、この熱処理を「Q' 」で略記する)し、Ac1 変態点より低い温度で焼もどし(以下、この熱処理を「T」で略記する)を行ういわゆるQQ' T処理、あるいはQ' を省略したいわゆるQT処理のいずれかの方法を経て製造されている。
2.5 〜 9%Ni鋼の優れた低温靱性を得るための上記の熱処理方法は、加熱、焼入れの操作を複数回にわたって行う必要があるため、経済的でないばかりか、生産性に劣り、そのうえ熱処理時に生成した多量のスケールにより鋼板の表面清浄が損なわれるという問題があった。
さらに上記鋼組成として、Nb、Vなどの析出硬化型元素を添加した場合には、オーテナイト・フェライト域加熱と焼もどし加熱の2回の加熱理時に、炭窒化析出物が粗大化して低温靭性を劣化させるという問題もあった。
【0004】
これに対して、従来上述のごとき複雑な熱処理を経ることなく、含Ni鋼を製造する方法が、特公昭61-17885号公報および特開昭58-100624 号公報に提案されている。
前記特公昭61-17885号公報に開示の技術は、Ar3 変態点以上の温度で高圧下率の圧延を施し、引き続いてAr3 変態点〜Ar1 変態点の温度範囲に一定時間保持した後焼入れし,その後Ac1 変態点より低い温度で焼きもどしを施す方法であるが、焼入性が不十分なために、良好な溶接熱影響部(以下、単に「HAZ」と略記する)特性が得られないという問題があった。
また前記特開昭58-100624 号公報に開示の技術は、2相域圧延を施した後急冷し,焼もどし処理する方法であるが、2相域圧延によりフェライトが多量に析出するため強度が不足するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、加熱、焼入れを繰り返す煩雑な熱処理に頼ることなく、従来の方法によって製造した鋼材が抱えていた問題点を克服して低温靱性に優れた高張力鋼を製造するための方法を提案することを主たる目的とする。
この発明の他の目的は、表面清浄に優れかつ高い強度とHAZ特性に優れた低温用鋼材を提供することにある。
この発明のさらに他の目的は、上記の鋼を高い生産性で経済的に製造する技術を確立することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような課題認識の下で、発明者らは、鋼の成分組成、圧延条件およびその後の熱処理条件について詳細に検討した。その結果、これらの条件を適切に組み合わせることによって、鋼組織を強度の高い微細な焼もどしマルテンサイトもしくは焼もどしマルテンサイトと下部ベイナイトの混合組織とすれば、上記問題点が解決することを見いだし本発明を完成するに至った。
この方法によれば、従来、とくにこの種の鋼材特性の向上に望ましいとされているいわゆるQQ' T処理を行わなくても、低温靭性、強度、HAZ特性およびさらに表面清浄などに優れた鋼を製造することが可能となる。
【0007】
すなわち、本発明は、鋼の成分組成、圧延およびその後の熱処理の条件を制御することにより、上記の新規知見を達成する方法であって、その要旨構成は以下の通りである。
(1) C:0.20wt%以下、Si:0.03〜0.8wt%、Mn:0.4〜4.5wt%、Al:0.07wt%以下、Ni:3.5〜6.0wt%、Nb:0.005〜0.2wt%、B:0.0003〜0.002wt%、P:0.010wt%以下、S:0.005wt%以下を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼を加熱後、1000℃以下での圧下率が30〜70%で、かつ圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃である圧延を施し、続いて(Ar3変態点+50)℃以上の温度から焼き入れた後、Ac1変態点以下の温度で焼もどしを施すことを特徴とする低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
【0008】
(2) C:0.20wt%以下、Si:0.03〜0.8wt%、Mn:0.4〜4.5wt%、Al:0.07wt%以下、Ni:3.5〜6.0wt%、Nb:0.005〜0.2wt%、B:0.0003〜0.002wt%、P:0.010wt%以下、S:0.005wt%以下を含み、かつ Mo:0.8wt%以下、Cu:0.5wt%以下、V:0.2 wt%以下、Ti:0.1wt%以下のうちから選ばれたいずれか1種または2種以上を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼を加熱後、1000℃以下での圧下率が30〜70%で、かつ圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃である圧延を施し、続いて(Ar3変態点+50)℃以上の温度から焼き入れた後、Ac1 変態点以下の温度で焼もどしを施すことを特徴とする低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
