JP3547665B2 - 光学素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小光学素子の設計に係り、例えば、LSIのチップ間、チップを複数搭載したボード間、あるいはボードを装着した架間や装置間における光接続や光通信など、光信号を用いるあらゆる分野にわたる微小光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は従来の光学素子を説明するための図である。
【0003】
微小光学素子は、図7(a)に示すようなレンズ71などの屈折型光学素子では、厚さが厚くなりすぎる等の理由から、使用する光の波長の整数倍の光路差に相当する厚さ分を取り除き、図7(b)に示すような最大の厚みが光路差一波長分に相当する位相フレネルレンズ72を用いるのが理想的である。
【0004】
フレネルレンズの各帯の位置は、中心からの距離をrとすると次式で表される。
【0005】
r=(2nfλ十n2λ2)1/2 …(1)
ここで、λは光の波長、fはレンズの焦点距離、nは正の整数で、中心から何番目の帯であるかを示す。フレネルレンズは、内側の低周波数領域では屈折、外側の高周波数領域では回折の効果が大きく寄与して波面を変換する集光素子である。設計通りの形状が再現できれば、ほぼ100%に近い効率が得られるが、図7(b)のフレネルレンズ72のような連続的な曲面や、傾斜の異なる斜面などを忠実に再現するのは困難で、素子の小型化、微細化が進むなか、焦点距離やレンズ径などの異なる素子の集積化を考えると、実用的にはほぼ不可能である。
【0006】
これに対して、図7(c)に示した位相型フレネルゾーンプレート(FZP)73は、回折効果のみで波面変換を行う素子で、(b)のフレネルレンズ72を0、πの2値の位相で近似したものと考えることができる。この素子では、(c)に示すごとく、深さが一定の溝を形成すればよいので、微細化、集積化した場合にも、従来の半導体の大規模集積回路(LSI)におけるプロセス技術、リソグラフィ技術を使えば比較的容易に製作できる。しかし、特に中心部で回折効果が少ないため、設計通りに形成できた場合でも、40.5%と効率が低い。
【0007】
そこで、LSIのリソグラフィ技術を用いて少しでも効率の高い素子を作るため、(b)の理想形状を階段型形状で近似した図7(d)に示すデジタルブレーズド素子74が作られるようになった。
【0008】
図7(d)は、簡単のため4段階近似の場合を図示したものである。実際には、8段階、16段階などが試作されている。これらの素子は、露光によるレジストパターン形成と、それをマスクとしたエッチング工程をn回繰り返すことにより、2n段階の近似形状を形成する。4段階、8段階、16段階と上がるにつれ、理論上の回折効率は、81%、95%、99%と向上するが、その分、必要とするマスク数や工程数も2回、3回、4回と増えていき、それに伴い、マスク精度や、重ね合わせの精度も要求され、コストの上昇は避けられない。
【0009】
ここまでは、光学素子として有効に機能するための位相差を、厚みを変えることで調整する素子について述べた。しかし、位相差は、素子の厚みと屈折率によって決まるため、厚みを一定とし、屈折率を変えることで位相差を調整する方法も考えられる。
【0010】
図7(e)、(f)は、素子媒質の屈折率を変化させることで、光路差を変調しようという屈折率変化素子75を示し、図7(e)はその厚さを、図7(f)はその屈折率を示す。
【0011】
このような素子が設計通り実現できれば効率は100%に達すると考えられる。例えば、素子媒質の屈折率を変化させるのは選択的に拡散するイオン交換法等により行われる。この方法では屈折率分布を中心部から周辺部に向かって一様に変化させ、基板表面に単純な円形のレンズ素子を形成することは可能である。しかし、屈折率分布の勾配を場所によって任意に制御することは困難なため、様々な要求に対応するレンズ素子を集積化して形成することや、図7(f)に示すような局所的な屈折率分布を実現することは不可能である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上、述べてきたように従来の位相型光学素子では、連続的に位相が変化するものは製作が困難である。また、段階的に位相が多値に変化するものは、位相のレベル数を減らせば、効率が低くなり、レベル数を増やせば製作工程数が増え、コストが上昇し、製作が困難になるという問題点があった。
【0013】
本発明は上記の問題点に鑑みて創案されたもので、その目的は、製作工程数が少なく、製作が比較的容易で、集積化が可能な、回折効率の高い光学素子を得ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明では、使用する光の波長よりも短い周期を持つ2値構造により、透過または反射する光の位相を制御して光学素子を形成する。
【0015】
すなわち、本発明の光学素子は、基板の表面に2値構造を有し、前記2値構造の分布状態を変化させて、前記基板の実効的な屈折率を前記表面内の位置によって変化させ、入射光の波面を変化させる光学素子であって、前記2値構造は、1組の2値構造の前記表面の一方向の寸法が前記入射光の波長以下の微細構造であることを特徴とする。
【0016】
また、前記表面には、光学素子としての機能を持たせるための前記実効的な屈折率の値が最大値から最小値まで緩やかに変化する領域が複数同一方向に並んで存在し、その各領域の中に前記実効的な屈折率の制御のための前記入射光の波長以下の微細構造の周期的な繰り返しが組み込まれ、前記微細構造の周期的な繰り返しの中で前記微細構造のパタン分布に変化があることを特徴とする。
【0017】
また、前記微細構造のパタン分布の変化の方向が1次元であることを特徴とする。
【0018】
また、前記実効的な屈折率の変化の繰り返しの方向と、前記微細構造のパタン分布の変化の方向が平行であることを特徴とする。
【0019】
また、前記実効的な屈折率の変化の繰り返しの方向と、前記微細構造のパタン分布の変化の方向が垂直であることを特徴とする。
【0020】
また、前記微細構造のパタン分布の変化の方向が2次元であることを特徴とする。
【0021】
また、前記2値構造は前記表面のエッチングにより形成されることを特徴とする。
【0022】
さらに、前記2値構造は前記表面上に設けた薄膜により形成されることを特徴とする。
【0023】
本発明では、上記の構造により、イオン交換や熱拡散などによる屈折率制御を行わず、また中間厚みも必要としないため、通常のリソグラフィの方法を用いて比較的容易に、回折効率の高い微細な光学素子を作製できる。また、集積化も可能である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
図1は、本発明の基本的な考え方となる人工屈折率制御構造(ARI構造)による光学素子形成の概念を示す図である。
【0026】
一般に透過型の回折格子10に光2が入射すると、入射方向からの開き角θの方向に回折光3が出射される。
【0027】
このとき、回折角θは、光の波長λと格子の周期pを用いて
sinθ=mλ/p …(2)
で表される。mは回折の次数で、m=1の場合の1次回折光が最も小さい角度方向に伝搬する。
【0028】
しかし、式(2)からもわかるように、格子の周期pが短くなるほど1次回折光の角度θは大きくなる。
【0029】
図1(b)に示すように、入射光の波長λより周期pが短くなると、sinθ>1となり、1次回折光3が消滅する。1次回折光3がなくなると、この回折格子1を通過する光は0次光4だけとなる。
【0030】
入射光の波長λに比べて格子の周期pが充分短いとき、この回折格子1は均質な媒質のように振る舞い、回折格子1を透過した0次光4は、回折格子1を形成する物質の屈折率よりも小さい(空気の屈折率に近い)屈折率の媒質を透過したのと同様の位相変調を受ける。
【0031】
すなわち、図1(b)の回折格子1は、物質の屈折率nmと周囲の屈折率n0との中間値を持つ均質な媒質のように振る舞う。ここで、回折格子の物質部分をパタン部と呼ぶことにすると、格子のパタン密度を変えることで、見かけ上の屈折率を制御することができる。この性質を利用して、場所によって実効的な屈折率を変えることで光学素子を作ることができる。
【0032】