【0009】
(3) C:0.20wt%以下、Si:0.03〜0.8wt%、Mn:0.4 〜4.5wt%、 Al:0.07wt%以下、Ni:3.5〜6.0wt%、Nb:0.005〜0.2wt%、B:0.0003〜0.002wt%、P:0.010wt%以下、S:0.005wt%以下を含み、かつLa:0.03 wt%以下、Ce:0.03wt%以下のうちから選ばれたいずれか1種または2種を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼を加熱後、1000℃以下での圧下率が30〜70%で、かつ圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃である圧延を施し、続いて(Ar3変態点+50)℃以上の温度から焼き入れた後、Ac1 変態点以下の温度で焼もどしを施すことを特徴とする低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
【0010】
(4) C:0.20wt%以下、Si:0.03〜0.8wt%、Mn:0.4〜4.5 wt%、 Al:0.07wt%以下、Ni:3.5〜6.0wt%、Nb:0.005〜0.2wt%、B:0.0003〜0.002wt%、P:0.010wt%以下、S:0.005wt%以下を含み、かつ Mo:0.8wt%以下、Cu:0.5wt%以下、 V:0.2wt%以下、Ti:0.1wt%以下のうちから選ばれたいずれか1種または2種以上を含有し、さらにLa:0.03wt%以下、Ce:0.03wt%以下のうちから選ばれたいずれか1種または2種を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼を加熱後、1000℃以下での圧下率が30〜70%で、かつ圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃である圧延を施し、続いて(Ar3変態点+50)℃以上の温度から焼き入れた後、Ac1 変態点以下の温度で焼もどしを施すことを特徴とする低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法。上記各発明において、基本成分に加える添加元素の組み合わせは、
(1) Mo系のものでは、
Mo-(Cu,V,Tiのいずれか1種以上)
Mo-(Cu,V,Tiのいずれか1種以上)-(La,Ceのいずれか1種又は2種)
(2) Cu系のものでは、
Cu-(V,Tiのいずれか1種又は2種)
Cu-(V,Ti のいずれか1種又は2種)-(La,Ceのいずれか1種又は2種)
(3) V系のものでは、
V-Ti
V-Ti-(La,Ceのいずれか1種又は2種)
(4) Ti系のものでは、
Ti
Ti-(La,Ce のいずれか1種又は2種)
が好適である。
【0011】
【作用】
次に、本発明において、鋼組成を上記要旨構成のとおりに限定した理由について説明する。
C:0.20wt%以下;
Cは、焼入性を向上させ、強度を容易に上げるために有効な元素であるが、多過ぎると靭性を著しく害し、また溶接割れ感受性を高める。したがって、その含有量は0.20wt%以下とする必要がある。なお、好ましい含有量は0.10wt%以下である。
【0012】
Si:0.03〜0.8 wt%;
Siは、脱酸を促進し、強度を上げるのに有効に働く元素である。その効果は、0.03wt%以上の添加で得られるが、多すぎると、低温靭性や溶接性を著しく損なうので、その含有量は0.03〜0.8 wt%とする必要があり、好ましい含有量は0.10〜0.20wt%である。
【0013】
Mn:0.4 〜4.5 wt%;
Mnは、焼入性を向上させ、鋼の強度および低温靭性をともに高める作用があるので、高価なNiに代わる極めて有用な元素である.その効果は、0.4 wt%以上の添加で得られるが、4.5 wt%を超えて添加すると溶接割れ感受性が著しく高まるとともに焼もどし脆性も増大するので、0.4 〜4.5 wt%の範囲で添加する必要がある。なお、好ましい含有量は0.4 〜1.0 wt%である。
【0014】
Al:0.07wt%以下;