従来技術のところで説明したように、図7(f)に示すような屈折率分布を、イオン交換など物質の組成を変えることで直接屈折率を変化させるのではなく、使用する光の波長より短い周期を持つ2値の位相格子により、実効的な屈折率を変化させて、例えば図7(f)と同等な実効屈折率分布を与え、透過光(または反射光)の位相を変化させることで、その波面を特定の方向に向け、あるいは集光させることができる。図1(c)は、図1(a)、(b)に示した人工屈折率制御構造を用いてパタン密度を変化させることにより、光学素子を形成する例を示す図である。
【0033】
すなわち、本発明の光学素子は、基板の表面に2値構造を有し、2値構造の分布状態を変化させて、基板の実効的な屈折率を変化させ、入射光の波面を変化させる光学素子であって、2値構造は、1組の凸と凹の2値構造の表面方向の一方向の寸法が入射光の波長以下の微細構造である。
【0034】
光学素子の種類としては、通常の回折格子に相当するものや、プリズムに相当するもの、フレネルレンズに相当するもの等、光の進行方向を変化させる素子、光を複数方向に分岐させる素子、集光する素子等、他の方法で作製可能な素子はほとんど全て本発明による実効屈折率制御構造(人工屈折率制御構造)で実現できる。
【0035】
パタン部の形成は、LSIなどの集積化された大規模な電気回路を作製するときに利用されるリソグラフィとエッチングの技術によって実現できる。例えば、光通信に使われる波長1.55μmの光に対する光学素子を作ろうとするとき、上記式(2)において、1次回折光が消滅するのは、周期pが波長λと一致する1.55μmであるので、周期pをこれよりも小さくする。周期pの上限が1.55μmであるから、周期pは1.54μmでも構わないが、より安定した屈折率制御構造を得るためには、周期pは波長の1/2より小さいことが望ましい。したがって、周期pは0.775μm以下が望ましい。さらに具体的な数値を挙げると、波長λ=1.55μmに対して、周期p=0.7μmとして、位相制御のためのパタン部を場所により0.05μm〜0.65μmの範囲で変化させる。ここで、現状のLSI製造のためのリソグラフィでは、X線露光や電子ビーム露光法などにより0.1μmよりさらに微細なパタンを形成できるようになっているため、リソグラフィにより形成可能な微細パタンを0.05μmとして考えた。さらに微細なパタンが形成できれば、周期0.7μmの人工屈折率制御のための周期構造のパタン部を、可能な限り幅広く例えば0.01μm〜0.69μmなどの範囲で変化させてもよい。
【0036】
なお、2値構造は、エッチング等により基板の表面に一体に形成するか、基板表面に設けた薄膜により形成する。以下に示す実施例や図において、基板およびパタン部を形成する部材は、例えば普通のガラス材料、石英(SiO2)、GaAs等が適用できる。HeNeレーザー(波長632.8nm)等の可視光光源を用いる場合は、ガラス、石英、SiC、GaN等の材料が、透過率の面から適している。また、面発光レーザー等、波長が800〜1000nmの範囲の光に対しては、やはりこれらの光に対して透明な部材としてガラス、石英の他に、SiC、SiN、GaAs、GaN等が適用できる。さらに長波長側の1μmを超える波長帯(通信波長1.3μm、1.55μmなど)では、上述の材料に加えて、SiやInP等を用いることができる。以上具体的な材料の例を示したが、実際には基板となる部材は、透過光学系においては、入射させる波長の光を一部でも透過するものであれば何でもよく、反射光学系においては、後で、表面に反射膜をコートすることができるので材質を選ばない。また、人工屈折率制御構造のためのパタン部(格子部)は、上記基板を彫り込んで形成するために基板部と同じ材質でもよく、また、基板部に他の材質を貼り付けたり、塗布するなどの方法で形成するために基板部と異なる材質でも構わない。
【0037】
さらに、パタン部の形成方法について説明を補充すると、エッチング、感光材の露光現像、モールド(型押し)等が挙げられる。さらに、貼り付け、塗布して形成する場合の材料としては、フッ素化ポリイミド等のポリイミド、BCB(ベンゾシクロブテン:感光性有り)、光硬化性樹脂、UVエポキシ樹脂、PMMA(紫外線にも電子ビームにも感度有り、レジストとして使用可能)等のアクリル樹脂、レジスト全般などのポリマーが挙げられ、また、塗布可能なガラス材としてSOG(スピン オン グラス)等が挙げられる。
【0038】
【実施例】