Alは、製鋼過程における脱酸作用を有するほか、熱延時および熱処理時に窒化物を形成して組織を微粒化するので有用ではあるが,あまり多くなるとAl2O3 系介在物量が増して溶接性を害する。したがって、含有量の上限は0.07wt%以下にする必要がある。
【0015】
Ni:3.5〜6.0wt%;
Niは、低温靭性および強度を向上させるのに極めて有用な元素である。その効果は、3.5wt%以上の添加で得られるが、多すぎるても、高価な元素であるうえ、効果もさほど改善されないので、3.5〜6.0wt%の範囲で添加する必要がある。なお、Niの好ましい含有量は4.0〜6.0wt%である。
【0016】
Nb:0.005 〜0.2 wt%;
Nbは、高温加熱によって鋼中に固溶し、その後の圧延過程で炭窒化物として微細に析出する。このためオーステナイト粒はその再結晶時に結晶の粗大化が著しく抑制される結果、非常に微細な組織となる。また析出硬化による強度上昇にも寄与する。これらの効果は、本発明の製造条件のもとで、0.005 wt%以上の添加で発揮される。しかし、Nbの添加量が多過ぎると、溶接部靭性を低下させるため0.2 wt%を上限とする。なお、Nbの好ましい含有量は0.005 〜0.015wt %である。
【0017】
B:0.0003〜0.002 wt%;
Bは、焼入性を高め、母材の強度上昇およびHAZ特性の向上に寄与する成分である。これらの効果は、0.0003wt%に満たないと得られず、また、過多に添加すると母材およびHAZ靱性がかえって低下する。したがって、Bの含有量は0.0003〜0.002 wt%とする必要がある。
【0018】
P:0.010wt %以下;
Pは、不純物として鋼中に必然的に含有されるものであるが、その量がわずかでも母材および溶接部の靱性に悪影響を及ぼすので0.010wt %以下にする必要がある。より好ましくは-.005 wt%以下がよい。
【0019】
S:0.005 wt%以下;
Sも、Pと同様に不純物として鋼中に必然的に含有されるものであるが、MnS 系介在物として母材および溶接部の靱性に悪影響を及ぼすので0.005 wt%以下にする必要がある。より好ましくは0.002 wt%以下がよい。
【0020】
また、この発明では、上述の基本成分のほかに,必要に応じて鋼材の特性を補足するために、 Mo、Cu、V、Ti、La、Ceから選ばれたいずれか1種または2種以上を添加することができる。以下上記各成分を限定した理由について説明する。
【0021】
Mo:0.8wt %以下;
Moは、固溶強化と焼入性向上により強度を上昇させる効果を有する。また、Mnの多量添加によって誘起される焼もどし脆性を防止するのに有効な元素である.しかしながら、Moは高価であるうえ、多量に添加すると溶接部を著しく硬化させHAZ靱性に悪影響を及ぼす。したがって、その添加量は1.0 wt%以下、好ましくは0.05〜0.30wt%の範囲とする。
【0022】
Cu:0.5 wt%以下;
Cuは、固溶強化元素であり強度を高め、さらに耐食性の向上にも有効であるが、過多に添加すると熱間加工性を阻害するので、0.5 wt%以下、好ましくは0.2 wt%以下とする。
【0023】
V:0.2 wt%以下;
Vは、析出硬化作用を有し、強度を一層向上させる場合に有効である。しかし多量に添加すると炭窒化物の生成量が増加し、溶接部の靭性を劣化させるので、0.2 wt%以下、好ましくは0.05〜0.15wt%とする。
【0024】
Ti:0.1 wt%以下
Tiは、析出硬化作用を有し、強度を一層向上させる場合に有効である。しかし多量に添加すると炭窒化物の生成量が増加し、溶接部の靭性を劣化させるので、0.1 wt%以下、好ましくは0.05wt%以下とする。
【0025】
La:0.03 wt %以下;
Laは、硫化物系非金属介在物の形態を球状化させ靱性を向上させる効果がある、しかし過多に添加すると低温靭性はかえって低下するため、0.03 wt%以下、好ましくは0.005 〜0.015 wt%とする。
【0026】
Ce:0.03 wt %以下;
Ceは、Laと同様に、硫化物系非金属介在物の形態を球状化させ靱性を向上させる効果がある、しかし過多に添加すると低温靭性はかえって低下するため、0.03wt%以下、好ましくは0.005 〜0.015 wt%とする。
なお、この発明では、La、Ce添加の代わりに、その他の希土類元素で代替することができる。
【0027】
次に、製造条件を限定した理由について説明する。
▲1▼1000℃以下での圧下率:30〜70%;
最終の鋼組織を、微細な焼もどしマルテンサイト又は焼もどしマルテンサイトと下部ベイナイトの混合組織とするためには、焼き入れ処理前の結晶粒を制御し細粒化する必要がある。焼き入れ処理前の結晶粒の細粒化を達成するためには、1000℃以下での圧下率が重要である。 すなわち、この温度域での圧下率を30%以上にすることにより、オーステナイト粒界にひずみエネルギーが蓄積され,また粒内には転位および変形帯が数多く導入される。この結果、焼き入れ−焼きもどし処理後、結晶粒の微細化および転位導入による高強度化ならびに強靭性化が可能となる。
しかし、圧下率が70%超えると、強度の低下を引き起こす。この理由は、過度の加工で加工歪蓄積個所を核にしてフェライトが多量に析出するためであると考えられる。
したがって、1000℃以下の圧下率は30〜70%の範囲で圧延する必要がある。より好ましくは、40〜60%がよい。
【0028】
▲2▼圧延終了温度:(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃;
最終の鋼組織を、微細な焼もどしマルテンサイト又は焼もどしマルテンサイトと下部ベイナイトの微細な混合組織とするためには、圧延終了温度も重要な要件である。圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃を超えると、再結晶した粒が粗大化し、焼入れ・焼もどし後の靱性に悪影響を及ぼすためであり、一方(Ar3変態点+100)℃未満では、フェライトが多量に析出し、強度が低下するためである。したがって、圧延終了温度は(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃とする必要がある。より好ましくは、900 〜700 ℃がよい。
【0029】
▲3▼焼き入れ温度:(Ar3変態点+50) ℃以上;
上記の圧延を施した後急冷するとオーステナイト相が微細なマルテンサイトおよび下部ベイナイトに変態する。この旧オーステナイト粒は前記圧延により細く伸長した組織となっている。焼き入れ温度が(Ar3変態点+50) ℃に満たないと、圧延で導入した転位が回復し、強度が低下するので、(Ar3変態点+50) ℃以上の温度から焼き入れる必要がある。より好ましくは、800 〜650 ℃がよい。
【0030】
▲4▼焼もどし温度:Ac1 変態点以下;
上記条件で焼き入れた後、Ac1 変態点以下の温度で焼もどしすることにより、はじめて、目標とする材質を備えた高張力鋼が得られる。焼もどし温度が、Ac1 変態点を超えると母材の靱性が低下する傾向にあり、材質が充足されない。なお、焼もどし温度が400 ℃以下でも母材の靱性が低下するので、下限の温度は400 ℃とするのが好ましい。
【0031】
上述した化学組成と製造条件の採用により、鋼の最終組織が微細な焼もどしマルテンサイト又は焼もどしマルテンサイトと下部ベイナイトの混合組織となり、主として組織の微細化とNb等の析出強化とにより、強度、低温靱性およびHAZ特性に優れた鋼を得ることができる。
なお、この発明の組織は、従来のいわゆるQQ' T法で得られる組織とは著しく異なっている。すなわち、従来のQQ' T法で得られる組織は、はじめの焼入れ過程(Q)で生じた粗いマルテンサイト組織が2回目の焼入れ(Q' )時の加熱によリ、一部はフェライトヘ、一部はオーステナイトヘと変態するが、この際生じたオーステナイトの一部が冷却に際してフェライト相を取り囲んだ形でマルテンサイト組織になる。これが、その後の焼もどし(T)によりフェライト粒を取り囲んだ焼もどしマルテンサイトからなる組織となる。
【0032】
【実施例】
実施例1
表1に示す成分組成の鋼を溶製してスラブとし、これを1150℃に加熱した後、表2に示す各条件で圧延と熱処理を施した。ここに、比較のために従来のQQ’T処理によっても製造した。なお、鋼板板厚はすべて25mmとした。これら方法により製造した鋼板の機械的性質(降伏強さ、引張強さ、シャルピー衝撃試験における破面遷移温度および−110 ℃での衝撃吸収エネルギー)を調べた。その結果を表2に併せて示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
実施例2
表3に示す組成の各鋼を溶製してスラブとした後、1150℃に加熱した後、表4に示す各条件で圧延および焼入れの後、570 ℃において焼もどし処理を行った(発明法、比較法)。この他に、鋼 2,3,6,8〜13については従来のQQ’T処理(890 ℃で1時間加熱後水冷と700 ℃で20分間加熱後水冷の後、570 ℃で焼もどしの処理)によっても製造した。