以下具体的な例を挙げて、本人工屈折率制御構造による光学素子について説明する。
【0039】
なお、以下で使用する2つの言葉「素子周期方向」、「構造周期方向」について説明する。
【0040】
「素子周期方向」は、光学素子としての機能を持たせるために位相変調させる方向、すなわち、屈折率勾配の方向、実効的な屈折率の変化の繰り返し方向のことである。1次元回折格子(グレーティング)など位相変調が周期的である場合は、素子周期方向という言葉が当てはまるが、フレネルレンズなどのように位相変調が周期的でない場合についても便宜的にこの言葉を使うことにする。
【0041】
「構造周期方向」は、屈折率制御のための微細構造の周期方向、すなわち、パタン分割方向、微細構造のパタン分布の変化の方向のことである。
【0042】
実施例1(1次元回折格子:平行ARI構造)
人工屈折率制御の構造周期方向が、光学素子形成のための素子周期方向(屈折率勾配の方向)に一致する例を図2に示す。図2(a)、(b)はそれぞれ、レンズ機能のない1次元等間隔回折格子(グレーティング)を人工屈折率制御構造で形成した2例であり、素子周期は一定である。5は1次元回折格子、6は基板である。(a)、(b)は素子の一部分を上から見た図、(c)は(a)の断面図である。
【0043】
一素子周期内の屈折率勾配もしくは位相差勾配が線形の回折格子では、図2(a)〜(c)に示すように、一素子周期内を波長以下の人工屈折率制御構造周期に分割し、分割された各々の構造周期内に順次要求される位相差を与えるような線幅の線パタンを形成することで、図2(d)にその断面図を示すような位相回折格子7と同等の機能を持つ光学素子ができる。
【0044】
図2(a)と(b)の違いは、次の通りである。(a)では一構造周期内での線パタンを必ず構造周期内の位相差の大きい方の端に接するという規則を設けて線パタンを配置しているため、付与すべき位相差が決まればそれ以外の自由度はなく一意的に線パタン配置が決まる。一方、(b)では(a)のような規則を設けず、一構造周期内での線パタンの配置位置を自由度として残したため、例えば光学素子としての回折効率を最大にするような配置位置の最適化をすることができる。
【0045】
(1次元レンズ:平行ARI構造)
また、この他にも直角座標での1次元素子で1方向にのみ集光機能を持った1次元レンズ(またはシリンドリカルレンズ)に相当するような光学素子を、上述のような人工屈折率制御の構造周期方向が素子周期方向に一致する構造で形成する例も同様に考えられる。
【0046】
図には示さないが、図2(a)や(b)において、各素子周期が一定でなく、集光機能を持つように、直角座標での1方向の端点の座標値が上述の式(1)で与えられるようなマクロ構造とし、その各帯内は、図2(a)、(b)と同様のARI構造とする例も考えられる。
【0047】
実施例2(フレネルレンズ:平行ARI構造)
人工屈折率制御の構造周期方向が、光学素子形成のための素子周期方向(屈折率勾配の方向)に一致する他の例を図3に示す。
【0048】
図3(a)は、集光機能のあるフレネルレンズを人工屈折率制御構造で形成した例である。8はフレネルレンズである。
【0049】
このような光学素子は、図2の場合(直角座標)とは、座標系の異なる極座標での1次元素子と考えることができる。
【0050】
この光学素子における周期は一定ではなく、その輪帯の端点の位置は、上述の式(1)で決まる。
【0051】
この実施例では、屈折率勾配の方向が動径方向なので、人工屈折率制御の構造周期の方向も動径方向となり、一素子周期内を動径方向に波長以下の周期に分割し、分割された各々の構造周期内に順次要求される位相差を与えるような線幅の円周パタンを形成することで、図3(b)に上から見た図、(c)にその断面図を示すような厚みにより位相を制御した通常のフレネルレンズ9と同等の機能を持つ光学素子ができる。なお、図3(b)における濃淡は、フレネルレンズ9の厚みの大小を表す。
【0052】
ここでは、図の複雑さと重複を避けるため、一構造周期内での円周パタンを、必ず一構造周期内の位相差の大きい方の端に接するという規則を設けて、円周パタンを配置した例のみを挙げたが、実施例1の場合と同様、一構造周期内のどの部分に円周パタンを配置するかをあらかじめ決めずに自由度として残す素子も考えられる。