これらの鋼板の降伏強さ、引張強さおよびシャルピー衝撃試験における破面遷移温度、−60℃および−110 ℃での吸収エネルギーおよび再現HAZ靭性について調べた結果を表4に示す。ここで、再現HAZの条件は、ピーク温度が1400℃および 800℃の単サイクル熱履歴とし、800 ℃から 500℃までの冷却時問を30秒とした。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の製造方法によれば、従来のQQ’T処理によって得られるよりも優れた特性、すなわち、低温靱性に優れるとともに良好なHAZ特性と高い強度を、他を犠牲にすることなく実現した低温用鋼を提供できるほか、こうした鋼材を高い生産性の下で経済的に製造することができる。
Claims (4)
- C:0.20wt%以下、Si:0.03〜0.8wt%、Mn:0.4〜4.5wt%、Al:0.07wt%以下、Ni:3.5〜6.0wt%、Nb:0.005〜0.2wt%、B:0.0003〜0.002wt%、P:0.010wt%以下、S:0.005wt%以下を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼を加熱後、1000℃以下での圧下率が30〜70%で、かつ圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃である圧延を施し、続いて(Ar3変態点+50)℃以上の温度から焼き入れた後、Ac1変態点以下の温度で焼もどしを施すことを特徴とする低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
- C:0.20wt%以下、Si:0.03〜0.8wt%、Mn:0.4〜4.5wt%、Al:0.07wt%以下、Ni:3.5〜6.0wt%、Nb:0.005〜0.2wt%、B:0.0003〜0.002wt%、P:0.010wt%以下、S:0.005wt%以下を含み、かつ Mo:0.8wt%以下、Cu:0.5wt%以下、V:0.2wt%以下、Ti:0.1wt%以下のうちから選ばれたいずれか1種または2種以上を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼を加熱後、1000℃以下での圧下率が30〜70%で、かつ圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃である圧延を施し、続いて(Ar3変態点+50)℃以上の温度から焼き入れた後、Ac1 変態点以下の温度で焼もどしを施すことを特徴とする低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
- C:0.20wt%以下、Si:0.03〜0.8wt%、Mn:0.4〜4.5wt%、Al:0.07wt%以下、Ni:3.5〜6.0wt%、Nb:0.005〜0.2wt%、B:0.0003〜0.002wt%、P:0.010wt%以下、S:0.005wt%以下を含み、かつLa:0.03wt%以下、Ce:0.03wt%以下のうちから選ばれたいずれか1種または2種を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼を加熱後、1000℃以下での圧下率が30〜70%で、かつ圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃である圧延を施し、続いて(Ar3変態点+50)℃以上の温度から焼き入れた後、Ac1 変態点以下の温度で焼もどしを施すことを特徴とする低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
- C:0.20wt%以下、Si:0.03〜0.8wt%、Mn:0.4〜4.5wt%、Al:0.07wt%以下、Ni:3.5〜6.0wt%、Nb:0.005〜0.2wt%、B:0.0003〜0.002wt%、P:0.010wt%以下、S:0.005wt%以下を含み、かつ Mo:0.8wt%以下、Cu:0.5wt%以下、V:0.2wt%以下、Ti:0.1wt%以下のうちから選ばれたいずれか1種または2種以上を含有し、さらにLa:0.03w%以下、Ce:0.03wt%以下のうちから選ばれたいずれか1種または2種を含有し、残部は実質的にFeの組成からなる鋼を加熱後、1000℃以下での圧下率が30〜70%で、かつ圧延終了温度が(Ar3変態点+300)℃〜(Ar3変態点+100)℃である圧延を施し、続いて(Ar3変態点+50)℃以上の温度から焼き入れた後、Ac1 変態点以下の温度で焼もどしを施すことを特徴とする低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法。
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