【0053】
また、図3(a)に示した構造の外側にも同様な円周パタンの繰り返しをさらに有する場合があることは言うまでもない。
【0054】
実施例3(1次元回折格子:直交ARI)
次に、人工屈折率制御の構造周期方向が光学素子形成のための素子周期方向(屈折率勾配の方向)と直交するような素子の例を図4に示す。
【0055】
図4(a)は図2と同様の等間隔回折格子を人工屈折率制御構造により実現した例を示す上面図である。11は1次元回折格子である。
【0056】
この場合は、屈折率勾配の方向に対し、垂直方向に人工屈折率制御構造の周期を設定しているので、各構造周期内の屈折率勾配は、全て等しく、図のように素子周期内の屈折率勾配をそのままパタン率に変換したような形になる。
【0057】
図4(b)は(a)の一周期内パタン12の拡大図であり、どちらか決められた一端からパタンを配置するという配置規則を課したものである。
【0058】
図4(C)は、同じく一周期分のパタン12の拡大図であるが、こちらは、パタンを中心部に寄せるという規則で配置している。このように、屈折率勾配をパタン面積率に置き換えた配置であれば、これら2種類にこだわらず自由な配置が可能である。
【0059】
(1次元レンズ:直交ARI)
また、この他にも直角座標での1次元素子で1方向にのみ集光機能を持った1次元レンズ(またはシリンドリカルレンズ)に相当するような光学素子を、上述のような人工屈折率制御の構造周期方向が素子周期方向と直交する構造で形成する例も同様に考えられる。これを図4(d)に示す(上面図)。13は1次元レンズである。この例においても、内部のパタン12の形状は、図4(b)や(C)に示すような構造や、それ以外でも屈折率勾配をパタン面積率に置き換えた配置であれば、これら2種類にこだわらず自由な配置が可能である。
【0060】
実施例4(フレネルレンズ:直交ARI)
実施例3と同様に、人工屈折率制御の構造周期方向が、光学素子形成のための素子周期方向(屈折率勾配の方向)と直交するような素子の他の例を図5に示す。
【0061】
この実施例は、実施例2の図3と同様の機能を持つフレネルレンズを、ARI構造周期方向が素子周期方向と直交するような構造で形成した例である。14はフレネルレンズ、15は厚みにより位相を制御した通常のフレネルレンズである。図5(b)に上から見た図、(c)にその断面図を示すような位相フレネルレンズ15と同等の機能を持つ光学素子ができる。なお、図5(b)における濃淡は、フレネルレンズ15の厚みの大小を表す。
【0062】
内部構造の配置については、図4(b)、(c)のような構造や、他にも屈折率勾配をパタン面積率に置き換えた配置であれば、これら2種類にこだわらず自由な配置が可能である。
【0063】
また、図3(a)では、パタン12をフレネルレンズ14の中心部にしか、図示しなかったが、その外側の円周部にも同様のパタンが形成されることは言うまでもない。さらに、図3(a)に示した構造の外側にも同様なパタンの繰り返しをさらに有する場合があることは言うまでもない。
【0064】
実施例5
次にこれまでの例とは多少異なる、より複雑な実施例について記載する。これまでに挙げた実施例は人工屈折率制御の構造周期方向(A)が、光学素子形成のための素子周期方向(屈折率勾配の方向)(B)と、一致する(すなわち、平行である:A‖B)かあるいは直交する(A⊥B)かどちらかの例であったが、本実施例では、A方向が、B方向に一致する方向と、それに直交する方向との2つの方向を持つ2次元的な構造を有する例である。
【0065】
図6では、図の複雑さを避けるため、1次元回折格子の例のみを挙げる。16、17はそれぞれ1次元回折格子である。これまでに挙げた1次元レンズやフレネルレンズ(円形)に対しても同様の規則でARI構造を実現できる。
【0066】
図6(a)は、人工屈折率制御構造の一構造内での高屈折率材料パタンの配置自由度を平行方向と直角方向の2つの自由度とし、優先順位を付けた例であり、図6(b)は、パタンの配置自由度を正方形の面積とすることで一自由度とした例である。
【0067】
なお、上記「素子周期方向」および「構造周期方向」について説明を補充すると、図2(a)、図4(a)を対比すると分かりやすい。これら2つの図面は、どちらも同じ機能を有する1次元回折格子を実現するための構造である。両構造の素子周期方向は同一であるが、構造周期方向が異なる。すなわち、図2(a)の方は、素子周期方向と構造周期方向とが一致(平行)、図4(a)の方は、素子周期方向と構造周期方向とが垂直である。
【0068】
以上本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。例えば、図2(a)、(b)、図3(a)、図4(a)、(d)、図5(a)、図6(a)、(b)はすべて光学素子の一部を例示したものであり、これらの繰り返しがその周囲に縦方向、横方向に続いていることは言うまでもない。また、これらのパターンは複数組み合わせて形成してもよい。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、イオン交換や熱拡散などによる屈折率制御を行わず、また中間厚みも必要としないため、通常のリソグラフィの方法を用いて比較的容易に、回折効率の高い微細な光学素子を作製できると共に、これを集積化することも可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的な考え方となる人工屈折率制御構造による光学素子形成の概念を示す図である。
【図2】本発明による第1の実施例の光学素子(1次元回折格子)を示す図である。
【図3】本発明による第2の実施例の光学素子(フレネルレンズ)を示す図である。
【図4】本発明による第3の実施例の光学素子(1次元回折格子、1次元レンズ)を示す図である。
【図5】本発明による第4の実施例の光学素子(フレネルレンズ)を示す図である。
【図6】本発明による第5の実施例の光学素子(1次元回折格子)を示す図である。
【図7】従来の光学素子(フレネルレンズ)を説明するための図である。
【符号の説明】
1…回折格子、2…光、3…1次回折光、4…0次光、5…1次元回折格子、6…基板、7…回折格子、8…フレネルレンズ、9…フレネルレンズ、10…回折格子、11…1次元回折格子、12…パタン、13…1次元レンズ、14…フレネルレンズ、15…フレネルレンズ、16、17…1次元回折格子、71…レンズ、72…フレネルレンズ、73…位相型フレネルゾーンプレート(FZP)、74…デジタルブレーズド素子、75…屈折率変化素子。
Claims (8)
- 基板の表面に2値構造を有し、前記2値構造の分布状態を変化させて、前記基板の実効的な屈折率を前記表面内の位置によって変化させ、入射光の波面を変化させる光学素子であって、前記2値構造は、1組の2値構造の前記表面の一方向の寸法が前記入射光の波長以下の微細構造であることを特徴とする光学素子。
- 前記表面には、光学素子としての機能を持たせるための前記実効的な屈折率の値が最大値から最小値まで緩やかに変化する領域が複数同一方向に並んで存在し、その各領域の中に前記実効的な屈折率の制御のための前記入射光の波長以下の微細構造の周期的な繰り返しが組み込まれ、前記微細構造の周期的な繰り返しの中で前記微細構造のパタン分布に変化があることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
- 前記微細構造のパタン分布の変化の方向が1次元であることを特徴とする請求項2記載の光学素子。
- 前記実効的な屈折率の変化の繰り返しの方向と、前記微細構造のパタン分布の変化の方向が平行であることを特徴とする請求項3記載の光学素子。
- 前記実効的な屈折率の変化の繰り返しの方向と、前記微細構造のパタン分布の変化の方向が垂直であることを特徴とする請求項3記載の光学素子。
- 前記微細構造のパタン分布の変化の方向が2次元であることを特徴とする請求項2記載の光学素子。
- 前記2値構造は前記表面のエッチングにより形成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の光学素子。
- 前記2値構造は前記表面上に設けた薄膜により形成されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の光学素子。
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